○
神田博君 第一
國会において、
片山内閣が命がけで通過せしめたところの、いわゆる
石炭國管法施行後の
状況並びに今後の
政府の
出炭対策についてお伺いいたしたいのでありますが、その前に、去る十八日の
福岡縣下勝田炭鉱の
爆発事件についてお伺いいたしたいと存じます。
都下大小新聞紙上に掲載せられました
記事の
一つを参考にいたしたいと思います。「
死者五十六名
勝田炭鉱爆発〔
福岡発〕十八日午前四時ごろ、
福岡縣糟屋郡宇美町
三菱勝田炭鉱縦坑で作業中、
坑内ガスの
爆発を起した、
爆発当時
入坑者は六十九名で、午後七時現在
死者五十六名、
重傷者三名、
軽傷者七名、計六十六名を搬出した、なお一名は無事で、
坑内に
残つた二名は生死不明、すでに死亡は確実と見られている、
原因は
自然爆発と見られている」、かような、わずかに百五十字内外の
記事でありますので、その
原因並びに被害の詳細な
事情はわからないのであります。本年度三千六百万トン出炭の貴い犠牲となられました
諸君に対しまして、はるかに弔慰とお見舞を申し上げたいのであります。殊に遺族の方々、関係者の方々には、深甚なるおくやみ並びに御同情を申し上げる次第でございます。今回の
勝田炭鉱爆発のごときは、稀有の大災害と申さなければならないと存じます。遠方のゆえもありましようが、ただいま読み上げました十九日の新聞紙上に、わずか百五十字内外の
記事で報道されておるのでありまして、その詳細を知ることのできないのは遺憾でありまするが、二十三日に至りまして、ようやくその
原因の
一つが発表されております。「房風機停止で大事に
勝田炭鉱爆発原因〔
福岡発〕
勝田炭鉱爆発事件の
原因については、二十二日会社側、労組、職組の代表者で調査会を開き協議の結果、意見一致し、三者の名で次の
通り原因推定を発表した」、推定であります。「深部二号ダンダラ拂い座昇延詰附近のハツパ母線に火源を発し、局部扇風機の停止により滯留せるガスに延燒、引続き昇
中央附近において
爆発に轉ぜるものと推定される、なお細部調査中である」という
記事であります。ごく
簡單な
記事であります。しかるに、文士太宰君のあの情死につきましては、連日数千字を割愛されておるようであります。
わが國経済の再建は石炭の増産より始まると言
つても過言ではないと存じます。
かくのごとき重大なる事件につきまして、関係官廳は十分情報を集め、逐次発表せられましたならば、一般
國民の深き理解と同情を得まして、これら貴い犠牲者の霊も慰められ、かつ関係者も激励を受けるのでありまして、
石炭増産上相当の効果をあげると考えられるのであります。さように考えますると、今回の事件にあたりまして、
政府と報道
機関との連絡がきわめて不十分であつたと言わなければなりませんので、この点はなはだ遺憾に存ずるのでございます。
政府におかれましては、これらの
原因を十分調査せられるとともに、再びかかる災害の起らざるよう最善の
措置を講ぜられるとともに、
政府の責任において、炭鉱
関係方面はもちろん、一般
國民に対しましても十分納得のいくような、解決の方途をとられ、出炭
計画完遂に支障なからしめるよう
措置されたいと念願するのであります。
この
機会に、炭砿保安衞生の問題でありまするが、炭鉱保安の主管問題が論議されておりまして、殊に昨年から懸案にな
つておるようでありまするが、未だこの主管問題が未解決のままに推移されておるということは、きわめて遺憾のことと考えるのであります。これにつきまして、商工省で
所管当れるのか、労働省で
所管されるのか、はつきりした
総理大臣の御
答弁を要求いたします。
そこで、本年度三千六百万トンの生産目標達成でありまするが、このことは、わが國経済再建のための至上命令たることは、あらためて説くまでもないのであります。しかるに、その
実績はいかがでありますか。四、五両月の
合計成績を見ますと、
計画量が五百七十二万四千トンに対しまして、
実績が五百二十万八千トン、
遂行率は九割九厘、生産不足量が五十一万六千トンという数字に相な
つております。北海のごときは、この
遂行率が七六%という、きわめて不
成績な現況であります。最重要基礎物資である
石炭増産のために、
政府は久しきにわたりまして、他産業や一般
國民の甚大なる犠牲において集中生産政策を強行しておつたのでありまするが、との不
成績に関しまして、いかに感じておられるかということであります。また、この不
成績はいかなる
原因によ
つておるのにあるか。しかして、これに対していかなる善後策を講ぜんとするものであるか。これらに関しまして、以下若干の
質問をいたしまして、
政府の所信を伺いたいのであります。第一は、三千六百万トン
計画の達成についてであります。ただい述べましたように、四、五両月は生産すこぶる不振であります。本年度全体といたしまして、三千六百万トンを必ず生産し得るや
否や。生産し得るとするならば、今後の生産
計画はどういうふうにな
つておるのか。すなわち四、五両月の不振によりまして、すでに崩壞せるところの当初の生産
計画を、地域的、また時期的に、いかにこれを修正するお考えであるか。
殊に輸送の問題でありまするが、当初三千六百万トン
計画の際においても相当の困難を予想せられておつたのであります。石炭一トンが工業方面に配炭されましたならば、約三トンの原料または製品となるということは、産業をする者の一般の常識であります。しからば、六百万トンは——昨年は三千万トンでありますから、三千六百万トンになりますれば六百万トンの増産でありまするがその四倍、二千四百万トンの生産増加と
なつで現われる。しかるに、鉄道の輸送力はどういうふうにな
つておるか。これを調べてみまするに、本年は一億三千万トンの輸送
計画であるようでありますが、これも月九百二、三十万トン、しかも二十二年度四。四半期と変らない現況であります。船舶輸送において大きな輸送を望めない現今におきまして、
かくのごとき
状況においては、出炭
計画が進むといたしましても、輸送難という問題を運輸
大臣はいかに消化していくというのであるか。私
ども、この点非常に憂慮にたえないのであります。
殊に、昨年
政府が発表いたしました経済白書におきましても、石炭三千万トン
計画は、輸送の面において重大なる支障を生ずる。すなわち、三千万トン鹸送後に來るところの関連産業の活動によりまして、その方面の物資輸送も支障を生ずるということを、昨年の経済白書に述べておられる。三千万トン生産が行われても、その石炭の輸送に伴
つて、関連産業の生産増加に伴うところの輸送をいかに消化するかということは、きわめて重大な問題であるということを、
政府みずから述べられて、これを認めておる。それを、本年度において六百万トンを増加しよう——増加いたしましたならば、ただいま述べましたような二千四百万トンのこの石炭の面からだけでも、輸送の増加というものが伴
つてまいるのでありまして、これらの点につきまして、私
どもは非常に憂慮にたえない。殊に冬期を控えまして、北海道、内地との輸送関係におきましては、特にその問題を大きく考えなければならないのではないかと考えるのでありまして、本
計画更正の結果、いわゆる時期的に、地域的にさらに加重されるということが問題にな
つてまい
つておるのでございまして、われわれ大きな不安をもつのであります。これらの点につきまして、いかなる方策をお立てになろうとしておるのであろうか、伺いたいのであります。
四、五両月の
計画遂行率を見まするに、九州地区のごときは約九八%の
成績でありまするが、北海道地区は七七%に達しない。昨二十二年度の総合
成績を見ますると、九州は約九九。九%で、ほとんど一〇〇%であります。山口地区が一〇二%、しかるに、北海道の二十二年年度総
合計は九二・六%にすぎない
状況であります。
かくのごときは、要するに北海道に対するところの
政府の認識不足に基く生産
計画それ自体に無理があつたのか。また聞くところによれば、北海道の労働対策が十分でないということを聞いておる。それがこの無理を生じておるのが、その辺のところを、はつきり商工
大臣から
答弁していただきたいのであります。
第二に伺いたいことは、國管法の実施についてであります。四、五両月の減産については幾多の理由があるだろうと思います。しかしながら
政府は、これらすべての場合を考慮して生産目標達成のため必要にして十分なる手段として國管法を実施されたのだろうと考えるのであります。昨年度においては、ほぼ生産
計画を完遂したにもかかわらず、國管法の実施期にはいりまして俄然生産が停滯してまいつた。四、五両月とも、昨年十二月以降本年度末、いわゆる十二月、一月、二月、三月、この四箇月のいずれの月に比べても、しかも大幅の生産減退に陷
つておる
実情であります。國管法施行後の
実情であります。事実を申しておるのであります。組閣に際し若干の政治空白を生じた、その他いろいろ
原因があるというでありましようが、私をして言わしむるならば、國管法の実施準備が遅れて、当然数箇月この実施を延期すべきはずであつた。しかるに、これを予定
通り強行された。渡す方では予定
通り切り離したけれ
ども、受入態勢が整
つていなかつた。そこで、この間空白を生じて減産にな
つておるということが
実情であると私は考えるのであります。
國管法の施行
状況でありまするが、これを調べてまいりますると、
中央機構につきましては、いわゆる
中央炭鉱管理委員会が、ようやく五月の十三日において第一回の会合を開いた。しかも、今日に至るもなお全委員の発令を見ておらぬということを聞いております。指定炭鉱の問題も最終決定を見ていない。
從つて、炭鉱管理者の選定も、生産協議会の発足も、他日を期しておるどいうことを聞いておるのであります。
地方機構を考えてみましても、石炭局の人事がいまだ全面的決定を見ていない。新廳舎はようやく今年度の本予算に計上されておるけれ
ども、これを実施されましても、局員の宿舎については、各局とも取得が容易ならぬ
実情とわれわれ伺
つております。
かくしては、局員が赴任いたしまして、後顧の憂えなく執務に邁進することができるかどうか。殊に
地方炭鉱管理委員会のごときは、未だ決定を見ていないということを聞いておるのであります。これら國管法の実施準備が整
つておらない。しかるに、これをあえて発足せしめたところの責任と善後
措置ということを、いかに商工
大臣はお考えにな
つておられるか、率直にお答え願いたいのであります。
なお、非指定炭鉱の出炭について伺いたいのでありまするが、國管法実施にあたりまして、いくつかの炭鉱が指定せられ、その出炭量は三千六百万トンの幾割に当
つて滴るのか。先般新聞紙上によりますると、指定炭鉱は総数四十二鉱、その
計画出炭量は全体の五四%に上るというふうに出ておるようであります。これら指定炭鉱以外のものに対しては、しからば資材・
資金等に関して、
政府はどういうふうに考えておられるのか。一應のめんどうを見るという建前かもしれませんが、指定炭鉱のように非指定炭鉱のめんどうを見られるかどうか。おそらく鑑定炭鉱に勢力を集中して、非指定炭鉱については、その全面的な支援ができないのではないかと思うのであります。そういうことになりますると、五四%の炭鉱については助力ができるのでありまするが、残りの四六%の出炭量をも
つておる鉱区につきましては、いわゆる指定炭鉱偏重の犠牲になるおそれはないか。現に、これは精神的にも関係者の増産意欲を阻害される結果になりまして、この方面からも三千六百万トン
計画の目標達成が崩壞するおそれはないかということであります。
第三にお伺いいたしたいのは、炭鉱
経営の
合理化の点であります。炭價と生産原價とが著しく均衡を失しているということは事実であります。炭鉱は増産をすればするだけ欠損が増加するという
実情でありまして、その赤字は、すでに二百億に達すると称されておるのであります。
從つて、主要機材の購入とか賃金の支拂いに事欠く事態があつた。殊に労務者に割当てられたところの
生活必需物資が、販賣店に到着しておりながら、
資金難のために受入れられないことが一再でなかつた、ということも聞くのであります。かようなことでは、いわゆる増産意欲の高揚などはとうてい期待すべくもないと思うのであります。
これが対策といたしまして、適正炭價の決定と、赤字補償の解決という、二つの問題があるわけであります。
政府は、先日新炭價を発表せられたようでありまするが、これもはたして妥当の價格であるかどうかについては疑わしい。殊に、過去の赤字については全然考慮されておらないということを
承知いたしておるのであります。炭價がすでに適正でない。しかも、二百億の赤字がそのままに放置されておるというようなことでは、容易ならぬ問題であると思うのであります。殊にまた労務者の退職金についても、十分炭價に計上しておらないどいうことを聞いておるのであります。かようなことでは、労資双方の増産意欲を高揚するには技術の改善、保安の確保、その他
経営全般の
合理化、健全化をはからねばならない昨今におきまして、この際
現状に即應したところの價格政策をもう一應再檢討する考えはないか、この点についてお伺いしたいのであります。さらに、新炭價決定の際にカロリー主義を採用することについて考慮されたかどうかという点であります。たとえば、四千カロリー以下の石炭についてはなお増炭を要求しておるかどうかということを、はつきり知りたいのであります。
第四は、石炭品位の向上と配炭の適正化の問題であります。炭鉱の
現状をも
つてしましては、本年度の三千六百万トンの目標達成は容易でないのであります。しかも、これを強行いたしまするならば、数量に追われて品質の低下を招くおそれ十分にあるのであります。
かくては、現在すでに需要者側におきまして深刻に叫ばれておるところのいわゆる品質低下の声をさらに深刻化するはもちろんでありますとともに、先ほど申し述べましたような貧弱な輸送力をして濫費する点も、またはなはだしいと言わなければならないのであります。すなわち、炭價の格差を明確にするとともに、選炭においても特別の奨励策を講ずべきであり、一方配炭の面におきましても、品位の向上に即應してその適正化をはかるため、いわゆる銘柄配炭を断行すべきものと思いますが、これに対する
政府の考えはいかがであるか、伺いたいのであります。
第五は、亜炭の問題であります。わが國の燃料情勢、特に薪炭
事情、電力、住宅及び風水害等の
事情を総合的に檢討いたしまして、その因果関係を探究いたしまするならば、燃料が化学工業原料の分野におきましてはもとよりでありますが、ひいては治水の面におきましてもいかに重大であるか、この際特に亜炭がいかに重要な役割をも
つておるかということがわかるのでありまして、亜炭産業の育成がいかに緊急を要するかという問題であります。しかるに
政府は、亜炭の賦存
状況、炭量の調査については、未だすこぶる遺憾の点が多いのであります。殊に停車場等におきまして、大量の亜炭が山積いたしまして、いたずらに風化されておるという
現状であります。
経営者が極度の
資金難にあえぎつつつある
現状において、亜炭に関する資源調査を促進いたしまして、優良亜炭の開発利用をはかるとともに、乾溜加工の指導奨励あるいは融資等を積極的に推進することにいたしまして、輸送力の負担軽減、熱効果の向上を期すべきものであると考えるのでありまするが、
政府はこれらに対していかなる考えをおもちにな
つておるか、十分お伺いいたしたいと思ひます。
第六は、鉱業用地、殊に炭鉱労務者の住宅用地の確保に関する問題であります。炭鉱労務者の住宅の建設は、昨年一月
以來政府の特別の
措置によりまして実施されているのでありますが、これに伴う用地については、すでに昨年度の
計画におきましても、まつたく行詰りの
状態にな
つているのでありまして、今後増産のために幾多の新炭鉱を開発しなければならない
実情にある際におきまして、鉱業用地の確保ということは、
石炭増産上重要な先決問題と言わなければならないと思うのであります。これらは、要するに
政府が農業生産と石炭生産とに関しまして総合的定見を欠いており、炭鉱用地設定に関する可否を、石炭の生産と関係のないところの農地委員会だけに裁決せしめているというのが今日の
実情であります。炭鉱住宅の建設が石炭の増産上最も重要な事項であり、そういうことでありますので、責任者の届出制をと
つておられまして、工事遅延の場合は罰則を適用するというような
規定をされておりながら、
実情は農地調整法に妨げられて、手の下しようもないということであります。たまたま農地調整法の除外を認められましても、離作料と申しますものを非常な高價に要求せられまして、結局賠償困難にな
つているという例もあるのであります。
かようなことを考えますと、この際農地関係の炭鉱敷地は、
昭和二十三年度分といたしましても二百五十六万坪に上
つているのであります。二十六年度までの四箇年
計画分として、千三百五十六万坪に上
つているのであります。二十三年度上半期分の敷地中にも、未決定のものが相当あるようであります。
政府において、これが應急対策といたしまして速やかに善処せらるるとともに、やむを得ない場合におきましては、農地調整法の一部を改正いたしまして、石炭鉱業関係官廳並びに関係團体代表者を含む鉱業用地收用審査委員会というような
制度を設けまして、農耕地の活用をはからなければならないと思うのでありますが、これらの点につきまして、商工
大臣並びに
農林大臣はいかなるお考えをも
つているかということを、率直にお答え願いたいのであります。
以上大要述べました
現状におきましては、臨時石炭鉱業管理法第一條に、「この法律は、産業の復興と経済の安定に至るまでの緊急
措置として、
政府において石炭鉱業を臨時に管理し、も
つて政府、
経営者及び從業者がその全力をあげて石炭の増産を達成することを目的とする。」とあつたのでありますが、これは第一
國会当時非常な多くの論議がありました
通り、この國管法を実施いたしましたならば必ず石炭は減産する、臨時石炭鉱業管理法は、増産法にあらずして石炭減産管理法であると言われた
通り、まことに私
どもは、当時の審議の
状況を顧みまして、うたた感慨無量の感があるのであります。(
拍手)
所管各
大臣のまじめな御
答弁を要求いたしますとともに、
答弁漏れ、あるいは納得のいかない点については、十分重ねて
質問いたしたいと存じております。
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕