○山崎岩男君 ただいま議題となりました民主
委員法案、
厚生年金保險法等の一部を改正する
法律案及び
藥事法案につきまして、厚生
委員会における審議の経過並びに結果について御
報告申し上げます。
まず
民生委員法案について申し上げます。民生
委員は、生活保護法におきましては市町村長の
補助機関となり、また兒童福祉法におきまして、当然兒童
委員に充てられることにな
つているのでありまして、それぞれ生活保護並びに兒童福祉の第一線機関として活動することにな
つているのでありまするが、このほか、民生
委員は一般に共同社会の世話役として、その職務は現下の社会情勢上ますます重要性を増し、國民生活と密接不可分なる
関係を有するに至りましたので、民生
委員制度を
國会の
議決を経た
法律に基く制度といたそうとするのが、
政府の本
法律案提案理由であります。
次に、本
法律案の内容のおもなるものを申し上げます。
第一に、民生
委員の選出
方法の民主化をはか
つておるのでありまして、民生
委員の推薦母体たる民生
委員推薦会の構成及び選出
方法を民主化し、併せて民生
委員審査会の構成をも極力民主化いたしております。
第二に、推薦せられた者が不適当であると認められる場合には、都道府
縣知事は民生
委員推薦会に対して再推薦を命じ得ることといたしておるのであります。
第三に、民生
委員たるの資格要件、及び民生
委員がその職務を執行するについての心構えを法に明示いたしておるのであります。
第四に、特別理由がある場合には、民生
委員は任期中でもこれを解嘱できることといたしておるのであります。
第五に、民生
委員の任期を三年と改めておるのであります。
第六に、都道府
縣知事は民生
委員の指導訓練に從事する專門の吏員を置かなければならないことといたしておるのであります。
第七に、民生
委員協議会、民生
委員協議会の常務
委員及び民生
委員事務所に関する
規定を設けておるのであります。
本
法律案は、六月九
日本委員会に付託されたのでありますが、その内容の重要性に鑑み、
政府との間にきわめて熱心なる
質疑應答が交されたのであります。次に、その主なるものについて簡單に御紹介申し上げます。
まず第一は、民生
委員と議員との兼職禁止に関する
質疑でありまして、新憲法実施以來、各種議員の職務は複雜多忙をきわめる状態であるが、一方民生
委員の職務も相当の劇務であるから、両者の兼職を認めることは不適当である、また
地方議会における事例にも見らるるごとく、民生
委員の選任が政爭の具に供せられ、社会事業の分野に政治上の弊害が導入せられるおそれがあるというのが、そのおもな理由であります。これに対して、元來民生
委員制度は篤志家の奉仕に
まつものであるから、他に兼職を有することは何等差支えない、議員と民生
委員との兼職を一般的に禁止するときは、かえ
つて民生
委員に適当なる人物が得がたくさんなるおそれがある、事実双方の職務が行えぬほど繁忙の人とか、政党的に職務を左右するおそれがある人は、具体的の場合において回避すれば十分であるから、一般的に
法律をも
つて両者の兼職を禁止するの必要は認めがたいとの
答弁がありました。
第二に、官公吏との兼職禁止についても同様に、双方の職務遂行に支障はないかとの
質疑に対しては、事実上民生
委員の職務を行い得ぬ場合は不適当であるが、官公吏の地位職務によ
つては、むしろ兼職を適当または便宜と認めるものがあるとの
答弁がありりました。
第三に、民生
委員の名誉職制度について、最近における民生
委員の職務の重要性並びに複雜性に徴するときは、熱心なる民生
委員としてとうてい自己の生業を営む時間を得がたいものと認めるから、これを專務職とし、有給制とするのが適当ではないかとの
質疑に対しては、篤志家の社会奉仕に
まつを本旨とする本制度においては、名誉職が適当であり、また財政上よりも、現在の民生
委員をことごとく有給職とすることは不可能である、ただ專務者がある程度民生
委員を
補助することは必要であるから、大都市
方面においては民生
委員事務所を設け、有給の社会指導職員を置く方針であるとの
答弁でありました。
第四に、民生
委員がその職務を執行するにあた
つて知得した地人の身上に関する秘密を故なく漏洩した場合、これに対する処罰はどうするかどの
質疑に対しては、民生
委員の本質よりして、かかる場合には解嘱のごとき社会制裁をも
つて十分であるとの
答弁でありました。
かくて審議を終りましたので、二十二日討論に入り、まず民主自由党を代表して有田
委員より、新憲法下、議会の議員の職責は重大となり、かつその職務も繁忙をきわめ、一方において民生
委員の職務もいよいよ重大かつ繁忙を予想せられるので、議会の議員が民生
委員の職を兼ねることについて今後十分考慮せられたい、なお現在議会の議員にして民生
委員の職にある者については、兼職はつとめてこれを遠慮してもろうようにすること、また官公吏の民生
委員との兼職についても右と同様なることとの熱心なる希望意見の開陳がありました。続いて、社会党を代表して山崎
委員よりは、生活保護、兒童福祉等の重責に寝食忘れつつある民生
委員に深甚なる感謝の辞を述べた後、その職務担当について希望意見開陳が行われ、國民協同党を代表して野本
委員よりは、民生
委員の推薦、職務執行の公正の確保について希望意見の開陳があり、さらに民主党を代表して武田
委員、
日本自由党を代表して榊原
委員より、それぞれ原案
通り賛成の意見が述べられたのであります。次いで採決にはいりましたところ、全員一致をも
つて原案
通り可決すべきものと決した次第でございます。
次に、
厚生年金保險法等の一部を改正する
法律案について申し上げます。厚生年金保險では、標準報酬を基準として保險料を徴收し、保險金を決定しておるのでありますが、この標準報酬月額の最高限は六百円にな
つておりまする結果として、木制度全体が、いわば冬眠状態にあるのであります。よ
つて、現下の経済情勢に即應する
ため所要の改正を加えるとともに、最近立法の趨勢に鑑み、
命令のうち重要なる事項はすべてこれを
法律に引上げ、それに伴う
命令の改廃をも併せ行うのが、
政府の本
法律案提案の理由であります。
次に、本改正案の内容の主なる点を申し上げますれば、第一に、標準報酬を現行の六百円より一躍改正健康保險法案と同額の八千百円に引き上げて、これにより保險給付も現下の実生活に適するものに改めんとするものであります。
第二に、これに伴
つて増加する保險料につきましては、給付が十数年の將來に約束されておる養老給付の面で調節することとして、保險を約三分の一に引き下げることにより、実負担額を二倍弱の増徴に止めも
つて被保險者と事業主の負担に應じ得るように考慮を拂
つておるのであります。
第三に、保險給付に関する改正の主なる事項としましては、まず寡婦年金及び遺兒年金の創設をしたことでありますが、六月以上二十年未滿被保險者であつた者が在職中死亡したとき、在職中に発した疫病、負傷により死亡したとき、または障害年金の一級の受給者が死亡したときには、
規定に從いまして寡婦年金とか遺兒年金を支給することといたしたのであります。次に、年金受給者が配偶者及び子を扶養する場合には、加給金として配偶者及び子一人につき月二百円を加給することとし、更に本改正案施行の日前の業務上の障害年金及び遺族年金の受給者に対する年
金額は、これを五倍に引き上げたのであります。
第四に、本保險制度の本旨が養老年金たる点に鑑み、脱退手当金の支給につきましてぱ相当制限を加えることとしておるのであります。
本
法律案は、六月十一
日本委員会に付託せられたのでありますが、國、公共團体等に使用せらるる者及び生命保險会社の勧誘員に対する適用除外、その他二、三の点につき
政府との間に
質疑應答が行われた後、二十二日、討論を省略して採決に入り、全員一致をも
つて可決すべきものと決した次第であります。
次に、
藥事法案について申し上げます。現行藥事法は戰時中に立法せられました
関係上、その
規定の中には今日において不適当または不要と思われるものも多々あるばかりでなく、終戰後の新情勢に鑑みて、新たに
規定を設けねばならぬ点もありますので、ここに藥事制度の民主的運営、委任立法的
規定の縮減及び公衆保健保護の見地からする取締
規定の整備等に主眼をおいて、本改正案が
提出せられた次第であります。
この法案の骨子を申し上げますれば、第一に、藥剤師の身分に関するものとして、藥剤師免許証の更新に関する
規定ほか、藥剤師の國家試驗制度に関する
規定を新たに設けております。第二に、新たに藥事
委員会を設け、これに実質的に重要な権能を與え、藥事行政運営の民主化をはからんとしているのであります。第三に、藥局開設の
許可制度を発して登録制度に改め、この登録を毎年更新することにより業務実態把握をはかることとしておるのであります。第四に、藥剤師の調剤権を
規定した条文の但書として、現行法においては附則に
規定する。医師、歯科医師または獣医師の調剤権に関する
規定を加え、これらの者が自己の処方箋によりみずから調剤するか、または藥剤師に調剤させる場合には調剤できることにいたしておるのであります。第五に、医藥品のみならず用具及び化粧品に対しても、その國民保健に対する重要牲に鑑み、医藥品に準ずる取締を加えることしたのであります。第六に、医藥品の製造業、輸入販売業並びに販売業の
許可制を廃して、藥局と同様に登録制を採用し、一定の基準に達すれば自由に登録せしめ、また用具並びに化粧品の製造業についても同様の制度を取入れておるのであります。第七に、医藥品、用具及び化粧品について、不良粗悪品及びび不正表示品の取締りに遺憾のないようにしております。第八に、新たに藥事監視員の
規定、公聽会に関する
規定等を設け、本
法律案運用の万全を期しているのであります。
本法案は、去る四月本
委員会に付託せられたのでありますが、本法案の重要性に鑑み、数次にわたり会議を開いて愼重審議を遂げ、
政府との間に幾多熱心なる
質疑應答を重ねたのであります。そのうち最も論議の中心と
なつた問題について御紹介申し上げたいと存じます。
まず第一は、
政府は完全なる医藥分業をただちに実施する意思があるかどうかとの
質問対しては、医藥分業の原則で進むことが恒久法策としては理想としておるが、現在における藥局の普及状態及び医師が必要とする重要医藥品の生産額の不十分なる点並びに一般國民の間において医師から藥剤を受げることを便宜とする長年の慣行と、それから來る心理的原因等の存する事実に徴するときは、今ただちに完全なる医藥分業を励行することは困難であるが、將來においては完全分業の方向に努力するとの
答弁があ
つたのであります。
第二に、本
法律案中には藥事諸般に関する事項とともに藥剤師の身分に関する
規定が包括せられており、医師、歯科医師等のごとく身分に関する單独法がないのはいかなる理由によるかとの
質問に対しては、これは單なる便宜ないし形式の問題にすぎず、藥剤師の資質向上をはかる上において特に支障を來すがごときおそれはないつもりであるとの
答弁がありました。
第三は、新設の藥事
委員会の
委員に消費者ないし藥業労働者代表を入れる意思はないか、また
委員の選任については選挙制を採用する意思はないかとの
質問に対しては、
委員の選任
方法は厚生
大臣の任命の形をとることにな
つてはいるが、実際上は当然各
関係團体からの推薦に基いて任命するものであり、後者については、本
委員会の職務内容は專門技術的のものであるから、純然たる第三者を加えることは困難と思われるが、藥業労働者代表は考慮するとの
答弁がありました。
第四に、藥剤師國家試驗の科目を
法律に明記しておることはいろいろの弊害もあるから、むしろ医師法案等におけるごとく学科目の限定を避けて、藥剤師として必要なる知識技能につき試驗を行うものとする方が適当ではないかとの
質問に対しては、國家試驗の科目については抽象的表現をとるのも一つのいき方と思うとの
答弁がありました。
第五に、第六條で藥剤師の免許証を毎年更新することとしておるのは、藥剤師に過重の負担を課することとなるのみならず、他面においては、いたずらに繁雜なる行政手続を増加することとなるのではないかとの
質問に対しては、これによ
つて藥剤師の現状を的確に把握するのほか、この機会において藥剤師たるの自覚を新たにし、その資質の向上を期せんとするものであるとの
答弁がありました。
第六に、第四十四條においては、厚生
大臣の指定するぺニシリン、スルフアミン剤等の特殊医藥品の販賣または授與を制限しておるが、これはわが國現下の性病の蔓延
状況に照して、むしろ大衆より軽費と治療の便宜を奪う結果となるおそれはないかとの
質問に対しては、これらの医藥品が素人により非科学的に使用せられる場合は、あるいは治療の時機を失し、あるいは病原菌にこれら医藥品に対する抵抗力を生ぜしめて、治療上または予防上恐るべき結果をもたらすおそれがあるから、その販賣または授與について特に愼重なる手続をとらんとするものである、なおこれが指定については、藥事
委員会において具体的に十分審議を重ねた結果の建議に
まつべきものであるとの
答弁でありました。
以上のごとく、本
委員会における審議の進行に伴いまして、
委員の間に本
法律案に対する修正の意見が出てまい
つたのでありますが、数回にわたり協議会を開きましたる結果、これを三つの点にとりまとめ、各派共同提案の形で修正案が提案されたのであります。
その第一は、第六條第二項の藥剤師免許証を毎年更新することに手数料を徴することとな
つてお
つたのを削除いたしたのであります。
第二は、第十三條において藥剤師國家試驗の科目を
法律に明記してあ
つたのを、抽象的に、「藥剤師として具有すべき知識及び技能について、これを行う。」と改めたのであります。
第三は、新たに第七十六條を追加して、旧法の
規定により藥剤師免許を受けることのできた者が、單に未成年であるのゆえをもつで藥剤師免許を受けることのできなかつた場合とか、應召その他やむを得ない理由によ
つて、本法施行の日までに藥剤師免許を受けることができなかつた者に対しては、当分の間、國家試驗なくして藥剤師免許を與えることができることといたしたのであります。
かくて審査を終りましたので、二十二日の
委員会において討論に入り、各党代表
委員はいずれもこの修正可決に賛成いたしたのであります。次いで採決に入り、まず各派共同提案の修正案について採決いたしましたところ、全員一致これに賛成いたしました。次いで、修正部分を除いた原案の他の部分について採決いたしましたところ、これまた全員一致これに賛成いたしました。すなわち
藥事法案は、全員一致をも
つて修正可決すべきものと決した次第でございます。
以上、御
報告申し上げます。