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1948-06-14 第2回国会 衆議院 予算委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月十四日(月曜日)     午後一時二十二分開議  出席委員    委員長 鈴木茂三郎君    理事 苫米地英俊君 理事 川島 金次君    理事 押川 定秋君 理事 小坂善太郎君    理事 今井  耕君 理事 大原 博夫君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    植原悦二郎君       角田 幸吉君    上林山榮吉君       古賀喜太郎君    島村 一郎君       鈴木 正文君    鈴木 明良君       西村 久之君    原 健三郎君       本間 俊一君    岡田 春夫君       加藤シヅエ君    黒田 寿男君       田中 松月君    田中 稔男君       中崎  敏君    中原 健次君       梅林 時雄君    川崎 秀二君       鈴木 強平君    田中源三郎君      長野重右ヱ門君    笹森 順造君       松本 瀧藏君    大神 善吉君       世耕 弘一君    野坂 參三君  出席國務大臣         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         商 工 大 臣 水谷長三郎君         運 輸 大 臣 岡田 勢一君         労 働 大 臣 加藤 勘十君         國 務 大 臣 栗栖 赳夫君  出席政府委員         経済安定本部財         政金融局長   佐多 忠隆君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君         大藏事務官   東條 猛猪君         大藏事務官   河野 通一君         大藏事務官   平田敬一郎君         大藏事務官   渡邊  武君         運輸事務官   芥川  治君         運輸事務官   三木  正君  委員外出席者         專門調査員   芹澤 彪衞君         專門調査員   小竹 豊治君 六月十二日委員高橋長治君辞任につき、その補欠 として鈴木彌五郎君が議長の指名で委員に選任さ れた。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計予算  昭和二十三年度特別会計予算     —————————————
  2. 川島金次

    川島委員長代理 これより会議を開きます。  前会に引続き、質疑を続行いたします。
  3. 西村久之

    西村(久)委員 私は議事進行に関しまして、大藏大臣の御所見を質すために、委員長の許可を願い出ておつたのでありますが、大藏大臣にお会いする機会を得ませんでしたので、大藏大臣の御意見を質す機会を失しておつたのであります。本日ここであらためて大臣の御出席をいただきましたので、お尋ねいたしたいと存ずるのであります。  北村大藏大臣は十日の正午ごろに、院内で記者團と御会見になりまして、当面の予算問題については、本年度の一般会計予算と、各特別会計予算とは、各党大幅修正意見があるように聞いておるが、政府としては、本予算案閣議決定を経て議会に提出したことであり、與党三派間の修正等が議論されるはずはない、與党修正は断じてこれを許さない、認めないということを記者團との会見お話なつたかのように、新聞に麗々しく記載されてあるのでありますが、それは一体どういうふうなお心持で、こういうふうな御意見を御発表になつたのか、大藏大臣の御意見伺つてみたいと存ずるのであります。
  4. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。実はこれは多分閣議の席で出た話合いで、記者團に話したことが、少し強く表現されたのではないかと思うのでありますが、私の考えておりますことは、今年度の予算は、これは政府の責任において提出したのであることはもちろんであります。從つて内閣において與党各党を代表して出ておる大臣がことごとくこれに賛意を表して出したのであるから、これが通過のためには、與党としてひとつ全力をあげて努力してもらいたい。こういうふうなことを閣議で述べたのでありまして、そのあと記者会見でございましたから多少そういうふうなことを申したつもりであります。すなわち與党間においては、各大臣がその調整に任じて、予算が早く通るよう努力をしてもらいたい。こういう意味のことを述べたのでありまして、ただいま國会議員審議権云々お話がありましたが、もとよりさようなことは毛頭考えてもおりませんし、また考えるべきものでもないのであります。以上申し上げたような趣旨であつたことに、御了承願いたいと思います。
  5. 西村久之

    西村(久)委員 本予算案が、大藏大臣の申される通りに、閣議決定によるものであることは、私もわかるのであります。閣議決定ならざる案は、予算案として政府は提出する運びにならないのでありまするから閣議決定はわかるのでありまするが、閣議決定なるがゆえに、議員修正等権限はそれに從わなければならない。よしんば與党議員でありましても、それに從わなければならないという根拠は、私はないではないかということを考えるのであります。政府当局立場からは、今大臣が述べられまする通りに、閣議決定した事柄であるから、與党諸君はこれをのんでもらいたいという御希望のあられますことは、お立場上これはやむを得ぬかも知れませんが、しかしながら、大臣も今述べられました通りに、議員には議員審議権があるのでありますから、議員権限を束縛するよう意味はもつておらない。ただそういうような念願のもとに予算通過をはかつてもらうようにという意味合いの話であつたということでございまするが、それならば、私ども新聞にかくのごとき記事記者團との会見として掲げさせる筋合いのものでないのじやないか、そういうことを考えるのであります。新聞記事ばかりでございませず、十日の晩にはラジオも強くこの点を放送したのであります。國民に感じさせるその影響というものは、非常に重大であるのでございます。私の見解をもつていたしますならば、政府では議院決議に対しまして從わなければならないものであるという観念をもつておるのであります。なぜかと申しますると、憲法四十一條に明記いたしてあるます通り國会最高機関であるのであります。その最高機関財政法の三十一條に基きまして、予算議決いたしまして、政府にその趣を達しますれば、内閣國会議決したところに從わなければならぬということが明示してあるのであります。從つて内閣諸公の言われる通りでなく、議会議決從つて内閣諸公は行政を掌るという段取りにならなければならないのじやないかと思つておるのでございます。ただ大藏大臣の言われる閣議決定なんというのは、野党の諸君でありません。與党議員間にいろいろ大幅の修正意見があるということは閣議決定に基く予算内容そのものが、與党議員意見をまとめた、すなわち三党政策協定に基いた提案でないがゆえに、私はいろいろ意見があるのじやなかろうかと考えるのでありますが、從つて大幅の修正もやむを得ぬというようなことに進んでおるのでなかろうかと考えるのでありますが、大臣としては、この議員大幅修正は、議員権限によつてやるのであるからして、政府としてはこれに対してとやかく言う権利はない——今私が申し述べましたようなお心持を、大臣はもつておられるのかどうか、重ねてお尋ね申し上げたいと存じます。
  6. 北村徳太郎

    北村國務大臣 見解としては、西村君のただいまのお話、私とまつたく同一でありまして、その通り違いないのであります。私は、國会議員審議権をどうこうと言うことはあるまじきことでありますし、またそういうことに触れて話すべきでもない。ただ與党において連帶責任をもつて、殊に與党閣僚において連帶責任をもつて提出した予算案であるから、道義的に見てもこれを通すためにみんなが努力してもらうということは、大藏大臣として望ましいことであるという意味のことを述べたのでありまして、たとえば各党における党議と各個人の審議権との関係というようなことも、問題になればこれは非常にむつかしい問題になり得ると思いますが、そういうよう意味で私は言つたのではなくて、今回のことが各党それぞれにおいて、すでに予算案として党議としてきまつたというようなことも聞いておりませんのであります。しかし少くともそれぞれの党から代表として出ておる閣僚においてずいぶん檢討して、論議を盡してできた予算であるから、これを通すためにそれぞれ調整をはかつて全力をあげてもらいたいという発言をしたのであります。さよう意味に御了承を願いたいと思うのであります。
  7. 西村久之

    西村(久)委員 そういたしますと、大藏大臣のお心持は、大藏大臣としての立場から、閣議決定案件に対しては、各出身閣僚出身政党意見をまとめてもらうよう努力して、そうして修正の運びに至らないようにして、本案の通過をはかることに、各閣僚努力を願いたいという意味の御意見の御発表であつたということに承知してよろしいでございましようか。
  8. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまのお説の通りであります。
  9. 西村久之

    西村(久)委員 そうだといたしますれば、私は新聞紙上発表なり、ラジオ放送等は、これは閣僚内の希望であるのでありますから、発表すべきものでないのでないかと思うのであります。それが記者團発表されまして、そうして新聞に麗々しく記載され、ラジオも放送するということは、私は國民に少からぬ影響を與えたのでないかということを実は考えますので、今日大藏大臣として、そういうお心持であつたのならば、そのお心持記者團発表なされなければよかつたのではないか、発表された事柄記者團の聽取りとの関係が。どうした関係があるかは存じませんが、新聞発表し、ラジオで放送したという今日におきましては、何といたしましても、この発表が私は正当なる発表であつたとは考えないのであります。この点につきましては、大藏大臣が私と同じような御見解をもつておられるのであるから、発表は差支えないという御見解であられるのか、お尋ね申し上げたいと思います。
  10. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは別段積極的にこちらで原稿を書いて発表したのではなく、終始記者團とは会見いたしておりますので、きよう閣議ではこういう発言をしたということを、少し言葉を強めて言つた程度でありました。與党の中から、予算は通らぬものだというよう考え方をされては困るのだ、これは連帶責任であるからということを、非常に強く閣議で強調した、こういうことなのであります。これだけのことでありまして、他意はないのでありますから、御了承を願いたいと思います。
  11. 植原悦二郎

    植原委員 ちよつと関連して、はつきりいたしておきたいと思います。ただいま大藏大臣西村君の質疑應答伺つていますというと、大藏大臣の言として、新聞ラジオを通じて國民の間に傳えられたことは誤報である、そういうことはなかつた、ただ大藏大臣は、閣議できめたことだから、與党側はこれを支持してくれるという希望を述べただけに止まる、こう解すべきであつて、さようなことをはつきりしておきたいと思います。大藏大臣がただ希望を述べた。それに対し、これは閣議決定だから、與党といえどもこれに修正一指を触れることも許さないということを強く新聞ラジオで言つたことは誤報だ、こう解してよろしいのか。それがそれがまず第一であります。  次にもう一つこの場合の明瞭にしておかなければならぬことは、西村君に御質疑によつて明瞭になつたことは、國政に対しては、國会最高のものだ、閣議決定といえども議員はこれを自由に修正し、改定する権能をもつておる。しかも議院決定最高のものだ。ゆえに、ただいま大藏大臣の述べられたことによれば、新聞ラジオによつて國民の與えた印象は間違つておる、これは誤報だ、從つてこの場合に自分は、與党といえどもこの予算に対して修正を試みるならば、またそれが議会通過するならば、それを受け入れるだけの用意をしておるのだ、さようにあるべきだ、こう了解されると解釈してよろしいと思うが、この点をはつきりいたしておきたいと思います。
  12. 北村徳太郎

    北村國務大臣 原則論お話通りでありまして、國会最高機関である。從つて國会議員審議権の問題は、先ほどから申しておる通りであります。問題はただ、われわれが仲間與党に対して、道義的に、これはみんなで連帶責任を負うのであるから、これが通過のために全力を盡してもらいたい。大藏大臣立場として、組みかえろと言われればただちに組みかえます、あるいはこれを修正しろと言われればただちに修正しますというような不安定なものを出しては相ならぬので、少くともこれは今の可能な範囲において十分論議を盡し、また十分檢討を加えた最後案である。かようなことを確信して出したのでありますから、かような点において、むろんこれは審議國会でなされることは言うまでもないのでありますが、どうか與党から出ている閣僚としては、これに対してせつかく同意をしたのであるから、その道義的な立場に立つて通過のために努力してもらいたいということを強く強調したというよう意味でございまして、その範囲を越えた非常に強い表現があれば、これは程度が過ぎたというふうに申してよろしいのであります。それでラジオ新聞等誤報であると断ずるわけにはまいりません。ただそういうふうな表現のうちで、私どもの申した氣持とは、強く出たものもあり、あるいはその通り出たものもあつたかと思うのでありますが、以上申し述べた通りでありますから、さよう了承を願いたいと思います。
  13. 植原悦二郎

    植原委員 新聞に出たのが、新聞によつて多少文字の使い方で、與える印象に強弱はありましよう。けれどもラジオによつても、多くの新聞によつても、大藏大臣は、この予算閣議決定したものである——その新聞ラジオによつて與えられた印象は、閣議最高のものであつて與党なぞはこれに一指も触れることは許さないというよう意味よう印象を與えたがために、西村君の質問が起つたことをよく御了解なさらなければならないと思う。ただ大藏大臣が、これは閣議できめたものだから、與党ができるだけこれを支持してくれという希望であるならば、西村君に質問は起りません。西村君の質問の起つた理由は、閣議できめたものである、閣議最高だ、與党從つて閣議に從わなければならないという印象を與えたことによつて西村君の質問が起つたのですから、そういう印象を與えたものがあるとすれば、それは誤報であるということは、大藏大臣、言を左右にしても、避けることはできません。そこで閣議がきめたことは、大藏大臣としてはどこまでも最善を盡したものと主張されるのは当然でありますが、院議によつてそれを修正するという場合には、大藏大臣がそれを受け入れる心の用意があるかどうか、この点をお答えつてしかるべきだと思いますが、それを伺つておきたい。
  14. 北村徳太郎

    北村國務大臣 たびたび申し上げますように、國会審議権は当然審議権最高権限でありますから、これに基いてきわめて合理的な修正でもある場合には、これは應ずる用意があります。但しこれは現在の段階において、私どもの考えておる健全財政主義に基いて、たとえばバランスがとれるというよう意味において、歳入は減ずるが歳出が減るとか、あるいは歳出が殖えるが歳入も殖えるというような、きわめて合法かつ合理的な議決國会議決として現われた場合には、これはわれわれは何と言つてもしようがない、國会議決最高権限でありますから、そのことは申すまでもなく当然のことである。ただ私が申したのは、われわれの仲間である與党の方に対して、與党立場でありながら、これがもし円滿にいかぬというようなことがあつてはならぬから、この際與党らしくこれが通過するよう努力してもらいたいということを強調したのでありまして、その点は明らかに区別しておきたいと思います。
  15. 植原悦二郎

    植原委員 議論はいたしたくないが、國会修正合理的であつたらというお言葉がありましたが、國会修正合理的であつたか不合理的であつたかということは、一体だれが判断するか、これは言葉爭いでありますから追究いたしませんが、不穏当な言葉であります。國会が多数で決定したものは、國民の意思として、合理、不合理大藏大臣が批判すべき余地はないのであります。当然これは受入れなければならないので、國会決定合理的であるならば、それに從うというようなことは、大藏大臣の私見によつて國会決議が左右されるのではありません。國会審議最高のものとして、國会決定すればそれを受け入れるのが当然であるとお答えつて然るべきだと思いますが、これ以上言葉爭いは私はいたしません。さように解釈すべきことが当然だということだけを、私ここにはつきりと申し上げておきます。
  16. 西村久之

    西村(久)委員 中間に植原委員からの質問があつたのでありますが、なお私はこの際にお尋ね申し上げておきたいことは、與党諸君がこれを修正しなければならないという議が起きておりますその原因はどこにあるかと申しますと、閣議決定なりとして出ました案が、三派與党間の議員の中に了解を求められていない案件を、内閣閣僚諸公がおきめになつて御提出になつておりまするがために、私は與党諸君にいろいろ異論があるのじやなかろうかと思うのであります。なぜかと申しますと、三派の政策協定の中に織りこまれてあつて予算に現われております問題に異論のできておりますのは、御承知の軍事公債利拂停止的処理という三派協定の一項に特別会計におきまする鉄道通信会計一括料金の問題、租税の問題に対しましては新税をおつくりになつたという関係の問題が、いろいろ與党間に御意見があられるのであないかと思うのであります。これは三派政策協定の線に沿うて御提案になつていないのである。從つて與党間の議員にいろいろな意見が起るのは当然であります。軍公問題にいたしましても、民主党の方は軍公利拂停止はすべきものにあらずというのが、大体のお建前であつたのではなかろうかと思いますし、社会党の側では、軍公利拂いは停止せよというのが大体社会党の方の御意見であつたように思われます。それが折衷案とでも申しまするか、一年利拂いを延期するというような案に変つた案件になつておりまするがために、いろいろ意見があるのではなかろうかと思うのであります。ほかの特別会計料金問題にいたしましても、三派の協定は、鉄道通信料金については経営面合理化を断行することによつて、まずそこに経費節減をはかる、物價基本計画を樹立して、そうして経費節減をはかり、なおかつやむを得ず赤字を出すような場合には料金値上げをするというのが、大体三党協定骨子であるのであります。ところがさきの骨子を拔きまして、料金三倍半の値上げを断行せられんとする点に、私は與党三派の意見が一致しないところがあるのではなかろうかと思うのであります。租税の問題にいたしましても、この租税をやる三派の協定案骨子は、負担公正化並びに生産増強のための税制改革を断行し、そうしてなおそのあと國富調査税新税を檢討して実現をはかる、これが骨子になつておるのであります。ところが負担公正化並びに生産増強のための税制改革をおやりにならないで、ここへ新税取引高税というのを御提案になりましたことが、與党議員間に御異議があり、これを修正しなければならぬという意見になつておるのではなかろうかと思うのであります。閣議決定決定でありましようが、閣議決定與党三派の政策をまとめた決定でないがゆえに、私は異見があるのではなかろうかと思うのであります。異見のある方がむしろ正当であろうと私は思うのであります。現内閣のとつておりまする閣議が、專制と申しまするか、專断と申しまするか、閣議やり方が今日政党政治を無視したやり方の御提案になつておるのではなかろうかと考えるのでありますが、この点につきましては、大藏大臣はいかようなる御見解をもたれますか。
  17. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問——というよりも御意見が多かつたのでありますが、三党政策協定は、これは前にも申し述べたと思いますけれども、およそこの内閣がやるべきこと一切を網羅したものではなくて、少くともこの連合内閣において取上げらるべきものは、まずこれこれだというものを取上げたのでございます。從いましてここに盛られたものが、必ずしも同時一齊に必ず行われるというものではなくて、その中にはおのずからあと先の順序もあると思います。また軽重の別もあると思います。順次これを行つていくというよう方向をきめたものであると私は理解しておるのであります。それからまたいわゆる政治は活き物であると言われる通りでありまして、客観情勢とにらみ合わせていかなければならぬという点もございますので、三党政策に盛られたもののうち、今回の予算において実行に現わしたものもあり、未だ現われざるものもあることは、これは三党政策それ自体情勢から、あるいはまた客観情勢から考え合わせまして、そのこと自体は私はむしろ特に不思議なことはないというふうに考えております。  それから今のお話税制改革云々というようなこともございました。それから特別会計に関する件にもお触れになつてつたのでありますけれども、これは仰せの通りでありまして、独立採算制基本とするものでありまして、運賃値上げはむしろその手段である。目的独立採算制、これが目的でなければならぬ。從つてこれについては運賃値上げによつて独立採算制を一切賄うというよう考え方でなく、なお多くの赤字が出ますけれども、これらの部分鉄道の六十年以上にわたる沿革等に顧みて、一挙にして根本的な改革を行うということは、時間が間に合いませんから、まずもつて漸次この改革をやり、漸次能率化をし、独立採算制方向に向ける。從つて今なお赤字が出ておりますけれども運賃によつて負担していただく部分はこの部分で、あとは内部にもつているところの合理化の問題、あるいはその他処分して賣上げるものは賣上げる、経営を改善すべきものは改善をするというようなことがあり得るために、なお相当の赤字が残つている。こういうよう考え方でありまして、この点においては、大体において、西村君のお考えと、私の考えていることは、食い違つていないと思うのでありますが、ただその中におのずから先後の別があるというような点が、多少問題になるのではないか、かように考えている次第であります。
  18. 西村久之

    西村(久)委員 今大藏大臣のお述べになりました通りに、私の考えている事柄も、先後関係についてお尋ねを申し上げておるのでありまして、内閣閣僚閣議決定なりということは、三党政策の先に議すべき事柄をやらないで、後に議すべき事柄を優先的に御提案になつておるがために、各三党の間に御意見があるのではないか、かように考えておるのでありまして、私は三党政策協定が完全に一致しない提案閣議決定なりとして出しておられる関係上、議員間に異論があり、從つて議員自分の信ずる方向に向つて案修正をせんといたしているものだと信じます。從いまして、財政法の三十一條に示します通りに、院議をもつて議決しましたところの案件について、政府はその処理をしていけばよろしいのであります。その前にあたりまして、議員権限等に累を及ぼすようなことの発言等は、今後お愼しみおきを願いたいと存ずるのであります。議員議員の與えられた最高機関としての権限を発動いたしまして、修正妥当なる場合には大幅の修正をもして、國家國民のために、國家の再建のために、その権限を行使することに、私どもは進みたいと考えるのでありますが、今後左樣なことのために、いろいろな疑惑を生じないように、閣僚においても、御注意を願いたいと思います。これで私の質問は終ります。
  19. 川島金次

  20. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 私は予算を通して、この予算がインフレを抑制していく性格をほんとうにもつているかどうかという、大体この一点にできるだけ質問を集中いたしまして、大藏大臣にお伺いしたいと思います。  本会議の説明において大藏大臣は中間安定という言葉を使つて、それを二十三年度予算編成の一つの目標として、かなり強い意味で説明された。一昨日のこの委員会におきまして、同僚の委員質問に対して、中間安定ということは、安本その他で一應練つてはいるけれども、まだ完成した構想と基礎の上に実は立つているのではないからという御答弁があつたのでありますが、おそらくそうだろうと思います。從つて具体的の安本その他政府で目下練つている中間安定のわく、その内容、基礎となるべき数字の問題、そういうふうな問題についての質問は、そうであるならば時期尚早と思いますから、省略することにいたします。しかし本会議の説明にもありましたように、その他随所の委員会の説明にもありますように、この二十三年度予算は、全体的の根本的な考え方として、三千七百円ベースと七割前後引上げた新らしい物價水準、それが体系的に完全にでき上つているかどうかということは別として、その二つの大きな柱の上に立つているということだけは間違いのない事実だと思うのであります。もしそうでないといいますならば、本会議以來の予算の説明は、根本的に崩れてしまうのでありますし、これは間違いのないことだと思います。中間安定という言葉は初めて今年の予算に使われたのでありますが、実はこのことは昨年の片山内閣のときにも、七月の物價水準と千八百円ベースの上に、中間というのではないが、一時的の安定期をつくろうとした考え方を一歩も出ておらないのであつて、しかも昨年の実績から見ると、その安定は七月物價決定されたとき、すでに崩れてしまつた。しかも一瞬間といえどもその安定はでき上らなかつたと同樣に、おそらくこの二十三年度予算を遂行していきますと、言葉は中間というよう言葉をかぶせましたけれども、結果において全然同じような現象が招來されると私どもは思うのであります。つまり考え方は、三千七百円の新しいベースと、七割程度上げたところの物價、これは現在の実勢からはやや先走つておるのでありますが、このやや先に進んだところの新しいベースの中に、向う半年なり一年間の安定時期を策定しよう、つくり出そうという構想のもとに立つておるのでありますけれども、しさいに二十三年度の予算を檢討いたしますと、予算自体の中に、この予算を遂行していくその過程のうちで、予算自身が自分の自壊作用でもつて、三千七百円のベースと新しい物價水準とを破壊していくという要素が多分に見てとれる。予算以外にも幾多の外的な諸條件はあるでしようが、ここでは予算の問題に問題を集中いたします。もしはたしてそうだといたしましたならば、この予算の最初の出発からして、その支柱になつている二つの大きな柱を自分自身でもつて破壊していくという根本的な大きな矛盾をもつているのでありまして、從つてその上に策定されようとするところの中間安定の構想というものは、最初から自己破壊と矛盾の上につくられておる。從つておそらく失敗するでありましようが、万一と讓歩してもよろしいのでありますが、もし万一失敗した場合にはどうなるかと言うと、三千七百円のベースと七割引上げられた物價の残骸とだけが残る、そうして一方金融だけを締めて計画的につくり出そうとする安定というものはでき上らなくて、逆にこれ以上の金融の引締めによつて、戰後多少なりとも回復してきた中小商工業というものは、破綻からもとの振出しに戻つてしまうというおそれを多分にもつておるのではないかと思うのであります。そこで第一番にお伺いしたいのは、二十三年度一般会計予算の中で、これはだれでも知つておることでありまして、大藏大臣もすでに演説の中で述べられたと思いますが、終戰処理費、あるいは地方分與金、價格調整、そういつたような再生産の方に直接向けられない費用が全体の予算の五〇%以上、五三%というふうな部分を占めておる。ここに終戰処理費をどうこうというような問題ではありませんけれども、概括的にいつて、四千億前後の予算の中で五三%前後のこういつた再生産に直接的には向けられない費用、これは大藏大臣の力でどうすることもできない要素ではありましようけれども、とにかくこういつた構成の上に立つている予算は、概括的にいつてどうしてもインフレを促進するという潜在的の性格をもつておることは否定できないと思うのであります。少い抽象論でありますけれども、この点につきまして、大藏大臣は、この予算がこの角度から見てインフレを惹起すおそれがないというふうに考えておられるかどうかということを、まずお伺いしておきます。
  21. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今回の予算は、ただいまお話がありましたインフレーシヨンをどうして防止するか、あるいはインフレーシヨンの速度をゆるめその力を殺ぐためにどうすればいいかというふうなことをかなり強く考えて編成いたしましたことは、さきに予算説明で申し述べた通りであります。これはいろいろ御説がございましたけれども、ただいまの段階において、私どもの見るところでは、一應この通貨の現状から見まして、またやみ物價の高騰率の現状等から見まして、今のところそういうようなものが横ばいの状態になつておるこの機会を逸せずに、ひとつ安定への方向に向うよう努力しなければならぬ。これは國民の待望であり、また私どもの責任であると考えておるのでございます。さような観点から予算を組んだのでございますが、御承知の通り、今のような段階が、さらに一層金融逼迫のような状況になつてまいりまして、そのことから低能率なものが自壊作用を起すということになりますと、これはいわゆる安定恐慌を惹起するおそれがある。それで今ほんとうに安定に向うかどうか。あるいは安定に向うためには、安定恐慌を実際に経なければならぬという説さえあるのでありますけれども、私どもはさようには考えない。もし安定恐慌的なものが起るとすれば、これをできるだけなし崩しに小さくして、そうしてこのインフレーシヨンの終熄への途をたどらねばならぬ。このことがいわゆる中間安定であります。さような観点に立つておるのでございます。問題は賃金と物價との惡循環をどうして切るかということであります。たびたび出るように鶏が先か卵が先かというのと同じであります。惡循環というのは、実は今日までインフレの最も大きなうずを巻いてをる。インフレーシヨンは申すまでもなくある程度速度が進んでまいりますと、自働的な展開をいたしまして、さらにそれに速度を加えていくというような点がございますので、どこでその力を殺ぐかという問題は、現下の日本の事情においては、賃金、物價の惡循環を断ち切るということでなければならぬ。それでは三千七百円の賃金ベースでやつていけるかというような御質問がございますが、三千七百円はこれは相当な計算基礎をもつて生活実態的にも、あるいは理論生計費的にも、一應の妥当点であるということろに達しておるのであります。問題はその三千七百円がいかに政府ががんばつてみても維持できなければ、そこから壊れてきて、結局物價へのはね返りとなり、物價と賃金の惡循環がそれからまたうずを巻いてくるということになるのでありますから、三千七百円ベースが維持できるかどうかというところに、一つの大きな問題点がある。これに対しましては、しばしば申し述べましたように、実は賃金の貨幣的な数量でなくて、これに対する実質性を裏づけし、これを向上するということでなければならぬ。そのために最善を盡しておるのでありまして、昨年度のごとき著しき遅配欠配等による非常なやみ物價の高騰が、今のところ抑えられておるし、その他それらのものについての見透しは、大体私は簡單に安易に樂観はいたしておりませんけれども、一應の見透しがつく状態である。その他必要なる物の輸入も大体考えられるというような点において、あらゆる客観的情勢その他國内の情勢、またきわめてわずかながら生産が上昇線をたどつておるというような点等々から勘案いたしまして、三千七百円が維持できる。またわれわれは全力を盡してこれを維持するために盡さなければならぬ。自然に放置しておいたらそれでいいというのではありませんから、あらゆる総合的な施策をなして、これが維持できるよう方向へもつていかなければならぬ。このことによつて物價の高騰を防がなねばならぬというよう考え方をいたしておるのでございます。それで現在赤字で悩んでおる企業に対して、赤字をなくしてしまおうということにいたしますならば、國家財政はおそらく千三百億あるいは千四百億の金を要するであろう。かようなことは、とうてい今の財政においてできることではありませんし、またそのこと自体がインフレーシヨンを抑えるために最上の策でもない。今回は國家財政の許す限度において五百十五億を支出して、それによつて國家財政力と物價政策とがマツチする線とを考えまして、物價の騰貴の波及をできるだけ小さく止めるということに努力をいたしまして、それらのこと自体がまた三千七百円ベースを維持する一つの方向である。かように総合的な勘案において予算を組んだのであります。ただいままことに適切な御注意もありましたし、また耳を傾むけるべき御意見もございまいたが、私どもとしましては、これでやれるという自信をもつて出したのでありまして、さよう了承を願いたいと思います。
  22. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 最近における物價の横ばいの状態とアメリカの外資の援助のやや好轉しかかつてきたという見透しは、この二つは政府が中間安定の問題を考え出したのにあたりまして、相当考えの基礎になつておると思いますが、外資の問題は別に後で申し上げますが、最近における物價の横ばい状態が、これは実は一つの特殊な形で出てきた現象であつて維いわば昨二十二年度のあの予算と追加予算とのうちから当然惹起されるべきインフレーシヨンが、二つの段階で非常に変つた形で現われてきたというのは、上半期において租税、その他の收納が著しく不良であつて政府の支拂超過が御承知のように非常に多かつた。そこで実勢以上に上半期にインフレーシヨンの現象が起きてきた。下半期になつて猛烈な税金の取立て——これは言葉が少しはげしいかもれませんけれども政府の側からする民間に対する税金攻勢と言つてもいいくらいの猛烈な税金の取立が下半期に集中され、もう一つ金融攻勢と言つていいくらいの金融の締め方がときを同じくして行われた。そのために上半期と下半期とに平均して現われるべきインフレーシヨンが、昨年度は上半期に実勢以上に現われ、下半期に実勢以下に潜在してしまつた。しかも実勢は一向改まつていない。全体の状況を見ますならば、依然として昨年度、一昨年度程度のインフレーシヨンの状態は進行せざるを得ない状態にあることは事実だと思うのであります。決して今大藏大臣の言われましたような最近の日本の実勢から見まして正常の意味において、物價の横ばいが起きてきたのではないと思うのであります。これは議論になりますから、後で見解を表明していただけば結構でありますが、この点さらに私の見方はそうであるということを申し上げまして、問題をもう少し前の方に進めてまいりたいと思います。  結局は今も大藏大臣の御答弁にありましたように、三千七百円の賃金ベースを維持できないかという問題が中心になつてくると思います。結論を申し上げますと、私はできないと思います。できないというのは、この現状を見てできないという意味ではありません。この二十三年度予算を実行すればできないというのであります。どこにできない根拠、諸條件があるかということは、ただいま申し上げましたことも一つでありますが、なお数箇の例を引いて質してみたいと思います。一般会計歳入を見ましても、歳入の中で織物消費税、物品税、取引高税、通行税、酒税、清凉飲料税、專賣益金、印紙の收入、これらはたれが考えても、直接的に大衆の生計費を引上げざるを得ない費目に属するものだと思うのであります。この中で取引高税については、また別に同僚が申されると思いますが、これらのものを総合いたしますと、一般会計歳出全体に対して占めるパーセンテージは、五割をちよつと上まわるという状態であります。二十二年度において、これらの項目の占めた総額はどれだけであるかと申しますと二十二年度においては、もちろん取引高税ははいつておりませんが、その総額は八百六十五億円であつた。この八百六十五億円が二十二年度の一般会計の総支出に対するパーセンテージは四割三厘であつた。大づかみに言いまして、大衆の生計費を直接的に引上げるところの性格をもつておるこれらの品目による收入が、全歳入の五割を上まわつてつて、昨年度に比べて金額において千百五十億円を増加し、パーンセテージにおいて一割を上げておるというこの予算全体を見て、この予算を遂行していつてなお三千七百円ベースの賃金が維持でき得るかどうか大衆の生活が維持できるかどうかという問題であります。私はこの予算を遂行していけばできないと思います。最初に申しましたように、この予算予算自身の中に自己崩壊を加速度的にひき起していくところの重大なる要素をもつておるということを申しましたのは、この点にあるのでありまして、こういうような数字、先ほど申し上げましたような数字、それからなお鉄道運賃は、政府の原案によれば貨物、旅客双方を通じて三倍半に引上げるというよう情勢のもとにおきまして、三千七百円ベースが維持できるかどうかという問題は、多くを議論せずして明らかであると思うのであります。三千七百円ベースが維持できないという意見は、今できないという意見ではないのでありまして、さつきも申しましたように、この二十三年度予算を遂行していけばできない、こういう前提條件を附しての結論なのであります。この点につきまして大藏大臣の御答弁をお願いするとともに、労働大臣に、労働大臣はこういつた予算、こまかいことはともかくといたしまして、ただいま私が読み上げましたこういつた性格をもつておる予算を、このままやつてつて、三千七百円ベースの中に、日本の勤労大衆を七、八、九、十、十一、十二、一、二、三と八、九箇月の間くぎづけにしていき得るという見透しと勇氣をもつておられるかどうかを、明確にお伺いしたいのであります。私どもの方の結論から申します。私ども物價、賃金ベースは、むげに抑えることはできないけれども、できるだけ日本経済の全体から考えて、大幅な引上げはせずに済ましていきたいという氣持は、重々もつておるのでありますが、この二十三年度予算をそのまま遂行するのだとすれば、私自身もまた三千七百円ベースではだめだ、五千円前後にもつていかなければおそらく大衆の生活は成り立たないと思うのでありますが、私どもの分析と定義に対しまして、大藏大臣並びに労働大臣見解をお伺いしたいと思います。
  23. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 いろいろ御説がございましたが、ただいま私どもは本年度の予算を遂行する上において、三千七百円ベースが維持できるという立場をとつておるのであります。これはいろいろの点から申し上げることができるかと思うのであります。ただいま御指摘になりました方面のほかに、たとえば國民所得を考えてみる。むろんこれは物的な計算の仕方と人的な計算の仕方とございますが、一般によく使われる人的な計算の仕方によりまして、國民所得から配分を割り出しますと、本年二千七百億くらいが、確実に余剩として蓄積が残る。こういうふうな計算を立てております。これは全般を総合しての計算でございまして、かような点から見ましても、むりな予算とは考えておらぬのであります。なおこれは國民所得の問題に触れてまいりますと、所得全体に対するパーセンテージというよう考え方には、少しむりがありまして、その所得の各階層における実態を見ていかなければならないのでありますが、かりにそのことはきわめて困難であるといたしましても、今回の所得税の引下げというようなことによつて、各階層において今までの所得と、それから國家への吸收の関係においてアンバランスにあつたというような点の十分な是正をいたしたつもりでおりますので、かような観点から、各層における税と所得の関係というものは、今回非常に是正された。從つてその修正点の須に立つ三千七百円ベースというものは、大体維持できるという観点に立つておるのでありまして、さように御承知願います。
  24. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいま鈴木さんのお尋ねになりましたのは、三千七百円ベースが、二十三年度予算執行に当つて全期間を通してこれが維持できるかどうかという御質問の御趣旨でありましたが、三千七百円ベースの問題につきましては、しばしば申し上げてまいりました通り、現在政府が手にしておる数字的資料に基きまして、財政的見地、民間工業平均賃金の三月に得ましたものから推定した六月の標準賃金に合致せしむるという点、物價を七割程度改訂するというそのことが生計費にどのよう影響を與えるかという点、この三つの点を考慮して、予算編成の基準として得られたものでありまして、これに関する限りにおきましては、妥当な根拠をもつておるのであります。もとよりこれは六月の標準を推定して得たものでありまするから、もし六月以後において政府の企図しておるよう物價がそれ以上に上り、さらに賃金の実質的な裏づけとなる食糧その他の生活必需物資の補給が困難になるということになりますれば、私はこの三千七百円ベースを維持することは困難であると思います。だがもし政府が企図するよう物價の改訂が七割程度で食い止めることができ、さらに食料品その他生活必需物資が補給されて、実質的に三千七百円ベースを維持するに足る補給ができまするならば、私は三千七百円ベースが維持されると思うのでありますが、それはまつたく六月以後の情勢において判断しなれればならない点である。これが現在私のもつておりまする卒直なる見解であります。
  25. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 労働大臣の御答弁は意味はよくわかります。現在三千七百円のベースを計算して出した、その過程方法においては妥当であるという確信をもつておられるという点につきましては、多少の算定の形式その他にはなお異論があるかもしれませんが、大体そうであろうと思います。そうでないものを、そんなあやふやなものを予算編成の重大なる基礎として持ち出してくるはずはないのでありますから、私どももそれは十分了承いたします。繰り返して申しますように、私の三千七百円ベースは維持できないではないかと言つておるところの議論は、今できないというのではなく、また多分できないであろうというふうな抽象的な見透しでなく、この二十三年度の予算をよく吟味していけば、三千七百円ベースはとても維持できないという要素の方があまりに歴々としてたくさんあるではないか。そうしてこの予算の遂行の過程においてもし物資の裏づけが十分でないとか、物價が七割前後で食い止められないというような事態が起きたならば、三千七百円ベースを維持する自信は労働大臣としてないと言われたのでありますから、たれが考えても、この予算の遂行の中で、現在と同樣に七割の引上げと、それから物資も傾斜配給という観念は持ち込んでおりまするけれども、全体として物資は極端に少いのでありまするから、傾斜配給の方式はある程度三千七百円ベースの説明のために作文的に持ちこむということはできますけれども、実態がとても三千七百円ベースを維持できないという実勢にあるのに、それを何とかしつつかい棒をするだけの傾斜配給ができるはずがないのでありまして、それではほかの國民の食糧その他の生活はどうなるのだという全般的な問題がすぐくつ付いてくるのでありまして、この傾斜配給による物資の裏づけという問題でも、説明の一つの方法として使うことはできるけれども、実際の問題としたどれくらいの力をもつてそれを予期することができるかという問題になりますると、そう多くは望めないと思うのであります。いわんや先ほどからも申しますように、また後からも申しますが、予算自体の中で、どうしてもこの予算を実行していけば、物價は現在よりははるかに上らざるを得ないという大きな要素をもつておるのでありまするからして、労働大臣は当面の資任者としてただいまのような説明をされたと思いますけれども、裏を返して言いますならば、とても三千七百円ベースでもつて、これを勤労階級に押しつけていくというふうな勇氣はないというのが、ほんとうの心情であろうと思うのでありますが、この点をもう一度伺います。
  26. 加藤勘十

    加藤國務大臣 二十三年度予算の編成に伴う三千七百円ベースの算定方式についての若干の疑義を残されつつも、大体において数字上の計数においては妥当であろうという私の説明に対して御同意のようでありましたが、さらにこの予算を実行していく上に、三千七百円ベースが維持できて、これを勤労大衆に全年度期間を通して押しつける——と言うと語弊がありますが、これを勤労大衆に求める確信があるか、こういう御意見でありましたが、その点私は卒直に申しまするが確信はありません。
  27. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 労働大臣が確信がないといたしますと、大藏大臣といたしましては、先ほどから申しますように、予算編成の重要な支柱が一つ崩れたとは申しませんが、崩れるおそれが多分にあるということになるのであります。この点に対して、大藏大臣は先ほども、重要な支柱の一つは三千七百円ベース、これと七割上げの物價である、その物價と賃金の惡循環が断てるかどうかということが問題であるということを申されたのでありますが、労働大臣のただいまのお言葉では、一つの仮定の上に立つてのことでありますけれども、もしそうなつたといたしますれば、大藏大臣予算の編成替をやるか追加予算を出すかという問題にまで考えなければならぬと思うのでありますが、この点につきまして、もう一度大藏大臣の御意見を伺いたいと思います。
  28. 北村徳太郎

    北村國務大臣 私はだほどから申し上げた通りでありまして、この予算については、三千七百円をもつて維持できる、また今の現状で維持しなければならぬ。これはいろいろな條件がはいるのでありまして、もしこういうことがあるならばというような仮定も、若干あると思いますけれども、三千七百円に対して裏づけが可能であるかないかということが問題なので、手放しの状態で三千七百円が、ただなすこともなくして維持できるとはむろん考えませんけれども政府としては全力を傾倒して、その実質的な確保に努力する、しかしてこれは可能である、こういう見透しをつけておるのであります。從つてただいまのところ追加予算を出すとか組替をするとかいうふうなことは、全然考えておりません。
  29. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 ただいまの労働大臣大藏大臣との御答弁を比較いたしまして、言葉は大分巧妙に説明されておりますけれども、労働大臣としては、この予算の遂行過程の中において、三千七百円ベースを維持することに十分の確信がないと言つておられるのでありまして、それに対して大藏大臣の御説明は、何とかこれを維持することができる、こういうつもりで努力するというだけの御説明でありまして、現実はこの予算自体を実際に分析していつて、そういう大藏大臣希望通りに、物價と賃金の関係が推移するかどうかという見透しなのでありまして、私ども考え方としては、先ほどから繰返して申し上げましたように、これは維持できないと思うのであります。この問題につきましては、なおあと質問することにいたしまして、労働大臣がおられますからして、労働大臣関係範囲内において、質問をなお二、三続けたいと思います。  それは一般的の労働問題についての質問ではないのでありまして、予算の遂行にあたつて、先ほどからも申しますように、中間安定——中間安定と申しまするが、中間などという言葉はどちらでもいいのだが、とにかく安定性が少しでも確保されるかどうかということが、この予算が健全かどうかという中心問題である。そうすると、いきおいこの中間安定の一つの條件となつておるものの中に、労働情勢の安定というものがある。これがどうしてもでき上らなければ、中間の安定にしろ、中間という言葉を別にしても、安定状態ができ上つてこない。現に中間安定を作成されるにあたつて、その重要なる諸條件として、外資導入問題の順調な推移、それから企業の健全化の問題、生産がある程度引上げられること、それから最も重要なことは、労働情勢の安定であるというふうに、政府も諸條件を列挙されておるのでありますが、この意味において、一般的の労働問題についてではなくして、この予算を遂行するために、予算目的の中心となつておる中間安定を曲りなりにも招來せしめるがための労働情勢に対する必要な最小限度の措置、こういつた角度において二、三の質問といたしたいと思います。  第一番は、労働大臣はごく素朴な形でもつて、最初から労働法規は改定しないということを振りかざしておられるのであります。改定すべて改惡であるというふうな素朴な考え方をもつておらるるのでもないと思いますけれども、とにかく就任以來本会議における私どもの同僚の質問に対しましての御返答から見ましても、終始徹底的に労働法規は改定しないという御意見ように承知しておりますが、私たちは全体の情勢が変つてきて、日本経済再建のために必要で妥当な正常なる形に労働運動をもつていくがための労働法規の改定ならば、何も絶対に労働法規を改定しないというようなからをかぶつて、拒否的な態度に終始する必要は毛頭ないと思うのであります。どこに新しい情勢、新しい労働問題の新方向の探求という必要が起きてきておるかという問題は別にいたしまして、そういつた正常な意味における労働情勢、労働運動、組合運動というものの是正、健全化、民主化というものの必要は、もちろん労働大臣も認めらるるのでありましようし、その角度から必要な正当な労働法規の改定であるならば、何も終始一貫して形式論的に労働法の改定はやらないというふうな考えをかつぎまわる必要はないと思うのでありますが、この点についてどう考えておられるか。
  30. 加藤勘十

    加藤國務大臣 御質問の一切の前提を拔きにいたしまして、お言葉通り日本の労働組合運動の健実なる発展をはかるということについては、私どももまつたく同意見であります。労働組合の健実なる発展、その自主性を確立するということは、断じて法律の規定によつてなし得べきことではないのでありまして、あくまでも労働組合の自主的な成長にまたなければならない点であります。こういう点から、私は現在の労働者の基本的権利保護を規定した労働関係の三つの法律については、これを改定する必要を認めない。また労働状態の安定化をはかるということが、外資導入の一つの條件である、こういう御説明でありますが、その点私異議ありません、その通りであります。しかし労働状態の安定をはかるということは、労働者をして何らか安心観かを抱かしめる具体的なものがなければならいと思うのであります。言うまでもなく、今日の日本に一番要請されておりますものは、先ほどから御意見のありましたインフレーシヨンをいかにして阻止するか。インフレーシヨンの高進の速度をいかにして緩和するかという点から見ましても、究極的には生産の増強がはかられるという方向がとられなければならない。生産の増強には、第一に労働者のこれへの熱情的な協力がなければならないのであります。そして現在、先ほどから言うように、三千七百円ベースの維持の問題にすら、多大の疑惧をおもちになつております鈴木さんとしましては、労働者諸君にどういう具体的な形において安心感を與え、その安心感の上に協力態勢をとつてもらうかということについてお考えであろうとは存じますが、私どもは今日三千七百円ベースさえ維持できるかできぬかという困難な状態において、なおかつ労働者諸君に多くの苦しい状態をがまんしてもらつて、協力を求めなければならない状態にあるのであります。もし経済的に労働者諸君が欲するままに自由に與え得る物資の余裕をもつておるならば、それは物質的に最も強い安心感を抱かしむるゆえんであると存じます。ただそれは言うべくして事実上行い得られないことであります。從つて労働者に物質的な安心感を與えることができないとするならば、一体何によつて安心感を與えることができるか。それは將來の日本経済の建直りに、どこまで労働者が力を入れ得るか、そしてまたどういう形において入れるか、それがためには少くとも心理的に不安な感じを與えたのでは、断じて協力は生れてこないと思います。経済的に安心感を與えられないとすれば、心理的にだけでも、ぜひとも安心感を與える必要がある。これを強くとらなければならないと考えるのであります。御承知の通り労働関係法規は、労働組合法にしましても、労働基準法にしましても、いずれも日本の民主化の大前提として制定された基本的な法律であります。この日本民主化の大前提として、労働者の権利と保護を最小限に規定したこれらの法律が、その制定後労働組合法にしましても、まだ二年そこそこであります。それから労働基準法のごときは、ようやくこの五月一日から完全実施に移された状態であります。この短い期間の間に、これがわずかな事柄から、いつでも自由に変更される。しかも今日労働者の力が議会勢力として、自分たちの権利を十分立法の上に表現するだけの力をもち得ない段階におきまして、これがただちに自分たちの意思に反して修正が加えられるということであるならば、一体労働者諸君は何によつて今日得ておる権利を明日保持することができるか。今日與えられておる自由が明日奪われるということであるならば、ここに非常な心理的な不安感を抱くということは、言うまでもないのであります。われわれはこういう観点から見ましても、労働者費君に心理的な不安感を與えるような労働法規の修正というものはなすべきでない。ほんとうに物質的に十分に與え得る余裕ができ、物質的に安心感を得た後に、おもむろに冷靜に、この法制がどこにどういう欠陷があるかということが、十分にあらゆる角度から檢討されて、そこに改むべきものが生れてくるなら改むべきでありまして、今日そういう点において、十分にあらゆる角度から批判する余裕がないときに、わずかな事柄をもつて、ただちにそれを改正の理由にするようなことは、いたずらに労働者諸君を刺激する以外の何物でもない。こういう点から、私は現在の労働法規の改定は行うべきでないという意見を強くとつておるものであります。
  31. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 労働大臣のお考えの大体はわかりました。労働大臣は、物質の問題と心理的の問題との二つにわけて、物質求に惠まれないから、せめて心理的にでもと、また將來物質的な方面で相当情勢が好轉したならば、場合によつては労働法規の改正を行つてもよいということをおつしやいましたが、それは重大なるお考え違いではないか。私たちは物質的に惠まれなければもちろんのこと、物質的に惠まれましても、日本労働者の絶対的な意味における基本的な自由というものは、この問題とは別個の問題として、最も基本的な問題として維持助長していくべき問題であると、私どもは考えておるのであります。  また私どものいうところの法規の改定云々という問題も、決して労働大臣の言われるように、そういつた労働者のせつかく獲得したところの基本的な権利を縮小しようという考えのもとに主張しているのでも、もちろんないのであります。私たちは日本労働者諸君のために、思い切つた労働組合運動の育成と拡大と成長という方面に対しては、労働大臣と何ら見解を異にしているつもりはないのでありまして、私たちの言うのは、眼前の労働情勢、特に労働行政といたしまして、せつかくある方面からであつても期待を背負つて労働大臣に就任した加藤さんの、就任以後やられていることを見ておりますと、あまりに何もやらなさ過ぎるのではないか。労働法規関係の改定という問題は、しばしば述べられましたように、今の見解では決して改定しない、こう言つておられる。しかし実際の問題といたしましては、労働運動の現状は、一部の政治的な國家機構の破壞を意図するどころではなく、それをむしろ直接的の目標にしておるかとさえ思われるような、あの澎湃たる労働運動、これが決して労働大臣の言われる本來の線に沿つた健全なる労働組合の発展形式でもなければ、日本労働者諸君のほんとうの解放でもないと、私たちは思うのでありまして、こういつた面に対してほんとうに労働者諸君の指導者として、あるいは政府の責任者として、日本再建の重大た部門を背負つておられる人として、なぜ適切に相当の手を打たないかということを、私たちは要望もするし鞭撻もしたいという氣持をもつているのであります。この点についてはどういうふうに考えられるか。またこういつた方面を措置するにあたつて、この変轉極まりない現在において、どういつた情勢が起きてくるかもしれない。その必要なる範囲において法規を改定するということは、労働者諸君権限を縮小するゆえんでもなくて、本來の健全なる線にもつていく方法だと私たちは思うのであります。もしそういうような場合に、そういう角度からの労働法規の改定であつても、なおかつ法規は改定しないという今の考え方をどこまでも押し通していかれるつもりであるかどうか。もしこういうような角度から、現実の情勢に照し合わせて、眞に日本に労働運動、組合運動が、あなた方も考え、私どももあなた方にひそかに期待しているように、健全な方向に展開していくために必要な法規の改定であるならば、あえて今から改定しないしないと言つて騒ぎ立てる必要はないかと思いますし、またこの点につきましては、それは國会がこれを決定した場合には絶対であります。一度出た法規というものを——あえて労働関係の法規に限らず、この変轉のはげしい時代の当該大臣が改定しないしないと言うのもおかしなものでありますし、また場合によつては、國会の重要な権限の一部分である立法権に対しても、おかしな関係ではないかと思うのであります。私たちは決して今これを改定しろと言つているわけではありませんが、原則論としては、そういつたからに立てこもつた態度を捨てて、労働大臣としては、当面の政治的な惡質な労働問題の措置、指導方面についても、衆望を担つてつたのであるから、もつと本氣になつて、積極的にいろいろな手を打つていただきたいということを要望するつもりで、御質問しているのでありますから、以上の諸点について、ごく卒直なる見解を、この委員会において漏らしていただきたいと思います。
  32. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまお尋ねの点につきましても、また私しばしば議会において申し上げております通り、原則的に一切のものについて手をつけないというようなことは、あり得べからざることでありますし、また議会が新しき立法なり、法律の修正をするということはまつたく立法府の権限でありまして、これに私どもかれこれとみじんも嘴を容れる必要もなければ、そういう権限もありません。ただ労働大臣としてどう考えるかという御質問であるから、労働大臣としては今改定する意思はない、こういうことでありますから、この点は、誤解のないようにしておいていただきたい。  それから日本の労働組合の現実の情勢の中に、今鈴木さんがお示しになりましたような形が一部存在することは、私もこれを認めます。しかしこの現象はどうして生れてきたかこれは私は何と言うても戰爭前の長い間の抑圧に対する戰後の反動現象として現われものでありまして、順次労働組合運動自身が平靜に帰するに從つて自己批判が行われ、自己反省が行われてきているのであります。大体におきまして、最近の労働組合運動の情勢は、おのずから帰するべき平靜の点に帰しつつある傾向でありまして、これらのことを法規によつてかれこれするということは、私はいたずらに刺激を與える以外の何ものでもないということを繰返しますが、労働組合自身の成長によつて、労働組合自身の反省によつて、そういう行き過ぎた点があれば是正さるべきであるし、また現に是正されつつある。私どもは労働組合関係者の一人という立場から言うならば、ぜひとも労働組合自身の反省によつて、行き過ぎとみられる点をみずから批判しつつ、平靜の点に帰するように努めたいと考えておりますが、これを法律の力によつて行うということは、決して策の得たものではない。また今までなぜ私がこのことを強く——あるいは皆さんからごらんになれば、必要以上に言うているのではないかとお感じになるかもしれませんが、いかにもあるいは必要以上であるかしれません。しかし私はみずから進んでこのことを言うたのでなく、人から所信を問われたときに、私は自分の所信を卒直に申し上げているのであります。何となれば、昨年の秋にタフト・ハートレー法案がアメリカの國会通過しまして、その影響が順次日本の各層に浸透してまいりました。アメリカにおいてタフト・ハートレー法が制定されるような状態であるから、アメリカが資本主義の國であるがゆえにこうした法律が制定されたとするならば、日本もまたアメリカの現在占領下にある。從つてアメリカと同じような方面を進まなければならぬであろうというような観点から、タフト・ハートレー法への関心が強まり、できればタフト・ハートレー法と同じような内容をもつた法律が、日本の現在の労働法規の改正によつて行われよう、こういう意見が各方面に相当顯著に、しかも相当底力強く現われてきたのであります。私はこの事実を見てとりましたときに、もしこういうことがアメリカの模倣として行われるならば、一体日本の現在当面している経済状態はどうなるか。今ただでさえインフレーシヨンの破局につきこまうとする恐るべき段階にあるときに、こうしてもし労働者が日本経済再建に背を向けたとするならば一体どうなるか。それを考えますとき、われわれはアメリカにおいては、なるほどアメリカの國内情勢によつてタフト・ハートレー法というものが生れてきたのでありますけれども、日本は日本の事情において、日本の事情に最もふさわしき法規が必要であるのであります。そういう点から言つて、現在の法規が、もとより資本家側から見ても、あるいは労働組合側から見ても物足りない点があると私は信じます。しかしそれにもかかわらず、私がこの両方からそういう意見があるということを明白に知りつつ、なおかつ現在の段階においてはこれらのものに手をつけるべきでないということを主張しますゆえんのものは、偏えに日本の経済破滅を未然に食い止めるため、そして日本経済再建に労働者諸君を背を向けしめないためにこそ、最もそういう措置が必要である。私は、何も自分関係する行政範囲において、いろいろな法律を新しくどんどんつくつていく、自分の所管する行政範囲において、立法を次から次へとたくさんやるばかりが仕事であるとは思いません。また必要なる場合において、自分が必要と信ずるならば、たれから何と言われようとも、必要な所信を明白にするのであります。必要でないと信ずるならば、たれから何と言われようと必要でないと主張する以前に、私の態度はないのであります。こういうあらゆる観点から、現在の日本の情勢を総合いたしまして、この日本の諸般の情勢と労働組合運動の動向とを併せ考えてみました場合に、私は結局現有の労働法規は、多くの点において物足らないものがあるけれども、しかし手をつけるべきではないという結論に達して、このことを卒直に私は申し上げておる次第であります。
  33. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 労働問題に対しましては、予算總会の席上でありまするからして、今まで労働大臣にお伺いした点で一應——どもがその考え方に全面的に賛成であるかどうかは別といたしまして、労働大臣考え方の根拠だけはわかりましたから、一應これで打切つておきたいと思います。  時間の関係もありますので、この際私の最初に申しました中間安定の策定という問題に立ち返りまして、私ども見解をもう一度大藏大臣に申し上げて、大藏大臣の最後的なまとまつた見解をお伺いしたいと思います。  予算歳出歳入という方面をしさいに檢討いたしましても、その一々は時間の関係であげませんが、二、三の事例をあげましても、とうていこの予算を遂行していく過程において、物價の騰貴、生計費の暴騰という問題をひき起さないというふうなことは、私たちの結論としてはどうしても考えられない。いわんや中間安定策定のそのほかの條件となつておるところの、重要な條件の一つであるところの労働行政の問題にいたしましても、ただいま労働大臣に二、三重要な点についてお伺いした通り、労働大臣の切々たる熱情だけはよくわかりますけれども、現在の日本の労働情勢が、七月、八月以後、再び労働攻勢と申しまするか、動揺をひき起すことなしに三千七百円ベースでやつていけるという見透しは、まづつけられないという考え方の方が、公平に見て事実だろうと思うのであります。それからもい一つの重要な中間安定策定への要素である外資導入の問題につきましても、今後の推移はどうなるかしれませんけれども、少くとも一億四千万ドルの日鮮救援資金の問題は、ああいつたコースをたどつてつて、当初政府が予定したような順調なコースをたどるとは、私どもには考えられない。もう一つの、生産は上昇しているかという問題、これはわずかながらという言葉で先ほど大藏大臣は申されました。たしかにわずかながら上昇しておる。しかしながら、これは傾斜生産をしておるところの鉱工業部門の関係だけであつて、全体としては中間安定を意識的、計画的に策定し得る段階にまできている、その程度にまで今の條件が熟しているとは私どもには考えられないのであります。もう一つの重要な條件である企業の整備健全化という問題はどうか。これはこれからやつていくというのなら別でありましようが、少くとも現在の日本の大中小を問わず、企業が健全化され、中間安定策定の基礎となり得る程度に内的に健全化されておるということは、おそらく大藏大臣も毛頭考えられないと思うのであります。今言いましたような諸要素を列挙して総合的に考えてみますときに、この中間安定という考え方は、現実の問題としては、おそらく昨年片山内閣当時に行つたところの七月の物價改訂、すなわち千八百円ベースのときの中間的なもので、中間という言葉は使われなかつたが、中間安定時期を策定するという作文的の構想を安本が書いた。当時の安本長官のごときは、それを過信しすぎたかどうかわかりませんが、十一月に至ればその計画の線に沿つて國民生活を黒字にしてみせると言つて力んだ。その力んで成果の行方はどうであるか、これは御承知の通りであります。おそらく中間という言葉をかぶしてきましたけれども考え方は去年のあの考え方を一歩も出ておらないのでありまして、千八百円の代りに三千七百円が現われたきただけのものだと言わざるを得ないのであります。そしてこの予算は今申したように、自己矛盾の内容を随所にもつておる。この予算を遂行していけば、三千七百円ベースは崩れるにきまつている。現在物價を七割上げることを言つているが、その線で食い止められるはずはないのでありまして、そんなことができると考えていることは、アラビアンナイトの裸の王様の話と同じで、だれにもできないことを知つておりながら、できるのだ、できるのだと言つているのにすぎないのであつて、こういつたあいまい模糊たる政策の上に立つた二十三年度予算、その予算の收穫を中間安定実現の一点に置くという考え方は危險きわまることで、できないことをできると考えておるのでありまして、この点から言つても、私は税法その他歳出のこまかい部面については、同僚諸君から別な観点より予算修正論が出ると思いますから、私はこの中間安定の考え方自身が、予算そのものから覆えされてしまうという観点から、この予算を通して、少くとも中間安定的なものは出てこない。これをどうしても実現しようとすれば、大幅に修正をして、その線に沿つて予算を組みかすなければならぬと思うのでありますが、この点に対する大藏大臣考え方をお聽したいと思います。
  34. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは他の機会にも申し上げたのでありますが、私どもは第一にいわゆるインフレを抑えていかなければならぬ。從つてこれがためには、均衡財政を堅持しなければならぬということを、たびたび申してきたのであります。しかしこのことは、別の機会に申しましたように、國家財政と申しましても、これは國民経済の總合であるし、家計、企業等が健全化したときに、実は國家財政が最も健全になり得るのでありまして、さような観点から申しまして、完全無欠な、絶対にインフレを防止するところのいわゆる健全財政というものがただちにできるかどうかということになりますと、これは相当むずかしい問題であります。現在われわれが許された可能の範囲においてベルトを盡すという観点に立つのであり、それが可能であるかどうかとういことについては、いろいろなアンノン・フアクターがはいる。從つてそういう諸條件のために、それはできないことだという見方と、いやできるのだという見方に、結局わかれると思うのでありますが、私どもは、少くとも非常な危機に襲われておつた昨年の今ごろに比ベて、この程度でがまんすれば、中間安定が得られるだろうという希望をもつことのできるのは、拒むべからざることであります。この際私どもはその希望が漠然たる希望でないと信じます。すなわち日鮮救援費の問題とか、その他いろいろなガリオア・フアンドに基くもの、綿花借款によるもの、その他いろいろなものが成立いたしまして、全体に日本の産業に対しては輸血が行われており、さらに行われようとしておる。この事実を抑えて長年苦しんだ本日の経済が、このときこそ安定線に向うときであると考えるがゆえに、諸施策を総合して、たとえば安本の経済五箇年計画に一部として安定策を考えておるのでありまして、これがどきない相談だといえばそういう御説も出ましようけれども、私どもはそうでない。昨年に比べて少くとも具体的にいろいろな新しい問題が起つておる。われわれに希望を與える新して問題が起つておる。こういう限りにおいて、いろいろ新してフアクター等を聽いておるのでありますけれども、これは加工による外國資材の輸入ということもございます。あるいは一方投資の面もございます。いろいろ話は出ておる。しかしながら、日本の受入態勢に未だしのものがございますから、この際受入態勢を何とか確保することによつて、外資の流れを滑らかにする方面に、全力をあげて行かなければならぬ、こういうように考えておるのでございます。お話がございましたが、今の日本の現状で、物價水準をただちに世界水準に、あるいは能率水準をただちに世界水準に、生産水準をただちに世界水準にするということは望むべからざることでありますし、さようなことは危險である。從つて一歩々々このときに近づけるのときであつて、それがすなわちいうところの中間安定であると考え、またそのことが可能であるということを、内外の諸情勢を総合いたしまいて考えておる次第でございまして、この点につきましては、多少どうしても事柄事柄でございますから、抽象論になると思いますけれども、今はつきりした前提があるということ、これはやむを得ないと思いますけれども、私どもはただ今まで不安にさらされておつたが、漸次安定に向う方向だけこの方向に向つて努力を傾けたい。さように考えて、これは前から申し上げたつもりなのであります。
  35. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 私の大藏大臣に対する質疑は、これ以上にわたりましても、抽象論になると思いますから、一應打ち切ることにいたします。  なお運輸大臣がお見えになつておりますから運賃の引上げの問題について一、二質問をいたしたいと存じます。國鉄運賃の一率に三倍半の引上げ、これにつきましては、もう各方面から相当強い反対が表明されておるのでありまして、現在の情勢においては、このままではなかなか済まされないのではないかという情勢にあるということを、運輸大臣も一應お認めのことと思います。独立採算制の建前を堅持する以上、運賃の引上げをどこかである程度行わなければならぬ、こういう考え方に私どもは反対するものではありませんけれども、問題は一率に三倍半の引上げにある。最も権威ある政府としてのなすべき努力を何らなさずして、最も安易なところにもつてつてしまつたということにつきまして、運輸大臣に一、二お尋ねしたいのであります。  大体詳しい基礎的の数字その他の問題は、運輸大臣の方が私より詳しく知つておられるはずでありますから、そういう問題はあげる必要がないと思います。結論的に申し上げます。鉄道運賃法に示しておるところの公正妥当なものであるかどうか、原價とにらみ合わせて正当なものであるか、それから一般経済を圧迫しないこと、そういつたいろいろな三つ四つの原則から照し合わせても、あるいは現在の原價の割合がどいうふうになつているかという点から考えても、貨物運賃引上げの率の方は相当幅残されているに対して、旅客運賃の引上げの率の幅は、そうくは残つておらないということは、数字をあげるまでもなく、運輸大臣の御承知のことだと思います。現実の問題として、おそらく運輸当局が最初に立案いたしました案でも、両方とも三倍半にもつていくという案ではなく、旅客運賃の方は二倍半程度で抑えておる。それから貨物の方はもう少し高率にする、ます。私ども民主自由党も、二倍半にするか、二倍にするかという問題は別として、考え方については賛成なのでありまして、この考え方が正しいと思うのであります。運輸大臣は何がゆえに最初のやや妥当な案を引こめてしなつて、最も愚劣な案であるところの一律三倍半値上げという、選りに選つて一番愚劣な案に賛成してしまつたか。こういう点をお伺いしたいのであります。
  36. 岡田勢一

    岡田國務大臣 鈴木さんにお答え申し上げます。まず第一には、今回の引上げの倍率を、安易な方法の同率にとつたのは、何ゆえかという御質問であると思いますが、安易な方法を選びますために、倍率を同率にいたしたわけでは決してございません。これは、旅客は旅客、貨物は貨物、これを今日の経済の現状から檢討をいたしまして、あらゆる角度から苦心してつくり上げました結果でございまして、むしろ安易と申し上げるよりは、困難をしてやり上げたというようなことになつております。  第二の御質問の、公正妥当か、どういう考えでこの旅客貨物のかような不均衡なことに決定したかという御質問でございますがからそろばんをとりますと、貨物は非常に安いのでございます。旅客の方はその割合に高くなつておりますが、これは運輸省といたしまして、鈴木氏の御指摘のように、採算原價から割出してまいりますと、さきに運輸省が考えておりましたような倍率に相なるのでございますがのように、物價問題と賃金問題とに最重点をおきまして、ただいま当面しておりますインフレーシヨンの抑制に努力をいたさなければならぬ状態になつております。その点、運輸当局だけの考え方決定できない大きな理由がございまして、刻下の物價、賃金の総合調整の見地から、また國家財政の見地から割出しまして、大局から考えて決定しなければならぬ現状でございますので、愚劣な案に賛成したという御批評けれども、私は愚劣でない賢明な案だと考えております。御了承願います。
  37. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 愚劣な案ということは、どちらでもいいのでありまして、言葉があるいは乱暴であるかもしれませんが、そんなものは取消してもよろしゆうございますが、運輸大臣お答えをお伺いしていると、諸般の全般的の情勢から、運輸省自体考え方とはやや隔つた現在の案に賛成せざるを得なかつたというふうにとれるのでありますが、そういたしますと、その諸般の情勢という問題を一應離れまして、運輸当局だけの考え方から純粹にいきますと、前の案の方がいいのだというお考えを今でももつておられるのでありますかどうか、その点をお伺いいたします。
  38. 岡田勢一

    岡田國務大臣 お答え申し上げます。初めの案は、先ほども申し上げましたごとく、経営原價の面、あるいは独立採算制の面などからも考えました考えが、強くはいつてつたのでございます。閣議決定になりますまでの過程におきまして、いろいろの角度から檢討を加えられました結果、今日といたしましては、ただいまの案が正当である、このように考えております。
  39. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 お伺いした点と少しお答えが食い違つておりますが、現在の情勢で、一度組み上げてしまつたところとしての立場もあるという点から考えれば、この案が妥当だという考え方はよくわかるのでありますが、私のお伺いしたのは、その問題を抜きにして、純粹の運輸当局の根本的の立場からいけば、やはり前の案の方がよかつたと当然お考えになるような御答弁だつたと思いますが、そういうふうに考えてよろしいのですか。こういうことを聽いておるのであります。
  40. 岡田勢一

    岡田國務大臣 鈴木さんの御解釈は御自由でございますが、私といたしましては、関員といたしまして、閣議決定には連帶責任をとるのでございまして、ただいまの決定に対しましては、どこまでも責任をもつて國会の御承認に対しまして、でき得る限り努力をするという考えでございます。從いまして、無修正通過を願いますればたいへんにありがたいと思つております。但しその点につきましては、國会におかれまして、最高の権威をもつておられますものでございますから、何と言うこともできないと存じます。
  41. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 たいへん國会議員立場を尊重していただいたような御答弁でありますが、この問題はこれ以上應酬しても運輸大臣としても答弁のしようがないと思います。私どもの解釈では、應答の推移からいたしまして、鉄道当局としては、やはり以前の原案の方が妥当であるという考えを包藏しておられるのではないかという印象を受けましたということだけを申し上げまして、この問答は一應打切ることにいたします。そ賃を値上げしなければならないという基本情勢につきましては、私どもも一應も二應もこれを了とするところでありますけれども、何といつてもこれだけの大きな負担國民大衆にかける、一方においては旅客運賃において勤労階級に重大なる犠牲を押しつけていく、一方においては、鉄道当局は、貨物運賃値上げ物價の二%くらいの値上りを生ずる原因にしかならないという見解をもたれておるらしいのでありますが、そんなばかげたことがあるはずはないのでありまして、これは基本のベースのとり方によつて政治的にそういつた数字をつくろうとすればつくれますけれども、およそ物資が最終消費者の手にまわるまでに数回もの鉄道運賃の関門を潜ることは当然でありまして、最終消費者の手に渡るまでに二%前後の値上りしか生じないというよう考え方は、ごく常識的に考えてもあり得ることではないと思うのであります。しかし、ここでそのベースのとり方とかそういつた專門的な問題を論議する意味はないのでありまして、強いて必要があれば分科会においてでも質問することにいたしまして、この問題は、要するに、運輸大臣もむろん考えておられるでありましようけれども、大衆生活の上に重大な致命的な影響を與えるものであるということだけは事実なのでありますから、やむを得ず上げるにいたしましても、その以前においては、でき得るだけ上げる率を狹め、また妥当な上げ方をするための前提の努力という問題は、これは絶対に運輸当局としてしていただかなければならない問題だと思うのであります。時間の関係がありますから、総括的に申しますけれども、これはすでに言い古された問題でありますが、現在の國鉄の中において、現業の面はむしろ現在よりもつと充実していいのでありますから、現業中心に思い切つた配置轉換をする、そうして、人件費において一割五分云々というような生ぬるい考え方でなくて、実人員において圧縮できなくても、とにかく人員に手をつけて、整理よりも、むしろ鉄道に関する限りは思い切つた配置轉換を実行する、これによつて相当の経費が生み出せると思うのであります。これも時間的に困難であるというようなことを言つてつたのではきりがないのであります。それでは國民にこれだけの犠牲を押しつけて、政治の信頼を維持していくことは困難ではないかと申しますと、この方が不可能に近い困難なのでありまして、この國民大衆にこれだけの犠牲を押しつけて政治を維持していくという困難をあえて押し切るというのでありましたならば、國鉄内部において配置の轉換を断行するという困難のごときは、克服できる困難ではないかと私たちは思うのでありますが、この点につきまして、思い切つた配置轉換をする、そうしてむしろ形式論的な首切りというような問題でなくして、これを通じて人件費の節約をはかる、あるいはもしどうしてもはかれないのであれば、積極的に國鉄の收益をあげる方面にかじをとつていく、それだけの決意と努力を現在この三倍半運賃値上げの事前に鉄道当局としては拂つたかどうか、今後急速にこの問題に手をつける意思があるかどうかという問題をまずお伺いいたします。
  42. 岡田勢一

    岡田國務大臣 お答え申し上げます。御指摘の通りに國有鉄道の事業は公共的でありますし、また一面独占的企業でもございます。これが運賃の引上は國民大衆の生活に大なる影響を及ぼしますので、事前に努力をしたかという御質問でございます。まことに御意見通りでございます。私らといたしましては、まず今回の予算編成にあたりまして、今年度の増送計画に要する人員の増加、労働基準法の実施による人員の増加、あるいはまた特殊要員、進駐軍用の人員、また鉄道公安官を設置していただきますための要員等を合わせまして、相当尨大な所要人員が要求せられたのでございますが、今回の御提案申し上げております案は、鉄道は六十二万七千人くらいになつております。そのうちには先ほど申し上げた特殊要員等を全部合わせて八万六千人が含まれておりますので、基礎人員は五十四万人程度節減をいたしたわけであります。その点につきましては、相当に努力をいたしております。しかも今後の増送計画の実現を完成いたしますためには、御意見ように相当配置の轉換もいたし、合理的な運営をなさなければ目的は達せられない状態になつておる次第であります。これは今後私らが大いに馬力をかけて努力いたしたいと考えております。また経費におきましても、先般一割五分の節減をすることに相なりました。そのほかにも、普通に物件費などを計算いたしますと、相当の赤字がまだ殖えるのでございましたが、いろいろ政府といたしましては、今日の貧弱な國家財政の面から考えまして、十数億を節約しておるのでございます。それは不用資材の賣却処分あるいは経常費の節約等によりまして現われておりますので現ただいまの予算面に出ております約十二億の雜收入という面は、そこらの努力が現われているのでございます。  なお今後におきまして國有鉄道の運営は、消極面においては、今の人員、経費等の節約でございますが、積極面におきましては、今の困難な経済を打開いたしますための生産の飛躍的増強のためには、いろいろの重要物資の面の輸送の元締をいたしております関係上、輸送の復興ということが、一番大きな問題になるのでございまして、私らはこの増送計画の実現、さらに旅客輸送の増強に対するサービス並びに施設、取扱等の改善、これらを目標として、なおいろいろの面におきまして、刷新改善の実をあげたいと存じまして、今回國有鉄道審議会を設置いたしまして、各方面から有能なりつぱな方に集まつてもらいまして、根本的の案を立案していただき、速やかに具体的に企業の整理、合理化経費の節約の面並びに現業と行政の分離、それに伴う現業面の機構の根本的の改善に進めたい、こういうことにいたしております。それをもちまして、今後ますます國有鉄道の内容を自発的に改革を加えまして、今回の運賃値上に関する國民の御批評に対するお答えをいたすよう実行をいたしてまいりたいと考えております。
  43. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 運輸大臣のただいままでの御説明では、おそらく國民は三倍半の値上やむを得ないという納得はいかないだろうと思います。この点をひとつお伺いしますが、國鉄は戰時中強制買收した線、その他戰時中強制買收した線でなくても、民間に拂い下げた方が適当であるというふうな線は、この際拂い下げていくという意思がおありかどうか。これはさしあたつて價格はきめ、賣買は成立しても、数億、数十億というような金が、ことしの財源としてはいつてくるということは、望めないと思いますけれども、國鉄の將來の経営の方法、冗費を省いて——あえて非能率的な官業にしておかずに、民間に拂い下げることによつて、人員でも経費でもはるかに節約されるということは事実でありますから、そういう不明ではないでしようけれども、國鉄から拔きとつてよい線は、この際民間に拂い下げて、國鉄はみな民間に拂い下げてもよいという考えを民主自由党ではもつておるのでありますが、それは根本問題として、そういう処置をするにあたつては、これは数年にわたつてきましようけれども、さしあたつては財源を求める一方、ひとつ能率の惡い部分は、民間の手によつて能率のよいものに仕上げていくという考えをもつておるかどうか、伺いたい。
  44. 岡田勢一

    岡田國務大臣 戰時中に半強制的に買收をいたしました私鉄の線数は、約三十線前後と思つております。このうちそれらの会社が清算いたしまして解散をいたしましたのが約三分の二でございまして、ただいま十社前後はまだ解散をいたしておりません。中には還元拂下を希望しております向きもございます。これらに対しましては、その路線の敷かれております地方の生産の状況、輸送いたします人員並びに貨物の現状、いろいろ地方の財政関係などをよく調査勘案をいたしまして、そうして今後の研究をいたしまして、これが拂下をなすべきか否や、必ずしも私は今までとられてまいりましたように、絶対に拂下はしないという理由も当らないと考えております。今後相当公正な方法、機構によりましてこれを檢討いたしまして、これに対処いたしたいと考えております。
  45. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 なおその他に國鉄のもつておる資材物資その他につきまして、大体十億前後のものは拂下げて財源に充てるという計画になつておると思いますが、急速にもう少し相当量のものを拂下げる余地、可能性はありませんか。もしあるとすれば、どのくらいの財源が期待し得られるかという問題をお伺いいたします。
  46. 岡田勢一

    岡田國務大臣 御承知のよう予算面において約三億五千万円の不用品の拂下処分を予定いたしまして、御提案申し上げております。その他に長くやつておることでありますので、予定工事の変更等によりまして、なほ若干の不用資材もあろうかと存じます。もつても終戰後に軍から預りました品物なども若干残つてはおりますが、これは拂下処分をいたしましても、國有財産として國庫に納入しなければならぬことになつておりますので、その分に対しましては、全然別個でございます。ただ鉄道特別会計がもつております資材、ストツクの中に、なお若干あろうかと存じております。ただいま各鉄道局に命じまして、その詳細を調査中でございます。数日の間に大体わかつてまいると思いますので、御報告申し上げたいと思います。不用資材がございましたら、それは適当に公正な方法によりまして拂下げまして、特別会計赤字の埋草にいたすことは、もちろんでございます。
  47. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 私の運輸大臣に対しての質問は、これで終ることにいたします。  なお安本長官に中間安定の問題についてお伺いするつもりでございますが、中間安定の現実の計算その他の計画は、まだできておらないという大藏大臣お答えであつたと思いますが、そういうお答えでありましたから、それのできるのを待つて、別の機会にお伺いすることにいたしまして、総理大臣への質問は留保いたします。  なおこの一点だけ安本長官にお伺いしておきます。今の中間安定の具体的なものは、一度新聞に一部発表されたのは正式なものでないというふうな大藏大臣お答えでありましたけれども、この点につきましては、政府は急速にこれを用意しておられるか、またいつごろ発表せられるか、この点をお伺いしておきます。
  48. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 お答えします。中間安定で新聞に出ましたが、これは大藏大臣が申します通り、まつたく私どもも実はほんとうのことを申しますと、知らない間に出たのでございまして、あるいは事務の一部とその他の資料が出たのかと思つております。ただいまその筋といろいろ交渉しておりまして、これについては單に作文をつくるだけではだめで、具体的にいろいろな方策を示さなければならない関係がございますので、交渉を進めておりますから、遠からぬうちに策定ができようと思つております。そうしたならば、なるべく早目に皆樣にお諮りして、いろいろ御意見を頂戴し、まとめ上げたいと存ずる次第でございます。
  49. 鈴木正文

    鈴木(正)委員 安本長官にもう一度お伺いしておきます。今の中間安定の賃金に対する具体的なものが出てこないと、実はこの予算の中核をなす部分が、——あなたのおられないときにも質疑いたしましたが、その二つにかかつておるのでありますから、これが出てこないと、ほんとうのわれわれの審議は進捗しないという関係にありますので、少くともこの委員会が継続している間に正式に具体的なものが出されるということを示されなければ審議が完了いたしませんので、その点十分お出しになる確信があるかどうかということをお伺いしておきます。
  50. 栗栖赳夫

    ○栗栖國務大臣 私どももそう思つております。しかしまたその筋との関係もございますし、向うの國会関係もございますので、私は今お示しになりましたような点については、御審議をお願いしておる関係もありまして、早急にまとめ、そうしてお諮りをいたしたい、こう思つておる次第でございます。
  51. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 総理大臣はただいま御都合を伺つておりますが、まだ予算委員会が始まつてから一度も御出席になりません。ただいま嚴重に総理大臣に交渉中でありまして、あす午前中に出席してもらいまして、今までの総理大臣に対する保留の分を一括して片づけたいと思います。それでは次に中崎敏君。
  52. 中崎敏

    ○中崎委員 総理大臣に対する質問は、委員長のお示しの通りに明日に留保いたしまして、他の大臣に対する質問をいたしたいと思います。  本年度の予算は非常に遅れて提出されましたが、現在の時局はきわめて困難なときでありますので、政府においても非常な苦心をされたことについては、これを諒とするものであります。また何ぴとがこの予算を組むにしても、そうたやすくこれが組めるものでないことも容易に想像がつくわけであります。ところでまたわれわれとしては國民の負託にこたえて質すべきを質さなければならぬわけでありまして、そういう見地から、ごく簡單なる質疑を試みたいと存ずるわけであります。  まずこの予算の内容に触れますに先だちまして、追加予算が出されるかどうかについてお尋ねしたいと存ずるわけであります。総理大臣大藏大臣も追加予算を出さないということは、しばしば言つておられるわけでありますが、われわれはただその政府の言明があるのにかかわらず、本年度内においては追加予算が出されるのではないかということについて、深い懸念をもつものであります。その根拠は多々あるわけでありますが、まずその二、三の例を申し上げてみますと、先般本会議におきましても、米價に対する決定とにらみ合わせまして、米價の價格差にあたるものを農家に還元せらるべきであるということを決議してまいつたわけであります。さような点に鑑みましても、この米價に決定と前後いたしまして、その利益と申しますか、これの支拂いが何らかの形においてなされるようなことになるのではないか、そうすればいきおいこれは予算の形において現われてくるのではないかと考えてよかろう。さらにまた賃金の問題についても、先ほどからしばしば質問があつたわけでありますが、現在官公労働者、從業員側においては、五千二百円の賃金ベースを決定しておることも知つておるわけであります。これに対しまして三千七百円のベースをもつて、はたして押し切つていけるかどうかについて、一つの不安があるばかりでなく、かりにこれが政府の方針通りに話合いがついたにしても、その後における経済界の情勢等をにらみ合わせてみて、本年度三千七百円ベースが持ちこたえ得るかどうかについては、非常な疑問をもつておるわけであります。あるいはまた物の裏づけがあるならば、三千七百円ベースもその程度によつては維持できることは、理論的には成り立つわけでありますけれども、われわれが今まで政府から聽いたところの説明の範囲内におきましては、ある程度の輸入物資も期待できるし、物の生産も少しながら増加の傾向にあることを考慮に入れても、なおかつ物價の高騰は食い止め得ないのではないか、それが破局的になるかどうかということについては、これは別個の問題といたしましても、とりあえず現在よりも相当に物の値段も高い地位に進むのではないかというようなことが考えられるわけであります。終戰以來漸次物は殖えてまいつておりまするし、さらにまた國民生活に必要なある部分は輸入をされておるのにかかわらず、物の値段は漸次上つてきておる、こうした傾向を食い止めるためには、今までよりも変つて程度の形のものが現われてこなければならぬと思うわけでございまして、はたして今までの政府の説明によつて、そうした変つた、言いかえれば、今までのようなインフレの傾向を止めるような変つた傾向が特にとられるとは見えぬわけでありまして、こういう方面から考えても、やはり從前の流れと同じように、ある程度物價の高騰は避け得られないのではないか、そうするならば、賃金と物價との関係も、いきおいここに相関連いたしまして、この予算編成の上において、ついに破綻と申しまするか、行き詰りを來し、追加予算等が出されなければならぬのではないかというふうに考えておるわけであります。さらにここに大きな問題として取上げなければならぬのは、大体におきまして今月の十五日以降、タバコ、運賃等の政府事業の値上げを予定しておられるわけでありますが、現在の國会の状況をもつてすれば、一日や二日でこの問題がそう簡單に片づくとも思えぬわけであります。そうしますと、結局歳入の面において、相当の次陷を生ずるということが予想されるわけであります。これがかりに今月一ぱいで解決したとするならば、ここに十五日間のギヤツプが生ずるわけであります。こういうようなものについて、いかなる処置をされるかということが、本予算審議の上において、大きな関係をもつわけでありまして、そのほか幾多われわれがあげるべき理由があるのでありますが、まずこれらの三点についてどういうような処置をとらんとしておられるかということを、お伺いしたいと思います。
  53. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。本年度の予算は、これと何とかしてインフレーションの速度をゆるめ、その高進の力を殺ぎたいということに力を集中してやつていきたいと思つております。このことは日本國民の長い間の願望でもありますし、今そういう望みをやや期待すべき時期ではないかと思つております。從つて労働者の方々の中には、いろいろまた問題もあると思いますけれども、これも今は今までとは違つた意味で、國の経済再建はこのときであるというよう意味で、十分協力を願えるものと考え、また政府全力を盡して労働者諸君の協力を求めるというふうなこともいたし、從つてインフレを抑えながら、一面において生産が増強できるようにというところに力点を置いて、勘案をいたしたのでございます。從つてような点から考えておりますから、ここに前提となるべきものについての考え方の相違は、若干あるかもしれませんけれども、今までよりは望みをもち得る條件に置かれておるということを土台といたしまして、三千七百円についても、今まで遅配、欠配等があつて、食生活において非常な困難を來したということを回想いたして、そういう観点からいけば三千七百円で維持できぬではないかというよう考え方もできるのでありますけれども、私どもはその面においては傾斜配給のことも考え、裏づけを考えて、実質的にその内容の向上に努力をするということをもつて賃金の維持に努めたい、こういうふうに考えておるのでございます。それで全体としてなおこういうような経済の動搖期にありまして、年間を通じての予算をつくるということは困難でありますので、やはりかつて行われたようなイージー・ゴーイングで一應そのときの予算を立てておいて、あとは追加予算でいくというよう考え方が樂なのですで、私はそれを避けて、非常に困難であるけれども、やはり見透しのつく限りのものを見透して追加予算を出す。そういうことから、國家の追加予算からくる財政のインフレをどこまでも抑える。インフレーションを阻止するというような点に一つの大きな力点が置かれておりますが、そうあらねばならぬということで、総合勘案いたしまして、予算を組んだようなわけでありますから、今までのところ私どもは、そい突発的なことが起らない限り追加予算を出さないという方針であることは、今までたびたび申し上げた通りであります。たとえば全予算の四分の一を占めます終戰処理費についても、これで大体やつていける。賠償撤去費についても、やつていけるということを確信いたしております。それから公共事業費につきましては、これは物質との関係等を十分にらみ合わせまして、物資、労務等から考えて、これまた事業量を抑えてこの予算金額でやれるということを、大体自信をもつて考えております。非常に突発的なことが起らぬ限りは追加予算の必要はない、その他の点は非常にこまかい点がたくさんあるのでございますが、これらのことにつきましては、それぞれ價格を調整すべき予備金を若干持つておりますから、この範囲で調節ができる。こういうような方針で、追加予算は出さない、この方針はまず変らないと考えております。
  54. 中崎敏

    ○中崎委員 昨年の自由党内閣のときに石橋大藏大臣予算を組まれた際にも予算が杜撰な関係もありまして、その後になつて尨大な追加予算を組まなければならないような事態が起つたことから考えてみますならば、今回の予算は、ただいま大藏大臣の説明のように、相当入念な、また今後予想し得る事態をも多く織りこんでおるという関係上、そう大きな追加予算が組まれるかどうかは別問題としても、少くともある程度の追加予算は組まれるであろうということは、容易に想像できるわけであります。その点について、あまり深入りして議論するのは、時間の関係もありますので、この程度にしておきたいと思います。  次に金融の面についてでありますが、金融はえて非常におろそかにされるようなきらいがありまして、実際において今日インフレの高進の程度を食い止めておるのは、一つはこの金融の計画が比較的妥当に行われておるというふうな点も、大きな力となつておるわけであります。一面またそれだけ産業界、農村等を圧迫して、それだけまたこの金融の面において困難を感じておる部面が多いのであります。またいたずらに健全金融というふうな見地にのみ拘泥して、必要な面において資金を出すというようなことを適正にやられなかつた場合においては、産業の復興の上においても、大きな影響を來すわけでありますから、この点については、十分の檢討を要すると思いますが、まずここにお尋ねしたいことは、本年度政府則で予定されておる三千億円の資金計画の大要について御説明を願いたいと思います。
  55. 北村徳太郎

    北村國務大臣 きわめてごもつともな御質問でございまして、昨年は納税期等の関係政府支拂いとの間に、時期的なずれがありまして、その結果が結局金融に結果をもちこんで、金融を圧迫したというような事実がございますが、本年度は歳入歳出の時期的ずれをなくするために、かなり骨折つたつもりでありますから、今年は昨年のようなことは、再びしないであろうということと信じておるのであります。それからお話のごとく健全金融はどこまでも維持しなければならぬのでありますけれども、金融の圧迫を通じて企業整理をするというよう考え方はいたしておらぬのであります。これは企業そのものを目的として整理をする。しかしその整理も急激な社会変動を與えるようなことは、いろいろな態勢から困難でございますから、漸次これが必要な改善が行われるよう方向にもつていくことを考えておりますが、金融を圧迫して窒息させるというような考えは毛頭もつておりません。お話のごとく、やはり金融は今の状態ではインフレ防止等に重大な関係をもちますので、資金の流れ方に対して重点的な資金の配置をしなけれならぬ。このことは堅持していきたいと存じますけれども、その配分のしかたにおいて、多少今までよりはもう少し改善する必要がある。たとえばあまり金融を締めて、それがためにかえつて生産が遅れるというようなことがあつたのでは、本來の目的に反しますので、そういう点に十分注意して、さようなことのないように努めたいつもりであります。申すまでもなく傾斜生産をやつても、そのものだけが増産することだけで、生産が全体的に、調和的に増加するのではなくて、一つの産業のためには幾百、幾千の予備産業的なものを必要とするのでありますから、金融の面においても、なかなか重点的金融ということは実は困難でありますけれども、今の場合はやはり重点的にやらねばならぬと考えております。資金配分上の詳しい数字につきましては、政府委員より御答弁申し上げることにいたしますが、大体の政策としての考え方は、以上申し上げたよう考え方をいたしておるわけであります。
  56. 中崎敏

    ○中崎委員 そこでまず金融の問題で考えなければならぬことは、中小商工金融に関する問題であります。これに対しましては、政府側においても、特殊の金融機関を設けて、中小商工業独自の立場に即應したところの金融を考えておられるようなことも、しばしば耳にいたしておるわけでありますが、これが未だに実現していないのは一体どういうようなわけであるか、現在どういうふうなことろまで進んでおるかということを、御説明願いたいと思います。
  57. 北村徳太郎

    北村國務大臣 中小企業の金融の点についてであつたと思いますが、この点も非常に重大でございまして、これは一般市中銀行に、主として從來の深い関係をもつておりますので、市中金融機関に対しては、中小企業の育成的立場に立つて資金の管理を急ぎながら、十分なる金融をやるということにしなければならぬと思つておるのでありますが、最近の金融情勢が少し思わしくないところもございまして、その点において、特に全般的にこれを十分に流すということは困難でございますので、たとえば中小企業において、貿易産業等をやるのについては、優先して金融する。それから復興金融金庫の中にも、中小企業に対する部面を設けて、この方面にも十分資金が流れるような方法をとる。それからなおこの新しい預金増加のうちの約二割見当のものは、主として産業資金として優先的にその方向へ流すようなこともやつているのであります。なお商工中央金庫等の問題もございますので、これらの金融機関全般にわたる活発に活動をするために、十分檢討いたしまして、御期待に副うようにいたしたいと思います。今中小企業のことだけであつたと思いますが、農業企業についても、最近農業手形をやつておりますが、これも大分順調にいつております。全國にわたり農藥、農機具等全般にわたつてつております。それから生産資金とか、春繭の資金等も、きわめて順調にいつております。今後こういう方法で十分手形を利用する制度の確立を期待しながら、手形取引の拡大をはかる、そういうことから、産業資金を十分賄うようにいたしたいと考えております。
  58. 中崎敏

    ○中崎委員 われわれの考えでは、中小商工業者に対する金融は、どうしてもそうした独自の金融機関を新しく設けなければならぬ。さらに農村の金融については、從前は農業会中心にやつておつたものであります。これは長い間にわたつて訓練も経て、相当の実績をあげていた。ところが國家的な要請によつて、農業会が解体されるようになつてから、この面の金融は困難してきている。これについては、肥料、農機具等に対しては、農業手形等の方法によつて部分的な解決ははかられているのでありますが、何といつても、農民全般の実情に即した金融というものは、こうした一時的な方法では解決できぬので、やはり農村の特殊な実情に即した金融機関を設けるべきではないか。農業協同組合というものが、金融をも併せて行うというようなことになつているようでもありますが、その後の経過によると、ただちにこれは農業協同組合全体の仕事として一括してやられるかどうかということについても、まだ見当がつかないという状態にあります。いずれにしましても、こういうような必要な農村の面を、放任ということはありませんがもう一歩進んで農村金融の問題を根本的に解決するところの方策が必要であるのではないか。殊にまた中小商工業者に対しても、同じようなことが言えるわけであります。どうしてもこれは実際の金融機関の窓口において、みずから中小商工業者と接近してその実情をよく知つて、いわば人的の信用に基いて融資をすることが必要となるわけであります。こういう意味において、この特殊の金融機関はぜひとも必要であると考えるのでありますが、この農村あるいは中小商工業者に対するところの特殊の金融機関をつくることについて大藏大臣が賛成しておられるのかおられないのか、もし賛成しておられないということならば、一体どういうふうな方法を講ぜられるのか、ただいまの説明の程度ではどうしても私は納得はいかない。やはりもう一歩積極的に、中小商工業全体に対するところの適切な金融により、強力にやるという施策、あるいは農村についても、必要な部面において、実情に即した金融をやつていくというような熱意と実際の施策とが、ここにあらねばならぬと思うのであります。この点について、さらに御説明願いたいと思います。
  59. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまお尋ねの商工業並びに農民金融に対する特殊な金融機関をつくることについて、大藏大臣は賛成であるのか、賛成でないのかという御質問でございますが、賛成でもなく反対でもないと申した方がいいかと思います。それはただいま檢討いたしておりますので、はつきりしたことを申し上げる段階に達しておりません。ただこの場合にごく私見を申し上げますと、農民あるいは商工のうち特に中小商業の場合において、國家資金を土台として特殊な金融機関ができることになりますと、工業の場合の設備資金等と違いまして、これは非常に明確に金融の対象がつかみにくいという点がございます。それから國家資金によつてそういうものをやることが、將來日本全体の商工業の発展、並びに信用制度というものの將來にとつていいことかどうかということは考えねばならぬ。それからまた國家財政の見地から申しましても、何でも國家財政に頼るということになつてはならぬ。できるだけ資金の吸收が行われ、還流が行われる。それによつてうまく賄つていけるのが理想であると考えるのであります。特に中小企業については、まず手形取引が円滑に行われて、そういうところから一旦失われた信用性というものが、もう一度回復してくるということに努めなければならぬ。  しかしこれは必ずしも國家資金だけに頼るのではなく、特に地方銀行は地方の中小商工業の中に存在して、それと一緒に発達してきた長い歴史をもつておりますので、たとえば復興金融金庫の中小企業部などというものは、二階から目藥と申しますか、欠点をしいて申しますれば、企業の調査に時間がかかつて、ほんとうの中核をつかむということは困難である。しかし地方銀行になりますと、あれはだれがやつておる。あの人はこういう人だ。あの人は去年損をしたが、今年はこれくらいもうけておるというようなことが明確に把握しやすい。從つて援助するにしても十分に援助もできるし期待もできるのでございますから、さような点も十分に生かしてやらなければならぬというふうに考えておるのであります。なおまた農林中央金庫のようなものを新たに復興金融的な意味で存在させたらどうかというような御意見もあるのでありますが、これは檢討しておりますから、今結論は申し上げかねますけれども、これはどうも資金を吸收する面においてもうまくいかないのじやないか。單に政府資金によつて金貸業だけをやるということは、現に復金においていろいろ問題にされておるように、これは多少考えなければならぬ。こういうような点が問題点として残つておりますので、私は農業金融についても、また商工業金融についても、十分檢討いたしまして、金融の面において円滑に措置できるものでなければ期待はかけられないわけでありますから、その点は十分檢討いたしますけれども、お前は賛成か反対かと言われれば、ただいま檢討しておるという程度しか申し上げかねる次第であります。当面の問題として貿易手形、あるいは農業手形、水産手形等をもつて、一應の解決はいたしておるのであります。今後十分に檢討する。かように思つておるわけであります。
  60. 中崎敏

    ○中崎委員 いたずらに國家の財政的援助による金融をわれわれは願つておるわけではありません。ただ現在の実情は、何と言つて政府政策によつて金融が強力な統制を受けておる一面、普通金融機関において憂慮すべき金も融資準則等によつて、いわば國家政策に縛られて、金融機関も適切なる融資ができないというようなわけであります。一面また産業復興のためには、復興金融金庫をも利用してやつていくというのが、同時に國家の精神でありますので、こういう面において、そういう中小商工業者に対して、國民に対して、一層の熱意をもつてこれをやつていただきたいと思うわけであります。それで商業金融と工業金融と、もちろんその性質は違うわけでありますが、この商業金融を実際に即して活かすためには、私はむしろ商工協同組合を活かして、一面これを金融機関たらしめていくということも、またこれに即應した方法でもありますし、また商業にしても工業にしても、まずこの復興金融金庫の貸金のわくを、相当大幅に拡げていくということが必要であると思うのであります。この復興金融金庫の貸金の中で、今までみたように、中小商工業者に対して、ただお座なり的の金額をもつて、お茶を濁すというようなことでなしに、さらにもう少し大幅のわくをとつて、普通金融機関をも動員して、その融資を適切にやつていくようなお考えはないかどうかを伺います。
  61. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 中崎君、本会議が開会されたので、大藏大臣も、金融関係の人も、答弁のために本会議に行かれたので、ただいまの質問に対する答弁は保留しておいて、商工大臣に対する御質問があれば……。
  62. 中崎敏

    ○中崎委員 商工大臣にお尋ねします。事業者團体法が近く提案されるように聞いているわけでありますが、われわれはこれに対して重大なる関心を拂つているわけであります。業者そのほかの世論を聞いてみますと、現在考えられている案については、相当に強い反対があるわけでありまして、元來事業者團体法は、できる限り業者の立場を尊重して、自由な創意に基いて行動することを認むべきものであるというふうに考えるわけでありますが、実際においては、非常にきゆうくつな法規のもとに動かなけばならぬというようなことについて、相当強い反対があるわけであります。この点について、事業者團体法の大体の主要な点と、今のような反対に対する立場について、政府はどう考えておられるか、御意見を伺います。
  63. 水谷長三郎

    ○水谷國務大臣 事業者團体法に関しましては、これは非常に議論がある法律であるということは、私も十分に察知しておりますし、またこれに非常な関係をもつている商工省といたしましても、断じて無関心たり得ないと思います。ただこの法案の中心は、今條文をもつてきておりませんが、これこれということができるということと、これこれのことをしてはならないというようなことでしばられておりまして、考えようによれば、非常にきゆうくつな点もあろうと思うのでありますが、閣議におきましては、一度決定いたしましたので、近く國会の御審議を仰ぐことになると思うのであります。國会におきましては、十分各方面の意向を斟酌されまして、御審議を願いたいと思つております。詳細の條文に関して、この條文に関しては、このような考えをもつている。あるいはこの條文に対して、こういうような考えをもつているという答弁が御必要であるならば、別の機会におきまして、お答えしたいと思います。
  64. 中崎敏

    ○中崎委員 次にお尋ねします。きよう新聞によりますと炭鉱國管法ができたことによつて炭鉱國管が実施され、現在の状態においてはむしろ三千六百万トンの石炭は掘り出せないというようなことが書いてあつたわけでありますが、炭鉱國管法がスタートしたのは四月の初めでありまして、爾來諸般の準備等のために、まだ十分の出発さえしない現在において、すでにこの三千六百万トンの出炭ができないということの責任を、炭鉱國管をやつたからというようなことに帰するというような、いわゆるデマ宣傳というか、謀略宣傳というようなことに起因するのではないかと思うのであります。かりに三千六百万トンが掘り出せないというようなことになれば、それは他の事情が原因するのであつて、炭鉱國管をやつたからできないというのではないというふうに考えておるわけであります。これについて出炭の現在の模様を基礎として、今後の見透しについて、商工大臣の御意見を承りたい。
  65. 水谷長三郎

    ○水谷國務大臣 國管法はだいたい四月一日から施行されておることは、御案内の通りでありますが、この四月、五月の出炭量が九〇%あるいは九一%というような状態でありましていろいろ論議の的になつておることは、私もよく知つておるのであります。この原因は別に國管と少しも関係ないのでありまして、だいたい四月一日から予定されておりました炭價の改訂が非常に遅れまして、われわれは去年の暮あたりから、大体四月一日に炭價が改訂されるものとして、いろいろな一時的の金融的措置なんかみなやつてきたのでありますが、それが御案内のような事情でずれてしまつて、その炭價のずれと表裏一体をなす労働不安の問題が重なりまして、四月、五月は九一%程度であります。前年度の四月、五月に比べて約二割増強でありますが、計画に対しては九一%強であります。しかしその労働不安のうちにおきましても、炭労が圧倒的多数を占めておる九州が、四月の下旬は一〇七%程度までいつておりましたが、北海道の方が四月が七六%、あるいは五月下旬でしたか、六六%というような非常にひどい低落振りでありまして、それが全体に拡がつたのでありますが、さいわい炭價の見透しもつきまして、労働不安も全石炭の最近の大会におきまして解決いたしましたから、六月からは出炭の増強は相当上へ行くようになつております。現にこれまでの数字はそれを示しておるような状態で、さらに今御指摘の新聞のことは、日本経済新聞の社説でしたかに出ておりました、あれは大体こういうことを予想して言つておられると思うのでありますが、指定炭鉱がてきた場各においては、資材、資金が重点的に指定炭鉱に流れていく。それは出炭量の大体五割六分程度と思つておりますが、從つてその半分弱の炭鉱が資材、資金の不足のために出炭が減つて、全体としては落ちるのじやないかという心配があるというようなことを言つておるのが一つの原因であろうと思うのであります。これはわれわれといたしましても、指定炭鉱であるからといつて、ことさらに差別待遇をするという考えをもつておりません。ただ二十三年度の資材資金というものが、全炭鉱にわたつて十分に行きわたるか、あるいはそうでないかという点におきまして、指定炭鉱に資材、資金をある程度重点的にやるかということがきまる問題でありまして、われわれとしては、資金、資材さえ許されるならば、そう差別をつける必要はない、またつけない方がよいのではないかという考えをもつております。さらにもう一つの点は、國管によりまして、さらにまた今度の炭價のきめ方によつて、非常にカロリーを重く見るものであつて、四千カロリー以下の炭鉱は、採算がとれないのではないが、そういう意味において四千カロリー以下の山は大体月に十万トンですから百二十万トンというように、採算割れのために出炭が低下して、三千六百万トンが割れるのではないかというような臆測のもとに、いわゆる三千六百万トンの出炭がむつかしいのではないかという想像的な仮定論になつておりますが、われわれはそういうことは十分注意いたしまして、できるだけカロリーの高い炭を三千六百万トン出す。一体今度石炭が三千六百万トン出るかどうかということを聽かれますと、よく私は冗談のように、野球は普通なら九回しかないが、石炭は十二回あるから、まだあと一回残つておるので、三千六百万トンは十分出るというようなことを言つておりますが実際六月から石炭はずつと上つてきております。そうして七月の第二・四半期からは、指定炭鉱が全面的に拡張されるということになりますので、その点は何ら私は悲観しておらず、全責任をもつて三千六百万トン、しかもカロリーの上においても十分保証されるいいものをもつて、三千六百万トンは必ず出るものである、このように考えております。
  66. 中崎敏

    ○中崎委員 次は石油の問題についてでありますが、太平洋岸の精製工場は、閉鎖を命令されてから今日まで、そのままになつておるわけであります。これについて、各企業主等も、それによる損害を受けておるわけでありまして、これはある範囲において使用を許されるということになれば、それだけ利益も出てきて、赤字もカバーされるということになるわけでありますが、これは一体今後どういうふうになるかということについて、懸念と関心をもつておるわけであります。さらに一説によれば、日本海岸の精製工場も閉鎖を命ぜられるのではないかという懸念もあるように聞いておるわけでありますが、これについての見透しについての御説明を願いたいと思います。
  67. 水谷長三郎

    ○水谷國務大臣 わが國の石油精製業の將來につきましては、異なつた観点から、種々の見解が行われておりまして、その一つといたしましては、日本においては精油事業をやめて、日本産の原油はこれを全部海外に輸出し、日本で必要な石油製品は、これを全部海外から輸入すればいいという意見もありまして非常なシヨツクを與えておることは事実でございます。しかしながら、商工省の考えといたしまして、わが國における石油油田は、戰時中南方開発に主力を注ぎましたために、長く放置されていました影響を受けまして、荒廃しておることは事実でございますが近來ようやく整備されまして、着々開発の促進を見つつあるのでございまして、將來は年間三十数万キロリツトルを生産するように、今鋭意努力しておるような次第であります。他方精製設備につきましては、戰災の結果、相当の被害を受けてはおりますが、現在ただちに稼働することができる能力といたしましては年間百四十八万キロリツトル、これに多少の修理を加えますと、さらに年間二百十二万キロリツトルまでなり得る能力を保有しておるのでございますが、現在は年間約二十万キロリツトル前後の國産原油を精製しておるにすぎない状態にあります。もとより國産原油を原料といたします石油製品の生産量のみでは、國内の需要を滿たすことができないのでございますがゆえに、從來からわが國は石油の需要の約九〇%程度を、海外からの輸入の依存しておつたのでございまして、現在においては、連合軍の好意によりまして、製品としての輸入を仰いでおる状況でございますが、政府といたしましては、精油設備の全面的活動をすることが、わが國経済の復興再建の一環といたしまして、きわめて重要かつ不可欠であるという信念のもとに、この際製品と並行いたしまして、事情が許すならば、原油の輸入をも実現いたし、原油精油設備で輸入原料を精製いたしまして、これによりまする対外支拂の節減、需要の迅速なる適應並びに精油所、從業員の雇傭問題の安定、関連産業の復興等をはかりたいというぐあいに考えておりまして、一部に傳えられておるものとは、まさに正反対の見解をもつておる次第でございます。たとえば数字でこれを計算いたしますと、原油として六十万キロリツトルを輸入いたしますと、それは製品として輸入するよりも五百十二万五千七百五十二ドルというものが、節約されるというようなことになつておるものでありますから、ぜひ五百万ドル以上の節約のためにも、またさきに申し上げましたような事情のもとにおきましても、事情が許しますならば、日本において原油を精製せずに海外にもつていくということでなしに、逆に原油を日本にもつてきて、日本でそれを精製するというぐあいに、將來はもつていきたい、またそのように目下努力をしておるような次第であります。
  68. 中崎敏

    ○中崎委員 商工大臣に対する質問はこれで打切りまして、明日の大藏大臣と總理大臣に対する質問を留保いたしておきます。
  69. 鈴木茂三郎

    鈴木委員長 それではもう予定の時間は大分経つておりますので、総理大臣大藏大臣に対する質問だけを保留いたしまして、本日は本会議が開会になりましたから、これで散会いたします。明日午前十時から開会いたします。     午後四時十分散会