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1948-06-16 第2回国会 衆議院 予算委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十六日(水曜日)     午前十一時五十二分開議  出席委員    委員長 鈴木茂三郎君    理事 庄司 一郎君 理事 稻村 順三君    理事 川島 金次君 理事 押川 定秋君    理事 小坂善太郎君 理事 今井  耕君    理事 大原 博夫君 理事 東井三代次君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    植原悦二郎君       角田 幸吉君    古賀喜太郎君       島村 一郎君    鈴木 正文君       鈴木 明良君    西村 久之君       原 健三郎君    本多 市郎君       海野 三朗君    岡田 春夫君       加藤シヅエ君    黒田 寿男君       田中 松月君    田中 稔男君       中崎  敏君    中原 健次君       矢尾喜三郎君    梅林 時雄君       川崎 秀二君    田中源三郎君       松本 瀧藏君    大神 善吉君       野坂 參三君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         農 林 大 臣 永江 一夫君         労 働 大 臣 加藤 勘十君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君         國 務 大 臣 野溝  勝君         國 務 大 臣 一松 定吉君  出席政府委員         経済安定本部物         價局長     谷口  孟君         経済安定本部財         政金融局長   佐多 忠隆君         総理廳事務官  中田 政美君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君  委員外出席者         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算  昭和二十三年度特別会計予算     —————————————
  2. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 これより開会いたします。  昨日の角田君の質疑継続をいたします。角田幸吉君。
  3. 角田幸吉

    角田(幸)委員 昨日建設院政府委員に対しまして、昭和二十三年度の道府縣災害復旧補助費の五十二億の内訳お尋ね申し上げたのでありますが、この内訳お答え願いたいと思います。
  4. 中田政美

    中田政府委員 お答えいたします。二十三年度におきまして、都道府縣へ補助いたします災害復旧費補助所要見込額は、二十年に起りました災害、二十一年及び二十二年に起りました災害、この三箇年に対しまして五十二億四百万円を予定いたしております。そこで二十年度、二十一年度災害に対しまする分で、すでに過年度におきまして補助しました残りの額を、今後政府においてこれを補助しなければならぬ残りの分としまして、約十七億円もあるわけでございますが、しかしながら、二十二年度災害が非常に大きかつたために、五十二億四百万円の配分につきましては、この三箇年の災害全体に対しまして、最も緊急な復旧を要するものを優先的に選びまして、この五十二億四百万円を最も効率的に使う予定でございます。そこでこの三箇年分を各年度にいくらやるかということは、予算が成立するとともに檢討いたしまして、適当な分配をいたしたいと考えております。
  5. 角田幸吉

    角田(幸)委員 それでは二十年度、二十一年度南海災害についてはやらない。これを補助しない。こういうことを言明なさることができますか、これは総裁にお伺いした方がいいと思います。
  6. 一松定吉

    一松國務大臣 ただいまのお尋ねでありますが、政府委員からお答え申し上げましたように、二十年度、二十一年度、二十二年度災害に対しまして五十二億四百万円というものを充当する考えであります。南海災害はこの三年のうちに包含せられておるのでありますから、この予算通過の曉において、重点的に適当な按分をいたしたいと考えております。
  7. 角田幸吉

    角田(幸)委員 そうすると今政府委員から説明されました十七億、これは二十三年度においては重点的に配分はいたしましようが、十七億だけは予定なさつておる。こういうことまで御言明なされるのかどうか。この点もう一度念を押して総裁に承りたい。  なお十七億を重点的にやるのじやない、全部やるのじやないというならば、その見込額補助費だけで二十年度、二十一年度災害が完全にできるのかということまでお答えを願つておきたいのであります。
  8. 一松定吉

    一松國務大臣 二十年度、二十一年度、二十二年度における災害復旧に関しまして、五十二億四百万円というものを見込んで、これで始末していきたい。かように考えておるのでありまして、二十年度、二十一年度に対してこれこれ割当てるのだということは、まだきまつておりません。それらのことは、この五十二億四百万円において、重点的にどちらを先に復旧することが最もよろしいかという点をよく勘案いたしまして、しかる後にこれを按分するつもりであります。
  9. 角田幸吉

    角田(幸)委員 もう作付が終つたのに、これからそれを考えるというようなことでは本当の政務の運行ができないと思うのでありますが、それで差支えありませんか。
  10. 一松定吉

    一松國務大臣 予算が通過いたしませねば、どれだけの金をどの方面に重点的に配分するかということは、結局きまらないのであります。予算がきまりました上で適当に按配いたします。
  11. 角田幸吉

    角田(幸)委員 それではこれらの調査の結果、二十年度、二十一年度部分についてどうしても重点的に十七億というものは配分しなければならないという結論に到達した場合には、十七億はそれに充てるのでありますか。
  12. 一松定吉

    一松國務大臣 それは予定であります。予定でありますから、この予算が通過したときには、その予定の範囲内にこれを振当ててするのがよろしいか、あるいはそれよりも二十二年度災害方面に向つて重点的にすることが、政務の遂行上よろしいかという点は、諸般情勢をにらみ合わせてこれを按分いたすつもりであります。
  13. 角田幸吉

    角田(幸)委員 諸般事情を勘案いたしました結果が十七億なにがしをどうしても二十年度、二十一年度に充てなければならぬという結論に到達いたしました場合には、十七億は充てることが当然であろうと思うのでありますが、総裁はどうお考えになつておりますか。
  14. 一松定吉

    一松國務大臣 それは予算を請求するについて、それだけの金を請求しておるのであつて、この十七億というものを二十年度及び二十一年度に割当ててこれを使用するということはきまつておりません。
  15. 角田幸吉

    角田(幸)委員 きまつておらないといつて、あなたは今、諸般事情を勘案して、どうしても重点的にこれに充てなければならぬという結論に到達した場合には、それに充てることを言明なさつておる。今のような答えはできないと思います。きわめて無責任だと思います。あなたは私の質問に対してぴつたり答えておられぬ。それではもう一度繰返します。二十年度、二十一年度災害について、どうしてもこれは重点的に二十二年度よりも先に充てなければならぬという結論に到達した場合でも、なおあなたはそれを充てるのであるか充てないのであるか、もう一度言明していただきたい。
  16. 一松定吉

    一松國務大臣 二十年度、二十一年度、二十二年度災害復旧に関して、五十二億四百万円というものを予定しておるのでありますから、今あなたの言う通りに二十年度、二十一年度災害について二十二年度災害よりも重点的に復旧する必要があるという場合には、もちろんそういたすのでありますが、それらのことは、先刻來申しましたように、諸般事情とにらみ合わせて、どちらを先にすることが正しいかということについて按分をする。こういうのです。決してそれを二十年度、二十一年度にこういうふうにきめておるから、その通りに、そのきまつたものを二十年度、二十一年度にもつてつて、二十二年度にそれよりも重点的にやらなければならぬものがあつても、それは後回しにして、二十年度、二十一年度を先にするというのではありません。この三箇年度の間において生じたる災害について五十二億四百万円を請求しておるから、これが通過したときに、この三年度災害についてどれを先にやることがよろしいかということは、諸般情勢を勘案して適当に配分する、こういうことです。
  17. 角田幸吉

    角田(幸)委員 いろいろ押問答いたしましたが、総裁の言わんとするところは一應了解いたしました。というのは、こういう意味において私は了解するのであります。もし二十二年度災害よりも二十年度、二十一年度の方がさきにやる必要がある、諸般事情上重点的にやるべきだという考えのときには、そちらをやると言明なさつたとの意味において、総裁お答えを私は了承いたします。  そこでさらにお尋ね申し上げたいことは、二十三年度においてすでに工事がなされている部分、すなわち四月分と五月分において、國費をもつて災害復旧したところのものはどれだけか、地方費としてどれだけをやつておるか、この点について伺いたいのであります。
  18. 中田政美

    中田政府委員 四、五の暫定予算による災害復旧は、約八億ぐらいではないかと考えております。ただしもつと詳細な数字は、調査の上お答えいたします。
  19. 角田幸吉

    角田(幸)委員 私は四月分、五月分の暫定予算についてお尋ね申し上げているのではありません。私は予算委員で、その計数は承知しております。私のお尋ね申し上げた意味は、四月、五月において國費をもつてどれだけの災害復旧工事をやつているか、その費用を示していただきたい、なお地方費としてどれだけのものをやつているか、その計数をお示し願いたい、こういう質問であります。
  20. 一松定吉

    一松國務大臣 今の御質問に対しましては、詳細に調査いたしまして、後刻適当な時機に答弁させていただきます。
  21. 角田幸吉

    角田(幸)委員 この問題に対する御答弁がない限り、私のこれからの質問継続はできませんから、御答弁のあるまで一應中止いたします。きのうも同樣なことを繰返しておりますが、私は建設院に対して遺憾の意を表しておきます。
  22. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 午後答弁ができるそうですから、午後どうぞ。中原君、安本長官がまだお見えになりませんけれども大藏大臣に対する御質問からさきにしていただきますか。——それでは中原健次君。
  23. 中原健次

    中原委員 実は安本長官お尋ねしまして、その関連大藏大臣の御意見を伺いたいと思うのでありますが、今度の予算の面で、一番何人も重視いたしておりますのは、物價に対する認識であると考えるのであります。つきましては、この予算関連いたしまして、鉄道、郵便、タバコ等の値上げが取上げられておりますが、これらの各種の料金の引上げに関連しまして、やみ物價がどういうふうに動いていくか、これについての大藏大臣の御所見、見透しというようなものを、一應伺つてみたいと考えます。
  24. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。これは物價廳從つて安本側から御答弁申し上げることが適当だと思いますが、お尋ね物價政策をきめるということが、きわめて重大な問題でございまして、賃金物價財政との均衡点においてこれをきめます。從つて賃金物價並びに財政相関性の上に立つ一つ見解に立つて物價をきめたのでありますが、こういうことを通じて、やみ物價將來どうなるかということは、これは実は非常問題でございまして、ほんとうやみ價格を捕捉するということは実は困難でございます。日本銀行等やみ物價指数を出しておりますが、これがどこまで正確なものであるか、これもなかなか困難な問題でございますが、最近の趨勢としては、通貨一つの線とやみ物價の線とはいつもパラレルにいつておる。こういうふうな情勢をみまして、通貨発行の線が上昇すると、やみ物價指数が上昇する。こういうふうになつておりますので、問題はほかの諸多の原因があることはもちろんでありますけれども、一應私どものつかみ方としては、通貨の膨脹はやみ物價を高める。通貨收縮やみ物價を低める。こういうことは理論上も当然でありますが、現われた結果としても、その二つの線は大体並行しておる、こういうふうに昨年來の統計を見まして考えておるのであります。それで將來やみ物價がどうなるかというお話でありますと、これは非常に答弁が困難でありますが、ただいま資料をもつておりませんので、あるいは御必要がありますならば、及ぶ限りの資料をもつてお答え申し上げることもできるかと思います。ただいまこの程度以上に申し上げることは、ちよつと困難でありますので、御了承を願いたいと思います。
  25. 中原健次

    中原委員 今回の賃金基準算定基礎の中にも、やみ價格の点が一應予想されて盛りこまれておると考えますが、もちろんこの点については、安本当局の御意見を伺うのがほんとう考えますけれども、先日來からのいろいろのいきさつから考えますと、併せて大藏大臣の御見解を伺つておくことの方が、國家財政の全般を見る上において、非常に大切であると考えますので、一應承つておきたいと思うのです。そういうやみ價格への影響の結果としまして、労働者生活相当大きく影響を與えることになると思いますが、それにつきましては、一應当局でいろいろの操作も講ぜられる御予定の御方針のように想像はいたしますけれども、しかしそれにもかかわらず、労働階級としては相当大きな不安をこのことに寄せておるようなわけであります。從つて大藏大臣とせられて、やみ影響された労働者生活についての大藏当局としての御考慮の点を一應この場合伺つておきたいと思います。
  26. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。これは非常にむずかしい問題でございますが、一應この予算の上に賃金ベースをきめてかかつたのであります。これはこの席でもたびたび申し上げましたように、三千七百円という金額が妥当であるかどうかということは、その金額の裏にある実質性がどうなるかということになると思うのでありまして、これに対しましては、政府は極力努力いたしまして、実質賃金内容が向上するようにせねばならぬ。結局これは何と申しましても、生活に安定を與えなければならぬのでありますから、名目賃金だけでいくものとは思つておりません。  それから、これは生活実態調査などによりますと、エンゲル係数日本ではあたらない。收入相当のところまで食費が占める部分が多いというような現実でございまして、特に勤労階級生活実態等から申しますと、食費がかなりな部分を占めている、從いまして、今日の三千七百円ベース算出にあたりましては、大体統計の上では、六五%くらいがやみによるものとされているようでありますけれども、多少ゆとりをつけまして、七五%くらいがやみの支出による生計費を構成するという考え方をいたしまして、そしてこれは五月を押えたのでありますが、その五月ころから以後、やみ物價指数騰勢が何ほどであるかということを押えて、それを掛けて——ここには多少の仮定があるのでありまして、それをかけるというのは、この現状が続くものという仮定がついているのであります。從つて先ほど申しました実質的の裏づけがどの程度可能であるかということと関連いたしますけれども政府は極力これを実質的に保証することに努力いたしますし、またその努力が可能であるという見解のもとに、やみによる生計費構成が二五%くらいあるものとみて、それで五月ころから最近の二、三箇月のやみ物價騰勢を押えて、それをかけ合わせまして、さような観点から賃金構成を出してみた、こういうことになつているのであります。この程度の御答弁しかただいまできにくいのでありますから、御了承願いたいのあります。
  27. 中原健次

    中原委員 今回の三千七百円ベースの問題につきましては、もとよりいろいろ見解もあると思いますが、ただ私はこの場合承つておきたいと思いますことは、先日稻村委員質問の場合に、いわゆる千八百円ベースをスライドしたものを大体考えるというふうな意味合の話が出ておつたと思います。しかもその場合問題になりましたのは、いわゆる改訂基準物價の六十五倍に対する当時の千八百円の二十七倍の倍率比率の問題であります。それがその間の倍率比率の差がそのままに押されているのではなしに、その間の開きがそれだけ大きく発展をしていることになつていると思います。從つて今度の七割物價値上の場合についてみれば、昨年七月のそれに対しまして七割、すなわち基準の百十倍の引上になつてくる。それに対しまして、賃金の場合は、昨年七月の二十七倍に対して、今回の三千七百円は五十二・五という比率になることが指摘されたと考えます。これについては、その間の差額開きが非常に大きくなつてまいるのでありますが、その大きくなつてくるその差額のために、当然勤労者生活がよりきつく圧迫されるという結果になることが考えられると思います。それについて大藏大臣の御所見はいかがでございましようか。
  28. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今回勤労者所得税相当大幅に軽減いたしましたことも、むろん計算の中にはいつておりまして、具体的なことは事務当局からさらに御答弁申し上げてよろしいと思いますが、たとえば六千円程度收入で家族三人くらいの人が大体從來の五分の一見当になつております。千四、五百円所得税を納めた人が二百四十円程度に相なつておるから、五分の一くらいに軽減になつております。その点も勘案いたしますし、先申し上げたように、どの程度生計費の中に実質的なものが裏づけされていくかということが、重大な案件ダと思いますが、その点について可能性を信じておりますし、また努力をいたすことによつてこれを維持するように、從つて実質的には決して低下させない。実質的な保障の内容がだんだん充実するようにいたしたい、こういう観点に立つております。その点はさように御了承願いたいと思います。
  29. 中原健次

    中原委員 勤労所得税軽減にその開きの調和を求めておいでになる。その他物資裏づけ等について、同様の考え方をもつとおつしやいますけれども、もちろんこのことは昨年七月の千八百円ベースの場合にも、大体そのときの諸般事情と見合わせて考慮されておつたのであります。殊に今回の三千七百円の基準が示された場合に、税金を差引いたいわゆる手取賃金が三千五百円見当となつてまいると思いまするが、三千五百円見当手取收入がはたして今適当な金額であるかどうかということについては、相当論議のある点だろうと思います。從つてまずこれを明らかにするために、このような計数の出まするために、特に労働生産のために必要とする生計をいたすためには、まず攝取するカロリー計算の点が問題になつてまいる。大体政府がこういう数字をお出しになられまする基礎に、カロリー計算は依然として千八百円ベースのときのそれをそのまま踏襲しておいでになるのではないかと、私は思うのでありまするが、もしそうだとすると、これは相当議論がめんどうになつてまいると思います。何と考えても、当時の基準カロリーでは、いわゆる千五百五十平均カロリーでは、労働することができ得ないということについては、もはや議論の余地も何もないと思います。從つてそういう基礎カロリーの認定が一体今回の場合どういう発展を示しているのであるか。これについては、あるいは大藏大臣主管外に属するかもしれませんが、もとより関連のあることでありますから、一應承ることができれば幸いと思います。
  30. 北村徳太郎

    北村國務大臣 同じようなことを繰返すことになりますが、現在の生計費で占める部分が、少くとも食費について七割見当やみによつているというような現状を、漸次これが正常なルートにおいて生計が立つようになることが、一つ生計費内容を改善し、從つて賃金の実勢を裏づけていくことに相なるので、その点に対しての將來の見透しがこの賃金が維持できるかどうかということに、重大な関係をもつと思うのであります。そこで私はそのことを先ほどから御答弁申し上げているわけであります。なおこれは必要があれば、この三千七百円の計算基礎物價廳から提出せしめてよろしいと思うのでありますが、問題は物價廳で処理しておりますので、むしろこれは物價廳から長官が出まして御答弁申し上げた方が、適当であると思います。  私は以上御答弁申し上げた趣旨において、この三千七百円ペースを維持しながら、財政を立てる。こういう立場に立つておりますので、そのことを御了承願います。
  31. 中原健次

    中原委員 賃金算定基礎のいろいろな関係資料については物價廳の方からもちろん伺いたいと思います。しかし先日大藏大臣のしばしば繰返された御答弁の中に、ないしただいま御指摘になりましたように、いわゆる配給傾斜的措置とでも申しますか、そういう方法を通して、労働者実質生活を満していく、こういう論に盡きると思いますが、実際問題といたしまして、これらはしばしば政府言明されながら実行のできなかつた問題なのであります。もちろん十に対して一の答は出たかもしれませんけれども、大体においては、そういう結果を得ておらぬのが、今までの經驗の示すところなのでございますが、この傾斜的に配給物資を確保して、労働者にそれだけの措置を講ずるというこの中味になりまする具体的な御見解、御方針は、どういうふうにおもちであるのか、この点を承ることができると、非常に好都合かと思うのであります。
  32. 北村徳太郎

    北村國務大臣 一昨年以來昨年にかけましては、非常に遅配欠配等が多うございまして、そのことからくる生活不安というものは、ずいぶん深刻であつたと思います。漸次改善されまして、最近は輸送等関係において、きわめて一部分遅配があつたというような事実はございますけれども、全体としては、非常に改善されるというような事実と、ガリオア・フアンドによる輸入方面、あるいは今朝の新聞などによりますると、否決されたと傳えられた一億五千万ドルが一億二千五百万ドルとなつて浮び上つたというようなことを報ぜられております。諸情勢がよほど好轉しており、日本經済を再建させるのは、今このときであるという情勢が、非常に濃化しておりますことと、從つて日本經済再建のためには、労働不安を除去をして、生産性を高めていく方向へ、全力を傾倒いたさなければならない。また労働者諸君においても、國家再建のために御協力願えるものである、この考えから私ども傾斜配給等に一層力を入れる。この傾斜配給は決して空漠たるものでない。いろいろ客観情勢はこれを行うのにきわめて順調にいく望みを十分もち得るというような点から考えまして、從つていささかながら生産も増強している、生産増強等によりまして、物價騰勢を抑えることも可能であると思いますし、その他諸般通貨政策物價政策等々と相まつて、これはインフレーシヨンを抑えていくことの見込みが、大体ついてきたと申しても、決して私は安易な考え方でこれでインフレーシヨンは終熄するのだというようなことは考えておりませんが、いつになつたらこのインフレーシヨン方向が止るのだという望みのない状態から、安当の希望がもち得る。この際奮起して労働不安等を除去しながら、生産に邁進することができるならば、生産増強を通じて、その他諸般情勢と相まつてインフレーシヨン加速度的速度はゆるむから、インフレーシヨンの進行が緩慢化するという考え方をいたしておりますので、それらの点と相まつて、実質的な賃金の維持ができる、こういうふうに思つておる次第でございます。
  33. 中原健次

    中原委員 私の質問は大体安本関係なのでありまして、大藏大臣への関連質問はこの程度にいたしておきます。
  34. 稻村順三

    稻村委員長代理 それでは安本長官がまだお見えになつておりませんので、午前の質疑はこれくらいにして、午後また続行することにいたしまして、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  35. 稻村順三

    稻村委員長代理 午前に引続いて会議開きます。中原健次君。
  36. 中原健次

    中原委員 安定本部長官に最初に聽いてみたいことは、きようでしたか、きのうでしたか、日本經済を見ますと、中間安定の第一次案とでもいうようなものが発表になつております。もちろんいろいろな角度から書いてありましたが、その中で特に労働不安の一掃による勤労態勢の確立という点が、かなり詳細に発表になつておりました。もとより労働者生活を改善するという点に触れられている部分は、何ら疑問とするところはないのでありますが、そういう生活改善のためのいろいろな施策が、一通り列挙されたあとに、そういう施策を條件とした一つ基準賃金を越える賃金要求の爭議はこれを禁止する、こういう文字が見つかるのでありますが、はたしてそれは事実でありましようか。お伺いしたいと思います。
  37. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えします。私はまだ見てもおりませんが、また安本として態度を決定したこともございません。この間からちよいちよい新聞に一部の部局から、あるいは他の省からできた資料などがもれて出て、その間に推測記事等がはいつたりして、いろいろ誤解を招くようになつていると思いますが、勤労者諸君の生活安定、実質賃金の向上充実のためには、内容をいかにしたらよいかというような問題などは、本委員会にもなるべく速やかに申し上げたいと思いますけれども、今作業をその筋と一緒になつて急いでおりますから、そういうことがありますならば、それは議題の一部になつ議論か、あるいはそうでなくて推測記事かどちらかであろうと思います。私としてはそういうものをまだ決定的に考えておらず、実は内容も見たこともないような次第でございます。
  38. 中原健次

    中原委員 もとよりそのはずだと考えますが、しかし一應入念にかく箇條書にされて発表になつておるとすれば、ひとまず安定本部のその関係の機関で議論なつたことであろうし、あるいは一應そういう強い意見があつたものと推測しても、必ずしもそれは一方的なむりな考え方ではないと、私は思うのであります。もとより労働運動は戰後急速に成長いたしまして、わが日本の民主革命のための重要な役割を担当しながら、正常に成長発展を続けているわけであります。なおそういう場合に、ややもすれば労働運動を目して國内の秩序を撹乱するものであるかのごとき認識をそこに寄せようとする一部の反動的な動きのあることを私どもは非常に遺憾に考えているものであります。殊にその中間安定策なるものの中には、労働組合の自由なる活動を禁圧するための必要なる組合法、その他の部分を改正するというような文句が見えておるのであります。そのようなことは、長官のただいまの言葉ではつきりいたしまするが、さようなことを考えたこともなく、もとよりさようなことを決定したことはないと御言明なのでありまして、私はそのことをそのまま信ずべきだと思うのでありますが、今後万一さような論議がもち上ることがあるとすれば、私は少くともわが日本の再建のための計画参謀としての安定本部の中に、現実のわが日本の行くべき方向を理解せざる、歴史の進展に逆らう分子が介入いておるということを思わざるを得ぬのでありまして、この点については、今後十分御考慮願いたいと思います。今日労働者がいろいろ問題を巻き起しておりまするゆえんのものは、もとより労働者生活不安に由來いたしておるのでありまして、いたずらに事を構えておるのではないのであります。労働者労働者生活改善向上のために、いろいろ要求もし、行動もいたします場合に、労働組合の動きに対する基本的な考え方の間違いが、どうもしばしば現われてくるように見受けられるのでありまして、最近特にその傾向が露骨になつてきつつあるかのように考えられるやさきでありますので、殊に私どもはここで申し上げたいことは、労働組合運動は、何もすき好んでいたずらにこれを招來したのではございません。その由來するところは、日本國の封建性を打破し、日本の民主性を確立して日本民族の眞の解放を期するということにあるのであつて、いまさらそういうことを申し上げるまでもないと思いますけれども、いわゆるポツダム宣言のそれに由來し、あるいはまたその後極東委員会が決定いたしました労働組合の組織運動に対する十六原則なるもの等にその源をもつて動いておるわけであります。またわが日本政府としても、また日本國会といたしましても、いわゆる新憲法の効力発生以來、さらにまた労働基準法の施行以來、そういう一本の線の上に乘つてあの労働運動は展開されておるわけでありますから、この点に対する十二分の理解なしに労働問題を考えることは、許すべからざる歴史への反逆であると、私は考えるのであります。この点につきまして、ぜひ長官の冷靜な御判断を願いたいと思いまするし、いずれにいたしましても、安定本部の中でそういうことが論議され、あるいは決定されていたかのごとく傳えられておるとすれば、たしかにそういう因子があつたということだけは否定しがたいのでありまして、この点については十分責任をおもち願いたいと思います。  さて私は労働者の問題としてのみこれを考えるのではなくて、わが日本國家財政の非常な重要な部分を占めておるであろうところの賃金決定のことについて、一應お伺いをしておきたいと考えるのであります。今回一應決定されておると言われておるすなわち三千七百円ベースの問題でありまするが、官公廳の職員また從業員一般に対する給與基準が大体三千七百九十一円とか承つておりまするが、この決定に当りまして、決定するまでの経緯とでも申しますか、中間の経緯についての事情を御説明願えれば好都合だと思います。
  39. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 まず最初の点について申し上げておきたいと思いますが、新聞に一部出ましたものは、あるいは記事等が嚴秘にされておるということでありまして、從つて推測された記事であろうと思うのでありますが、私といたしましては、組合運動及び組合の健全なる発達ということについては、全力をあげてそういう方に導き、また協力し、指導いたしたいと考えるのでありまして、そういうものの上にこそ、初めて日本経済再建が築かれると考える次第でございます。その点はひとひ御了承願いたいと思う次第でございます。  なお第二の点の今回の物價の補正に織りこみました鉱工業全國平均賃金三千七百円の算出の方法につきましては、ただいま政府委員を呼んでおりますから、参りましてからあらためて御答弁申し上げたいと思います。
  40. 中原健次

    中原委員 それではその数字の問題は後へ讓りまして、日本の経済再建のために、労働組合の健全なる発達を期すべく、いろいろ考えておるというお言葉でありましたが、もちろんそのお言葉に私は異存はございません。しかしながら、健全なる発達という言葉に藉口いたしまして、しばしば労働組合の自主性を侵すという動きがややもすれば現われてまいるのであります。労働組合の健全なる発達ということについて、しからばその健全なるとはどういう事柄なのであろうか。これはお互いに十分究明しておかなければならない問題でありまして、労働組合運動の健全性についての定義とでも申しますか、長官の御所見を伺いたいと思います。
  41. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 健全は文字通り健全の意味でありまして、私はそれに藉口して、他の目的のためにあるいは曲められて、いろいろな措置がとられるというような意味は一切含まぬということを、ここで申し上げれば御趣意に適するかと思うのであります。
  42. 中原健次

    中原委員 文字通り健全であるというお言葉でありまするが、ものは見方によつてしばしば違うのでありまして、いわゆる健全にも両面があるのであります。それを一方的に断ずるということは、しばしば問題が歪曲されていくのではないかと思うのであります。從つてしばしば言われることでありますが、組合の自主性という事柄に関連して考えれば、すぐにはつきりすると思いますが、組合を健全に発達させるという意味は、組合をして自主的に成長発展せしめるように導くということでなければならぬと思います。從つてまた導くという言葉も、あるいは適当でないかもしらぬ。組合自身がみずからの責任において成長していくであろうところの方向が、少くとも労働組合の責任ある態度でもあるし、またそういう意味においてのみ、初めて健全性は確保されるのでありまして、從來の取締り的立場からものを考えるという慣習が、つい思わず知らずの間に日本の指導者諸君の間に固定しておるのではないか、いわゆる日本の指導的な仕事をしておる人々の頭の中に、そういう考え方が凝固して動きがたいものになつておるのではないかというふうに思うのでありまして、從つて組合の健全なる発達を希うというからには、その組合の自主性をあくまで尊重するという立場から出てその言葉が内容づけられなければならぬと思うのであります。さいわい労働大臣がお見えのようでありますから、安定本部長官の御回答と同時に、労働大臣の御所見も併せて伺つてみたいと考えるのであります。
  43. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 組合本來の目的を達成するために、正常なるコースによつて自主的に発展して目的を達成するということが、私は本來の行き方だと思うのでありまして、そういう趣意に副うて組合の健全なる発達ということについては考え、また諸施策もしたい、こう思つておる次第であります。
  44. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいま組合の健全なる発達ということについての考え方を御質疑だと思いますが、健全なる発達は、言うまでもなく労働者がみずからの自由なる意思によつて組織を構成し、その組織が外部のいかなる力からも動かされることなく、自主的な指導方針を確立して、労働組合としての與えられたる性格に基き、労働組合の使命とするところを忠実に実行していくことが、労働組合の健全なる発達を意味するのであります。
  45. 中原健次

    中原委員 労働大臣の御見解で、健全なる労働組合の発達ということについての規定がはつきりしたと思います。しかるにかかわらず、しばしばそうでない場合がありがちなのでありまして、もちろんそれにはいろいろな弁明もつくのでありまするが、たとえば最近起りました一つの出來事に、全財労働組合の地域的干渉と申しますか、彈圧と申しますか、全國的に一本の方針によつて動いておりまするある部分の地域々々に、当局の不法なる干渉が行われておるという事実があるのであります。最近一、二そういう報道を耳にいたしておりますが、政府は全國的な関連のある組合の動きについては、これを地域的な部分的な取扱いとすることなく、中央に集中して全國的な扱いとしてこれに対するという方針をもつておられるかと思つておりました。ところが全財労働組合に関する場合は、そうではなくて、当然それは中央にもち來らしめて、その問題を処理すべきものであるにもかかわらず、一地方々々の独断による取締りが行われておる。かようなことについて、主務大臣としての労働大臣が御存じないのかどうか、一應これについての御所見を伺つてみたいのであります。
  46. 加藤勘十

    加藤國務大臣 労働組合運動に対する取締りというようなことが、もしありとするならば、労働組合は他の一般的法律の規定するところによつて、取締りが行われるかもわかりませんが、労働組合運動それ自身としては、取締りの対象にはなつていない。從つて労働組合の運動それ自身が取締りの対象となるというようなことについては、もちろん労働省の所管でもなければ、ほかにどこに所管があるわけでもありません。おそらくそれは他の法律によつて取締りの対象となつた場合のことをば指されるのではないかと存じますが、それならば取締当局はおそらく法務廳になるのではないかと思いますし、この全財の組合の行動について何か問題があつたとすれば、それは直接には大藏省所管であります。労働省は決して労働組合運動の取締りというようなことについては微塵も考えておりません。從つてその点は中原君の誤解のないようにしていただきたいと思います。
  47. 中原健次

    中原委員 もちろん労働省がただちに手をかけて取締りをしたと申したのではありません。ただ労働大臣として、そういう事象に対する御見解をはつきりしていただきたかつたためにお尋ねしたのであります。最近これは大藏省のみならず、その他の主管内におきましても、労働組合運動に対する理解の乏しさから、特に戰後急速に成長いたしました戰後の特に目新しい所産であつた関係からか、労働組合運動に対しましては、未だなお十分の認織をもつことのできない人々が多いかに見受けられるのであります。殊に政務を担任される政府の指導者の人々の中に、未だなお労働組合運動を厄介視し、何だか正常なわが日本の復興のために妨害物でもあるかのごとき考え方をもつて、そういう先入感をもつて臨んでおるのではないかと思われる節がしばしばあるのでありまして、今後この問題に関しては、特に内閣の関係閣僚諸公がみんな注意深くやつていただきたいと、私は要請してやまぬのであります。さきにも申しまするように、労働組合運動は特に労働者の基本的人権の確保、確立、獲得のために、一つの大きな目的をもつておるわけでありまして、しばしば労働者の基本的人権が軽々しく侵され、無理解にもそれが蹂躪されるというようなことは許されないのであると、私は信ずるのであります。ポツダム宣言がそのことを特に明記しておりますし、また先ほど申しましたように、極東委員会においても、特に労働組合組織に関する十六原則を発表いたしまして、万過ちなきを期せしむるように努めておるわけであると、私は思うのであります。なおそれに関連しまして、わざわざ日本勤労者は勤労するの権利を有すると明記し、いわゆる勤労権を確認し、そうして労働者労働組合運動の目的を達成するための必要なる手段として、團体的に行動するの権利とを明記いたしましたことも、必ずしもわが日本の新出発のための一つの仮約として、いわゆる一つの言葉としてそれを約束したのではないと思うのであります。從つてあくまでこれらの一貫するわが日本の再建の基本的な考え方の上に徹せられて、労働組合運動を徒らに外側から容喙し、労働組合運動を何らか指導するかのごとき思い違いをせられることのないように、私は強くこのことを要請しておきたいと思うのであります。  さて労働大臣にこの場合承つておきたいと思うのは、今回の三千七百円基準、あるいは予算基礎数字として三千七百九十一円と、新給與の基準を一應もくろまれておるようでありますが、これを御決定になられます前に、関係組合と何か御交渉でもございましたのでしようか。それともそうではなしに、ただ政府が一方的に暫定的な仮設的なそういう数字を御決定になられたのでありましようか。この経緯を承りたい。
  48. 加藤勘十

    加藤國務大臣 御質問お答えする前に、さきに要請をなさいました部分については、多分に誤解をひき起す言葉が含まれておると思いますから、その点明白にいたしておきたいと存じます。  言うまでもなく労働組合運動が、殊に戰後の労働組合運動がどこからどうして起つてきたかということは、私から申し上げるまでもなく御承知の点であります。今日政府の官吏というか、だれであるか知りませんが、そういう人々の中に労働組合を指導するというような、そういう間違つた考えをもつておる者は、おそらく一人といえどもないと私は確信しております。そういうことがかつて特別警察制度の存在しておつた当時における、その取締りを受けた印象が中原君に残つてつて、なおかつそういうことが自分自身の潜在意識として存在することから錯覚を起されたのではないかと思いますが、私は今日の労働組合の運動に対して、官吏が指導するというような僣越な考えをもつておる者はあり得ない。官吏といえども、その大部分はみずから労働組合を組織しておるのでありますし、殊におる官廳においては課長級の人までは組合に参加しておる状態であります。組合の指導者としては存在するのでありましようが、これが官吏としての立場から組合を指導するというような僣越な考え方はあり得ないと信じております。もし具体的に官吏が政府の立場をかさにきて組合を指導したとか、あるいは組合に何らかの拘束を加えたとかいう具体的事実があるならば、それは私どもも参考のために聽かしていただきたいと思います。ただこういう問題は、抽象的ではいけないと思います。その点ひとつあらかじめはつきり申し上げておきたいと思います。さらにポツダム宣言の規定するところによりましても、極東委員会における十六原則の明白に規定しておるところによりましても、労働組合が野放図に放縱にあることを欲しておるのではないので、固より日本民主化の大前提として、労働組合が組織発展されなければならぬということを規定しておるのでありまして、從つて労働組合が成長の過程においても、みずから反省すべきものは反省し、みずから務むべき義務は務めるということをはつきり規定しておるのであります。十六原則の規定するところは、労働組合みずからの反省による、義務づけによる、そして同時にそれが権利を主張する裏づけとなつておるということを、お互いに銘記しなければならない点であると存じます。  それから御質問の要点でありましたが、御承知のように前の二千九百二十円ベースの問題が解決いたしましたときに、覚書の交換によりまして、この問題が済んだならば、ただらに新給與の問題について審議するために給與委員会を設ける、こういうことになつてつたのであります。從つてどもはできるだけ早くこの委員会が発足して、そして次の新給與の問題について論議されることが、最も望ましいと考えておりまして。ところがどういう行き違いでありますが、委員会が結成される前に、調停委員会がどうしたとかこうしたとかいう点から、容易に委員会の成立を見るに至らないで、準備交渉の過程において足踏状態がなされておつたわけであります。この点については、私どもはきわめて遺憾に存じます。その誤解がどちらにあつたかは別問題としまして、ともかくも委員会の結成がされないで、今日に至つたということは、非常に遺憾なことでありまするが、そうかというて、委員会の結成するまで予算編成を待つというわけにはまいらないのであります。そこで政府といたしましては、予算編成にあたつて何を基準とすべきであるか、こういう点から、昨年一月からの全國工業平均賃金をとりまして、これの一月から各三箇月ごとの平均をとつて、それから今年三月の数字が出ましたので、それを基礎として四、五を推定して、五月は三千五百円、そしてこの水準を維持するということから三千七百円という六月の水準が推定されたわけであります。この三千七百円の推定は、三月を基準としたものでありますから、その後どういうぐあいに変化するかということは、数字が示すところでありますが、ともかくも政府が一應の基準としてとり上げたものは、今言うような全國工業平均賃金の三月に現われた数字を土台として、六月を推定したものであります。これに財政的な見地からと、さらに物價改訂がどのように生計費影響を來すかということと、三つの点から勘案いたしまして、三千七百九十一円が予算編成の標準として採用されたものでありまして、この点について組合側の了解を得られなかつたことは遺憾でありまするが。もとより政府としましても、今言う通りいつまでも予算編成を、時間的に制約されている関係から放置するわけに行かないで、こういう計算基礎に基いて採用したものである、このように御了承願いたいと存じます。
  49. 中原健次

    中原委員 時間がないそうでありますから。簡單にいたします。まず最初のお言葉のように、戰後の急速な國内事情の変轉のために、いろいろ思い違いはそれぞれの立場の者にそれぞれあるだろうと考えます。從いまして、われわれは常に自分の言動について、みずから責任を感じつつこれをなさなければならないことを戒め合つておりますし、同時にまた労働者は、労働合組員として責任と秩序をみずからの双肩に担いながわ行動いたしておるのでありまして、労働組合に対する認識は、あくまで労働組合のかくのごとき組合人格の高さを認めながら、組合に対する考え方を決定されるように、この席上を拜借して、特に政府当局の関係各位にお願いをいたしておきます。  さてこの新給與に関する給與委員会の問題について、詳細に御説明をいただきましたが、もちろん私から申し上げるまでもございませんが、労働賃金労働條件を決定いたします場合には、労資あるいは使用者、被使用者が対等の立場に立つてこれをなすべしということは、労働基準法第二條の明記するところでありまして、政府はひとりその問題に対して何ら責任を感じなくてもよろしいということはないのだろうと私は考えるのであります。從いまして、この給與の規準を決定されまするときには、一方的にこれを決することもまたやむを得ずというような考え方よりは、あくまで労働基準法第二條の命ずるところを尊重されまして、関係労働者の自由なる意思の発表にこれを問われて、過ちなき御決定をお願いいたしたい。私はこのことを要請する次第であります。從いまして、今回の予算関連いたしまして、予算数字基礎になりました三千七百九十一円といういわゆる給與基準は、あくまで暫定的なものであつて、これを強靭に組合側に押しつくべき性質のものではないということを、私は申し上げたいのであります。一方労働組合は三千七百円前後の給與をもつて、あすの労働力再生産を用意することはできないということは、はつきりいたしておるのでありまして、しかもこれに関しましては、具体的に数字をまつて要請をいたしておると考えます。大体新物價、いわゆる物價改訂の内容の重要な一部分として、賃金を測定するということ労働者の給與、労働者に支拂うべきものを一つの原價計算の一環としてのみ考えるという考え方は、労働者の基本的人権を私は忘れた考え方ではなかろうかと思うのであります。少くとも労働者が人たるに値する生活、もちろん現在のわが日本の段階から申しますると、十分なる人たるに値する生活が保障されようとは考えておりません。從つて労働者はその最底の線において、ようやく明白の生産に役立ついわゆる労働力を再生産するに役立つだけのものを要求しておるにすぎないのでありまして、決して憲法が健康にして文化的なる生活などと、りつぱなことを申しておりますけれども、それをそのまま労働者の今日の生活に取入れようと考えておるのではございません。こういう点については、労働者はいささかも認識不足をいたしておらぬのでありまして、ただ要は最底の生活を保障して、そうしてあすの生産のそれぞれの部門部署に活発に立働くことを保障するために要求いたしておるのでありますから、この点については三千七百円というこのベースにいたしましても、あくまで予算の面で決定したのであるからやむを得ずとして、これを強要するというようなことは許されないと私は思うのであります。  あます時間がありませんから、労働大臣に関するお尋ねは、もうこれでとりやめることといたしまして、ただ最後に私は希望條件を申したのであります。安定本部の方でせつかくお見えでありますから、もう少し賃金のことを詳しく分析してみていただきたいと考えるのでありますが、この三千七百円の決定に関しまするいろんな算定基礎を調べてみますると、まず新物價改訂に関連して、やみ價格の上昇ということについての考慮がいささか間違つておるのではなかろうかというふうに、私は考えるのであります。やみの價格の上昇に対するかなり詳細な御説明を願いたいと思います。
  50. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 中原君、前の御質問関連して、今谷口物價局長が來られますから、そのとき一諸に願います。
  51. 中原健次

    中原委員 承知しました。それではその問題を政府委員の來られるまで保留いたします。
  52. 鈴木茂三郎

    鈴木委員 総理大臣が來られましたが、中原君の総理大臣に対する質問が保留になつておりまかすら、どうぞ……。
  53. 中原健次

    中原委員 ただいま質問いたしました範囲内でありますから、必要がないい言えばないようなものでありますが、政府の首班者としての総理大臣の労働組合運動に対する御見解を、この場合伺つておきたいと思います。  労働組合は最近非常な成長を遂げてまいりまして、組織労働者はすでに六百万を越えるという状態になつてまいりましたが、そういう情勢のもとで、いわゆる日本経済の再建の関連において、外資導入のことが今や活発に取上げられてまいりました。ところがこの外資導入の問題に関連いたしまして、労働組合運動に対する一つの行き過ぎという傾向が、ぼつぼつ見えかかつてまいりました。先に安定本部長官にもちよつと申したのでありますが、いわゆる中間安定策なるものの発表の中に、散見いたしまする部分によれば、もちろんこれは安定本部長官は否定されたのでありますから、申し上げる必要はないと思いますが、しかし私は必ずしもそれをそのままにとるわけにはまいらぬ。その中間安定策の中にもうかがわれますように、労働組合運動の取締的態勢を調えようとする一齣が見えるのであります。あるいはまた一定の基準賃金を超える要求に対しては、そのストライキを禁遏するというような文字さえうかがわれるのであります。  これは正しく私どもの感覚には、田中義一反動内閣が、日本の全勤労階級を奴隷化せんとするために禁圧を加えました当時の、そういう雰囲氣が民主主義日本を誇ろうとするこの瞬間において、再び動きつつあるかの観を見せるのであります。もとより芦田総理におかれては、そのようなことを肯定されておいでになるとは思いませんけれども、この場合、一應御所見を承つておきたいと思うのであります。
  54. 芦田均

    ○芦田國務大臣 中原君の指摘されましたごとく、とかく今日のごとき激動期においては、あるいは民主主義精神の行き過ぎが起つたり、あるいはきわめて善意ではあるが、物事を了解しないがために、時としてはまた過去の反動的な政策を十分に清算し得なかつたりする現象の起ることが、見受けられるということにおいては、私も同感であります。現政府においても、新しい憲法の精神に則つて労働組合の健全な発達を希望しているということは、繰返し述べております。私個人としても、今日の労働組合法は、私が責任をもつて起案をして國会に提出をして、國会の承認を得た労働組合法であります。当時世間は内外ともに比較的進歩的な労働組合法であるという判断を下したと記憶しております。從つて私の念願として、いかにして一日も早くわが國の労働運動を、健全な組合運動となし得るかということに、日夜苦労をいたしております。してして各部門において、この健全なる組合運動は、漸次理想の目標に向つて進みつつあるけれども、今なお時として多分の行き過ぎがあり、経営者においても、過去の独裁的な經営を希望する向きがあり、また労働組合の中にも、その本來の目標を見失つて、行き過ぎを行うごとき場合がある。現に一昨日でありましたか、官公労の代表と称する人が私に面会を求めて、まず最初に賃金その他の労働條件に対する要求を出された。私は欣然としてこれを聽ました。労働組合がその労働組合の改善のために意見を出されるということに対しては、われわれは喜んでこれを聽くだけの受入れ態勢をもつておる。ところがさらにその次に決議文を出して——組合の幹部が集まつて決議をしました——続んで聽かされたら、内閣はこの際辞表を出すべしという決議であつた。そのとき私の言つたことは、労働組合が組合の名において倒閣運動をするということが、はたして組合の合法的な行動であるかどうか。私の労働組合法の解釈に関する限り、かくのごとき行動をする権限は絶対にないのだ。権限のない者が決議をしたからといつて、私はこれを受取る義務はない。のみならずそれは間違つた行動である。もう一遍労働組合法を続んで來なさいということを私は答えた。現にそういう運動が比較的教養のある官公労の組合においてさえも行われておる。かような状態は、決して日本の組合運動の前途に希望をもたせる行動ではない。かように私は考える。内閣組織以來、われわれは中道の政治を標榜しておる。すなわち反動に流れず、また極端なる左翼の過激思想にも走らないということを、内閣の政策の中枢として、今日に至つておるのであります。労働運動に対しても、また同樣の精神でこれに対する点をお答えいたして、中原君にとくと内閣の政策についての御了承を願いたいと思います。
  55. 中原健次

    中原委員 申し上げるまでもなく、日本労働組合運動は、ポツダム宣言に由來いたしておりまして、一貫した一つ基礎をもつわけであると、私は信じております。さらに二十一年の十二月であつたと思うのですが、極東委員会が労働組合組織に関する十六原則を発表いたしました。たしかその第六によりますと、労働組合は政治的な活動に参加し、政党を支持するの自由を有するというふうなことが、明記されておると思います。從つて、政治的な行動に参加し、ということは、ただいまの官公労に代表者が、芦田内閣に対して批判的な態度をとつたということを、拒否されるいわれはないと思うのであります。むしろそれは労働者の組織が、日本の民主化の目的を達成せんための一つの道行きの手段として、芦田内閣に対する一つの批判があつたものと、私は受取るべきではないかと思うのであります。それを受諾されるか否かは、あなたの権限でありますが、そういう意思表示をしたことは、労働組合運動の領域を超えるものであるという御認識は、いささかあたつておらぬのではないか、このように私は考えるのであります。そもそも労働組合運動に対するものの考え方が、最も進歩的なインテリゲンチヤとしての芦田総理においてさえ、そういう誤解があることを思うと、ますますわが日本労働組合運動の今後の健全なる成長、すなわち労働組合自身が労働者みずからの民主的な自己表現を下し、あるいは自分のイニシアテイーヴによつて労働組合運動の機能を発揮するということが、ややもすれば阻害されるという危險を、またここに釀成するのではないかと憂うるのであります。こういう点について、もう一度首相の御所見を承りたい。
  56. 芦田均

    ○芦田國務大臣 問題は労働組合法の第一條を、いかに解釈するかという点によつてわかれると思います。私の今日まで信じておる解釈によれば、ただいま中原君の言われたごとき行動を是認する意味の規定は、労働組合法の第一條の中には存在しておらぬ。かように考えまするから、中原君の言われた政治運動というものには、おのずから限度がある。たとえば参政権の行使のために投票を行う。あるいは労働組合が集まつて、われわれはどの政党を支持しようという意思表示をする程度のことは、これは許さるべきだと思います。しかしながら、この内閣は絶対に職に止まるべからずというがごとき行動が、労働組合法の組成されたる目的のうちにおいて、また当然なすべき行動であるという解釈は、私は労働組合法第一條の解釈からは、絶対に出てこない。かように確信しております。
  57. 中原健次

    中原委員 それではまず承つておきたいと考えるのは、いわゆる極東委員会の十六原則というものは、どういうふうに御判断になりますか。
  58. 芦田均

    ○芦田國務大臣 私はその十六原則を宙に覚えておりませんが、まず第一義的に労働組合の活動というものは、労働組合法の原則に基きなさるべきだ、かように解釈しております。
  59. 中原健次

    中原委員 もちろん全文を宙にお覚えになりなくても、極東委員会が労働組合の組織に関する一つ方針を示したのでありまして、その組織に関する方針書を、日本政府としては受取るのか受取らぬのかという問題になつてまいつたのであります。それによれば、労働組合が組合自身として、政治的な意思表示をするということが行き過ぎだという考え方は、この十六原則は認めないという建前からのみ、私は言えると思いますが、その点はいかがですか。
  60. 芦田均

    ○芦田國務大臣 十六原則が労働組合の政党化を使嗾しておるものとは考えておりません。しかも労働組合法は極東委員会によつて代表せられる連合軍総司令の完全なる了解のもとにできたものでありまして、労働組合法の規定が極東委員会の意向に反するものとは私は考えておりません。
  61. 中原健次

    中原委員 いくら申しても議論になりまするから、さし控えまするが、ただ一言だけ附け加えておきます。労働組合が政党化するということとは、おのずから違うと思うのでありまして、労働組合が当面の政治問題について意思表示をしたということは、私別に過ちではないと思います。当面の政治問題は、当然関連して、労働者生活問題の及ぶのでありまして、それに対する労働組合が意思表示をしたということ、そのことが組合としては逸脱行為であるというのであつては、はなはだ遺憾に思います。私は政党化するということと、政治的な意思表示をするということとは同じではない、このように考えております。また労働組合員は、もし必要ならば自分の政党にむちを打つて、政党的な立場からまた活動するでありましよう。ただその場合は、組合の代表者が組合としての意思表示をしたにすぎないのでありまして、その意思表示を労働者の眞の声なりとして御判断になられるか、なられないかは、ひれは首相の御随意でありまして、ただわれわれはそういう言葉を表現したことに対して、労働組合が行き過ぎであるという結論は生れてこない。かように考えるものであります。一言附け加えておきます。
  62. 角田幸吉

    角田(幸)委員 私は建設省総裁に続いてお尋ねする前に、今の問題の関連事項として、総理にちよつて補充質問を許していただきます。
  63. 鈴木茂三郎

    鈴木委員 角田君。
  64. 角田幸吉

    角田(幸)委員 ただいま総理が古い封建的なものに拔け切れず云々ということをお述べになりましたのですが、私は法律上の見解において、現内閣において、きわめて封建的なものが、拔け切れないものがあると考えるので、この際関連して総理に承りたいのであります。  問題は統制法の問題であります。概活して統制法と呼びます。今日の統制法の中には、どうしても守り切れないところの分子を包含しておるところの統制法が現存しております。たとえて申しますると、配給を嚴格に励行いたしますると、昨年東京地方裁判所の判事が、遂に栄養失調になつて餓死した。かくのごときわくにあるところの統制法というものは、守り切れないものである。守り切れないものを守らないことによつて罰するということは、できないのであります。法律というものは守り得るものを守らないところに、処罰されてもいわれがあるのであります。しかるに現内閣におきましては、守り切れない統制法というものを、そのままにおく。こういうように、一旦法律をきめた以上は、これに從わなければならぬという考え方に、私は現内閣において封建的なものの拔け切らない姿を見るということを申し上げるのであります。そこで私はもう一つ附け加えます。支那の唐の時代に、古今無双の惡法という法律がありました。この支那の唐の時代の古今無双の惡法というものが、あるわがままな王樣がありまして、道路に針を捨てただけで、まかりならぬと言つて、死刑に処したということであります。そこで、これは道路に針を捨てただけで、これが死刑にされたのでありますから、これは古今無双の惡法と言われてもしかたがないのであります。ところが私は、もし守り切れない法律を守れということによつて罰するものでありまするならば、これは古今無双の惡法であるどころか、古今開闢以來の惡法であると言わざるを得ないのであります。その点において、未だ封建的なものが拔け切らずにおるのでありまするが、この際において、総理は、今新しい思想の上に立つた政治を示されたのでありまするから、守れない法律という統制法は、この際大幅に廃止する決意ありや否やということを、総理に承りたいのであります。
  65. 芦田均

    ○芦田國務大臣 統制問題については、本会議その他の機会にしばしば政府考えお答えしておるのであります。不必要なる統制は、一日も早くこれを廃止したいと考えております。
  66. 角田幸吉

    角田(幸)委員 もう國民が守れないというようなものは、早速お廃止になる御用意がありますか。
  67. 芦田均

    ○芦田國務大臣 守れない統制と、守れる統制と、具体的にお話しくだされば、何かお答えできると思います。
  68. 角田幸吉

    角田(幸)委員 この程度にして、そこでこれから建設院関係にはいりたいと思います。四月と五月の工事の出來高が、國費でやつたものと、地方費でやつたものとを、計数によつてお答えを願いたいと思います。
  69. 中田政美

    中田政府委員 四月と五月の暫定予算による都道府縣に対する災害補助費は、四月が二億三百万円、五月が五億七千万円、計七億七千三百万円と相なつておりまして、この予算は二十年の災害分へ一億五千万円、二十一年の災害分へ一億三千三百万円、二十二年度災害へ四億九千万円の割合で、都道府縣に補助の指令を出して、実施しておるわけであります。そこでこの災害の補助予算が、現実に都道附縣においてどのように執行されたかにつきましては、一年間を四回にわけて、四半期ごとにその実績をとることにいたしておりますので、本年の四月及びに五月の実績につきましては、六月末を締切りとしまして、七月末になると報告がまいることになつておりますが、現在のところ四月、五月の現実にいかように執行されたかということについては、集計ができない事情にあります。三月末のは先般の御質問に答えたわけでありまして、さように御承知願います。
  70. 角田幸吉

    角田(幸)委員 そこで総栽にもう一度念を押してお尋ね申し上げたいのでありますが、先ほど五十二億のうち、これを勘案して、どちらに使うとも自由だ、こういうお答えがあつたのでありますが、それはすでに二十二年度の分として支拂わなければならない二十二億は、これは勘案のできないものであると考えるのでありますが、この点はいかがでありましよう。
  71. 一松定吉

    一松國務大臣 すでに支拂つておるもの、もしくは工事をすることによつてすでに使われておるものに対しましては、五十一億四百万円のうちから勘案はできません。
  72. 角田幸吉

    角田(幸)委員 その金額は二十二億。昨年度すでにやつてしまつた。その二十二億はその通りじやありませんか。
  73. 一松定吉

    一松國務大臣 ちようど小計してみますと、すでに支拂つて、それから仕事をしておりますものが二十一億円ほどになります。
  74. 角田幸吉

    角田(幸)委員 そこでそういうことになりますると、残金が三十億。この三十億のうちで、二十年と二十一年度に十七億ほどかかる、こういうお答えがあつたのでありまするから、残る金が十三億。こういうことにしかならないのであります。この十三億が、本年の四月以降に充てられる金でありますが、すでに工事は四月、五月としてどれだけのものができておるかということは、一年四回にわけて報告があるので正確なことができない、こういうことでありましても、すでに七億七千、約八億の金を出しておるのである。そうするとあとわずかに五億しかない。一体五億の金で六月以降の工事がやつていけるはずがない。こう思うのでありますが、この点についてはどうお考えになりますか。
  75. 一松定吉

    一松國務大臣 私の午前中のお答えをあるいは少し誤解していらつしやるようであるが、私の申し上げたのは、いわゆる五十二億四百万円のうちで、これを二十年及び二十一年、二十二年の災害に、重要性の方面から適宜勘案をして、そうしてその方面に振り向けると申し上げたのでありまして、あなたの今お示しになりましたように、二十年及び二十一年の災害に十七億いくらを使うのだということを申し上げたのではありません。そういうように、二十年及び二十一年の災害予算計算すればそうなるけれども、この五十二億四百万円というのは、三箇年の災害に割当てて、どれが重要であるかということを、まず勘案をして、その方面に使うのだ、こう申し上げたのであります。今あなたの御質問は二十年及び二十一年度に十七億使う。そうすれば、それから今すでに暫定予算で支拂いしたものを控除すると、わずかな金になるが、それでは二十三年度災害復旧工事はできないではないかと仰せになるが、そうではないのです。二十年及び二十一年度と二十二年との間に、その三十何億という金を重点的に勘案をして配分をする、こう申し上げたのであります。
  76. 角田幸吉

    角田(幸)委員 私の質問が誤つておるとおつしやるのでありますが、私は総裁お答えも間違つておると思う。それは五十二億の中に、二十二億というものは、確定的なもので除外しなければならぬ。すでに昨年度工事ができておるので、これは勘案して考慮の余地がない、こういうことになるのではありませんか。このことをまずはつきりしてから進めたいと思います。
  77. 一松定吉

    一松國務大臣 今の五十二億四百万円のうちで、さつき政府委員からお答えいたしました合計二十一億円ばかりを引きますると、残りが三十億ほどになる。三十億ほどになるその金を、二十年、二十一年、二十二年の災害に、どれが重点的に先にしなければならぬかということを勘案して配分すると申し上げたのです。
  78. 角田幸吉

    角田(幸)委員 そこで大体三十何億を勘案するということになつたのでありますが、二十年と二十一年度というものについて、これはどうしても重点的にやらなければならないということに、態度がきまりますると、十七億、そうすると十三億しかない、十三億のうちすでに八億つかつておると五億しか残らない。こういう結論に到達することは、これは明々白々たる事実だと思うのでありますが、これでも私の御質問お答えがあるのでありましようか。私はないと信ずるので、そこでお尋ねを申し上げるのであります。もし私のこの質問が、そのままであるといたしますならば、あとの五億程度においては、これは一箇月分にも足らないというような状態になると思うのでありますが、いかがでありますか。
  79. 一松定吉

    一松國務大臣 あなたのように計算するとあなたのおつしやる通りになるのです。
  80. 角田幸吉

    角田(幸)委員 そこでお尋ねを申し上げたいのでありますが、私は昨日道路問題についての必要さを強調いたしましたところが、道路よりも災害の方がより必要だという点で、こちらに多額の予算を計上したものである、こういうことをおつしやつたのであります。その最も重点的と考えられるものが、私の言うようになると、昭和二十三年度においては驚くなかれ、わずかに、五億になる。その五億というものを最重点的に考えておる。そこで今実際問題といたしますると、これではとうていできない。われわれはこの予算案を手にして唖然としたということを申し上げたゆえんのものはここにあるのであります。この予算の内要をほんとうにわかりました水害地の地方長官は、これでは総辞職するよりほかやむを得ない、こういうふうな空氣までも漂つているのであります。十九億という本年度の道路費をもつてするならばどうにもならぬということがわかつても、民心の安定をはかるためには、重点的に災害復旧に充てなれければならなかつた総裁は言う。ところが驚くなかれ、六月以降においてはわずかに五億しかない。いろいろと議論をされるでありましようが、これは議論の余地がない、こういう結論に到達するのであります。昨日総裁は、公共事業費としての災害費について、六十九億九千万円の査定されたが、実際の要求額は百三十何億であつた、こういうことを言われておつたのでありますが、これは実際において百三十何億という金がなければ、本年度の水害を未然に防ぎ、昨年の災害を完全ではなくとも、本年度予定しただけ直すに足りないということになるのではありませんか。あなたの百三十何億を要求したという内容を承りたいのであります。
  81. 一松定吉

    一松國務大臣 百三十何億の金があれば、私の考えておるように、復旧がやや完全に完成することができるのであります。ところが悲しいかな、今日わが國の財政上からいきますと、それだけの金の支出が困難であるがために、やむを得ずこと災害復旧に対しましては、五十二億という金でがまんをしなければならない状況に立至つたのであります。しかしてこの金が、先刻來あなたと私の質問應答によつて明らかになりましたように、三十億だけの金を二十年、二十一年、二十二年の災害方面に振向ける以外に方法がない。しこうしてそれはあなたの仰せになつたように、二十年、二十一年にその金の中から十七億を使つてしまえば、残りはわずか十三億ばかりになる。その中からすでに出しておる七億というものを引けば、余りはあと五億くらいになるではないかと言えばその通りになります。しかし私はその三十億の金を二十年、二十一年、二十二年の災害復旧の、どの方面にまず一番にこれを振当て、どの方面災害を先に完備する必要があるかということは、諸般情勢とにらみ合わせてその方面に重点的に支出する、こう考えておるのでありますから、少くとも三十億という金は、その三箇年間の災害復旧の方に振向けられることには間違いがないのであります。しかしながら、そういうことでは十分ではないではないかという御意見であれば、私もその通りだと思うので、しからばどうすればよいかということになれば、もう少し金を出せば一番よいのである。ところがその出す金は、今のわが國の財政状態では、ただちにこれができない。しからばどうするかというと、新財源を発見するか、あるいは復興債券というようなものでも発行するか、何らか適当な処置を考えなければならぬ。かようなことで、私がその点について十分の主張をいたしまして、新財源を発見した場合には、優先的に災害復旧の費用に振向けるという、また四百二十五億のうちの予備費の十億は建設院方面災害方面に優先的に振向けて、私の不満足なところを幾分でも満足するような処置をとりたいと考えている。こういうことは昨日申し上げた通りであります。道路の問題と河川の災害の問題についての比較でありますが、これも昨日申し上げましたように、道路を完備することはもちろん交通文化の上に必要であることは言うまでもありませんが、それよりもなお水害の復旧ということの方が重要であるから、その方面予算を多く要求したのであると申し上げたのでありまして、道路を決しておろそかにしたのではありません。
  82. 角田幸吉

    角田(幸)委員 これは嚴格な意味において前任者と言えるのかどうかはしばらくおいて、木村内務大臣のときにおいては、水害復旧費については職を賭しても要求額は請求するの決意を委員会において示されているのであります。新財源が見つかりましたならば、このことにつきまして、百三十億のあなたの要求されたものについての増額に御同意をくださる御用意があるか、その点を伺います。
  83. 一松定吉

    一松國務大臣 木村内務大臣のときに、自分は職を賭しても水害復旧予算を請求するということを言われた。もつともなことでありまして、私も決意においては、それに少しも劣る考えはもつておりません。昨年の水害の復旧の費用は、御承知の通りに二十二億六千九百万円であつたのであります。しかるに今年は物價が高騰をいたしたとは言え、五十億の予算を請求いたしているのでありますから、昨年の二十二億に比較いたしますれば、三十億以上の金が要求されているのでありますが、これでは思う存分に仕事のできないということは、私自身が認めているところであります。從つて今あなたの御請求になりましたように、新財源を発見することに努力し、なおそれが発見された場合においても、それを優先的にこの方面に使用するということについては、私職を賭してやる決心であります。
  84. 角田幸吉

    角田(幸)委員 それでは一應建設院総裁に対する質問は打切ります。次に大藏大臣お尋ね申し上げます。大藏大臣は私の質問中終始御列席くださつたので、大体御承知の通りだろうと思うのでありますが、まじめな意味において、正確な意味において計算いたしますと、六月以後使われる金というものは、わずかに五億しかない、これをもつてはとうていやりきれないということがおわかりなのであるか。大藏大臣において、他の財源を見付けてこれを増額するところの御用意があるかどうかを、まず承りたいのであります。
  85. 北村徳太郎

    北村國務大臣 先ほどからこの問答をよく伺つておりまして、御趣旨は十分心得えております。何分この國家財政の今のような状況でありまして、どうも御注文通りまいりかねる点がずいぶんあるのであります。財源がもしできた場合は、必要方面に重点的にまわすことは申すまでもないことでありまして、その点につきまして、建設院総裁と私とは、全然同意見であることを御了承願いたいと思います。
  86. 角田幸吉

    角田(幸)委員 これはきわめて雜な私案でありますが、水害復旧費の新しい予算をとるために、たとえば國有林の拂下げ、あるいは買收したところの私設鉄道、こういうものを賣却しても、この費用に充てなければならぬと考えるのですが、大藏大臣はこの点についてどうお考えになつておられるか、御所見を承りたい。
  87. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これはきわめて重大な問題でございまして、たとえば國有林を拂下げるということは、國家の將來の財源を枯渇させるようなことがあつてはならない。今不必要であつて賣却が可能なものについては、賣却してもいいと思うのでありますけれども、殊に現下のような動搖期におきまして、長期投資である森林の経営というようなことは、なかなか困難でございまして、わずかに國有林においてその経営をやつておる前に重大なる意義があると考えるのであります。從いまして、賣却可能なものがもしある場合には、そういうこともやつてよろしいと思いますけれども、國策として日本の林業政策から見まして、國家の財源を涸渇させるようなことにならないようにさせなければならぬし、また森林業のごとき非常に長期投資を要するものが、現下の民間事業として可能であるかどうかというふうな点も勘案しなければならぬと思うのです。木材資源とのにらみ合わせを考えなければならぬと思います。  それから鉄道についても、これは重要な國策でございますから、今ただちにこのことについては政府として結論に達しておりません。これは私設鉄道はたとえば大体この鉄道はもうかる。從つてこれはわれわれの方でやりたいというような御意向のものであつて、その拂下を御要求になつておるものもあるやうに聞いておるのであります。しかしながら、國全体といたしましては、これをかれこれ総合いたしまして、もうかる線、もうからざる線、これを総合とて國策として運輸政策をやつておりますので、かような点になると、事は非常に重大であつて、しかしお説の点は十分檢討いたします。まじめに檢討いたしますということは申し上げることはできるのでありますけれども、それ以上ここで御答弁申し上げることは困難であるというふうに御了承願いたいと思います。
  88. 角田幸吉

    角田(幸)委員 きわめてまじめなる御答弁を承りましてありがとうございました。  さてそこでどうしても五十億程度の増額をしなくてはならないものだということが、先般來建設院総裁が要求された額についても、明かであろうと思うのであります。そこでわれわれは今後新財源を発見いたしまして、ぜひとも五十億の修正動議を出す予定であります。この点について大藏大臣に御考慮を願つておいて、私の質問をこの程度において打切つておきます。
  89. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 次は東委員
  90. 東舜英

    ○東委員 私は軍公利拂のことと、財政整理について、簡單な質問をいたしたいのでありますが、その前に今日の政局の問題について一應伺つておかないと、われわれは予算の審議についてこれに関連することで、政局というものは実に重大な前提にあると思いますので、ぜひ総理大臣に所見を伺つておかなければならないと思うのであります。政局不安と申しますが、実に内閣の危かしい状態は、これ以上はなはだしいことはないと思うのであります。芦田内閣の與党であられる社会党のことは、私どもよくわかりませんが、しかしこれも率直に申し上げて、おそらく社会党百二十名の衆議院議員の中で、この内閣を眞劍に支持しておられる人が、はたしてどのくらいあるだろうということは、想像のつくところだと思うのでございます。おそらく社会党の中で、半分もこの内閣を支持しておられる人があるかどうかということを、私は疑うくらいでありますが、社会党のことはとにかくといたしまして、総理大臣の内輪である民主党が、御承知の通り、昨年國管問題で二十一人脱党し、あなたが総理大臣になられるときに十六人脱党し、きのうはまた六名もお出になつたということであります。あとに残つておられる人たちの中でも、おそらく今眞劍にあなたを支持しておられる党員というものは、これは私ども内部事情によく心得ておりますが、きわめて少いようである。今のところあなたが総理大臣であるというので、とにかく強引にまず勤めておるというような状態であることは、おそらく偽りのないところだと私は思うのであります。とにかく與党というものは、もともと全部顔がそろうても二百三、四十名というのでありまして、野党との開きがごくわずかなのでありますが、それは全部そろうてのことでありまして、実質の人間からいつたならば、おそらく何十人かになつてしまうのじやないかと思うのであります。これは私がここにくどくど申し上げるまでもなく、今日までの議会の本会議における與党のあの議席をごらんになれば一目瞭然である。これほど政局不安定の基礎の上に立つて、あなたが、いや議会を乗り切るのだとおつしやるかもしれないが、われわれはこの予算を審議するについては、この予算將來一箇年に向つてとにかくあなたが責任をもつておやりにならなければならぬ予算なのだ、われわれはここで予算を審議して、多少腑に落ちないことがありましても、あなたが一年間政局を担当していける能力があれば、場合によつては多少の不満があつても通ずかもしれません。しかしながら、もう今日になつては、あなたの地位というものは、まつたく風前のともし火なんだ。こういう状態のもとにおいて私どもはどうしてこの予算を、これは政府が出した案だからといつて、まじめに受けて審議できるか、このことはまじめにひとつ考えていただきたい。われわれはいい加減に、何も内閣をつぶそうとか、何とかいうけちな料簡は少しももつておりません。とにかく政局の安定ということは最も大事なことである。あなたはこの間も労働不安を除かなければ産業の復興ができないとおつしやつた。その通りである。しかしながら、労働不安よりも何よりも、政局の不安が一番根本であります。労働不安、社会不安、経済不安、金融不安、すべての不安というものは、みな政局の不安からくるのであります。この不安を除かない限り、われわれはいくら予算を審議したつて何にもならない、砂上の楼閣です。この点についてあなたの御感想をここではつきり聽きたいのであります。
  91. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま東君より、いろいろ内閣のことを御心配に預かつておりますが、もし予算がどうしても不適当だというので、國会が通らないというような事態が万一起りましたならば、そのときにな内閣としてとるべき措置考えるつもりであります。
  92. 東舜英

    ○東委員 私は、予算のことを今あなたに申し上げたわけではない。予算のことは別に議論をするつもりです。現実の問題として、議会政治というものは政党政治であり、政党の頭数がそろわなければ、あなたの地位はないのです。昔は天子樣が任命なさつたから、議会の数なんか大したことではなかつたかもしれないけれども、それでも議会の数が左右した。今日は、われわれ國会があなたの地位をきめる。あなたの地位は明らかにもう全然なくなつておる、幽霊のような存在である。それでもつて予算でどうこうということは、問題ではない。これは予算とは別個に考へるべき問題であります。あなたの現在の地位について、あなたはどういう御感想であるかということをお尋ねしておるのです。
  93. 芦田均

    ○芦田國務大臣 衆議院において、この内閣を信頼しないという議員の名前を私にお示しくだされば、その数によつてとくと考えます。
  94. 東舜英

    ○東委員 あなたもそういうことは百も御承知で、それ以上のことはあなたもお話できぬだろうと思いますから。これはおのずから常識で御判断願うことにいたしまして、軍公利拂の問題について、一点総理大臣にお伺いしたいと思うのであります。今度の軍公利拂の問題につきましては、われわれの同僚からも、これが金融界や財界に及ぼす影響等について、專門的な質問もありましたが、私はそういう問題を離れて、政治問題として一つあなたに伺つておかなければならぬことは、今度の軍公利拂に関するこの政府の処置というものは、いまさらここにかれこれ申し上げるまでもなく、これは社会党と民主党とが協定の結果、やむを得ずおつくりになつた、これはよくわかります。あなた方の立場はよくわかるのでありまして、その点をかれこれ申し上げるわけではありませんが、ただ私はここにぜひはつきりしていただきたいことは、社会党と民主党の内輪でどういういきさつがあつたにしろ、いやしくも國会に内閣の案として法律案を上程された以上は、われわれ國会は、國民の了解の行く、納得の行く理論がなくては、この案に対して簡單に承服することはできないのであります。いかなる法律といえども、國民を納得させるほど法律の効果があるのでありまして、國民の納得の行かない法律は、かえつて國を乱すもとであります。私は軍公利拂の今度の処置に対する現内閣の理論的根拠——捏造でも何でもようございますから、ここではつきりと國民が納得の行くだけの理論を明確にしていただきたいと思うのであります。
  95. 芦田均

    ○芦田國務大臣 軍公利拂の問題につきましては、先日西村久之君に対して大藏大臣答弁いたした通りでありまして、それ以上附け加えてお答えすることは、あまり残つておらないと思います。
  96. 東舜英

    ○東委員 私は今総理大臣にお伺いするのでありますが、この間西村君にどういう答弁をなされたか知らぬが、おそらく軍公利拂の明確な理論的根拠というものは、何ら発表されておりません。総理大臣ができなければ、大藏大臣でもよろしゆうございますから、もう一遍話してください。
  97. 芦田均

    ○芦田國務大臣 大藏大臣を煩わすまでもなく、私からお答えいたします。先月政府を代表してこの席でお答えした通りであります。
  98. 東舜英

    ○東委員 私実はどういう答弁をなさつたか、まだ手もとに速記録が届きませんが、あるいは重復のおそれがあるかもしれないけれども、これは念には念を入れなければならぬことでありますから、はなはで失礼でありますが、こう一遍御答弁願いたいと思います。
  99. 北村徳太郎

    北村國務大臣 先般西村君にやや詳しく申し上げたのでありますが、これは理論的根拠と申しましても、そうむずかしい問題ではないと思うのでありますが、元來軍事公債というものに対しての考え方において、國内にいろいろな論議があつた、利拂をやめるべしという考え方と、軍事公債そのものを否定する考え方相当にあつたのであります。それで、かようなことで帰一するところを知らないで、非常な不安感を與えておつたということは事実でありまして、從つて今回とりました処置は、このことによつて、軍事公債に対する從來の考え方というものに、一應終止符をつけまして、今回に限りこういう処置をとつたのである。しかもこれは元本には触れない、元本は安全である、利子の支拂期日を延長するということだけで、從來國内にいろいろな軍公問題に対する考え方、元本そのものさえも否定する考え方があり、非常に不安を與えておつたのに対して、さような考え方を一掃して、一應軍公問題に関する一つの決定した処置をとりました。これによつて將來に対する不安を除き得たと、私はかように考えておるのでありまして、さような点に軍公問題を取扱つた根拠があるということを、先般西村君に申し上げたのでありますが、さように信じておる次第であります。
  100. 東舜英

    ○東委員 その話ならば、この間承つて承知しております。世の中にはいろいろ批評がある。それは当然です。社会党は軍公の利拂をしてはいかない。民主党はすべし。それはいろんな理由があるに相違ない。いろんな説がある。説があるからと言つて、いい加減に中間によつてつたのでは話にはならない。そういう中間が一番いいのだということを國民に納得させるだけの理論的根拠がなければならないのではありませんか。あなた方がただ内輪でいい加減にまとめるためにつくつた、それでは國民は納得できません。あなたは最も理論をやかましく言う人であります。大藏大臣ほどおそらく理論をやかましく言う人はないのだが、その理論がこれでは理論になつておりません。それからこれが最後の終止符だとおつしやるが、そうしますと、私どもの解釈するところによると、軍公は今年一年だけ停止するが、あとは全部また拂うのだというのならば、結局軍公は全部支拂うということになるのですね。この点はもう一遍念を押しておきます。
  101. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答えいたします。これは利拂をやめるというのではなくて停止をしたのであります。從つて支拂期日が延長されたのであります。かような御理解願つて結構であります。
  102. 東舜英

    ○東委員 私はここに大藏大臣にもう一つお伺いしたいのですが、なぜ今年に限つてそれを一年停止しなければならないか、今年一年ということの理由がお伺いしたい。來年になつたらいいというわけがどこにあるか、そのわけを伺いたい。
  103. 北村徳太郎

    北村國務大臣 同樣な質問が西村君から出て、すでにお答え申し上げたのですが、重ねて申します。これは先ほどから申し上げておりますように、國内においていろいろな考え方があつた、だから今回は一年に限つてこれ以上はやらないのだ、この軍公利子に対して一箇年分だけこれを停止するということによつて処置をとつたのでありまして、これは時日の問題であります。一箇年間停止することによたて從來のもやもやしておる軍公そのものを否定する考え方、あるいは利子だけを否定する考え方、そういうものをすつかり整理をして、政府はこういう処置をとりましたが、これだけであります。これ以上はやりません、ということは声明した通りであります。さような目的でやつたのであります。
  104. 東舜英

    ○東委員 その程度の話なら、この間西村君のときに聽いておりました。その答弁で満足できないから伺つておるのですが、しかしながらどうもあなたは質問をしてもこれ以上はむずかしいと思います。あなたは理論家でありながら言えないというのは、よほど苦しいのだろうとお察しします。そこで私は社会党出身の閣僚として労働大臣がおられるから、私は労働大臣に伺いたいと思うのです。社会党は軍公利拂はいけないということに党議できまつてつたわけですが、今度この軍公利拂というものは結局において全部利拂するということになつた。從つて社会党の党議には根本においてこれは相反しております。一年だけ延ばすんだと言うけれども、事実は全部拂うということなんだ。そうすれば、あなたの方の党議とは全然逆に行くのでありますが、それをあなたはむろん閣議で賛成なさつたのでありますから、賛成なさつたことをかれこれ私言うわけではありませんが、ただ結論といたしまして、あなたたちは今後再び軍公利拂は停止するということを二度と天下に声明なさらぬかどうかということを、ここにもう一遍伺つておきたい。
  105. 加藤勘十

    加藤國務大臣 軍公利拂停止の問題については、芦田内閣としては、今大藏大臣の答えた通りであります。社会党は社会党としての独自の見解をもつておること言うまでもありません。芦田内閣は連立内閣であります。從つて芦田内閣に関する限り、ただいまの大藏大臣答弁はその通りであります。社会党は社会党として大会で決定した一箇の方針がありますが、それは社会党独自が決定すべき問題であつて、少くとも芦田内閣の措置は、三党政策協定の場合における軍公利拂一箇年停止的処置、この三党政策協定の線に沿つて忠実に実現されたものでありますから、芦田内閣の閣僚の一人としては、これを是認するものであります。
  106. 東舜英

    ○東委員 どうもたいへんなことを伺つたのでありますが、この問題に関する限り、今世間で一番心配することはそこなんであります。今年一年は大藏大臣は絶対に一年限りだというけれども、來年に行つたらまた何するかしらむというのが社会不安なんである。これが一番大きな問題である。現内閣はなるほど芦田内閣であつても社会党が多数になつております。その多数の社会党がわれわれはわれわれのまた独自の考えだということになつたら、この案は問題にならぬではないか。これをはつきり明確にしてくれない限り、この案というものはわれわれは信用するわけにいかぬ。どうか総理大臣の御答弁を願いたい。
  107. 芦田均

    ○芦田國務大臣 芦田内閣としてこういう案をとつて、これを実行していく。明年、民自党内閣ができたら、これまた変るかもしれません。そこまではわれわれは保証し得ない。
  108. 東舜英

    ○東委員 こういう状態、それだから私どもは政局不安を心配しているのであります。明日にもまた世の中が変つてくる、これだから私はあなたに政局不安をどうするかということを前提としてお伺いしているのでありますが、これ以上あなたを追究したつて、どうせ言えることでないから私は打切りますが、実にこの問題に関する限り容易ならぬことだと、私は思うのであります。
  109. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 庄司君から特に関連事項について、簡單な御質問の申出がありますので、許可いたします。
  110. 庄司一郎

    ○庄司(一)委員 軍公利拂の問題に関して、大藏大臣並びに安本長官に簡單な一問だけをお伺いをしておきたいと思います。去る十二日の新聞報道によりますと、新聞の見出しは初号活字、三段拔きで、軍公利拂の延期は実現せぬよう努力、藏相、安本長官銀行大会での言明、かような見出しの下に、去る十一日に都内において行われましたる全國の銀行大会に公務上臨席せられましたところの大藏大臣並びに安本長官は、軍公利拂の延期は、金融界のためにまことに不祥事である、困つたことであるから、それを阻止するような決議をされた直後における大藏大臣並びに安本長官としての御挨拶の中において、軍公利拂延期は本國会に提案されてはおるのでありますけれども、実現せぬようにせつかく努力するというような御答弁をなされたとの報道が、大きな見出しで書いてあります。この通りでございます。初号活字三段拔きであります。かような新聞報道がございますが、本委員会においては、ただいままで御熱心に利拂を一年だけ延期しなければならぬという御提案とともに、その趣旨の御弁明に努力されておる大藏大臣並びに安本長官が、銀行の大会に行かれては、ここに二つの異なつたキヤラクターを発揮されて、実現せぬようせつかく努力する旨の御挨拶がなされたという新聞報道があります。新聞の報道が正しいのであるか、本委員会において、あるいは本会議において、るる御熱心に軍公の利拂の延期を提唱されておるのがほんとうであるか、これは明確にしておきたいと思うのであります。
  111. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま庄司委員の発言、きわめて重大な意議があると思うのであります。それではつきり申し上げておきたいと思います。本月十一日に、全國銀行大会が工業倶楽部で開かれたのでありますが、私は出席いたしておりません。野田次官が参りまして、そうして私の演説草稿は——草稿もございますが、これは私の財政並びに現在の金融政策についての意見を述べたのを、野田次官が代読いたしたのであります。それからこの会が終りましたころに、ようやく議会の手がひけましたので、ちよつと顔を出したのですが、そのときは單なる挨拶をしただけでありまして、軍公問題には全然触れておりません。それからなおもう一つ差加えて申し上げておきますが、十三日に全國地方銀行の大会がありまして、これには日曜日でございましたから、私は繰合して出たのであります。その際に地方銀行の代表者である会長は、今われわれはこの軍公問題のために法律案の通過を阻止する運動をするから、さよう承知してもらいたいという申出がありましたが、私としては内閣の責任者として、さようなことをさようでございますかと承るわけにまいらない。法律案として提出した以上は、これが通過するために良心的に努力しなければならない立場にあるから、さよう御承知を願いますということをはつきり申し上げておるのでありまして、これは多数の銀行家諸君が出席されておりました。さよう御了承願いたい。私はさようなことは決して申しておりません。
  112. 植原悦二郎

    ○植原委員 私はこの問題についてちよつと関連質問をいたします。加藤勞働大臣は、先刻社会党の党議として、軍公利拂はいたさない、これを廃止するということが党議である。しかしこの内閣は連立内閣であるから、連立内閣の意向に從うよりいたしかたない。これだけのことはよくわかるのですが、ただ問題となることは、加藤君はただいまの社会党を代表して内閣に列せられておるのか、おらないのか。昨今書記長としての個人だというような妙な言葉がはやります。ただいま加藤君の御答弁を聽けば、自分は社会党だ、但し内閣にはいつておる以上は、内閣の決議に從わなければならないということになると、社会党の國民に対しての声明というものは、社会党として責任をもたないものかどうか。加藤君は社会党におるときは責任をもつが、社会党を代表して内閣にはいつたときは、その責任をもたないとおつしやるのか。これは國民として非常に惑うことであります。社会党を代表して内閣にはいつておれば、その社会党の声明を実現するために内閣に入閣したとしか考えられない。しかもこの内閣の三派協定の基礎は、御承知の通り軍公利拂を停止すること、そのことははつきりと五月の暫定予算を審議するときに、大藏大臣も総理大臣も、さような三派協定の基礎である、ただそれの取扱い方法を委員会とか懇談会によつてきめるのだということを、再三再四この室内において御言明なさつた。その点だけでも、今日総理大臣と大藏大臣が言われることは、五月の暫定予算のときと違つております。これを違わないとおつしやるならば伺いたいが、そう違つたのだ、あるいは委員会においてそうきめたのだ、とおつしやればこれは別の問題だが、あなた方のように、その場凌ぎの御答弁をなさる方に、さようなことをいまさら繰返して追究して言うてみたところが益はないから、その点は今かれこれここで大藏大臣や総理大臣に質問するのではない。加藤君のこれまでの労働運動の經瀝を見まして、平素私は尊敬しておつた。すべて良心的に動かれると尊敬しておつた。にかかわらず、私はただいまの答弁を聽いてびつくりした。加藤君の言としてはとんでもないことを言われたものだと、私はむしろびつくりした。内閣におはいりになつておるのは、社会党を代表してはいつておられるのではありませんか。加藤君は労働大臣として、個人としておはいりになつておるのか。また社会党だが、党議として天下に声明したことは、連立内閣であるからといつてその問題をほごにして、それで國民に対する責任が果せるとお考えになるか。この二点をはつきり承つておけば、將來のために、日本の政治のために、社会党というものを國民に紹介する上において明瞭になると思いますから、この点をはつきりしておきたいと思います。
  113. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいま議会政治の先輩であると思つている植原さんから、きわめて皮相な見解をお伺いして、私も実はびつくりしたのです。連立内閣というものは、一体どういうものか、もし社会党だけの政策を行うならば、社会党の單独内閣において責任をもつことは、これは当然の話であります。もちろん私は社会党を代表してこの内閣に参加しているのでありますが、この内閣の基本は、三党政策協定こそが、芦田内閣の政策の全部である。この三党政策協定の実現に努力するということが、政治的良心の発露であります。そうでしよう。社会党の独自のものが実現されないからといつて、それならば連立内閣にはいらなければいいじやないかと言うならば、これはおのずから別でありますが、少くとも連立内閣に参加するということは、連立内閣の基礎である三党政策協定が是認されたがゆえにはいつておるのでありまして、われわれは社会党單独内閣の場合には、社会党の政策の実現の良心的責任をもつ、連立内閣においては、連立内閣の基礎である三党政策協定の実現に良心的な責任をもつ、これが私どもの当然の態度でなければならぬのであります。
  114. 植原悦二郎

    ○植原委員 労働大臣として加藤君お忘れではありますまい。三派協定の基礎は、軍公利拂停止ということであつたのであります。そうすれば、その三派協定の政策をみずから破つているということは、あなたが何と弁明されても、天下はその問題をあなたの言う通りであるとは決して認めません。あなたは三派協定を基礎として連立内閣におはいりになつたと言われるが、三派連立の基礎政策は、軍公利拂停止であるということを、大藏大臣も総理大臣も五月の暫定予算を審議するときに言うております。あなたは三派協定の基礎によつてと言うが、それではその基礎を実行しておらない。軍公利拂を停止するということが、三派協定の基礎でありまとた、ただ停止を一年延期するということが、三派協定の基礎でないことは、天下周知の事実であります。これ以上議論しても無益でありまして、ただ言葉の上の爭いをするだけのことであります。社会党はいざ知らず、全國民一人としてこの芦田内閣の三派協定の政策の基礎は、軍公利拂停止ということで、その停止をただ一年延期したというこによつて、世間を言葉でごまかしても、事実の上で通らないということだけを御承知になつておけばそれでよろしいのであります。
  115. 加藤勘十

    加藤國務大臣 植原さんは、三党政策協定の成文を宙で御記憶であるかどうか知りませんが、この点に関する三党政策協定は、軍事公債利子の一箇年間支拂停止的措置でございます。よろしゆうございますか。そういう表現でありますから……。いや違いはしません。それはわれわれは当事者なんですから、当事者の言うことは間違いがないぢやないですか。そういう点から言つて、五月の暫定予算の審議のときに、大藏大臣や総理大臣がどのようにここでお述べになつたかは知りませんが、われわれはこの軍事公債利子の一箇年間支拂停止的措置、この三党政策協定の線に沿つて、これを忠実に守つている、こういうことでありますから、誤解のないようにしていただきたい。
  116. 東舜英

    ○東委員 行政整理についてお伺いいたしますが、総理大臣は出先機関の整理を今考えておるというようなことをこの間答弁されておりますが、出先機関を徹底的に整理してくれということは、これは全國民の意見であり、全國民の輿論であり、全國の町村においても眞劍な叫びである。これに対して政府は一体いつからどの程度、出先機関を整理するつもりでありますか、一應これを伺いたいと思います。
  117. 芦田均

    ○芦田國務大臣 出先機関の整理の問題について、政府におきましては、第一次の整理案をつくりまして、関係筋にその案を打合わしております。もうほどなく回答が來るかと期待いたしておりますが、打合せが終了次第これを発表いたします。
  118. 東舜英

    ○東委員 そうしますと、それに伴う予算関係はどういうことになるか、これもお伺いしたいのであります。同時にこの二十三年度政府の発表された予算説明書によりますと、昭和二十三年度において人件費を一割五分程度節減するということが書いてありますが、一割五分というこの具体的の内容を、少し伺いたいと思うのであります。これはむろんその辺の事務の方で結構でありますから、一割五分の内容を伺いたい。
  119. 芦田均

    ○芦田國務大臣 今回の予算におきましては、人員の部門においては、種々各省にわたる整理の都合がありますから、現在の定員は説明書に出ておりますが、整理した以後の人数は参考書の中には載つておりません。但し給與の面においては、一割五分の人件費を節減したものを計上いたしております。
  120. 東舜英

    ○東委員 私今の答弁はどうもよくわからぬのです。今の御説明では私は納得ができないのであります。もう少し私の納得のいくような説明を——別にこれは総理大臣を煩わすことはないのでありますから、もう少しわかりやすく説明願いたいと思います。
  121. 芦田均

    ○芦田國務大臣 これは特に政府委員を煩わすような問題ではありませんから、私からお答えいたします。各省には月給をやる額がある。各省にわたつて月給の中から從來の定員よりも一割五分だけ引いて予算に載せてある。どうも東君のような俊敏な方がおわかりにならぬのが不思議だと思います。
  122. 東舜英

    ○東委員 実はその一割五分引いてある。こうおつしやるのでありますが、私ども今申し上げた通りに、数字のことはよくわかりません。見てもなるほどここに一割五分が引いてあるということがわからぬから、わかるように論拠を説明してもらいたい。これは総理大臣にはむりだろうから、事務の方で結構だというのです。どこに引いてあるか示してくれということを言つておるのです。これは総理大臣にはむりでしよう。
  123. 芦田均

    ○芦田國務大臣 引いた数字予算に出ておる。
  124. 東舜英

    ○東委員 まことにどうも、これは引いた数字予算に出ておるとおつしやつても、出ていないとおつしやつても、数字で証明してもらう以外に審判のしようがないだろうと思います。あなたの方では一割五分を引いてあるのか、三割引いてあるのか、数字を見せないで引いてある、引いてある。ああそうかといつてどもは引下がれるものではないから、これは数字を示してもらいたいといつておる。一体人間を減らさないで予算で一割五分を減らした。それはなるほど人件費のわくがあつて、そのわくの中から一割五分とつたんだ、こういうことを総理大臣は言おうというのだろうと思います。そういうことが実際でき得るものかどうか、私ども素人にはわからぬのでありますが、その説明を願いたい。
  125. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。一昨日でありましたか、お手もとに本年度予算の定員の表をお届けしてあるのであります。これに毎月何人の数になつておるかということがはつきりいたすように出ております。その人間を基礎にいたしまして、それに必要なる人件費を予算には計上すべきものでありますが、その計上すべき金額から一割五分を減らした金額予算には計上しておるのである。かように御了解願いたいのであります。
  126. 東舜英

    ○東委員 一昨日か私どもの手もとに來ました予算定員数というものを見ますと、昨年度より人間が五万ほど殖えておる。私ども数字の読み誤りか何かしらぬが、誤つておるかしらんと思つて、何遍が繰返して読んだ。去年よりか今年は多い。二十二年度は四十二万何がし、これが二十三年度の一番末期、二十四年の三月はこれでは四十七万になつておる。二十四年の二月には四十七万、二十四年の一月には四十七万、二十三年の十二月に四十七万。とにかく七月ごろからは大体四十七万という数字になつておるのであります。去年の二十二年度よりも五万人殖えておるのであります。これはどういう論拠でありますか。以前より人間は減らさないのだ。しかし人件費は減らした。せめて人間は殖えないのかと思つたら、人間は殖えておる。
  127. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。ただいまの人員の表によりますと、たしかに五万人殖えておるわけであります。この五万人殖えておる表は、一割五分の節約をいたさなければかようなことになるという資料でありまして、これに対しまして人件費の一割五分をこの数字より差引くということにいたしたわけであります。從いまして、予算書には一割五分を差引いた金額が給與の金額として出ておる。かように御了承願いたいと思います。
  128. 東舜英

    ○東委員 これでは参考書にならぬと思います。どういうわけで特にこういうものを二十三年度一般会計予算定員表としてわれわれの手もとに配付したのです。何の必要があつてどもにこういうものを特にお渡しになつたのですか。非常に迷うではありませんか。参考になるどころか、逆の参考になる。これはどういうわけですか。政府委員の説明を願います。
  129. 福田赳夫

    ○福田政府委員 委員会において予算の定員はいかようになつておるかという質問であります。しかしながら、予算編成のきわめて接近した機会におきまして、人件費は一割五分落すということがきまつたのでありまして、一割五分人件費を落すということは年度途中から始まるというようなこともありまして、定員をいくら落すということになると、これはなかなか算定が困難なのであります。ただいま鋭意各省ごとにどういうくらいに人を減らすかということでやつておるのでありますが、それが予算の編成までには間に合わぬ。そこで人件費一割五分を落す。これが予算編成のまぎわにきまつたので、定員で一應考えて、その定員からはじいた予算の人件費の金額から一割五分落す。かような数字をとつたのであります。
  130. 東舜英

    ○東委員 どうもこれは皆さんどなたかおわかりになるかもしれませんが、私にはわかりかねる。とにかく金を人件費として一割五分減らす。人間は減らさないのだ。この表は定員であつて——それではちよつと伺いますが、これは予算の定員であるというが、実際の定員はいくらなんでありますか。この参考資料はあてになりませんから、ほんとうのことをひとつ……。
  131. 福田赳夫

    ○福田政府委員 ただいまお手もとにある資料は当初の定員の予定でありまして、これからさらに一割五分の人件費を節約する場合には、いかなる定員になるかということはただいま各省ごとに檢討中であります。從つてその際においては、さらにこれをごらん願うことにいたしたいと存じます。それからなお実際の人員はいくらおるかというお話でありますが、実際の人員というものは、最近の資料は持ち合わせておりませんが、二十二年十二月十四日現在におきましては、一般会計において三十九万五千人の定員に対しまして三十一万九千人の実員であつた。かようなことで、最近ではありませんが、御了承願いたいと思います。
  132. 東舜英

    ○東委員 要するにこれは將來のことであつて、二十三年度のお話でないのですね。ここに二十三年度予算説明書というて、一割五分減す、こういうのだけれども、これは二十三年度ではなくして、これから考えるということなんですね。そういうことに了解してよろしうございますか。
  133. 北村徳太郎

    北村國務大臣 私がお答え申し上げます。実は問題になつております行政整理をやるべきであるということは、ただいまいろいろ行政整理に関する成案等もあるのでありますが、これがやられて、行政整理の結果、行政費が圧縮されて、たとえば人件費が減る、これが順序なのであります。ところがそれをやつてつたのでは、どうしても行政整理というものは、いろいろ手続上の関係もありますし、今度の予算に、行政整理を行つたその結果として人件費が減るということを待つには、どうも予算を早くつくらなければならぬし、行政整理は問題が多いから後回しにして、われわれ財政当局としては、あとで、各省においても相当これは出血もあるかもしれないし、困りもしようけれども、とにかく一應何とか行政費を圧縮しなければならぬということで、まずもつて人件費を一割五分切るということを閣議で御了解を解まして、一割五分切るということを先にやつたのであります。それで今度の予算には、人件費として、先ほど主計局長が申し上げましたように、定員に対してある賃金率をかけて出た金額を一割五分全部天引してしまう。こういうわけであります。二十三年度において一割五分減つておる、こういうことは明らかな事実であります。從つてこれをどう処理するかということは、今各省においてやりつつあるのでありまして、その点は一割五分圧縮されてやつていける。それぞれの省で行政整理を早くやる。金の方は先に減らしてしまつた。かような関係になつております。さよう御了承願いたいと思います。
  134. 東舜英

    ○東委員 金の方は先にお減らしになつて、これから着々と数の上にも及ぼうというお考えのように伺つたのでありますが、そうしますと、今あなたたちが行政整理をことしは一割五分の金を減らしたというが、それに伴つておいおいこれから人員の整理をしなければならぬが、その整理をしますと、結局昭和二十三年度の人間の数字というものは、いくらになるのでありますか。それをお示し願いたいと思います。
  135. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは実は現在文教関係において非常な人の不足を來しておる。それから税務関係においても税務機構を強化しなければならないので、税務機構は相当に殖えるだろうと思います。ここにおいてできるだけ圧縮しなければならない。それから新しい問題としては海上保安廳の問題がございまして、これまた若干その方で殖えなければならぬ。配置轉換を行い、その他新採用を制限し、減らすべきところは減らす。しかしながら、やむを得ざるもの、たとえば税務機構のようなものは、どうしても今のように人手不足では問題を起しておるのでありますので、これは強化しなければならぬ。ただいま法律案を出して御審議を願つておりますが、さようなことになると思うのであります。それで行政整理全般としては、やるにはいろいろ順序もございますし、また一面においてはなかなか急速にいかぬ点も実はあるわけであります。それで先ほど申し上げましたように、まずもつてわれわれとしては財政の面において、人件費の一割五分を先に削つてしまう。それで出血するところもございますし、あるいは予算定員、そういうものもございまして、あまり出血をせずに済むところもあるのではないか、かように思うのであります。これは省それぞれの事情によつて違うと思いますが、さように御了承願いたいと思います。
  136. 東舜英

    ○東委員 現在の財政においては、何をさておいても、行政整理ということは、非常に大事なことでありまして、われわれはめちやくちやに行政整理をしろということを申し上げておるのではない。非常に不合理な面がたくさんあるのです。つまらぬところに要らぬ人間を使つたり、要るところでは人間が足らなかつたりするところもありますので、この際徹底的の行政整理を叫んでおり、また総理大臣もこのことについてはぜひやらなければならぬということを、えらい現内閣の一つの政策のように説明しておられるのであります。でありますから、われわれもこれに対しては期待をかけておつた。ところがこれを見ると人件費の一割五分——元來一割五分とか二割というのは、これは官僚に行政整理をやれというと、必ず一割五分か二割——二割ぐらいまではこれはだれでもできることなのであります。二割までは何も数字の面をいじらなくてもできる。二割までは行政整理、人件費の整理にはならぬ。二割以上の整理をしなければほんとうの人件費の整理にならぬ。欠勤したり、何かして実人員は実際は八割くらいしかおらぬのがほんとうであろうと思う。從つて一割五分くらいを節減したといつて、これが行政整理でござるということはあまり大きな口はたたけぬと思います。まして今のお話によりますと、大藏大臣はいよいよこれから人間の整理にかかるのである。配置轉換する。文部省の方は人が足らぬからやることになつておる。これでは結局人は減らせぬようになつてくる。結局減らせぬことになつて、むしろ殖えはせぬかというような今の口吻である。殊に今度いろいろと各省の設置法案というものが出ております。逓信省、運輸省、建設省、たくさん設置法案が出ましたが、あの案を見ますと、私からみると、行政整理どころではない、かえつて行政拡張案と言つてもよいようなものが出ておる。これはあなたたちが行政整理、行政整理といつて、よいかげんにその辺で、これは鉛筆の先で数字をごまかす——ごまかすというと語弊がありますけれども、よいかげんのことをつくろつて、あまり行政整理に対して熱意がない。熱意のないことはよいけれども、われわれの惑うような文書まで出されておることは、実に迷惑千万である。この点を十分反省されて、われわれの納得のいくように、速やかにこれが処置についてわれわれの納得のいくような成案をつくつて、この國会にお出しにならんことを切望いたします。これで私は質問を打切ります。
  137. 淺利三朗

    ○淺利委員 行政整理の問題については、私もお尋ねしたいと思つておりましたところ、同僚から大分同じ質問が出た、さいわい総理大臣がおいでになつておりますから、この根本の考え方について、政治的の御見解を承りたいと思います。日本の官吏の数が、戰時中にすべてのものが官権によつて運営されたので、非常に殖えておるのであります。それが今日そのまま温存され、さらにそれが統制經済の強化という問題、あるいは物價廳においてはすべての物價について公定價格をきめるとか、あるいは統制するとか、こういう行き方、あるいは公團の設置ということで、非常に膨脹をいたしておるのであります。すなわちこの点から考えますと、今日の日本財政の窮迫の根源は、この官吏の人員増ということに重大なる関係があると思うのであります。ゆえに日本財政ほんとうに緊縮して國民の負担の限度の適應するためには、行政整理ということを眞劍に考慮しなければ、今後の日本財政經済の運営はできないと思うのであります。殊に官吏の人員過剩の影響は、やがて累を民間の企業に及ぼすのでありまして、むしろこの際日本の官廳において行政整理を行つて、それによつて民間の企業の合理化、あるいは過剩人員の整理を促進するということでなければ、この問題は解決しないと思うのであります。そこでこの問題については、芦田総理はしばしば声明はせられておるけれども、どの程度においてこれを実現せられんとするか、行政整理と今日の日本財政との上において、どれだけの重要性があるかということについての御認識及びそれについての御見解を承りたいのであります。もう一つ日本將來の官界行政のあり方、これはかつて日本に官吏行政というものは、一方において自治的に進める、たとえば産業の方面においても、官吏行政であつたものを、農会を起し、あるいは各種の商工組合を起して、組合自体、あるいは農会の技術的運営によつてその発展をはかる、こういう計画が進められてあつたものが、後に官吏行政の方がかえつて強くして、せつかく技術的に発達を促そうとしたところの農会の機能は、ほとんど萎靡して振わず、遂にいわゆる官吏の二重行政が、この自治の方面は未開のままに、ほとんどその有終の成果を見ないで、今日に至つたような次第であります。しかるに今日においては、すべてのものが官吏によつて行われておる。日本の經済の各方面おいても、すべて官吏が行つておる。経済の実態の処理、あるいは財政金融の実態に触れて、すべてが官吏の力によつて行われておる。民間の專門人の驥足を伸ばすという点は、はなはだ少くなつておると考えるのであります。そういうふうに考えますと、今日経済の民主化ということは口には言つておりますけれども、民間の優良なる專門の人々がこれに十分の驥足を伸ばす余裕がない。であるから十まで手を縛り足を縛り、すなわち官憲のなすがままに、そのわくの範囲内において活動するほかない、こういう実情にあると思うのであります。將來経済の民主化ということから見まして、どういうお考えをもつておやりになるか。むしろ今日においては行政整理を行い、また各種の統制のごとき無用な統制を撤廃して、大いに民間の自治の力によつて、民主的に日本財政経済を運営するという方面に向うべきではないか。こういうことに対しましては、総理大臣はどういうお考えをもつておられるか。その根本の日本將來の行政のあり方について、御見解をこの際承つておきたいと思います。なおそれ以外のこまかい問題については、また別の機会においてほかの閣僚からお伺いしたいと思います。
  138. 芦田均

    ○芦田國務大臣 行政整理の実行に対する政府の所信につきましては、本会議におきましても一、二度表明いたした通りでありまして、政府としてはこの際行政整理を徹底的に行いたいと深く念願しておるわけであります。  第二の將來の行き方、殊に民間の事業を次第に官廳の事務に移すような傾向がだんだん多くなつてきておるという御意見は、事実においてその通りであると思います。御承知の通りに吉田内閣当時から、あるいは安定本部をつくり、もしくは公團組織を採用し、地方の出先機関をつくられたということは、当時の客観情勢がこれをしからしめたものであつて、その情勢は今日においても本質的には変化がありません。從つて占領下においては、日本政府の独自の決心をもつて行い得ない部門のあることは、おそらく淺利君もよく御承知のことと思います。しかしわれわれの力で及ぶ限りは、わが國の行政機構が深く民間の企業に干渉するごとき制度は、永久的の制度としては決して望ましきことではない。今日はこの日本の置かれたる環境において、その事態に應ずる一つの行き方として、かような形態をとつておるということは、私から説明しなくてもおそらくこの委員会に御列席の各位はその辺の事情はよく御了解になつておることと存じます。
  139. 淺利三朗

    ○淺利委員 ただいまのお話によりますと、すべてのことが官廳依存にあることは、占領下におけるやむを得ない情勢であるというような御意見でありましたが、私はこれを占領下におけるやむを得ない情勢という一つの原因に片づけてしまうわけにいかぬと思うのであります。これはむしろ局にあたる方々の考え方によるのであります。ただいまほかの同僚からもお話になりましたように、地方自治法の実施に伴つて、あるいは各省の設置法が出る。この内容を見ますと、ますます拡大強化であります。これは占領行政下の必要から起つたとは、われわれはどうしても考えられぬのであります。これはむしろすべての官憲に権力を集中するというような考え方が、ますます高進してくる結果である。これに対して閣僚諸君は、政治的にこれをいかに考慮するかということについての考え方を伺つたのであります。今の占領下においては、やむを得ないと言い去つてしまうことは、これは結局政治的の見解の相違かもしれぬと思いますが、私ども考えからいたしますれば、今日の現状においても、十分にこれを刷新することは多いと思うのであります。なるほど最初の間は、出先官憲の必要はありましよう。しかし地方自治が布かれておる今日におきまして、出先官憲の弊害は非常に多いのであります。今や出先官憲の整理は、全國的の輿論であります。この輿論に対して、政府はむしろ後手を打つておる。これからいろいろ研究して整理を行うということは、すなわち民間の声よりもはるかに政府が遅れておる。民間の見識がはるかに先行しておる事実であると思うのであります。でありますから、この点については、もう少し政府におかれても、廣い見地において、もつと政治的考慮の上で、これを処理せられるように、方向を轉換されんことを希望するのであります。この点は見解の相違になりますから、これ以上は申しませんけれども、大体総理大臣の今の考え方は、占領下においてやむを得ないというような諦めのお考えのようでありますけれども、私どもはそこに意見の相違がある、こう思うのであります。これ以上申しましても意見の相違でありましようから、私はこの程度に止めておきます。
  140. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 お諮りいたしますが、今井君の御質疑のために、大藏大臣、農林大臣にお待ち願つたのでありますが、時間が五時近くなりましたが、もう少し続けることにしましようか、どうしたものでしようか。
  141. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それではもう少し勉強することにいたします。今井君。
  142. 今井耕

    ○今井委員 私は主として農林大臣、関連した問題といたしまして大藏大臣質問いたしたいと思います。今日主要食糧を生産いたしておりますところの農家に対して、政府は作物別の生産割当をいたしておるのでありまして、農民といたしましては、作物の自由な選択が許されておりません。割当に從つてその作物を必要な面積だけつくらなければならぬ。從つてほかに余裕をもたないのであります。そしてこれを栽培するのに必要なところの肥料その他の資材は、政府からもらう。そしてこれによつて生産物がほとんど完全に近く供出しなければならぬ。その時間も指定された時期に供出しなければならぬ。そうしてその價格は政府の決定した價格で代金が支拂われる。こういうことになつておるのでありまして、今日の主食を生産する農民は、ほとんど農業経営の自主性というものをもつておらぬのであります。言いかえれば、國営に近いような國家管理が実施されておるのであります。この現状をはつきりして、ものを考えなければならぬ。こう思うのでありますが、こういうようなときにおきまして、これらの農民の生活というものは、一にかかつてこの供出されたところの農産物の代金によつて生活をしなければならぬのであります。從いまして、今日農民の経済というものは、ほとんど政府が牛耳つておる。こういう立場にあるということを、はつきりと認識することができるのであります。こういう点から考えまして、この農産物の價格の問題、特に米價の問題につきまして、過日衆議院におきまして、物價の改訂に從つて、この米價を改訂し、その差額を農民に還元すべしというところの決議が行われたのは、これは当然過ぎるほど当然であります。この問題は、この予算のマル公七割引上げ、三千七百円ベースというところのこの基礎と密接なる関連があるのでありまして、政府におかれましては、この米價の引上について、その後努力を拂つてもらつているとは考えるのでありますが、その後事情がどうなつているか、また今日予算の審議期間中にこれが決定するかどうかということは、この予算基礎のマル公七割値上、賃金ベース三千七百円というものと、非常に密接な関連があるので、特にこの点についてまずお答えを願いたいと思います。
  143. 永江一夫

    ○永江國務大臣 お答えいたします。米價につきましては、今お話のように、先般の本会議におきまして御決議がありました。その際芦田総理からお答えをいたしました趣意に基きまして、関係方面と折衝中であります。なおこの点につきまして、どういう方法でやるべきかということは、この折衝の結果によつて、できるだけ早い機会にその具体的なものを皆さんにお諮りをいたしたい、こう考えております。
  144. 今井耕

    ○今井委員 私のただいまの質疑は、今まどもたびたび行われたのでありまして、私どもも承知しているのでありますが、同樣の答弁で、これはわれわれは一日千秋の思いでこれを早く決定してもらわないと困るのであります。非常に関心をもつているのであります。もう少し事情をはつきり、その経過がどうなつているかというようなことがお漏らし願えれば非常に結構だと思います。
  145. 永江一夫

    ○永江國務大臣 ちよつと速記を止めていただきたいと思いますが……。
  146. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それでは速記を止めて……。
  147. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 速記を始めて……。
  148. 今井耕

    ○今井委員 この間決議になりましたあとの事情は、折衝中でまだ何とも答えができぬということでありますが、私はその後の模樣を聽きたかつたのでありますけれども、はなはだ遺憾でありますが、万やむを得ぬと思います。しかし、これが決議通りに決定いたしませんと、根本問題としてこの予算と非常に関連いたしますので、予算だけ認めて、この問題がきまらぬということになると、これは非常に不公平になる。それで私は特に予算審議中に、それが過日の衆議院の決議通りに決定せられることを切望するのでありまして、この意味におきまして、最善の御努力をされんことを切に希望するわけであります。また昨年のパリテイによりまして計算した價格というものは、あの当時の物價において再生産はできたかもわからぬけれども、來る年の再生産は絶対にできないことははつきりしている。また生活もできぬことは、十分明白なことであります。その明白なことが実施されぬということでは、何としても納得ができない。もしそれが許されぬ場合には、別にその経費を予算に計上してでも、ほかの重要産業に補給金が支給されるごとくに——この主要食糧というものは、何といつても一番大事な産業であります。しかも先ほど申し上げましたように、今日主要食糧の生産はほとんど國営に近いごとくに管理している。それに対してそれだけ強力な管理をしておりながら、生産費、生活費ということについて無責任なことは、絶対にできないのであります。こういう観点に立ちまして、これは生命をかけてもやつてもらわなければならぬと考えるのでありますが、農林大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  149. 永江一夫

    ○永江國務大臣 まことにごもつともな御意見でありまして、私どもとしては、今の農村の現状からいたしましてどうしてもこの逼迫した現状を打開して食糧の再生産に寄與するような処置をとりたいと考えております。從いまして、この國会で議決になりましたような新米價と旧米價との差額を月割に還元する方法ができない場合には、どうするかということについては、今ここでどうするということを申し上げる時期ではないと思います。ただ國会方面におきましても、すでに農林委員会におきましては、各派代表の方々が直接また関係方面とも御折衝中であることも承つております。各般の努力を拂つてみたいと私は考えております。ただこういう際に食糧再生産という面から見たバツクペイメントでなしに、別箇の代案を政府考えているという点については、いろいろ試案としては持つているのであります。しかし國会の御決議がありますので、その御決議と違つたものを政府が用意して、これで関係方面と折衝するということは、やはり國会の決議の手前、私どもは遠慮しなければならぬと思つているわけであります。
  150. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの件は農林大臣の責任において、ひとつ万全の策を講ぜられたいと思います。  次に農村の課税の問題でありますが、農村の現状が先ほどから申し上げましたようなわけでありまして、この地方税におきまして、供出を対象とする主食の代金には事業税を課さないときまりましたことは、当然過ぎるほど当然であると考えるのであります。なお地租を百分の二百に引上げるということが、まだ法案は提出されてはおりませんが、方向はきまつているように承つているのであります。これは非常に考えなければならぬ問題だと思うのでありますが、今日小作料というものが金納になつているのでありまして、この小作料が少しも上つておらぬので、現在非常に低いものであると考えてよろしいのであります。しかもこれをこのままに置きますと、今度マル公を七割引上げ、そして三千七百円ベースという方から考えてみますと、実質的から言うと、この小作料は半分近くに値打が減つていると言えるのでありまして、非常に安いものがより一層安くなるのでありまして、それに対して一挙に百分の二百に引上げることは、実際理窟に合わぬ話であります。これに対していろいろ仄聞いたしますと、小作料をそれだけ引上げたらいいのだというような考え方でもあるようでありますけれども、今日小作料というものは、もう土地が大分耕作農民に渡りまして、その耕作農民の経済状態がさきに申したようなわけであります。また農地制度の改革というものも、そういうことをやることはいろいろ支障を來すと思うのであります。今一挙に百分の二百に引上げるというのは、どういう方面から檢討いたしましても適当ではない。むしろ必要であれば、ほかから財源を求むべきであると考えるのであります。これに対する農業大臣なり、大藏大臣の御所見をお伺いいたします。
  151. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今井さんの御質問はきわめてごもつともな御質問でありますが、われわれは農村の負担を軽くするように努力はいたしたいと存じております。その他先ほど來農林大臣との間に質問應答のありました点についても、私どもは一緒になつて努力はいたしておるのであります。ただ問題は國家財政が非常に窮乏しておるのと同様に、地方の財政がまたずいぶん窮乏いたしております。國の負担において、中央から地方の財政を調節するということは、相当つておりますけれども、地方においては、自治警察の問題であるとか、あるいは六・三制を実行するとか、あるいは新らしい諸案件がたくさんございまして、地方財政がずいぶん困つておるというような実情でありまして、中央において健全財政主義を堅くとつて赤字を出さないということでがんばつておるのでありますが、これは地方としても同様でなければならぬ。從つて独立の財源として、ただいま御審議を願つておる入場税を地方に渡すとか、あるいは新たに地方に地方税として事業税を創設するとか、いろいろのことはやつておるのでありますけれども、全体を勘案いたしまして、地方財政委員会において、ただいまお話の出た地租の税率引上げということが問題になりまして、これは地方財政委員会において御決議になつたかと思うのでありますが、本日は地方財政委員会の野溝委員長がお見えになつておりませんから、くわしいことはちよつと申し上げかねますけれども、さような状態であります。全体としてきわめて抽象的でありましたけれども、われわれは非常に大事な食糧生産のことに当つておる農村のために、考えなければならぬということは、今井さんとまつたく同感でありまして、できるだけその負担を軽減するために努力するということにおいては、決して人数に落ちぬつもりでありますけれども、ただいま申しました通り、地方自身の財政基礎が薄弱である。地方は地方でやらなければならぬことが非常に多い。地方の独立税ということも主張されておりまして、地方の財政的独立性なくして地方の独立ということはできるかどうかということになつてくると、これはずいぶんむずかしい問題であります。從つて現在は相当中央から地方にお手傳いしておる。預金部の金のごときも地方に還元する。中央で使うよりは、大部分のものは地方に還元するというような、いろいろな方法を講じ、また先ほどもお話の出ておりました農村の当面の金融難打開のために、農業手形の制度を創設いたしまして、農村金融の円滑化をはかるとか、絶えずいろいろなことについて農村のためにはかることがございまするけれども、ただいまの地租の問題をどうするかということになりますと、これはどうも地方財政委員会において御決議になつて法律案が議会に提案されておると思いますので、野溝委員長から適当な機会に答弁があると思いますが、私からは以上のごとく御答弁申し上げるよりしようがないと思いますので、御了承願いたいと思います。
  152. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今お話の農村に関します税の中で、地租の点だけを御質疑になりましたけれども、実は今井君も御承知のように、農村課税でできるだけ生産農民諸君の負担を軽減するという方針について、各般の考慮並びに努力を私どもいたしたのであります。從つて本年新たに創設されます農村に関する税の中で、いろいろ総合的に考えました結果、できるだけこれを軽減したいという点で、私の立場からは、各関係者と交渉折衝を続けたのでありますが、結果においては消極的にお話を申し上げる点のみが残つたようでありますけれども、事業税の中で主食に関するものが税から除かれたということで、大体農村の全般的な課税の中でこの面で一つ軽減が行われてきたわけであります。從いましてそれの総合的なものの中で、今の地租だけがどうなるという議論でなしに、総合的にいたしたものでありまして、やはり私としては不服はありますが、ただいま地方財政委員会で御決議になりましたような線を了承しなければならないと考えております。
  153. 今井耕

    ○今井委員 ただいま御答弁の地方財政が非常に窮迫しておる事情も十分わかります。また農村の負担の問題につきまして、もつとほかの方面も大いに軽減をするという点も十分考えておるわけでありますが、特にその点を取上げましたのは、今日物價の値上りによりまして、皆所得が殖えておる。実質の所得は減つておりますが、名目的の所得は殖えておるのであります。ところが地租そのものは名目的の所得も殖えておらない。また今度の物價改訂によりまして、実質はまた半分以下になる。そういうものに対して、一挙に百分の二百に上げるということは理窟に合わない。だから所得のあるところからとるというのならいいのでありますが、それが困難ならばそれも仕方がないわけです。むしろ所得が減る。それに対して一挙にしかも百分の二百に上げるという、そこに私は腑に落ちぬところがある。負担の重い点は國民平等であります。それは負担しなければならぬ。今の点がどう考えても納得がいかぬ。こういうふうに考えて御所見を伺つたわけでありますが、これは大藏大臣といたしましては、一應地方財政の方に関係するので、これ以上御質問は申し上げません。  それから制度の問題はこれだけにいたしておきますが、昨年度の実際から考えまして、この農村の課税というものが地域的に非常に高い所、あるいは妥当な所いろいろ差がありまして、非常に不公平ができておるのであります。これにつきましては、相当廣く税務署管内別に担当の所得などを調査しておりまして、資料もあるのでありますが、非常な不公平ができております。また全体的に見まして、非常にむりな課税ができておるのです。それで租税は公平に負担するようにしなければならぬ。本年度はこれをぜひひとつ是正してもらつてほんとうに妥当な公平な課税が課せられるようにしなければならぬということを痛切に感ずるのでありますが、これにつきましては、いろいろ大藏当局におかれましても、税務官吏を殖やすとか、あるいは教育するとかいたしますが、もう少し何らか具体的にひとつ考えてもらつて、そうして適切な課税が行われるようにするということが、非常に必要だと考えるのでありますが、これに対して大藏大臣のお考えを伺いたい。
  154. 北村徳太郎

    北村國務大臣 農村課税の問題は、しばしば問題になりまして、その都度私より、やや詳しい御答弁を、本会議でもまた委員会でも申し上げたのでありますが、これは何といたしましても、國家財政の窮乏に從つて税が重くなつてきたということと、税が重くなつたにかかわらず、また納税事務が非常に膨張したにかかわらず、徴税機構がどうもまだ不十分であるというような点がありまして、お話のごとく税がもし公平でないということならば、これは基礎が壊れてしまうわけでありますから、何よりも公平の上に立たなければならぬことは御説の通りでございます。公平ならんことを期しておるはずでありますが、手不足や不慣れの者が多くて、非常に税務機構が弱体であつたということは、率直に認めるわけであります。從いまして、今回の財務局の創設、あるいはさしあたり四十六箇所くらいの税務署の増設を御審議を願つておりますが、行政整理の叫ばれておりますこの際でありますけれども、税に関する限りは、今のような弱体ではいけない。しかも税收入國家財政の基本でございますから、この点においてもつと能率的に、また敏速に処理ができるような機構をもたなければならぬということと、同時に納税者にも納得していただけるような方向にもつていかなければならぬということと、そういう機構を増設することと、人員などもいろいろな方法の教育をやる。長期のもの、短期のもの、あるいは通信教育、いろいろな方面で、教育訓練いたしまして、納税者に十分納得していただけるような徴税方法を講じたい。また自発的な納税組合等も、なるべくそういうものの結成が促進されるようにいたしたいと、いろいろ考えておるのでございます。それですでに具体的な問題も大分ございましたが、一方においては少し行き過ぎじやないかと思うような團体運動がございまして、このことがまた一方税の行政に非常な害をなしておるような方面もございまして、こういう方面については、相当取締りを嚴重にするというようなことを、ただいま計画して、成案を得ておる次第であります。今後はお話のごとく、税の公平を期することは、もちろんでございますし、また農村の負担が軽減するような所得税等についても若干の修正を加えており、また今回の事業税におきましても、農村の主食の方面はこれを除くというような特例を設けておりますし、その他各般のことにおいて、農村への配慮は決して怠つておらぬつもりでございます。  先ほどの地租の問題でございますが、これも現在の米價あるいは実收等と考え合わせまして、全体を総合してお考え願えば非常に無理でもないじやないか、これは地方財政委員会において、その道の権威者——むろん農村の代表の方もお入りいただいて十分檢討されたものでございますので、総合的な見当としてはさほど無理なものではないのじやないか、そういうような考えをいたしておりますけれども、これはいずれ適当な機会に地方財政委員長から御答弁があると思いますが、一般的な考え方としては、今後税に関する限りは、十分嚴重に公平を期することに対して努力いたしまして、再びいろいろな問題が起らないように、この点は十分警戒いたしたいと存ずる次第であります。
  155. 今井耕

    ○今井委員 次に農村金融問題について、先に稻村委員から質疑がありましたから、簡單に伺いたいと思います。農村の経済事情は、先ほど申した通りでありまして、農業手形というような制度がとられておるのであります。それはこの秋にとれる米を抵当にして金を借りて、今年の生産をするという方法で、いわば今まで地主が小作人に金が足らぬときに金を貸してやつて、米がとれてから返すのと同じ制度でありまして、これはほんとうにみじめな取扱いであります。農民は辛うじて生活ができたらいい、辛うじて生産ができたらいいという、こういう非常に百姓を奴隷的に扱うようなやり方だけであります。これは非常に困るのでありまして、もう少しいろいろ積極的に土地改良をやるとか、あるいは生産設備をやつていくとかいうような、積極的の努力がなされなければならぬと思うのであります。特に先ほど申したように、ほとんど主食生産農家というものが自主性を失つている。ほとんど國営といつてもよいほど強い管理を受けておる。こういう状態において、しかも眞劍に増産をやつていかなければならぬ、こういうときにあたつて、ただそういう制度をとつておるというだけでは、これはみじめなものである。何としてでもこの農業金融の特徴であり、必要な條件であるところの低利、長期というものの機関が絶体必要でありまして、今日復興金融金庫などにおきましても、今四百五十億円の増資の法律案が財政金融委員会に出ておるのでありますが、これは食糧の確保の上から考えまして、一番に考えなければならぬ重要産業である。それに対して、そういうような特殊の金融機関が設けられないということは、非常な片手落ちである、こう考えて至当であると思うのであります、こういう点に関しましては、今までもいろいろ同僚からも質問がありましたが、農林大臣といたしましては、農林復興金融とか、あるいは現在の復興金融金庫の中にわくをつくるとか、いろいろなことを考慮しておるというように御答弁になつておるのでありますけれども、これも法律案として出るとか、あるいはまた政府出資として予算に計上されるとか、何とか具体化されなければ、こればずるずるべつたりで、できぬと思います。このままで行けば、これはもう放任ということになるのであります。それではどうしても納得ができないと考えるのでありまして、このまま放任することは絶対にできぬと思うのであります。これにつきまして農林大臣は、いままでいろいろ考慮中であると御答弁せられておるのでありますが、その後どういうふうに具体的に考えておられるか。また大藏大臣はどういうふうに御心配になられておるか。こういう点をお伺いしたいと思うのであります。
  156. 永江一夫

    ○永江國務大臣 農村金融の根本的な対策につきましては、しばしばこの席上においてもお答え申し上げた通りでありまして、ただいまは事務的には、農林省、経済安定本部、大藏省の事務当局とも折衝いたしまして、関係方面と今それぞれ話を進行しておりますので、今お話のように、できるだけ早い機会に、皆さんに御心配を願いたい、こう考えております。
  157. 北村徳太郎

    北村國務大臣 いろいろおつしやつたことは了解いたしております。そういう方向に向つておるのでありますが、私は決して今井さんの言葉じりをどうというわけではありませんが、今回の農業手形の創設は、昔小作人が地主から金を借りたと同じような奴隷的なやり方であるというお言葉があつたのは、私としては非常に残念であります。新たに農村に農業手形の制度ができたということは、農村金融に対し一生面を開いたものである。信用制ということが、農村においては都市における各種工業、商業等のごとくいつていないのに対して、新しい一つの農村金金の一生面であるというように考えておるのでありまして、この点は十分御利用願い、農村において一つの新しい信用制度というものが発達することは、將來農村金融の上において、重大な意義があると考えておりますので、從つてこれは奴隷制度どころではなくて、非常に進歩した一つの新しい金融制度が農村にも普及するというような考え方で、今後もそういう意味で御指導を願いたいと思います。それから農村金融の根本的な考え方、あるいは農村金融の基本的なものをどうするかということについては、ただいま農林大臣から御答弁がございましたが、私ども農林大臣並びに安本等と絶えず相談をいたしまして、どうすればよいか、いろいろ檢討いたしております。ただ問題は、國家の財政支出をもつて復興金融金庫と同じものをつくることが妥当であるかどうかというようなことも、問題でございますし、農村自体の特殊性の上から、農金に最もいい金融機関は、どうしたらいいかというような点について、ただいま檢討しておる次第でありまして、関係方面とも折衝いたしておることもあるのであります。ただいま具体的に申し上げることはできませんけれども、農村金融は決して閑却いたしておりません。その点はどうぞ御了承願います。
  158. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 どうも今井君の御質疑の腰を折るようですが、もう五時二十五分ですから、明十七日午前十時より開会することとして、本日はこれで散会いたします。     午後五時二十五分散会