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1948-06-22 第2回国会 衆議院 予算委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十二日(火曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 鈴木茂三郎君    理事 庄司 一郎君 理事 苫米地英俊君    理事 稻村 順三君 理事 川島 金次君    理事 押川 定秋君 理事 小坂善太郎君    理事 今井  耕君 理事 大原 博夫君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    磯崎 貞序君       角田 幸吉君    上林山榮吉君       古賀喜太郎君    島村 一郎君       鈴木 正文君    鈴木 明良君       西村 久之君    原 健三郎君       本多 市郎君    本間 俊一君       海野 三朗君    加藤シヅエ君       黒田 寿男君    田中 松月君       田中 稔男君    中崎  敏君       矢尾喜三郎君    川崎 秀二君       小島 徹三君    圖司 安正君      長野重右ヱ門君    笹森 順造君       中村 寅太君    世耕 弘一君       野坂 參三君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         農 林 大 臣 永江 一夫君         労 働 大 臣 加藤 勘十君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         物價廳次長   野田 信夫君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君         大藏事務官   河野 一之君         大藏事務官   平田敬一郎君  委員外出席者         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算  昭和二十三年度特別会計予算     —————————————
  2. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 開会いたします。  本日午前中は閣議のため質疑を続行することができませんでしたが、理事会と打合わせの上、委員長といたしましては、できるだけ本日中に質疑を終了いたしたい考えでございましたが、審議の状況からみまして、明日に質疑は続行しなければならぬかと存じますが、できるだけ進行をはかりたいと思います。それでは昨日に引続きまして質疑を行います。大原君。
  3. 大原博夫

    大原委員 私はお尋ねしたいことがたくさんありますが、時間が少いので、簡單に列挙してお尋ねして、最後に私見を述べてまたお答えを願いたいと思います。お尋ねいたしますのは、大臣でもあるいは他の政府委員の方でも、適当にお答えを願いたいと思います。  農家は主食の價格の引上により、また商工業者物價引上により、勤労者は賃金の引上によつて、それぞれ收入増加することは事実でありますが、農家にしても、商工業者にいたしましても、小規模でありますので、増收はいずれもわずかであります。勤労者引上げられたといつてもやはり僅少であります。各農家平均反別から、今度米價がかりに三千二百円に引上げられたとして、その計算をいたしてみますと、大体一万円程度増收ができるのではないかと思うのでありますが、その一万円も一家五人として月に割つて見ますと、一箇月一家がわずかに八百円程度しか増收にはならない。なお一人当りにいたしますと百七、八十円にしかならないという現状でありますが、これに物價が上り、運賃料金が上り、あらゆる税が上り、また税が新設される、あるいは酒、タバコも上る。こういう状態になつたのでは、子供の教育費も出ないという状態になると思います。さらにインフレが追討をかけてくるということになりますと、ますます生活は苦しくなるばかりで、二十二年度生活と、二十三年度生活と、苦しさはどういうふうになるか。政府としてのお考えをお知らせを願いたいと思います。これが一つ。二番は、國民中には増收のないものも相当数あると思いますが、どのくらいの割合にあるものでありましようか。三番は、國民担税能力は極点に達しておるて思いますが、この点に対して、藏相のお考えはいかがでありますか。四番は、本年の税は先日からお話しのように、時期的に徴税可能なりとのお考えようでありますが、私は大いにずれが來ると信じておるのであります。この点はいかがでありましようか。五番目には、二十二年度中に所得税徴收された金額はいくらで、滯納分で本年度徴收できると見込まれるものはどの程度でありますか。六番は所得税基礎控除扶養控除引上げたり、あるいは勤労所得税を大幅に引上げられて昨年は負担したが、今年は免税となるものがありますかどうか。あれば大よそどのくらいの見込みでありますか。昨年より軽減されるもの、これは割合で下げるという意味ではなく、絶対額と申しますか、こういう点で下げるものがあれば、大よそ見込み数をお知らせ願いたい。七番は、一方に免税があり、減税となるものがあるのに、今年度納税者数増加して見込まれておるのはどういう理由であるか。昨年納税すべき範囲になかつたものが、税制改革がなかつたにかかわらず、價格改訂によつて増收となり、納税範囲にはいつてくるものがありますか。これをお伺いいたします。八番は、所得税の各税率区分ごと納税見込み人数徴收見込額をお知らせ願いたい。九番目には二十二年度所得徴税するのに相当困難でありましたが、その原因は何であつたと観察しておられるか、この点をお答え願いたい。十番は、今年度は大よそ二倍の予定で昨年よりさらに困難すると思うが、その見透しはどうであるか。所得税徴收見込みはどうして決定されますか。各税務署、あるいは財務局調査報告に基くか、それとも机上で理論的に推定されるのであるか。財務局税務署に対する割当はどうして決定されておるのであるか。これだけまずお答を願いたい。
  4. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま大原委員の御質問は、税に関することが非常に多いのでございますが、これにつきましては、主税局長より詳細に申し述べさしたいと思います。その中に國民生活がこれで樂になると思うかどうか、こういうようお話がございましたが、これはきわめて重大な問題であると思うのであります。大まかにこういうような現わし方では、きわめて不適当ではございますけれども、かりに國民所得というものを取上げて申しますと、昨年は國民所得に対して財政負担が一人一八%であつた。しかるに今年は二二%となつた。これは確かに、國民所得に対して國家財政負担が増したわけでありますから、一應國民所得の側から見まして、それだけ負担が重くなつたと見なければならぬと思うのであります。しかしながら、これはたとえばイギリスでは現在國民所得の四割が税として徴收されておるというような事実もあります。これをもつてわれわれはイギリスは四割で、日本は二二%であるというよう簡單考え方はむろんいたしておりません。と申しますことは、ただいまもお話がございましたように、家計実態が違うはずである。たとえば現在日本においては金額的に申しますと、七割ぐらいが自由もしくはやみ物資であつて、二、三割がマル公ルートである。もつとも物の分量の方面から申しますと、六割五分が自由もしくはやみ物資で、マル公正常ルートのものは一五%ぐらいを占めておるということになりますけれども、かよう家計内容実態が改善されてまいりませんと、ただ大まかに國民所得総額いくら、これに対して税の総額いくらというだけではいけませんので、從つて年度一八%のものが今年度二二%になりましても、各個人の消費生活内容がよくなるということであれば、一應数字の上に現われた負担に増したけれども、実質的には軽減せられた、從つて家計の赤字が解消する。こういうふうに考えられますので、私どもとしましては、一應統計的な数字の線では、昨年の一八%が今年二二%になつたという事実はございますけれども、なお消費生活内容において配給をできるだけ増すようにする。正常ルートからわれわれの消費生活に必要な消費財がはいるというよう方面にも、最善努力をいたしたい。本日あたり発表になりますか、明日の新聞に載りますか、端境期の食糧不足について、多少心配しておりましたが、これも非常に好意ある連合軍の取計らいによりまして、一應さような心配も解消したようでございます。かようなことがだんだん都合よくまいりますと、これでわれわれの家計内容に変化を來してくる。こういう点に期待がもてる、さよう考えておるのでございます。  それから担税能力の問題も、ただいま申し上げましたことの中に含まれるかと思うのでございますが、今日税は非常に重い。これは実に重いのでありまして、私ども自身経驗から申しましても、これ以上はなかなか耐えがたいような氣がするのでありますが、今後はなるべく税負担を重くしないようにということは、歳出をどうして圧縮するかという問題になるのでございますが、しばしば問題に出ております行政整理その他さような面において、非常に歳出の結果等に反省をいたしまいて、圧縮できるものは十分圧縮していくというように、今後努力を続けたいと考えておるのであります。なお昨年の徴税が非常に困難であつた、今年はどうかというような御意見もございましたが、これは昨年は時間的には時期的なずれがございまして、そのことのために一應その総額財政均衡はとれておりましたけれども、時間の時期なずれのために、どうも金融の面に非常な圧迫を與えたというような事実がございますことに省みまして、今年はさようなことのないように、時期的な調節には最善のくふうと努力をいたしたい。漸次自発的な納税組合促進等にも、皆樣の御協力を得て、そういうふうな方向にもつていきたいと思いますし、その他各般のことをいたしまして、時期的ずれ調節には、十分努力をいたしたいと考えているのであります。その他の点、たとえば今回の特に勤労所得税免税によつて從來納税者にして全部免税になるものがあるか、これはあるのであります。これらのこと等については、政府委員より詳細に御答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  5. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまお尋ねの点のうち、まず所得税負担改正後にどうなるだろうかという点でございます。この点はいろいろ見方があろうかと思いますが、別途財政金融委員会の方には、こまかい計算表をお配りしてある次第でございます。大体のことを申し上げて御参考にいたしたいと思います。  まず給與所得の場合でございますと、どこの階級を例にとつてみるかが問題でございますが、一番多い、たとえば月六千円くらいの收入のある者で、親族が三人の場合、この場合をとつてみますと、現行税法によると千四百七十一円の負担でございますが、改正税法によりますと二百七十九円の負担になります。百間あたり二十四円五十一銭の負担が四円六十五銭ということに相なる次第でございます。改正前に比べますと、よほど負担が減ると思つております。ただ御疑問といたしまして、それでは今年の六千円を前年にいたしますとその半分くらいじやないか、前年の場合と比較をするのに、現状から比較しないで、その所得額の名目的な増加を考慮して比較してみたらどうかという見方でございますが、そういう見方から比較してまいりますと、かりにたとえば月收六千円のものが前年三千円であつたとして、この場合を比較しますと、現行税法によりますれば、月收三千円のものの負担している率というものは、一一・三%、百円あたり十一円三十銭負担しているわけでございます。それが本年度におきましては、今申し上げましたように四・六%の負担でありまして、半分以下になります。名目所得が二倍になつたと仮定いたしましても、大体実質負担が半分くらいに勤労所得税の方は下つているという見方ができるのではないかと考えております。そのことは事業所得についても同樣でありまして、ただ事業所得の場合は、引下率が少し違いますが、事業所得の場合で年收四万円の事業所得者は、現行税法によりますと八千八百九十円で二二%の負担になります。それが改正税法によりますと、九千八百三十二円の負担で、百円あたり七円八銭という負担になります。ただこれも名目所得増加でいつたらどうなるかという問題でございますが、かりに單純に所得が倍になつたと仮定して、七万円の場合は百円あたり負担が、改正税法によりますとどうなるかというと、一七%程度でありまして、やはり現行法に比べて、負担率が相当下つてくる。所得が二倍になりまして、額として五割程度殖えるというよう関係に相なるかと思います。所得税負担所得額の増減との関連においてどうなるか、いろいろ見方がむずかしいのでございますが、今申し上げたようなところから御判断願えれば、少くとも所得税に関する限り、実際の負担は、相当軽減になつておると私ども考えておる次第であります。  それから納税人員がそれではどうなるかというお尋ねでございますが、それはたしかお手もとにお配りしてあると考えますが、改正前の現行法による見込人員は、給與所得等が約千百七十万人、それが改正案によりますと、約九百万人程度に減る。それから営業の方はあまり下の方は少いので減りませんが、現行法によりますと、二百六十八万人が二百六十四万人程度に減る。これはわずかですが、平均所得割合高いので、比較的落ちる分は少うございます。それから農業所得の方は、現行法で見ますと、四百九十八万人の見込みが三百四十万人ほどになる。これは平均所得が比較的低いですから、納税人員見込みは減るだろうと見ておる次第でございます。なお前年度に比較いたしましても、それぞれ勤労所得者及び農業所得者は二割前後減ると見込んでおります。人員の方はさよう状態でございます。  それから昨年度所得税は、御承知ようにそれぞれ所得を適正にとつて課税するという建前で賦課決定いたしたわけでありますが、そのうち昨年度年度内にはいつたものが、約五百十億くらい申告納税の分がはいつておるのです。本年度に繰越した分が二百十億、そのうち約六〇%程度は本年度歳入になるという計算をいたしたのでありまして、それは予算にそれぞれ見込んでおります。大体昨年度所得税の繰越し状況はさようでございます。これは從來と違いまして、所得税決定は昨年から建前が変りまして、年度末ぎりぎりに決定する、そしてなるべくその年度内收入を確保するという建前に、税制が変つておるわけでございますか。私ども予算見積り方におきましても、ある程度年度に繰越すということは、やむを得ないことと考えておる次第でございます。從來は御承知ように、前年度所得をもとにして所得税額決定し、その決定した税額を、実は翌年の二月ごろまでに徴收していたわけでございますが、昨年から予算申告納税制度改正になりまして、なるべく早く徴收するという建前から、なるべくその年度所得に対する税額は、その年度徴收するという建前に変つたわけでありまするが、それにいたしましても、年度末ぎりぎりの決定をいたします関係上、やむを得ずかような結果に相なつた次第でございます。この税額は目下徴收を促進すると同時に、残つた分については、收入を確保すべく一生懸命やつておる次第であります。  それからもう一つ免税者の数のお尋ねでございますが、これは実は正確な調査がございませんので、先申しましたように、課税している人員については、先ほど申し上げた通りでございますが、あとのものにつきましては、若干の推定を加えて、適当に見込むよりほかないと思う次第でございます。本日は今手もと資料をもつておらないのでございます。  それから歳入の額は、先ほど申し上げましたように、どう見積つておるかというお尋ねがございましたが、これは御承知ように、所得につきましては、それぞれ前年に比べまして、本年の生産状況がどうなるか、あるいは物價がどうなるかということを各所得ごとに見積りまして、前年の決定に対して本年度はどれほど決定ができるだろうか、その見込額大藏省あるいは財務局等意見も聽きまして、調べて、それに基いて歳入見込み計算を立てておる次第でございます。なおそれに関連して、昨年は收入見込額というものを、財務局大藏省から示し、財務局は各税務署ごとにさらに目標額というものを示しておりますが、これを本年度もやるか、やらぬかは今後の問題でございますが、やるといたしますれば、本年度におきましては、税法が通過するとするならば、はたしてどれだけ徴收ができるだろうかというようなことを、各現地からも報告をとりまして、それを予算と見比べまして、なるべく適切妥当な目標額を設定することに努めたいと考えておる次第であります。
  6. 大原博夫

    大原委員 今聞いた中で所得税のことについては、税率区分ごとにお聽きしてみたいと考えたのであります。税率の各区分ごどに、その納税見込人数や、徴收見込額がわかつておれば、これをお聽きしたいと考えたのでありまして、お示しのことは、すでに配布せられた資料でわかつてつたのであります。また所得税の二十二年度中にとつた額、及び本年度に残つておる額は、お話によると七百二十億ほどになつておりますけれども、これよりはもつとたくさん徴收せられ、まだ徴收の余地があるのではなかろうかという考えからきたのでありますから、後におわかりでしたら、お答え願いたいと思います。  次に所得税の率も率でありますけれども、地方の徴税に非常に困難を起し、また國民が困つたのは、むしろ税率よりは算定基準にあつたと思つております。算定基準はずいぶん無理があり、かつ不均衡でありました。農業の方についてみると、農業では普通の反別で米をつくり麦をつくつたという方はまずいいといたしましても、普通の農家で自家用の野菜をつくつてつても、これを一畝つくれば千円を見込んでおるようであります。鶏を十羽飼えば一日に五個の卵を生むとして一箇月一千五百円、年額一万八千円をこれにあてておつたようであります。またやぎを飼つておるというと、仔やぎは半年もするというと一合五円の割合で一日に一升乳が出る。こういう見込みでこれを一箇月千五百円、六箇月で九千円を見込んでおつたのであります。またかきの木でも十本も植えておれば、これは別といたしましても、一本植えておつても、そのかきの木からの收入を見込んでおる。こういうふうな農家実態になつておる。やぎにしても、半年経つて子の生まれるはずがないのであります。仔やぎでも、こういうふうな税のとり方をやつておる。かきの木でも一本でそれから收入が上るはずはないのであります。これは廣島縣の忠の海の税務署でありますけれども、こういうとり方をしておるのであります。これは算定基準に大きな無理があるためであります。  また医業にいたしましても、医者は現在大体三つの段階がある。都会の中で開業しておる医者と、また國民保險や、健康保險で、殊に國民保險はその村が全部はいつてつて國民保險しか收入のない者がおるのであります。また一部においては、こういう保險をやる片方で、保險外のものを治療しておる者もあります。これらに一律に、收入の五五%はその必要経費であつて、四五%を残る所得をみなして、これが算定をしておるのであります。商工業のことはよく知りませんけれども商工業でも、先般中野区の商工組合連合会から陳情してきました中に言つておるのには、國民最低生活の確保ができるよう基礎控除をしなければならぬ。今日のようにたくさんの税をとられるのでは、國民生活ができない。できるよう基礎控除をやつてくれ。扶養控除もその人を養うことのできるほどのものをやつてくれ。そして残るものは、全部とられても差支えない。こういう陳情をしておるのであります。現行所得税法は、國民生活を何ら考慮することなく、生活費はもちろん、遂には財産全部を納めざるを得ないだろうというような悲痛な陳情をしてきておるのであります。これらはいずれも率よりもむしろ算定基準において無理があると、私は考えておるのであります。税の時期的なずれもあつたでしようけれども、これがむしろ大きな原因をなしておると思うのであります。この点をひとつお答え願いたい。
  7. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまのお話は、きわめてごもつともでありまして、私は本会議でも、またこの委員会においても、たびたび申し上げたのでございますが、これは税制度の問題というよりも、税の技術の問題であります。從つて從來税務当局のはなはだしい手不足、あるいは不慣れ等、非常に影響しておると思うのであります。根本問題は申すまでもなく、だんだんに税が重くなつていくことは、國民に対してはなはだこれはお氣の毒なことでありますけれども負担はしていただかねばならぬ。しかしそれは適正でなければならぬ。どこまでも公平でなければならぬ。この大原則は失われてはならぬはずなのでありますが、的確に所得を押えるということは困難であり、そこに不慣れの点あるいは手不足点等がありまして、特に農村等において相当問題が起したことは、私よく存じておるのであります。そのつど事実について調査を命じ、行き過ぎについては是正し、あるいは是正のためには格段の配慮をするというようなことも、やつてまいつたのであります。今後税收がますます國家財政の上において大きなウエイトをもつのでありますから、この点についての改善を十分しなければならぬと存じまして、いろいろやりつつあるのであります。この具体的なことにつきましては、何度もこの席でも申し上げましたし、本会議でも申し上げましたので、ここでは重複いたしますから申し上げませんが、税務機構を拡大すること、それから有能な人員を配置いたしまして、本來の税のやり方で公平適正な課税の方法によつて納めていただくのはやむを得ないが、いやしくもそのために取扱上の不平不満があつてはならないので、その点につきまして、十分注意いたしております。これはひとり農村ばかりではございませんが、特に農村において、そういうことが非常に多かつたのでありまして、この点は十分注意いたします。それから今回財務局税務署の数も殖やしますし、人の再教育もやつておりますし、その他いろいろな点について、ただいま大原さん御指摘になつたようなことのないように、十分努力いたしております。
  8. 大原博夫

    大原委員 税率もぜひ下げなければなりませんけれども算定基準については、最善の御努力を願いたいと思います。  なお私は、日本インフレは、厖大なる財政から來ており、産業資金に対してなされたる莫大な融資が生産化されない、たとい生産化されても、輸出に向けられて、國内需要で満たされない。從つて物資は依然欠乏して、そこに厖大財政資金が作用してインフレが起ると思つておるのであります、通貨面からするインフレに対する政府金融政策は、ずいぶん無理な政策をとつておられますが、とにかく一應成功したと、私は思うのであります。この際アメリカの積極町援助が明らかとなつて外資導入も可能となつてというので、インフレに対する大体の見透しがついたような氣がするのであります。今日ただいまのところでは、國民にも明るい希望ができてきたことは事実であると思つております。この程度インフレが食い止められるとするならば、日本のためにまことに仕合せであります。しかし今の状態では、今後のやり方いかんによつてインフレを終熄にも導けるし、また惡化にもすぐ向くのであります。せつかくここまで來たものを、九仭の功を一簣に欠いてはならないと思います。今日通貨膨脹の勢が横ばいしておるからとて、それはインフレを終熄せしむるところの決定的な要素となつていないと私は思う。これは一つ技術にすぎないのである。現に一月から四月までの間に通貨増発がわずか一%であり、物價は一〇%以上も上つておるのであります。徐々ではあるけれども、たゆまざる足取りをもつて物價は騰貴しておる。これはもちろん物資不足から來ることを、明らかに物語つておるものであります。國内物資が増産せられない限り、インフレの止まるはずはない。今年の予算において増産目的のためにのみ増額が許さるベきであつて、他は断じて緊縮をしなければならぬと存じております。國民に非観させないように、明るい希望をもたせるのはよろしゆうございますが、こう税が高くて、物が上つてまいりまして、國民生活がこう混乱しては國民は決して明るい氣持をもち得ないと存ずるのであります。通貨の膨脹は小やみなつた。四月からは外資がはいつてくる。インフレは抑え得ると、政府自身が安心をして、氣をゆるめたのではないかと思つておるのであります。なぜかと申しますと、日本現状において何としても四千億円の予算を組むことは冒險過ぎると思うのであります。追加予算は出さないと、大藏大臣は言われておりますが、私はこれはやはり出てくるものだと実は信じております。物價も賃金も上るし、鉄道、通信料金は上るし、産業資金の融資も増すでありましよう予算四千億は必ず時期的ずれがくるし、徴税は思うに任せず当然國庫財政資金が超過を來し、産業資金の融資の合計と、國民貯蓄との間に相当開きができると思うのであります。ことしの貯蓄は、御存じのように、四月分は二十三億であつたのに、わずか二十億しか貯金ができなかつたということを考えてみますと、一層恐しい氣がするのであります。藏相はこの予算によつて、せつかく勢いの鈍化したインフレが、再び高進に向うとは思うておられません。どうせインフレは高進するに違いありませんが、どの程度高進するという見透しをもつておられるのでありましようか。今年度は通貨は九百四十五億と、大体見透しをつけておられるようでありますが、私はそうではなくして、二千億にでも達するのではないかと考えておるのであります。この点についての御所見をお聽かせ願いたいと思うのであります。
  9. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問並びに御意見は、私ども大体同じよう考えをもつております。まつたく御意見の通りでありまして、今これでインフレーションがすぐに終熄するというような安易な氣持をもつてはならぬ。この点はきめて同感であります。さればといつてインフレはもうどんどん進行して、結局一日も早く金を物にかえなければ損をするといつたような不安で、いつまでもつきまとつては、耐乏生活はできない。さいわいにただいまの内外の諸條件が、私どもは一應前途に望みをもち得るようないささかの明るみをもつてきたこの際に、われわれは今までがまんしてきたが、これから少しずつ報いられるのだという意味で、努力さえすれば、幾多の條件がありますけれども、これで一應安定圏に達することが可能であるのであります。生産の状況も惡い面を見ると、なおはなはだ遅々たるものがございますけれども、たとえば主要なる肥料のごときも、相当の生産をしておる。その他貿易産業も、だんだんに活氣を帶びてきたという点もございますし、クレジツトの関係も、漸次好轉しておる。そういうふうないろいろなことから考えまして、政府財政インフレを非常に愼しむというような点、それから通貨において、苦しくとも放漫な政策をとらない方針を堅持していけば望みはもてる。こういう点において、ただいま大原委員のおつしやつたことと、私はまつたく同じよう考えをもつておるのであります。それで三月、四月が、お話のごとく、預金の吸收が非常に惡かつた。これは税が重なりまして、一どきに非常に徴收をやつたということが、大きくたたつたと思うのでありまして、毎年三月、四月は非常に惡い時でありますが、その惡さがひどかつたのであります。これはいかぬというので、金融機関もただいま鋭意救國貯蓄の吸收に非常な努力をしていただいておりますので、漸次好轉すると考えるのであります。通貨の所要量も、なかなかむずかしい問題でありますけれどもお話のごとく少量で大体やつていけると思う次第であります。今のお話の筋は、大体私どもも深く感を同じくするところでありまして、そういう方向に向つて努力していきたいと考えております。
  10. 大原博夫

    大原委員 私はこの情勢をもつて見れば、昨年度以上の増收はできないと思つておるのであります。今日は何人に会いましても、税に対する恨みをもつており、政府に対する嫌惡の情を、この税の面にもつているのであります。先日も私の友人はこう申しておりました。税金を拂うのはもうばかばかしくなつた。日本の再建のためにでもなれば拂うけれども、働かないで、どうしたら多くの料金を得られるかということのみを考えている、そんな官吏の過剩人員を養つて遊ばしておくような費用を負担するのは、いかにもばかばかしいと言つてつたのであります。私は政府は各省の要求に應じて、ずるずるやむを得ないやむを得ないで歳出を増して、それに從つて無理を知りつつ歳入の増徴をはかつておる。これではならないと思うのであります。私は本予算についてこういうよう見方をしているのであります。  一、國民負担はほとんど限界点に達して、今日以上の重税は課せられない。  二、今日の國民経済において、この巨額の徴税は困難である。かつ時期的的に徴税できないと思う。從つて時期的ずれを生ずる。追加予算もどうしても必ず出るようになる。いよいよ厖大なる予算になり、政府資金は支拂分超過を多に生むことも明らかである。  三、やむを得ない経費だというが、日本の経済としては全体として厖大に過ぎる。  四、行政整理を行わず、一割五分は行うと言われますけれども、これは実質人員にまでふれておりません。  五、官廳経費の節減をはからず、現状のまま経費を増しておる。すなわち歳出の抑制が足らずして、これが税金に轉嫁されておる。行政簡査化をはかるべきであるのに、ますます官廳の複雑化を來し、人員増加する。  六、二十三年度予算を実行するとすれば、必ずインフレを急速に高進することは、各層各界の意見の一致するところである。從つてせつかく通貨増発を抑制し、インフレの足踏みの好機をここに一簣に欠いてはならない。  七、各経費について考慮を拂い、各省の要求に應じて考究しておつたのでは、経費の節減はいつもできない。よつて今日の状態下におきましては、断固たる決心のものに、大なたを揮うのでなくては、とうてい緊縮はできない。こういう結論に達したのであります。一見非常に乱暴なことを申すようでありますけれども、研究をすればするに從つて、だんだんこういう結論を私は得たのであります。本予算歳出を一律に二割天引を行い、そして政府はその実行予算を作成して、これを実行する以外に方法はないと私は思うのであります。こに二割天引を行います結果は、七百九十八億七千六百万円というような経費が不要となる。この不要の経費をもつて國民負担の軽減をはかるならば、取引高税をとることも要らないし、所得税の軽減も二百四十億程度これに増すことができる。また一部百四十億程度を出しますならば、鉄道の運賃さえも倍率をかえて、二倍半程度に引下げることができる。また百五、六十億程度を予備費の中にとつておきまして、二割天引により起つてくる無理な部面を是正することもできる、こういう考え方をもつのであります。二割天引をいたしました結果の利益として税の廃止及び軽減ができるのであります。二番にはほんとうの健全財政ができる。三番には財政インフレの高進を適当に食い止めることができる。行政整備は各官廳経費の節減を強制的になさしめて、一方かえつて能率を向上せしめることができる。事業費も二割減額することになりますけれども、たとたば五割インフレが高進したとしても、二割だけインフレを食い止めるから、事業費の二割減額は、そう惡影響がないのみならず、かえつて事業量は多くなると私は思うのであります。税收も確実なら、貯蓄をする力を養うこともできる。また賃金の三千七百円ベースは、もう崩れかかつておると言いますけれども、こういうような二割天引をして節約いたしますと、これによつてそれを維持することができると私は思う。税の軽減をいたすやら、鉄道運賃は減つてくるやら、一般の緊縮によつて、三千七百円ベースもこれを維持することができると思うのであります。また地方自治体にも、これに即して二割天引をさせますれば、私は事業税も維持せしめることができる。また地方の行政整備、経費の節減をも行わしめることができるし、これが國民の心理に及ぼす影響も多大であると思うのであります。  以上のような見地に立つて、私は歳出二割天引を行つて、実行予算を作成し、これを実行するということを強く主張いたすのであります。政府のこれに対する御所見を質したいと思うのでありますが、都合によりましては、今ただちに御答弁を求めません。わが國の現状においては、どうしても歳出を徹底的に切り詰めることを必要とするので、歳出の節減が、多くの摩擦や障害を伴うことはわかつております。さればとてこれに献身的な努力をいたさなければ、インフレ抑圧の根本を没却するばかりでなく、歳入面における無理なやりくりを通じまして、財政國民経済の摩擦と矛盾をいよいよ深刻にして、事実上予算の運営を困難に陷らしめるのが、私はおちではないかと思うのであります。各政党から予算修正案が発表されております。國民負担を軽減せんとする努力が現われておりますが、節約でなくして、税收入を多く見込んでおられるものもあるのであります。しかし今年は大藏大臣は追加予算を出さないのだと言つておられますが、一般に全然追加予算が避けられるとは見ておりません。否むしろ昨年のような追加予算が出はしないかと案じておるのであります。こんな場合を予想いたしまして、私は税の自然増收を見込んで、これをもつて負担の軽減に充てることは、禍を後に殘すものだと考えております。ただいまは御承知の通り、言論界はもちろんのこと、学者、経驗家、実際家こぞつてこの予算を実行に移せばインフレを高進する。そうしてまた必ず莫大な追加予算を必要とするようになる。こう言つておるのであります。またそう言つて警告をしております。私は大藏大臣もそう自信はもつておられぬであろうと、実は観察しておるのであります。自信がないのに、あれほど周囲がインフレになり、必ず追加予算を避けられないと注意しておるのを押し切つて、この予算を実行せられて、インフレが高進したら、現内閣や與党の責任などというような生やさしいことではないと思うのでございます。もし私の言いますことに理由ありといたしますならば、——一度言い出したからといつて、そのままつつ張ることは、勇氣があるように見えますけれども、これはかえつて勇氣のないことであります。私はむしろこれより勇氣を振つて國民のためにインフレ終熄のために二割天引の実行予算を編成せられて、これを実行せられんことを懇望してやまないものであります。もし大藏大臣の御所見を伺うことができますれば、幸せだと存じます。
  11. 北村徳太郎

    北村國務大臣 まことにごもつともな御意見であります。何にしても、だんだん歳出が膨脹いたしまして、しかも均衡財政をもつて一貫しなければならぬという制約を受けておりますので、そこにやらねばならぬ仕事は相当あるし、また非常臨時に起つたような事件もございますし、文教その他等の新しい費目も相当ございまして、今の政府財政は、相当難局に立つておることは、御指摘の通りであります。それでこの場合考えなければならぬ点は、行政経費を節約し、あるいはこれを圧縮するという点であると思うのでありますが、今回は行政整理を徹底させて、これに基いて経費の削減をはかるということは間に合いませんために、一應人件費において一割五分天引というような急に間に合うただちに実行のできる方法をまず財政方面からとつておるのでございます。しかし將來やらねばならぬことは、行政の能率化であり、またお話のごとく行政を刷新いたしまして、その方面から歳出を圧縮するということは、きわめて必要であり、また同時に企業全体に対しても、これを整備して一層合理化する。あるいは能率その他の生産率においても、その他の点においても、漸次國際水準に近づけていかなければならぬ。今のよう現状をもつて押していつたのでは、いろいろ外資の支援があり、その他のことがありといたしましても、困難なことは、ただいま大原委員の暗示せられました通りであります。ただこれを実行するに方法と時機があることはもちろんでございまして、ただいまのような情勢で、にわかに急激な社会変動を來すようなことがあつてはならないという点も考えられますし、またそういうことを断行いたしますためには、必要なる失業対策と申しますか、さような点についても、十分なる用意をもつてしなければならぬ。その点に私どもなお十分に思い切つて、ただちによしとみたらやればいいじやないかという御意見と存じますけれども、その点に多少考慮を要することもあるのでございます。一面において企業の面では、企業再建整備も急いでおりますし、その他各般の整備がだんだん行われつつある企業の中で、金融機関については再建整備が一應整いまして、増資もほぼ進みつつあるという状況で、漸次その方面一つの整備が、ある段階から段階へとたどつておるように思うのであります。殘されたものは、ただいま御指摘の行政をどう整備するかという面でございますが、これも相当な具体案が練られつつあるのでございまして、漸次ただいまのお言葉の線に沿つて、歩一歩改善されていくことは間違いない。またそうしなければならぬ。今後はこういう方法によつて歳出の面をどうしても圧縮していくということに努力していかなければならぬ。このことはお話の通りであります。今後そういう線に沿つて十分努力いたしたい。かように存じておる次第であります。
  12. 大原博夫

    大原委員 今すぐ速急にできない。追つて順次やるのだと言われるのでありますが、その順次がなかなか間に合わぬと思いますので、私は即刻こういうふうにやるようにお考えを願いたいと思います。即時御答弁をいただくことは、むずかしいと思うのでありますが、一層御研究の上で、こうした二割天引論でありますが、ひとつ考慮を願いたいことを要望いたしまして、私の質問を打切ります。
  13. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 次は大藏大臣に対する庄司一郎君——なおこの際審議の進行の関係上、質問でも答弁でも、できるだけ簡潔に要領を得るように、特に皆さんにお願いいたしたいと思います。庄司君。
  14. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 ただいま大藏大臣大原委員の質問に対する答弁もあり、本委員はつとめて重複を避けてお伺いをしてみたいと思います。  ただいまのわが國の段階においては、行政の整理、税制の整理、財政の整理、この三者の整理は、いわゆる三位一体化して、即時断行しなければならないものであると考えておるのでございますが、行政の整理については、予算人員の約一割五分を減ずるというような、きわめて微温的なことを、政府は声明されておるのでございますが、この行政整理の面においては、思い切つて年度の実人員以上には絶対に政府の官公吏の人員を増さない。換言すれば、昨年特に片山内閣以來、いろいろな新官廳を開設されて、官僚の保存帶のような、たとえば経済査察関係の役所とか、あるいは今回のこの予算には新聞雜誌の用紙を配給するところの新しい役所の予算を要求されておる。あるいは從來民間でやつてつた配給関係においては、油の公團、飼料の公團、あるいは亞炭の配給の公團であるとか、いろいろな新しい機構をつくられて、少くとも概算において約十万以上の新しい政府の官公吏職員が増加されておると考えます。ゆえにただ予算面において、人員を一割五分程度減すところの予算を提案したという程度のものでありますならば、決してこれは行政整理という名前を冠するだけの價値が内容においてないものである。思い切つて相当大幅に行政整理をこの際において断行するところの御意思がないか。この行政整理と相まつて、税の面に関する改正法が出てるようでありますけれども、この税制は思い切つて拔本寒源的な根本的な改革と改善が必要な時期に迫つておる。この行政整理財政整理と相まつて税制の整理を断行することができ得るものであると考えております。この見地から政府は、特に大藏大臣は前に述べたように、三位一体化して行政の整理をこの後においていかに断行を実現されんとするものであるか、これらに関する御所見を冒頭においてお伺いしたいと思います。
  15. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今度の予算で人件費の一割五分をまず天引したということは、これをもつて政府の所定の行政整理であるとは、私ども考えておりませんけれども、一應われわれは財政当局として政府が現にやりつつある行政整理を持つてつたのではどうもなかなか手間どりそうである。今度の予算において少くとも財政の面において、さしあたり人件費の一割五分を現実に落してしまう、こういうふうな考えでこれを実行いたしましたのでありまして、行政整理は今やりつつありますし、今後も必ず続けてやらねばならぬ。片山内閣時代に人員の二割五分を整理するというようなことが発表されたのでありますが、これも決してそういうよう考え方を捨てたのではないのであります。ただ二割五分を機械的にいつたのではいけない。所によつては二割八分もあるし、所によつては二割に止めなければならない所もあろう。しかしそういう方針はあくまで捨てず、しかも行政の能率化を考えなければならぬということで、ただいまいろいろ檢討をやりまして、委員会等も進行しておりますし、成案のできたものもある。ただいまお話になりました財政の整理をどうするかといういとは、今の段階においてはむしろ行政整理が結果するところの財政整理がかなり大きなウエートをもつのではないか。從つて今後財政を整理するということは、言いかえれば財政が整理されるほど行政を整理しなければならぬと私は考えております。さような面において、今後行政の整理にも十分力を入れまして、財政負担が軽減できるような方へもつていかねばならぬ。この点は先ほどから大原委員の御質問にもお答えした通りでありまして、さよう考えておるのであります。  次に税制のことでありますが、何としてもやはり税関係の大宗は所得税である。日本が今のような非常に財政に窮乏した苦しい中で財政を立てていくというときには、やむを得ざるいろいろな方法をとりますけれども、最後はやはり所得税本位に税制というものが單純化されて、大体それが大宗として動くような体系をとることが最もよろしいと考えておるのであります。ただ今のような段階においては、一方において軽減すべきものを軽減すると、これを補うべきものの御負担を願わなければならぬ。比較的勤労による大衆所得に対しては税を軽減して、しからざる事業等から生ずる收益に対しては、比較的よけい負担していただくというよう考え方等をとり入れまして、全体として総合的に適正化をはかるというようなことからいろいろと税が出ておるわけでありますけれども、これは今にような段階においてはやむを得ない。しかしながら、これは漸次改善を怠るものでない。一旦やつたからどうという考えでなしに、これはいけないと見たら私はただちにお諮りをして、その点はこういうわけで直した方がいいと思うというようなことは、卒直に國会にお諮りして、改正すべきは改正をはかるという考え方でおるのであります。ただいま御指摘の行政、財政あるいは税制の整理は、いずれも同感でおります。ただその時期方法等につきましては、これは実行になりますと、いろいろなことを考えなければならぬ。大原さんにも申し上げたのでありますけれども、今これでようやく日本の経済が安定に向おうとしておるこのときに、失業者が巷に溢れるというようなことがあつてはならない。さればといつて、企業の不健全性をそのままにしてはならぬ。かような矛盾した状態におかれておるのが、日本経済の現状であると思いますが、そういうような点を漸次國際水準に近づけていく、漸次安定にもつていくという方法においてなすべきことはなしていく、これよりほかに手はないと思います。大体においてただいま申しました行政の整理も、ぜひやらねばならぬ。財政の整理は、なおさらやらねばならぬ。税制の問題は、今ただちに税制をどう改正するという具体案をもちませんけれども税制懇談会等において、全体として研究を願つておるのでありまして、特に地方財政がだんだん窮乏してまいりますから、地方財政と併せて考えるということも必要でありますので、さような点においても、今後十分檢討いたしたい。かように存じます。
  16. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 次にお伺いいたしたいのは、根幹税である所得税の税收入額と比較して、補完税であるところのもろもろの雜種税の徴收額があまりに多過ぎると、私は考えておりますが、大藏大臣の御所見はいかがでございますか。
  17. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 お尋ねの趣旨がどういう意味でありますか、よくのみ込めない点も多いのでございますが、先ほど大臣からもお話になりましたように、経済が相当平常な状態に復して、國民の一般的は担税力も相当増してきたというような場合におきまして、これはやはり大臣と同じように、なるべく所得税に依存するという制度の方が、税制としては理想的ではないかということを考えております。ただ今日のように非常に経済界の変動がはげしい。しかも一方歳出といたしまして相当な歳出を出さざるを得ぬ、こういう事態に相なりますれば、やはりその他の租税におきましても、でき得る限り徴收いたしまして、それでもつて財政をカバーしていく、それによつて全体の財政均衡をはかつていく、こういうようにいかざるを得ぬのが現状ではないかと考えておる次第でございます。御承知ように、税收入全体から申しますと、約二千六百三十億の中に、所得税が千二百八十億で、約四割程度に相なります。それからそれに次ぐのが酒の税の四百五十億、それから今回創設せんとします取引高税が二百七十億、それに次ぐのが物品税の百七十億、入場税は今全体の予算にはいつておりますが、地方税に委讓しますと、減りますけれども、一應現行で見ますと約九十四億、法人税は若干入場税より多くて百三十億、かよう状態に相なつておる次第でありますが、現在の財政の需要の高さ並びに國民経済の実情からいたしまして、かよう所得税以外の收入を相当期待せざるを得ないということは、これは私どもといたしましては、無理からぬところではないかと考えておる次第でございます。
  18. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 あらためて申し上げるまでもなく、税は國民が心の底より納得して、欣然としてこれを納付するものでなければならないと考えております。しかるに根幹税以外の補完税において、物品税でとる。営業税——今回は事業税という税でとる。その他附帶税をとる。あるいは七重八重に熊手でもつて海岸の松葉を集めるように、ただとりさえすればいいのである。ただ歳入の充足をはかればいいのであるというような意味において、根幹税以外のものに、あらゆる税の種類の名前をつける。そうしてこの國民の納得のいかない税を、法律の権力のもとに、あるいは政府の権力のもとに、これを徴收するということは、政治的の罪惡であると、私は考えております。たとえば今回新しく御提案になられた事業税において、ある國民が病氣になつた、藥店に行つて藥を買う、そこに税金がかかるでしよう。病人に税金を拂わせ、病になつた不幸な者から税金をとるということは、一体どういう意味であるか。あるいは一家に不幸があつて、いろいろな葬儀に関するもの、あるいはその他の物資を購入した場合においても税をとる。死亡者が現われた家庭からさえも税をとる。極端に言えば病人から税をとり、死人から税をとるというような、こういう意味の徴税は、一体政治的社会的道義に反するところの税金であるとお考えでありましようか。税は國民が心から理解して納得の上において、それを完納し得る状態のものでなければならない。ただ政府の権力をもつて、あるいは國会において與党多数の力でもつて、しやにむにこれを國民からとつて歳入歳出のバランスをただ合わせればいいというふうな意味におけるところの租税というものは財政学上あるいは租税学上からいつても、これは不正なものである。眞理ではない。正義ではない。かよう考えるときに、今回御提案になられた事業税というような税金は、むしろあくどい、國民を苛斂誅求するところの税である。支那の聖人が言うたところの苛斂誅求は虎よりも猛しということが、ありますが、何という國民の納得のいかない税でございましよう。こういう事業税は、むしろ速やかに政府は釈然として御撤回になるお考えはございませんか。御意見を承ります。
  19. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。國家が生存するためには、必要なものを税を中心として賄つていかなければならぬのであります。これは國家生存に対する経済的な必須の條件であります。ただその税が不正であつてはならない、どこまでも公平理論の上に立つて適正でなければならないという点は、申すまでもないのであります。それでこの点が不正である、この点が実に不適正である、公平理論に反するというようなことがあつた場合にはむろん問題になると思うのでありまして、私どもは今回の新しい税として國会の御審議を願います場合においても、これは一面において税の必要な軽減を行つた。しかしながら、全体として総合的に適正化をはかるため新たな税を考えたのでありまして、これは全体として勘案いたしまして、一層適正化が行われるというような確信のもとに提案をして、御審議を願うことにいたしておるのでありまして、その点に何ら他意はないのでございますから、御了承願いたいと思います。またこれはもうどこまでもお話のごとく喜んで納めていただくということになれば、これに越したことはないのでありまして、十分納得していただけるようにしなければならぬということは、申すまでもないのでありますが、國家非常の場合には、世界において、これは惡税中の惡税だといわれる財産税でさえもとらねばならぬときにはとつた。これはどうも國の生存上必要なときには、そういう手荒いこともやらねばなりません。かような点もございますし、あるいは取引高税などのごときも、一部において惡税だと言われておりますけれども、これもやはり用いようでありまして、全体の適正化が行われる。これによつて段階ごとにとるということはいけないかもしれませんけれども、その段階の一つを抑えることによつて全体を抑える。從つてやみ物資の横流しを、かような方法によつて國民の協力を得て抑えていくというような効果も考えられておるのであります。いろいろな点から考えまして、私どもはこれを國会において十分御審議願えるものと確信して出しました。さように御了承願いたいと思います。
  20. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 大藏大臣の御釈明はたいへん理路整然たるような御釈明でありますけれども、おそらく全國民に現在輿論調査として、投票を願いましたならば、事業税とか取引高税とかいうような、かような惡税に対して賛成の投票をする國民は、おそらく一人もあるまいと思う。これはほんとうに國民所得のいかんにかかわらず、財産のいかんにかかわらず、その職業あるいは階級のいかんを問わず、だれからも平等に徴收するところの惡平等的の税金である。ただいま大藏大臣から財産税のお話がありましたが、これはある一定限度以上のゆたかな財を持てる諸君より、氣の毒であるけれども徴收された税金であります。しかるの取引高税や事業税はそうではない。もうけがない、所得がないところから大部分税を徴收する意味において、これは惡税であると考えておるのでございますが、これさえも終戰後の現在の日本財政はとらねばならない状態であるという釈明でございますから、これは意見の相違でございますので、これ以上あえて追究はしたくないと思います。  そこでこの予算の中に盛られておるただいま主税局長の述べられた所得税に次ぐ第二の大宗である酒造税について承りたい。本年度の酒の造石高、及びそれに対する四百五十何億の税額、これは予算面に現われておりますから了承しておりますが、具体的にお尋ねいたしますから、わかりやすく簡單に御答弁を得たい。前年度酒一升について六百円で政府は賣らしめた。ところが醸造家より買い入れる酒一升は、御承知のごとみ二十一円、府縣單位の酒の配給の卸屋の方の手数料は一升について十円である。最終の小賣配給所のコンミツシヨンは十六円、かよう関係から言いますと、酒一升から五百三円の税をとつた計算になるのであります。しからば昭和二十三年度、ただいま議題と相なつております予算面においては、政府は酒一升九百円に賣らんとされておる。この関係において、政府は本年度酒一升をいくばくをもつて醸造家より買わんとしておるか。また配給関係の二段階のコンミツシヨンは、どの程度まで許可される方針であるか。結論として酒一升について一級酒は税金がいくら、二級酒はいくらという具体的な御答弁を要求いたします。
  21. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 お尋ねの酒の値段の中における税金と原價の関係につきまして御説明申し上げますが、一級清酒は小賣消費者價格を大体九百円と押えております。その中で酒税に相当する部分が七百七十円で、大部分は酒税であります。殘りの百三十円ほどが、各團体ごとのマージンに相なりますが、これはまだ若干整理を要し、最終的のものではありません。おおよそ見込みといたしましては、製造者の原價が七十五円、卸賣業者のマージン、これは実際は公團になります。しかも大部分は運賃ですが、それが十五円、小賣業者のマージンを四十円、合計いたしまして百三十円、税金が七百七十円加わりまして九百円、かよう見込みでいたしております。ただ各段階の配分につきましては、計数整理の上で、若干変更になるかもしれないことを御了承願います。それから二級酒の場合におきましては、最終價格が七百五十円、それに対して税額を六百三十五円でありまして、税金以外の部分が百十五円でございます。この税金以外の部分の値段は、製造者の原價が大体六十四円、卸賣業者のマージンが十七円、小賣業者のマージンが三十四円、それぞれこの程度に配分いたしますれば、大体妥当なことに相なるのではないかと考えておる次第であります。
  22. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 具体的明確な御答弁をいたたぎました。さてこれに関連してお伺いしたいのは、酒の税が、高いために、結局酒の自由販賣の價格があまりに高額に相なるのであります。それがために数年このかた白馬と称する濁酒が到るところの農漁山村に、多量の醸造を見ておる今日の状態であります。この濁酒の密造を防止しなければならぬことは言うまでもない。しからば一升九百円、あるいは八百円というような高價な酒では、いかに政府が自由販賣にいたしましても、農漁山村、あるいは労働者の諸君は、とうていこれを購入して愛用することは不可能であります。かように年々歳々酒の値段を上げてこられましたならば、天下の左党はまことに疲弊困憊の状態に陷らざるを得ない。ここにおいてか、清酒は買つて飲みたいことはやまやまであるけれども、高額なるがために購入はできない、余儀なくここに濁酒の密造というようなものが、全國津々浦々に蔓延しておる。これを根本的に防止していく対策を大藏省はおもちであるか。われわれはこの根本的な対策は、格安なるところの酒を醸造して、より安直に愛用家諸君に供給するよりほかに途がない、かよう考えております。さいわい本年度は甘藷は到るところの大増産の声を聞いている、この際このとき、格安なるところの甘藷を原料とする酒を数十万石新たに醸造する方途を講ぜられ、勤労者の諸君、労働者の諸君、農漁山村、あるいは石炭を掘つている諸君等、多くの國民により、格安なる酒を供給され、反面において多少の税金をこれによつて求める、かような積極的なる御方針を大藏大臣はお考えになつておられないでしようか。この点に関する御所見を承りたいのであります。
  23. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの庄司さんの結論は、私も同感でありまして、どぶろくが相当に密造されているというような事実は、現在清酒が非常に高いためであるということも申されますし、また供給量が少いということにもよることはもちろんであります。しかしながら、一面税收を確保するということ、また一面これは倫論的に考えて正しからざることでありますから、これを防止することも当然であります。ただ問題は、芋にしても米にしても、現に主食不足のために少なからざる量を外國の輸入に仰いでいるというような事実がございますので、お話のごとく、今年は芋の生産振りがよいということで、これは非常に結構でありますが、私どもとしてはできれば戰前やつておりましたように、糖蜜を輸入して、これで大量の酒が割合簡單に純良なるものができるということですが、そういうことによつて供給量を殖やし、あるいは單價を引下げて、そういうことから今の密造を防いで財政收入を確保するというような線に沿いまして、すでに関係方面にも話をもちこんだりしたこともあるのであります。これは今のところはつきり申し上げることはできませんけれども、もしそういうことが可能でありますならば、このことによつてわれわれの國内で生産する食糧にあまり手を着けることなしに、必要なる量が安價に供給せられるようなことになるかと考える次第でありまして、さような点については、ずつと研究を続けておるのであります。ただいまの庄司委員のお考えは、私どもはさよう考え方で結論において一致すると思うのでありますが、まつたく同感であるということを申し上げておきます。
  24. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 せつかく委員長の御警告もありますから、これでやめようと思いますが、最後にけさわが國狂歌界における第一人者といわれる権威者である大友狂歌堂君より、最近新聞に発表になつている政府の税はあまりにも極端な税であるから、ぜひ大藏大臣にお傳え願いたいという意味におけるところの狂歌二首が到着したのであります。先ほど本員が申し上げたような趣旨における狂歌であります。これは國民の輿論であるとして御清聽願いたい。取引高税及び事業税反対の狂歌、「鷄に餌もやらずに卵だけしぼりとるよな高い税金」もう一つは、「鷄やあひるにまでも事業税産んだ卵にまたも税金」御参考の一環に資したいと思います。
  25. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 次は大藏大臣に対しまして世耕弘一君。
  26. 世耕弘一

    世耕委員 私は大藏大臣簡單に数点お尋ねいたしたいと思うのであります。近ごろインフレーシヨンの声がやかましく唱えられておるのでありますが、ある意味において私はインフレーシヨンはこわくない、かよう考えております。ただ問題はインフレーシヨンが移行する上において、経済上の、あるいは財政上のでこぼこ、すなわち跛行状態が、國家財政並びに國民生活を不安に導くものである。ゆえに政府としては当然インフレの問題を考究する前に、このでこぼこ跛行をいかに調整するかということが財政面においても十分考慮を拂われなければならないはずだと思うのであります。特に國家財政において、最近は健全財政ということが傳えられておりますが、健全財政の趣旨は、すなわち收支の均衡を保つということである。びつこをなくすることであると思うのであります。この点について、はたして政府がこの均衡を維持するような対策がこの予算面にうたわれておるかどうかという点について、私は大きな疑問をもつのであります。この点について私の疑問を解いていただくように、大藏大臣として御回答を願いたい。言葉を略する意味において数字を申しますが、二十三年度予算説明書におきまして、一ページにこういうことがある。財政インフレを左右する、まつたくその通りである。ところがここで非常に注意を喚起してみたいと思うことは、二十三年度予算の中に價格調整補給金同月額百億円と説明しております。價格調整費として調整をするために月額政府は百億円の経費を支出しておるということが出ておるわけでありますが、一年を通算いたしますると千二百億円になります。裏から覗いてみますると、結局統制のために千二百億円の経費を使つておるという結論が出てくるのであります。われわれ自由主義経済を主張する面からみるというと、まことに驚く現象である。しかも最近にわれわれは統制のもとに生活をしておるのだが、統制のためにおかげをこうむつたのは、われわれの生活の何割を支配しておるかということであります。統制のおかげによつて、われわれの生活が保障されておるとするならば、これは千二百億円一箇年消費されてもがまんできるのでありますが、おかげをこうむらないところに莫大な費用を支出しておるということは、私は常に大藏当局が論じておる健全財政からいけば、大きな矛盾がここに発見されるのでないかと言いたいのであります。二十三年度予算約四千億、その中に千二百億円が、今ここに現われた数字から見て、それが統制のために費消されるということになると、この関係を大藏大臣は実際家として見逃すはずがなかつただろう。特にかような矛盾が財政面の切り替えをせずして、そのままここに出したということについて、何かここに特殊な事情があるかどうか、まず最初にこの点を簡單にお伺いいたしたいと思うのであります。
  27. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お話のごとく跛行がいけないのであります。インフレーシヨンはアンバランスでありますから、これは跛行であると私は申してよろしいと思う。從つてまた財政インフレ関係が因果関係をもつということも、考えようによつてはその通りであると思います。ただお話の價格補給の問題でありますが、これはもし全部財政力をもつて現在の價格を維持して企業の赤字を出さないようにするためには月百億円かかる、從つて年間を通ずれば千二百億円かかるのでありますが、さようなことは現在の財政力をもつてしてはできない。そこで物價政策の観点からと、財政面からと、相関的に考えまして、どこに線を引くというような場合に、いろいろ勘案いたしました結果、五百十五億をもつて價格の調節をする。すなわち物價調節のために、國家財政力をもつて調整し得る範囲を五百十五億ときめまして、それに基いと五百十五億を支出したのでありまして、もしそのままにしておけば、月百億の赤字が出てくる。その赤字を放置しておいたのでは、健全財政と申しかねる。これは決して健全経済ではないのであります。さような観点から双方考えまして、相関性の上から問題を処理した、さような意味に御了承願いたいと思うのであります。それから統制の問題でございます。これはいろいろ考えようがございますので、ここで大きなことを申し上げることを避けたいと思うのであります。今のごとく金も不自由だし、物も不自由だ、しかも生産を急がなければならぬというときに、この企業意欲による自主性というものから出発して、ほしいままに物が生産されるということになると、乏しい資材、乏しい資金が利潤の多いところに集つてしまう。これでは國民生活は破壞される、かような時代においては、重点的に國の意思により必要なところに必要な資金、必要な資材、必要な労力をまわすということは、どうしてもやらなければならないと考えるのであります。從つて本來自由主義であろうがどうであろうが、今のごとき窮乏経済においては、國家の統制ということは、必要な限度においてやらなければならぬ。ただその必要な限度を越えるものがあつた場合には、これはどんどん外してくることもよろしいと思うのであります。重点的に資材を統制し、重点的に資金を統制し、重点的に労力を配置するということは、現下の事情においてはどうしてもやらなければならぬ、かよう考えております。
  28. 世耕弘一

    世耕委員 これ以上論議することは時間が食いますので、この点はこの程度に止めて他日の機会に讓りたいと思いますが、次にお尋ねいたしたいのは、日本の民主化を急いでおるときに、官営とか國営とかいう名称のもとに國家資本主義の移行がはなはだしく目立つのでありますが、この点に関して大藏大臣はどういうお考えをもつておるか、もう一点は今大藏大臣も言われておりましたが、インフレ阻止は財政面からも生産面からも立直しをしていく必要があるということは、言うまでもないことであります。特にこの点について、さらに見逃してならないことは、通貨の面である。現在の日本の紙幣がインフレを起す原因は、いろいろな観点から指摘することが、できるけれども、一面において正貨の裏づけがないということが、大きな問題の一つであろうと思うのであります。だから通貨膨脹の、あるいは通貨安定の基礎的工事がここに必要となつてくるのでありますが、現在の日本の紙幣が、將來正貨の裏づけをなすのについて、何か政府としてここに正貨復活に対する積極的な考慮が拂われていなければならぬと、私は思うのであります。この点について、何か準備的工作があるかどうか、用意があるかどうかということも承つておきたいと思うのであります。
  29. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答えします。これはお話のごとく、正貨の裏づけのある兌換券の政度に変らなければならぬはずのものでありまして、さように変ることを、私どもは期待をいたしておるのでありますが、現状では非常に困難でございまして、漸次日本経済の建直りをもとといたしまして、國際的な経済への交流が行われるということが、漸次濃厚になります場合には、当然考えなければならぬ問題であると思うのでありますが、ただいまのところでは、速急に正貨本位の、もとの兌換本位に変るということは困難であります。ただわれわれの考えとしては、一日も早くそういう方向にもつていくということを、切に願つておるのであります。ただいまのところ、この程度以上にはお答がしにくいのであります。さよう御了承願います。
  30. 世耕弘一

    世耕委員 もう一点落されたようでありますが、日本の民主化を急いでいるときに、経済面において、官営とか國営とかいうような國家資本主義へ移行する傾向がはなはだしく感ぜられるが、その点について、大藏大臣はどういう考えをもつておるか。この点であります。
  31. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは重要産業等について、國家意思がその中に働いて、單なる利潤追求というような観念のほかに重要な仕事が行われるということも、一つの必要な点であります。しかしながら、また一面において私企業のよさというものがあるのでありまして、私企業のもつ創意とかくふうとか、あるいは活発な活動というものも必要なのでありまして、現在私企業活動も相当旺盛であるし、またきわめて重要なものについては、國家の管理権がだんだん強調されておるものもあるというような組合せになつておりますので、この全部を——日本が將來國家資本主義にいくとか、あるいは社会主義的な國営論で一貫するということは決してないと思うのでありますので、現在行われておる私企業は私企業として漸次発達するものと思われますし、また占領下のいろいろな條件においては、これは処理さるべき事柄が公團方式を用いなければならぬというような事情に置かれている点もやむを得ない。しかし公團方式のごときは、長く行わるべきものと考えてはおりませんので、漸次これは必要なもののみはやはりもとの私企業に移るのではないか、そうして私企業のもとに活発な活動と、そうしてきわめて重要にしてしかも國家のためにこれは利潤を超えてやらなければならぬ仕事の性質のものについては、國の管理、あるいは進んでは國営のものも起り得る、かよう考えておるのであります。
  32. 世耕弘一

    世耕委員 大藏大臣なかなか用心深く御答弁なさつておられるようでありますが、私も卒直にお尋ねしておるのでありますから、どうぞ卒直にお答えくださつた方が便宜だと思うから、お願いする次第であります。  次に通貨と関連して為替の問題が考えられるのでありますが、私の聞いた範囲でありますけれども連合軍側の日本紙幣に対する換算率は、一ドル五十円見当に支拂らわれておられるように聞いておるのであります。ところが最近外資導入あるいは外國貿易等の話題が盛んになるに從つて、為替相場が二百五十円見当にあるいはきめられるのではないか、あるいはそれについていろいろな風説が出ておるのでありますが、外資導入並びに日本の経済建直し、外國貿易等の見地から見て、大藏省としては一應の腹構えができてきていなければならぬと思うのであります。この点についても、お差支えない範囲で御説明を願いたいと思います。
  33. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまお話のごとくミリタリー・トートは一ドル五十円になつておりますが、これは現下の事情では非常に不合理だと言われておるのでありますけれども、さように扱われておるようであります。それから正常な為替レートを決定するということは、今の事情では、日本決定できることでもございません。いろいろラジオ等で放送されておりますが、どうなるかわかりません。交換比率を一應きめまして、それも貿易商品のあるグループグループによつて段階複数制をとつて交換比率をきめるという方向が、今唱えられておるのでありますけれども、これも一時の暫定的な措置でございまして、漸次正常な純粹な為替のレートを決定するという方向に向わなければならぬ。これについては大藏省としても調査いたしておりますし、どういう点にもつていけば妥当であるかということも、多少調べておりますけれども、ここで私がこれを明示することはしばらくお許しを願いたいと思うのであります。
  34. 世耕弘一

    世耕委員 次にお尋ねいたしたいのは、やはりこの予算説明の中に出ておることですが、不正保有物資等特別措置特別会計という項目が出ておるのでありますが、この不正保有物資というのはどういう物資を指しておられるのでありますか。巷間傳えるところの隠退藏物資を言うのでありますが、それとも特殊な物資を指しておられるのであるか、その点を御説明願いたい。また不正というのは、何人がこの品物に対して不正であるとかないとかいうことの認定をするのでありますか。近來隠匿物資とか、あるいは隠退藏物資が、多くはたらいまわしに行われておる。摘発した物がまた元へもどるという妙な現象になつておるのであります。かような意味合いから見て、もし不正というのが文字通りの解釈とするならば、その不正の認定は何人が認定をするのか。もしそれが一安本の役人あるいは大藏省の役人諸君、商工省等の役人の判断によつて決定されるとするならば、そこに大きな弊害が生ずるということを、過去においてわれわれは経驗したものであります。この点について大藏大臣の御説明を願えれば結構だと思います。
  35. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 不正保有物資等特別会計の内容でございますが、不正保有物資等と申しますのは二つございまして、一つは隠退藏物資関係で檢察当局において摘発せられました物、これを取得当時のマル公で買い上げる、これが一つ。それから過剩物資、これは臨時物資需給調整法にあるのでありますが、正当な入手でありましても、そのストツクにおいて一般に必要とせられる物以上にもつておるといつたものは、これは届出義務がございまして、あるいはいろいろ標準があるのであります。過去の六箇月間における平均のストツク量とか、その他いろいろ勘案いたしまして、一定の標準によりまして、それを超える数量につきましては、これを政府の方で買い上げる。この場合におきましては、買上げ当時のマル公によつて買い上げる、從いまして過剩物資関係においては差益は生じない。隠匿物資関係において差益を生ずる、こういう関係になるわけであります。
  36. 世耕弘一

    世耕委員 不正物資マル公で買い上げるというのは妙な関係じやないかと思います。むしろこれは没收してよいのじやありませんか。過剩物資をもつているものをマル公で買い上げるというならば、一應納得いくと思うのであります。ところが不正の手続において取得したものをマル公で買い上げるということは、理屈に合わぬと思うのですが、何かこれには事情があるか。またかような問題が簡單に処理される結果、大きな犯罪や疑惑が起つてくるのであります。この点について、まず最初にお尋ねしたいのは、不正な方法によつて取得したものに対して、たとえマル公であつても、國家が金を拂つて買い上げるということは、道理に合わないじやないですか。この点はどうなのですか。
  37. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 不正保有物資につきまして、マル公で買い上げると申しますのは、取得した当時のマル公で買うという意味でありまして、その後値上りがありましても、その價格で買い上げるという趣旨ではないのであります。また買上げにつきましても、先般法律を出しまして、二分の登録公債で買うことに相なつております。多少懲罰と申しますと何でありますが、そういつた意味も、御趣旨のような点もございまして、現金では買わない、但し千円未滿の端数だけは現金で出すのでありますが、その他のものについては、登録公債で渡す、こういうことになつております。
  38. 世耕弘一

    世耕委員 たとえ現金で拂わないにしても、マル公で買い上げるにしても、不正物資政府が金を出して買い上げるということは、はなはで不都合だと思うのであります。先ほど申し上げましたように、過剩物資に対する買上げは、事情によつては勘酌してやらねばならぬかと思いますが、もしさような処理があるならば、これは改むベきだと私は思います。しかし時間がありませんから、私はこの機会にさようなことをこまかく論議することは、一應留保いたしますが、よく考えておいていただきたい。  なおまた適正物資であるか、あるいな過剩物資であるか、不正物資であるかという認定が、なかなか困難であり、またその認定をさせるために、一ぱいごちそうになる、あるは要領よくもらう。近ごろの官吏の中には、むしろ賄賂を催促するような連中のあることを二、三私のところへも情報が届いております。さよう状況において、こういう莫大な数量の物資簡單に処理されるということは、いわゆる健全財政という建前から言いましても、また連合軍からいろいろの物資を御援助願つておる建前から言つても、もう少し嚴粛な態度で処理すべきじやないか。私は警告を発して一應この問題を打切つておきます。  最後にもう二点ほど承つておきたいのは、今後の物價対策に対する大藏大臣の積極的な方針、これを簡單に伺つておきたいのであります。他の議員からもいろいろ國民生活の不安、並びになおインフレのはげしくなるであろうとういような予想の御議論も二、三拜聽いたしたのでありますが、われわれもこの感を深くするものであります。大藏大臣はこの点についてどういうふうなお考えをもつておられるか。特に運賃、通信料等の値上げが諸物價に影響を及ぼすと思うが、このために起るインフレの調整を大藏大臣はいかにする方針であるか、その用意があるか、この点をまず伺つておきたいと思うのであります。
  39. 北村徳太郎

    北村國務大臣 物價の問題でございますから、物價廳の長官であるとか、安本の長官が見えておりますので、その方から御答弁をする方が妥当ではないかと思うのでありますが、一應財政を処理します者の立場から、お尋ねの点を簡單お答え申し上げます。  今回の予算は、大体國民経済の中で國家財政というものを考え國家財政の相関性において、賃金物價等の均衡を保持するというようなところへ重点を置いたつもりでありますので、さような観点から立てまして、一應信金ベースをきめ、また物價等についても一應決定をいたして、予算に計上いたしたのであります。しかしながら何と申しましても、今のような動揺期のことでありますから、年間を通じてこれを見透すということは困難であります。困難でありますけれども、大体これならやつていけるというような自信を得まして編成いたしてのが、ただいま御審議を願つている予算なのでございます。それでこれは財政との均衡的な相関の立場において賃金と物價とをきめた、こういうことを申したのであります。賃金は三千七百円ベース、物價は大体消費財のおもなるもの七割、これが維持できるかどうかというのが殘された問題でありますけれども、このことに関しましては、これは將來日本の経済の情勢がどうなるかということに非常に重大な関係をもつことはもちろんでございます。從つて賃金の名目的な、貨幣量に対してどこまで裏づけが確保できるかということが問題であると思うのであります。さような点については、これは現在の事実からの見透しでございますから、見透しの仕方にいろいろの違いがあるかと思いますけれども、一應さような見地に立つていたしました。從つてども考えにおいては、これで賃金と物價との惡循環は必ず抑えられる。またインフレーシヨンというものが急速度にいくべきものをできるだけ緩慢にするということについても、こういう方途において可能であると信じて一應の予算を編成した次第であります。なおせつかく栗栖大臣も見えておりますから、物價の專門の立場からお話を願つた方がよいと思います。運賃、逓信料金についても、これは安易に、たとえば現在運輸省に赤字が多いからこれを運賃でカバーするというような横着な考えをしてはならぬということはもちろん考えておりまして、これについては、なお運輸事業あるいは逓信事業の中に内包せられている改善すべき点が多分にあるということは、十分認めるのでありまして、さようなことを考えながら、今回なお運輸事業において百億、逓信事業において五十億の赤字が今回の値上をもつてしてなお出るのでありますけれども、これらの点については、漸次改善すべき点は改善して、いわゆる独立採算制というものを保持できるような方向にもつていきたいと考えているのであります。また今回の予算全体から見まして、物價全体の問題等々から考えまして、この程度の値上はやむを得ない、また物價の上り方をなるべく低いところで抑えながら、漸次生産の増強を考え、裏付物資の増強を考え、実質的な確保を考えながらいくというような方法において一應決定をいたした次第であります。詳細な点は安本長官から御答弁申し上げた方がよかろうと思います。
  40. 世耕弘一

    世耕委員 安本の方はあとにしまして、今の続きを大藏大臣お尋ねしたいと思います。  先ほどの不正物資の問題で、もう一つ注意を喚起しておきたいのは、不正物資特別会計で、本年度取扱われるのは九十三億となつております。莫大な数量であります。これは大藏当局としても軽々に取扱うべきものではなしに、またこの不正物資の特別会計に所属する問題が今後数百億に上る金額が扱われるであろうということを予想いたしまして、特に愼重を期するようにお願いする次第であります。  次に大藏大臣は先ほど統制にかかわる費用が毎月百億、年額通算いたしまして千二百億かかるじやないか、だから統制をやめてしまえば千二百億もうかるじやないか、それだけ赤字がなくなつていけるのではないかというのが、私の言いたいところなのであります。ところがそれに対して五百億の節約ができたのだという話でありましたが、それは少し食い違いがあると思うのであります。それは價格調整費に五百十五億と出ております。そのほかに物資及び物價調整事務取扱費が六十九億千四百三十六万四千円となつております。そのほかに船舶運営会補助が四十億、物價補正特別補充費、六十億四百二十八万九千円、そのほかにまだ計算いたしますると、ちよつと予算を見ただけでも七、八百億という数字が出てくるのであります。いかに貧弱な、いわゆる不健全な現在の日本財政を統制経済のために食い荒しておるかということが、この数字で明瞭になつてくるのであります。眞に國家の財政を健全に復活させようとするのならば、この穴を埋めていくように考慮されるべきであるというのが、私の主張するところであります。結論として申しますれば、二十三年度予算が三千九百九十三億円、大別して統制経済にかかる國家の負担が千二百億、これに終戰処理費が九百二十六億円、二口合せて二千百億、この費用は扱い方のいかんによつては、器用に処理ができるのであります。もちろん行政整理とか、あるいはその他の経済的なやりくりも必要であると思いますが、それは私から言えば、むしろ枝葉末節なのです。根本的な問題は、この二千億からに上るところの費用を、いかに速やかに処理し、巧妙に扱うかということが再建日本の根幹をなすものだと、私はかよう考えるのであります。殊にこの取扱いいかんによつて、やすやすと祖國日本が再建されるのだという信念のもとに、特に政府にこの点注意を喚起したいと思うのであります。  以上で大藏大臣に対する質問は終りますが、例の物價問題に対して御説明があるというのですから、この際安本の方から承ります。
  41. 稻村順三

    ○稻村委員長代理 世耕君にちよつと御相談いたしますが、政府委員の方がまだ來ておらないそうですからそれは別の機会にということにしたいと思います。
  42. 世耕弘一

    世耕委員 結構です。
  43. 稻村順三

    ○稻村委員長代理 それでは暫時休憩いたします。     午後三時四十七分休憩      ━━━━◇━━━━━     午後四時二十七分開議
  44. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 開会いたします。  大藏大臣に対する島村一郎君の質疑は、おいでになりませんから保留いたします。野坂參三君。
  45. 野坂參三

    ○野坂委員 いろいろ質問する点がありますけれども、時間が私に與えられたものは非常に少いので、まず総理大臣に二、三お聽きしまして、それから大藏大臣その他にお伺いしたいと思います。  まず総理にお聽きしたいことは、この問題は予算にも基本的な関係があり、また日本の今後の経済政策全体にも基本的な関係のある問題でありますから、この点をまず総理にお聽きしたいと思います。それは去る十六日に南京からのU・Pの電報として報ぜられているところによりますと、行政院長の孫科氏が、日本の問題について重大な質問を発表しています。これは必ずしも日本政府にあてられた質問ではありませんが、しかしわれわれ日本國民としても、実はこういう問題について知りたいので、総理大臣からこの問題についての御回答をお願いしたいと思います。  その四つの点は、御存じのように、まず第一に、日本の財閥は解体されたか。二に、呉軍港が破壞される代りに再建されておるかどうか。三、多数の戰爭犯罪人が釈放されておるかどうか。四、賠償用に予定されていた船舶が日本に返還されておるかどうか。この四つの点が質問されております。個々の問題について、詳細なる御説明を願いたいのでありますが、時間の関係もありますので、まず第一に財閥が解体されたかどうか。これはわれわれも承知しておるように、解体されたということにはなつておりますが、しかしまたいろいろ実際に当つておる人々から聽くと、相当形式に止まつて、実際上においては過去のあの財閥がやはり経済界において実力をもつておる。これはいろいろ金融の面において、物質の面において、あるいは人的関係の問題において——われわれは大体承知しておりますが、ここで中國の重要な責任者である孫科氏が、こういうことを特に質問したこといついては、私はやはりわれわれの聽いておることがほんとうではないかというふうにも考えられるので、この点について、まず総理大臣から卒直なる御見解をお願いしたいと思います。
  46. 芦田均

    ○芦田國務大臣 財閥の解体については、野坂君もかねて御承知の通り、ポツダム宣言の規定するところに從つて、今日まで種々の方面から財閥勢力を瓦解することに努めてきたのでありまして、今日においては、ほぼその事業も終了しておると思います。あとは、かつて財閥の威力を振つていた会社に殘つている重役、経営者の任免の問題が殘つておる程度であります。人的構成においては、大体これを一新することができたと思います。また財閥の持株等については、持株会社整理委員会がこれを全部管理しております。最近にはその一部分を一般市場に賣却をしております。その他財閥家族の日常生活に対しても、嚴重な制限を加えており、一々の生活費にまで監督を怠つていないというのが現状でありますから、われわれ日本政府の立場においては、財閥解体の大部分の目的は、すでに達成したものと考えております。
  47. 野坂參三

    ○野坂委員 今総理大臣の申されたことは、大体われわれが新聞、雜誌その他で伺つたと同じだと思います。私たちの聽きたいのは、こうした形式的な処置とか、処分とかいうものではなく、実際の今の日本の経済界、あるいは財界において、この財閥の殘存勢力が支配的な力を依然として持ち続けているのではないかという点であります。この点については、おそらく総理大臣から満足な回答を得ることは困難かと思いますので、ただこれに関する二、三の御質問を申し上げたいと思います。  これは一般に知られているところでは、特別に私は名前をあげることをはばかりたいと思いますけれども、たとえば前の三井の池田成彬、こういうような人が、今やはり財界において実際的、潜在的、支配的な力をもつてつて、財界人があそこを訪問して、いろいろな意見を聽くというようなことも実は傳えられておると思いますが、こういうような事実があるかどうかということが一つ。  第二には、中國のこうした責任者が、なぜこのような問題を今になつても提起しなければならないか。そういう点の総理大臣の御見解をお聽きしたいと思います。
  48. 芦田均

    ○芦田國務大臣 財閥関係者であつて追放を受けている者が、なおかつ今日の日本の財界に隠然たる勢力をもつているかどうかという御質問に対しては、私の承知している事実に関する限り、かような事実は概括して言えばないと思います。しかしその間に、あるいは野坂君が特に承知しておられるような一、二の事実があるかもしれない。私の知らない隠れた事実があるかもしれませんが、私の今日まで受取つた情報によれば、日本の財閥関係者にして、なおかつ日本の財界に偉大なる支配力を與えているごとき事実はないと承知しております。孫科氏がなぜこういう見解をもつようなつたかという事実は、政府は何も情報をもつておりません。
  49. 野坂參三

    ○野坂委員 財閥解体という問題について、私の方はまた別の機会にもう少し具体的にお聽きしたいと思います。それから今孫科氏の問題については、政府がなぜ孫科氏がこういう質問を発したかということについての情報はもちろん得られていないと思う。私のお聽きしたかつたのは、芦田総理の、なぜ孫科氏がこういうふうな質問を今出したかということに対する見解であります。もしこれについての御見解があれば言つていただきたいと思います。なければよろしいと思います。  第二の点としては、呉軍港は破壞される代りに再建されているかどうか。これは実は私は非常に驚いているような質問なんですが、これについての総理大臣の御回答をお願いしたい。
  50. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ポツダム宣言の規定は、連合軍が監督をして、日本國の軍事施設を、うべて破棄することを命令したのでありますから、それに基いて指令通りに日本の非軍事化を徹底的に行つたのであります。從つて日本の関する限り、呉の軍港並びに軍事施設は、連合軍監視のもとに破壞したのであります。現在この軍港は連合軍の管理のもとにありますから、政府としてはその内部の詳細を知ることは許されておりません。しかし私の信じておるところでは、呉軍港が再建されるなどということが、とうてい想像せられない事実である。かように信じております。
  51. 野坂參三

    ○野坂委員 やはりここでも私のお聽きしたいのは、なぜ孫科氏がこういうふうな質問をされたかについての総理大臣の御見解です。この点はちよつと今お聽きしたいと思います。
  52. 芦田均

    ○芦田國務大臣 孫科氏がかようなことを言つた動機について、何も政府は情報をもつていないのであります。だが野坂君に申し上げますが、一々の外國人の発言を、この委員会の席上でお述べになつて御質問になりましても、政府としては一々の外國人の言葉に責任をとるわけにはいきません。將來これと同じような御質問がありましても、政府としては、情報をもたない限りは、答弁をいたすことはできません。
  53. 野坂參三

    ○野坂委員 政府に情報がなければ、お答えできないのはあたりまえですが、私の聽きたかつたのは、やはり芦田総理としての見解であります。しかしもし見解がなければよろしゆうございます。  その次には多数の戰爭犯罪人が釈放されておるかどうか。この裏の意味を見ますと、多数の戰爭犯罪人が釈放されておるではないかというふうにもとれると思います。この戰爭犯罪人にも、いろいろ種類があると思いますが、今巣鴨におるのを指しておるのでなくして、過去において釈放された人とか、あるいは当然戰爭犯罪人として処理されなければならない者が自由にあるというふうな者も含んだものと思いますが、特に孫科氏がこういうような場合において、多数のものが自由にされておるんではないかというふうな質問がありました。これについての御見解。  第二にはこれに関連していわゆる戰爭犯罪人とか、公職追放者というものに対して、政府はどういう具体的な処置をおとりになつているか。この中でもいろいろ種類があると思います。たとえばあまり重要でない責任をもたされた人が、これにかかつているのもありましようし、重要な責任を当然負わなければならぬという人が、自由にされているということもあると思いますが、これらの人々の中には、一面には非常に生活が困窮している者もあるし、他面においては今のインフレやみを利用して、巨万の富を得ている者がある。また聞くところによれば、その裏面において、いろいろな策謀が行われているということを聞きますが、これらについて、政府はどういうような適切な処置、取扱いをされているか、これらを併せて承つておきたいのであります。
  54. 芦田均

    ○芦田國務大臣 極東國際軍事裁判所は、御承知の通りに、占領軍が軍の統帥権によつてつている軍事裁判であります。日本政府としては何らこれに関與いたしておりません。
  55. 野坂參三

    ○野坂委員 私の質問したのは第二にあると思いますが、第一の点は、もちろん、戰爭犯罪人としてはつきり指名された者、この問題について私は聽いているのではない。これらの人が何らかの理由によつて逃れたり、あるいは出された人が何かいろいろな活動をしている事実があるかどうか。これらに対して政府は何らかの処置をとられているかどうか。この二点であります。
  56. 芦田均

    ○芦田國務大臣 これは法律上の見解が違うのかもしれませんが、極東國際軍事裁判によつて処罰せられたとか、釈放せられたとかいうことは、日本の法律には何ら関係がない。從つて戰犯者であるからこれをどうするとか、戰犯者でいなからどうするという差別待遇を、特に日本の法律では規定しておらぬのであります。
  57. 野坂參三

    ○野坂委員 私は何も法律上のことを言つているのではない。今日本の民主化とか、いろいろなことが言われているときに、これに対して一つの脅威としてわれわれが認めなければならぬことは、こうした人々だと思う。これに対して政府はいかなる処置をとられているかということをお聽きしているわけです。これは何も法律上の問題ではない。
  58. 芦田均

    ○芦田國務大臣 私どもは法治國である限り、法律に基いて行政をやつておるのでありまして、法律に根拠のないことをやるということは考えておりません。
  59. 野坂參三

    ○野坂委員 ずいふんおかしなことを言うというふうに私はとれますが、要するに今日本において一番大きな問題は何かと申しますと、政治面においては民主化の問題だと思います。これについての一つの大きな妨害物として、われわれ國民一般が認めているのは、戰犯者、公職追放者のその後の活動だと思います。これについて、政府としてはいかなる対策をとられているか、これをお聽きしているわけです。政治的な処置だと私は思います。
  60. 芦田均

    ○芦田國務大臣 今のお尋ねは、戰犯者ばかりではなく、公職追放者の問題を含んでいるわけですか。
  61. 野坂參三

    ○野坂委員 そうです。
  62. 芦田均

    ○芦田國務大臣 私は孫科氏は、公職追放者のことを言つてないよう承知しておつたから、戰犯者のことだけをお尋ねになつているのかと思いましたが、孫科氏の言葉の中には、やはり公職追放者の問題もはいつておりますか。
  63. 野坂參三

    ○野坂委員 ありませんが、それに関連してお尋ねしておるのです。
  64. 芦田均

    ○芦田國務大臣 それならわかりました。公職追放者に対してはポツダム勅令の定めるところによつて、それぞれ適当な監督を加え、また公職追放者が禁止された活動をしないように、法務廳の中には特にこれに必要なる部署を定めて、それぞれポツダム宣言に基く政令その他の規定に違反しないごとく、十分の措置をとつております。
  65. 野坂參三

    ○野坂委員 どうも私がお聽きしたいことはお答えになれないらしいので、これ以上質問はいたしませんが、いろいろ具体的事実を申して、將來また別の機会にお聽きしたいと思います。  第四に孫科氏の質問として賠償用に予定されていた船舶が日本に返還されているかどうか。これは大体日本政府として、こういう船舶が返還された事実があるかどうかについてお答え願いたい。
  66. 芦田均

    ○芦田國務大臣 連合國は今日まで賠償として、日本船舶をもつてつた例はありません。ただ海軍の鑑船については別であります。しかし一般の私有に属する船舶を賠償として撤去した例は、まだ起つておりません。
  67. 野坂參三

    ○野坂委員 賠償に予定されて、撤去したとは書いてありません。予定された船舶が日本に返されたことがありますか。
  68. 芦田均

    ○芦田國務大臣 予定されておるということだけでは、所有権は移つておりませんから、返そうと思つても返しようがないわけであります。
  69. 野坂參三

    ○野坂委員 最後に孫科氏がこういうふうに言つております。裕仁を天皇として止めておることもまた中國人を立腹さしておる一つ原因である。日本において天皇の称号と存在が続く限り、日本を徹底的に民主化することはできない。こういうふうに孫科氏の、これはおそらく公式な意見だと思いますが、そういうふうに述べております。これについて総理大臣はどういうふうにお考えになるか。  第二としては、これに関連してイギリス、アメリカ、中國、こうしたところの新聞紙上に、現在の日本の天皇が國際裁判の判決がある場合に退位されるのではないかという報道が載つていますが、こういう事実あるいは見透しがあるかどうか、この二点をお聽きしたい。
  70. 芦田均

    ○芦田國務大臣 日本の憲法は、國民の総意を反映した一つの憲章である。この憲法が天皇の正当なる存在をはつきりと認めている以上、他國人がかれこれとこれに批判を加えることは、それは加える人の自由でありますが、他國人がこれに反対だからといつて、別に神経を病む必要もなし、またそれによつて何ら憲法の存在に影響を與えるものとは考えておりません。  もう一つは、退位の問題が外國の新聞紙上に出ているが、お前どう思うかというお尋ねでありますが、その問題については、私は今日まで何も考えたことはありません。
  71. 野坂參三

    ○野坂委員 それでは私の孫科氏の質問についてはこれだけに止めて、他の問題について一、二お聽きしたいと思います。  これはこの間の本会議で私が質問して、政府の方からまだお答えにならなかつた問題の一つでありますが、例えば日新化学とか日本軽金属というようなところに外國資本が投下されるというふうな報道がされていて、これに対する外國資本の資本所有、あるいは株式所有の率が五〇%以上であるというふうにも報道されておりますが、その点について総理大臣、あるいはもし総理大臣が的確に御存じなければ大藏大臣でもよろしゆうございますが、お聽きしたい。
  72. 芦田均

    ○芦田國務大臣 戰爭前から日本の会社の株をもつてつた外國資本は、殘つておるのであります。たとえば東芝のごときはその一つの例であります。しかし最近の投資が株式取得の形のよつて行われたという例は、まだ私は聞いておりません。むしろその他の方法によつて外國投資が行われたということを、話には聞いておりますが、株式取得によつて最近に外資が流入したということは聞いていないのであります。ただいまお話の例はあるいは調べればわかるかもしれませんが、私の今日まで承知しておるところでは、そういう形ではないように了解しております。
  73. 野坂參三

    ○野坂委員 今株式と申しましたけれども、今までのところは株式という形ではなかつたこもしれませんが、將來株式に対する投資という形で起り得る可能性があると思います。そのときにおける日本政府の條件としてはどういう條件があるのか。たとえばパーセンテージの問題、あるいは企業権を渡すとか渡さないとかいう問題、あるいは別個の問題になるけれども、担保をどうするかというふうな問題がはいつてくると思います。これについてもしお答え願えれば結構だと思います。
  74. 芦田均

    ○芦田國務大臣 日本の極東に占めておる地位から考えて、また今後のわが國産業の発達の上から考えてみても、必要とあれば外國会社、もしくは外國の工場が、日本國内に必要な事業を始めることは、ある場合においては、むしろ歓迎すべきである。そういう意味において、今日までまだ外資導入に対する受入態勢が十分に整つておりません。今後幾多の方面において考慮しなければならぬ問題が殘つておりますが、正直に言いますと、私あまり商法のことは詳しく知りませんから、株式会社の外資導入等のこまかい具体的條件は、ちよつと答弁いたしかねますが、ごく大筋を申せば、わが國の現情においては、場合によつては、むしろ外國人の企業を國内に導入して、自由に経済的活動をやらせることも必要なこともある。かよう考えておるのでありますから、あとは大体それに準じて御了解を願いたいと思います。
  75. 野坂參三

    ○野坂委員 大藏大臣にやはりお聽きした方がいいと思いますが、今の將來日本に外資を導入しなければならないという点において、私たちも外資導入を一切反対するというような立場をとつていないのであります。その場合に政府の方としては、私資本が日本に投下される場合に、どういうふうな原則、あるいは基本的な條件のもとにおいてこれを許さたれるという、もし原則があればこれをお聽きしたい。
  76. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答えいたします。大藏省としては一應の檢討を進めておりまするが、今ここで具体的に申し上げるほどにはまだ進んでいないのであります。大体お話のごとく株式所有の方法による企業への参加ということも考えられますし、それから社債をもち、あるいは担保附社債をもつというような行き方もあると思いますし、原材料を供給して委託の形式で、そのうちの製品の若干をさらに輸出するというようなしかたの契約によるものもあると思いますし、それから單にクレジツトを設定して、單純な投資をするというような場合も考えられると思います。方法はいろいろあると思います。そのいずれをいかにするかということは、これは企業のもつ特異性とか、日本において最も緊要度の高いものから、これを受入れていくということになると思うのでありまして、それらのことにつきましては、一應の必要な手続き等も整備したいと思つておりますけれども、まだこれはここで公表申し上げるほどにはなつておりません。一應の考えとしては、以上のようなことがある、こう考えておる次第であります。
  77. 野坂參三

    ○野坂委員 この問題については、私は別の機会に詳しくお尋ねしたいと思いますが、もう一、二ぜひお聽きしておかなければならないのは、たとえば長崎英造氏などは、新聞や雜誌に、思いきつてどんどん日本に外資を入れろ、ほとんど無條件に近い條件でいいと言つておる。さてそこで大藏大臣にお聽きしたいのは、たとえば資本の場合において、資本の五一%までも外國資本に任すというような方針をとられるような腹案がないかどうか、こういう点についてお聽きしたい。
  78. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これはかつて日本ガス事業が、全然國民の理解がなかつた時代に、たとえば大阪ガスのごときは、株式の五一%をもつて共同経営をやつたのですが、漸次成績が上るに從つて、資本から退去したというような事実もある。これは大藏省の所見ではございませんが、産業界においては、物の種類によつては、あるいはその他輸入せらるべき資本の量等においては、あるいは五一%のものがあつてもいいじやないかという意見も一方にはあるようであります。けれどもこれは必ずしも私どもは支持しておるわけではないのでありまして、このことについては、いろいろ檢討を要するのでありますが、物と次第によるというふうなことになるかとも思うのであります。さよう御了承願います。
  79. 野坂參三

    ○野坂委員 今度は総理大臣に対して、この問題について、もう一つ聽きしたいのは、今までいわゆる外資と言われてはいつてくるガリオア・フアンドとか、いろいろなものがありますが、これはもちろん日本政府がこれを管理することができないというよう状態ではありますけれども、こういう問題は、憲法にも規定してありますように、政府の負債ではないと思いますが、しかしこれに準ずるような性格のものではないかと思います。そうしますと憲法にも規定してあるように、國会にやはりこういうものを報告され、そうしてこれについてのある程度の審議というような形をとるべはではないかと、私ども考えますが、この点について、どういうふうにお考えになるか。形式上あるいは法律上から言えば、こういう必要はないと思いますが、しかし実際的に言つて、これは結局政府政府とのクレジツトになると思いますが、こういう意味において私は質問します。
  80. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま野坂君の述べられたように、占領國の官憲がものを支配しておるのでありますから、むつかしい法律論になると、これはやつかいな研究を必要としますが、しかし後段において指摘されたように、現実に日本が今年どれくらいの物資をどういう形で受取つたかというような事実は、適当な機会にこれを國会に報告する方が、なるほど望ましいと思います。これは今あなたからの質問があつて、私はそういう問題を考えたのでありますから、別に政府としてかような問題を研究して決定した案ではありませんが、質問の趣意を聽いておつて、なるほどあとの点は、ごもつともな御議論であるから、そういう方向にひとつ考えてみたい、かように存じます。
  81. 野坂參三

    ○野坂委員 いまの問題は憲法には明らかに、日本政府が借りた場合には、國会でこれの承認を得なければならぬとありますから、これに準ずる性格のものとして、國会において報告だけではなしに、ある若干の審議をするという形をとられるのが、一番いいのではないかと思います。結局これらのクレジツトは、將來は——今日でもそうですが、國民全体の負担になるもので、こういう手続が当然やらるべきだと思います。  それから予算関係がないようでありますけれども、この議場でこの間問題が起つたので、総理大臣簡單にお聽きしたいと思います。これはちよう加藤労働大臣もおられますので、関連して質問さしていただきます。この間ここで政治運動と労働組合これの問題が出たと思います。労働組合が内閣の退陣を要求するというふうな、こういう要求とか意思を表示することは、労働組合法に違反という言葉ではなかつたけれども、労働組合の性格のものではない。こういうふうに総理大臣は申されたのであります。しかしながら、政治問題というようなものの解釈は、ここで私は総理大臣の方からはつきりとお聽きしたいと思います。と申しますのは、この間ここに官公労の組合の代表者が來て、芦田総理に辞職勧告的な文書を手渡したということで、総理大臣は非常に憤慨されたそうですが、ただ官公労だけではありません。今日私下で見ても方々の組合とかいろいろな團体が來て、そうして同じような趣旨の決議とかいうものをもつてきております。そうすると、こうした労働組合が、たとえば内閣総辞職を要求する、こういういうことを一つのスローガンとして要求として掲げた場合において、これは労働組合法に違反となる。こういうふうに解釈すべきかどうかということが問題になると思います。と申しますのは、たとえば官公労の組合において、給與の問題を取上げるといつた場合に、相当はだれかといえばこれは政府である。政府が相手になつてきておる。といえば当然政府に要求して政府がこれを容れないといつた場合に、彼らはあくまで要求すると同時に、こうした政府は自分ら望ましくないという意思表示はやつても、われわれは差支えないと思います。これについて総理大臣の御答弁をお願いしたいと思います。それに関連して、たとえば極東委員会の例の労働運動に関する十六原則の第六の場合においても、労働組合は政府運動に参加することが許される、こういう意味のことが書いてあります。これについてどういうふうにお考えになるか。
  82. 芦田均

    ○芦田國務大臣 この点は先だつて社会党の中原君からお尋ねがあつたと思うのですが、そのときに答えた以上特に附け加えることはあリませんが、私どもの解釈としての團結の力によつて内閣に辞職を要求する、引責をめるということは、労働組合としての正当なる活動であるとは考えておりません。そういう活動をしたい人は、いくらでも政党に参加してこれを行うことができるので、労働組合員であるがゆえに政党に参加ができないとは言わないのであります。かような行動をとるときには、政党運動としてこれをやる、しかしながら、労働組合が組合の團結権によつて内閣の退陣を求めることは、労働組合法の第一條に規定しておる精神に明らかに反しておる。私はさように解しております。殊に官公労の組合員のごときは、二重の人格者である。一は公務員としてその所管大臣の命令と訓令に服從しなければならぬ身分をもつておる。さような身分にある者が、自由にその組合の名によつて内閣の退陣を求めるということであれば、行政官廳の機構は全然麻痺するのであります。政府はその日から仕事をすることができないという状態に陷ることは当然であります。從つて殊に官公労がかような要求を政府に出すということは、明らかに組合法の精神に矛盾する。私はかよう考えております。
  83. 野坂參三

    ○野坂委員 今最後のところで、官公労が政府の退陣を要求するのは云々と申されましたが、しかしながら、これは要求することであつて、たとえばこれがために官公労がいわゆる直接行動をとるといつた場合においては、いろいろの問題があるのであります。今起つている問題はそういう問題ではなくて、退陣を要求するという意思表示に止まつていると思うのです。これについて、たとえばストライキをやるとか何をやるということは今言つていないと思います。ですからこういう意思表示までしても惡いかどうか、これが労働組合法第二條に違反するかどうかという問題だと思います。労働組合法の第二條を見ましても、われわれは労働組合と政党との区別がこの條文からも大体了解できる。これには経済的な條件を改善するために認められたところの労働者の團体、これが労働組合だと言つてありますが、しかしそのあとでこの労働組合と区別するために、主として政治運動を目的とするものはこの労働組合の中にははいらない。ここで重要なのは主としてという言葉であります。今労働組合の方で、何も自分の生活を、たとえば給與ひとつ上げるにしても、すぐ問題は政府にぶつかる。あるいは政治問題にぶつかる。あるいは法律にぶつかつてくるのであります。これはすなわち労働組合が経済的な條件を改善するための行動自体が、必然的に政治運動と関連せざるを得ない。こういう意味において労働組合と政府運動とは切り離すことは絶対にできないと思います。ですからここで政党との区別は、政党はたとえば内閣打倒というふうな要求、あるいはその他の政治的な綱領に基いて特別につくられた團体、これがすなわち政党であります。労働組合は経済的な目的を貫徹するためにつくられたものが労働組合であるが、同時に経済的目的を貫徹するためには、政治的運動に参加せざるを得ない。もしこの内閣が経済的な要求をかりに容れることができない、妨害する場合においては、内閣の打倒というようなことも彼等として要求せざるを得ないのであります。これを禁止することになれば、結局労働組合の経済的の改善要求という目的自身も貫徹することができないことになりやしないか、こういうふうに考えますが、いかがですか。
  84. 芦田均

    ○芦田國務大臣 これは野坂君と私との、労働組合法に対する解釈の相違でありまして、先にお答えしたことを繰返して申し上げる以外に、何も附け加えることはありません。
  85. 野坂參三

    ○野坂委員 私これに関連して加藤労働大臣の御意見を同じ質問についてお伺いしたいと思います。加藤労働大臣が、まだ大臣にならない前には、労働組合の大会などでは、やはり内閣の退陣を要求した演説をされたことを、私聽いたこともあります。こういうことを御記憶の上お答え願いたい。
  86. 加藤シヅエ

    加藤國務大臣 ただいま野坂君のお尋ねになりました点につきましては、労働組合法の精神によれば、主として政治運動をするということは、共済事業であるとか、その他純粹の経済活動を主眼とする労働組合の本質から逸脱した場合の規定でありまして、労働組合がその要求を貫徹する場合に、今野坂君が言われたように、相手が政府である場合に、政府に向つて行動を起すときに、これが政治行動になるという意味の政治行動は当然許さるべきであると思います。極東委員会の十六原則における第六項の政治活動に参加し、または政党を支持することができるという意味は、そういうことを意味するのでありまして、私はこの点においては、別に政府として全体が統一された解釈をもつておるわけではありませんが、私の解釈によりますれば、主として政治運動を目的とするものということを断わつておることそれ自身が、労働組合、あるいは少くとも労働組合が経済的要求を主眼とする——それに随伴する運動は、それが政治運動の領野に属するものであろうとも、当然許されることである。このことは十六原則の政治活動に参加し、また政党を支持することができるということと、表裏一体をなすものであると解釈しております。
  87. 野坂參三

    ○野坂委員 今の加藤労働大臣お答えは、こういうふうに解釈して差支えないと思いますが、どうですか。つまり具体的に申せば、今官公労の方で経済的な要求を政府に出しておる。その結果彼らはどうも政府を信頼できないらしい。それで今政府の退陣を要求しておる。こういう状態が現実に起つています。官公労の方は、何も政府を倒すことが主たる目的でも何でもない。ただ経済的な目的を達することが主たる目的である。しかしこの目的を貫徹するために、今言つたような要求が必然的に出てきたということは、加藤労働大臣あたりまえのことであるというふうにお認めになるかどうか。
  88. 加藤シヅエ

    加藤國務大臣 その点について私は官公労組合の諸君が、この政府は信頼するに足らないから、政府を倒さなければ自分たちの交渉の相手にならぬということは、あたかも一企業体において、企業の相手方である事業主に向つて、お前たちは信用することはできぬから、お前たちはやめてしまえと要求されることと同一でありまして、それは経済的要求の範囲でないと思うのです。つまり政府に向つて、自分たちの生活改善のための要求をしておる。その要求を貫徹するために、その相手方に向つて行う行動が政治的領野にわたる行動であれば、それは当然に許さるべきものである。もつと言葉を積極的に進めて言えば、自分たちの要求を出しておる相手方を信用することができぬ。その存在がその地位にある間はそれを倒さなめればならぬ。それを倒すためにまたゼネストが來ることは妨げることができない。こういう意味をもつ、政治的性格をもつゼネストということになれば、これは明らかに組合の運動から逸脱したものであると解釈するのでありますが、そうでなくして、経済的要求を出しておる。その要求を相手方に容れさせる手段としてある種の政治行動がとられる。それは私は当然許さるべきである。こう解釈します。
  89. 野坂參三

    ○野坂委員 この点がはつきりしないようですが、もう一度はつきりしていただきたい。というのは、これはおそらく重要な問題になるのじやないかと思いますから……。今官公労の方で要求しておるのは、ともかくも経済的な要求、これに限つております。しかしこれを貫徹するために政府と交渉した結果、どうもうまくいかないという状態に今おる。それで政府を倒すためにゼネストをやるとか、何をやるとかいうような行動については、一言も言つていないと思う。これは別個のものだと思う。ただ彼らの言つておるのは、経済的要求を貫徹するためにも、政府が退陣してくれた方がいいという意思表示だけをやつておる。何らの行動も起していないと思う。こういう現実の状態のもとにおいて、加藤労働大臣はどういうふうにお考えになるか。
  90. 加藤シヅエ

    加藤國務大臣 極東委員会の原則の中にも規定してあります通り、政治運動に参加する自由といたしまして、そのことは今申しまするように、單なる意思表示だけでは、これは政治運動でも何でもない。政治的意思の表明にすぎないのでありまして、政治運動と言う以上は、具体的な行動が伴わなれければ政治運動ではないのであります。そういう意味において、私は労働組合が——これはひとり全官公廳ばかりではない、あらゆる労働組合が自己の政治的要求でなく、経済的要求を果すために、それに随伴する——われわれが前によく使つてつた言葉でありますが、経済的政治闘爭という言葉、この経済的政治的闘爭は許さるべきである。こういう意味であります。
  91. 野坂參三

    ○野坂委員 私たちも政党と労働組合とは、これを区別しなければならない。これが混同することを絶対に避けるべきであるというふうに言つていますが、しからば今加藤労働大臣の御意見では、労働組合が政治運動に参加するのはよろしいというふうに言われたと思います。これは十六原則にはつきり書いてありますが、そうすると今官公労の方では、経済的要求を貫徹する運動をしておる。これが必然に内閣の問題にかかわつてくる、政治的運動になつてくる。これに参加するのは、これはもちろん今加藤労働大臣が申されたところから見れば差支えないと思いますが、どうでしようか。
  92. 加藤シヅエ

    加藤國務大臣 その点はですね。経済的要求が一轉して政治的要求に轉化してくるということになると、その性質はまつたく変つてくると思います。これは野坂君の十分御承知の通りで、その場合にそれはもはや経済闘爭の範囲から政治闘爭の範囲に移つたものでありまして、目的それ自身も、なるほど政府を倒す、それが自分たちの経済的要求を容れさせるための一つの手段である、こういうことになるかもしれませんが、他面政府を倒すという政権の爭奪を目標とした純燃たる政治闘爭になると思います。從つてそういうことが全部の運動であるならば、それは労働組合の範囲に属すべきものではない、こういうことになります。
  93. 野坂參三

    ○野坂委員 政権を目指して、たとえば内閣を打倒して、政権を新しく握るというような種類の政治運動は、政党がやるべきだと思います。これを今私たちが言つておるのではなく、官公労の方は五千二百円のあのベースを獲得するのが目的で、それがために内閣に迭つてほしいという要求が必然的に出てきて、内閣を倒すのが目的ではなく、五千二百円のベースを獲得するのが目的である。これがために必然的に政治運動に参加する、こういう形を私は言つておる。
  94. 芦田均

    ○芦田國務大臣 私は決議文を続んだのを聽いておつた。その中には別に三千七百円のベースを貫徹するとか、経済的の要求を容れるためにという文句はありません。もう一遍よくひとつ続んでみますが、そうでないのです。この内閣は亡國内閣であつて、とうていかような内閣ではわれわれは救われないから退陣を要求すると言つて、それが要求なんです。政府退陣すべしという要求を私に渡しておる。そういうことは、明らかに私は政治運動であつて、労働組合の名において行うべき行動ではない、かように解釈しておる。
  95. 野坂參三

    ○野坂委員 私もあのときの事情は詳しくは知りませんけれども、あのときに彼らのうちのここへ來た人から聽いたところによると、やはり五千二百円のあのベースが問題になつておる。これがために苫米地官房長官と話があつて、そのあとで芦田さんに今言つたようなものを出した、こういうことを聽いております。同時にわれわれはただ紙の上に書かれた……。
  96. 芦田均

    ○芦田國務大臣 違います。
  97. 野坂參三

    ○野坂委員 違いますか。いずれにしても、紙に書かれたことがどうであるか、私はそのことはどうでもよろしい。彼らの要求しておるのは五千二百円ベースあれをいかにして貫徹するかが問題だろうと思います。これに関連して、今言つたような内閣の問題が出た場合において、これは政治運動に参加する程度であつて、政治運動自体が目的ではない。こういうふうに解釈すれば、彼らの動きは、これは労働組合の原則に違反しない、こういうふうに見て差支えないかどうか。加藤労働大臣から最後にもう一つお聽きいたします。
  98. 加藤シヅエ

    加藤國務大臣 その点しばしば繰返して申し上げました通り、経済的要求を果すために、その目的のために、手段としてある種の政治的行動の範疇に属する事柄に参加するということについては、私は別に少しも差支えないと思います。
  99. 野坂參三

    ○野坂委員 それで大体わかりましたが、今の加藤労働大臣のお言葉は、経済的目的を貫徹するためにある種の政治運動に参加することは差支えない、このある種の政治運動の中には内閣の辞職を要求することも当然含まれると私は解釈して、私の質問を終りたいと思います。
  100. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 野坂君、まだ主税局長に……。
  101. 野坂參三

    ○野坂委員 大藏大臣、総理大臣はこれでいいです。
  102. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それでは中村君。
  103. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 私は総理大臣に質問したいのでありますが、時間の関係で、ごく簡單お尋ねしたいと思います。  内閣は與党が國民に約束した政綱政策を忠実に実行することを使命とする、かように私は考えるのであります。そうして政府が出した予算案は、政府が行わんとする政綱政策の裏づけとして出されるものであると考えるものでありますが、この点総理大臣はどうお考えになりますか。
  104. 芦田均

    ○芦田國務大臣 中村郡の御意見の通りであります。
  105. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 そうしますと、政府が今度出しました予算案に対して、私は野党の反対があるということはうなずけると思うのでありますが、今度の予算案に対しては、與党の中に反対があるという奇現象を呈しておるのであります。社会党とか、あるいは國民協同党が反対するということは、これはまだしもでありますが、総理が率いていられるところの民主党の中に反対があるということは、私は非常におかしな現象ではないかと思う。この点について総理大臣はどういうふうにお考えになるか、お尋ねしたい。
  106. 芦田均

    ○芦田國務大臣 國会において種々問題を論議する場合、各方面からの意見が出てくることはいかなる会合もしくは集團におけると同樣ありがちのことであります。これらの意見を一應聽取した上で、そしてまとまるところにまとめるということが、民主主義政治運用の慣例であります。從つて中途にいろいろな議論が出ましよう。しかし帰するところ、やはりまとまつた政府、與党の統一した意見になるということを私は感じておりますから、中途における多少の紆余曲折については、深く意に介してはおりません。
  107. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 私は政府が出される予算案に対しては、一應與党の間では当然話合いがあつて、そして一致した上で出されるということにならなければいかぬと思う。今度のように、もしも野党、與党の別なく反対する予算案を出すというのは、どこに根拠をもつておられるかということがわれわれには疑われるのであります。そうしますと、與党にも野党にも根拠のない内閣というものは、政党内閣としての本質を失つたものである。かよう考えざるを得ないのであります。政党内閣としての本質を失つたところの内閣が存在することは、これは民主主義政治のあり方としては容認し得ないところではないか。かよう考えるのでありますが、この点について総理大臣は何とお考えになるか、お尋ねしたい。
  108. 芦田均

    ○芦田國務大臣 中村君のような議論もあるのです。しかし実際の政治の動きをごらんになればわかる通り、たとえば最近のアメリカの議会において、共和党、民主党の一應の討議を経て出た予算でも、あるいは委員会において修正が行われる、あるいは上院と下院との意見が違い、そして結局多数のまとまるところにまとまつていく。またわが國においても、滿洲事変前後の政党政治が比較的形を整えておつた時代においても、政府の出した予算案について、各党の政務調査会がこれに檢討を加え、修正を加えて予算を通したという例も数々あるのであります。それですから、中村君のように、そうきゆうくつにお考えにならなくても、民主主義政治の機関は円滑に運用ができるのではないか。私どもはさよう考えております。
  109. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 私は首相の考え方にも一應うなずけるところがあるようにも考えるのでありますが、それでは内閣の主体性というものがなくなつてしまう。かように私は考えるのであります。  それからさらに私は、内閣の不信任を表示する方法として、二つあるのではないかと考えるのであります。それは不信任案が議会を通過した場合、これが一つ。いま一つは、内閣が責任をもつて行わんとする政治の裏づけとなる予算に対して、全面的に修正が行われるというような結果が生れた場合には、これは私は内閣に対する一つの不信任の表示の姿だと解釈することができる。かよう考えるのでありますが、この点総理大臣はいかようにお考えになりますか。
  110. 芦田均

    ○芦田國務大臣 欧米の例を特に私が引く必要もないと思いますが、民主主義政治が古くから行われておる國においては、今中村君のお話なつ予算案の全面的の修正というがごとき場合には、たいてい與党がその修正案に対して信任案をともに出すのであります。そうすると議会は予算の修正案を討議すると同時に、内閣の信任案を討議する。つまり予算案に対して與党が信任案を同時に出すという形によつて議会に臨む。その場合に予算がなおかつ否決されれば、それは不信任の意味として内閣が進退を決する。こういうことになつておる。わが國においては、信任案を出すという慣例は行われておりませんが、今お話ように、内閣の予算案が全面的に非常な修正を加えられて、内閣の反対にかかわらず國会を通過するというごとき場合においては、これを不信案と見ることが当然だと考えております。
  111. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 その点は私も同感でありますが、その点については先般新聞記者の会合かに、大藏大臣も職を賭してこの原案を通すというようなことを言われたというふうに書いてあります。職を賭してこの原案を通すということは、大藏大臣としてはやはりこの原案を通すことがこの内閣の重大な使命である。これを通すことに内閣の使命があるならば、これを通し得なかつた場合には、当然内閣は責任をとるべきだということを裏づけた言葉ではないかと考えるのであります。この予算案がもしも大きな修正をされるというような場合、不信任の意思が表示された場合には、総理大臣は辞職をする意思をもつておられるか、それとも議会を解散して信を國民に問うという二つの途があると私は思いますが、そういう場合には、いずれの方をとることが正しいとお考えになりますか、その点をお尋ねしたい。
  112. 芦田均

    ○芦田國務大臣 その点は、実際問題が起りました場合に考えたいと思つております。
  113. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 新聞報道によりますと、総理大臣は解散をするような場合がある、あるいは総辞職をする意思はないというようなことを示してあるようでありますが、そういうことをお言いになるときの氣持を考えられれば、そういう実際問題が起つたときに考えたいというような逃げを打たずに、この場ででも良心的に考えを発表していただくことができるのではないかと思うのであります。重ねてひとつその点、首相の意思を明示していただきたいと思います。
  114. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいまの段階において、内閣が辞職をすべき政治上の理由は少しもないと考えております。また現在國会を解散しようとも考えておりません。しかし今後政局の発展いかんによつて國民の輿論を問う必要ありと考えた場合には、國会を解散する必要も起ることと見透しております。
  115. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 この問題はこの程度に止めまして、第二にお尋ねいたしたいのは、いつかの新聞発表によると、総理は諸統制をだんだん解いていきたいというような発言をせられたように見ておるのでありますが、私は現在の統制というものはどうも行き過ぎが多に分あり、しかも官僚統制の行き過ぎのために非常な弊害が多いと思うのであります。一例を申し上げますならば、現在いろいろの事業をやろうといたしますと、ことごとく役人の前に行つて、ほとんど大部分が了解を得なければならないというように規定されておるのであります。私は福岡でありますが、福岡に商工省の支局があります。そういう所に行つてみますと、ほとんど役人の数以上に一般人が押寄せておるのであります。それはことごとく何か仕事をするための許可をとるとか、あるいは認可をとるための運動をしに参つておるのであります。國民が仕事をせなければならない場合、仕事をしようという場合に、あれほど役人のところに出かけなければ仕事ができないというこの状態は、大きな弊害として改めなければならないのではないかと、私は考えるのであります。もしも現在の情勢からいけば、全面的に統制を解くというようなことは、いろいろむずかしさがあると思いますが、そういうむずかしさのあるものは、官僚統制から自治統制に引き渡すというようなお考えは、お持ちになつておらぬかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  116. 芦田均

    ○芦田國務大臣 中村君の御意見は、統制そのものの必要は自分もよくわかつておる、しかしその方法が一たび誤つてきた場合には、國民はその弊に堪えない事態になる。こういう御議論であると思います。その点については私もまつたく同感でありまして、わが國経済の現段階において、ある程度の統制が必要欠くべからざるものであることは、われわれもこれを認めております。しかしその統制の方法が、國民をして実際生活に非常な不便を感ぜしめておる。ただいま御指摘のような事実を私も承知しております。從つて基本の原則としては、まず不必要な統制はこれを除きたい。そしてまた統制の方法としては、從來の積弊をできるだけ除去して、國民に迷惑をかけないような方法をとらなければならないのだということを、考えておるのであります。しかしながら、日華事変以後、統制の第一段階において、自治統制というやり方を相当にやつてみた。ところが不幸にしてこれはわれわれ日本國民の頭の隅つこに潜んでおる何かの通弊かと思いますが、民間人でも一たびみずから権力を揮い得る地位に立つと、たちまち翌る日から官僚になつてしまうという例を、たくさんに見てきたのであります。それが最近に至つて、同じ弊害である限り、官僚統制も自治統制も大した相違はないではないか。それならばいつそ思い切つて政府の機関としての公團の組織をとることも一つの方法である。こういう沿革的な変化によつて、今日の制度ができ上つたように私は思つております。しかしながら、それにもまた、ただいま中村君の指摘されたような弊害が伴つておるのでありますから、これを除くことには、極力政府として、今後も細心の注意を拂いたいと考えております。
  117. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 大体総理の意図は了承せられると思うのであります。私は自治統制の弊害があるということも、一應これは認めざるを得なかつたと思いますが、自治統制の弊害よりも、今日の官僚統制の方が、より大きな弊害を釀しておるということを言えると私は思うのであります。原則としてわれわれは官吏というものが監督の立場に立つとか、あるいは指導の立場に立つという程度は、最小限度に止めなければいかぬ。現在のように官僚が物の面にまつわつてつたのでは、いろいろ利益その他と結ばれまして、非常に暗い面、醜惡な面が横行しているということが言えると思うのであります。今日の官僚の腐敗堕落の実情というものは、裏面を見ますときに、とても自治統制の弊害のごときものではないと思うのであります。私いろいろ統制機関の人たちの話を聞きますと、今日の陳情その他の運動は、單なる運動では意味をなさぬ。いろいろ言われております醜惡な運動をしなければ、どうしても仕事が運ばないというような実情だ。聞くところによると、いろいろ統制組合とか、統制機関には、一例をあげると、乘用車なんかもある。しかもその乘用車は、ほとんど関係役人の乘用に使われておるというような実情があるということを聞いておるのであります。これは一つの例であります。さらに現在中止されておると称しておりますところの料飲店等の裏口営業の対象は、ほとんどそういう役人と業者との結ばれの場所になつているというようなことが、言われておるのでございます。これは單に自分々々の考え方に固執することなく、大らかな氣持で現在のこの惡い状況を見ていただいて、総理としては積極的にこの惡い面を正す。そうして自治統制の方へ切替えていく。それと同時に統制の堕落しておる面は、これを矯めていくということを考えることも、もちろん必要でありますが、今日の方法としては、官僚万能の統制よりも、だんだん自治統制の方に向けていかなければならぬ。かよう考えておるのであります。これはお答えは不必要と思います。どうぞそういう方向へ、ひとつ進めていただきたいと思うのであります。  それから最後にもう一つお尋ねいたしたいのは、今日までいろいろの労働運動の過程において、スト行為が行われておるのであります。私鉄のスト行為とか、あるいはその他いろいろなストが行われているのでありますが、このスト行為が國民生活並びに生産増強に、どれだけ大きな影響を來しているかということを、われわれは考えなければならぬと思うのであります。このスト行為の例をあげますと、先日日通のストがあつたのでありますが、この全日通労組の五日の日の午前零時から、一齊に二十四時間ストをやつたということが、新聞に報道されたのであります。このわずかに二十四時間のストによつて、門鉄では日通管内の輸送の全面的停止を指令すると同時に、小口扱いの貨物列車を、ただちに最寄りの駅に停車せしめなければならぬような、ダイヤの混乱を來しておるのであります。五日一日だけストをやつたために、約千八百台の貨車が止まることになる。こういうことを発表しておるのであります。しかもその一日の混乱を通常の状態にもち返すには、二十日間を要するということを発表しておるのであります。かくのごとく國民生活に大きな影響を與えるところのスト行為というものが、しばしば行われておるのであります。この行為に対して、首相としてはどういう対策を立てておられるか。全然傍観をしておられるのか。これに対して何かお考えがあるとすれば、その点をひとつお聽かせ願いたいのであります。
  118. 芦田均

    ○芦田國務大臣 中村君が今御指摘になつた運輸交通機関のストライキの問題は、われわれの経済生活に最も影響の大きな問題であります。政府としても決して無関心ではあり得ないのであります。現在の労働法規の解釈としても罷業が國民生活に重大なる脅威を與える場合においては、それぞれの機関を通じて罷業の禁止を命じ得る場合もあるのであります。從つてその罷業の制質とその規模のいかんによつては、必要に應じてこれを禁止することができる権限をもつておるのであります。先般の日通のストの場合は、さいわいにして二十四時間の罷業で終局を見たのでありますが、今後かくのごとき事態がさらに大規模に行われるごとき場合においては、政府としてもこれに対処する適当な方策をとらなければならないと考えておるわけであります。
  119. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 私はこのスト行為というものは、絶対に國内に起らないよう一つの方法を考えなければならないのではないか。それには、ただ單にわれわれは労働者のスト行為を否定するというのではないのであります。もちろん今日労働者の生活の困つた状態にあるということは、重々わかるのでありまして、これに対しては政府の面で、できるだけのことを考えていかなければならぬのではないか。先ほど私が申し上げましたようないろいろの面におけるスト行為が行われておるという実情を考えるときに、政府の方ではいろいろの手があるというふうにお述べになりましたけれども、その手が効を奏せずして、不幸にしてスト行為が行われていきつつある実情を見るときに、これを止める一つの方法が何か考えられなければならぬのではないか。アメリカあたり考えられておるよう一つの方法があると思うのでありますが、私は日本の現在のこの状況下においては、スト行為はどこまでもやらないということのできるような、一つの特殊な法律を考えることが、必要ではないかと思うのであります。私かく言いますと、労働者の行為を抑えるというふうに考えられますけれども、そういう氣持でないのであります。われわれはいかなる犠牲を拂つても、スト行為をやらない方が國のためになる。國の経済再建をはかつていく上にも、いかなる犠牲を拂うといえども、スト行為を止めることができるならば、そに方が有利だという観点から、スト行為を完全に退けることができるような法律を考える必要があるのではないかと思うのでありますが、この点について総理大臣はいかにお考えになるか、お尋ねしたいのであります。
  120. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ストの性質、あるいはその規模等によつては、法律をもつてこれを禁止する規定が各國ともに行われております。しかしあらゆるストを全面的に禁止することは、これを法律に規定して、はたしてその目的を達し得るか。またかくのごとき法律をつくることがはたして賢明な政策であるかどうかということは、なおとくと考慮する必要のある問題であつて、この点が民主主義的政治運用の前途に横たわつておる一つの大きな試練であると考えております。結局民主主義の政治においては、その民族の運命を決するものは、その國民の政治的意識の発達と、その良識いかんにかかつておる。從つて各民族はその民族相應の政府をもち、昔から言つておる、その民族にして眞に民主的に開明的の民族でない限りりつぱな政治ができない、民族相應の政治しかできない。これが万古を通じての鉄則であると考えておりますから、爭議の問題についても、やはりその鉄則のもとに、われわれが冷やかに考慮すべきであると考えておる次第であります。
  121. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 大藏大臣に対して、野坂參三君。
  122. 野坂參三

    ○野坂委員 私大藏大臣にはいろいろ御質問がありますけれども、時間がありませんから、一、二の点だけお聽きしたいと思います。その前に主税局長にお聽きしたいのです。昨日かあるいはきよう配付された材料の中に、所得税予算額内訳表というものがあります。この中の改正案による予算という項目の中に、課税見込所得として合計が七千三百五十九億円、ここではつまり今年度の課税見込所得として七千三百五十九億円というふうに出ておりますが、そうしますと、基礎控除額はこの場合いくらになつておるか。もし額がわかれば今お聽きしたいと思います。
  123. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 基礎控除額は一人当り本年は一万七千五十円になつておりますので、ここに納税人員が約千五百万あるといたしまして、それに乘じまして約千五百億円という基礎控除額になつております。
  124. 野坂參三

    ○野坂委員 家族控除、いろいろな点を含めて、全体の控除はどのくらいになりますか。
  125. 平田敬一郎

    ○平田(敬)政府委員 家族控除は税額から税額を控除するというふうになつておりますので、所得の控除ではございませんが、かりに家族控除額を所得額に換算して控除額がどのくらいになるかということを大まかに計算してみますと、約三千億前後ではなかろうか、この計算は今ちよつと手もとに正確な資料をもつておりませんので、もし正確なものが御必要とあれば後の機会に……。
  126. 野坂參三

    ○野坂委員 それでは後で正確な統計をいただきたいと思いますが、この点について大藏大臣にお聽きしたいのは、今政府の発表されました國民所得、あの総額は一兆九千六十億ということになつておりますが、それから課税見込所得基礎控除額、この二つを寄せまして約一兆円内外になると思いますが、その一兆以上のものを全國民所得から引きますと——正確な数字は今はわかりませんが、約八千ないし九千、八千億内外のものがここに出てきはしないかと思います。ここがお聽きしたいところで、この八千億内外のものが出る。これがすなわち当然課税対象とならなければならないものであるというようにわれわれは考えておるが、どうでありましようか。
  127. 北村徳太郎

    北村國務大臣 その差額は免税点以下のもの、それから課税対象以外のもの、控除等によつて納税資格から失格したもの、さらにやみもあると思いますが、さようなものが除けますので、必ず課税対象ではない。課税対象以外のものが殘る。こういう考えであります。
  128. 野坂參三

    ○野坂委員 やみとか、ああいうものをもちろん含めたものでありますが、大体において基礎控除全体を切捨てて、そうして今言つたような課税見込所得、こういうものを二つ合せたものを全國民所得から引けば、あとに殘つたものは大体課税対象になる性格をもつものではないか、必ず課税対象にすべてがなるというのではありません。今ここに正確な数字はもちませんが、かなり免税点が廣い範囲になつて、こういう免税点で課税の対象とならないものの合計額は、かなりの数字になりますし、その他今申し上げましたような意味で、課税対象とならざる金額は、今御指摘のようなことになつておると思うのであります。從いましてこれは課税対象から外にあると思います。こういうふうに私は理解しております。
  129. 野坂參三

    ○野坂委員 これは見解の相違というよりも、具体的にお伺いしないとはつきりしないと思うのであります。今の主税局長の言われたところでも、基礎控除額を合計すれば四千億を超えるだろうという点ですが、これは國民所得から拔いてしまう。それから課税見込所得、これも國民所得から拔いてしまう。そうすればあとに殘るものは課税されるべきものもはいつておる。この中にはやみももちろん含まつておる。こういうことを今質問したのですが……。
  130. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今の御質問の趣旨は、大体そうだと思います。しかしその中に課税されるべきものも含んでおる。こういうことは了解できると思います。やみももちろん含んでおります。
  131. 野坂參三

    ○野坂委員 私がなぜこういうことをお聽きしたいかと言いますと、つまり今財源がないというふうな問題が、國民の一番大きな問題になつておるのでありますが、今言つた大ざつぱな数字をあげてみても、もちろん國民所得の統計自体が相当疑わしいものだ。それも了解しておりますが、それにしても七千億あるいは八千億に近いものが課税対象となるべきものであるが、現在なつていない。こういうふうに私は理解せざるを得ない。そうしますと、一体今日課税対象となるべきものであつて、しかも逃れておるのは何か。たとえば勤労者はこれを逃れることができない。源泉課税でみなやられておる。中小企業者とか、農民、そうしたものは、この間G・H・Qのデヴイス氏が言われたように、非常な苛酷な課税をされておる。ほとんど彼らは逃れる途はないと考えます。実際街で中小工業者にあたつてみても、彼らは課税能力以上のものを実際とられておる。そうすると脱税しておるものはどこにあるかと言えば、大体大きな所得者ではないか。この中にはもちろんやみがはいつている。ですから、私の言いたいことは、今、確実な数字でなくても、七千億あるいは八千億というような大きなものが実際上課税さるべきであるが、これが逃れている。これをいかにしてとるかという問題だと思います。これはもちろん全部はとれないだろうが、かりに半分とるにしても、三千億あるいは四千億の新しい財源がここにありはしないか。こういうようにわれわれは言いたいと思います。この問題についてここで公聽会があつたときに、全財の人が來て、去年のこういう脱税された額が五千億というようなことを言われて、これについてのはつきりした統計的な根拠は言われなかつたのですが、私今年度のこの予算をこうしてざつと見ただけでも、こうしたものがとれるべきであつてとれていないようにわれわれは考えますが、これについて大藏大臣はどういうようにお考えでございましようか。この方法はまた別個の問題になりますが……。
  132. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま御指摘になつた数字は、私はさようになるとは思つておりません。これは具体的に調査すればわかることでありますが、数字の問題は別として、若干そういう課税対象になるべきものがあるということは、これは現にやみがあるのですから認めざるを得ない。それでこのことは非常に重大視しておりまして、現在お話のごとく、相当に、特に勤労者のごときはこれはもう百パーセント納めている。こういう事実等から考えまして、どうしてもやみ所得者があるとすれば、これは追究しなければならぬ。この点は相当強く考えております。從つて具体的な方法をただいま考えておりまして、このやみ所得者の課税を追究してとるということには遺憾なきを期しております。方法については、時間がありませんが、御要求があれば申し上げますが、いろいろ考えております。
  133. 野坂參三

    ○野坂委員 これは非常に重大な問題でありますから、その方法について伺いたいと思います。
  134. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは本会議でも申し上げたと思いますが、このやみ所得を捕捉するということは、よほどむずかしいことでありまして、なかなか片手間ではできない。しかしながら、これはいろいろな意味において重大な、たとえば税に関する技術的な考え方からいつても、あるものは大きく逃れているというようなことがあつては申訳がないということから、非常に強く追究しなければならぬと考えております。ただ技術的に非常に困難でありますから、各税務署等において多年熟達した者を選拔して、それに相当な再教育を與え、各財務局に專門にそういうことを処理させる者を相当数置きたいというようなことを現に考えております。但しこのことからくる行き過ぎがあつてはならぬので、こういうことが往々にして問題を起しやすいのでありますから、ただいま申し上げた再教育というのは、そういう点において、十分警戒しながら追究していく。こういうことによつて、これを確保していきたいと考えております。
  135. 野坂參三

    ○野坂委員 もしこうした脱税された相当多額に上るものが捕捉できれば、私は今の財源の問題なども割合容易に片ずくのではないかと思います。ただ問題は、いかにしてこれを捕捉するかという問題であります。これについては、今大藏大臣の申されましたような方法もありましようけれども、こういう点について、大藏大臣はどういうふうにお考えになりますか。つまり今やられている査定あるいは徴税。すべてがいわゆる税務署官吏によつてやられている。外部の援助というものが、最近いろいろできましたけれども、ほとんど外部からの民主的な方法による課税の捕捉ということがやられていないように思います。ところが最近のいろいろの税問題から、今、街では、たとえば労働組合とか、あるいはその中には税務署官吏の組合もはいつておりますが、あるいは農民組合、中小商工業者の團体、協同組合、こういう民主的な諸團体が、一つの税に対する委員会的なものをつくり上げた、これが査定の問題とか、あるいは徴税に何らかの形において參加するとか、こうしてくれば、たとえば一といつた場合においても、その組合がかりにこの運動に參加しているならば、ここでどういう問題があるというようなことも、おそらくわかりはしないか。それで私たちの方では、こういう民主的な大衆的な税務委員会的ものをつくり上げるのが、一つの方法ではないかと思いますが、これについてのお考えはどうか。
  136. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまお話ような問題は、相当考慮すべき点であると思いますが、民主的な方法によつて、しかも十分納得していただくような方法を講ずるということが、きわめて必要でありますから、さような方向に向けたい。それで自発的な、民主的に起る納税組合的なものもこの際起るならば大いに起つてもらいたい。從來は天降り的な官制の納税組合ができたりしたので、これではいけないと思いますから、かつて隣組をつくつたような態度でなく、自発的に、おのずから起てくるよう納税組合も起つてもらうようにしたいと期待しているわけであります。それからきわめてまじめな各種の團体等には、いろいろ御相談をして、この所得の実体をつかむに非常によい手がかりになるような点において、そういう團体に御相談をかけるということも考えております。ただときどき問題になります團体交渉的なことをやらせないかということが出ておりますが、これは弊害がありますから、やらさないという方針でおります。
  137. 野坂參三

    ○野坂委員 今の大藏大臣の御意見では、自主的な、下からのそういう委員会とか運動ということは望ましいと言われましたが、実際やつてみると、たとえば査定の問題などはいろいろ民主的な團体がこれに參加している。ところが、あるいはある意味においては干渉というか、税務署の方などと協議するという運動が起ると、とかく上の方から彈圧されるというふうな事実が非常に多いと思います。これは何も反税闘爭というようなものではなく、正しい査定をやつてもらうという意味の運動だと思いますが、これについて政府の方として望ましいものとしてこれをお認めになりますか。あるいは將來こういうものはやめた方がよいというふうにお考えになりましようか。
  138. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは実際問題として、きわめてまじめな税のために協力していただくようなものについて、その協力を求めてよいと思うのでありますが、今まで起りましたものの中には、はなはだいかがわしいものもございます。税問題を対象として、どうもはなはだ逸脱したような運動が起つたり、あるいはあるところでは、税務署が襲撃を受けたというようなこともありますので、さような点には十分警戒しながらいきたい。かよう考えておるのでございます。まじめな、かつ眞実なものについては、もちろん協力を求めることにやぶさかではございません。その点については、なおわれわれとしては、警戒しなければならぬ点も相当あるというふうに考えております。
  139. 野坂參三

    ○野坂委員 時間も経ちましたので、ほかの問題は分科会でやることにして、大藏大臣に対する質問はこれで打切ります。
  140. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 この際安本の物價廳次長から物價改訂の補正に関しまして、説明をいたしたいという申出がございますので、説明を聽取することにいたします。簡單でございますから、暫くお待ち願います。野田政府委員
  141. 野田信夫

    ○野田(信)政府委員 それでは時間も経ちましたので、ごく簡單に價格補正をいたすことにつきまして、御説明申し上げます。  昨年七月のいわゆる七月体系という價格改訂をいたしまして、それで相当インフレの波は抑え得たとは思いますけれども、御承知の通り、その後インフレはやはり進んでまいりまして、すでに七月体系というものは維持できなくなつてきたような情勢におることは、皆様御存じの通りでございます。それに政府財政も健全財政にしなければならぬという必要にも迫られておりますし、企業は全部非常な赤字で経営を続けてまいりまして、これ以上赤字金融で経営をつないでおくことは、企業それ自身の存立に関係いたしてまいりますし、從業者の利益から見ましても、このままで赤字経営を続けるということは、非常な問題になる情勢に追いこまれてきたわけであります。それでわれわれといたしましては、早くこれを実行したいと存じておるのでありますけれども、何分いろいろの基礎條件が未確定でありまして、どうにも処置ができない。少くとも六月の十五日には発足したいと思つておりましたが、それも思うに任せません。二十日にしようと思つても、それもできないというよう状態で、日を送つてまいりましたが、どうしてもこれ以上延すことは困難になりましたので、それで今日、今回の價格補正を発表いたすことにいたした次第であります。  簡單に申しますと、計算の方法は、この前の七月体系と同じ方法で、その後の新しい情勢を盛りこんではおりますが、体系から申しますれば、前の七月体系と同じ方法であります。つまり基礎的の生産資材に対しましては、安定帶物資と稱しまして、この前は基準年次の六十五倍のところで消費者價格を抑えて、生産者價格がそれを上まわる部分につきまして、價格補給金を支給してきたわけであります。今回もやはり安定帶物資というものを設けませんと、物價の上り方が非常なものに相なりますので、やはりその方法を踏襲して、この倍率を六十五倍であつたのを、大体百十倍——物資によりまして今度は倍率が違つてまいりましたけれども、大体は百十倍見当のところで收めようということにいたしております。それから鉱工業品の價格は、やはり前と同じように、原價計算主義で原價を主として計算いたしますし、農産品はやはりパリテイ計算でやつております。それで賃金ベースは、この前はいわゆる千八百円ベースでありましたものを、今回はそれを三千七百円ベーすに引上げまして、それを前回と同樣に産業別の産業賃金に開きまして。それを先ほど申した原價計算の労務費の賃金に見込んだわけであります。もちろんその後、こういう方法で開きました産業別の平均賃金以上の賃金をすでに実施しておる産業が相当出てまいりましたので、それにつきましては、それだけの水準の賃金でなければ、労働者を吸收することが困難であろうと思えるような産業であり、かつて重要な産業につきましては、実際に支拂つておる賃金を採用するような方法をもちまして、業種別に開いた賃金水準そのものとは別個の賃金を織りこんで、現実に近寄せる。但しやはり物價全体を見なければなりませんので、他産業との賃金水準との均衝も一方には考えて、なるベく実際支拂つておる賃金を織りこむというような方針に今回はいたしたのであります。これが前回とはちよつと違つたところであります。  今度の物價改訂で、一番われわれの苦心しましたところは、價格の重要な要素の一つである運賃などが、未だに審議中でありまして、われわれといたしましては、これを織りこむことができないという状態でありますので、運賃につきましては、現行のまますえおきの價格をきめまして、それをさしあたり実行する。そうして運賃が國会の審議によつて決定に相なりますのをまちまして、その決定從つて價格を物價廳長官の名で告示しまして、その統制額に乘り換えるという方法をとつた次第であります。それで前の價格を甲統制額、あとの價格を乙統制額としまして、乙統制額の方は、かりに政府原案のように國会が通つたならばこういう價格になるというような價格を出すわけであります。と申しますのは、二段の補正をいたしておきますと、二段の補正をするということが、世間一般の議題になりますと、非常にそこで思惑が生じまして、現在でも近いうちに物價改訂があるということが一般に知られておりますために、賣惜しみ、退藏というようなことが、盛んに行われて、非常に生産が澁滯をしておりまして、司令部方面からも、盛んにそれを言われておつたよう状態でありますが、價格をもし改訂いたしましても、また近いうちに運賃がきまり次第改訂になるのだということが皆誰でもわかる。そういう期待をもつたときに改訂をしましても、思惑が依然として絶えないというような点が考えられますので、どうせ一番上つてもここまでしか上らぬのだ、だから思惑したとて、これくらいしか思惑の余地がないのだぞということを示すという意味から乙統制額というものも添えて発表してみよう考えた次第であります。それで國会の御審議を待ちまして、きまり次第、それがどういう率にきまつても、そのきまつた率によつて、今度は乙統制額をはつきりきめまして、それに乘り換える。こういう方式を今回はとつたのであります。これも七月の場合とは違つた点であります。その他はおおむね前の通りの方法を踏襲したのであります。その計算しました結果をおもなるものについて、ちよつと御報告申し上げますと、石炭では、これは安定帶物資でありまして、一定の重要産業向けの石炭は、從來一トン六百円で賣つていたわけでありますが、それを今回は千円に引上げたわけであります。特定産業の消費者にとつては一・六七倍になつておるわけであります。電氣料金は電燈も電力も、一般に全部約三倍にならざるを得ない。肥料は春肥は全然すえおきでありますから、変化ありません。今回のきめました最初の発表の中にはいつておりますものには、トラツク、運賃、荷牛馬車、リヤカー、荷車小運送、汽船の貨物、機帆船、港湾作業、こういうような一連の料金も、同時にこの第一回の分に加えております。これらが目下非常に窮境に立ち至つておりまして、一刻も早くきめてくれないと困るというような要請を前々から受けておつた産業でありますので、これを最初の分に加えたような次第であります。あとは基礎物資からだんだん廣めていきまして、二次製品、三次製品と、だんだん製品の方に追かけてまいるつもりでありますが、この前の七月の場合には、基礎資材と製品とのきまります間に、非常に長い時間を費しまして、その間非常な迷惑を産業界にかけたという苦い経驗もありますので、今回はなるべくこの期間を短縮して、材料の方が先に上つて製品の方の値段はまだきまらぬというような時間のずれをなるべく少くするということに全力をあげていくというつもりでおります。
  142. 川島金次

    ○川島委員長代理 中村委員から、安本への資料の要求について発言を求められておりますので、これを許します。
  143. 中村寅太

    ○中村(寅)委員 米價決定に対する基準年次における基準品目のウエート決定の基礎資料をひとつ御提出を願いたい。
  144. 川島金次

    ○川島委員長代理 それでは明日は午前十時正確に総理大臣委員会に見えられるそうでありますから、その時刻に委員会を開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十七分散会