○重富卓君 私は、
民主自由党を代表いたしまして、食糧問題につき
緊急質問を
総理大臣・法務総裁・農林大臣にいたします。現
政府の
國民食料に対する見透しは、きわめて楽観的のように思います。しかし私は、さようには
考えないのであります。
政府筋の放送と思われますが、甘藷は主食からはずすとか、二合八勺を配給するとかいう話が、巷間にはもつぱら傳えられているのであります。十九日の農林
委員会においても、農林大臣は、見透しは明るいのではありまするが、増配も
考えるなど申されてお
つたのでありまするが、ほんとうにそうなることでありましたならば、私もこれを祈るものであります。しかし私は、さようなことには当分ならないのではないかと存じます。
総理大臣は、二十二年産米は一〇〇%供出できた、厚く
農業者諸君に感謝すると、施政演説で述べておられるのであります。私
ども百姓は、思ひ切り頭をなぐられた後で、おまえはかわいい子だと口で賞められたような感じがいたしました。と申しますのは、権力をも
つて成しつけ、有無を言わせず、割当量に達するまでは
政府がも
つてもよろしいと言
つたその肯定保有量までも、その全部をさらい出さしてしま
つたのであります。しかも現在になりましても、まだ還元配給もしてくれないのであります。つきましては、次の九項目について各大臣にお尋ねをいたします。
その第一点は、「保有米を食いこんで供出されました農家に対しましては、飯用不足量はこれを還元配給することにいたしたのでありまして、
政府といたしましても、農家の再生産確保については最善の措置を講じているのであります。」と、四月二日附衆甲第一九号で
総理大臣は答えておられるのであります。それからすでに四十日以上も経過いたしております今日、しかも農村は農繁期にはい
つておりまする今日、未だに末端には還元配給がないのでありまする。(
拍手)ようやく最近
一般配給のわくがや廣められ、二合五勺の配給が来たというような次第であります。一日二合五勺で百姓が働けるか、ひ
とつ大臣諸公も百姓をや
つてみていただきたい。賢明な大臣各位は、このくらいのことは百も御承知のことと思います。
ちまたのうわさでは、農林大臣は自分でやみ米を買
つて食うておるとか言われたという話であります。しかしこの
通り、知能労働といえ
ども、時に二合五勺で一日がやれるか否かは皆様も御承知と思います。いわんや農繁期の農業労働は、1日十時間ないし十二時間、それ以上のことをする場合があります。農繁期でないときでも二合五勺ではやれないのに、まさに農繁期に入ろうといたしますのに、
政府は約束された農家の飯用不足数量を未だに還元されておりません。これで百姓をやれというのは、あまりにもあこぎなやり方ではないかと私は思います。
副食物としての魚でもあればまだしものこと、それも月一回あるかないか、またあ
つても、今日の農家
収入をも
つてしては、体力を養うだけのものを買うことはできないのであります。自分たち家族が食う量以上につくり、供出できるようになりますと、割当を受け、しかもそれが不当であ
つたにもかかわらず、割当一〇〇%供出は絶対であるとしても、その不当を修正するどころか、もし出さねば法的処分をすると権力をも
つて成しつけ、一方では、還元配給は必ずしてやるから、報奨物資もやるから、とに
かく保有米をねこそぎ出せ、そして一〇〇%完遂をやれと、成したり、すかしたりして供出せしめたのが地方末端の
実情であります。
かくして公定保有量までまんまと農家に出させておいて、さて還元ということになりますと、四論、五論、ちよつとやそつとでは還してくれない。農繁期にな
つても、まだ還しません。
私に知
つておる
実例を申しますならば、二月以降は食うべき米をもたなく
つた農家に対して、その農家は何回も陳情したにもかかわらず、
一般配給さえしてくれなか
つた。二箇月以上経
つてもしてくれなか
つた。その間、村当局は遂にたまりかねて、いわゆる無指令出庫なるものをして、その場をしのいだという
実例を知
つております。しかし、この問題は、最近
一般配給のわくをいただいたので、その面で埋め合わせたという話であります。かような威嚇と甘言と欺瞞とで
農業者を取扱いつつ、
農業者がほんとうの作付面積を
申告しないとか、生産高についてうそを言うとか、役人は二言目には申します。悪農呼ばわりいたすのでありますが、
政府みずからの
態度こそ悪いのであります。この点は大いに反省してもらわなければならぬのであります。
農漁村が裕福だと盛んに言われたころでも、通貨の五二%を農漁村はも
つてお
つたのにすぎないのであります。農漁村と他の人工比率から申しますれば、特にとりたてて裕福であると言うことはできないと思います。しかるに
政府は、これを目の敵のごとく見て、重税をかけたのであります。二十二年十二月末におきましては、すでにその通貨も、農漁村におきましては二九%下が
つております。配給の米代も肥料代も拂えない農家が、日に増し激増してまい
つております。北海道等においては特にはげしいという話を聞いております。かようになりまして、今日すでに農家は借金が激増しようとする趨勢にあるのであります。かような有様で、はたして一割増産ができると
政府はお
考えにな
つておるのでありましようか。私は、ま
つたくこれはナンセンスだと思います。
廣島縣山縣郡大朝町では、割当不当を鳴らし、二十町歩、数百戸の農家が耕作権を放棄したと新聞は傳えております。これは集團的にや
つたたてに、たまたま新聞種にな
つただけで、このような風潮はいたるところにあるのであります。二十町歩の耕作がなされなか
つたならば、二千町歩の一割増産の努力もま
つたく水のあわとなることを、
政府は御承知と思います。山口縣玖珂郡では、食料調整委員が全員事前割当の不当を鳴らし、総辞職をしようとしたのであります。これはすべて
政府の農政上の秕政が生んだ事柄でありまして、まことに嘆かわしいことでありますと同時に、一割増産どころか、かような
状態では、何割の減産になるかわからぬと思うのであります。かような事が起りますのも、不当割当の強行と還元配給の不履行から起るものであります。農家が最も多量の食料を必要とする農繁期は目の前に迫
つておるのにもかかわらず、今も
つて総理大臣の御
答弁どおりに末端は動いていないのであります。去年も農民はこの手で欺かれた。本年もまた欺かれようとしております。末端が衆甲第一九号による
総理大臣の御
答弁通りに動いていないのに対して、
総理大臣はいかような手段をおとりになりますか。この点をお尋ねしたいのであります。
第二点は、食料緊急措置令に対し
國会が承認を與えましたとき、
國会は農家の保有公定量は必ずこれを確保せしめるという條件をつけ、
政府もまたこれを承認したと記録されております。また第一回
國会でも、農林
委員会で
政府は、保有量を割る
考えはない、もしさような事態が生ずるときは、実収高が明らかにな
つたら必ず調整すると述べられておるのでありまする。しかるに、これらのことは、すべて忘れたかのごとく、百姓が食えようが食えまいが、そんなことにお構いなしに、一〇〇%供出を強行し、保有量の全部または一部を割
つてまで供出せしめたのであるます。これはあきらかに
國会という國権の
最高機関を無視した、
政府の背信行為といわなければなりません。(
拍手)かかる
政府の背信行為は、
國会の威信のためにも断じて許されるべきものではないと思うのであります。
國会がもしこれを許したならば、
國会の信用はま
つたく地に落ち、事制
國家の出現となるであろうと思います。この
國会に対する
政府の背信行為に対し、
芦田総理大臣はいかような形で
責任をおとりになりまするか。これほど明らかな背信を、よもや背信にあらずと逃げを打たれるほどの、厚顔にして無恥な
政府とも思われないのであります。この点について
総理大臣の御
答弁をお願いします。
第三点は、農家の保有公定量を割
つて供出せしめられた
行政措置は、明らかに憲法第二十五條違反であります。今日の食糧
事情から申して、主要農産物の使用処分をその所有権者に無制限に許すということは、もとより許さるべきことではありません。
従つて食管法は、これに制限を加えるのは当然であります。しかし、その制限は、農家の食生活を脅かすものであ
つてはなりません。すなわち、農家が自己の生命を保持し、生産に従事し得るだけの量につきましては、完全にこれが使用が留保されていなければならないのであります。しかるに、と
かくこの線を乗り越え、生命を脅かす専制
政治家が出ないとも限らないので、憲法第二十五條は、すべての
國民は最低限度の生活を営む権利を有すると定めておるのであります。
農業者もまた
國民であります。しかるに
政府は、何らかの生活の補償と
農業者に與えることなく、威嚇と欺瞞でも
つて、
政府みずからが定めた農家の最低食料の必要量さえ奪
つたのであります。
農業者の食生活を保障する
法律はないことを、木村榮君に対する三月二十三日附衆甲第一号の
答弁書により、明らかにしておられるのであります。すなわち、農家の保有優先確保は実定法上に定めがないと答えられ、また還元配給も法的根拠はないと述べられております。一旦収穫全量を
政府に買い上げるといたしましても、特別法その他の
法律で農民の食生活を保償する規定がありますれば、公定保有量を一旦供出せしめても、私はあえて憲法違反だとは申しません。しかし、そうした
法律はないと、明らかに芦田
総理は
答弁書で述べておられます。してみれば、公定保有米を強行に供出せしめたことは、憲法第二十五條にある、
國民は最低限度の生活を営む権利を有するという、その権利を奪
つたものであると申さねばなりません。
食管法と憲法二十五條と衝突するとき、憲法がその上位にあることは申すまでもないことであります。しかるに
政府は、保有優先の法的根拠はないとか、あるいは還元配給については法的根拠を欠いておるとか、憲法の存在は全然無視した
態度で
答弁をなし、農家に保有せしむるもの、また還元するも、ま
つたく
政府の一法的
意見でやるのだ、すなわちお情けだという
態度をと
つておられますのは、はなはだ遺憾に存ずるのであります。
政府のこの
態度こそ、日本民主化の妨害であり、専制
政治であり、完全な封建
政治であります。(
拍手)農門を完全に奴隷としたものであります。農民開放は口先だけで、ますます農奴たらしめるものであります。しかもその行為は、明らかに憲法第二十五條に違反しております。この点に対しまして、法務総裁の御
意見をお尋ねいたします。
第四点は、農林大臣に対してお尋ねいたします。もし、保有米を供出せむることが憲法違反でないと
政府の解釈だといたしますれば、衆甲第一号の
答弁書と併せ
考えまするとき、農家は完全に食生活に関しては何らの保護も
法律上うけていないということになりまするが、主務大臣といたしまして、
農業者をかかる
状態に放置しておいてよいと思われまするか。私は断じて放置すべきではないと存ずるのであります。
食糧を生産するものは、食生活に対する保障なく、米びつの底まではたいて供出せしめられ、しからざる者は、
國家から保障を受ける。これでは、たれしも朝に星をいただき、夕に月影を踏んで食糧増産に努める気にはなれません。生産
業者側から消費者側に
農業者が移行しつつあるのは当然であります。また主要食糧の生産から多作物に移行するのは、眞にやむを得ない生き方となるのであります。それは生きんがための本能がしからしむるのであります。前
内閣は、それを食い止めようとして、生産調整法を
國会に
提出し、農奴制を日本に実現しようとして失敗し、また現
内閣は、主要食糧生産供出確保措置法なるものをも
つて臨もうとしております。かようなことは、日本の食糧
事情をますます悪化せしめ、決して明るい方向に向かわしめるものではありません。何ら
國民の食生活に安定をもたらすものでもないのであります。
そこで農林大臣にお尋ねするとは、農家保有を供出せしめたことは、現在では憲法違反でないとすれば、生涯農家の食生活を保障する
法律を制定する意思ありや否や、その用意ありや否やをお尋ねします。また
政府の見解が憲法違反だとすれば、かかる憲法違反をした主務大臣をして、その
責任をいかに償うのか。また末端期間の行き過ぎであ
つたとすれば、それら末端
責任者をいかように処分されるかをお尋ねいたします。
第五点は、農繁期特配及び農業雇傭得配実施を計画中との御
答弁があ
つたのでありまするが、すでに農繁期もまいりますのに、何らの手配も末端に対してはいたしていないようであります。これは一体いかようにされるのか、農林大臣にお尋ねいたします。
第六点は、
政府は三千六十二万石の供出ができ、
予定より七万石の超過供出であ
つたと放送しておりますが、
國民は
政府の
発表通りに
受取つてよいのでありましようか。この三千六十二万石という
数字は、その内容が文字
通りに食糧で満たされておるのでありましようか。
政府はそのように
考えておられる様子でありまするが、私は、この三千六十二万石の内容については、たいへんに不安をもつものであります。それは絵に書いたもちではないかと思います。なぜならば、先ほど申し上げました農家の飯糧を取上げた
数字が加わ
つておるからであります。またやりくり供出、すなわち名目供出とか、借入供出とかいうふうなことが、むりな供出を強いられたところでは行われ、実物なしの供出もあると聞いておるのであります。この農家から取上げられた農家の飯糧は、
総理大臣のど
答弁にもあります
通り、
國会に約束されましたように、ただちに農家に還されなければならないのであります。
政府がねこばばを決め込むことはできないのであります。農家はこの点で、今までもたびたび出し抜かれたのであ
つて、非常に警戒をいたしております。その証拠は、すなわち地方にある食糧事務所から出庫命令がありましても、農民はこれを拒否しておるという事実を私は知
つております。かようなものは、当然農家に還されなければならない。還しただけの三千六十二万石から差引かなければなりません。話に聞きますと、山口縣は七万石の還元米が必要であ
つたが、
政府に値切られて三万五千石にされたということであります。
そこで全國で還元を要求してまいりました量はいかほどであ
つたか。それをいかほどに
査定し還元米のわくを地方に與えられたか。このことは
答弁書において
調査中であるというお話でありましたが、この点を農林大臣にお伺いいたします。
第七点は、農家に還元したために生じまする配給引当量の穴は、いかにして埋めるお
考えであるか。この穴を埋めない限り、二合八勺はおろか、二合五勺も配給は不可能だと信じます。農林大臣は、この穴をいかにしてお埋になるお
考えか、お尋ねします。
第八点は、山口縣の還元米として要求した量は半減されておりまするが、同様なことが各縣ともに行われておると思うのであります。そのため山口縣では、二合五勺の還元しかできないという話を聞いたのであります。もしこれが事実としますならば、不当割当を受けた農家は、何の罪もないのに、農閑期の労働にさえ耐えられないほどの少量の還元より受け得られない。まるで処罰的にさえ
考えられるものであります。一方では保有量を完全にも
つておる農家が出てきておる。かのようなことをされるから、ますます農村の人情は悪くなり、正直者は生きていられなくなる。
従つて生産高をごまかし、作付けをごまかす人々が年年増してまい
つて、手がつけられなくなる始末であります。これは決して
農業者に罪あるのではない。さきに申し述べましたように
政府側の秕政・悪政から生ずることでありますので、
國家いを通して
國民に約束されたことは、あくまで時期を失しないで実行していただきたいのであります。
子供にうそを言わせまいとすれば、まず親がほんとのことを申さねばなりません。農民のうそを責める前に、
政府みずからが、ほんとのことをするようにしていただきたいのでありまする。これが何より増産のポイントであり、供出のポイントであります。しかし、
國会に約束されましたことを実行いたされますならば、一層大きな穴が
一般配給の面にあくと思いますが、この間の調整
処理はいかようにいたされまするか。主食代わりとして、佐藤を盛んに配給しておられるようでありますが、それでは実際上の体力は保てないと思います。
要しまするに、第七点と第八点は、三千六十二万石の一部空虚なものである。その穴を、一部は消費者をごまかし、他面では
農業者をごまかして、切り抜けようとされるかに思われますが、このようなことをされますと、
國民の体意は著しく低下し、農家の生産意欲は極度に圧縮される結果となり、減産に拍車をかけることになると私は思うのであります。かようなことが起らぬように、
政府はこの穴埋めに対してどのような具体案をも
つておられるか、お尋ねするものであります。
第九点は、
昭和二十三年産主要食糧供出実施要領による事前割当についてであります。この要領の印刷物の前書きを見ますと、「臨時主要食糧生産供出確保措置法の趣旨に準じ」云々とあります。「措置法の趣旨に準じ」とあります。このような
法律は、いつ公布されたのでありましよう。私は農林委員をいたしておりますが、かようなものを審議した覚えは、いまだか
つてないのであります。「臨時主要食糧生産供出確保措置法の趣旨に準じ」云々と、実施要領は見事に書いてあります。このような
法律があるのかのごとくに書いてあるのであります。
國家を通過しないでできる
法律は、断じてあり得べからざることであります。この実施要領は、明らかに
國民を愚弄し、
國会を無視した
政府の
態度を示すものであります。あまりに
國民を軽視し、
國会を軽んじたやり方であり、断じて許すことができないものであります。
この実施要領の前書は、決して過失ではありません。印刷の過誤でもありません。これは意識して、あえて法として、法案としなか
つたものであると私は断じます。と申しますのは、法が案である間は、その趣旨に
従つて行政が行なわるべきものではない。もつとも、ある事実を確認するために
法律のできる場合もありまするが、しかし本件に関する限りは、その
行政行為の内容が財産権の内容の制度を伴うものであります。でありますがゆえに、案と書くことができなか
つたと思うのであります。
従つて、法と書かねばならなか
つた道理でありますがゆえに、私は、この前書きは意識的になされたものと断じます。かりに一歩譲
つて、過失によるものとしても、きわめて重大な過失であり、許すべからざる過失であると存ずるのであります。
國会を甘く見ることから生じた過失であると存じます。
私は、このことで形式の上からのみ
政府を責めるのではありません。あげ足とりのために言うのでもありません。この実施要領が末端で
農業者をいかに今苦しめつつあるのかを知
つておるがゆえにであります。この要領により、
政府の末端機関は言語道断のことをしでかしつつあるのであります。
政府のねらいは、あるいはそこにあ
つたのではあるまいかとも思われるのでありますが、一割増産の
説明会の席上に、私は帰國中に臨んでみたのであります。係官の
説明は、今度の事前割当は生産命令なたは作付命令であるという意味の
説明をいたしておるのであります。あまりにもふしぎなので、他の同様な
会議に出た人々に尋ねてみたのでありまするが、同じような意味の
説明を聴いたと話しておるのであります。
今回の米の供出事前割当は、作付前にそれを完了してしまおうとしている努力がありありと見得るのであります。何となれば、五月八日附の通牒で、五月十日までに
個人割当を完了せよというがごとき指令が末端では出ておるのであります。この
個人割当を審議すべき
責任者の手にその指令が届いたのが五月十日であります。かような無理をあえてしなくてはならない理由はどこにもないのでありまするが、その無理をあえてしておることは、作付前に割当を完了せしめようとするがためであります。作付前に割当を完了せしめようとするねらいは、米のほかはつくいらせまい、すなわち野菜等の農家
収入の多いものに轉作するのを未然に食い止めようというところにあるのは、あまりにも明らかであります。すなわち、第一
國会で生産調整法が未審議にな
つたため、その目的を何とかして果たしたいという我執から出たものと
考えられるのであります。、
従つて農家は、今回の米の供出事前割当のために、耕地の使用・収益に対する自由を失い、作付の自由を失うはめに追い込まれつつあるのであり、早くも各地で非難の声の上がりつつあることは、先に申した
通りであります。
政府がこのような不都合きわまる事前割当の拳に出なくとも、農家はまさに急轉直下、経済的苦境に陥りつつあるのに、
政府は米さえ出せばよい、甘藷さえ供出させればよい、農家経済はどのようにな
つてもよいというがごとき、耕作の自由を持たせない拳に出たのは、ま
つたく暴挙といわずしてなんでありましよう。その結果たるや、実に恐るべきものが生ずると私は思うのであります。秋の収穫期を思うとき、その混乱を
考えるとき、実に憂慮にたえないのでありまする。夫婦喧嘩が起り、部落内の争いが起り、官憲の激しい弾圧が農村に起ると思うのであります。この間
事情は御理解いただけないかもしれませんが、農民感情を御理解できる方でありましたらば、今申し上げた私の心配もおわかりくださると思うのであります。私の心配が杞憂であれださいわいであります。
しかし、作付前の事前割当に事実上非常に危険が伴うとともに、これは実質上の作付命令であり、生産命令となるのでありまするがゆえに、先に申し上げたように、作付の自由を制限し田畑の使用収益謙を制限する結果を事実上起しつつあるのであります。このことが
政府のねらいであることは、実施要領の前書中の字句からみても、割当を作付前に完了せしめようとしておることから見るも、明らかであります。このことは、憲法第二十九條に明らかに違反しておる。財産権の内容に対する制限であるから、
法律をも
つて定めなければならぬ。しかるに、一つの
行政措置でや
つておる。それをいかにも合法的にや
つておるかのごとく世間に見せかけるために、措置法という、ありもしない
法律があるかのごとく見せかけ、しかも
農業者を実質的には苦境に陥れるがごとき行為をあえて、一方では、國権の
最高の機関である
國会を無視した行動をと
つておることは、ま
つたく
政府みずから國権を軽んじ、國法をもてあそぶものであり、國の秩序を乱れるるものと言わざるを得ないのであります。(
拍手)
この議会無視の点につきましては、
総理大臣の
責任ある御
答弁をお願いいたすます。憲法第二十九條違反については、法務総裁の御見解をお願いいたします。
農業者を窮地に追い込むごとき措置をと
つたことについては、また
法律にあらざるものを
法律として取扱
つたことについては、農林大臣の
責任ある御
答弁と、なお、かかることをあえてした担当者の
責任をいかに
処理されるかをお尋ねいたします。また、かかる問題となるがごとき作付前の供出割当を一旦御破算にして、作付面積及び作付けされた田地の地方等を調整した後にあらためて割当をする意思ありや否を農林大臣にお尋ねいたします。
以上九点についてお尋ねいたします。明快にして率直な後
答弁を、
政府と
國会の威信のために期待して降壇します。(
拍手)
〔
國務大臣永江一夫君
登壇〕