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1948-04-28 第2回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月二十八日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長代理 理事 川島 金次君    理事 苫米地英俊君 理事 稻村 順三君    理事 小島 徹三君       青木 孝義君    淺利 三朗君       東  舜英君    磯崎 貞序君       角田 幸吉君    古賀喜太郎君       島村 一郎君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    本多 市郎君       本間 俊一君    西村 久之君       海野 三朗君    加藤シヅエ君       黒田 寿男君    田中 松月君       中崎  敏君    米窪 滿亮君       押川 定秋君    川崎 秀二君       小坂善太郎君   長野重右ヱ門君       今井  耕君    笹森 順造君       叶   凸君    中村 寅太君       世耕 弘一君    野坂 參三君  出席國務大臣         内閣総理大臣  芦田  均君         大 藏 大 臣 北村徳太郎君         文 部 大 臣 森戸 辰男君         商 工 大 臣 水谷長三郎君         運 輸 大 臣 岡田 勢一君         労 働 大 臣 加藤 勘十君  出席政府委員         外務事務官   大野 勝巳君         大藏政務次官  荒木萬壽夫君         大藏事務官   福田 赳夫君         引揚援護院長官 齊藤 惣一君         農林政務次官  平野善治郎君         運輸政務次官  木下  榮君         労働政務次官  大矢 省三君  委員外出席者         專門調査員   小竹 豊治君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十三年度一般会計暫定予算補正(第二  号)  昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第一  号)     —————————————
  2. 川島金次

    川島委員長代理 これより会議を開きます。  質疑にはいります。庄司一郎君。
  3. 庄司一郎

    庄司(一)委員 大藏大臣にきわめて簡單な一、二の質問をしてみたいと思います。今回御提案になられた、ただいま議題となつておりまする昭和二十三年度の特別会計関係のうち、運輸省関係の御要求の予算の中で、運輸省が数年前より経営されておる農業関係増産隊という名目のもとに、全國数百箇所において開墾開拓農業経営等をなされておるのでございますが、この問題に関しては、現大藏大臣運輸大臣の時代に、この席で私の質問に対し、増産隊鉄道本來の仕事じやないから、努めて速やかにかような農業経営、あるいは開墾開拓等仕事は中止したい旨の御口約があられたのであります。それで念のためにお伺い申し上げたいと思いますが、あの御方針のもとに、昭和二十三年度においては、運輸省開拓事業の一切を中止されたものと考えまするが、その関係はどうなつておりましようか。從いまして、運輸省開墾開拓関係費用、たとえば馬一頭買うのに五万円、住宅一戸に対して十万円與える等々の予算関係費用も、当然打切られておると考えておるのでございますが、この関係について、大藏大臣の御所見を承つておきたいと思います。
  4. 北村徳太郎

    北村國務大臣 庄司委員の御質問にお答え申し上げます。これはこの前の予算委員会で、私が申し上げたと思うのでありますが、当初ああいうことを考え出した動機は、当時食糧事情が非常に惡かつたために、鉄道用地の空地を利用して、食糧増産をやつたということが起りなのですけれども、だんだんそれが度を過ぎたような感がございまして、この前の予算委員会で、庄司委員の御指摘の点を、ただちに調べたのでありますが、確かにこれは行き過ぎである、かように考えましたので、これは早速中止することにいたしまして、ただいま御質問に相なりました予算関係においても、今までやつてきました運輸省の御指摘の点については、予算を計上いたしておりません。この点お答え申し上げておきます。
  5. 庄司一郎

    庄司(一)委員 ただいまの明快な御回答によつて了承いたしました。從いまして、その後に來るべきものは、ただいままで運輸省関係の職員が開墾されておりました耕地、あるいは田なり畑なり牧場等なり、さような関係は、今後どういう跡始末をなさる御方針であるか。あるいは満州等よりの引揚者、特に開墾開拓等体驗のある引揚者連盟等にお渡しになるのであるか、あるいは農地法等に即應されて、各関係町村農地委員会に一應お渡しになるものであるか、この後の善後措置についての御所見を承つておきたいと思います。
  6. 北村徳太郎

    北村國務大臣 大藏省といたしましては、さきに申しましたように、どうも行き過ぎであるというので、予算を削除したのでありますが、將來これはどう始末をつけるかということにつきましては、所管省でありますところの運輸省に大体任しておるのでありますが、ただいま御指摘の点もございますから、私どもよりも注意すべき点は一層注意を與えたい、かように考えておる次第であります。
  7. 福田赳夫

    福田政府委員 補足してお答えいたします。ただいまお尋ね農業用地始末につきましては、まだ具体的な案ができておりませんが、おそらく大部分農地改革の計画に從いまして、農地改革の線に沿うて処分される、かように考えております。なお農地改革の適用のない部分につきましては、それぞれ適当なる方面においてこれを引継ぐというようなことになろうかと、かように考えております。
  8. 庄司一郎

    庄司(一)委員 なお運輸省関係の直接のこの問題に関する担当者に対しても、もしさいわいに機会があれば、お伺い申し上げることの保留をお許しいただきまして、この問題に関する限りは一應打切りたいと思います。  次に大藏大臣にお伺いしたいのは、この前の予算総会等においても問題になつたことでございますが、ただいま大藏省の第一線の出店であるところの各府縣税務署が、農業関係者更正追加所得税割当をなされた。特にパーセンテージから見て、農業関係者に多いのでございますが、まことに今回の更正所得税額の御決定は、個々担税者に対する税額があまりにも高額に過ぎる傾向がありはしないか、その一例を申し上げるならば、これは宮城縣館矢間村という村でございますが、農家戸数が四百六十戸。四百六十戸の農家戸数の各戸に、この更止追加額が賦課されたのでございます。この総金額が三百十七万円、中には俗に言う三反百姓、五反百姓というような、そういう零細農家諸君もある。そこでこの村なんかは、挙村何人よりも煽動をされたのでも何でもないが、自発的に納税対策村民大会を開催して、あるいは納税協力会というようなものをつくり、地方税務当局に協力する建前から、善後策を講じておるのでありますが、田を五反歩、畑を六反五畝、これだけもつておる。この田と畑のみの收入だけで、この村は全然山のない村でございます。多少養蚕はやつておりますが、それが九千六百円、まことにこの過重なる賦課をされておる村民は騒いでおる。この村だけじやございません。これはおそらく全國的にさような傾向になつておると思うのでございますが、このために余儀なく保有米をやみに賣り拂つて、それでもつて納税を拂わなければならない。あるいはぶたを賣り、やぎを賣る等、畜産関係のものを賣つて、これを完納しなければならぬというような状態に相なつております。農民増産意欲が非常に阻害されておる。これはひとりこの東北の一農村だけの問題じやなく、全國的にかような傾向に相なつておると思うのでありますが、この村の村長齊藤という元小学校長上りの方でございますが、この方のおつしやるには、わが館矢間村の田畑、これらの生産額の総額よりも、更正決定のもとに賦課されたる今回の税額の方が多いのである。村全体の田畑生産額よりも、公定で計算すると、今回の税額の方が金高が多いのである。かような状態であるならば、地方税であるところの縣税、あるいはわが村の村民税、あるいは水利組合費國民健康保險組合組合費等々のこの國税以外のものは、ほとんど徴収し得るところの担税力というものが、わが村の農民には皆無になるのである。かようなことを村長は長嘆しておるのでございますが、もとより所得税担税者でございますところの國民個々所得に順應して、それに対して所得税法の上から一定税率をかけていく税金でございます。この税に対する不平不満があつてはなりません。けれどもただいま申し上げたような実態において、まことに過重な、いわゆる苛斂誅求は虎よりも猛しという言葉がございまいすが、村全体の田地田畑生産額よりも多い金高税額が、一時に農村にやつてきた。かような問題については、よほど大藏当局も、現地の税務当局においても、考慮しなければならない大きな政治問題化するおそれがある問題ではないかと考えておるのでございます。よつて今回特にそういう統計はおありになるかどうかわかりませんけれども、全國の農民層に賦課されたところの金額、この金額等が、この予算の歳入の中にどの程度含まれておるか。また農家個々より徴収するこの所得税に関しては、大体割当制度があつて大藏省がある一定金額を、たとえば東北ならば仙台財務局に対して割当をする。その財務局長がまた税務署長を集められて割当をされるというようなうわさが、でまかどうかわかりませんが、とんでおる。ただいま申し上げた実例の館矢間村というのは、大河原税務署管内でございますが、大河原税務署管内農家戸数は二万六千、この二万六千戸の農家戸数に対して、三千六百円の割当が來ておるというようなことが言い傳えられておるのであります、さような一体ほんとうに正しい國民所得が、あるいは農民所得が、どのくらいあるかというような御調査を十分されないで、このくらいの経費國家財政としてなければならぬから、この程度の額をとるというような、天降り的な、一方的な、独断的な割当制度をただいま御実施になつておるものであるかどうか。もしそれははたしてさようなことがありますならば、これは大きな間違いであり、矛盾であり、担税者に対して納得のいかない税の割当に陥るおそれが十二分にあるということを考慮して、このことに関して大臣なり主税局長なりから、ほんとうのところをお伺いしてみたいと思うのであります。
  9. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの庄司委員の御質問は、まことに切実な問題でございまして、このことに関しましては、ただいま農業関係についてのお話がございましたけれどもひとり農業といわず、その他の方面からも、私ども直接いろいろ申し込んでこられるのを承つておる点もあるのであります。それで申すまでもなく、だんだん國家財政が苦しくなつてまいりまして、しかもいわゆる健全財政をもつて一貫しなければならぬという見地から、赤字なしで財政を切り盛りするということは、要するに税と專賣益金というもので賄つていかなければならぬというような観点から、だんだん國民全体の御負担が思くなつてまいりましたことは、これはまことにどうも私どもといたしましては、心苦しい次第でありますけれども、しかし負担が重くなつてきたということは、同時にたださえ税は公正でなければならぬことは、申すまでもないのでありますが、特に嚴正な意味において最も公正でなければななぬ。公正でなければならぬということは、所得実態を十分に把握しなければならぬと思うのであります。そのことにおいて遺漏がないように、かねがねできるだけの注意をいたしておるのでありますけれども、ただいま御指摘のようなことがあるといたしますれば、これはよほど檢討しなければならぬ。かように考えておるのであります。それで具体的なことについては政府委員より御答弁申し上げると思いますけれども、大体今やろうとし、あるいはやりつつあります事柄は、第一には最近においてこれはある機会に申し上げたと考えますけれども納税者の数が非常に殖えてきた。この納税者の数が非常に殖えたにかかわらず、税務機構というものが非常に貧弱でございまして、どうも十分納得のいくまで説明をしたり、あるいは行き届いて所得実態を間違いなく把握するというには、その人員においても、機構においても、非常に弱体である、現在の徴税機構というものは弱体であるということは、率直に認めなければなりません。從つてこれをその数においても、質においても向上させまして、少くとも從來私どものよく聞きますような、税に関しての苦情がなくなるような方向へもつていかなければならぬというので、税務署においては、約百箇所くらい増設をいたしまして、窓口を殖やし、人員においても待遇その他のことを考慮いたしまして、優秀な人を配置いたしまして、十分納得していただけるような方法で、税の徴収をやるという方向に向けるように、ただいま努力をし、また増設等については、すでに実行しつつあるところもある次第でございます。かような点から、漸次改善をいたしまして、ただいま伺いましたことのないようにいたしたいということは、十分心得ておるのでございます。ただ、今のところそれが思うようにいつていない点があるということは、はなはだ遺憾でございますが、お話の点につきましては、深く心に止めまして、今後の徴税等のことに、十分御指摘のことを改善していきたいと考えておる次第でございます。  これからあとの方にお話がございました割当徴税するのではないかというようなお話でございましたが、これはさようなはなつておらぬのでございます。ただ私ども一應予算を立てます場合に、税收がいくらいくら、そのうち地区的にわけますというと、およそどこでどれくらいかという見当をつけまして、予算を立てていかなければなりませんので、財務局等には、一應の努力目標と申しますか、大体この見当のものを予想しておるという努力目標は示しておりますけれども、これは決していわゆる割当ではないのでありまして、これだけをどうしてもとれとかいうような指図は全然いたしておらないのでございます。その点にも多少行違いがあつたかと思うのでございますが、お話割当制でとつておるかというお尋ねに対しては、さようにはなつておりません。これは一應の予算を立てる場合の努力目標というものを、私どもの内輪で立てておる。そういうものを内示いたしまして、この線がお前さんたちの努力を要する線だとていうことを言つておることは、あるのでございますけれども、その点に食違いがあつたかと存じます。なお具体的にお話のございました土地等につきまして、その御指摘のありました土地において、どういう状態になつておるかということにつきましては、なお主税局等十分調査をいたしまして、もしお話のような総生産額と同じような税金をとるということであれば、これは明らかに行き過ぎであると存じます。その点については、十分調査をいたしたいと存じておる次第でございます。
  10. 庄司一郎

    庄司(一)委員 もう一遍お伺い申し上げたいのは、農民政府の要請によつて、米の供出をされておるのでございますが、この場合において、米價が一千七百円。あるいは梱包代が五十円、それに加えて完納に対する奨励金意味における五十円、総計一千八百円ということになるのでございますが、ただいま申し上げた今回の農村に対する更生追加所得税が、農村の各農民供出をした米代、これを全部納税に振り向けても足らないという農村が、かなり東北地方にございます。そこで農民は米を供出された。その代金は町村農業会等を通して農民に交付することはむろんなつておるが、農業会貯金預金を獎励する意味において、直接現金を渡さないで、貯金帳に振りかえておる。それを今度は右から左に納税にほとんど全額納入しなければならぬ。かような状態に相なつておる。この事実を指摘したい。米を百パーセント納めて、それが全部納税にかえられるというようなわけで、今回の更正追加所得税に、農民が怨嗟の声を放つておるような状態であります。その努力目標という御名目は、たいへん美名でございまするが、結局金額の上から言えば、一種の割当制に陷るおそれがありますので、これはでき得る限り、ほんとうの純所得基準として、それに扶養控除、あるいは必要経費控除、かようなものを勘案されて、農民増産意欲を阻害せざるよう、万全の御考慮をお願い申し上げたいと思うのであります。  これに関して最後に一点だけお伺いしたいのは、農民がお米を百パーセント以上供出した場合に、石五十円なりを獎励金意味において出されておる。それが所得税対象と相なつておるようなただいまの地方税制のやり方が、非常に農民供出意欲を阻害しておるのでございますが、そういう獎励金賞與金の性質のものまで、税の対象としなければならないものでありましようか。願わくは、そういう獎励金賞與金は、税の対象から除外してほしいというような信念の上から、このことをお伺い申し上げておる次第であります。
  11. 北村徳太郎

    北村國務大臣 きわめてごもつともな御質問でございまして、御注意の点は十分に取入れまして、今後御注意の点を生かすようにいたしたいと思います。  それから獎励金について課税するのはどうかというお話でございましたが、現在の税法のきめ方から申しますと、所得のある所は所得を追つかけていつて税の対象にするというわけでございますので、今の税の考え方では、獎励金所得であるというような考えをいたしまして、課税をいたしておるのであります。これらの点につきましては、しかしいろいろな意味から日本食糧政策とか、その他いろいろな観点から考慮する余地があるかと思いますので、税制をかえます場合に、ひとつ研究対象にいたしたい、かように思います。
  12. 庄司一郎

    庄司(一)委員 私のお伺いは大体これで終りでございまするが、ただいまの御答弁によつて、ぜひ農民に対する獎励金賞與金意味における金額に対する課税は、今回税制改正委員会等をおもちになつておるようでございまするが、こういう際にひとつ改正をお願い申し上げたい。農民諸君調査によりますと、獎励金が石五十円あるために、たとえば三十石供出をした者にその割合の獎励金がはいつてくる。その獎励金の合計が米代に加算されるために税率が飛び上る。かえつて獎励金を頂戴しない方が、結局御決定をいただいて告示されるところの納税額が格安になる。こういう奇妙なデリケートな関係に相なるのでございます。そこはひとつ政府の御手腕によつて、ここをうまく御考慮願いまして、かようなことのないように、御改正を願いたいというような希望を申し上げておきます。
  13. 川島金次

  14. 島村一郎

    島村委員 私は簡單な問題について、一つ伺つてみたいと思います。大藏証券発行、これがいろいろな面に及ぼす影響が大分大きいのではないかという氣がいたします。なるほどこれは大体において、その年度々々に決済はしておるに違いないと思います。大体これは税制改革などにも、あるいは納期の関係等影響があるのではないか。二十三年度においてどのくらいのものを発行していこうと考えておられるのか。これを伺つてみたいと思います。それと同時に、ここにお願い申し上げておきたいのは、二十二年度において発行されましたものをどう処理されるか。こういうものを参考にお伺いしてみたいと思います。  それから特別会計におきましても、いわゆる融通証券というような名目のもとに、やはり同じようなものが出されると思いまするが、これについてもお伺いできればいたしたい。もし運輸大臣所管でありますれば、これは後回しにしても結構なのであります。
  15. 北村徳太郎

    北村國務大臣 島村委員の御質問にお答え申し上げます。大藏省証券発行は、これはやはり健全財政ほんとうの精神からいけば、そういうものの発行も避けたいという考え方をしておりますけれども、これはいわゆる健全財政主義均衡財政から申しまして、税收入政府支出との時間的ずれというような場合に、どうしてもこういう方法によらなければならぬという、万やむを得ないときに発行いたしておるのでありまして、その幅をせばめ、その期間を短くすることは、これはもう当然考えなければならないところでございますから、その点については十分注意をいたしたいと存じておりますけれども、今のはいるものと出るものとの時間的のずれから、やむを得ざる調節の機関として、そういうものを利用しておるという点、御了承願いたいと思います。  なお二十三年度の本予算において、大藏省証券をどれくらい出すかというお尋ねであつたと思つておりますが、これは本予算全体を今いろいろやつておりまして、はなはだ恐縮でありますけれども、まだこれは出すところまでなつておりません。このことは物價の問題に関連いたしまして、たとえば運賃等をどうするかというような問題もございまするし、政府財政において物價をどれだけ負担するか、あるいは物價にどれだけ政府財政負担を吸收させるという微妙な問題をもつておりまして、ただいま相当に研究は進めておりますけれども、そのことに関係をもちますので、ただいまここで申し上げることはちよつとできにくいのでございまして、しばらくお待ちを願いたい。かように思つております。
  16. 川島金次

    川島委員長代理 この際労働大臣が見えられておりますので、労働大臣に対する質問希望者がございますから、その質問を許します。世耕弘一君。
  17. 世耕弘一

    ○世耕委員 簡單に二、三点お尋ねいたしたいと思いますが、労働賃金インフレとの関係を、どういうふうに労働大臣考えておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  18. 加藤勘十

    加藤國務大臣 お答えいたします。一般的に見れば、インフレ労働賃金との関係は、きわめてデリケートな関係にありまして、いずれが先、いずれがあとと言いにくい点があると思います。しかしながら、一般論としましては、物價の高騰、すなわちインフレが先でありまして、インフレのもとにおいて生活ができなくなる。賃金の引上げを要求する。さらに引上げられた賃金が次の物價を規定するというように、もしこのままの状態で続いていきますれば、賃金インフレ関係は、とめどなく進展していくおそれがあるのでございます。從つて物價安定点を求めるなり、賃金物價との均衡をいかにして求めるか、この点が主要なる点であると思いまして、そういう点から本來でありますならば、日本の現状におきましては、法律の規定すなわち労働基準法の定むるところによりますれば、賃金委員会というものが構成されまして、その賃金委員会において最低賃金の問題についても論議することができ、これを規定することができるように定められておりまするけれども、今日のごとく物價のきわめて不安定な状態にありますとき、殊に賃金裏づけとなる物資が乏しい現段階におきましては、最低賃金を定めるということは、結局名目賃金を定めるということにほかならないのでありまして、名目賃金をもつてしては、眞に生活の窮乏を防止するということは不可能であります。どうしても賃金にはその裏づけとなる物資が伴わなければならぬことでありますので、私の考えとしましては、賃金の今日のような状態でありまするから、最低限の生活を何らかの形において保障する程度賃金水準というものが維持されなければならぬとは思いまするが、同時にいかにして物の生産に力を入れることができるか、物の生産とそれに伴う收入の増加によつて生活の安定を賃金という形式の上において裏づけるばかりでなく、物の面からも裏づけるという点から見まして、ぜひとも生産増強と、それから賃金増額との均衡が保たれるようにする。言葉をかえて申しますれば、最小限度生活を維持するに足る水準は維持されなければなりませんが、それ以上のものは、必然的に能率給を加味されたものでなければならぬ。そうすることによつてインフレを阻止する。もちろんインフレは主として財政面の問題ではありまするけれども日本の今日の経済状況は、御承知の通り物の乏しい点に主要な原因があるのでありますから、いきおい物の生産を高める。そうして物の生産を高めることによつて勤労者收入が増加する。賃金の形態におきましても、從つて生活給と能率給とが加味されたものが一本の体系になることが、今日の段階においてはぜひとも必要な形態ではないか、このように私は考えております。
  19. 世耕弘一

    ○世耕委員 私のお尋ねいたいましたのは、労働賃金インフレ関係がどういう関係にあるかということの労働大臣としての御見解を承つたつもりであります。この点いくぶん御答弁が食い違いになつておるのでないかと思いますので、なお御説明願いたいと思います。  なお私はこの機会にその御答弁を願う前提としてお尋ねいたしておきたいことは、賃金闘爭が今日行われておるが、賃金闘爭をやればやるだけ物資の不足を來し、同時に物價騰貴を描くのではないか、もし生活の安定を労働者諸君が要望するならば、まず第一に着手をなさるのは生産闘爭ではないか、この生産闘爭が徹低した場合に、おのずから生活の安定を得られ、賃金の安定も得られる見透しもつくのではないか、私はかように考えておるのであります。この点に対して労働大臣はどういう指導方針をおもちになるかというのがねらいでお尋ねしたようなわけであります。
  20. 加藤勘十

    加藤國務大臣 先ほどのインフレ賃金との関係についてのお尋ねは、一口に申しますれば、先ほど申しますように、形式だけの賃金を求めていくならば、限りなく二線並行的に進んで、いずこにも均衡を求めることができないであろう。從つて少しく話が詳しくなつたのでありまするけれども物價賃金との均衡を求めるという必要のために、財政面のことはしばらくおいて、生産面において生産が増強されるということが、すなわち勤労者の生活を安定せしむるものである。こういうことの説明として申し上げたのであります。要するにただいまの世耕委員の御質問の焦点は、賃金獲得闘爭だけをやつておつたのでは、いつまで経つて生活の安定は得られないのじやないか、物價を引上げさせる以外に何ものもないではないか、從つて賃金値上闘爭のかわりに生産闘爭がなさるべきであると思うがどうか、こういう点にあつたように伺いましたが、この点は私は今日われわれの前に示されたる経済條件のもとにおきまして、労働者をして安んじて生産に邁進せしむる、別な言葉で申せば、いかに労働者の生産意欲が遑しく燃え上がろうとしましても、設備の点なり、あるいは資材の点なり、資金の点なり、そうした点において、もし欠くるところあるならば、生産意欲だけをもつてしても、いかんともすることができないのであります。從つて労働者の生産意欲が高まり、同時に設備の完備、資材の充足、資金の円滑なる融資関係、こういうものが相伴つて、初めて今後生産は増強されていくと考えるのであります。その場合に労働者をして生産意欲を増加、と申しますよりも、生産意欲を燃え立たしむるような條件をつくり出すことが必要である。ここに現在労働者諸君によつて闘われつつある賃金闘爭の意義もあるし、同時にまた他の面からする労働者の生活に心理的な不安を與えないということ、労働者諸君に心理的な安心感があり、さらに経済的に最小限のがまんし得られる限度の保障があつて初めて生産意欲は燃え立つてくる、こういうことになるのであります。現実の問題として、今日までの日本の労働者の賃金状態は、敗戰後の経済諸條件の必然的な現象でありまするが、物價の高騰と賃金收入とは伴つていないのであります。どうしても先に物價の方が高まつてまいりまして、賃金は遅れているという実情であります。こういう実情のもとに苦しい生活、俗にいわゆるたけのこ生活をしているようなことでは、いかに生産意欲を燃え立たせようとしてもそれは不可能なのであります。今までこの二年間の間は生産意欲を燃え立たせようとしても、今申したようにたけのこ生活の現状では不可能であつたが、しかしながら、いつまでもこうした勤労者の生活においてたけのこ生活が続けていかれるかということになれば、これまたおのずから限度がありまして、國の経済がほとんど行き詰り状態になつていると同様に、個人経済もまた、殊に勤労者の生活において行き詰り状態になつていると思うのであります。こういう段階でありますから、いきおい賃金闘率が激しくならざるを得ない。それならば無限にそういう名目上の賃金値上が許されるかと申しまするならば、それは許されないことでありまするから、從つてわれわれはこの賃金裏づけとなる物資、すなわち公定物價による物の配給を確実に確保することを第一に考えられなければならぬのであります。もしマル公物資の配給が完全に定められただけの量確保されることになりますれば、実質賃金はそれだけ高まることになるのでありまして、今日の賃金計算の中には、かなり多くのやみ物價が加算されておるわけであります。從つてやみ物價生活の大きな部分を占めないで、マル公價格が非常に多くの部分を占めるということになりますれば、それだけ生活の安定が得られるわけであります。そういうふうに考えてまいりますと、どこかで、賃金の形式、賃金の面においてか、マル公價格による物資配給の確保の面においてか、どちらかが確保されなければ、労働者の生活の安定は得られないのであります。しかしながら、経済の現実は、すべてのものをマル公配給によつて確保するということは非常な困難な状態にあることは御承知の通りであります。いかに努力しても、ある程度のやみの物資による生活が補給されておることは御承知の通りであります。從てこそこに私は賃金要求の上においても、やみ物資からの計算による生活を維持するに足る最小のものは要求せられる。こういうことになるのでありますから、われわれとしましては、一面においてはやみ物資を極力排撃排除すること、マル公物資の配給はできるだけ完全に近く確保すること、同時に賃金形態においても、そういうことによつて実質賃金の引上にこそ努力すべきである。こうして私は初めて労働者の最小の生活が保障せられるようになる。あるいはがまんしてもろうことができるようになる。その上に初めて生産意欲が燃え立つのでありますから、勤労者の生産意欲と、先ほで申します通り、設備と資材と資金と、これらのものと相関連して生産は増強されていくというように考えております。
  21. 世耕弘一

    ○世耕委員 私がお尋ねいたしましたのは、結局インフレ労働賃金とがどういう関係におかれておるかということをお聽きしたいのが主で、最初にお尋ねいたしたのであります。私はこの機会労働大臣と私とは論戰するつもりでもなければ、あげ足をとるつもりでもないのであります。ただこの差迫つた日本の労働問題を、加藤労働大臣は玄人であるから、それに対してどういう指導方針をもつて、この生産面にあたらしめるか、あるいは賃金はこういう方針をもつて労働者の生活を確保していくのだという御信念であるか、これを実は伺いたくお尋ねしたようなわけであります。この点はなおもう一度御説明を願いたいと思います。  なお附加えてお尋ね申したいことは、私は今日労働賃金をきめるということが開違つておるのではないか、今日きめたことは來月にいつてはたして労働者の最低生活を保障できるか、それほど変動の多い時代なのであります。ちようど大きな堤が片一方今崩れかかつておる。そこを大急ぎで砂防工事をやつておる、その間に向うの方も壞われてきた賢明なる土木業者は、この水位はどこまで上るか。どの程度補強すればこの堤が食い止められるかという先のところまで見透して手を打たなければ、労保者の最低生活の保障は得られないのではないか。その見透しを実は労働大臣お尋ねしたいのが、私の根本であります。殊にたとえごとで申し上げて失礼でありますが、われわれは卵を欲しておる。卵を得るのにはまず鶏に餌をやらなければならない。鶏に満足に餌をやらないでおいて、鶏を絞めて卵を生み出させるような無理な行き方では、ほんとうの労働者を救う意味にならないのじやないか。だから私は先ほど申しましたように、賃金闘爭もさることながら、むしろ生産闘爭に主力を注ぐベきではないかということをお尋ねしたような次第であります。むろん生産闘爭については、設備、資金その他の関係がございましよう。もし設備並びに資金関係があるとするなれば、あなたはその御地位をもつて政府部内において、これが生産の向上するように、御努力つてしかるベきだと、かように考えるのであります。また労働者の賃金が最低生活を保持することができないとするなれば、二月なり三月なり、あるいは半年先を見て、労働の賃金基準というものを思いきつて確立していかなければ、依然としていたちごつこに終るのではないか。この根本的ないわゆる労働態勢についてお尋ねいたしたいのであります。これは簡單に御所信だけ伺えればいいのであります。  なお次にこの機会お尋ねいたしたいことは、今日の労働爭議は、ややもすれば政治闘爭に流れるような傾向が見られるのであります。なければ結構でありますが、もしさようなことがあるとするなれば、ストライキを取締る上においても、大きなお考えをおもち願わなければならぬと思うのであります。ついてはけさの新聞にも出ておりましたが、われわれはこの傾向を見て、各所に意見を発表しておいたのでありますが、労働爭議中は俸給並びに賃金は拂わぬということは、これは司令部の意向を聽くまでもなく、政府が腹をきめてもらうベきであつたと私は考える。なぜそういうことが言えるかというと、労働者は労働爭議によつて賃金が値上げされ、しかも労働爭議中の賃金も支拂われるということになれば、できるだけ労働爭議を起した方がいいという結論が出てくるのであります。ところがこの労働爭議の結果によつて損をする者は大衆であります。その次に損をするものは企業家であります。そうすると労働爭議によつて益する者がすなわち労働者のみであるという、ここに社会的な正義が成り立たぬわけであります。だから労働爭議をやり、ストライキをやる場合には、みな損をするのだという建前から労働爭議中の賃金は支拂わずという方針が確立されてしかるベきだと思うが、この点について労働大臣はどういうお考えをおもちになつておるか、お尋ねいたしたいと思うのであります。
  22. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまのお尋ねの最初の賃金の点につきましては、先ほど申しましたる通り、私は現在の日本の段階においては、生活給と能率給が合わせられたものが、一つの体系として確立されることが必要であるというように考えております。  第二の賃金を今日のような物價変動期において、きようきめてもあしたすぐに変らなければならぬような状態ではならぬから、三月なり半年なり先を見越して賃金をきめたらどうだという御質問でありましたが、私はこれは非常な危險が伴うと思います。何とならば物價が三月先にどれだけ上るか、半年先にどれだけ上るかということは、まだわからないことでありまして、それを推定してそのときの物價を標準として今日賃金を定めるということになりますれば、その間賃金と物の実態とが非常なギヤツプを生ずるわけであります。今日のような物價変動の激しいときに、一應御意見のようなことも考えられはしますけれども、現実の問題として、たとえば四月に賃金をきめます場合に、七月、八月ころになつて物價が何割高くなるとか、何倍高くなるから、だからそれを標準として、今日の物價よりははるかにすぐれた賃金を定める。こういうことになると思いますが、そうすると実際賃金はきめられたけれども、それの物の裏づけがない。こういうことになりまして、結局名目賃金だけが上つて、それはかえつて物價を高騰せしむる原因となり、それこそ世耕君のおそれられる物價高騰の原因となるだけでありまして、私はそういう点から見まして、やはり賃金は非常に物價が変動しておつて從つてきようきめた賃金も明日それを維持することができぬという状態にありましても、それはやはり今日は今日、さらに上つたときには上つたときに対應するような賃金が定められることが、実際問題としてはそういう方法がとられなければならぬ、このように考えております。  それから今日の労働爭議は、ややもすれば政治爭議化すおそれがあるのではないかとの御意向のようでありましたが、多くの労働者の中にそれぞれ政治的意図をもつた人々がある。これはあるにきまつておるわけであります。ただその爭議が全体としてそういう政治的意図によつて指導されるか、あるいはそういう爭議の中に、多くの人々の中にそういう政治的意図をもつた人があるということの事実だけで、その爭議がまるでそういう人々の指導のもとに行われたものであると見るということは、おのずから違つておるのでありまして、この点私は今日の労働爭議、殊に使用者が政府である、國家であるというような場合に、公務奉仕者である國家の官公吏の諸君が爭議行為をとられるということになると、いきおい相手が國家を代表する政府であるという関係から、政治闘爭のごとくに見る場合が多いと思うのであります。しかしながら、それがあくまでも賃金なりその他労働條件に関する要求である限りにおきましては、それはどこまでも経済闘爭でありまして、経済闘爭を利用してどうこうというか、かりに一部の人々にそういう意図があるにしましても、それが爭議の指導力とならない限りにおいては、それは政治闘爭とは言われない、かように考えております。  それから最後の爭議中の賃金、給與を支拂わないという問題につきまして、これは世界どこの國でもその通りでありまして、政府としても当然そういう態度はきまつておるわけであります。ただ今日の賃金闘爭というものが、実際に食えないという生活の窮乏からきたという特殊な條件にあるということに、一應考慮する余地があるのではないか。このように私としては考えておりますけれども政府としては爭議中の賃金給與は支拂わないということが、前もつてはつきりきまつておるわけであります。
  23. 世耕弘一

    ○世耕委員 大体了承いたしました。  次にお尋ねいたしたいことは、賃金が常に不安定な状態におかれている。特に政府企業において賃金は月後れの形がある。結局実際生活はぐんぐん進んでいくにもかかわらず、政府のきめる賃金は、常にそれに並行していかないというのが、今日の賃金闘爭の起る原因だと思うのであります。その意味から、先を見透して、賃金をある程度まで安定させるのでなければ、ほんとうの最低生活の安定ということが、実際的に出てこないのではないかということが、私のねらいでお尋ねしたようなわけであります。そこでさらにお尋ねいたしますが、さような不安定な賃金並びに生活状態におかれている場合に、新たな労働者の生活基準をここにおいて考えていかなくちやならぬと思うが、この際賃金を設定する場合において、能率給を主とするか、あるいは從とするかということが、新しい題材ではないかと思うのであります。強いて言えば、請負制度にするというようなことも考えられないことではないのであります。その点労働大臣はどういうお考えをもつているか、さらにこれは反駁するわけでも何でもありませんが、大臣のお答えの中の言葉をとつて判断してみますると、先の見込がつかぬから云々というようなことを言つてお話があつたのでありますが、政府予算を組むのには、少くとも一年の予算を組むのであります。それには財界の動き、並びに企業界の動向、日本の経済の動きと海外の実情等も勘案して予算というものは立てられるはずであります。その見地から、数箇月後の見透しにおいて賃金の率を立案するということは、私は不可能じやないと思うのであります。もしそれもならないということになれば、やがて出さるべき本予算というものは、毎月補正予算を出さなければ結論に到達しないのであります。こういうふうに私は考えておるのであります。要するに労働爭議の起るのをまつて片づける、賃金闘爭が社会問題となつて現われてきたときに、初めて政府が乘出してきて、その労働爭議を片づけるという行き方は、決して親切ではないと私は思うのであります。できれば労働者の生活苦を先にみずから体驗して、先手を打つて労働爭議の起らない前に処置をなさるということが、むしろ親切ではないか、こういうことを私は考えるのです。だから三箇月、半年後を勘案して立案なさるのが必要ではないか。殊に労働問題については、権威者である加藤労働大臣のお考えとしては、相いてははつきりした見透しがなければならぬ、かように考えお尋ねする次第であつて、強いて御返答を迫るわけではございません。
  24. 加藤勘十

    加藤國務大臣 最初の能率給を主にするか、生活給を主にするかという点の御質問でありましたが、この点は全部のものを能率給で規定することは御承知の通り不可能でありまして、ある職種によりましては、どうしても常傭でなければならない部分がたくさんあります。そういう部分には能率給の適用はしようがない。從つて全体を通じてみました場合に、かりに全部を能率給で、いわゆる出來高拂いで拂うような賃金の立てられる生産に從事している事にしましても、今日のように物資が非常に乏しいというときにおきましては、いかに能率を上げようといたしましても、必要とするだけの材料が工場にない。設備もまたそれを十分に動かすだけのものがないのです。これは御承知の通りであります。少しく工場をごらんになりますれば、いかに労働者が能率給すなわち出來高拂いによつて多くの賃金收入を得ようとして力を入れようといたしましても、ちよつとやるとすぐに材料が途絶えてしまう、あるいは動力においてその自分の力を加えるだけのものが補給されないというように、動力の欠如、材料の欠如、設備の不完全ということによりまして、能率給てもやつていけない要素が今日たくさん存在しておるのであります。こういう事実から、これらの純粹に出來高拂いができるような生産に從事しておる労働者諸君といえども、なおかつそのようにその仕事の出來高に應じて支拂を受けるだけの賃金を受けることができぬ條件がたくさん整つております。しかも一方物價はほとんど天井知らずに上つておる。こういうようま状態でありますから、最小限の生活を保障するというまでいかないにしても、がまんを求める程度水準というものが支拂われなければならぬと思う。その上に立つてそれ以上の要求増額は、これは能率によつて支拂われていく、こういうようにやはりこれは二つのものが一つに合わされて賃金体系が定められることが、今日の日本の実情に最もふさわしい、こう思うのであります。  それからその次の御質問でありました、賃金について先を見越しての計算を立てるということについては、先ほど申し上げましたように、私はそのことには非常に危險を感ずるものであります。一年を見透して予算の編成がされるのでありますけれども予算基準となる物價なり、賃金なりというものが、その予算編成の時期における当時の状況において組まれるのでありまして、これがどのように変動するかわからない不安定状態を見込んで、今はこうだが、今度七月になればこうだとか、あるいは十月になればこうだということを見込んで予算は編成されるのでなく、今日の状況において予算編成の基礎となるのでありまして、從つてもし途中において予算執行が、非常に物價の値上り等において不可能になつたときには、また補正予算が組まれるということはありますけれども、最初からそういうように段階をつけて、このときには物價がとれだけになる、このときには賃金がどれだけになるというようなことでは、それこそかえつて予算は編成できないのじやないか、こう私は考えておりますので、從つて先ほどお話がありましたような、先を見越しての賃金を定めるということは非常に困難である、というよりも、むしろ私は物價との関係においては危險をさえ感ずるものであります。  大体今申し上げましたことによつて、御質問の御趣旨には副つたつもりでおりますが、なお不足がありますれば後から追加してもよろしゆうございます。
  25. 世耕弘一

    ○世耕委員 おひるの時間にもなるようですから、結論だけお聽きいたします。労働者の最低賃金確保の観点から、私は先の見透しを一應つけておいていただかなければかわいそうじやないかという建前で、今の予算関係で論究しておつたわけであります。現在の官公労働者の生活状況を見ましても、賃金状況を見ましても、実際生活賃金との間は非常に離れている。現在の賃金が実際生活をば切り盛りできぬような状況に置かれているのであります。これを実際生活にあてはまるような線までもつてつてやらなければ、ほんとう生産意欲が出てこないではないか。この点について労働大臣はどういうようにお考えになるのかというのが私の質問で、たまたま予算にその問題が出ましたから、いささか絡んで申し述べた次第でありますが、今の御説明で労働大臣はどう考えているかというおよその見当がわかりましたから、この点は深くお尋ねしたくないと思うのであります。  ただ最後に一点お尋ねいたしたいことは、労働賃金が上れば物價が上る。特に官公労働者の労働賃金の値上りは、民間事業家に右へ倣へという前例をつくるものであるという非常に重大な関係があることとわれわれは承知しておかねばならぬ。しかしながら、物價が上ることを必ずしも國民は驚いていない。驚くところ苦しむところはどこにあるかというと、物價のでこぼこなんである、賃金のでこぼこなんである。生活のでこぼこなんである。そのでこぼこがなくなつて、一樣に滑らかな物價基準というものが國民の間に滲透されれば、物價それ自体、インフレそれ自体は、ある意味においてそう憂える問題ではなかろうと思うのであります。そのでこぼこに対する処置として、賃金問題が今日の日本の経済界に大きな波紋を描くゆえに、最後的の問題として賃金をいじくることは結局物價を値上げせしめ、物價の値上りはさらにやみ値を助長せしめて、そこに生産を減退せしめ、生産の減退はやがて労働者の生活を脅かす。この循環関係に矛盾がないとするなれば、むしろこの際賃金の値上をするよりも、むしろ生産闘爭に労働者を導いていくべきではないか。同時に政府といたしましては、この行き方を全般的に行つて、むしろ労働賃金を上げることを抑えて、物價の値を下げる方に手を打つべきではないか。かように私は考えて、労働大臣の御所信を承つたようなわけであります。この関係については、いずれあと大藏大臣にも御所見を伺いたいと思うのでありますが、ねらいはそこにあつたわけであります。今日のインフレをどこで食い止めるか、インフレの原因はどこにあると思うのか。もし生産という全面的関係を労働者が握つておるとするなれば、それは労働者の自覚に待たなくてはならぬ。ある意味において労働者の犠牲に待たなくちやならぬ。もし生産面においてそれを企業家が握つておる、資本家が握つておるとするならば、資本家の犠牲においてこの惡循環を食い止めていかなくてはならぬ。それが企業家のたえられないところの大きな負担であるとするならば、それは國民が分担していかなければならぬ。今日のインフレを食い止める根本は、いかなる階級が多くの犠牲を拂うかということにおかなくちやならぬ。犠牲を拂わないで、今日の日本インフレは食い止められないだろうということが考えられるのであります。この意味において、特に労働賃金というもとは重要な役目をもつ、生産の先端に立つておる労働者諸君努力、並びにその賃金面において大きな働きをいたしますものだから、特にこの点を労働大臣として、どんな御見解があるか、殊に生産闘爭、賃金闘爭に対して、労働大臣はどういうような御方針をもつて、今後労働者を指導しようというお考えであるかということを、なお最後に簡單でよろしゆうございますから、お答えを願いたいのであります。もちろん生産面において、設備資材等の関系、さらに食糧等の関係で、生産が思うようにいかぬということも、今日の國情から見てごもつともだと思います。しかしながら、それだけで生産はできぬのだといつて怠業状態は許さるべきことではない。その茨の道を乘り越えていかなくてはならぬ。そこに企業者、労働者の熱意が必要になつて來ると思います。労働大臣のこの苦難の道に至つて、あなたの勇敢なしかも熱意ある指導が刻下のインフレ対策について、大きな役割を演ずるであろうと、かように考え、殊に労働問題に深い体験と知識をもたれておる大臣に対して、労働対策に対する御方針を伺いたいと思つて、実はお尋ねしたような次第であります。最後の生産闘爭に対するこの時局を克服する労働運動のあり方ということを、結論だけを伺つておけば結構だと思います。
  26. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまの世耕君の御質問は、要点が生産闘爭に対して、労働大臣としてどのように指導していく方針か、この点にあつたようであります。御意見は私率直に虚心にお伺いいたしておきますが、その点に対する私の考え方をお答え申し上げますれば、第一にこれは今世耕君のお言葉の中にもありましたように、資本家なりあるいは労働者なり、生産を実際に掌つておる両者が、相互に信頼と協力の上に立たなければ、一方だけがいかに熱意をこめましても、これは不可能だと思います。そういう点におきまして、この生産を高めるために、経営者側と労働者側とが、相互の信頼と尊重の上に立ち、協力がその上に結ばれるということは、これはぜひともなされなければならぬことと信じます。労働省としては、労働者のこうした運動は、まつたくその自主的な精神から生れてくるものでなければならぬ。これは労働行政の面から、政府が指導したり、あるいは援助したりするということでなく、政府としましては、いかにしたならば、労働者の中からそういう熱意が生れてくるかということを促進せしむるように努むべきである。あくまでもわき役を演ずるのが政府のとるべき態度である。このように私は信じております。從つて労働組合の運動の上におきましても、なるほど一部の行き過ぎがあるということも、多くの人から言われております。もし行き過ぎがあるとするならば、行き過ぎの由つて來つた原因を見ますれば、私は戰爭まで極端に抑えつけられてきたこの労働者の氣持が、戰後にまつたく自由に組織ができ、労働組合として完全な運動をなし得る自由を得たということからきた、一時的な反撥現象であると見るのであります。從つて、二年有余を経ました今日においては、順次に労働組合運動それ自身の上にも、一個の自制が現われてきておると思うのであります。この労働組合の運動における労働者諸君の自制が、十分に達せられまするならば、労働組合の運動は、方向を誤ることなく、自主的にもつていけるものと信じております。政府として、労働対策の一つとしましては、今言うようなこうした労働者の中におのずから涌き上つてくる反省への力に、どうして協力することができるか。今申しまするように、生産意欲を高めるのも、その反省の上に立つて、労働組合本來の任務が果せられていく場合に、それをいかに側面から助長していくか、こういう方針でいきたいと思います。政府が労働者を指導するというのではなく、側面から助長していきたい、こういうように考えております。
  27. 鈴木正文

    ○鈴木(正)委員 労働大臣に一点だけ関連の事項をお尋ねいたします。先ほどの質疑と答弁で、爭議中の給料、そういつたものは拂わない、政府方針としては、事前にそう決定しているし、將來もそうである。これは了承いたしました。それと並んで、もう一つの点、いわゆる専從職員の給料、そういつたものは、どちらが拂うべきかという問題であります。本日の新聞にも、一應のアメリカ側の意向として傳えられておるのでありまするが、これはアメリカ側の意向がどうであるかという問題は別個にいたしまして、現在の発達した日本の労働組合の大きさ、実力というものから考えますると、この問題はすでに取り上げて、いずれかに決定しなければならない段階に來ていると思います。官公廳がそういつたいわゆる役人その他であつて労働組合の仕事に專念して、それに全時間を費しておる人たちに対して支拂う給料はどれくらいになるかという明確な計算はありませんが、人によつては数億というような計算をしておる人もあるわけであります。予算の面からいつても、ある程度の重要性はもつておるのでありますが、しかしただいまお伺いする意思は、予算関係ではなくして、本來の健全な、眞に自主的な権利を主張するとともに義務をも果しておるという、そういつた健全な組合をこの辺で育成し、その基礎をつくるためには、どうしても、この專從職員の問題は、ここで根本の方針を解決して、組合側がその組織と力によつてこれを支拂つていくとか、あるいは現在はまだその段階に立至つていないならばいないでよろしいのでありますから、この問題に対する労働大臣の明確なお考え伺つておきたいと思います。
  28. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ごもつともな御質問だと存じます。前片山内閣は、昨年の十一月におきまして、そのことを決定しておるようであります。私の所信といたしましては、労働組合は、あくまでも労働者の自主的な経済團体である、この観点からいきまして、労働組合の運営は、経済面においても思想面においても、労働者の自主的な指導もしくは統制でなければならぬ。しかしながら、日本の今日の労働組合の現状は、数的には、ほとんど諸外國に例を見ることのできない異常な発達を遂げたのでありますが、その質すなわち内容を見ますると、私は労働組合員の多くの人々は、なおほんとう意味においての労働組合精神が徹底していない、依然として少数の幹部に任しておけば何とかしてくれるであろうというような依頼心が、非常に強い現状にあると思うのであります。別な言葉で申しますれば、今までと同じような少数の指導的な地位にある者に任しておけば、何とかしてくれるであろうという封建的な考えから拔け切つていないのであります。從つてこういう労働組合の状態で今後続いていくということになりますれば、結局労働組合というものが、名は経済團体であつても、それこそ政治的に利用されるおそれもないとは言われないのであります。これはどの党がどうであるということは別問題といたしまして、経済團体である労働組合が、政治的意図に利用されるということは、その本來の目的に反するわけであります。どうしても個々の労働者がほんとうに民主主義の精神に徹し、労働組合はあくまでもすべての点において自分たちの自主的な力によつて運営されなければならぬものであるというように教育が施されなければならぬと思うのであります。そういう教育を労働組合員に対して労働組合の内部において徹底せしむるためには、なお多くの時間と人とを要すると思います。今日の日本の経済的な條件のもとにおける労働組合の経済力というものは、きわめて微々たるものでありまして、もしこれが今ただちに全部自分の負担においてそういう教育も行わなければならぬということになりますれば、とうてい労働組合はその負担にたえない。從つてその負担にたえるというものは、すなわち労働組合から支給されるきわめて少額な給與によつて、そういう仕事に專心從事し得られるという人は、ある特殊な人しかないということになつているのであります。私は結局そういう特殊な人々が指導的地位を占めるということになることは、また労働組合の健全なる発達の上から、避けなければならぬ点であると考えます。こういう点から、やはり労働組合員に対して、労働組合の内部において、民主化の教育を徹底せしむるためには、なお今日の段階におきましては、しばらく專從者というものが——本質論からいけば問題にならない、理屈にはならぬことでありますけれども、現実の状況はそれを必要とする。從つて私といたしましては、いましばらくの間は、組合專從者の問題は、数の上において、時間の上において限定せらることは、言うまでもありませんが、いましばらく認むべきである。できるだけ急速に労働組合員の民主化教育が徹底して、ほんとうに一人々々の労働者、これは一人残らずというわけにはまいりませんが、少くとも組合が労働者によつて自主的に運営されるということが意識し理解される限度にまで、組合員の教育を徹底せしめなければならぬ、その必要のために、私はいましばらく專從者の問題をこのままに存置し、順次その状況によつてそういうものをなくしていく方向に、一日も早く達するように努めていくべきであると、このように考えております。
  29. 川島金次

    川島委員長代理 午前中の質疑はこの程度としまして、午後は定刻一時半から会議を開き質疑を続行いたしたいと思います。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  30. 川島金次

    川島委員長代理 休憩前に引続いて会議を開きます。  質疑を行います。野坂參三君。
  31. 野坂參三

    ○野坂委員 私は予算の問題については、本予算が出たときに詳細に質問したいと思います。それで今日はごく簡單に、三、四の点についてお聽きしたいと思います。  まず第一が、昨日の大藏大臣のお答えでは、本予算は大体六月から組まれて、これが五月中旬ころに提出されるだろうというふうなお話のように承つていますが、はたして五月十五日ころに提出されるものかどうか、これをお伺いしたいのが一つ。もしされないならば、六月分はまた一箇月、こま切れにしてお出しになる予定であるか。それからその次に関連してお聽きしたいことは、どうしてこんなに遅れるかという、この根本原因はどこにあるのか。たとえば物價改訂の問題とか、給與の問題とか、こういうことももちろん関連がありましようが、これが主であるかどうか。もしそれが主であるならには、なぜ政府がこれを——すでに芦田内閣ができて、一箇月以上も施政の任にあたつているし、この内閣自体が片山内閣の延長であることははつきりしておる。それにもかかわらず、まだ四月、五月、これを一箇月々々で予算を組んでやる。こういうふうな不当なやり方をやられるのか。もし物價とかいう問題が関係があるなら、これは明らかに政府の責任のようにわれわれは考えるが、どうであるか。もしそれでなければ、もしほかの理由であるとするならば、関係方面との交渉が長引くとか、これが困難だというのが理由であるかどうか。ちよつともう一つまとめてお聽きしますと、こうして延びる理由が、当然政府の責任であるところの物價改訂とかいうものに関連しておるのか、それとも関係方面の交渉が問題であるのか、それをお聽きしたいと思います。
  32. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答か申し上げます。実は私どもといたしましては、暫定予算は出したくない。これは基本的な考え方でありまして、本予算をなるべく早く出して御審議を願いたい。そうでないと、実は仕事関係から申しましても、いろいろ不都合を生じますので、この点はただいま野坂君のおつしやいました意味と同様であつて、急ぐということには全力を盡しておるつもりでありますけれども、ただいまのような一つの大きな経済の轉換期に当りまして、物價改訂等の問題も簡單にまいりかねる点が非常に多いのでございます。そこで、たとえば國家財政において、物價の値上りに対して補給的にこれを抑える点をどの線に引くかということと、あるいはまた物價國家財政負担をどこまで吸收するかというようなこと等々が、物價賃金等と関連をもちまして、現下の経済事情では、これはなかなか困難な問題でございます。從つて一旦これをかりにまずくきめるようなことがありますと、あとでただちに全経済界に及ぼす影響が大きい。さような点から、これは急がなければならぬが、同時に非常に愼重にやらなければならぬというようなことで、本予算を急ぎながらも、逐に今日に至りまして、結局暫定予算を出すことを余儀なくせられたということになつております。御審議の期間が遅れたことは申訳ないのでありますけれども、これはただいまおつしやいました、これとこれとの理由によるかというお尋ねでございましたが、それらのことを含めて、諸般の事情がかくせしめた。こういうことに御了承願いたいのであります。本予算については、先ほど申し上げましたように、中旬に出したいというので、ただいま鋭意その方へ努力を傾注いたしております。中旬には提出が可能であると、私は信じておるのでありますが、ただ問題は、さつきちよつとお触れになりました方面への折衝等がありまして、そのことだけから、非常に正確であるとはちよつと申しかねるのでありますけれども、その他の点においては、本予算については中旬に提出することは、自信をもつてその方向に進めておるということを、はつきり申し上げていいと思うのであります。
  33. 野坂參三

    ○野坂委員 そうしますと、大体約二週間後には本予算が提出される、こういうふうに理解して差支えないと思いますが、そうしますと、今は大体物價改訂をどの程度にされるかということの見込みも立つておるはずだと思います。もしそれでなければ、十五日後に新しい本予算が組めないはずだ。そうしますと、一言お尋ねしたいのは、今物價改訂の上で、たとえば一般に傳えられておるところによりますと、百十倍、あの基準にもつてくるとか、こういうふうないろいろなことが出ておりますが、この問題について、もう少し具体的にお話し願いたいと思います。
  34. 北村徳太郎

    北村國務大臣 その点につきましては、たとえば鉄道運賃をどうするか、鉄道の独立会計等々とにらみ合わせまして、それが物價全体ヘ及ぼす影響考えなければなりませんので、ただいま案を立ててそれを檢討しておりますので、それをここでいつということを物價については申し上げることを、しばらく御猶予願いたい。本予算の場合には、むろん当然のことでありますので、本予算のときには提出することは当然でありますし、できれば物價関係ある法律案は、本予算に先だつて提出したい、おそらく先だつて出すことができるだろう、こう思うのでありますが、その際までしばらくお待ちを願いたい、かように思うのであります。
  35. 野坂參三

    ○野坂委員 今大藏大臣のおつしやることは、ここで今発表することは控えたい、こういうふうな御意見でしたが、私たちの希望したいことは、今度の予算は非常に重要な性格をもつておると私は思うのです。この意味で、その基礎になるところの物價がどういう状態のものであるか、同時にこれに関連して給與がどういう水準に置かれるか、これは私は予算案が提出される前に、この予算委員会あるいは小委員会の方面でもよろしゆうございますが、提出していただいて、物價の問題について、われわれ全委員会がやはり眞劍に討議するというふうにやつてもらうべきだというふうに、私は考えておりますが、それについて御意見はどうでございますか。
  36. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま申し上げましたように、物價改訂に関する法律案は、本予算の提出よりも早く出したいと考えております。從つてどの点まで御希望に副えるかわかりませんけれども、今の私どもの心構えとしては、本予算提出前に、本予算関係ある物價改訂に伴う法律案は、なるだけ先に出したい、かように考えておりますから、ある点は御希望に副い得るかと、かように存じます。
  37. 野坂參三

    ○野坂委員 次にお聽きしたいのは、終戰処理費の問題でありますが、今度は六十億、これは大体全予算の四分の一に当ります。相当大きな額だと思います。この内容について私たちにはほとんど知ることができませんが、この内容について、四月分あるいは前年における終戰処理費の性格と違つた新しいものがあるかどうか、たとえば軍事的の方面が多くなつておるとか、少くなつておるとか、あるいはどういう方面が特に多くなつておるかというふうに点について、大藏大臣の御説明が願いたい。これが一つ。これに関連して、今度の五月分においては、四月分よりも一億円の増額があります。この一億円の増額はどういう内容であるか。この二点、お聽きしたいのであります。
  38. 福田赳夫

    福田政府委員 お答えいたします。一億円増額いたしておりますのは、四月分におきましては、やはり編成の途上におきまして、六十億円というふうに考えておつたのでありますが、ところが最終の段階になりまして、予備金を一億円設けるということになつたのであります。予備金一億円を総体の数字を動かさずどこから捻出するかということに相なりました結果、これを終戰処理費より減額するということにいたしました結果、五十九億という数字になつたわけであります。五月分はそれを本然の姿に直しまして、六十億円というふうにいたしたわけであります。それから六十億円の内容といたしましては、新規のものはありません。すなわち前年度よりの引続きのもの、これを具体的に申し上げますれば、進駐軍用施設の維持管理に要する経費と、それから前年度におきまして施行いたしました建設の引続きのものを建設するということにしたものであります。前年度の予算におきましては、昨年の十月に追加予算が出まして、そうしてその当時の見透しといたしましこは、十月以降毎月八十億円使うというふうに相なつておつたわけであります。八十億円のうち四十億円は維持管理に要する経費であります。その他の残りの四十億円が、宿舎、兵舎、道路等の建設に関係するものであります。今回は暫定予算でもありますので、金額を六十億円といたしました。大分下つてきたわけであります。從つてこの内容といたしましては、前年度の維持管理の経費が約四十億円、それから残りの二十億円が建設関係経費、かように御了承願いたいと思います。
  39. 野坂參三

    ○野坂委員 この問題につきまして、もう一言お伺いしたいのは、これから先の見透しですが、今次予算についてもし触れていただければ結構ですが、そうでなくても、大体の見透しとして、二十三年度における終戰処理費は、去年と比べてどういう性格をもち、どれだけの額をもつものであるかということを、お聽きしたいと思います。
  40. 福田赳夫

    福田政府委員 進駐軍に伴う終戰処理費につきましては、関係方面より、その具体的な編成の基礎となる事項について指示があつて、その指示に基いて予算を計上することに大体相なるのであります。ところがただいまのところ、まだ正確なる指示に接しておりません。從いまして、これが二十三年度全体としてどういうふうになるかという正確なる見透しはつきがたい状況であります。しかしながら、大体私ども関係方面と接触いたしました感じといたしましては、ただいま申し上げました維持管理に要する経費、これはそのままずつと続くというふうに考えられるのであります。すなわち二十二年度の物價、二十二年度の給與ということに相なりますれば、約四十億円程度のものが毎月要るというふうに考えられるのであります。その他残りの四十億円の建設費がどういうふうになるかということにつきましては、これは相当減つてくるのじやないかというふうにただいまのところでは見ております。二十二年度の規模で言いますると、月八十億円でありますから、年額九百六十億円というふうな数字になるべきものでありまして、これはさような多額の経費にはならぬ。もつとも物價改訂等に伴いまして、物件費、人件費等が上りますことは予見せられますから、表面上の数字は多くなると思いますが、実質的な意味における数字は、よほど減つてくるのではないかと見ております。
  41. 野坂參三

    ○野坂委員 この問題については、これ以上私はお聽きしませんが、大藏大臣希望として申し上げたいことは、この終戰処理費の問題が、今までの予算委員会でも、ほとんどこまかく討論されずに進んでおるのであります。ところがこの問題が、実は非常に重大な問題でありまして、すでに政府側も、個人的な意見でありますけれども、認められておりますように、これが日本の今日のインフレの一つの大きな要因になつている。それで私の希望としては、これはおそらくここにおられる委員も同じような御意見だと思いますが、本予算が出る場合においては、この問題についての材料を、できるだけ私たちに提出していただいて、これについてに相当こまかいつつこんだ一つに報告とか、またわれわれの質問に答えていただくというような手段を、ぜひとつていただきたいと考えております。特にこの場合金額の面だけでなく、物動の方面、物がどういう方面に動いているのか、これが計上がどういうふうにせられているかという問題について具体的に私たち知りたいと思います。これは希望として申し上げておきます。  次に大藏大臣にお聽きしたいのは、この間四月一日附でマツカーサー元帥の方から、三淵最高裁判所長官にあてた書翰が、新聞に発表せられました。この中に、裁判官が良心をもつて仕事を遂行する上にとつては、経済的な窮乏に煩わされないこと、あるいは職務にふさわしい威信を保つ必要がある、あるいは買收の誘惑にも動かされないような快的な生活をやはり保障しなければならないということが書いてある。これはまつたくその通りであるし、われわれ大いに賛成するところであります。これは裁判官一般についての生活問題を取上げた問題でありますが、同時にこの原則はすべての官公吏にやはり適用されるべきだと思います。ところが、今の官公吏のあの生活は、加藤労働大臣もここで公言されましたように、二千九百二十円では、最低生活もできないということを言われている。そうしますと、このマツカーサー元帥の書翰は、單に裁判官に問題だけではなしに、やはり全官公労にも適用されるべきものだという精神を盛つておる。こう見ますと、今日の官公吏のあの給與基準では十分でないということは、加藤労働大臣はお認めになりましたが、大藏大臣はどういうふうにお考えになりますか。  第二には、これに関連して、將來本予算を組む場合においては、やはりマツカーサー元帥のこの書翰の精神を取入れられて、ほんとうに官公吏が國民の公僕としてやり得るだけの生活水準を與え、安定の生活を與えるというような方針をとられるならば、一体どのくらいの額を計上せられる予定であるか。この二つの点についてお聽きしたい。
  42. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいま御引用になりましたマツカーサー元帥の書翰は、私の考えでは、裁判官の特殊性というものを認めて、そうしてまたきわめて特殊な最高裁判所長官の問いに答えられたものでありますから、從つてこれをみだりに拡張して全官公職員に適用さるべきものであると考えることは、妥当でないというように考えております。それから一般の官公職員の給與のことにつきましては、先般ようやく両者の間に妥結を見まして、調印を終つたのでありますが、これは今後インフレの進行度合等も考えなければなりません。われわれはむしろ実質的な賃金裏づけ方面努力しなければならぬ。たとえばせめて食糧だけでも正常ルートにおいて公價で手にはいるということになれば、これは必ずしも名目資金だけで考えるべきことではない。從つて今私は労働組合の願わしいことは、むしろ労働組合の大はな力をもつて、やみ撲滅でもしてもらえば、これは労働階級諸君生活の面に相当な効果があるのではないかということも考えるのでありますが、現在の給與をもつて十分であるといあ考えはむろんいたしておりませんけれども、ようやく妥結を見ましたので、しばらく推移を見たい。こういうふうに考えておるのであります。  それから予算についての給與の面はどうするかというお尋ねでございますが、これはさつき申し上げましたように、運賃、それから物價全面にわたりまして、物價賃金をにらみ合わせて考えなければいけませんので、物價についてお答えをしばらくお待ち願いたいと申し上げたのと同樣の趣旨で、しばらくお待ち願いたい。かように思う次第であります。
  43. 野坂參三

    ○野坂委員 今の大藏大臣のマツカーサー元帥の書翰についての御意見は、これはもちろん裁判官にあてたものではありますけれども、ここの精神です。たとえば良心をもつて遂行するとか、誘惑にかられないような生活を保障しなければならない。これは裁判官だけでなしに、政府の側ではいつも官公吏に対しては特殊性を強調しておられる。すなわち國民の公僕である。公僕らしい生活を保障されるのが、政府方針であると思います。この意味において、裁判官と同じ生活程度を、すべての官公吏に與えるべきであるということを、私は主張しておるのではありませんが、しかしこの精神をやはり官公吏にお認めになるべきじやないかということを、私は言つておるのであります。この点が一つ。  それから第二に、これに関して、もしこの手紙は裁判官だけに適用されて、一般の官公吏に関係がないということになれば、逆に言えば、あるいはこれは極端なる言葉になるかもしれませんが、官公吏は良心を捨てて買收の誘惑にかかつてもよいか。良心をまげて公務を遂行してもよいか、こういうことが言えると思います。だから私は今の問題について、大藏大臣にもう一言お答え願いたいと思います。これは官公吏にも当然この精神は適用すべきである。そうでなければ、官公吏に対する生活水準をば、公務ができるように保障するのが政府の責任である。これが私の考えであるが、これを一つ伺いたい。  もう一つ先ほどお答えの中に、労働組合がやみ撲滅運動を起したらどうか。こういうような御意見ですけれども、労働組合は、去年やみ撲滅運動を起したことがあります。しかしこれは成功しなかつたいろいろな理由がある。第一は、やみ撲滅の問題は、政府の責任としてやるべき問題だと思う。これを政府が今日までほとんば手を盡さないで、やれないから労働組合に責任轉嫁をするというふうにして私にはとれない。もし労働組合がやみ撲滅をやるとすれば、労働組合に対して、やみ撲滅の権限を政府はお與えになるつもりであるかどうか、これをお聽きしたい。
  44. 北村徳太郎

    北村國務大臣 第一段のマツカーサー元帥の書翰のことでありますが、これはその中に示唆されておる道徳的なものについては、これは全官公職員といわず、一般共通的に考えなければならぬところでありまして、良心的であらねばならぬ、誘惑に打ち負かされるようなことがあつてはならぬ、これは共通することは当然であります。ただ裁判官であるがゆえに、その特殊な性格に鑑みて、給與について考慮すべしということで、やはりどこまでも特殊性なのであつて、そのことをもつて、みだりにこれを拡大すべきものではない。書翰の性質から、それを拡大援用するということであると、これはマツカーサー元帥の発信者としての意思に反するのであつて政府は濫りにそういうことを援用してはならぬというような考えをもつておりますので、先に御答弁申し上げた通りであります。しかし官公吏のことは、お前たちは考えないのかということ、そうじやない。もちろん生活の安定という大きな問題を考えなければ、全体の奉仕者としての生活ができないのでありますから、この点についての生活安定問題は、十分考慮するということは、もちろん申し上げてよろしいのであります。その点は区別をしておきたい。かように考えるのであります。  それから後段の労働組合云々のことは、私がさつき申し上げたことは、賃金の実質的の裏づけということが重大な問題になるので、政府がやみ撲滅に努力することは当然でありますし、またやりつつあるが、効果が十分上らぬ点は遺憾でありますけれども、これはやりつつあるのでありまして、その点は今後も十分努力する。しかし労働組合の諸君も、そういうことに協力する意味で、自分たちの生活を護る、経済生活を護るというような点において協力を願うことができれば、一層効果があるんじやないか、こういうことをたまたま私見と申し上げただけでありまして、それを大きな意味で労働組合にやみ撲滅の責任を負わせるとか何とかいう重大なことは、もとより考えておりません。ただ自発的に自分たちの生活を護るというような点において、もしそういうことが願えるならば、あるいは一層効果をあげるんじやないか、こういう感想を述べたにすぎないのでありますから、これはそういうふうに御了承願いたいと思うのであります。
  45. 野坂參三

    ○野坂委員 今の問題については、労働組合がやみ撲滅に協力するということは、組合自体もおそらく望んでおるだろうと思いますが、大藏大臣の方で、これは何も責任あるお言葉としてお聽きしなくてもよろしいのでございますが、こういうふうな面に労働組合の方としてもやり得るというふうな、具体的な案でもあれば言つていただきたい。何も責任的な言葉がなくてもいいと思います。
  46. 北村徳太郎

    北村國務大臣 今格別に具体的な案があるわけじやないのであります。ただみずからの生活を護るというような意味で、これは非常に数が多いこと、從つて全体としては立常に大きな購買者であり、購買力をもつておる。その購買力を正常に発動するということになれば、全体に及ぼす影響は非常に大きい。こういう点をかねがね考えておりますので、そういう意味において考慮を願えるなら結構だという意味であります。
  47. 野坂參三

    ○野坂委員 労働組合でやみ撲滅ができればいいと思いますけれども、しかし今の生活では、やみをせざるを得ないような状態におかれておるので、これはおそらく労働組合の方がいくら努力しても、政府の今の政策がそのままならば、解決できない問題だと私は思います。  この問題はこのくらいにしまして、もう一つお聽きしたいのは、政府税制については、本予算の面において、今度新しく案を出されるというようなことも聽きましたが、例の三党協定の上では、勤労所得税の免税点を上げるというふうなことがうたわれてあつたと記憶していますが、この問題について、ちよつとお聽きしたいのは、第一に政府としては、今免税点をどのくらいまで引上げる予定であるか伺いたい。一般にうわさされておるところでは、年一万二千円を免税点にするということが言われておりますが、はたしてそうであるかどうか、これが一つ。  第二には、これに関連して、昭和九年、十年には、免税点がたしか百二十円であつたと記憶しますが、これがどうであつたかということも確かめたいと思いますが、それに関して昨年の六月に政府の方では消費者價格指数をおきめになりましたが、これに基いて計算すると、本年一月現在では、消費者價格指数が、昭和九年、十年の百一倍になります。そうしますと、昭和九年、十年が免税点が百二十円としますと、今年の一月になれば、これが月額一万三千八十円となる計算になります。こういう計算を政府としてはお認めになるかどうか、この二点をお聽きしたいと思います。
  48. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。免税点の引上げは考慮しておりまするが、ただいまお話になりました昭和九年、十年の免税点を、物價指数に從つてその倍数をかけるというようなことは、ただいま考えておりません。
  49. 野坂參三

    ○野坂委員 私のお聽きしたいのは、もうすでに三党協定できめられておりますし、本予算が目の前に迫つておる、この場合に免税点をどのくらいにするということは、おきめになつておると思いますが、大体新聞でもうわさされておりますように年一万二千円という免税点をおとりになるのか、それとも違つた額をお認めになるのか、これをお聽きしたい。
  50. 北村徳太郎

    北村國務大臣 これはさきに申し上げましたように、物價全体と重大な関係がございますので、いずれ近く法律案として提出いたしますから、それまでお待ちを願いたいと思います。
  51. 野坂參三

    ○野坂委員 まだありますけれども、私実は時間がもうありませんので、最後にこれは大藏大臣にお聽きしていいか、あるいは委員長にお聽きすればいいか、どちらか適当にお答え願いたいと思いますけれども、前年度の追加予算のたとえば補給金の問題とか、あるいはこの間二千九百二十円に関する予算が提出されたのと並行して法案が提出されております。この法案は、二千九百二十円問題についての支拂方法に直接関係のある法案であります。ところがこれの審議が、今の法規の上では、ここで審議しないで、これは財政金融の委員会でやることになつております。われわれ予算委員として、ここで審議する場合に、あの法案についてほとんど知ることなしに予算の額だけを通して、これをいかに支拂うかという問題は、別個の委員会で討議する、向うで通つたものをこちらへ知らされる、こういう結果になつておると思うのです。これは私非常に不都合だと思います。ですから私の意見としては、このような予算に直接関係ある法案は、必要ならば財政金融委員会でやられてもよろしいが、ここでも当然審議しここの意見をやはりまとむべきである。もしも並行してやることが差支えがあるならば、合同した委員会でこれをやるとか、こういうふうなことを私は將來とつていただきたいと思います。これについて大藏大臣でもよろしゆうございますが伺いたい。
  52. 北村徳太郎

    北村國務大臣 ただいまの御質問は、私どもといたしましては、それぞれの議案を國会に提出する、國会においてどの常任委員会におかけになるかということは、これは國会自体でおきめになることでありまして、ただいまお話になりましたような範疇についてどうかと思うようなことを、私ども経驗したこともあるのでありますが、これは國会自体の問題として御檢討願いたいと存じます。
  53. 野坂參三

    ○野坂委員 委員長はどうお考おになりますか。
  54. 川島金次

    川島委員長代理 お言葉になりました問題については、私ども多少考えないわけではなかつた。從つて早急にこういつた問題についてどういう取扱いを委員会はするかという問題につきましては、財政金融委員会の委員長あるいは政府とも、いろいろ打合せをいたしまして、その結果委員会の皆樣に御相談を申し上げたい、かように考えておりますので、その程度で御了承願いたいと思います。
  55. 野坂參三

    ○野坂委員 私は委員長の方からぜひそういうふうにやつていただきたいと思います。私の質問はこれで終ります。
  56. 川島金次

  57. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 お伺いしたいことはいろいろありますが、すべてを本会議のときに讓りまして、ここでこまかい問題を二、三お伺いいたしたいと存じます。  その第一は預金部の不足金が、四月も五月も出ております。昨年の予算にも出ておつたのであります。あの厖大な資金をもつてこれを運用しておれば、もし民間であるならば、厖大な利益をあげるだろうと想像されるのに、この預金部はすでに四、五だけでも二億八千八百万円以上の不足を生じておる。その原因がはたしてどこにあるか、將來これをなくすような方法がないかということについて、大藏大臣にお伺いいたしたいのであります。
  58. 福田赳夫

    福田政府委員 お答えいたします。預金部は御承知の通り、零細なる預金を集めまして、これを有利確実なる方面に運用いたす、すなわちこれが支拂に支障なきように運用いたすという建前でできておるのであります。過去におきまして、五百億以上の預金ができたのであります。この大部分を國債にまわしておるのであります。すなわちただいまの会計で申し上げますと、大体三分五厘でこれをまわしておるのであります。從いまして、これをこの資金コストと比べますと、現在といたしましては、なかなか收支が立ちにくいというような状況になつておるのであります。しかしながら、先般國債も四分に改訂されました。それから地方債にこれを融資するという方針を、ただいま当局といたしましてはとつておるのでありますが、地方債にいたしますれば、これが六分近くにまわるようになるのでありまして、新しい貸出の面におきましては、十分ペイするのであります。しかしながら、過去におきまして三分五厘の國債に投資しておるという面におきまして、相当困難な状況になつておるわけであります。今後の預金部の改善策といたしましては、金利水準の改訂に伴いまして地方資金等にまわすということになりますれば、これは相当改善されてくる、すなわち新しい預金がどんどん伸びてきまして、古い預金高五百億が千億あるいはさらにそれを超すという状況になつてまいりますれば、これは預金部といたしましては、十分ペイしていくのであります。その経過的な期間におきまして、どうも赤字が出るという状況になつておるのであります。二十三年度の予算におきましても、若干の赤になるのでありますが、この状況は逐次改善されて、この預金が殖えるに從いまして、これが解消していくというふうに、御了承願いたいのであります。
  59. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 それからただいま問題になつております裁判官の給與、これはうわさを承ると、閣議でもうきまつておるそうでありますが、この裁判官には五月は新しい給與で支拂をしなければ、五月の二日ごろでもう期限が切れてしまうということになつておるから、必然的にこの予算は見積つてあるものと思いますが、ここに見積つてある裁判所経費の中に、新給與が含まれておるかどうか、含まれておるとするならば、それがどのくらいの金額になつておるか、これをお伺いいたしたい。
  60. 北村徳太郎

    北村國務大臣 お答え申し上げます。ただいま出しております暫定予算には、新給與は含まれておりません。それから裁判官の給與に関しましては、ただいま法律案をつくつておりまして、これは今明日くらいに國会に提出する運びになるのではないかと考えとおります。
  61. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 そういたしますと、五月分の給與は、予備金からでもお出しになるお考えでございましようか。
  62. 福田赳夫

    福田政府委員 お答えいたします。もし國会開会中でありますれば、これは予算を提出することにいたします。それからもし國会休会中でありますれば、予備金よりこれを支出する。かようなことになるのであります。
  63. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 それから物資及び價格調整事務取扱費というものがございますが、それが價格調整費との割合を見るというと、非常に割高になつておりますが、その理由はどういうところにあるか、御説明願いたいと思います。
  64. 福田赳夫

    福田政府委員 物資及び物價調整費と價格調整費とは、関連がないのであります。すなわち價格調整費は、いわゆる安定帶物資二十一品目に対しまして、安定帶を上まわる差額を補給するという性質のものであります。それから物資及び物價調整取扱費は、公團の経費政府において補給する建前のものが一部と、それから非常に廣汎な範囲におきまして、物資割当事務をやつておるのであります。その割当費用を、この項目の名のもとに出しておるのであります。從いまして、この両者は關連は全然ない、かように御了承を願います。
  65. 川島金次

    川島委員長代理 総理大臣が出席されておりますから、総理大臣に対する御質問をお願いいたします。磯崎貞序君。
  66. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 敗戰後の國民といたしまして、始終念頭を去らざるものは、その後に來る講和の問題でございます。この講和條約が、どういうような形にいくかということに対しまして、いわゆる敗戰した日本國に、発言権がないことはもちろんでございますが、その成行に対しまして、重大なる關心をもつということは、もとより当然でありますが、これに対しまして、先般來その会議がきわめて切迫せるやの報道等もございましたが、最近における國際環境等からいたしまして、大分のびのびになつております。しかしこれに対する國民の關心は相当高まつております。殊に外電によりますと、各關係國間においても、こうした問題がいろいろ批判されておるように伺いますが、現在の段階におきまして、いわゆるきわめて最近におけるところの情勢は、この問題はどういう形に進んでおるか、これをひとつこの席上を通じて、國民に知らしていただきたい、これが一つであります。  それから、先般來政府当局の各閣僚が、東京をよそに地方遊説をされたのでございますが、むろん大阪方面に空前ともいわれるような閣僚の御集合は、大阪が相当政治上重要なためで、あそこで各閣僚の述べられたことが、多くの關心をもたれることは、当然のことでございます。しかも一番國民の心配しておる食糧の問題、この問題に対しては、あるいは他の同僚から申し上げられたかもしりませんが、この総理大臣のいわゆる配給量の増額について、二合八勺と計数を切つて、しかもきわめて近いうちにそれが配給されるという力強い御発表を得まして、大分各方面の民心を和げつつあるのでございますが、こうした問題に対しまして、たまたま農林大臣としての御声明は、多少食違いがあるやに伺われますが、総理大臣の御説が正しいことと思いまするが、この問題に対する基礎を、ひとつ御答弁願いたいと思います。  次に、食糧の問題と並行いたしまして、衣料の問題ですが、着物の問題が、相当深い關心の的でございます。これはいろいろの報道によりますると最近六千万ドルに相当する対日綿花借款が、相当進行しておるというような朗報が傳わつております。そのうちにまた多少障害が発生したような報道も傳えられている。こうした方面に深い關心をもつている國民に、総理のお知りになつている点をお知らせ願いたい。  いま一つ、これはいわゆる遊説の際にお話に相なつたやに伺いますが、退藏と申しますか、つまり輸出不合格品のものでありましようが、綿布類があるそうで、それは約百五十万ヤードという数量だそうですが、これを國内に放出せられ、しかもきわめて近いうちにその準備が運ばれるというふうに、御報道されたようでありますが、かくのごとき問題は、衣料に飢えている國民からしますと、大旱に雨を求めるように思われます。この問題に対しても、大藏大臣等の談話によりますと、総理大臣のお説がいくらか進んでいる、先走つているというようなことがありますが、私はそうは信じません、総理大臣お話がきわめて信頼するに足るお説であると思いますが、この問題について、明確に本議場を通して、お示し願いたいと思います。  さきの暫定予算審議の焦点でありました、いわゆる戰時公債利拂の停止問題は、当時当局の御説明は、変轉極まりないような御説明でありましたが、最後にこの問題は、停止すべきものであるということになつたと思います。しかるところ先般、やはり旅行先におきましてのお話は、いわゆる利拂は停止しない、さらに第三次の農地改革も、断行しないということを申されたのであります。これは單に大向うをうなずかせるような意味でおつしやつたとも考えませんが、そうした力強い御声明等があつたことは、これはどのように解釈していいのか、これもひとつ御説明願いたい。  とりあえず以上の問題について、明快なる御答弁を煩わしたいと思います。
  67. 芦田均

    ○芦田國務大臣 磯崎君にお答えいたします。われわれ國民が一日も早く平和條約を締結いたしたいという熱望をもつていることは、たれも変りはないのであります。しかるに連合國側においても、いろいろ國際情勢を考慮した結果とみえまして、昨年の夏ワシントン政府から、平和予備会議を招集する招請状を発した後、その会議招集の機運が、いろいろの難関に逢着したとみえまして、今日のところでは、いつ対日講和会議が開かれるかという見透しは、立ちにくいという情勢になつているごとくみえます。むろんこれらの点につきましては、わが政府は、いずれの國の政府とも、直接に話合うことの権能をもたないために、個々政府に向つて、その意向を確かめる方法はないのでありますが、大体の今日までの経過から申せば、いつ講和会議が開かれるかという見透しをつけることは、きわめて困難である、かように考えております。  第二に、食糧問題について御質問がありましたが、農林大臣の説明と私の説明とは、根本においては相違はないのでありまして、私が大阪その他の地において話したことは、食糧事情は終戰以來初めて今年においてやや好轉の曙光を認め得るに至つた。何となれば、二十二年度産米の供出は、去る三月すでに百パーセント超過したのである。終戰以來未だかつてになかつた事実であつて、それだけをもつてしても、大体今年の端境期は、多くの遅配欠配なくして突破できる見透しがついたのである。なお政府は一割増産運動を全國的に展開しておるのでありますから、その目標が一割に達しない場合といえども、何がしかの増産を期待し得ると考えておるのであります。また連合國よりの輸入食糧についても、連合國側は相当の熱意をもつて日本の現在の主食配給量が必ずしも栄養價値において十分でないという認識のもとに、できるだけ輸入食糧を増加したいという意向をもつて、種々盡力されておるように承知しております。これらの事情を考え合わせて、そのうちには今日の主要食糧を——私の口から二合八勺ということは申しませんでしたが、せめて一割でも増配のできるように、極力努力中であるということを申したのであり、農林大臣の説明は、現在すぐに主要食糧を増配することは困難だということを申したのでありまして、將來に対する見透しについては、何ら言及していないのであります。  その次に六千万ドルの綿花借款は、新聞で御承知の通り、アメリカにおいて成立いたしたとのことでありますが、詳細のことは、貿易廳においてこれを発表し得る時期が來ましたならば、すぐに公表することと考えております。  それから纖維の窮乏状態は、食糧に次ぐ重要な問題でありまして、またインフレーシヨンを抑制するためにも、纖維のやる値を抑える、あるいはうまくいけばこれを下落せしめるということは、非常に緊急を要する問題であると考えまして、御承知の通り目下連合軍の所在に属しておる綿製品の滯貨、これが輸出の状況によつて、時々変化はいたしますけれども、相当分量に達しておるのであります。現在の政府考え方は、少くとも頭割り一ポンドずつくらいの綿製品を本年中に配給することを実現したい、かような計画をもつて、目下關係方面に種々懇請中であります。  それから先きほど大阪の党員に私が話をしたという記事を御引用になりましたが、あの新聞の記事は、必ずしも正確であるとは思いませんが、しかし問題が二つあつて、一つは公債利拂停止の問題、この点については、磯崎君の同僚である民主自由党のお二方に対して答弁をいたしました。それ以上附け加えることは何もありません。  第三次農地改革については、御承知の通り、目下第二次農地改革が進行中であります。この第二次農地改革もまだ不徹底な点が残つておるのでありますから、これだけはぜひ徹底的に推進しなければならぬ。その成績を見た上で、さらに第三次農地改革を行うか行わないかをきめたいという考えでありまして、現在のところ第三次農地改革を行うという方針決定したわけではありません。
  68. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 まず食糧の問題につきましての農林大臣との食違いの点もお話があつたのであります。由來瀬府当局の御声明は、樂観し過ぎられるような嫌いがないではないと思います。もちろんただいま御説のごとく、いわゆる増配の根底をなすものは、三千五十五万石の供出量を突破した優良な成績を根底にしており、あるいはさらに一割増産、この問題に相当大きな期待をおもちになつておると思います。実は昨日神奈川縣における農民大会におきまして、たまたま私はその声を聽いた一人でございますが、今農村では、かくのごとく申しております。政府はしきりに増配増産ということに大きな期待をもつておいでになるのでありますが、現在の日本農村の情勢は、戰後において農地政策あるいは協同組合の発足、ちようど木にたとえますと、双葉芽を開いたようなときであるが、たまたまこうした矢先に、この双葉に対して肥料をかけ育成すべき立場にある政府当局が、不当なる課税をもつてその双葉を刈らんとしておる。そしてその増産の裏づけたるところの肥料、資材の配給さえ、あるいは適地配給がどうであるかさえ、実は憂慮にたえない現況であつて、しかもこれ以上われわれに大きな責任をもたせられることは、きわめて危險なるものである。しかもそうした観点に立つ増配というものは、すこぶる怪しいものである。われわれは現在政府の施策については、少し疲れはてているということを、いずれもの青年が声を枯らして壇上で叫んだ眞相を伺つて、実は昨日國会に参つて、農林大臣に事の詳細を申しましたが、いずれかの形において、当局に陳情がまいると思います。かくのごとき意味合で、これはおそらく全日本農民の偽らざる声であると思います。ましていわんや船で來るよそのものの数字を当てになさるということは、きわめて危險なる問題であると、私は考えざるを得ないのであります。これらの点につきまして、過大なる御樂観はお愼み願いたい。しかも各閣僚の御意見は、ぜひただちに統合して、強力なる統一体として御発表を煩わしたいと考えております。  それから利拂問題につきましての御説明がなされましたが、この問題に対しましても、やはり新聞紙に散見したと思いますが、いわゆる現内閣において、副総理と申してもよろしい西尾國務相、しかもこの問題に相当大きな意見をもつておいでになるところの政党の所属の方が、今日になつては、もう利拂問題のごときは無意味なものである。すでにこれはもう問題の價値はない。しかもこれによつて万一党内に問題が起るようなことがあつたならば、これは解決する用意がある。そういうことを拝聽しております。これは誤傳であるかどうか私はわかりませんが、それ以外に大藏大臣といたしましても、やはり利拂問題について、どこかの出先で御言明等があつたのを総合いたしますと、これはもう歴然たる一つの現内閣の御方針というふうに、私は今日まで考えておつたのであります。こうした問題はきわめて早く決定を願つて、これが本予算提案の遅延が大きな原因になつておるのでありますから、強くこの点をお改め願うことにいたしたいと思つております。  それから労働問題についてちよつと申し上げますが、最近労働組合が大分異数の発展をした、まことに喜ぶべきことでありますが、しかし日本の今までの國情や、あるいは生活水準とか使命とか訓練とかいう面からいたしまして、どうも発足いたしました労働組合運動が、ややともすれば逸脱した行動に陥つておる。この問題は、ひとり一、二の人が申すのではなくて、今日の段階では、各階層から叫ばれております。この問題について、労働委員会か何かの席上で、芦田総理大臣が私見をお述べになりました。あわゆるタフト・ハートレー法と申しますか、そうした構想の一部を引用されたこともございますが、これらの総理の御意見等については、結構地方には共鳴する人がおられる。この点たまたま社会党と申しましようか、その團体の諸君が、その眞相の究明に面談を願いますと、その世論の相当琴線にふれた総理のお言葉をみずからお捨てになり、これは一個の私の意見であると言われ、多くの國民を相当失望させたような事実がございます。実際のところ、今日の段階では、その当時総理がお述べになつたような御構想が当つておるのではないかと私は思います。これは重大な問題でございまするから、かりに一党一派の者がどう申そうとも、総理の心中に描かれた正しい線というものは、これはひとつ総理の名においてお考えがなされることがいいのじやないかと考えられまするが、この席上ではつきりそうした御構想をお述べを願いたいと思います。
  69. 芦田均

    ○芦田國務大臣 労働法規の問題につきまして、昨日お二人の委員諸君から質問があり、私よりお答えをいたしたのでありますが、ただいまの磯崎君のお話は、大体新聞紙の記事を基礎にしてのお話ではないかとちよつと感じたのでありますが、私が話しました場所は、衆議院の外務委員会と衆議院の労働委員会であります。その発言は速記録に残つておりますから、それが一番正確であろうと思います。私は日本において労働運動の民主的な発達を、最も強く希つておる一人であります。從つて政府としましては、法律その他の固形したる規則によつて労働運動をかれこれと制限するようなことがなく、自主的な勤労階級の自覚によつて、組合運動が正規のレールに乘つて発達することが、最も望ましいと考えておるのであります。三党政策協定において規定いたしました言葉の趣意には、この際政府としては、勤労階級の労働意欲を阻害するごとき法規をつくらないという意味をはつきり掲げております。從つて、今日の日本の労働界は、爭議の面から見ましても、比較的鎭靜しつつあり、また労働組合自体の方向も次第に健全化しつつある。一部矯激なる煽動者の言辞にもかかわらず、勤労階級全体としては、健全なる方向に動きつつある。かように考えておるのでありまして、かかる際に、いたずらに勤労階級に誤解を招くような措置はとりたくない。しばらく政府としては、愼重なる態度をもつて労働運動の正常なる発達を支援し、これを見守るべきである。かように考えるのであります。しかしながら、万一われわれの期待に反して、労働運動が予期せざる矯激なる方面に走るようなおそれがある場合には、政府はこれに向つて適切なる措置をとらなければならぬ。かように考えておる次第でございます。
  70. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 ただいま総理の御回答は、ごもつともでございますが、最近各労働組合方面の空氣等も考えますると、各組合員が、いろいろ爭議の禍中にはいつておりますが、その大数が、ほとんどみずからが行く過ぎ、みずからも困つて、二、三のきわめて少数なる指導階層の行き過ぎを難じておる。むしろこれは國家が適切なる手を出すのが妥当ではないかという声が、その陣営から出ておるくらいでございます。もちろんこれはそうした労働階層の氣分をいらだたせることはよろしくないことでありますが、きわめてわずかな、しかも政治思想の形にはいる少数の指導層によつて、純眞なるベきそれらの組合員の声をおおうということは、まことに私は遺憾に思います。かくのごとき段階にはいつております以上、時の推移によつて、きわめて適当なる改正をすることが妥当ではないかと思います。殊にこの問題に対しまして、実は労働大臣加藤氏が就任当時、力強く改惡はいたさないと言つた。しかも職を賭してもいたさないというお声があつたことは、御承知の通りであります。しかもその組合員の幹部に書面をさえお出しになつたということすら伺つておりますが、事実とすると、まことに遺憾な問題であると考えております。この問題について、やはりひとしく社会党のうちでも、西尾國務相のごとき方のお考えは、これにいろいろの批評を加えております。加藤君がああいう主張をいたしましたのは、これは加藤君の名において、一個の形においてしておるのだ、政府としては、かような無責任なことを独断でいたすべきではない。時の進行過程によつて、情勢によつて改正すべきは改正するということで、やはりこの問題についての一つの示唆を與えたように私は思います。そうした關係でございますから、まず総理大臣が、さきに労働委員会においてお述べになつた御構想や、あるいは副総理の氣分や、あるいは職場におけるこの眞劍なる、純眞なる労働階層の意見や、ここらをひとつ御参酌になつて、まさにこのときが労働組合法の改正が妥当ではないかと私は考えますが、さようなことについて、ぜひひとつお考えを示していただきたい。  さらに最後に私はこれもひとつ一緒に申し上げますが、総理大臣の御構想すべては、私まことに賛成します。ときによろしいことがあります。しかしたまたまいいことを御発議になつても、それをすぐ御変更なされるというとこらに、御性格のせいか、まことに私失望を禁じ得ない。一体現内閣は三派連立によるイデオロギーの違つた組織の上に成り立つておる内閣でございまするから、從つてそこにはなみなみならない御心配もあるとは思いまするが、また殊に議会内におけるところの安定勢力も、まつたく安定とは申せない、そうした關係から、ややともすると、私は少しお考えが勇猛果断にいかないようなきらいがありまするが、少くとも芦田均氏が、いわゆる國会から指名を受け、みずからこの難局を救わんとして組閣をなすつた以上は、閣僚の中に多少の意見を異にする者があつても、この難局を切拔けるだけの勇猛心をもたれることが妥当ではないかと思います。実は閣員の中に、ただいま申しまするような、やや逸脱したような同僚がございますれば、これこそまさに罷免権の発動をして、断々固として芦田内閣として進むべきに進まなければならぬではないか。この問題は特に私は國民の各方面に欝勃として、芦田内閣の性格にいかにもやわらかい、いかにも失望させる、強い力がないというような声がありまするから、あえて忠実に総理に訓言を差上げる次第でございまして、この席上を通して、強力なる御声明を煩わしたいと思います。
  71. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま磯崎君より熱心に激励の言葉を受けまして、私としてはまことに感激する次第であります。不才の身でありますが、この難局を前にして、せつかく國民大衆及び國会の方々の御支援を得て、危機突破のために全力を盡したいという決意をいたしておる次第であります。なお閣僚の中に、内閣の意見と違つた意見をしばしば出す者があるというふうなお言葉でありましたが、この内閣においては、閣議において方針がきまつたならば、これに反するような行動をとる閣僚はありません。しかし政府として具体的に対策を決定しない前には、これに対する種々の論議があることは、世間の常であります。しかしながら、一たび政府において正式に方針決定した以上は、閣員ことごとく一致して、その政策の遂行に努力すべきことは、もとより当然のことと考えておりますが、今日までのところ、さような閣僚は一人もないということを、ただいまここではつきり申し上げておきます。
  72. 磯崎貞序

    ○磯崎委員 ただいま総理のお話がいろいろありましたが、私は閣僚の中に不謹愼な者があるということを強く申し上げます。ある労働組合に書面を勝手に出すというようなことは、少くとも逸脱したる行動であり、これは閣僚の他の名において相当修正せらるべきであると考える。しかもそうした考えをもつ者が、今日のように労働組合法を改正すべき段階になつて、なおがんばつておる。これに対して罷免権の発動もまた可なりというような勇猛心で願いたいということを強く申し上げまして、私の質問を打切ります。
  73. 川島金次

    川島委員長代理 次に苫米地君。
  74. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 総理大臣は、外資導入によつて、現在日本の直面しておる危機を打開する自信があると仰せられたように承つております。この点については、私も同感でありまして、現在外資導入によらなければ、日本経済の再建ができないということは、何人も認めておるところでありまして、この方向に向つて総理がせつかく御努力になつておるということは、日本経済再建にために、まことに慶賀すべきことであると存ずるのであります。しかし昨日からも問題になつておりますが、内閣の閣僚の意見が、非常にまちまちである。お互いにあれはあの閣僚の個人の意見であるというようなことを言うておりますが、ある一人の閣僚は、新聞紙上で見たのでありますけれども、総理大臣の言われたことに対しても、あれは総理一個の私見だ、こういうようなことを言うておられるのでありまするが、そういうことでありますと、國民はせつかく総理が明るい方面國民を引いていこうとされるのが、非常にぶち壞されるのじやなかろうかという感じがいたすのであります。例をもつて申し上げますならば、先ほどから問題になつておりますが、食糧問題につきましても、不幸にして私どもは議事録を手にすることができないので、読むことができませんし、また労働問題につきましても、議事録をもたないので、はつきりこれを議論することができないが、各閣僚の言うておられることが矛盾しておることだけは、新聞ではつきりしておるのであります。次に國会においての大臣の御答弁は、いかなる場所においての声明談話等よりも正確のものがあり、それが基本であるべきだと、私は深く信じておるのであります。しかるに昨日の御答弁を伺いましても、軍事公債の利拂問題について、三月以來内閣の方針は変つておらない、こういう御答弁であつたのであります。もしそれが眞であるとするならば、三月の最後的答弁は、軍事公債の利拂はしないのだ、これが前提だ、その後の処理について委員会で話し合つてきめるのだ、それを参考にして政府がきめるのだ、これならば利拂停止ということは既定のことであります。しかるにこれに反して、総理は昨日、報告が近日中に出てくるから、それによつて利拂を停止するのかしないのかきめる。これではまさに三月の総理大臣が責任をもつてと言われたその責任をもつて答弁せられたこととうらはらになつた。しかもそのうらはらになつておることが議会で答弁されて、昨日総理からそのお話を承る中間において、外部において、利拂はしないのだということを、いろいろの閣僚が言うておられる。これでは國会における御答弁は、まつたく國会を切拔ける一つの政策にすぎなくて、そこに何らの誠意も認められず、信頼感ももてないということになるのであります。そこできのう御答弁の三月の答弁と現在と変つておらないということと、総理が答弁せられたのと、この二つに矛盾がありますが、これはどういうことであるか、まず御説明を承りたいのであります。
  75. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま苫米地君より三月の國会当時における方針と、最近の方針とは非常に変つておるというふうなお話がありました。私どもとしては、三党政策協定の線に沿うて進んでおるのでありまして、この三党政策協定というものを文字で読むと、中には具体的にどういうことを指すのかという多少の疑念をもたせるような点があるかと思いますが、それだけに幅をもつた組み方をいたしたのでありまして、一字一句によつて金縛りにするという意味でない箇條が数箇條出ておるのであります。從つてだんだん議論を進めておるうちに、結論を見出していくのだという意味において、委員会をつくつたものも二、三あります。政府がすでに委員会をつくつた以上は、この委員会の意見を参酌して決定するということになるべきは当然のことであります。委員会をつくるということの決定があつたそのときから、政府はこの委員会の決定に相当重点を置いて最後の政策をきめるということになるのは、当然なのでありますから、昨日私がお答えしたしきには、近くここ数日の中に学識経驗ある人々を集めた委員会の報告書が出てくる見込みでありますから、その報告を十分参酌して、最後の決定をいたしたいということを述べた次第でありまして、その点の問違いはないと信じております。
  76. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 総理のただいまの御答弁は、その自身はまことに理論的であり、まさにその通りであると思うのであります。しかし三月のこの席上において交された資疑應答によれば、いろいろの解釈を許さないことになつておるのであります。それは大藏大臣は三派協定に從つて利拂は停止するのだ、その停止後の処置については委員会においてきめるのだ、こうはつきり言つており、総理はその答弁を内閣の責任において認めるとおつしやつたのであります。この具体的に明確に他の解釈を許さない答弁に対して、今の総理のお話とは著しい矛盾があることを、私は感するのであります。この二つの間にある矛盾をお感じにならないのならば、これはいたし方がありませんが、私はこの一つ一つを離してみればはつきりしておるけれども、この二つの並べて考えるときに、明らかに矛盾がある、私はこう思うのであります。そこで昨日の総理の御答弁が、三月はこういうように言うたけれども委員会の報告に基いて三派協定をやり直す、こういうお話ならば話が通る。しかしそれであるならば、その中間において國会で言うたことを矛盾する答弁は閣僚はなすべからざる責任をもつている、私はこう申し上げたいのであります。この点いかがでありましようか。
  77. 芦田均

    ○芦田國務大臣 いろいろ苫米地さんから御忠言を受けおしかりを受けまして、まことに恐縮であります。この問題はすでに三月以來十分論じ盡それた問題でありまして、政府としても、すでに数回にわたつて答弁をしておる。昨日も西村君及び東君の質問に答えたのでありますから、重復を避けて、どうか昨日の答弁通りということに御解釈を願います。
  78. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 総理の御答弁は、それ以上のことはおつしやることができないと思いますので、この問題はそこで打切りますが、どうか今後國会において大臣が御答弁になることは、責任をもつてあとからいろいろ動かすことがないように、もしそのときに明瞭に答えることができないならば、明瞭に答えることができないというようにおつしやつていただきたい。こういうことを申し上げて、この問題は打切りたいと存じます。  現在日本の復興を妨げておるものは何であるかと申しますと、私見をもつてすれば、能率の底下、これが一番の根本にあると思うのであります。しからば何が能率を底下させておるかと申しますと、それはいろいろの原因がありますけれども、きわめて大きなものを取上げてみますと、それは官僚統制と組合運動の行き過ぎ、この二つにあると、私は考えるのであります。しかしこの官僚統制と組合運動の行き過ぎとを適切に処理することができなければ、能率の向上ということはできないと思うのであります。しかしこの問題は事務的に処理できる問題でなく、強い政治力を必要とするものであると思うのであります。そこに強力内閣ができることが必要であると私は信じます。これも新聞で見たのでありますから、間違いがあるかもしれませんが、ニユーヨークタイムスの東京特派員Lバロツト氏が言うたという言葉でありますが、それを読み上げてみます。「近年日本政府は短命であり、降服後の日本政府はいずれも連立内閣で、内閣自身の中で経済政策に關して基本的な意見の対立がある。これでは外國の投資者(政府であれその他の投資者であれ)を吸引することに足る政策の一貫性はまず望めない。」こう申しておりますが、これを読んで感することは、先ほどから問題になつております閣僚の間の意見がまちまちで國民が迷つており、そして奇異な感じをもつておるということを、外國の通信員がこういうふうに指摘いたしておるのであります。またシカゴ・トリビユーンのやはり東京特派員であるところのW・シモンズ氏が、こう言つております。産業の運営に対する支配力がますます大きくなつておる。官僚の非能率、知能、礼節の欠如は周知の事実であるが、官廳事務室に足を入れる部外の者は惡臭、汚穢と時間浪費とに平氣でいる、その場の空氣に恐れ入つてしまう。投資する金がある外國人でも、このような空氣の中から生れる氣まぐれ統制に大切な金を使わせる氣にはなれない。このシモンズ氏の言葉の中に、官僚統制の欠陷が明らかに描き出されておるのであります。もちろん総理は健全財政を立てる前に行政整理もやる、地方出先官憲も整理すると言うておられますが、さらに根本にはいつて行政整理の着目点はここにあるのであります。現在私どもは物の足りない今日、統制のある面において必要なことは十分認めており、これを強化していかなければならないということも承知いたしておりますけれども、現在何ら統制を必要としないものが非常に多いのであります。たとえてみますならば、北海道で産出されるこんぶのごときもの、これが統制せられておる。しかるにその結果を見ると、引取らない縣がたくさんある。そのこんぶをとるのには、占領軍から油をもらうわけではない。政府の補助を受けておるわけでもない。こういうようなものに対して統制を何で行つておるのか、私どもは了解ができないのであります。こういつたようなあつてもなくてもよい統制、また公定價定というものが、昨日も申し上げたのでありますが、七十六万のマル公がある。こういうことをやつておるので、非常に大きな人員を要するのであります。しかも物價改訂をおやりになるということになつても、昨年の例をもつてみましても、同時決定ということを言われたけれども、同時決定ができなかつた。それがために産業会は非常に行き詰り、物價が動かなくなり、そのために物價の値上りが起き、また賃金の要求も出てくるというようなことで、非常に失敗をした例ははつきりいたしておるのであります。そのでここにもあるように、非常に支配力が増してきておる。しかも非能率であるというのでありますからして、私は出先官憲のことを考えると同時に、物價問題とも照し合わせて考えて、必要のないところの統制ははずしてしまう。たとえてみれば、どんなに多く見積つても、國民生活に直接必要な勤労者の生活裏づけになるような統制品は五十を超えないと思うのであります。マル公をきめるとしても、七十六万というような数にしなくても、いくら多く見積つても、三百とか五百とかいうくらいの限度で止められるのではないか。もしこういうふうにいきますならば、財政負担が非常に軽くなつて、総理の希望をかけ、また御努力になつておるところの外資導入のたけに、ドレーパー陸軍次官が言うておられたという健全財政の樹立のためにもなると思うのであります。殊に人員の多いということは、ただに給與が殖えるということでなしに、この人員に伴うところの間接費というものが殖えてくる。のみならず過剩人員は能率を底下する。さらに進んで考えてみますと、この大きな過剩人員のために民間が非常に迷惑しておる。非常な手数を要する。またこの統制のために厖大な権限をもつておる官憲に対して時間と金とを費やす。官僚の腐敗はまさにそこがら生れてくる。こういうことを考えますならば、私はこの官僚統制というものを嚴重に御檢討になつて、これは二十三年度の本予算をおつくりになるまでに間に合わないならば、早急にこれをお運びにならないと、この外資導入にも影響してくるのではないかと思うのであります。次に組合運動の行き過ぎでありますが、これに対しても昨日から総理は勤労者の生産意欲を傷つけるような、低下させるような法規の改正はやらないということをおつしやつておられますが、御趣旨にはまことに賛成でございます。しかし外資導入はすでに目前に迫つておる。そう安閑として組合の人々の自覚を持つておるだけの余裕は現在ないと思うのであります。しかも本日午前中、加藤労働大臣はこういうことを言うておられる。それは組合が封建的で少数の指導者に任せておけばいいというような考えをもつておる。しかもその指導者が間違つたことをやつておるのだ。もしそれであるならば、その少数の指導者に失望させても、全体の勤労意欲を害するこにはならないと思うのであります。この労働問題については、先ほど申し上げましたシモンズ氏は、こういうことを言ております。まだ知らなかつたデモクラシーの味を初めて味わつた日本労働者は、無責任で、氣まぐれな態度で経営者に対している。不可能な賃上要求を行い、会社の経理状況がそのような賃金の支拂いを許さないことを十分に知りながら、強引にこれを要求する。たとえば罷業中の賃金の支拂い、組合員給與の会社負担、罷業に伴う出費の支拂い、生産管理など、共産主義者が編み出した米國では聞いたことない権利を獲得している。組合運動の行き過ぎという点について、これだけではなしに、会社においても官廳においても、その事務室などまでも官廳の建物、会社の建物を、そのまま無償で使つておるような事実もあるのであります。ただこれが爭議に關するばかりでなしに、また給與の問題を離れても、教員組合などでは專任の役員が学校の所在地を離れてわきに行つてつて、すでに教員が足りないと言つている今日、生徒を放つておいて、学校から給料をもらつて組合運動ばかりやつているのがあるのであります。現地の教員組合運動などにも、相当の行き過ぎがありまして、日本は教育によらなければ新しい正しい國家の建設ができないと申しておりますけれども、現在のあの間違つた組合運動が長く続けられるならば、教育亡國が起るのではないかという憂いまでももつておる人があるのであります。
  79. 川島金次

    川島委員長代理 苫米地さんにお願いしますが、まだ他にも質問者がございますから、なるベく簡潔にお願いしたいのですが……。
  80. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 そこで私はまずこの組合運動の行き過ぎを是正するためには、早急に法規の改正も必要であると思います。総理は法規の改正をやつても、それだけでは万事ではないと、きのう御答弁がありました。その通りと私も存じますけれども、今日は外資導入という総理の大きなねらい、そして國民の大きな期待を全とうするためにも、これはパロツトの言うように、連立内閣で大きな期待はできないとしても、ここのところはひとつ大いに決意をもつてつていただきたいと思うのでございます。  物價問題については、これは健全財政を維持するためには、本予算を組む前に物價決定がなされなければ、辻褄の合つた予算はできましようけれども、時間のずれからくるところの不健全さもしくは物價騰貴からくるところの不健全さというものが続くだろうと思うのであります。そこで政府の御方針としては、きのうから承るところによれば、全面的の改訂はやらないで、一部の改正だけやる、基本的のものだけやるというお話でありましたけれども物價は人為的にきめるのであれば、しかも基本的のものであり、運賃、料金というような基本的のものが引上げられるということになれば、漸次すベての物價に及んでいくことは必然であります。この点についてもちろん補給金等によつて調整することもできますが、私はこの物價の改訂、賃金の改訂というようなことは、本予算を組む前にひとつおきめ願いたいと思いますが、政府のお見透しはどうかということをお伺いしたいのであります。  なおこれらの問題について、共産党のフラクシヨン活動というものが、労働問題の行き過ぎ等に非常に大きな影響を與えているようでありますが、このフラクシヨン活動に対して、政府はどういうような対処方針でおられるかも承りたいと思います。なおまたきのうの新聞を見ますと、警官の教習所の待遇が非常に惡くて、病人が続出しているというようなこともありましたが、この方面の待遇等はどういうふうになつているかということもお伺いしたいと思うのであります。まだほかにお伺いしたい二、三点ありますけれども、時開の關係でこれで打切りたいと思いますが、以上の点について総理の御答弁を願いたいと思います。
  81. 芦田均

    ○芦田國務大臣 ただいま諸般の問題についてお尋ねがありました。政府が今当面しておる一番大きな問題は、申すまでもなく予算の編成と物價改訂の問題であります。二十三年度の本予算を編成するためには、その前提として物價改訂を行わなければ、現実に即した予算は編成できないではないかという御意見は、至極ごもつともでありまして、政府もその通りに考えております。目下物價改訂については、それぞれ当局において日夜案をつくつております。本予算提出以前に、必要なる法律改正案を國会に提出することにいたしております。巡査の教育をしておる修練所と申しますか、待遇が非常にそまつで病人が続出しておるというお話は、実は今初めて伺つたのでありますが、御承知の通りに、警察官はやはり先般給與委員会で決定した二千九百二十円の基準によつて俸給を支拂つておるのであります。特に警察官なるがゆえに、これに相当する他の官公廳の職員より低い待遇を受けているというわけではないのであります。殊に官給の被服などもありまして、警察官は必ずしも官公廳の中で最も惠まれない給與を受けておるとは考えておりません。しかし、そういう事実がありますかどうか、まだ報告に接していないのでありまして、そういう事実がありますれば、ただちにこれを改正することにいたしたいと思います。  なお共産党のフラクシヨン活動に対して、どう考えるかということでありましたが、共産党はわが國の憲法法律に從つた合法的な政党であります。その行動が特に法規に反せざる限り、政府としてはこれに關與する意向はもつておりません。しかしながら、共産党その他の名によつて労働組合運動が常軌を逸脱するごとき行動に出た場合においては、嚴重に法規に從つてこれを処罰することは申すまでもないのであります。なお官僚統制のやり方、行政整理等について、いろいろ御意見を伺いました。大体において御意見には私どもも同感であります。ただこれらの弊害を除くということは、なかなか容易ならぬことであります。組閣以來四十何日、いろいろその点について考慮もいたしておりますが、近く行政整理の案も発表することができると考えております。統制についても、施政演説に申しました通り、必要のない統制はこれを外すという方針を立てておるのでありますが、御承知の通り、七十何万に上る統制種目は、すでに一両年前から行われておる統制の結果でありまして、將來諸般の情勢に鑑みて、絶対に不必要なりと思われる統制は、速やかに撤廃いたしたいと考えておる次第であります。
  82. 川島金次

    川島委員長代理 この際運輸大臣が出席されておりますので、運輸大臣に対する質問をお願いいたします。海野三朗君。
  83. 海野三朗

    ○海野委員 運輸大臣にお伺いいたしたいのでありますが、奧羽本線の福島、米澤間の電化工事の問題であります。これが最近中止の報が縣に傳わりまして、各所で市民大会を開き大騒ぎをやつておるのであります。あの板谷のトンネルは御承知のように、約二十に近い小さなごちやごちやしたトンネルがあるのでありまして、あそこをお通りになつて見られた方はよくおわかりのことであろうと思いますが、まことに不便な、何とも申しようのない地獄のトンネルでございます。それは一昨年その工事に着手されて、これが続継事業できておつたのでありまして、すでに六割までも完成の域に達しております。今日この電化工事を中止されますと、裏日本全体がこれによつて文化に浴することができないのであります。由來この山形縣は米の産地として、供出におきましても全國二番、また納税の成績から申しましても相当な成績をあげておることは、すでに御承知のことであろうと思うのでありますが、この冬季雪に埋もれた地方の人たちは、容易なことで口に現わしませんが、黙々として働いておる。この地方のトンネルを特に予算の都合で簡單に削られてしまつては、まことに農民一同、縣民わけてもこの裏日本全体が非常な大損害をこうむるのでありまして、これは何としてでも、この仕事を継続していただかなければならないと考えておるのであります。私はちようど三日ほど前に米沢の市民大会に出席をいたしました。この市民の実の熱烈な叫びは、米を供出し、税金もわれわれがはだかになつてでもお國のために盡さなければならないと思つておるのに、文化の恩惠に浴することができない、まことにわれわれは不服であると言つて、縣民市民一同大反対をして、どうしてもこれは継続していただかなければならないということを決議して、近く大挙して知事初め市町村長農民、皆この國会に押し寄せることになつておるのでありますが、どうか運輸大臣としてこの惠まれざる東北方面につきましての御所見を承りたいと思うのであります。殊に同じ山形縣にありながら、山寺から小國に行きますのに、東京に來るよりも、なお時間を要するというような運輸状態のさまであります。黙つておれば、人の痛いのは何年でもこらえるというような政府のやり方であると私は思う。ここに山形縣の地図を持てきておりますが、この山寺から小國に至る間に、三度も乘り換えなければいけない。そして待合せの時間を入れますと十時間もかかる。こういうようなところに少し目を注がれまして——何事も東京を中心しておやりになつておるようでありますが、地方のことも少し考えていただきたいと思いますので、この点について運輸大臣の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  84. 岡田勢一

    ○岡田國務大臣 お答えいたします。海野君の御指摘になりましたように、奧羽本線の福島・米沢間の電化工事は、ただいままで約六割方竣工をいたしております。これはお話のように、日本においても特殊線でありまして、勾配の点、あるいはまた隧道が多い点などから考えまして、運轉上の困難、あるいは石炭の節約藤の見地から速やかに電化をいたしたいと考えて、着手をしてやつておるのでありますが、ただいまいろいろの關係で、御指摘のように、一時中止されそうな形勢になつております。今御指摘のように、東北方面における滯貨の状況、それから列車運轉数が少いということもよくわかつております。山形縣並びにその隣接の縣の諸君に御迷惑をかけておりますので、早く是正いたしたいという考えで、列車本数の増加、貨車の増加その他について、今努力をいたしておるのであります。海野君御指摘のように、先般來から私どもに対しましても、山形縣その他福島、仙台方面からの陳情も盛んに承つております。御迷惑をいろいろおかけいたしておりますことにつきましては、はなはだ遺憾であると思つております。ただ運輸省といたしましても、この電化工事は予定のごとく本年中に開通する運びにはとうていならぬのでありますけれども、時日が若干延びましようとも、何とか工事に再着手をいたしまして、なるべく早い期間に開通をさせるという方に向つて、ただいま関係各省並びに関係方面に対しまして、熱心に交渉中でございます。海野君のお話によりますると、この関係地方の住民諸君が、いろいろとこの中止につきまして刺激を受けられまして、恐慌を來しておるというお話でありますが、私どももその点につきましては、よく報告も受けておりますので、非常に心配をいたしておるのであります。何分一面におきまして、私どもは今われわれが置かれておる立場の関係から、制約される部面もございます。早く海野君御指摘の御要望に副うように努力をいたしたいと考えております。  なお第二の山寺・小國間の運轉時刻の延びますること、これは御指摘のように、乘換えを三度もやらなければならぬところでありまして、この点については、先般も地方の人からも陳情を受けております。來る七月から実施いたします時刻改正までにこの問題を好轉さすように、運輸当局といたしましては努力をいたすつもりでございます。以上で御了承をお願いしたいと思います。
  85. 川島金次

    川島委員長代理 本間君。
  86. 本間俊一

    ○本間委員 実は私は農村金融の問題につきまして、一点だけ農林大臣、総理大臣から御答弁をいただきたいのでありますけれども、農林大臣が見えませんので、そうめんどうな問題でもありませんから、この際総理大臣に御答弁を煩わしたいと考えるものであります。  同僚議員からも今度の農村に賦課せられました税金について、いろいろ質疑應答があつたのでありますが、今度の税金の賦課で農村が非常に大きな打撃を受けた原因の一つは、御承知のように一年で支拂うべき税金が、今度一遍に來たという点と、もう一つは肥料代金を今度は昨年の分と、それから今年植えつけをするに必要な代金と、二度の肥料代金を一遍に支拂つておるという関係に相なつておるのであります。その結果大きな税金がきて、その税金が短期間の間に徴收された。さらに從來肥料代金は收穫した秋に拂うべきものを、今年は昨年度の分とそれから今年使用いたします肥料代金と、二箇年分を現金で、肥料公團の関係もありまして一遍に支拂わなければならない。こういう状況になつております関係上、今日の農村は非常な窮迫した金融状態にあるのであります。それは米を供出いたしました代金が農業会を通じて大体いくらいくら行つておる。そのうち今度の更正決定によりまして、税額がその村から大体いくらいくら支拂われておる。さらに肥料代金はいくらというふうに、それがきわめて簡單な計算になるのでありますが、そので從來の農業会は協同組合に改組中でありますが、その関係もありまして、この新しくできました農業組合が、預貯金をまつたく一遍に引出されておるのでありますから、今後五月初めごろまでは、あるいは何とか運営もできようが、その後六、七、八、九月、殊に單作地帶の五月以降の協同組合の運営、部落の運営、殊に食糧を再生産いたします九月一ぱいまでの運営をどうするか。こういうきわめて緊迫した問題が起つておるのであります。すでに本予算を來月中旬に提出せられるということでありますから、各地方からかかる農村の金融が、きわめて逼迫しておる、非常な緊迫を告げておるという報告は、すでに政府の方に参つておることと思いますから、内閣としても十分これに対して御考慮せられておることと思うのでありますが、これは何とか善処しなければならぬ問題であります。なるほど今日農業手形の問題等もありますけれども、これは單に農業手形をどうするかというような問題ではなくして、大きな税金を賦課いたしました、しかも機構改革から來たところの、未だかつて見ない農村の窮迫した金融状況になつておるのでありますから、これは当然芦田現内閣が善処してしかるべき問題であります。もちろん私はただいまどういう方法で、この農村金融の逼迫に対して善処せられるかという、具体的な問題についてお尋ねするのではありませんが、これは必ず現内閣の責任として善処せられるという方針のもとに、いろいろ具体的な案をお考えくださることが当然だと私は思いますから、この際この近年に見ない農村の金融の逼迫に対して、政府は必ず善処するという御方針で結構でありますが、その点をとりあえずお伺いいたしたいのであります。
  87. 芦田均

    ○芦田國務大臣 農村金融の最近に至つてきわめて逼迫しておる状況は、ただいま本間君のお話の通りであります。殊に農林中央金庫も案外余力がない今日でありますから、政府においても特に日本銀行と相談をいたしまして、目下それぞれの案を立案中であります。必ず善処することをここで約束し得ることと思いますので、さよう御了承を願います。
  88. 川島金次

    川島委員長代理 この際労働大臣が見えられておりますので、先刻の労働大臣の答弁に対して、関連質問希望がございますので、苫米地君の質疑を許します。
  89. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 加藤労働大臣が組合運動に十分な理解をもたれて、これを健全に育成しようとしておられるその努力に対しては敬意を表するものであります。しかし先ほどの御答弁を伺つておりますと、私どもは何としても納得のできない部分があるのであります。これは吉田内閣の当時でありますが、この部屋において、米窪氏が石橋藏相に向つて、争議の際にはその争議中の給料も拂え、争議の費用負担しろというようなことを非常に主張されて、また生産管理も正定だというようなことを主張されて、非常にここで激論をされたことを私は思い出すのであります。ところが現内閣になりますと、この生産管理については、加藤労相もいくらか意見が変つてこられたようである。たしか本会議の御答弁だと思いますが、それによつてみましても、生産管理は差支えないけれども、工場を占領するとか、その他の権利を侵すという犯罪的の行為はいけないというように、大分変つておるけれども、それでは実質上生産管理はできないということになる。そういうところに大分進歩された跡が見えるのであります。そうしてまたきのうの御答弁によれば、争議中の給料を拂わない。これはきまつておる。世界にそういうところは一つもない。こういう話でありましたが、これは石橋前々大藏大臣が世界にそのことがないと言うたら、世界にそういうことがなくても、日本ではそのことが必要だという主張がここで行われたのであります。さて私の納得できないのは、先ほどの御答弁によると、組合がまだ貧弱であつて、そういう給料を負担することができないから、当分の間やむを得ない。こういうのでありますが、これは理論的に言うても、実際的に言うても成立しない部分が非常に多いと思うのであります。第一にこの争議をやりながら、会社なりもしくは政府なりの援助を受けているということは、組合の独立性を失つているところのものである。世間でいういわゆる封建的なものである。組合の健全なる発達のためには、どうしても組合は独立しなくてはいけない、これが一つであります。その次は私は組合の中には貧弱なものがふることもあろうと思いますが、なかなか貧弱どころじやない、組合員からとつた金を使いどこに困つているようなところもある、またどういうふうに使つているのか疑惑になつているところもある。例を申しますならば、全逓は一人五十円ずつとつておる。年まさに一千八百万円の收入がある。鉄道では一人二十円とつておる。六十万としても千二百万の金が集つておる。せんだつて全財の陳情が非常に舞い込んできた。そのときに彼等の收入の差引かれる分とが書いてあつたのであります。これを見るというと本俸に対して百分の五、百分の十というような割合のものが非常に多いのであります。愛知縣のごときは、一人五十円をとつておる。あの厖大な組合員をもつてつてこれだれの組合費をとつて、これは一体誰が使つているのか、どこに使つているのか、そこに大きな疑惑があるのであります。今あげたのは一例でありますが、まだほかの組合についても大体同じようなことを言えるのがあるけれども、これで貧弱である、役員の給料が出せないということは、どこから割り出しておつしやるのか、それを明確にしていただきたいのであります。
  90. 加藤勘十

    加藤國務大臣 ただいまの苫米地君の御質問にお答えいたしますが、生産管理の問題、それから争議中の給與支拂の問題について、この予算委員会の席上で、吉田内閣当時にどういう御議論が展開されたか私存じませんが、その当時の議論のいかんにかかわらず、われわれは労働組合の発達の段階に從つて、実際に基いて見るべきものであつて、固定的に見るベきものではない、こういうように考えております。テンポの急激に変化していきつつある日本の現状におきましては、きのうの意見がきようの意見といわれないし、きようの意見がいつまでも固定的に將來を律するということにもならないと思うのであります。從つて争議中の給與支拂の問題におきましても、これを賃金増額を要求するその当時の労働者の実際の生活と経済情勢とが見合つて、——要するにわれわれは労働者の賃金の問題は、労働者の生活の問題であり、労働者の生活の問題は、生産意欲を増強せしむるというところに帰着するのであります。そういう生産の点から観察すれば、その当時の状況のもとにおいて、それぞれ意見が生まれてくると思いますが、その点はしばらく他にしまして、組合專從者の問題についての御疑義のようでありまするが、私は午前中の答弁においても申し上げましたる通り、これを純理論的に見れば問題ではないのであります。組合員が組合の独自の運営をするに当つて、独自の経済負担によるこというまでもありません。しかしながら、実際日本の労働組合の設立は、終戰後の問題でありまして、きわめてわずかな時間に、全体の数からいけば六百万という、これまた諸外國に例を見ることのできない急激なる数の成長を遂げておるのであります。しかしその内容について見ますれば、なお不十分なものがありまするし、殊に労働組合ができたということは、日本の民主主義化の強力なる推進力として組織されたものであるということを考えなければならないのであります、そういう点から、われわれはこの質的向上を数的向上に伴わしめるためには、強力なる教育活動が展開されなければならない。この教育活動をするために、もし現在の組合から與えられる少額の給與によつてなし得る人は、比較的身軽な家族をもたない人が自由に飛びまわり得られるのでありまして、少額な給與に甘んで得られるのでありまするけれども、組合を健全なる発達に導こうとする相当の年配に達して、思慮の周密な人が動こうとしても、家族その他の関係で、実際に動き得ない。こういうことになりまして、組合活動が非常に偏する危險を感じます。そのゆえに私は、理論的に見れば問題でないのでありますけれども日本の労働者運動の発展の現実情から、なおそういうものが暫定的に置かるベきであると、こういう見解をとつております。またただいま組合費の実例をおあげになりまして、全逓がいくら、國鉄がいくら、全財がいくら、そうしてしかもその使途が不明である、あたかも組合幹部のこれらの経費の使途についての疑惑をおもちのような御意見のように承りましたが、これは私の直接與かるところではありませんが、組合幹部の名誉のためにも、そういう点は明白に組合側から会計報告はなされておるはずであると存じます。今日なるほど十万、二十万もしくは國鉄全逓のように四十万、五十万という組合員をもつておりますれば、組合費はそれに準じて相当巨額なものが集まつてまいりまするが、今実際に使つておる費用、主としてこれは教育活動に費やされておるのでありまするが、その教育がなされておるにもかかわらず、なお今日十分に組合員の質的向上を見ない、先ほど申しまするように、大体のことを幹部に任しておけば、何とかしてくれるだろうという依頼心が依然として強く残つておる。こういうことでは、結局少数の指導者に任せきりになつてしまつて、組合の健全なる発達を阻害する恐れがあることを御了承願えると思うのであります。そういう点から、われわれは組合員ができるだけ多くの人々が、——全部あればそれにこしたことはありませんが、全部の組合員が、自分のことは自分で賄わなければならない。組合のことは自分達の自主意思によつて運営されなければならない。少数の幹部は組合の組織の一つの機關を運営するのに、自分達が信頼したものにすぎなくて、何でもかでも、無條件に任すという性質のものでないということを、十分に理解されるまで、教育に努めなければならないと思うのであります。そういう意味におきまして、私は労働組合の堅実なる発展を希う。そうしてしかもそれが一日も早くその域に達することを望みまするがゆえに、私は暫定的に——なおそういう制度がもちろん数の上において初期と同じであるわけはないのであります、順次数を減らしていくし、また時間も順次短縮されていくように努めなければならぬとは思いまするが、暫定的には過渡的になおその必要があると、こういうような見解をとつております。
  91. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 今の御説明によりますと、その組合の幹部が、あたかも教育のために日本中をかけまわつているから金が要るのだというふうに聽えますけれども、必ずしもそうではない。各支部々々があり、そこで相当の金をとつておる。中央のものはまたそれをわけておる。でありまするから、あれだけの金をとつて、それで役員の給料がわずかで、できないというようなことは、どうしても私は信ぜられないのであります。それは組合のあるものにはそういうものもあるかもしれない。しかし中にはそうでないものもある。組合幹部の各誉云々ということもありましたけれども、この疑惑をもつておるというのは、組合員の人に聽いたので、私自身の意見ではないのであります。殊にまた私の郷里においてもうわさに上つておりますが、労働爭議をやつて、その闘爭委員が、今まで貧困な人間がりつぱな邸宅を買つたというようなこともしきりにうわさされておるのであります。これはうわさであるから、ほんとうであるか、ほんとうでないか、知りませんが、とにかくその人の名前まで指して、そういううわさが上つておる。こういうふうにしてみますと、中には加藤労相の言われるような組合もありましようけれども、そうでないものもある。であるとするならば、少くとも余裕のあるものからこういうものはやめていくとか、もしくはむりであつても全般的にやめるとか、何とか考えるべきであると私は思うのであります。爭議中の給料を支拂う、支拂わないという問題も、なるほどおつしやる通り、その時々の変轉はありましようけれども、あの当時と今と比べて、今の方がむしろ生活は困難になつておると思うのであります。時々刻々変つてくる現在の世の中というものは私ども認識しております。しておるが、あの当時と今とどちらが生活が困難であるかということを考え物價がどうなつておるか、給與と物價との開きがどうなつておるかということを考えてみますならば、今の労働爭議というものを是認する以上は、その当時と大した変りがないと、私は考えるのであります。さらにまた生産管理の問題については、その当時と今と何ら変つているところはありません。これについてもし御答弁を伺えるならば伺いたいと思います。
  92. 加藤勘十

    加藤國務大臣 労働組合が労働者から組合費をとつて、爭議の場合にその闘爭委員なつた者が家を建てた、そういうことがうわさされておる。しかも名前まで指されておるというに至りましては、私は労働組合の堅実なる発展の上からも、また組合の幹部の名誉のためにも、そういううわさは断固否定されなければならないと思うのであります。もしうわさがうわさとして、そのようなことが流布されるとするならば、ためにせんとする意図が含まれておる。もしそうでない、あくまでもそういうような事実があるということを示されるならば、これは私は堂々と背任によつて訴えていいと思います。さらにまたそういう爭議のために集めた金でもつて家を建てたという事実があるならば、これは横領にもなるわけであります。そういうことがうわさであるからというて、うわさがそのまま流布されるということを、われわれは聽き逃しにするわけにはまいりません。從つてもし苫米地さんがそういう事実を御承知ならば、事実を明らかにしていただきますならば、私ども労働組合の堅実なる発展を切望しておる者の立場からしても、十分そういうものに対して、何思います。ただそれが一片のうわさでありますならば、そういううわさはむしろ否定されることこそが、日本の労働組合の堅実なる発展を希うすべての者の願いでなければならないと思います。そ求めになつておりませんから、一言それだけのことを申添えておきます。  また生産管理の問題、もとより吉田内閣当時と今日と変つておりません。私どもは吉田内閣当時においても、今日においても、生産管理そのものは違法性があるとは思わない。但し生産管理には多くの刑罰法規の対象となる事柄が隨伴しがちであるから、そういうことは極力避けなれりばならない。こういうことは、その当時も今日も同じ見解をとつておるのであります。労働爭議中の給與支拂の問題につきましては、私どもは戰爭以前の日本の労働運動の状態においては、たいてい、これが爭議中の給與賃金という形ではありませんけれども、その爭議中の給與賃金に該当する概算的なものが、爭議費用という形式において爭議中の労働者諸君に支拂われておつた慣例をもておるのであります。そういう点から、そういうことも進歩発達した外國の労働運動の歴史にはありませんでした。ありませんが、日本の戰後の労働組合運動におきまして、その戰爭前のそういう習慣がそのまま残つてきた。これは一つには、大体爭議費用などというものは、きわめて不合理なものであります。けれども、ここには日本の労働者が外國の労働者に比べて賃金が非常に安いというところから生まれた現実の問題として存在しておつたのであります。それが戰後の労働爭議の場合におきましても、戰前の経驗がそのまま受継がれたものでありまして、依然として、外國の労働者に比べて賃金が安い。この物價賃金の比較において、日本の労働者の方が不利な條件のもとにあること、御承知の通りであります。そういう点から、この経驗がそのまま継続をされたのであります。しかし理論的に見れば、言うまでもなく、爭議中の費用も当然労働者、労働組合が負担すべきものであることは言うまでもありません。從つてできるものから順次合理的に、理論にかなうようにもつていきたい、すべてのものがただちに一挙に理論に合するように変轉せしるめるということは、はなはだ困難であります。從つて專從者の問題につきましても、われわれがこれを理論的に、本質的に見ればもとより問題ではないが、今日の現実はなおある程度これを必要とする。少くともおつしやいましたように、組合の幹部が組合員教育のために全國を飛びまわつておるがということに疑問をおもちのようでありましたが、飛びまわるばかりが教育ではないのでありまして、文書活動なでは、今日どこの組合においても、非常な活発な活動をしております。そういう費用、それからまたそういう文書活動に要する人件費なども、非常に多額を要しておるのであります。いずれそういうことは、組合が会計報告を公表することになつておりますから、明白になると存じまするが、そういう意味におきまして、あるのはまだ暫定的な方法として是認されることの方が、現実に合する問題である。だからと言うて、これをいつまでもいつまでもこの状態を続けていこうというのでは、もとよりありません。この点は組合の幹部諸君といえども、一日も早く理論に合するような方向へもつていきたいということを、しばしば話し合つてはおるわけであります。順次そうなつてはいきますが、今たたぢに全部を一挙に打ち切るということは、私はむしろ組合の発展のためにとらざるところである、こういう見解をもつております。
  93. 苫米地英俊

    ○苫米地(英)委員 うわさを流布したと言われますが、私はこういうことをわきで言うとことは一回もありません。私は人の言うことを軽く信じて軽く言う人間ではないのであります。ただ大臣の御答弁を聽いておるというと、どうしても納得のいかぬ点がある。こういううわさは、外部から出たのではなくて、先ほど申しました通り、内部の人から聽いたと私は申し上げておるのであります。内部の人がそういう疑惑をもつておるし、またそういうことを言つておるのだ。そこで私は組合の健全なる発達を非常に熱心に擁護しておられる大臣といたしましては、この組合の会計をもつと明確にし、もつとはつきり公表されるように、一そうなつておるそうでありますが、公表して、組合員の疑惑を解くということが、まず第一でなかろうかと思うのであります。大臣は全面的に解くことはできないとおつしやつたが、私も全面的には解けないかとも思いますけれども、できる面が相当あるのではないかという感じはいたしておるのであります。そこで理論において正しいとするならば、できることだけのことからでも、そういう理論と違つておるところをやめさしていくことが、組合の発達を早からしめるゆえんであると私は信ずる次第であります。
  94. 海野三朗

    ○海野委員 私は文部大臣にお伺いしたいのでありますが、日本の再建は科学的に起上る以外に途がないと考えておるのであります。しかも文教の府にあられる文部大臣として、現下の各大学研究所の研究費というものは、まことに微々たるものでありまして、ほとんど人件費が大多数を占めておる。そして資材を買う金にもほとんど窮しておるために、ほとんど研究もできない。そういう状態であります。また民間における九十余の財團法人の研究所における学者は、今日自分の研究はほとんどやることができないのである。研究所のごときはサツカリンをつくつたりなんかしておる。それが一流の学者がそういうことをしておる。それに対して何とかこの際文部大臣としてこの方面を活かしてもらいたいものだ。これを活かさなければ、日本の將來はただ属國としてあるのみである。ほんとう日本人の頭にあるところの科学的の頭脳を働かして起上らなければいけない。このほかに途がないと私は考えておりますがゆえに、重ねて文部大臣にこの方面の科学者の頭を活用するという点につきまして、文部大臣の御所見を伺いたいと思います。それから学会の報告書、今まで研究しました学者の報告、この報告を発表することができないので、各学会とも非常な苦境に陷つておるのであります。三月までの予算におきまして、文部省から多少補助金を学会の方にいただいておるようでありますが、なお重ねて各学会の報告を印刷をして、世界各國にこれを知らしてやる。そうして学術的な方面から、ほんとうに文化日本を建設しなければいけないというふうに思いまするがゆえに、この学会の報告の援助、そういうことに対しまして、文部大臣の御所見をお伺いしたいと思うのであります。
  95. 森戸辰男

    ○森戸國務大臣 海野君の御質問にお答えいたします。敗戰後の日本を建設するために、科学技術が非常に必要であり、これがためには研究所、また研究者の活動が必要であるが、今日の事態において、殊に経済上の理由から、これらの研究が十分にいつておらぬ。これについて政府はいかに考えているかということでございますが、まことにごもつともでありまして、私どもは窮乏している日本財政のもとにおきましても、できるだけこれらの研究を促進していきまして、再建のための科学と技術とを促進していくように努めているのであります。それがために、政府といたしましても、基礎的な主要な研究のために、科学研究費を、また應用の研究につきましては、科学試險研究費を計上いたしたのでありまして、本年度は各種の要求を集めますと、約八億の額に上つているのであります。今日の日本財政から申しますと、実はこれらの諸方面の要求を合わせた額を皆満足させることはできませんので、事務当局との折衝の上、一億三千五百万円の内定を得ているのでございますが、これらの金額では、まだなかなかわれわれの期待のている学問研究の推進をしていく段取りにはなりませんので、民間その他の協力を得まして、これらの正当な要求が、できるだけ充足されるように努めているのであります。なお民間の研究團体につきましては、特殊の事情があるのでございまして、主としてこれらの團体は財團法人であり、その財團法人の基礎である財力が、敗戰の後の経済事情のために、非常に弱まつてまいり、なお民間からの補助を期待することが困難になりまして、これら民間の研究が非常な障害に当面いたしておるのであります。学問の研究といたしましては、政府機関、あるいは政府機関の補助を主とした研究も必要でありますけれども、民間の方も特に大事なのであります。これらの研究所が、かような事態になつておりますことは、まことに遺憾でありまして、昨年もこれらの研究所に対して政府の補助をいたしました。なお本年もまたこれらの研究所の中の有力なるものにつきましては、できるだけ多くの補助をいたしたいと思つておりまして、財務当局とも交渉をいたしております。十分の御期待に副うことは、今日の財政上できませんけれども、これらの民間研究所がその研究を続けてやれるような一つの段階は、必ず確保していきたいと存じているのであります。  次に学会の報告が、いろいろ費用並びに資材の面で困難に当面しているから、これを何とかできるような方法にしてもらいたい。学会の報告は、國内においても國外においても、まことに必要であるから、どうかそういう方向に文部省も努力してもらいたいという、至極ごもつともな御質問でありますが、文部省といたしましても、この方面努力いたしまして、そうでなくても経済力の乏しい学会がつくりました貴重な研究は、國内にも國外にも、できるだけ廣く傳えるように努力いたしまして、これらの補助のための一定予算の支出を、昨年度もいたしましたし、本年度もこれに対する一定予算を要求しておるのであります。なお必要な資材殊に残につきましても、これらの研究の結果の重要性に鑑みまして、その方面との交渉を続けまして、一定額の最小限度を確保するように努力しておるのであります。
  96. 海野三朗

    ○海野委員 民間の財團法人の研究所におきまして、非常に重要な研究の問題が多々あるのでありますが、中でも必要なるもの、また実際これは有用であるとお考えなつた問題に対しましては、幾分なりとも御援助をしてくださるお考えがおありになると思うのでありますが、いかがでございましようか。
  97. 森戸辰男

    ○森戸國務大臣 お答えいたします。民間の研究所におきまして、その研究が國家的に重要であるというものでありまするときには、予算の許す限りにおいて、それらの研究に対しての補助ということは考慮されておるのであります。そうしてこれらの補助に当りましては、できるだけ公平に学会の意見を十分参酌して、これを決定することになつておる次第でございます。
  98. 川島金次

    川島委員長代理 これにて予算両案に対する質疑は大体終了いたしました。  明後日は午前十時三十分より開会し、できますれば討論採決をいたしたいと思います。本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会