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1948-06-05 第2回国会 衆議院 本会議 第56号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月五日(土曜日)     午後二時四十二分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五十二号   昭和二十三年六月五日(土曜日)     午後一時開議  一 國務大臣演説に対する質疑     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 去る五月末、米國西北部太平洋岸コロンビア河が氾濫をいたし、沼岸百二十マイルにわたる一帶に浸水し、そのため家屋を流失した者五万人に及び死者もまた相当数に上るとのことが、六月一日、二日の外紙に報道されております。殊にオレゴン州の大都会ヴアンボートのごときは、全市水浸しとなり、ほとんど全滅とさえ傳えられております。もつて、その惨状を想像することができるのでありまして、被害者各位に対しましては、まこと御同情にたえません。つきましては、衆議院國民を代表して次の決議をいたしたいと思います。  衆議院は、今回米國オレゴン州における悲惨な大出水の報に接し、まことに御同情にたえません。ここに國民を代表して心から御見舞申し上げます。右の決議をいたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     〔拍手
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます、よつてさよう決定いたしました。      ————◇—————
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) お諮りいたします。不当財産取引調査特別委員会費用について次の決議をいたしたいと思います。  不当財産取引調査特別委員会費用は、月平均額百万円を超えてはならない。右金額衆議院経費からこれを支拂うものとし、昭和二十三年六月から第三回國会召集の日までの支出に充てるものとする。本決議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつてさよう決定いたしました。      ————◇—————
  7. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより大藏大臣財政演説に対する質疑に入ります。順次発言を許します。川島金次君。     〔川島金次君登壇〕
  8. 川島金次

    川島金次君 私は、日本社会党を代表いたしまして、昨日大藏大臣のなされました財政一般演説に対しまして、同時にそれに関連いたしました点について、政府にそれぞれ質疑を行いたいと思う次第であります。  まず第一に、劈頭総理大臣にお伺いいたす点が一、二ございます。その一は、昨日大藏大臣は、この席において、日本経済再建外資導入によつて期待される、從來敗戰後國民は、その生活において文字通り生存的な実情におかれたが、経済がやや復興の諸について、國民生活生活の過程にはいつたと言はれ、日本経済は、敗戰後における危機段階を突破いたしまして、ようやく経済安定の段階にはいると申されたのであります。しかも、その経済安定の段階にはいる大前提といたしまして、あくまでも政府外資導入を多く期待いたしておりまするところにあろうと私ども付度をいたしたのであります。  しかるところ、昨日たまたま外電の報ずるところによりますれば、われわれ國民朝野をあげて期待をいたしておりました日鮮経済復興に関する援助の一億五千万ドルが、不幸にも米國下院において否決されたとの報道をわれわれは受けとつたのであります。殊に政府は、本昭和二十三年度の総予算を括めて、日本経済復興に関する五箇年計画を樹立するに努めておるのであります。しかも、この五箇年計画の樹立にあたりましても、あくまでも外資導入大前提としての五箇年復興計画に盡きると言つても過言でない計画であるのであります。しかるところ、ただいま申し上げましたように、われわれ朝野をあげて多大の関心をもつてまいりました日鮮経済復興援助の一億五千万ドルの計画がここに否決されたという悲しむべき報道に接しますると同時に、このことは、やがて日本経済復興に関する五箇年計画大前提をなすとともに本昭和二十三年度予算実行にあたつても、これら外資導入相当量に織りこんで、その財政計画が立てられているのであろうということを、われわれは感じましたときに、この一億五千万ドルの外資導入の否決は、日本の五箇年経済計画に影響するところ甚大であることはもちろん、本昭和二十三年度予算実行にあたつて多大の支障ありと私どもは感じられるのでありますが、これに対して芦田総理大臣は、これら外資導入に対する所見と、さらに新しく期待さるべきところの外資導入の見透しについて、この際われわれ國民の前に明示されんことを希望するものであります。  さらに私は、昨日提出されました昭和二十三年度予算概況みに関するところの大藏大臣説明に対して、一、二質問を試みたいと思うのであります。  敗戰後におけるところの三代にわたる歴代内閣日本経済再建の原理を発見することができないで、きわめて放漫な、無計画的な経済財政計画を続けてまいりましたがために、日本経済は破壞混乱の中に陥り、さらに國民大衆の犠牲におけるところの惡性インフレーシヨンが、あらしのごとく國民の前に立ちはだかつたのであります。この惡性インフレーシヨンを、まずわれわれは圧力を加えて克服することが、日本経済再建に対する最大の要件でなければなりません。  そのインフレーションの惡性化を抑制するために、まずその一要件といたしましては、健全財政、殊に中央地方を通じての健全財政に一貫することが、インフレーシヨン抑制の第一要件であるということは、大藏大臣説明した通りであります。しかしながら、この健全財政は、單なるいわゆる数字的な収支の均衡を保つただけでは、必ずしも健全財政とは言えないことは、言うまでもないのであります。殊にそ健全財政が、名実とも健全財政たるのゆえんを発揮いたしますためには、その財政の中に織りこまれたところの生産計画目標通りに実現いたさなければ、その健全財政はたちまちにして崩壞するであろうということは、見やすき理であるのでございます。  そこで私は、この機会お尋ねいたすのでありますが、昭和二十三年度健全財政実行にあたつて、この実行に裏と表との関係にありまするところの重要基礎資材生産目標額がいかなる形において達成されるかというような事柄についての、各関係大臣のそれらに対する具体的な計画と、同時に見透しをも、この機会にお伺いをいたしておく次第であります。(拍手)もし、この生産計画が所定の目標通り年度内に達成いたされぬということに、かりになるといたしますならば、それはやがて名目的な健全財政が崩壞するであろうというおそれが多分にあるから、私はあえてお尋ねを申し上げるのでございます。  重要基礎物資の問題が出ましたりで、ついでにお尋ねをいたしておきたいのでありますが、それは、これら重要基礎資材公定價格改訂が未だに決定いたしておらないと考えるのでありますが、はたして政府におきましては、この重要物資價格改訂について確信ある決定がなされたかどうか、もしきまつておりましたならば、この機会に御表示を願いたいと考える次第であります。第三点は、終戰処理費の問題でございます。終戰処理費は、言うまでもなく一千億に上るという厖大な巨額を、われわれは敗戰國民の当然の義務として負担しなければならないことになつておるのでありますが、これもただいま申し上げましたごとく、この一千億に上るところの厖大終戰処理費は、物件費厖大に伴うということは言うまでもありません。從つて、この一千億に上りまするところの終戰処理費使途、すなわち言いかえれば、この終戰処理費実行にあたつて物動計画がはたして確立されているかどうか。この問題は、やがて昨年度と同様に、当初三百五、六十億で済んでおりました終戰処理費が、年度半ばにいたしまして、その当初予算と同額に達するがごとき追加補正を要するような事態になつては、いかに大藏大臣健全財政を唱えましても、その面からさらに健全財政名実が崩壞するというおそれがあるために、あえてこの点をお尋ねいたしておく次第であります。(拍手)  さらに私は、この機会大藏大臣に重ねてお尋ねいたしますが、軍公利拂延期によりますところの経費使途であります。言うまでもなく、この軍公利拂延期の問題は、わが党が立党以來の主張でございましてそれがようやく、その一端として今度の二十三年度予算において実現の一歩を見たわけでありますが、この軍公利拂延期によつて、聞くところによりますれば、本年度内、すなわち來年三月末までにおける利拂延期によつて捻出されます経費は、十四億九千万円と聞いておるのでありますが、この捻出されました経費使途を明確にされておらない憾みがございますので、私はこの際、政府國民の前に、わが党の年來主張してまいりました軍公利拂延期伴つて捻出されましたこの十五億円に対する使途を明確にしておいてもらいたいということを望むものであります。(拍手)  さらにまた、このついでに申し上げますが、政府は本年度軍公利拂延期実行いたしましたが、この延期をさらに明年度、すなわち二十四年度においても継続実施方針であるかどうかということについても、あらためてお伺いをいたしておく次第であります。(拍手)  さらに、冒頭に申し上げました健全財政の成否は、物價の問題と併せて賃金の安定が確保されなければ健全財政の堅持は絶対にでき得ないことは言うまでもないのであります。そこで政府は、このたび全面的な物價改訂を行おうといたしておるのでありますが、殊に財政支出における價格差補給金の五百十五億円の問題にからみまして、一言お尋ねをいたしておきたいのであります。私が仄聞するところによりますと、今度の予算において、物價改訂に先だつて現行物價実行いたしまする場合におきましては、おそらく物價價格差補給金は千三百億円ほど必要であるということを承つておるのであります。この千三百億円を必要とするところの、いわゆる重要物資價格差補給金を、財政の都合によりまして五百十五億に減縮をいたしましたことは、諸君も御承知通りであります。しからば、千三百億円を必要とする價格差補給金をば五百十五億円に圧縮いたしますと、その差額およそ八百億円は、重要基礎資材物價改訂によるか、さもなければ赤字金融によるということは、言うまでもないのであります。  そこで、お尋ねいたしたいのは、その八百億円に上るところの、いわゆる價格差というものを、政府財政資金をもつて、すなわち五百十五億円で補給いたしますならば、重要企業に対する赤字が絶滅できるという確信をもたれておるかどうかという問題であります。同時にまた、もし八百億円に上るいわゆる赤字を、政府財政資金である五百十五億で絶滅ができないということになりますと、赤字金融に一面は求めなければならないことは必然になるのであります。この問題に対して、政府はいかなる方針をもつてこの物價安定をやつていこうとしておるか、それについてお伺いを申し上げる次第であります。  次に、國民所得の問題でございます。政府は昨日の演説におきましても、國民所得昭和二十三年度において一兆九千億円と概算すると言われておるのであります。この一兆九千億円に対しましては、私はきわめて疑問な点があるのであります。これについて大藏大臣所見を私は承りたいと思うのでございます。  昭和十二年度國民所得は百四十九億円であつたと記憶いたしておるのであります。昭和十二年度國民所得が百四十九億円であるといたしました場合に、その昭和十二年度國民生産力は、今日の生産力と比較いたしまして、およそ一〇〇%であるのであります。しかるに、これに反しまして今日の鉱工業生産力は、合わせてわずかに四三%にすぎないのであります。この関係から今日の四三%の生産力を今日の貨幣價値逆算をいたしますと、およそ九千億ないし一兆億に足りないという逆算が出てまいるのであります。そこで、大藏省が表明いたしますように、國民所得が一兆九千億ありといたしますならば、ただいまの根拠から申し上げますと、正常なる生産に從い、正常なる営業に從い、正常なる職務に從つて、正常に得るところの、いわゆる実質國民所得が、わずかに一兆億であるといたしますならば、差引九千億というものは、すなわちこれは不正なるところの利得であり、所得であるということの想像が容易につくのであります。  私は、この問題に関連いたしまして、さらにお尋ねいたしたいのでありますが、しからば政府は、この九千億に上るところのいわゆる不正利得不当利得者に対して徹底的な課税追求のメスを揮わなければ、日本昭和二十三年度歳入歳出確保することは容易でないということも言い得るのであります。そこで私は、政府に対して申し上げたいのでありますが、この九千億になんなんとするところの不当所得不正所得に対して、何らか特別の税法を設定して、これが徹底的課税の方策を立てなければ、断じてこのやみ所得の公正な摘発を求めることは容易でないということを私は考えますので、  この機会に、政府はその問題に対して具体的な何らか新しい構想をもつておるかということについてお伺いを申し上げる次第であります。  さらに私は、賃金の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。政府は今年度予算におきまして、新たに三千七百円の賃金ベースを設定することに相なつたようであります。この三千七百円の賃金ースで、はたして労働者生活最低維持せられるかどううかということは、ここに論議する必要がないことと存じ上げますが、一應私見をもつていたしますると、今日の三千七百円ベースというものが、戰争前におけるところのいわゆる紙幣價値実効價格に照らしまして、どのような賃金収入になるかということについに、一應調査をいたしてみたのであります。  この問題につきましては、おそらく皆さん御承知でありましようが、本年一月の初頭において、日本銀行調査と称して発表されたものがあるのであります。この日本銀行調査によりますと、今日の一万円は、戰前におけるところの実効價格の基準によりますと、わずかに九十七円にしか値しておらないということが報道されたのであります。このことが、かりに正確なものであるとした場合に、今日の物價改訂伴つて一万円の紙幣價値がどの程度價値になるかということを逆算いたしますと、わずかに七十五円内外にすぎないということに相なるのであります。  そこで、この実効價格眞実であるといたしますならば、新しき三千七百円の賃金設定というもの、この三千七百円自体というものは、いかなる実効價格に相当するかと申し上げますと、わずかに二十七円五十銭ということに相なるのでございます。戰争前労働者平均賃金は、およそ四十円ないし四十五円であつたと私は記憶いたしておるのであります。この四十円ないし四十五円によつて辛うじて生活維持し、明日の再生産活動に支障なきまでの賃金を得ておつたのでありますが、これに比較いたしまして、三千七百円という名目賃金は上りましも、実効價格においては、ただいま申し上げましたように、わずかに二十七円五十銭にしか当らぬので、このような実質的の收入において、はたして政府官公廳におけるところの労働者職員諸君最低生活保障ができるという御確信をもたれておるかどうかということを、まず第一にお伺いをいたしたいのでございます。  次に、政府は昨今賃金の安定を目標として賃金統制を考えられておるようでありますが、私をして言わしむるならば賃金統制よりも、賃金の安定を確保するには、まず第一の條件とするところは生活確保でなければならないのであります。しかるに政府は、從來も多少なりとも労働者諸君に対しましては傾斜的の配給を行つておりますが、ただいま申し上げましたように、実効價格においては、三千七百円がわずかに戰前の二十七円五〇銭だといたしますならば、その賃金をもつて実質的の生活維持確保せしむるためには、政府は強力な対策をもつてこの実質賃金の充実に当らなければ、断じて生産活動が不可能になるのではないかということを、私は心配いたしておるのであります。そこで政府は、さらにこの三千七百円の新しい賃金ースの設定を機会として、從來に増して食糧の重点的配給、あるいは衣料の重点的配給—さらにこの機会にお伺い申し上げておきたいのは政府外資導入によりまして、主として原料資材等重要基礎資材輸入を期待しておるのでありましようが、その重要資材輸入と相まつて消費資材、すなわち労働者諸君にとつて生活必需品であるところの消費資材をも、その外資導入によつて輸入を懇請するという考えはもたないかどうか、これについて私はお伺いをいたしておきたいのでございます。このようなことをいたさない限り、先ほども申し上げましたごとく、三千七百円の名目賃金では、断じて日本労働者諸君最低生活維持が困難であるということが言えるのでございまして、これらに対する最も明確にして具体的な、いわゆる実質賃金充実に関するところの政府対策を承つておきたいのでございます。  次にお伺いいたしたいことは、一般國民生活維持向上についてであります。農林当局は、最近承るところによりますと、一般國民生活、殊に勤労大衆生活維持と向上とを目標といたしまして、從來の主食二合五勺を、さらに何らかの手配によつて増配をすると計画をたびたび漏らしておられるのであります。さらにまたその機会において、一般國民生活必需品であるところの、いわゆる生鮮食料品、あるいは調味料、あるいは燃料等増配計画されておると傳えられおるのでありますが、これらに対して農林当局は、はたしてそのような増配の具体的な計画をもつておられるかどうかということについてお尋ねを申し上げておく次第であります。  次にお尋ね申し上げたいのは、ただいま申し上げましたように、われわれ國民に最も重大なる影響のあるものは、るる申し上げました物價賃金の問題であります。この物價賃金の安定がもし崩れるといたしますならば、政府が考えておりますところの五箇年経済復興計画に破綻があり、同時にまた二十三年度予算の上にも重大な破綻的の要素もち來すということをもわれわれは懸念するのでありますが、これらの問題につきまして、政府当局はどような見透しと、どのような確信をもたれまして、この健全財政を貫こうとされておるかということについて、具体的の説明をわれわれに表示されたいと思うのでございます。  次にお尋ねを申し上げますことは、運賃の問題でございます。御承知のごとく政府は來るべき予算実施とともに、旅客運賃において、三・五倍、貨物においても三・五倍の値上げを実施せんという計画であるようでございます。この貨物運賃旅客運賃の倍率を同率に三・五倍といたしました根拠については、私ども、いまもつて明確—納得のできない点が多々ございますのでまず第一に、政府がいかなる見解により、いかなる根拠によりまして、貨物旅客ともにそれぞれ算術的な数字をもつた三・五倍にいたしたかということについての、根拠ある、具体的な説明を私どもは求めておきたいのであります。(拍手)さらにまた政府は、一昨日運賃の問題に対する法律案をこの國会に提出されているのであります。その提出されました運賃法案内容を一瞥いたしましたときに、驚くべき事柄が挿入されてあることを私は本日実は発見したのであります。その内容はと申し上げますならば、すなわち運輸大臣の定めるところによつて來一箇月ないし三箇月にわたるところの定期運賃は百分の五十まで上げてもよろしい。さらにまた、運輸大臣の必要と認めたときには、六箇月の定期は現行の百分の四十まで上げるという、いわゆる権限委讓の法文が中に明記されてあるのであります。私どもは、少くとも國民生活に至大な、関係のある運賃の問題は、財政法第三條の精神を説くまでもなく、われわれ國民が納得した点において、その上に立つて運賃の改正をすることが民主的な政治であると言わなければならないのでありまするにもかかわらず、この法案の中ほどに、ただいま申し上げました運輸大臣独占権限委讓案が挿入されているのであります。このような考え方は、私をもつて言わしむるならば財政法第三條の精神にも違反するのではないかと思うのでありまするが、その点について運輸大臣の明確なる御所見を承つておきたいのであります。(拍手)  さらに申し上げたいことは、地方財政確立事柄でございます。地方財政確立については、昨今ようやく全國府縣の問題となりまして、地方財政の窮乏が日々に窮迫を告げてまいつていることは、言うまでもないのであります。その点に鑑みまして、政府は本年度予算において数百億のいわゆる地方補給金を計上することになりました。しかしながら、これをもつていたしましても、地方財政確立は未だしでありますことは、言うまでもないのであります。そこで地方財政におきまして、新しく事業税を設定し、あるいはその他の税を設定いたしまして、辛うじて地方財政の民主的な自律性確立しようという目標であるようでございますが、かようなことをいたしましてもなおかつ地方財政赤字は免れないというような実情にあるのであります。私は、いかに中央財政が健全でありましても、地方財政が不健全なままに残されているようでありましては、断じて日本全体の健全財政とは言えないことは言うまでもないと思うのでありますが、この問題に対して、政府は今後の地方自治地方財政確立に対していかなる対策を具体的にお持ちであるかということについて、一言お答えを願つておきたいのであります。  さらにまた、税制の事柄が出ましたから一言触れておきたいのでありますが、政府は今度の新予算において、從來勤労所得税並びに一般所得税、さらに法人税等の大幅な軽減を実施することに相なりました。私見をもつていたしますならば、この程度軽減で、はたしてきのう大藏大臣がこの席で申されました通りに、この勤労所得税軽減によつて勤労者最低生活確保速射攻撃になるかどうかということは、きわめて疑問であらうと私は考えているのであります。そこで、大藏大臣にお伺いいたしておきたいことは、この程度勤労所得税軽減によつて、あるいはまた一般所得税軽減によつて、一般國民所得者生活維持保障されるであろうと考えているかどうか、同時にまた勤労所得者最低生活保障に十分なる役立ちをもつていると考えているかどうかということについて、政府当局の明快な、具体的な所見を承つておきたいのであります。  最後に私は、結論といたしまして総理大臣お尋ねを申し上げたいのでございます。前段るる申し上げましたように、日本経済は、政府の言うがごとく、はたして生存経済から生活経済にはいつたかどうか、はたして日本経済危機段階を脱出いたしまして、安定経済にはいつたかどうかについては、見る人によつてその所見を異にするであろうと私は思うのであります。ここにおいて、一應政府の言うがごとく、生存経済から生活経済日本経済がはいつたとし、日本経済復興がその緒について、一應その危機を脱出いたしまして、安定経済へはいつたと仮定いたしまして、その仮定に立つて政府にお伺いをいたすのでありますから、その旨をあらかじめ御了承願いたいのであります。言うまでもなく、日本経済復興はまずインフレーシヨン抑止にほかならないのであります。このインフレーシヨンを克服できない限りは、いかに政府に具体的なインフレ経済復興対策がございましても、それはたちまちにして水泡に帰すであらうことは、これまた言うまでもない事柄であらうと確信いたす次第であります。そこで、インフレーシヨン抑止を根底といたしますがために、政府当局がしばしば言明された通りに、健全財政確立、その健全財政確立を、実行するときには、何はともあれ第一條件として、先ほど來申し上げましたように、賃金物價との均衡賃金物價との安定を確保いたさなければ、健全財政実行できない、同時に日本のインフレは制止できないということは、言うまでもないのであります。  ここで私は考えるのでございまするが、前片山内閣におきましては、日本の惡性インフレを抑止し、日本國民生活の安定を期するために、物價と價金の均衡を保ちながら、日本経済復興を最大の目標としつつ、まず第一に発表いたしましたのは第一次食糧緊急対策、さらに第二次、第三次の食糧緊急対策というものを立てたのであります。さらに國民全体の総合的な見地に立つて経済復興対策といたしまして八大緊急対策、殊に流通秩序の確立に対するところの要綱を打立てまして、日本國民の向かうべきところを示したのであります。このような事柄を片山内閣は実施いたしました。その功罪はいずれといたしましても、日本経済復興予算健全化の確保を目指しま(拍手)して、きわめて熱意のある、具体的、積極的な方策を打立てることに努力を傾注いたしてまいつたということは、諸君も御承知通りであります。  しかるに、今回昭和二十三年度予算を通観いたしましたときに、これらの熱意と、これらの積極的な施策が欠けておるという憾みをわれわれは痛感いたさざるを得ない次第であるのであります。この機会において、政府の言うがごとく、日本國民の生存が生活段階にはいり、日本経済復興が緒についてようやく安定感の時代にはいつたという確信をもたれておりまするならば、その安定に向かつて國民が総力をあげて邁進する、一種の國民的な宣言を発表いたしまして、政府國民とともに経済危機突破の大道に邁進するに足るだけの政府に熱意あり、しかも積極的な、しかも國民の納得するに足るだけの熱意と積極的な計画性をもつた宣言をこの際発表する必要があると私は確信を申し上げるのでおりますが、これに対して芦田総理大臣の忌憚なき御所見をば承つて、以上で私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔國務大臣芦田均君登壇〕
  9. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 川島君の質問にお答えいたします。  最近の情報によりますと、アメリカ下院の歳出委員会において、対日援助、殊に日本再建援助に関する経費一億五千万ドルを削除したという事実を指摘されまして、この削除はわが國経済再建に多大の影響ある問題であるが、それについて政府はいかように考えるかというお尋ねであります。現在アメリカ議会に提案されております対日援助資金のうちで、ただいま御指摘の一億五千万ドルが削除せられたことは、われわれ日本國民としてまことに遺憾に思う点であります。詳細の内容については、政府においてもまだ正確にこれを知ることは困難でありますが、新聞の報道によれば、今回下院委員会においては、対外援助費を全面的に削除する方針を立てて、対ヨーロッパ援助においては五億五千万ドルを削除し、また中華民國に対する援助費においては六千五百万ドルを削除した。それと調子を合わせて、対日再建援助費の一億五千万ドルを削除したと報ぜられておるようであります。なお新聞でごらんのように、アメリカ陸軍省の対日方針從來通り実行せられるのであるから、もし経費が不足を告げた場合は、今年末において、あらためて追加予算その他の方法をもつてこれを補填することを考慮中であるというごときニュースも到着いたしておるのであります。いずれにいたしましても、今回の一億五千万ドルの予算削除は、わが國の受くべき今年度中における物資、クレジットの援助に相当の影響を與えるものでありまして、われわれの希望を率直に述べるならば、今後アメリカの議会において、あるいはアメリカ政府において、なんらかこれに代るべき方策が採用せられんことを願望する次第であります。しかしながら、今日の事態において、これらの問題はアメリカ國民の好意ある輿論の支援にまつほかはない問題であります。今後わが國経済再建の施策においては、その不足を補うために、できるだけの努力をもつて、われわれ國民の努力と熱意によつて、これを補填していきたいと考えておる次第であります。なお、川島君がお尋ねになりました第二の点、すなわち昭和二十三年度が一應経済危機を脱して長期建設にさしかかるべき重要な年であるとするならば、この際政府は大宣言を発して、その熱と努力を國民に告ぐべきではないかという御意見でありました。むろん川島君のご意見は、至極もつともな点を含んでいると思います。しかしながら、現在政府は組閣以來、あるいは施政演説において、あるいは長期経済計画の発表において、その他時々刻々の施策を國民に発表して、心からなる協力を求めてまいつたのでありまして、言葉の言いまわしは、片山内閣時代とあるいは同一でなかつたかもしれない。しかしながら、廣く國民の協力によつてわが國の経済危機を突破せんとするその熱意においては、なんら異なるところはないと信じております。私から申すまでもなく、インフレの克服、経済再建の事業は、一にわれわれ國民が、いかにこの危機を直観し、いかにその職場における責任を自覚して、みずからの力によつてこの危機を乘り越えんとするかという決心にかかつておると信じておるのであります。そういう意味において、今後政府は、時々、その必要に應じて政府の施策を率直に國民に訴え、その協力を求めることを念頭いたしておる次第であります。(拍手)     〔國務大臣北村徳太郎君登壇)
  10. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郡君) 川島君の御質問中、私に関係ございます点は、第一に終戰処理費の件であります。第二は軍公利拂のことについて二点、第三点は價格差補給金に関する点、次に國民所得の問題と、最後に勤労所得税等の軽減に関する問題であつたと思います。以下、順次お答え申し上げたいと存じます。第一の終戰処理費の問題でございますが、これは前年度におきましては、予算編成の当初に、住宅、宿舎その他の工事あるいは労務需要等の関係が、すなわち計画内容がはなはだ明確であり得なかつた事情があつたのであります。從つて年度中に巨額の追加予算を計上しなければならなくなつたのでございますけれども、本年度におきましては、関係方面ときわめて緊密なる連絡をとつており、計画の大要も大体推定し得ておりますので、最近の支出実績、今後の物價、給與の値上がり等諸条件をも十分に勘案險討いたしまして、所要経費を積算することとした次第であります。本予算実行にあたりましても、これの裏づけとなるべき労務資材の計画的な調達・配分などにつきましても、関孫諸機関の協力によりまして十分努力するつもりでございますから、計画事業量の著しい変更等がない限りは、本年度大綱としてお示し申し上げました予算をもつて大体賄えるということを信じておる次第であります。  第二の点は、軍公利拂延期によつて生じた余裕の金を何に使うかというような意味のご質問であつたと思いますが、これは大体災害対策費として、七億円、文教に関する費用、すなわち六・三制実施に伴う校舎建築等に五億円、生活困窮者救済費三億円、かように割当てておるのでございます。もう少し詳しく申し上げますと、樺太引揚者のうち無縁故者で住宅のないような人々のために一億七千七百万円を当てる。兒童福祉法等に関する施設のために七千三百万円、傳染病院等の建設に一千万円、これがただいま申しました生活困窮者救済費としての三億円の内訳でございます。  次に、軍公利拂の前途についての御質問であつたと思うのでありますが、今回の特別措置につきましては、これは閣議決定によりまして政府で声明いたしました通りに、本年七月一日から向こう一箇年に支拂期の到來するものに限るのでございまして、さらにこれを延長するというような措置は、ただいま考えておりません。  次は、價格差補給金についてであつたと思うのでありますが、これは今の物價の状態のままで据置くといたしますと、年間約一千二百億円の財政負相となるわけであります。この問題は、國の財政力、また國民経済、すなわち物價に対應すべき経済力の問題、物價政策と財政力との調和点をどこに置くかという、きわめて重大な問題でございますが、今の状態で、重要産業の基礎を不健全な状態のままで放置するというようなことに相なりますと、これはいろいろの意味において重大な結果をもたらしますので、今回これを補正する。補正するにつきましては、千二百億全部出して、財政負担において物價政策を全部背負いこむというような財政力がございませんので、ここに先ほど御指摘がございましたような数字において、きわめて妥当とするところに物價政策を置こうといたしたのであります。今回の物價改訂に伴いまして、本年度中に約四百四十億円の價格調整費を支出することを必要としておるのでありますが、そのほかに前からの千七十億、今回これを処理しなければならぬものを合わせまして、五百十五億をもつて價格調整費に充てておる。かような考えでございます。從いまして、このことによつて赤字金融の必要は大体生じないと見透しをつけまして、かように取計らつた次第でございます。  次に國民所得についてでございますが、これは國民所得については、御承知通りいろいろ、の考え方があると思うのであります。その根拠はどこにあるかというようなお尋ねであつたと思うのでありますが、私どものいたしました計算では、勤労所得を六千八百十億円、個人事業所得を、一兆一千五百三十億、配当利子所得二百七十億、会社留保事業所得を四百五十億、かように計算いたしたのであります。勤労所得につきましては、昭和二十二年度三千七百六十三億に対し、人口の上昇率五%と、賃金の上昇率七二%を見込んで推計いたしました。個人事業所得につきましては、これを農林業その他事業、職業等にわかちまして農林業につきましては、前年度二千七百六十五億に対し、生産増加率五%、実効物價上昇率四八%を見込んで推計いたしまして、四千二百九十億円と算定いたしました。その他事業及び職業につきましては、前年度四千六百七十一億に対し、生産増加率一三%、実効物價上昇率四八%を見込みまして、これに他の所得との均衡をはかるため調整を施し、七千二百四十億円と算定をいたしました。会社留保所得につきましては、前年度二百九十億円に対しまして、増加率一三%と、実効物價上昇率四八%とを見込みましてこれに配当、重役所得等を考慮して、四百五十億円を算定いたした次第であります。  なお課税所得の総額は、これは御承知通り基礎控除、あるいはその他の控除の関係もございますので、理論的には國民所得と一致しないはずのものである。その計算の実際においても、確率の課税実績を基礎といたしておりますので、それに物價の変動、生産の推移等を勘案いたしまして、課税上捕捉の得る限りの所得を計算する関係上、國民所得の数字との間においては当然開きが起つてくるわけであります。しかも、その課税上の所得と、それから一般國民所得として計算するものとの差額、それだけがやみ所得であるというふうには考えにくい点があるのであります。ただしかしながら、現に國民の間にやみ所得があるという事実は、これはおおうべからざる事実でございますから、私どもといたしましては、やみ所得の捕捉には最善の努力をする。具体的にはまだがりの名称でございますけれども、一種の査察官制度というようなものを設けまして、これは徴税官吏、税務官吏の最も熟練な者を簡拔いたしまして、全國に多数配置いたしまして、やみ追求專門にやる。少し語弊がありますけれども、これは非常に慣れた人を專門にこれに当らせる。いやしくもやみにして脱税行為はやらせないというように、どこまでも追求するというような案をただいま立てておるのでございます。  それから最後に、所得税のことについてお話がございましたが、勤労所得税軽減は、大体三分の二を減じまて、残りは三分の一になるわけであります。從つて、これはかなり大幅の軽減であると私どもは見ておるのであります。たとえば具体的に申し上げますと、月収六千円、家族三人の家庭におきまして、從來は月収六千円の中、二四%が所得税であつた。千四百七十一円を課税されておりた。今回の改正によりますと二百七十九円になりまして、四・六%—二・四%が四・六%になる。五分の一以下に下る。こういうふうなことに相なつているのでございます。  以上、概要を御答弁申し上げます。     〔國務大臣加藤勘十君登壇〕
  11. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいま尋ねになりました点において、私の所管にかかりまする賃金安定策に対する私の所信をお答え申し上げます。川島君の御意見によりますれば、三千七百円ペースは、前年に比較すると、インフレの還元計算によれば、わずか二十七円五十銭にしかならない、この程度のもので、はたして賃金安定策は講じちれるか、こういうようなことにあつたと存じますが、私は、三千七百円ぺースの計算が、一通りわれわれとしては数字的な根拠に基きまして、一應の合理性、妥当性をもつているとは存じます。もちろん、政府が所期する物價改訂の率があくまでも堅持されるということを前提とするものでありまして、もし、政府の所期する物價改訂の率がそれ以上に上まわるということになれば、おのずからこの計算は破綻を生ぜざるを得ない。從つて政府としましては、この一應の水準を維持するためには、物價改訂による上昇率を政府の所期する数字の範囲が止め得るように極力努力をするということが大きな前提になつておるということを、まず御了承おきを願いたいと存じます。  それから賃金安定の問題でありまするが、私の考えるところによりますれば、今日のごとく、インフレーシヨンの高進が止めどなく上昇を続けておりまする段階において、今日この程度のものをもつて安定をはかるということは、ほとんど不可能に近い。もし賃金安定策が講じられようとするならば、当然実質上に給與を裏づけるところの物資が準備されなければならない。一片の計画だけではいけない。具体的に物資が十分準備されたときに初めて考慮さるべき問題であるが、今日の段階においては、私は、このままただちに賃金安定策が考慮されるという段階ではない、このように考えております。(拍手)     〔國務大臣岡田勢一君登壇〕
  12. 岡田勢一

    國務大臣(岡田勢一君) 川島君の御質問のうち、私の所管事項につきましてお答え申し上げます。  運賃を旅客、貨物ともに三・五倍に引上げた根拠いかんという御質問でございますが、御承知通り、ただいまの鉄道運賃物價並びに賃金に大きく影響いたしますことは申し上げるまでもないのでございます。ただいまの日本経済の現状から見まして物價並びに賃金改訂しなければならぬ段階におきまして、貨物運賃物價に影響いたします観点から、総合物價政策の見地から檢討を加えまして、まず貨物運賃の値上率を決定することになるのでございますが、一方國有鉄道といえども、鉄道の経営は企業でございますので、独立採算を全然無視するということは、これはいたしてはいけないことに相なりますので、経営採算に接近せしめるごとき方向をもとらなければならぬと考えるのでございます。しかしながら、ただいまのアブノーマルな状態におきましては、ただ独立採算制にのみとらわれて運賃の値上を作案ずるということは不適当であるという見地に立ちまして、いろいろの角度から險討を加えまして、貨物旅客ともに三・五倍に引上げますことが、ただいまの状態におきまして適当である、こういう根拠からこれを作案いたした次第であります。  ももろん、旅客運賃のこの引上げにつきましては、これは國民大衆生活に直接多大なる御負担の増加をかけることになります点は、私らといたしましては、まことに心苦しい次第ではありますが、しかし、これをただいまの物價の倍数に比較いたしますと、かりに物價の倍数が昭和十一年ごろの百十倍程度と相なつたといたしますれば、旅客運賃の倍数は約八十二、三倍に上ることになるのでありまして、その間におきまして、なお改訂物價からは相当に低い水準に相なつております。もちろん、鉄道を利用せられます多数の方々の鉄道運賃に対する御負担を軽減はいたしたいのでありますが、この鉄道運賃の引上げをもう少し緩和することになりますと、よつて起りますところの赤字は、鉄道を利用せられる國民の方以外の一般的の國民の方に、租税等の形によりまして御負担を願わなければならぬという問題も起るのでございます。そういう見地から、私らは、ここに三・五倍の引上げが最も適当であり、やむを得ないことであるという考え方から、苦心の結果作案いたしました次第でございます。  次に定期券の割引率の問題でございますが、御指摘になりましたところは、法文に「普通旅客運賃の百分の五十に相当する額をこえることができない。」と書いております。これは法文上の最高の線だけを明示いたした次第でありまして、定期券の割引につきましては、通勤・通学の種別、通用期間、キロ程などによりまして、それぞれ割引率に差異がございまして、これによつて算定せられるのでございますが、今回の運賃法案によりましては、約三・五倍引上げるということを控除いたして御審議を願うことになつておるのでございます。実際的の算定にあたりましては、端数の整理などによりまして若干の不等差ができてくることかとは存ずるのでありますが、現行定期割引の賃率から三・五倍に引上げることは絶対に間違いなのでありまして、それをよけいに上げるということは絶対いたさないことを言明申し上げる次第であります。  以上、御答え申し上げます。     〔國務大臣永江一夫君登壇〕
  13. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) 川島君にお答えいたします。川島君の御質問にありましたように、食糧につきましては、主食、副食物等を増配いたしまして、実質賃金の裏づけ並びに國民生活の安定の基礎を確立いたしたいと考えておるのでありますが、その方針についての政府の数字的根拠につきまして一言申し上げてみたいと思います。  まず第一に、本年の米穀年度におきまする主食の配給につきましては、先般も森君からのお尋ねに私はお答えをしたのでありますが、あらためてのお尋ねでありますから、一言ここで、重ねて数字的な見地から私どもの見透しを申し上げてみたいと思います。  すなわち、六月以降におきまする大体の國内の食糧供給の見込高は、総額が一千百三十一万七千石であります。この内容は、六月一日現在政府が手持ちでもつております主食が三百九十九万三千石であります。さらに新しい麦の見込みは四百十四万七千石であります。馬鈴薯の見込みが八十八万八千石であります。早掘甘藷の見込みが九十五万五千石であります。新米は、早場米の奨励等によりまして、大体百二十九万七千石を見込んでおりましてその他三万七千石を加えまして、大体千百三十一万七千石を供給見込みとして、十月までの本米穀年度の収穫の基礎といたしておりますが、これに対しまして大体の需要高は二千百六十二万五千石であります。差引不足額が一千三十万八千石でありますが、この不足額につきましては、しばしば申し上げておりますように、六月以降におきましては、凍結米の放出許可予定が大体三百四十八万八千石ございます。從つて差引不足額から凍結米の放出許可の予定数量を差引きますと、結局のところ、私どもが連合軍の食糧放出に依存をいたしております数量が六百八十二万石であります。この連合軍からの食糧放出につきましては、政府は極力関係方面と折衝いたしまして大体十月までにおきましては、私がこれまたしばしば申し上げておるように、欠配あるいは遅配の起きないような処置をとつておるのでありますが、この際、この議場を通じまして一言お断りを申し上げておきたいことは、砂糖が主食に換算される点であります。これはしばしば諸君も、この点について各方面からいろいろ御意見をお聞きになつておることと思いますが、砂糖は、今申しました輸入食糧の放出量の中に加わつておるのでありますから、どうしても十月までは、ある数量は主食の中に、これをやむなく加えておるという点を、あしからず御了承願つておきたいと思います。  なお十一月以降の新米穀年度におきまする増配につきましてはこれまた前にも申し上げましたように、政府といたしましては、極力事前割当並びに一割増産運動に全力をあげておるのでありまして、さいわい、これの裏づけになりますところの肥料につきましても、数日前に政府が公表いたしましたように硫安のごときは、先月は十万トンを産しまして、昭和十六年以來、戰前以來の最高の記録を示したのでありますから、これら肥料、農機具その他農業についての生産資材等の、増産を行いまするこれらの裏づけによりまして、私どもは一割増産にかなり大きな期待をかけるものであります。從つて、この國内の全農民諸君の御協力によります一割増産を基盤といたしまして、さらにアメリカの予算年度でありまする七月以降のアメリカよりの輸入食糧の増加に対て極力懇請をいたまして、私どもは、さらにでき得べくんば、十一月の新米穀年度以降は二合八勺の増配計画を実施に移したいという希望をもつておるのであります。なお労務加配米につきましても、私どもは、今日の非常に困難なる食糧事情でありますが、なお実質賃金の裏づけを行いますために、労務加配米につきましても、七月以降にこれをさらに増加するという一應の計画を立てたのでありますが、残念ながら七月からの労務加配米の増加ということは困難な事情になりましたけれども、なお私どもは望みを捨てずして、八月以降においても労務加配米のさらに増量配給を目下計画中であるということを申し上げておきます。(拍手)     〔國務大臣野溝勝君登壇〕
  14. 野溝勝

    國務大臣(野溝勝君) 川島議員にお答えいたします。川島議員の仰せになりました通り地方財政はまことに貧弱で、まつたくお話の通り貧困でございます。特に地方財政におきましては、中央予算の約半分、約二千億を本年度においては計上しなければならぬ状態になつておるのでざいます。この二千億のうち、特に新計上費といたしまして、新しい施設といたしましては、約五百億近くの費用を必要としておるのでございます。この費用充実のためにも、あくまでも財政の調整をしなければならぬのでございますが、未だ中央地方財政、税制の根本的改革かできておりません。そこで、一應間に合わせに、今回は中央地方との調整をはかることにいたしまして、中央からはこの調整補填金と申しましよか、分與税といたしまして約三百八十億、なお税の地方委譲として入場税が委譲されたのでありりまして、この額八十億、合わせまして四百六十億円くらいが地方に分與されることになるのでございます。しかし、これだけでは、とうてい御指摘の通り地方財政の健全性をはかることはできません。地方財政の健全化をはかるならば、あくまでも税制の根本的改革をしなければこの結論を得ることにならないので、私どもは、理想といたしましては一日も早く税制の根本的改革をしたいのでありますが、とりあえず近い機会に成案を得まして、一應税法並びに財政法に関する法案を本國会に提出して御審議を得たい、かように思つておる次第でございます。(拍手)     〔政府委員西村榮一君登壇〕
  15. 西村榮一

    政府委員(西村榮一君) 川島金次君の私に対する來年度生産計画についての御質問がございましたので、簡單にお答え申し上げたいと存じます。  大体政府におきまして、は、昭和二十七年度をもつて日本の基準年度の一二五%に達するために、一應の目標を立てておるのでありまするが、とりあえず昭和二十三年度におきましては、石炭三千六百万トン、米六千百万石を中心といたしまして、鉱工業全体といたしましては一四%の増加を目標にいたしております。おもなる点を御報告申し上げまするならば、鉄は五〇%、硫安は三〇%綿糸は八四%の増加を目標にいたしまして、努力いたしておるのであります。この目標は、現下の諸情勢を考えますると、なかなかなまやさしいものではございませんが、希くは國民各層の御協力を得まして、この水準まで到達いたしまして、一應の中間安定の線までもつていきたいと思うのであります。その意味におきまして、この機会國民各層の各位の御協力を懇請するとともに、本院の各位の御協力を懇請いたしまして、私の答弁を終りたいと存じます。(拍手
  16. 川島金次

    川島金次君 自席から簡單に——私の質問に対する関係各大臣の答弁に対しては、まだ残つている点が二、三ありますが時間がございませんので、あらためての機会に、委員会等で質問をいたします。ただ最後に申し上げるのは、鉄道運賃の値上げに関する運輸大臣の答弁には、未だ納得した点を見出すことができないのであります。從つて、この問題につきましては、いずれ同僚諸君とともに、委員会において重ねて質問を申し上げたいということを留保いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)      ————◇—————
  17. 山下榮二

    ○山下榮二君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、樋貝詮三君提出、公職資格訴願審査委員会の審査に関する不当処置に対する緊急質問を許可されんことを望みます。
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なしと呼ぶ者あり〕
  19. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  公職資格訴願審査委員会の審査に関する不当処置に対する緊急質問を許可いたします。樋貝詮三君。     〔樋貝詮三君登壇〕
  20. 樋貝詮三

    ○樋貝詮三君 私は、民主自由党と申しまするよりは、むしろ非常に疑惑に鎖されておりますところの國民に代りまして、政府に対してお伺いをいたしてみたいと思うのであります。明後日は月曜日で、おそらくは官報その他の措置をおとりになることであらうと思いますから、緊急に政府に対して質問をなしまして、從つてそれらの措置につきまして相当の御考慮を煩わしたいと考えておるような次第であります。  公職資格訴願委員会は、さきに本年の五月十日をもつて廃止いたされたのであります。同じく同月二十二日におきましては、政府は追放解除者といたしまして、百二十九人の氏名を決定発表いたしておるのであります。このときに、政府は声明書を発しまして、訴願委員会の調査を経て決定される追放解除はこれをもつて終了した、こういうように申しておりまして、あたかも百二十九名の追放解除の決定が訴願委員会によつてなされたるがごとき感じを國民に抱かしておるのでありますが、事実百二十九人の決定をいたしたものは、はたして訴願委員会でありましようか。私の傳え聞いておるところによりますと、総理大臣に属しますところの一、二の官僚と、かつて訴願委員会の事務局長でありましたところのその二人との合作であつたのであります。案に驚くべきことであると考えております。  訴願委員会は、御承知のごとく昨年三月において設置せられ、本年の五月十日に廃止せれたのでありますが、政府発表によりますと、事件の受理件数が千七十件であり、その中で追放解除と決定いたしましたものは、今回の分を除いて十四件でありました。この委員会は、設置以來黙々として審査を続けておりましたがそれは審査の結果をまとめて発表しようというような趣旨であつたようにうかがわれるのであります。しかるに、本年の四月にはいりまして、政府は五月十日には委員会を廃止するのだということを突然決定いたしたのであります。これがために、急に五月十日をもつて最終決定をなすのであるといたしまして、約二百五十名の追放解除を決定したということであり、二百五十名かのうち五十人というものは、当初から追放にすべきか否かかが懸案と、なつたものでありまして從つて約二百名がまず解除と決して、その余の五十名は、これとのつり合よりいたしまして、まうやく滑りこみ的に持ちとんだというような、辛くも追放解除に相なりましたような次第であります。そして同委員会はその決定をいたしまして、すなわち二百五十余名の追放解除の決定をいたいしましてただちに散会をいたしたものであります。すなわち、同日において同委員会も解散いたしたようなものであります。  しかるに、その直後になつて、この二百五十人の追放解除、すなわち大量的の追放解除には、著しい杜撰がありことが発見せられまして、その修正をなすの必要を生ずるに至つたのでありますが、そのときにはすでに訴願委員会は消滅いたしておつた後でありまして、從つて、訴願委員会の議にかけてその決議を訂正するの機会をもたなかつたような次第であります。本來からいたしますならば、さらに訴願委員会を復活いたしまして、再議に付するのが当然のことでありまするに、政府はこれをなさず、あるいはこれを奇貨おくべしとなしたのであるかどうか存じませんが、総理大臣の一属僚にすぎないところの官房次長と、当時すでに事務局長ではなくなつたのでありまするが、過去において訴願委員会の事務局長でありました者とをもつて——その資格は私には判断できないので、いかなる資格でありまするか、これを知らないのでありまするが、この両者が事件を処理したのでありまして、委員会が決定いたしました二百五十余名のうち約過半数の、すなわち追放解除者の約半数であります百二十九名——楢橋君ほか全部百二十九名が、これら両人に取上げられまして、追放解除と相なりましたような次第と承つているのであります。そこで私は、政府に対してお聽きしたいことがあります。こういうような、未だ追放事件が最後の解決をいたさないときにあたりまして、用意の整わないうちに、何ゆえにまずもつてこの委員会を廃止いたしたのであるか、これを伺いたい。これは、政府がこの委員会の決定——どさくさまぎれに決定された、その最後の決定をもちまして、いかなる方両にわたりましても欠点なきもの、言いかえれば、これは訂正されることはないと呑んでかかつたのでありましようか。もしそうでないとするならば、この委員会廃止につきましては、初めから事務官をして最終決定はやらせるというような方針でこれを廃止いたされたのであるか。この点は特に伺つてみたいと私は考えているような次第であります。  さらに第二といたしまして、もし委員会において決定いたしましたことが、かりに修正を要するような事情に相なつておりましたならば、そのときにもし訴願委員会が廃止せられておりますならば、何ゆえにその訴願委員会を再び復活して裁決をいたさなかつたのでありまするか。ただいま申し上げました通りに、これは奇貨おくべしとなして、内閣において随意に処置せんがために、この委員会を復活しなかつたのでありまするか。少くとも國民は、かくのごとき深い疑惑をもつているものと私は考えるのであります。  さらにもともと、この委員会に事件の訴願を委託することになりましたということは——事務官をして処理せしむるというようなことは、それは非常に非民主的である、また一面においては、半ば独立性をもつているところの委員会をして処理せしむることが正当であり、少くともそういう感じを國民に與えるから、この委員会をもつてしたのでありまして、この場一、二の事務官をしてこれを処理せしむるということは、決して私は妥当でない、民主的でないと思うのでありまするが、(拍手)実際におきましては、この非民主的きわまる事務官をして処理せしめたような結果でありました。  さらに、二百五十余件の追放解除の数というものは、訴願委員会にとりましては実に多量の決定でありまして、このとき委員会におきましては八百名の追放確定君があり、しかして二百五十余名のこの追放解除を認めたのでありまして、それまで千七十件の受理件数に対して、わずかに十四件のほかには追放解除をしておらない。この委員会にとりましては、実に委員会始まつて以來の大処分数であつたと思うのであります。從つて委員会に対しましては、これが中心的な処置であると言わなければならないのでありますが、これを委員会とは別にいたしまして、一、二の事務官によつて処理せしめたということは、どうしてもうなずけないところであります。もし事務官がこれを処理してよろしいというならば、初めから訴願委員会なぞは置かないでよいものでありまして、何を苦しんで訴願委員会を認め、訴願委員会が一年以上にわたつてこつこつと審査をし、その結論を得ようと努めておつたかであります。簡單に、專制的に、一、二の事務官によつてその処置をなされてよいものでありまするかどうか。しかも委員会を置き、非常にたくさんの人を煩わして、衆議によつてこれをきめるの態度をとりましたことは、決して一、二の者に、專断的に処置さしてよいという理由ではなかつたのであります。  さらに、この委員会におきまして二百五十数名の決定をなしますについては、おのずから、かれこれ権衡を考えておつたということは明らかなことであります。現に五十名の者は、最後の最後の段階までもその線に入らずに、二百名内外の者があらかじめ決定されて、そのうちには、委員会の当初より、すでに委員会がこれを解除しようと考えておつた人々も含まれておりまするし、この五十名のうちには、実に二百名とのつり合いよりいたしまして、わずかに解除と決せられたような、ごく最後の段階において解除せられたひと人も含んでいるのでありまするが、この権衡は、委員会をほかにしては判断のできないものであり、委員会以外の個人をもつて、いずれが権衡を失するかということは判断できない。私人としての判断は御自由でありますけれども、しかしながら、最後の決定は委員会でなければできないものであると考えておりまる。しかも、なおこの最後の決定が、われわれの見るところをもつてすれば、必ずしも公平とは考えられないのであります。百二十九人の、あの追放解除者が発表せられましたときに、少くも大多数の國民は、実に唖然としたであろうと思うのあります。それはすなわち、この権衡上から申しましても、他を宥怒いたしましてこれを、容恕すべかちずというようなものがあるのでありまするが、それがこの中に、逆な形をもつて現われてきているのであるから、從つて、この結果を通覧いたしますると、共産党の諸君の方面には割合寛大のようでありましたけれども、しかしながら在野党方面にわたりましては、非常につらく当つた形跡が客観的に認められるのであります。いかなる事由であるか。政府はこれに対して、偶然なる吻合と言うでありましようが、しかしながら、この客観的事実を單なる吻合と見るということは、はなはだ無理であろうと私は考えるのであります。さらに第三の点をお尋ねいたしたいと思いますが、この追放解除から漏れましたところの人々を、はたして政府はいかに取扱うつもりでありますか。この間の二十三日の新聞を拝見いたしましたところが、この追放解除から漏れた人々を、あたかも追放された人であるかのごとくに掲載せられておつた新聞も多々認めたのでありますが、おそらくこれは、政府方面でそういうふうにお漏らしになつたのであろうと私は考えます。一体訴願せられた者に対しましては、これを認めて追放を解除するとか、あるいはこれを認めずに訴願を棄却するとか、二つに一つの方法、に出るほかはないと思う。しかしながら、この追放解除から漏れました人々というものは、訴願の却下をせられた人々ではないので、五月十日において訴願の委員会が廃止せられました後でありますから、却下ということがあり得ないのは当然でありまするし、さればといつて、訴願委員会に係属いたしておりましたところの事件が取上げられて、これに解決が與えられたものでもないのでありますから、その訴願は一体どこへいつたでありましようか。政府が追放のごとくに申されている—多分そう考えておりましようが、はたしてこの追放のごとくに考えられている根拠はどこにありましようか。これらの人々については、却下もなければ採用もない、委員会自体が忽然として消え去つております。実にこれらの人人も幽霊であらうが、委員会自体も幽霊であるかのように消え去つたのが事実であります。この人々が決して少くない。それにもかかわらず、これを追放せられた人のごとくに取扱うということは、非常に誤つたる処置であろうかと思うのであります。かくのごときは訴願委員会の意思を無視する横暴的な処置でありまして、もしこれを無視いたすならば、明後日、月曜日あたりにはあるいは官報においてこれらを追放者として掲げるような処置をなされるかもしれませんが、もしそういうことをするならば力をもつてこれで天下にどこまでも押していけるというようなお考えをもちますならば、政治はもはや捨てた方がよろしい。東條時代に、権力あつて政治なき時代を現出しておりましたが、東條内閣の再來のような状態に立ち至ると思う。さらにこれをもつて訴願がただいま申したるごとくに係属中であるとも言うことができないのでありましよう。これらの人々に対しては、いかなる処置を政府はおとりになるか。このうちには、委員会が考えて当然に追放解除をなすべきものとしておるものがたくさん含まれておるはずであります。しかして、委員会が見てもつて追放解除はしないのであるとしたような、最後の、段階においてこれに加えたような人が、追放の解除を受けておる事実があるではありませんか。はたしてだれの意思が加わつて、こういうような結果を起したのでありますか。政府からはつきりした御答弁が願いたいと思う。  さらに、第四の点について私はお尋ねしたい。去る五月二十二日の政府の声明発表におきましては、訴願委員会の追放解除はこれをもつて終了したということを御発表になつておるようでありますが、これは文字通りに受けてよろしいのでありまするか、その点を、念を押して承りたいと思う。すなわち、訴願委員会の追放解除をそれもつて終、了するもしないもありません。すでに訴願委員会は五月十日に消えておるのでありますから訴願委員会によるところの解除というものは、二十二日になつていまだ存在しておるはずはないのであります。この声明をなすとなさぬとを問わずに、もはやあり得ないのでありますが、しかし、こういう声明をされておるが、訴願委員会のなすところの解除というものは以後ないという、天は高く地は低しというような、公理できまつておるところを言うだけでありますが、まださらに追放はこれを続行するというお考えでありますか。解除はこれで終了したが、追放はそれ自体御進行になるおつもりでありますか。もし、追放をあとからから基準を定めていたすならば、國民は実に不安にかられまして、いつまでたつても追放の災厄より免れることはないという感じさえももつようになるではないかと思います。日本を軍闘主義方面に追い込んだために、ポツダム宣言の第六項によりまして日本に追放が行われたのでありましようが、しかしながら、ある程度で打切るとか、ある程度で直すとかいうことをせざる限り、いつまでも不安の状態におきますれば、追放を受けた人々は、これによつて自暴自棄になるでありましよう。過日私が接したある追放者のごときも、実に非常に過激なことを申しておりましたが、國をあげて過激にいたしましたならば、治安の責に任じておりますところの法務総裁も、またその責任の一端を背負わなければならないようになるではないかと私は思う。実にこの追放におきましては適正でなければならない。行過ぎでもならず、足りなくても日本改造はできないのでありまして、適正であることを要するのでありますが、これに対しまして、はたして政府はその点に考慮を拂つて、この声明をなされたのでありますか。これも一つ伺いたい。  さらに、委員会外の解除というものを認めるおつもりであるか。委員会によるところの解除は、これから以後は認めないというのでありましたならば、ちようど今回のあの一、二事務官によりまして解除をしたと同様に、爾後また委員会外の解除をお認めになる御趣旨でありまするか。それならば、それでよろしい。承つておきましよう。いけないならば、いけないでもよろしい。この間の処置はきわめて不当なるものであると私は考えるのである。いずれが正しいのであるか。この声明は、実にその文字通りにとつていいのであるか。私は、こういう時の経過、情勢の変轉によりましては、解除をまたさらに試みなければならない段階に達するのではないかと思うのでありまするけれども、それを含んで、そういうことを念頭において、この声明をお出しになつたのであるか。あるいはまた、それさえ一切空に、お考えにならないで、この声明を出されたのであるか。これを承りたい。  さらに第五といたしまして、今後はどういう御方針政府はお進みになるか。すなわち、ポツダム宣言の解釈によりますれば、あれの趣旨から申しますれば、総理大臣が責任をもつてこれを遂行しなければならない。責任をもつてということは、公平にこれを行わねばならぬという趣旨であると考えるのでありまするが、今後において、どういうおつもりでこれを遂行なさるか。総理大臣が責任さえ負えばよろしい、十分だということで、氣ままにその属僚、言いかえれば意のままになる、命令のままに服從するその属僚によつて、これを甲とか乙とかに解決しようとお考えにるつているのであるか。あるいはまた、これについて一定の御方針をもつておるのであるか。これを私は伺いたいと思うこれら追放になりました人々に対して、たとい腹の底におきましては、追放すべからざる人が追放になり、解除すべからざる人が解除を受けましても、その解除せられた人々に対しては別に反感をもつものではないのでありまするけれども、あとに残されました、追放の爼上に載せられて戰々競々として、おる人々に対してすなわちその一生を棒に振つておりまする人々に対しては、多大の同情をももまするし、政府の御意図のほども十分に承つておかなければならぬのでありまするが、以上、私の質問申し上げました事柄に対して、事実がはたしていずれであるかという事実の点も伺いたい。これら五項目の点についても伺いたい。こう私は感じておるのであります。  一般國民におきましては、現にこの委員会が百二十九人を決定したものであるとだまされております。よく人をだます内閣であると私は考えておるが、(拍手)この点におきましても、まただましたようなことになつては、國民に相済まないと思う。これらの点も、現にだまされております。新聞等におきましても、委員会は最終審査をもつて任務を終了したと言つております。事務を監査課にこれから引継ぐということを新聞が書いておりますが、これらも明らかにだまされた証拠であります。各新聞にそういうような趣旨のことを掲げておりますが、これらは今申し上げましたように事実でない。私は事実でないことの方をむしろ望みます。しかし、ここに具体的な人々の名前ももつておりますけれども、その審査の結果が不公平であり、しかして、先ほどからあげましたこれらの事実が相当の確実さをもつて——少くもわれわれの耳にはいつておりますについては、單純なる風説とばかりは聞くわけにまいらぬと思うのであります。政府の明瞭なる御答弁を願いたいと思う。(拍子)     〔國務大臣芦田均君登壇〕
  21. 芦田均

    國務大臣(芦田均君) 本件につきましては、前後の経緯を詳しく説明いたしたいと思いますから、法務総裁から御報告いたします。     〔國務大臣鈴木義男君登壇〕
  22. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) ただいま樋貝君より御質問がありまして、いろいろな点に触れられたわけでありまするが、中には、私どもも報告を受けておらないような事実をたくさん御存じであられまして、よほどその点に事実の相違があるやに解せられるのであります。よく御了解を願いたいと思うのであります。  五月十日をもつて訴願委員会を廃止することは、関係方面の指示によるものでありまして、これはやむを得ないのであります。五月十日でこの仕事を終ることの困難を感じまして、延長のことも考え、また廃止せられたる後、復活のととも考慮いたしたのでありまするが、ともに関係方面において許されなかつたのであります。  それから、五月十日をもつて仕事を終りましたことは相違ないのでありますが、五月十日のうちにすべて通過いたしましたものその他は、國内的手続を完了いたしまして、さらに必要なる手続の関係のために提出をいたして遅れたのでありまして、その手続が五月二十二日に終りまして公表をする運びに相なつたわけでございます。その間一、二の事務官が使いに行つたということはありましようが、決して一、二の事務官がこれを処理したものではなくして、あくまで内閣総理大臣の責任において処理したることを明らかにいたしておきます。  それから、もちろん訴願の手続は訴願委員会の審査の決定に基きまして、内閣総理大臣が該当の指定を解除することができることになつておるのでありまするが、実際には、さらに指令部との間に必要なる手続を履まなければならないのでありまして、このことは、昭和二十一年一月四日附司令部のデイレクテイヴにおいて、司令部はいかなる時期においても日本側の決定を審査し、これを取消すことができるということを明示していることに基づくのであります。この点も御了承願いたいのでありまして、訴願委員会の審査の結果を政府において左右するというようなことはないのであります。  それから第二の御質問といたしまして、均衡を失するものがないかということでありますが、これは見方でありまして、決して故意に政府において手加減を加えると思うことがありません限りは、均衡の問題は遺憾ながら御判断に委ねるほかはないのであります。十分公正に訴願委員会の意思を表明したつもりであります。  そこで発表の問題でありまするが、訴願委員会の審査を経て解除となりますものは、確かにさきに発表いたしました百四十三名で一應終了したわけでありますが今後ももちろん内閣総理大臣の責任において、著しく不公正があり、あるいは過ちがありまするならば、解除をいたすのでございまして、それらの点につては、すでに発表いたしてある通りであります。なお、今回この訴願委員会が決定いたしましたそのものにつきましては、すべて二十三日に決定をいたしたのでありますから、二十二日の官報には間に合わなかつたのでありまして來る七日附の官報に、解除せられたるもの、不解除になりましたるもの、但し、ここにごく少数の未だ決定せざるものがありまするが、それらのものを除きまして、公表せられるわけであります。しかし、解除のことは本人に通知せられることによりまして効力を発生するのでありまして、官報で発表せられますことは、直接効力発生には関係がないのであります。そのことを御了承願いたいのであります。  この際、念のため訴願の総件数を申し上げまするならば、訴願の総件数が千七十でありまして解除と決定したるもの、さきに発表したるものと合わせまして百四十三、不解除と決定したるもの九百七であります。その他死亡、取下げその他のものが二十ということに相なつておるのであります。  第四の御質問といたしまして五月二十二日に政府が発表いたしましたりは、申すまでもなく訴願委員会の活動がここで一應の終りを告げて、委員会による解除というものは、これで一段落に達したということを申し上げたのでありまして、委員会外の、すなわち政令に基きまする、内閣総理大臣の責任においていたしまする訴願は、今後も継続いたすものであるということを御了承願いたいのであります。  以上をもつてお答えといたします。(拍手
  23. 樋貝詮三

    ○樋貝詮三君 簡單ですから、この席から——追放解除になつて、しかもそれは委員会においてそうなつておりながら、その事務官の処置によりまして解除にならなかつたこれらの人々に対しまして、それを追放を解除せられたるごとくに官報に発表しようというように今承つたのでありますが、これに対しては事実と違つております。そういう御発表なれば、これは天下にまたうそをつくことになりはしないかと思いますから、特に政府において御考慮願いたいと考えます。これだけであります。     〔國務大臣鈴木義男君登壇〕
  24. 鈴木義男

    國務大臣(鈴木義男君) 念のため申し上げておきまするが、委員会の決定は、そのまま関係方面に通じてあるのであります。しかして二十二日、百二十九名に対して解除のことを発表することを許可する、こういうメモランダムが参つたのであります。さように御承知おきを願います。     —————————————
  25. 山下榮二

    ○山下榮二君 大藏大臣演説に対する残余の質疑延期し、明後七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  26. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山下君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  27. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十一分散会