○井上良次君 ただいま議題となりました、
内閣提出、農林
委員会付託にかかる
農薬取締法案につきまして、その経過並びに結果の概要を御報告申しあげます。
御
承知のごとく、農薬は重要
生産資材といたしまして、農業
生産上重要なる役割をもつものでございますが、近來資材不足に乗じ、殺菌殺虫の効果がないのみならず、かえ
つて農作物に薬害を及ぼす不正粗悪品が跋扈し、農家に対して甚大なる損害を與え、ひいては食糧増産に少からず
支障を來しているのであります。そこで、今回新たに農薬取締法を制定し、不正粗悪品を一掃するとともに、農薬の品質の保持
向上をはかりたいというのが、本法案
提出の理由でございます。
次に、法案の要点を申し上げますと、取締りの対象となる農薬は、当然農林産品を害する病虫害の防除に用いられるもののみでございまして、
従つて、他の用途に用いられます薬剤は、本法の適用外でございます。
次に、取締りの方法としましては、登録
制度及び表示
制度を採用しているのでございまして、すなわち、登録
制度によ
つて販賣しようととする農薬は、これを登録しなければならぬこととし、また表示制定によ
つて、農薬の製造また輸入を行う者は、品質などを保証する一定の表示を要求せられ、これらに基いて検査官吏は検査を行い、違反者に対してはそれぞれ適当の処罰が加えられるのであります。
以上に関する農林大臣の処分及びこれに対する
異議申立を審査する議決機関といたしまして農薬審
議会を設置し、また農薬の検査に関する事務を掌らせるために農薬検査所を設置することにな
つているのであります。
次に、本法案の審議に関連いたしまして
政府委員との間に行われました
質疑応答中、重要と思われます事項若干を御紹介いたし、御参考に供します。
質問の第一点といたしましては、病虫害による損害は、一割以上といわれ、不正農薬による農家の損失も少くないのであるが、今日までこれを放任しておいたのは怠慢ではないかというのでありますが、これに対する
政府の
答弁は、元來
日本では農薬の製造が盛んに行われ、優良品も多か
つたのであるが、戰後粗悪品が殖えた、これがため、とりあえす昨年農薬検査所を設置したのであるが、法案の
提出は、
関係方面との折衝のため今日至
つたのである、今後は、単に取締りのみならず、積極的に認定農薬
制度を取入れ、優良品を広く拡めたいと
思つているというのであります。
次に、農薬製造の現状及び見透しいかんという
質疑に対しまする
答弁は、硫酸銅など殺菌薬はおおむね需要に應ぜられるが、砒素、デリス根、除虫菊等は不足している、除虫菊は
價格問題に隘路があるから適正
價格をきめたい、デリス根等は輸入を懇請している、主食物に必要な石灰硫黄合剤は、供給が殖えたため、昨年來
統制を外した、柑橘用薬剤もおおむねバランスがとれているというのであります。
次に、病虫害駆除を国営で行う必要はないかという
質疑に対しましては、農薬の製造は国営の必要を
認めないが、防除については國家施設、指導機関を拡充する必要がある、今年は予算の
関係上やめたのであるとの
答弁であります。
次に、登録の有効期間三箇年は長過ぎると思うがいかんという
質疑に対しましては、この
法律の建前は、農薬の
内容を明らかにし、農民自体が優良品を選び、進歩をはかりたいというのであるから、三年くらいが手頃ではないかと思うとの
答弁でございます。
次に、罰則が軽過ぎる、農民が実際に使
つてみて被害があ
つたとき、その損害補償をどうするかという
質疑に対しまして、罰則の第二項によ
つて、登録を行わず、不正品を販賣し、巨利を得たものに対しては、利益を全部没収することにな
つている、また損害の補償については、民法に基いて損害賠償を請求すれぼよいと思うとの
答弁であります。
最後に、本法の運用に関して技術的に万全が期せられるかどうかとの
質疑に対しまして、この点が最も重要な問題であ
つて、現状ではもちろん不満足である、
法律上取締りの権限を與えられている官吏の数が少いから、一般地方民及び技術員の協力にまち、広い意味で農業技術の滲透を図
つていきたいという
答弁でございました。
本
法律案は、五月二十五日農林
委員会付託となり、六月一日、
政府委員より提案の理由について
説明を聴取し、ただちに
質疑を行い、熱心に審議を行
つたのであります。六月三日、再び本案を議題とし
会議を開きましたが、民主党小林委員より、本
法律案は農民年來の要望に應えたものであり、かつ
現下不良薬の排除は喫緊の案件であるので、この際討論を省略して、ただちに裁決に入られたいとの発言があり、全員の賛成を得、ただちに採決をいたしましたるところ、全員起立、本
法律案は原案のままこれを可決すべきものと議決した次第でございます。
以上、簡単ながら御報告申し上げましたが、御賛成のほどをお願いいたします。(
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