○武藤運十郎君 六月中における不当財産取引
調査特別
委員会の
調査審議の
状況を御
報告申し上げたいと存じます。
ただいま本
委員会に係属中の事件は、いずれも
調査途上にあり、未だ完結を見たものがありませんので、本日は、係属事件のうち比較的
調査の進行しております土建業者の政治献金及び兵器処理事件について、その概要を申し述べることといたします。
まず、
調査の
経過でありますが、去る五月二十九日の第二回
調査報告以後における
委員会の開会は、六月一日の第二十六回より、同月二十八日の第三十九回に至る十四回でありまして、この間証人として証言を求めた者十五名、書類及び資料の
提出を求めましたもの五件であります。竹中工務店、清水組その他の土建業者をめぐる
政党献金問題の
眞相を、証人として喚問いたしました竹中藤右衛門君、竹中錬一君、清水康雄君、飯田清太君、藤田榮君、細野三千雄君、地崎宇三朗君、西尾末廣君、
森戸辰男君、深井斌君、妹尾一夫君の十一名の証言と関係書類などを基礎といたしまして究明しました結果、大要次のことが明らかとな
つたのであります。
まず、
政党献金の趣旨についてでありますが、昨年四月の総選挙に際し、日本建設工業会の会長竹中藤右衛門君に対して、旧自由党の村上勇君、進歩党の逢澤寛君、
社会党の藤田榮君の代理深井斌君などより、
政党に対する
資金援助の依頼がありました。そこで竹中藤右衛門君は、個々の土建業者が個個の
政党または政治家に
資金を出すことは、額もかさみ、かつ種々弊害を生じやすいと
考え、
政党の健全なる発達のためには、おもなる土建業者が相談の上、
政党を單位として
資金を援助することが適当であるとの
考えのもとに、有力なる土建業者十四、五名を集め、大体三、四百万円を旧自由党、
民主党及び
社会党の三大
政党に援助したいから應分の寄附をしてもらいたいと依頼し、その世話役として、鉄道工業株式会社専務取締役飯田清太君を依頼したのであります。飯田清太君は、竹中藤右衛門君の意を受けて、主要な土建業者竹中組、清水組、安藤組、池田組、藤田組、佐藤工業、鴻池組、熊谷組、大林組、戸田組、松村組、鹿島組、島藤組、熊方組、銭高組の十五業者より、合計三百五十万円を集め、これを旧自由党幹事長大野伴睦君には、数回にわたり百五十万円、進歩党党務部長地崎宇三郎君にも、数回にわたり百五十万円、
社会党書記長西尾末廣君には、一回で五十万円を渡したのであります。
次に、前記十五名の土建業者よりの献金を受領した大野伴睦、地崎宇三郎、西尾末廣三君の、これが措置について申し上げます。大野伴睦君は、旧自由党の幹事長としてこれを受領し、党の会計に納入した上、はなはだ遲れてはおりますが、政令第三百二十八号による届出をいたしております。地崎宇三郎君は、進歩党の党務部長としてこれを受領したのでありますが、右百五十万円のほか、自己の金と、一、二の友人より借入れた金二百万円との合計三百五十万円を、進歩党及び進歩党が解消して
民主党が結成された後においては
民主党の党関係費用並びに選挙費用に提供したのであります。しかして同氏は、このうち百万円だけを党会計に納入したこととし、政令第三百二十八による届出をいたしておるのであります。西尾末廣君は、金五十万円を受取
つたのは、同君の言を借りれば、党書記長たる西尾個人であ
つて、党でもなければ、純然たる個人でもないとの主観において、それを党のために使用したと主張し、
從つて、正式に党会計には納入せず、政令第三百二十八号による届出もいたしておりません。
地崎宇三郎君が党のために支出した三百五十万円の使途については、政治
資金の糺明上非常に重要なことでありますので、本
委員会は、今後においてさらにこれを糺明いたす
考えでありますが、西尾末廣君が支出した五十万円の明細は、同君の証言に從えば、次の
通りであります。すなわち、当時
社会党政務
調査会長
森戸辰男氏に十万円を渡し、残余の四十万円は河合義一、佐成篤三郎、山本幸一、近藤壽、大川修三、松澤隼人、水野貿郎、水野實郎、山本富嘉、佐伯健、光吉悦心、本藤恒吾、米田富の十二君に各五千円、徳永正報、熊本虎藏、原虎一、赤松常子、三木治朗、佐竹晴記、永江一夫、細野三千男、正木清、米山久子、松本淳造、加藤鐐造、松永義堆、井堀繁雄、門司亮、土井直作、和田操、井家上專、山名義鶴、叶凸、大矢省三の二十一君に各一万円藤田覗、渡邊年之助、松谷天光光の三君に各二万円を、いずれもいわゆる陣中見舞として贈與しておるのであります。残余七万円の使途明細は、西尾末廣君の選挙費用として一、二万円を支出したほかは、同君の記憶に判然としない由であります。
森戸辰男君が西尾君より受領した十万円の支出を、森戸君の証言に基いて申し上げますと、政治、経済、
社会情勢に関する情報資料の提供者たる清水愼三、廣瀬健一の両君に各八千円、丸岡治君に五千円、計二万一千円を贈與し、取調員の野田福雄、西本喬、森本憲夫、柴貢の四君その他の者の移轉、疾病、結婚、生活援助並びに慰労会費等に二万七千円、出版関係費用二万円、計六万八千円で、残金三万二千円は、政務
調査会長鈴木茂三郎氏の言に
從つて、政調会の西村榮一氏に手渡したと証言しております。
前述の
ように、西尾末廣君が飯田清太君より受領した金五十万円は、西尾君がみずからの主観に基き、党書記長としての西尾個人として受領し、その趣旨においてこれを支出したと証書しておりますが、しかし献金者側の竹中藤右衛門、同錬一、清水康雄、飯田清太の
諸君の証言に徴すれば、
社会党に献金する趣旨を明確にしておるのでありまして、この点、献金者側と、これを受取つた西尾君との証言は、一致いたしておりません。
昨年の総選挙に際して、日本における有力なる土建業者よりの献金は、右のごとく合計三百五十万円でありますが、巷間、さらに多額の献金がなされたといううわさがあり、多少の疑惑がないことはないのでありますが、本
委員会のなした
調査の現段階におきましては、これを確認すべき資料がないのであります。
そこで、
政党または政治家が、選挙に際し、土建業者から数百万円に上る献金を受けたことの可否であります。人あいるは、この場合における献金はいわゆる浄財であ
つて、辻氏事件または亀井氏事件における献金のごとく、犯罪によ
つて得た金ではないから、それが公然と行われる限り、何ら差支えないというかもしれません。しかしながら、本件に現れる土建業者のごときは、いずれも日本における屈指の業者であ
つて、終戰以來、その業務の内容は、
國家または公共
團体よりの工事請負がはなはだしく多いのであります。か
ように
國家または公共
團体と密接な利害関係をもつ業者から、現に政権を担当しており、または近く政権を担当すべき立場にある
政党または政治家が、かくも多額の献金を受けるがごときは、かりに、それがまつたくの浄財であり、その当時何ら具体的な請託がなかつたといたしましても、必ずや、いつかは政治腐敗の原因となるおそれが多いのでありますから、決してそれを好ましい現象と言うことはできないのであります。先般本院を通過しました政治
資金規正法が、特に明文を設けて、かかる献金を禁止しているのは、まことに当然のことと言わなければなりません。
旧自由党に対する、金百五十万円は、これを受領した当時の同党幹事長大野伴睦氏を通じて党に入金し政令第三百二十八号に基く届出がなされてはおりますが、届出の表面に現われた寄附者名は單に飯田清太とな
つており、この点、必ずしもこの
委員会において
調査の結果明らかと
なつた土建業者よりの共同献金の意味を正確に現わしているということはできません。
民主党に対する献金百五十万円については、内金百万円だけが、これを受領した当時の同党幹事長地崎宇三郎氏を通じて党に入金し、かつ同氏よりの寄附金として届出られておるのでありますが、金額も寄附者も事実と合致いたしておりません。
社会党になされた献金五十万円に至
つては、まつたく党に入金せられず、また届出もなされておらないのであります。
右三大
政党に対する献金の使途でありますが、旧自由党においては、全額党に入金しておりますので、一應ここでは問題にしないことにいたします。
民主党においては、党に入金せられない金五十万円について、地崎氏は、自己の持金と、当時一、二の某友人より借受けたものとを合わせて計金二百五十万円を、進歩党解散及び
民主党結成に関する機密費として約七十万円、総選挙に関する機密費として約百八十万円と、それぞれ支出し、これらはいずれも正式に党の帳簿に計上し得ない性質のものにつき、こまかいことは一切忘れたと言
つております。
社会党においては、前述のごとく、西尾氏が党と関係なく、その一部をみずから使用し、他の大部分を、もつぱら自己の
意思に基いて数十人の政治家に贈與しておるのであります。
およそ
民主主義政治は、いわゆるガラス張の中の政治であり、黒幕政治またはボス政治と称せられる政治方式は、断固これを排斥しなければなりません。本
委員会が、先に辻嘉六氏及び亀井貫一郎氏をめぐる政治
資金を糺明いたしましたのも、
目的はまさにここにあ
つたのであります。本件土建業者よりの政治献金についても、われわれは、なかんずく
民主党地崎氏の場合及び
社会党西尾氏の場合において、同樣の悪臭を感ずるのであります。すなわち、地崎氏または西尾氏の主観のいかんにかかわらず、土建業者から受け取つた金は、正式なる届出なくして、選挙に際しこれを政界の一部に散布した事実は、政界を腐敗せしめる因をなすということを本
委員会は認めざるを得ないのであります。(
拍手)本
委員会は、衆議院が政治腐敗防止のために、さらに適当な立法を速やかに講ぜられんことを勧告してやまない次第であります。(
拍手)
次にこの際、兵器処理関係の
調査について一應御
報告申し上げます。兵器処理に関する件につきましては、かねて兵器処理小
委員会において鋭意
調査を続行中でありましたが一関係資料の檢討とともに、さきに明禮、野本、山中の各委員及び数名の
事務局調査員を現地に派遣して、その実情
調査をいたしたのであります。現在までにおける
調査の結果を総合いたしますと、第一に、連合軍より内務省へ返還を受けた数量と、兵器処理
委員会が内務省より受領した数量との食い違いがあります。終
戰後極合軍より、日本の経済
復興と
國民生活の安定に活用させるために、内務省に返還されました兵器等の数量は、およそ千五百万トンと称せられていたのでありますが、兵器処理
委員会が回收した実際の数量わずかに百二十八万トンに過ぎず、この差が非常に大きいので、この間隠退蔽または横流し等の不正行爲が潜在するのではないかと思われます。この
眞相糾明の
目的で、さきに建設院から取寄せました都道府縣別の兵器引渡リ
スト及び兵器処理
委員会の拂下数量を
調査いたしました。しかるに、各資料間に計算の單位、品目を異にするだけではなく、所在箇所も異動錯綜しておりまして、これらを比較檢討して結果を得ることは早急には困難であり、未だ
眞相を把握し得ない実情にあるのであります。なお、右兵器に関する連合軍より返還せられました正確なリ
ストを目下追求中であります。
第二に、兵器処理
委員会が拂下げ処理する手続に関しましては、各品種ごとに、処理要綱により拂下値格、数量及び拂下先等に
一定の基準が定められ、これに基いて適正なる取扱いをしなければならないにもかかわらず、
調査によりますと、拂下價格が基準價格に比較して著しく低廉であつたり、あるいは拂下数量の点より、当然兵器処理
委員会または商工省鉱山局長の承認を受けて拂下ぐべきものを、ことさらに数量を分割して、地方商工局長
会議の承認手続によ
つて拂下げたり、あるいは思惑需要防止の趣旨から、実際需要者であることを確認した上で拂下ぐべきものであるにもかかわらず、いわゆるブローカー的業者に拂下げたり、あるいはまた、もと兵器処理部関係者によ
つて設立せられました第二会社に不当に拂下をして、これら関係者が私利をはかつた疑いのおる事例が少くありません。本
委員会は、檢察
当局とも緊密な連絡をと
つて、目下鋭意
調査中であります。
第三に、経理上の不正についてでありますが、兵器の解体、撤去へ運搬等の作業関係について、兵器処理部職員と請負人等が結託し、作業費支出において不正と認められるものがあり、また交際費、
会議費、旅費、雑費等の支出が過大に失し、檢察
当局において
調査の結果起訴せられ、すでに公判に付せられた者または起訴準備中の者も少くないのであります。本
委員会におきましても、不正支出に関しては鋭意
調査を進めておる次第でありまして、現在まで起訴処分を受けた者及び捜査中の者は、日鉄四十三名、日本鋼管三十四名、古河電気八名、扶桑金属四名、神戸製鋼四名、計九十三名の多きに上るのであります。
以上が、兵器処理に関し今までの
調査によ
つて判明した概略でありますが、兵器処理
委員会が去る二月末日をも
つて解散せられ、その処理残存物件は、鉄鋼類約五十万トン、非鉄金属約一万四千トン、電気轉活用品約三万五千トン、以上合計約五十五万トンで、これらはすべて産業
復興公團に引継がれ、今後は公團の手によ
つて処理せられることになるのであります。しかしながら、これら残存物件の処理のためには、なお一両年を要し、拂下処理に要する諸
経費一箇月約八千七百余万円を差引きますれば、わずかに三千七百余万円の剩余を生ずるに過ぎないとの公團の見解から判断いたしまして、今後かかる処理
方法によるならば、か
つて兵器処理
委員会が多額の費用を擁して、しかも結果を得ざる轍を再び繰返すおそれが十分にあるのであります。
從つて、この際適当な処理をなせば数億の收入を得ることは明瞭でありますので、これにつき
政府及びこれが関係者の善処を切望してやまない次第であります。
なお兵器処理問題に関し、本
委員会の
活動に刺激せられて、檢察廳においても全國的に檢察捜査を進め、関係者の召喚及び書類の押收等をなし、目下東京地方檢察廳ほか二十四地方檢察廳において取調べ中であります。
以上、兵器処理事件に関する小
委員会の
経過を御
説明申し上げましたが、本
委員会は、右
調査を基礎としてさらに
昭和二十年十月当時兵器処理
委員会を構成せしめた日本
政府当局者及び右兵器処理
委員会の設立者、兵器拂下契約当事者、携下げに関與をした関係官廳並びに代行五社の
責任者につき、その
責任の所在を明らかにするつもりであります。
なお、この際特に申し上げたいことは、わが不当財産取引
調査特別
委員会において取上げた事件につきましては、警察及び檢察廳がすでに捜査に着手し、おるものにつきましては、にわかに
活動を活溌化し、未だ着手していなかつたものにつきましては、急ぎ捜査に着手する等、檢察陣の健在を証明しつつあるということであります。たとえば兵器処理事件しかり、
昭和電工事件しかり、群馬コーヒー事件しかり、西村埼玉縣知事に関する事件しかり。本
委員会は、右のごとき檢察陣のこの種事件に対する断固たる決意と勇敢なる
行動とに対し讃辞を惜しまないものでありますが、同時に、これを本
委員会の
功績の一つに数えて御
報告申し上げたいと存ずる次第でございます。(
拍手)
最後に私は、本
委員会において
調査の結果出されました結論は、衆議院において十分にこれが尊重せられんことを希望するものであります。すなわち、申すまでもなく本
委員会の委員は、衆議院の重大なる信託にこたえるために、その
調査に当りましては、一切党派にかかわらず、良心に
從つて行動し、あらゆる
努力を傾けて愼重なる結論を出すのであります。この結論こそは、実に経済の
復興と政、官、財界浄化の原動力であり、新しき道義確立の指標といわなければなりません。この結論が衆議院において遲滯なく取上げられ、実行に移されるところに始めて本
委員会設置の歴史的意義があり、民主政治への大道が開けるのであります。(
拍手)この意味におきまして私は、衆議院が常に本
委員会に対して激励と忠告とを惜しまないと同時に、本
委員会の結論は十分にこれを尊重せられんことを切望してやまない次第でございます。(
拍手)