○
外崎千代吉君
列車内の
取締りに関して
政府当局に
質問いたしたいのであります。
総理大臣初め
農林大臣に対する
質問が一番主要な点であるけれども、
いかんせん。
総理大臣は出ることができない。しかし
與党各派は、
農林大臣だけは必ず出すからして、まず
委員長の
報告を先にさしてくれろという話であ
つたので、それもお任せしたのであ
つた。しかるに、すべての
委員長の
報告が済んでも、未だ
農林大臣は見えず、
政務次官でもよいから聽かしてくれろというから、それもお任せしたのに、その
政務次官もおらないということは、一体本
会議に対して
政府及び
與党はいかなる
考えをもつのか、われわれはわからない。いやしくも
議員が演壇に立つ以上は、
國民の代表の声であるということぐらいは、
政府も
與党も知
つておるはずである。毎日会わしておる顔であるからして、すべてはお任せすることに
異議はないとしましても、
責任ある地位の者がおらずして、いかなる
答弁をするのであろうか。まず私は
総理大臣に問うところであるけれども、おらぬとするならば、それに代
つて政府の
責任者に
答弁を求めるのである。
最近頻々として、
東北本線並びに
常磐線の
急行列車に対して、夜の夜中、しかも大抵午前の二時ごろから四時ごろの間に
列車を停めて、
警官が続々はい
つてきて
全員に下車を命じ、
荷物をかつがせて全部おろしてしまうのである。今日いかなる
法律の手続によ
つて列車を停めることができ得るものであるか。いま
一つは、新
憲法下におけるところのわれわれ
國民は、
主権在民ということがうたわれてあることぐらいは知
つておるはずであるとわれわれは
考えておる。しかるに、その
列車を停めるに
警察官をも
つて停めるのか、
運輸大臣の手によ
つて停めておるものであるか、
政府はいかなる
法的根拠によ
つて列車を停め
——しかも
急行列車といえば、いずれも
多額の
急行料金を
拂つて、急ぎの用事があるからして
急行列車を利用するものであるとわれわれは
考えておる。その急ぎの用をも
つて歩いておる者に
——さなきだに、最近
鉄道のだらしなさは時間の正確を欠いてお
つて、
一般は非常に迷惑をしておるのである。しかるに、それのみならず、夜間において
列車を停めて、
乘客全部をおろして、
警察官の手によ
つてその
荷物を調べる。
食糧の
取締り、あるいはやみの撲滅、その他
犯罪の
防止等のためかもしれないけれども、一千名近くの
乘客に対して、全部これをおろし、病人、子供、女、年寄の
いかんにかかわらず全部おろして、荒なわを
張つて、お
つて大きな
荷物を背負
つてくる者は、動物のごとき取扱いをして、その中に押しこんでしまうのである。小さな手
荷物でも全部調べる。だれの
命令によ
つて、
憲法に保障されておる
権利を侵害するのか。この
荷物を開けろ、これを出せ、そうしてこれは何だというようなこくとは、いかなる
法的根拠によ
つて行われておるものであるか、この点を特に伺いたいのである。
それについて、私は一昨夜もこの
列車に乘
つて参りましたが、
國民協同党の
石田一松代議士先生も、その他民自党における
益谷代議士初め、その以前には境一
雄先生等、大抵これによ
つて被害をこうむ
つておる
人々である。しかも一昨夜のごとき、
警官に対して、だれの
命令でこの
列車を停め、だれの
命令によ
つてこれを取調べるのかと聽いたら、臆面もなく、
進駐軍の
命令であるということを
言つておるのである。われわれはま
つたく驚いたのである。もちろん、
日本は
敗戰国である。
占領下にある今日において、
進駐軍の
命令は絶対的であるけれども、しかし
政府当局は、これだけの陣容を整えてお
つて、七千数百万の
國民の
治安を維持することができ得ず、一々
進駐軍の手を借りなければならぬのであ
つたならば、
芦田内閣は即刻
國民の前に辞表を出すべきが当然ではないかと思ふ。
與党の
方々も聽きにくいであろうけれども、しばらく正しい
意見は默
つて聽くことが当然の
義務であろうと私は考へておる。
そこで、もし
進駐軍の命なりとするならば、
ポツダム宣言中にも、こういうことが書かれておる。第十項末文において「言論、宗教および思想の
自由並に
基本的人権の
尊重は確立せらるるべし」ということが言明されておるのであ
つて、まして
人権と自由とを
尊重するところの
アメリカ軍において、こういうことを
命令するべきはずはないと私は
考えておる。なかんずく今日のこの
内閣は、
事ごとに
東條内閣の二の舞のごとくに、軍閥を笠に着る役人である。今日のように、一こと言えば
進駐軍進駐軍と
言つて、
進駐軍を口にしなければ、すべての
治安の維持ができないような始末であ
つたならば、それこそやめてもらいたいと
言つても一言半句も言うことはないであろうと思うのである。
しかも、このようにして毎日のごとく
列車は停められて、数百、数千の人人がおろされていくときに、どこに
日本の新しい
憲法ありと言えるであろうか。
憲法の
條文の中にも、第十一條「
國民は、すべての
基本的人権の享有を妨げられない。この
憲法が
國民に保障する
基本的人権は、侵すことのできない永久の
権利として、現在及び将來の
國民に與へられる。」、第十二條「この
憲法が
國民に保障する自由および
権利は国民の不断の努力によ
つて、これを保持しなければならない。又、
國民は、これを濫用してはならないのであ
つて、常に
公共の
福祉のためにこれを利用する
責任を負ふ。」、第十三條「すべて
國民は、個人として
尊重される。生命、自由及び
幸福追求に対する
國民の
権利については、
公共の
福祉に反しない限り、立法その他の
國政の上で、
最大の
尊重を必要とする。」、第十四條「すべて
國民は、法の下に平等であ
つて、人種、
信條、性別、
社会的身分又は門地により、
政治的、経済的又は
社会的関係において、差別されない。」と、りつぱに保証されておるのではないか。なかんずく
人権の
愼重に対しては、この案に
賛成された
諸君たちは、今さらわれわれが申すまでもなく、わか
つておるはずであると思う。
民主主義の
政治は、一面には國の
政治が
國民の意思に基いて行われることを要求するとともに、一面には
國民の自由及び
権利を保護し、
國民をして
國権の圧迫を受くることなく、人間としての生存に値すべき幸福なる生活を保たしめることを
主義とするものであ
つて、
民主主義を基調とする諸國の
憲法は、いずれも
憲法中に
國民の自由及び
権利を保障するのである。こういうように書かれておるのみならず、世界到るところ、今日この
人権の
尊重されておる場合において、一人、二人あるいは五人十人の
やみ屋が
——あるいは
犯罪人も乘
つておるかもしれませんけれども、千人以上も乘
つておるというやうな
満員列車をして
——しかも夜分である。午前一時、二時というならば、古い言葉でいえば草木も眠るという際であ
つて、どんな人でも、あの不自由な
列車の中に苦しんでいながらも、一時、二時、三時になれば、ようやく眠りについておるときである。しかも
警官がどやどやはい
つてくる。その
警官の
命令によ
つておりなければならないということは、どうしてもわれわれは判断がつかない。
そこで
法務総裁にもお伺いしたいことは、あの
列車を停めて乘りこんでくる
警察官は、
自治警察の
警察官であるか、それとも
地方警察の
警察官であるか、
警察官が
命令をも
つて人をおろすことのできる
法律はいずこにあるか、しかして、何人の
命令によ
つて警察官は
乘客をおろし、また
荷物を調べるという権限があるかということを
答弁してもらいたいのである。(「
やみ屋の
味方か」と呼ぶ者あり)だま
つてお聽きなさい。
やみ屋の
味方か
國民の
味方かを言うのであ
つて、君たちに聽いているのではない。
政府に聽いている。
政府を擁護するならば、正しい方に
賛成したまえ。そういうふうに、いたずらに喧噪をきわめて時間をかけるよりも、
政府と
議員との
應答に対しては、君たちは
靜粛にしたらいいではないか。何も君たちを責めるのではない。君
たち自身もその
被害をこうむ
つているではないか。
そこで、よく
警察官の中に、こういふことを言う人がある。何を持
つてきてもよろしいが、米を運ぶときには
知事の
証明があればいいということを
言つておる。しかるに、
知事の
証明をも
つていようがいまいが、これを聽くでもなし、全部おろしてしまうということは、ま
つたく
人権蹂躙もはなはだしいものであるとわれわれは
考えておる。それと同時に、この間も
警察官に聽いた。一体一日にどのくらいの収穫があるかと聽いたら、大抵二十俵ぐらいはとれますと言う。そこで
農林大臣に伺いたいが、この
列車を止めて取る米が一日に約二十俵とすれば、一箇月には六百俵になるのであ
つて、一箇年間には七千二百俵になるのであります。そこで、この米を
食糧公團に持
つていくと言うけれども、これに対して、取られた
人々および取られないわれわれにおいても、ここに非常に不明朗な点があるのではないかと
考えておる。なぜならば、どこの縣でもよろしい、
福島縣であろうと、
岩手縣であろうと、
列車を停めてと
つた米は
食糧公團にや
つておると
言つておりますが、どういうふうに
食糧公團にまわしておるのか。昨年から今日までに取上げた米の
数量はどのくらいにな
つておるか。この点は特に
農林大臣にお伺いしたい。昨年から今日までに取り上げてきたところの米の
数量と、その取
つた米はどういうふうに
配給されておるか。(縣の
操作だ」と呼ぶ者あり)少くとも、縣の
操作にしましても、これの
配給の
計画があるはずであ
つて、
計画配給は、どこの縣でも一年間の
方法はと
つておるのである。その取
つた米はどのわくにはいるのか、どういう
方法によ
つてこれは処分せられておるのかということを、特に
農林大臣から伺はなければならないのである。
それから
運輸大臣にお伺いすることは、先ほど申したことく、
急行列車を停めておる。おもに
急行列車をねら
つておるのであるが、
急行列車を停めてるのは、いかなる
理由で停めておるか知らない。
運輸大臣は
旅客を取扱う上において
——少くとも、今言う
急行列車を利用する者は急ぐものである。これをば停めさせてお
つて、長い時間
——三、四十分から、長ければ一時間半もかか
つておるということを聞いております。私も、すでにその樣を見たことが数回ありましたが、一時間近くも
急行を停められ自分の扱う
旅客に対して大迷惑をかけておるにかかわらず、
運輸大臣はこれに対していかなる所見をも
つておるのか、また改めさす
考えがあるかないか、この点を明らかにしてもらいたい。
いま
一つは
青函連絡の問題である。
青函連絡船で
青森から
函館に渡るとき、
函館から
青森に渡
つてくるときに、例の
藥剤撒布をやるのである。D・D・Tの撒布は、
衞生上これに対してかれこれは申しませんが、このD・D・Tをかけられたあとで、腕に檢印する。肉屋の檢印でも覚えがあるだろう。それよりも今一歩進めて、そのD・D・Tを受けた者に対して、檢印した紙片でも渡すような
方法を
とつたらよいではないか。しかるに、未だにこれを改めずして、非常に人に迷惑をかけておる。まして、これから夏にな
つたならば、汗やあぶらで白い衣服も非常によごれるのであ
つて、多くの
乘客に迷惑をかけておるのだから、これを改善する
方法を
考えておるかどうか。この点も
運輸大臣に伺いたいのである。
次は
労働大臣である。
労働大臣にお伺いしたいことは、夜の一時、二時、三時、四時までかけて調べるのに、
警察官を動員し、
食糧公團の職員を動員しておるが、
党働基準法に対して牴触していないか。それは上官の
命令あるいは職務の上において
命令されれば出てこなければならないであろうけれども、一時、二時、三時、四時までかけてこれを調べて帰
つてい
つたならば、翌日の仕事はできないことが当然であるけれども、翌日またこれを使用しておるということを聞いておるのであるが、これが
労働基準法に対して牴触していないかということを
労働大臣に対して伺いたいのである。
あまり多く申し上げて
與党の
方々に御迷惑をかけることをおそれますから、多くは申し上げませんが、少くとも本問題は、簡單に
考えられてはまことに迷惑するものであ
つて、
人権蹂躙の重大問題であるから、
政府当局はかべからく
愼重に考慮の上に、判然としたる
答弁をお願いしたいのであります。(
拍手)
〔
國務大臣苫米地義三君
登壇〕