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1948-06-23 第2回国会 衆議院 予算委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十三日(水曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 鈴木茂三郎君    理事 庄司 一郎君 理事 苫米地英俊君    理事 稻村 順三君 理事 川島 金次君    理事 押川 定秋君 理事 今井  耕君    理事 大原 博夫君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    植原悦二郎君       磯崎 貞序君    角田 幸吉君       上林山榮吉君    古賀喜太郎君       島村 一郎君    鈴木 正文君       鈴木 明良君    西村 久之君       原 健三郎君    本多 市郎君       本間 俊一君    海野 三朗君       加藤シヅエ君    黒田 寿男君       田中 松月君    田中 稔男君       中崎  敏君    矢尾喜三郎君       米窪 滿亮君    川崎 秀二君       小島 徹三君    鈴木彌五郎君       田中源三郎君    圖司 安正君      長野重右ヱ門君    大神 善吉君       中村 寅太君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         農 林 大 臣 永江 一夫君         労 働 大 臣 加藤 勘十君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         経済安定本部物         價局長     谷口  孟君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君  委員外出席者         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算  昭和二十三年度特別会計予算     —————————————
  2. 鈴木正文

    鈴木委員長 それでは開会いたします。
  3. 庄司一郎

    庄司(一)委員 議事進行についてお願いいたします。  政府は、物價補正的改訂を、本委員会に対しては、昨夜午後六時ごろに発表になられたのであります。かかる補正的物價改訂と、本委員会に議題と相なつておりまする昭和二十三年度の予算関係とは、物價價格差補給金の問題、その他労銀の問題等々において、密接不離なる関係が相関的にございますので、この際本委員会の能率をあげることは、あらためて申し上げるまでもないことでございますが、未だ質疑をしておらざる同僚委員諸君には、突如として昨夜発表なつたこの物價改訂関係等については、つとめて質問の時間を與えられんことを、委員長までお願い申し上げておく次第であります。
  4. 鈴木正文

    鈴木委員長 承知いたしました。鈴木明良君。
  5. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 まず私はこの機会に、芦田総理大臣に最も重要と思われます問題数件についてお尋ねしたいと思います。  それは申すまでもなく、最近新聞紙上にときどき見受けられまする天皇退位説の問題であります。わが國再建の途上において、國民感情混迷の今日において、私は最も重要と思われますので、お伺いいたす次第であります。  敗戰後の今日、一部の報道によりますると、A級戰爭犯罪人東條英機らの國際裁判における判決の直前または直後において、天皇は退位するのではないかというような説が飛んでおります。新聞にも現われております。敗戰後のわが國民が、共産党を除いては、あげて天皇制を支持いたしたのでありますが、この問題に関して、すなわち國際的に、あるいは國内的両面より見て、日本の將來に対して、この問題をどういうふうにお考えになりますか、総理の賢明な御見解を伺いたいと思います。
  6. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの御質問は、昨日野坂參三君より御樣の質疑がありました。その際一應政府見解を答えておいたのでありますが、われわれはどこまでも、國民の総意によつてでき上つた新憲法の精神に基いて行動すべきが当然であると考えております。御退位問題等につきましては、今日のところ政府において何ら問題といたしておりません。
  7. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 次に私がお尋ねしたいことは、芦田内閣政策矛盾政局についてお尋ねいたします。すなわち、現在の政府は申すまでもなく、社会党と、だんだんと縮まりつつある民主党と、それに國民協同党、いわゆる三派の抱合せ内閣である以上、その政策において矛盾を來すことも当然と思います。その政策矛盾を追究し、併せて政局前途について私は伺いたいと思います。すなわち、特に政局混迷に陷れておるものは軍事公債利拂延期の問題、それに最近非常に問題となつておりまする西尾総理の今回の問題、こういう事柄は、まことに政局を不明朗にしております。また不可解にしておつて納得の行かないばかりでなく、実に私は遺憾の態度だと存じます。現政府態度は、わが國政界においてかつて見ないものだと私は思います。八千万國民あげて遺憾に存ずるところと信じます。その日暮しのあいまいな政策は、ついに炭鉱國管問題を初めとして、二十五名の脱党を見、総理の選挙のときに十一名の脱党を見、続いて小澤君らの六名の脱党を見、木村幹事長の辞任問題をひき起し、それに加えて民主党内動搖は、日を遂いてその度を増しておるやにうかがわれます。こういうことを考えていきますと、もはや現内閣の余命はいくばくもなきやに私はうかがわれるのであります。政党の歴史をたどつてみても、このようなことはないことであると私は信じます。かように、あなたの足もとに火がついておることは、あなた御自身も御承知のことと存じます。かように政策矛盾は見逃し得ない事実として現われておるのであります。すなわち私は、党員のわずかの人を統卒することのできぬあなたが、総理として外資導入を唱え、二合八勺を配給するというようなことを唱えても、それは羊頭狗肉の策であつて、八千万國民は断じて救われないと、私は思うのであります。そこで私の伺いたいことは、今後の政治あり方について伺いたいのであります。今まではこのようにいろいろの問題が起きてきて失敗をしてきたが、今後はいろいろの感情を捨てて、大乘的見地に立つて、こうすれば國民生活は明るくなるのだ、政治はこうすれば明朗になるのだ、そういうような具体的な方針をひとつ明確にせられたいと私は思うのであります。今後の政治あり方について、確固たる方針を伺いたいと思います。
  8. 芦田均

    芦田國務大臣 現在の難局に処して、いなかる政策が最も適切緊要であるかという見地から、昭和二十三年度の予算案を編成し、また行政整理その他については、今朝参議院の本会議発表した通り、第一着手の行政整理も実行いたす所存であります。その他國内諸般の施設については、それぞれ國会審議を求めておるのでありまして、この政策にして遂行せられる限り、現下の経済再建の途は、除々に確実に実行し得るものと考えております。
  9. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 確実に実行し得るものと考えるという御答弁でありましたが、私の見るところによつては、これを確実に実行することはとうてい不可能だと考えられます。西尾総理の問題にしても、その通りだと私は思います。この問題については私も追究したいと思つたのでありますが、同僚からの質問がありましたので、私はとりやめます。  次に本予算と先に政府発表いたしました産業五箇年計画との関係についてお尋ねしたいと思うのであります。本予算をつぶさに檢討いたしますに、その五三%、すなわち歳出の半分以上は消費歳出であつて産業再建に要する費用は微々たるものであります。六・三制の費用にしても、水害対策費用にしても、わずかの費用であります。このように微々たる費用をもつてしては、とうてい所期の目的は達せられない。これはただいま総理が言明せられておりました事柄に反することだと私には考えられます。その上この予算を見ますと、國民税負担がもう底をついておる。その上にまた大きい取引高税とか、あるいは地方の事業税とか、大衆の負担になるものがたくさんございます。國民の能力からしてこれ以上の税金をとるのでは、國民経済が成り立たない。國民経済を成り立たないようにすると、結局税金をとるところがなくなつて國家が成り立たなくなると私には考えられます。この取引高税については、異論もたくさんあるようでありますが、私たちは絶対にこれに反対しなければならぬと思つております。與党三派内においても、いろいろの意見のあることがとりざたされておりますが、総理はこの際取引高税のような惡税をやめる考えはないか、まずこの点を伺つてみたいと思います。
  10. 芦田均

    芦田國務大臣 今日の租税が國民経済生活に非常な重庄を與えておることについては、われわれもまつたく鈴木君と同感であります。しかしながら、現在の國庫状態からみて、取引高税に代わるべきさらに適当の財源があれば、むろん取引高税のみに固執する考えはありません。いろいろ研究してみた結果、その代り財源としてあげられたものの中では、まだ取引高税が今日の場合最も適当であると考えて、新しく設けたのでありまして、もしこれ以上のよき財源があれば、むろん政府としては、かような税法を提出する意思はもたなかつた。やむを得ずこれを提案した事情は、先般來機会あるごとに、予算委員会においても、政府から説明した通りであります。
  11. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 與党三派内において、この取引高税に反対する、あるいはとりやめるというようなことを、昨夜のラジオによつて私は承つたのであります。総理よりは、そういう財源が見つかれば、これを廃止するという御返事を承つたのですが、私たち取引高税に対しては、根底から反対をしておりますから、ぜひとりやめるようにしていただきたいと要望をいたすものであります。  次に政府発表産業五箇年計画内容を見ますと、この本予算とは何も関係が見出せないのであります。いろいろ檢討してみると、どうも他力に依存しての計画であつて、單なる作文に終りはしないかとも考えられます。私の伺いたいことは、産業五箇年計画にいかなる関係があるか、そういうことをまず詳細に説明されたいと思います。
  12. 芦田均

    芦田國務大臣 御承知通りに、一國の財政計画は、その國の経済力を基本として編成せらるべきものでありまして、経済的基盤が堅実になればなるほど、財政もまた堅実な計画を立て得るのであります。從つて今後の財政計画を立てる上において、單に本年度内の諸般経済的要因のみならず少くも四年、五年の半長期にわたる一つ計画基礎として財政計画を立てなければ、決して堅実な財政計画はでき上らないことは、いまさら申すまでもないのであります。その意味において、政府は一試案をつくりまして、先般発表いたしたのでありますが、これは経済再建五箇年計画に関する一つ試案にすぎないのでありまして、決定的の案は、委員会においてこれを作成することになつております。しかしこの試案に示唆せられた要素は、今回の二十三年度予算を編成する上において重要な基盤になつていることは間違いないのでありまして、この計画を離れて、昭和二十三年度の予算案を編成することはできなかつたという点を御了承願います。
  13. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 そうすると、この産業五箇年計画として発表せられたものは試案である、委員会でこまかいものはめきるのだ、だからこの予算には何も関係がないのだというような御返事のように承つたのでありますが、しからばその産業五箇年計画を実施するために、委員会においてつくるのだという答えであつたのですが、いつこれをおつくりになりのか、その見透しを伺いたいと思います。
  14. 芦田均

    芦田國務大臣 五箇年計画予算案関係ないということは私は申しません。五箇年計画という見透しを頭に置いて二十三年度の予算をつくつたのであります。なお経済再建五箇年計画を完成するために委員会が設置されたことも、御承知通りであります。そしてその委員会は、すでに数回会合を重ねているということも、おそらく御承知のことと思います。それに出した政府の案には、明白に政府試案という文字も印刷させておるのであります。それらの事情をよく御調査くださればわかるのでありますが、目下委員会は鋭意諸般の資料を基礎として計画案を立てておりますが、確実にいつ報告ができるということを申し上げる時期に達しておりません。
  15. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 まだどうも納得がいかないのでありますが、五箇年間の計画を立てるということは、これは非常にいいことです。ところが片方においては軍事公債というようなものは、一年間延期してしまつたというような矛盾が出てくるのであります。また今総理は、予算とこの産業五箇年計画との間には関係があると言われましたが、私の見るところによると、何ら関係が見出されない。要するにこの産業五箇年計画外資導入をあてにしてつくつたように、私は思われるのでありますが、その点について、もう少し詳細に承りたいと思います。
  16. 芦田均

    芦田國務大臣 五箇年計画の中に、外資導入の大体の数字をつかんで、試案ができておることは、ただいま御指摘通りであります。しかしながら、外資導入よりも、さらに根本の問題は、食糧問題をどうするか、重要産業物資——石炭増産、鉄、肥料等にわたる各般の増産をどうするか。それに対して價格をどうきめるか。價格調整金をいくら出すか。すべて五箇年計画の第一歩である中間安定のその期間における必要な細目を、予算に計上しておることは、鈴木君も御承知通りであります。この予算が今後の経済再建計画と何ら縁がないという御意見は、多少その辺の問題を軽く見られておるのではないかと思います。要するに五箇年計画とも密接な連絡をもつ予算であることは、数字ごらんになれば、よくおわかりになると思います。
  17. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 この問題はこれ以上質問することをやめまして、次に治安の問題について御質問いたします。  今日ほど治安の惡いときはなかろうと私は思います。たとえば汽車の中においても、あるいは都会においても、田舎においても、強盗、窃盗、詐欺、恐喝等、こういう犯罪が非常に多くなつてきた。善良なる國民は、不安の生活を続けております。殊に最近特に現われておる青少年、学生犯罪、賭博という問題は、まことに憂慮にたえぬ重大なる社会問題であります。かつての神戸、大阪における朝鮮人集團事件、かような事件は、今後ますます増加し、ひいては暴動までも引起すのではないか。食糧問題やインフレ問題の及ぼす生活難問題とにらみ合わせて、私は実に心配にたえないのであります。かような國家非常の際に備えて、政府さき國家公安委員において、これらに対する機関をつくつたようであります。これはまことに結構なことと存じますが、その内容については、まだこまかく発表されておりません。また総理特別訓練隊というようなものをつくる、さきに言明されております。それも未解決のように伺われます。私はこの際この問題について、いかなる方法で、いかなる構想でやられるのか、具体的方針を伺いたいと思うのであります。同時に街の親分と称する者、すなわち暴力團狩取締方針も併せて伺いたいのであります。
  18. 芦田均

    芦田國務大臣 國家公安委員の問題は、さき警察法審議國会に求めた際に、種々質問が出まして、政府としては、できるだけ材料をその委員会に提供して御審議願つたのであります。すでに今日全國各地において、公安委員会が活動を行つておるのであります。警察官訓練については、適当な人材をこの方面に採用しなければならぬというので、ただいま警察学校においては、專門学校あるいは大学の卒業生までが続々これに志願をする形勢にあることは、政府としてもまことに心強い現象であると考えておる次第であります。  やみの取締り及び街の親分に対する取締りにおいても、鈴木君が新聞その他においてごらんになつておる通り政府としてはできるだけの監視を怠らない方針のもとに、今日まで相当の成績をあげてきておると考えます。
  19. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 今のお話の中の特別訓練隊を組織するのだというような御言明が、かつて参議院において行われたようでありますが、その内容について伺いたいのであります。
  20. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま行つております警察官教育所について、もし私が参議院においていつかそういうことを述べたとすれば、それは特殊の警察官の養成を指したものと御了解を願います。
  21. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 次に伺いたいことは、治安の任に当る警察官素質、そういう問題について伺いたいと思います。ただいま学生とか、そういつた方面も、どんどん志願してやつているということでありますが、最近警察官が非常に増加されました。しかしその素質は非常に低下しておりまして、中には警察官犯罪対象となつていることも往々にして見受けられますので、素質低下犯罪対象となるがごときことも見受けられておると同樣に、治安上ゆゆしき問題だと私は存じます。いたずらに人員のみを増加しても、片方において素質低下という片手落ちの現状では、何らの効果もないことは自明の理であります。この素質向上に対する問題と、警官に対する待遇の問題、これも考えなければならぬと思うのであります。同時に取締関係上、警官に対してただいま拳銃をもたしておりますが、この拳銃も非常に数が少く、仙台のごときは四十人に二挺の割合、栃木縣のごときは十人に一挺、こういうような状態では、とても治安を護ることは不可能であると存ずるので、あえて私は御質問いたしたのであります。さき判檢事あるいはそういつた人の俸給を改善したと同樣に、この警察官に対しても一つ考えていただきたい。これらに対する総理方針と、これらに対してどういう用意があるか。この二つについてお尋ねいたしたいと思います。
  22. 芦田均

    芦田國務大臣 警察官素質が、必ずしもわれわれの期待に副わないことは、重要な問題でありまして、何とか一日も速やかにその改善をはからなければならないことは、朝野をあげての要望であると思います。不幸にして終戰以後における社会的混乱事態において、しかも古き警察官が多くその地位を去つて、新規に採用した警察官が非常に高いパーセンテージを占めている現状であります。これらのものが一應その職責に十分な修養を積むためには、ある年月をかすことはやむを得ない事態であります。給與については、公務員の他の職域におけるものと比較して、決して劣らない給與を與えることに、國家警察においては、それぞれ決定して、これを支給しております。  なお拳銃の問題は、必ずしも日本政府の独自の決心をもつて、携帶せしめることができない状況であることは、おそらく鈴木君も御承知のことと思いますが、最近における各地治安撹乱事件等に遭遇いたしました結果、この点は遠からず日本政府要望する方向に改善せられるものと期待しております。
  23. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 われわれ國民が、まくらを高くして、安心して増産に励むことができるように、ひとつそういう点は一日も早く実行に移していただきたいということを特に要望いたします。  次に國際関係について二、三お尋ねいたします。わが國の國際的地位ということであります。申すまでもなく、わが國の諸外國に対する信用失墜現状は、戰爭中を最高といたしまして、終戰後漸次回復方向に向いつつあることは、まことに喜ぶべきことだと存じますが、前途まつたく樂観を許さない状態であると信じます。この國際的に信用を失墜した日本現状を強力に回復するにあらずんば、わが國の再建は望み薄すであると言わざるを得ないのであります。この信用回復のために、総理大臣はまた外務大臣として、いかなる方法をもつて努力せられておるか。他力本願でなく、みずからの政策をお示し願いたいのであります。同時にわが國の國際的水準についても、お伺いいたします。
  24. 芦田均

    芦田國務大臣 敗戰日本國際的信用を回復するまず第一着の仕事としては、ポツダム宣言を受諾した結果、これに規定されている各種の問題、すなわち一言で申せば日本の非軍事化日本民主化、そうしてこれに伴う各種手段、すなわち財閣の解体であるとか、あるいは公職に適しない者を排除するという、さしあたりの手段を今日まで着々実行してきたのでありますが、根本においては、日本國民の二十四時間の生活が、どの程度世界の眼に信頼すべき民族として映るかということが、最後の問題として決定せらるべきであると思う。そういう意味において、わが國民が今後眞に文化國家の民として、平和を愛好する國民として、諸外國の人心にまつすぐに反映するような方向に進みたい、しかしかような問題は、單に二、三の区々たる政策のみによつてでき上るものではありません。國民全部がその目標を正しく認織してこれに努力し、互いに協力するということでなければ、長い間にわたつて失墜したるわが國の信頼を、諸外國から回復することは、きわめて困難であります。かように考えまして、その方向にはできるだけの力をいたしておるつもりであります。
  25. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 この信用失墜現状というものが、遂に講和会議の問題もたなあげさせたのだと、私は考えますが、一体講和会議はいつ開かれるか、総理として見透しはつかないかどうか、その点も伺つてみたいと思います。
  26. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの情勢におきましては、いつ対日講和会議が開かれるかという見透しは、政府として明確につかむことは困難であります。
  27. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 講和会議の見透しがつかないということは、まことに私たち國民にとつて前途憂慮にたえぬものがありますが、これもいたし方ありません。しかしいつかは開かれると私は信じます。國際情勢の変化によつて、あるいは急速に開かれるかもしれません。かような時間が到來したならば、必ず独立國家として認められるときもあるでしよう。そのときに備えて、外交官の派遣ということも考えなければならぬと思うのであります。政府はこれらに対してどういう用意をしておるか、どんな状態で進められておるか、それも伺つてみたいと思います。
  28. 芦田均

    芦田國務大臣 平和締結後のわが國の諸外國に向つて必要なる外交官領事官及び商務官等を派遣する必要のあることは、ただいま御指摘通りであります。政府終戰後國内の本省勤務はしばらく別として、それ以外に外務省研修所と称するものを設けまして、近く平和克服後においてただちに外交の第一線に働けるような少壯の官吏を訓練し養成するために相当予備員をもつておるわけであります。從つてかりに平和條約がこの夏締結されたといたしましても、事態に應じて、ただちに必要なる地点に外交官及び領事官を派遣するだけの人間は、今日すでに備えております。
  29. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 了承いたしました。次にこの問題に関連しまして、わが國民平和会議前でも、海外渡航を許す用意があるんだというようなことも極東委員会で取上げられております。そこで私はこの海外渡航の問題と併せて、國際会議にわが日本人参加の件をお尋ねしたいと思うのであります。極東委員会アメリカの主張が通つて日本人國際会議参加する権限を総司令部に対して與えるということが決定されたように報道されております。まことに前途明るいことであつて仕合せと存じます。そこで私の質したいことは、國際労働会議、あるいは文化方面会議海運関係会議、そういつた國際的会議に対してどういうふうに総理は努力せられておるか、そのなりゆきを明確にこの際伺つておきたいと存じます。
  30. 芦田均

    芦田國務大臣 アメリカからの電報は、すでに鈴木君もごらんなつたと思いますが、二十一日の極東委員会のG・H・Qに対する指令は、連合軍司令官政府間の國際会議参加するよう適切な招請を受けた場合、この会議への参加が占領の利益となると考えるならば、幕僚のうちからオブザーヴアーを同会議に派遣することができる。第二、右会議に出席するオブザーヴアーは、総司令官が必要と考え、また会議主催國がこれを受諾するならば、日本人技術者も隨行することができる。これが極東委員会の決定であります。從つて今日までのところ國際会議に際しては、日本側の発意によつて自由にこれに参加するという程度には事態が進展しておりません。日本人國際会議参加し得るや否やは、その主催者の意思を連合軍の総司令部に申し出して、それが許された場合にのみ参加し得る。こういうことになつておると了解しております。
  31. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 次に伺いたいことは、わが國の失業問題解決のためにも、食糧問題解決のためにも、また高度文化國家建設のためにも、海外渡航を許されることは暗夜に光を見出す結果と私は思います。そこでこの前の予算委員会においても、質問をしたのでありますが、平和会議前でも許す用意がある旨正式に発表されております。しかしながら、政府のこれらに対するやり口は、まことに緩慢なように伺われます。一体総理はいかようにこの点について努力せられておるか、実業家の問題は、どんな状態で進められておるか、学生はどうか、また政治家はどんなふうにお願いしておるか、具体的に許可の状況と見透しについて伺いたいと思います。
  32. 芦田均

    芦田國務大臣 日本の通商を増進することが、連合軍一つの目的でありますから、これに必要な技術者を海外諸國に派遣することについては、今日まですでに数箇の実例を見ておるのであります。あるいは絹の万國会議に出席する。綿の買いつけのためにインドに日本の技術者を送る、あるいはニユーヨークに必要な技術者を送る、その他の地方にも今後かような問題が続々起つてくることと考えております。しかしながらわが國今日の状態において、國民の中から希望に從つて、自由に外國旅行ができるという事態にはまだ到達いたしておらないのであります。実際問題としては、主催者が特に日本側に招待を出した一定の人数のみが渡航を許されておるのが実情であります。
  33. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 そうすると、これらに対しては、何ら努力することはできぬ。こういうふうに了承してよろしいのでありますか。
  34. 芦田均

    芦田國務大臣 政府國家のために努力することは、当然のことでありまして、それはお尋ねまでもなく、努力は常にいたしております。
  35. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 わが國のスポーツ界、こういうものは終戰後非常に進歩発達をしております。先の問題に関連いたしまして世界市場に私は比較しても遜色のない事柄は、各種の最近の競技における新記録が物語つておると思うのであります。先日の水泳界における古橋選手の世界的新記録を出したというようなことまでも、世界的に公認されない。これはスポーツ愛好者にとつても、ものさびしさを感ずると、私は存ずるのであります。こういう事柄講和会議が開かれない今日においても、政府の努力によつては認められるということも可能ではないかと私は存じます。こういう点について総理見解を伺いたいと思います。
  36. 芦田均

    芦田國務大臣 現在までのところオリンピツクにわが國が公式に参加することは、まだ認められていないのであります。しかしながら、オリンピツクの会議等に適当な代表者を出すことは、先方においてもいろいろ考えておるようであります。あるいは遠からずそういう会議参加する時期も來るかと考えております。
  37. 鈴木明良

    鈴木(明)委員 いろいろ今まで質したのでありますが、すべてどうも具体的に、積極的に政府から向うへ懇請しておるというような事実が見出せないのであります。今後一つ政府におかれては、強力にこういう問題について懇請をして、わが國民前途を明るくするように一日も早くこういつた方法に進まれんことを私は要望いたしまして質問を終ります。
  38. 鈴木正文

    鈴木委員長 次に田中稔男君。
  39. 田中稔男

    田中(稔)委員 総理大臣にお尋ねいたします。外資導入の見透りでありますが、エロア資金とかその他いろいろと今日アメリカの議会で問題になつておりますが、今日までの正確な情報をお聽きしたい。それから民間の資本の導入の問題でありますが、日本軽金属あるいは松尾鉱業なんかにおいて、その先鞭をつけておるという話を聞いておつたのでありますが、その話はその後あまり進展していないというようなうわさも聞いております。その民間資本の導入につきましては、いろいろな障害があると思うのでありますが、どういうふうな点が障害になるか、こういう二つの問題についてお尋ねします。
  40. 芦田均

    芦田國務大臣 現在までアメリカ側の政府資金の投入される正確な数字は、私の手もとにもつておりませんから、適当な機会に政府委員からお答えいたします。民間資金の導入については、アメリカの金融業者並びに事業家が続々日本に來て各方面の事業家と接触を保つておるようであります。しかしこれらの企業については、政府は間接に外資導入問題を承知いたしておりますが、今ただちにその契約に内容等を当事者の承認なしに発表することはできがたい問題もありまして、今日まで成立した、たとえば綿花借款の六千万ドル、あるいは回轉基金の一億五千万ドルという以外に、日本國内における諸般外資の交渉については、ただいま正確な答弁をいたすことができないと思います。
  41. 田中稔男

    田中(稔)委員 政府は長期再建計画についても外資導入に重きを置いておられて、芦田内閣は他力本願主義に立つた内閣だというような批評すらあるのでありますが、これにつきましては、いろいろな意見が國内にある、外資導入絶対に排斥するというような見解を表明しておる政党もある。私ども社会党としましては、外資導入一般を排斥するのではもちろんない。しかしながら、無條件でこれを入れるということは、いろいろな点からやはり考慮すべきであると思うのであります。芦田首相は外資導入の問題につきましては、手放しで無條件でこれを歓迎するというような御意向であるかどうか、ひとつ御所見を承りたい。
  42. 芦田均

    芦田國務大臣 現内閣は決して他力本願主義で、政策を立てておるとは思いません。そのことは私の施政の演説をもう一度読み直してくださればわかる。われわれは自力で立上るのだ、しかしながら、今日の日本の二合五勺の配給さえも、外國から米をもらわなければ食つていけない、だからもし外資導入に反対の方は、二合五勺の配給を辞退されたら主義が通ると思う。外國から來た米を食いながら、「外資導入反対」では、どうしても通らない。これが日本の実情である。それだからわれわれは日本において産業再建をやらなければならぬ。食糧増産もできるだけやらなければならぬ。けれども食糧の絶対数が足りない。その足りない場合には腹をへらしてがまんするか、あるいは食糧がはいるならば、その食糧によつて再建の事業に当るか、一つに二つの選択しかない。それだから日本経済再建のために、さしあたり必要とするものは、外國の物資を輸入して一日も早く再建の事業をやりたい、この趣意に國民が反対であるとは私は思いません。おそらく田中君も御同感だと思う。そこで無條件で外資を入れるかどうかということは、これはものの性質によります。しかしながら、今日外資を輸入したら日本國がやがて外國の植民地になるだろうというふうな議論には、私は賛成し得ない。七千万の同一の民族が、一つの近代國家をつくつておる。それが外國から借金して植民地になつたという例は一つつてありはしない。アメリカも植民地時代には、イギリスの資本をうんと入れた。ドイツも第一次戰爭後アメリカの資本を利用した。それが植民地になつたか。みな、りつぱな独立國になつている。だからそういうセンチメンタルな理論は、われわれとしては、絶対に承服できない。こういう方針で進んでおります。
  43. 田中稔男

    田中(稔)委員 社会党といたしましては、外資導入一般に反対していないことは、さつこ申し上げた通りでありますが、しかしながら、外資導入を無條件で歓迎するということは、やはり経済的に日本の植民地化を來す危險なしとはしない。今日都会の街頭なんかにおきましては、到るところに精神的、文化的、道徳的な面におきまして、すでに植民地的な傾向が現われているのであります。もちろんこれは八千万國民生活の実態にそれほどの影響を今日與えておぬとは、私は考えないのであります。しかしながら、だんだん資本がはいつてまいりまして、そうして企業の株式の上において五〇%、五一%を許すというようなことになり、日本の資本家の全部とはいわなくとも、一部分にしても、買弁的な約割を演ずることのあまり、だんだん日本の労働者の犠牲において、外資の利潤のおすそわけをいただくというような、奴隷的な根性になり下るというようなことが、ずつと瀰漫してまいりますと、やはりこれは長い間にはわれわれの國民の独立心というものをだんだんなくする。そういうことから、だんだん政治的な問題にまで発展するという危險は、今日絶対にないとは言えないと思うのであります。植民地化の危險ということが、いろいろ言われておりますのは、そういう意味において、私のやはり眞劍に考える必要がある問題であると思うのであります。この植民地化の危險は、全然ないのでありますか。無條件にどれだけ外資を入れても差支えないという首相の固い御信念であれば別でありますが、そういう点につきまして、若干の危險をお考えになりますならば、外資導入して、よく日本の民族の独立を守り、祖國の光栄を維持するというためには、一体何が保障になるかという点につきまして、一つ首相の御所見を伺いたい。
  44. 芦田均

    芦田國務大臣 日本外國資本國家の奴隷となるような危險を防ぐ保障はないかというお尋ねですが、日本民族の氣力以外には、何ものもないと思います。われわれ日本民族が、ほんとうに独立の精神に燃えて、健全な民族國家をつくつている限り、わずかばかりの外資がはいつてきたために、日本が植民地になるなどということは、私は断じて考えたくない。日本民族の氣魄は、そんなもろいものとは思つたおりません。
  45. 田中稔男

    田中(稔)委員 外資導入した結果、植民地化の危險があるにしても、それに対する保障は、日本國民の氣力にあるというような首相の御答弁である。私はきわめて観念的な御答弁だと思うのであります。私見といたしましては、この植民地化の傾向に対する保障は二つあると思う。一つは、二千六百年という年数は間違いであるとしても、まあ二千年近いことは間違いない。二千年にわたる日本國民的な傳統、これが私は一つの保障であると思う。しかもこの日本國民的傳統というものは、脈々として今日の勤労大衆の間に傳わつていると思う。なかんずく四千万に達する日本の農民の生活の中に保持されていると思います。第二の保障は、戰後急速に発達をいたしましたところの、日本の組織労働者の力に、これを発見するのであります。この國民的傳統、その保持者としての日本の農民、それと組織労働者、この二つの保障が植民地化の傾向に対する最も確実な保障であろうと思うのであります。しかるに芦田内閣の施政のあとを見ますと、この二つの保障を強化するというのでなく、むしろ弱化するという方向に行われておるように感ずるのであります。いささか私見を述べてみたいと思うのでありますが、日本の二千年の歴史において、さいわいにして、われわれは他國の属國になり、植民地になるということはなかつたのであります。元寇の時代に、北條時宗という政治家がおりました。そうして蒙古の襲來を防いだのでありますが、これはどうしてできたかと申しますならば、それに先だつところの康時、時頼の善政のおかげである。これらの偉大なる当時の指導者は、その時代の封建制のわく内においてではありますけれども、日本の農民の生活をゆたかにするために、彼らは一生懸命に努力したのである。それがあつて初めてあの蒙古の襲來に対して、挙國一致して防ぐことができた。決して鎌倉武士だけの力で蒙古の襲來を撃退したのではない。その背後に日本の農民の銃後の強い力があつたのであります。その後徳川時代におきましても、いろいろと虐政もあり、惡政もあつたのでありますけれども、やはり名君賢相というものが出まして、松平定信、あるいは上杉鷹山のごときは、その領内の百姓、農民の生活をゆたかにするということを、彼らの政治の目標とした。こういうようなことで徳川時代三百年、日本生活を、外國からやつてまいりましたところの長崎あたりからはいつてきたオランダのカピタンその他が見まして、日本國民は勤勉にして礼儀を解する民族として、いろいろな文献においても非常に賞揚しておる。明治になりまして明治以來の日本の指導者につきましての歴史的評價は、まだ定まつておりませんから、名前をあげることははばかりますけれども、とにかく明治以來の日本を指導した政治家の中にも、やはり日本の農民の生活國民生活、これをゆたかにするために、一生懸命に働いた政治家がたくさんおつた。それでもつて明治以來の日本は急速に興隆したのであります。例は少し穏当を失するかもしれませんが、今日元寇の当時の時宗の地位、あるいはまた一つの藩ではありますけれども、松平定信の地位、上杉鷹山の地位、そういうものに似た地位に立つておられるのは芦田首相であります。芦田首相は、ほんとうに日本國民的傳統、この保障をしつかり固めるというためには、日本の農民生活がほんとうにしつかりするというために、ひとつ努力をしていただかなければならぬのでありますけれども、御承知通り、今日の農村は、一時はインフレで非常によかつたとはいわれておりますが、最近は必ずしもそうでない。非常に苛酷な供出の割当が下されており、惡税があり、米價その他農産物の價格と、工業生産物の價格との間の鋏状價格差というもののために、農民は非常に苦しめられておる。しかもこういうような場合に、芦田さんが今おつしやつたように、一切を進駐軍の責任に轉嫁するようなお話、どうもしかたがない。今日日本は占領されておる以上しかたがないというふうにして、百姓を説得することに懸命であります。こういうことでは、私は日本の二千年の歴史を守つてきたところの偉大なる指導者に対して芦田首相は顔色ないと思う。  それから次に申し上げたい点は、組織の力、これが日本民主化を保障する非常に大きな力である。民主化だとか、非軍事化だとか、いろいろなことをおつしやいますけれども、こういうものを、ほんとうに形の上において確保するものは何かと言えば、労働組合その他の民主的な組織であります。しかるに戰後三年半ばかりの間に、日本の労働者が六百万の組織労働者となつて成長し、そうして労働組合法あるいは労働基準法というようなものをとにかく與えられ、そうして労働権あるいは基本的な人権というものを獲得したのに、最近におきまして、どうも芦田首相あたりのお考えとしまして、労働法規を改惡しようというような御意向があるようであります。そうして労働者が得たところの既得権を、むしろ剥奪しようという御意見がある。加藤労働大臣は閣内にあつて独りこれに向つて反対してがんばつておるということを私どもは聞いておる。一方また賃金にしましても、実質賃金の確保がなくして、三千七百円というような今日のいろいろな事情のもとにおいて、私は非常に妥当を欠いたペースだと思います。そういう賃金ベースを固定化しようとしておる、さらにまた昨日本会議におきまして、わが党の出身であります清澤俊英君が緊急質問をいたしました。新潟縣小千谷における理研工場の人権蹂躙問題、こういうふうなわけで、労働者に対しまして、その組織力を伸ばすという方向に努力する代りに、むしろ労働者が過去三箇年に得たところの既得権利をば剥奪しようとする方向に向う。しかもこれは結局は外資導入の途を滑らかにするために行われておるということを聞いておるのでありますが、こういうことになると、芦田首相は外資導入するために、日本の労働者の権利を剥奪し、日本の労働者の生活を抑え、そして一種の奴隷監督的役割を演じようとするのであろう。私どもはこの点について組織労働者六百万の意向を考えまして、責任ある御答弁を承りたいと思うのであります。
  46. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま芦田内閣は、外資導入のために、日本の六百万人の組織労働者の権利を奪い、これを彈圧してその目的を達しようとしておる。こういう御意見があつて、それをどう考えておるかというお尋ねであります。私の見るところをもつてすれば、組合労働者の権利を剥奪したり、その正当なる組合行動を彈圧することによつて外資導入が得られるとは考えておりません。もしさような政策をとつたならば、かえつて外資導入の妨害になります。われわれの念じておることは、組織労働者が労働組合法及び憲法の精神に則つて健全なる発達を遂げることであり、これがまた対外的の信頼を博するゆえんであり、ひいてわが國を援助せんとする人々の意欲をそそるゆえんでもある、かように考えております。
  47. 田中稔男

    田中(稔)委員 今の御答弁に対しましては、少し物足らなく感じますが、それはそれとして、この間経済復興会議が解散の決議をしたのであります。これにつきましては、経済復興会議に加盟しておる労働團体の一部に、やや行き過ぎの傾向というか、建設的な態度でなくて、やや破壞的な態度が見えたというようなことも、その解散の一つの事由になつておると思います。そういう点は、私は確かにいくらかあろうかと思います。しかしながら、経済復興会議が解散になり、それからその前に石炭復興会議——石炭部門の経済復興会議でありまするが、これが決裂した、こういうこともあつたのであります。これは私はやはり資本家が労働者の生産復興の意欲を抑えようとする一つの企図の現われであると思うのであります。今日労働者は資本家の方が生産をサボる場合には、やはり生産管理をやつて、生産の復興をはかるということばかりでもなく、また各種の部門に経済復興会議をもつており、全國的にはまたその経済復興会議があります。そういうものを通じて、それからまた経営の内部におきましては、経営協議会をつくる。どうすれば日本経済再建を実現することができるかということについて、労働者の見地に立つて眞劍に考え、そのために闘つております。つまり労働組合の生産復興闘爭あるいは生産闘爭というのがこれであります。私はこういう労働者の自主的な協力体制なくしては、日本経済再建は絶対できないと思う。また外資導入されました場合におきましても、そういう労働者側の経済再建に対する自主的な協力体制がなければ、せつかく導入された資本も十分効率を上げることはできない。またさつきもるる申し上げましたように、外國の資本が入つてくる、そうすると買ぱぬ的な傾向をもつて資本家の一味が労働者を眠らせ、あるいは抑え、そうして外國な資本家と一緒になつてうまいしるを吸おう、こういうことをはかるものもできると思うのでありますが、この場合にやはり労働者側がほんとうに積極的に、自主的に再建のための協力をやりますならば、そういう資本家を放擲して、ほんとうに日本の生産復興をはかることができるいろいろな点から考えて、労働者の復興への意欲を阻害するようなことがあつては、絶対いけないと思うのでありますが、最近そういう傾向がちらほら見える。こういう経済復興会議の解散問題、あるいは石炭復興会議の決裂の問題、こういう点についての首相の御見解を伺いたい。
  48. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまお話のように、わが國の経済再建のためには、経営者と勤労者が互いに協力して、生産増強の意欲に燃えることが、絶対に必要であるとのお考えは、その通りであります。経済復興会議、その他の会議において、近來何か多少のごたごたが起つているということは、新聞で見ておりますが、一日も早くかようなごたごたが收まつて、互いに協力して生産増強に邁進する体制が整うことを希望しておるわけであります。
  49. 田中稔男

    田中(稔)委員 これはさつき鈴木さんからもお話になつた問題でありますが、いよいよ日本人外國に行けるようになろうかということであります。この場合私は最近新聞國際労働会議に復帰することができるという報道を知つたものですから、これは非常に結構なことだと思うのでありますが、私は今後は日本の労働者の代表、あるいは組合の代表というようなものが、その固有の労働問題に関する國際会議の席に出るだけでなく、いろいろな政治の問題、あるいは経済の問題に関して開かれる國際会議に、廣く進出するということが、必要ではなかろうかと思うのであります。さつきも申し上げましたように、労働組合の力というものが、私は日本民主化というものをば対外的に示す一番いいものであると思う。労働組合というのは、本來きわめて民主的な性格をもつ團体であるからであります。外交官の派遣にいたしましても、イギリスあたりでは、すでにやつておるそうでありますが、労働関係の人をアタッシエとして派遣する。あるいは大公使の任命にしても、労働組合の中からその才幹のある人を簡拔するというような、こういうふうなことにして、日本の組織労働者の力をば、できるだけ対外的に進出させまして、そうして日本の労働組合の國際的信用において、日本の対外的信用を博するというような方向に、ひとつ努力していただくことが、必要ではなかろうかと思うのであります。こういうふうなことにつきまして、御所見を承りたいと思います。
  50. 芦田均

    芦田國務大臣 近來の社会的趨勢に鑑みて、今後わが國の代表として海外に派遣せらるべき人間の任命、その他について、十分の考慮を拂うことがよかろうという御意見は、至極有益な御意見と思います。せいぜいこれらの御意見を参酌して、事に当りたいと考えております。
  51. 鈴木正文

    鈴木委員長 十二時半になりましたが、前に苫米地英俊君から総理大臣へ関連質問が保留になつておりましたから、それを済ませて畫にはいりたいと思います。苫米地英俊君。
  52. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 先般植原委員からの質問に対して、総理國際信用を害したというような報道は受取つておらないということが一つ。今一つは現にロンドンの市場において、日本の外債が下落しておらないということで、この軍事公債利拂一年たな上げが、國際信用に何ら影響がないという御答弁があつたのでございます。しかるに私は不幸にして、さような御意見に共鳴することができないのであります。それは先般ドレーパー使節が來朝されましたころ、シモンズ氏が言うておる言葉がある。民間外資導入には、まず資本尊重を現実で示さなければならない。しかるに日本では、投資者の権利を軽視する風が一般化しておる。かかる風潮は、公債利拂停止論などに、その一例が現われている事実経営者の責任に帰すべからざる損害を、法律一本で企業の責任にしてしまつた例が少くない。これでは民間投資は望まれないと、こう申しておるのであります。昨日も財政及び金融委員会で、この問題について参考人に來てもらいまして、意見を承つたのでありますが、日本の金融界を代表しておると考えて差支えのない二人の参考人は、これについて総理大臣とまつたく別個の意見をもつておられるのであります。その一人は、ドレーパー・ミツシヨンが來たときと、財政の均衡ということと、金融の健全化ということが、外資導入にきわめて密接な関係があり、必要であるということを強調せられておる。この金融の健全化をめざして、一たびおちついた金融整備も、第二封鎖預金をさらに打切つて、その内容を堅実化したような次第である。そして関係方面意見を質しても、ああいうことはしない方がいいという意見であつた。また現実にアメリカの銀行の関係では、センセーシヨンを巻き起しておる。これは通貨の不振、インフレの高進、貯蓄面の減退ということにも影響があると思う。外國筋では將來民間外資導入される際にあたつて、何を目標にするかといえば、日本経済財政の実態を見るのだ。その経済財政の実態が金を貸すことにそぐわなければ、決して貸すものではない。であるからして、この外資導入國際関係に影響のないということは、とうてい考えられない。現にこの公債は、郵便局賣出しのものが、あの問題の起るまでは九十一円の相場を維持しておつたものが、あの政治問題が起つて、八十五円に値下りをしておる。すなわち六円の開きを生じておる。また利拂いが停止されるということになれば、現在すでにきゆうくつな金繰りが、さらにきゆうくつなことになつてくる。こういうようなことから、日本財政経済の実態というものが、外資導入にふさわしからざるものに動いていくことは当然である。こういう意見でありました。また他の参考人は、この問題に対しては、最初不賛成であり、政府に対しても、関係筋に対しても、その不可の理由をこまごまと説いてきたのであり、経済財政上の立場から、現在もこれを不可とする点において一致しておる。こういうような次第であるから、国際関係外資導入に影響のないというようなことは、絶対に考えられないと申しておつたのであります。私の知つておる限りにおきましては、総理はロンドンにおいても、ニユーヨークにおいてもと言われますが、日本の公債はニユーヨークでは上場せられておりません。從つて何ら影響のないことは当然のことである。ロンドン市場におきましては、日本公債は上場せられております。けれども、この軍公利拂たな上げはきわめて小さなものであつて、これがただちに日本政府が軍公問題についてすら、海上の第三國人の持つておるものに対しては支拂うという態度を示しておるのでありますからして、一般の日本の外債に対して影響のないのは、当然の話であります。かつて日露戰爭のときに、アメリカに外債募集に出かけられた高橋是清市の自叙傳の中に、日本は未だかつて公債の利拂を停止したことがないということを述べたために、非常な感銘を與えて、外債の募集に成功したということが言われておるのであります。この國債のデポートをしたことがないということが、それほど大きな影響をもつておるものとすれば、現在においても同樣な感覚が國際市場間にあることは当然であると考えるのであります。この新聞記者の言葉、参考人の言葉、また私の聞き及んでおるところから生まれてきた信念、これに対して間違つておる点がありますならば、お教えを請いたいと存ずる次第であります。
  53. 芦田均

    芦田國務大臣 いろいろ詳細なお話を伺いましたが、そういう御意見もあることと思います。しかしそういう意見があつたから、すぐ私が委員会で説明した意見が変更したとは申し上げかねるのであります。この問題については、すでに再三この席上でお答えをしておりますから、それによつて御了承を願います。
  54. 西村久之

    ○西村(久)委員 軍公利拂関係に対する問題につきましては、再三再四御答弁を願い、なおかつ法的処置をとられまして、法律案の議会提出をみまして、政府の御方針のありますところはわかつておりますから、この点に対しましてはお尋ねいたしません。私がお尋ね申し上げてみたいと思いますることは、軍事公債の利拂は停止されておるが、臨時軍事費の借入金の利拂は停止されておらないのであります。同じく停止するものなら、臨時軍事費借入金の利息も停止されなければならぬと、私は信ずるのでありますが、ここに矛盾があると考えますので、一應総理の御意見伺つてみたいと考えます。
  55. 芦田均

    芦田國務大臣 私の理解しておるところでは、借入金の方は銀行借入金でありまして、これをもつて公債と同一視するわけにいかないということと、多少記憶が不正確でありますが、おそらくこの借入金はすでに返却済であるか、あるいはきわめて最近に返却することにきまつておると思います。その利拂を停止するとかしないとかは、必要のなくなつた問題だと考えます。
  56. 西村久之

    ○西村(久)委員 総理大臣の御答弁では、私はわからないのであります。すでに提出されておりまする予算内容に、臨時軍事費借入金の利息が出ておるのであります。当然臨時軍事費というものは、私は借入金が存在しておるものなりと信じて疑いません。その額につきましては、政府の御解釈はいろいろありましようが、この利息を計上している以上は、借入金がなければならぬと思います。從いまして、お尋ねを申し上げておるわけでありますから、いま少しくわかるように御答弁を願いたいと思います。
  57. 芦田均

    芦田國務大臣 御承知通り政府が三党政策協定に基いて軍事公債の利拂停止をしたときには、はつきり軍事公債の利拂停止と言つておるのでありまして、借入金の利拂停止はその中に含んでいないのであります。從つて今回の法律にはつきり書いてあります通り、それぞれ利拂停止をすべき公債の銘柄が出ております。それ以外のものには及ばない。同じ公債であつても、あの銘柄以外のものには及ばないので、きわめて限られた範囲である。いわんや借入金には利拂を停止しないというのが初めからの方針であり、これも七月十日には借入金を返済することになつております。問題は全然別個であると考えております。
  58. 西村久之

    ○西村(久)委員 そういたしますと、この問題は三党政策協定でやつた問題であるのでありまするが、社会党の諸君の御意見といたしましては、臨時軍事費の借入金に関する利息は、たな上げせぬでもよい。今後もそういうふうな問題は取上げない。こういう社会党諸君の御意見であるように承知してよいのでありますか。その点をお伺いいたします。
  59. 芦田均

    芦田國務大臣 政府はこの問題を取扱うときに、三党政策協定の基礎の上において、あの法律案をつくつたのでありまして、むろん社会党の党議においても、これを承認されたものと心得ております。
  60. 西村久之

    ○西村(久)委員 そうしますると、これは拂い込んで解消するというような総理の御意見であつたかのように思いますが、本年中の百億の借入金を返還もし、利息もともに拂い込んでしまうというように了承していいのでありますか。この点は日銀あるいは横濱正金銀行に関係のある問題でありますので、政府財政計画、あるいは私ども今後予算審議を進めていきます上において、参考資料になると思いますので、お尋ねを申し上げるのであります。
  61. 芦田均

    芦田國務大臣 今政府委員において書類を出しておりますから、ちよつとお待ちください。
  62. 西村久之

    ○西村(久)委員 書類は私の方でわかるのでありまして、臨時軍事費借入金は、百億近くの金になつておるのであります。佛印にあります正金銀行関係の金で、政府がこの借入金に対して正金銀行に利息を拂う金が、この予算に計上されておるのであります。一部は日本銀行からの一時借入金というものに対する金利で、二億五千五百五十万という金利が計上されておるのであります。一部はタイ國にあります日銀支店の借入関係が含まつておるのであります。それで御方針伺つておるのであります。この日銀の借入額並びに正金銀行の借入れの総額が、約百億になるのであります。この借入金を今年中に返還をして、そうして元金は解消してしまう。利息も拂つてしまうのであるから今後問題は残らない。こういうことに了承してよろしいのでありますかということを、お尋ね申し上げておるわけであります。
  63. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。臨時軍事費関係約百億円の借入金は、七月十日に償還期が到來するのであります。しかしながら、政府といたしましては、七月十日に一應返償はいたしますが、これをさらに借替えまして、依然として債務を負担してまいる。かような計画をもちまして予算を編成しております。
  64. 西村久之

    ○西村(久)委員 今の御答弁で手続はわかりましたが、借替の手続をとりましても、当然その百億近くの金は臨時軍事費関係の金として、將來國民負担をしていく形になるものと承知いたしますが、この問題について社会党の諸君のお心持は、今後こういうふうなものの支拂は、支拂つてつても差支えないという三党間のお話合いがあられて、こういうふうな利息の御計上になつておるのかどうかということを確かめておきたいと思います。
  65. 芦田均

    芦田國務大臣 これは先ほどお答えしたと思うのですが、三党政策協定には、はつきり軍事公債の利拂ということが書いてあるのでありまして、銀行間の借入金は問題になつておらぬのであります。
  66. 西村久之

    ○西村(久)委員 そうすると今後問題が起きるという場合には、その際にまた考えるということに了承してよろしいのでございますか。なおここへ利拂を計上しておりまするということは、先ほど申しました通りに、同じ利拂を停止いたすものならば軍公も臨時費も同じような扱い方をすべきが当然のような考えがいたしますので、くどくどとお尋ね申し上げておるわけでありますから、いま少し今後の扱い方についてはつきりするように御答弁願いたい。
  67. 芦田均

    芦田國務大臣 社会党との話合いにおいて、軍事公債の利拂いを停止するということが明白にきまつた結果でありまして、借入金の利拂の問題は、現実の問題としては停止されておらぬ。これではつきりしておると私は思つておるのであります。
  68. 西村久之

    ○西村(久)委員 総理大臣の言われることはわかるのでありますが、この借替をする金の関係が、今後利息をまた負わなければならない。総理大臣は返してしまうので、解消するのだというお話があつたのであります。ところが借替をするということになつてきますと、名前が臨時軍事費借入金でなくなりまして、名前が変つて、何らかの名前の借入金、國家財政資金という名前の借入金になるのじやないか。当然これは臨時軍事費に関係する借入金になつていかなければならぬのであります。これを処理する上について、今後これは臨時軍事費ではあるけれども、政府として元本も利息も返していく方針をとつていくつもりであるというお考えであるかどうかを、お尋ね申し上げておる次第であります。
  69. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの借入金の問題は、西村君の御見解通りだと思います。
  70. 鈴木正文

    鈴木委員長 それではこれで休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  71. 押川定秋

    ○押川委員長代理 休憩前に引続き会議を開きます。原君。
  72. 原健三郎

    ○原(健)委員 総理大臣質問いたさんとするものであります。  第一にお尋ねいたしたいことは、日本に幾多の難問題、重要問題がありますが、それをつき詰めてわれわれが考えてみるときに、これは人口問題に帰すると考えるのであります。人口問題を解決するためにあらざれば、日本のあらゆる問題は解決できない。今日の國内問題といい、あるいはこれを國際問題に拡げていきましても、問題はやはり人口問題に帰着すると私は考えるのであります。それで人口問題は、少くとも決して將來の問題ではなくして、現下の國家の非常に急を要する問題であると私は考えております。この人口問題を解決するにあらざれば、平和國家文化國家もできないと思う。過般日本に來たロツクフエラーの孫にあたる人も、一番先に聽いたことは、日本の人口問題をどういうふうに解決するつもりであるか。これの考えがなければ、あとの凡百の問題は進まぬのではないか。こういう意見を言われまして、われわれも非常に賛成しておるものであります。この問題は現在及び將來に向つて外務大臣も兼ねておられる日本総理大臣は、どうして解決せんとせられるものであるか、このことについて御所見をお伺いいたしたいと考えるものであります。
  73. 芦田均

    芦田國務大臣 人口問題に関する原君の指摘されました点は、まつたくわれわれも同感でありまして、將來のわが國再建前途に横たわつておる最も重要な問題であることにおいて、十分の考慮をめぐらさなければならないと考えております。が同時にまた、これは解決することの一番むずかしい問題であることも、原君が御承知のことと思うのであります。数日前の本委員会においても、この問題が提起せられまして、当時一應政府見解はお答えをいたしたのでありますが、繰返してお答えいたします。ごく大筋を申せば、大体人口問題の專門家の結論としては、わが國の人口増加率は、今後ある一定の期間において停止する。現に満州事変以前から、わが國の人口増加率は、漸次低下いたしておつたのであります。しかし終戰直後における人口動態は、各國を通じて同一の現象を示しておるのでありますが、復員その他の関係上、一時相当急激な増加を示します。ところが事態の安定するとともに、やがてまた十数年前の人口増加の率に還ることは、ほぼ疑いを入れぬのであります。今後二十年前後の年数を経るならば、人口増加の傾向は、漸次停止するということが、專門家の結論のように承知しております。しからばその間において人口問題をどう取扱つていくか。一つには移民の問題であります。この問題は平和條約成立後において、わが國の移民を歓迎する國々との間に交渉を進めていく以外に、さしあたり途はありません。その他の人口増加を抑止する方法は、あるいは産兒制限等の問題もあります。しかしながら、現在政府考えておるところでは、産兒制限の問題は國民の叡知によつて自然に行われるべき方法をとることが一番適切であつて、法的措置をもつて、にわかに産兒制限の手段國民に強制することは困難であります。ただ優生学上の見地から人口増加の抑止を企てることは、おのずから別個の問題であります。してみれば、さしあたつて現在の人口を著しく抑止する方法は見つからない。これに対應する方策としては、できるだけ國内の資源を開発し、あるいは海外貿易によつてわが國の産業を工業化して、労力を金に換える方法を発見していく。問題はきわめて平凡でありますが、さしあたつてこの平凡な解決策以外には新奇な、画期的な、有効な方法は容易に発見できないというのが、今日われわれのもつ考えであります。
  74. 庄司一郎

    庄司(一)委員 議事進行について……。ごらん通りであります。これでもつて審議を継続される御意思でありますか。——今度は野党の質問なるがゆえに、與党三派の諸君が結束して、これは何か故意をもつて御欠席のようにぼくには考えられてならないのであります。政府側も、大藏大臣、あるいは物價改訂に関して安本長官も見えません。與党の諸君には委員長において適当の処置をとられ、暫時休憩あらんことを望みます。
  75. 押川定秋

    ○押川委員長代理 このまま暫時休憩いたします。     午後二時十五分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後二時二十八分開議
  76. 押川定秋

    ○押川委員長代理 再開いたします。
  77. 原健三郎

    ○原(健)委員 今総理のお話を承りまして、人口問題には大体三つ方策がある。一つは産兒制限であり、二つは移民問題であり、三つは日本の國内において、その労力を活用することである、こう承つたのであります。それで移民問題については、講和会議以後、十分研究すべきであるという御説でありますが、これはもちろんわれわれも一應は納得できるのでありますが、講和会議後になつてから、移民問題を云々するのであるならば、これは放つておいてもだれでもやることであります。それなら講和会議の前においては何もやらないとおつしやられるのであるか。講和会議後にするなら、いまさら何も首相の言葉を聽かなくても、だれでもやることでありますが、講和会議前においてこの日本の窮状をもつと訴えて、何らか移民について世界各國の了解を得るような方策は立てられないものであるか。殊に一千万人も戰後帰つてまいりまして、今や日本の國内においては、この人口問題のために四苦八苦しておるということは世界各國も十分了承しているところであります。イギリスにおきましても、最近の報道によると、ボルネオとかニユーギニアに日本人を移住させれば將來有望であろう、こういうような意見を書いております。さすがはイギリス人で、世界の平和を祈念して、國際間の百年の大計を見ておるものであると私は大いに敬意を表しておるのである。アメリカから來た人でも、日本の人口問題を非常に心配しておる。イギリス人も同樣である。こういうようなきわめて同情的な各國があるのであるから、講和会議後においてというようなのんきなことをおつしやらずに、この際日本の窮状をもう少し世界各國に知らしめることが必要ではないか。日本の國内は、平和國家とか文化國家とか大きなことを言つておるが。治安一つさえも維持することができない実情である。この点について総理大臣殊に外務大臣としていかに眞劍にどういうような方途を講ぜられんとしておるか。その抱負経論を拜聽いたしたいのであります。
  78. 芦田均

    芦田國務大臣 原君の御説のごとく講和会議を待たずして移民を送り出すような協定ができるものならば、まことに望ましいことであります。しかし今日の日本はまだ占領治下にあつて、自由に海外諸國と意思を交換して條約等を結ぶことができない立場にあります。從つて公の方面からわが國に対して移民を求めてくるという希望も現在のところではもち得ないのであります。政府は常にこの方面に苦慮いたしておりますが、現実の問題としては、容易に大量移民を海外に送るごとき段階には達し得ない実情にあることを御了承願います。
  79. 原健三郎

    ○原(健)委員 その点は大体了承できるのでありますが、われわれとしては、これは國民運動としても、あるいは海外から來た人々に対する認識においても、政府当局としても、講和会議まで安閑として待たずに、この際できるだけのことは、民間も、國民世論としても、運動としても、われわれはやらなければならないことと痛感いたしております。それで民間と政府と協力してこの問題を私はぜひ眞劍に考えてもらいたいと思う。講和会議が済んでから、のこのこ海外へ出すというのでは間に合わない。私をして言わしむれば、眞に日本再建し、祖國を復興する内閣は、移民問題を解決する内閣でなければならぬと思います。その問題の解決ができないような内閣なら、それは蝸牛角上の爭いをいつまでもやつているようなもので、まつたく八千万の國民から考えれば愚の骨頂であります。現在及び將來に向つて、移民問題を完全に何とかして解決し、外交的手腕をもつてでも、國民運動においても、とにかくいろいろな手段方法をもつて解決する内閣こそ、眞に國を救う内閣であると私は確信している。そういう観点から考えますと、今日のような三党の寄せ木細工で、しかも八十名の第三党の総裁でこの内閣をもつておられるような実情では、この大問題である現在及び將來の國民の最大苦難である移植民問題は、私は解決できないであろうと考えるのであるが、現在の状態において、將來講和会議がいつ開かれるかわからぬから、今のところお茶を濁しておるよりしようがないとおつしやるのならば何をか言わんやでありますが、しからずして、眞に國家百年の計を考え、現在及び將來の切実なる問題を考えるときに、今日のようなきわめて弱体内閣をもつて、この問題を考えたり、研究したり、その方途について何らか歩みよりの、きわめて建設的な方策等々が一体手が打てると考えられるか。御所見を承りたいのであります。
  80. 芦田均

    芦田國務大臣 先ほど申しましたごとく、もしできることならば、今日ただいまからでも、わが國の移民問題の前途相当の解決の途を見出したいと常に念願いたしております。しかしこれにはやはり國際的な環境も十分考慮して行わなければならず、また國際関係によつて双方の希望も達せられない場合もあるということは、外務政務官として原君も十分御経驗のあるところであろうと考えます。
  81. 原健三郎

    ○原(健)委員 その点はよく存じておりますし、この問題を解決するのは、そう一日二日にはできないと思いますが、それにしても、この移植民の問題を解決するために、その前提として、といつては少し語弊がありますが、國民海外に向つて非常に目を向けておつて、自分らの生活を樂にするとか、祖國を再建するとかいうことを考えるには、この國内の問題ではらちがあかぬから、何とかひとつ海外に行くような方途を考えてもらいたいということが、切実なまじめな國民の念願であります。それが講和会議後でなければ何にもやれないという首相の答弁でありますが、それはわれわれも一應諒とするのでありますけれど、この切実なる國民要望にこたえて、急に移植民ができなくても、たとえば旅行を許してもらうとか、あるいは視察をもつと許してもらすとか、あるいは留学をもつと簡單に許してもらすとか、こういうことぐらいは、もう少し話合いができるものではないかと思うのでありますが、さつき鈴木委員からも質問がありましたが、この点について何とか政府は現に手を打つておられるか。その見透しはどうであるか。この辺もお伺いいたしたいと思います。
  82. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまの問題は、先刻鈴木明良君に対する御答弁で大体答えは盡きておると思います。日本政府は、他の國の政府と交渉にはいり得る段階には至つていないのであります。日本に対するすべての指令は、極東委員会がこれを下しておりますが、その極東委員会との間においてさえも、現在の環境においては、日本政府は交渉を行う立場にはなつていないのであります。それからの点について、実際上幾多の困難があるということは、御了解くださることと思います。
  83. 原健三郎

    ○原(健)委員 私は首相のお言葉はよくわかるのでありますが、正式に言うと、講和会議後でなければ談判ができぬとか、話ができぬとかいうことになりますが、ものにはそういう正式の場合もあるし、プライヴエートの場合もあるし、いろいろ実際の衝に当つてみると、やり方によればずいぶん彈力性があるのであります。総理大臣外國におつてよく御承知のごとく、話せば割合によくわかる國民でありまして、たとえ敗戰國であつても、講和会議が結ばれていなくても、十分われわれの苦衷を吐露して話すならば、ある程度こういう方面は、ただちに解決しなくても、解決の糸口ぐらいは、だんだんできてくるであろうと思う。たとえばG・H・Qの要路の大官と外務大臣がそういう方面について十分交渉されることでも、非常に私は効果があると思う。そういうことにまで立ち至つて外務大臣としてやはりこの問題を交渉されたり研究されたりされたことがあるか。される意思があるか。そういうことは全然講和会議後でなければだめだといつて放置されるかどうか。その点もひとつお聽きしたい。
  84. 芦田均

    芦田國務大臣 公式な話合でなくても、いろいろ話合の方法があるということは、おつしやる通りであります。しかしこの公開の席上において、それらの問題をいろいろと報告いたしかねる点もあります。内閣成立以來三箇月でありますが、その期間に從來に比べてはるかに多数の日本人海外に旅行することができる氣運になつたことは、原君もよく御承知通りと思います。その辺の事情は、ここではつきり申し上げかねますが、大体その結果を待つて、御批判を願いたいと思います。
  85. 原健三郎

    ○原(健)委員 政府は大いに努力をしておる、結果も好轉しつつあるという話でありますが、人口問題は移植民だけとか、そういう問題で解決しないことは、総理大臣おつしやられた通りであります。第二番目におつしやられたことは、日本にあり余る労力を活用して、原料、輸入して製品にしてこれを輸出する。さつきの総理大臣の話によると、労力を金にかえて問題を処理しいてく。しかも人口問題の処理とおつしやられたのでありますが、これもわれわれは大いに賛同するところであります。しかしながら、今日の日本の実情からいたしますと、過般來しばしばわれわれ委員質問いたしましたごとく、労働攻勢は相当盛んであります。日本において最も潤沢なものは労働力である。その労働力が必ずしも十分活用されていないということは、理由や原因はいろいろありますが、われわれは認めざるを得ないのであります。たとえば一つの例でありますが、最近のストライキの氣分、サボ的氣分を見ましても、これは労働力が活用されていない証拠であります。原因は多々あります。しかも芦田首相は去年の五月ごろから、社会党片山内閣ができたときから今日に至るまで、しばしば言明されたことは、社会党と連立政権をつくらなければ、社会党が内閣へはいつておるのでなければ、労働攻勢というものを止めることががきない。先から保守党だれの政権は思いもよらぬことである、ぜひ連立政権が望ましい。労働攻勢を止めるためにも望ましいということを、しばしば言明されております。大体民主党の眞意もその辺にあると知るのでありますが、社会党を入れた今日の芦田内閣においても、労働攻勢は少しも衰えておりません。むしろきわめて盛んであります。またきのうも物價問題の発表がありましたが、この予算通り物價がああいうふうになりますと、物價と賃金のズレが現われまして、労働攻勢が頻々として盛んになる、事態は容易でないということは、今日だれが見ても承知のところであるが、これに対して、この方面からも総理大臣は一体どういうふうにこれを解決しようとされるのであるか、所見を承りたいのであります。
  86. 芦田均

    芦田國務大臣 労働攻勢に対してどういう手を打つのかという御質問であつたと思います。われわれの立場は極力爭議行為の起らないように、実質賃金を充実して、生活方面において、現在の状況を少しずつでも改善していく。また労働條件その他についても、わが國情の許す限り、これを改善していきたい。しかしながら、一たび爭議の起つた場合には、労働階級と経営者もしくは雇用者とか、平和的な交渉によつて爭議を解決していく。そういう線を基本にして、もし労働爭議に行過ぎがあつた場合には、その行過ぎた部分に対しては、断固たる処置をとる。大体こういう三段構えで臨む意向で、今日まで労働政策を推進しておるわけであります。
  87. 原健三郎

    ○原(健)委員 実質賃金を充実させるとおつしやるが、それはどういうものによつて充実させようとするのでありますか。われわれも実質賃金を増すことには、決して反対ではないのでありますが、その具体的のことをお聽きしたい。行過ぎがあつたら断固として彈圧するとおつしやるが、その行過ぎとはどの程度が行過ぎであるか、はなはでこの点あいまいであつて、どの程度が行過ぎであるか、行過ぎでないかということは、非常に問題はデリケートであります、その点をもう少しわかるように御説明を願いたい。
  88. 芦田均

    芦田國務大臣 実質賃金を増加するということは、結局配給ルートにできるだけの品物を乘せて配給するという意味であります。たとえば主食の配給をできるだけ早く増加する。あるいは纖維の配給を急速に実行する。その他日用必需品の正規ルートに乘つた配給を、できるだけ量を殖やすという意味であります。それから行過ぎというのはわからないというお話でありましたが、それは労働運動が正当なる範囲を越えて法規に反する場合を指すのであります。普通に行過ぎという言葉は、大体常識上用いられておる言葉であります。そういう意味に御解釈を願います。
  89. 原健三郎

    ○原(健)委員 日常生活品の配給を円滑にする、配給をよくするというのでありますが、配給をスムースにするという点は、よくわかるのでありますが、労働者だれに特別の実質賃金を集中するという意味にさつき申されたと解するのでありますが、労働者だけに特別な実質賃金を充実して、一般の八千万國民生活と同じような配給をスムースにするということでは、何ら実質賃金を労働者に充実するということにはならない。いかに労働者の配給を充実させるのか。どういう品物をどれくらい配給しようと思つておられるのか。その点をお伺いしたいのであります。
  90. 芦田均

    芦田國務大臣 今日までも、その施策はしばしば行われておるのでありまして、たとえば労務加配米の問題は、労働者に限つた問題であります。あるいは炭坑その他の重要産業において、地下たびであるとか、纖維類というものを特に増配しております。また遠からず、勤労者階級に対して相当まとまつた纖維の配給を行い得る見透しをもつておるのでありまして、從來の勤労階級に対する配給を、この際さらに充実していきたい方針であります。
  91. 原健三郎

    ○原(健)委員 はなはだ快報であります。一般労働者に対して纖維類を相当まとまつた量配給するとおつとやるのでありますが、それはどのくらいの量で、いつごろやるか、これは國民に対しても非常に結構なことであると思いますが、いつごろどのくらいやられるか、お聽きしておいたら非常に参考になると思います。
  92. 芦田均

    芦田國務大臣 その数量は目下交渉中の案件でありますから、ごく近い將來に発表るすことができると思います。
  93. 原健三郎

    ○原(健)委員 その労働力を強化して、いわゆる日本の人口問題を解決したいという説には、われわれも賛成でありますが、今総理大臣から話を聽きましても、どうも実質賃金を充実すると言いましても、どの程度であるかはつきりわからない。また労働爭議が行過ぎになる、それは常識でわかるというが、その常識が今日の労働爭議のようなデリケートなものでは、どこが行過ぎであるか、行過ぎでないかということは労働者、資本家、経営者の立場によつても違うし、社会通念をもつてしても、はなはだわかりにくいものがあることは、言うまでもないのであります。総理は一方的にわかるかもしれないが、多数の國民にはわからない。私が考えるのに、こういう日本のような敗戰國の実情において、われわれの祖國を再建するには、やはりこの労働力を非常に活用する、正しき意味において活用することであると考える。それでアメリカのようなこういう強大な富強國においても、今日非國民排除法というのがあります。非國民であるとか、惡徳の役人などを官廳から追い出す、というと語弊がありますが、こういうような非國民排除法というのがあつて日本のように官吏が腐敗し、サボをやつて過剩入口に悩んでおる。こういうような日本の実情に即してみると、非國民排除法というようなものは日本も学んで参考になると思う。この通りつてよいかわるいかは考えものでありますが、こういうような種類のものを考える必要があると思うが、総理大臣はどういうふうにお考えになるか、お聽きいたしてみたいと思います。
  94. 芦田均

    芦田國務大臣 この問題は本会議においてもお答えしたことがありますが、政府においては、目下それらの点について、十分研究をいたしております。
  95. 原健三郎

    ○原(健)委員 次に私の非常に痛心しておる問題は、出征遺家族の問題であります。大東亞戰爭において、戰病死したものは大体五十万くらい、傷ついたり、病氣になつたり、いわゆる傷病者というものが六百万以上だと私は考えます。これらの方たちに対しては、もちろん連合國からのデイレクテイヴなんかもありまして、恩給は昭和二十一年の勅令によつて廃止されております。しかし癈疾の程度のはなはだしいものについては、増加恩給及び傷病賜金のみが、例外的に認められておるようであります。たとえば両眼失明のような場合のもとの兵には、年額六百四十円が支給されております。現在國立病院におる者は、失明者だとか、脚を切断された者とか、非常な重症患者がわずか五千二百人おるそうです。大多数の人々は、自分の費用でもつて、自分の家でその失明を治したり、脚を治したり、困苦欠乏に耐えて、いわゆる悲惨なる生活をやつております。今日においては、これらの人々を大体において生活保護法一本槍で救助することになつておりますが、生活保護法によりますと、昭和二十三年一月末現在で、一人当り平均わずか二百七十円であります。この家族を含わせますと、何百万あるいは一千万に上るかもしれないような人々が、今日のインフレ下に生活に悩み拔いております。しかもこのごろ遺骨を迎えに行つたときに政府から支給される金は、わずか五百八十円であります。それで追い放しであります。しかるに鉄道事故で機関士が死んだ場合においては、今日十万円の金をもらいます。高松の炭鉱で調べてみますと、高松の炭鉱において死んだ場合には九万円もらつております。しかるに遺骨を迎えに行つた場合には五百八十円よりもらえないのであります。どう考えても、はなはだその均衡を欠いております。しかも連合軍なんかの意向も私は承知しておりますが、職業軍人であるとか、あるいは軍閥であるとか、そういうものに対しては、恩給を支給しないことはあたりまえであり、それに対して懲罰を加えることは当然であります。しかしながら、一般の出征兵士の戰死者とか傷病者に対して、生活保護法で一緒に救助して、一人当り平均わずか二百七十円よりやつていない。そういうようなみじめなことで、どうして祖國の再建ができるか、もつと言うなら、そういうことで平和國家建設ができるか。御承知のように一般出征者及びその家族は、何ら他國を侵すとか、軍國主義的な強烈な意図があつたのではない。あつたのは軍閥であり職業軍人であることは、世界各國認めておる。もちろん連合國の許可がないからやれないと言われれば、それまででありますが、移民問題のときもそうであるが、そういうようなことを言つておる限りにおいては、いつまで経つて日本は自力をもつて國再建はできない。アメリカやイギリスの例を見ましても、出征兵士あるいはその戰病死者の遺族に対しては、相当な手当をやつておる。これは当然である。しかるに戰爭に負けたからといつて、こういう罪も何もない者に対して、何ゆえこれほど悲惨な生活をやらさなければならぬのか、何らの援助もやらないのか。こういうようなことをやる限りにおいては、むしろ反対に出征兵士の遺家族あるいは傷病者などは、きわめて國家に対する反感をもち、政治に対して反感をもち、もしそれを強化するなら、連合軍に対しても反感をもつ、そういうような結果になつたら、決して日本の平和國家は完成されない。これは連合國の人たちも、十分話すならよくわかつてくれると思う。いわんや日本政府においては、連合國がそう言うから何らやれない、軍國主義を排除するためだから、どうしても出征兵士も一緒に辛抱してもらうとか、おざなりなでたらめなことばかり言つて、臭いものに蓋をするというようなことでやつておつたならば、はの反撥反感というものは、五年さきか、十年さきか、二十年さきか知らないが、必ず起つてくると思う。これは恐るべきことである。そういうことをもつてしては、眞に民主主義平和國家はできない。私はこれを深く考えるものでありまして、願わくば総理大臣の、これらの何百万か一死者の遺族並びに傷病者等が納得のいくようなひとつお言葉を聽きたいのであります。
  96. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまお話になりました戰傷の復員者あるいは戰歿者の家族、一口に申せば、戰爭犠牲として最も直接に被害を受けた人々に対してて、國家が何らかこれを救援する途を講じなければならないという御意見は、私も同感であります。過去三箇年の経驗に省みても、私が直接これらの問題を取扱つたときもありますから、諸般情勢は多少心得ておるのであります。遺憾ながら、いろいろの制約によつて、現在のところ政府生活保護法の適用以外にこれらを救済する途がないという立場にあがら、原君のごとき御意見國会の法律として通るならば、政府の案以上の給與を出すこともできるのであります。それに対應する財源を見つけ得るならば、予算を御希望の通りに修正できるのであります。必ずしも政府でなければできないという仕事ではない。國会の御意向によつて、りつぱに法律による規定ができ得るのでありますから、政府としても、そういう法律ができて、これが完全に実行せられるならば、私どもは予算の修正を認めることにやぶさかではありません。
  97. 原健三郎

    ○原(健)委員 まことに結構な答弁でありまして、われわれ委員としても、その点をとくと考慮し、政府も考慮されて、その方面の何百万の人たちに、救済の手を伸べたいと決意するのであります。  次に在外同胞の引揚げの問題でありますが、私どもは終戰以來中國とか、南方方面からの引揚げは大体完了したと聞きまして、これは感謝いたしております。しかるにソ連におる同胞は、去年の夏ごろ聞いたり、あるいは暮に聞いたり、今年の初めに聞いておりますと、毎月引揚げがありますので、だんだん数が減つていくように承知いたしておつたのでありますが、最近になつて聽いてみますと、まだ六十万とか六十五万あるという話である。去年の夏ごろの予定でいくと、もつと早く数が減つていくはずである。それが六十万も六十五万もあるという話であるが、少くともソ連に関する限り、どれほど在外同胞がいるのか、ときどき数字が狂つてはつきりしない。一体どれほど同胞がおられるのであるか。正確に近い数字をお聞きいたしたいのであります。
  98. 芦田均

    芦田國務大臣 不幸にして、ソ連地区に残留しておるわれわれの同胞の数字を調査する方法がないのであります。政府といたしましては、一應の推定に基いて、およそこれくらいと言つているにすぎないのであります。これは引揚げた同胞等より得た数字基礎にして、推定したにすぎません。今日までのところ、これを正確に調査する方法がないわけであります。
  99. 原健三郎

    ○原(健)委員 この間引揚げてきた人に聽いて見ると、その引揚船には、まだ人が九百人も乘れるほどすいておつた。それに引揚げてくる者が乘れない。いろいろの故障があつて、どうも思うように引揚げが完了しない。去年の考えでは、去年一ぱいに引揚げを完了したい、冬になると凍死するから引揚げを完了してくれということで、朝野の人が一生懸命になつておつた年になると、また今年一ぱいに引揚げを完了したい、冬を越えると凍死するからという。來年になると、また來年一ぱいということになるので、どうもはなはだらちが明かない。これはどういうわけで、これほどらちが明かないのであるか。一般の遺家族の人も非常に心配しておると思う。いつごろ引揚げが完了するのか。なぜ引揚げがこれほど遅れているのであるか。現在及び將來の見透し等について、國民が心配しておるから、この点はひとつとくと國民納得のいくように、詳しく説明していただきたいのであります。
  100. 芦田均

    芦田國務大臣 ソ連地区の同胞引揚げの促進については、主として連合軍司令部において盡力されておるのであります。わが政府はこの問題について、直接ソ連と交渉する自由を與えられておりません。從つて引揚げの促進について、司令部にいろいろ懇願をいたした結果、現に昨年のごときは、対日理事会において、御承知のごとき論戰も繰返された。いかに連合軍司令部が同胞引揚促進に対して、熱意をもつて今日まで事に当つてきたかということは、國民ひとしく承知しておるところであります。しかしながら、問題が相手のあることであります。必ずしも日本政府の希望通りに行われない点もあり、必ずしも連合軍司令部計画通りに進まない点もあります。ただいまお話があつた滿船にならずに、何百人何千人という空席のまま船が帰つてくるといつたことも、原因ははつきりわかりません。日本の船の責任でないことだけは、はつきり申し上げておきます。そういう困難な間にあつて、この問題を推進いたしておるのでありますから、待ちわびている家族の方々の胸中は、よくわかつておりますが、不幸にして、この問題は、日本政府の單独の意思によつては、いかんともいたしがたい環境にあるとお答えいたすほかないのであります。
  101. 原健三郎

    ○原(健)委員 引揚げがいつ完了するか、その見透しをお聽きいたしたいのであります。
  102. 芦田均

    芦田國務大臣 五月に始まつて以後、大体五万近く帰つております。これは御承知通り、一昨年の十二月の協定に基く数字であります。現在、樺太を含めてソ連地区に正確にいくらいるかということはわかりませんが、まだ最小限五十万人ぐらい残つているのではないかと思います。そうすると、今後かりに現状のまま五万人ずつ引揚げをするとすれば、まだ十箇月以上を必要とするのではないか、こういうように推算されるわけであります。
  103. 原健三郎

    ○原(健)委員 十箇月かかるといたしますと、來年の四月までかかる。そうすると、またこれは冬を越して相当の死亡者が出ます。はなはだ嘆かわしいことで、これも日本政府の力においては、いかんともいたしがたいと言えばそれまででありますが、そこをとくとひとつ外務大臣総理大臣として、またもう一冬を越さねば同胞が帰つてこないということでは、はなはだどうも申しわけないことで、もう少し早く、少くとも冬になる以前において引揚げが完了するように、盡力いたしていただきたいと思うが、総理大臣の決意を承りたいのであります。
  104. 芦田均

    芦田國務大臣 できるだけ努力いたすつもりであります。
  105. 原健三郎

    ○原(健)委員 私は持時間もなくなりましたので、簡單にもう一つ承りたいのでありますが、終戰処理費の問題であります。大体予算の四分の一に当つておる莫大な費用であります。八千万の日本國民は、残りの四分の三でやつていかなければならぬ。今日の國民生活がいかに苦しいものであるかということは、これは連合國、世界各國の人々がみな御承知通りであります。戰爭に敗けたから、いくら苦しくても構わない、どうなつても構わないというのならば、何をか言わんやでありますが、しからざる限りにおいては、さつきもるる申しましたが、苦難の道であります。そうして今日苦しい中の予算の四分の一くらいが終戰処理費に使われておる。しかもそれはごく少数の人々によつて使われておるということは、言うまでもない。しかもG・H・Qの意向としても、あるいはアメリカ政府当局の意向としても、日本における進駐軍の費用は、今後なるべく軽減いたしたいという声明を発表されております。でありますから、向うのこういう意向もあるのであるから、しかも日本は非常に苦しい中でありますから、この際ひとつ終戰処理費について、たとい五分でも一割でも、われわれの俗な言葉で言うならば負けてもらうというか、安くしてもらうというようなことは、一体できないものであるか、できるものであるか。たとえば同じことをするにしても、もつと使用人の能率をあげさすとか、あるいはむだを省くとか、ちよつと考えていただくだけでも、われわれの素人算用でも、五分とか一割ぐらいの費用は浮くのではないかとも考えられるのであります。費用を減らしてくれと言わなくても、そういう点をちよつと氣をつけていただくだけでも減るのではないかと考える次第であります。それと同時に、他面國民の苦痛を考えると、この点については、戰爭に敗けたのだから、さつきからるる首相が申されるように、いかんともしかたがないということを言われるが、そういうことをおつしやられるならば、私をして言わしめるならば、日本内閣なんか何のために必要かと言わざるを得ないのであります。でありますから、この点についても、たとえば——これはたとえばでありますから、そのつもりで聽いていただきたい。たとえば、最高司令官のマツカーサー元帥に、外務大臣であり総理大臣である芦田首相が、早速日本國民の苦しい実情、予算の実情等々を卒直に話されるだけでも、非常に効果があると思う。あるいは終戰処理費の中で、たとえ一分でも二分でも三分でも引いてもらえば、國民は非常な助かりである。この点について、総理の決意をひとつ披瀝していただきたいのでありますが、いかがでありますか。
  106. 芦田均

    芦田國務大臣 終戰処理費については、予算編成当時から、いろいろ経緯がありまして、連合軍当局は、極力終戰以後における経費節約に努力しておられる幾多の事実を承知いたしております。また政府側としても、最も終戰処理費の多数を消費しておる特別調達廳において、最近に至るまで非常な節約を重ねてきております。その努力もわれわれはよく承知いたしておるのでありますが、しかしこれ以上終戰処理費を減額することの困難であることは、先方においても詳細にこれを述べておるのであります。現に今朝與党相当有力な代表の人々が、司令部に参つた際にも、この点については種々事情を聽いて帰つておるのであります。今日の実情からして、現在予算に提出しておる終戰処理費を、この上減額することは、政府の立場からしては、非常に困難であると考えております。
  107. 原健三郎

    ○原(健)委員 政府の立場からすると、その問題は決して簡單な問題でないことは、よく承知するのであります。しかしながら、その困難なことまでも押し切つて、この終戰処理費について考慮を拂つてもらうように、たとえばマツカーサー元帥に親しく総理大臣意見を開陳されるなり、マツカーサー元帥でなくても、そのような高官に対して意見を述べるようなお考えはありませんか。
  108. 芦田均

    芦田國務大臣 政府としては、すでにできるだけの努力はしております。しかしなお自由党において、総裁なり幹部の方々がマツカーサー元帥その他に御努力を願つて、そういうことができれば、私ども非常に結構だと思います。
  109. 稻村順三

    ○稻村委員長代理 原君に御相談しますが、まだ長いですか。
  110. 原健三郎

    ○原(健)委員 もう一分間……。大分時間の催促がありますので、簡單にいたしたいと思つておりますが、最後にぜひお聽きいたしたいことは、われわれはどうも予算審議いたしておりましても、この八十名内外の第三党の総裁が総理大臣になつておられるので、しかも三党間のいざこざもあつて、なかなかどうも政府も難航を続けておるということは、國民もみなよく承知いたしております。政府も御承知通りであります。この予算を通しても、政府がこれを実行できるのかできないのか、はなはだおぼつかない。それで総理大臣にお伺いいたしたいのであるが、西尾さんの問題で、おとといでしたか、法務廳総裁も、西尾氏を起訴しようと思つておるが、その時期については、重大であるから今考慮しておるが、起訴する考えであるというふうに言明されておるのである。しかもまた佐世保問題をめぐつて、北村大藏大臣の身辺もいろいろうわさされておる等々、閣僚の内部においても、非常に重大な決意をしなければならぬような羽目に陷つてきております。こういうことで、三党の寄木細工は、はなはだ弱体化しておることは皆認めておるところである。この際、首相はきのうあたりから、しばしばいろいろな人が聽いておるので、それに答弁した通りとおつしやるかもしれないが、今日の段階においては、きのうときようとでは話が違うし、あすになればまた話が違うのであつて内閣の運命は風前のともし火でありますから、たびたび聽きますが、事ここに及んでは西尾君の起訴は免れない、政府は一体この後始末をどういうふうにされようとするのであるか。このことをひとつお聽きしたいのであります。
  111. 芦田均

    芦田國務大臣 西尾君の後始末をどうするかという御質問でありますが、まだどうにもなつてはおりませんから、後始末をする必要はないと心得ております。
  112. 原健三郎

    ○原(健)委員 なることにきまつておるから、今からとくと御考慮願いたい。苫米地官房長官もこの間新聞に、事めんどうになれば、すぐ解散をやりたいと発表しております。総理大臣も、きのうあたりまでは、どうも解散はその時にならなければいかぬと言つておりますが、今でもそう考えておるか、解散をやつて國民に問うがいいと考えておるか。依然としてきのうの通りであるかどうか。その点をお伺いしたいのであります。
  113. 芦田均

    芦田國務大臣 昨日の通りであります。
  114. 原健三郎

    ○原(健)委員 去る十五日、太陽会の諸君と首相が会合されたときに、保守合同には賛成だが、その時期は予算通過後でなければ言えぬということを言明されておりますが、これはどういうことであるか、われわれは理解に苦しむのである。これをひとつ弁明していただきたいのであります。
  115. 芦田均

    芦田國務大臣 太陽会の方が見えたときの話は、だれにも言わないはずでありますから、それが原君の耳にはいつておるはずはありません。
  116. 原健三郎

    ○原(健)委員 言わないと約束されたそうでありますが、あなたの約束した人は、どうもはなはだ信義のない人間と思います。漏らしておる。おせつかいではない。この問題に関連して政局の動向がきまります。この重大問題を放つておいて、予算数字だけをいじくりまわしても、はなはだわれわれの任務を盡すことができない。そこでもう一度お聽きしたいのですが、首相は、かくのごとく與党と野党との差が少く、相伯仲して、いつ内閣がどうなるかわからぬというような今日、このまま押し切るつもりであるか。そろそろ考え直すときではないか。あるいは解散をやるか。この点をもう一度はつきりしていただきたいのであります。
  117. 芦田均

    芦田國務大臣 先日來この席で申し述べた通りであります。
  118. 稻村順三

    ○稻村委員長代理 原君御相談ですが、もう大分時間が超過しておるようですが……。次に磯崎貞序君。
  119. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 私が第一に御質疑申し上げたいと思いました問題が、はからずも同僚原君から御質問がありまして、総理の御答弁を得たのであります。すなわち、先般もお尋ねいたしましたごとくに、外地におりまする同胞の未帰還者が相当数ございます。たまたま春季に相なりまして、続々と引揚者の列車を見るにつれまして、その沿線におりまする自分の夫あるいは子供を送つておる遺家族の心境は、切々たるものがございます。実は三、四日前に大勢それらの関係者が私の方へ参りまして、わが夫わが子の帰るのはいつごろであろうかということを、切々の思いをして問い質されたのでございます。実はさきの機会におきましても、総理大臣より御明瞭なるところの御答弁があつたのでありますが、しかし、当時七十万ありましたソ連管内の同胞が未だ大した変動はないような計数になつておるということにつきましては、まことに意外千万でございます。もちろん先ほど述べられましたごとく、あらゆる力を盡してこれに対するお骨折りを願つておることは、想像にかたくないのでありますが、この問題につきまして、原君の申しましたごとく、郷里におられます遺族のために、たまたま台閣の首脳の地位に立つておられる総理は、特に力を大にしてお力添えを願いたいということを申し添えまして、原氏の質疑と関連しておりますから、私は自分の意見だけを申し上げておきます。  次に、現内閣の大きなスローガンである外資導入の問題ときわめて不可分の関係に置かれておる問題は申すまでもなく外客招致の問題でございます。外客招致の問題につきましては、いまさら事新しく申し上げるまでもなく、戰爭前におきましても、この問題は歴代の内閣が力を盡し、いろいろ骨を折つて、わが日本における國際貸借における大きな寄與をしたことは、御承知通りでございますが、特に現内閣といたしまして、敗戰後における日本の形からしまして、特にこの方面につきましては、大きな御構想があるであろうことを信じておりますが、この席上においてその御構想を明瞭にお示し願いたい。
  120. 芦田均

    芦田國務大臣 この問題につきましては、先般予算に伴う財政質問が本会議で行われたときに、國民協同党の代表の方に、詳細に説明をいたした通りでありまして、特に附け加えてお答えする必要もないと思う程度に説明をいたしたはずであります。さしあたつて政府は、観光事業審議会と称する民間人の委員を依嘱いたしまして、わが國観光事業に対する根本的な方針、及び速急に着手すべき事業、これに必要とする機関及び経費等、各般の問題に対して答申を求め、これに基いて具体的な観光事業の完成を期したい。かように考えまして、その委員会に必要とする政令もすでに閣議を通つたのでありますが、諸般関係上、まだこれを公表するまでに至つておりません。ごく近い機会に観光事業審議会を設立いたしまして、將來における観光事業の根本方策を定めたい、かように考えております。
  121. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 ただいまの御答弁を得たのでありますが、はからずも重ねて御答弁を願つたような形になりましたが、ちようど私病氣のために欠席しましたその間の事柄と心得えております。御承知通りに、いわゆる外客を招致しまするについて、現在の態勢は実になつておらぬという極言を申し上げる程度にある。道路を見ましても、あるいは運輸関係を見ましても、あるいは國立公園の形態を見ましても、旅館や娯樂や、これに附随するあらゆるものが非常に不備であります。しかもただいま提出されておる予算案そのものとにらみ合わせましても、ほとんどささたるこれらの経費では、これらの態勢を整えるには、あまりに縁遠い。先般來いろいろ声を大にして迎せられる当局としては、特にこの方面に力を投じて御努力を煩わしたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、これは本來は農林大臣にお尋ね申し上げるのが、ほんとうとは存じますが、しかしその事の重大性からいたしまして、ぜひ総理のお言葉を拜承した方がよろしいという観点に立つて、御質疑を申し上げるのであります。先般來芦田内閣ができまして、ややゆとりを得られました際に、大勢で各方面へ閣僚の方々が御出張になり、いろいろ國民の前に御演説等がありました際に、たまたま事が食糧問題に相なり、当時総理大臣のお言葉からしまして、わが國の当面しておる食糧問題は、実に新しき段階にはいり、前途に明朗性を帶びるおるという、國民から見ますと、きわめて心強い御演説等があつたのであります。ところで、このお話は、組閣されまして間もなく、おそらく從來の内閣で最も手を燒いておりました供出の難事業が、案外早く予想以上に達成されたというところに、大きな勢を得てお話になつたものと思われます。かりに三千五十五万石以上の供出があつたとしまして、それは確かに明朗性の一つではありますが、しかしその主要食糧以外に、甘藷とか、馬鈴薯とか、あるいは外國からくる食糧というようなものを、今相当な日数を経て現段階において檢討しますと、なかなか当時お話になりましたようなことでなく、むしろ國民相当な暗影をもつて考えております。むろん遅配、欠配等はないと御宣言になつたのでありますが、すでにその方も始まつておる。現に新しい食糧の基礎條件でありますところの馬鈴薯につきまして、本年は、特にたくさんできまする目当の土地に、やはり相当な病気が発生しております。ベト病とかその他いろいろな陽氣に伴う病氣によつて相当減收するのじやないかということを現実の問題として、農家の方方は憂えております。この問題に対しては、相当な供出の補正が行われるであろうという憂慮すべき一つの兆候も起つております。あるいは大小麦につきましても、いろいろ政府で机の上では千七、八百万石とれるというような計数もお定めになつておるようでありますが、本年の天候、あるいは現在の実態はなかなか思う通りにまいつておりません。一歩は一歩よりその計数が下まわつておるというようなことで、これも相当な補正要請が地方からまいるであろうというような情勢であります。特に日本の食糧として、米や麦ももちろん必要でありますけれども、根本的な日本の食糧問題の解決の鍵は、何といつても甘藷であると、私は考えておる。これは今の段階のごとく、肥料やその他の配給等が薄うございましても、そのとき勝負で割合にとれる。また割合に收穫の余地がある作物である。甘藷と馬鈴薯の二つは、これは確かに現在の收量に少し努力をいたしますと、倍とか倍以上の増收が見込まれる。しかしすでにその一つの馬鈴薯は減收の状態になつておる。あとの甘藷につきましても、現在の形では、早掘り甘藷については、現在の情勢として、この天候で相当心配しております。かくのごとくいたしまして、一昨年は十余万貫とれました甘藷が、本來努力をすれば五割、倍額はとれる可能性の作物であると思う。これが逆に見込まなければならぬ情勢にさえ報道されておる。こうした事態は、未知数の問題でございますが、日本の米穀事情を全國へ御出張になつて声高らかに御演設なさいますには、まだ危險のある御宣言だとしか申し上げなれない。殊に米の問題ですが、早場米等は相当御期待もあられましようが、未完成の築堤の関係、用排水の関係等、こうした形に放擲せられますならば、おそらく本年の日本食糧の主食である米の問題も、必ずしも樂観を得ることはできない。こういうふうに七月を向える現段階において、きわめて憂慮すべき形でございます。ましていわんや、外國から船でくる品物は、一隻ごとにいろいろ電報が來ておりますが、これは來てみなければ、はつきり計数に載らぬ未知数のものでありますから、なかなか食糧問題に関する限り、憂慮すべき情勢でございます。この食糧に対しての配給量、おそらくこの問題につきましては、去る三月ごろでございましたか、ソの当時力強くお話になりましたが、そのときとやはり同じように、食糧配給についての安心感をもたせることについて、総理大臣のお話を承りたいと思います。
  122. 芦田均

    芦田國務大臣 磯崎君よりいろいろ詳細な説明をつけての御意見がありました。なるほど磯崎君の御説の通り、わが國の食糧は、米にしても甘薯にしても、あるいは馬鈴藷にしても、天候によつて左右されることが非常に多いのであります。正確なことを言えば、現実に收穫を手に入れたときでなければ、食糧問題は大丈夫だという意見は出せないのがほんとうだと思います。しかしながら、大体災害の大きなものは、そう毎年出てくるものではない。從つてわれわれの人生に関する経驗に鑑みて、大筋をつかんで、食糧事情前途こういうふうであろうという推定を下すことは、常識として許されておることだろうと思う。現に今朝の新聞等において、現地に完全な調査機関をもつておる連合軍司令部発表しておる意見にみましても、大体そういう点を大づかみにして意見を立てておるのであります。その間に不慮の天災があれば、むろんこれは請合うことはできません。しかし大体の見透しとしては、今年の端境期における食糧の不足量は比較的少量であります。殊に早場米のごときも、今年は百二十万石ぐらいしか見込んでいないのであります。これらの状況から考えて、今朝新聞に出ておる連合軍司令部意見としては、來るべき收穫期に至れば、実質的に現在よりもカロリーが増加する見込みがあると附加えて発表しておるのは、おそらくそういう見地から出ておることと考えます、磯崎君の御意見もさることながら、政府としては、大体今申したような見透しをもつて、食糧問題に対処しておると御了承を願います。
  123. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 ただいま御答弁がございましたが、これは現在政府予算によつて行われんとするところの形では、どうも心細い感じがいたします。現にそのときどきの陽氣ということもございますが、神奈川縣あるいは靜岡縣という方面におきましては、これが災害の放擲の結果、すでに築堤が相当破壊されまして、田植も相当困難であります。あるいは早く植えた方の水田は流失したというような悲報さえ、各地からございますような現在の情勢でございます。ただ手を拱いて、いわゆる行きあたりばつたりの政策では、まことに遺憾でございますが、現在私どもの手にしておるこの程度の予算では、しかも今日のときに相なつたのでは、なかなか万々一の災害には容易なことではない事態がくるのではないか。現に起りつつあるということから、憂慮の余り申し上げた次第でございます。一つその点について御力添え願いたい。なおこの予算については、相当意見をもつておることを附け加えておきます。  次に簡單にイエスか、ノーかをお尋ね申し上げます。現に私どもが手にしております予算は、今までの予算としては、日本始まつて以來の大きな厖大予算である。これは來る六月の末までに愼重審議するということには、なかなか困難性が伴つております。掘り下げて檢討すればなるほど、この予算には相当な私どもの意見を申し上げなければならぬということも包藏されておる。そこで日は刻々と迫りますが、どうしてもこの場合われわれとしても、新しい月に対しますところの暫定予算ということは、今日の段階では一つ考えおきを願うことが必要ではないか。この問題について、総理大臣として、七月暫定予算に対する御用意があるかどうかということをお伺いしたい。
  124. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま七月の暫定予算を提出する意向はもつておりません。
  125. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 七月暫定予算の御用意はもつていないという心強いところの御信念で、当予算をわれわれに提示しておいでになりますが、しかしただいま申しますように、この予算はなかなか簡單にはうのみはできません。それは國民のためにどうしても愼重審議をして、そうして計数の上から縦横に檢討しなければならぬという問題でございます。ただいま申しますようなことだけは、十日もございませんような際、当然考えられることは、そこにいわゆる月内審議の不可能な問題がはつきり予想されるのでありますが、こうした場合に当面しまして、その間においてどういうふうにこの間を処理されるのでありますか。
  126. 芦田均

    芦田國務大臣 國会において本月末までに、ぜひこの審議を終了せられんことを期待いたしておるわけであります。
  127. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 実は予算審議ということは、まことに重大な問題でございますから、再三再四会期の延長ということが本問題を中心に行われたのでございます。  來る三十日というのは、おそらく最後の土壇場までにおいての最大限の延期であるというふうに心得ております。從いまして、万々一その間にいわゆる予算審議が遂行できなかつたということを憂うるから、私はその問題を申し上げたのであります。この問題はまず総理大臣の強い御意思ということも拜聽して、私の方ではどうしてもその日限では困難であるという意見をもつておりますから、そのときにあたつてこの問題を解決します。  次にこの予算を見ますと四千億でございますが、これはかつて相当な間同僚からいろいろな御質疑等があつたのでございますが、どう見ましても、現在の予算は、歳出においてはどうも見積りが過小のようであり、歳入におきましては、過大な見積りのように、私は直感するのでございます。また今までの形からしまして、二十一年度の予算が、やはり最初かりに五百六十億であつたものが、追加が再三出まして、倍額に近い予算になりました。あるいは昨年の予算におきましてもその通りに、当初予算と最後の予算が倍額になつたというような実体になつております。現在手にしております國の四千億に近い予算というものは、過去における形や現在におけるところのいわゆる常識から言いまして、しかも物價や賃金やいろいろな面から起るであろうところの予想せざる追加要請が必至であるという信念からいたしまして、どうもこの予算は、追加がまた來るのではないかと想像せざるを得ないのであります。これに対しましては、先般大藏大臣が同僚質疑に対しまして、絶対に追加の予算は出さない。たまたま多少あつたとしましても、それは予備金において遂行するという力強い御明言があつたのでございますが、この際におきまして、総理大臣も大藏大臣とひとしいお氣持であられるか、ちよつと伺つておきたいと思います。
  128. 芦田均

    芦田國務大臣 この予算物價改訂並びに給與水準の引上げによる各般の影響を十分研究してつくつた予算でありまして、今後この予算に対してさらに追加予算を必要とするごとき事態は起らないと考えております。
  129. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 先の大藏大臣の御回答とひとしい御回答でございます。もちろん予算を編成なさるには、そのくらいの御決心でなければならないと思いますが、これもさつき申しました通りに、現在におけるところの予算の解剖をしました場合に、あるいは過去においても二年、三年の日本財政が、いつも当初予算に倍加するような結果を見ておるような形及び昨日御発表になりました物價改訂と、あるいは当然第二の攻勢が起るであろうところの賃金ベース問題等によつて、好むと好まざるとにかかわらず、この更生予算、いわゆる追加予算というものが組まれるであろうことは、私は信じて疑わない。これは総理大臣と私の意見の相違で、そのときにおいて解決するものと思いますが、私はさように考えるのであります。  次にお尋ねいたしまするが、この予算案に対しまして、たとえば歳出において見ましても、六・三制の問題だとか、あるいは災害の復旧の問題、あるいはただいま申し上げましたようなまず必至であろうところの賃金の問題、物價改訂の問題、それに伴うやみ價格の上昇、それに伴う物件費、人件費の増高、こうしたものが、当然あるいは歳出のうちにおきましても、あるいは総理大臣のお力添えで終戰処理費のごとき厖大なものは、ときにあるいはこれに節約を何とか願うべき余地があるのではないかというようなものもございます。そうしたものも当つてみなければわからぬ問題でありますが、そうした異動を生ずる項目も相当ございます。あるいは歳入におきましても、ただいま申い上げました通りに、いわゆる新しい取引高税、こうしたものは、日本全國各方面からの世論として反対意見が出ております。こうした問題は、大衆課税として、当然私どもは撤回せらるべきものではないかというふうにさえ考えておるのであります。あるいは特別経済におけるところの交通費、あるいは通信運搬というようなものの破格な増強、あるいは万般の飛躍的な課税の過大な増徴案が出ております。こういう問題を手にいたしますと、必然的に私どもはどうしてもうのみにいたすことは困難であります。國民の世論をもつてこれにこたえなければならぬ。そういう場合に、当然起ります問題は、政府予算案にいろいろの費目については修正を申し上げるときが來るであろうというふうに考えておりますが、修正等に対して、政府はこれに應ずる御用意があるか、これをひとつ総理大臣から伺いたい。
  130. 芦田均

    芦田國務大臣 政府は常に國会をもつて國家の最高機関と考えておりますから、國会多数の御意向による決定には極力副う決心を持つております。
  131. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 私はいわゆる三派連立内閣を主宰なされるところの総理大臣の御苦心は、実際推察にあまりあるものであると考えております。特に三派のうちにおいてさえ、この審議半ばにまで進行しておりまする際にあたつて予算案にいろいろの御意見等を漏れ伺うのでございます。かくのごとき形に相なつておりますることは、國会議員がこれを適当に修正する場合には云々というような、なかなか胃のふの御丈夫なようなお言葉を伺つたのでございますが、殊に野党から修正をせられることは、かつてはあつた場合もございましようが、與党からそうしたことがもしありとした場合において、総理大臣はこの問題はどういうふうにお取扱をなされるか、その点御答弁を願いたたいと思います。
  132. 芦田均

    芦田國務大臣 國会多数の御意向であれば、野党、與党合同の御意見であつても、謹んでこれに從うつもりであります。
  133. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 どうもただいまのお話では、なかなか御健康な胃のふの一端をお漏らしになつているように想像いたしております。おそらくこれは國民的な要請として、この四千億円足らずの厖大なる予算は、無事にこのまま通過を見ることになるとは思えない。從いまして、この問題につきまして、むろんわれわれに用意がありまするが、ただいまの場合與党においても、すでにただいま申しまするような修正のお氣持があるように仄聞いたします。御答弁によつてちよつと片鱗を伺つたのでございますが、そこで私はお伺いしたいと思います。一体この予算案というものは、政府にとつて最も重大なる政策の結晶である。こういうふうに考えております。この現内閣政策の結晶とも申すべきこの予算、しかもその予算案の中軸というか、現内閣の一番力をいたされておる取引高税とか、あるいは交通関係の増徴だとか、通信関係の方の増徴案というようなものについて、修正等が行われるというようなことになれば、まさに政策は破綻となる致命的な問題じやないかというふうにさえ考えているのであります。それが野党から起るならばいざ知らず、よもやありますまいと思いまするが、與党間から、最も現内閣の中心施策である問題にさえ、斧鉞を入れられなければならぬというような段階にはいりました場合、どうも一党とか、一派とか、與党さえ抑えることができないということになつたのでは、この院内だけで——國民に向つていろいろおふれをなすつても、國民が同調してきません。それではどうもまことに遺憾であると思う。そこで私最後にお尋ねしたいことは、責任政治の所在——先般來たびたびお尋ねいたしまするのは、一例をあげますると、同僚の申しました軍公の利拂問題のごとき、金額においては些少であるが、これは重大な問題であります。これはしかも予算案の一番大きな中心的な課税目標等においてさえ、もし斧鉞を加えられるという場合には、國会においてもしかたがないというようなことでは、責任の所在ということについて、まことに私どもは解釈に苦しむのであります。こういうふうでは、敗戰後における日本政治を行うことは、なかなか容易ではないと思う。責任政治ということについて、総理大臣の御感想を承りたいと思います。
  134. 芦田均

    芦田國務大臣 政府は第一次的には國会に対して責任をとり、さらに國会を通じて國民に責任をもつておるのでありますが、國民の多数が政府に対して信頼しないということであれば、そのときに政府は進んで進退を考えるべきものだと思つております。
  135. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 先ほど來いろいろ各項目につきまして、総理と志を異にしておる点が数多くございますが、これ以上は同僚質疑の時間を切り詰めることになりますから、私の質疑はこれで終ります。
  136. 鈴木正文

    鈴木委員長 次は安本長官が出席されておりますから、主として安本長官への質疑をいたしたいと思いますが、その前に地方財政に関しまして、前に保留になつておりました島村一郎君。
  137. 島村一郎

    ○島村委員 私は地方財政関係につきまして、非常に大きな関心をもつております関係上、先般の地方財政委員会委員が、そろつてほとんど同時に三名も辞職せられたその経過について、所管大臣からその理由を承りたいと思います。
  138. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 お答えいたします。地方財政委員のうち、府縣知事代表であります安井君、それから市長代表であります神戸君、町村長代表であります生田君、この三人が辞表を出しました。市長代表の神戸君の辞表の内容は、地方自治並びに地方財政に対して政府並びに一般の理解を得ることができない、自分は野にあつて、地方自治体、地方制度確立のために努力したい、かような理由でございます。府縣知事代表の安井君並びに町村長代表の生田君の辞任内容は、地方財政委員会における決定が、政府において全幅的に容れられなかつたからという理由でございます。
  139. 島村一郎

    ○島村委員 私はどの委員会にいたしましても、その委員が過半数ほとんど同時に辞職するというようなことは、ゆゆしい問題だと思う。しかも今回の辞職の状況を想像いたしますると、もちろんこの三人は、地方自治関係の、しかも直接関係者である。その三人が連袂辞職のごとき辞職のしかたをしたというようなことにつきましては、ここに政府当局並びに地方の自治体関係者、こういうものの間に、何か深い溝があるのじやないかというふうに考えますが、大臣はいかにお考えになりますか。
  140. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 ただいまお答え申し上げました三人の辞任内容につきましては、少しく異にしておるのであります。特に留任勧告は三人ともいたしません。市長代表の神戸君の辞任の理由は、以上申した通りでありまして、財政委員会意見が容れられなかつたから辞職をするのではないということをはつきり申しております。この点は特に強調しておつたのでございまして、かつ誤解を受けないようにという意見を附しております。しかしただいま島村委員の御指摘になりました通り、いやしくも地方財政委員会が五人の委員によつて運営されておるのに、そのうちの三人が、理由は違うといたしましても、同時的に辞任を申し出るということは、これはまことにゆゆしきことであると私は思つております。なお財政委員会は決議機関ではないのであつて、自治体の運営を担当しておるところの財政委員が、特に不満を表示いたしまして辞任を申し出たということについては、十分われわれは考えさせられるところもありますし、またその点については、遺憾に感じておるのでございます。
  141. 島村一郎

    ○島村委員 それは重要な機関の一つでありますから、もちろんこれが補充はできるだけ早くおやりになるであろうことは疑う余地はありません。しかしながら、その後任の選定方法につきましては、聞くところによると、やはり知事なら知事仲間から推薦をしてもらつて、それから選考するのである。こういうふうなことを伺つておりますが、その点はいかがでしようか。
  142. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 その通りでございます。市長はすでに後任の推薦がありましたので、これに対しましては総理が任命することになつておりますので、近々決定になると思います。あとの知事並びに町村長代表の委員に対しましては、その後における折衝の経過から見まして、町村長会長は留任することはないと思います。知事は知事会議、幹事会を開いて、いずれ後任者を選任されるものと思います。そのまま放置しておくことは許しませんので、後任あるいは留任方についての結論を得べく、せつかく努力するつもりであります。
  143. 島村一郎

    ○島村委員 もちろんそういう辞職をすることは想像をしておりましたのですが、ただどうもあの辞職のいきさつを想像してみますと、かりにほかの知事が今までの知事に迭つて出たにいたしましても、なかなか出られないじやないか。お受けができないじやないかというふうに考えておりますが、この内意につきまして、大臣はどういうふうに考えておりますか。
  144. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 地方財政委員会といたしましては、五人の委員による過半数によつて立案企画することになつておりますから、その際はいたし方ないとしまして、暫定措置といたしましては、当分の間の委員によつて運営をいたしていくよりいたし方ないと思います。その点は遺憾でありますけれども、今の制度上においては、万やむを得ないと思つております。
  145. 島村一郎

    ○島村委員 なるほど議決機関でありませんから、欠員がありましても、別に支障はないというようにお考えであるかもしれませんが、深く考えてまいりますと、自主性の確立というものは、結局そこが民主化根本ではなかろうかと私は考えます。そうしますと、どうも三人も自治体の直接関係者がやめて、それつぱなしで、別に議決機関でないから置く必要はないと、簡單にお考えになることはどうかと思います。
  146. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 島村委員にお答えします。私は軽く考えておりません。島村委員の御指摘になりました通り、その通りでございます。非常に重要な問題であり、かつ議事の運営にあたりましても、非常に心痛しておる一人であります。しかしそれではできないかということになると、できないということも規定しておりませんので、しかたがないという点において、さよう申したのであります。しかし努めて團体代表の方々の了解を得るような努力を拂いまして、その補充に努め、かつ運営のよろしきを得ていきたい、かように考えております。
  147. 島村一郎

    ○島村委員 結局この問題は、今御答弁も伺いましたし、あるいは私どもの想像からいたしましても、中央集権か地方分権かのこれが境目であろうと思います。そう考えても間違いありませんか。
  148. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 ごもつともでございまして、この点はすでに先年自治法ができる際に、島村委員が今日力説されるような見解において、その裏づけとなるべき地方財政委員会法の強化のために、本國会が努力をされておつてくださつたならば、かような結論は出ないと思うのでございます。この点はまことにわれわれも議員であつた当時でありまして、はなはだ微力であつたと思います。この自治体の確立、その裏づけとしての財政の確立、これは絶対に相関性をもつておるものでございまして、特にその点におきましては、何といいましても、中央、地方の財政の調整並びに自主独往のできる自主財政の確立という根本的の問題を解決し得ない以上、絶えずこうした問題が繰返してくるのではないか、かように感じておるものであります。
  149. 島村一郎

    ○島村委員 何か後任の推薦を依頼した、それに対してそれではこういうことはどう考えるかというようなものが出たということを伺つておりますが、事実出ておりますか。
  150. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 その点は私はまだ了承しておりません。
  151. 島村一郎

    ○島村委員 これは非常に重大な詰問書が出ておるはずです。お忘れになつたのではないかと思います。
  152. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 お答えいたします。その詰問書というのが、ちよつとわからないのですが、むしろ政府に対する要請書が出ておるということを私答弁いたします。しかし詰問書というのは了承できませんので、ただいまのようにお答えしたのであります。
  153. 島村一郎

    ○島村委員 あるいはただいまの質問の用語がまずかつたかもしれません。政府はこれに対しまして、できる限り御要求に副うという程度の御回答をなすつたということでありますが、そうでありますか。
  154. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 その通りであります。
  155. 島村一郎

    ○島村委員 この問題はなかなか重要な問題であると思います。結局地方における赤字と申しますか、この二百億なる二百五十億というものは、國ではさのみ痛痒を感じないかもしれませんが、地方としては、大きな問題であります。こういう問題が中にはいつておると承つております。それ一つだけとらえましても、地方としてはたいへんな問題であると、私ども考えるのであります。これに対して何とか善処しようという程度では、とうていこの補充などは思いもよらないというふうに考えます。これはよほど当局において、大蔵省なり何なりと深く御檢討をいただかなければ、明確な御回答はできなかろうというふうに考えます。殊に今の國の財政考えますときに、これは地方に対して何とかしよう。かりに融資の斡旋にいたしましても、なかなかこれはたいへんなことだ。この点につきましては、特にひとつ所管大臣の力強い御斡旋をいただかなければ、この要求に対してお答えができないのではないかと、私は想像いたします。この点は善処方をお願いいたします。  それからもう一つ、先ほどの神戸市長、あるいは安井都知事の辞職の理由は違うとおつしやつておりますけれども、私どもの見るところでは違つておりません。しかしこんなことは、そう爭うほどの問題でもありません。とにかくいかに國が健全財政を堅持できましても、地方の自主性がぐらついておりましたのでは、これは決して日本の將來のために、安閑としてそれを見過すわけにいかぬというふうに考えて、その点特にお考えを願いたいということを希望を申し上げます。
  156. 野溝勝

    ○野溝國務大臣 第一点の御質問並びに希望に対しましては、ごもつともでございまして、この二百四十億起債の件は、特に明確にさせておかなければならないということで、閣議においても單に起債に対する政府の斡旋というだけでは、地方團体においてはこりておりますから、特に今回この地域團体の運営委員、いわゆる財政委員の方々の辞任したその点にも鑑みまして、十分この財政の裏づけとなるべき措置を講じなければならぬ、そこで特に最後的な案といたしまして、この地方債の起債に対しましては、從來のような不信のことを繰返すことなく、政府が責任をもつて斡旋する。またその内容につきましても、近いうちに明らかにするという條件附で承認し、かつこれを委員に回答したわけでございます。そしてただいま島村委員のお説の通り、十分この点は明確にして、結論を一日も早く得る。要するに内容を明らかにして、この委員の方々の了解を得るのに最善の努力をささげたいと思います。なお第二の希望については、十分善処するつもりであります。
  157. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 安本長官米價決定の基礎の問題について、お尋ねしたいのでありますが、今日農産物價格決定の根幹となつておるところの昭和九、十、十一のいわゆる基準年次における七十一基準品目。並びにそのウエイト、その價格指数、これらの数字は正確なものと考えておられるかどうか、この点お尋ねいたしたいのであります。
  158. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたしておきます。昨年の二十二年度産米の際のパリテイ計算による米價設定の際採用しました基準年次の材料、その他についての取捨及び考え方ということについて、正しいものであると思うかというお尋ねでありますが、その先の御質問も大体わかつておりますし、実は昨日の閣議で、はつきりその点についても私申しましたので、時間の関係もありますので、とりまとめて申したいと思いております。昨年につきましては、初めての例でもあり、殊に材料の取捨その他につきましては、なお考究すべき点があつたのでありますが、時間その他の関係もあつて、昨年はかようにきまつた次第であります。今年はパリテイ計算によるということは、はつきりいたしておりますが、これをなるべく正確にする、そした正確さをできるだけとつて正しいものにしたいということも、大きな原則として、私どもは考えておる次第であります。しかしその目的を達するためにとるべき材料その他については、なお十分考究をいたしまして、その正確さというものをさらに増すようにいたし、改善をも加える方針でございます。併せて御答弁申し上げたいのであります。
  159. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 大体安本長官の答えによると、昨年の基礎が正確なものでなかつたという前提のもとに、今年は改正しようということかと私は解するのでありますが、私の調査いたしたところによりますと、昨年の米價決定のときにとりましたいわゆる基準年次の七十一品目のウエイト、從つて價格指数というようなもの、これはまつたく——言葉がひどいようでありますけれども、何ら正確な調査に基いておらぬ、非常にでたらめのものであるといつても差支えのないようなものであつたということを、われわれはつきとめたのであります。その点はただいまの安本長官が認められた点と一致すると思いますので、くどくは申しませんけれども、昨年とられたところの一例を申してみますと、パリテイ計算の基礎資料のいわゆる基準年次におけるウエイトの点を見ましても、常識で考えてもおかしいような数字が並べられておるのであります。一例を申しますと、飲食費の点を見ますと、いかが十、いわしが十、これはウエイトでありますがかれいが十、たらが十、身がきにしんが十、馬鈴薯が十、大根が十、こんぶが十、それから塩、醤油、菜種、煮干ことごとく十であります。それから被服費の点に至りまして、学童服が十五、作業衣が十五、シヤツが十五、さらし木綿が十六、銘仙、地下たび、たび、げた、縫糸ことごとく十五であります。それから保健衛生費の点に至りますと、熱さまし八、目藥九、石けん、髪油、クリーム、歯みがき粉、脱脂綿、ちり紙、理髪料、ことごとく八であります。こういうふうに、ちよつとウエイトの数字を見ましても、でたらめに適当に書いたものであるということが考えられるのであります。私は二箇月間にわたりまして、全國農村青年同盟の者と、私の郷里の福岡の農村連盟の者と、それから統計に堪能な青年を十数名東京に呼びまして、安本と物價廳、農林省、日銀、全國農業会、それから近縣数縣にも派遣いたしまして、二箇月間調査いたしたのであります。そうしていろいろつきつめました結果、政府でとつております基準年次のウエイトというものは、正確な数字をもつて算出したものでない。適当に一係りの筆の先によつてきめられたものであるという事実をつきとめたのであります。それからわれわれはたいへんなことだと考えまして、安本、物價廳その他の係りの者と打合わせましたところが、おおよそその係りの方でも認めておるのであります。私は今安本長官が今年度の價格決定に対しては、そういう基礎的なものを再檢討すると言われましたので、つきつめては追究いたしませんけれども、その点はぜひひとつ檢討していただきたいと思うのであります。それと同時に私らが今申し上げましたように、六十日間にわたつて、あらゆる苦労を積み重ねてこしらえました資料があるのであります。これは政府では七十一品目にとつておりますが、私らは八十三品目をとつておるのであります。そうしてウエイトの数字、それから價格指数、ことごとくこしらえ上げておるのでありますが、大体において物價廳その他の係官と打合わせてみましても、これを是認しておるのであります。こういう資料がありますので、いろいろ再檢討なさる場合には、こういう民間でつくられた資料を参考にしていただきたいと思いますが、その点に対して、長官はどう考えられるか、重ねて御答弁を願いたいのであります。
  160. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 そういう結構な資料がございますならば、ぜひこちらへお貸しを願いまして、われわれの檢討の材料の重要なものといたしたいと思つておるます。なおいろいろお話がございますれば、委員会外でも私十分お話を伺いまして——こういうものは農民諸君に対して、また消費者である一般國民に対しても、正確さと適正というものをなるべく能う限り見ていかなければならぬものでありますから、ぜひ御意見を漏らしていただきたい、併せてお願いる次第であります。
  161. 鈴木正文

    鈴木委員長 中村君。
  162. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 農林大臣にお尋したいことが数項あるのでありますが、時間を急ぎたいと思いますので、二、三点ずつまとめてお尋ねしたいと思うのであります。  第一にこのたび進行の途上にあります農業協同組合の問題でありますが、連合会の團体において、それぞれ分裂せしめるような方法をとるようなことになつておるのでありますが、この点に関しましては、農林大臣は大体いかように考えておられるのか。私らが考えますと、農業協同組合というもののもつておるところの自由の原則を無視してしまつて、これを分裂せしめるというような今度の一つの改惡に近い法案というものは、農業協同組合の健全なる発達を阻害せしめて、組合の経営を不可能ならしめ、農民をして再び金融資本の隸属下に帰せしめてしまうというようなことになると思うのであります。さらにそれが農地改革の成果をも水泡に帰せしめ、農村の健全な民主的な建設の基盤としていかなければならない、ところの農業協同組合の意義と、その役割をなくしてしまうものである。われわれはかように考えておるのでありますが、この点について農林大臣は、いかようにお考えになつておるか、それが第一点であります。  それからもう一つは、ちようどこの協同組合に関連しておりますので、一緒にお尋ねしたいのですが、農業生産必需物資の取扱いであります。現在は御承知のように、公團その他いろいろのものに取扱わせるということになつておるのであります。しかしこれはどう考えてみても、農業生産に必要な必需物資というものは、これを一本に取扱わせた方がいいということを、私は考えるのでありますが、これらについても、農林大臣はどうお考えになりますか。  それからもう一点でありますが、これは農業生産物の加工は、今度できます農業協同組合においてなすという原則は認められておるのであります。しかしいろいろのその他の規制によつてこれを実際に行おうとすれば、制約を受けるのであります。私はこの制約されるものを除かなければ、せつかく農業協同組合に農産物の加工を認めても、それはまつたく空なものになつてしまう。かように考えるのであります。この三点について、いかようにお考えになつておるのか、お尋ねいたしたいのであります。
  163. 永江一夫

    ○永江國務大臣 第一の点は、今回農業協同組合法の一部改正の提案をいたしております。その趣旨は政府としてはようやく発足しつつあります農業協同組合の必要性は、十分にこれを認めておりますが、ただこれが独占的な傾向に流れない範囲におきまして、その育成強化を考えておりますので、この独占的な傾向にならないために一部改正を行う、こういう趣旨でございます。從つて第二のお尋ねもこれに関連しておるのでありまして、もちろんできるだけの方法によりまして、農村の民主化のための重要な仕事をいたしまするこの農業協同組合を育成強化いたすことは当然でありますけれども、この点もある点において独占にならないうよに、いろいろ取扱いまする業務におきましても、自由競爭がある程度認められるのが妥当であろう、こう考えておるのであります。  それから第三の点は、いろいろ制約をしてはいけないという御意見でありますが、今第一点、第二点に申し上げました範囲におきましては、ある程度の制約はやむを得ない、こう考えております。
  164. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 農林大臣は独占的にならないようにということに、重点を置いておられるようであります。もちろんそれはわれわれもわかるのでありますが、私は農林大臣のその考え方には少し異論をもつておるのであります。大体農業生産の今日の段階における重要性と特殊性を考えるときには、たとえ形式的には多少独占的になるようなきらいがありましても、現在の日本状態から考えて、私はその論拠、その考え方というものはしばらくおいて、やはり目的を完全に達し得るような態勢を構える。しかして日本状態が健全な平常の姿に帰りましたときに、そういう段階にもつていくということが、われわれとしては考えなければならないことではないかと考えるのでありますが、その点をも農林大臣は考えないで、やはり独占的に至らぬようにすることの方が先だとお考えになるか。われわれが仄聞するところによると、農相の考え方も、あるいはわれわれの考え方に近いのではないか。しかしながら、ある有力な意見があつて、そういうふうになつているのであるというふうに漏れ承つているのでありますが、はたしてそれが事実であれば、われわれも納得するのでありますけれども、その辺のところを、速記を止めてでもよろしゆうございますから、お聽かせ願いたいと思います。
  165. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今お尋ねになりました点は、ある程度御推測になられた点が、あるいは事実に近いかもわからぬのでありますが、こういう席上で私が申し上げるのは適当でないと考えております。
  166. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 次に質問いたしたいことは、米價の、二十二年産米の價格に対する追加拂いの点であります。農林大臣はしばしば新聞等でも二十二年産米に対しては、これを月割にして今度の物價改訂以後のものに対しては、追加拂いをするという方針だということを声明しておられます。これに対しましては、全國の農民が非常に期待と喜びを感じているのであります。ところが最近になりまして、どうもその雲行きが怪しくなつてきたやに考えられるのでありますが、二、三日前に農林次官は、全國農民組合の代表者に対して、消費者負担として財源をつくることでもなく、さらに價格差益金から渡すということでもなく、別に政府の方で二十二年産米の供出割当数に対して、農村の方にお返しするように考慮しているということを声明したということを聽いているのでありますが、そういう考えで今進みつつあるのかどうか、その点をお聽かせ願いたいと思います。
  167. 永江一夫

    ○永江國務大臣 政務次官がどういうことをお話申し上げたか、私は今承知いたしておりませんが、御承知のように、この問題については、衆議院で全会一致で御決議になりまして、その際芦田総理から申し上げました政府方針に基きまして、今鋭意関係方面と話を進行中であります。從つてその結果によりまして、この処置がきまつてくるわけでありますが、できるだけ早い機会に、これを具体化して説明を申し上げたい、こう考えております。
  168. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 大体御説明でわかつたのでありますが、さらに一つお尋ねしておきたいのは、関係方面との了解が得られた場合に、政府ではその財源をどこに見出そうというお考えをもつておられるのであるか、その点をひとつお伺いいたします。
  169. 永江一夫

    ○永江國務大臣 この財源につきましては、まだ今國会で御審議中のいろいろ物價の改訂が最終的な決定を見ておりません。從いまして、これらの改訂に伴いまして、新しい賃金ベースの基準がきまると思います。その賃金ベーすの基準によりまして、この賃金ベースを破らない範囲におきまして、主食の消費者價格を決定してまいりたい。その限度におきましては、一應消費者に負担される形におきまして、これを比較し見出したいと考えているわけであります。ただお答えをいたしておかねばならぬことは、昨年の米價と、本年の仮想米價との差額につきまして、これをどう処理するかという場合におきましても、差額があるからこれを機械的に生産農民の方に返すというばかりでなくして、この金がインフレを刺激したり、あるいは單なる消費的な面に使われることでなしに、食糧再生産の上に使われるような方法を講じまして、それによつてこの金の使途ができるだけ生産的になるような方途を考えて、その上で処置をいたしたいと考えております。
  170. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 大体政府の非常な好意的なお氣持はわかつたのでありますが、さらにもう一つこの点についてお尋ねしておきたいのであります。もちろん政府が農民に金を返してやろうという氣持から、いろいろのむずかしさを克服してやるという点から生まれた今の農林大臣の御意見かと思いますが、私は農村に返すこの金というものは、米價は昨年きめられておつた價格では、今後の物價の値上りから考えて、そろばんが立たぬということで返してもらう金でありますために、この金はどこまでも私は農民の自由に使い得る金であると思うのであります。農民が自由に使い得る米を賣つた金の使途まで、政府の方で考えるというのは、私は考え過ぎだと思うのであります。どこまでも正当な支拂を要求して拂つてもらつてもいいところの金であります。しかしただ現在の段階では、いろいろのむずかしさがあるから、そういうくふうをしておられるということであれば、われわれ諒とするのでありますが、農林大臣の根本的な考えとして、そういう考え方をもつているとすれば、われわれは承服し得ないと思うのであります。これはただ私の意見として御參考までに聽いておいていただきたいことであります。  それからもう一つは、このインフレ下におきましては、今度のような問題が、だんだん起つていくということは考えられるのであります。今日の段階において、農林大臣はじめ内閣諸公において、非常にこの問題について御苦心を拂つておることは、われわれも農民も納得しているのでありますが、ところがこの状態というものは、來年もまた続くということを考えられると思うのであります。私は來年度のことを考えるときに、今日よりももつとむずかしい情勢が生まれると思うのでありますが、これは基本的に米價を決定する方法の点においてお考えをお願いしたい。あるいは供出の面において、たとえて申し上げると、二月末日までに出した米を、一應供出は國家の食糧事情から、全面的に一緒に出さなければならぬと思います。出した米を四回にわけて計算する。あるいは物價が改訂されると同時に、必ず改訂するというような基本的なものをきめておかなければ、私はたびたびこういうことが起つて、当局としても非常にお困りになるものだと考えるのであります。この点について、農林大臣はどう考えておられるか、これをひとつお聽かせ願いたいと思います。
  171. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今の米價の分割拂いというようなことについては、ただいま私は考えておりません。ただこういうことが現実の問題として來年度も繰返されるというおそれがあるという点については、私もさように考えております。しかしそういうことについて、本年の処置が今後起きて來ることの前例となるのでありますから、よほど愼重な措置が必要でありますことは、当然であります。ただ米價の問題については、先般もお答え申し上げましたように、本年の米の收穫期前に新米價が決定されるのでありまするが、その際にやはり今取扱いつつあるような問題は、將來起きるものという予想のもとに、適当な新らしい方法考えていきたい。こう思つております。
  172. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 農林大臣において根本的にこの米價の決定方法について、將來今回と同じようなことを繰返さないようにという建前からの考え方がないように、今聽いたのでありますが、そういうことになれば、農村としてはおそらく米を今までのように、二月末日までに全部賣つてしまうというようなことをせぬように、考えがなつてくるのではないか。そういうことが考えられると思うのであります。私は何もそういうことをむずかしく考えなくてもいいのではないかと思うのであります。たとえて申しますと、二月末日までに出した米を、物價が改訂されるときには必ず改訂するのだという基本的なものを見せるか。それでなければ三千万石出したならば、それを当初の決定通りに四分の一、それからその次の六月に四分の一、八月に四分の一とかいうような形で計算をして、農家に拂うというようなことをとることは、むずかしいことではないと思うのでありますが、そういうことを考えなければ、こういうインフレのはげしい、情勢のもとにおいては、必ず前のような考えが起ると思うのであります。四回にわけることすら、必ずしも満点ではないと思いますけれども、ある程度は仕方のないことであると思うのでありますので、そういうくふうをお願いしたいと思うのであります。これは答弁を要しませんが、そういう点をさらに考えていただきたいと思います。  最後にお尋ねいたしたいのは、食糧確保臨時措置法というものが、今度提案されておるのでありますが、この措置法を行うことによつて、農林大臣は現在行わない前と、どういう違う結果が生まれるかということについてお考えをもつておられるか、お尋ねいたしたいのであります。
  173. 永江一夫

    ○永江國務大臣 ただいまお尋ねの点については、この法案が國会の御承認を得まして、通過いたしますれば、今後事前割当についても、供出制度についても、一つの法的根拠ができるのであります。この法の中では、すでの御承知のように、去る第一回の國会のときに、いろいろ國会内の御意見がありました。その意見を十分取入れた案として御審議を願つておるわけでありますから、当然法律の運営は、民主的に行われるということを確信しております。從つてその結果は事前割当、供出等については、非常にいい結果が生まれてくる。こう考えておるのであります。
  174. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 それではこの食糧確保臨時措置法を施行することによつて、一切の経費の総額はいくらくらいになるのでございますか。
  175. 永江一夫

    ○永江國務大臣 本年度は約七億であります。
  176. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 時間がなくなりましたので、簡單に結論としてもう一点お尋ねいたしておきたいと思いますが、私はこの食糧確保臨時措置法というようなものを、やつてもやらなくても実際の問題としては大した影響はないと考えておるのでありますが、農林委員の人たちの意向を聽いても、おそらくそういうところに帰一しておるように考えておるのであります。これも先ほどと同じように、ある有力な意見によつて生れておるものというように考えておるのでありますが、私はこういうやつてもやらなくてもいいようなものはやらずに、この七億というものは、別の有効適切な方面に使えると思うのであります。この点は、私のうかがい知つておることが当つておるといたしますれば、ある有力な意見がそういうことになつておるということに聞いておるのでありますが、そうだとすれば、私は現在の日本の農村の問題だけを考えましても、日本の実情をよく知つていない、日本の実情に通じていない人の意見というものが、いろいろの形になつて表われてきておるという傾向がありはせぬか。こういうようなものに対しては、私は農林大臣がもつと積極的に実情を向うに知らせる、そういう手を考えていただくことが必要ではないかと思うのであります。そういう点については、農林大臣は、農村のことには割合に明るくない、学者としては明るい人かもしれませんが、農村の実情には割合に明るくない経歴をもつておられると思うのでありますが、そういう自分の力だけでなく、あるいは役人の力だけでなく、民間の力を糾合して、その方面に折衝するという措置を、政府みずからがやることを考えていただく必要がありはせぬか、さように考えております。この点も私の注文といたしまして、お聽き願いたいと思います。時間がなくなつておりますので答弁を求めません。
  177. 鈴木正文

    鈴木委員長 次に本間俊一君。
  178. 本間俊一

    ○本間委員 農林大臣に一点だけさきに御質問したいと思います。  御承知のように、裏日本でありますとか、北日本でありますとかいうような單作地帶に対しまして、さきに農業手形の制度を実施したのであります。肥料の三十八億円を筆頭にいたしまして、農機具、農薬、蚕、茶に対して、農業手形の制度を実施したのでありますが、末端の事情を調べてみますと、肥料公團が百姓に対して肥料を配給するのであります。その品物が到着いたしましてから、五日以内に現金をもつて支拂い、五日過ぎますと、六日目から日歩五銭の利子をとつているのでありますが、これははなはだどうも末端に行つて、むしろ政府考えが錯綜しているのではないかと、私は考えるのでありますが、この問題について、農林大臣はどういう方針をとつておられるか、その点も明らかにしていただきたいのであります。
  179. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今お話の肥料公團が手数料をとり得る場合は、お示しになりましたように、肥料が末端の配給機構にまで到達いたしまして、すなわち配給地区におきます倉庫いはいりました以降において、各末端の農家に配給されない場合においてのみ日歩五銭をとる、こういうことになつております。
  180. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、肥料が農家の手に渡つて後の場合は、そういうことはあり得ないわけでありますか。
  181. 永江一夫

    ○永江國務大臣 お設の通のであります。
  182. 本間俊一

    ○本間委員 それではもしそういう事実がありといたしますならば、これは当然改善される必要があると思うのでありますが、そのように解釈してよろしゆうございますか。
  183. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今お示しのような例がありますれば、当然改正をいたします。
  184. 本間俊一

    ○本間委員 それでは農林大臣に対する質問はこの程度にいたしまして、安本長官が見えておられますから、安本の問題について質問いたしたいと思います。  物價改訂は、御承知のように、四月の年度の当初においてこれを改正いたしまして、予算と併行して新しい出発をいたしますが、一番自然な姿であります。從つてちようど四月、五月、六月と、大分時間が過ぎまして、七月になつてこれを実施するということに相なりますと、その物價改訂のききめといいますか、それも大分薄くなつてくるのは、実際の示す通りでありますが、どうしてこういうふうに物價の改訂が遅れましたか、その事情を簡單に説明していただきたいのであります。
  185. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 物價改訂は片山内閣のときにおきまして、大体四月にいたすということで考えておつたのであります。これは予算物價との関係がきわめて微妙な関係もございます。ちぐはぐにするということが原則的に考えて許されぬ立場があるからであります。ところが政変が起りまして、予算の編成が延びました関係があるのであります。そうしますと、たとえば物價に影響をもちますところの運賃その他の事情等もはつきりいたさない関係がございますので、これは大体予算と同時に実行する。こういうような目途をもたて芦田内閣では進んだ次第でございます。たとえば補給金の問題、あるいは予算に織りこむ人件費、物件費をいかにすべきか、鉄道あるいは駐信特別会計の予算をどういうようにするかというような点において、きわめて微妙な関係がございますので、そこでこれを政変その他の関係、殊に政変の関係予算編成が遅れ、暫定予算というような調子でございましたから、物價の改訂が遅れた次第でございます。そうしてその場合に二つの方法考えられるのであります。一つ物價の改訂を予算と同時にすること、あるいは暫定的な改訂をするかどうかという問題であります。暫定的な改訂もかえつて当を得ない、経済復興を阻害する結果になりますので、この予算とともに出すようになつた。その結果遅れた。こういうような関係でございます。
  186. 本間俊一

    ○本間委員 物價の改訂が遅れた事情は一應予承することといたしまして、一日も早く物價の改訂が実現されることが望ましいのでありますが、政府は昨日第一次物價の改訂を発表されたのであります。その発表を見ますと、新統制價格というのは甲、乙二つ発表されております。そうしますと、この乙の方がありますが、この乙の方は運賃及び通信の値上げが、政府が目下國会に提案をいたしております三倍半、四倍という値上げを前提とした値段でありますから、もしこの輸送及び通信関係の値上げの倍率が修正されるということでありますと、この價格は当然変更されるものと私は思うのでありますが、その点いかがでありますか。ちよつとお断り申しておきたいのでありますが、私は一同一答の形式で御質問いたしますから、質問に対する答弁を簡單にお願いしたいと思います。
  187. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お尋ねの通りでございます。すなわち甲の方は現在の貨物運賃を基礎として組んだ新しい補正價格でございます。乙の方は國会の御審議を願いまして、それできまつた新しい運賃を基礎として補正價格を出すことになつておるのであります。そこでその現わし方でございますが、現わし方は、政府予算その他に貨物運賃については三倍半の倍率を予定いたしまして、御審議を願つておりますから、乙の方としては一應三倍率の場合を掲げたのでございます。しかしながら、そのあとの方に國会の御審議の結果によつてはこれが変るし、変る場合は物價廳長官が告示をもつて示す、こういうことをはつきりいたしまして、その関係の御審議の妨げにならぬように、及び物價についての上り方の目標及び経過をも國民が十分知れるようにしたような次第でございます。
  188. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、目下の議会の審議の実際から判断をいたしますと、安賃及び通信料金の値上げの修正は必至のような事情に私は判断をいたしておるのでありますが、もし私の判断通り政府の提案いたしております輸送及び通信の値上げの倍率が修正されるということになりますと、政府の昨日発表いたしました乙の統制價格というものは実際上変更になる。そうすると政府のきのう発表いたしました新しい統制價格というものは、実際上は行われない價格になるのではないかと私は思うのであります。殊にただいま議会の会期もだんだん切迫をいたしまして、いづれにいたしましても、どつちかに決定するわけであります。そうすると品物をもつております方は、新しい價格が発表されたのでありますから、しかも運賃及び輸送の関係は必ずこれは修正になりますけれども、ある程度の値上げということは、実際の問題として当然であります。そうなりますと、発表せられました甲の價格で賣るよりも、あとの價格で賣つた方がよろしい、こういうような判断をされる、これもまた当然だと思います。そういう考おを別にいたしましても、いずれにしても運賃及び通信料金の倍率が修正されるということに相なりますと、せつかく政府発表いたしました乙の價格より安いところに新しい價格が発表されると私は思うのであります。そうするときわめて短かい期間に、実際上実施されるにはきわめて可能性の少い價格を政府発表される。そうしてまた日ならずして、それよりも安い新しい値段を決定する。そうしてその新しい値段で実際はやる。こういうことになりますと、むしろ價格が非常に紛淆いたしまして、そうしてそこにかえつて経済上のいろいろな混乱を生ずるのではないかと思うのでありますが、その点に対して、政府はいかなる見解をもつておられますか。
  189. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。実は國民生活及び國民の物資に対する取引等の便宜と、なるべく事情をよく知らしたいという意味からでございます。実は統制價格の昨日発表しましたものの中に、こういうことを明らかにしたのでございます。すなわち「一、原價中において貨物運賃又は通信料金の占める割合が大きいものについては、二つの新しい價格料金(統制額(甲)、及び統制(乙)額とする)を発表する。及び統制(甲)とは、國鉄貨物運賃又は通信料金を現行賃率据置きさして算出したものとし、統制額(乙)とは、國鉄新貨物運賃を現行の三倍半、通信料金を現行の四倍と想定し、この想定を織込み算出したものとする。二、統制額(甲)は、昭和二十三年六月二十三日から、逐次これを実施し、」これは七月中くらいには完了したいと思います。「統制額(乙)実施の日においてこれを廃止する。三、統制額(乙)の実施については、國会における審議の結果により、」つまり審議の結果によりまして変つてくれば、別にさらに告示をいたします。変らない場合には乙というものでするということにするのでありまして、この乙を出しておきますれば、たとえば審議の結果変更を來すような場合にも算定その他について誤解をかえつて招かない。こういうような趣意でいたしたのでございます。
  190. 本間俊一

    ○本間委員 安本長官の御答弁がちよつと私納得がいかないのでありますが、長官の答弁のように、乙の價格の決定されました経過を私よく承知いたしておるのであります。今日の議会の情勢から判断したしまして、運賃及び通信料金の倍率の修正は必至のように私は思うのであります。そうすると乙の價格というものは、事実実行の可能性の少い價格であります。その不確定な價格というものを、一体どうして早く発表せられたか、その理由がきわめてあいまいなのでありますが、その点を明らかにせられたいのであります。
  191. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お尋ねの点の御趣意は、私もよくわかつておるのであります。そういう御趣意に副うように、はつきりお答えしたいと思います。これは一時は二段補正をしようというような意見も出、研究もしたのであります。一段で現行の運賃價格によりまして物價をまず改訂をいたしておきまして、さらに國会の御審議によつて運賃價格の新しいものがきまりますと、それを今度は基礎としてさらに新しい價格を補正する、こういう二段の方法をとるということが一時研究され、また唱えられもし、またわれわれも研究したのであります。かような方法をとりますと、物價を二段に引上げるというような印象を國民に非常につけまして、経済その他において物價の高騰を助長し、インフレーションを促進する結果になるように思われますので、政府といたしましては、そういう方法を避けて、なるべく一本で補正をしていく、こういうことをいたした次第であります。しかし一本で補正するにいたしましても、昨今の現状を見ますとインフレの状況その他の状況からして、実際の價格に適しないような場合が出てまいりまして、このままでおきますと、産業方面におきましてはいわゆる赤字が出、これは金融その他においてもなかなかそういう赤字金融はできないのであります。そうすると産業の上に非常な打撃を與え、生産増強がきわめて必要な折柄、生産増強をかえつて阻害するというような結果にも相なりますので、そこで運賃價格のような重点の少いものについては、この際補正をし、重点のあるものにつきましても、まず現行價格で、それから國会のおきめになる新運賃價格を基礎とする價格に自動的に移るということをいたしたのであります。しかも重ねてそういう趣意を明らかにして出したということは、二段補正をするのではない、あくまでも一本の補正であるけれども、形としてこういう方針をとるということは明らかにするためにいたしたのでありまして、そこで御審議が現行の状態でありますので、一應政府の原案である三倍の倍率を示しましたけれども、その後の三という今読み上げましたものによつて、それが御審議の結果によつて変るという趣意を明らかにし、物價の高騰が、心理的にその他の点から二段補正によつて促進するのを防ぐために、かような二重の價格表示をして進めてまいつた次第でございます。これは價格がいたずらに高騰することを抑える、こういう趣意が理論的に理由であると申してよかろうと思います。
  192. 本間俊一

    ○本間委員 安本長官のお考えのねらいは了解いたしましたが、なるほど二段構えの補正をいたしますと、より以上に物價の値上りがはげしい、こう言のでありますが、從來の慣例から申しまして、一遍政府が最低値段あるいは最高値段というようなものを発表せられますと、必ず最高値段が実際の取引の最低値段になる。政府の決定発表いたしました最高値段というものが基準になつて、いろいろな物價に影響をもつということが、從來の実例ではないかと私は思うのであります。そういたしますと、今の議会の状況から見ますと、結局政府発表せられた乙の値段よりは、倍率の修正が必至だといたしますならば、必ず安く値段がきまるのであります。ところが一遍政府が——最高値段というような性質のものだと思いますが、それをここでむしろ二段に物價の高騰を防ぐという趣旨でやられたというのでありますが、それよりは、私はどうしても赤字の関係から言いまして、物價の改訂を急ぐという趣旨に賛成でありますから、早く発表せられるのはいいのでありますが、國会審議をまつて発表いたしました甲の價格よりも、いくぶん安い價格が発表せられるのでありますから、それをかえつて発表した方が、二段構えよりも物價の値上りに対して影響が少いのではないかと考えますが、この点はいかがでございますか、簡單にどうか。…
  193. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 どちらにウエイトを置くかという点でございます。それで私といたしましては、今申し上げましたように、二段構えの物價の改訂ということを國民に強く印象づけることがきわめて恐ろしいことだと考えましたので、それに重点を置いていたしたような次第でございます。なお一つ附け加えておきますが、今月もさし迫つておりますし、物價の改訂ができざるために、赤字金融を受けることができず、從つて企業は月末を越すのにも金融上困るということも出ておりますので、黒字ということの目途もつけ、金融もつけなければならぬというような切迫して事情もありまして、かようにいたしたような次第でございます。
  194. 本間俊一

    ○本間委員 この新物價発表に関する問題は、実際に先へ行つてみなければわからぬ問題でありますから、私はこの程度にいたしまして、三千七百円ベースの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。政府が新しい賃金の標準を三千七百円と決定したのでありますが、その前提といたしまして、やみ物價が五月から六月の一箇月間に約三・六%の値上りを示すだけでありまして、あとは大体新しい價格と水平運動を起している。こういうような前提に立つて三千七百円ベースというものが決定せられているというふうに、私は聞いているのであります。その点どうでありますか。
  195. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。三千七百円を算定いたしますいろいろな推定要素の中に、五月から六月へのやみ物價の上昇を三・六%と見ております。これが五月から六月への上昇であります。その以後はこれは今後の経済情勢によつて動いていくわけでありますから、絶対にやみが上らないという推定をしているわけではありません。
  196. 本間俊一

    ○本間委員 すでに四月の勤労統計ができ上つていることだと思うのでありますが、これが私どもの考えからいたしますと、大体四千円見当が妥当ではないか、こういうような勘定をいたしておるのでありますが、四月の勤労統計ができ上つておりますかどうか、その点をお尋ねいたします。
  197. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。四月の勤労統計の全國工業平均賃金は発表いたしておりません。
  198. 本間俊一

    ○本間委員 計算はできておりますか。
  199. 谷口孟

    ○谷口政府委員 これは総理内閣統計局の方でありまして、私の方は存じないのであります。
  200. 本間俊一

    ○本間委員 三千七百円の新しい賃金ベースを出しました計算の基礎についてお尋ねいたしたいのでありますが、総理廳勤労統計調べによりまして、一月から三月までの賃金上昇の傾向を直線的に五月まで延長いたしまして推定をいたしました数字が三千五百二十円、それから昨年十一月から本年一月までの賃金値上率、これは十二月を省いておりますが、これをやはり同様に直線的に延ばして計算いたしましたのが三千四百円、昨年の二月から本年の二月の長期間にわたつた値上率を計算いたしまして三千六百十一円、この三つを大体対照いたしまして、そうして大体通貨の発行高と、やみ物價の、先ほどの答弁のような動きを考慮いたしまして、五月の工業平均賃金を二・五人で三千五百円、こういうような数字基礎になつているように承知いたしているのでありますが、その点はいかがでありますか。
  201. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。仰せの通りでありまして、これは全國工業平均賃金であります。
  202. 本間俊一

    ○本間委員 そこでこの五月の全國工業平均賃金を六月の実際にどういうふうにあてはめようかということをいろいろ苦心せられた結果、この三千五百円に中から現行税法によります勤労所得税五百三十一円を差引きますと、ちようど二千九百六十九円、これが実質賃金に相なるのでありますが、この二千九百六十九円にプラス價格改訂による生計費の値上り、それに新税法によります課税額、これを加えましたものが新しい名目賃金と相なるのでありますが、そこで政府総理廳の調査にかかります消費者價格指数をいろいろと計算されて、私どもの生活におけるマル公にやみの関係は、大体マル公の方が二五・四%、やみの方が七四・六%の割合として計算した基礎数字になつていると思いますが、その点はいかがでありますか。
  203. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えいたします。六月の賃金を推定いたしますために使いました前提としましては、五月の推定の全國工業平均賃金は今おつしやつた通りであります。いま一つは、五月から六月へのやみの上昇の割合であり、いま一つは五月の手取の中で、いかに支出されるかという支出の割合を算定いたしたものであります。その算定した結果は、マル公による支出が二五・四%、やみによる支出が七四・六%こういうように相なつております。これにそれぞれの倍率をかけて、六月の手取を出したわけであります。その趣旨は、大体実質賃金の水準を算定するために使つたわけであります。
  204. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、五月の実質賃金でありまする二千九百六十九円に対しまして、ただいま政府委員のお話の二五・四%、これを乘じますと、ちようど七百五十四円に相なるわけであります。それから七四・六%の方を乘じますと二千二百十五円、こういう計算になります。そこでこの割合を合計いたしますと、その間政府の方では、マル公は大体個々の計算では八割方上る。それからやみ物價はただいまお示しのような三・六%上る。こういう計算をいたしますると三千六百五十二円、こういう数字が出るのでありますが、この数字に間違いないでありましようか。
  205. 谷口孟

    ○谷口政府委員 お答えしたします。手取額の二千九百六十九円にマル公の支出の割合の二五・四%を乘じて得た結果は七百五十四円になります。それから残りの七四・六%をかけて出した結果は、二千二百十五円になります。そうしてこのやみの部分の三千二百十五円の上り方は、今おつしやる通りに三・六%であります。その價が八十円になります。いま一つマル公部分の上昇は、こ標といたしますが、七割の場合は五百二十八円上昇することになります。これらを総合いたしますと、手取額におきまして三千五百七十七円、こういうことに相なるのであります。これに今度の改正税法案による税を加算いたしまして、名目額としましては三千六百四十九円、こういうような算出をいたしておるわけであります。
  206. 本間俊一

    ○本間委員 私の計算では、マル公の方が八割くらい上る。こういう計算で計算いたしました。ただいま政府委員の言明によりますとこれを〇・七ということで計算をいたしたので多少数字が違つておりますが、そういたしますると、三千七百円ベースから大体税額を引きますと、八十円差引くことになりますから三千六百二十円、そうしますと、ただいま政府発表いたしました数字と、それから三千七百円ベースから課税額を差引きました三千六百二十円、こういう数字を実際にあたつてみますと、その差額はきわめて低いわけであります。もし公定の方を私の計算のように大体八割方上る。政府は七割方上るという計算をいたしておりますが、大体八割上る、こういう計算にいたしますと、三千六百五十二円になります。そうしますと三千六百五十二円から、三千七百円ベースから八十円を控除いたしました三千六百二十円を差引きますと、ちようど三十二円の赤字が出る、こういう計算になります。私と政府当局との議論のわかれ道は、政府の言う通りマル公の方が七割で止まるかどうかということでありますが、マル公の價格も、私がただいま計算した数字の方が実際に適しておるのではないか。かように私は考えるのでありますが、まあ百歩を讓りまして、この点は政府の計算の通り、七割上る。かようにいたしましても、やみ價格の方も大体三・六%で止まる。こういうふうに政府は押えておるのでありますが、その三・六%程度で止まるという政府の計算の根底、基礎を、この際ひとつ承りたいのであります。
  207. 谷口孟

    ○谷口政府委員 ただいまの御質問の中で、私は七割ということで申し上げております。八割の計算もいたしてあるのであります。八割の計算は今おつしやる通りであります。われわれはこれは相当の幅をもつて考えておりますので、いろいろな計算をいたしたわけであります。いま一つ、これは平均の扶養家族が一・五人、ちようど世帶にいたしますと、二・五人についての世帶の計算であります。東京都の四・二人の世帶にこれを直してみますと、今と同じような結果になるのでありますが、四・二人の場合、マル公が七割上る場合におきましては五百五十円のプラスになります。それから八割上げのときには、四百三十四円プラスになるのであります。これは税法の関係によるものであります。從つて家族の多い方が少し樂になるというような結果になります。  それからいま一つ、やみ物の三・五倍の算定の基礎でありますが、これにつきましては、長期短期の趨勢を勘案いたしまして、そうしてはじき出したわけであります。すなわち物價廳の非配給物價指数の十一品目につきまして、長期の趨勢としまして二十一年八月以降の趨勢を見ております。短期の趨勢としましては、最近の趨勢を見ておるのであります。この両者を勘案して、平均して考えた價であります。この價は四五〇という價を得るのであります。三月から六月へのこの四五〇の價まで直線をひつぱつてみますと、その上昇の直線は一箇月間に対前月比三・六%上る。こういう数字になるのであります。  今その三・六%がはたしてどうなるかという御質問がありました。これにつきましては、すでに五月から六月へのある程度の実数も出ておりますので、御参考までに申し上げます。六月十五日でありますが、六月十五日の指数としましては、四三三・八であります。これは今四五〇という数字をわれわれは見ておるのであります。大体われわれの見ておるよりは、五月から六月への騰勢は少し鈍い。こういうような結果が出ると思います。
  208. 本間俊一

    ○本間委員 政府の計算の基礎ききわめて明瞭に相なつたのでありますが、最近の趨勢を実例にとつて説明されたのでありまして、もちろん最近は御承知のように、やみ價格が横這い状態にありますことは、これは率直に認めなければならぬのであります。しかしこれはきわめて異常の状態でありまして、政府がいよいよ物價の改訂をされ、それからこの改訂が実施されて、運賃の値上げ、通信料金の値上げというふうなことに相なりますと、ただいま政府の示しました指数四三三・八というような数字は、私の予想を申し上げますと、もつと上廻つておると考えるのであります。從つて政府の四五〇という指数より以上にも上昇しはせぬかというように私は考えるのでありまして、もしも政府の計算の基礎になつておりますやみ物價の値上りが大体三・六%で終るというこの前提が崩れたということに相成なりますと、新三千七百円ベースというものは、御承知のように赤字を出してくるような結果に相なるのでありまして、そういう実際の場合が生じたときには、政府といたしましては、この三千七百円ベースを変更される御意思があるのかどうか。あるいはどの程度まで維持をせられるのか。この点について安本長官の御見解を承りたいと思います。
  209. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えいたします。政府といたしては、物價賃金の惡循環を断ち切るということが、この際危機を突破して、中間安定へと向うにも最もよいことと思います。あらゆる施策を総合して、この実質賃金の充実ということにきわめて努力をいたしておるのであります。食糧問題については、昨日発表になりましたけれども、遅欠配をなくし、將來に向つての増配を目途としてさらに努力をし、國内増産、それから輸入等の懇請をする。あるいは衣料品その他についても、同樣なる実質賃金の充実ということに努めまして、それも中間安定の施策の一助としてさらにこの促進をいたしまして、この三千七百円ベースが維持するように極力努める、こういう方針で実行しておる次第でございます。
  210. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、それが実質賃金の確保、実質賃金の向上というねらいで、施策を進めておるのでありますから、実際上そういうふうな結果と違つた結果に相なつてくるということに相なりますと、安本長官といたしましては、そのときもまた実情に即してこれを変更される御意思があるかどうか、この点重ねてお伺いいたします。
  211. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 どうも仮定を設けてのお尋ねでありまして、仮定に対しては仮定を設けてお答えしなければならぬのでありますが、あるいはこれが種々いろいろに誤り傳えられるというようなこともありますから、政府といたしましては、ただいまのところでは、実質賃金の充実ということに、きわめて力を入れまして進んでいきたい、こう考えておる次第でございます。
  212. 本間俊一

    ○本間委員 そこで労働大臣にちよつと関連をいたしてお尋ねいたしたいのでありますが、私が政府当局といろいろ質疑をいたしましたように、この三千七百円新賃金ベースの数字基礎も、私は机の上の計算のような氣がいたすのであります。運賃は三倍以上値上げをする、通信料金は四倍値上げをする。マル公は七割上げる。そういう客観的な情勢のもとにおいて、はたしてやみ物價が三・六倍で止まるかどうかということは、これはこまかい計算をいたさなくとも、私どもの生活からまいります体驗から申しましても、ほぼ見当がつくように私は思うのであります。そうなりますと、直接労働攻勢の矢おもてに立たれる加藤労働大臣としては、三千七百円の新賃金ベースをもつて、はたしてこの勤労大衆の生活を維持することができるかどうか、こういうきわめてデリケートの問題にくると私は思うのでありますが、この新しい賃金ベースで、すでに起らんといたしております労働攻勢に対して、労働大臣として十分これに対処し得る自信がおありかどうか、この点を労働大臣にぜひお伺したいと思うのであります。
  213. 加藤勘十

    加藤國務大臣 政府といたしましては、今安定本部長官が答えました通り予算編成の標準としての三千七百円ベースの問題につきましては、その算定に妥当性をもつているという点から、極力三千七百円ベースの実質を保持することのできるように努力をするのでありますが、ただいまお尋ねになりましたように、もし数字に狂いが生ずる場合において、またそれが実際に三千七百円ベースをもつて現実に生活ができないというような事態が発生しましたならば、私は当然そういう事態に應ずる何らかの措置が講ぜられなければならない。このように思つております。
  214. 本間俊一

    ○本間委員 安本長官の御答弁と、労働攻勢の矢おもてに立つておられる加藤労働大臣の卒直な御答弁を伺いまして、私は満足に思うのであります。これはいずれ新しい値上げ、物價の改訂が実際に行われました現実の問題に相なるのでありますから、私は三千七百円新賃金ベースに関する質問はこの程度にいたしたいと思うのであります。  それからついででありますから、労働大臣にちよつと簡單にもう一つ伺いたいのであります。これは主として商工大臣にお尋ねしようと思つたのでありますが、御承知のように、政府の生産増強計画基礎は、何と言いましても石炭の増産であります。こまかい数字は商工大臣のときに申し上げることにいたしまして省いてまいりますが、三千六百万トン計画政府発表いたしておるのであります。どうも四月、五月の実績を見ますと、はたして三千六百万トンの炭が堀れるかどうかということに、きわめて疑わしい感じをもたざるを得ないのであります。從つて新しくまた調査團などを派遣いたしまして、いろいろ実情を調査した結果によりますと、先山、後山の場合を通じまして、実際に八時間労働制が空文になつているような報告であります。從いまして、実例はすでに加藤労働大臣もおわかりのことと思いますから申し上げませんが、どうしても増産を達成いたしますためには、石炭の増産が必要である。そのためには何といたしましても、ただいまの八時間労働制ならば実質的な八時間の労働制というものが実施されなければならぬ。この調査團の報告の一部にはむしろ一時間延長しなくてはならない。そうでないと石炭の増産は、今日の状態からいつておぼつかないではないか、こういうような有力な意見さえ出ているように、私は承知いたしておるのでありますが、労働大臣といたしまして、この点どういうような対策を御用意なさつておりますか。その点お聽きいたしたいのであります。
  215. 加藤勘十

    加藤國務大臣 炭鉱の労働状態が、石炭増産と緊密な関係のあることは、御指摘通りであります。しかしながら、労働省といたしましては、労働基準法に明記するところによりまして、労働時間はあくまでも法律通り嚴守する。その時間の範囲内におきまして、いろいろ現実の切羽の関係等を考慮して、十分勤労意欲が達成し得るよう外部條件を整えるということと、現実の作業場における事態の改善等によつて、その目的を達するようにいたしたい。このように考えておる次第であります。
  216. 本間俊一

    ○本間委員 労働大臣に対する質問は私これで終ります。  次に大藏大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、まず第一に政府は、六月の十五日から、いろいろな改訂を実施いたしたいと、こういう方針予算ができておるのであります。それが御承知のように遅れておるわけであります。從つて鉄道の場合は一日約一億九千余万円、通信関係では一日値上げが遅れますと六千五百万程度、船舶運営会の方は二千一百二十万円というように、政府は歳入の減少を來しておるのであります。從つて当然近い機会に政府はこれらの歳入減に対して、補正の手続をしなければならぬと思うのであります。大藏大臣といたしまして、この点を当然補正されると思うのでありますが、どういう財源で、いつごろこの補正に関する予算を提出されるか。この点をお尋ねいたします。
  217. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。大体このおもなものについては、六月十五日を起算点といたしたいという希望をもつておつたことは、ただいま御説の通りであります。中に遅れることを多少予想したものもあるのでありますが、さような点から、大体今月一ぱいで全体の予算の御審議を願うことになれば、今の予算の限度において、たとえば予備金その他等で大体賄いがつくというようなつもりでおります。しかしながら、これがさらに遅れますと、ただいまの御説の通りでありますから、その部分に関する限りは、補正の途を講じなければならぬ。これは御審議のぐあいによることでありまして、ただいま的確な数字は出ないのでありますけれども、今のところならば、ただいまの予算の程度で、多少の彈力をもつておりますから、それをみんなそれに傾倒いたしますと、これで一應は賄える。かような考えをもつております。
  218. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、大藏大臣は、大体今月一ぱいぐらいはある程度彈力をみて計算いたしておりますから、今大藏大臣の考えておられるような程度ならば、予算内でこれを賄い得ると、こういうお話でありますが、そういたしますと、運輸及び通信関係の倍率の修正を考慮に入れられてのお答えかどうか。その点をお尋ねいたしておきます。
  219. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。六月の暫定予算に対して追加予算は要らぬか。かような御質問かと承つたのでありまするが、理論的には予算が要ると思うのであります。しかしながら、実際問題といたしまして、四月分の暫定予算、それから五月分の暫定予算使用未済のものもありますので、これをもちましてこの数日間というものをつなぐという方針でおります。
  220. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますると、それは鉄道及び通信の倍率が修正されても、補正予算の必要がない。こういう見解でありますか。重ねてお尋ねいたします。
  221. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 通信並びに鉄道の倍率が変更されます場合には、これに伴う財源が必ず伴つてくると思うのであります。從つて全体としての総予算には狂いがないような案が出ると、かように考えておりますので、ただいまその点において総合的にこれでいける。かような考えであります。
  222. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、補正の必要がない、こういうふうに承知していいのでありますか。
  223. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。予算の全体について変更をみないように、倍率を減ずることによつて從つて歳入の上に新しい財源を見つける。かようなことで、ただいまいろいろ檢討されております。この内容はまだよく見ておりませんけれども、そういう方向をたどつておりますために、予算の総額においては狂いがない。倍率が減るだけ新して財源を見つけるというようなことで、與党三派において今協議されておるのでありますから、さようになると考えるのであります。
  224. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと歳入歳出の一番大きなわくは、変更がないというのでありますか。これは当然相当な数に変つてくるのでありますから、内容の補正は、どうしても私は必要だというふうに思うのでありますが、その点はまつたくそういう心配はないのでありますか。もう一度はなはだ恐縮でありますが、その点を……。
  225. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。実は手続的な補正は起る。たとえば地方財政委員会等との関係において、地方財政に対し財源を與えなければなりませんので、入場税等は一應本予算に盛りこんでおるのでありますけれども、これを地方財源として地方に委讓するというようなことは、その後決定いたしましたので、これらの分は整理をするために補正しなければならぬ。かような手続上の補正が若干あると思うのでありますが、これと同樣な手続を必要とすることが起り得ると思いますけれども、予算全体においては増減なしに済むものと思つております。
  226. 本間俊一

    ○本間委員 私その点ちよつと納得がいかないのでありますが、時間の関係もありますから、この程度にいたしまして、先の問題にまいつて質問を進めたいと思います。  今度の政府のタバコの値上げでありますが、これは私の承知しているところによりますと、專賣局の反対を押切つて行われたように、私は承知しておるのであります。御承知のように、新生が新しく出まして、非常に不評判でありました関係上、日下部煙草部長が專賣局長官に栄進できなかつた理由が、そこにあるように私ちよつと聞いておるのであります。そういたしますと、專門家の立場から專賣局のがいろいろ計算をいたしまして、その專賣局の反対を押切つて、今度のタバコの値上げが決定された。こういうことに相なりますと、政府が予定しております九百四十三億円の專賣益金というものは、はたしてその通りつてくるかどうかということに、多少疑いをもつのでありますが、その点大藏大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  227. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。タバコ專賣当局の反対があつたということは、私は全然関知いたしておりません。それから今回の予定されております專賣の数字は、大体確保できるという自信をもつておるのであります。と申しますのは、御指摘になりましたように、新生の不評判等がありましたので、これらのことを十分檢討し、品質の改善をいたし、その値段の格差の幅を非常に小さく縮めましたこと等から考えまして、今回はこれなら大体いけるということで、事務当局もわれわれも全然考えが一致して提案いたしたのでありますから、これは確保し得るものと確信しております。
  228. 本間俊一

    ○本間委員 経本長官は去る十日の本委員会におきまして、本年度の通貨の膨脹は、大体九百四十五億円程度に終るであろう。こういうふうに述べておるのでありますが、この点は北村大藏大臣も同意見でありますかどうか。
  229. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 大体その度の増発はやむを得ないであろう。これは大体均衡上そういうふうになるであろう。これは通貨発行審議会等の審議を煩わしたいと思つておりますが、私も大体同感であるということをここでお答え申し上げてよろしいと申います。
  230. 本間俊一

    ○本間委員 この九百四十五億円程度で通貨の膨脹が終るであろう。こういう政府のお考えのようでありますが、この基礎を見ますと、産業資金の需要が大体二千六百億円、これを大体資本の蓄積で二千三百五十億を賄いまして、そういたしますと二百五十億の赤字になるのでありますが、これに財政上の赤字六百九十億を加えまして、大体九百四十五億、こういうふうに政府は判断せられておるようであります。ところが二十三年度の一般会計は、御承知のように三千九百九十三億円である。特別会計は歳出が一兆二百二十七億であります。それから交付公債が、御承知のように二百三十四億であります。特別会計の公債及び借入金その他または証劵を合計いたしますると、一千一百二十六億円であります。これに一時借入金三百四十億を加えて合計いたしますと、五千六百九十三億でありまして、約五千七百億であります。政府物價改訂を度外視いたしまして、私が計算いたしましても、ただいま申し上げたような数字に相なるのであります。二十二年度でも、御承知のように一千三十億の日銀劵の増発があつたのでありますから、これはとうてい政府のお考えになつておるような、千億以下で終るようにはどうしても思われないのであります。ひよつといたしますると、現在の約二倍くらいになるのではないか。四千億の近所を前後する結果になりはしないかということを私は思うのでありますが、この点に対しては、大藏大臣はどういう御所見を懐いておられますか。
  231. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 通貨の所要量をどう測定するかということは、非常にむずかしい問題でございます。通貨発行審議会において、この前算定いたしましたときには、二千七百億はやむを得ないというような算定でありましたが、その後の諸情勢から、二千二百億で止まつたというような顯著な事例もあるのであります。それで、私ども通貨政策としては、これは一面において産業を圧迫して生産を阻害する結果に相なつてはなりませんので、その点は非常に注意しなければならぬと思うけれども、何といつてもインフレーシヨンの進行過程においては、その速度をゆるめ、どうしてもインフレーシヨンの緩漫化と安定への途をたどるためには、通貨政策としては、緊縮の方針をとらなければならぬ。しかも御指摘のように、政府財政相当膨脹しておりまして、政府の放出する金額というものは、大きな金額になる。これがどのくらいの速度で、あるいはどのくらいの量が國民貯蓄等を通じて吸收するかということに、大きな問題がかかるのであります。本年度の貯蓄目標を三千億といたしまして、これに向つて、特にただいまは集中的な努式をいたしておるのであります。このことが可能であるかないかというようなことが、ただいま御指摘になりましたことと、重大な関連をもつのでありますが、私どもは今までのような形勢から、これは可能である。四月は非常に惡かつたことは御承知通りであります。これは税金等の関係で、毎年のことでありますが、それに比べても昨年の四月に比べて、なお惡かつたということは、非常に注意を要するのでありますけれども、その後五月等はよほど回復しております。六月はまだわかりませんけれども、五月はよほど回復しております。これは大体還流の速度と分量とは、おそらく予期するようにいくであろうと考えておりまして、從つて九百四十億ないし一千億程度において、通貨の増発はやむを得ない。しかもこの程度ならば、これはやはり今の商業活動その他諸般の状勢に対して、大体均衡がとれる。こういうような考えをもつておりますので、御指摘がございましたけれども、安本より申し上げた数量、その程度で止まるものと、私は今考えておるわけであります。
  232. 本間俊一

    ○本間委員 産業資金の需要は、大体先ほど申し上げましたように、二千六百億で政府が計算いたしておるのでありますが、これは昨年の千六百七十五億に比較いたしますると、倍ではありませんけれども、約倍近い増加であります。それから第二・四半期から第四・四半期までに七割物價が上る。こういうことに計算いたしますると、四千四百億ばかりの事業資金に膨張するのであります。これを二千六百億円というふうに政府は押えておられるのでありますが、これも私は過小なる見積りではないかというふうに考えるのであります。御承知のように資金の需要は、これを極度に抑えますと、ただいま経驗をいたしておりまする以上の金づまりの現象を呈しまして、そうしてやみの金融でありますとか、あるいは企業の赤字というようなものが、御承知のように殖えてくるのであります。ただいま大藏大臣の御説明があつたのであるけれども、本年度の通貨の膨張率が千億以下に止まるというふうには、事業資金の関係から見ましても、私はそうは踏まないのであります。この事業資金でありますが、ただいま私が指摘いたしましたように、私は二千六百億円の事業資金は寡少にすぎる、こういうふうに考えるのでありますが、この点について大藏大臣はどういうお考えをもつておりますか。
  233. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 はなはだ粗漏でありますが、ただいまここに私は資料を持ちませんので、具体的な数字を申し上げることはちよつと困難でありますけれども、二千六百億と算定いたしましたのは、物價の上昇を算入してのことであります。今回の物價改訂による上昇を予想いたしまして、それで殖えた数字であります。かように存じております。
  234. 本間俊一

    ○本間委員 本年度の通貨の膨張率がどういうふうになるであろうか。これは將來に対する一つ見解になりますから、私はこれ以上追究しないのでありますが、私は必ず二十三年度の通貨膨張率は、昨年の一千三十億以上を突破するであろう、そうして今年の大体十二月ごろになりますと、三千億程度になりはしないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点はこれ以上追究をいたさないことにいたします。  先ほど北村大藏大臣は、三千億の貯蓄運動に対しまして、これは政府の非常な政策だ、こういうような片鱗をお漏らしになつたのでありますが、この新円の分布状態を見ますと、御承知のように、新円は商業部門、すなわち都会のいわゆるやみ所得者というか、こういう部門に非常に多く集まつておるのであります。從つてこの商業部門に集まつておりますこれらの通貨をどういうふうに追求し、どういうふうに捕捉するかということが、この委員会でもときどき問題になつたのでありますが、これをどういうふうに具体的におやりになるか。この点はきわめてあいまいであります。單に経済の査察官を全國に配置するというようなことだけでは、とうてい私は実効をあげることはできないと思うのであります。從つて藏相の主張されておりまする三千億の貯蓄運動、これもはたして大藏大臣のお考えになつておるような成果を生むかどうかということについて、私は多大の疑問をもつておりますが、これに対してほんとうに大藏大臣は自信をもつておられるかどうか。この点を明らかにせられたいのであります。
  235. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。これは自信の程度を申し上げることになりますけれども、私は多少金融のことにも関係いたしました者でありまして、本年度の三千億は大体可能であるということ確信いたしております。
  236. 本間俊一

    ○本間委員 新聞紙の報ずるところによりますと、第一封鎖は全面的に解除する、こういうふうに私は読んでおる。しかもこの実施は七月一日からやるということなつておるのでありますが、七月一日から実行になる考えかどうか。それから聞くところによりますと、郵便貯金の第二封鎖も解除されるようなうわさを私は前に聞いておつたのでありますが、この郵便貯金の第二封鎖の問題に対してはどういう御方針であるか。この点を明らかにされたいのであります。
  237. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。第一点はまだ決定いたしておりません。それでどうせ解除するときまれば、できるだけ早い方がいいというので急いでおりますけれども、関係筋との折衝もございまして、まだ的確に申し上げることは困難であります。なるべく早く解除するものはいたしたいと考えております。  それから第二点の郵便貯金等の問題でございますが、これは御承知のように、一應支拂い得る限度まで支拂いまして——一般金融機関も同樣でありますけれども、そうして交付公債の御審議を願つておりますもののうちの百六十三億が金融機関への補償でありますけれども、これは郵便局への補償もはいつております。郵便局に対しては、一般金融機関同樣に、補償すべきものは政府でもつてし、なお預金部で持つておりました積立金等も使いまして、郵便貯金の保護に当つたのでありますが、どうしてもそういうような盡すべき方法を盡して、なお残つたものが若干第二封鎖としてまだ残つておる。これをどうするかという問題が残つておるのでありますが、私どもの考えといたしましては、何としてもこれはやはり政府直接の窓口において扱つた預金であるから、これはできればひとつ全部解除して支拂えるようにいたしたいというので、逓信当局はもちろんでありますが、力を協せていろいろ折衝すべき方面と折衝したのでありますが、最近の情勢がどうも非常に樂観ができないような情勢に相なつております。まだここで的確なことを申し上げるところにいつておりませんけれども、どうしても全部がいかなければ一部分でもこれを救い出したいという希望をもつて、なお努力は続けております。さような状態に相なつておるのであります。  それではなぜそういう理屈が出たかと申しますと、向うのことはわかりませんけれども、私想像いたしますのに、一般金融機関においては、これは第一にそれぞれの銀行がもつておる積立金や資本金を犠牲にして預金を守つた。それがためにあるところでは一〇〇%株式はとんだ。そうでないものも全國通有的に九〇%はとばしてしまつた。なおかつ第二封鎖に対する政府の補償はもちろんのことでありますが、政府の補償をもつてし、資本金をもつて預金を保護した。それでもなお残つたものがある。それはやむを得ず第二封鎖を切つた。それは五〇%切つたところもあり、二〇%切つたところもあり、あるいは一〇〇%切つたところもある。こういうような状態になつておるのでありまして、これは郵便局の場合も同じ方法をとつた。特に今日まで今問題となつておりますその預金というものは、戰時中隣組や職域で半強制的にとつたいわゆる愛國貯金でありまして、これはひとしく政府が大いに上から命令して吸收した預金であつて政府の命令的な戰時保險というものとその揆を一にしておる。しかもその吸收したものは、全部國家目的に使つている。だから何も郵便局だからといつて、特別な処理をするということは、よろしくないという考え方が強いのであります。これに対して私どもは、何とかしてできるだけ一部分でも救い出したいという考えで努力を続けておりますが、さような状態にあるということを御了承願います。
  238. 本間俊一

    ○本間委員 ちよつと時間が経過しましたが、もう少しですからお許しを願いたいと思います。  大分時間が経過いたしましたので、取引高税の問題はこれを省略いたしまして、勤労所得税の問題につきまして、ぜひお伺いいたしたいと思います。北村大藏大臣は、勤労所得税の軽減をした、そうして所得税の軽減をいたしましたところを、取引高税という新税を創設してこれを補う。こういうふうに予算委員会で説明せられておるのでありますが、なるほど勤労所得税は基礎控除が増して、大藏大臣の言われるように軽減されております。しかしながら、勤労所得税及び所得税でありますが、これを全体として見ました場合に、私は藏相の説明がはたして当つておるかどうかという点に疑問をもつのであります。所得税におきまして、勤労所得税の部分の占める割合を見ますと、昨年度におきましては、所得税の中の二八・七%であります。ところが二十三年度の予算を見ますと、所得税の中の勤労所得税は二九・三%になつておるのであります。從つて所得税の中に占めます勤労所得税の割合は昨年よりもはるかに上つております。  それからなるほど大藏大臣のおつしやられるように、扶養家族三人の場合には、月收六千円の標準家族は、現在の課税率でまいりますと千四百七十一円であります。これが二百七十九円。また増收で八千円の場合でありますと二千五百二十二円税金を收めるのでありますが、それが七百二十五円に減つておりますから、これは明らかに大藏大臣の言われるように、ある意味においては勤労所得税は軽減されております。これは私も認めるのであります。ところが総所得額に対しまして、税額及び徴收率の占めます割合を見ますると、昨年度は勤労所得税は、総所得額に対しまして四%であつたのであります。ところが本年度は五・六%に上つております。それから事業所得の方も同樣でありまして、昨年は総所得に対しまして六・四%でありましたものが、本年は七・八%にいずれも上つております。こういう点を見ますると、なるほど昨年の税率よりは減つておりますが、これは当然通貨が膨脹いたしまして、賃金も高くなります。從つてその控除も当然考えねばならぬのでありますが、所得税の割合から申しますと、所得税のうちの勤労所得税の占める割合、それから業種所得、事業所得の方もそうでありますが、これも総所得に対しまして、また所得税の割合からいいましても、これはいずれも上昇いたしているのでありますから、私は勤労所得税及びこの所得税というものは、全体から見まして軽減されているということは言えないのじやないかと思うのであります。從つて北村大藏大臣は所得税を軽減したその足りない分を、事業所得税で補つたと、こう説明されるのでありますが、そうじやないのでありまして、歳出の方が殖えたのであります。そうしてこの歳出の殖えました部分に対して、税源がないのでありますから、その歳出の殖えました部分に対して新しい税でこれを埋める。こういうふうに考えるのが、一番実情に合つているように私は考えるのでありますが、この点について北村大藏大臣は、どういうお考えをもつておられますか伺いたい。
  239. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 まず前段の所得税を軽減したから取引高税をとる、こういうように考えたかということでありますが、あるいはそういうふうにとられる説明をしたかもわかりませんが、これは私といたしましては、勤労所得税を大幅に引下げた、それからそのことと併せて取引高税を新たに設けることによつて、全体の適正化をはかる。こういうふうな考え方をもつているのでありまして、むろんこの新しい財源として歳入の所得税軽減による欠陷を、これで補おうとしたことは事実でありますけれども、そのことによつて、全体的な総合的な適正化をはかるというところに、一つの力点をおいていることを御了承を願いたいと思います。  それからはたして所得税が軽減せられたかどうかということでございますが、これについてきわめて具体的な数字をあげての御質問でございましたので、これはもし許されますならば、分科会等において具体的な数字をもつて、お答え申し上げた方がいいと考えますので、さように御了承を願います。
  240. 本間俊一

    ○本間委員 卒直に北村大藏大臣が、この間委員会でお話しになつておりました答弁の点を御訂正になつたようでありますから、その点は重ねてお尋ねをいたしません。  あと二、三項目ありますから、急行列車で進みたいと思いますが、北村大藏大臣は本会議の席上におきましても、今度の予算を編成なるにあたつて、できるだけ物價の値上げを抑えるために巨額の價格調整費を出した、それからまた災害復旧でありますとか、あるいは農業土木の復旧でありますとかいうような、生産に関係のある公共事業費も昨年度に比較いたしまして相当に増額しておる。そういうところに重点を置いて今度の予算を編成せられたということを言明されておるのでありますが、なるほど大藏大臣の指摘されておりますように、公共事業費は上つております。三割方金額の総額においては殖えております。しかし昨年度のたとえば河川関係で申しますと、二十二年度にすでに工事が完了しております部分が相当あるのであります。いつかの委員会における言明をみましても、大体二十億程度があるのであります。これは農地関係の場合もそうでありまして、なるほど農地復旧は予算面では二十九億を割り振つてありますけれども、二十二年度にでき上つておる部分に対する金を送つてやらなければならぬものが、大部分を占めるのであります。そういうように考えますと、河川関係の災害復旧、それから農業関係の土木にいたしましては、昨年度よりは実際の場合を見ますと、事業量では減つておるのであります。從つて大藏大臣が予算の編成にあたつて、こういつたような生産に直接関係のある部面に非常に重点を注いだと言われることが、どうしても実際上から見ますと、ただ名目だけのことでありまして、その実質はむしろ昨年度より事業量は減るのではないか、こういうように私は思います。ところが農業土木にいたしましても、河川改修にいたしましても、また河川関係の土木にいたしましても、これはどうしても本年度中にやらなければならぬ最低の分量があるのであります。そういたしますと、どうしてもこれは行く行くは追加を私は必要とすると思うのであります。よしんば追加予算を必要としないという政府方針をもつて一貫せらるるということに相なりますならば、昨年同樣これは何らかの金融的な措置を私は講ぜざるを得ないような実情に陷ると思うのでありますが、この点に対して大藏大臣はどのような考えをもつておられますか。
  241. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。昨年のずれの話が出ましたが、それはやはり同じようなことが今年も行われるだろう、かように考えるのであります。それから事業量の問題でありますが、これは大体事業量として約三〇%は殖えるものと考え予算を立てております。その程度ならばこの資材ともにらみ合いもつきますので、安本等とも十分協議をいたしまして、大体三〇%程度事業量が殖えるというようにもくろんでおります。
  242. 本間俊一

    ○本間委員 大体事業量が三〇%ぐらい殖えるということになりますと、金額にいたしまして大体どの程度になりますか、その点をお尋ねいたします。
  243. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 それはただいま御審議を願つております予算面に現われておる通りであります。
  244. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、総額においては減らぬというお考えでありますか。四百二十五億の公共事業費は今後不動なものである。その中で今大藏大臣の言われたような趣旨を貫徹されるというのであるか。事業量が三〇%殖えるということを大藏大臣は認められております。事業量が殖えますれば、当然これは資材の関係もありますが、予算は殖えていくのが当然だと思うのでありますが、その点はどうですか。
  245. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ただいま御指摘になりましたごとく、金額において殖えるのであります。四百二十五億の範囲においてであります。
  246. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、河川関係の災害費が五十二億、農業土木関係は二十九億になつておりますが、この数字はこれよりも殖える。事業量が三〇%殖えれば、それだけ殖えるものだというふうに了承してよろしゆうございますか。
  247. 福田赳夫

    ○福田政府委員 ただいま大藏大臣からお話のありました通り、昨年度の予算は百四十七億のものが、本年度におきましては四百二十五億になつておるのであります。四百二十五億にいたしますれば、昨年度に比べましてどのくらいできるかと申しますと、大体三割増の事業量ができる。かようなことになつております。すなわち三割増というのは四百二十五億で、昨年度に比べまして、それだけよけいに仕事ができるというわけでありますから、さよう御了解願いたいと思います。
  248. 本間俊一

    ○本間委員 ちよつと政府の説明では納得がいかないのでありますが、昨年度は御承知のように、土木関係、それから農業土木の災害関係を含めまして、大体予算は二十二億程度と私は承知しております。ところが昨年度できました仕事の残りがある。その残りも大体土木関係で二十億、これを差引きますと、五十二億から約二十億を差引きますと三十二億であります。そうすると昨年は二十二億の予算で、しかも大体十億ぐらいの金融的な措置があつたわけであります。そうすると昨年は四十億程度の土木関係の仕事をしておるのであります。ところが今年は今私が申し上げましたように、三十二億であります。それに対して政府が金融的な措置もしないということになるならば、しかも昨年よりも七割物價が値上るのでありますから、それを考慮に入れますれば、当然に事業量が減るのであります。政府は一体どういう予算で三〇%事業量が殖える、こういうふうにお考えになりますか。公共事業費全体でなく、私は災害関係の河川土木、それから農業土木、この科目を限つてお尋ねをしておるわけでありますから、その点明らかに御答弁を願いたい。
  249. 福田赳夫

    ○福田政府委員 ただいま三〇%と申し上げましたのは、公共事業全体といたしましての話であります。昨年は災害だけに限定いたしますと、さような増加でなく、多少それよりは落ちると思うわけであります。しかし災害というものは、本年もまた災害があるかもしれないということが考えられるのでありまして、この場合におきましては、予備金十億というものがとつてある。またその予備金十億円で足らぬ際には、災害を予期いたしまして、予算外契約をとつております。これは二十億あるわけであります。昨年度は十億であつた予算外契約を、本年度におきましては、二十億円に増額いたしまして、これをもつてこの予算外の契約をし、もし予算外の契約としてこれが実効があがらぬという際には、金融的措置も講じなければならぬというふうに考えております。すなわち予備金的な災害対策というものが三十億円は用意してある。さように御了承を願いたいと思います。
  250. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、金融的な考慮はしておられるような御言明でありますが、私はこの問題はこの程度に打切りまして、復金への政府の出資でありますが、これは当初五百六十億というようなうわさがあつたのでありますが、それが百八十億になつたのであります。二十三年度中に政府の復金への融資が大体百八十億で一体十分に大藏大臣はお賄えになるのかどうか。この点をお尋ねしておきます。
  251. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ただいまの御質問は、当初復金債は全額償還するものとして、從つて拂込にあたる金額の一應計算を立てかけたのでありますが、日本銀行保有のものは必ずしも今にわかに償還しなくとも、結局今の復金債の実情から卒直に申しますと、市中消化はなかなか困難でありますので、復金保有の分はすえおくということにして、一般引受のものに対する償還に充てるために金額を減少いたしまして、この拂込みを計画いたしました。それから復金拂込については、別途御審議を願つておると思いますが、四百五十億新たなる増資のことを提案いたしておる次第でありまして、これは多分ただいま御審議中であると思うのでありますが、さように御了承願います。
  252. 本間俊一

    ○本間委員 私の見ますところを卒直に申しますと、ただいま北村大藏大臣の御指摘通りに、四百五十億の増資を政府が提案されておるのでありますが、復金当局は第二・四半期までにどれくらいの費用が要るかということを一應調べてみますと、第二・四半期の終りまでに六百億程度の金が要るように私は見ております。從つて大藏大臣のただいまの御見解は、これも同樣に私は過小にすぎると思うのでありますが、先を急ぎますからその程度にいたします。  予算は言うまでもなく歳入歳出が見合つてはいつてこなければならぬのであります。從つて大藏大臣がときどき言明されるように、時期的調整がきわめて大切であります。大藏大臣は、昨年のように歳出入の時期的なずれは來さないように、万全の措置をとるというふうに御言明されておるのでありますが、もし北村大藏大臣の御言明がほんとうであり、自信があるといたしますならば、大藏省証券の発行限度は現在五百億になつておりまするが、これを六百億に拡げる必要はないと私は思うのであります。御承知のように、証券の発行が一箇月ずれるといたしましても、四千億円の予算の一箇月分、すなわち三百三十億でありますから、この見当なれば十分賄えると私は思うのであります。そういたしますと、現在の五百億で不足はないというように、私は見るのであります。それを百億拡げて六百億程度にしようというところに、政府が收支のバランスをとる自信がないことを暴露していると見ておるのでありますが、この点について、北村大藏大臣の御答弁を求めます。
  253. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 歳入歳出の時間的な食い違いがないようにしたいということは、申し上げた通りであります。從つてそういう面において、大藏省証券の発行はできるだけ避けたい。これはもう申すまでもありません。ただ今度六百億になつたのはどういうわけであるかという御質問でございますが、もちろんこれはわれわれのはかり得ないことは起ることもあると思いますし、また金額的に申しますと、予算が大体昨年度の倍額に相なつておりますので、さような点等を考えまして六百億で御審議を願いたいと考えております。
  254. 本間俊一

    ○本間委員 予算を見ますと、價格補正等特別措置費といたしまして、六十億円の項目があるのであります。これは一体どういう性質のものでありますか。
  255. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お答え申し上げます。これはこの席からちよつと申し上げたことがあると思うのでありますが、予算編成の際に、新しい物價並びに新しい賃金ベースによつて、それぞれそろばんをはじいたのでありますが、非常なもろもろの雜件がございまして、このアイテイムは約五千件ございます。これに対して、その一つの科目ごとにこれを調整いたしておりますと、相当時間を要しますので、從つてこれは方法においては根拠のある具体的な方法によつてつたのでありますけれども、また一應ただいま指摘のありましたような方法で、物價並びに賃金に対する、補正ができるというような、ここに彈力をつけた次第であります。
  256. 本間俊一

    ○本間委員 大藏大臣は、物價並びに賃金に対する補正の費用、こういうふうに説明されておりますが、これは賃金とは関係がないのではありませんか。
  257. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 主として物件費でありまして、官公吏の俸給には関係がないのでありますが、雇用しておる臨時の人夫とか、その他のものがございまして、そういうものの補正も含まれております。かように御了承願います。
  258. 本間俊一

    ○本間委員 そうしますと、この六十億の予算は、物件費の單價でありますから、今大藏大臣の言われたような点で、これは各項目に分類されて調整さるべき費用であると思つております。そういたしますと、今度政府の出しました予算の單價は、きわめて不確実な数字基礎の上に立つているという結論になるのであります。從つて予算の目以下の実際の支出額は、きわめてあいまいな数字が出ているように思うのでありますが、この点大藏大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  259. 福田赳夫

    ○福田政府委員 この特別措置費をもつて補充いたしますのは、予算の中の重要ならざる経費に充てるのであります。すなわち大藏大臣から申し上げました通り、数千件のこまかい経費であります。大きな経費はすべて今回の物價改訂の線を織りこみまして、各改訂をいたしました内容そのものを予算に掲げておるわけであります。ところがこまかい問題はとうていさような時間がなかつたために、一まとめにいたした。しかしながら、一まとめにいたしましても、各省に載せておる金額そのものは科学的に出しております。すなわちその省には備品費がいくらある。あるいは旅費がいくらあるとか、あるいは材料費がいくらあるとか、さようなことで現行の單價で載つておりますから、それに対して何割増しというわけであります。それが各事項ごとに載るものですから、これを各省ごとにまとめて載せておるというような次第であります。
  260. 本間俊一

    ○本間委員 そういたしますと、今度の予算を通じまして、政府は物件費の單價の値上りを大体五〇%程度に抑えているというように、私は聞いているのでありますが、事実でありますか。
  261. 福田赳夫

    ○福田政府委員 これはマル公のあるものにつきましては、六月十五日より大体七〇%増加するために必要な経費を計上しているわけであります。それからマル公のないものにつきましては、それぞれこれに準じて大体の必要な金額を載せております。平均いたしましたならばどのくらいになりますか、ちよつとただいま資料をもつておりません。
  262. 本間俊一

    ○本間委員 最後に、ただいま私は氣のついた諸点についてお尋ねいたしたのでありますが、なるほど政府のもつておられる資材であるとか、あるいは時期的なずれは当然あるのでありますから、政府予算の計算にあたりましては、七〇%の値上りはすべて計算済であるという御答弁でありましたが、私は政府の七割値上げをいたしました單價が、必ず七割以上上つてくると思うのであります。そういたしますと、政府のただいま計画をいたしております事業は、計画通りに進まない結果に相なるのでありまして、大藏大臣はしきりに追加予算の必要がないと言われておるのでありますが、私は必ず追加予算を必要としてくるというふうに見ているのであります。從いまして、今度の予算総覽いたして私の感じますことは、歳出の方がどんどん殖えるものですから、政府歳出に合わせるために、やむを得ず歳入の方をむりに上げていつたような感じがして、この点私ははなはだ遺憾であります。從いまして、私はこの点に対して遺憾の意を表しまして、私の質問を打切ることにいたします。
  263. 鈴木正文

    鈴木委員長 明日中に質問を結了したい予定でおりますから、政府の方も明日はできるだけ御勉強を願いたいと思います。  本日はこれで散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。     午後六時二十三分散会