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1948-06-17 第2回国会 衆議院 予算委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十七日(木曜日)     午前十一時二十二分開議  出席委員    委員長 鈴木 茂三郎君    理事 庄司 一郎君 理事 稻村 順三君    理事 川島 金次君 理事 押川 定秋君    理事 小坂善太郎君 理事 今井  耕君    理事 大原 博夫君 理事 東井三代次君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    植原悦二郎君       角田 幸吉君    上林山榮吉君       古賀喜太郎君    島村 一郎君       鈴木 正文君    鈴木 明良君       西村 久之君    原 健三郎君       本多 市郎君    本間 俊一君       海野 三朗君    加藤シヅエ君       黒田 寿男君    田中 松月君       中原 健次君    矢尾喜三郎君       梅林 時雄君    川崎 秀二君       小島 徹三君    鈴木 強平君       田中源三郎君   長野重右ヱ門君       笹森 順造君    大神 善吉君       中村 寅太君    世耕 弘一君       野坂 參三君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         農 林 大 臣 永江 一夫君         商 工 大 臣 水谷長三郎君         運 輸 大 臣 岡田 勢一君         逓 信 大 臣 冨吉 榮二君         國 務 大 臣 苫米地義三君         國 務 大 臣 野溝  勝君         國 務 大 臣 一松 定吉君  出席政府委員         経済安定政務次         官       西村 榮一君         経済安定本部財         政金融局長   佐多 忠隆君         大藏事務官   福田 赳夫君         大藏事務官   平田敬一郎君         商工事務官   始関 伊平君         貿易廳次長   新井  茂君  委員外出席者         商工事務官   春日  進君         参  考  人         日本銀行副総裁 川北 禎一君         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算  昭和二十三年度特別会計予算     —————————————
  2. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 これより会議開きます。  質疑にはいるに先だちまして、さきに本委員長案件並びに人選等一切御一任を願つておりました公聽会の件に関しまして、御報告をいたしたいと思いますが、公聽会は明十八日並びに十九日の両日にわたつて行いたいと思います。ただいますり物をお手もとに配付いたしましたからごらん願います。公聽会に関する案件は、昭和二十三年度総予算について意見を聽くということであります。公述人としては第一日、六月十八日は学識者として金原賢之助君、慶應大学教授、風早八十二君早稻田大学講師金融関係から千金良宗三郎君、三菱銀行取締会長中小商工業の側から中島英信君、全日本中小工業協議会の役員、農業関係として日本農民組合から大森眞一郎君、地方財政としては、生田和平君、町村長会長婦人代表として小松愛子君、家庭学園園長労働組合側から山田有三君、産別会議財政部長河野平治君、労働同盟主事徳島米三郎君、全財連委員長、次は土橋一吉君、全逓、加藤閲男君國鉄委員長、これが第一日の予定でありまして、第二日の六月十九日は、学識者として鈴木武雄君、前京城大学教授金融関係から大倉眞君、全銀連委員長産業側から日向方齋君扶桑金属株式会社総務部長もとの住友金属、次は永野重雄君、日本製鉄株式会社常務取締役同友会代表幹事原安三郎君、日本火藥株式会社社長地方財政から住田正一君、東京都副知事、一般公述人といたしましては、板倉安兵衞君、化粧品製造販賣業坂井俊君、貿易会社員西村兼一君、農業農経團体教員小原鉄五郎君、城南信用組合理事長荒木正三郎君、日教組委員長。  大体以上のような予定で十八、十九の両日にわたつて公聽会開きたいと思います。右御報告申し上げます。質疑に移りますが、きのうの質疑に続きまして今井耕君。
  3. 今井耕

    今井委員 昨日に引続きまして、主として農林大臣質疑をいたしたいと思います。土地改良に関する経営の問題でありますが、食糧増産確保の上におきまして、土地改良の必要なることにつきましては、いまさら申し上げるまでもないのでありまして、省畧をしたいと考えるのでありますが、これを農民経済農民生活という方面から考えてみますると、農民農業経営の自由が與えられておりますなれば、その時代に対應したところ農業経営が行えるのでありまするが、今日におきましては、農業経営の自由が與えられておりません。たとえば用水が非常に不足するような地方においては、稻をつくるよりは他のものをつくつた方がきわめて安全であります。しかもこういう地方におきましては、轉作を申し出ているのでありまするけれども、他の作に轉作をすることは、なかなか許されませんから、稻作をしなければならぬということになりますと、用水不足のために非常に危険が伴うのであります。それの供出は絶対的であります。もちろん大なる旱魃などで顯著な減收の場合においては、割当も補正されますけれども、反当一斗とか二斗というような減收に対しては、補正がされません。また事実補正しようとしても困難であります。そういう場合におきまして供出が強行せられますから、その不足分は全部保有米を割いて供出しなければならぬということになるのでありまして、ここに農民の非常な苦しみがあるのであります。今日この土地改良に対する助成の要望が、全國的に非常に強いということは、こういうところに原因しておることが多いと考えてよろしいのであります。これは農民自身考えれば、自分の食べるものだけをとるのであれば、別にこういうことが行われなくても、生活には支障がないのでありますが、この供出責任という上から考えて、非常に困つておるわけであります。これは國が統制をしておるところに無理があるのでありまして、これに対して無理ができないようにするについては、灌漑排水なんかの設備をいたしまして、安心して農業に從事ができるようにするか、またそれができなければ轉作を認め、そしてその土地の実情に即應するような経営ができるようにしていくか、いずれかが実行されなければ無理であると考えるのであります。たとえば私は滋賀縣でありますが、滋賀縣なんかは、大体耕地面積の八割五分が稻作になつております。そして今日まで非常な無理をして稻をつくつております。こういうような地方が非常に多いのであります。それで非常に不安を感じて、地方から轉作なんかを申し出ておりますけれども、これはなかなか許可されぬのであります。もちろん今日の時節といたしまして、稻作主食以外のものに轉作をするということは、これはどうかと考えますけれども稻作を甘藷なんかに轉作することは、同じ主食でありますから、相当考えられなければならぬのでありますけれども、これもいろいろ輸送の関係で、そう簡單にいかないようであります。もし轉作ができなければ、土地改良なんかに対する助成をしてほしい。どちらかにしなければ、これは無理難題農民に強いておるということになる。しかもこれは今日國がこういうものを統制しておるところに原因しておるのであつて農民責任ではないのであります。こういう観点に立つて、國が強力に土地改良に対する経費をとりまして、これが実施ができるようにしていくことは、当然のことであると考えるのであります。この予算につきましては、ちようど農林省におきましても、昨年の十月に農林省省議をもつて五箇年計画をされた。この金額もわれわれから考えると非常に少額であります。また最小限度においても、このくらいな経費は当然計上されなければならぬと考えておりまして、私はこの五月の暫定予算の審議の際にも、特に農林大臣にこの点を指摘いたしまして、最小限度省議できめられた四十一億円程度のものは、ぜひ計上されることを要求しておきました。その際農林大臣は、ぜひそれだけは計上する覚悟であるというふうに御答弁になつておるのでありますが、今日の物價体系、マル公七割上げという点から考えてみますと、四十一億円は約七十億円くらいになると思うのであります。それらに対しまして、ただいまの予算に計上されておるその内容を檢討いたしますと、土地改良におきまして十六億四千万円、農業水利におきまして八億八千万円、合計二十五億二千万円となつておるのでありまして、約三分の一となつておるのであります。これはきわめて遺憾であるのであります。これに対しまして、農林省としまして昨年の十月の省議で決定され、せつかくこれで一致してやつていこうという案を立てられたのにもかかわらず、わずか三分の一に減つておる。これに対して農林大臣はどういうふうにお考えになつておるのであるか。また聞くところによりますと、今日経済再建の五箇年計画の試案の中にも、この五箇年計画が織りこんでできておるということを聞いておるのであります。これではかりに経済再建の五箇年計画なるものがつくられましても、こういうふうに簡單にきわめて少額まで減額するというようなことでは、これはまつたく机上の計画にすぎないと考えるのであります。今日食糧確保ということが最も重要な時期におきまして、こういうような現状は、まことに遺憾にたえぬのであります。これに対する農林大臣の御所見をお伺いしたいと考えます。
  4. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいまお話になりました土地改良費が十分でない、こういう御意見につきましては、私も農林当局といたしまして、これが必ずしも万全なものであるとは考えておりません。しかしながら今お説にありましたような國財政の全般から見まして、私どもが当初に要求いたしました土地改良予算が、全額を公共事業費の中で認めるということが、非常に困難でありまして、私どもはこれを補いますのには、今せつかく政府で立案を急いでおります、原始産業に対します農村金融の基本的な方法を確立いたしまして、土地改良などは、政府の一方的な補助で行うということよりも、地方のそれぞれの團体におきまして、土地改良を自主的に行つて、これに政府補助を行うというばかりでなくして、その事業に対しては、適当な長期の低利な金融を行うということによつて、今後そういう面が相当自主的に強化されていくという方向をとつていきたいと考えております。
  5. 今井耕

    今井委員 いろいろ國の財政の都合があるということは、十分承知しておるのでありますが、ただいま提案されております予算全体を通じて、ほんとう食糧増産農業改良発達ということに直接役立つという経費を拾つてみますと、その経費予算総額に対しまして、その割合は非常に少いのであります。これはいろいろ計算のしかたもあると思うのでありますが、農林省におきましては、大体こういうような点について、どのくらいな割合になつておるか、あるいはまた過去十年間くらいの予算と、農業改良発達、あるいは増産というような方面に要する費用割合というものを檢討されて、そうして今日のこの農業増産あるいは改良発達に要する経費が、はたしてどうであるかということが檢討されたことがあるかどうか。今日國家財政が非常に困るというのはよくわかるのであります。しかし困る中でそれをどうわけるかということは、よほど考えなければならぬと思うのであります。もしそういうような御研究があれば承りたいと思います。また今までにそういうような御研究がなければ、また適当な機会にお答え願いたいと考えるのであります。なおまた今御答弁の中で、補助というものを少くして、團体等で自主的にこれを行わすようにしたいというお話であつたのでありますが、私も根本的には賛成をするものであります。しかし今日の農業そのもの経営自主性経営の自由というものが與えられているならば、そういうこともできるのであります。しかし今日経営の自由というものがほとんど與えられておらない。昨日申しましたように、ほとんど主食生産農家というものに対しましては、國営に近いほど強力な管理をしている。農民経済はほとんど國が握つている。しかも今日農民もとの水呑百姓のような立場に置かれている。こういうときには、そういうような余裕がないのであります。現状半額補助をいたしてもらつても、あと半額をどうするか、その金融がないために非常に困つている。こういう現状におきましては、これは今日の現状には即しないものである、こういう点が考えられるのであります。こういう見地から考えて、何らかの方法によりまして、もつとこの土地改良部面を強力に遂行できるようにしていただくことを念願する次第であります。同時に轉作に関する問題、これについて、もし土地改良の方がこれほどの程度しか財政上できないというならば、今後轉作というものについて、相当大幅に許可せられるお考えがあるかどうか、この点について御所見を承りたいと思います。
  6. 永江一夫

    永江國務大臣 第一の点でありますが、増産についてどれだけの予算が組まれているかという点につきましては、直接間接に数字を拾つてみますれば、ある程度数字は出ると思いますが、しかし御説にありましたように、予算数字を通しまして、これだけのものがかりに一割増産に使い得るというふうに限界線を引くことは、非常に議論のあることと思うのであります。しかしお尋ねになりました農林省におきます各般の増産に対する五箇年計画というものはもついているのであります。それについてどれだけの費用が要るかということは、その年度々々におきます物價指数のにらみ合わせもしなければならぬのでありまして、この五箇年計画を完遂いたしますために、どれだけの総額が要るかということについては、その都度総額が変つていくのではないかと、私は考えているのであります。しかしこれを現在の物價指数において算定して出せという御希望がありますならば、いずれ分科会の席上までに、これを詳細な数字として御参考に供したいと思います。  それから土地改良費というものが十分でない、從つてこれによつて水利が十分に行われない。そこで生産農民諸君の御希望になるように、その改良が届かない面は轉作を許可したらどうかという点につきましては、個々のものをよく檢討いたしませんと、適当な御返事にはならぬと思いますが、私は原則といたしましては、土地改良農業水利というものが及ばない土地においても、なお轉作を許さないということは、非常に実際問題として妥当でないと思うので、そういう点については考慮してみたい、こう思つております。
  7. 今井耕

    今井委員 ただいまの御答弁のうちの轉作の問題でありますが、これは実は非常にこまかい調査もいたしまして、申し出ておる事情もあるのであります。ここでそういうこまかい問題を申し上げるのはいかがと思いますので、これで質問を打切ります。  次に農業協同組合に関する予算の問題でありますが、農業生産力の増強、農民経済的社会的地位向上をはかる上におきまして、農民協同組織発達を促進することの必要であることは、農業協同組合法の第一條にも示しておるところであつて、明らかなのであります。そして眞に民主的な農民協同組織発達を促進するためには、農民協同組合教育が基礎となると考えるのであります。農業協同組合に関する経費は、営業技術及び経営向上指導に関する費用といたしまして、七億五千万円のうちに含んでおるようでありますが、この中で農業協同組合に関する経費いくらになつておるか、また農業協同組合教育に関する経費いくら計上されておるか、この点をお伺いいたします。
  8. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいまお示し予算の中で、大体協同組合の実際の指導にあたる人々を養成し、あるいはこれを指導するためには、約八千万円くらいの予算を組んでおります。
  9. 今井耕

    今井委員 農業協同組合指導監督に要する経費全体がいくら、それからそのうちで協同組合教育に関する経費いくらかということがおわかりになりますか。
  10. 永江一夫

    永江國務大臣 いまお示し金額につきましては、精細なものを私は今用意しておりませんから、後刻数字にいたしましてお届けいたします。
  11. 今井耕

    今井委員 農業協同組合に関する経費内容につきまして、私はこの前の六月の暫定予算のときにも、農業協同組合発展のために、協同組合教育をうんと重視しなければならぬということを、この席におきまして要求をしておつたのであります。今度のこの予算の中で、私の聞いております点を申し上げますと、協同組合の普及に関する経費といたしまして、九百二十二万円が計上されておる。その経費は、パンフレツトとか、リーフレツトとか、ポスターとかいう経費に、全部使われるということを聞いておるのであります。農民に対して協同組合教育をしていく上におきまして、このパンフレツトとか、リーフレツトとか、ポスターというようなものは、この前の暫定予算のときにも、こういうふうなものが盛られておつたのであります。事実この前のときにも、自動車に乘つてこういうものをぱつぱとまいて歩いて、子供が喜んでそれを拾い上げておる。こういう現実を見ておるのであります。今回の予算におきましても、こういうものに九百二十二万円も計上されておる。そうしてもつとほんとう教育をするような経費は、一文も計上されておらぬというふうに聞いております。これはまことに遺憾にたえない。もつとしつくりと、この農業協同組合の職員を養成する費用とか、あるいは農民を直接教育するような、補助費であるとかいうものが計上されなければならぬと思うのであります。今日ほんとうに民主的な農業協同組合発達させるためには、今日労働組合なんかにおきましても、労働組合の健全なる発達をはかるために、今回專從者というものが、七百人に一人くらいの割合で認められることになつておる。この協同組合においても、やはり農民協同組合教育のためには、一協同組合に一人くらいの專從者を置き、眞の協同組合としての発展を期さなければならぬというところまでいくべきであると考えるのであります。しかるに今回の予算には、ほんとうにこれというこういう方面予算が計上されておらぬことは、これはまことに遺憾とするのであります。よく御調査を願いまして、これについては、何とか格別の御心配を願う必要があると考えるのであります。  なおこのほかに、農業技術の振興の問題とか、あるいはその他各種の問題があるわけでありますが、予定の時間がきましたので、あとはまた分科会にでもお伺いしたいと思います。
  12. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 大藏大臣はもうじきに御出席になります。それまで農林大臣に対する質疑を続けたいと思います。庄司一郎君。
  13. 庄司一郎

    庄司(一)委員 農林大臣に最初お伺いしたいのは、ただいま議題となつております本予算中、農林関係予算、そのうちの林野関係森林行政関係に関する予算のうち、民有林施業案編成を促進するため、一億一千七百余万円、あるいは施業案編成奬励費関係において一億五千余万円等々の予算をあなたは要求されておるのでございますが、その前提としてお伺いしたいのは、戰時中に極端に乱暴な濫伐を試み、また終戰後においても、戰災都市復興住宅資材等関係上、濫伐濫伐を重ねましたわが國の公有林、あるいは民有林官行造林その他一切合財の森林資源というものは、現段階においては、非常に枯渇しておる。この枯渇せる森林資源を速やかに復興しなければならないことは、政党政派関係なく、何人も心ある國民は、この方向に向つて森林行政の最も効果的な促進を祈つているものであります。戰爭前でありましても、御承知のごとく、樺太松、米松、あるいはカナダからまでも木材を輸入していたわが國である。しかるにただいま申し上げましたように、森林資源がほとんど枯渇状態になつている今日において、為政者はすべからく遠大なる計画もとに、森林行政に関する政策を確立していかなければならぬと思う。それであなたが本國会に要求されている予算を通して、いかなる森林行政に対する抱負経綸をもたれているか。あなたの森林行政に関する抱負の一端を冒頭にお伺いしたいのであります。
  14. 永江一夫

    永江國務大臣 お答え申し上げます。今お尋ねになりましたことは、森林行政の上における非常に基本的な問題でありまして、今お話にありましたように、戰時中からわが國における過伐、濫伐の弊害が、今日非常に惡い影響を各方面に與えておりますことは、お説の通りであります。從いまして適切なる行政処置によつて、わが國の森林を護ることは、当然必要なことであります。大体過去十箇年間においては、六百万町歩くらいの伐採を行いまして、これに対しまして四百万町歩以上の植林造林を大体行つているのでありますが、なお一箇年の統計においても、二百万町歩くらいは過伐になつております。これを補いますために、今年度から五箇年計画によりまして造林を完成いたしたい。こういう構想のもとに、私どもはできるだけ民間の方々と協力をいたしまして、この過去十箇年間の濫伐、過伐を補つていきたいと考えております。
  15. 庄司一郎

    庄司(一)委員 ただいまの御答弁はまことに名回答でございます。しからば今後の五箇年計画において、過伐になつている約二百万町歩に適正なる施業案を施して、將來りつぱな欝蒼たる森林たらしめるための具体的な御成案はおありでございますか。
  16. 永江一夫

    永江國務大臣 その点につきまする予算的処置につきまして、非常に苦慮いたしておりますが、本年提出いたしておりまするこれらの予算も、五箇年計画を十分に裏づけするに足るとは考えておりません。もちろんこれを施行いたします民間造林につきましては、すでに御承知のように、その五〇%を政府補助することにいたしております。しかし物價暴騰によりまして、政府が企図いたしておりまする補助金と、実質上の造林をいたしまする費用との間に開きがありまして、政府補助が十分な効果を発揮し得ない憾みがありまするけれども、なおこの点については、民間造林担当者ともよく協力をして、その足らざるところを補うような方法考えたいと思つております。
  17. 庄司一郎

    庄司(一)委員 足らざるところを補うとは、これを計数的に、予算的にお伺い申し上げましたならば、どういうことに相なりましよう。たとえば一反歩山林に適当なる施業案を施して、その施業案は都道府縣の林務課山林課等について適当なる施業案であるという確信のもとにいわゆる許可認可に相なつて、具体的に申し上げるならば、一反歩のすぎ林を植林する場合における政府補助、ただいま約五割の補助というような意味大臣は申されたが、なおかつ足らない場合においては適当なる方法をとるということを具体的にお示しを願いたい。
  18. 永江一夫

    永江國務大臣 私が申し上げましたのは、実際問題といたしまして、政府考えておりまする造林費用と、民間で御計算になつておる費用の間に開きがありますので、この開きについて両者が適当に話合いをする、こういう意味であります。
  19. 庄司一郎

    庄司(一)委員 政府がお考えになつておる反当り植林の場合、たとえばすぎの場合、あるいは松の場合、あるいは落葉松等の場合、どの程度に実費がかかるものという御計算に相なつておりますか。
  20. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいま政府で大体計算をいたしておりまするものは一町歩当り計算をしておりますが、現行ではすぎ、ひのきが九千二百円、松類が七千円というような計算でありますが、濶葉樹類は七千二百円くらいの計算現行においてはいたしております。しかし四月分以降においては本予算で計上しておりまするものは、すぎ、ひのきが一町歩当り経費しいたしまして、一万四千八百八十五円、松類が一万一千四百七十五円、濶葉樹類が一万一千七百十五円、大体こういう計算に基いております。
  21. 庄司一郎

    庄司(一)委員 ただいまの御答弁において、やや具体的に明瞭になつてまいりまして。しからば民間において昭和二十三年度に施業案をつくり植林せんと植林計画を立てた場合、政府は何万町歩あるいは何十万町歩の五割に該当する補助を與える計画でございますか。大臣の御答弁の七月以降における民間植林経費がお示しの通りあるものと、かりに仮定して、その町歩数はいかん。その補助額はいかん。こに二問に対してお答えを願います。
  22. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいま申しましたのは予算の單價について申し上げたのでありますが、その個々の数字について、どの地方にどのくらいの予定をしておるというような数字につきましては、私は分科会で説明をいたしたいと思つております。
  23. 庄司一郎

    庄司(一)委員 農林大臣はともすれば分科会あるいは後刻回答というような御答弁でございますが、あなたが要求されておる奬励費の一億何千万円、これをあなたの御計算の五割ほどの御見当から言いまして、何万町歩民間計画をし、あるいは民間に何万町歩植林指導奬励されて施業案を実施されるという御計画でございますか。
  24. 永江一夫

    永江國務大臣 一應政府考えておりまする方針といたしまして、基本的に補助方法が二種類ありますので、今申しました單價によつて、全体を率するのでなくして、この二つの方法から考えておるわけであります。一應助成方法に二つを申し上げますと、一つは御承知のように一般造林補助のものは、先ほど申しましたように補助全体が五割であります。これは四割が國、一割は縣ということにしておりますが、その二つの方法は、森林の資源造成法に基きまして、証券を買つて政府が行いまするものは半額、こういう二つの方法考えております。今申しましたように、私は先ほど今井君からお尋ね数字につきましても、分科会お話をするというのは、できるだけこまかい数字において説明を申し上げたいという考えでありますので、本総会の席上において、その数字お話する用意をしておりませんので、しばらく御猶予を願います。
  25. 庄司一郎

    庄司(一)委員 この予算総会において御答弁の御用意がないというきわめて正直な御答弁でありまするから、さよう了承しておきます。しからば具体的に、いわゆる水源涵養林、あるいは土砂扞止林、あるいは防潮林というようなものを、政府官行造林として施行されんとしておる御計画内容をおわかりになりますれば——おわかりにならなれれば分科会で結構でありますが、いかがでございますか。
  26. 永江一夫

    永江國務大臣 私は自分で数字を一々記憶しておりませんので、分科会においてその数字によつて説明したい、こう考えます。
  27. 庄司一郎

    庄司(一)委員 きわめて大臣は良心的に御答弁でございまして、分科会で承りましよう。しからば昭和二十三年度の木炭年度において、木炭の需給関係國民の燃料問題の上から、どの程度にあなたは御計画をなされておりますか。木炭の増産、あるいは消費者に配給する木炭、あるいは工業木炭等において、どういう御計画を立てられておるか、お伺いいたします。
  28. 永江一夫

    永江國務大臣 木炭につきましては、近く根本的な生産及び配給の方法を改めるつもりで立案中でございます。大体その構想は、今まで配給機構も、あるいは集荷機構も、一つの機関でやつておりました。これを原則的に複数で行う。なお生産の面から申しますと、生産者價格も新たに物價改訂によりまして、これを上げるつもりであります。しかしその場合には、原木が問題になりますので、原木につきましても、各府縣なり市町村に適当なる民主的な委員会をつくりまして、原木にある一定限度の價格というものを当事者同志で定めさせる。それからこの原木を生産者が買いまして生産をいたしました場合においては、これを政府が從來通り特別会計によつて買いつけていくという方法をとり、それから生産者が集荷機関にまわします場合には、これは複数にいたす、それから配給機構におきましても、やはり從來の單数でありましたものを複数にいたしまして、そうして直接消費者に配給いたしまする機関は從來と異なりまして、個々の消費者が登録をいたしまして、これに対して配給をする、こういうふうに全面的に改めたい。しかしこれについて今お尋ねのようないろいろの價格の点がありますが、今関係方面と折衝中でありまして、できればこの委員会が進行中に、私の方からその成案を得次第、これを御審議を願いたい、こう思つております。
  29. 庄司一郎

    庄司(一)委員 ただいま大臣は本委員お尋ねしないところまで御親切に、きわめてアブストラクト的の御答弁で、多岐にわたつてお御意見や御答弁があつたようでございます。本員はまだ價格の問題をお伺いしておりません。これからお伺いしてみたいと思いますが、ただいまの木炭の價格は、大臣承知の通り、片山内閣が昨年の七月において物價改訂の際、白炭が五十四円五十銭、黒炭が六十五円五十銭、十円くらいの開きが白炭と黒炭の間にあつたと思います。その消費者價格は、御承知のごとくその白炭、黒炭のいずれもが、どつちも約三十円という大きな幅があつて、消費者に配給されておる。この木炭の需給関係は、生産地より消費地に輸送するところの全國プール計算の運賃の経費もございましよう。また大臣は御承知であるかどうかわかりませんが、六遍紙というものがあります。問屋から最終の配給所まで、六回もトンネルを潜らなければならない。その都度コミッション手数料をとられる。かような関係でございましようか、とにもかくにも木炭の四貫俵一俵について約三十円というところの大きな幅がある。これは制度的に見て、あるいは社会正義的に見て、あまりに大きな幅があり過ぎる問題である。これはむしろ社会問題でございます。大臣は社会党の党員であられて、常に社会正義を高らかに唱えられておる人であり、搾取というものはけしからぬものであると述べておる。われわれは社会党員でありませんが、同樣な感じをもつておる。たかが木炭一俵から三十円という大きな開き、大きな幅、見ようによつては大きな搾取が行われておる。この木炭の春賣の需給関係について、あなたはどういう御感想をもたれておるか、またただいまこれから木炭の價格をその筋の御了解後において改正し、あるいは配給の機構もこれを複数にするとか——複数にするということは、より便宜になるという意味でございましようが、それは結構なことでございます。この價格の面において、どの程度に木炭一俵が値上げされ、同時に消費者の各家庭の戸毎々々に配給されるところの價格が、どの程度にあなたは考案をもたれておるか、それをお伺いしてみたいのであります。
  30. 永江一夫

    永江國務大臣 先わど申しましたように、消費者價格及び生産者價格は、今関係方面と折衝しておりますので、これがいくらぐらいになるかということは、ここで申し上げることは、いましばらくお待ちを願いたいと思います。ただお話の、政府が買い上げまする木炭について、生産者價格の消費者價格の間に、あまりにマージンが大きいということにつきましては、御説の通り、これはこの前の國会以來、國会の附帶決議がございましたので、その線に沿うてできるだけ、生産者價格と消費者價格のマージンを圧縮いたしましたものをもつて、今回の新價格にしたいと、こう考えております。
  31. 庄司一郎

    庄司(一)委員 ただいま具体的に申し上げた生産者價格の五十四円が、消費者の場合に八十五円程度になり、約三十円の開きがあるという、その約三十円の幅の中には、この木炭事務所、林務関係の職員の俸給、手当、旅費、さような方面にその経費を使用されておるという傾向はございませんか。
  32. 永江一夫

    永江國務大臣 今までのは、そういうものが加わつておりました。御承知のように全國が一プールでありましたから、そういう費用が若干加わつておりました。今度の計算によりますと、價格も生産者價格が全國一本にせずいたしまして、生産縣の生産者價格、消費縣の生産者價格というものは、おのずから別に考えております。また消費者價格も生産縣の生産地の近くにありまする消費者價格と、生産縣にありましても、やはり生産縣の中の消費地の消費者價格というものを、二段にわけております。從つて生産縣と消費縣におきましては、それぞれ二ないし三の段階にわけた消費者價格を設定いたしたいと、こう考えるのであります。
  33. 庄司一郎

    庄司(一)委員 前年度においては、ただいま大臣の御説明のように、木炭一俵について約三十円の幅の中から、林野局関係地方官吏の俸給や、手当や、あるいは生活関係のもろもろの手当等が支給されておつたようなことを明白にされましたが、私はさようなことは、非常に忌むべき政治惡であると考えるのであります。生産面において、あるいは消費者の方にかけずともよいところの、不当なるところの、負担を加重するところのやり方であつたのである。それが昨年、前内閣以來ただいままで行われてきたことでございまして、それが正しいことじやないというお考えもとに、これを現大臣が是正されるということは、これは望ましいことであります。結構なことであるが、ただいまあなたが提案されておる、この林野関係予算の中に、前内閣の林務官あるいは木炭関係の官公吏に支給する俸給、諸手当等が、全部これに含まれておりまするかどうかを、念のためにお伺いいたします。
  34. 永江一夫

    永江國務大臣 ちよつと私が御質問の趣旨を十分に了解せずしてお答えをするかもしれませんが、今お尋ねの点は、木炭の中へそういうものがはいつておるかというお尋ねでなくして、農林省林野関係の全体の費用の中で、いわゆる行政費と目されるものが物價の中にはいつておるのかどうかというお尋ねであるろうと思いまして、これにお答えいたしたいと思いますが、それはもちろん行政費というものははいつておりません。
  35. 庄司一郎

    庄司(一)委員 私がお伺いしたのは、前年度においては、この木炭の需給関係の大きな開きは、三十円という幅の中に、あるいは黒炭の場合は四十円という單價の開きの中に、農林省の出店であるところ地方木炭事務所等の役人、官公吏の俸給、手当等が含まれておつたのではないかという質問に対して、あなたは、その通りであつたと、その弊害をお認めになられまして、今度はそういうことはしないのだ、生産價格もこれを引上げ、消費者價格もなるべくその幅を圧縮して、より格安なるものを一般大衆に供給するのであるという意味の御答弁であつたように私は確聞しておる。しかるにただいま、行政費の中にあるとかないとかいう御答弁では、少々あいまい模糊になつてまいります。そこでいま一度お伺いしたいのである。私は第二段のお尋ねは、ただいま御提案になつておる予算の中に、前回申し上げた木炭事務所等の、第一線に働いておる役人たちの俸給や手当が含まれて、あなたがこの予算を要求されておるかどうかということ伺つておるのであります。
  36. 永江一夫

    永江國務大臣 それは当然この予算の中に含めて御審議を願つております。
  37. 庄司一郎

    庄司(一)委員 それでは木炭の需給関係の幅の中からは、官公吏には支給しないということに了承してよろしいのでございますね。それではあと分科会関係等においてお伺いしたいと思いますが、最後にお伺いしたいのは、主食の配給において、あなたは、新聞の報道によれば、二合八勺の配給が困難な現段階にあるというようなお話をされたということがあります。総理大臣芦田君は、二合八勺どころか、三合でも配給するような大ぼらをぶつ放した。あなたは二合八勺も困難であるというような言葉を述べられておるが、さらにまた最近においては、十一月の新しい米穀年度等においてもし豊作であればという仮定のもとに、二合八勺定度の配給は可能性あり、目下研究中であるという意味のことをお話しなされておるようでございますが、あなたの確信はいかがでございますか。特にこのことをお伺い申し上げる理由は、昨年四月における選挙において、社会党は全國至る所において米三合配給わが党天下の場合は間違いないという宣傳のもとに当選された諸君が多いのであります。落選された方もありますが……。念のためにお伺い申し上げておくのであります。
  38. 永江一夫

    永江國務大臣 主食の配給につきましては、しばしば本会議あるいはこの委員会におきまして申し上昌ましたように、本米穀年度中は二合五勺の基準量の配給に主力を注ぐつもりであります。もちろんこの中にいろいろ米麦以外の雜穀その他がはいつておりますが、できるだけ雜穀その他のものを入れないように関係方面にも懇請をいたしまして努力をしておるのでありますが、昨今の状態において、砂糖が主食代替としてはいつておることは、私としてもはなはだ遺憾に思うのであります。しかしこれはカロリー計算の上から申しまして、一應今日の食糧事情からこれを主食に加えまして、本来穀年度中は二合五勺の基準量を維持する。十一月の新米穀年度からはできるだけこれを二合八勺に近いものとして増配のできるように、今政府はそれぞれ関係方面と折衝いたしております。
  39. 庄司一郎

    庄司(一)委員 農林関係はこれで終りまして、あと分科会に讓ります。
  40. 押川定秋

    ○押川委員長代理 では農林大臣に対する質疑を続けて、海野三朗君。
  41. 海野三朗

    ○海野委員 ただいまの庄司委員の質問に関連したことからお伺いしたいと思います。食糧の問題でありますが、本年二月四日のニューヨークの情報を聞きますと、アメリカにおいては小麦粉が大暴落をしておる、マル公ははるかにやみ値よりも上回つておるという報告を受けておるのでありますが、連合軍の方に懇請なさつて、この小麦粉をもつと輸入されることに御努力になるお考えがありませんか、どうでありますか、それをお伺いしたいのであります。
  42. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいま庄司君にお答えいたしましため同樣に、政府といたしましては、七月以降にできるだけ多くの小麦を輸入してもらうように折衝中であります。
  43. 海野三朗

    ○海野委員 土地改良の問題についてでありますが、農学方面におきましてあまたの学者がございますが、土壤の研究という方面について、農林省といたしましては、この研究費については、どういうふうにお考えになつておるのでありますか。それから供出の割当についてでありますが、東北地方、一例を申しますならば、山形縣におきましては、供出が苛酷であつて、まことに農民が苦しんでおる。それを他の村の人たちが助けて供出せしめた実例もあるのであります。中には惡農もございますが……。つまり供出の割当については、もつと民主的でなければいけない。ただ机の上の割当ではいけない。もう少し徹底した民主的な立場から、実情に即した割当をしていただかなければならない。こう考えることが二つであります。それからもう一つは一割増産とか、増産計画しておるようでありますが、鉱毒問題については地方において非常に苦しんでおる実情を、私は実地視察をしてきておるのであります。雨が降れば鉱毒を流して、だんだんその上壤が固くなつてつて、これが蔓延していく。この状況に対しましては、増産どころか減産である。山形縣のごときは、一千五百町歩の田が鉱毒をこうむつておるのであります。この点につきまして、増産とにらみ合わせて農林大臣はいかなる御決心をもつておられるのでありますか、お伺いしたいと思います。
  44. 永江一夫

    永江國務大臣 第一の土壞の研究につきましては、新たに農林省の機構改革の中にも、これらの点を考慮いたしております。農業改良総局という一應かりの名前によつて発足いたします機関によつて、さらにそういう研究を拡充していきたい、こう考えております。第二の割当が利常に妥当でないという点は、各方面から承つております。一應事前割当を今日行つておりますが、いずれその都度收穫期におきましては、あらためて補正をいたしまするために、各府縣の代表者の御参集を願いまして、補正をいたしまする際に、妥当ならざる点は適当に補正をするつもりであります。第三の鉱毒の点につきましては、山形縣に関しますることは目下調査中でありまして、その調査の結果私どもは事前割当の数量から、この鉱毒に関しまする点において、割当量を補正することが妥当であると考えました際には、適当に補正をいたします。
  45. 海野三朗

    ○海野委員 次に農民に対する税金でありますが、大都会の近くにある農村と、大都会に遠ざかつておる農村とは、金のはいり方において非常に差があると考えるのでありますが、農民に対する税金については、いかようにお考えになつておりますか。大都会の近くの農民でありますと、裏へ行つて大根一本掘つてきてもすぐそれが金になる。殊に消費地の近くにおきましては、おみやげをもつていかなければ農民が芋を賣つてくれないというふうな状況でありまして、一方また都会に遠ざかつておる農村におきましては、芋を賣りに行くにも、二里も三里も運んでいかなければならぬという状態でありまするがゆえに、同じ農民にいたしましても、ここに非常な差があるのでありますが、農民に対する税金については、いかような御所見をもつておられるのでありますか、それをお伺いしたいと思うのであります。
  46. 永江一夫

    永江國務大臣 御承知のように、本年の農業関係の税につきましても、事業税中主食に関してましては税の対象からこれを除去いたしております。今お話のように、地域によりまして、大都市の周辺にある農村と、ごく遠距離にある農村との收入が、やみ價格によつて相当違うのではないかということは、御説ごもつともでありますが、それによつて税をかなりかえていくということは、実際問題としてなかなか困難なことであろうと思います。從つてどもは單作農家としからざる農家との比較という点において税を考えたいと思つております。
  47. 押川定秋

    ○押川委員長代理 それでは午前中はこれで休憩いたしまして、午後は一時半から開会することにいたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  48. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 午前に引続いて開会いたします。海野三朗君。
  49. 海野三朗

    ○海野委員 商工大臣にお伺いいたしたいと思いますることは、まず初めに出先機関の整理につきまして、大臣はいかようなお考えをもつておられますか。私はこの出先機関の整理ということにつきましては、全面的に賛成するものではありません。地方の実情をよく見きわめるという点からいたしまするというと、出先機関の必要をここに認めざるを得ません。しかし非常に多岐多様にわたつておるのでありますが、地方の実情に即しないところのものが多々あるように見受けますので、この点からして、地方から出先機関の整理の必要を叫ぶものだと思うのでありますが、この点に対して大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  50. 水谷長三郎

    ○水谷國務大臣 ただいまの出先機関の整理は、あるいは全部の出先機関のことか、あるいは商工関係の出先機関のことか聽き漏らしたのでありますが、総理大臣も繰返し繰返し言明しておりますように、出先機関の整理につきましては、一應閣議で内定いたしまして、目下関係方面と折衝中でありまして、遠からず確定、整理に運ぶという段階になつておると思うのであります。
  51. 海野三朗

    ○海野委員 次に石炭及び鉄鉱石についてでありますが、石炭についてはこの前の暫定予算の際にお伺いいたしたのでありますが、このトン数だけに重きをおかれるとするのではだめじやないか。品質に重きをおいておやりにならなければいけないのじやないか。そうしますと、つまり山から掘り出したものを十分選炭いたさないで地方に運びますために、ボタを運んでおる結果になる。そうしてつくつたところのコークスというものはカロリーが低く、アッシュが非常に多い。そういう声を中小工業の方から盛んに聞くのであります。この選炭の仕事をもつともつと力を入れて山元にやらせるお考えはないかということ。  それから熱経済の問題でありますが、日本の熱経済、熱管理の状況を見ますと、わとんど徹底していない。ドイツあたりの各種の状況を参酌してみますと、日本におきましては、熱管理については、はなはだ政府御当局が熱心でないかのごとく見えるのであります。この熱管理によりまして、少くともいくら内輪に見積りましても、一割ないし二割の節約が十分可能であります。この熱管理につきましては、民間における拔術者、研究者、学者、そういうものがたくさんおるのでありますが、それを活用して熱管理にもつと力を入れて、そうしてこの生産の量の少いところを補うお考えがないか。これをお伺いいたしたい。  それから鉄鉱石の問題でありますが、過日私は釜石鉱山に参りまして、山元に行つて、親しく山元の状況を聽いたのでありますが、逸鉱石が非常に安い。トン当り五百円何がしであるということを聽いた。そうして山元では、とてもこれでは採算がとれない。やつていけない。しかるに輸入鉱石の價格はどうであるかと見ますと、非常に高い。まず一トン千百円であつたかと思うのであります。これほこの成分からそういう價格になるというふうにこの前大臣お話なつたようでありますが、成分からいたしますと、換算いたしますと、ちよつとそろばんが合わないように感じますので、何ゆえに内地の鉄鉱石がそんなに安く、輸入鉱石をそれだけ高いものを買わなければならないのか。もつと安く輸入することに努力せられないのであるか。この点について大臣考えをお伺いしたいと思います。
  52. 水谷長三郎

    ○水谷國務大臣 石炭の品位の問題に関しましては、前にも一度海野さんにお答えしたかと思いますが、價格の面から申しましても、品位は嚴格な区別をつけまして、われわれといたしましては、燃えない石炭を多量に出すというような考えは、毛頭もつておりません。今度の指定炭鉱の場合におきましても、北海道並びに九州は五千カロリー以上、常磐山口は四千カロリー以上を指定炭鉱の一つの基準としたのもそこであるのでありまして、われわれは今後保証品以上の良質炭でもつて、所期の燃料は出すように努力したいと思います。ただいま御質問の選炭の問題でありますが、これは中山、小山というようなものに新たに選炭設備を置くというようなことはなかなかできないのでありまして、私はまずとりあえずこれまで選炭設備をもつていて傷んでいたものの補修から始めまして、できるだけ選炭設備のできるような炭鉱には、そういうことを嚴重にさせていきたい。こういうように考えております。  さらに熱管理の問題に関しましては、これも一度お答えいたしましたが、まだ御満足がいつておらないようでございますから、あらためて政府委員、また説明員から詳細に御説明することにいたします。  さらに鉄鉱の問題で海南島の輸入値段と、國内産との非常な値開きの点に関しましても、一應御説明をして御了解を得たはずでございますが、さらに重ねてのせつかくの御質問でございますから、これも政府委員から詳細に御答弁さすことにいたします。
  53. 春日進

    ○春日説明員 熱管理についての御説明を申し上げます。今のお話にございましたように、熱管理は現在の燃料事情におきまして、ぜひともやらなくてはならぬ事情にございますが、私ども関係者といたしましては、わずかの予算で全力をあげてこれに努力いたしております。現在これについてやつております概要を申し上げますと、今年度の一月、熱管理規則というものが物資調整法に基いて改正いたされました。それに基いて大いに努力いたしておりますが、何分熱管理を徹底させるためには、工場の実態をつかむことがきわめて必要でございまして、まず監査ということをいたしております。工場へ參りまして、配給面におきましても、あるいは設備におきましても、あるいは技術におきましても、熱管理遂行上不足不十分であるというところがございますれば、これについて大いに関係者として御協力申し上げていこう、こういうことで工場の監査をやつております。今年度の計画として着々やつておりますのは、さしあたりゴム工場の監査をいたしております。これが百七工場、すなわち七月までに完了いたしまして、その結論をゴム工場における熱管理の向上に資するようにもつていきたい、こういうふうにいたしております。これは熱管理の監査のことでございますが、ただ工場に參りまして熱管理を監査し、その工場の欠陷を指摘するということだけでは、工場の熱管理は向上いたしませんので、まずそれには工場で熱管理を向上させるために必要な資材、あるいはその他いろいろな問題がございますが、資材の斡旋ということについて大いに努力いたしておりまして、すでにスチーム・トラップの問題、あるいは計測器に関する問題、あるいは保温材に関する問題、こういう問題に関しましては、資材を熱管理として工場に確保し、これを斡旋申し上げていこう、こういうことにいたしております。なお熱管理規則に基きまして、工場熱管理士というものがおりますが、その熱管理士というものは、熱管理規則に基いた千八百工場に、ぜひとも熱管理士という國家試驗に合格者した一人の技術者がおらなくてはならぬわけであります。これが今のところ約八百名できておりますが、本年十月までにはこれを充足しなければならぬわけでありまして、そういう方々の技術養成ということに大いに努力いたしております。何分最近の燃料事情は非常に逼迫いたしておりまして、スチーム・トラップの活用という問題は、熱管理において大いに取上げなければならぬ問題でありまして、これに関しましては、先ほど申し上げましたような優良な設備に対しましては、資材の斡旋もいたす、これの復旧に努力いたしておりますが、御承知のようにクレーマー式の微粉炭燃燒であるとか、あるいは強圧通風式のロストルの取付であるとか、そういうことについて、大いに努力いたしております。なお工場に参ります石炭の品質、あるいは重量というものは、熱管理上大きな影響を及ぼすのでありまして、これに関しましては、檢量檢炭の強化ということについて努力をいたしております。今まで申し上げましたように、いろいろなことを努力いたしておりますが、何分お話のございましたように、ただ関係者が努力する、あるいはお願いするということだけでは、熱管理は徹底しないのでございまして、これは民間の権威者、あるいは工場の実際担当者が協力しないことには、どうにもなりません。工場の熱管理は、熱管理士が中心となつて自主的にやつていく、こういうことでやつておりますが、さらに民間といたしましては、最近の盛り上る力が結成いたしまして、熱管理協会というものができておりまして、すでに昨年の十一月に大阪でできましたし、本年の二月には東京の熱管理協会、さらに四月に九州の熱管理協会、五月には名古屋の熱管理協会、五月の二十一日には廣島の熱管理協会というように、各地に熱管理協会が設立いたしておりまして、近く中央の熱管理協会が結成されるという機運になつております。この熱管理協会は、民間の権威者の方々が相集まつて、今の熱管理を強化していこう、こういうことで漸次その機運になつておりますが、何分限られた日本で仕事をやつておりまして、私どもだけでは十分でありませんので、民間の方々の積極的なる御協力をお願いしたい、こう思つております。大体の概要を御説明申し上げます。
  54. 始関伊平

    始関政府委員 鉄鉱石についての御質問は、國産の鉄鉱石の價格が安すぎるではないかということと、輸入の鉱石の價格が割合に高いので、それとの関係でも非常にアン・バランスでおかしいではないかという点と二点と存じますが、國産の鉄鉱石の價格につきましては、ただいまの價格は、大分前にきめられた價格であるというような事情等からいたしまして、安すぎると考えております。今度の價格改訂の一環といたしまして、國産の鉄鉱石につきましても、ただいま物價廳の方と折衝いたしまして、どういう程度に引上げるかということを、審議いたしております。今度改訂されます價格は、生産の確保という点から申しましても、それほど遺憾のない價格になるように折衝中でございまして、さように御了承願います。  それからもう一つ、輸入の鉱石との関係でございますが、輸入鉱石はただいま海南島のだけしか参つておりませんが、これはドル建てで申しますと、C・I・F値段で十六ドル二十五セントでございます。しかしながら、國内の製鉄工場に賣渡します値段は、このドル價格とはまつたく関係がございません。ただいま各工場に拂下げておる値段は千百円でございます。この考え方は國内鉱石の山元價格、それに國内鉱石は大体品位が五〇%足らず、四八%程度でございますし、輸入物は六〇%ぐらいと予定せられておりますので、その品位の違い一%につきいくらということを加算いたしまして、さらに國内鉱石の山元から工場までの運賃に相当する價格を加えましたものが千百円でございます。從つて工場の立場から申しますと、海南島からもつてまいります鉱石と同じ品位のものがかりに國内で生産されるとすれば、それに対して支拂えばよろしい。それとまつたく同じ値段を輸入鉱石につきましても支拂つておるという関係になつております。大体御承知のように、海外の鉄鉱石など、あるいは粘結炭もございますが、これを輸入いたしまして、それで熔鉱炉が稼動いたしまして、その結果さらに國内の鉄鉱石の増産も要請されるというような関係になりますので、價格の点から申しましても、需給の全体の関係から申しましても、ただいまの状況では輸入の鉄鉱石があるから、國内の鉄鉱石がそれによつて圧迫されるという関係はまつたくないというふうに考えておる次第であります。
  55. 海野三朗

    ○海野委員 ただいまの熱管理のことにつきまして、予算はどれくらいこの熱管理の方にとつておられるのでありますか。たいへん政府当局は御熱心のようなお話でございましたが、資材の関係、この熱管理をするところの根本であるメーター類、そういう方面にはちつともお力がはいつておるように見えておりませんが、その熱管理に関しての予算を、どれくらいとつておられるか承りたいのが一つ。  それから今の鉄鉱石でありますが、外國のものとそれが非常に差があるということを伺つたのでありますが、ここでこの價格は山元が立ちいくような價格を考えていただかなければいけない、こういうふうに考えたのであります。それから鉄道の電化の問題にいたしましても、根本は鉄であります。この鉄ができなければ日本の経済は立直りません。從つてこの製鉄の事業をどうしても力を入れてやつてもらわなければならない。そういたしますと、熔鉱炉はどうかと見ますと、今釜石も輸西もこの間火がはいりましたが、なお輪西あたりの熔鉱炉はあくびをしておるような状態であります。この設備を活すという点から考えましても、どうしてもこの強粘結炭を輸入して、製鉄に対してはもつと力を入れる必要はないか。こういう点をお伺いしたいと思います。
  56. 春日進

    ○春日説明員 計器の問題につきまして、あまり熱を入れていないじやないかというようなお話でありますが、熱を入れて徹底させるというためには、科学的の管理ということが生命でありまして、工場で今まで勘で仕事をするというようなことが、工場の熱管理の向上をしなかつたという大きな原因でありまして、科学的な作業管理ということについて、十分に努力いたしておりまして、各計器メーカーと連絡をいたしまして、昨年から工場の御希望を集めまして、これをメーカーとも連絡いたしまして、御斡旋を申し上げております。燃焼関係の炭酸ガス計であるとか、あるいは量水計であるとか、あるいは通風計であるとか、そういうようなものの御斡旋をいたしております。これに対する講習会も、先ほど申し上げましたような熱管理協会が中心になつていたしております。あるいは最近そういう計器類の急速な補給ということが困難でありますので、まず工場にある設備、そういうものの活用という意味におきまして、破損している計器が非常に多うございまして、これを手取り早く補修するという講習会をいたしておりまして、着々御希望に副うように計器が一般工場に普及もし、活用されるようになつてきておる。こういうふうに考えております。予算のことでありますが、二十二年度におきましては、きわめて少い予算でありまして、追加予算を合わせまして、石炭廳、商工省の分を合わせまして、百万円足らずということでございます。本年度の要求といたしましては、二千万円の要求をいたしておりますが、最近の樣子では非常にまた少い査定が行われるのではないかというように思つております。昨年度におきましては百万円、本年度は二千万円を予定いたしております。
  57. 海野三朗

    ○海野委員 この熱管理につきましては、重ねてもう一言申し上げて、政府御当局の一段の御決心を促したいと思います。この熱管理に力を入れてやりますると、ドイツでは先にも申し上げましたように、三割多くの製品を得たのであります。日本がいくら敗戰であるとはいえども、この熱管理について力を入れますれば、優に少くとも一割は節約が十分可能であるということを、私は信ずるのであります。一割でありますと、三千万トンの一割は三百万トン、その金高を考えてみたならば、予算の千万円や二千万円はまことに九牛の一毛である。ここに何億という金を出しても差支えないと私は考える。それ以上の節約が行われると考えるがゆえに、この熱管理に対しては、そういう蚊の涙のような予算でもつて熱管理をちよろまかしておられたのでは、私は日本のためにはなはだとらざる途であると考えます。  それから鉄鋼当局にお伺いしたいことは、木炭アイロン、たとえば輸出品の木炭アイロンでありますが、でき上つた品物は二百九十九円五十銭という値で切られている。これはまことに立派な製品であります。この木炭アイロンを民間につくらせるのに、銑鉄の割当が四割きりやつてこない。あとの六割はどうするかと申しますと、業者が仕方がないからやみで探してやみ値で買つている。こういう状態であります。四割しか割当てなくて、木炭アイロンの生産を命じている。どうしてそういうふうな不合理をおやりになつているのであるか。またこの二百九十九円五十銭という値段は、ドルにしてはわずかなものである。われわれであるならば、いくらでもこの木炭アイロンは欲しいのである。私は過日この製鉄工場に行きまして、それは非常に安い、おれに三つばかりわけてくれ、と言うと、いや、これはわけられませんと言う。なぜであるかというと、これはみな損をしているのです。われわれ業者が貿易のために泣き泣き引合わないながらも輸出品に力を入れているということでありました。生産費の引合わないものを何ゆえに輸出するのであるか、これもお伺いしたいと思うのであります。
  58. 春日進

    ○春日説明員 先ほど鉄鋼の生産の重要性を強調されまして、日本には製鉄設備はいくらでもあるのだから、もつと原材料を輸入して、鉄をつくつたらいいじやないかというお話がありました。そういう趣旨でただいま鉄鉱石、粘結炭等の輸入によりまして、なお國内の石炭の増産と相まちまして、一應百二十万トンという計画を不十分ながら確立いたしているような次第でございます。粘結炭につきましては九十万トンの輸入を計画いたしております。ただいままでの状況では、大体粘結炭につきましては、輸入の確保ができるであろうというふうに考えている次第でございます。これ以上の問題につきましては、將來さらに考慮するということにいたしたいと存じます。  それから木炭アイロンの問題につきまして、銑鉄の割当が少な過ぎるというお話の点だけをお答え申し上げます。今度の粘結炭、鉄鉱石の輸入によつて、銑鉄も大体九十万トン程度生産ができることになりまして、一般的に見まして、この輸出用の原材料としての銑鉄の配当は、今までに比べていくらき樂になるだろうということは言えると思うのであります。なお木炭アイロンの價格の点その他につきましては、ちよつとただいま資料がございませんので、後ほどまたお答え申し上げます。
  59. 始関伊平

    始関政府委員 熱管理によつて少くとも一割の節約ができるというお話でございました。まことにその通りでございます。從來私ども熱管理をやつておりますときに、熱管理最低一割節約ということを目標としてまいつたのであります。最近におきましても、依然として一割の節約をやる可能性があるというようと考えております。何分最近石炭の品質が悪うございますから、数量的には熱管理を強化しても、從來よりも数量は殖えているような経過がございますが、カロリーから見まして、少くも一割の節約——最近の石炭は品質が低下していますので、熱管理の成績は上つておりましても、量的には増加している場合もありますが、熱量的に言いまして、一割の節約は可能であります。殊に工場で手取早く熱経済を実施できる。保温の整備、あるいはスチーム・トラップの活用、あるいはバルブの破損修理取換等、こういうものを整備いたしますならば、一割はおろかまた二割も節約はできる。こういうように思つております。
  60. 海野三朗

    ○海野委員 ただいまの御答弁で御熱意のあられるということは了承いたしますが、私はその御熱心がまだ足りないのだ。政府御当局のお考えは、ほんとうは專門があまりに專門に走つておりますがために、台閣の諸公がお氣づきにならぬかもしれぬ。それを遂行するのは政府の高級のお役人たちである。お役人の方々はもつともつとこれに力を入れるべきである。御熱心が足りない。二千万円ばかりの予算があるものですか。少くとも一億、二億という金を出しても、そこに何十億という節約ができるということは火を見るよりも明らかである。御熱心が足りないということを申し上げて、なお一段の御奮起をお願いいたします。私はこれで終ります。
  61. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 熱管理の問題につきましては、昨年度の予算委員会の際にも、海野君より熱心な御質疑がありまして、それに対しても当局も十分御了承になつているように伺つたのでありますが、こういう問題につきましては、私も一段の当局の御熱意を希望いたします。
  62. 田中松月

    田中(松)委員 私は鉄道運賃並びに逓信料金の値上げのことについて、大藏大臣、運輸大臣、逓信大臣にその見解を質したいのでありますが、まず質疑に入る前に、一通りわれわれの立場を明らかにしておきたいのです。先日大藏大臣予算案に対しては與党の修正を許さないと言つたというような新聞記事がありました。私はまさかそんなことを大藏大臣が言われるはずはないだろうと思つておりましたが、西村委員からこの点を質されたのに対して、大藏大臣は、そんなことは言つたことはないと言明されましたので、私もそうであろうと了解はしました。しかし誤報ではありましても、ともすれば往々にして誤解を受けるおそれがありますから、ここでわれわれの立場を明らかにしておきたい。日本社会党は現内閣の與党であることに違いはありませんが、しかし何でもかんでも内閣のやることに無條件で信頼することはできません。まず生産増強の重大な責任を担つている勤労大衆を生かすか殺すかという大切な予算のことでありますから、黒白を質さずしてうのみにするということは、断じてあり得ないことであります。十分に質すべきを質した上で嚴正に批判をいたします。修正動議を出すか出さぬかということは、いずれ討論の際に譲りたいと思います。それともう一つ私はここに関係大臣にその見解をお伺いするとともに、別な角度から要請したいことがあります。もちろんここに出された予算案は、閣僚の皆さんの責任もとに出されたのではありますが、しかしこの予算案をつくるにあたつて、資料、構成、その編成はみなこれ官僚の手によつてなされたものであります。その重要な仕事をなされる官吏の皆さんは、みなこれ忠実なる國民の公僕でなければなりません。事実皆さんの多くは、あらゆる困苦欠乏に耐えながら、なお必死となつてその重要なる責任を果しておられることについては、満腔の感謝を捧ぐるものでありますが、その忠実なる皆さんの蔭に隠れた少数のボス官僚のあることを忘れてはなりません。今日ほど官僚独善、官僚政治、ボス官僚の役得の清算ということが、強く叫ばれているときはありません。軍閥は根底から覆えり、財閥もまた一應形の上では解体されましたが、官界はわずかに追放令によつて、いわば探りの針を入れられたのにすぎません。この官僚独善の排撃、ボス官僚の清算ということは、閣僚の皆さんも、政党人としてはわれわれと共同責任でやらねばならぬ立場であります。それで閣僚の皆さんは、御自分の所管内の官僚中から、絶対に官僚の独善、ボス官僚の役得を排撃するように、最小の注意と最大の関心を持つていただくように切に要請したい。これが徹底的になされまするならば、思いもよらぬ経費の節約ができるし、また國民の信頼も深くなつてくることは、火を見るよりも明らかなことであります。以上私は二つの点をお含み願つて、私の次の諸点について当局の御意見を質したいと思うのであります。主として私は運輸大臣にお答えを願いたいのでありますが、大藏大臣にこれはごく簡單なことでありますから御意見を伺つておきたい。これは御答弁は聽かぬ先にわかつているのではありますが、この三倍半の値上げ、あるいは四倍の値上げということは、政府当局から出された資料によつてながめますると、一應のつじつまは合つている、しかし私はその裏に俗の言葉で言うならば、血と涙をもつてこの問題を檢討されたかどうか。赤字が出たから引合うように値段を上げる。値段を上げるにあたつては、いろいろそろばんをはじいて、ぴちつとどこから突かれてもぼろの出ないようにつじつまが合う。これを称して私どもは健全財政と銘を打つて、一應それは理窟は通ります。ところがせんだつても現内閣の手で問題になつたのでございますが、專賣益金をうんと上げて財政のつじつまを合わそうというので、新生というタバコを四十円までつり上げた。あれがもしどんどん賣行きがよかつたら、おそらく四十五円にも五十円にもされたかと思いまするが、それがどつこい四十円でさつぱり賣行きが止つてしまつた。やむを得ずあれを半分に値下げをして賣らなければならぬという問題にぶつかつておりまするが、今度もその通り三・五の倍率に上げても、予定通り收益があるようにお考えになつているのであるかどうであろうか、この点です。これはもちろんお座なりにつじつまは合つているし、そういう点は十分考慮もした上で、こういうことになつたという御答弁があるに違いはないけれども、われわれの見解からいたしますれば、こういうことをやられるということは、俗な言葉でいいますと、ほんとうに旅行をしなければならないような人たちの足をくびるような結果になり、そうして一方においてそういう人たちが乘れぬようになるから、座席を廣く占拠してふんぞりかえつて乘るというのは、やみ屋かそういう一連の関係者ばかりになるじやないか、関係者ばかりというと、あるいは逆襲を食うかもしれませんが、私は何もこの問題に対して、大臣から几帳面な御答弁をいただこうと思つておるのではありませんが、ざつくばらんにいつて、そういう点について、御当局の思いやりと申しますか、温かい血と涙が忘れられているじやないか、こういうような感じがする。これはただ單に私の感じだけではありません。巷におけるすべての人たちの異口同音に口をついて出る言葉でございます。それからある程度の運賃の値上をやる、あるいはいろいろ檢討を加えて雜收入を殖やす、冗費を節約する、ある程度会計から繰入れるとしましても、なお赤字を出すような場合、いわゆる鉄道公債も二百何十億かの予算が組んであるようでございますが、私はこの範囲をもう少し廣げてはどうかと思うのでございます。ただ一本調子の公式的な健全財政論については、私どもは嚴重に批判してみねばならぬと思うのでございます。インフレーションの高進する時期におきまして、公式一点張りの健全財政ということは、とうてい望まれない場合もあるのでございます。何も建設工事ばかりが復興公債と限る必要はありますまい、運輸の円滑化ということが、日本の経済の再建の鍵であるならば、そのために出す公債は、よしんばいわゆる常識的に言う建設工事ではなくても、復興公債の範囲内に入るべきではないかと思うのであります。この点についての大藏大臣のお考えを伺いたい。
  63. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 ただいまの田中委員の御質問にお答えしたいと思います。前段のお述べになりましたことは、私も全然同感であります。それからただいまの鉄道運賃等の問題でありますが、これはお説まことにごもつともで、國家財政は家庭の主婦の財布の紐につながるというような言葉がございますが、私は厖大な予算数字の背後に、数字そのものではなくて、生々しい人間の生活があるということを絶えず考えております。財政数字を預かる者にとつて、往々にして間違いますことは、数字だけをいじくろうとする、しかしこの数字は個々の家庭、あるいは企業一切の人間の生活の活動の全野を通じて集積したものが主になつて現われておる。從つて國家財政の背後には、一つ一つのかまどから上る煙があり、そこにいろいろの人間の生活が集積しておる、こういう現実を決して忘れてはならぬのであります。かような観点に立つて予算は組んだつもりであります。それでただいまお話の三・五倍というようなことが、いかにも血も涙もないじやないかというようなお言葉も、きわめてごもつともでありまして、できればもつと低いところに止めたい。かような考えは、これはたれも考えところであります。われわれもやはり汽車に乘らなければなりませんし、実に切実な問題でございますから、これは決して軽々に扱つたとは思つておりません。ただ國家財政現状というものは、そうせざるを得ない。それで鉄道に大きな赤字があるから、これを全部運賃で決済しようというような考えはございませんで、今日三・五倍を上げますといたしましても、なおこれは運賃が運賃コストに対して安かつたというようなことだけではなくて、鉄道の運営自体にもつ内包されておる結果もないとは申されない。そういうことについては、反省すべきところは反省しなければならぬ。かねてこういうことは運輸当局とも話し合つておるのでございます。たとえば運輸省のもつておるもので、この際不要なもので、処分すべきものはないかというようなことも考えておりますし、あるいは経営をどこまで合理化するかということも考えておりますし、その他各般の公企業としての独立採算制が、ほんとう意味において維持できるにはどうしたらよいかというような問題が多々あるのであります。今回の三・五倍をもつてして、なお赤字が出る。一般会計で負担するがなお赤字が出る。これは運賃だけで負担するのではない。内部においてうんと改善するというなことまでしなければ、先ほど申しましたように、生々しい人間の現実の生活でありますから、これは相済まぬというような氣持は十分にもつておるのでありまして、ただいまの田中さんのお言葉は、現実に大衆の声であるし、また数多くの主婦たちの声も、ここに現われておる、かように考えております。私は財政の当局としていつも考えておりますことは、この間奥むめおさんに生々しい人間生活の現実を忘れてはおりませんということを申し上げたのであります。さような点を御了承願いたいのであります。
  64. 田中松月

    田中(松)委員 総理大臣に御質問申し上げたい点があります。かつて幣原さんも吉田さんも、政治の要諦は最大多数の最大幸福をはかることであると言われたのであります。この方針はまた片山内閣も異議のないところであつたが、現内閣も異議のないところであろうと思います。この点については、私も無條件同感であります。しかし私はこの精神を一歩進めて、最大多数の最大幸福をはかるとともに、現在目の前に一番困つておるもの、一番苦しんでおるものから先に手を差延べなければならぬと思うのであります。この点についても、芦田総理はまた御異議がないものと信じております。ところせつかくそのお氣持はおありになつても、お氣につかれることがなくては、どうにもならぬのでございます。そこで私は総理の責任を追究しようとか、総理の御答弁の死角を衝こうとか、そんな氣持から質問をするものではありませんから、過去のことは申し上げません。憲法第十四條には「すべて國民は、法の下に平等であつて、人種、信條、性別、社会的身分、又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と保障しております。実はこの新憲法のもとにポツダム宣言にこたえて、民主化の進行中において、基本的な人権を蹂躙されておる人民が少からずあるのでございます。その数はごく大ざつぱに言つて、全國の六千部落、三百万人と言われております。実は私自身もそのうちの一人であります。この全國六千部落、三百万の被圧迫部落の多数の者は、今なお言語に絶する迫害、差別、侮辱を受けております。それは政治、経済、文化、社会のあらゆる部面にわたつておりますなまば、実際の上にどのような形で、どのようにしてそういう差別を受けておるかというと、全國におびただしい差別事件が起つておるのであります。それを一、二例を引いて申し上げることは差控えますが、詳しいことはあらためて所管の厚生大臣に御相談をいたしたいと思つております。この事実を総理に申し上げても、おそらく総理はまだそんなことがあるものとは思われないような事実が、実は頻々として起つておるのです。これは長野縣下の出來事ではありますが、同じ神社の氏子である、同じ字の村民が氏神祭をするときに、被圧迫部落の青年たちを除いてお祭をしようとしたことから問題が起りました。そのために、被圧迫部落の一人が自殺を遂げたという事件がございます。これが取調べに当つた警察当局の取調べにおいても、実にけしからぬことがありました。私はその点を責めるのではありませんが、そのとき一人の警察官がはいた暴言の内容を総理に聽いてもらいたい。肥桶——肥桶というのは小便、大便などの糞尿を運ぶために用いる桶でありますが、肥桶はいくらつても磨いても飯びつにはならぬじやないか。それと同じもので、君たち部落の者は、いくら何と言つて一般民と同等にはなれるものではないという、実に言語道断な暴言をはいております。私は今ここでこれについてあなたの責任をどうこう申し上げておるのではありません。そのようなむちやな差別観念をもつた警察官吏に取調べられて、血涙をのんで自殺したこの事実、こうした根拠のない誤られたる差別事象が、実におびただしいほど童國的に繰返されておるこのこと。あるいは農産物の供出割当の不公平、被圧迫部落民であるがために、不当に土地を取上げられておること、共有の山林原野の入会権を認めないこと、村政または区政の上における差別待遇、あらゆる面において、総理が思いもよられぬような問題が起つております。繰返して申しますが、これは何も芦田内閣だけの責任に帰するようなものではありません。遠い昔からの日本の一つの社会惡でありますから、ただちにこれをもつて芦田内閣の責任をとやかく言うのではありませんが、少くともこういう事実を前にして、そのような事象が全國的にどの程度に起つているのか、一体こんな間違つたことがなぜ起つたか、ではこれをどうしたらよいか、今なおそうして立場に立つておる人がどれぐらいあるのか、その差別のために苦しめられておる部落の実態は、どういうぐあいになつておるか。少くともこれが調査をするとか、その解決の方針の研究をするくらいのことはやられねばならぬし、芦田総理も当然その責任は感じられねばならぬと思うのであります。クリスチャンとしての芦田総理は、十分その必要も責任も感じておられると私は信じたいのでありますが、しかしそれがために一銭の予算も組んでありませんが、これでよいと思つておられるか、何とかしたいという積極的なお考えがおありかどうか。総理に対する私のお尋ねはこれ一つでありますが、願わくば血もあり涙もある、人道主義の立場からの総理の御意見を伺いたい。
  65. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま田中君より長野縣下の事例を引いてのお話は、私自身にとつてはまつたくあたかも藤村の「破戒」の感を新たにしていただいたような感じがいたします。というのは、身の郷里にも川一つ隔てて同じような部落があります。しかし京都府下における親和事業は、比較的よく実施されてきたように観察しておるのでありまして、直接自分の耳にはいる限り、今お述べになつたような不祥事件は、あまり起つておらなかつたのでありますから、その他の地方に起つた事件についても、実ははなはだ不注意にして、その事件の報告を受けておりません。しかし今お話の事件は、たしかに重大な問題であります。その他にもまたかような問題が現にあるとすれば、新憲法の実施された今日、まことにこれは國民にとつて捨ておきがたき問題であることは間違いありません。これらの点については、掘り下げて根本に行けば、やはり教育の問題——学校教育ばかりではない。われわれの家庭教育から、かような封建的な思想を打破して進まなければ、根本の対策にはならないと思います。せつかくかような事件が起りつつあることを聽いたのでありますから、適当な調査方法を設けると同時に、また一方においては、かような社会惡を刈り取るために教育その他の方針においても全力を盡して、努力いたしたいと考えております。
  66. 田中松月

    田中(松)委員 総理の御答弁ありがとうございます。ただ芦田総理の言われましたところの、あなたがもうすでにあらゆる面で解決をしたようなぐあいになつておると思つておいでになるその京都府下において、今全國的に一番大きな問題が起つて、それが未解決のままになつております。これは事が重大でありますから、他の閣僚の方もこの問題で心痛しておいでになりますが、最も正しい最も合理的な方法で解決をつけなければならぬと考えておりますが、京都府下のある警察署長の名義において、大阪府下のある警察署長へあてた公文書の裏に、特別に断り書として、御移牒のあつた何々という者は何々部落の者であるから、あれを尋問するときには、こうこうこういうぐあいなことをやらなければいかぬと、明らかに公文書の中に書いた事件がございました。実はそれがために京都府下におきましては、警察部長、監察官、方面が非常にあわてて困つている問題があります。これはいまだに未解決であります。同じく今度はもう少しおひざもとである京都市内におきまして、学制区の問題がある。新制中学の学制区の問題で、あの人たちの子供が行つておる学校には自分たちの方の子供はやりたくない、当然その学制区に含まれておりながら、親類の家に名目だけ寄留しているような形で、何十名の者が別の学制区に行つておる。これは京都市内ばかりではございません、全國にそういう問題がいくつも惹起さけております。そういうぐあいで、総理がほとんどよくいつておるとお思いになつている京都府下にも京都市内にも、現にこういうような問題があるということを、ひとつお含み願いまして、先ほどの御答弁は、單に御答弁だけでなく、如実に政策の上に活かしていただくことを切にお願いいたして、総理に対する御質問を終ります。
  67. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 田中君、運輸大臣と逓信大臣あと五、六分でお見えになるはずでありますから、お見えになるまでしばらく待つていただきます。淺利君、大藏大臣に御質問があるならどうで……。
  68. 淺利三朗

    ○淺利委員 私は大藏当局にお伺いいたしたいと思います。大臣で御答弁のできないことは、政府委員のお答えでもよろしゆうございます。行政整理の問題でありますが、説明書によりますと、各省各廳を通じて一割五分の人件費の節約ということになつております。この問題につきましては、昨日同僚東委員から質問がありましたが、それに対する御答弁は明瞭を欠いておつた。ひつきようするに、これはただ人件費総額の上において頭から一割五分を減じたそして実質の人員では何ら関係がないような御説明のようであります。それからもう一つは、昨日お示しなつところ予算定員というものが、これははつきりしないのであります。昨日の説明によりますと、この予算定員としてわれわれに示されたものは架空のものである。これだけの予定した人間の中から一割五分を引いたものが予算の上には計上されておる。そういたしますれば、ここに予算定員というものが、いかに訂正されても、われわれはこれを基礎として審議ができない。こういう結果になる。もしこの予定したところ一般会計並びに特別会計における予算定員と、現在予算の上に計上されておる人員というものが差があるのであるかどうか、この点について、はつきりした御返答を承りたいのであります。
  69. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。先般お手もとに配付してあります資料は、一割五分の人件費を節約しない前の定員であります。その定員に対しまして、定額の單價をかけまして、算出せられた人件費から一割五分を落したのが予算になつておるわけであります。そういう場合におきまして、予算の定員が、一体いくらになるかといいますと、大体におきましてお手もとの資料にある人員の一割五分減というふうになろうかと思うのでありますが、どの階級からどういうものを引くというような、いろいろこまかい問題もありますので、必ずしも完全にさような結果にはなるまいというふうに考えております。おつしやる通り、そのこ掲げてある数字は、予算に載つておる定員と考えらるべきものではありませんで、予算に載つかつておる定員というのは、それから人件費におきまして一割五分を落した金額に相当する人間が予算の定員であると、かように御了承願いたいと思います。
  70. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいま伺いますと、はなはだ予算資料としては不十分でありまして、われわれは審議の上に非常に困難を感ずるのであります。すなわち一般会計においては、本年の七月は四十五万四千余人、十二月四十七万人、こういうふうに殖えてまいります。また一般会計においてもこれと同樣でありますが、そういたしますと、この七月から十二月の間における人員の増というものは、三月以降でありますけれども、七月は四十五万、十二月は四十七万、そういたしますと、これはやはりこの比率によつて一割五分づつ減つてくる。こういうように了承してよろしゆうございますか。
  71. 福田赳夫

    ○福田政府委員 大体におきまして、各月の資料の人員が一割五分ずつ減つてまいると、かように御了承願つて差支えないというふうに考えております。
  72. 淺利三朗

    ○淺利委員 もう一つお伺いいたしたいことは、予算の人員に対する俸給その他の給與の計算であります。三千七百円ベースというものは、職員一人当りの平均給として見るのでありましようか。あるいは一人の平均給というものは三千七百円と別になるのでありましようか。予算の計上の上においては、一級官、二級官と、各その給與の標準が違つております。これを平均して三千七百円として計上しておるのでありますか。その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  73. 福田赳夫

    ○福田政府委員 予算の計上にあたりましては、一級官が殖えれば一級官の高い單價による金が要るわけであります。それから二級官が殖えますれば、二級官に相当する單價の経費が要ることになるわけであります。しかしながら、予算に三千七百円ベースと申しますのは、これは総体を平均いたしまして、大体三千七百円である。さような意味合いのものでありまして、いわゆる水準を示しておる。さように御了承願いたいのであります。
  74. 淺利三朗

    ○淺利委員 そういたしますと、この予算の上において、われわれがたとえばここに一割を碧減ずるという場合には、この三千七百円のベースを基礎にして一割を減ずる。こういうふうに考えてよろしいのでありましようか、またもう一つは、具体的に申せば、今回の一割五分減というものは総額何ほどを減ぜられたのでありますか。それを金額の上においてお示しを願いたいと思います。
  75. 福田赳夫

    ○福田政府委員 今回予算において節約いたしました金額は、一般会計に限定しております。一般会計だけの職員の中から刑務所の職員、警察の職員、それから学校の教員、檢察官並びに税務官吏、この人員を除きました残つた人の給與の金額に対しまして、その一割五分を減じたのでありまして、金額は二十一億円であります。
  76. 淺利三朗

    ○淺利委員 そういたしますると、これは各省各廳全体を通じて一割五分減じたと申しますが、各省各廳に原則的にこれは通じていないという結果になると思うのであります。さらにお聽きいたしたいことは、最近の俸給におきまして、予算定員と現在人員との差がどれくらいありますか、現在の予算定員は何名であり、実在人員は何名でありますか、それは最近のものでよろしゆうございますが、その点をお伺いいたします。
  77. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。定員と実際の人員の調査は非常に廣汎な調査になりますが、これは昨年の十二月十四日現在の調査でありますが、この調査によりますと一般会計においては、定員三十九万五千人に対しまして、実在人員は三十一万九千人、特別会計におきましては百二十二万五千人の定員に対して、百十四万五千人、合計いたしまして百六十二万一千人の定員に対し、百四十六万五千人、かような状況になつております。
  78. 淺利三朗

    ○淺利委員 そういたしますと、現在合わせて約十六万人の欠員というものがあるのでありますが、この欠員に対する予算は依然といて、これは今回の予算に編入されてあるのでありますか。
  79. 福田赳夫

    ○福田政府委員 今回の当初考えました予算すなわちお手もとに差上げてありまする資料の定員に対しましては、全部の金額を一應計算いたしまして、それから一割五分の節約をいたしているのであります。從いまして、ただいまはつきりしたことはわからないのでありまするが、推察といたしましては、一般会計で見ますると、平均一八%ぐらいの欠員があるんじやないかというふうに考えられます。もちろんこれは省によりましてでこぼこはありまするから、一八%と申しましても、平均の話であります。一五%平均で落すということになりますれば、これは欠員の範囲内であるというふうに考えられるのであります。すなわちお手もとの資料でもはつきりする通り、毎月人員は増加してまいるのでありまして、この増加の抑制をいたしますれば、まずども、大体この辺にして、ごく簡單な問題でお伺いしたいと思います。今回の予算の説明の上において、政府出資金の中に、國民金融公團三億円、預金保險金庫一億円、これがまた未定であるというふうなことになつておりまするが、この構想について説明書にはつきりいたしませんから、この構想について、ひとつ御説明願いたいと思います。
  80. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 お尋ね國民金融公團、これはまだはつきりいたしておらないのであります。法律案を提出することになつておりますのですが、御承知の庶民金庫とそれから恩給金庫というようなものは、いずれも今回改組しなければならぬことに相なつております。恩給金庫は御承知の通り、恩給を受ける方々の金融機関として、相当多年にわたりまして御用を務めてきたのでありますけれども戰時中からただいまにかけまして、相当整理を要するような事態になつております。それから庶民金庫も、これは無盡会社等の一つの中枢金融機関として、相当今日まで働いてきたのでありますが、これも今日改組を要することに相なつておりまするので、この二つのものを一つにまとめまして、そうして國民金庫、あるいは國民公團となりますか、これは多少折衝を要する点なのでありますが、名称も多少変るかもしれませんが、そういう構想のもとに、庶民階級の金融のことを扱わしたい。あるいは少し言葉が適当でないかもしれませんが、公益質屋の大きいようなものと申してよろしいか、一般銀行でやるには小さ過ぎるというようなもので、つまりきわめて零細な庶民金融というものを処理することによつて、一面社会政策的にまた一面今のような経済動揺の時代に、そういう零細金融を要する人々の最も必要な手近かな一つの機関として、かようなものを設けたい、こういうような意図でございます。それから第二点の御質問につきましては、政府委員より、私の方の説明の補足とともになされると思います。
  81. 福田赳夫

    ○福田政府委員 預金保險金庫と申しますのは、さような制度は日本にはただいままでなかつたのであります。これはどういうことかと申しますると、たとえばある銀行がどうもくあいが惡いというので預金が拂えなくなる、その拂えなくなる際に、だれかにその支拂を保險してもらうという制度なのであります。これはアメリカではさような制度が非常に活用されておるのであります。その制度をひとつ日本でもやつてみたらどうかという話があるのであります。まだ構想は具体化しないのでありまするが、資本金を日本銀行、政府で出し合いまして、そうして大体全部の金融機関がこれに加盟する、その加盟したものが毎年一定の保險料を支拂いまして、そうして万一支拂不能に陷るという際におきまして、支拂資金をその中からもらうという、かような構想なのであります。さようなことでありまして、ただいまのところでは具体的にどうするという構想はできていないのであります。一應日本銀行で一億円、政府側で一億円、また場合によりましたならば、業界からも一億円くらいは金を出し合つてつくるというような建前のもとに一億円を一應予定している、かように御了承願いたいと思います。
  82. 淺利三朗

    ○淺利委員 そういたしますると、これはまだ構想中であつて、いつごろ一体これは実現するのでありますか。それからもう一つは金融公團ということになりますると、この金融公團の総裁とかその他の職員というものは政府予算にあらずして、別に計上されるわけでありますか。これは他日予算の上に公團の出資金以外に計上される見込みでありますか。その点も併せて伺います。
  83. 福田赳夫

    ○福田政府委員 國民金融公團につきましては、今会期に法案を提出いたしたい予定をもちまして、目下準備を進めております。これは資本金を大体三十億円ということに考えておるのでありますが、ただいま予算で出資を予定するという金額は三億円、残りの二十七億円につきましては、これは大体政府の出資というふうに相なろうかと思うのでありますが、この残額をいかなる時期にいかなる方法で拂い込むか、かようなことは、ただいまの予算といたしましては、予定しておりません。
  84. 淺利三朗

    ○淺利委員 今の職員などの経費、公團総裁とか何とかの経費はどうなりますか。
  85. 福田赳夫

    ○福田政府委員 新たに設置される公團が、從來の公團とまつたく同じ形態のものであるという際におきましては、公團交付金といたしまして、その事務費を計上することになると思うのであります。まだ最後的な決定を見ておりませんが、從來通りの形でいくのだということに相なりました場合には、予備金をもつて支出するとか、公團交付金の予算的措置を講じなければならぬ、かように考えております。
  86. 淺利三朗

    ○淺利委員 この問題についてはほかの方から質問があると思いますが、私は時間もあまりありませんから、もう一つ簡單な問題をお聽きしたいと思います。  今回の特別会計において不正保有物資等特別措置特別会計というものが設けられたのであります。これは商工省の関係でありますけれども予算面から考えて、大藏大臣の御答弁のできる範囲において伺いたいと思います。すなわちこの不正物資の賣却代金が七十億二千万円、その他利子等がありますが、それに対しての支出が買上金、報償金二百五十億、一般会計繰入が五億五千八百九十四万円というはした金がついております。これだけを繰り入れて差引き残つておりものは三十九億七千余万円あるのであります。これは何ゆえ一般会計の繰入れが五億程度によつて、約四十億に近い金を特別会計として残しておられるか。またこの問題につきましては、過去におけるこの不正物質の買上げとか、そういうことの報告その他の資料が出ておりません。また將來の見透しというものについても伺いたいのでありますが、まずもつて、何ゆえ四十億の金をこの特別会計に保留しておくか。一方において重税を課す際でありますから、常識で考えればこれは一般会計への繰入にもつとやつてしかるべきものと思いますが、これを残したのはどういう考えでありますか。この特別会計を設けた趣旨及びこれらの運用の面について詳細に承りたいと思います。
  87. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。この特別会計の設置されました趣旨は、いわゆる不正並びに過剩物資、これを政府において買上げておるのは從來通りでありますが、この收支を明らかならしむるために一つの特別会計を設けまして、買取並びに賣拂をはつきりいたす、かような趣旨であります。買入に当りましては、不正物資の方は、不正物資をその所有者が入手したときの入手價格をもちまして買上げるわけであります。過剩物資につきましては、これは政府が買上げるときのマル公をもちまして買上げるわけであります。両者とも買上げる場合におきましては、これを公債で支拂うのであります。もつとも千円でありましたか五千円でありましたかちよつとわかりませんが、千円または五千円以下の端数につきましては現金で拂うのでありますが、それ以上の金額は公債をもつて支拂う、公債を代金に充てるのであります。買上げるための公債というものは、予算面といたしましては、これは現金の支拂でありませんから、ここへ出てまいりません。從いまして、差額が三十九億円ばかりとなつてつておるようでありますが、実は残つておる反面におきましては、政府はほぼ同額の公債を相手方に渡しておる、かようなことになつているのであります。公債を現金で拂つたというふうに観念をいたしまして收支を見てみますと、ただいまお話のありました五億円程度の利益しかない、かようなことに相なるのであります。すなわち所有者に公債をもつて決済をやり、その公債の額だけは現金として政府特別会計の手もとに残るわけでありますが、これは公債をそれだけ拂つたのだから、その公債の見合だということで、会計に積立金として残つておるのであります。これは國庫金でありますから、もちろん國庫のたとえば公債を買うとかさような財政方面に活用されているわけでありますが、会計自体の將來の償還計画は、さような面から申しますると、これは会計が保有しておつた方がよろしい、かようなことでこれを一般会計に繰入れることといたさず、その会計の積立金として保有している。しかしながら、ただいま指摘されましたところでありますが、これが財政の面に活用されておらぬかと申しますと、さようなことではありませんで、たとえば公債を会計がもちますとか、さようなことで財政とは一体として活用されている、かように御了承を願いたいと思います。
  88. 淺利三朗

    ○淺利委員 どうもただいまの御説明でははつきりいたさぬのであります。賣却代が賣拂代が七十億円であつて、買上金及び報償金が二百五十億、その残りが三十九億七千余円、こうなつておるが、今の御説明によると、現金でやるものは一千円以下とかなんとか少額のもの、あるいは報償金、それ以外のものは公債で交付するということになりますが、公債が予算の上に現われぬということになれば、その公債は何によつて一体交付するのでありますか、むしろ会計の上において、公債なら公債というものがはつきり現われければならぬはずと思うのであります。ただ差引きの二十億というものだけが出てきていかにも賣却代と買上金との差が利益であるかのごとくわれわれはこれを読んで感ずるのであります。しかるに利益はわずかに五億五千万円しかない。あとの三十九億は公債の見返りになるのだということになると、はなはだ奇怪にたえないのであります。一体これだけの不正物資あるいは過剩物資を買上げて、わずかに五億円しか利益がなかつたということは、常識で判断ができないのであります。不正物資の摘発ということは、これは各党をあげ、政府も、國会も、世間も、ともに強力に主張しておるのでありますが、その結果においてわずかに五億五千万円しかないということでは、どうしても納得がいかぬのである。その点をはきり御説明願いたいのであります。すなわちこの公債というものは何によつて交付したか、予算の上に現われずしてそれをやるという途がどこにあるのか。そうしてこの三十九億と公債というものとの関係はどういうふうになつておるか、その点をもう少し素人わかりのするように御説明願いたいと思います。
  89. 福田赳夫

    ○福田政府委員 本年度におきましてこの不正特別会計が、その保有する物資を販賣する金額は九十三億、そのうち年度内に收入になる金額は七十億円ということになつております。それから七十億円という收入があるわけでありますが、それからその賣拂いに必要な諸経費、それから先ほど申し上げましたさような物資を買取るために必要であつたところの公債の代金、これを差引きまして残りのほんとの利益、これはただいまのところでは五億五千八百万円である。かように考えておるのであります。もつともこの五億五千八百万円というのは、ほんとうの見透しと申しますか、大体の見当でありまして、政府といたしましては、これを増額せしめたいという努力はするつもりであります。
  90. 淺利三朗

    ○淺利委員 そうすると九十三億というものと公債との関係はどうなるのですか。
  91. 福田赳夫

    ○福田政府委員 ただいま年度内において九十三億円を賣るのだと申しましたが、その賣る物資はどういうふうにして入手するかと申しますと、今年度といたしましては四十二億円の物資を買取るというのであります。現金で支拂うものを差引きまして、公債拂いをいたすものが四十億足らずある、かよに御了承願いたいのであります。
  92. 青木孝義

    ○青木(孝)委員 ちよつと大藏当局にお伺いいたしたいと存じます。ただいま國民金融公團の御説明が簡單にございましたが、私の仄聞するところによりますと、國民金融公團はもうほとんど政府ではこれをまとまつたものとして、すぐ議会に出すように準備が整つておるというふうに考えておるのでありますが、今聽いておりますと、質問に対するお答えが、何か奥歯に物がはさまつたような御説明だと存じます。そのでちよつと簡單にお伺いしたいのでありますが、私の聽いておりますところでは、國民金融公團は、大体從來の庶民金融という金融機関としての組織が適当でないというお考えか、ともかくも日本には御承知の通りほとんど貧乏人に資金を融通する機関はまつたくないのであります。そういうことをお考えか。ともかく國民金融公團は、恩給者と生活困窮者、殊に引揚者あるいは生活協同組合、そういつたものに資金を貸付けるという機関らしいのであります。そうしてこれが事実かどうかわかりませんが、日本銀行から十三億円の借入金をもつてこれを運営する。そのほか國民金融債券を発行するというような仕組らしいのです。さらにこの公團は他の公團と同樣だと思いまするが、次官級の総裁を置いて、公務員法による公務員によつてこの仕事を行うということらしい。しかも役員は通貨審議会か何かが申請して内閣の任命による。それから総裁、副総裁、理事三名以上といつたようなことをきめられ、監事二名ということでありまするが、そういうことになりますると、さらに政府予算は殖えることになり、またこの仕事がおそらく從來の庶民金庫以上に政府責任というものにかかつてくるものだというふうにも考えられるので、われわれとしては、今からこういう問題は十分研究を遂げておかなければならぬと思いまするし、さらにまた現在の庶民金庫は、御承知の通り貸出金額を三万円から五万円程度に引上げたらしいのであります。そういたしますると、今度できる國民金融公團では、貸付金額というものは、どのぐらいにお定めになつておるか。今私の申し上げたようなことが、大体今度の國民金融公團の御構想であるかどうか。ひとつ簡單で結構でありまするが、一應御説明おきを願いたいと思うのであります。
  93. 北村徳太郎

    ○北村國務大臣 大体の構想は、ただいま青木委員お話なつたようなことをねらつておるのであります。それで問題は、公團方式で、こういう零細金融機関をつくることはどうかという点に問題点があるのでありまして、これは私ども考え方と、関係方面考え方と、若干違う点があるかと思うのでありますが、要するに零細金融機関というものがない。しかも恩給受給者が非常に今のところつておられるし、引揚者等の問題についても、これは單に消費的に使われるばかりでなく、もう少し違つた意味で、生産性をもたせるようなところにまで、この金庫の貸出金を通して仕事をしてもらう、生産化をやるというような点にもやはりこういう金庫が必要である。それで最小あるいは最大額をいくらにするかということは、まだきまつておりませんが、今の構想では、ただいまのお話のように、國家公務員法による公務員が仕事にあたるというようなことで、一般公團と同じような方式でやることが妥当だという意見が多いのでありますけれども、なおこれは若干の変化を見るかもしれませんが、大体の構想はただいまお話の通りであります。
  94. 淺利三朗

    ○淺利委員 なお一つ、二つ、不正保有物資等特別措置特別会計の問題でありますが、残つておるところの三十九億というものは、ただいまの説明によれば、これは今後本年度四十二億の物資を買取るための公債の発行の見返りの意味において私は保有しておる金と了解してよろしゆうございますか。
  95. 福田赳夫

    ○福田政府委員 さようの通りでございます。
  96. 淺利三朗

    ○淺利委員 そういたしまして、本年度の分は見返品がありまするが、二十二年度においてはどういう方面からこれは支出されて買取つたのでございましようか。
  97. 福田赳夫

    ○福田政府委員 二十二年度におきましては、これは現金をもつて、すなわち予算の歳出といたしまして買取つたものであります。
  98. 淺利三朗

    ○淺利委員 予算があつたわけですか。
  99. 福田赳夫

    ○福田政府委員 予算があつたわけであります。
  100. 淺利三朗

    ○淺利委員 私は大体時間もありませんから、この程度に止めまして、あと分科会の際に詳しく質問をいたしたいと思います。
  101. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 田中君の質疑にはいります前に、ちよつと御報告いたしたいと思いますが、委員東井三代次君から審議の必要上、日本銀行副総裁川北禎一君の出席を求めて、次の三点、すなわち借入金の限度額及び大藏証劵の発行限度額の拡張は、財政の收支均衝策と矛盾はしないか、新物價改訂と日本銀行の金融政策に関する所見、インフレーションに対する見透しはどうかという三点について、ぜひ参考意見を質したいという申出がございまして、委員長においては特にこれを許可することにいたしまして、その取計らいをいたしましたが、但し東井君の質問の時間の限度内でこの質疑を終了するように取計らつていただきたいと思います。川北君が御出席になつておりますが、その前に運輸大臣と逓信大臣に対する田中君の質疑を継続いたします。
  102. 田中松月

    田中(松)委員 私は鉄道運賃旅客貨物ともに三倍半、逓信料金を四倍に値上げするについて理論的な根拠を運輸大臣、逓信大臣にお聽きしたいのであります。先ほど大藏大臣質疑するにあたつて、前提として申し上げたことが二つございます。その一つは表面上責任に立つておる方々は、これはいわゆる行政府の代表ではありまするけれども、そのあなた方が責任をもつてお出しになつた今度の予算案をつくるにあたつての資料、統計、編成というものは、官僚の手によつてなされたものである。その官僚の中にはもちろん忠実なる國民の公僕としての任務を果してくれる人もあるけれども、この際徹底的に官僚の独善とボス官僚の排撃をやらなければならぬというような声が世間に起つておる。こういう面が徹底的に追究されていくならば、大臣が思いもよらぬような方面に節約あるいは合理化ができるのではないか、そういう点も今後忘れてはならない。なお私どもは與党の立場には立つておるけれども、質すべきは十分に質さなければならない。この二つの前提條件を申し上げておきました。今ここにお尋ねしたいことは、たとえば鉄道総局から出された「國有鉄道の赤字の原因と運賃値上げの必然性」という資料を読んでみましても、なぜに三倍半に鉄道運賃を値上げせねばならぬかという必然性がちよつとも認められないのであります。値上げをせねばどうにもこうにもやりきれないから値上げをする、そのためにはこれを一般会計から繰入れることができるが、それでも足らぬ分を逆算して、その分を埋めるのには三倍半にすれば本当にできるからという理由ならわかります。通信料金の四倍値上げについてもやはり同じであります。私がお伺いしたいのは、三倍半、四倍という倍率を出した理論的な根拠であります。昭和十一年を百といたしまして、物價指数水準が卸賣指数八千百四十八であるのに旅客運賃指数わずかに二千二百八十七、貨物の方は二千百十六これでははなはだ不均衝であるから、これを共通に三倍半に値上げをするということは、これは何ら理論的な理由にはなりません。これは言つてみれば、経済安定本部がお題目として唱えておる均衡的物價理論の幻想がこういう形で曲げて現われてきたのではないかと思うのでございまして、何らの理論的な根拠を示していない、インフレーションの高進しつつある現段階において、物價に対する深刻なる心理的な要素というものが少しも考慮されていない。鉄道及び逓信の営業收入が赤字になるから、この赤字を埋めるために逆算してこれを機械的に三倍半に値上し、四倍に値上をするというだけでは、まつたくもつてこれは能のない話であります。こうすることによつて國民経済に、特に勤労者大衆の生活にどんな影響を與えるであろうかということについて、ここに十二分の考慮を拂わねばならぬのでありますが、そこにこそ眞に生きた政治があるのです。かりに筑豊炭田の飯塚から阪神方面への石炭の運賃が現在百八十五円十銭であります。六百四十七円八十五銭となつた場合に、昭和十一年度の運賃指数を百としまして、それに比べて一万四千六百九十七という、すなわち戰前の百四十六倍という騰貴になるのでありますが、これがひいては関連する産業にどんな大きな影響を與えるかということがまつたく考えられていないようであります。今ここに述べましたように、物價、賃金に含まれる貨物運賃の割合の算出ということも計数のうちの一つのいわば手品、マジックであつて、一國の産業構成の上におけるキー産業である鉄道賃金が、單に算術計算的に物價の高進の中に影響するものであるということは、何としても考えられない。納得ができない。たとえば片山内閣のときに逓信料金の値上を計画した。われわれはこれに対して反対をいたしましたが、あのときでも当局の説明を聽けば、りつぱに逓信料金の値上ということは納得がいく、つじつまが合う。けれども地方に参りまして、たとえば市町村当局あたりに聽いてみますと、あの場合にもしああいうむちやな値上がされたならば、地方の自治体はまつたく困つてしまう。予算を組んで今年はこれだけでこういうぐあいにやりくりをしなければならぬと思つておるところに、途方もない倍率を上げられると、手紙も出せない。一切もうそういう方面の通信は、地方自治体の機能はストップになつてしまう。これを値上をしないでよかつたというようなことになりましたが、ああいう方面におきましても、表面における数字計算は合うけれども、内部的にそうした大きな影響があるということが見逃されておつたのであります。そこで私は運諭大臣の見解を——いわゆるただありふれた見解でなく、簡單でもよろしゆうございます。倍率を理論的な根拠、心理的な影響、また逓信大臣に対して特に申し上げておきたいことは、今度ちようど鉄道賃金の値上とかち合いましたから、そちらの方を中心に考えられて、世論が偏つて、逓信大臣の方には、あるいは自分のところにはそれほど大きな反対の声はないというふうに感ぜられておるかもしれませんけれども、それは決して逓信料金の値上ということが軽視されておるのではない、それも大問題であるが、一方にもつと大きく影響する運賃値上というものがあつたために、あなたの方が軽く見られているようなかつこうになつておるのでございます。この点をひとつ特にお含みおきを願いたい。特に抽信大臣に対してはいわゆる官僚の民主化ということに対して、あなたも党に帰られれば、われわれと同じ共同責任において、いわゆる官僚の民主化ということを叫ばれる方であり、もちろん運諭大臣にしてもそうでありますが、特に逓信大臣に対して、こういう点についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  103. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 お答えいたします。鉄道運賃と旅客、貨物ともに三・五倍にいたしました理論的の根拠でございますが、原則から申しますと、鉄道企業の経営、採算の原價を標準といたしまして、コストに適当なリスクを盛りこみましたものを運賃として算出して実施するということが、すなわち独立採算制の確保ということに相なるのでございます。しかしながら運賃法案の第一條の二項に明記をいたしておりますように、第一には公正妥当なものであること、第二には原價を償うものであること、第三には産業の発達に資すること、第四には賃金及び物價の安定に寄與すること、この各項に合致するごとく考慮を拂つてまいつたのでありますが、しかしながら、御承知の今日の戰後の急激な物價の高騰によつてインフレーションが高進いたしております今日は、物價と賃金が相当な高額に上昇をいたしてまいつております。それで現実の問題として物價及び賃金の改訂の必要に迫られたわけでありまして、それにつり合うような原價を償うものとするとなると、貨物運賃の非常に大きな引上げをやらなければならないことになり、それがまだひいてさらに物價及び賃金の上昇を促すことになります。そういう見地から考えまして、第一にインフレーションをできるだけ抑制して、物價、賃金の高騰をある線に止めたい。こういうことが努力されることとなりまして、政府においては、この見地からいろいろ現実的に檢討をして、貨物運賃は三・五倍に値上をすることが適当であるとの結論を得たわけであります。旅客運賃につきましては、これは経営原價から上まわつておりますが、なぜさように経営原價から上まわつた運賃を決定するかということを言われるでございましようが、これはただいまから十数年前からの統計によつて見ていただきましたらわかるのでございますが、旅客運賃は常に経営原價から上まわつた実績をもつてきておりますことと、本年の今回のごとき場合におきまして、貨物運賃を必要以上に抑えなければならぬときには、一方旅客運賃によりまして、從來の実績以上に上まわらない、原價コストより上の運賃を決定いたしましても、これがもし利用者の耐えられない負担ということにならない以上は、両運賃をにらみ合わせまして、ときに高低を生ずることがあるのもやむを得ないという考えもとに、今回旅客においても三・五倍を決定いたした次第であります。但しこの三・五倍を観念的に決定いたしたのでは決してございませんので、独立採算制に近よらしめる方向考えながら、今日の國家財政現状と物價及び賃金、インフレーション対策等、いろいろの面から参酌をいたしまして、かような結論を得た次第であります。その点につきましては、非常に旅客運賃が心理的に影響を與えることは、田中さんの御指摘の通りでございます。私たちといたしましても、一見安くない運賃額でございまして、これは少々心苦しいのでございますが、しかし今日の物價の暴騰による貨幣價値の下落などから考えまして、必ずしもこれは負担し切れない運賃額ではないという見解をとりまして、かように決定した次第であります。御了承願います。
  104. 冨吉榮二

    ○冨吉國務大臣 田中君にお答えいたします。私に対するお尋ねは、通信料金の四倍値上げの理論的根拠ということと、官業の民主化についての二つのお尋ねであつたと思います。御承知のごとく、通信会計におきましては、特別会計制度が創設されましてから、年々黒字でございまして、一般会計の方に相当の繰入をなしつつあつたのであります。しかしながら、終戰後におきまして、インフレの高進に伴いまして、順次赤字を出しまして、料金の値上げもお願いいたしておるのであります。現在通信料の現行料金は、御承知のごとく千二百円の賃金ベースと、一昨年の十月の物價を基礎といたしました物件費で組立てられておるのが、現在の料金でございまして、もしそれその人件費なり物價というものがそのままでずつとまいりますならば、これは何ら料金に手を触れる必要はないのであります。しかしながら、本会議の席上でも説明申し上げましたごとく、それらの高騰によりまして、次第に赤字が殖えてまいりまして、本年度における見込みといたしましては、どうしても百五十一億という赤字が出てまいります。他の鉄道料金及び物價を改訂いたし、賃金ベースを引上げ、通信料金をそのまますえおくということにいたしますと、実に二百四十七億というような赤字が出てまいる。こういうことになるのでありますが、御承知のごとく、すでに千二百円の時代から三千七百円ということになりますと、丁度これは約三倍であります。そうして通信会計における人件費の占める率は、鉄道の方と違つて六七%であり、物件費の方が三三%でございますが、この物件費は御承知の通り現在ですでに物價は一昨年の十月からいたしますと四倍でございます。それに今度は一・七倍になるわけでございますから、五・七倍ということに相なります。そこでそれらを総合いたしますと、四・二五倍という数字が出て來るのであります。こう工合で物價指数の上から申しましても、人件費の歩合からいたしましても、通信料金の値上げということは、私そこに根拠があると信ずるのでございますけれども、これは決して上げたくて上げたのではございません。田中さん御指摘の鉄道料金の影に隠れていて、どうも通信料金の方は大部非難がなくて済むというようなお話でございましたが、決してさような安易な考えをもつてこの案を立てたわけではございません。大体四倍にしたといたしましても、すでに御説明申し上げましたごとく、たとえば公衆電話のごときものは二倍といたしますし、電報の夜間の料金を上げませんし、至急報を三倍を二倍といたしますし、その他の料金におきましても四倍以下に調整をいたしまして、一般勤労大衆の負担となるベき点を考慮いたしまして、料金計算をいたしたような次第でありまして、その点についての御了承をお願いいたしたいものと思うのであります。かくいたしましても、なおかつ五十億の赤字が出ますが、これは一般会計に御負担を願わなければならぬという状態でございまして、私どもといたしましては、今後において、人件費の節約、物件費の節約に大いに緊縮方針をとつて國民に御迷惑をかけずして、破壞されたる通信を回復するように努力いたしたいと考えております。  次に官廳の民主化の問題でございますが、まことにごもつともなる御意見であると思うのであります。私もこの官廳民主化という点につきましては、まつたく同感であり、その理念においては人後に落ちないものであります。いろいろ官僚というものを批判いたしますが、一体どういうぐあいにして民主化するかという問題については、それぞれの立場でいろいろな議論もあると思います。要するにその責任観念というものが大事である。同時にいわゆる新憲法のもと、官吏は國民のパブリック・サーヴァントと規定せられておりますが、公務員法においても、はつきり公務員の業務観念を規定されてありますので、この新憲法の精神に副つて官吏がやつてまいりましたならば、過去において受けたるがごとく、あるいは現在またいかがわしき非難の対像となつていることも、おのずから解消することと思いますが、しかし田中君の御存じのごとく、ローマは一朝にしてならず、民主主議また旦夕において解決できないのでございまして、幾多のわれわれが努力をいたさなければならぬ点があるかと思うのであります。從いまして、私どもその指導監督の任に当つているものといたしまして、非常に責任の重大を感じまして、いろい國会等の御意見御援助を得まして、新憲法が規定するところのいわゆる民主化に向つて、極力努力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  105. 田中松月

    田中(松)委員 運輸大臣の言われたことは、私はさきに指摘した通りでございまして、あなたが一生懸命答弁された割に、私どもは納得できないのでございますが、あなたが述べられたように、四箇條はその通りでよろしゆうございますが、その次に大衆の生活に極度の圧迫を——言葉をかえて言えば、やみ屋でなくては乘れないような運賃であつてはならないという一箇條も、ぜひひとつ今からでも附け加えていただきたい。それから逓信大臣は電話料、電報料の急報の三倍を二倍に引下げたということは、これは御自漫されるほどのものではなくして、今までがちよつと上り過ぎておつたから、今度はセーヴしただけのことであつて、何もこれは自漫らしく聽かしていただくほどではないということを申し上げたい。官廳の民主化のことでありますが、今さしあたりあなたに答弁に立つていただいたから、あなたを名指すようですけれども、決してこれはあなたを指したわけではないが、現閣僚はすべてこれ政党人である。そうして普段はわれわれと共同責任で官僚の民主化を叫んでおつた人です。ところがあそこにはいると、あなたはすべての閣僚を代表して民主化をやつている。ローマは一日にしてならずという引例をなさいましたけれども、われわれの側から言いと、そういう人たちがそういうところへいくとミイラ取りがミイラになつたような点が幾多見受けられる。そういう点について十分官僚を民主化することではなく、民主化の一番根本である政党人があそこへいくとどうも高上りをして官僚のかみしもを着たような恰好になることが、ままありがちである。そういう点もひとつ十分氣をつけていただきたい。  次に鉄道総局から出された資料の説明を見ると、鉄道の予算及び会計制度が現行のままであるならば、必要な作業が不自然に抑制されたり、逆に不必要な経費が支出されたりして、非能率的な経営や浪費を奬励するような結果となるということであるが、これはまことに聞捨ならぬことであります。不必要な経費が支出されたり、非能率的な経営や浪費を奬励するような鉄道予算や会計制度が、数十年來平氣で続けて來られたということは、言語同断な始末である。またこれについて何らの改革をやらなかつた責任についても、われわれは國民の代表として黙つているわけにはいかぬのであります。こんな予算や会計制度が平氣で行われているからこそ、年度末には予算を浪費するために出張が急に殖えたり、予算の目の中には多額の交際費が計上されたり、物件費が戰前と少しも変らず浪費されたりしている事実をわれわれは知つておる。鉄道総局という官廳みずからがこれを告白し暴露するに至つては、あきれて物が言えない。このような非能率的な経営や浪費を獎励するような現行制度では、國民の汗と油の固まりである税金も、一般会計からの繰入れや、三倍半というような高率な値上げになかなかうんと言うわけにはいかないのであります。私はどうも運輸大臣ばかりを追究するようでありますけれども、当の責任者として、大臣はどう考えておいでになるか、時間の都合もございますので、詳しい御説明はこの際よろしゆうございますが、要点だけを——將來こうした改革の意図ありや否やを、ひとつお伺いしておきたい。
  106. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 赤字の原因と運賃値上げの必要性という説明書の中に書いております字句によりましてお叱りをこうむりましたのでございますが、これは今までかような不合理なことを平氣でやつていたという考えで書いたのではございません。そういうことが起らないように是正をしたいというつもりで書いたのでございますが、たまたま他の方がお読みになりますと、あるいはそういう意味にとれるようになるかと思いますが、これは少し書き方が惡かつたわけでありまして、今までめちやくちやにルーズにこういう不合理なことがあるのを平氣でやつてきたのだということを暴露したということにはならぬと思うのでありまして、この点御了承をお願いいたしたい。こういうことが起らないように、今後鉄道を完全な機構にいたしまして、一層合理的な運営をやつていきたいというつもりでおるのであります。
  107. 田中松月

    田中(松)委員 ただいまの説明書のことでありますが、私どもはただ單に出された説明書だけを見て考えておりません。ただいま引例いたしましたように、いろいろこの目で見、この耳で聽いた実際問題と、今の説明書を読み合わせてみると、そういうぐあいに私どもは読み得る。その見地から申し上げたのであつて、ただ書いてある活字を頼つて追究したのではありません。そういう事実があるということが、もし大臣がお氣づきになつていなかつたならば、ひとつ別な機会に事実をあげて証明いたしますから、これは別の機会に讓ることにいたします。  前にも述べましたような不合理な予算と会計制度のもとに、要るだけの物は使い、赤字が出たら運賃の値上げと一般会計からの繰入と公債で賄うというこの官僚諸君の今日までのやり方、その心構えに対してもわれわれは嚴正な批判を行わねばならぬと思うのでありますが、経営の合理化ということは、作文としてはいろいろ述べてはおられるけれども、これは單なる机上の作文にすぎないということは、これは何もその説明書には出ておりませんけれども國鉄の内部からこれが暴露されているという事実を、運輸大臣は御存じであろうか。たとえば石炭の消費節約についても、いろいろ研究していると言つておられるが、國鉄労組新橋支部の闘爭委員会の調査によりますと、カロリーによる級別のインチキがある。すなわち三千九百から四千二百カロリーの十級炭から十一級の石炭が五級、六級の値段である。トン当り千四百六十四円で山元から買われていると言われた。これはあとからでよろしゆうございます。私は委員長から二十二年度の購入石炭のカロリーと、その級別とその支拂代金について、できるだけ詳細なる資料を当局から出してもらうようにお取計らい願いたい。事実このようなことがあるかどうか。この点は何も鉄道内において、すべてがこれに類するものばかりというようい申し上げるのではありませんが、この点については、ひとつ運輸大臣の偽らざるお答えをいただきたい。
  108. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 鉄道特別会計は、戰時中までは操業以來赤字を出したことはなかつたのでございますが、赤字の一番大きな原因は、不幸にいたしまして、終戰後に急激な物價の暴騰による賃金の高騰、物價の高騰ということが原因をいたしまして、不幸にもかような赤字を出すことに相なるわけであります。しかし田中さんの御指摘のように、不合理な面がいろいろ鉄道の廣い地域の中の部分にはないということは申されませんので、われわれといたしましては、赤字が出る。運賃を上げる、あるいは上げないにかかわりませず、常時合理的な運営、能率的な運営をいたしまして、そうして経費の節約、物件費の節約、人員の節減を努力いたさなければならぬものでありますので、今日以後におきましても、十分な努力を傾倒いたしまして、眞に國民の御納得を得られますがごとき努力をいたしたいと存じております。  それから石炭の消費の節約につきましては、これまた今日までいろいろの試驗、あるいは機関士に対する消費の実績の報告などによりまして、消費の節約に努めてまいつたのでありますが、戰時中から石炭が非常に不自由になりまして、大体におきまして、カロリー及び量などは協定をいたしまして、とつておるのでございますが、現実の問題といたしまして、あるいは約束通りのカロリーより低いものがはいつている事実がございますが、これは数量が間に合いませんために、品物が少い時分には、カロリーの差で鉄道を止めてでもいいカロリーの石炭でなければ受取らないというわけにもまいらぬ場合がございまして、今日の配炭公團などといつも激論を闘わしながら、献身をいたしておるようなことになつておると思います。しかしこれは法的から申しますと、契約通りのカロリーのものをもらい、また十分な量をもらうのがほんとうでございますので、今後におきましては、嚴密な受渡しをいたす方向に努力をいたしたいと考えております。
  109. 田中松月

    田中(松)委員 カロリーの高い石炭がはいらないときに、低いものでも汽車を止めるわけにいかぬ。それはその通りでございますが、私が指摘しましたのは、その代金を低いカロリーではいつたときには低いカロリーで拂うべきものを、高いカロリーとして拂つておるという事実について指摘したのであります。これは率直にそういうようなこともあるということを大臣答弁なさいましたので、それ以外に申し上げようとは思いません。  次に建設工事における請負会社と下請業者との関連についてお聽きしたい。これもぜひひとつ資料をお願いしたいと思うのですが、鉄道工業株式会社以下十五社の構成メンバーの課長級までのリストと、その人たちが過去において鉄道官吏としてどういう役目をしておられたかということについて、できるだけ明細な資料を願いたい。これもあと委員長からよろしくお取計い願いたい。  さらにお伺いいたしたいことは、ここに独占禁止法に触れるような会社の形態はないか。ほとんど鉄道の建設工事を独占しておると見られる鉄道工業株式会社が東鉄工業、大鉄工業、名鉄工業、新鉄工業株式会社などと、同一の系統によつて、横の連繁を保つておる事実があると聞いておりますが、いわゆる世に言うトンネル会社によつて、工事費が一割から二割の高値に落札されておるということである。ひどいのになると、最高四割五分の利潤をあげておるというこのトンネル会社、またはそれに類する姉妹十五社に対して、過去十箇年の建設工事の契約の内容、契約会社が直接工事をやつたか、それとも下請会社にやらしたか、この関係についての資料をお願いしたい。この点を追究することによつて、莫大なる浪費を指摘し得るという確信をもつておるのでありますが、このことは資料を提出をいただくまで留保いたしておきます。いずれあらためて大臣答弁を願うことにしたい。  次に鉄道弘済会についてお聽きしたい。今日鉄道事業におけるあらゆる面の商行為は、ほとんど弘済会が独占しております。この事業は独占事業であるので、相当の利益をあげておることは周知の事実であります。これに絡んでいろいろ醜い記事なんかが新聞紙上にも載つたことがあります。これが鉄道出身官僚の食いものになつておるという事実については、がまんのならぬものがあります。まず鉄道弘済会は、鉄道從業員の救済事業であると言われておるが、はたしてそうでありましようか。これを運輸大臣に聽いておきたい。鉄道弘済会は、鉄道從業員の老後のために、あるいは公傷、疾病で倒れた者を救済するためというありふれた答弁を求めようとするのではありません。そうであつたならば、私はここでこの問題を取上げはしません。われわれに聽くところによりますと、從業員の大部分、七〇%は鉄道に関係のない人々であると言われております。わずか三〇%の鉄道関係者を救済するという名目のために、一部高級官僚の救済機関となつておるという事実に対しては、絶対に承服することができません。大臣はそういう事実はないとおつしやるかもしれませんが、この弘済会に対して、國庫から補助金を出しておるが、鉄道関係者でない人々の商行為のために補助金を出す必要はないと思う。ところ補助金を出しながら、一方においては利益金を納入させておると言われておりますが、この点もいかがであるか。鉄道の厚生設備のために施設するという名桃のために納入されておるそうでありますが、はたしてこの納入金が鉄道の厚生事業に使われておるかどうかお尋ねしたい。実は観光協会についても質さなれればならぬたくさんの問題がありますが、時間の関係で観光協会のことは割愛しておくことにいたします。
  110. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 お答えいたします。建設工業株式会社は、戰時中政府の決定によりまして創設いたしまして、あるいはトンネル会社というふうなことになるかと存じますが、しかしこれは昭和二十二年の七月一日からこの制度を廃止いたしまして、入札制度にいたしたのであります。從つて改正前には、工事のオール下請もあつたと思うのでありますが、その後においてはその不合理な欠点は除かれておるはずでございます。なお御指摘になりました鉄道工業会社の幹部、重役等の名簿は追つて提出をいたすことにいたします。  それから弘済会の件につきましては、世上少し何か不満でもあるかのごとく、非常に誇張されたうわさが一部に行われておるようでございますので、私たちはただいま弘済会の内容調査中でございまして、その結論を得ました場合には、これを公表をいたしたいと存じております。この弘済会は御承知の通り、鉄道業務のために殉職いたしました者、あるいは公傷になりました者、または退職いたしました者等の本人並びに遣族などを救済することを目的といたしまして、駅の賣店などの仕事をやらしておるわけでございます。駅構内の営業は、弘済会が独占しておるという声も聞くのでありますが、種類によりましては、むしろ他の業者が多い面もあるのでありまして、全部独占ということになつておらないのであります。二十二年度末現在において公傷手当を出した者が三千百三十五人になつて、殉職手当を出した者が七千四百八十八人、遣族手当四千四百六十四人、それから一箇年における公傷者の数が約五百人、殉職者の数が八百人となつておりまして、これらに対する救済の策をとつておるのでございます。それから補助の額は、弘済会に対しましては、年額約百四十万円ばかりを出しておるのでございまして、これはあとから詳しい数字を申し上げても結構だと思います。それから收入支出の状態は、ただいま概畧でございますが、年間約二億四千二百万円の收入支出でございます。これは世間では非常に厖大であるかのごとく誤解をされておる面もあるのではないかと考えておりますが、そのうち利益になりましたものの中から、約四千九百万円を社会事業費として支出をしておる状態でございます。なお詳細にわたりましては、先ほど委員長に御要望がありましたように、詳しい数字あとから提出をさしていただきます。
  111. 田中松月

    田中(松)委員 いろいろ資料によつてお伺いしたいこともありますが、他のことは分科会に讓ることにいたしまして、ただいま申し上げましたように、石炭購入に対するカロリーのインチキが國鉄内部から暴露されたこと、あるいは契約にあたつて相当高い契約をして、これを下請会社にやらして不当なる中間の搾取をやつておると疑われるようなこと、さらに鉄道において直営事業として相当の收入をあぐべき鉄道弘済会の事業が、一部少数官僚救済のためにしておるというような疑惑をもたれておること、観光協会の問題、こういう点を究明することによつて、鉄道事業の合理化、あるいは浪費の節約ができるということは、疑う余地がありません。以上の諸点を考え合わしてみますと、官僚の責任制度から言つてみて、この事業の赤字勘定をそのまま額面通りに受け取るわけにいかないのであります。これはお断りしておきますが、すべての官僚諸君がそうだと申し上げるのではございません。鉄道の官吏諸君の時代感覚において、敗戰意識をどの程度にもつておられるであろうか。この敗戰意識を強くもつておられるならば、赤字経済をそのまま大衆に轉嫁しようなどとは考えられないであろうと思われる。その他の雜收入についても、積極的に再檢討を加えてもらいたい。極力浪費を戒め節約をはかることによつて、今日の赤字をもつと縮小する余地はないかというのであります。この点について運輸大臣の良心的な御答弁を願いたい。  それからもう一つ、ただいま政府が三倍半値上予算を組んでおられるが、これはどんな倍率で納まるか知らぬが、かりに政府原案通りにきまつたとしたならば、本年度においては、再び運賃値上は、旅客も貨物も絶対やらぬでもよいのか。この点についてのお見透し。これで私の質問は大体終るのでございますが、要点だけ申し上げましたから、良心的な御答弁をお願いしたい。
  112. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 石炭のカロリー、数量に対してインチキが行われておる、しかも鉄道部内から暴露しておるじやないか、こういうお話です。また下請、弘済会、観光協会等について、非常な罪惡が行われておるがごとき、まるで法廷で被疑者を調べるような口調でおつしやつた。われわれは決してルーズなやり方をしようとも思わず、また不正を見透していこうとは決して思つておりません。さような事実を発見いたしました場合は、嚴に適当な措置を講ずるつもりでございます。ただ物が非常に不自由で、石炭などが欠乏いたしております場合は、インチキでなくして、やむを得ずカロリーの低いものをたかなければ、工場が運轉しないということは、田中さんは石炭などの御專門でいらつしやるから、よくおわかりのことと思います。故意にインチキをやつてつて、鉄道はともかく全部が伏魔殿であるような印象を與えることは、私はまことに残念であると思います。どうか具体的のことがありましたら、御注意をいただきましたら、早速適当の措置を講じます。  それから三・五倍に運賃を引上げたあと、將來において、あるいは本年内において再補正をするつもりか、そのつもりはないかという仰せでございます。これは將來のインフレの状態あるいは物價、賃金の状態に起因することと存じますが、ただいま政府予定しておりますところによりまして、物價及び賃金が安定することでございましたら、運賃を再び修正する考えはございません。もし物價及び賃金の再補正を要することとなりました場合には、あらためて研究をいたす考えでございます。
  113. 田中松月

    田中(松)委員 えらい声を励まして大臣答弁でございましたが、前にお断り申し上げておきました。ただいま私が申し上げた言葉の中にはなかつたが、その以前に、多くの人たちは困苦欠乏にたえながら、國民の公僕として一生懸命やつておられるが、その蔭にかくれて少数官僚のこうした陰謀がある。こういうことを時間の関係であなたに繰返して申し上げなかつたが、大藏大臣に対する質問の前提として詳しく申し上げておきましたから、ひとつおひまのときに速記をごらんいただきたい。決して私は法廷で調べるというような氣持で申し上げたのではない。もしそういうことを逆襲されるならば、これからわれわれはこの委員会においては、要求する大臣が全部そろわなければ質疑をいたしません。便宜上切り離して申し上げたから、そういうことになつたのである。そういう点について、十分御注意を願いたい。それからカロリーがどうこうということを、一本調子で突いてこられたが、私が申し上げたのは、そうではない。要するにカロリーが足らぬからといつて捨てておいたら、車を止めなければならぬから、そういうときには入れざるを得ぬ。それを入れるなと言うたのではない。それを入れられたときには、入れられた級別に対する適当な金を拂うのが至当である。その点を指摘したのである。それをいかにも私がカロリーが惡いのを持つてきたのは受け取らずに置けと突つぱねるようにとられたが、それはあなたのお聽き違いで、私はそういうことを申し上げたのではない。その他の問題についても決して私はそうではない。困苦欠乏にたえて、ほんとう國民の公僕として一生懸命にやつておられる多くの官吏諸君がある。その蔭にかくれてこういうことがあるという事実を申し上げたのであつて、あなたのように言われるならば、その都度々々の質問に前提として、一々申し上げなければならぬようになります。この点については、私は何もあなたにいまさら取消せとか、とやかく申し上げるわけでありませんけれども、われわれはこの審議にあたつては、十分考慮して、政府当局の御都合もあろうし、便宜上わけて御答弁を要求したり、質問したりしておる。それを一方的にそういうぐあいに逆襲されるならば、われわれは今度は別の角度から、あらゆる場合にすべての大臣をそろえて、そういう逆襲を受けないような態勢を整えて質問しなければならぬようになります。これは言葉が激しくなりましたけれども、あなたがさきに買つた言葉でありますから、何も惡意があつて申し上げるわけでないが、そういう点をひとつ含んでおいてもらいたい。最後にあなたのおつしやつた、私が鉄道を伏魔殿かのように言つているという点に対する私の態度をはつきりするために、もう一度繰返して申し上げますが、官吏の中にはほんとう國民の公僕としての責任を感じて、困苦欠乏の中から、一生懸命に働いている多くの方々がおいでになる。その方々にはわれわれは満腔の感謝を捧げておる、こういう前提で申し上げておる。しかしその蔭にかくれてこういう者があるということを申し上げたのでありますから、もし私が今申し上げたことに疑点があるなら、ひとつ大藏大臣からお聽きくださるか、おひまのときに速記をお調べいただきたい。繰返して申し上げますが、あなたが最後に逆襲されたような意味で、私は質問申したのではないことを申し上げて、私の質問を終ります。
  114. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 田中松月君からの質疑中に、政府への資料の要求がございましたが、これは委員長より政府へ要求いたします。そのついでに重ねて交通公社に関するいろいろな詳しい資料、並びに小山亮という人を代表とする海運会社が、運輸省関係の会社にございますならば、併せてそれに関する資料も、予算委員会が分科会にはいりますまでに、御提出を願いたいと思います。次に東井君、日本銀行副総裁への質疑の要領を、簡單にお述べ願いたいと思います。
  115. 東井三代次

    東井委員 川北日本銀行副総裁を煩わしまして、まことに恐縮に存じます。御多忙中にわざわざ御出席をいただきまして、感謝にたえません。私は時間の都合上、ごく簡單に質問の要領を申し上げたいと思うのでありますが、お尋ねいたしたいのは三点であります。第一点は借入金の限度額及び大藏省証券発行の限度額の拡張は、收支均衡策と矛盾しないかということであります。第二点は、新物價改訂と日銀の金融政策についての御所見を承りたいのであります。第三点は、インフレーションに対するお見透しを承りたいのであります。  まずその第一点でありまするが、目下この委員会で審議をいたしておりまする昭和二十三年度の予算案は、その実行過程におきまして、昨年以上の收支の時期的ずれを來しまして、この面からくる大藏省証券の発行や、各種特別会計の借入金の増加は、通貨膨張の要因となりまして、やがてそれが原因となりまして、いよいよインフレーションを高進せしめ、物價を予想以上に上昇せしめるのでありまして、追加予算の必要を必至ならしめると思うのであります。そこでかような結果を招來せしめないように、これを未然に防ぐためには、どうしても第一には、租税收入が毎月平均して予定額通り徴收されますように、強力に実行されなければならないこと、同時にまた第二には、支出そのものの支拂延期だけでなくて、発注そのものも相当抑制されなければならぬということであります。かかる努力によりまして、背水の陣を布いて、大藏省証券や、各種借入金の限度を、できるだけ最小限度に食い止め、その限度を拡張しないことが必要である。こういう努力を拂わないで、いくらでも限度を拡げていくということは、收支不均衡の赤字をそのまま安易な方法金融に轉嫁するということになります。すなわち特にこれらを引受けられる日本銀行に轉嫁することになりまして、これがために、日本銀行はまた中央銀行としての総合的な金融政策をとられる上において、すこぶる大きな障害をこうむることになると思うのであります。そうして遂には政府の附随的な金融機関になつてしまうようなおそれが、多分にあると私は思うのであります。この点に関しまして、從前からの御経驗から、日銀としていかなる御所見をもつておられますかを、お伺い申し上げたいのであります。  お尋ねいたしたい第二の点は、今度の新しい物價改訂と、日銀の金融政策についてであります。すなわち今度の物價改訂と、これから日銀としてとられる金融政策についてお伺いをするのであります。政府は今度基礎物資には價格調整費を出して、平均七割、消費財も平均七割の物價改訂をしようとしておるのでありまするが、私は通貨膨脹の点から考えまして、このマル公七割の値上げという新物價体系は、あるいは崩れるのではないかと思うのであります。なぜそういうように申し上げるかと言いますと、第一は政府の提出いたしておりまする國家及び地方財政資金需要総合予定表というものがありますが、この予定表によりますと、年度末までには約八百億円の公債及び借入金の必要が予定されておるのであります。第二にはマル公の七割値上げによります諸物資の生産及び流通に必要とされます運轉資金の需要は、今月中に予算案が通過いたした場合、七月中旬ごろからますます激しくなり、その額はおそらく基礎物資だけでも数百億円に達するのではなかろうかと思われるのであります。第三は本年度の租税收入は、約二千六百億円、歳出総計は三千九百九十余億円でありまするが、今年の四月、五月の暫定予算の実績を見ますると、本年度の租税收入の予定額は、予算額の約四〇%に相当する約百五十億円程度が、租税收入としてはいつておるのであります。歳出の面におきましては、予算額の約六〇%、すなわち六百億円余が歳出として支出されているのであります。すなわち四月、五月の両月で、すでに百五十億円の收支のずれが起つておるのであります。さらに今後のことを考えますと、詳しい数字は時間の関係上省きますが、最小限度毎月百億円の收支の赤字が生じてくると思うのであります。そこで十月までには約六百億円と予定されている大藏省証券の発行高の九割までが発行されざるを得なくなる。この收支の時期的ずれによりますと、約五百億円以上の赤字が、この大藏省証券の発行によりまして賄われるのではなかろうかと、想像するのであります。  以上を総合したしますると、九月までには通貨はいかに最小限度に見積つてみましても、現在の二千二百億台から、約三千億円台に膨脹するのではなかろうか。毎月平均八%以上の膨脹速度を示し、物價もまたこれに從つていくというように想像されるのであります。こういう状況がもし予想されるといたしました場合、日本銀行としては、いつまでも現在の融資、しかもその方針を維持されることは、それは結局効果がないのではないか。日銀といたしましては、まことに苦しい立場にお立ちになると思うのでありますが、その金融政策からするインフレ抑制策は、この予算そのものがもつておりまするインフレ的傾向のために圧倒されてしまうのではなかろうか。そういうように私は懸念されるのであります。そこで経済中間安定第一期の開始時期でありまする今年十月までの、いわゆる準備期間中におきまして、日本銀行は新物價体系と新予算の実行に当面いたしまして、どのように善処されるお考えがおありになりましようか。日銀の金融政策は、わが國財政の上におきまして、きわめて重要なる意義をもつているものと、私は考えるのでありますから、この点川北副総裁に御所見を承りたいと思うのであります。  最後にインフレに対しましてお見透しを承りたいと思うのであります。
  116. 川北禎一

    ○川北説明員 お尋ねにあずかりました三つの問題につきまして、私の所見を申し合げましてお答えにかえたいと思います。  第一の問題、大藏省証券の発行、その他各特別会計の一時借入金の限度増加が、予算の收支均衡にいかなる影響を及ぼすかという点でございます。大藏省証券の発行、特別会計の一時借入金は、いずれも歳入の後れを一時的につなぐために行うものでありまして、財政收支が時期的に完全に適應せられるのでありまするならば、本來必要のないものでございまするが、歳出入の期節的食い違いからいたしまして、ある程度やむを得ないという点は、私どもも認める次第でございます。しかしながら、この歳出入の時期的ずれが、あまりに大きくなりますと、その間通貨の膨脹、物價の高騰を來します。しかも一度騰貴いたしました物價は、爾後通貨の收縮をかりに行いましても、もとに返らず、結局インフレ的な傾向を助長いたしまして、場合によつては、これがために追加予算の必要を生ずる、從つて予算の均衡を破るおそれがあると考えます。また強いてこの均衡を回復するために、ある時期に一時的に歳入の徴收を強行しなければならぬような事態になりまして、これはまた一般経済界に大きなる影響を與えてまいります。このことは昨年度の二十二年度の予算執行の面におきまして、御承知の通り第三・四半期、第四・四半期との間に、金融界に大きな対蹠的な影響を及ぼしました事実によつて、私ども切実に感じたところでございます。若方計数的に昨年度の実績を申し上げてみますと、昨年の四月から十二月までの間に、通貨が千三十億増加いたしました。その九二%、九百八十億というものが、資金の出ました径路から申しますと、財政資金の撒布超過によるものであります。もつともこれは申し上げるまでもございませんけれども、これが通貨発行の原因ではないのでございまして、もしこれだけの資金が政府から出ませんければ、その代りが民間から出まして、必要な通貨を賄わなければならぬという事実はあるのであります。蓄積資金の大部分、すなわち約八割までをまず民間資金に使いまして、残りの二割を公債と復金債券の消化に充てておりますので、民間資金は大体蓄積資金で賄う。その代り政府の赤字資金が日本銀行から出るという結果になるのであります。かりに政府の資金がこれだけ撒布されませんといたしましたならば、通貨の必要が一面で起ります以上は、今度は民間の貸出しによつて、ある程度は出るということは御承知を願いたいと思うのであります。しかし径路から見ますと、四月から十二月まで千三十余億、うち九百八十億が財政資金の撒布超過によりまして民間資金が賄われており、民間資金の増加になつておる。こういうふうになつております。これは大体特別会計の赤字と歳出入の時期的ずれによるものでありまして、推算いたしますと、九百八十億のうち歳出入の時期的ずれと認められるものが約五百二十億円くらいに及んでおると予想されます。特に問題になりますのは、大藏省証券で賄いました一般会計の歳出的ずれでございまして、十二月まどの租税收入は、予算の三割三分、四百四十八億円にすぎなかつたのでありますが、この間歳出の方は、予算の五二%、千百七億円に達しました。その差額が大藏省証券の発行によつて賄われ、十二月一箇月だけで二百三十八億円に増加いたしたのであります。一月初めには、大藏省証券の発行は、最高三百七十億の残高になりました。その後本年に入りまして、御承知の通り強力な徴税が行われまして、この歳出のずれを完全に一月から四月の間に消滅いたしました。そのため大藏省証券もゼロに返つたのであります。一般会計は歳入欠陷を生ずることなく、決算ができることになりました。後ほど申しますが、これによりまして通貨も小康状態を示しました。物價も過剩購買力が抑えられまして、横ばいの状態にあるという、いわゆる一月から四月の最近までの表面的の安定状態を示しておるわけでありますが、その主因は、おもに税を中心といたします政府撒布資金の関係による特別なる理由によるものと、私どもは解釈しております、しかしこの新年になりましてから、一月から四月までに非常に多額の税がとられました関係で、農村方面には資金難を惹起いたしました。また産業界一般の大きなる金詰りに拍車をかけてまいりましたことも、御承知の通りでございまして、やはりここに政府の收支の均衡を得なければならぬという点が痛感されるのであります。本年度の予算の実行にあたりまして、昨年度の予算の運営の実績から考えまして、私ども特に希望いたしますことは、この歳出入の時期的調整に遺憾なきを期せられたいということでございます。そのためには政府資金收支調整委員会という機構がございますが、この機構を大いに活用していただきたいと希望いたしますとともに、まずもつて大藏省証券の発行限度、あるいは各種特別会計の一時借入金の限度を極力圧縮することに努めていただきたい。こういうふうに考えるのであります。各種特別会計の借入れ増加の内容には一々触れませんが、この問題は大体その程度でよろしゆうございましようか。  次に今回の物價改訂と金融関係、特に日本銀行の金融政策の関係でございます。今回の物價改訂でいくばくの所要資金の増加が見込まれるかということは、いまだ正確に推算できないのでありまして、物價廳の方の案によりますと、公定が七割、やみ價格といたしましては、今日まで月に三、四%程度しか上つていないから、これは格別見ない。そういたしますと、自由價格によるもの七割五分と、公定價格によるもの二割五分というウエイトをかけまして、價格体系全体から見ますと、平均して二割の資金所要量が殖えるというふうに、一應推算ができておるようであります。問題は公定が7割、やみが三、四%という程度の騰貴制止まるものかどうか、ここに問題の中心があると思うのであります。もしこれを公定が八割、やみが二割上るといたしますれば、平均いたしまして、三割五分程度の資金量の増加になります。もし公定が倍、やみが三割ということになりますれば、四割七分程度の資金量の増加になるわけであります。現在銀行の新勘定の貸出しは、約二千五百億でございます。この中で特に動いております運轉資金がいくらあるかということは、私どもにもよくわかりませんが、かりにこれを千五百億といたしまして、その二割とすれば三百億、三割とすれば四百五十億、大体三百億ないし五百億程度の物價改訂によね資金量の増加というものが考えられるのであります。これは金融機関の面において影響いたします金額であります。少くとも公定價格によつて生産並びに取引をいたします事業の所要資金は、七割ないし十割の増加をみることは明らかであります。しかし原材料の仕入金が、改訂によつてよけいかかりますと同時に、製品代金も、やがて値上りで殖えて、收入金も殖えるのであります。ただその間に若干の時期的ずれがございまして、事業者の所要資金は一時増大する。その間の資金需要が一般的に増加するということが、金融の問題になるわけであります。また同じことが金融機関の資金繰りについても言えるのでありまして、金融機関としては物價改訂によつて貸出資金の需要が増加いたします。しかし同時に一方においては預金の量もまた價格改訂によつて増加する。それによつて貸出増加の相当部分を賄い得るわけであります。しかし、これまた貸出資金の需要の増加と預金の増加との間に時期的ずれがありますので、その間金融機関としては、資金繰りのきゆうくつないし不足を感ずるものであります。今日すでにどの金融機関も、預金の増加する以上に貸出需要が多く、資金不足、金繰難という声が出ております。そうして日本銀行の借入金に相当依存しているのでありますが、さらに今回の物價改訂の時期的ずれの資金需要によりまして、その傾向が一般金融機関に加重するということが言えるのであります。同時に復興金融金庫は、今日まで價格改訂がないために、石炭、鉄鋼、肥料等の基礎産業に対しまして、大きな赤字の金融をいたしておりましたが、これは今回の改訂によつて、その面の資金の調達は減少する。会社としては、これを消費者に轉嫁することによつて赤字金融をすることが少くなる。それらの点をいろいろ考慮してみなければなりませんので、当初申し上げました通り、今回の物價改訂によつて、まだ物價改訂自体がどうなるかもしれぬ問題でございますが、物價改訂によつていくらの資金が所要されるかということは、容易に推測しかねるのであります。日本銀行といたしましては、今回の物價改訂による時期的ずれの資金需要増加に対しましては、その資金が筋の通りました資金である限り、金融機関の資金不足尻を見ていく方針であります。日本銀行といたしましては、経済再建のために、眞に生産に必要な、あるいは取引に必要な資金の需要につきましては、從來からできるだけ融資の便をはかつてまいつているつもりでございます。すなわち市中銀行がこのような資金を融通するにつきまして資金が不足する場合には、これを日本銀行貸出金によつて供給しているのであります。実際の数字を申し上げますと、昨年の第三・四半期は、政府の撒布超過の資金が十、十一、十二、三箇月で六百五十億でございましたので、民間の貸出しはほとんど増加いたしません。約五十億減少いたしております。本年一月から三月は、先ほど申し上げました通り、政府資金の関係は、まつたく裏が出まして、約二百五十億引上げ超過になつておりますために、市中の資金が不足いたしまして、日本銀行は一月から三月までに二百八十億の市中銀行への貸出をいたしております。インフレーションの克服、抑制を方針といたしております以上、金融一般にゆるめるということは許されないことであります。しかしながら、同時に玉石混淆して緊急事業の眞に必要なる資金の調達に支障を與えるということは、また許されないことでありますので、これがために重点的に資金の融通をするという方針を、今日まで日本銀行としてはとつておる次第であります。すなわち緊要事業に対する資金の順便を極力はかるとともに、不急不要資金の供給は、これを抑制するという方針をとらねばならぬことは当然であります。具体的措置の要点を御参考に申し上げますれば、昨年の春以來産業界の人々、大事業家から中小商工業者の方々に、定期的に日本銀行に集まつていただきまして、あるいはまた随時会合を開きまして、その生産状況、並びに金融状況をよく伺いまして、資金の不当の梗塞のないように努めております。また昨年の春以來日本銀行本、支店に融資斡旋部というものを設けまして、資金の需要者、その取引銀行、日本銀行と三者一体となりまして相談して、必要な資金ならば、その供給につきまして、銀行間に斡旋をいたしますと同時に、資金の不足する場合には、日本銀行からこれを供給することにいたしておるのであります。しかし結果から申しますと、政府の大きな撒布がありましてときに、銀行はその預金が殖えますために、日本銀行の貸出しを求めることが少い。政府の撒布貸金が少い場合に、その逆が起るというような結果になつてまいるのであります。またスタンプ手形、商業手形、貿易手形、公團手形、復金保証手形、この春からは農業手形等、各種の手形制度を奨励したしまして、一面信用制度の回復をはかるとともに、他面先ほど申し上げました所要資金の内容を、これによつて明確にいたしまして、必要資金の重点的融通をはかる。こういう方針をとつておるのであります。一般金融機関といたしましては、この物價改訂一巡後は、結局預金の増加によりまして、ある程度貸出資金を賄うことができると思います。またそういうふうにならなければならないと思います。貯蓄の増強は、その意味においても大いに努力されなければならないのであります。またさらにもし今回の物價改訂がうまくいきませんと、改訂後いくばくもなく、賃金と物價との惡循環が再び始まるというようなことになりますと、企業はまた赤字が出るということになり、金融機関といたしましては、これら企業の所要資金のみが殖えて、預金への還流が少くなるということになりまして、インフレがはげしくなり、賃金、物價の惡循環が始まるということになります。そうなりますと、通貨や貸出しがいくら出ても、常に資金不足、金融のきゆうくつをますます感ずるようになるということは、インフレの歴史の示すところであります。これを要するに、今回の物價改訂後の金融情勢いかんは、今後の物價賃金の改訂がうまくいくか、あるいは反対にやがてまた惡循環を始めるかということにかかつておると思うのであります。うまくいきます場合には、二、三箇月の時期的ずれさえ特別に金融の順便をはかりますれば、あとは改訂によつて一時取引資金量は殖えますが、殖えたなりにまた自動的に回轉して、新規追加資金の供給は必要がなくなります。これはうまくいきました場合であります。その反対に改訂がうまくいかないで、さらに惡循環を始めるといたしますならば、資金の回轉はいつまで経つても平常化せず、すなわち資金の需要のみが殖えて、金融機関への環流が十分行われない。從つて常にあるいは一層金融機関の資金の不足の状態が続くということになるわけであります。  最後に第三の問題、インフレの見透してついてでございますが、先ほどもちよつと触れましたように、本年にはいりまして、通貨の膨張が著しく減退し、また実際に物價も主食等一、二の例外がございますが、大体において横ばいの状態であります。また大きな赤字を予想されました一般会計の收支も均衡を得るというようなことは、当面の経済の状態が非常に安定した、いわゆる中間安定という考え方が一部に行われたくらいでございます。一月から五月までの通貨の発行は四十三億円、今月は五、六十億の増加が見込まれますので、一月から六月まではおそらく九十数億、百億までの増加に止まると思います。前年同期の半年四百三十億に比べまして、きわめて少い発行高でございます。物價も、これは実際物價でございますが、平均いたしますと、約一割八安の騰貴になつております。しかしながら、これは内容的に見ますと、通費は非常にはつきりした実数が出ますので問題はございませんが、物價指数というようなものは、よきにつけ惡しきにつけ、誤りやすいものでございまして、総平均をいたしますと、一月から五月まで一八%の騰貴であります。しかしながら、内容を見ますと、なかなか重要なものがかなり上つております。これは一月から五月までの実際物價でございます。騰貴の大きなものは米二割、麦四割、牛肉二割八分、季節的な関係もございますが、大根、いもが六、七割上つております。繊維が一割五分、靴、石けん等のようなものは五、六割、一方低落しておりますものに砂糖の五割八分、眞空管の一割七分、電球の七分、そういつた小さい機械とか、日常生活にあまり切実でない日常生活品は、御承知の通り店頭にもかなり出ておりますように、價格も下りぎみでございます。それらを平均したしますと、結局約一割八分というような騰貴にこの五月がなつております。とにかく今までにない安定傾向をこの一月ないし四、五月の間は示してまいつたのでありますが、この情勢の主たる原因は、先ほど申しましたように、二十二年度の租税徴收に起因しているのでありまして、すなわち二十二年度の租税徴收が本年一月、四月の期間に集中し、從つて政府資金の対民間関肩が第三・四半期、すなわち昨年十月から十二月には六百五十億の撤布超過でありましたものが、第四・四半期、すなわち本年一月から三月には、反対に二百五十億の政府資金の引上超過になつた。終戰以來政府の資金引上超過になりましたのは、この期間だけでございます。なおこれに加えまして、御承知の二十三年度の予算がまだ暫定予算でございまして、本格的に予算が動いていない。この点からまた預金が伸びない、金融がきゆうくつであるという状態になつておるのであります。そういう事情でございますので、最近の経済の状態が一服しておるという状態は、特殊の原因によるもので、必ずしも一般的な傾向と見得ないと、私ども考えております。すなわちこれをもつてインフレが終熄に向うとか、あるいは中間安定が得られるとかいうふうには考えられないと思うのであります。当面問題になつております、たとえば物價の改訂、鉄道運賃、郵便料金の大幅引上、あるいは二十三年度の一般会計四千億の予算、それから政府特別会計の赤字の收支、民間企業の実態等を考えますれば、資金面、價格面から申しましても、インフレの前途に重大なる関係をもつ多くの重要問題が山積しておるように思うのであります。これらの点につきまして詳述することは畧しますが、とにかくそれらの関係によつて、目先金資の所要量が殖え、通費がさらに膨張し、物價が公定のみならずやみ物價の引上となるおそれが多分にあるのではないかと考えるのであります。特に今回の物價改訂は、予算の実行上、あるいは國民生活上、重要なる関係をもつておる問題でございます。今回の物價改訂が当面通貨膨張を來すことはある程度やむを得ないと思うのであります。またその金融措置も、それだれであれば、これは簡單でございますが、しかしこの物價改訂によつて、それ以後物價の安定が得られるかどうかという問題、そこに財政につきましても、通貨あるいは國民生活、賃金の関係につきましても、大きな問題が横たわつておる。今回の物價改訂によりまして、原價をペイする價格が一應定められ、あるいは政府の補給金によつてそれが補われ、一應企業の赤字が解消する。あるいはその面におきましては、それらの企業の金融難も緩和すると思います。またそれが今回の改訂の目的であると思います。しかしはたしてその物價あるいは定められました信金が均衡を得て、そのまま続き得るかどうか、もし今回の物價改訂によつて賃金物價を安定せしめ得ないといたしますと、ここにインフレの見透しについて悲観的ならざるを得ないのであります。將來の見透しはなかなかむずかしいのでございます。私もはつきり申し上げかねます。インフレの問題は、廣く経済全般について考えなれればならぬのであります。日本のインフレの根源が生産の過小、從つて物資供給の不足に対して需要が過大である、從つて國民生活が不安定である、その間賃金物價の惡循環を生じ、物資に見合わない、財政方面、産業方面の資金、通貨が増発されておるというところに、インフレの根源があると燃し上げたいのであります。生産物資の供給でございます。生産な低位な水準で急速になかなか打開しがたいのであります。この三月に鉱工業生産が日支事変直前の三割九分という数字示しており、また四月が四割一分という好成績を示しました。これは電力の関係、石炭が暖房用がなくなつて産業方面に向きました関係その他によりまして、鉄鉱、肥料、石炭以外の関係は、すベて生産増加を示しましたが、それでもなおかつ四割程度、イタリーが七、八割、フランスは百二、三十数パーセントというところまで回復しております國情から比べまして日本の生産状態は、まだまだ困難な状態にあることは明らかでございます。この点で最も問題になりますのが、海外の援助による原材料の輸入いかんでございます。これらの見透しにつきましても、すでに御承知のことで申し上げません。なおこの生産に私どもが最も関心をもつております労働事情、これは私は生産の面におきましては、ある意味において原材料の問題、あるいは海外の援助以上に重大な問題であると考えております。物價と賃金の関係、どうしてこの両者の惡循環を遮断するか。これは廣く言われております通り、実質信金の確保以外にないのであります。それがためには生活必需物資の配給確保が必要であるわけでありますが、それは現在の國内生産では、ほとんど不可能でありますから、この点についても、海外の援助いかんが問題になる。主食の増配は、この関係において、当面きわめて重要な影響をもつものでありますが、また主食のほか副食、衣料、燃料等の生活必需品につきましても、ある程度の増配が行われなければ、実質賃金の安定はなかなか困難であると思います。同時にまたわれわれ國民といたしましては、日本経済の実情に鑑みまして、勤労と耐乏との生活國民はもつともつと努めなければならぬ。最近アメリカから参りました人たちの言うことは、大体これに盡きておりますが、確かにそういう点が反省されるべきだと私は考えております。  財政の問題は、もはや繰返すまでもございませんが、インフレーションには大きな関係をもつております。一般会計は收支均衡をするごとく編成されましたが、インフレーション下におけるとはいえ、はなはだ厖大なものであります。これに地方財政の二千億、特別会計の赤字の七、八百億というものを加えて考えてみますと、はたしてそれだけの收入が確保されるか、今後の歳出増加をきたすことはないか、歳入と歳出の時期的なずれの大きなものが生じないか、そういう点が問題でございます。從つてやはり今後におきましても、財政面からのインフレを進める可能性が少くない。現に、先ほど申しましたが、昨年二十二年度の会計年度、四月から今年の三月までの状態で申しまして、この間の通貨膨張千三十億、その七割に当る七百三十三億というものが、すなわち財政の赤字で、日本銀行の信用膨張が行われております。この一年間政府関係の信用膨張の内容は、大藏省証券で五十七億、國鉄の借入金がこの間に百七億、これは主として運轉資金でございます。ほかに建設資金が七十五億、通信会計で借入が四十二億、公債が二十五億、ほかに糧券が四百億、貿易関係に五十二億、その他を加えまして約七百九十億というものが、日本銀行の信用膨張に政府関係からなつたのであります。私はやはり今年も大体昨年と同じような傾向を財政面から中央銀行に與えるのではないか、つまり通金信用膨張の原因になるのではないか、こういうふうに考えるのであります。  最後に企業金融の面につきまして、インフレーションとの関係を申し上げてみたいと思いますが、現在一般的に企業は過剩雇用でございます。また不急不要の部面における企業数が、あまりにも多いと考えられます。これは経済の安定を妨げ、生産の能率を阻害し、また過剩な資金を流通せしむる重要なる原因になるのであります。この点に関しまして企業の整備合理化が必要でございます。これは久しく叫ばれておりますが、実行がなかなか困難のようであります。政府を初め、行政整理特別会計の合理化はなかなかできない、民間企業も大体そうであります。もちろん失業者に対する再配置その他の失業対策を一方で講じなければならないが、それもなかなかむつかしい。それらの点につきまして非常な困難がありましよう。しかしできるだけ企業の合理化の面に進みますことは、インフレーション抑制の上にどうしても必要であると思います。これに対する金融関係は、御承知の融資規則というものが行われておりまして、金融機関もこの線に沿い、緊急事業には金融するが、不急不要の事業には金を出さぬこととなつております。あるいはまた最近は企業の赤字が漸次殖えてまいつておりますので、金融機関といたしましても、若干警戒氣分があると思われます。これもある程度やむを得ぬと考えます。そういう次第で金融は引き緊められがちでございます。しかし先ほど申しましたように、必要な資金は出していかなければなりませんが、大体民間産業に対する金融はゆるまない。從つてこの面から著しくインフレに拍車することはないのじやないか、こういうふうに考えるのであります。しかし生産増加と見合う産業の資金需要は、金融といたしましては、当然これに應ぜざるを得ないのであります。その間の金融措置は、先ほど申しましたような次第でございます。結局今後の見透しといたしましては、絶対的にあるいは客観的に断定することはすこぶる困難でありまして、それは多分に海外の援助ということ、そうして一方國内におけるいろいろな努力、つまりインフレに対する各総合施策の成否いかんにかかつておりますので、軽々に予測することは困難でございます。ただ大局的に申しまして、急速にインフレーションが終熄する、あるいは完全に終熄するということは、とうてい考え得られない、と同時に、現在の日本は、かなり國内統制も行われております。対外関係も、貿易その他為替、すべて管理されている実情でございますので、現在の中國におけがるごとく、あるいはよく例に引かれます前大戰後のドイツにおけるがごとく、急激なるインフレーション、ましてインフレーションの破局というようなことは想像し得ない。実際の見透しといたしましては、今後もある時期まではなお漸進的にある程度インフレーションは進行するものと考えております。しかしその間生産の回復と海外の援助とによつて経済の基盤が健全化する。それに應じて漸次安定する。通貨金融の政策は、その経済の基盤の回復を待つそれに対應して通貨信用の面から貨幣的にこれを崩壊せしめることのないようにチェックしていくということになると考えるのであります。  まことに杜撰な卑見でございまして、お答えになりますかどうかわかりませんけれども、一應これをもつて終ります。
  117. 青木孝義

    ○青木(孝)委員 いろいろとお説を拜聽いたしましてありがとうございました。ただ私聽き漏らしたかもしれませんが、四月から五月の二箇月間の民間貯蓄の状況はいかなる程度になつておるますか。その点だけちよつとお伺いいたします。
  118. 川北禎一

    ○川北説明員 数字を申し上げませんでしたが、政府の税が大きく徴収されました関係と、そこへ新年度の予算暫定予算で、あまり支出がありません関係で、問題なく非常に惡いのであります。大体三月というのは決算月でもございますので、多少ウインドー・ドレッシングがありまして、非常に膨れるのであります。それで四月は大体の銀行預金はマイナスの傾向でございます。五月になりましていくらかよくなるかと思いましたが、それほどよくならない。数字がまだ四月までしかございませんが、昨年の十二月は政府資金の撒布の関係で四百二十億貯蓄が増加しております。これはほんとう意味の貯蓄ではないのであります。撒布された資金が一時銀行に滯留しておるだけであります。それまでは大体百五十億ないし百八十億の増加であります。今年の一月が百八十億、二月が百億、三月が二百三十億と出ましたが、四月は三十億、五月は大体四月よりも増加している銀行が多いと思います。
  119. 東井三代次

    東井委員 川北日本銀行副総裁から御懇切な御答弁をいただきましてまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
  120. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時四十分散会