運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-05-19 第2回国会 衆議院 予算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月十九日(水曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長代理 理事 川島 金次君       小島 徹三君 理事 今井  耕君       磯崎 貞序君    角田 幸吉君       上林榮吉君    古賀喜太郎君       島村 一郎君    鈴木 明良君       原 健三郎君    西村 久之君       海野 三朗君    岡田 春夫君       加藤シヅエ君    田中 松月君       田中 稔男君    中崎  敏君       矢尾喜三郎君    田中源三郎君       押川 定秋君    小坂善太郎君       鈴木 強平君   長野重右ヱ門君       大原 博夫君    大神 善吉君       野坂 參三君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         文 部 大 臣 森戸 辰男君         運 輸 大 臣 岡田 勢一君  出席政府委員         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君         文部事務官   日高第四郎君         運輸事務官   加賀山之雄君  委員外出席者         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 五月十八日矢尾喜三郎君が議長の指名で委員に補 欠選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計暫定予算補正(第三  号)  昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第二  号)     —————————————
  2. 川島金次

    川島委員長代理 これより会議を開きます。  質疑にはいります。上林榮吉君。
  3. 上林山榮吉

    上林委員 まず私は大藏大臣に対しまして質疑を試みてみたいのでありますが、第一にわが党は、本会議において、予算総会において、暫定予算を四月までで止むベきものであつて、五月以降はいかなる理由によるとしても、これを認むベきものではない、こういう観点から主張をし、政府に強く要望をしてきたのでありまするが、これに対して、政府も極力その線に沿つて努力をする。單に努力をするというだけではなしに、その責任をもつという約束をしたにもかかわらず、先般五月の暫定予算を出し、さらにまたここに六月の暫定予算を出し、うわさに聞くと、七月月もあるいは暫定予算を出さなければならないかもしれない、こういうような情勢にあると聞くのでありまするが、私はこれこそ現内閣がいかに政治力貧困であり、しかもそのなすところを知らずして、單にこれを某方面責任を轉嫁するがごとき口吻を時折漏らすことは、責任政治体制立場から言つて、とらざるところであると思うのであります。これを歴代内閣に比較して考えてみるというと、吉田内閣國民からいかなる非難を受けようとも、政府責任において、その非難を甘受し、これに対して努力をしてきたのでありますが、前片山内閣以来、殊に現内閣に至りましては、閣題が困難になつてくるというと、時折、というよりも非常に多く、責任を某方面要請によるものである。こういうような責任轉嫁論をわれわれは聴くのでありまするが、この点に対して大藏大臣はどういう考えをもつておるか。この問題はもちろん総理大臣にも聴かなければならぬ大きな問題であると思うのでありますが、私は予算編成方針、特に暫定予算を三箇月も出して、政治空白時代にしたこの責任は、政府責任にあるものか、あるいは関係方面要請というものが、大きな存在になつて、こういう結果になつておると政府考えておるのか、この点を私は明瞭にしておきたいと思うのであります。
  4. 北村徳太郎

    北村國務大臣 上林山君にお答え申し上げます。ただいまの上林山君の御意見は、私ども考えておることとまつたく同じでありまして、ちつとも変つておらないのであります。暫定予算というようなものは変態的なものであつて、こういうものは出さない方針でいきたいということで、これは機会あるごとに申し上げたことでもありまするし、またそういう線に沿つて努力はいたしたつもりであります。ただ事態がやむを得ずここに至りまして、残念ながらまた暫定予算について御審議を願うこといなつたということは、すこぶる遺憾とするところでございまして、この点はまつたく、暫定予算をたびたび出していけないじやないかという御意見は、その通りであります。私ども暫定予算をなるベく出さないようにいたしたいということは、上林山君の思指摘の通りで、その点に意見としては全然違いがないのであります。なおこれはどうも、予算に関する限りは内閣責任でありまして、内閣以外の何ものの責任でもないということは、これはもう明らかな点でございます。憲法においても、財政法においても、きわめて明らかな点でありまして、責任の所在は明確でありますから、この点はさように御了承を願いたいと思うのであります。事、かような状態に相なりましたことにつきましては、これは事態やむを得なかつた。私どももできればこの新しい年度の予算を通じての全体の計画というものについて、なるベく早く御審議を願いたいということは、当然の願いでありまするし、またそうあらねばならぬということは強く感じておるのでありまするが、さようにまいらなかつた点は、はなはだ遺憾に思う次第であります。
  5. 上林山榮吉

    上林委員 暫定予算をできるだけ出さない方がよい、われわれもそういう方針努力をしたのだが、事態やむを得ず今日に至つたのである。この答弁は、一応表面からこれを聴きますというと、やむを得ない点も認めないではありませんが、ここに至るまでの政府努力、あるいは政府政治力貧困であつた、あるいは三党の協定というものがしつかりできていなかつた。こういうような問題が裏づけとなつて今日に至つておるものだと、私は考えるのであるが、こういう点については、何ら政府はつきりとした見解はもつていないのであるかどうか、この点を質したいのであります。
  6. 北村徳太郎

    北村國務大臣 重ねての御質問でありますが、前に申し述ベ通りでありまして、このことに関しては、まことにどうも、事態ここに至つたのでありまして、はなはだ遺憾でありますけれども、やむを得なかつた、かように考えておる次第であります。
  7. 上林山榮吉

    上林委員 政治を三箇月も、あるいは場合によると四箇月も空白時代に置かなければならぬという事態は、まことに遺憾である、こういうふうにお認めになつたわけでありますが、單に遺憾であるでは、われわれは納得がいかないのでありますが、これらに対して、政治的な責任を現内閣はどういうふうに考えておるか。いわゆる政治を数箇月の間空白時代に置いた、これは見解相違も多少あろうと思いますけれども、率直に政府認むるとするならば、この政治的責任をいかに考えておるか。ただ相済まぬでは、事態やむを得なかつたでは、私は済まされないと考えるのでありまするが、この点をはつきりと承つておきたいのであります。
  8. 北村徳太郎

    北村國務大臣 どう申したらよいのか、よくわかりませんが、暫定予算というものによつて、必ずしも政治空白になるとは考えておりません。從つて空白にしてはなりませんから、暫定予算の御審議願つて、一日も政治のこと、停滯しては相ならぬと、かように考えておるわけでありまするが、しかしまあお言葉の中に含まれておると思いますことは、全予算財政の全視野においての計画というものが、どうも立ちにくい点において遺憾じやないか、これはまた、私ども内閣責任において、早く取運びたいことが少し遅れるという点において、相済まぬと思つておりますけれども、それは計画を進め、その他の準備を進め、等々のことによつて、やりつつあるのでありまして、暫定予算によつて政治空白になるとは考えておりませんけれども、前に申し述べました通り、かようなことは繰返したくないということにおいては、非常に強く感じておるのであります。これ以上この点について申し上げましても、おそらくは見解相違ということになるのではないかと考えるのであります。
  9. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は常識的な、簡單な政治問題のようにお考えになつておるようでありまするが、私はこの問題はきわめて重大な問題であるというふうに考えるのであります。なるほど暫定予算を出すことによつて、曲りなりにも一応の予算は出した形になりますけれども、先ほど大臣も認めた通り、全体的な予算というものが出ず、しかもおもなる基本的な問題が未だに解決されずに、しかも本予算がいつ出るかすらわからない。こういうことは、大きな立場から考えて、政治空白であると言うにやぶさかでないと思います。私はこういう観点から、政府がこれ以上答弁ができないということは、この責任が、ただ事態やむを得なかつた、今後努力するからひとつ了承してもらいたいというような、なまはんかな程度のものでないと考えております。そこで結論として申し上げたいことは、しからばその努力しておるという二十三年度の予算は、國会政府意見を聴取したときには、十五の日までにこれを提出するはずであつた。それが十九日になり、本日もまだ提出を見ておらぬ。そこで國会としては、大幅に國会を延長して、そうして政府がそんなに約束をしたのであるけれども、今の政府のやり方では、そういうふうにはいくまい。こういう立場から相当大幅の余俗をおいて、六月二十日まで國会を延長したわけでありまするが、この六月二十日までの間に、二十三年度の予算提出して、三週間以上の十分の審議を與え得る確信があるかどうか。これもまた努力はするが、あるいはまた議会を再延長してもらわなければならぬかもしれない。こういう御答弁とするならば、私どもは実に現内閣政治的責任のなさを痛感するのてあります。この点を明瞭にひとつお答えを願いたい。
  10. 北村徳太郎

    北村國務大臣 本予算提出時期が、いつであるかということについての御質問でございますが、これはすでに新聞等に出まして御承知と思うのでありますが、この際物價改訂を行わなければなりませんし、これに伴う賃金の改訂、またそういうことからくる諸設の準備等がございまして、実は相当これは馬力をかけてやりました。経過を申し上げますと、本月の八日の土曜日の夜遅くに大体本ぎまりという程度までにぎつけました。これは経済閣僚懇談会でございましたので、翌々日十日の月曜日の朝、閣議で本予算を議了したのであります。一応私ども努力としては、十日の月曜日の朝をもつて予算というものは、私どもの手を離れたのであります。ただいまこのことについて、関係方面に、急いで承認をしてもらうように、今朝も行つてきたのであります。促進に非常な努力はいたしておる次第であります。経過を一応申し上げまして、御了承願いたいと思います。
  11. 上林山榮吉

    上林委員 私は暫定予算あるいは本予算に関連する問題を質問する前におきまして、総理大臣がお見えになりましたので、総理大臣に対して質疑を試みたいのであります。  総理大臣施政方針演説の中において、あるいはわが党代表者質問に対しまして、三党の政策協定を二十三年度の予算に急速に織りこむ決意である。こういうふうに言明をされているのでありますが、二十三年度の予算に、三党協定のいかなる問題を織りこむことに決定をされたのであるか。この点をまずお尋ねしたいのであります。
  12. 芦田均

    芦田國務大臣 お答えいたします。不用意で三党政策協定の成文及び予算のこまかいものを、ただいま持つておりませんが、大体全体としては、三党政策協定に掲げたものは、予算に織りこんであります。織りこんでない箇條は、きわめて少数だと心得ております。
  13. 上林山榮吉

    上林委員 それは來るベき二十三年度の予算が出てみれば、具体的にはつきりするのでありますが、そのおもなる項目についてお示し願えないとするならば、私の方からお尋ねしてみたいのであります。まず第一に労働法規改正の問題でありまするが、この問題を現内閣はいかに取扱わんとしておるのであるか。この点であります。これは予算ときわめて重大な関係のある問題でもありますし、予算自体にも現われてくる問題であると思いますので、ここにお尋ねするわけでありますが、先般行われた民主党大会におきましては、労働法改正をやらなければならない、こういうことも決議しておるのであります。そのおもなる要点は、三党政策協定では、労働運動健全化を阻害するごとき労働組合法労働基準法労働調整法改惡は行わないと約束しておるわけでありますが、民主党では、最近の労働情勢に鑑み、また外資導入問題ともにらみ合わせて、三党協定労働法規の一部に手を触れないという意味ではなく、全國民的視野に立つて生産復興に必要な改訂は進んでこれを行うべきであるという意味決議をしておるようでありますが、この間に三党政策協定との食い違い、あるいはその後の推移相当の変化があつた、こういうふうに私どもは見ておるのでありますが、これに対して政府はいかなる見解をもつておられるのであるか、まずこの点を質したいのであります。
  14. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいま上林山君が引用せられました民主党党大会決議というのは、どこから御入手になりましたか。私の承知している限り、さような決議をいたしたことはありません。分科会において今お述べになつたような意見が出たことは、よく承知いたしております。しかし決議の中には、さような項目一つもないことを信じておりますが、もしその上林山君の出所がどういう筋であつたかということをお答え願えれば、これについてまた私の意見を申し上げます。
  15. 上林山榮吉

    上林委員 われわれが調査したところによりますと、軍公利の問題だけは党の大会決議をすることをやめて、その他の委員会決定であるところの、たとえば今申し上げ労働法改正に関する報告は、満場一致これを決議した、こういうふうにおもなる言論機関ないしわれわれの知つている民主党の諸君、あるいはその他の方面から、この問題を聞いたのでありますが、  私はその大会に出席いたしませんから、この全貌はよくわかりませんけれども、少くともこれが民主党党大会で重要な問題として取扱い、しかも民主党國民に向つて意思表示をしたということだけは事実であるわけであります。この出所についてもつと事務的に私の方において報告する責任はなかろうと思いますが、これに対しまして、その出所いかんにかかわらず、しからばこの問題に対してどういう御見解をもつておられるか。この点を質しておきたいのであります。
  16. 芦田均

    芦田國務大臣 労働法規の問題に関する三党政策協定は、すでに御承知通りであります。またこれを今後いかなる具体的施策に現わすかという点については、四月分の暫定予算國会において審議を願つた際に、再三論議されたことでありまして、それ以來政府の態度は変つた点はありません。繰返して申し上げますならば、三党政策協定に書いてあるごとく、労働階級勤労意欲を阻害するがごとき労働関係法規改正は行わない。この意味は、四月分の暫定予算に関する予算委員会においても、私自身この席上で申し述べた通りであります。從つて今日全般的に見て、國内における労働爭議の数は、著しく減少しております。労働組合運動は、徐々に健全なる方向に進行しつつある。むろんきわめて少数部分に行き過ぎがあることは、これは率直に認めなければなりませんが、労働運動全般の傾向としては、健全化方向に向つておると政府においては認めておるので、その際に勤労階級に不安を與えるがごとき新たなる問題は提起しない。しかしながら、今後の労働界の実情に鑑みて、現在の程度法規をもつてしは、どうしても勤労階級意欲を高進し、労働運動を正常化することができないというがごとき事実が現われた暁には、政府においても急速にこれに対應する手段をとらなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  17. 上林山榮吉

    上林委員 われわれも健全なる労働運動の起ることを期待するのでありますが、ただいま総理の御答弁によりますと、現在は健全化方向に進んでおるから、労働法規改正の必要を認めない、これが再び惡化をする、不健全なる方向に進んでいつた際は、政府としては改正する用意がある。こういう意味に解釈すればいいのでございましようか。この点を明らかにせられたいのであります。
  18. 芦田均

    芦田國務大臣 大体の方向としては、ただいま上林山君のお話通りであります。但し労働関係法規言つても、その部門は非常に広いのでありまして、たとえば労働委員会の権限の問題、あるいは法的根拠に基く職責の範囲でありますとかいうふうな問題も、広く解釈すれば労働関係法規になるわけであります。そういつた問題については、種々政府も考慮いたしております。それを今すぐに研究をやめるという意味ではありません。必要に応じてこの種の法規は、あるいは制定する必要を痛感しておる部門もあります。現に中央労働委員会自体においても、かような法規の制定を希望されておるという事実は承知しております。そういうような部門に対する改正までも行わないという趣意ではないのでありまして、平たく言えば、勤労階級労働意欲に直接関係があるがごとき急激なる改正は、いましばらく形勢の推移を見て処置をとりたいという趣意であります。
  19. 上林山榮吉

    上林委員 具体的なこまかい問題については、他の閣僚に尋ねたいと思いますので、私は基本的な問題のみについて、総理にお尋ねしているわけでありますが、こと観点から申し上げまして、現在の日本労働運動状態において、これはいかなる内閣といえどもやらなければならない問題であつて、ひとり芦田内閣の問題のみではないのでありますが、いわゆる外資導入の問題であります。外資導入の問題を有利に急速に解決する一つの國内的な問題といたしまして、労働問題が取上げられることは、当然のことでありますが、現在の労働運動状態において、総理外資導入がただいま私が申し上げた趣旨によつて解決されるものとお考えになつているかどうか。これで十分だというふうに、確信があるのであるかどうか、この点を質したのであります。
  20. 芦田均

    芦田國務大臣 外國の資本を日本國内に投下するような受入態勢をつくることの必要であることは、ただいまお話通りであります。しからば現在のような労働界状態で、外資導入に少しも遺憾なき態勢ができておるかどうかということになりますと、私のみならず、政府においても、これがもう十分完全であつて、これ以上改善の余地がないところまで來ているとは無論考えておりません。しかしながら、労働界の安定は、法律規則の力のみではなし得ないことでありまして、これには勤労階級責任の自覚と、ほんとうに労働意欲を発揮するということが必要なのでありまして、その目的を達するためには、必ずしも労働法規とか、あるいはこれに附随する規則のみによつて達成せられるものでないことは、上林山君もよく御承知のことと思います。われわれとしては、かような精神方面労働意予高進についても、今後なお十分施策をしなければならぬと考かておる次第であります。
  21. 上林山榮吉

    上林委員 もちろんお説のごとく、制度や規則改正によつて、労働問題が解決されるとは思いませんけれども、その一つの方法として、ここに基準を示して、物心両方面からそういう方向に進んでいかなければならぬということも当然のことだと考えるのでありますが、その一環として、ここに健全なる労働組合運動、健全なる労働運動、こういうものを向上せのむる意味において、ここに民主党が示すごとき一つ考え方も、われわれは場合によつては必要である。もちろんわれわれといたしましては、民主党考え方よりもさらに具体的に、広汎な問題について研究を進めておりますが、いずれにいたしましても総理は、部分的には改正しなければならぬ点があるかもしれないが、現在においては改正する必要を認めない。こういうように考えていると、承知していいのであるかどうか。さらに続いて、そういう立場であるといたしますならば、今考えておられる具体的な二、三の問題について、部分的にどういうものを改正する必要があるというふうに認めておられるかどうか、この点を示されたいのであります。
  22. 芦田均

    芦田國務大臣 これらの問題については目下政府においても十分研究をいたしておりますが、まだ政府の確定した方針としてここにお答えをする程度に熱しておりません。具体的のことは決定次第発表いたしたいと思います。
  23. 上林山榮吉

    上林委員 労働法規に対する総理考え方も、大分わかつたつもりでありますが、その御説明は、私末だ満足いたしておりません。けれども、この問題はこの程度にいたしまして、二十三年度の予算の中に、三党政策協定が織りこまれておるということを期待いたしまして、三党協定の問題については、この程度にいたしたいと思いまするが、ただ一つ軍事公債利拂停止の問題について、大藏大臣がわれわれの質問に対しては、これは利拂停止するのではないというふうに考え社会党質問に対しては利拂停止するのであります。こういうふうに答えて、先般の予算総会において、相当混乱をいたしたわけでありましたが、その結論において、大藏大臣答弁のごとく、利拂停止するものであると総理大臣考えている、こういう御答弁であつたのでありますが、聞くところによると、閣議において利拂は一箇年たな上げにしたというようなことに聞いておるのでありますが、はたしてそれは事実であるかどうか。この点を確かめておきたいのであります。
  24. 芦田均

    芦田國務大臣 軍事公債利拂につきましては、三党政策協定に定めた線に沿いまして、本年七月以降明年の六月末日までに利拂いをすべき分は支拂い停止いたします。そうしてその部分については公債元本償還の際にこれを支拂うという案を立てたのでありますから、來るべき本予算の際にはその方針從つて予算編成をしている次第であります。
  25. 上林山榮吉

    上林委員 この問題に関する詳細な点については、大藏大臣にお尋ねいたしますけれども総理大臣関係のあると思われる点について質したいのであります。そうすると利拂停止をせよという社会党考え方と、利拂を一年間たな上げするというその結果については、どういう相違があるのであるか。あるいはどういう効果國家財政上にあると考えられておるのであるか、この点を総理大臣の御意見としと承知したいのであります。
  26. 芦田均

    芦田國務大臣 利拂停止に関する経費は、一箇年間利拂停止することによつて相当國費の支出に余裕をみることができるのであります。その利拂停止による全額は、大体これを災害復旧戰災復興、あるいは、社会福利施設の方に充当して、今日非常に窮迫したる財政ではありますけれども、できる限りそれらの方向経費を増加することにいたしたい、かように考えて、利拂停止による國家財政の措置をあんばいしたわけであります。
  27. 上林山榮吉

    上林委員 表面からながめると、この問つ題いてに政府が聲明を発した通り、あるいはそういう形にも見えるだろうと思います。けれども私はこれを解剖してみますと、政治的な單なる宣傳策でしかない。いわゆる社会党民主党の体面を立てるための政治的な宣傳策として、一箇年の利拂いのたな上げの問題が取り上げられた、こういうふうに痛感するのであります。今相当の財源が浮び上がるということを総理は指摘されたのであるが、私は本会議におきまして、総理大臣施政方針に対してこの問題を取り上げて、当時質問したのでありますが、われわれの見るところでは、これから浮び上つてくる金高は二十七億三千万円程度である、こういうふうに考えるのであります。そこで今相当の額と言われますけれども、ただちに浮び上がる金は約二十二、三億程度、この程度のものが浮び上つてくるのでありますが、結論においてこれはさらに傳えられるがごとくであるとするならば、償還期限には、利子とさらにそれに対する利子利子といいますか、これに対して相当金額支拂わなければならぬという結果になるのでありまして、実質的に見て、何らその効果を認めない。しかも予算が三十七百億円程度であるとするならば、その一%にもすぎない金額にしか相当しないのであります。こういうようなものが相当の額をここに財政上ゆとりを得たという考え方は、私は兒戯に類する考え方である、こういうふうに思うのでありますが、そこでお尋ねいたしたいことは、この問題は民主党としては、幹事長談をもつて発表したごとく、利拂停止には反対である、社会党利拂い停止するということを強く主張しておつた、そこでこれは形は妥協という形になつておりますが、聞くところによると、これは社会党の左派から出ておる委員の一人のいわゆる妥協のプランであつた、こういうようなことをわれわれは聞くのであるが、民主党といたしましては、これに対して、あるいは総理といたしましては、みずから進んでこの案がよいという指導的立場をとつたのであるか、両党の歩み寄りによつてこういう形ができた、こういうように考えておるのであるか、あるいは社会党左派、という言葉がわるければ、社会党からこの程度で妥協してもらえないかという申出があつたためにこれを了承する、こういう形をとつたのであるかどうか、この点を明らかにせられたいのであります。
  28. 芦田均

    芦田國務大臣 どういういきさつでできたかとういようなくわしいことは私はよく存じません。しかしあの形式が今日の時代においては一番適当である、かように考えて、私進んで賛成をいたした次第であります。
  29. 上林山榮吉

    上林委員 進んで賛成したのであるという御意見は、考えようによつては、いろいろとられるのでありますが、あなたが指導的立場に立つてその案に賛成をされたというふうに考えていいのであるか、どうか。あるいは社会党方面考えが正しいという御意見で、賛成をされたのであるか。この点をもう少しはつきり答えていただきたいのであります。
  30. 芦田均

    芦田國務大臣 憲法には、内閣総理大臣が、内閣全体の統制を行つて責任をとるということになつておりますが、重要なる問題に対して、総理大臣が常に指導的な責任をとるということは、これは民主主義政治の当然の結果であります。上林山君の御質問は、その点でおわかりくでさることと思います。
  31. 上林山榮吉

    上林委員 しからばお尋ねいたしますが、総理大臣はもちろん三党連立内閣総理大臣でありますが、あなたの御出身は民主党の総裁であります。民主党利拂いに対しては反対であるという空氣が強いと認識しておりますが、また幹事長談をもつて党の機関をもつて、正式に國民にこれを声明しておるのであるが、これに対しまして、総理としては民主党が反対しても、その案に賛成をしたのである、大乘的な立場から自分としては賛成したのであるというふうにお考えになつておるのであるかどうか。この点をお答え願いたいのであります。
  32. 芦田均

    芦田國務大臣 民主党はこの案に対して、役員会と議員総会で可決した上で、その意向を政府に傳えられたのでありまして、民主党の党の機関が、この案に全面町に賛成であつたということは、おそらく上林山君は御存じのことと思います。
  33. 上林山榮吉

    上林委員 最近の妥結案の場合においては、わずか議員総会で二十数名の人が集まつてこの案を了承したというに聞いておるのでありますが、この間の事情は、どうなつておるか。さらに先般の予算総会において、この問題が議論が沸騰したときに、木村幹事長の名前をもつて民主党は全面的にこれに反対するというふうなことを声明したのであるが、そのときと今とは情勢も変つた、あるいは党の考え方も変つたのであると考えていいのでありましようか。
  34. 芦田均

    芦田國務大臣 私はこの席においては、政府の一員として答弁をしておるのでありまして、民主党党内事情の詳細なる報告は、必要に応じて党の幹事長から上林山君に説明をさせてもよろしゆうございます。
  35. 上林山榮吉

    上林委員 あなたは三党連立内閣の首班者であるということはよく御承知だと思いますが、三党といえども、政党政治を基盤にしておるものである。完全なるものではないが、そういう性格である。こういうふうにはお考えになりませんか。
  36. 芦田均

    芦田國務大臣 上林山君の御意見通りであります。それなればこそ、一政党の内部事情などを、総理大臣として予算委員会の席上ではお答えする必要がないと考えております。
  37. 上林山榮吉

    上林委員 これは政党政治を理想としておる総理大臣のお言葉としては、われわれは受け取れないのであります。少くとも政党は、言うまでもなく政策をおつて集まつておるいわゆる同志的結合であるはずであります。その同志的結合、あるいはその政策を基盤にして立つておるその一党の総裁が、今日はその政策をひつさげて、あるいは連立をしておる諸君の政策を受け入れつつ、ここに首班として内閣を組織しておるものと考えるのであります。その見解から言えば、民主党内の政策がどうあろうと、党内の事情がどうあろうと、予算総会の席上でこれに対する総理としての見解を披瀝する必要がないという考え方は、巧砂なる官僚政治である。これは決して政党政治の性格をもつたやり方ではないというふうに考えます。見解相違であると言うなら、それで結構でありますけれども、この点に対してどういうふうにお考えになつておりますか。
  38. 芦田均

    芦田國務大臣 先ほど來繰返して申しましたように、民主党はこの問題について役員会及び議員総会において、はつきりと賛成するという意味決議をしてこれを政府に傳えられたのであります。そのことは先ほども私は申しました。それ以上民主党の態度を疑う必要は毛頭ないと心得ておるのであります。さよう内閣において承知した以上、民主党がこれに賛成だという結論を下すことは、何ら間違いはないと確信しております。
  39. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま総理大臣政治に対する見解を披瀝されたので、この際特に私は承つておかなければ國民が迷うであろうと考えますので、ここに立場総理はつきりと答弁を要求したい問題は、最近民主党大会において、総理大臣は総裁という資格においてか、中道政治ということを非常に強調しておられるようであります。この中道政治の性格は、一体どういうものであるか、思想的にはどういう性格であるか、経済的にはどういう性格であるか、政治的にはどういう性格をもつたものが中道政治というのであるか、おそらく國民も迷つておると思いますので、この際中道政治がいかなるものであるかということを、もつと具体的に、國民にわかるように、この議場を通じて明らかにせられることが、私は芦田内閣の性格を知る点において必要であると考えますので、この点をお尋ねしたいのであります。
  40. 芦田均

    芦田國務大臣 ごく具体的に結論からお答えしますが、現在の内閣において議会に提出しておる法律案及び予算案、並びに組閣以来発表したる政綱政策、これがわれわれから申せば、具体的に中道を歩む政治方向である、かように信じておるわけであります。
  41. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま総理大臣の事務的な御答弁によつて國民ははたしてその答弁をもつて中道政治だということがわかるでありましようか。どういうふうにお考えになりますか。
  42. 芦田均

    芦田國務大臣 具体的な結論を申し上げた理由は、中道政治とは何かというような問答は、これは政治研究室なんかで論議するならば、非常にふさわしいのでありますが、予算委員会において政治学の教室で論ずるような理論を答えることは、適切でないと考えて、私は申し上げなかつたのであります。中道を歩む政治という観念は、日本ばかりではありません。これは世界を通じて一つ政治政策の具体的な問題となつております。そのことは一月四日にトルーマン大統領がアメリカ國会に出した教書の中にも、トルーマン政府は中道を歩む政策でいくのだということをはつきり申し述べておる。今日ヨーロツパ諸國においても、経済再建に努力しておる政府、フランスのシユウマン内閣のごときも、やはり同じような意味の声明を出しておる。それらのことは賢明なる上林山君、十分御承知のことだと思います。言葉をかえて言えば、中道の政治とは、左翼もしくは右翼のイデオロギー、極右極左の理論にとられない、経済再建の必要に面しておるこの世界情勢において、最も適切にしてしかも緊切なる政策を掲げて歩むということに盡きると私は考えております。
  43. 上林山榮吉

    上林委員 予算は数字が多いか少いか、その数字が適切に有効に組まれておるかどうか、それによつてはたして日本の緊迫せる経済その他の問題が解決されるであろうかどうか、この問題を予算審議することを、当面の建前とすることは、承知しておりまするが、その背景をなすところの経済に対する考え、あるいは政治思想に対する考え方が背景になつて、これが有効にはたして推進されるかという判断の基本的な資料になるものと私は考えるのであります。そういう観点から芦田内閣の説くところの、あるいは民主党の説くところの中道政治というものは、言葉の上では言い表わせるのであるけれども、実際の上においては、これが言い表わせないばかりでなく、これを堀り下げて、良心的に学問的に裏づけるものとして考おる場合においては、はなはだあいまいなものが多い。そのあいまいなる性格が、往々にして政治上の貧困となり、躊躇逡巡し、物事を解決する結論を見出さない、こういう結果になつてくると私は考えますので、責任者であるところの総理大臣に、この点をお尋ねしたわけであります。  そこで私は経済的な問題についてお尋ねしたいのであります。決してこれは政治学の研究室でやる問題ではないと思います。すなわち民主党はよい修正資本主義と言つておる。資本主義の缺点を是正する、同時に社会主義の行き過ぎを是正するのだ、こういうふうに主張されておるように私は見ております。あらゆる記録によつてあなたの主張を、あるいは民主党の公的な主張を、私は見ておりますが、一体これはどういうことであるか。資本主義の缺点を是正し、社会主義の行き過ぎを修正するのである、こういう考え方は、一体これを指して経済的の中道政治だというふうにお考えになつておるのであるかどうか。私ども頭が惡いので、こういう言葉を使わないとわからないのであります。そういう意味において、ひとつ明快なる答弁を要求したいのであります。
  44. 芦田均

    芦田國務大臣 ただいまのお尋ねは、これを詳しく論義いたしますと、おそらく二十世紀初頭以來の思想の問題に端を発して、最近に至る世界の経済学説、あるいは実際の政治に論議しなければ決定されないような広汎な問題であると思いますから、さようなことを無論御質問になつておることではないと思います。從つてごく簡單に申しますと、資本主義の積弊を排除するという意味は、十九世紀以來の自由経済に不可分な資本主義の行き過ぎ、これは上林山君も御承知通り、個人の富というものを分量的に考えないで、人類の福祉ということに結びつけて所有権を行使するという思想は、第一次世界大戰以來、世界の一部において有力に主張せられたところであり、また労働問題その他についても、資本と勤労階級立場というものを公平に考えて、資本家は單に生産者たる立場のみならず、広く消費者の立場をも考慮に入れて、社会全体の福祉を増進するがごとき意味において、その資本を活用し、その生産に邁進すベきだという考え方は、單に日本ばかりではありません。これは世界を風靡した一つの思想であると、私は考えていいと思う。從つて優勝劣敗、弱肉強食的な奔放な自由経済政策は、今日の社会において実現さるべきではない。現にかような奔放な自由経済政策をとつている國は、世界にどこもありません。どこの國をたずねても、さような自由経済政策をとつておる國はない。從つて、今日の世界の大勢は、好むと好まざるとを問わず、旧來の資本主義の積弊を修正するという方向に向つでいる、かように私は感じます。さらに、極端なる社会主義の行き過ばを是正すると言つたのは、たとえば社会主義の最も大いなるイデオロギーとして掲げている資本主義の打倒というごときプログラムは、むろん三党政策協定には掲げておりません。われわれとしては、今日の非常時を乘り切るのに、資本主義の打倒をすぐに実行するということは適切でない、かような意味において、非現実的なる極端な政策は、政党政治には採用しないのだ、かように主張しておるわけであります。
  45. 上林山榮吉

    上林委員 そういう主張をされておるとすれば、根本的に総理大臣はその問題を、中道政治を主張しているんじやない、こういうふうに考えてよいのでありますか。当面の重要なる問題を解決するためには、社会主義の行き過ぎを是正し、資本主義の缺陷を補つた解決の仕方が一番よい方法である、暫定的処置はそれ以外にないのである、こういうふうに考えておるのであるか。根本的に永久に中道政治というものが日本に必要であり、世界にも必要である、こういう視野に立つているのであるか。この点を明らかにしないと、私ども民主党の政策の発表に対する批判、現内閣のやつていく施策に対する、いわゆる賛否の結論を見出すに困るのでありまして、この点に対しましての答弁を要求いたしますと同時に、あなたは今世界のどこにも自由主義経済を主とする、資本主義経済を主とする國はないかのごとく聞える答弁をされたのであるが、なるほど今日いかなる國といえども、いかなる政党といえども、十九世紀時代の資本主義、自由主義経済をもつて一切を解決しようと考えている政党は、どこにもないと考えておりまするが、この際私の聽きたいのは、一月マツカツサー元帥の「日本國民に告ぐ」という書の中に、日本は一時的には統制経済をやつていかなくてはならぬが、近い將來は自由主義経済に移行しなければ、日本の経済再建はできない。こういうふうにマツカツサー元帥は声明をしております。これに対してどういう見解をもつておられるかどうか。さらにあなたはドレーパー陸軍次官と会見されたはずでありまするが、このドレーパーの聲明あるいは考えとして傳えられるところによれば、これまたマツカーサー元帥の意見をさらに強く裏書きするかのごとく、日本は自由企業を拡大強化していかなければ、経済再建はできないであろう。こういうような見解を披瀝しておるのであるが、これに対して総理はどういう考えをもつておるか。この点を質しておきたいのであります。
  46. 芦田均

    芦田國務大臣 中道政治というものを永久に実行していくつもりかどうかという御質問でありますが、申すまでもなく、今日のごとき世界の激変の時代において、今とつておる政策が、百年、二百年の後に至るまで、何らの変更なしにいけるかどうかというような見透しをつけることは、非常に困難であります。政治というものは生活であります。その時代と、その時の必要によつて、その時勢に最も適する政治を行わなければならぬことは、申すまでもないことでありまして、民主党がこの政策を永久に維持するかというようなことは、今日からは全然見透しはつきません。そのことは日本の政党ばかりでない、今日の世界の政党が、百年間同じ政策をやつてきたかという歴史を研究なされば、最も明らかにわかることでありまして、ただいまの御質問に対しては、先の見透しははつきりつきませんということを申し上げるにすぎないのであります。  マツカーサー、ドレーバー氏の聲明をどう解釈するかという御質問でありますが、今日の日本がおかれてあるこの環境において、これらの聲明書を批判することは、私は差控えたいと思います。
  47. 上林山榮吉

    上林委員 中道政治民主党が永久に主張するか、主張しないかは、政治は生活であるからただいまから答えることができないという総理大臣答弁を得まして、中道政治の前述がどういうものであるか、あるいは言葉には中道と言えるが、そのよつて立つ基盤というものは、まことにあいまいなものである。こういう点が明らかになりまして、私諒とするものであります。そこでさらにお答えになりましたマツカーサー聲明ないしはドレーバー聲明に対して批評はできない、置かれておる立場が占領下にあるから批評はできない。こういうように言われるが、これに好意をもつておるか、あるいは賛成をしておるかというような点も、総理大臣としては言えないのであるかどうか、この点をさらに重ねて尋ねておきたいのであります。
  48. 芦田均

    芦田國務大臣 現在の日本の置かれておる環境において、占領軍の政策に対して政府が好意をもつておるか、もつていないかというごときことは、一に上林山君の叡知に信頼しまして御想像に任せます。
  49. 上林山榮吉

    上林委員 そこでこれは政党関係者、特に芦田総理大臣がよく使われる言葉でありますし、これもまた國民が誤解をするおそれがあるのでお尋ねいたしたいのであるが、ただいまの御説明の中にも、中道政治は極右、極左を排するものである、こう言つておられるが、その極左というのは、具体的に言えばどういうものか、極右というのは具体的に言えばどういうことを指すのであるか。あるいはもし現在の政党に極右、極左があるとすれば、あなたはどれをもつて極左と言い、どの政党をもつて極右と言われるのであるか、この点を明らかにせられたいのであります。
  50. 芦田均

    芦田國務大臣 極右とは右翼の極端なものを言い、極左とは左翼の極端なものを言うということが、極右という言葉、極左という言葉に当るのだと思います。從つて極左の政策とは何ぞやと言われれば、これは共産主義だと思う。極右とは何ぞやと言えば、ごく平凡な言葉で言えば、これは反動政策、かように私は解釈しております。
  51. 川島金次

    川島委員長代理 上林山君にちよつと御注意申し上ずますが、なるべく予算に直接関係のある事柄で御質問願いたいと思います。質問者も大分おりますから、どうぞそのお含みで御質問願います。
  52. 上林山榮吉

    上林委員 それでは結論において総理大臣にお尋ねいたしまして、具体的な問題について、これから各大臣質問したいと思うのでありますが、ただいま常識的な言葉によつて答弁されたことは、これは私も了承するのであるが、総理大臣は、然らば現在の日本において極右とはどういう政党である、極左とはどういう政党である、あるいは具体的にその他にどういう團体があるということを考えておられるか、これを明らかにせられたいのであります。あなたは公開の席上において、ときどきそれを発表しておられるのであるから、この際も発表せられてそれが満足な発表であるならば諒といたしますけれども、不満足な発表であるならば、これまた予算関係のあるという見解を私はもつから、質問を続けたいと思うのでありますが、これに対する答弁を要求いたしたいと思います。
  53. 芦田均

    芦田國務大臣 その問題は先ほどもお答えした通りでありまして、私どもから言えば、共産主義は極左と言つていいと思います。それから反動政策は極右と言つていいと思います。これを何を指して言うかということは、上林山君と私との間に、そう意見相違があるわけはない、これはきわめて常識的な問題でありますから、上林山君のお考え通りでよろしいと思います。
  54. 上林山榮吉

    上林委員 しからば総理大臣がときどき発表しておられる固有名詞を使つての御発表は、これは間違いである、自分の認識不足である、私の見解と同じであるとするならば、そういうふうに私は了承したいと思うが、間違いありませんか。
  55. 芦田均

    芦田國務大臣 私の発表している固有名詞ということを、直接お話くださればお答えいたしますが、それだけでは質問趣意がちよつと私にはわかりかねます。
  56. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は、私は不得要領の芦田総理大臣答弁をもつて満足してはおりませんが、適当の機会にさらに私はもつと堀り下げて、中道政治ないしあなたの指す極右、極左の問題について、批判を加えたいと思いますので、本日はこの程度にいたしておきたいと思います。  続いて具体的な問題について、他の各大臣質問を続けたいと思いますが、委員長いいですか。
  57. 川島金次

    川島委員長代理 午前中の会議はこの程度とし、午後は一時半から会議を開くことといたしまして、その間休憩いたします。    午後零時二十一分休      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  58. 川島金次

    川島委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。上林山君。
  59. 上林山榮吉

    上林委員 午前に総理大臣質問した問題について、大藏大臣に質したいのは、軍事公債利拂停止の問題についてであります。この案は、大藏大臣は、三党協定に基いてこれを停止するのである、こういうような答弁を前の予算総会においてしたわけでありますが、今度結論を得たことを見ますと、一年間のたな上げという結果になつた。この前の予算総会における答弁と、この結果とには、相当の開きがあると思うのでありますが、これに対して、どういう理由によつてそういう結果になつたのであるか。そのいきさつを一応承りたいのであります。
  60. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。軍事公債利拂停止は、今お話のありましたように、この前のいわゆる三党政策協定で話合いができた事柄でございまして、これをこのたび実行しようとするのであります。これを実行しますためには、当然法的措置を要しますので、近日それについての法律案等を提出いたしまして、具体的に御審議を願いたいと、かように存じておりますので、本件に関する限りは、その法案を中心として御審議を願い、また質疑応答をいたした方がいいのではないかと考えるのでありますけれども、ただいまお話が出ましたので、御質問の点にお答え申し上げたいと思います。  利拂停止するということに関しては、停止を時間的に一体どこまでやるかということは、三党の話合いではきまつておりませんので、現下の内外諸情勢から考えて、一年間これを停止することが妥当であると考えまして、閣議ではさように決定した次第であります。さよう御了承願いたいと思います。
  61. 上林山榮吉

    上林委員 この一年間のたな上げという結論は、社会党の主張から言つても、民主党側の主張から言つても、私は満足した結論ではなかろうと、こういうふうに考えるのであるし、しかも公党として三党協定においてこれを國民に発表しておいて、しかもこの結果がこういうようななまはんかな結論に達したということは、國民を欺瞞したところの一つの政策であるというふうに私は考えるのであります。殊にこれによつて相当の財源を確保し得たというような考えに至つては、これはさたの限りであると思います。午前中の質問で申し上げたごとく、全予算からすれば、わずかに一パーセト、場合によつてはいろいろと経費を差引くというと十四、五億円程度の節約にしかならない、こういうようなことをもつてしてみれば、私は政府が言うがごとく、これによつて財源の上において相当の額の節約をし得たとは見ない。殊に結論においては償還期が來たならば、これに利子を附けて、さらにその他の処置も考慮して、相当経費の負担になることを思えば、これはまさに現内閣の性格であるところの欺瞞政策が、ここにも現われてきておる、こういうふうに私は考えるのであります。そこでこの問題については、それ以上追研いたしませんが、これによつて前の予算総会において大藏大臣が説明したごとく、この問題は無記名の公債であるがゆえにたれが持つておるかわからない、場合によつては第三國人も持つておるかしれないというような含みのある答弁であつたように思うのでありまするが、そういうような点からいつて、國際的にこの処置によつてどれだけの信用をかち得たか、われわれの見るところでは、これによつて國際的な信用は低下したものである、こういうふうに考えるのであるが、これに対して大藏大臣はどういうふうに考えておるか質したいのであります。
  62. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お尋ねの趣旨は、利拂を止めることによつて國際的信用の問題はどう思うかというような御趣旨であると思うのでありますが、そういう意味においてお答えお申し上げたいと思つております。これは御承知通り、無記名の公債でありまして、從つて轉々流通する性質をもつておる。ところが詳細に調べてみますというと、そのうちかなりの部分は登録公債でありまして、登録されておるものが大部分であり、すなわち金融機関の所有のものはほとんど登録せられておるというので、從つて自由に市場で轉々し得るものの範囲は、きわめて狹いことがわかつた。しかしながら、そういうものがあるということは事実でありまして、從つてこれは無記名でありますから、自由に処理できるということは、御指摘の通りであります。從つてこれに対してどうい処置をとるかということは、ただいま法案をつくつておりますので、近日中にこの委員会にも提出して御審議を願うことになつておるのでありますが、これは大体外國人並びに外國法人については、この法の適用の外に置くというふうなことによつて、法人以外の人々にこのことから來るある物的な、支拂が延長せられるということの結果をもち來さないようにしたい、こういうことでただいま法案を整理いたしておるのでありまして、このことによつて、大体お話日本人以外の所有に対する保護と、この保護による國際的信用の維持は一応これでできるものである、こういうふうに考えておるのであります。從つてそのことに関しましては、そういう処理をするという聲明をいたしまして、これは割合に外人の間によい反響を與えておるように聞いておるのであります。この点を附け加えて申し上げておきます。
  63. 上林山榮吉

    上林委員 軍事公債利拂閣議で、あるいは三党の間で妥結を得たときに、政府の方で聲明を発表しておるのでありますが、それによると利拂延期により、銀行その他の金融機関が受ける影響については適当なる処置をとるつもりである、こういう聲明を発表しておるのであります。御承知のように軍事公債の内容を檢討すると、銀行でも貯蓄銀行などにも相当これが保有されておる。その他の庶民金融機関にも相当の量が保有されておる。こういう結果になつておるのでありまするが、これに対して政府としては、これから受ける影響について、いかなる具体的な対策をもつておるのであるか、その点について質してみたいのであります。
  64. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。これは先に申しましたように、利拂の延長についての法律案を提出することになつておりますので、できればその場合にきわめて詳細にいろいろ御質疑お答えした方がなおよいと思うのでありますけれども、ただいま御質問がありましたから、その法案は出ておりませんけれども一応申し上げます。われわれの今法案の中に織りこみたいと思うこと、並びにそれに伴う措置としてやりたいと考えております構想を申し上げますと、これは、利拂は確実にあるのであつて、延長されたのであるというような観点からいたしまして、金融機関の中ではこの利拂というものを、損益勘定に入れないと都合の惡いところも起り得る。從つてこれはすでに期限が経過しておるのでありますから、保險会社あるいは銀行等でやるところの既経過一つの損益勘定である。経過はすでにしておるのであるが、現実にキヤツシユがはいらぬというだけであつて、既経過の分であるから、経理上の処理については、会計上の既経過の処理をするということを認めよう、そのことによつて一応解決しよう、これは貸借対照表の借方に載るようなことになるのでありますが、さような経理的処理によつて一応解決する、しかしそういうことはあまりないと思いますけれども、なおただいま御指摘になつたように、非常に大量の國債をもつておる貯蓄銀行等で現実にキヤツシユがはいらぬと困るというようなことも起り得る。そういうところには融通の途を開くというようなことによつて、まず万全の途を講じまして、このことから來る影響を少からしめるようにするという点において、ただいま上林山君の御心配になりましたような点は、一応解消するように処理したい、こういう構想をもつておるわけであります。詳細のことはこの法案を提出した際になお詳しく申し上げた方が適当ではないかと思いますけれども、ただいま御質問がございましたので、以上の点を申し上げておきます。
  65. 上林山榮吉

    上林委員 これは暫定予算の私の質問とも関連があるのでありまするが、政府は先の答弁において、五月以降の暫定予算あるいは本予算には、この利子は計上しない決意である、こういうことを説明したのでありますけれども、今度の六月の暫定予算にもこれが計上をしてあるのであるが、これは今言うがごとく、國会で法案の審議をしていない、あるいは三党の妥結が遅かつた、こういう理由によつて、この問題が遅れたのであるというふうに單純に考えておるのであるか。それとも及ぼす影響の重要性に鑑みて、言葉は愼重に研究したいと言うかもしれないが、躊躇逡巡、もつと飜して言うならば、大藏大臣としては、あるいは民主党出身の大藏大臣としてはこれはやりたくないのだ。だけれども社会党の面子を立ててやるために、やむなくこれをやつたのである、こういうような結論にはならぬのであるかどうか、この点を質してみたいのであります。
  66. 北村徳太郎

    北村國務大臣 六月の暫定予算にこれを落すか落さないかということについては、きまつたことは早くやつた方がいいというような考えを大体もつておりまして、この処理のためになるべく急いでやろうとしたのでありますが、これは今日まで日本で例のないことであります。從つてたとえば外國人に対しては適用させないということの根拠を、どういうふうに求めるかというようなことも、一應の法律論でありますし、また外國人という中に、一応連合國側の外國人というような前の立法例がありますので、そういうふうにすべきではないかというようなことも、相当檢討いたしたりしたのでありますけれども、もしさようにいたしますと、中立國が除かれるということになるし、もちろん枢軸國は除いていいかもしれないが、中立國は除きがたい。從つていわゆる外國人並びに外國法人の範囲を、どこに線を引くかというようなことも、事務的に相当研究と考慮を要するというようなことでございますし、かたがたこの問題は、事務的に相当煩瑣な問題でございまして、ついに六月に織りこもうとしたのでありますけれども、これは事務的に少し間に合わぬ。結局どこから起算点を置いても一年間延ばすということには変りないのであるから、これは必ずしも急ぐことではない。今明日を爭う問題でもないから、これは六月の暫定予算に織りこみたいという希望をもつておりましたけれども、事務的のいろいろな関係で遅れましたから、起算点を七月に置いて向う一箇年、こうした方が妥当であるというふうなことで、ただいまそういう意味での法案を急いでおる次第であります。
  67. 上林山榮吉

    上林委員 私の質問の要点に多少は触れていますけれども答弁がぼけているようでありますが、さらに再答弁を要求いたします。
  68. 北村徳太郎

    北村國務大臣 どういう点であるか御指摘を願いたい。
  69. 上林山榮吉

    上林委員 民主党出身のあなたとしては、この処置を積極的に支持したいというよりも、遅れた原因は今御説明のごとくいろいろあるんだが、その基本をなすものは、民主党としては、あるいはあなたとしてはこれをやりたくなかつたから遅れたのではないか。こういう質問に対する答弁がないようであります。
  70. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これは閣議としてまた國務大臣としての責任において閣議決定したのでありますから、閣議決定通りの問題であります。
  71. 上林山榮吉

    上林委員 閣議決定ということは、内閣の建前において、政府の建前においての答弁であり、事務的な処理であつて答弁通りだと思います。この遅れた原因というものは、先ほど御説明になつた趣旨のみではなしに、その一つの要素として、民主党自体、あなた自体が、この問題に対して積極的な賛意をもつていなかつたのだ、その結果が遅れた原因の一つになつておるんじやないか、こういうふうに考えるし、また三党協定というものが非常にあいまいなものであつたし、そういうような建前からいつて、私はこの案を強調したわけであります。殊にこの案はどちらかと言えば社会党の面子を立てるためにやむなくその妥協案を得たという政治取引もあつた。社会党表面反対しておるけれども、裏面においてはこういうような楽屋裏の取引をやつておる。これは政権を維持していきたいという意図の現われだと考えるのであるが、そういうようなことがあつた遅れたのではないか、こういう私の質問であります。
  72. 北村徳太郎

    北村國務大臣 遅れたことは先に私の述べた通りであリまして、事務的に非常に煩瑣であつた。從つて急いだけれども、六月の暫定予算から落すには間に合わなかつたというだけであります。なおこれは閣議の中でいろいろ討議討論をやることはもちろんでありまして、その過程においてたれがどう考え、たれがどう言つたかということは、少くとも予算委員会の問題でない。結論として閣議決定として内閣責任において提出したのであるから、その意味合において、楽屋裏ではこういうことがあつたろうというような御質問がありましても、港はここでそういうことについては、御答弁を差控えたいと思うのであります。
  73. 上林山榮吉

    上林委員 この問題を追究する論拠も材料もありますが、この問題はその程度にいたしまして、私は当面重要な問題である税制改正案について大藏省の意見を質してみたいのであります。  主税局の試案というか、大藏省の試案というかその案が傳えられるところによりますと、改正の主眼点は、所得税及び法人税を軽減して、新たに取引税を設けた点にあるのではないか、こういうことが言えるのでありますが、この点に対して大藏大臣はどういうふうに考えるか、あるいはまたこの構想に從つて近くこれが國会に提案される準備が成つておるかどうか、この点について先ず質しておきたいのであります。
  74. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。勤労所得税を主眼とする所得税の軽減をはかるということは、内閣成立以來公約でございまして、今回これを実行に移そうとしておるのであります。それから法人税の軽減も、どうも少し法人税のかけ方が重過ぎる、從つて企業の再生産活動に影響するというようなことが、新しく外資導入等の場合に影響するところが少くないという観点から、これも引下げるということは、公約された通りでありまして、そういう線に沿つて、新しい税制改革に関する法案を提出しまして、近く御審議を願うことになつておるのであります。このことからくる歳入減は、相当金額に上りますので、これをどうして埋めるかという問題が、きわめて重大な問題になつてくるわけであります。特に今日健全財政主義を一貫したいというようなことから、財政專売たる專売益金と税、この二本建で、これによつて歳入を立てて財政を賄つていかなければならおというような觀点から、所得税の軽減並びに法人税の軽減からくる歳入欠陷を補うにいかなる財源があるかということについて、いろいろ檢討いたしました結果、その一つとして取引高税というものを取上げておるのであります。これも近日そういうような法案として提出をいたすことに相なつておりますので、その場合にくわしく申し上げたいと存じますけれども、ただいま御質問の点はその通りであります。所得税の軽減、法人税の軽減をやる。それから取引高税の御承認を得たい。そういうふうに提案をいたしたい、かような構想でおります。
  75. 上林山榮吉

    上林委員 所得税、特に勤労所得税及び法人税の軽減をするということは、われわれも從來主張してきたところであるので、この線に対しては積極的にわれわれも賛成をしているものでありますが、政府の意図しているところのやり方を考えますと、これは形の上においては所得税の軽減であり、あるいは法人税の軽減にもなろうかとは思いますけれども、実際にこれを檢討してみると、私は政府が意図し、あるいは宣傳しているがごとくならない。言いかえると、所得税にしても、法人税にしても、軽減とはならない、こういう觀点に立つのでありますが、もちろんこれは近く提出されるところの政府の法案、その他を見てみなければわからぬけれども、今試案として出されているものについてこれを考えるときにおいては、この結論がまず立つのであります。これは自分は野党的立場にあるからという理由ではなくて、大局的にこれを見て、そういう結論を得たのでありますが、まだ第一にお尋ねいたしたいことは、所得税であります。所得税は昨年度においては予算は六百八十五億円程度であつたかと思いますが、これを税收総額のいくらにあたるかということを見てみると、五割二分に大体あたつているようであります。ところが今度政府が発表するであろうところの案によりますと、所得税の見込みは、約千四百億円、税の総額は予想するところ二千五百億円、こういうことになるのでありまするが、それを税の総收入と所得税の割合を見らみると五割五分強、こういうことになるのであつて、この点からいつて、所得税が軽減されたとは言えないのであります。殊に國民所得を先般九千億円としたことも、これには檢討する余地があるのでありますが、このものに対して本年の所得を、発表せられたところによると、一兆八千億円というふうに約二倍というふうにみておるのでありまして、これからしても昨年度の所得税の約二倍になつてくるということになるのでありまして、いかに詭弁を弄しましても、いかに政略をもつてこれを宣傳いたしましても、結論は軽減をされておらないこういうように私は考えるのでありますが、これに対して大藏当局はどう考えているか。さらにその他の点についても、比較をして質問を続けたいと考えるのでありますけれども、まずこの大方針についてお尋ねいたしておきたいのであります。
  76. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申します。所得税全体について軽減をしたのでなくして、勤労所得階級のうち、特に自分の勤労力によつて生活をする人々と目すべき線以下のものを大幅に引下げた、こういうことなんでありますから、これを総税額と、あるいは総所得金額、あるいは所得税の総額における割合というような率から見たのでは、國民生活の悩みの点とか、國民生活のどこにおいて一番経済的にあえいでおるかというような線が表現されない。從いまして、私どもはこの軽減しなければならぬと考える勤労者階級の所得税を相当に引下げたのでありまして、全体のパーセンテージがどうなるということよりも、むしろその点に重点をおいておるというふうにお考えを願いたい。それから全体としてのパーセンテージが上つておるじやないかというお説がございましたが、これは数字を檢討しないとわかりませんので、ここに数字をもつてただいまお答えはいたしませんけれども、これはやはり國民所得が増大しておる。千八百円ベースが二千九百円以上になり、あるいはまた今囘さらにこれが引上げられようとしておる。かような点から國民所得の増大の点というようなものがございまして、そういうことも併せて勘案しなければならぬ、こういうことになるのであります。それで全体として申しますと、勤務所得税の軽減と一部法人税の軽減によりまして、絶対数を申しますと、数百億円ぐらいの歳入減がくる、こういうような結果を生んでおるのでありまして、これは概して勤労者にそれだけの負担を軽減してもらうという結果になる。またごく一部ではありますけれども、企業活動のために一部を軽減するということになるのでありまして、一層具体的な数字の問題は、事務当局から御答弁をいたさせますけれども、かいつまんで申しますと、以上のような方向に向つて、税の改正をやつておるということに御了承願いたいのであります。
  77. 上林山榮吉

    上林委員 勤労所得税を軽減した結果は、所得税全体に対して増徴があつてもやむを得ない、國民全体に対する所改税が二倍近くになつても、これはやむを得ないという考え方は、私は片手落ちの考え方であると思うのであります。そこで私は勤労所得税がはたして軽減されたか、軽減されないかという問題について質問する前に、勤労所得税を軽減することによつて、二倍もの所得税が増徴されてもやむを得ない。こういう考え方であるかどうか、この点を質したいのであります。
  78. 北村徳太郎

    北村國務大臣 勤労階級の所得税を下げるということと、それから税全般のでこぼこを修正するということと、しからば非常に所得の多いところに重課しておるかというと、そうでなくして、最高八五%を八〇%に下げて無理のいかぬようにしたいというような考え方で全般の調整をいたしたのであります。從いまして、絶対数で二倍以上になるのじやないかというようなお言葉があると、これは千八百円ベースが三千六百円になれば二倍になるじやないかということと対應するわけでありまして、いつでも所得と所得税というものは相連関するものでありますから、絶対数を押えて、所得税を二倍以上とつてよいかどうかというお尋ねを受けると少々答弁に困るわけでありまして、その点はさように御了承願いたた。千八百円ベースが三千六百円になれば二倍になる、從つて現在勤労者の所得というものをどういう点に線をおいて計算をしておるかということと関連するわけでありますから、所得のないところからとるわけじやない。所得税を軽減するということは、そういう意味でありまして、絶対数をもつて二倍以上になるがどういうわけだ、こういうようなお尋ねを受けると、少々これはお答えが困るわけでありますから、さよう御了承願いたい。
  79. 上林山榮吉

    上林委員 そこで私は昨年度の國民所得の九千億円もあやしいものであるが一兆八千億円というような國民所得は、どう考えても、形の上では考えられるが、実際の上においては考えられない。こういうふうに思つておるのであるが、この計算の基礎は、何を基礎にして一兆八千億という計算が出たか。まずこの國民所得の計算が是であるか。これによつて所得税の按配を考えたということになれば、これでも不十分であるけれども、一應諒としなれればならぬ点もあろうかと思うのであるが、私はまずその点を尋ねておきたいのである。
  80. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま逆に私は上林山君に一兆八千億円の國民所得の根拠を伺いたいと考えておつたのでありまして、政府國民所得が一兆八千億円というようなことを政府として発表したことはないのであります。私も新聞か何かで讀んたように思いますので、そういうように考えられておると思うのでありますけれども、この國民所得の計算というものは、御承知通り、いろいろの計算の方式がありまして、必ずしも的確のものじやない。生産の面から出すやり方もありましようし、それから税收入から逆算するというようなやり方もありましようし、いろいろのやり方がある。しかしこれは往々にして誤解を生じやすいのでありまして、國民所得がこれだけあるから幾パーセント税をかけてもよろしいという大まかな考え方はすべきでないと、私は日ごろ考えておる。税を扱う者としては、さようには考えておらないのであります。國民所得の何パーセントというような考え方は、國民生活の内容によるわけであります。生活実態によるわけであります。生活の実態が、これは実は今のところ統計に現われたところでは、七割何分もで正常ルートならざるものでわれわれは食糧を買いこんで生活をするというような事実がある限り、その國民所得の中で、生活実態がいかなる生活実態をもつておるかということが根拠になるわけでありますから、こういうようなものが把握てきない限り、國民所得の総額をもつていくということは、一應の議論になるけれども、実はそういうものにあまり價値を私は認めておりません。それで一兆八千億円というものを、私も何かて見たようでありますが、私はこういうものに必ずしも信頼いたしておりませんし、少くとも税の方面においては、個々の具体的なる所得を押えて、これに向つて所得税を実質的にかけていく建前てなければなりません。大まかにその最後の結論として、いわゆる税から逆算した國民所得はこれだけ、税の総額はこれだけ、その割合はこうなるということは一應統計的な事実になると思いますけれども、そういうことは別として、國民所得をまず押えてこれの國民所得に対する割合が底いの、高いのということは、内容を無視した議論になるから、私はさようなことはやりたくない。今までやつたことはないのであります。
  81. 上林山榮吉

    上林委員 政府としては國民の所得がどういう状況にあるということは考えずに、ただ断片的に個々の收入について適当に税を割当てればよい。これが実態に即したものであるという見解を、現内閣はとつておるのであるかどうか。あたなの單なる御見解でなしに、現内閣方針について伺いたいのであります。
  82. 北村徳太郎

    北村國務大臣 少し食い違つておるようでありますが、私の申し上げた言葉の通りに御理解を願いたいと思います。それは國民所得がいくらある。從つてこれに向パーセントかけたら税がとれるというような考え方はいたしておりません。從つて課税に関する限りは、実態を把握するということを根拠にしなければならぬ。そうでなければ課税の適正あるいは衡平ということは成り立たない。從つてごめんどうでも、申告税の制度て、個々の御申告を煩わし、あるいはその他実態の調査をして、そうして実情に即した課税をしなければならぬ。かように考えておるのでありまして、從つてまず大まかに國民所得がいくらあるからこれにいくらいくらかけるのだ、あるいはいくらくらまではいいはずだというような考え方は、往々にして危險である。從つて私及び大藏省の見解としては、すなわち政府見解としては國民所得がいくらある、これに幾パーセントかければよろしいというような大まかな考え方はいたしておりませんと、こう申し上げたわけでありますから、從つて断片的にというお話があつたけれども、そういうのでなく、一つ一つの現実の生活実態を把握するということを建前として、それに基いて課税するのでなければ、税の適正ということは行われぬ。從つて手数がかかり、ときに行き違いがある。怒られたり何かすることはあるけれども、それでもやはり実態々々に関して所得を押えていくという方向でなければならぬ、かように考えているわけでありますから、どうかさよう御了承を願いたいと思います。
  83. 上林山榮吉

    上林委員 どうも大臣答弁が私のははつきりしないのだが、逆算の方法によろうといかなる方法をとろうと、一應國民所得というものはどの程度である、その國民所得の総所得に対して、こういう方面にはこの程度、あの方面にはこの程度というふうにあんばいしていくということは当然であると思いますけれども、いかなる方法によろうと、逆算によろうと、一應國民所得というものを考えていないという御答弁に対しては、私は不可解でありまするが、それが政府方針であるというならば、それで了承をいたします。けれども、私どもをして言わしむるならば、これは計算の方法はいろいろあろうし、実態を掴む方法はいろいろあろうけれども國民の総所得はどの程度である、その中にこちらには七〇%、この方面の所得には五〇%、あるいは勤労階級には一〇%、こういうふうに、その度合によつてこれを按分していくというやり方が、新しい税制の建前ではないか、もちろん個々の問題について、実態を度外視していいというのではなしに、ここに一つ基準というものがあつていいものだと考えておるのであるが、大藏省以外の政府当局においても、たとえば安本当局等において、こういうふうな考えは全然なかつたのであるかどうか、この点を質しておきたいのであります。
  84. 北村徳太郎

    北村國務大臣 どうも少し話がもつれたように思いますが、私は國民所得というものを、全然無用のものであるとは考えておりませんが、少くとも税を対象とする場合には、國民所得がいくらあるからいくらいくらという大まかな計算は、税担当者としてはいたしておりません。それで別の意味において、國民所得をむろん考慮しなければならぬし、また統計的事実として、過去の國民所得の分野というものを見るということも当然であります。これは財政政策あるいはその他の経済政策の面において、國民所得の統計的事実としての國民の分野における所得の分布というものを考えることはもちろんであるが、税に関してはむしろそういう観点よりも、個々の実態を押えるということでないと誤りやすい。でありますから、ただいまの御質問は、税に関してでありますから、税に関する限りにおいては、税に個々の実情を把握することを建前としておるということを申し上げておるわけでありますから、さよう御了承を願いたい。
  85. 上林山榮吉

    上林委員 しからば、各分野々々における國民所得の総計、私の言うところのいわゆる國民の総所得を本年度は税をかける建前からどの程度になつておると大藏大臣考えておるか、その数字を承つておきたい。
  86. 北村徳太郎

    北村國務大臣 どうも私は頭が惡いので、はなはだ上林山君のおつしやるのが入りにくいのですが、税に関する限りは、國民所得がいくらという扱い方はいたしておりません。これは別の観点から、経済政策、財政政策の点、徴税以外の面からいたしまして、統計的事実としての所得の分布というものを、決して軽んじておらぬが、税に関する限りは、さような扱い方はいたしておりませんと、こう申し上げておるわけでありますから、その辺でひとつ御了承を願いたいのであります。
  87. 上林山榮吉

    上林委員 この点は了承するわけにいきませんが、私の言うのは一歩方向をかえてあなたにお尋ねしたのであります。あなたは國民の総所得は税に関する限り考える必要はない、個々の收入について実態を把握して税金をかければよろしい、こういう御見解であるから、私としては政府においても國民の所得を考えたことはないか、こう言うのに対して、考えたことはない、最初はこういうふうにお考えになつたのである。だが、その後訂正されまして、税に関する限りにおいては、國民の総所得を考える必要はない。こう言われるから、それは一應了承することにして、私が尋ねたいのは、各分野々々の税金の対象になる所得の総合計を、税金に関する限りにおいて、大藏省は、どういうふうに見ておるか。逆算でよろしい。逆算でよろしいが、その逆算から國民の総所得をどの程度に押えておるか。税金の対象とする限りにおいて、ひとつ御答弁が願いたいのであります。
  88. 北村徳太郎

    北村國務大臣 まだ主税局長が参つておりませんから、参りましたら御答弁いたさせたいと思いますが、おそらく新しい今囘の税制の改正を中心として、それを基礎とした逆算による國民所得の分布状態というのは、まだできてないかもしれないが、できてないとすれば急いでやればいいことでありますので、できてないならば、なるべく早くそういうことをいたしたいと思つております。さよう御了承願います。
  89. 上林山榮吉

    上林委員 そこで私は勤労者の勤労所得税を軽減するために、國民に二倍の所得税をかけていいというような意味の御議論に対しては、絶対反対するものであるが、その前提であるところの勤労所得税がはたして軽減されておるかという問題について、さらに質問を続けたいのであります。まず基礎控除の問題でありますが、現行の四千八百円を一万五千円に引上げております。そして扶養家族に控除を四百八十円から千八百円に引上げております。形の上においては、こういうように基礎控除、あるいは扶養家族の控除がなされておりまするが、賃金を要求するのは生活費が高いから、物價が高いから賃金の増加を要求しておるわけであります。こういう意味から言つて、インフレの高進しておる現況から、はたして実質的に勤労所得税が軽減されたということが、政府としては良心的に言えるかどうか。この点についての見解をまず質したいのであります。
  90. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問の中で、勤労所得税を下げると言いながら、二倍以上増しておるというような御質問でありますが、私ちよつとその点の御質問の趣旨がわかりません。二倍以上という意味がどういう意味なのか、いかなる場合でも何倍というときには絶対数では内容が違いますから、率が問題になるのではないか、かように思います。また絶対数でも構わぬのでありますけれども、二倍以上とつて一方で軽減しているというようなお言葉があつたのですが、さようなことは全然ないと思います。それから、非常にこまかい税のことは技術的な問題が多いのでございまして、こまかい数字を盛つた法案があるのでありますから、これに基いて論議を進めていただいた方が一層具体的であると思いますけれども、それが今ここには問題になつておりませんので残念ですが、おそらく二、三日のうちにはそういう法案が出るので、それに基いて具体的に論議を進めていただく方が、双方のためにいいのではないか、かように私は思います。それで委員長なりあるいは上林委員において、さよう御了承になるならば、きわめて具体的に、技術的な数字をもたらした計算の出るその法案に基いて、お互いに論議した方が一層いいじやないか、こういうふうに考えるのですがいかがですか。それが近く法案として議題になるのでありますから、さようにしていただいた方が、私どもとしては結構である。こう思いますけれども、いかがなものですか。  それから軽減したと良心的に言えるかという御質問でありますが、良心的に確かに軽減した、こういうことが言えると、私は確信いたしております。
  91. 上林山榮吉

    上林委員 近くこの問題が出るから、そのときに審議したらどうかという御提案には、私は反対であります。われわれは政府の試案が出た以上、あるいは試案が出なくても、こういう重要な問題については、政府がもつている見解を質し、そして出てきた具体的な問題について、より正確なる判斷をするということが、國民的議会の職能である、こういう観点に立つので、そういうような事務的な取扱いに対しては反対いたしますので、さらに質問を続行いたしまするが、先ほど勤労所得税を軽減したと言いながら、かえつて二倍になつているのではないかということは、大臣の聽き違いであります。私は労勤所得税を軽減した結果が、國民全体の所得税が二倍になつたという結果になつてくる。すなわち昨年度は六百八十五億円程度であつた所得税が、今年は千三百三十九億円程度の所得税になつてくる、約二倍になる、この意味を指したのでありまして、この点は御了承を願いたいのでありますが、そこで私の聽きたいのは、インフレが高進する、物價が上る、これでは勤労者が普通の生活ができないからというので、賃金値上げの要求をした。いわゆる名目賃金は上つたが、実際の賃金は上つていない。このときにここに示されたところの基礎控除、あるいは扶養家族の控除の程度で、はたして実質的に勤労所得税が軽減されたと言えるかどうか、これを計算にお入れになつたことがあるかどうか、たとえば物價がこの程度上つた、あるいは日常の生活はこういう状態であるということを実際計算に入れての考えか、それとも形の上でこれだけすれば、政府が声を大にして勤労所得税を軽減した、公約を守つた、こういう意味になるという、いわゆる政治取引上の單なる計算的計畫かということを私は聽いておるのであります。殊に私はその答えがあつてからの方が適当かと思いますけれども、まとめて尋ねたいのは、はなはだしきは二十三年度に限つては、基礎控除は法律では一万五千円引くのであるけれども、二十三年度は一万七百五十円、さらに扶養家族にいたしましても、千八百円と法律ではきめるが、本年度の二十三年度は千二百五十円控除をする。いわゆる予算あるいは税金というものは、現実の問題を正確に解決するということが予算の本旨であり、税制の本旨でなければならぬ。それをあたかも表面的には大幅に軽減したかのごとき形をとつて、そうして実際にはこれを今年は行わない、来年度から行うというようなやり方は、さきの軍事公債の問題と同樣に、現内閣の性格を露骨に現わしたところのずるいやり方であると、私は痛感するのであります。こういうやり方をやらずに、やれるものを現実的にやる、あなたが、言つておられる通り、取れるものを取れる度合によつて税金は取るのが現実的の建前であると言いながら、こういうトリックを何がゆえに使わなければならぬか、いわゆる現内閣——特に大藏大臣政治的性格を私は疑うものであります。この点に対する御見解をひとつ率直に答弁せられたいのであります。
  92. 北村徳太郎

    北村國務大臣 いろいろの点に觸れて御質疑があつたのでありますが、これは申すまでもなく國民の個々の所得を押えて、その実態に基いて課税するという建前は、さきに申し上げ通りでありまして、適正公平の見地から、どうしてもそうしなければならぬ、しかしながら、また全体としての財政の面から考えまして、所得税の軽減からくる財政の缺陷をどう補うかということ、それから新らしい予算に基く物價改訂等が及ぼす勤労者への影響というようなものを考えなければなりませんし、要するに物價政策というものをどういうふうに取扱うかということと、財政政策が物價政策とどこでマツチするかというふうな点を、十分に勘案いたしまして、新らしい年度の予算編成したのであります。從いまして、今いろいろと御指摘がありましたけれども、もちろんただいま申し上げましたようなことが基礎になることは当然でありまして、税制の改革による税の減收に財政がどこまで耐えるかというふうな問題も勘案しなければなりませんので、そのことと事務的な処理のと関係をにらみ合わせて、実施はどの程度いつからするかというようなことは、これは財政の全体にわたり、全視野において、考えなければならぬ問題でありますから、たとえば控除額の引上げを一部延ばすというようなことは、財政全体の関係において、やむを得ざるものは軽減するけれども、一部分はこの程度でがまんしてもらつて、それから先にさらに大幅に下るようにしようということは、これは財政全体の財政政策として考えなければならぬ点でありまして、政府はさような点もにらみ合わせまして、妥当点を押えて、それを一つの原案として提出したい、こうさつきから申し上げているので、そういう考え方ているし、また現にそういうような方向に進んでいるという点を、ひとつ御了解を願いたい、かように考えております。
  93. 上林山榮吉

    上林委員 いはゆる二十三年度に限つて基礎控除ないし扶養家族の控除を法律の規定よりも安くとるということに対しましては、どういう御見解をもつておられますか、われわれは税金というもの、予算というものは、現実を正確に把握してやつていくということが原則であると思う。しかるにこの法案を見ると、あたかもこの法案のみはこの原則を破つて、大幅に税金の軽減をやつたごとく見える。この宣傳の具として使われるがごときいわゆる税制の改正案は、私は現内閣のずるさを現わしているものだというふうに言つているのであるが、これに対しては何ら御答弁がないので、この点をさらに要求いたします。
  94. 福田赳夫

    ○福田政府委員 お答えいたします。一万八千円というのは、これは平年における額であります。それが二十二年度といたしましては、実施があるいは七月になるかもしれぬということになりますれば、十二分の三の減るということによりまして、昭和二十二年度の分といたしましては、これを全体として考えますと、多少平年よりは減る。かようなことであります。
  95. 上林山榮吉

    上林委員 そういう答弁はさつぱりわかりません。また正確なものであるとも思いませんが、かような政府のやり方は、私は賛成することのできない大きな問題であると考えております。  そこでさらにお尋ねいたしたいのは、この勤勞所得税いわゆる所得税全般に対する財源がなくなつて、税收が少し軽くなつたために、その転嫁をば大衆課税ともいうべきいわゆる取引高税にもつてきている。これは一方の方で輕減したというけれども、事実は軽減していない。これを軽減したという言葉を使つて、一方では取引高税という大衆課税をここにもつてきている。これを何百億円の増徴をせられるはずであるかわかりませんが、その取引高税で予想している税高は、大体いくらかということ。  さらに私はこれは羊頭を掲げて狗肉を賣るような政策のように思うが、こんな政策を政府がやつているということが腑に落ちないのであるが、これを政府は大衆課税的性格であるとは思わないかどうか、取引高税は発表せられたるところによると、われわれは明らかにこれは大衆課税的性質のものだと思うが、政府はそうは思わないか、その税高はいくら増徴するつもりか、この点を明らかにしてもらいたいのであります。
  96. 北村徳太郎

    北村國務大臣 取引高税が大衆課税であるかないかということは、議論の余地がありますけれども、かりに若干大衆も、勤労所得税において明らかに大衆課税になつておる分を減ずる。しかも絶対額においても、その率においても大きく減じて、購買力のあるところから軽度の取引高税をもらうということは、これは何も大衆課税をもつて一方の勤労所得税に代えるというような意味ではございません。それから取引高税は、必ずしも税として最上のものであるとは考えておりません。若干の弊害があるかもしれぬ。それを除くためには、いろいろ用意をしております。これは法案提出の際に詳しく申し上げたいと思うのでありますが、かりに取引高税が大衆課税であるとしても、純粹なる大衆であるところの勤労者の所得税を大幅に軽減することによつて、一方に購買力の多い人より負担してもらうという意味において取引高税をとるということは、その限りにおいて矛盾がない。しかもまた財政が窮乏のときでなければ、取引高税のような手数のかかる非常にめんどうなものをとらなくてもいいと思うのでありますけれども、殘念ながら、現下の日本財政情勢においては、所得税の軽減に基く税收欠陷は、何か他の税をもつて補わなければならないということから、諸外國においてもやつておる取引高税を、この際新たに設けてはどうか。これの弊害を少くするためには、度合をきわめて軽度にしなれればならないというのて、きわめて軽度の取引高税をとることにしたのであります。ただいま的確な数字を申し上げることはできかねますけれども、二十三年度においては、中間から実施するために、大体二百億ないし二百五十億くらいの見当をしております。そのくらいの見当で、ただいまいろいろの用意を進めておる次第であります。
  97. 上林山榮吉

    上林委員 取引高税が本年度は二百五十億円、あるいはこれを一年間に引伸ばすと、三百五十億円、あるいは四百億円になるのではないか、こういうふうに言われておるのでありますが、こういうものの中には、なるほど形の上から見れば、大衆課税でないものもありましよう。しかし一々吟味してみると、大きな大衆課税的性格をもつておるのであります。なおこれを納める人は、どちらかというと、依頼者ないしは消費者、こういうような人々がその税金を納めることに実質はなつてくるのであります。いわゆる当面の納税者は、あるいは当該責任者でありましようけれども、納める者は一般國民大衆である。何もこれがやみ利得、あるいはそういうような方面の所得者だけが納めるものじやない。こういう建前から言うと、これは明らかに勤労所得税を軽減すると言いながら、事実は軽減していない。同時に形をかえた大衆課税、これだけが現内閣のとつておる税制のやり方である。こういうふうに考えるのであつて、まことにこの点は遺憾とするところであります。  そこでこの際伺いたいのは、主食あるいは自分で働いて收穫した農産、林産、水産物に対しては税金をかけない、こういうようなふうに受取れる節もありますけれども、これをよく見てみますと、これらのものに税金がかかつている形になつてくるのであります。この点は軽度の税金と言つておられるが、どの程度の税金をかけようとしておられるのであるか。われわれは農業事業税というか、あるいは漁業事業税というか、これらのものに対しては絶対反対の立場をとるものであるが、政府はどの程度に輕減し、どの程度にこれを課税をしていく方針であるか、この点を明らかにせられたいのであります。
  98. 北村徳太郎

    北村國務大臣 こまかい点にはいりますと、法案を基礎にした方がいいということは、先ほど申し上げ通りでありますが、御質問でありますからお答え申し上げます。今終りの方で事業税の話が出ましたが、事業税と取引高税とは、全然関係ありません。これは地方財政委員会で、地方税として事業税が考慮の中にはいつておりますから、そのこととは関係ありません。取引高税は、主食の分にはかけないようにする方針であります。それからたとえば義務教育に属する教育についての教科書のごときは、これは全然取引高税から除く。それから輸出品に関しては取引高税を除くというような方針で、ただいま案を固めている次第であります。その点だけお答えしておきましよう。
  99. 上林山榮吉

    上林委員 今取引高税に関連しまして、農業事業税、漁業事業税の問題についての質問したのであるが、これはもちろん地方税として要求されるわけであります。けれども、その他の所得という点から考えますと、昭和十五年から十七年までの農業所得に関する税金は三倍、こういうことになつております。ところが終戰後になりますと、二十年度は一三%になつておるのでありますけれども、農業復興会議の調査したところによると、二十二年度は四三%、こういうようなふうに、農業所得に対して驚くべき税金の過重があるのであります。これが事業税その他によつて、これは地方税になつていくわけでありますけれども、これに対して政府は取引高税と関連いたしまして、どういうような考えをもつているか。農民に対して取上げれば、どこまでも取上げることができるというような考え方に見えるのであります。私はこういう立場から、これは地方の税制のやり方いかんによつて、地方の負担が加重される。あるいは事業税を地方に委讓したために農業者に対する負担が加重される。こういうような観点から、この問題を取上げるわけでありますが、これに対してどういう考えをもち、あるいは地方、中央を通じて、これを軽減していく何か具体策を税制の上に考えていることがあるか、この点を質したいのであります。
  100. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。地方、中央を通じて税全般にわたつて、できるだけ革新、改革をいたしたいというような考えで、ただいまそれぞれ各政黨、各労働界、産業界、学会等の方々を煩わして、税制に関する改正懇談会を開いております。数囘開きまして相当の成果をあげたのでございますが、なお今後も続いてそういうようなことをいたしたい。ただ中央はもちろんでありますが、地方の財政相当に窮迫していることは、上林山君つとに御存じの通りであります。從つて地方の財政をどうするかという問題は、きわめて重大であります。從いまして、地方財政委員会において、ただいま事業税が一つの話題に上つて上げられているということは聞いておりますが、これは未だ事業税をとるときまつておりませんし、とればどんなふうにしてとるということも決定しておりませんので、ここで地方財政に関する地方税としての事業税の問題は、私から御答弁申し上げかねるのであります。それで問題はさつきの取引高税に関してでありますが、取引高税に関しては、さきに申し上げ通りで、なるたけ矛盾がないようにいたしたいというので、ただいま計画しておりますのは一%とる。これは実はドイツあたりは三%くらいとつているようであるし、その他もう少しとつているところもあります。段階別にとるという点に難点もありが、これは割合に輕いものを、その動く都度にとれるというので、税をもらう方の側から申しますというと、納めやすい、とりやすいという点もある。それで一パーセントというような軽度のものにいたしますれば、それからくる弊害はさして大きくならないというような考え方をいたしておるのでありまして、特に先に申し上げました実例でありますけれども、主食とかあるいは教科書であるとかいうようなものについては、これはむろん外に置く、税を免除するというような建前でいきたい、かように考えている次第でありまして、またさつきの御質問の中に、もつと大きなやみ所得を云々というお話も出たのでありますが、これは非常に努力をいたしまして、税の機構等も改革いたしまして、さような大口のインフレ所得者というものを押えるように、ただいまかなり新しい構想をもち、努力もしておるのでありますけれども、今囘の取引高税というのが、これはそういうことを当面の問題とはいたしておりませんが、動く段階ごとに課税をするということになりますると、一面このことが流通上の間においてやみにころげこむというものを、この税の観点から是正するというような作用もあるのではないか、われわれはさような期待をもちまして、さような方向にこの税の執行をいたしたい、さような効果をあげるような面にも努力をいたしたい。こういうように考えておる次第であります。
  101. 上林山榮吉

    上林委員 その次に税制の問題について質しておきたいことは、法人税の問題であります。政府は法人税を軽減した、こういうことを言つているが、これは收入をよけいあげた法人、それについてのいわゆるパーセントは税率が安くなつたということは言えるかもわかりませんが、百分の十五の営業ないし附加税のものはそのまますえおきになつている。あるいは普通所得にいたしましても、百分の三十五はそのまますえおきになつているようであります。これでは五割十割というふうにたくさんの收入をあげたものが軽減されて、二割あるいは三割程度收入をあげたものについては税金がかからない、こういうような程度になつてくると思うのであります。そういう意味合いにおいて税金がほんのわずかである。もとのままであつて決して軽減されておらぬということになる。こういう結果からいえば、いわゆる世間でよく言うところのやみ取引あるいは惡質なるところのインフレ所得者、そういうような大きな法人税は安くなつたが、いわゆる中小商工業あるいは小さな規模の法人というものは、これによつて何らの利益を受けておらぬ、場合によつてはもとのままであるというよりも、負担が加重されるというような形になつておるように思うのであるが、政府改正案はこれに対してさらに修正を加えていき、方針が今まで発表された程度のものでおちつくつもりであるから、この点を明らかにしてもらいたいのであります。
  102. 北村徳太郎

    北村國務大臣 根本的の考え方といたしましては、われわれは今の社会思想等の現状から考えまして、勤労の果実というものをなるベく重んじて、それの税を少くしたい。財産からくる果実には比較的よけい負担してもらいたい、こういう建前をいたしておるのであります。從いまして、純粹な勤労だけから生ずる勤労所得税と法人税は、一つの資本と勤労と結びついたものでありまして、この点においては考え方が純粹な勤労と違う、從つて経減をするにしても、税の体系、また根本的の考え方として軽減の歩合が違うことは当然である、かように考えておるのであります。ただいま大きいものだけが輕減されるというお話がありましたが、そうではなく、資本金の小さいものが非常に多い。特に十九万五千円というような会社が非常に多いのでありまして、そういうたくさんの会社の活動に期待することが大きい。かえつて小さい会社は運輸資金を現在多く要する。多く要する資金を囘転した結果、資本に比例して所得が非常に多くなる。すると超過所得税で税金をとられてしまう、これでは生産意欲を阻害するから、そういう点で是正したいという考えで、上林山君のお話とは逆に、中小企業に対して最も多く法人税の軽減をはかるようにしたい、こういう考えであります。具体的のことは、いずれまた税法のときに申し上げますけれども、大體根本的の考え方としては、以上申し上げました通りでございます。
  103. 上林山榮吉

    上林委員 それなら何がゆえに百分の十五あるいは百分の三十五というふうな税率をそのままにしておいたのであるか、この点がわれわれは不可解であるのであります。われわれから言いますならば、この点を是正して軽減する方向にもつていくことが妥当ではないか、こういうように考えます。それに反しまして、高額所得者のパーセントは、今までよりも税率が安くなつておる。なるほど経営の内容について一々檢討する場合は、お説のような点も出てくるのでありますけれども一つ基準として、方針としてやつていく場合については、私はこれは妥当なやり方ではないのではないか、こういう見解をもつので、この点を重ねて質しておきたいのであります。
  104. 福田赳夫

    ○福田政府委員 法人の超過所得については相当軽減になるか、少額の利益のものにつきましては、そう大した軽減ではないというお話であります。之は超過利益に対するのみならず、資本につきまして、ただいまといたしましては、税をかけております。これを今囘の政府改正原案によりますと、全廃いたすのであります。從いまして、この面からいかなる利益のものいつきましても、負担の軽減になるということは、言えるわけであります。  それから改正案の第二点といたしましては、所得全般につきまして、ただいま三五%の税をかけておりますが、これはすえおくわけであります。おつしやる通りであります、しかしながら、一〇%以上を超えるいわゆる超過利益に対しては、税を軽減するというふうになるわけであります。超過利益のあるものに対しましては、非常な軽減になる。しかしながら、超過利益のないものに対しましても、資本税の関係におきましては、相当の軽減になる。今囘この税を全廃する、かようなわけであります。
  105. 川島金次

    川島委員長代理 運輸大臣が見えるまで暫時休憩します。     午後三時二十分休憩      ————◇—————     午後三時二十九分開議
  106. 川島金次

    川島委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。  たまたま運輸大臣が見えておりますから、上林山君の質疑を続行いたします。上林山君。
  107. 上林山榮吉

    上林委員 運輸大臣に対しまして、鉄道運賃の値上について質疑を試みたいのであります。  閣議決定によりますと、鉄道運賃を三・五倍に引上げる、こういうふうに承知をしておるのでありまするが、この運賃引上げをやる前に、政府として考えなければならぬことがあるわけでありますが、その一つとして行政整理と物件費をばどういうふうに考えていくか、いわゆる獨立採算制ということに形式的にとらわれて、現状のままでいくとすれば、相当の運賃値上げをしなければならぬということになつてくるのでありますが、値上げをするにいたしましても、その前提としてまず考えなければならぬ問題について、政府は積極的に決意をもつているのであるか。この点について、まずお尋ねをしてみたいのであります。
  108. 岡田勢一

    岡田國務大臣 お答えいたします。運賃値上げをする前に、御意見のように政府といたしましては、できる限りの企業整備と行政の合理化とをはかるつもりをいたしておりまして、まず從來とかく議論されておりました行政監督費を、現業面の收入によつて賄うというような疑いを解消いたしまするために、行政監督部面を省内で仕分けまして、その経費を一般会計から補いますことに考えておりますから、それによりまして、企業面のはつきりした收支計算を捕捉できるようにいたしまして、事業の能率のいかん。あるいは経費が節減されておるや否やということが、はつきりわかるような方向に向けていくことにいたしております。
  109. 上林山榮吉

    上林委員 ただいまの大臣答弁では、はつきりとした前提処置というものがわからないのであります。私の申し上げておるのは、鉄道運賃を値上げしなければならない理由、これは獨立採算制という点から考えて、現状のままでいくとすれば、あるいは三倍半ないし四倍というふうに値上げをしなければならぬかもわからないが、その値上げをしなければならないという結論を得るまでに、その前提の処置してて思い切つてやらなければならぬ大きな問題がたくさんある。そのうちの一つとして、今申し上げたごとき行政整理、これに対してどういう見解をもつておるか。あるいは物件費の節約ないしは適正なる購入というような点について、どういう考えをもつておるか。まずこの二つについて、お尋ねをしたのであります。その根本方針をお示しくださるならば、これから具体的に質疑を進めていきたい、こういう意味でありますから、そのつもりで御答弁願います。
  110. 岡田勢一

    岡田國務大臣 獨立採算の面のみから考えまして、收入のつじつまを合わすことになりますれば、上林山君の御指摘の通りに、相当大幅に運賃を値上げしなければならぬのですが、それは今日の日本の経済現状から考えて許されぬことにもなりますし、また御指摘のように、運賃値上げをいたします前に、行政の合理化と企業の整備、あるいはまた不用物件の処分などをいたしまして、できる限り経費の緊縮節約をはかりたい。こういう考えで出発をいたしております。
  111. 上林山榮吉

    上林委員 ただいま御答弁なつたことは、私は運賃値上げの前提條件としてのお考えとしては、あまりにも微温的な抹消的な考え方であると思うのであります。そこでまず具体的に承りたいのは、現内閣があるいは前片山内閣からでありますが、大体において行政整理を二割五分の線を引いてやりたい、こういうことを、たびたび言明されるのでありますが、運輸省としては現業廳であるという関係から、この一般の方針通りはいかないが、ある程度の整理をする方針であるというように聞いておりますが、運輸省独自の現業廳であるということを考慮に入れてどの程度に行政整理をやることにきまつておるか、あるいはやろうとしてどの程度考えておるか、こういう点についてまず伺いたいのであります。
  112. 岡田勢一

    岡田國務大臣 行政監督費の面におきましては、御指摘の前内閣時代から大体の整理方針がきめられておりますが、運輸省としましても、その線に沿いまして、できるだけの整理をいたしたいと、今檢討中でありまして、運輸省の成案は、まだ出ていないのであります。  それから企業面における整理と申しますことは、これは運輸省の輸送量並びに今後の、澁滯しておりますいわゆる滯貨の一掃方針ども考え合わせまして、あるいはまた労働基準法の実施による関係等も考えまして、もし省ける人員があるならば省きたいという考えで、今まだ結論に達していないのでありますが、できる限りそういう方向に向つてやりたいと今調査中であります。
  113. 上林山榮吉

    上林委員 この問題は獨立採算制の建前から、これは運賃値上げとも関連いたしまして、前の予算総会においても、運輸大臣に強く要請をした問題でありますが、今なお結論に至らず研究中であるというような答弁でありまして、はたして多少の非難を押し切つても、國家の大局的見地から、行政整理を断行する腹があるのかどうか、私どもはこれを疑うのであります。この点に対して多少の労働攻勢を覚悟の上で、國家の大局的見地から國民立場考えて、運輸省としては、この際行政整理をどの程度やる——もうほぼ二十三年度の予算も出なければならぬし、しかも運賃値上の三倍半ということも、近く法案として出す時期に至つておる今日、未だこれが研究中であると言うに至つては、これは政府全体に関する問題でありますけれども、当面の運輸大臣に対してまことに遺憾の意を表するものでありますが、まだ單に研究中の域が、われわれから言えば、もうきまつていなければならぬと思うが、その点に対して何かもつと具体的に御答弁はないか、この点を質してみたいのであります。
  114. 岡田勢一

    岡田國務大臣 お答えいたします。企業面におきましては、御承知労働基準法の実施によりまして、運輸省の計算から申しますと、少年の深夜業の禁止による人員の増加の必要は、約四万人という計算が立つたのでありますが、この際のことでありますので、極度に節約いたしまいために努力いたしまして、今一万五千人ばかりの増員を決定しております。その他の企業部面につきましては、ただいまのところ、剰員を見出してはおらないのでありまして、むしろ重労働方面における人員の不足を生じつつあるような現在であります。しかし行政監督部面つきましては、さきに申し上げましたように、鋭意なるべく速やかに成案を得ることに努力いたしたいと考へております。
  115. 上林山榮吉

    上林委員 もちろん労働基準法を一升ますではかつたようにこれをやるとすれば、お説のような部分的に増員ということも考えられると思うのでありますが、われわれはこれを國家の大局から考えて、國民の負担ということから考えて。ひいて物價の騰貴ということから考えて、ここに結論として申し上げたいことは今まで一人でしておづだ仕事をば三人でしておるという計算になつておる。労働基準法の実施によつて、労働時間が短縮されるということは当然であるけれども、ここに何らかの調節をはかり、何かの優遇の方法を提案いたしまして能率を上げる、能率を上げて、過剰人員をその結果から整理していくという考え方が、現業面においてももちろんある。われわれがみるところでは、ところによつては執務時間中に遊んでおる者もある。これは行政廳においても同様でありますが、これらの問題をみる場合に、單に一升ますではかつたような考え方では、労働基準法を活用しておるのではないと私は考えるのでありまするが、もつと具体的に進んでいないのか、今御報告の通り程度で收めようと考えておるのか、この点を質してみたいのてあります。
  116. 岡田勢一

    岡田國務大臣 鉄道從事員の能率が戰前に比べまして低下しておりますことは、私も同感でございますが、三人で今までの一人分しか仕事を行つていないという点については、私としては御賛成できないのでございます。同時にまた、時間制などの問題は、労働基準法その他の法律によりまして制定されておりますので、ただいまのところは、それを動かすことはできないのでございますが、ただ上林山君の言われます能率の向上、それから局部的にロスのあるということは、これは絶無とは決して申し上げられないと思います。そういう点を発見次第、どしどし是正してまいりたいと考えております。
  117. 上林山榮吉

    上林委員 私の言葉が少し足りなかつたと思うのでありますが、私は労働量と生産高と比較して、今まで戰前一でやつておつたものが、三かかつておるという意味において申し上げたのであつて、これをこのまま鉄道にあてはめて、はたして、適切であるかということは、多少の研究の余地があると思うのでありますが、あなたが考えておるいわゆる労働基準法を活用して能率を上げていく、ひいて増收をはかり経費の節減をはかる。こういう観點から言つて、もしあなたが運輸大臣でなくて、日本鉄道会社という会社のかりに社長であるといつた場合に、あなたは戰前二十四万おつた從業員が六十二万おる今日、これで十分であるか、あるいは社長としてこれでしかたがないのだ、労働基準法の建前があるからこの通りつていくというふうにお考えになるか。運輸大臣ということにとらわれずに、そうしたような観点から考えてみたときに、あなたはどういう見解をもたれるか、この点についてお尋ねをいたしたいのであります。
  118. 岡田勢一

    岡田國務大臣 戰前に比較いたしますと、人員は相当に殖えておりますことは事実でございますが、仕事の量が今日におきましては、戰前より相当に殖えております。また旅客を運びます数量、あるいは貨物を運びます数量等も、相当に殖えてまいつております。そこへ労働法規関係などが重複いたしまして、人員が殖えておる割合に仕事の量が少いのではないかというふうな印象を與えておることと存じます。しかし今上林山君が申されましたように、一企業会社の社長として考えた場合、そういう場合と同じように、私たちはこの企業の合理化、能率の向上に努力をしなければならぬ義務と責任があるのでございますから、そういう方向に向つて、やはり御説のように努力をいたしたいと考えております。
  119. 上林山榮吉

    上林委員 仕事の量が殖えたという統計的な御説明については、私も諒とする点もあれば、また批判を加えたいもありますが、この点はそれといたしまして、今自分がもし会社の社長であるとするならば、もつと人員を整理し、もつと能率を上げていく考えである、こういうことを自分も思う、だから大臣としてもそういう方向努力をする。こういう御答弁でありますが、私はその言葉をそのままは受取りませんけれども、この点についてさらに一段の努力を要望するものであります。そこで獨立採算の点において一番費用がかかつておるものは何かといえば、人件費もさることながら、人件費よりも物件費に費用が非常にかかつておる。そこでこの物件費に対して、政府はどういうような節約の方法、あるいは合理的な取引を考えてきておるか。私の聞くところでは、運輸省の古い役人がトンネル会社をつくつておる。そうしてそのトンネル会社の重役と運輸省との間にやみ取引に類するいわゆる取引をやつておる。こういうところに物件費を節約できない大きなるロスがある、こういうふうに考えておるし、そういう情報ではない調査もいたしておりますが、これらに対して運輸大臣として何か思い切つた処理を講ぜられる御決意があるのであるかどうか、この点を質してみたいのであります。
  120. 岡田勢一

    岡田國務大臣 物件費の節約についても努力をいたしますことは、御説の通りであります。大体一番大きな消費物資は石炭でございます。石炭の質、すなわちカロリーの問題、あるいは数量の問題等も嚴密に調査をいたしまして、これが使用に際しましての節約も考えております。なおまた古くからもつております品物も多少ありますので、それも具体的に調査をいたしまして活用するという方法も考えております。また不要資材を今調査をいたしておりますので、その調査がまとまつてまいりましたならば、これを処分する等のことをいたしまして、これまた運賃の値上げ緩和には間に合わないと思いますが、サービスの改善とか、能率の向上とかいう方面に、それらの金が出ましたら使いたいと考えております。  それから第二に御指摘のトンネル会社的なものがあつて、運輸省の官吏との間に不正購入が行われておりはしないかといおお話でございますが、ただいま私の見ますところでは、そういうものはまだ認めるに至つておりません。もしさような不正の事実を発見いてしました場合には、私といたしましては、断平たる処置をとる考えております。
  121. 上林山榮吉

    上林委員 運輸省と関係のある会社、特に運輸省出身の多い役人が経営しておる会社との間に、相当の取引の量があるということは仄聞しておるのでありますが、この運輸省をめぐる外廓会社、運輸省と常に取引をしている外廓会社とでも言うベきこれらの会社の種類、あるいは何を取扱つておるかというような問題について、大臣の知つている範圍内におてい、あるいは政府委員の知つている範圍内におてい、ひとつこの際御答弁を願いたいのであります。
  122. 加賀山之雄

    ○加賀山政府委員 お答えを申し上げます。從來鉄道と取引のありましたいわゆる外廓機関といたしましては、まず貨物に関しまして日本通運株式会社、これは戰爭中の日本通運株式会社法に基いて設定せられたものでございまして、小運送を担当しておる会社であります。次に旅客関係といたしまして、旅客の旅行の案内並びに斡施機関として、日本交通公社がございます。これも從前はジャパン・ツーリスト・ビューローと申しまして、外客の誘致並びにその宣傳、あるいは斡旋に当つてつたのでありますが、戰爭中その性格はやや公的性格をもちまして、交通公社として、現在、先ほど申しましたように、旅客の案内、斡旋を主とし、また鉄道の手助けといたしまして、案内、斡旋を伴うような乘車券の発賣の代行、あるいは特にサービスを伴うような定期券の発行等を行つております。さらにもう一つ財團法人といたしまして、鉄道弘済会なるものがあります。これは寄附行為に基きまして、國有鉄道の職員並びに退職者、公傷者、あるいは殉職者、遺族等に対する福利事業を行つておる社会事業團體でございます。大体の事業といたしましては、駅の賣店等の経営、その他最も適当とするような多少の生産事業もやつております。主たるものは駅の賣店等の経営であります。そういうものから上りまするところの利益によりまして、いわゆる退職者、公傷者等の生活を保護するという建前であります。昨年あたり收益から約四千万円程度は社会事業費として出ております。そのほかに食堂を経営しておりますものに、日本食堂株式会社なるものがありますが、これは純然たる株式会社でありまして、食堂車がございますときは、食堂車の経營に当る。ただいまは駅構内の食堂等の經營、外食券による食堂の経営に当つております。以上のようなものがおもなものでございます。
  123. 上林山榮吉

    上林委員 外廓團体としての説明を承りましてが、これ以外に鉄道職員が必ずしも関係していないけれども、トンネル会社と稱すべき会社によつて全体の物件の取引の約七〇%は公定價格ではなしにいわゆる高い價格によつて取引されておる。その結果物件費が非常に高くなつておる。こういうことを聞いておるのであるが、この物件の授受は公定價格通りに行つておるかどうか、あるいはこれに対するところの監察制度というようなものは、どういうふうに行われておるか、この點について御答弁が願いたい。
  124. 加賀山之雄

    ○加賀山政府委員 お答えいたいます。資材の購入につきましては、実を申しますと、昨年度はわれわれに課せられましたところの貨物輸送の責任を果しますために、どうしても必要なもの、あるいは作業用物資等は、これがなければ作業ができないということからいたしまして、惡いとは知りつつも、やみをやつても買つて、これを從事員に配つた。これは國として配当がない、しかし配当がないということで、われわれは輸送をみすみすやらないで置くわけにはいかないのでありまして、涙を振つてやつたわれでありますが、それが中ごろから、政府の仕事としては、全然やみはいけないというはつきりした禁令が出たことは御承知と思いますが、それ以後におきまして、公定價格以外でいかなる資材をも入手しておる例は絶対にございません。これらに対する監察といたしましては、特に大きいものには、石炭とか車輛等がございますが、これは嚴重な監察制度をもつて購入をいたして、おります。その他の諸雜品につきましても、担当の部局におきまして、この物件檢收の担任官がおりまして、これがはつきりとその品種なり價格なりを調べまして入手をいたしておりますので御心配をいただくような点は毛頭ないと信じておる次第であります。
  125. 上林山榮吉

    上林委員 一時やむを得ずやみ取引をやつたために物件費が嵩んできたが、近來においてはそういう例はなくなつておるという答弁でありますけれども、われわれの見るところでは、役所と因縁のある会社、あるいは鉄道職員が退職して関係しておる会社、これとの間に相当の合理的なやみ取引が行われておる。鉄道関係にトンネル会社があるということは、鉄道職員みずからがこれを発表しておる。こういうような例から考えて世間で言われておるほどのものではないかも知れないが、やりようによつて相当の量の物件費が節約できるのではないかという見解を、私どもはもつのデありますから、單に議会の答弁としてではなしに、もう少し國家お大局から解剖して、ひとつ眞劍なる対策をわれわれは要望するのであります。なおこれについて大臣がもつと具体的な例を示せというような御意見もあるが、そういうような問題について、例を非公式に示す場合もありましようが、いずれにいたしましても、運輸省みずからが物件費が一番多いのであるから、これをどういうふうに合理的に有効に入手して活用するかという点に最も重点を置いて考えられなければ、單にやむを得ずとして三倍半の鉄道運貨の担上をすると言つたからとて、われわれは國民の代表として、これを簡單に承諾するわけにはいかなくなるのであります。殊に貨物を取扱うところの丸通との情実関係、あるいはその他の外廓團体との情実関係、あるいはこれを利用しての官吏みずからのいわゆる不正なる個人取引、不正なる團体取引、そういうようなものが行われるということは、官吏の頽廃である。もつと積極的に綱紀肅正を、鉄道のごとき現業廳が特にやらなければならぬのではないか、こういうふうに考えるのであります。この問題つにいて、さらに追究してみたいのでありますけれども政府努力約束せられたので、この点については、この程度にいたしたいと思います。  次いでお尋ねいたしたいことは、この貨物運搬量中に進駐軍関係の貨物運搬がどの程度の割合を占めておるか。この点についてひとつ答弁を要求したいのであります。
  126. 岡田勢一

    岡田國務大臣 進駐軍関係の貨物の運搬は、全体の数量から見て約一割になつております。
  127. 上林山榮吉

    上林委員 われわれの聞くところでは四割というふうになつております。もつともそれは單に貨物を移動するという場合だけではなしに、貨物を積んだまま貨車を利用しておるというものを計算に入れると四割になるというふうに見るのでありますが、この点に対しては、どういう考えをもつておられるか。
  128. 加賀山之雄

    ○加賀山政府委員 数量は先ほど大臣が申し上げましたごとく、約一割足らずでございますが、それに使いまするところの輸送力、これは実は算定が非常にむずかしゆうございますけれども、たとえば特別のサービスをしなければならないとか、あるいは貨車につきましても、一般の貨物のように駅に着いてすぐこちらで勝手に降してしまうというようなことができないものもある。あるいはあつちこつちと特別に持廻らなければならないものも出てくるというようなことで、われわれ一般に特殊輸送といたまして主管しておるものといたしましては、二割から二割五分程度考えたらいいのではないか、かように考えております。しかしこれは嚴密な算定は非常にむずかしいのでございますので、ここではつきりとした根拠をもつて申し上げられないことは殘念でございますけれども、大体の勘といたしまして、その程度考えております。
  129. 上林山榮吉

    上林委員 それに要する経費は、大体一年間にどれくらいを要しておりますか。
  130. 加賀山之雄

    ○加賀山政府委員 旅客、貨物両方合せまして、大体月三億程度に相なつておりまして、これにつきましてお尋ねがなかつたようでありますが、これに対する收入は、普通の一般貨物のように一々計算はいたしておりませんが、大体の賃率をきめまして、一般貨物とほとんど同じ率で收入もしておる。こういう状況であります。
  131. 上林山榮吉

    上林委員 その取扱量は、われわれの知るところでは、一年間八十億円程度になるが、これは一般の旅客、貨物運賃と同樣に、鉄道の收入になつておる、こういうふうに聞いたのでありますが、その收入というのは一般会計からそれだけ補充をしてもらつておるというかつこうになるのでありますか、その点を質しておきたいのであります。
  132. 加賀山之雄

    ○加賀山政府委員 お考えになつているよりは少うございまして、ほぼ三十六、七億になつております。それは終戰処理費から特別会計に繰入れてもらうというかつこうになります。
  133. 上林山榮吉

    上林委員 その関係はその程度にいたしまして、この際先ほど運輸大臣要請したごとく、行政整理あるいは物件費の節約、あるいはこれの合理的取引そういうようなものが前提になつて経費を節約しなければならない。その観点からの独立採算制でなければ、にわかに三・五倍の値上をするというような、いわゆるやりくり算段の計画では、この運賃の値上に対しては、國民立場から絶対反対をする、こういう表明をいたしたのでありまするが、続いて運輸大臣に、しからばこれを私企業的にあなたが考える場合はどうかということを質したのに対して、これは私企業的に考えばれ、私の質問の要旨の通りであるという御見解のようであつたのであります。そこで私はこの建前から、單に收入をあげるために、つじつまを合せるために、物價の高騰を考えず、國民の負担を考えず、ここににわかに三・五倍というような値上をするということは反対でありまするが、そこで聽きたいことは、運賃値上以外の方法によつて、運輸省において何か收入の方法を考えておるか。單に役人的な官僚的な経營ではなしに、この官僚的な國家的な経営の中に、私企業の長所を取入れて、運賃以外に鉄道の收入、運輸省の收入をあげるという、何か御計画をもつておるかどうか一にも運賃の値上、二にも待遇の改善の場合は運賃の値上というように、運賃のみに方向を向けていくのを原則にしなければならぬのが、これ以外にかりに五十億でも百億でも、別途に收入をあげるという新機軸を何か考え出していないか。この点について質したいのであります。
  134. 岡田勢一

    岡田國務大臣 独立採算のつじつまを合わせることのみを考えて運賃を値上げしてはいけないことは、お説の通りでありまして、私もそう考えております。ところが、今囘三・五倍に運賃の値上げをお願いしなければならぬように至りました理由の一つといたしましては、鉄道運賃は戰時中からも抑えられてまいつておりまして、二十一年の十月に予定されておりました運賃の値上げが、五箇月遅れて昨年の三月にようやく予定から低い比率で決定されたようなことになつております。さらに昨年の七月新物價体系の補正の際におきましても、旅客・貨物ともに当時の経済事情から考えまして、抑制せられてまいつております。現行の鉄道運賃は、今の経費に比較いたしまして、もしも健全経営の線に沿うように採算をとるとすれば、約旅客で二倍半、貨物で七倍程度の値上げをせなければならぬ計算になつてまいるのでありますが、これは今上林山君も御指摘になりましたように、今日の日本の物價の現状、インフレの現状から考えまして、さような高率の値上げは、貨物旅客ともにとうてい許されないわけでございますので、それで殊に貨物の面でぐつと抑制をいたしまして、物價の高騰を最小限度に止めるという見地から、ただいまの率を決定したわけでありますが、このために鉄道の特別会計の赤字は、全部解消しておるわけではございませぬ。建設費勘定などの事務勘定と見られますものを、約二百億円余りは別に仕切りまして、そうしてそれは別途の資金で賄うということです。  次にただいまでも約六十億程度の赤字が出ておるのでございますが、これはただいま上林山君が言われましたように、一つの企業として経営する氣持になりまして、今後におきまして経費の節約、能率の向上等によりまして、実施面においてその赤字をなるべく少くするように努力することを今から考えまして、かたがた今囘のような決定になりましたわけでありまして、これはわれわれとしましても、將來受ける責任は非常に大きいのでありますが、そういう値上のもとにこのむりした採算をもちまして、運賃の値上げを最小限度に止めるべく努力をいたした、ということになつておりますので、その点につきましては御了承をお願いしたいと存じます。
  135. 上林山榮吉

    上林委員 もちろんただいま御説明のように、そういうような経営の面に向つて経費を節約し、同時に能率を上げ、しいて無理のない独立採算制をとつていくという御見解は、当然でなければなりぬのであります。ただ私が質問した趣旨は、そういう当然のことを原則として、新たに運賃以外に收入の途を考えていく——こういうようなことについて、鉄道が何も、國のものであるとか、役人的経営であるとかいうようなことにとらわれる必要はないものである。この観点から、何か増收の途を考えてみたことがあるか、あるいは対策を購じておるか、こういう質問であつたのであります。たとえて言ひますと、列車内の廣告を全國的にやりましても相当の増收になるのであります。ところがこれは私どもが年來運輸当局に注意を與えておる点でありますけれども、今に至るもこれらの問題を解決していない。車内を美化する意味において、あるいはこういう点を有効に活用して増收をはかるという点からいつて、これらのものをまず活用してみたか、あるいはさらに鉄道関係の富くじで、一定のものを発行して、これらからの増收をはかつてみるとか、あるいは場合によつては、特殊の鉄道公債を発行してみるとか、あるいは鉄道ホテルをおもなる駅の附近に建設して、これらからの收入をあげるとか、既設の民間業者にあまり多くの影響を及ぼさないところの方法によつて、鉄道の收入を別途にあげていくということは、これは外國鉄道を御研究になつている鉄道当局としては、当然考えてしかるべき問題であると考えるのであるが、私が今例示した問題ばかりでなく、その他の問題についても、民間業を極端に圧迫しないような方向に向つて新たな増收の途を考えていく、かようなことについて、何らお考えになつていないか。あるいは近くこれを具体化しようという考えは、ほかに何もないか、この点について質してみたいのであります。
  136. 岡田勢一

    岡田國務大臣 鉄道の主たる收入は御承知通りに運賃收入でございますが、今お話のように、その他の別收入といたしまして、広告料はただいまやつております状態で、年額約一千万円の收入を見ております。しかしこれはまだやり方によりましては、もう少し收入の増加がはかられるのではないかと思いますので、今後なお研究いたしたいと存じております。  その他に入場料、あるいは座席券の発賣等が考えられますが、これらにつきましては、相当に人員もまた要することにも相なりまするし、また旅客運賃の大幅値上げをいたしました上に、これらの收入を策しますることは、鉄道利用者に対する負担を一層増大するようなことにもなりまするので、ただいままだやるという結論にはなつておりません。  それから観光関係の今御指摘のホテル、あるいは駅の鉄道ホテルというようなことも考えられますが、ただいまのところいろいろ考えますけれども、今日の経済情勢におきまして、そううまく堅実なる收入が得られるというようなものは、まだ見つけ得ておりませんのでございます。  なお富くじの点につきましては、これはまた別の考えがございますので、この点はもう少し研究をいたしたいと存じておりますが、どうも鉄道は私の考えといたしましては、やはり本來の使命の旅客貨物の輸送の能率をあげてまいりますことと、同時にまた先ほど御指摘になりました物件費及び人件費に対する合理化を行いまして、これが支出を最小限度に止めるという事が、一番大きい経費合理化のことになるのではないか、今日の状態では、それ以外にあまり多くの收入はできないのではなかろうかというふうに考えております。
  137. 上林山榮吉

    上林委員 私も先ほど申し上げたごとく、原則としてのやり方については、鉄道の合理的経営、いわゆる経費を節約して、收入をあげるばかりでなく、能率をあげていく、こういうやり方をやらなければならぬ。それには今のようなやり方では、そうはとうてい実現し得ない。この点についてさらに一段の努力を拂うと同時に、今言つたように、鉄道自体がもつと惱んでほしい。國民とともにもつと惱むならば、安心して車に乘れ、氣持よく旅行ができる。かようなことを考えつつ、一方に收入をあてていくということは、今あなたは廣告の問題をわずか一千万円と申されたが、これは駅をわずか一部利用しているだけである。これらの問題からでもそこに一億や二億の收入をあげることができる。これはあるいは微々たるものであるかもしれませんが、この惱みを惱んでいないじやないか、あるいはまた私は富くじの問題も言つた。あるいは観光ホテルの問題も言つたが、それ以外にわれわれが考えて計算している問題も、まだ二、三あります。こういう問題をほんとうに惱んでいるかどうか、私どもはこの惱みの結果が、行政整理、物件費の節約、あるいは能率の増進ひいて今言つたような別途の收入、こういうものまで考えて、やむを得ずここに三・五倍の値上をしなければならぬ。こういうのであるならば、やむを得ないのであるが、まだ政府のやり方を見ていると、そういうような問題についての断乎たる処置を考えずに、まずとりあえずこれからこの程度にやつていこうという最も安易なる方法をとつておるのであります。この点がわれわれといたしましては、不可解であります。この運賃の大幅の値上に対する反対の立場から、私はこういう質問をしておるのであります。今これは國民とわれわれ議会と、あるいは政府と、おのおの立場も違うし、あるいは考え相当の違いもありましようが、運賃値上反対か賛成かということを、國民投票に問うて、ごらんなさい。みなこれには反対である。この反対を納得させるには、よほどの努力を要しなければならぬし、またその前提條件であるところのすベての問題を解決した上でなければ、國民はこれを了承しないのであります。私は政府の惱みがまだ足らない。こういう立場から、ただいままで運賃値上に関連いたしまして、質問をいたしたのであります。  そこで最後の運輸大臣にお伺いいたしたいのは、私は鹿兒島の出身でありまするが、鹿兒島までの今度の三・五倍の運賃を計算すると、三等で往復三千円、これが二等になりますと、一切を合せまして約八千円近くなる。こういうように考えるのであります。今まで大抵の者が東京に來ることができたが、あるいは長距離の旅行が必要に應じてできたのであるが、事実いかに國家財源の捻出とはいいながらこれでは大抵の者が長距離の旅行ができないという結果になつてくる。私はこの点を考えまして、この鉄道運賃の値上に対しましては、國民感情からばかりではなく、私は実際の動きという点から考えて、反対の理由をここにももつのであります。ただ私は運賃の値上とは切離して、運輸当局で考えていただかなければならぬことは、今日もある程度長距離のものに対しては、キロ数によつて安くはなつておりますけれども、もう少し長距離のものに対し、運賃を安くするような方法を講じてもらわなければならない。これは運賃の値上いかんにかかわらず、この問題を特に考慮してもらいたい。これは希望でありますが、さらに次には、私はあくまでもこの値上に対しては反対であるから、この点をこの際申し上げることはいかがかと考えるのでありますけれども、たとえば学生の通学バスあるいは通勤者の通勤バスというものに対しては、單に値のいかんにかかわらず、政府はもう少し割引について考慮を拂つてもらいたい。これも私は希望であります。この希望を附け加えまして、運賃値上げに対しましては、さらに私どもは党をあげて、これらに嚴格なる批判を加えていきたいと思うのでありますけれども、本日はこの程度質問を打切りたいと考えます。
  138. 川島金次

    川島委員長代理 次は明後二十一日午前十一時から会議を開き、質疑を続行することといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十四分散会