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中嶋勝一君 私は、
民主自由党を代表いたしまして、まず
農林大臣に、
食糧一割
増産対策の問題についてお尋ね申します。
大藏大臣に対しましては、
タバコ増産計画をいかにしておられるか、この点についてお尋ね申し上げてみたいと思うのであります。
本日は朝日
新聞を見てみますると、「
緊急回米指令を用意、
政府六、七月の
対策急ぐ」、こういう見出しのもとに、今後の
食糧問題が相当詳しく掲載せられておるのでございます。ところが、この間
大藏大臣の
車中談として私
ども新聞で見ましたところによりますると、もう
食糧は大体大丈夫である、二合八勺の
配給ができるだろうという
意味の
お話があつたように見たのでございます。本日の
新聞では、
食糧問題はまだ非常に窮屈であるように掲載せられておる。
大藏大臣の
お話という
新聞記事を見ますると、たいへん樂観していいように私
どもは見受けられるのでございます。
ところが、私
どもが議員として考えまするときに、今年の
食糧問題というものは、まだまだそんなに樂観を許すべき
時代ではない、かように私
どもは考えておるのでございます。ところが、はたしてしかりとするなれば、
車中談としてもあまり樂観的なことを
お話にならない方が
國民が喜ぶのではなかろうか、私
どもはかように考えておるのでございます。
これに関しまして
農林大臣は、御就任直後であつたと私
ども思うのでありますけれ
ども、銀座でありましたか、
街頭録音において、
大臣は
食糧を
やみで
買つておいでになるかと聽いた人があつたように
新聞で見たのであります。これに対して
大臣は、やはり
やみ米を食うておると言われたと書いてあります。それは率直に
お話にな
つたので、すこぶるよかつた。こういうふうに聞いたのでありますが、これに対して、また次の
質問は、
日本の
食糧の
やみ取引がいつごろ解消するか、こういう
質問に対して、
大臣の
お答えといたしましては、これは
日本政府の力をも
つてはいかんともすることができない。こういう
お答えがあつたように私は
新聞記事を見たのであります。はたしてこれが事実でございましようか。私は、事実であるとするなれば、すこぶる遺憾千万と考えざるを得ないのでございます。(
拍手)いやしくも
農林大臣に御就任なさるからには、
日本の
食糧政策に関しては
十分自信をも
つておいでになるはずと私は思う。そうして、いやしくも
農林大臣たりせば、
日本の
食糧政策、これは一人の力をも
つて背負うて、一人の力をも
つて解決するというだけの
自信と抱負をも
つていただきたいと思うのでございます。ところが、この言はたしてしかりとするなれば、今年は
食糧一割の
増産をしなければならない。全國の
農村に対しましては、津々浦々まで一割の
増産をしなければならないということが傳わ
つておるのであります。ところが
大臣は、この一割の
増産をはたしてなし得られるところの
計画をお立てにな
つておるのであるか。この点をまずお尋ねしたいと思うのでございます。
けれ
ども私は、これは御研究になりさえすれば、一割の
増産はおろか、二割五分というものは完全に
増産ができるというところの
確信をも
つておるのでございます。どうしてであるかと申し上げますなれば、これは率直に私は申し上げたいと思う。今、
日本の
農村に
肥料が足りないことは、私が申し上げるまでもない。これは
世間周知の事実、
國民が皆知
つておる。でありますから、
肥料の面から
食糧の
増産ができないことはもちろんでありまするが、さて、その
肥料政策を講ずるにあた
つて、もう少し徹底したところの御
方針はないか。
この点につきましては、私は昨年七月七日の本
会議におきまして、
肥料政策の問題を論じて、
マンガン肥料をどんどんおつくりなさい、これをつく
つていくなれば、もう
増産がストツプしておるところの
硫安、
窒素肥料、こうしたものをあまりつくろうと
努力しないでも、しかして
外國から
カリ肥料をあまり買わないでも、これによ
つて十分に
日本の
農村に
肥料を行き渡らせることができるという
意味の意見を述べまして、
答弁を求めたのであります。
平野農林大臣の
答弁はすこぶる不徹底でありましたけれ
ども、しかしながら私は、これにつきましては絶対
信念をも
つておりまするから、その後
農林省に参りますること、眞にお百度参りというほど参りました。西ヶ原の
農事試驗場に何回
行つたでしよう。あるいは
東大の某
博士という方にも会
つてお話しました結果、ようやく理解せられまして、今年の一月三十一日に、
日本で初めて
マンガン肥料をつくり、これの販賣をすることの
許可を得たのであります。
ところが、今これによ
つて許可を受けたものがどんどんつく
つておりまするけれ
ども、しかしながら、この会社がつくるぐらいのことでは足りないのであります。ただいま
生産能力が一日に十トンか十五トンしかないものに対して、何十万という注文がそこに來ておるのであります。これは一体何を物語るか。非常に有効なるところの
成分をもつ
肥料が、つくりさえすればいくらでもあるのであります。
ところが、私が
農林大臣にお伺いしたいのは、今
農林当局は、
マンガンという
鉱石を
微粉にして施したのみでは、これは
肥料としては効果がないから、
マンガンそのものに対して
硫酸処理を施さなければならない。しかして
水溶性マンガンにして、これを
肥料にして施さなければいけないと、かようにおつしや
つておるのでありますけれ
ども、私
ども十二箇年の
経驗によりますと、その必要はございません。
マンガン成分二〇%
内外の
鉱石でありましたなれば、これを八〇メツシユ以上の
微粉にして植物に施すことによ
つて、完全に
肥料としてあらゆる
食糧が二割五分の
増産をいたしておるのであります。これは最近におきましては、九大、
東大の
マンガン肥料に関するところの御
調査をなされました人々、この学界の
権威者が折紙をつけております。ただ
土壤学の大家といわれる某
博士のみが
反対しておられたのでありますけれ
ども、最近は、この
博士にも賛成していただいたのであります。
でありまするから、私がお願いしたいのは、この
マンガン肥料を
日本の
農村が希望するほどつく
つて農林省が出す。これは一年で
日本の
農村が希望するだけの
マンガン肥料ができ得るのである。どうしてつくるか。御承知のように、
マンガン鉱石は
日本においては無
盡藏でございます。無
盡藏であるところへ、戰時中に
マンガン鉱石を
製鉄原料として出さなければならなかつた。しかしながら、
製鉄原料に使いまするのは、
含有量が二五%以上の富鉱でなければならない。しかるに、
日本の國に埋藏せられておる
マンガン鉱石は、いずれも二〇%
内外の貧鉱でございます。ですから、これを二五%以上、あるいは三〇%にも四〇%にも
含有量を多くするために、
帝國鉱業開発株式会社の貸出しによ
つて選鉱場をつくつたものが、全國に四十幾箇所もあると思いますけれ
ども、この四十幾箇所もありましたものが、現在ではほとんど遊休して、腐朽しつつあるのでございます。でございますから、この
選鉱場を全部動員して、そうしてこの
マンガン肥料をつくることになりますれば、わずか十五億円ほどの
運轉資金がありましたならば、全國の
農村が希望するだけの
マンガン肥料は一箇年でできるという
確信を私はも
つておるのでございます。
これを実施いたしましたなれば、
硫安肥料も少くてよろしい、
窒素肥料も少くてよろしい、
カリ肥料を
外國から輸入する必要はなくなると存じます。それだけではない。この
マンガン肥料を
日本でつく
つて、
日本の
農村が希望するだけ全部これを
配給して、余つたものはアメリカが買うてくれる見当が十分についておるのでございます。ですから私
どもは、將來におきましては、大いにこれを輸出もいたしたい、かように思
つておるのでございます。
ただ、ここにおいて私お願いいたしたいのは、ただいま申し上げましたように、西ヶ原の
農事試驗場の技術家の方々は、
水溶性マンガンにするにあらずんば効果なしと言われておりまするが、私
どもの
経驗によりますると、そういうことはございません。
マンガン鉱石そのものだけを
微粉にして、そうして植物に施しまして、完全に二割五分
増産の成績をあげておるのでございますから、希わくは、この議事堂の前で菜園をつく
つて、その菜園で試驗してもらいたい。私
ども大いに試驗をいたしましよう。試驗をしてみた結果、私の申し上げることが事実であるとするなれば、これはどうしてもこの
増産計画を立てていただきたい、かようにお願いするのでございますが、これに関する
農林大臣の御意見いかん、これをお聽きしたいと考えるのでございます。
しかして、この
マンガンという
肥料は、まだ
日本の学界、世界の学界において研究の行届かないところがあるであらうということを、私
どもの同志で今研究を遂げている者は
言つておるのでございます。その同志の話によりますると、
マンガン鉱石は太陽の光線を誘導する非常に大きな力をも
つている。でございますから、これを土壤の中に入れた場合には、晝のうちに太陽の光線をその土壤の中に引入れる。それであるから、夜でもこの植物が太
つていき、繁
つていく。でございますから、この試驗の結果は、富山縣あるいは岩手縣というような冷害地、すなはち水が冷くて稻のできが惡いところにこれを施した場合に、非常に好成績をあげておるのでございます。そうしました場合には、なおより以上に、これには嗜光
成分というものが今研究の届かない点にあるのではなからうか、私
どもはかように考えておるのでございます。この点は十分に御研究、御
調査をお願いしたいと思
つておるのでございます。
かようにいたしまして、
肥料政策を完全に講じました場合には、
食糧の二割五分の
増産は請合
つてでき得ると私は
確信いたしておる次第でございます。
次は、
大藏大臣にお尋ね申し上げたいのでございます。先刻、あの「
新生」という
タバコを二十円に値下げをせんければならぬという問題が起
つてまいりましたが、これは私
どもは当然だと思う。どうしてであるか。この「
新生」が人氣が惡くて、二十円に下げたということは、これは「きんし」からきておるのではなかろうか、私
どもはこう思う、あの「きんし」にいたどりを一〇%入れておられるということは、これは道徳上から
言つても許すべからざる問題なのではなかろうか、私はかように考えておる。今
國民が、
タバコが少い
タバコが足らないとい
つて困
つておるからというので、
タバコにあらざるところのいたどりをと
つてきて、一〇%まぜて
タバコとして賣
つている、こういうことは、民間事業であつたならば完全に犯罪を構成する問題ではなからうかと私
どもは考えておるのでございます。
このいたどりを入れられたために、「きんし」が非常に品質が惡く
なつた。そこへも
つてきて、あの「
新生」も「きんし」と同じようにいたどりが入れられておるのだというような風説がずいぶん立つたように私
どもは聞いておるのであります。いたどりを四十円も出して買われるかいという氣持、そういう風説が傳わ
つて、そのために「
新生」というものの人氣が非常に惡くな
つて賣れないのではなかろうか、かように考えておるのでございます。はたしてしかりとするなれば、いたどりを入れるかはりに、もう少し
タバコの
増産計画を立てていただけないものでございましようか。
日本の農業は、すでに平面耕作、平面によるところの
増産の
時代は過ぎたのでございます。すなわち、いくら開墾しようとした
つて、山を打ち開いた
つて、打ち開いたのみでは植物はできません。ですから、今度は立体農業に移らなければならぬ。土を深く耕して、根を廣く張らせる、それによ
つて幹を大きく出して、穗を大きく出して、それによ
つて増産をはからなければならぬ
時代であると思うのであります。それには、
タバコに
マンガン肥料をやりました場合には、四五%ないし五〇%、すなわち五割
増産になるということは、これは九大の吉村
博士が長年
経驗の結果、折紙をつけておられるのであります。こうして、きめて有効適切なるところの
肥料があるにもかかわらず、そのものを施そうとせられない。
私は去年から、北村
大藏大臣が民主党の政務
調査会長をや
つておられる
時代に、
マンガン肥料の問題をたびたびあなたに御相談をいたしました。これは私は
自信をも
つておりますから、これを
大藏省の專賣
局長官、あの当時の野田長官にもしばしば
言つて、これを使われたらいかがでございますかという御相談をしておる。ところが、いまだにこれを研究なされたということを聞かないのであります。いたどりをまぜた
タバコをつくらなければならぬほどなれば、どうしてこの
マンガン肥料を使
つてタバコの
増産をはかられないか。この
マンガン肥料をやれば五割の
増産になる、この
肥料をやりさえすれば
増産になるということは、これはわれわれが言うだけじやない。学界の
博士が折紙をつけている。その有効適切なる
肥料があるにもかかわらず、これを利用することをしないで、
タバコにあらざるいたどりを
タバコと
言つて賣るという政策を改めていただきたいと思うのであります。
かくのごとくいたしまして、
マンガン肥料を
増産していただくことになるなれば、
食糧の二割五分
増産は私は
確信があるのでありますが、しかしながら、当面の問題としては、なお
農林大臣にお伺いしておきたいと思うのでございますけれ
ども。今
硫安をつくることについては非常に御努なさ
つておるし、獎励せられておると思うのでありますけれ
ども、私
どもが、この
硫安の原料である硫化
鉱石を生産しておる鉱山に行
つて見ましたときに、この鉱山から
鉱石を送る道路が惡い。そのために輸送能力が非常に減じておる。橋の十分なるものがかか
つておらぬために輸送能力が減退しておるというような実情を見受けるのでございます。そういう実情に遭遇しておりますから、その山は、
鉱石をせつかく掘れとい
つても、
鉱石のコストが高くな
つて思うように掘れない。こういうような現場を私
ども実際に見てきておるわけでありますが、こうした点に関しましては、
農林省自体におかれて、もう少しこの道路政策のごときにもつつこんで、
肥料増産に関する限りこれにお力を入れられる御意思はないか。そうせられたならば、私は必ずや
硫安肥料も
増産にな
つてくると
確信いたす次第でございます。
今年の
食糧一割
増産の問題に関しまして、今
農村が非常に困
つておりますのは、今年の
供出は非常に無理であつたと言われる点もあるのでありますけれ
ども、そうかどうかしらんが、自己の保有米どころの騒ぎじやない、もうほとんど
供出し盡して、今すでに還元米の
配給をもらわなければ生活ができないという家が相当あることを私
どもは知
つておるのであります。この還元米
対策に対しては、今年はどういうお考えであるか。今ただちにどうせられようと思
つておるのであるか。この還元米
対策を誤られたならば、今年の一割
増産に影響してくるのじやないか。私はこれを恐れるのであります。この点に関しまして
お答えをいただきます。それによりまして、私はさらに再
質問をさせていただきます。(「
質問じやないよ」「
自由討議だ」と呼ぶ者あり)
質問でも結構だと思うのです。
〔
國務大臣北村徳太郎君
登壇〕