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辻寛一君 私は、
民主自由党を代表いたしまして、ただいま上程されております
西尾國務大臣不信任に関する
決議案に全幅の賛意を表せんとするものであります。(
拍手)
およそ
公人たろ
政治家として最も心すべきは、絶えず
公私の別を明らかにすることでなければならぬ。(
拍手)その身は
芦田内閣の副
総理として、
内閣の大黒柱と
自他ともに許す慨ある
西尾國務大臣が、
公私を混淆して財布の締りがつかないとあ
つては、すでにして、
公人として、
政治家として、第一の
欠格條項を暴露せるもので、世論の
物議翕然としてこの一点に集中するは、けだし当然といわなければならぬ。
くどくは申しませんが、一体党にあらず、さりとて純然たる
個人でもない。
党書記長個人というがごときあいまい模糊なる、不可解きわまる第三
人格が、一体どこにありましようか。すなわち
党書記長なるものは、
社会党の党則を引合いに出すまでもなく、各党を代表する
中枢機関であることは自明の理である。
かくて、
党書記長は公である。
個人はもとより私である。公と私が抱き合
つてでき
上つた変態的人格の横行闊歩するところ、
政界を不明朗ならしめ、
政界を腐敗せしめる因をなすことは、およそ問わずして明らかであります。
そもそも、
政令第三百二十八号は何のために設けられたものであるか。当時
片山内閣の
官房長官として、その責に当
つた西尾君こそ、この
政令の
精神を最もよく理解せる第一人者でなければならぬはずである。(
拍手)
政党献金の公明なる
届出をななさしめ、と
かく金で暗い
うわさの出がちの
政界の
明朗化を期するにあること、あらためて言うまでもあるまい。しかも、
政党援助を発起したる
土建業者の
代表者たちもこれを実行した
代表者も、その証言は符節を合わすがごとく、
政党の健全なる発達のために
寄與せんとして三大
政党に寄附したるものであ
つて、
社会党に対しても、
党書記長たる
西尾氏に渡したものであることは、他の二大
政党の
幹事長に対すると同様であると述べておる。
論より証拠である。
検察当局におきましては、この間の事情明白となりまするや、いち早く
西尾君を
政令違反として
起訴することに一決した。ただ
國務大臣たるのゆえをも
つて、
手続上
鈴木法務総裁に
起訴の
稟請をいたしたのである。しかるに、何のゆえをも
つてか、再
調査の要ありとして、足踏みをせることすでに二週間に余る。しかし、もはや時の問題たることを
法務総裁みずから語らざるを得ぬ窮地に来ているのである。
一方、
不当財産取引調査特別委員会におきましても、去る二十二日、遂に断を下したのであります。すなわち
西尾君の主観がどうあろうとも、
土建業者から
受取つた金を正式に
届け出でないで、
政界の一部にばらまいたことは、
政界を腐敗せし
むる原因をなすものであると結論したことは、御
承知の
通りであります。(
拍手)しかも、
社会党の一部におきましては、この
西尾事件をきつかけとして生れた
粛党派なるものの
同志諸君によ
つて、辞任をしきりに勧告されつつあるのである。いわば身内から九寸五分を突きつけられたのである。
かくのごとく無残なる四面楚歌の声に囲まれながら、なおかつ傲然として、
責任をとる必要を認めない、たとい
起訴されても、あくまで辞める意思はないと言うておるそうであるが、その頑強無比なる
態度、とうてい人間業とは思われぬ。正気のさたとは受け取れないのであります。か
つて本土決戦を豪語したる軍部の
態度はこれであ
つた。さすがに昔と
つた杵柄である。ヒトラーのごとく、ムソリーニのごとく、しかしてスターリンのごとく断固邁進せよとかけ声をした、往年の
西尾ファッショの面魂を彷彿たらしめるものがある。百万人といえどもわれ行かんとの
気慨は、正しき信念によ
つて立つとき、われわれはこれを仰ぎ見るものであろが、頑迷なる執念にとらわれたる姿を見るときに、われらはこれを心から軽蔑する。
西尾君の場合は、まさにその後者に当るのである。
俎上の鯉は悪びれずと言う。じたばたするのは、ふなや
どじようのすることである。事ここに
至つては、
西尾君ほどの剛の者である、いさぎよく観念の眼を閉じ、従容としてみずから決するところあるべしと予期すること久しか
つたが、自決どころか、いよいよ出でて奇怪千万なる言動、
国会の権威を無視するに至りましては、寸刻の猶予なく、ここに
提出されましたる
不信任案に賛意を表するのやむなきに至
つたのであります。
国会の名誉を保持するの途これよりないことを知らねばならぬわれわれ
議員は、
私情を捨てて大義に則りこの
不信任案に決然挙
つて白票を投ぜられるであろうことを信じ、かつこれを期待して、私の賛成の演説といたす次第であります。(
拍手)