○井出一太郎君 私は、
國民協同党を代表いたしまして、
大藏大臣の
財政演説に対し若干の質疑を試みたいと存ずるものであります。私に先だちまして川島、小坂両君の論及せられました点となるぺく重複を避けてお伺いいたしますので、何とぞ
関係各大臣におかれましては、率直・明快なる御答弁を願いたく希望いたします。
昭和二十三年度
一般会計総
予算案が策定されますまでに、荏苒何箇月かがむなしくせられましたことは、まことに遺憾であります。
財政法第三章の規定するところに從いますれば、嚴密な意味では、
予算審議に入ることには法理論的に疑義もあろうかと考えられます。しかしながら、今日われわれのおかれておる
日本経済の危機は、一刻の猶予をも許されぬ瀕死の状態であります。病人のまくらもとで病理学の論爭をするというような愚はやめまして應急の手当を講ずる、かような観点から、今回の
予算大綱を取扱
つてまいりたいと思うのであります。但し、今示されているものは
一般会計の概算だけに止まりまして、その細目はもとより、
特別会計及び地方
財政の全貌も示されておらず、私の所論も、そのため少からざる制約を受けまするのは、すこぶる遺憾であります。
本年度の
國民所得を、
大藏大臣は一兆九千億円と押えておられるようでありますが、われわれは、この兆という天文学的数字が現実とな
つてまいつたことに対して慄然とするものであります。数字の膨脹に対し慢性的とな
つておるわれわれも、ここに嚴粛な反省をする必要があろうかと思うのであります。率直に申しまして、今次
予算は、敗戰日本の苦悶の象徴であります。
政府は、もつと勇敢に、総花主義を排した重点主義をとり、時にはドラステイツクな方法を採用してもしかるべきと思うのであります。
予算案について伺う前に、芦田総理大臣の御答弁を煩わしたいのは、一昨日川島君も触れました、日鮮復興費一億五千万ドル削減の問題であります。一昨日の御答弁は、さらに詳報を得た上でということで、ごく簡單なお答えでありましたが、その後何か的確な情報なり、あるいは
関係方面の意図などが説明いたしたのでありましようか。これ外資導入を一枚看板としてまいつた現内閣にと
つては、まことにゆゆしい問題であります。しかも、先日の
大藏大臣の
財政演説に対し冷水三斗を浴せる感をさえ抱かしめたのは皮肉であります。
本年度予算の根底においても、対日援助計画が大きな支柱をなしておるこつは事実であり、またこれが予定通りはいらないことになりますと、長期
経済計画のごときは画餅に帰するでありましよう。一体、これはいかなる事情に基くものであるか。今度承認を拒否された分は、エアロと呼ばれる分かと聞いておりますが、ガリオアをの他の分には影響はないものでありましようか。下院での否決も、上院で復活が可能であるかどうか。こういう点がおわかりでありましたならば、ぜひお漏らしいただきたいのであります。
私は、極左の諸君の言うように、アメリカ資本の導入が、日本を植民地化し、民族的隷属をはかる賣國的行為だとは決して考えません。荒廃し切つた祖國再建の呼び水ちして絶対に必要であると考えるものであります。要はわれわれ日本人がこれをより生産的に使いこなすカありや否や、この力量に問題咋かか
つていると思うのであります。かりに、
政府資金による援助が減額されるといたしましても、今後民間資本というふうなものがはい
つてくる態勢等においては変化なしと考えてよろしゆうございましようか。かような一連の問題について、再度総理の御見解を伺いたいのであります。
続いて、
予算大網に從
つて順次お伺いいたしますが、その前に、今次
予算は歳入の面におきましては、はたしてこれだけとり得るかどうかと思われるまで
税收入その他をマキシマムに見積
つておるようであります。しかるに歳出においては、
インフレの時期、はたしてよくこの範囲で食い止め得るや疑問に思うほど、この方はミニマムに圧縮してあるようであります。從
つて、両者が幾分でもずれたときは、アンパランスは重復して、大きな欠陷を生ずること必至でありましよう。今後
物價と
賃金の
引上げによ
つてもたらされようとする安定と均衡がどれだけ持続するかが問題でありまして、昨年度のごときは、十数次にわたる追加更正が行われ、逐にほ当初
予算の二倍を超ゆるに至りました。本年またかくのごときことありとせば、これは通年
予算と呼ぶ意義はないわけでありまして、この点のお見透しを、まず
大藏大臣から承りたいのであります。先ほど
大藏大臣は、
追加予算は出したくない、こういう御答弁一應承つたつもりであります。
予算大綱のうち、最初に歳出の面から檢討してまいりまするが、きわめて重点的に、以下数点に限定して申し上げてみたいのであります。
奇想天外な新税でも発見しない限り、戝源枯渇の現状においては、いきおい歳出面を圧縮するという以外になかろうと思うのであります。そこで、まず第一に
行政費の説約でありますが、今回は一割五分にわたる
行政費圧縮を試みておられるとの御説明がありました。一体、もつと徹底的にこれを敢行する御
決意をおもちにならないのでありましようか。三党政策協定には、中央地方を貫く
行政機構の民主的改革を推進し、これが
能率化をあかり云々、とうた
つております。私は冒頭において、
政府がもつと勇敢であることを要望いたしたのでありますが、國家危急の今日、あえて火中のくりを拾うという冒險を辞するところあ
つてはならぬと思うのであります。か
つて片山内閣当時におきまして、二割五分の人員
整理が閣議をも
つて決定せられたのでありまするが、遂にその実現を見なか
つたのであります。
官僚の独善が非難され、その牙城が攻撃の的とな
つておるにもかかわらず、今回、
國家行政組織法を初めとして、三十に及ぶと言われる各官廳設置法案の提出を見ようといたしております。かきして、いよいよ壯麗にして堅固なる官僚の防壁が構築されようとしておるのであります。地方出先官廰はますます
屋上屋を重ね、地方氏怨嗟の的とな
つております。これらは一体何たることでありましよう。
今次
予算における一割五分の節減は、
予算定員と実人員との差額を縮めるだけに止まり、実際には全然血を出さずに済むものと聞いておるのでございます。いわば官界の幽霊人口を
整理するだけに止まりまして、これでは、
行政整理などと大言壯語することはやめていたたきたい。このことは、
失業対策費等のきわめて少額である点とも考え合わせまして、
政府の
行政整理の熱意並びに失業受入態勢の用意において欠くるところありというべきでありましよう。
行政整理は、單に
財政負担の軽減のみではなくして、
政府みずから範をと
つて難事を敢行するという氣魄を天下に示すことに相なるのであります。
民間企業その他の方面に対しても、今日ほど
合理化、
能率化が要求せられておる時期はございません。無血革命と呼ばれるこの歴史的変革の時期にあたりまして、企業なり会社なりが、
合理化、健全化の線においてつぶれたという例は、私寡聞にして、未だほとんどこれを知らないのであります。今や貿易は再開され、外資の導入が実現されようとしておる際に、わが國産業界もこれに即應して、その体制を整備しなければならない時期に立至
つております。今次
予算に計上されておる價絡調整費のごときも、五百十五億という巨額に上りまして、その大部分は石炭、鉄鋼、肥料等の赤字補償でありましようが、われわれは、いつまでもかかる
措置のみをか
つて、企業を漫然と甘やかしてはならないと思うのであります。為替レートもやがて一本建てに相なるでありましようし、まず輸出産業から、
合理化の第一歩はいや應なしに開始されるでありましよう。いかにして新たなる産業狭序を再建
整理するか、
政府の御方針を承りたいのであります。総理からは、すで仁先ほど小坂君の質問に対して御答弁がありましたので、私は、
行政整理に関して船田
國務大臣より、企業整備につきましては水谷
商工大臣より、お答えをお願いしたいのであります。
次に、歳出
関係の第二点といたしまして、いわゆる官業の
独立採算制の問題でございます。先般われわれは、國鉄並びに通信事菓の
経済白書を拜見いたしまして、それぞれまことに容易ならぬ状態にあることを知つたようなわけであります。今回の値上案は、一躍三倍半あるいは四倍という倍率でありまして、
國民は容易に納得しがたいものがあろうかと思うので、あります。私は、この点につきまして岡田
運輸大臣に伺いたいと思いましたが、ただいま、これまた御答弁が一應ございましたので、以下私の意見を申し上げまするから、十分これをおくみとりいただきたいのであります。
わが國官業の最大世帶たる國鉄において、六十万余りの人員の中から、思いきつた冗員
整理はできないものでありましようか。労働基準法の実施によ
つて、かえ
つて要員を増加しなければならぬと聞くのでありまするが、実情は一体いかがでありましよう。さらにまた、石炭の質を向上せしめ、カロリーを増すことによりまして、何らかもつと大幅な経費節減のくふうなどがあるように思うのでありますが、かかる点はいかがでありましようか。なるほど三倍半の
値上げも、一般
物價水準に比較いたしますれば、これは低いと言われるかもしれません。しかしながら、官業のもつ特別な性格から申しますならば、世人は、なかなか、かような理由だけでは納得をいたしません。鉄道
関係人が、國鉄モンロー主義ともいうべき國鉄内だけの感覚で
値上げを妥当とする前に、
國民への奉仕という立場で、もう一遍くふうをするべきが当然であろうと思うのであります。
なお私は、この際運賃の問題につきまして、
旅客運賃と貨物運賃を対比いたしますときに、そのコストにおいて、
旅客運賃よりも貨物運賃の方がはるかによけいかか
つておるということを聞くのでありますが、これが今回の安定本部の総合計画におきましては、この
旅客運賃をむしろ貨物運賃の犠牲にいたしたというふうな点がうかがえないでもないのでありますが、この一点は、後に申し上げる
安本長官に対する御質問、たくさんございますが、そので一項として御答弁を一應願いたく、お願いをしておきます。
次に、歳出の第三点といたしまして、
公共事業費を考えてみたいと思うのであります。なるほど、昨年度の三倍の数字が計上せられており、事業分量もまた厖大したという
大藏大臣の御説明がございました。昨年に比しては、いささかの長をこの点において認め得るかと思うのであります。敗戰により、われわれは軍閥的、專制的アレシヤン・レジームから解放せられましたが、同時にまた、欲望の自由も解放せられたのであります。先ほど私は、本
予算案を総花主義であると申しましたが、この
公共事業費のわくの中において、あらゆる建設的要求を充たしていかなければならぬのであります。
北村大藏大臣が、か
つて野におられましたときに、しばしば指摘された分捕主義の弊害が、最も端的にこの
公共事業費目の中に現われておるようでございます。この費目は最も重点主義をも
つて運用せられなければならず、また、さきに触れましたところの失業受入態勢とも有機的な関連をも
つてせられなければならぬと思うのでありますが、
大藏大臣の御所見を伺いたい。
わが党といたしましては、六・三制の完遂を絶叫して今日に及んでおりますが、元來六・三制の経費が公共事費の中にはい
つていることは、他の費目の犧牲となりやすく、当然独立計上せらるべきであります。敗れ去つたこの國土に文化國家、平和國家を打立るためには、何にも増して教育優先の原則が確立せられなければなりませず、六・三制
予算がしばしばSOSを傳えらた経緯に艦みましても、特に声を大にいたしたいのであります。われわれは、この点文部省原案を支持してやまなか
つたのでありますが、はたして予定数字が確保され、安全実施が保障されまするや否や、もし不足額ありとするならば、その数字をも併せてお示し願いたいのでありまして、なをまた、予備費などから優先的にこれが確保をお願いいたしたい。今や、破れたる倉庫の片すみに、また暗いお寺の軒下に、默々として二部教授を受けております生徒たちに代わりまして、私はこの席において、森戸文部大臣の
決意のほどを承りたいのであります。
またさらに、本費目中重点をおくべきものに、農業
関係の災害復旧費があり、農業土木費がございます。一割増産の緊急課題を達成するためには、何をおいても、土地改良による既耕地の生産力向上が必至であります。永江農林大臣より、それに関連しての数字及び計画内容を伺い、併せて、一割増産の具体的見透しをお尋ねいたしたいのであります。
ついでに、もう一項お伺いいたしたいのは、
公共事業費中、河川砂防ともいうべきいわゆる治水費に比べまして、林野
関係の治山費があまりにも少ないのは片手落ちであり、これでは治山治水の本末が轉倒しておると考えますが、農林大臣の所見いかん。
歳出の第四点といたしましては、
復興金融金庫の問題でございます。いわゆる復金
インフレの源泉であるのみならず、その融資をめぐ
つては幾多の政治的疑惑等をも生み、その不健全性は十分檢討されねばならぬのでありますが、すでに同僚よりも触れるところがありましたので、私はこの際、それとは別に、三党政策協定にも取上げられてある農林復興金庫の問題について、徹底した
政府の所信を伺
つておきたいのであります。
農林
金融は、由來長期低利であることを要し、しかも季節性にも制約せられまして、特殊な性格に立脚しております。先般の農業手形制度をも
つてしては及ばないところの長期復興
金融のために本金庫を設立し、農地証券の資金化やら、農林蓄積資金の還元を考えることは、つとにわれわれの提唱してきたつたところであります。今日農村における金詰りはきわめて深刻でありまして、春耕の資金に苦しむものが続出しており、まさに農村
恐慌到來を思わせるものがあります。わが党の本金庫設立を望むやまことに切なるものがあり、
大藏大臣、農林大臣の御回答に対しては、議席からも深甚なる関心が拂われていることを附言する次第であります。
第五点として一言触れておきたいのは、一千億になんなんとする終戰処理費であります。由來本費目は、敗戰日本人の果すべき嚴粛なる責務でありまして、これを論議することは
一種のタブーでありましたが、全
予算の四分の一を占める本費目が、わが閾
財政の大きな重圧であることは、否定し得ないところであります。
大藏大臣の御説明では、事業分量は減
つてきていると申されます。なるほど、パーセンテージとして
予算上占める率ほ年々減
つてまい
つておりましようが、絶対額は殖える一方であります。この費目の内訳が建設費と維持管理費とにわけられるとき、建設費のごときは漸次減少の方向をたどるであろうことをわれわれは期待しておりますが、この間の消息はいかがでありましようか。またその費途が
インフレ高進を防ぐため
経理監査等においていかなる手が打たれているか、併せ伺いたいと思うのであります。
次に、歳入の点にはい
つてまいりますが、三千九百九十三億の総額のうち租税と專賣益金と價格差益金とで九割五分までを占めております。租税として徴收すべき割合が、所得中何パーセントをも
つて妥当とし、限度とするかにつきましては、古來
財政学者のいろいろと説をなしてまいつたところでありますが、本
予算案の示す通りでありますと、傳賣益金も消費税とみなしますときに、約三千五百七十五億と相なり、地方税その他を加えますと、おそらくは五千億を超えるでありましよう。総理は、ただいま小坂君の質問にお答えにな
つて、
國民所得を一兆九千億と押える場合に、税として取り上げるものが二八%、こういう御意思をお漏らしになりましたがこの一九兆千億のうち、当局は一体その何割を捕捉できないと見込んでおられましようか、もし、これが一兆億円程度しか捕促できないといたしますならばまさに五〇%の税
負担と相なり、苛斂誅求も極まれりと言うことに相なるわけでありますが、
大藏大臣は、その徴税がしかく容易であり簡單であるとお考えになりましようか。
從來やかましかつた勤労
所得税については、大臣も言われます通り、基礎控除、扶養控除の
引上げが大幅に実現いたしまするので、よほど楽に相
なつたことは認むべきでありましよう。ただしかし、かかる直接
負担の軽減は、別な形で間接税の生増償とな
つている点を、見逃すわけには参らないのであります。工場に働く一労働者を例にとれば、なるほど
賃金から差引かれる源泉
所得税は少く
なつたでありましようけれども、一日の労をいやすために屋台店で楽しむ一杯のカストリに、より多くの税がかけれていることは、禁酒諭者の北村藏相といえども御承知のことと思うのであります。
一体、近代文明國家の税制において、
所得税中心の直接税体系がその大宗をなし、根幹であるのが通例であります。直接税が五割を上まわるというような國家は、大体において未開國、後進國に多いのであります。私のごく大ぜつぱな計算によりましても、
タバコ益金、
取引高税を間接的消費税として算定いたしますのに、直接税一〇に対しまして、二十二年度において間接税一二、今次
予算においては、一三という率を示しております。本年は、昨年より一層間接大衆課尊重課の方向をたどつたと申すべく、この意味では、わが國はいよいよ原始未開國のレべルに轉落したというべきでありましよう。
酒、
タバコの
値上げによ
つて歳入増加をはかるのは、最も安易な方途であります。しかしそれだけに消費大衆の嗜好の上における無言の抗議がついてまわるのであります。濁酒の氾濫は、先ほども大臣の言われました通り、目に余るものがあり、そのために消費せられる米の量は数百方石をも
つて称せられ、その弊害たるや、算うべからずであります。
タバコもまた同樣でありまして、私設傳賣局の製造にかかるものの方が、か
つての新生よりも美味かつ安價でありましたことは、つとに定評のあつたところであります。さらにまた、
タバコ栽培反別が戰前の水準まで近く回復されるということは、これは桑園その他を犠牲にしておるというふうに例が非常に多いのでありまして、ただ單に
財政收入のためとはいえ、一考を要する点であろうと思うのであります。かような点を憂慮いたしまするとともに、私は、八百円の一級酒や六十円のピースは、すでに
値上げの限界点に達しておると考えまするが、当局の所見いかん。
これを要するに今般の税制は、直接税体系より間接税体系へ傾斜せしめた改惡であり、勤労
所得税の軽減を大衆的間接課税にすりかえたと断ぜざるを得ないのであります。地方税については、わずかにその片鱗を示されたのみで、論議のよすがとなりません。事業税の問題その他相当に檢討を要する点があろうと思いますが、他の機会にゆずることといたしまして、この際
政府は、中央、地方を通じ直接、間接各税にわた
つて総合調整を試みた税制の大改革を行う用意ありやを、この機会に宣明せられたいと思うのであります。
もう一点、わが党として特に関心の深い問題は、法人税の一元化であります。特別法人税がそのために廃止せられることと相なり、從來の協同組合そのたの特別法人の課税が、一般営利法人と同列におかれるわけであります。協同組合のごとき、社会的弱者が相互扶助の理念に立
つて相集まるものに対しては、特別なる取扱いが望ましいのでありまして、同時にまた、特別法人税が戰爭中に限
つて創設されたという沿革もありまして、今回の
措置は肯しがたき点があるのであります。聞くところによりますれば、一般法人より五%程度低き税率を考えられておるようでありますが、現行通り一〇%の差を保持すべきが、今後の協同組合の助長発展に資するゆえんであると考えます。あえて御答弁を求むる次第であります。
前年度において、課税の重圧が
國民大衆に深刻なる衝撃を與えましたことは、今日なお記憶に新たなるところでございまして、現在なお異議の申立や減額の申請が税務署、財務局の机上に山をなしておることは、
大藏大臣の最もよく御承知のところでありましよう。昨年十二月末、年度の四分の三を経過いたしましたにかかわらず、なお予定額の四分の一にも逹せざる徴税成績で、歳出入のずれは
インフレに拍車をかけ、前途暗澹たるを思はせたのは、ついこのごろのことでございます。しかも、明らかに赤旗の指導下に展開せられた反税闘爭には、ずいぶんと悩まされたはずであります。もちろん、税の賦課たるや最も公平でなければなりません。應能提供の原則は、どこまでも貫かれなければなりません。納得のいく課税、民主的な納税であるために、当局はいかなる用意をおもちでありましようか。
今日新円の所在するところは、昨年のそれとは大分様相を異にしておるのであります。漫然として昨年の轍を履むがごときことがあれば、前年度に倍する
予算税額を完全に捕捉することは、とうてい不可能であります。前年度末にな
つて徴收額が急増して、ある目標までこぎつけましたのは、はたして
國民の自発的協力からだけであつたかどうか。税界第一線の人の涙ぐましき努力ももちろんでありましよう。けれども、その他に他のカなり理由なりが存在しはしなかつたか。これ、知る人ぞ知るでありましよう。われわれは、
インフレ、やみ利得は徹底的に捕促しなければならぬと考えますが、そのための税務機構の整備と陣容の拡充はいかように進んでおりましようか。税務第一線人の素質は、またその訓練は、はたまたその任務に値いする待遇―これらに対する当局の対策を伺いたいのであります。
併せてこの機会に承りたいのは、か
つては
所得税調査委員その他の制度が設けられておりましたが、今日徴税の仕事を円滑化するため、これに類した民主的システムをお考えになる意思はありませんか。少くとも所得決定にあた
つて、それぞれのローカリテイを加味するところの所得決定基礎資料審査
委員会というふうな仕組を必要と考えまするが、当局の見解いかん。
次に、價格差益金について一点伺
つておきたいことは、今般計上の百八十八億余円の中には、米價の
値上げによる差益というものは計上されておらぬようであります。しかし閣議においては、これがバツク・ぺイメントの問題がしばしばされたように承り、しかも農林大臣は、農家に対して還元する旨を、折に触れて発表されてまいつたと思うのであります。今日の米價は、需給の選択的変化から生ずる自然價格と異なり、まつたくの政策的價格であります。しかも、價格のみならず供出数量、供出時期までが、強制的に國家権力によ
つて統制せられておることを、まず銘記すべきであります。他方、農家必需物質の統制とも相ま
つて、現在の農家経営及び
経済は、國家権力の完全なる支配下にあるので、あえて、かかる條件のもとにおいては、再生産の諸條件を整える責任は、計画の主体としての國家がこれを負わねばならないと私は信ずるのであります。
農業の再生産の保証は、他面においては農家の生活保障であります。かかる保障は、農産物の公定價格の上に端的に現わされ、今の場合は、米價に集中的表現を見ておるのであります。米價問題を論ずる場合、今日の公定米價のもつ本質的意義と、自由
経済時代のそれとが混同せられて、一度決定された米の價格が、
物價水準の高進にもかかわらず、そのまま放置せられていたのは遺憾にたえないのであります。かかる観点から、われわれは米價のスライド制を主張するものであり、パリテイ計算に基く再生産費保証の方式をとるのであります。
物價体系の改訂に際して、米價も当然
引上げらるべきものと考えますが、その際は、パリテイ計算の合理性、すなわち價格変化の均衡実現という観点よりして、全供出量を月割に按分して農家に還元すべきものと思うのであります。今回の歳入面に米の價格差益を計上されなか
つたのは、他日農家に還元支拂をなされるのであるかどうか。しかもそれは、私のごとき論拠を首肯されますや否や。この点は、農林、大藏両当局より明確に伺
つておきたいのであります。(拍手)この問題の
措置いかんは、全國米作農民の重大関心事でありまして、今秋の供出にも決定的影響をもつものでありますばかりでなく、一割増産の可能性を、もしもこれが果されない場合には、きわめて悲観的にするものと信ずるのであります。
歳入の面において他に何らかの財源を求むることを得るならば一大光明でありまするが、米國の好意になる対日援助資金が、何らかの形でわが
財政と直接結びつくことは、不可能でありましようか。たとえばガリオア等の資金において、輸入せられた物資が、貿易資金
特別会計を通じて相当な黒字を生むことが予想せられるのでありますが、その黒字を
一般会計の方へ繰入れるというふうなことは考えられると思うのであります。もちろん、
財政勘定へ繰入れなくとも、現物が流入してくることだけで
日本経済の上に大きなプラスとな
つておることには相違ありませんが、右の構想は、端的に効果が現われる一方法と思うのであります。もつとも為替換算の
関係で、技術的に黒字とならない場合もありましようし、米
國民の税
負担で日本
財政を直接サポートすることは避けなければならぬとするならば何をか言わんやでありますが、あえて御一考を煩わし、この点を解明せられたいのであえいます。
以上私は、いささか細目にわた
つて御尋ねをいたしたのでありますが、先日の
大藏大臣の
演説は、單なる計数の説明以上に、
財政経済全般にわた
つて非常に廣汎な問題を取扱われたように拜聽いたしました。そこでなお若干伺いますが、
物價と
賃金を同時に決定して、その惡循環を断ち切るという方式は、昨年以來採用された構想でありまして、今回もまた踏襲されたようであります。昨年の改訂においては、基準年次仕対し、
物價六十五倍、
賃金二十七、八倍と承知いたしておりますが、今回は、
物價百十倍に対し、
賃金は六十倍足らずということに相なり、
物價と
賃金のシエーレは一層はなはだしく
なつたと考えられましよう。最近会う人にして口を開けば、生活が赤字であるなどという範圍を越えて、全然生活の設計が成り立たないと申しております。このギヤツプを埋めるのに、やはり実質
賃金充実の考え方のもとに、税
負担の軽減をはかり、公價配給による裏づけを確保するというような方法がとられるでありましようが、はたして
政府はこの点に自信ありやを伺いたいのであります。
また今日の
物價中には、統制のわくをはずす
段階にあるものが相当あるのでありまして、それゆえにこそ三党政策協定は、自由と統制の限界調整という一項を設けたわけであります。この点につきましては、先ほど
安本長官の御答弁にもあ
つたのでありますが、私はただ一点だけ、もはや今日の
段階においては、鮮魚、蔬菜のごときは、重油リンク、肥料リンクの一部を除き、自由に委ねてしかるべきと考えますが、この一点について、栗栖
安本長官の御所見を伺いたいのであります。
さらにまた、價格改訂の失敗は
賃金面の放任に発するという見解から、
物價と同時に
賃金統制ないし安定の考え方が出てまい
つておるようであります。か
つて戰爭中にも、
賃金統制令なるものが存在し、総額制限方式による統制を実施して矢敗した記録があるのであります。これは
物價とのスライド制を考え、しかも実質給與の裏づけがなければ意味のないものであり、実質
賃金が戰前の三〇%程度にすぎぬ現在においては、條件は成熱しておらぬと考えるものであります。この問題に対する
加藤労働大臣の御意見は、一昨日川島君に、お答えのあつたもので諒とするものでありますが、
安本長官は、もう少し事態が経過しなければ答弁できぬと申されましたが、いずれ安定本部の御意見をも伺いたいと思う次第であります。
次に
軍事公債利拂停止の問題は、いわゆる苫米地私案なるものにおちついたのでありますが、
大藏大臣の
演説中には、これに触れるところがないようであります。これによる繰入額つは約十五億であ
つて、財源的には僅少でありますが、相当に大きな政治問題でありまして、
大藏大臣は、通貨安定の原動力を貯蓄の増強に置いておられますが、軍公
利拂延期は、
金融界へは大きな波紋を投げかけているようであります。このこと自体が今後の貯蓄に惡影響を及ぼすことなきや、また國債市價低落へ赴ぐ懸念なきやを、この際伺
つておきたいと存じます。
さらにまた、大
金融機関に対しては融資その他の援助計画が
考慮されるでありましようが、これら
金融機関に結集されておらない農山漁民、中小企業者等の組織たる協同組合系統に対する
金融的緩和は、何ら講じられておりません。農村における資金枯渇の現況は、欲しい報奬物資さえ受取り得ない程度にまで至
つております。今回の利潤繰延
措置は、政治的には一應了解するとしても、この機会に、農山村や中小企業
金融に対する犧牲緩和の具体策を承りたいのであります。(拍手)
最後に私は、藏相
演説の中に多大の期待をも
つて描かれておる中間安定の考え方に対して御警告を申し上げて、この質問のエピローグといたしたいと思うのでございます。
日本経済の現状は、一言をも
つてこれをおおうならば、
インフレの高進と過小生産に帰することができませう。
経済安定本部においても、またごの観点からこの実相をとらえて、第二
経済白書を出されました。またさらに長期再建計画を、同樣な認識の上にその克服を試みようとされております。しかしながら、先日の御
演説中にも、安定本部発表の
経済白書においても、最近示された
経済の現象面のみを強調して、若干樂観的に過ぎると思われる御見解を示しておられます。すなわち、前年度における供米及び納税の完遂、石炭の増産、最近における日銀券の頭打ちとやみ
物價指数の横ばいというふうな点を好材料といたしまして、少しく厖大評價をされておりはしないかと思われるのであります。しかも、これが近ごろ流行の中間安定の論理の出発点であるようでありますが、これをも
つて到逹点といたしてはなりません。長期再建計画にいたしましても、巨額なる米國の対日援助を規定の事実のごとく織りこみまして、東亜市場の急速なる回復が前提條件と相な
つており、可能性と現実性とがいささか混同されていうように考えるのであります。
現に、最初触れましたように、外電の傳えるがごとく対日援助が減額せられました今日、むしろこういつた計画をそのまま用いるといたしますならば、根本から崩れ去る結果と相なるでありましよう。國内條件といえども、本年の供米と納税が前年同様に参るか否かは、相当問題でございます。私が先刻それぞれの箇所において御警告を申し上げたように、必ずしも樂観せられるのは禁物であります。石炭も、四月の出炭高は決して満足でき得ないような数字であつたはずであります。日銀券
発行高は、本
予算施行と同時に急激に上昇を見るでありましようし、やみ
物價は、公定價格改訂、運賃
値上げを契機といたしまして急騰するでありましよう。外資導入を軸心とするこの申間安定策なるものは、本
予算の施行によ
つて一應破綻に直面しはしないかと私つは憂うるものでありますが、ここで私は、
大藏大臣の先日の御
演説に用いられた表現をお借りいたしまして、
大藏大臣が明確に希望される中間安定の構想は砂上の樓閣に終るであろうという漠然たる恐怖を禁じ得ない、かように申し上げたいのでございます。中間安定というがごとき気休めにあらずして、より本質的な絶対の深淵と対決せんとする覚悟をお示し願いたい。あえてお尋ねする次第でございます。
われわれは、いたずらに批判のための批判を快しとするものではない。眞に日本再建のためには、今次
予算に対してもきわめて慎重たらんことを期しておるような次第であります。先日民自党の山口君は、現内閣の余命いくばくもなしと断ぜられましたが、われわれは必ずしもさようには考えません。しかしながら、確かに現内閣にと
つて、その道は嚴しく、かつ險しいものがございます。これこそ、敗戰國の政治がたどる運命であります。願わくば、
政府は一刻も速やかに
予算細目を示されたく、われわれとしては再檢討ないし、追加質問の機会を留保して、この質問を終る次第であります。(拍手)
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國務大臣芦田均君登壇]