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1948-06-22 第2回国会 衆議院 本会議 第68号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十二日(火曜日)     午後三時十七分開議     ―――――――――――――  議事日程 第六十四号     午後一時開議  第一 製造たばこの定價の決定又は改定に関する法律案内閣提出)  第二 國家行政組織法案内閣提出)  第三 労働者災害補償保險法の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 職業安定法の一部を改正する法律案内閣提出)  第五 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  不当財産取引調査特別委員会性格に関する決議議長発議
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) お諮りいたします。不当財産取引調査特別委員会性格に関し、次の決議をいたしたいと思います。  一、不当財産取引調査特別委員会構成員はその特別の使命に鑑み不偏不党厳に良心に從つて委員会を超党派的に運営し愼重且つ敏速に調査を徹底し日本民主化政界官界財界等の浄化に資すべきである。  二、委員の更迭は衆議院規則に従い止むを得ない場合の外各派の都合によりみだりに交替させない。  三、本委員会國民の信頼に應え且つ委員会設置の本旨に則りその使命の達成を期すべきである。  本決議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。(拍手)      ――――◇―――――  学生生徒犯罪激増問題に関する緊急質問角田幸吉提出
  5. 山下榮二

    山下榮二君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわちこの際、角田幸吉提出学生生徒犯罪激増問題に関する緊急質問清澤俊英提出小千谷理研工場における人権じゆうりんに関する緊急質問を逐次許可されんことを望みます。
  6. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  学生生徒犯罪激増問題に関する緊急質問を許可いたします。角田幸吉君。     〔角田幸吉登壇
  8. 角田幸吉

    角田幸吉君 まず最初に、文部大臣森戸辰男君にお尋ね申し上げます。  あなたが片山内閣文部大臣に就任したとき、私はあなたに対して多大の期待をもつたのであります。それは、あなたが社会科学眞摯なる研究者として、ゆたかなる知識をもつておられるのであるから、社会改革に大なる経綸をもつておるだろうと想像したからであります。しかるに、片山内閣が退陣せられ、芦田内閣文部大臣留まつた今日、私のあなたに対する期待はまつたく裏切られてしまつたのであります。  あらためて申すまでもなく、今日までのわが國の教育界に強い勢力を張つてきたものは儒教主義倫理思想でありました。明治から大正となり、昭和となつても、この思想は改まらない。殊に初等中等教育においては、朱子学、陽明学のごときは、あたかも日本民族の固有の信念であるがごとく誤解せられ、絶対至上命令として、無批判的に教壇から宣布せられてまいつたのであります。申すまでもなく、儒教主義倫理思想中心をなすものは教学観念であります。教えに対する学び、そこには忠実完全なる模倣が要求され、これに反する者は師弟の道に反くものとして宣告されたのであります。模倣主義教育、そこには真理探究自由教育が否定され、師弟の道に忠実なる曲学阿世の徒が世を横行いたしまして、これがこの度の戦争へと追いこんだのではないかと考えられるのであります。教学観念に立脚した教育は、さらに立身出世主義教育となつてつた教師教壇から生徒に、郷里に錦を飾れと教えた。かくて学問は、立身出世手段考えられるに至つたのであります。この思想がわが國文化をして堕落に導いたのであるということは否定できないと思うのであります。ゆえに、かつて橋田文部大臣は、立身出世主義教育功利主義に根ざしているからいかぬと言つたことは、この意味において一面の真理を含んでおる言わなければなりません。  しからば、いかにすべきか。これを教えることがなかつた学生生徒は遂に戸惑いをしてしまつたのであります。今日もまさにそうであります。今日の学生生徒思想昏迷は、ここから起つておるのではあるまいか。わが道徳の大体である五常五倫の道ば、君臣、父子、夫婦、兄弟、朋友の道を教えておるが、そこには社会に対する道を教えていない。しかるに近代道徳は、むしろ社会中心としたものでなければならないと考えられる。ところが、儒教主義教育に育成されてきた教育家は、社会中心とする倫理道徳教育観念をみずから確立するところの能力をもつていない。殊に教育勅語一点ばり教育を永く奉じてきた初等中等学校教師は、今や何によつて教育すべきが、呆然自失しているのが現状であります。かく教育思想昏迷に陷り、わが教育はまさに崩壊の危機をはらんでおるのであります。あなたは文部大臣として、何よりもまずこの点に留意せられ、教育家の、また学生生徒の守るべき道徳大本教育大本を確立して、その進むべき大道を示すべきではないか。この際國会を通じて、この点を國民の前に示されたいのであります。  過般の新聞によりますと、東京大学の学生十七名が、恩賜財團同胞援護会阿佐ヶ谷会館暴力をもつて不法に占拠したということが報ぜられております。こればかりではありません。近ごろの大学生強盗事件殺人事件というものは珍しくない。また女学生の万引というものが非常に激増しております。これによつて破産をいたしました本屋がたくさんあるのでありまして、私はここに一々その実例や統計をあげなくとも、あなたはすでに御承知であろうと存じますから、略することにいたします。  こうした学生生徒犯罪激増は何によると考えておるか。敗戦後の経済的圧迫青少年犯罪を多くするということは各国の事例でありますが、それゆえに彼ら学生生徒犯罪激増したものと考えられるか、経済的困難は、今日の学生生徒にのみ特有なことではありません。われらの尊敬する明治の先輩は、多くは学生時代にはむしろ貧困であつた。しかるに彼らは、よく身を持して大成せられたのであります。私は、今日の学生堕落は、今日の教育界における倫理観念思想昏迷かくしておるのであると考えるが、文部大臣はこの点をどうお考えになつておるか。あなたは文部大臣に就任されてから、もう一年を過ぎております。しかるに、教育大本道徳大本を示すことなく、漫然その職にあることは、職務の怠慢であり、罪を天下に謝すべきではないかということを考えられるが、この点について御明答をいただきたい。  次に、芦田総理大臣にお尋ね申し上げます。今日の統制法には守りきれないものがあります。守れないものを強いる方が無理であります。そこから国民道徳の多大の変化というものが考えられ、法律に対する考え方が変つてまいります。野蛮民族は、窃盗ということは普通のことであります。彼らは盗むということを悪いと考えておらない。見つかつたとき初めて悪いと考えるのであります。ところが、今日の日本人のやみ買いは普通のことであつて一般には悪いと考えておらない。警察に見つかつて初めて悪いと思うのであります。だから見つからないようにするという態度が、いつの間にか一般道徳に食いこんでまいつたのであります。何事でもこつそりやつていく、見つからぬようにと考えていくことが、今日の法律に対する、道徳に対する國民態度であります。ところが、社会経済変化というものはきわめて早いものである。殊に最近のことを申し上げますと、二、三箇月間で昔の十年ほども変つてしまう。ところで、法律というものは固定性をもつておる。この点から、統制経済には法律上どんどん守ることのできないものができてまいります。  そこでお尋ね申し上げるのでありますが、あなたは、統制経済には法律的に見て宿命的な欠陷を包蔵しておると考えないかどうか。この点を承りたいのであります。また、今日国民が守り得ない統制法がたくさんある。それを速やかに政府は廃止をして、國民遵法精神を高揚すべきではないかと考えられるが、この点、総理大臣はどうお考えになつておるか。しかるに、政府はこれをやらない。この点がら遵法精神の低下となり、國民道徳が廃頽して、近ごろの学生生徒犯罪激増していくのだと考えるが、総理大臣はこの点をどう考えておるか。  もう一つ総理に承つておきたいことは、過般の予算委員会における、あなたの委員に対する答弁というものはまことに不親切極まるものであつた。しかもあなた自身は、口を開くと保守反動と誹謗することがたまたま多い。この日にもその言葉があつたので、私はあなたにお尋ねをしたのだ。私は、現内閣の方々の法律観念のうちには、きわめて保守反動の性分をもつておると考えておるが、あなたはどう考えておるかということを、あなたにお尋ねした。ところがあなたは、守ることのできない法律があれば、どんどん廃していく。だからその具体的な例を示せと、私に迫られた。そこで私は、その実例をあなたがよく御承知であろうと思つたので、そこでは申し上げなかつたのでありますが、今日私は、その実例を明らかにあなたの前にお示しする。それは、あなたの内閣の閣僚である農林大臣永江一夫君が、とても今日の配給では食つていけないので、やみ買いをしておるということを、ある座談会で述べられておる。これが明らかに守れない法律実例である。そこであなたは、この予算委員会における言明に従つて食糧管理法を廃止するお考えがあるかどうか承りたい。この問題は、近ごろの学生生徒犯罪激増の問題ときわめて重大な関係をもつておるので、特にこの際承る次第であります。     〔國務大臣森戸辰男登壇
  9. 森戸辰男

    國務大臣森戸辰男君) 角田君の御質問にお答えいたします。  最近学生犯罪が殖えたということは、新聞で私ども存じております。兇暴性のある集團的の犯罪が著しく目についたのでありますが、これは学生の多数ではございません。しかもこの傾向は、必ずしも殖えてはおらないのであります。大部分の学生は、今日非常な生活窮乏にもかかわらず、涙ぐましい姿で勉強をいたしておることを御承知願いたいと思います。(拍手)  この学生が、かような状態なつたということは、いろいろな原因もありまするけれども、むしろ学園外における日本社会状態に基因するところが多い。戦争とその結果が国民精神の荒廃に及ぼした影響、また精神的な革命期における影響、また社会生活窮乏ということが、社会一般犯罪とその兇暴性を生み、それが学園影響したというところにあると私は思う。であるから、根本の対策は、国家的な理想と國民道義を高め、他面においてほ生活窮乏を克服していくといううちにあるのであります。  國民道徳の点につきまして御質問がありましたが、新しい日本は、敗戦以来古い道徳を廃し――この間もここで御決議がありましたように、儒教的な色彩の多い教育勅語教育の指導的な精神とすることを廃しまして、平和的民主的な精神に基いて教育行つておるのであります。かような線におきまして、私ども新しい日本教育を行いまするとともに、他面におきましては日本経済窮乏を打開することに力を注ぎ、殊に学生生活につきましても、育英会あるいは生活援護の途を講じ、できるだけ安んじて勉強のできる方途を講じたいと存じておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣芦田均登壇
  10. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 角田君が御指摘になりましたごとく、終戦以来青少年犯罪が著しく目につくことは、まことに憂うべき現象であります。子供というものは、とかくおとなの影響を受けやすいものである。従つて犯罪の撲滅には、青年も少年も、ともに一つの道によつてこれを矯正する以外には方法はないと思います。さしあたりの問題としては教学の刷新である。かように考えておる次第であります。  なお最後に、食糧管理法を廃止する考えはないかという質問でありましたが、政府は廃止する考えはもつておりません。(拍手)     〔亀田幸吉登壇
  11. 角田幸吉

    角田幸吉君 私は、食糧管理法を廃止することができないということも、私自身廃してはならぬということも十分承知の上、総理大臣にお尋ねしたのであります。そのゆえんは、あなたが委員会においてきわめて不親切な答弁をされておる。しかも、口を開けば保守反動と他を誹謗するあなたが、現在におきまして守れない法律をどうしても強行するということが、これがすでに保守反動なのであります。ところで、それをもつて私は、総理言葉に対して、暴をもつて暴にこたえんとしたのでありません。あなたに私が申し上げたいのは、あなたが他を保守反動と誹謗する前に、あなた自身がきわめて親切に国務を処理していただきたいということを、あなたに希望したいがために、さようなことを申し上げた。みだりに他を誹謗する前に、あなたの國務に忠実であつてほしいことをお願いするのであります。私はこの際において、さような意味において総理にあの質問をしておいたのである、この際あなたに対する警告として申し上げたのであることを申し上げて、私の質問を打切る次第であります。     ―――――――――――――  小千谷理研工場における人権じゆうりんに関する緊急質問清澤俊英提出
  12. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 小千谷理研工場における人権じゆうりんに関する緊急質問を許可いたします。清澤俊英君。     〔清澤俊英登壇
  13. 清澤俊英

    清澤俊英君 私は、新潟縣北魚沼小千谷町にあります小千谷理研工場争議中に起きました人権蹂躙の問題、警察法上の問題、組合関係等につきまして、芦田総理大臣鈴木法務総裁加藤労働大臣にお伺いしたいと思います。  まず人権蹂躙の問題からお伺いいたしますが、その前にいささか争議の過程を申し上げておきたいと思うのであります。  小千谷理研争議は、本年の一月ごろから始まつて、今日まだ継続しておるのでありまするが、この争議中に、たまたま争議團側生産管理をやつておりました工場に対しまして、会社側が仮処分の申請をいたしましたところ、これが許可になつたのであります。争議團側は生管工場に立入りができなくなつたのでありまして、会社側工員争議團側との間に、いろいろな紛議が、これを中心にして醸されたのであります。  ところが、所管警察署であるところの小千谷自治警察では、四月十三日ごろから警官を派遣して、その紛議から間違いのないように警戒を始めたのであります。それが四月の十八日頃になりますると、争議團側各地組合から應援が集つてまいりましたので、小千谷自治警察では、各所の警察署から應援をもらつて、これが警戒に当つてきたのであります。二十二日まではそういう警戒をしておりましたが、何もなく過ぎたのであります。二十二日の午後三時ごろ、会社側工員がたまたま入場しようとしまするときに、争議團側人たちが、君たちが工場へはいるということは一つ争議裏切り行為ではないか、どうかはいらぬようにしてくれという交渉を始めましたところ、設楽という小千谷地方警察署長が、引連れてまいりましたところの数十名の警察官に対しまして、ピストル実弾をこめろ、捕縄を用意しろ、棍棒を用意しろという号令をかけて、そうして五、六名の会社側工員を擁護して入場をさしたのであります。そのあと様子を、小千谷設楽警察署長は私に話したのでありますが、争議團側は、その際にはまことに静粛に命令に服して入場せしめた、こう話しておるのであります。翌二十三日、暴力行為公務執行妨害業務妨害現行犯として檢挙が行われたのでありまするが、この檢挙こそは、言語同断人権蹂躙が行われたのであります。その状況を詳細に申し上げたいと思うのであります。  すなわち、この日小千谷自治警察では、かねて派遣しておきましたところの警官と密接な連絡をとつていたところ、八時半ごろに電話でもつて争議團側の十七、八名と、会社側工員の入場せんとする者との間に、二十二日のように交渉が始められたと報告が來たのであります。なお九時五分、九時二十分と、順々に小千谷警察の派遣しておりまするところの警察官隊との間に連絡がとられてきたのであります。九時三十分になりますと、やはり最後電話連絡がありまして、争議團側各地から應援集まつて、十七、八人から七、八十名になつて、盛んに歌を歌い始めておる、こういう電話があつたのであります。そこで小千谷警察署におきましては、各地から集まりましたところの應援團五十名ほどをトラックに乗せて工場に参りまして、全員を、さきに申し上げましたところの業務妨害公務執行妨害暴力行為現行犯として檢挙したのであると、高橋小千谷自治警察署長は私に話しておるのであります。  そこで問題になりまするのは、このときの檢挙の模様が、これを見ておりました一般の人や、七十六名の検挙せられましたる人たちから聴きますると、実に乱暴至極な検挙ぶりをやつておるのであります。すなわち、高橋署長の一隊が争議團側のおりまする工場に到着しますと、まず自動車から高橋署長が飛び降りて、全員がこれから降りますると、つかつかと高橋署長争議團側の前に参つたのであります。そこで、山崎と申します争議團長が、高橋署長に向つて何かしやべろうと一口話し出しますると、高橋署長は、工場の表門の内柱に背中をつけまして、さき設楽署長が申しました通り、ピストル実弾を用意しろ、捕縄を用意しろ、棍棒を用意して、腕のしびれるほどぶんなぐれ、全員検挙、と命令したのであります。この命令が下りますと、二、三人の警察官が飛び出してまいりまして、水口という工員腕ぐらをとつて二、三間ほかの方にひつぱり出して、これを二、三人分警官袋たたきにしたのであります。この様子を見ておりましたところの争議團側の中から、小坂という工員外一名が飛び出してまいりまして、同僚を救おうといたしますと、この二人もまた袋たたきにされたのであります。しかも、その上捕縄をかけられて、自動車に積みこまれたのであります。組合員が、こういう様子でありますから、スクラムを組んで檢束を逃れようとしておりますと、警察隊は二隊にわかれて、一隊は裏門から争議團側うしろにまわり、一隊は眞正面から根棒を高々と振り上げて、腕をひしひしなぐりつけて、片つ端から檢束を始めたのであります。中には、いつの間に持つてまいりましたのか、手錠さえ用意してまいりまして、その手錠をはめて、ひつぱつて檢束しました。あるいは、なわをかけて縛つてみたり、いろいろなことをして檢束したのであります。  そのために数十名の負傷者が現にあるのでありまして、現在でも長岡の拘置所におりますところの山崎太市という従業員は、目下拘置中でありますけれども、この者の右腕は、捻挫か骨折か存じません、その点まではわかりませんが、非常に痛みを感じておる。なを皮下出血をしておつて、その出血が化膿のおそれがあるというので、六月六日に弁護士が参りまして、ようやく交渉の結果、日本赤十字病院の副院長と小千谷組合病院長との立会いで診断が許されたに聞いておるのであります。  これよりもつとはなはだしいのは、正門わき守衛室前でこの騒ぎを見ておつた三、四人の女工がおるのであります。こういう非常な騒ぎが起きましたので、恐ろしくなつて逃げ出そうといたしますと、会社側工員でありますところの北村、古塩などという人たちが、この風間キヌという婦人を突き倒したのであります。これが起き上ろうとしますところを、警察官がそのうしろから行つて根棒がんと横なぐりにはたいたのであります。そうして、全治約十日にわたる治療を要することになつたのであります。その診断書はここにあります。病名は前額部挫傷、「頭書の疾患により向後五日間の安靜を要するものと認む」、これは二十七日から約十日間の安靜加療を要するという重傷を、婦人の生命である美面に與えたのであります。なおそればかりではなく、山本かねという婦人も、逃げるところをやはり会社側工員に止められて、そうやつておりますと、うしろから髪の毛をひつぱつて、やはり警察官がんとはたいて、同じ診断書のような重傷を與えておるのであります。なお小見田某という婦人も、手錠をはめられ、檢束せられ、廣川テイという婦人も、これはなわでぐるぐる巻にせられて、守衛室の中に投げこまれて、あと檢束せられるというような、極まりなき暴行が行われておるのであります。かようにして、約六十七名の人たち檢挙されたのであります。  この事件がありましたあとで、同僚でありますところの猪俣浩三君が、小千谷警察署長に向つて、何ら抵抗もしないところのこの工員、しかも空手である工員に向つて実弾用意はちとひどいではないか、こういう話をいたしましたところが、その答えがまことにふるつておるのであります。何分警察官に元気がないから、元氣を出すように、ピストル用意捕縄用意棍棒でぶんなぐれと言つた、こういうことを言つておるのであります。  私は、このことを考えてみますときに、争議團側負傷者が十数名も出るような大混乱を起しておるのでありますが、警察側には一人のけが人もないのであります。それだけではなく、帽子一つボタン一つ肩章一つ、どこにもいつておらぬのであります。しかも、六十七名の檢挙者と警察官を加えましたならば、少くとも百人のものが二台の自動車に乗らなければならないのであります。この二台の自動車に乗らなければならないのでありますが、二台の自動車に乗せ、もし労働者側で少しでも反抗の気勢がありましたならば、断じてこれは乗せ得ないところの実情であつた。これを考えてみましても、いかに争議團側が無抵抗であり、素直であつたかということが、はつきりわかると思うのであります。いかに警察官側が一方的に兇暴性を発揮したかということを、私どもは考えなければならぬと思うのであります。  第二には、一度も警察官と衝突もなく、警察官の制止にはいつもおとなしく服しているところの争議團員を、実弾をこめましたピストルで脅かし、あまつさえ打つ、なぐる、けるという検挙は、何のための檢挙か、私には合点がいかぬのであります。  第三は、前から十分用意してかかつて全員集まつたところで計画的に檢挙をしたのではなとかという疑いが十分あるのであります。すなわち、第一報の際檢挙の必要がありましたならば、それを検挙しておきましたならば十八人で済むのである。それが七十何名集まつたところで、この大がかりの檢挙を、しかも約一時間にわたる連絡の上で、計画的に自動車を用意し、各署からの應援を求めて檢挙するという裏には、私ははなはだ合点のまいらぬものがあると考えるのであります。なお後ほども申し上げますが、公安委員会などの運営を無視しましたことと連絡して考えてみますときに、意識的な、計画的な檢挙ではないかということが考えられるのであります。  とにかくこの兇暴な検挙は、新憲法下想像し得ない事実であるのであります。のみならず、檢挙後負傷者手当のために、組合側から小千倉医療組合病院のお医者さんをやつて手当をしてくれといつても、これを許さない。あるいはまた、小千谷警察署拘置後、翌朝の一時過ぎまで取調べを続行しておる等のことを考えますと、実にこのたびの檢挙の様相は、終戦前にありました、われわれがたくさん経驗をいたしました争議弾圧の形そのままであります。新憲法の精神を冒涜いたしまして、刑法上の人権蹂躪の罪を犯しておることは明瞭であると私は考えるのでありますが、眞に民主日本建設途上一大不祥事と申しても決して過言ではありまん。軍国暴政警察政治時代への大逆轉であると思うのであります。総理大臣並びに法務総裁はどうお考えになつておりますか、お伺いしたいのであります。なお、このことにつきまして総理大臣法務総裁にお願いしたいのでありますが、こういう問題はひとつ嚴重な御調査の上、何らかの手段をお講じになる御意思があるかどうかを、附け加えてお伺いいたしたいと思うのであります。  次に、新警察法上のいろいろな取扱いの問題についてお伺いいたしますが、今申し上げました通り、小千谷自治警察署におきましては、五月十八日から約一週間前に、小千谷地方警察署、長岡自治警察、堀ノ内、小出等の自治警察から應援を得ておるのであります。このことは、高橋という署長が私に言つておるのでありますから、間違いはないのであります。しかるに本件に関しましては、この應援を受けるについて、公安委員会には何ら相談をしておらぬのであります。署長の独断でありますか、あるいは縣の警察長の指揮でありますか、そのことはまだ明瞭になつておりませんが、とにかく公安委員会には何ら諮ることなくこの應援を求めておるのであります。こういうのでありますから、私は公安委員の運用を知らぬのかと思つたのであります。しかるに、小千谷警察署にかつて濁酒事件がありまして、その検挙にあたつて、非常に警察署内に急を要する事件が起きたのでありますが、その急を要する、分を争うときには公安委員会を開いて、公安委員会から附近の警察署應援を求めにやつておりますが、この事件に関してだけ公安委員に何ら相談なく――事前に相談がないだけでなく、今なおその報告もないのであります。  それでありますから、小千谷町の公安委員の一人は、このたびの取扱いにつきまして非常に疑問を感じて、縣の警察長に質問したのであります。これはどうもけしからぬじやないか、何でそういう應援をとつておるのかと詰問いたしますと、縣の警察長は、それは警察署長の権限であると答えておるのであります。そればかりではなく、五月十九日には、争議取締りの事件について、小千谷自治警察小千谷地方警察の両署長が、縣警察長のいる新潟にまいりまして、どうも指揮を受けた形跡が十分あると思うと、小千谷の公安委員の一人は申しておるのであります。  こうした公安委員会を無視した行為は、警察法前文の精神を蹂躙しておると私は考えるのであります。国民に属する民主的権威の警察組織を確立するなどというのではなく、これはまつたく破壊し去る行為ではないかと思うのであります。明らかに同法第四十三條、同法第五十四條、同法第五十五條の規定を無視した、はなはだしい違法行為であると思うのでありますが、鈴木法務総裁芦田総理大臣の御所見はどうでありますか、お伺いしたいのであります。もし、このような公安委員を無視した自治警察ができ上るとしましたならば、それはとほうもない、たいへんなことが出てくると思うのであります。自治警察精神は根本から覆えされまして、先ほども申しました通り、終戦前の警察制度よりもまだ悪いところの暗黒警察が擡頭することは明らかであると私どもは考えるのであります。民主日本の建設どころか、暗黒日本のでき上りますことは、私ども考えてみましても戦慄にたえないのであります。こういう状態におかれますとき、公安委員は、今は市町村長の推薦になつておりますが、無気力な公安委員が出る危険性が非常に多いと思いますから、この点について、警察管区において管区住民の公選にしたらどうかと思うのでありますが、御意見を伺つておきたいと思うのであります。  私の特に恐れますことは、最も悪辣な警察暴政を継承いたしました、計画的、意識的な、組合ぶつつぶしの隠謀檢挙ではないかと、この事件の前後を通じて私は考えるのであります。もし、これがそういう性質をもつたといたしましたならば、私ども新潟縣の過去の警察組合運動に対してとりましたところの、いつでも組合ぶつつぶしのために通常茶飯事としてやりましたどころの行動そのままの姿が、このたびの検挙の上に現われておるということであります。このまま看過いたしましたならば、知らぬ間にまた、昔の新潟縣にありましたように、昔の警察部長、今の警察長を中心にして、新しい新選組などというものができ上りまして、昔ならばサーベルであつたからよろしからうが、最近はピストルをもつてボンボン良民にぶつ放しましたならば、それこそたいへんなことだとわれわれは考えるのであります。現在の公安委員が、もし間違つたことがありますれば、警察法第四十七條によつて処断をすることができないといたしましたならば、だれがその跡始末をするか、はつきりお伺いしておきたいと思うのであります。なおこの件につきましては、先ほど申し上げました通り嚴重な調査の上、御処断をお願いしたいと考えるのであります。  第三は、加藤労働大臣にお伺いするのでありますが、前申しましたような意識的、計画的な、一方的争議の弾圧が小千谷の理研の工場に行われておりまするように、第一組合と第二組合ができておりますとき、一方が弾圧されるとしますならば、その一方は必然的に御用組合として成長する危険があると思うのであります。のみならず、その反面には、いろいろ第二組合でありまするところの会社の組合を擁護している事実がまた幾多あるのでありまして、政界ジープに何か報じているのでありますが、九州あたりにありますところの菊水会とかいうような右翼團体が第二組合を擁護してみましたり、あるいは経済團体の有力者が來て第二組合争議の指導をやつてみましたり、また町の中には、会社側が数十万円の金をばらまいて争議をやつているというすうなうわさが飛んでみましたり、こういう大騒ぎをしておりまする一方、新潟縣におきましては、この間の事件があるまで、小千谷理研争議などというものは、たれもこれを相手にしている者はなかつたのであります。たれも知る者はないので、あります。ところが、先日この議場におきまして倉石氏が御質問になりましたように、東宝争議と並べて、東宝争議小千谷の理研の争議と言われるがごとぐ、東京の眞中におきましては、とにかくある一部分におきましては有名な争議になつているというような点を考えまするとき、必然的に御用組合というものができわせぬかと考えられるのであります。  小千谷組合が御用組合だか、御用組合でないかは別としまして、御用組合というものは正当の組合ではない。はなはだ不正当な、不健全な組合であるということは言うまでもないのでありまするが、この御用組合というようなものができますることは、すなわち日本の國の民主主義を阻害する、それをじやまするばかりではなく、こういうものがありますことは、何かきつかけがありますならば、次の時代にフアシヨになるところの温床になりはしないかと私は考えるのであります。非常にその危険性を考えるのであります。私は、人権蹂躪の問題や警察法の違反の問題などは別といたしまして、労働組合育成上の大きな問題ではないかど考えるのでありまして、この点を加藤労相はどう思われるか。新憲法の精神を無視し、また労働組合法、労働基準法の精神を無視した、形だけ備えた御用組合的なものが、最近中小工業の企業整備によりますところの人員整理の上から、いわゆる第二組合として資本家の擁護下にできていく傾向を見ますときに、非常に重大なる関心をわれわれはもたなければならぬと同時に、日本の民主主義達成の上に非常なる重大事件であると考えます。  次に私は、外資導入に関しまして、やはり争議の傾向等に対していろいろな問題があるのでありますから、この点についても、いささか簡單に御質問をしておきたいと思います。  企業の安定、生産性の安定確保、これがなければ外資導入にはなはだ障害を來す、こういうような御議論から、争議行為が起きまする原因も、その経過も、実際にそれらのものをほんとうに考えずに、何か争議が起きれば、これはみな労働者が悪いのだ、こういう極端なる批判のもとに、第二組合というようなものがどんどん、擁護せられしかもそれが、この檢拳にあるがごとく意識的、計画的な方法によりまして、官憲の擁護のもとに一方の組合がつぶされるとするならば、一方の組合が御用組合となる。こういう御用組合ができました際に、日本の民主主義に対しまして幾多の疑惑をもつて見ておりまするところの世界の人たちは、はたしてこの日本様子を完全なる民主國家として認めるだろうか。それから世界の労働者、日本の労働組合の大部分にこんな形ができ上るとしましたならば、世論として、はたして日本の國の外資導入をじやましないで、一方に資本家諸君が断言せられるがごとく、黙つてこれを擁護していくかどうかということを考えますとき、断じて日本の國が民主化されない限り、こういうじやまが出てくると私は考えるのでありますが、加藤労働大臣の御見解なり御返答を願いたいのであります。こういう重大な問題でありますから、この小千谷事件に対しまして、労働省として、いわゆる労働行政の上から、人を派して十分調査するの御意思があるかないかを、附け加えてお伺いしておきたいのであります。  以上をもつて私の質問を終ります。     〔国務大臣鈴木義男君登壇
  14. 鈴木義男

    ○国務大臣(鈴木義男君) 清澤君の御質問は、理研小千谷工場に起つた生産管理処分に関する取調べの問題であろうと思うのであります。お断りを申し上げておきまするが、警察は法務廳の管轄にないのでありまして、警察の方は國家公安委員が管轄をいたしておりまして、その最後の監督権は総理大臣がもつておるのであります。法務廳の方では、人権蹂躙の方はやらない予定でありまして、人権擁護の方を掌つておるのであります。法務廳には人権擁護局という一局がありまして、そういう事案がありますると、いつでも取上げで調査することになつておるのでありまするから、この問題は私の管轄でありませんけれども、一應お答え申し上げておきます。  生産管理の仮処分しいうことがありました以上は、裁判所の命令でありまするから、これに抵抗するということになると、どうしても警察官の方でも実力を行使するということになりまして、かくのごとき不幸な事案が起ると思うのであります。しかし、程度を越えて実力を行使する必要はないのでありまするから、もし御説のようなことがありまするならば、十分その点については取調べまして、善処いたしたいと考える次第であります。さよう御承知を願います。     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  15. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいま御質問になりました、小千谷における理研会社の労働組合の問題につきまして、労働組合の健全なる発展が日本民主化の大前提である、こういう点においては、もとより清澤君と同意見でありまして、事実もし、お示しになりましたような、組合を御用組合化する方向に向けておられるとするならば、健全なる労働組合の発展を希う立場から、きわめて遺憾の意を表せざるを得ないのであります。労働大臣といたしましては、そうした組合の御用化に対しては、封建的な考えがなお一部の資本家階級に残存しておる事実を認め、いかにして労働者自身の自主的な意思による健全なる労働組合運動の発達を育成せしむべきかに努めると同時に、また資本家のそうした反動的、封建的な意図に対しては、大きな警告を発せざるを得ないと思います。そうした意味におきまして、衆議院の労働委員会においても、すでに委員を派遣して実情を調査しておられまするから、私どもといたしましても、衆議院の労働委員会調査の結果をお伺いし、なお労働省として調査の必要を感じまするならば、委員を労働省から派遣して、実情を調査するに蹂躙するものではありません。お答えをいたします。(拍手)     〔國務大臣芦田均登壇
  16. 芦田均

    ○国務大臣(芦田均君) 小千谷工場生産管理問題に附随して起りました検挙事件の概要の報告は、現地から受取つております。その報告によりますれば、ただいま清澤君のお述べになつた事実と多少相違の報告が参つております。従つて、本日ここでお述べになつたごとき事案がほんとうにあつたかどうか、再度これを調査いたしまして、もしかような不法な事実があつたとするならば、政府として十分これに適切なる措置を加えたいと考えております。(拍手)      ――――◇―――――
  17. 山下榮二

    山下榮二君 日程第一及び日程第二ほ延期されんことを望みます。
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程第一及び第二は延期するに決しました。      ――――◇―――――  第三 労働者水害補償保険法の一    部を改正する法律案内閣提出)  第四 職業安定法の一部を改正す    る法律案内閣提出
  20. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第三、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案、日程第四、職業安定法の一部を改正する法律案、右両案は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。労働委員長安平鹿一君。     〔安平鹿一君登壇
  21. 安平鹿一

    ○安平鹿一君 ただいま議題となりました、政府提出にかかる労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案並びに職業安定法の一部を改正する法律案の、労働委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案は、昨年四月法律第五十号として制定公布され、同年九月一日より実施されましたものであります。労働者災害補償保険法の施行の実績に鑑み、不備の点を整備すること並びに労働基準法との調整をはかることを目的として本國会提出せられ、労働委員会に付託となつたであります。しかして本委員会は、六月十五日並びに同十八日の二回にわたつて開催し、審議をいたした次第であります。政府からは加藤労働大臣その他政府委員が出席せられ、信摯なる答弁、説明があつたのであります。以下、その主要な点を申し上げます。  労働者災害補償保険法は、労働基準法の裏づけとして、業務上災害をこうむつた労働者に対して迅速かつ公正な災害補償と福祉施設を行いまして、罹災労働者の基本的人権を擁護するとともに、他面事業主の経済的負担の分散軽減をはかり、もつて産業を安定せしめる目的のもとに制定公布されたものであり、爾來今日に至るまで約九箇月を経過いたしまして、着々その所期の成果を収めつつあるのでありますが、この労働者の災害補償のより迅速かつ公正をはかるために、この法律の一部を改正する必要が生じたものであります。  まず第一には字句についての改正でありますが、本法もに労働基準法にも「使用者」という語を用いておりますが、その語義は各條文によつて異なつている場合がありますため、とかく疑義を醸しまして、支障を生じておりますので、これを「自業主」と改め、また本法において適用を除外するものの一つとして官公署をあげておりますが、この官公署とは非現業的な官公署のいいでありまして、公署の行う現業的事業には本法を適用するのでありますゆえに、これを明記しようとするものであります。  第二には保険給付について、本保險で給付される休業補償費は、療養のため休業する期間の長短にかかわらず、一律に休業の初日から七日間分は給付しないことになつているのでありますが、休業七日を超えるような長期の休業に対しましては、七日分を差引くことなく、その初日から全部の休業に対して休業補償費を給付することが、本保険の目的にもかなうものと思われる点であります。  第三には、本法第十八條に、保険給付は保険料を滞納した場合には、全部について給付しないことができるという制限規定が置かれておりますが、この滞納という語は、本保險事務処理上とかく疑義を生じますため、この語を改めまして、本法の適用を受ける日から、有期事業では十四日、一般事業では三十一日を過ぎて保険料を納付しないときは、この法律にいう滞納であることを明確にしようとするのであります。さらに、本法第二十條に規定している第三者の行為によつて生じた災害に対し政府が保険給付する場合における第三者と政府間の法律関係につきましては、明確を欠く点がありますので、同條を整備し、その他保険給付の受給権者の範囲及び受給権の本質について規定した関係條文を、労働基準法との調整をはかるため改めようとするものであります。  第四は、本保険の公正な運営をはかるために設けられました審査機関の関係についてでありますが、審査機関の証拠調べに、民事訴訟法を準用するような、形式的に厳格な方法をもつて行いますことは、簡易迅速と実態即應を貴ぶ本保険の趣旨に反するのではないかと考えられ、またその証拠調べの費用に関しましても、民事訴訟費用法を準用しますことは、証拠調べに関係する人々の積極的な協力を失い、遂には労働者の公正な基本的人権の擁護を期せられないおそれがありますので、これらの不合理を改めようとするものであります。  以上が本法案の大体の要旨でありますが、本法案に対する質疑は六月十五日終了して、同十八日討論に入りましたところ、社会党の辻井民之助君より各派一致の修正意見を述べられ、原案に対する修正決議をした次第であります。その修正点を読み上げます。  第二十一條改正の次に、次の一條を加える。   第三十六條第一項削除  第三十九條第二項改正文を削除と改める。  以上、簡単ではありますが、同法の御報告を終ります。  次に、職業安定法の一部を改正する法律案について御報告いたします。さき第一回國会を通過して、昨年十二月一日から施行されております職業安定法に、労働者供給事業の禁止の規定があります。本規定は、労働者供給事業の本質が封建的な身分関係に基いて、ややもすれば労働の中間搾取を行うものであり、かつ強制労働の弊害を伴いやすいので、労働者の権威と自由とを保障し、労働の民主化を推進する意味から、労働組合が労働大臣の許可を受けて民主的に労働者供給事業を行う以外は、すべてこれを禁止したものであります。本法施行以後半歳を閲し、その間本禁止措置の実施の過程において種々不備な点が起つてまいりましたので、ここにおいて労働者供給事業の禁止を徹底させるために、違法な労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用する者を処罰するとともに、取締上必要な立入調査を行うことができるよう改正する必要が生じたのであります。かかる趣旨のもとに本法案は提出せられ、労働委員会付託になり、本委員会は六月十八日委員会を開催し、審議をいたした次第であります。政府からは加藤労働大臣その他政府委員が出席せられ、真摯なる説明があつたのであります。  以下、その主要な点を申上げますれば、第一に、本法には違法な労働者供給事業を行う者から労働者の供給を受けて使用することが禁止されておらないこと、第二に、違法な労働者供給事業を利用している工場、事業場その他の施設に対して必要な調査をする職権が行政廳にないことがあげられまして、違法な労働者供給事業を利用している者をそのまま放任しておきますことは、労働者供給事業そのものを禁止いたしました職業安定法精神を沒却するものであり、この両罰主義の規定がなければ労働者供給制度の絶滅は期せられないのであります。さらに労働者供給事業禁止措置の徹底をはかりますためには、これが実施状況を工場、事業場等について調査することがぜひとも必要であることが明確にされた次第であります。  本法案に対する質疑は六月十八日終了いたしまして、引続き討論にはいりましたところ、全員一致をもつて原案通り議決した次第であります。詳細は速記録により御承知願いますことといたしまして、以上簡單でありますが御報告を終る次第であります。(拍手
  22. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 両案を一括して採決いたします。日程第三、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案委員長報告は修正でありまして、日程第四の委員長報告は可決であります。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り決しました。(拍手)     ――――◇―――――  第五 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  24. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第五、特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。鉱工業委員長伊藤卯四郎君。     ―――――――――――――     〔伊藤卯四郎君登壇
  25. 伊藤卯四郎

    ○伊藤卯四郎君 ただいま議題となりました特許法等の一部を改正する法律案の、鉱工業委員会における審査の経過及び結果について、その概要を御報告申し上げます。  本法律案、去る五月二十七日予備審査の本院に送付され、即日本委員会に付託されたのでありまして、本改正案の要点は、まず第一に、日本國憲法の戦争放棄の規定との関係上、いわゆる秘密特許制度を廃止したことであります。すなわち、軍事上秘密を要する発明または軍事上必要な発明に関する特別の扱いの規定をすべて削除したことであります。第二に、裁判制度の改正並びに行政事件訴訟特例法の制定に関連して、技術的判断を主たる内容とする特許事件の特殊性に鑑み、争訟に関する規定を改正して必要な関係條文を整備したことであります。第三に、最近の物價趨勢を比較考慮して、特許料及び登録料を五倍に増額することとし、また民事訴訟法の改正に伴いまして、過料の額を二倍に引上げたことであります。第四には、その後の状況の変遷に伴いまして、この際軽微な字句の整理をいたしたことであります。  本委員会におきましては、六月十八日に政府委員より提案理由の説明を聴取し、引続き審査にはいりましたるところ、発明発見の公開、活用、奨励、特に軍事上の秘密特許の文化的活用の問題、工業実施化試験補助金、開放研究施設補助金及び発明協会に対する補助金の増額等の諸点について質疑應答がありましたるのち、その結論として、敗戰日本の再建復興は科学技術の発展にまつところが大でありまするから、これに対する強力な対策を樹立し、発明発見の奨励、特許発明の工業化、科学技術の復興を推進するために、本委員会に発明に関する小委員会を設置して、これが具体策を樹立することを満場一致をもつて決定した次第であります。続いて、討論を省略して裁決いたしましたるところ、本法律案は全会一致をもつて原案の通り可決いたしました。  以上をもつて本案の委員長報告といたします。(拍手
  26. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長報告は可決であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)  次会の議事日程は公報をもつて通知いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十一分散会