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1948-07-01 第2回国会 衆議院 本会議 第75号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月一日(木曜日)     午後四時九分開議     —————————————  議事日程 第七十一号   昭和二十三年七月一日(木曜日)     午後一時開議  第一 民事提訴法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  第二 保險募集の取締に関する法律案内閣提出参議院回付)  第三 選挙運動等臨時特例に関する法律案政党法及び選挙法に関する特別委員長提出)  第四 衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案政党法及び選挙法に関する特別委員長提出)  第五 電信電話料金法案内閣提出)  第六 郵便法等の一部を改正する法律案内閣提出)  第七 港域法案内閣提出)  第八 刑事訴訟法改正する法律案内閣提出)  第九 人身保護法案参議院提出)  第十 肥料配給公團令の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第十一 種畜法案内閣提出)  第十二 栄典法案内閣提出)  第十三 地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、財務局及び税務署の増設に関し承認を求めるの件     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 笹口晃

    笹口晃君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわちこの際、平工喜市提出厚生省所管國立病院整備に関する緊急質問重富卓提出行政官応法律無視に関する緊急質問鈴木正文提出国家公務員法の改訂を中心とする労働問題に対する緊急質問を逐次許可せられんことを望みます。
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  厚生省所管國立病院整備に関する緊急質問を許可いたします。平工喜市君。     〔平工喜市登壇
  6. 平工喜市

    平工喜市君 私は、國立病院整備に関する件について緊念質問をするにあたり、特に今年以降において海外より引揚げを予想される七十万名の同胞のうち、引揚患者受入態勢整備状況について政府質問いたしたいと思います。  戦後数百万に及ぶ引揚者は、未だその生活の安定を見ず、塗炭の苦しみにあえいでいる状況であり、まことに同情にたえないものがありますが、今日ただいま引揚げてくる人々は、まつたくの裸一實に加えて、働くに職はなく、その心労はさらに倍加されると思われます。健康者にしてすでにかくのごときどき、病魔に冒された引揚同胞に対して、われわれは一体何をもつて報いることができるのでありましようか。私は、八千万同胞を正しく代表いたしたい念願から、特にこの問題を取上げ、現状を正確に物語る資料の上に立つて申し上げます。  現在も、海外残留者は六十八万六千百二十二名であります。そのうちソ連引揚残留者は四十六万六十九名であり、目下毎月五万名が引揚げることになつております。本年度引揚者発病状況は、患者として取扱う者が総人員の一七%、入院患者総員の三・八%であります。すなわち、毎月引揚者五万名のうち八千七百十五名が患者であり、一千九百名は、入院患者として大部分國立病院収容しなければならないものであります。右のほか、引揚げて帰郷してから発病する患者は、毎月引揚者の一五%であり、そのうち入院する春は総員の五%、すなわち二千五百名が、さらに國立病院収容されるのであります。これを総計すると、本年度引揚者毎月五万名として、年間三十万ないし四十万と予想され、これより計算すれば、本年度引揚患者は総数七万七千二百二十二名であり、そのうち入院患者は三万六千二百名でります。以上のごとき状態のもとにおいて、次の各項に対し厚生大臣及び大藏大臣所信を問うものであります。一、今年引揚げ開始以来すでに一箇月を経過しているが、この間において、患者受入れのため何ら具体的対策を講じていないように考えられますが、どうでありますか。  二、これら多数の引揚患者の大部分収容するのが國立病院でありますが、その國立病院収容患春定員が、昨年の三万に比し五千九百ベツーを削減し、二万四千ベツドとなつており、聞くところによりますれば、すでに一般國民入院患者が二万名に達しており、一方外地引揚患者には家族の同伴者が多く、すでに近幾、東海、北海道及び東京附近國立病院においては、これら予算制限により、引揚患者受入れ制限し、また一般國民入院を拒否している病院ができ始めたが、これに対していかに処置されるつもりでありますか。  三、國立病院において患者を拒否する原因は、予算の問題のほかに、医師八百九名、藥剤師百三十二名、看護婦五千二名の欠員ということがあります。病床こそ満たされてはいませんが、かくのごとく医師看護婦不足のため、やむを得ず引揚患者収容を拒否せざるを得なくなつた病院が、東京附近にもありますが、緊急を要する人員補充に対し、いかなる対策をもつておられますか。また優秀な医師藥剤師看護婦離職者が現在も続出している原因の大半は、給與があまりにも低く、地方水準に比して三分の一にも達しないという劣悪のためと考えますが、これが改善方策はいかがでございましようか。  四、引揚患者の大部分がいや応なしに収容される國立病院施設は、終戦後ほとんど顧みられず、中には倉庫のごとき荒廃した建物に収容されているものがありますが、収容施設に関しての受入態勢はどうなつているでありましようか。海外残留者は、今なお七十万を数えられ、これが引揚げ完了までには長時間を要し、しかも受入施設終戦後何ら改善することなく、荒廃するに任せてあるのは、新憲法下の新しい医療制度を併せ考えるときにも、きわめておもしろくないことであります。  夢に描いた故郷の土地を踏んだ喜びも束の間、受入準備の不完全なため、助かるべき生命をも失うのでは、われわれ同胞として、あまりにも残念に思います。予期されざる北陸地方地震による被害者は三十万ないし四十万といわれ、事まことに重大と思われますが、従來より予定され、しかも現実に行われつつある引揚業務のうち、同じく三十万ないし四十万と数えられる患者受入準備も、また事重大なのであります。ニュース・ヴアルユーの高い今、目の前のこの地震被害者に対しては、まことにお氣の毒に存じます。これを引合いに出すのは、まことに恐縮とは存じますけれども、同じ人間でありながら、今なまなましいこの被害者には、もう大やかましでこれに救済の手が差伸べられるのに、海外から引揚げる著たちに対して、この予算がいかにも手薄いように思われますが、何の理由で、こんな情ない待遇を受けなければならないか、この点について、とくと大藏大臣厚生大臣より御答弁をいただきたい。  以上四点について、政府の御所信を伺いたいのであります。終わり。     〔國務大臣竹田儀一登壇
  7. 竹田儀一

    國務大臣竹田儀一君) 平工君の御質問に対してお答えいたします。  本年度予算病床数は、國立病院におきましては二万四千床、國立療養所に誌きましては四万六千三百床でありまして、それに対し現在の入院者数は、國立病院は約一万九千人、國立療養所約四万人でございます。從つて病院においては五千床を、療養所におきましては六千数百床の余裕をもつておりますので、一億引揚患者収容力は十分ではないかと存ずるのでございます。なお、引揚患者の治療の万全を観しますために、結核患者その他疾病の種類によりまして、それぞれ施設の性質及び能力に応じた適当な収療を行いますために、第一の収容病院からの後送につきましては、適当な指導を行つてきた次第でございます。  要しまするに、引揚患者に対しましては、現在ベッドを全幅的に活用いたしまして、その収療につき万全の態勢を一応整えておる次第でありますが、状況により不足を生じました場合には、速やかに予算的措置を講ぜられるように、大藏省とあらかじめ了解済みであるということをお答えいたしておきます。  なお本年度病床数は、國家財政の許す範囲内において、しかも從來の各病院実績を勘案いたしまして決定したのでございますが、國立病院は、平工君御承知通り創立以來日がまだ浅いのでありまして、収容すべき病床数最後的決定をどこにもつていくかということにつきましては、まだきまつておらぬのであります。平工君の御意見を尊重いたしまして、最も適正なる最終的決定を急ぎたい、かように考えております。  なお職員、特に医師看護婦藥剤師等待遇の問題について御同情ある御質問のありましたことは感謝いたす次第でありますが、國民の保健上実に重大なる関連がありますので、最も考慮すべき重大なる問題と考えております。ただいま職階制実施が急がれておりますが、職階制実施にあたりましては、でき得る限り高いクラスに格づけされるように考慮いたしますとか、特殊勤務の手当を考慮いたしますとか、でき得る限り御意見に副うように、ただいま関係当局協議中であるということをお答えいたしておきます。  なお、引揚患者の受入問題のみでなく、現在の医療施設は、仰せの通り今日満足な状態であるとは申されませんのでありますが、國家財政の許す範囲内におきまして、でき得る限り平工君の御意見に副うて整備を急ぎたい、かように考えております。  簡單ながらお答えといたします。     〔國務大臣北村徳太郎登壇
  8. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 平工議員の御質問に対しましては、ただいま厚生大臣の御答弁で大体盡きたかと思うのでありますが、私ども財政当局といたしましては、二十三年度予算において、入院患者の昨年度実績ベッドの数二割を増すことにいたしたのでありますが、これに対して、増加傾向が今までのところはございません。しかしながら、将來もし経費不足を生ずるような見込みがありましたならば、これはもちろん人道的な重大なる意味をもつておりますので、予備費支出等の方法によつて万全の策を講じたいと存じております。  それから、國立病院にはりつぱなものもございますけれども、戰時中の応急的なものが相当多いのでございまして、これが維持補修等につきましては、ただいまのところ、一般官応建造物の例によります定額を計上いたしております。そのほかに、公共事業費の中で財政の許す限り計上いたしておる次第でございます。  それから國立病院は、もとの陸海軍病院等が多いために、その位置がきわめて一般公衆利用には不便な位置にあるものがあり、中には施設公的医療機関と隣り合つておるという所もございますので、おそらくこれは整理を要するものと思います。けれども、適当なる措置が講ぜられました場合に、私ども國立病院維持につきましては、必要なる経費は十分計上するつもりでおります。なお、それが重点的、効率的に用いられるであろう、かように存じております。  それから医療関係者収入の点は、厚生大臣答弁通りでありまして、これは市中一般労働者収入の面だけを比較ざれる場合が多いのでありますけれども、その場合の物件費人件費等支出も併せてお考え願うということも必要ではないかと思うのであります。必ずしも給與は十分とは思いませんが、職階制等利用によつて漸次向上いたすでありましようし、この点は厚生当局と連絡をとりまして、その待遇改善には努力いたしたい、かように存じておる次第であります。     〔平工喜市登壇
  9. 平工喜市

    平工喜市君 きわめて短かく質問いたします。  厚生大臣の、私が心配申し上げている点に対して万全の措置を応ずる、特殊勤務者に対しては特別の考慮をするというお言葉は、至極ごもつともでありまして、謹んでこのお言葉には感謝申し上げるのであります。大藏大臣からも、適当なる措置に関して必要なる予算を惜しむものではないという御答弁をいただきまして、またこのお言葉は満点でございます。謹んで感謝の御挨拶を申し上げますが、今現在困り抜いておつて足りぬところへ、言葉で何とかする、何とかする、若干何とかすると言われても、何とか、若干、予算ではいかぬので、ほんとうにしつかりと答弁してもらわなければならぬのであります。(拍手)これはおそらく、いくら部下の人たちが訴えても、あまりにも事が多いために、お忘れになつているかもしれぬので、以下ちよつぴり、もぐらのしつぽほど質問いたします。  第一点、六月二十日現在で、すでに病床満員で、引揚者収容を拒否している病院は、東京第一病院大藏病院相模原病院名古屋病院岐阜病院浜松病院京都病院舞鶴病院熊本病院等二十数箇所の病院であるが、この事実を厚生大臣は御承知でおられるかどうか、具体的にこの点をお答え願いたい。  第二点、病院満員になつてきて、病院では、あとから送られてくる引揚患者収容するために、十分治り切つておらぬ患者をどしどしむりに出しておるという事実をお認めになるかどうか。  第三点、予算不足のために、相模原病院あるいは岐阜病院等で、目を失い、足を失い、義肢義眼等を與えられず、食糧事情がきわめて悪く、完全なる栄養が得られないでいる悲しい状態を御存じでありますか。私のところは、岐阜國立病院が二百五十メートルの隣でありますので、この経営について、つぶさに知つておりますが、日に日に細る彼らの姿と、両大臣が日に日に肥つていらつしやるのを見て、單なるお言葉だけではいかぬから、しつかりこの点について御答弁願いたい。(拍手)  第四点、引揚者及び戰災患者に対して、國立病院では何らの更正施設整備されていない。かつ今年度予算にも計上されていないというのでありますが、その具体策が一体あるかないか。もし患者さんが退院するときの更生施設に対する予算がないとしたならば、これは厚生大臣の落度になりはしないか。この点、はつきりとした御答弁をいただたいのであります。  なお大藏大臣に申し上げておきますが、私どもが郷里へ帰つて、自動車で岐阜の町へ出るたびに、毎日々々顔なじみになつた人たちが、一人ずつやせ細つては死ぬる姿を見ている。これに対して、栄養のゆたかな看護婦さんが親切にいたわつていただく姿をながめるときに、私どもは、これこそ白衣の天使だと感謝しております。わが國敗れたりいえども、もう軍國主義調もこの國民道義から沸拭され、追放され盡してしまつている。もう、いずれの大國にも遠慮することなく、同胞同士敗戰後建直しのためには強い助け合いをするのがほんとうであります。これについて、言葉だけの、絵に描いたような新設だけで、金は出しませんで、考慮します、調査して十分しますということだけではいかぬから、具体的にこれらの問題について方策を講ずるという明言をいただきたいのであります。なお不満があれば、これは厚生委員会においてぼちぼちお願いをいたしたいと思うのであります。     〔國務大臣竹田儀一登壇
  10. 竹田儀一

    國務大臣竹田儀一君) 重ねての平工君の御質問にお答えいたします。  例をあげて、満員病院があるというお言葉であります。なるほど、満員病院並びに療養所もあろうかと思います。しかしまた、あいている所もあるのでありまして、総体の数を申しますと、病院において五千床、療養所において六千数百床あいておるのであります。一応これだけの病院床があいておりますから、御心配の点はなかろうかと存ずるのであります。  なお、患者が治らざるときに無理に出しているのではないか、かような御心配であります。さようなことはないと思つておりますが、もし平工君においてそういうことを御承知でありますならば教えていただきまして、早速取調べをいたしたいと思います。  なお、更生施設についての御質問でありますが、おそらく職業補導所等のことをお尋ねになつたのであろうと思います。私の記憶に間違いがないといたしますならば、職業補導所は約十箇所ほどあると思つております。なお義手、義足の製造所も十四箇所ほどあるのでありまして、予算関係等で十二分にできておらぬことは残念でありますけれども、一応この施策をやつていることだけはお答えいたしておきたい。  なお、予算全体について御新設なる激励的な御質問がありましたが、これは大藏大臣ともよく協議をいたしまして、來るべき審議を煩わすときに、でぎ得る限り努力をいたすことをお答えいたします。     〔國務大臣北村徳太郎登壇
  11. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 先ほど申し上げた通りでありまして、実績に対して二割の増加を設備しておるのでありますが、これは未だ十分に全体として使われていない状況であるということは申し上げた通りであります。但し、これでなお不足を生じたときに、事柄事柄でございますから、予備費支出等の方法によつてこれを満たすということは、申し上げた通りであります。     〔平工喜市登壇
  12. 平工喜市

    平工喜市君 厚生大臣は、もし知らぬのなら教えてくれとおつしやるから、あまりにも厚生大臣が無知識過ぎるために、少し教えて差上げますが、今申し上げたところの東京第一、大藏相模原、名書屋、岐阜浜松京都舞鶴熊本、これらの病院について、そこはない、そこは確かにあるといつて、あなたがないといつた所にもしあつたら、あなたの恥になりましよう。だから、この点について具体的に答弁されぬということになつておりましたが、御存知ないという証拠が現われておるのであります。  それからその次に、病棟があいておるから、これはいくらでもはいれるとおつしやる。これこそ、もうあきれ返つた素人のでたらめだ。なぜかというと、給料が安くて、普通一般水準の三分の一以下の給料じや、とてもやつていけぬといつて、医者や藥剤師がやめて、うんと減つてまつたがゆえに、患者が來ぬようになつてもあいておる。厚生大臣責任は盡せておらぬどころじやない。これは厚生大臣責任が盡せてありませんが——あなたじやない、前の前の厚生大臣責任を盡しておらぬために、この穴があいておるのです。これも政府責任を痛感しておらねばならぬことを、これで結構でございますという答弁では、満足できません。  なお以下は、厚生委員会において十分教えてあげます。      ————◇—————
  13. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 行政官応法律無視に関する緊急質問を許可いたします。重富卓君。     〔重富卓訓登壇
  14. 重富卓

    重富卓君 私は、民主自由党を代表し、行政官応法律無視に関する緊急質問をいたします。  近時、官応執務状態は著しく弛緩いたしております。その結果、中央・地方を通じ國法を遵奉せず、これを無視して、官吏が独断的な行政措置をとつておるのではないかと思われまする点が、著しく目につくのであります。今にしてこの悪風を芟除一掃いたしませんと、官僚独善行政が横行し、主権は國民になく、一部官僚の掌握するところとなり、憲法は破壊され、軍閥に代る官僚専制政治が現われるのではないかと、まことに寒心にたえません。國権最高機関でありまする國会といたしましては、かように風潮にたいしましては、それがどんなに軽微な事柄であつても、少しの妥協も許してはなりません。かかる風潮が少しでも見えましたときには、即時最も峻厳な態度をもつてそれに臨むべきであると確信いたします。  私がここに取上げようとする実例は、農林当局において見ることができるのであります。その実例をあげまして、農林大臣のこれが取扱いに対する所信をお尋ねいたします。  二箇月ばかり前に農林当局が示されました二十三年産主要食糧供出実施要領の中に、臨時主要食糧生産食出措置法に準じ云々とありますが、さような法律は、その当時もまた現在もありません。目下農林委員会審議中のものの中に、それの内容をもつ法案があるのみで、しかもそれは、今もなお法案であり、審議中のものであります。この点の不都合を質しましたところ、農林大臣農林委員会で、法の次に案という字を印刷で落としておりまして云々とと釈明されたのであります。  法か法案かは、文字の上から申せば、ただの一字のことで、問題とするほどのことではないように思われます。しかし、それのもつ意義にはたいへんな相違があり、國民生活に非常に重大な影響を及ぼすのであります。特に、昨今のように國情が混沌としていて、法令等も朝令暮改、よほど注意していないと、いずれが現行法令なのか、いずれが國民を規律しているのか、判別に迷わねばならぬような世相の中で、しかも最高行政応で、法案とすべきを法して発表したということは、國民をいやが上にも威嚇し、迷わしめるもので、法律は誠実に執行し、という憲法趣旨にも反し、單に一字の脱落にすぎないということで済まされることではありません。  しかも、この措置法案なるものは、第一國会で悪法であるとしてはなはだしい非難を受け、ついに流産の憂目を見た生産調整法の基本的な考え方をそのまま受け継いだ、いわくつきのものであります。(拍手)これを國会提出前に、いかにも法律として存在しておるかのごとき印象を國民に與える行政措置とつたということは、行為者行政最高機機関であるだけに、問題は一層重大性をもつのであります。(拍手)このような過ちを犯したということも、官吏の中に、意識的か、または無意識的に、國会を軽視し、國法を軽んずる風潮があるからであります。(拍手)また、それが大臣釈明通り、案となつておりまても、案である限りは、その趣旨に準じた行政措置をとるべきではないと信じます。  この法案は、農民耕作権の自由を制限し、ときには食生活、家計にまで重大な影響を及ぼすもりであります。そうした内容をもつております。既成事実を單に成文化するといつたような法案ではないのであります。逆に既得権制限を加えるという内容でありますから、なおさら未決定中にその趣旨に準じた施策をすべきではないのであります。その趣旨に準ずるということは、多分作付前に割当をするということであろうと思います。割当行為食管法に基いてやつたのであつて食管法には割当の時期はないから云々というがごとき御答弁になるかもしれないと思うのであります。しかし、作付前に割当をしたことから、現に件付の自由を失つた、すなわち耕作権の自由を制限された農家が多々あるのであります。かかることの起る行政措置は、必ず法律によつてなされなければならないことは、皆様御承知通りであります。  しかるに農林大臣は、二十六日の委員会で、前議会で論議されたことは十分に本法案の中に取入れたから云々との御説明があつたのであります。しかし、これは言語道断な話で、ありまして、それを取入れたか取入れないかは、審議の結果で初めて客観性をもつものである。審議の終らない先に客観性はない。まつたくこれは独断的なものであるといわざるを得ないのであります。(拍手)かようなことが大臣の御答弁の中に出まするから、なおさら國会を無視し、國法を軽視してやつた行政措置と断ずるのであります。  次に、農業協同組合法第十條に関しましても、かような事件が起つたのであります。この改正が企図されますると、農林当局は、いち早く電報をもつて、第十條による農民の活動を停止させる措置をとられたのであります。次いで関係係官をお集めになり、趣旨徹底に努力されたという事実があります。第十條は厳然として有効に成立し、効力を発揮いたしておりまする現行法であります。どんな事情がありましようと、ただ單に一片行政措置をもつて、その効力を停止するというようなことは、断じて許されないことであります。しかるに、一片行政措置をもつて、事実上その効力を停止してしまつて、そのために各地には非常な混乱が起つております。  すなわち、農村再建のために一時も早くこの第十條を発動しなければなぬ。しかも現在の農業会は、一定時期までには解散せしめなければならぬのであります。それは、すでに目腱に迫つておる。その代りの機関をつくる。それに対して待て、しかも現行法上はやらなければならぬことを待て——これでは、百姓は何をしてよいかわからない。こうしたことを、法律を無視して行つておるのであります。  しかも第十條の改正に対しましては、國民の輿論に絶対反対を示しておるのであります。國会もこれが改正につきましては、最も慎重に取扱わねばならない性質のものであります。現在これを審議いたしておるのであります。しかるに農林当局は、この改正は必ず成立するものであるかのごとく、また國会にその成立を強要するかのごとき態度をもつて現行法効力を事実上停止せしめておるのであります。かかる暴挙をあえていたしたのであります。  以上、相次いで起つた農林省当局の法律無視実例をあげたのでありますが、これはほんの一例にすぎません。このように、ありもしない法律をあるがごどくに、またある法律をなきがごとくに行政措置をやつている農林当局の行為は、明らかに國会及び國法をないがしろにし、法的秩序を乱すものであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  以上二つの行政措置農林当局においてなされたことについては、二十六日農林委員会において、農林大臣がこれを確認いたされております。また委員長は、これに対して警告を発しておられます。農林大臣はいかなる責任をとろうとせられておりまするか。また、かかる行政措置をした事務当局に対し、いかなる措置をとろうとしておられまするか。この責任をお尋ねいたします。     〔國務大臣永江一夫君登壇
  15. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) ただいまお尋ねになりました二つの点につきましてお答えを申し上げます。  第一点の、食糧確保臨時措置法が本國会に提案審議中に、事前に、本法律が通つたものとしての想定のもとに、農林省において地方にそれぞれ通達等の文書に、この法案の文字を明らかにしたことは、これは國会の意思を無視し、國会の存在を軽視しておるという御注意でございましたが、この点については、今お示しになりましたように、その通達を出しまする際に、「食糧確保臨時措置法案」とありました原稿が、印刷の間違いによりまして、「法」として示されておるということは、私も認めたところであります。しかしながら、この法案趣旨は、今お話の中にありましたように、昨年國会におきまして相当御議論がありました点を十分に咀囑いたしまして、その趣旨を本法案に盛つたものでありますから、政府といたしましては、諸種の主食の今日の実情から申しまして、事前割当を行いまする法的根拠をこれに求め、しかも、それを生産農民諸君が進んで協力をいたし得まするような法的措置として、この法案を提案したのでありまするがゆえに、私どもは、本法案國会において通過するということの一つの見透しのもとに以上の措置をいたしたのでありす。しかしながら、事務的に法案として措置をいたしたものでありまするが、印刷の上において「案」という字が脱けましたことは、先ほど申しましたように、明らかに私ども事務当局の手落ちであります、適当に、これは調査をいたしまして、処置いたします。なお、この点についての法的根拠について、いろいろお話がございましたが、しばしば申し上げておりまするように、主食の事前割当につきましての本年の措置は、明らかに食糧管理法によりこれを行つたものでありまするがゆえに、さよう御了承を願つておきたいのであります。  さらに第二の点につきましては、農業協同組合法の第十條がなお効力をもつておる際において、その効力を停止するような行政措置をとることはけしからぬ、こういう御意見でございましたが、御承知のように政府におきましては、國会に第十條の改正法律案提出いたしまして、ただいま御審議を願つおる次第でございます。この現行法が、総合的な連合会を組織するという、もちろん基準になるのでありまして、そういう現行法によりまして協同組合が連合的に組織をせられましたというような場合が将來起きましたときに、もしこの改正案が成立いたしますると、またこれを改組せなければならないという結果になつてくるのであります。從つて、さようなことは、近き将來におきまして、本改正案の通過によりまして連合会ができないということが明らかに一方にありますと同時に、他の一方におきまして、第十條の存在することによつて連合会が成立するという二つの相反した事実が現われまして、諸種の混乱を起す結果になりまするので、事前にこれをあらかじめ防止するところの行政的措置とつたというふうに御了承願いたいのであります。     〔重富卓登壇
  16. 重富卓

    重富卓君 ただいま農林大臣から、いわゆる措置法に関しては十分に論議されたことを取り入れたから、それに準じてやつたという意味のことを言われましたが、措置法の中に去年の論議が十分に取り入れてあるか、取り入れてないかは、審議の結果わかることでありまして、農林大臣のお話は、どこまでも独断であると言わざるを得ないのであります。(拍手)また、それがかりに通過するといたしましても、そうした仮定のもとに国民の権利を束縛することは、断じて許されないと考えるのであります。(拍手)現にまた、その法律を事前に行われました関係上、それに準じてやられました関係上、すでにそのため耕作の自由を失つた実例がここにあるのであります。時間の関係上読みませんが、あります。また、そうしたようなことに対しましても、やはり実際問題として作付制限あるいは自由の制限をしたということは、事実上これは権利の侵害と言わざるを得ないのであります。また第十條の問題につきましても、やはりその通りでありまして、第十條につきましても、まだ法律のできていない間にこれを停止するということは、はなはだしき越権と思いますが、もう一度この点について念を押してお尋ねいたします。     〔國務大臣永江一夫君登壇
  17. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) 重ねてのお尋ねでございますから、お答えをいたしますが、私は、先ほどの答弁の中におきましても……。     〔発言する者あり〕
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  19. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君)(続) 食糧確保の臨時措置法がまだ法律としてその効果をあげておらぬことは当然でありまして、私は効果のない法律を効果のあるものとして処置した覚えはございません。あくまでも本年の事前割当は、ただいま法的根拠として申し上げました食糧管理法においてこれを処置したのでありますから、合法であろうと思います。      ————◇—————
  20. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 國家公務員法の改訂を中心とする労働問題に対する緊急質問を許可いたします。鈴木正文君。     〔鈴木正文登壇
  21. 鈴木正文

    鈴木正文君 私は、國鉄をも含めて、いわゆる公益関係の事業の争議に対しまして、政府の今後の方針を質し、次いで、公務員の争議行為と國家公務員法との関係について意見を伺い、さらに、この二つの問題と根底において直接的につながつているところの賃金水準の問題、三千七百円の賃金水準がはたして維持できるかどうか、この三つの問題について政府所信を伺いたいのであります。  この三つの質問を、今議会の閉会の直前におきまして提起したところの理由は、おそらく議会閉会直後、ただちにこれらの諸問題について政府は何らかの措置を講ぜざるを得なくなるであろうと思われるところの基本情勢が、刻々に成熟しつつあると見られるからであります。さらにもう一つの理由は、最近の日本の労働運動、特に争議を通じての攻勢は、民間企業の方面から離れて、國家予算を背景する、國家事業を中心とする公益事業の分野に集中されてきているのでありまして、この分野における争議の行過ぎは、ただちに民間企業の方面にはね返つて、直接的に影響をまき起していくという実情にあるからであります。  われわれは、憲法並びに労働諾法規によつて保障せられたところの労働権、團結権、争議権、そういつたものを確立すること並びに正常にして民主的なる労働組合が独裁酌、政治的指導者の手から指導権を取りもとして、質・量ともに発展生成していくということは、むしろ衷心から望んでいるのでありますが、しかしながら、あえて労働権に限らず、すべての人民の権利は公共の福祉とともにあるべきであることは、憲法第十二條の規定をまつまでもなく、世界的の常識であると思うのであります。公共関係の争議の解決にあたつては、從つて公益に対する打撃を能う限り避けるとともに、労働側、経営側と並んで、國民の世論を重大なる解決の要素として取入れるべきは当然であると思うのであります。(拍手)現実的にこれを取入れるのが必要であつて、取入れる必要があるかという議論ではないのであります。いずれの政党といえども、公益事業の争議の解決にあたつて輿論を取入れないでよろしい、無規してよろしいという暴論を掲げ得るところの政党はあるまいと思うのであります。(拍手)  第一に、現行の労働関係調整法その他の公益事業に対する規定を明確に実行していくべきであると思うのでありますが、この点に対して政府はどういうふうに考えておられるか。  第二に、公益関係の争議に対しましては、必要に応じて争議の一時的禁止の措置をとり得るところの、必要ならば法的措置をも講ずべき段階に今達していると民主自由党は考えるのでありますが、これに対しまして総理大臣並びに労働大臣はどういうふうに考えておられるか。この点を明確に伺いたいのであります。  この二つの質問は、芦田総理大臣並びに加藤労働大臣にお伺いいたしたいのであります。反対ならば反対でもやむを得ない。明確大胆に所信を披瀝していただきたいのであります。  次に、公務員の争議について伺います。公務員の争議は、三つの面について國民と大きな関係をもつている。第一は、それが最も大きな、最も重要な公益関係であるという点であります。第二は、法的にはともかく、現在日本國民の一般的な常識といたしましては、役人はすなわち政府だと考えている。この政府だと考えている役人が、まつ先に、簡單に、しかもしばしば争議に突入するということは、民間の争議に対する観念、動向に多くの昏迷をもたらしておるということを、見逃すことはできないと思うのであります。(拍手)第三には、現在の統制経済を通じて、官僚は、よかれ悪しかれ、國民の生殺輿奪の権を残念ながら握つておることに問違いないと思うのであります。その絶対の権限をもつておるところの官僚が、しばしば、しかも深い反省もなしに、争議を國民の先頭に立つて繰返しておるという問題に対しては、國民はすでに耐え得る最後の一線に近づきつつあると私たちは思うのであります。(拍手從つて、公務員の争議につきましても、その方向において可能なる分野というものを、この際政府は明らかにする必要があると思うのであります。一般労働争議との別を明らかにすべき段階に達しておると思うのであります。よつて、右の見地に立ちまして、民主自由党意見として、次のことを総理大臣及び労働大臣にお伺いいたします。  公務員の中で、現業方面はもちろん、公益事業の最も重要なる部門といたしまして、第一の質問において述べましたことく、公益事業であるがゆえに特殊の反省を促す必要があり、特殊の法的措置を講ずる必要もあると思うのであります。さらにもう一つ、公務員の中で非現業の方面は、現益の労働関係調整法第三十八條におきましても明確に争議行為を否定されておるのであります。しかしながら、現実におきましては、いろいろに変形したところの争議が頻々として各地に起きつつあるという事実は、今さら申し上げるまでもないと思うのであります。(拍手)その現実を前にいたしまして、政府は迫り來る日本の経済状態の実情及び労働槽鐵カとにらみ合わせまして、この際、この議会の閉会前におきまして、公傷員の争議に対するところり限界と’いうものに対して、およその方向を明確にする必要がありさらに明確に申しまするならば、民主目的党は、非現業の公務員に対しましては、明確に争議否定の方針決定すべきであり、それがために必要であろならば、属家公務員法をこの線に沿つて改革することも、また必要であると思うのであります。(拍手)ノ  この点につきまして、科棟労働大臣は就任以來、法規の改定はすべて改悪であるという形式論一本のもとに終始しておりますけれども、現在のごとく急変轉を繰返しておる情勢に対して、一たび定めたところの法律が絶対に政定できないなどということは、あえて労働関係の法規に限らず、すべての法規において言えないことでありまして、実情の変化に応じての改定は当然であると民主自由党は思います。以上の見地に立つて政府はこの問題について、おそらく近く何らかの措置を講ぜざるを得ない情勢にあると思いますけれども、その準備を進めつつあるか、その決意があるか、これは民主党出身の総理大臣、社会党出身の労働大臣に、大胆率直にその見解を表明していただきたいのであります。  最後に、公務員の給與問題について質問をいたします。われわれが、公益関係の國家公務員に以上のような争議上の自制と反省を要請するゆえんは、それが公共性に鑑みておるのでありまして、しかもわれわれは、一面においては、すべて問題の中心が実際的の給與問題につながつておることを見落しておるのでなはいのであります。端的に伺いますが、三千七百円の賃金水準が今後いつまで維持できるか、この見透しにつきまして労働大臣及び総理大臣の見解を伺いたいのであります。現在において維持できるかどうかという問題ではありません。  予算委員会において、加藤労働大臣は、來年の三月三十一日まで、その維持に十分の自信がないと、明確に言つておられるのでありますが、それ以後において、われわれが予想しておつたよりは、はるかに著しい物價の改訂が発表された。再修正されたところの予算案そのものの内容が、インフレ情勢を高進するところの要素が附加された形勢こそあれ、これが食いとめられるという形勢はない。政府が企図しているところの中間安定のごときは、おそらく夢として、明日にも崩れ去つてしまうであろうというこの情勢のもとにおいて、この水増し厖大予算の遂行過程において、來年の三月三十一日まで二百七十日余りの間、日本の勤労階級諸君は三千七百円のべースで食つていけるという自信を、加藤労働大臣はもつておられるかどうかという問題を、はつきり伺いたいのであります。私は民主自由党の見解をはつきり表明いたします。この予算を遂行していくのであるならば、三千百円ベースは維持できない、維持すべきはないという見解を、民主自由党はもつているのであります。その点につきまして、総理大臣及び労働大臣はいかなる見解をもつでおられるのでありますか。     〔発言する者多し〕
  22. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  23. 鈴木正文

    鈴木正文君(続) 以上の点につきまして明確なる御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣芦田均君登壇
  24. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 鈴木君のお尋ねの第一点は、公益事業に関係する勤労者の争議の問題に対してであります。公益事業に関係する勤労者の争議については、今日の法規以上にさらに確然とした法規をつくつて、必要に応じてはただちに争議を禁止するごとき立法を考えておるかどうか、こういう質問であります。御承知通り公益事業に関しては労働関係調整法の中に詳細に規定されておるのであります。三十日の期間を経なければ、ただちに争議を始めることができない。そうして調停が提起された場合には、その機関たる中央労働委員会その他の機関によつて急速にこれを解決する手段が残されておるのであります。政府としては、今日急速にこれを改正する意向をもつておりません。  第二は、公務員の争議の問題であります。公務員の争議については、一つは労働組合法、他の一つは労働関係調整法の三十八條に、御指摘になつ通り規定があります。非現業員の争議が禁止されておることは御承知通りであります。從つて、非現業員の争議行為が今日といえども禁止されておるのであるから……。     〔発言するもの多く、議場騒然〕
  25. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  26. 芦田均

    國務大臣(芦田均君)(続) 非現業員の労働争議は禁止してるのにかかわらず、ときに行過ぎの結果とし、今日行われておるごときものが、ごくわずか起つておりますが、かくのごとき行動に対しては、政府は厳重にこれを処分いたしております。しかしながら現業員については、労働争議は他の公務員以外の者と同様に自由に許されておる。從つて、公務員中の現業員を他の勤労者と区別して取締る意向は政府においてもつておりません。第三の点は三千七百円ベースの給與の問題、この問題は、大藏大臣財政演説に対する質疑の中でしばしば繰返され、予算委員会財政金融委員会においてもしばしば繰返されて、政府としては、すでに十分その所見をお答えいたしておるのであります。御承知通り三千七百円ベースの計算は、科学的の資料によつてこれを算出したのであります。これが維持できるかできないかということは、これは見解の相違です。     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  27. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいま鈴木さんから御質問のありました、公務員に関する、殊に公益事事業に関する労働者の争議の場合に、現在の日本の実情においては阿らか法的措置を講ずべき段階にきておると思うがどうか、こういう御質問でありました。この点に対しましては、ただいま総理大臣からはつきりお答えされましたる通り、現在の法律において明記されておるところによつて十分である。これを今争議禁止等法的措置を講ずる段階ではないと、われわれはこのように信じております。(拍手)  第二の公務員の問題につきまして、現業員は争議権をもつておるが、非現業員は争議権をもつていないのである、にもかかわらず、争議類似行為が頻発しておるが、これに対しては、現在の公務員法を改正してでも何らかの措置を講ずべきであると思うがどうか、こういう御趣旨のようでありました。この点につきましても、ただいま総理が答えましたる通り、労働関係調整法においては、非現業職員は争議権をもつていないということが、はつきり規定されております。われわれは現在法規の範囲において十分措置し得られる、あらためて公務員法を改正する必要はない、このように、はつきり申し上げます。(拍手)  從つて、このような段階から、労働法規に対して、もはや何らかの法的措置を講じなければならない段階にきておるが、労働大臣は依然として労働法規を改正する意思はないか、こういう御質問でありましたが、労働大臣といたしましては、就任当初も今日も、この点については微塵も変つた考えはもつておりません。(拍手)  第四の三千七百円べースの問題について、二十三年度年度間を通じてこれを保持する自信があるか、こういうお尋ねでありましたが、これは、払は予算委員会等においても、はつきり申しておりまする通り、労働大臣としては自信がない、はつきり申しました。問題は、いかにして今後……     〔発言する者多し〕
  28. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  29. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君)(続) この給與を実質的に保持するかという点でありまして、これがためには、現在組合側と國体交渉が継続されております。三千七百円べースは、二十三年度予算編成の標準として、この前二千九百二十円問題を決定するときの算出の方式をそのまま採用しました。     〔発言する者多し〕
  30. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  31. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君)(続) 從つて、三千七百円ベースの算出には十分なる妥当性をもつておる。その妥当性の限りにおいては、当然三千七百円ベースは保持さるべきものであるが、その算定の基準となつた数字上の問題において、もし政府の推定した点と違つた点があるならば、これらの点に対しては河らか方法を講じなければならない。これまた当然のことであります。同時に、現在組合側と国体交渉が進行しておるのでありますから、この團体交渉の結果はどのように妥結されるかわかりませんが、それらの問題は、当然政府として考慮されなければならぬ点であることは言うまでもないのであります。このようにお答えいたします。(拍手)     〔鈴木正文登壇
  32. 鈴木正文

    鈴木正文君 三千七百円べースの維持に自信をもたないと、はつきり言い切つた加藤労働大臣の度胸と正直さに対しましては敬意を表します。(拍手)加藤労働大臣は、あの三千七百円ベースの計算の基礎は合理的であり、科学的であるということを繰返して述べておられる。その点は、われわれが聽いておるのではないのでありまして、そうであつてもなくても、私の今の質問には関係がないのであります。なぜならば、私の聽くことは、この予算を來年三月末日まで遂行していつて、その過程の中において三千七百円ベースが維持できるかどうかということを聽いておるのであります。(拍手)しかも、あの賃金水準の基礎となつたところの物價は、その後安本そのたにおいて幾多の討正が加えられ、最近において、再再これが訂正の後に発表されておるのであります。     〔発言する者多し〕
  33. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  34. 鈴木正文

    鈴木正文君(続) この点から言いましても、三千七百円ベースの計算の基礎は、さらに再檢討すべき必要が十分あると思うのであります。     〔発言する者多し〕
  35. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  36. 鈴木正文

    鈴木正文君(続) しかも総理大臣は、三千七百円ベースの維持、それは見解の相違であると言われたけれども、総理大臣と私とでなく、総理大臣と、同じ重要なる当該閣僚の労働大臣との間に、見解の相違が歴然としてある。これは否定することができないのである。この点を明確にお聽きしたいのであります。     〔國務大臣加藤勘十君登壇〕     〔発言をる者多し〕
  37. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  38. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいま申しましたる通り予算編成の標準としてとつた算出方式に基く三千七百九十一円の問題、政府としては、当然これが妥当性を信ずる限り保持すべきではありますが、しかしながら御承知のように、今日いかにだれが努力しても、日本の経済のインフレーシヨンの進行状況を完全に食い止めるということはできない。
  39. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  40. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君)(続) 從つて、この変轉極まりなき経済的現象のもとにおいて、一度予算の標準としてとつたものが、そのまま無條件で保持されるはずはない。だから、いかにしたならばこれを保持するかということに全力が注がれなければならない。われわれは、單なる名目賃金の引上げのふをもつて、これでよろしいとするのではないのであります。各目賃金の引上げは、インフレーシヨンを高進せしむる以外の何ものでもない。それゆえに政府としては、いかにして実質給與を確保すべきかということのために、生活必需物資の具体的な配給の確保を維持し得られるように努力する。これが、政府として三千七百円ベースを保持しようという努力の方向である。はつきりこのように申し上げます。(拍手)     〔國務大臣芦田均君登壇
  41. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 鈴木君の先ほどの御質問に対しては、前にお答えした通りであります。(拍手)     〔鈴本正文君登壇
  42. 鈴木正文

    鈴木正文君 加藤労働大臣の御説明には、一應諒とするところがありますが、だれがやつても現在のインフレは食い止めることができないと、明確に言われておるのであります。総理大臣は、インフレ過程において三千七百円のベースが維持できるという見解をもつておられるのに対して……     〔発言する者多し〕
  43. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  44. 鈴木正文

    鈴木正文君(続) 労働大臣は、だれがやつてもインフレを食い止めることはできないという明確なる表現をしておるのであります。この点に関しましても、労働大臣と総理大臣との見解に重大なる相違がある。この点について、もう一度お伺いいたします。
  45. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 両大臣とも答弁がないそうであります。      ————◇—————
  46. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第一、民事訴訟法の一部を改正する法律案参議院回付案を議題といたします。     —————————————
  47. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  49. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第二 保險募集の取締に関する法律案参議院回付案を議題といたします。     —————————————
  50. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の参議院の修正に同意するに御異議あうませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  52. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第三及び第四は同一の委員長提出の議案でありますから、いずれも委員会の審査を省略して一括議題といたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。     〔発言する者多し〕
  54. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。  日程第三、選挙運動等臨時特例……     〔発言する者多し〕
  55. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。日程第三を読み直します。     〔発言する者多し〕
  56. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 十分徹底しないそうでありますから、読み直します。  日程第三、選挙運動等臨時特例に関する法律案……     〔発言する者多し〕
  57. 松岡駒吉

    ○議員(松岡駒吉君) あまり大きな声をしなくても聞えるようにしてぐださい。  日程第四、衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案、右両案を一活して議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。政党法及び選挙法に関する特別委員竹谷源太郎君。     〔竹谷源太郎君登壇
  58. 竹谷源太郎

    ○竹谷源太郎君 ただいま議題と相なりました選挙運動等臨時特例に関する法律案及び衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案について、提案の理由及び両案の要旨を御説明申し上げます。  まず最初に、両案に関する特別委員会における起草の経過について申し上げます。本委員会は、選挙法改正に関する法律案起草のため選挙法改正に関する小委員会を設置し、五月六日、第一回分小委員会を開き、不肖が小委員長に、栗山長次郎君、笹口晃君、長野重右ヱ門君、黒岩重治、佐竹晴記君を理事に互選いたしました。その後十八回にわたり熱心なる論議を交しつつ本案の起草に当り、かつ六月十五日には一般がら意見を聽取し、起草の参考に供したのでありますが、六月二十六日小委員会の成案を得、六月二十八日には、本委員会において小委員の成案について種々協議いたし、続いて各派代表から討論が行われまとた後、ここに成案を得、今回提出の運びとなつた次第であります。  まず、選挙運動等臨時特例に関する法律案の要旨について申し上げます。  本案は、現下の経済事情に鑑みまして、選挙の公営を強化し、選挙の公平と適正を期し、もつて選挙の腐敗を防止することを目的とするむのでありますが、一方、選挙公営のため選挙の自由をあまり抑圧し、低調なる選挙にならないようにとの考慮を拂つた次第であります。  第一に、立会演説会はすべて公営といたし、市及び人口おおむね五千以上の町村で都道府縣の選挙管理委員会の指定するもの及びその他の町村で、人口・交通等を勘配して選挙管理委員会の指定した所において行うものであり、なお市は、人口おおむね五万ごとに一箇所立会演説会を行うことといたしたのであります。立会演説会は、候補者本人が行うことを原則とし、公務、病氣その他やむを得ない場合を考慮して、立会演読会の総回数の五分の一の回数を限り代理人の出演を認めたのであります。都道府縣の選挙管理委員会は、あらかじめ立会演読会のプログラムを、各政党またはその支部の代表者を集めて相談をして決定いたしまして、選挙の期日の公示または告示の日から三日以内にこれを告示せねばならぬことといたして、候補者の選挙運動の予定計画の立つようにはかつだ次第であります。立会演説会は、計画、施設、周知方法等すべて一切公営でありまして、候補者は立会演説会出演の申請をし、日程のときに演説会場へ出向いて演説をするだけでよろしいのであります。  第二は個人演説会でありますが、候補者が、市長村の選挙管理委員会に対し、五日前に届出をいたしますれば、演説会の施設及び周知方法は委員会がこれを行い、それらに要する費用はすべて國庫で負担をいたすのであります。しかして、個人演説会においては候補者の代理演説を認めることといたしたのであります。  第三だ、街頭演説は、候補者がまつたく自由に無制限に行うことができるものであり、候補者以外の演説も認めるのでありますが、候補者自身現在する間のみ行い得ることとなつておるのであります。  第四に、演説会その他の選挙運動を行いますために、候補者は自動車、拡声機及び船舶を使用することができますが、その使用は同時に一台あるいは一隻といたしまして、その濫用によつて費用むかさむことを防ぎ、そり使用の際には、都道府縣選挙管理委員会の発行する証明書を常に携行せねばならぬとともに、使用する自動車、拡声機、船舶には、選挙管理委員会の定めるところの表示をしなければなりません。その他、選挙運動に從事する者が國有鉄道、私設鉄道、バス等の交通機関利用するため、各議員候補者は通じて十五枚の特殊乘車券の無料交付を受けることができるのであります。自動車のために使用するガソリンその他の自動車用燃料に関しては、その配給または交付につき、國または地方公共團体においてこれを斡旋することとし、自動車の使用に要した費用は、これを選挙運動の費用に加算しないものとしたのであります。  第五に、その他の選挙運動といたしまして放送と新聞廣告があります。放送は三回以内において、議員候補者はその政見を放送できることとし、なお各致党も從來通り放送することができるのであります。その他日本放送協会は、議員候補者の氏名、年齢、党派別、主要な経歴等を関係区域の選挙人に周知させるため、各議員候補者について、おおむね十回放送することとしたのであります。新聞廣告は、議員候補者及び各政党は、日刊新聞に、議員候補者一人につき各一回だけ、國の負担によつて、選挙に関して廣告することができるものといたしました。  第六に、文書図画の掲示については、街頭演説会及び自動車、拡声機または船舶、あるいは選挙事務所を表示するための張札、立札、看板及びちようちん等は認めまするが、その他は一切これを認めないこととし、なお街頭演説の間は、立札等を認めるのであります。  第七に、選挙運動において禁止するものは飲食物の提供、メガホン隊、選挙当日の運動量であります。なお、選挙事務の連絡のため千枚のはがき、書状のほかは、郵便はがき、筆書した書状、名刺その他一切の文書図面を頒布することとはできないものといたしました。  第八に、公営分担金として、議員候補者一人につき二万円、またはこれに相当する額面の國債証書を国庫に納付することといたしたのであります。  なお本案は、次の総選挙から衆議院議員選挙のみに適用するのであります。  以上が、選挙運動等臨時特例に関する法律案の要旨であります。  次に、衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案の要旨を述べます。  まず、投票立会人に関する規定であります。投票立会人の選任は、從來候補者の届出によつておりましたものを、その手続の煩を省くため、市町村の選挙管理委員会が選任することに改めました。  次に立候補に関する規程でありまして、その一つは、立候補届出締切期日のことでありますが、公営拡充による事務的必要に基き、從來選挙期日前七日でありましたものを、今回は十日前と改正したのであります。その二は、いわゆる兼職禁止に関する規定であります。衆議院議員との兼職を禁ぜられている公務員、その公務員を辞任した後でなければ立候補の届出ができないものといたしたのであります。その他、地方自治法改正に準じまして代理投票を認め、不在投票の範囲を拡大したりであります。供託金は五千円から三万円に引上げ、その沒収率を現行の十分の一から五分の一に引上げました。なお、政治資金規正法の制定と関連して、罰の程度の引上げ及び條文の整理を行つた点等であります。  以上、二法律案の要旨を御説明申し上げましたが、この両法案起草の過程において問題となりました重要なる数点について申し添えておきたいと思います。  第一に、選挙法改正の主眼点について申し述べます。本委員会は、さきに政治資金規正注を立案いたしました。この法律は、主として政治資金及び選挙費の届出及び公開の方法によつて政治を郭清しようとするものであつて、直接に選挙制度そのものを改善しようとするものではありませんから、自然選挙法自体を改正して選挙の公正を期し、かつ政治の腐敗は選挙に金のかかることから起る事実に鑑み、厖大なる選挙資金を要しない選挙法をつくる必要がある次第であります。この趣旨によりまして、今回の選挙法改正は、なるべく金のかからない選挙の実現を主たる目的とし、兼ねて選挙手続の合理化と民主化の見地から改正の必要ある事項及び他の法令の関俵上改正を要する点に止めまして、全面的の改正は他の機会に讓ることといたしました。從つて、選挙区について、これが拡大または縮小の意見はありましたが、大勢は現行法通りとし、選挙法の別表を改正しなということにおちついたのであります。投票方法については、記号式投票の採用は時期尚早とせられ、また投票の單記か制限連記かの問題は、意見対立を見ましたが、單記説が多数でありまして、結局現行法通りなつた次第であります。  第二に、選挙運動の自由に関する問題についてであります。選挙運動の公営の拡充強化は、候補者の選挙運動の費用を極力軽減することによつて、金のあるなしにかかわらず、立候補者に選挙運動の機会を均等に保障せんとするものであります。この案に対しまして、本來自由なるべき選挙運動を抑制し、言論の自由を奪い、新人の進出を阻害するものであるとの批判があるのであります。しかしながら、われわれ選挙運動の体験者から見まして、さきに選べました演説、放送及び文書による選挙運動は、すべての候補者にとつて力の許す最大限度でありまして、しかも、これらの選挙運動の機会は、政党の領袖たると、はたまた白面の新人たるとを問わず、すべての候補者に対して完全に均等に開放せられ、保障せられているのでありまして、殊に街頭演説のごときは、まつたく自由に一任せられており、これを目して新人の進出を阻むものとなすことは、まつたく当を失するものといわなければなりません。  また、集会及び言論の自由を保障する憲法の精神に反よるものではないかとの論も聞くのでありますが、不必要に多数の第三者または労務者を利用し、あるいは多数の自動車等を濫用し、または文書図画を濫造使用して、自己の思想、政策等の表明以外の、すなわち自己の印象を選挙人に鮮明ならしめるための、あまり感心のできない。しかも金のかかる方法を禁じたにすぎないのであります。今回の改正法案におきましても、候補者みずから思想、信條、主義、政策を選挙民に訴え、その批判を請う機会は、十分保障せられているのであります。すなわち、何千人と聽衆の集まるであろう二、三十回の公営立会演説会、三十回の個人演説会、無制限にどこででも開ける街頭演説会において獅子吼することができるのであります。また、ラジオによる数回の政見の放送、選挙公報、新聞廣告、いずれも公営でありますが、これらによつて主義政見の発表ができるのであります。なお、金のかかる私営ポスターの代りに、内容改善されたる公営の氏名指示を、一投票区当り三ないし五個所にこれを行い、また物を金の浪費のはなはだしいメガホン隊、自動車隊による氏名連呼の代りに、ラジオによつて、選挙期間中十回も、氏名、党派、経歴等のニユースとしての放送が行われるのであります。  かくして、選挙資金を有しないため、または選挙に関して特別な地盤や支持国体をもたないために、対等に自己の抱負経綸を選挙民に理解せしめることのできない優秀なる人材にとつては、選挙の公営によつて眞の意味の選挙の自由が保障せられるのであつて、形式的な選挙の自由よりも、実質的自由を尊重することこそ憲法の京神に副うものであることを信ずる次第であります。第三には、選挙公営で金がかからないということになりますると、泡沫候補の肇名的監立によつて選挙界が撹乱せられ、公営に支障を夾すことも予想せられますから、立候補の自由を保障しつつ、監立に対して防止的措置を二、三採用したのであります。  第四に、個人の選挙運動費用の制限について。大部分の選挙運動は公営に移されましたが、街頭演読会を初め、個人としての運動の範囲も相当ありまするので、選挙運動費用の支出はこれを認めることが必要であります。しかし、その費用の制限額につきましては、現行政令は單價六十銭となつており、一候補者当り五万円前後の計算となります。來るべき総選挙の時期には、物價指数は昨年春の七倍ぐらいになると思われます。そうしますと、五万円が三十五万円と相なるのでありますが、公営拡充の結果、画人の選挙費用は、現行の五万円ないしその二、三割増の程度で制限することが妥当であると認められますが、これは政令に譲ることといたしたのであります。  第五に、公営に要する経費は、概算として、一候補者当り十五、六万円を要する見込むみであります。しかして、この公営費十五、六万円、候補者の分担する二万円という金は、十五枚の交通機関のバス代が一万円、二回の新聞廣告料一万円、計二万円となり、バスと廣告の費用にしか当らないのでありますから、二万円の分担はやむを得ないところと思うのであります。  第六に、選挙法規は守りやすぐ、守らせやすいという方面に規定いたしましたが、なお選挙は国民の監視のもとに公正に行うという趣旨から、選挙管理委員会は、投票方法、選挙違反その他選挙に関する重要事項を周知徹底させる方法をとらなければならない旨を規定したのであります。さらに、検察官その他選挙取締り機関は、選挙の公正を確保するため、選挙違反のないように取締りを励行すべき旨、特に一條項を設けた次第であります。  最後に選挙運動等の臨時特別に関する法律案第三條の「交通至難の島嶼その他の地」の「その他の地」とは、著しい山岳地帯、または冬季積雪すこぶる多量で、交通きわめて困難な地方も含むものでありますから、従つて、政令で特別の規定を設けることができる次第であります。  なお、お手もとに配付しました両法律案は仮刷であつて、ミスプリントもあるかと思いますが、この点、御了承を願つておきます。  以上をもちまして、選挙に関する両法律案の起草の経過並びに結果の報告を終わります。
  59. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 討論の通告があります。これを許します。北二郎君。     〔北二郎君登壇
  60. 北二郎

    ○北二郎君 私は、農民党その他小会派を代表いたしまして、今議題となつておりまする選挙運動等臨時特例に関する法律案並びに衆議院議員選挙法の一部を改正する法律案に反対いたすものであります。時間が非常に制約されておりますので、ごく簡単に二、三の点を指摘いたしまして、反対の理由といたします。  まず第一点といたしましては、予納金と供託金であります。予納金と供託金を計算いたしますなれば、立候補するだけに、すでに五万円の多額の金が要りのであります。また、その他に十万円という多額の金を許しておるのであります。かかることになりますれば、要するに金持しか立候補することができなくなつてくるのであります。いかにりつぱな人がおりましても、金がないために立候補することができなくなるのであります。これでは、まつたく民主選挙には逆行であることは明らかであります。  第二点といたしましては、演設会の極端な制限である。これは明らかに憲法違反である。憲法第二十一條には、集会、結社及び言論出題その他下句の表現の自由を保障するとありますが、この新憲法趣旨まつたく反するものであります。すなわち、組織的選挙活動を制限し、顔と地盤との濃存でありまして、実力のある新人がまつたく当選するころができなくなつてくるのであります。いわゆる、あまり現議員の当選主義であるということが明らかであります。  第三点といたしましたは、選挙違反に対する罰則であります。従来の例を見ますれぼ、選挙法はいかに改正されても、これは意味をなさないのであります。すなわち、違反をしても罰せられる機会が少いのであります。このたびの選挙法改正にあたりましても、従來の感覚と同じような観点に立つて作成しておるのであります。もし徴底した改正をやるつもりでありますれば、違反に対しては厳罰主義で臨むべきであるが、かかるなまぬるいことでは、またまたやみ選挙が行われることは明らかである。いわゆる土建業者と結びつくとか、あるいは革やゴムのやみをして金をもうけた人でなければ当選ができないという結果になつてくるのであります。ゆえにわれわれは、遺憾ながら本案は承服しがたいのであります。  以上三点を指摘いたしまして、本法案に反対するものであります。(拍手
  61. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して清潔いたします。両案を可決するに酸性の諸君の起立を求めます。     〔賛成着起立〕
  62. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立多数。よつて両案は可決いたしました。(拍手
  63. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第五、電信電話料金法案「日程第六、郵便法等の一部を改正する法律案、右両案は同一委員会に付託された議案でありますから、一括し議題といたします。委員長の報告を求めます。通信委員長土井直作君。     〔土非直作君登壇
  64. 土井直作

    ○土井直作君 ただいま議題となりました電信電話料金法案並びに郵便法等の一部を改正する法律案に関しまして、一括して委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず両法律案の提案理由でありますが、現行通信関係料金は、昭和二十二年度の初めにおきまして、千二百円の給與水準と、昭和二十一年十月当時の物價水準とを基礎として改訂されたものでありまして、その後結與水準は再三改訂され、物價水準も大幅の引上げを見たにもかかわらず、通信料金はそのまますえおきになつておりますので、昭和二十三年度通信特別会計損益勘定の收支の見込みは、現行料金をもつていたしましては、現在の給與、物價水準によりましても、差引百五十一億余再の不足を生ずることになつております。その上、近く改訂を予想せられる新給與並びに物價水準をも考慮に入れますときには、差引不足見込額はさらに莫大な数字に上り、この收入不足額を補填する財源は、もつぱら一般会計よりの繰入金または借入金によるほかはなく、かくては独立採算制の基礎を脅かし、インフレを助長しい、健全財政の建前を沒却する結果になりますので、一般会計からの繰入金は五十億円程度止めまして、できるだけ事業收支の均衡をはかるために、現行通信料金を、おおむね現行の四倍に引上げることを目的として、政府は両法律案提出するに至つたものであります。  次に、法案の要点について説明申し上げます。電信電話料金濃案は、現在省令で定めている電気通信料金を、財政法第三條の規定に従いまして、料金改正の機会に法律をもつて規定したものでありまして、取扱制度関そのものは、新たに低額電報制度として市内電報及び翌日配達電報制度を設けるとともに、現行の時間外電報の制度を廃止したほかは、著しい変化はございません。料金の引上率は、大体現行の四倍引上を建前としておるのでありますが、個々の場合は、必ずしも一様に四倍にはなつておりません。おもなものを二、三申し上げますれば、電信関係におきましては、至急電報、市内電報及び翌日配達電報の料金をそれぞれ一般電報料の二倍または三分の二程度に止める一方、普通電報料を現行の五倍に引上げているのでございます。電話関係におきまして、加入電話関係料金は大体現行の四倍引上げでありますが、公衆電話にかかる市外通話料は二倍に止め、予約新聞通話料は、一般と著しく不均衝な低率料額を若干是正する程度に止めております。  次に、郵便法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案でその一部を改正しようとしている法律等は、郵便法、郵便貯金法、郵便為替法、郵便振替身金法及び閣令金融緊急措置令に基く封鎖支拂の取扱に関する件でありまして、主として現行料金の引上げを内容とするものでありますが、これとともに、亡失または毀損した書留郵便物の損害賠償額及び郵便為替証書一枚の金額の最高限を引上げているのでございます。  次に改正料金中おもなものを申し上げますれば、郵便法関係におきましては、一種ないし三種及び小包郵便物を通じ、現行の四倍に引上げておるのでありますが、ただ第一種郵便物である封書は、料金徴収上の便宜から一円二十銭を五円に引上げ、第三種の一部、第四種、第五種の料金及び運賃等の特殊取扱料金中おもなものは、料金政策上または取扱手数、利用價格等の見地から、倍率を三倍ないし三・七五倍程度に止めているのでございます。なお、亡失または毀損した書留郵便物の損害賠償額は、これを百円から四百円に引上げております。郵便為替塗及び郵便振巷貯金法関係におきましては、小口の送金制度である点を考慮し、郵便為替については平均引上倍率を一・八三倍に、郵便振替貯金については三・八四倍といたしておりますほか、通常為賛、電信為替及び小為替証書一枚の金額の最高限は、これをそれぞれ一万円、一万円及び二千円に引上げているのでございます。  以上、両法律案の概要につき御説明申し上げたのでありますが、両案は、去る六月五日委員会に付託、委員会は、その重要性に鑑み、数次にわたつて会議を開催し、政府の提案理由並びに内容の説明を聴取した後、政府との間に詳細にわたつて質疑應答を重ねたのであります。その細部については会議録に譲ることにいたします。以下、二、三につき要点をかいつまんで申し上げます。  まず、料金の借上げは物價及び生計費に悪影響を及ぼし、インフレの原因にならぬかという質疑に暫しましては、政府の調査によれば、国民所得中通信料金の占める割合は一・五六%であり、都市家計費の内訳によれば、通信運搬費は総額の〇・二%を占めるにすぎないから、影響はきわめて僅少であると思うが、心理的な影響は認めざるを得ない旨の答弁がありました。  次に、値上げに伴う利用減の程度はどうか、利用減に件つて収入の確保は困難にならないかという質疑に対しましては、値上げに伴う取扱量の減少は一割ないし二割を見込んでいるが、これは一時的現象でもあり、現在の通信需要に鑑み、これ以上の減少は予想されない旨の答弁がありました。  次に、赤字の主要原因が人件費及び物件費の高騰である以上、事業全般にわたり、さらに一層の合理化を要すると思うが、所見はどうかという質問に対しましては、既往においても人件費及び物件費にわたり相当程度の節減を実施してきたのであつて、これ以上人員の整理等の余地はないのであるが、政府は將來においても事業の合理化については極力努力する旨の答弁がありました。  次に、独立採算制をとるならば、むしろ過去における一般会計への繰入れ並びに戦災による施設の荒廃等の実情に鑑み、現在の通信事業の収支の赤字は一般会計において負担することが相当と思うがどうかという質疑に対しましては、國家財政の現状に照らして、通信事業の赤字をすべて一般会計の負担とすることは至難であるのみならず、企業体として、その収支はできる限り特別会計において相償うことを原則とすべきものと考える旨答弁しております。  次に、審議の慎重を期するために、六月十四日公聴会を開催したのでありますが、出席の公述人九名のうち、全面的に反対する者二名、値上げに賛成する者一名ございましたが、他の者はいずれも條件付賛成でありまして、現行通信料金が比較的低廉であり……     〔発言する者多し〕
  65. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  66. 土井直作

    ○土井直作君(続) その値上げの生計費及び生産原價に及ぼす影響も著しくないから、財敷の現職等から見て、ある程度の値上げはやむを得ないものであるという立場をとつておるのであります。しかしながら、公述人の多くは、値上げをする反面、サービスの改善が全体に必要であることを主張いたしておるのであります。  かくして委員会は、六月三十日、両法案に対する質疑を終了し、引続き討論を行つたのでありますが、討論の際、民主自由党を代表し白井佐吉君より、平均値上倍率を二・五倍とし、はがきを一円、封書を三円程度に止めたいという修正意見を述べられ、日本社会党を代表して村尾薩男君より、原案に賛成の意見を述べられ、ついで民主党を代表して田島房邦君より、四倍値上案に賛成の意見とともに、両法案の施行期日を昭和二十三年七月十日に改める修正意見を述べられ、最後に日本共産党を代表して林百郎君より、赤字は一般会計の負担とすべきもので、本値上濫案はインフレを促進し、追加予算の上程を必至ならしめるから、原案に反冠である旨の意見を述べられたのであります。  次いで委員会は採決に入り、まず民主自由党提出の修正案に対し賛否を諮りましたところ、小数を以つて否決、次に民主党提出の、原案に六月十五日とある施行期日を七月十日に改める修正案を上程、多数をもつてこれを可決、引続き、右民主党提出の修正案を除く残余の原案は、これを多数をもつて可決いたしてのであります。よつて法律案は修正議決を見た次第でござついます。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  67. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 両案に対しては、白井佐吉君より成規の賛成を得て修正案が提出されております。その趣旨弁明を許します。白石佐吉君。     〔白井佐吉君登壇
  68. 白井佐吉

    ○白井佐吉君 私は、民主自由党を代表いたしまして、ここに修正案に対する趣旨弁明を行いたいと思う次第であります。ただいま提出されましたところの修正案の要旨をまず申し上げたいと思うのであります。  郵便法等の一部を改正する法律案及び電信電話料金法案修正案  一、郵便法等の一部を改正する法律案  第一條の一部を次のように改める。  第二十一條二項中「一円二十銭」を「五円」にとあるを「三円」に改める。  第二十二條第二項中「五十銭」を「二円」にとあるを「一円」、「四円」にとあるを「二円」に改める。  二、郵便法等の一部を改正する法律案及び電信電話料金法案中、前号を除く各種料金の値上額は、現行料金の二・五倍を十銭位において四捨豆入したものに改める。但し、原案値上額の倍率が現行料金の二・五倍に達せざるものは原案の倍率による値上額に止める。以上であります。これに対しまして、いささか趣旨の弁明を試みたいと思うものであります。  御承知のごとく、本年二月三日、総局令部民政局代表が、当時片山内閣によつて計画せられておりましたるところの運賃及び通情料金値上問題に対しまして、その國会のあり方に関し、内閣は予算のバランスをとるという方針をとつておる、いかにバランスをとるかは、國会が最善と思う方法で実行すべきだが、それは必ず国民の声を反映しなければならないと言つております。このことはすなわち國民世論の動向を正しく見究めて、よつてつて政治の基本的要件とすべきことを示唆しておるのでございます。この場合におきまして、現政府が計画いたしましたる今回の郵便電信電話その他各種料金四倍引上げは、はたして國民の世論の現状に副うておるかどうかということに対しまして、多くの疑問を有するものでございます。  私どもは、委員会における審議の過程におきまして、この問題が一般國民大衆に與える心理的影響の甚大なる点に鑑みまして、最も慎重を期するために、あるときは公聽会を開き、各階層の有識者の声を聽き、あるときは参考人を招致してその所見を質し、これらを法案審議の参考資料といたしたのでありますが、ただいまの委員長の報告に比較いたしまして、私は、その公聽人及び参考人のほとんどが反対であつたと認識いたしておるのでございます。(拍手)おそらくことごとくが、その値上げの不当を鳴らしておつたと思うのであります。おそらく政府当局も、與党の諸君も、それらの痛切なる意見を聽取して、いかにこの値上案の倍率に対する國民大衆の不服の声の大なるかを承知せられたことであろうと思うのであります。すなわちある者は、この値上げによつてインフレの助長を促進せしめ、物價高を招來し、私的経済の破綻を憂え、ある者は文化國家建設の一大障害をなすものであると言い、またある者は独立採算制の不当を鳴らす等、いずれも痛烈なる批判を加えられたことは、御承知通りであります。私は、逓信業務の独占的官業の性格と使命に鑑みまして、納得し得られる方法において官業の根本を改変し、そして、その企業性を極度に発揮せしめて、もつて産業の復興と國民生活の実体に寄與すべきであると痛感する次第であります。(拍手)申すまでもなく、輸送力及び逓信力は、経済産業の発展と國民所得の原動力であるのみならず、國民生活の簡素、便益化の最大要素であります。從つて、これが利用度の多い少いということは、ただちに國力の消長に至大の関係をもたらすことは、申すまでもありません。しからば、今日におけるところの利用状況はいかがであるかと見まするのに、通常郵便物は、昭和九年当時を一〇〇%として、昭和二十二年度におきましては、実にその五一%であります。小包郵便物は同じく五五%にすぎません。かくのごとき状態にあるとき、しかも國家再建途上にある今日、無謀なる料金改訂を行わんとすれば、その帰するところ、公私経済の上にさらに一層の困難を加えることは、まことに当然と言わなければなりません。  殊に政府は、本法案提案の説明にいわく、業務収入の減少はインフレの高進による、人件費及び物件費が急激に上昇したことになると言つており、また設備の復旧とサービスの改善に努めておるが、戰前の水準に到達するには、今後なお相当の努力と年月を要するであろうと言つておるのであります。從來において、すでにしかりであります。今日大幅なる値上げを実現すれば、インフレはさらに高進し、人件費及び物件費の上昇に拍車を加えるのでありまして、設備復旧の財源もますます枯渇するに至るのでありますや從つて、戰前の水準に回復し得るための忠実なる施策では断じてあり得ないと思うのであります。  政府は、その資料において、国民所得中に占むる逓信費の割合、あるいは公定物價と逓信費の比較を発表しております。すなわち、昭和八年の百に対して、昭和二十三年は百三十倍強となつております。当時一銭五厘のはがきは今日二円になつている。計算の上からすれば、これは当然であるのでありますが、これは、あたかも何ら責任を意識しておらぬところの状態を示しておるのでございます。私は、逓信事業の公益性とその使命を果すために、かくのごとき手段ははなはだ欲せざるところでありまして、逓信料金なるものは他の物價の下位に嚴存して、むしろ他の物價を抑制する役割を果すべき立場に置くべきが至当と申すべきであろうと思うのであります。  近時、官業における赤字対策は、常に料金値上げ、給與の政善、借入金、予算の財源捻出等の循環を繰返して、いわゆる急場しのぎに終始してきておるのであります。今回の計画は、その最も大きな無謀なるものの代表的なものであるのであります。すなわち、逓信事業における財政収支を最も安易なる料金の値上げに求めんといたしますることは、実に不当もはなはだしきものであり、これでは、鉄道、逓信の二大官業は、再建どころか、遂に崩壊に瀕するに至るであろうことを憂うるものであります。(拍て干)  今や、新給與三千七百円べースの実施を見ようとしておりますが、これによつて物價の高騰は必然であります。この國民生活の極端なる危機に際しまして、一般物價と比肩して百倍の値上げは極力避くべきでありまして、この際二・五倍の程度こそ、暫定的措置として最も妥当なりと信ずるものであります。(拍手)これをもつて私の趣旨弁明といたします。(拍手
  69. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 討論の通告があります。これを許します。林百郎君。     〔林百郎君登壇
  70. 林百郎

    ○林百郎君 私は、日本共産党その他の小会派を代表して、左の五つの理由によつて料金値上げに絶対反対するものであります。  第一に、郵便料金の四倍値上げは、これが経済に及ぼす複雑な作用によつて、インフレーションを激化する要因となるのであります。政府は、この点について、昭和二十三年度國民所得が一兆九千億であり、通信料金の所得は二百九十六億円であつて、国民所得中に通信料金の占むる比率はわずか一・五%にすぎないのであるから、これはインフレの要因にはならないと言うのであります。しかるに通信料金は、價格の形成に直接不可避的に影響をもつものであつて、一般商品の宣傳費のごとく自由に斟酌し得るものではないのであります。物價体系の一環としてこの四倍の値上分は、すべての物價に最も強力に、不可避的に作用すると思うのであります。  また政府は、郵便の利用状況に関して、國民一人当り年間の利用度は、普通通常郵便が、一年にわずか一一・三通にまぎない。金額にして一年に八円五十銭である。特殊通常郵便は、わずか〇・四通しか利用しない。これに対する一年の料金は三円九十四銭である。小包に至つては、一人平均一年に一・八箇しか利用しない。これに対する費用は一円八十六銭にすぎないから、これを四倍にしても、少しも生活費に響かないし、インフレーシヨンにも影響しないと言つているのであります。この数字自体が問題でありますけれども、しかし、かりにこの数字通りとしても、すでに局限に達している國民生活にとつて、わずかとは言え郵便料金の値上は、いかに致命的にわれわれの日常生活影響を及ぼしてくるかということは明らかであります。  また、政府提出の資料によりますと、普通通常郵便、特殊通常郵便、小包郵便等の個人の利用度は、わずか四割にすぎない。個人の利用度がわずか四割であるから、これを値上してもインフレーシヨンに影響がないと言つているのでありますが、このことは、裏から言いますと、平均六割程度のものを会社またはその他の重要團体が利用しているということになるのであります。しからば、これの値上はただちに商品に轉嫁され、大衆の負担になるということは、明らかだと思うのであります。  また、政府の値上の理由には、戰前より物價が上つているのであるから、通信料金も当然上るのであると言いますけれども、しかし、この際考えてみなければならないことは、戰争によつて極端に破壊されたところの機械の破滅によつて、現在のサービスが約戰前の三分の一にも達しておらないのであります。一例を申しますと、昭和十一年に東京・札幌間の普通電話が二十四分であつたのが、昭和二十二年五月には百二十七分かかる。東京・福岡が十九分で通じたのが、現在は百八十六分であります。昭和二十二年度の不完全の通話は、半分の五三%である。特別通信の、いわゆる特急通話の待合時間が、昭和十二年には東京・仙台が十四分であるのが、昭和二十二年には二百二十二分となつておるのであります。こうして、戰争による施設の破壊によつて、通信のサービスが非常に落ちているのでありすから、結局四倍の値上ということは、十二倍の値上に該当するということになるあります。  政府の考えている財政政策の基本方針として、今会計年度は、物価は七割しか上げない、やみは三・六%に止めると言つているのでありますけれども、通信料金よ四倍に、運賃を二・五倍にその他の基礎物資を二・六倍以上に値上いたしておる今日、この物価七割値上り、やみを三・六%上げるということは、絶対に不可能なのであります。しからば、これが影響はただちに三千七百円べースの実質的な切下げとなつて、勤労大衆にとつて言語に絶する大きな負担となるのであります。これが、加藤労働大臣が三十七百円ベースに自信がないと言う根拠になるのであります。(拍手)  第二として、しかもこのことは、政府が強調しているところの健全財政維持、追加予算提出は絶対しないという政府の方針を、みずから裏切つているのであります。今年度も昨年と同様に、厖大な追加予算提出ざれることは必至であると思うのであります。いかなる顔をしそ芦田総理と北村大藏大臣がこの追加予算提出するか、見ものだと思うのであります。しかも、この四倍の値上げによつて、無謀な大衆課税の形において大衆収奪を行うことになり、この負担の一切が労働者農民、勤労大衆、中小商工業者に転嫁されていくと思うのであります。  第三は、政府は料金値上げの理由として、通信壽の独立採算制を絶対至上命令のごとく主張しているのでありますが、この独立採算制とは、独立金融資本によつて行われた無謀な戦争による犠牲の負担を、一切日本の勤労大衆に転嫁させることであります。すなわち、昭和十三年から十九年の間にわたつて、すなわち戦争前はもちろん、戰争中においても、通信事業時制会計は、一般会計へその収益を補填していたのであります。通信特別会計は黒字であつて、その利益を一般会計に補填しておつたのであります。しかるに、通信事業の赤字の大きな原因は、明らかに通信施設、郵便、電信電話の約四割から五割に及ぶ、戰争による惨憺たる被害の結果であります。しかも、その後の復興の完全なるサボタージユによることと、機械施設の酷使によることは明瞭なのであります。從つてわれわれは、この赤字の補旗策としては、当然一般会評によつて補填すべきものであり、しかも独占資本の犠性により、いわゆる資本家的支出であるところの価格調整費あるいは終戰処理費等によつて、この緊縮化によつて当然補填すべきだと思うのであります。  すなわち、このたびの四倍値上によつて政府がねらつているのは、約百五十億円程度の赤字を埋めようとするのであります。わずか百五十億円程度の特脚会計の赤字は、終戦処理費一千億円のわずか一割五分であります。また價格調整費五百十五億円のわずか三割にすぎないのであります。郵便料金値上のごとく最も大衆の生活に切実な影響を及ぼすがごとき方法によることは、絶対に反対なのであります。  なおわれわれは、通信事業特別会計の範囲内においても、多くの再檢討を要するものがあると思うのであります。すなわち簡單に申しますと、たとえば進駐軍関係の経費のごとく、四千人の人員のうち、わずか一割の人件費しかとつておらないのであります。政府提出資料によりましても、進駐軍関係の経費を十四億円とるべきものを、まだ四億円未収であるということが、はきり示されておるのであります。また、電気通信施設の民間土建業者に対する請負、たどえば大安株式会社、日本土木工事株式会社、日本電話設備株式会社以下四十件にわたるどころの下請土木業者に対する請負金の緊縮、その他物品購入費等の節約、終戦以來の不要品払下の節約等多くの財源が、かりに独立採算制のわくの中においても、たくさん見つけられるのであります。  以上のごとく、わずか百五十億円程度の財源は、あえて郵便料金、電信電話料金の四倍値上のことぐ、安直ではあるが最も危險であり、大衆の負担を過重にし、インフレーシヨンを激化するような方法をとるべきではないと思うのであります。このことは、ひとり共産党のみならず、四十万全逓從業員諸君を初め、日本の全人民大衆が絶対に反対を唱えておるのであります。すなわち、この反対の署名は二千五百万名に及んでおるのであります。  以上私は、全逓全従業員並びに日本全人民の名において、かかる無謀な郵便料金値上げには絶対反対するものであります。
  71. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 林君に注意いたします。ただいま林君の「その他の小会派を代表して」という言葉は、これを明らかにされませんと——それを取消されるか訂正されるかしないと、迷惑する小会社があるだろうと思います。
  72. 林百郎

    ○林百郎君(続) その他の小会派とは、農民党の北から申出がありまして、日本共産党だけではなくして、その他の小会派と特に入れてくれという頼みがあつたのであります。そこで私はこれを入れたのであります。     〔発言する者多し〕
  73. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に願います。
  74. 林百郎

    ○林百郎君 しからば訂正いたします。その他の小会派とは日本農民を指します。
  75. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず日程第五、電信電話料金法案に対する白井佐吉君提出の修正案につき採決いたします。本修正案に賛成の諸君起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立少数。よつて白井佐吉君提出の修正案は否決されました。  本案について採決いたします。本案の委員長報告は修正でおります。本案を委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  77. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り修正決議いたしました。(拍手)  次に、日程第六、郵便法等の一部を改正する法律案に対する白井佐吉君提出の修正案につき採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  78. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立者少数。よつて白井佐吉君提出の修正案は否決されました。  本案につき採決いたします。本案の委員長報告は修正であります。本案を委員長報告の通り決つするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  79. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立少数。よつて本案は委員長報告の通り修正議決いたしました。(拍手
  80. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第七、港域法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。運輸及び交通委員長川野芳滿君。     〔川野芳滿君登壇
  81. 川野芳滿

    ○川野芳滿君 ただいま議題となりました港域法案について、運輸及び交通委員会における審議の経過並びに結果について御報告申し上げます。  本案は、六月十日、本委員会に付託され、十四日、政府より提案理由の説明を聴収したのでありますが、その要旨は、さきに制定されました海上保安廳法第一條におきまして、河川の口にある港と河川との境界は別に法律でこれを定めることになつており、また本法案と同時に今回提案されました港則法案第三條におきましても、港の区域は別に法律でこれを定めることになつておりますので、直接には、これらの法律の要請に應ずるとともに、港の区域が法令によつて從來とかく不統一でありましたので、本法によつて港の区域を統一せんとするものであります。  本案においては、別表によつて、四百十八の港についてその区域を定めておるのでありますが、船員法との関係上、その適用について適当でない場合も生じますので、本委員会においては慎重に審議した結果、各派共同による次のような修再案を得たのであります。すなわち、附則に次の一項を加える。  運輸大臣は、政令の定めるとりころにより船員法(昭和二十二年法律第百号)第一條第二項第二号の適用について、当分の間特に港を指定し、この法律の定める港の区域と異なる区域を定めることができる。  爾余の点につては格別問題とすることもありませんので、詳細は会議録に譲ることにいたします。  しかして本委員会としては、二十九日質疑を終了し、昨三十日、各派共同による右修正案及び原案について採決の結果、本案を修正議決した次第であります。  以上、はなはだ簡單でありますが、御報告申し上げます。(拍手
  82. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。(拍手
  84. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第八、刑事訴訟法改正する法律案、日程第九人身保護法案、右両案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。司法委員長井伊誠一君。     〔井伊誠一君登壇
  85. 井伊誠一

    ○井伊誠一君 ただいま議題となりました刑事訴訟法改正する法律案について、司法委員会におきまする審議の経過並び結果の概略を御報告いたします。  まず、提案の趣旨を申し上げます。本案は、日本國憲法実施の伴いましてその根本理想である基本的人権の尊重の線に即應するように、刑事手続を全面的に改正する必要から提案されをのでありまして、七編五百六箇條から成り立つ、すこぶる厖大な法案であります。以下、本案の内容を概略的に申し上げますが、本案は、憲法に現われておる英米法的刑事手続の長所と、大陸法的刑事義の長所とを調整統合したものでありまして、改正の要点は、第一に、公訴の提起が提訴状一本となつた点であります。従来のように、捜査記録や証拠を裁判所に公訴と同時に提出することは全然禁止し、もつて裁判官に予断を抱かしめないように、裁判官をして公判廷及び被告人には全然白紙をもつて臨ましめるようにしたことであります。  第二に、徹底的公判中心主義をとり、なかんずく、第一審の公判が名実ともに全手続の中核的構造となつておる点であります。事実及び証拠の取調べは、第一審において全力をあげて丁重になされ、検察官及び被告側は、原則として、この一戦という態度をもつだ真剣に攻防を盡すのであります。  第三に、被告人が原告官なる檢察官と対立する当事者として、その地位を高められた点であります。被告人はこ有罪判決があるまでは無罪の推定を受け、当事者としての地位が十分に認められることになつたのであります。すなわち、從來のような証拠をとるための被告人尋問劇度は廃止せられ、これに代つて黙秘権が認められまして、終始黙つておることもできようになりましたので、従来のように自白を偏重し、自白を強要するあまり、人権蹂躙に陥りやすかつた弊は、断ち切られのであります。また権利保釈の制度が認められ、あるいはクロツス・エサザミネーシヨンを運用し得るようになつたことなども、その現われであります。  第四に、控訴審が現行法と異なり、いわゆる事後審、すなわち第一審判決の当否を判断するものとなつた点であります。  第五、いわゆる人権蹂躙事件、刑法の百九十三條から百九十六條まで、すなわち職権濫用、暴行、凌虐の罪に関する檢察官の不起訴処分に対しては、管轄地方裁判所は告訴告発者の請求により、その事件を裁判所の審判に付することができるようになつた点であります。  以上がが改正の要点でありますが、本案は、五月二十六日当委員会に付託されましたので、同月二十八日以後二回にわたつて政府に対し提案理由及びその細部に関する説明を求めた後、若干の研究準備期間をおき、いよいよ六月四日から、当委員会は全委員をあげてこの厖大な法案と取組み、日曜日にも出勤するまでにいたしまして、ほとんど連日熱心な質議を重ねてまいつたのでありますが、その詳細は会議録に譲ることにいたしまして、今質疑應答の重要なもの若干を御披露いたします。  第一点、まず施行期についてでありますが、これだけの大政草が行われているのに、わずか半年の準備期間をおりいて來年一月一日から実施することができるかとの質問に対し、政府から、新憲法施行とともに重大な改革をした應急措置法の貴重な経験に徴し、十全は言いがたいが、來年一月一日から実施し得ると思う、なお、施行法等関係法規の整備及び人件費、物件費等の予算は、来るべき議会の劈頭に提出する予定である旨の答弁がありました。  第二点、人権擁護の立場から新たに設けられた主任弁護人制度及び弁護人の数の制限につき、重要な質問が行われました。その詳細は省きますが、結論的に申しますと、この点につきまして、後に申し上げますやうな各党共同の修正案が提出せらるることになつだのであります。  第三点、身柄を拘束する勾留の條件として、犯罪の嫌疑のほか、留置しなければならない必要條件を規定しないことは、人権蹂躙の弊を生ずることになりはしないか、また、一旦拘束してから解放するということでなく、初めから不当拘束が起らないようにするためにも、留置條件を付する要があるではないかとの質問に対し、政府から、本案においては、身柄の不拘束と自白強要禁止を建前とするから、勾留の必要がないものを勾留することはあるまいが、かりにあつたとしても、権利保釈、勾留の取消、勾留の執行停止等により十分救済し得ると思う旨の答案ありましたが、これに対し委員から、権利保釈が有名無実にならぬように法文の上に明確にする必要があるとの希望的意見の開陳がありました。  第四点、科学捜査の用意についてでありますが、被告人の当事者としての地位が高められ、被告人に黙秘権が認められた結果、科学的捜査の裏づけが必要であると思うが、その用意いかんとの質問に対し政府から、犯罪捜査は無電からといわれるほど無電装置の必要性を痛感するのであるが、全國の檢察庁に無電装置をするには二百五十億円の経費を要する、現下の國家財政では、残念ながら実現困難である、國力の回復に従い、必ず実現してみたいものである、また、科学捜査を担当する犯罪科学研究所は国家会安委員会の所管するところとなつたから、これらの施設を引用して第一線検察職員の訓練に十分注意していく旨の答弁がありました。  第五点も裁判のスピード化のため速記制度を認めよとの希望的質問に対し、政府がら、將來は職員に速記術を習得せしめて、公判調書は速記によることにしたい、しかしつ、それが実現せられるまでの間、被告人側からつけられた速記をいかように取扱うかということは問題であるが、それは最高裁判所のルールに譲つて、なるべくこれを援用し得る方向にもつていきたい旨の答弁がありました。  第六点、国民主権の立場から、一般行政や警察教育には、いずれも國民の参加が認められているのに、裁判に國民参加の制を認めなかつたのは何ゆえかとの質問に対し、政府から、立案の際陪審制度も十分考慮したのであるが本案実施のためだけにすら裁判官、檢察官合わせて数百名を要し、さらにその他の職員を合わせると数千人を要し、廳舎等の設備も現在の倍を要するような次第である、この大改革をやる際であるから、陪審も実施したいのであるが、国家財政の現状からしては、梅も櫻も一時に咲かせることのできないのはまことに残念である、國力回復の日を期して実現したい旨の答弁がありました。  最後に第七点として、控訴審をいわゆる事後審と改めた点について、人権擁護の観点から最も活発心論議が行われたのであります。委員側から、統計によれば、昭和九年から十六年まで八箇年間の控訴事件は年平均七千八百八十四件で、うち第二審判決の結果軽くなつたものが年平均二千百七十五件で、すなわち三一%は刑の量定不当ということになつている、また、昭和十一年には死刑二十五名のうち四名の生命が、同十五年には死刑十二名のうち二名の生命が控訴審で救われている、現行の覆審制度は、十分にその偉力を発揮している、ところが本案によれば、控訴に審おいては被告側から第一審で提出できなかつた新しい証拠が提出できないことになつており、控訴審がおろそかになりはせぬかとの質問に対し、政府から、從來のような複審制度をとると、どうしても第二審の公判に重点がおかれ、第一審はおろそかになりがちで、指摘せられるような結果も現われると思うが、本案の第一審においては、当事者は全力をあげて攻防をこの一戰に集中することになり、二回戰、三回戰と、同じことをだらだら繰返えすことがないので、事実や証拠は第一審に出盡すことになる、ただ神のわざでないから、誤りなしとしない、それで、控訴審は複審ではないが、第一審判決の当否を判断するために、職権で刑の量定不当及び事実誤認の事由を取調べることができるようになつている、つつまた第一審で調べなかつたことが記録上明らかとなつている証拠は、控訴審においても取調べを請求することができるから、現行法と異なり、控訴審がまるで逆になり、おろそかになるという心配はない旨の答弁がありました。  かようにいたしましてほとんど全委員から熱心な研究と論議が展開されまして、昨三十日、各委員の本案に対する意見も確定的段階に達し、各党から共同して修正案が提出せらるるに至つたのであります。その内容の概略を御披露いたしますと、実態的真実発見と人権擁護の観点から、第三百九十三條第一項に但書として、第一審弁論が終る前に取調べを請求することができなかつたことが疏明されますと、新しい証拠も控訴審で取調べの請求ができ、控訴審はこれを取調べなければならぬ旨の規定を加えたのであります。その他は、主任弁護人の制度及び弁護人の数の制限は裁判所の規則に譲る旨、公判調書は遅くも判決宣告までにこれを整理する旨、権利保釈の消極條件として罪証隠滅をすると疑うに足りる相当の理由がある旨の修正及び第三百四十三條後段の誤解を除くためにする修正等でありまして、これら修正に対する理由は、すでに質疑のところで述べられた点に盡るのであります。  次いで討論の際、各党委員から前述の共同提案のように修正することに賛成意見が述べられた後、採決の結果、全会一致をもつて修正議決せられた次第であります。なお岡井委員から修正案が提議せられましたが、賛成者少数のため否決せられたのであります。  次に、人身保護法案審議の経過並びに結果を簡單に御報告申し上げます。  日本國憲法が基本的人権の尊重をその根本理想といたいることは申すまでもないことでありますが、この基本的入構のうち最も素朴的であり、しかも最も卑近切実な身体の自由につきまして、憲法は全文百三箇條のうち、第十三條、第三十一條、第三十三條及び第三十四條等四箇條を割いて、これが規定に充てているのであります。從來の大陸的明治憲法と異なりまして、国家の最高法規、根本法の中に、身体自由を保障する、詳しい、厳格な、手続規定的な條文を、数箇にわたつて設けられましたことは、一見不可思議、奇異に感ぜられるかもしれないのでありますが、日本國憲法のこの態度こそ深く反省せられ、また十分に理解されなければならぬのであります。すなわち、日本圃憲法は明治憲法と異なり、身体の自由の保障をば単純なゼスチュアや看板とすることなく、これに対する政治の実践意図を闡明したものにほかならぬものと考えられるのであります。  ところで現在、身体の自由を奪うところの不当拘束を断乎排除して、迅速かつ容易に自由身体を回復する手段方法は設けられていないのでありましてただわずかに事後的賠償等、きわめて、消極的制度が設けられているにすぎないのであります。過去の民権圧迫、人権蹂躙の苦い経験を再び繰返されないように、すなわち日本国憲法の前述の意図を実践に移すために、人身保護の黄金律ともいうべき英米のヘービアス・コーパスの制度を範として、本法案提出せらるるに至つたのであります。  本法案内容の概略を申し上げます前に、まずこの法制が、従来の理論的大陸法から経験的英米法へ移行する典型的なものであることを御注意願いたいのであります。  内容を御紹介いたしますと、第一に、この人身保護の請求に対する救済は、すごぶる強力なものであります。なすわち、いやしくも現に不当に自由を奪われている場合には、それが官憲の公権力によるものであろうと、私人、殊に團体の実力によるものであろうと、自由剥奪の急場を救い出してもらうために裁判所に申し出て、速やかに身柄の解放を要求するこにができるのであります。いかなる強権力、いかなる暴力的実力による不当拘束に対しても、敢然として救いの手が差し向けられるのであります。  第二に、人身保護の請求は、ひとり被拘束者のみならず、何人からもできるのであります。たとえば、監獄部屋に連れこまれ、あるいはボス的存在によつて拘留せられ、あるいは精神病者として監禁せられている場合には、多くは被拘束者みずからこの請求をなすことができないであろうと思われるので、被拘束者の親族、知人その他の伺入からもこの請求ができることになつているのであります。  第三に、この請求は簡單にかつ容易にできるのであります。まず請求は、書面または口頭で、拘束者の氏名、拘束の事実及び拘束の場所、これだけのことを明瞭にし、その疏明費斜を附け加えて申し出ればよいのであります。申出受ける裁判所も、この請求を容易ならしめるために、廣く管轄が認められております。また、この手続は疏明という簡單な方法によつて進められ、裁判も迅速にしなければならぬことになつているのであります。但し、不当拘束に名をかりまして濫訴の起りますことを防止する手段も講ぜられているのであります。  第四に、裁判所は一應取調ベがつくと、現に抑留拘禁している拘束者に対し被拘束者を裁判所に連れてきて拘束の事由を説明すべき旨の命令が発せられます。人身保護令状とは、この命令のことをいうのであります。この人身保護令状に違反しますと、拘束者は逆に勾引勾留され、制裁を受けるのであります。しかして人身保護の請求が理由ありと認められますと、被拘束者の、判決の確定を待たないで、即時解放されるのであります。  さて、原案が当委員会の予備審査に付せられて以来、懇談会を継続して慎重な審議檢討を重ねましたところ、さいわい当委員会の論議が参議院における本案審議に反映し、原案はこの線に副つて全面的に修正せられ、面目を一新して送付せられたものであります。  質疑のおもなものは、いわゆる不当拘束、すなわち法律上正当の手続によらない拘束の意義及びその適用問題、この人身保護請求事件の性格問題、最高裁判所のルールの限界問題等でありました。いずれも重要な問題でありますが、いささか専門的にわたりますので、これらを省略いたります。  かくて、委員会においては質疑を省略し、討論採決の結果も全会一致をもつて本案を可決したのであります。  以上をもつて報告を終ります。(拍手
  86. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) まず、日程第八、刑事訴訟法改正する法律案につき採決いたします。本案の委員長報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  87. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は委員長報告の通り決しました。  次に、日程第九、人身保護法案につき採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議あむませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手
  89. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第十、肥料配給公團令の一部を改正する法律案、日程第十一、種畜法案、右両案は同一委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。農林委員会理事佐竹新市君。     〔佐竹新市君登壇
  90. 佐竹新市

    ○佐竹新市君 ただいま議論と相成りました、内閣提出参議院送付にかかりまする肥料配給公團令の一部を改正する法律案並びに内閣提出にかかりまする種畜法案に関しまして、農林委員会における審議の経過並びに結果の大要を御報告いたします。  まず、肥料配給公團令の一部を改正する法律案に関しまして御報告申し上げます。  本改正法律案の目的及び趣旨といたしますところは、病害虫の異常発生により農業生産に不測の損害を生ずる場合を予測いたしまして、緊急事態に対処し、迅速適切な農薬の配給を行いまするために、病害虫の発生の危険のありまする地方の肥料配給公團に一定量の農薬の予備貯蔵をなさしめることができるよう、肥料配給公團令に所要の改正を行なおうとするものであります。  本改正法律案は、予備審査のため六月二十一日農林委員会付託となり、六月二十八日参議院より送付を受けましたので、六月二十九日、政府より提案の理由を聴取しましたる後、簡單なる質疑を行い、本案の趣旨は至つて明瞭であるので、討論はこれを省略して、ただちに採決に付しましたるところ、全員起立賛成、よつて改正法律案政府原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。  次に、種畜法案に関しまして簡單に御報告いたします。畜産振興が該下の急務であり、家畜の改良増殖の源泉たる種蓄を確保し、その合理的利用をはかることが、畜産振興上の重要問題であるということにつきましては、今さら申し述べるまでもありません。しかして、從來種馬統制法並びに種牡牛檢査法によりまして、一應その目的を果してまいつたのでありますが、これらの二法律は、軍國的または統制的色彩が濃厚であつて、多分に終戰後の新事態にふさわしくない内容を有しておりますので、この際、これら両方案を廃止いたしまして、民間の自主性を尊重いたしますとともに、他方では畜産振興に障害ある行為を制限し、もつて今後の畜産振興に貢献しようというのが、本法案提出の理由でございます。  本法案の骨子は、次の三点にこれを要約することができます。すなわち第一点は、種畜の検査、証明方法を変更いたしまして、種牡畜の選択範囲を拡大したことであります。第二点は、家畜の改良事業の付則促進をはかるために、特殊法人たる家畜登録協会の設立を助長すること。第三点は、特定の家畜につきまして、その移動または屠殺を制限し、優良種畜の確保をはかつたことであります。なお、この点は二箇年を限りまして有効であることを、附則においてあきらかにいたしております  本法律案は、六月二十五日、本委員会に付託せられ、六月二十九日、政府委員より提案の理由を聽き、ただちに質疑に入り、畜政上の諸問題にも関連して詳細綿密に検討を行い、翌三十日、討論を省略して採決を行いましたところ、全員起立賛成、本法案政府原案のままこれを可決すべきものと議決した次第であります。  簡單ではありますが、以上をもつて報告を終ります。
  91. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 両案は一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  第十二 栄典法案内閣提出
  93. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第十二、栄典法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。文化委員長小川半次君。     〔小川半次君登壇
  94. 小川半次

    ○小川半次君 ただいま議題と相なりました栄典法案について、委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  栄典法案を存置すべきや否やは、すでに憲法改正のときに十分論議せられまして、結局存置することになり、問題は、日本國新憲法に適合せしめるには、いかなる栄典制度を新たに決定発足せしめるかにかかつていたわけであります。  本案の内容を御紹介申し上げますと、まず第一点は、栄典制度のうち爵位の制度はすでに廃止せられていたのでありますが、このたびは、在來の位階及び勲章の制度もこれを全廃して、全然新たなる構想のもとに栄典制度を樹立する建前をとつたことであります。しかしながら、現に勲章を有する者については、今後一切その着用を禁ずることは適当でないと認め、いわゆる公職追放者以外は旧勲章を着用することを妨げないといたしております。  第二に、新栄典制度は、新たなる勲章制度を根幹とし、これに配するに功労章、善行章制度などをもつてして、國民の表彰に遺憾なきを期さんとしております。  まず新勲章制度でありますが、これは、國家公共に対して著しい功労のあつた者を表彰するための普通勲章と、文化に対して特にすぐれた功労のあつた者に対する文化勲章とにわけております。普通勲章は一種五級になつておりますが、これは、在來の種類も雑多で等級の数も多かつたものを簡素化せんとするものであり、文化勲章を設けましたのは、文化の特殊性に鑑みまして、單一級の特別勲章をもつて表彰せんとするものであります。  次に、新たに功労章の制度を設けましたのは、新勲章が簡素化せられたのを補いまして、廣くあらゆる方面にわたつての功労ある國民を表彰することを目的としたものであります。  次に善行章でありますが、これは在來の紅綬、緑綬、藍綬、紺綬などの褒章をもつて表彰したもののうち、社会公共に対する功労はこれを新功労章ないし勲章に移し、その他については在來の褒章制度を踏襲いたしましたが、ただ、その名称を善行章と改めたのでります。  かくして、政府は栄典制度の面目を一新せんとしているのでありますが、同時にいわゆる栄典法施行令案要綱なるものを示しまして、本法案成立の暁におきましては、その運営に最善を盡し、從來の官尊民卑の表彰傾向を改めまするとともに、被表彰者の格式や地位などにとらわれることなく、廣く全國の市町村長や都道府県知事などからの推薦を得て、國民大衆の表彰に遺漏なきを期し、他面また、これがための審議機関として、民間各方面の人々よりなる審議会を内閣に設けて、その公正にして民主的なる決定に從うべき旨を明らかにするところがあつたのであります。  本法案につきましては、去る六月十五日より審査を始めまして、当日政府からの提案理由を聴きました後、ただちに質疑に入り、二十四日、二十六日及び二十九日の三日にわたりまして、当局との間に質疑を続行いたしたのであります。その詳細はこれを会議録に譲りまして、この間において明らかにされました二、三の点をきわめて簡單にご紹介申し上げます。  第一、栄典の授與は今後盛んに行う方針であること、第二、從來の栄典授與の八割弱は、いわゆる戰役や事変に対する行章であり、残りの二割強のそのまた大部分が官公職員に対するいわゆる定例叙勲であつたのに反し、今後は民間人を大いに表彰すること、しかも、いわゆる普通勲章が五等級にわかれている関係上、その昇叙についても重分考慮すること、第三、新文化勲章の授與範囲はこれを拡大し、たとえば政治、産業、労働などの方面にもこれを及ぼすこと、第四、総じてわが國の勲章は、外國のそれに比してできが貧弱で、図案もまた何となくあかぬけがしていないが、このたびはこの方面にも留意すること、などの発言があつたのであります。  かくして討論に入り、民主自由党の佐々木委員、社会党の佐藤委員、民主党の高橋委員及び國民協同党の川越委員よりそれぞれ、本案は適切妥当な立法であると認め、原案に賛成の発言がありましたが、なかんずく、本法案が、終戰後ともすれば萎靡沈滞しがちな國民大衆に対して、一つの明朗賜達の氣分を與えるよすがともなれば幸であるとの高橋議員の発言は、特に傾聴せられたのであります。  継いで採決の結果、満場一致をもつて原案通り可決いたしました次第であります。  以上、御報告いたします。
  95. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  この際、暫時休憩いたします。    午後七時七分休憩      ————◇—————     午後七時十二分開議
  97. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 休憩前に引続き会議を開きます。  これにて散会いたします。     午後七時十三分散会