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1948-04-30 第2回国会 衆議院 本会議 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月三十日(金曜日)     午後四時二十分開議     —————————————  議事日程 第四十号   昭和二十三年四月三十日(金曜日)     午後一時開議  第一 昭和二十三年の所得税の四月予定申告書の     提出及び第一期の納期の特例に関する法律     の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 政府が発行する福引券当せん金の支拂等     に関する法律案内閣提出)  第三 大蔵省預金部特別会計昭和二十三年度に     おける歳入不足補てんのための一般会計か     らする繰入金に関する法律の一部を改正す     る法律案内閣提出)  第四 自由討議     —————————————
  2. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 大阪及び神戸における騒擾事件について、この際鈴木國務大臣から現地調査の結果を報告されんことを望みます。國務大臣鈴木義男君。     〔国務大臣鈴木義男君登壇〕
  4. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 今回神戸大阪に発生いたしました朝鮮人騒擾事件は、まことに遺憾な事件であります。私は、二十七、八の両日にわたり、現地についてつぶさに調査いたしてまいつた次第であります。これを詳細に申し述べまするには長時間を要しまするので、ここにごく簡略に概要を御報告申し上げ、他は御質問等に應じて委員会等において申し述べたいと存じます。  今回の事件は、山口・岡山の場合と同じく、政府方針に基きまして、大阪府・兵庫縣知事が、朝鮮人だけで経営し、朝鮮語をもつて朝鮮子弟だけを教育する学校—もちろん初等義務教育でありまするが、これをその府縣内に許しておくことは適当でないと思いまして、すべて日本教育基本法に則る教育に改めますために、朝鮮人学校閉鎖を命じ、それぞれの校舎管理をそれぞれの自治体に委ね、朝鮮人も入学せしめる、朝鮮語による教育を欲するならば、課外においてこれを、なすべきことを要請いたしましたるところ、朝鮮人諸君は、それを不当としてこの命令に服することを拒み、多数の威力によつて知事らをしてこの命令撤回せしめんとして起つた事柄であります。  そもそも終戦後、朝鮮人は第三國人となつたのでありますから、政府はしばしぱ声明を発して、連合國最高司令官の指令に基き、朝鮮に帰る者は喜んで便宜を供與する、しかし、朝鮮に帰りたくない、または帰ることのできない者は日本に残ることを許すが、日本に残る以上は、日本國法に從い、その義務を盡すことを條件として、健全なる生活を営むことを許しておるわけであります。しかるに、朝鮮人諸君のうちには——決して全部と申すのではありません、多少の朝鮮人諸君は、いかにもわが國におつて治外法権に類するものをもつておるかのごとき考え方をいたしまして、わが國法に從うことを肯じない者がありますることは、私どものはなはだ遺憾に存じておるところでありまして、今回のことも、そういうところに端を発して発生いたしたものと考えるのであります。  私は、現地について調査いたしました結果、思つたよりもこれが組織的、計画的に企てられた暴動であることに氣づいたのであります。それぞれ日本帝國主義の復活というような宣傳が行われ、どうしても朝鮮民族独自の文化を育成するために、民族独自の学校をもたなければならないというような見地から、特殊の主張をもつていることは認めまするが、とにかく、あくまで自分たち学校を保有しようという態度を捨てなかつたのでありまして、それが神戸大阪における不幸なる騒擾事件に発展をいたしたわけであります。  その前の経過はすべて省略いたしまするが、政府方針に基きまして朝鮮人学校閉鎖を命じ、かつ学校校舎返還を求めたのでありまするが、なかなか聽かれなかつた。そこで兵庫縣知事は、四月十日、来る十二日を限つて閉鎖をし、同時に校舎管理権市長に返すべきことを要請いたしたのであります。しかし、学校経営者はこれを受け容れなかつたのでありまして、かえつて知事に求めてこの閉鎖命令撤回せしめようとしまして、四月十五日兵庫縣知事を尋ねて、知事がおらなかつたために副知事の室に立てこもりまして、翌日までいわゆるすわりこみ戦術を行いまして、強談を試みたのであります。しばしば退去の命令を出しましたが、応じなかつたのであります。そこで神戸検察廰は、やむを得ず、その数百人のうち、特にこのすわりこみ戦術をしましたところの七十名を、住居侵入罪として検挙いたしまして、そのうち六十五名を拘留いたしたのであります。これに対し毎日のように返還要求があつたことはもちろんであります。  しかて、神戸当局といたしましては、ぜひとも返してもらわなければならぬ。そうして教育基本法に基く学校をつくつて、そこにはいつていただこうという趣旨から、神戸市長学校校舎返還を求める仮処分を申請することに相なりまして、神戸裁判所の容るるところとなつて、占有を執達吏に移しまする決定が出ましたから、これを執行するために、四月二十三日、二宮稗田神楽の三小学校に赴いたのであります。いずれも朝鮮人諸君が立てこもつておりますので、多少の警察官の助力を得なければ執行することができないだろうということから、二宮稗田の両小学校は、百五十人ずつの警官を連れてまいつたのでありまして、さいわいに抵抗を排除して、これは執行を完了いたしたのであります。神楽小学校には、すでに朝鮮人が多数占拠しておるということでありまするので、特に警官を二百名増員を求めまして、そうして執達吏執行参つたのでありますが、千二百名の朝鮮人諸君が占拠いたしておりまして、一歩も中に入れないというようなことから、遂に執行不能に終わつたものであります。  そこで、神戸当局、縣当局並びに検察廰当局は、この仮処分をいかにすべきかということについて協議をする必要を生じましたので、二十四日の午前九時半から、兵庫縣廰三階西南隅知事室に、兵庫縣側といたしまして岸田知事、古川副知事井手国家警察長、それから三宅国家警察警備部長中田視学の六名、市側から小寺市長関助役古山市警察局長安田秘書課長小山保安部長村上警備課長田村公安委員の七名、それから田中渉外事務局長市丸検事正田辺次席検事、この十六名が参集をいたしまして、この仮処分を強力に続行するか、それともしばらく形勢を見て延期するかということについて、午前九時半から協議を始めておつたのであります。なお二十六日に数万の朝鮮人を動員してデモンストレーションを行うということが伝えられておりましたので、このデモに対してどういう対策をとるかというようなことも協議いたしておつたそうであります。  内部に、この要人諸君が集まつて相談をしておるということを朝鮮人諸君に伝えた者があるらしいのでありまして、十時半ごろから、三々五々朝鮮人諸君が集まつてまいりまして、十一時ごろ数百人に達し、これがなだれこんでまいりまして、三階の知事室の前の廊下に充満いたしたのであります。そうして代表者知事面会を求めて、しきりに喧騒を極めたそうでありまして、しばらくドアを閉じて防いでおつたそうでありますが、遂に力及ばずして、体当りでドアを破るというようなことから、さらに控えの間から知事のおるほんとうの部屋に行くのでありますが、その間の壁を体当たりで破りまして、たくさんの穴をこしらえて、その穴を潜つてなだれこんでまいりまして、まず、机上に電話が三台あたのでありますが、みなこれを床上にたたきつけてその線を切る、それから机の上のガラスその他を壊す、いす、テーブル等を打壊すというような乱暴狼藉を働きまして、しかる後談判を開始したわけであります。  要するに、朝鮮人は独自の教育機関をもつ権利をもつておるのである、これを奪つて、あえて日本小学校に入れようとするのは、日本帝国主義の再現である。われわれは断じてこれ服することはできない、そういう命令撤回せよということを、いろいろな言葉を用いて、繰返して迫つたそうであります。数時間同じ交渉を継続して、知事を殺せ、何をぐずぐずしておるのであるかというような叫び声、喚声がしきりに聞えておつたそうでありまするが、この正面入口は、スクラムを組んで、日本人は何人も入れない、警察官も絶対に入れないという態勢をとりまして、しばしば突破して入ろうといたしましたけれども、どうしても入ることができなかつたというのであります。  そこで、進駐軍の将兵でありますならば入ることができるであろうというので、クルップ憲兵大尉が、下士官二名をつれまして知事救援参つて、これは知事室まで入ることができたのであります。しきりに談判をしております諸君を制止して、退去することを命じたのでありまするが、どうしても應じない。そこで、ピストルを放つということでピストルを向けたそうでありますが、朝鮮人は胸を拡げて、射て、自分たちはそんなことを恐れてここに來たのではないのである。命は投げ出しておるのであつて、死を賭してきたのであるから、射つならば射てということで、こもごも詰め寄るというようなわけでありまして、僅かの弾で処理できる問題ではないということを考えて、より強力なる救援の手を借りるべく、クルップ大尉下士官二名とともに一時引揚げたそうであります。神戸地区の治安を掌つておりまする最高官は、神戸地区憲兵司令官メノハー准將でありまするが、ちようどその日准將が京都の方に行つておりましたために、その帰りを待たなければ臨機の処置をとることができなかつたわけであります。  その間に強談威迫が重ねられまして、形勢が刻々険悪になつていき、どうしても外部からの援助は期待できないということから、岸田知事は心弱くも撤回するという意思を表示したのでありまして、それならば、それを文書に認めてほしいということ、になりまして、文書に認めて渡す。そうなりますると、この閉鎖命令撤回した以上は、これを原因として拘留されておる六十五名の同志は、拘留せられておる理由がないはずである、ゆえに即時釈放せよということを檢事正迫つたそうでありまして、檢事正も、一應理由あることでありまするから、やむを得ず釈放指揮に署名するということでありまして、田辺檢事朝鮮人諸君に護られて退出をして、この釈放の手続をいたしたのであります。釈放が終りまするや、これでよろしい、それならば、今日ここでやつた乱暴は一切不問に附するという一札を書けということに相なりまして、その趣旨文書を手交いたしまして、五時ごろ引揚げたそうであります。  その後、神戸地区司令官メノハー代將が帰つてこられまして、この事態を廳きまして、非常に驚かれるとともに憤られまして、第八軍司令部連絡をとりました結果、非常事態の宣言を行うということを声明せられまして、知事市長檢事正等を夜の十一時ごろ召集せられまして、今日暴行を働き、デモに加わつた朝鮮人並びに日本人は一齊に檢挙する、ゆえに助力せよ、こういう命令を受けまして、その晩から檢挙に着手したわけであります。  なお知事檢事正は、自由の身になりまするや、先ほどの意思表示は脅迫によるものであるから無効である、閉鎖命令は依然持続せらるるものであり、拘留も継続せらるるものである、一旦釈放した者も再びこれを拘留するということを宣言いたしまして、さらにこれを文書に認めて翌日声明をいたしたのであります。その後、アイケルバーカー中將も神戸まで飛行機でおいでになりまして、それぞれ指揮をせられたのであります。  これが神戸における事件概要でありまして、率直に申し上げて、事前に相当不穏空氣があつたのでありまするから、かくのごとき重要な会議を開きまするにつきましては、警備についてもう少し用意をすべきものではなかつたか。殊に袋のねずみのように、行き止りの部屋で逃げ道はないのである。二十三日、大阪さいわいに事なきを得ましたのは、副知事が裏のドアから脱出して逃げることができたからでありまして、その点では、あの部屋ではどうしても窓から街頭に飛びおりるほかに途はない、非常に高いところでありますから、飛びおりることはできませんので、はしごのようなものをかけておりるほかはなかつたのでありますが、そのはしごも遂に間に合わなかつたということでありまして、とにかくその点におきまして、会場を選ぶにつきましても多少不用意であつた。二十六日にデモが行われるということにのみとらわれて、連日計画的に、各地において継続的に、波状的にこの運動をやるということが企てられておることを計算に入れておらなかつたことは、遺憾ながら落度であつたと認めざるを得ないのであります。  なお、國家警察の本部がすぐ縣廳の向い側にあり、電話連絡ができる間にいたしたにもかかわらず、遂に一人の警官も縣廳内にはいつて救出に從事することができなかつたということも、まことに遺憾であつたと認めざるを得ないのであります。知事檢事正が、あの立場において、生命の危険において、やむを得ず、権略的でありましようが、撤回意思表示をいたした、釈放意思表示をいたしたということは、これは深くとがめることは酷であると考えるのでありまするが、ただちにこれを取消して原状に復せしめたということは、せめてものことであると考えられるのであります。  なおその後、私が立ちまするまでに千百余名、本日の報告によりますれば千六百名ほどを檢挙いたしたそうでありまして、そのうち、関係がない、あるいはごく関係が薄いと目されます者六百名ほどは釈放いたしまして、千名ほどが拘留せられておるのであります。メノ八一司令官の私に語られたところによりますれば、重き者は、内外人を問わず軍事裁判に付して処罰をし、その上朝鮮に送還するという考えである。軽き者は、言葉関係もあり、取調べ敏捷化という点から、日本裁判権に移す。日本の檢察廳と裁判所は増員して敏活果敢にこの裁判を完了すべきことを要請せられておるのであります。これが神戸における概況であります。  大阪におきましては、二十三日に同じようなへたりこみ戦術をもつて、府知事がるすでありましたため副知事面会を求め、副知事は対談約三時間に及びましたが、結局解決点に到達しなかつたのでありまして、やむを得ず、かくのごとく同じことを繰返して談判をやつてつてもきりがないという見込みをつけまして、四時半ごろ、ひそかにうしろドアから便所に行くような顔をして脱出をいたしまして府廰外に出たために、かくのごとき失態を演ずることはなかつたのでありまするが、その代り、脱出したことを知りまするや、交渉委員行動隊として来ておりました人々は、裏切つたのではないか、なぜ副知事を逃がしたかということで、非常な仲間同士の爭諭が起りまして、それが一つの騒動を巻き起した原因でもあります。しかしながら、さいわい大阪では、警察官が最初から府廳内にもはいつておりましたし、府廳外にも待機しておりましたから、それぞれ手分けをいたしまして、強制力を用いてこれを解散せしめたのであります。  ところが二十五日になりまして、さらに強力に二万名を動員して、へたりこみ戦術によつて、どんなことをしても命令撤回せしめずんばやまないという態勢を整えたのであります。情報によりますると、それぞれ戸別訪問をして、必ず出てこい、出てこない者は裏切者として朝鮮人連盟から仲間はすれにする、あるいはリンチのようなものを行うという、ことをもつて、脅迫したというようなことも傳えられているのであります。あるいは、遠方から應援に夾る者のために米三合とか一升とか、金を二百円、三百円というふうに醵出せしめまして、これを遠夾の應援者のために割くというようなことにいたし、相当の準備を整えて、そうしてまず、三箇所に集結をして大会を開いて、それから大手前公園に集結する、こういうふうな順序になつてつたそうであります。なお前夜、明日の行動方針について、あくまで穏健に合法的にやろうではないかという一派と、あくまで断固死を賭してもやれ、もし警察または進駐軍等弾圧をすることがあるならば、死を賭して闘うべしと、こういう強い議論をする一派とがありまして、徹宵議論を交換したらしいということでありますが、結局結論に到達せずして大会に臨んだらしいということが報告されておるのであります。  それで、これは各三つにわかれてなされました会場においても盛んにアジ演説等が行われまして、それぞれ群衆を興奮させたのであります。今その一々を御紹介する訳にもまいらないのでありますが、代表的なもの一、二をあげますると、生野支部大会、これは大手前に來る前に行われた大会でありまするが、そこでは、日本共産党関西地方委員柳田春夫君が、次のようなメツセージを朗読して激励したということになつているのであります。   私は日本共産党代表して、朝鮮皆様激励言葉を申し上げる。   今回の日本政府が行いたる朝鮮人学校閉鎖命令に対しては、日本共産党朝鮮皆さんと同じく絶対反対し、皆様と一緒に共同闘爭を展開しております。朝鮮独立朝鮮教育自主は絶対死守しなければならない事項であるということは、朝鮮皆様は心肝に徹しなくてはならない。   朝鮮人学校閉鎖命令反対闘爭は、朝鮮皆様の同胞が、下関や岡山神戸において活発に展開せられ、多数の犠牲者を出しておられるのである。本日皆様が行われる闘爭がもし敗北せられた節は、これら多くの犠牲者が浮ぶことができないのでありますゆえ、本日の闘爭は、皆様が死しても目的達成に奮闘せられなければならぬ。   わが共産党においても、皆様の必死の雄叫びに対し全面的に支持して、ともに共同闘爭を開始したのである。現に大阪府廳内には、われわれの同志が、皆様の夾るのを待つているのである。皆さん、本日の闘爭朝鮮人の死活問題であるから、大なる奮闘のほどお祈りいたします。  それから大手前公園に参りましてからは、各地代表が、あるいは全逓大阪支部代表とか、あるいは岡山からわざわざやつてきた代表、これは女の人でありますが、岡山では正々堂々と闘つて遂に勝つた大阪に夾てみれば意氣地がないというようなことを申して、激励をしておるのでありまするが、また日本共産党川上貫一という人は、朝鮮人教育問題は朝鮮人を奴隷化するものであり、働く人民大衆を無知に追い込まんとする支配階級の陰謀であり、これが芦田内閣の性格である、この闘爭に負けたら、さらに大なる弾圧が続くであろう、学校閉鎖は單に教育問題ではなく、民族闘爭であり、階級闘爭である、この重大意義を認識して強力に闘爭してもらいたいという趣旨演説を試みております。その他無数の人々が、三十年間日本朝鮮を併合して、筆舌に盡しがたい暴虚を加えた上、再び、われわれが朝鮮再建のために、愛する子弟を民族独自の立場から育てようとしておるのに、日本帝國主義的統制のもとにもち夾さんとするものであつて、実に慨嘆にたえないという趣旨演説を、繰返し繰返し行つておるのであります。  そういうふうなことで、大分興奮をしてまいりまして、遂に二万名の群集が大手前公園に集まつたのであります。知事室の前にも皆すわりこんで、知事室にも三十数名の代表がはいりまして、そうして数時間にわたつて盛んに撤回迫つたのであります。知事はあくまで頑強にこれを拒否し続けたわけであります。  事態が急であることを聞きまして、大阪軍政部長クレーム大佐が、いま一人の中佐を伴われまして、四時ころ知事室にはいつてこられまして、もはや会談は無用であるから、これをやめるべき旨を指示されたのであります。さらに、そのときの代表者でありました玄何がしという朝鮮人代表朝鮮人連盟の幹部でありまするが、その人に、群集解散させるように警察命令を傳えろということを命じたのでありまして、鈴木警察局長文書に書いて、こういうふうに群集に傳えて解散をさせるようにということを申したのであります。そこで玄代表は、メガホンをもつて申しましたけれども、なかなか解散する氣配は見えない。それでクレーム大佐は、一切の強力手段、武器を使つてもよろしい、こういうことを申されまして、できるだけ早くこの群集解散させるようにということを命ぜられました結果、余儀なくポンプを持ち出しまして、ホースで水をかけて群衆の散れることを希望したのであります。これでよほど動いたそうでありまするが、なかなかそれでも、行動隊と称する尖鋭分子とみずから任じておられる方々は帰らない。そこで余儀なくピストルを発射するというような騒ぎが起こりまして、あるいはとうがらしを卵に入れてきて巡査にぶつつけて、目がつぶれた。そこをつかまえて袋たたきにしたというようなことも起りまして、双方相当のけが人が生じたのであります。これはまことに遺憾なことであります。  殊に警察側の申すところによれば、故意にその少年をねらつてつたのではないそうでありますが、脅かすために撃つた彈が少年に当つて、十六歳の少年が遂に死亡するに至つたという報告を受けておるのであります。とにかく、その他重傷を負うた者が二、三あり、軽傷を負うた者も数十名ある。警官の側でも、けがをした者が、三週間の治療を要する打撲傷を初め、三十数名の警官が負傷いたしておるというようなことであるのであります。しかし、さいわい警察官が敢然努力してくれました結果、その二万の大衆も徐徐に解散をいたしまして、靜謐に帰したのであります。ただちに時を移さず、そのおもなる者数百名を檢挙いたしたのでありますが、そのうち実際に煽動的な立場に立つて行動隊として勇敢に活躍し、あるいは煽動をしたという者だけ三十五人を留置いたしまして、その他は身柄釈放する、取調べの進むに從つて起訴するかもしれないが、身柄の拘束は解くという態度をとつておるのであります。  神戸におきましては、その檢挙された者のうちに、七人の日本人がおります。共産党員とみずから名乗る神戸会議員の何とかいう人を初め、日本人が七人おるのであります。また大阪の方では、九人の日本人が留置せられておるのでありまして、大部分が全逓の人及び共産党党員であるということに報告されておるのであります。  この両事件を通じまして、私どもはまことに遺憾に考えるのでありますが、今日はただ報告に止めておくのでありますから、これに関する感想を述べることは省略いたしますが、警察のあり方について考うべき点があるということは、主として今回現地において、親しくこの問題に關與した人々意見を承つてまいつたところであります。制度として特に改革すべきものは今のところ認めないが、運用の上において幾多まだ熟せざるものがあつて、大いに考えなければならぬ点があるということに意見は一致しておるのであります。また朝鮮人諸君が、どうしたならば日本法律守つて、われわれとともに平和に生活をしていつてくれるようになるかということについて、眞劔に考えなければならないということを教えられたのでありまして、その点は、朝鮮人の間にも、すでに建國同盟あるいは居留民團とかいう方面の人々は、今回のやり方が非常に間違つたやり方である、あくまで合法的に交渉をし、また教育の問題もできるだけ日本と協調してやつていくべきものであるという考え方になつておるということを、すでに声明を出したものもあるという報告を受けておるのであります。  なお、兵庫縣知事並びに検事正等の責任問題ということもありますが、それらは御質問がありましたならばお答えを申し上げまするが、知事がかりに若干の責めらるべきものがあるといたしましても、これは自治体の首長でありまして、中央政府において懲戒権のようなものはもつておらないのでありますから、兵庫縣会の問題として、また知事御自身の問題として考えていただくほかはないと考えております。檢事正の責任問題につきましては、法務廳において管轄いたしておるのでありますから、これについては十分に考慮し、善処いたすつもりであります。今日は、ただ専實の概要を、あまり批評を交えずに御報告だけいたした次第であります。
  5. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) ただいまの鈴木国務大臣の報告に関し質疑の通告があります。これを許します。野坂參三君。     〔野坂參三君登壇〕
  6. 野坂參三

    ○野坂參三君 この問題は、私たちは非常に冷靜に、客観的に見、また判断しなければならないと思うのであります。いたずらに興奮してやれば、日本の將來にとつて、言いかえれば、日本朝鮮とは將來相提携し、相助け合つて進まなければならない、その二つの國の問題について、重大な問題を起す可能性がある事件であります。從つてどもの方では、今鈴木総裁のなされました報告に対して、二、三問題があると考えますので、簡単に質問したいと思います。  この問題は私たちの方でいろいろ今材料を集めていますので、さらに別の機会に、詳しく教育問題から、あるいは神戸大阪の問題について質問し、また政府の御意見も質したいと思つていますが、ただここで、まず第一にお聽きしたいのは、今鈴木総裁の申されました、二十六日の大阪における事件だと思います。これについて鈴木総裁は、全般についてはいろいろ詳しく申されました。たとえば、共産党がこうこう演説したということまで申されましたが、しかし、いかにしてあの十六才の朝鮮の子供が殺されたかという問題については、きわめて簡単に漠然と報告されただけである。私は、この問題について、これは明らかに日本における人権蹂躙のはつきりした現われとして、ここで鈴木総裁にお聴きしたいと思います。  この事件は、総裁の言われましたように、すでに府廳の廣場で解散している。すでに聽衆の八〇%が退場し始めている。わずかに二〇%が残つて、この指導部がトラックに乗つて会場から出掛けた。その会場の入口に、警官隊やあるいは消防隊が待機しおつた。さて、このトラックが会場の出口から出ようとした時に、先ほども総裁が申されましたが、建國同盟とか、こういうふうなものがトラックに飛びついて、そこで格闘が始まつた。これに相呼應するごとく、ホースですぐ水を出す。同時にそのホースのすぐ横に、名前もはつきりしておりますが、警部補がいて、この警部補が植込みの下からねらつてつた。この彈が当つたのが十六の児童だつたのです。ここに私は寫眞をもつておりますが、明らかにこれは威かすためでも、あるいは空砲を発したのでもない。上に向かつてつたのではなくて、下に向つてつている。この寫眞で明らかなつているように、彼は後ろから撃たれて、前の目のところを彈が抜けている。こういう事件がある。これは明らかに鈴木総裁の言われたこととは違つている。明らかにこれは群衆をねらつてつている。  のみならず、また別の寫眞によれば、十四歳の……(発言する者多し)私は冷静に問題を取上げていただきたいと思うのです。もう一つの寫眞を見ると、十四歳の朝鮮の少女、これが後ろから警官に殴られて、そうして今ほとんど重態に陥つている。こうした関係のものが——重傷者が約十名ばかりいる。  ここで私たちが得た情報によりますと、この大阪事件相当これは評画的にやられているところがある。二十六日の朝、警察学校で、ある教官が警察の学生に対してこう言つているそうです。きようは少しでも伺か不穏な状態があれば徹底的にやるんだ、こういうことを言つているそうです。さらに、この会場を護つている警官が新聞記者に対對して、きようは発砲するから君らも注意しろ、こういうことも言つている。こういう点を見ただけでも、これは明らかに日本警察側において、初めからある計画的な意図をもつてやられているような形跡が十分にある。この点を私は鈴木総裁にお聽きしたいのです。  さて私は、この問題をわれわれとしては冷靜に、それから深く検討してみる必要がある。私たちがこの教育問題を見たときに、一月に政府の方で命令を出されているが、しかし三月三十一日までに、政府が具体的にこの問題を解決するためにどれだけ手を打つたか。これに私たちは非常な大きな疑問をもつております。朝鮮人側においては、決しては日本政府の主張していることを全面的に拒否してはいない。これははつきりした文書があります。ところが三十一日になると、学校をすぐ閉鎖すると高圧手段に出てきた。ここに一つの問題がある。私はいろいろ情報を見ますと、朝鮮人側においても行過ぎの点がある。これはわれわれもはつきり認める。しかしながら政府の方に、明らかにこの問題を親切に、平和的に解決するような意図が出ていない。  この問題について、外人の記者の電報が新聞に載つています。これは共産党が言つているのじやありません。こう書いている。これはシカゴ・トリピユーンの記者である。「占領軍の現在における主要任務改、日本当局の行動を監督し、ときにそれを矯正する措置をとることである。しかし悲しいことに、日本当局者の中にはあまりに氣の弱い臆病者が多過る。」と書いてあるこれは共産党が言つているのじやない。「彼らは占領軍の威の陰に隠れて、断固たる措置をとれないと主張している。彼らは、ある一部の人々に対して、その人々の人気を失うようた措置をとらなくてはならないような事態が発化すると、肩をすぼめ、悪名の責任を占領軍に帰そうとする。」  私は鈴木総裁にお聽きしたいのは、今度の事件について政府はいかなる責任をおとりになるか。かの兵庫縣の知事の問題もあります。これは第二の問題であるが、そのような重大事を起したについて、一体政府はいかなる責任をもつか。  われわれ共産党は、朝鮮教育問題については、はつきりした態度をとつています。これはすなわち日本の学制に基いて、朝鮮の特殊性を認めてもらいたいということを言つているわれわれは、神戸大阪の問題について、教育問題についてははつきりした態度を示している。これについて声明もビラも出しています。しかしながら、この問題と、あの神戸事件とか、あるいは暴動事件とか、これとわれわれとは全然関係がない。われわれは、教育問題については関係がある。しかしながら、一人としてこれを煽動して……。     〔発言する者多し〕
  7. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  8. 野坂參三

    ○野坂參三君(続) そうして、問題をここまでもつてきたについては、政府の方においていかなる責任があるか。これを私は総裁にお聽きしたいと思います。     〔國務大臣鈴木義男君登壇〕
  9. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 十六才の少年を射殺したということは、まことに遺憾であります。私の受けておる報告によれば、故意にその少年をねらつたて射つたのではなくして、結局誤つてその少年に当つたのであるというふうに報告を受けておるのでありまするが、なお野坂君の御質問少年については、私大阪を立つときに、一層詳細に調べて報告を送られたいということを申してありますから、報告を得ましたならば、重ねて事態を明らかにいたしたいと存じます。少女の問題についても同様であります。  野坂君は、はなはだ日本の官憲が卑怯である、臆病であるというような趣旨のことを申されましたが、これは連合軍の神戸の地区におられまする方が私に言われたのには、どうも日本警察官はおとなしすぎる、相当の不法行為をしても黙つて見ている習慣がある、棒が一本あれば、大抵の不法行為に対しては一週間ぐらい沈黙を守らせることができるはずだ、武器もおいおい増加してやるが、棍棒でもそれくらいのことはできるはずだということを申されて、赤面をいたした次第であるのであります。  なお、政府がいかなる責任をとるかということにつきましては、慎重に考慮しなければならぬと思うのでありまして、こういう事案が何ゆえに起つてきたかという原因を十分につきつめた上で、政府にその責任ありと信じまするときには、潔くその責任をとるつもりであります。問題は、その原因を探究することがただいま残されている重要な問題であります。(拍手)      ————◇—————
  10. 笹口晃

    ○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、外崎千代吉君提出の鉄道事故に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  11. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  鉄道事故に関する緊急質問を許可いたします。外崎千代吉君。     〔外崎千代吉君登壇〕
  13. 外崎千代吉

    ○外崎千代吉君 ついこの間、四月の二十四日の午後一時二十分ごろ、青森発の東北本線急行上野行貨物列車が、二十八台連結しまして時速四十五キロの速力で進行中、鉄橋の第四ピーアーの破損から、非常な音響を立てて脱線轉覆したのでありまして、後部わずかに八台を残して、機関車・貨車二十輛もろとも川に落ちまして、機関手、同助手二名は即死しまして、馬五頭が圧死するような事件が起きたのであります  この問題とともに、二日おきまして四月二十六日に、奥羽線で、青森発上野行四〇二列車が、夜の十二時ごろ福島縣庭坂・赤岩間において、上り信号所附近にさしかかつた際、突然先頭機関車が脱線し、仰むけに轉覆して、次の郵便車は十メートルのがけ下に轉落し、客車二、三輛は四十五度の傾斜で脱線して、機関手、助手、技士三名が即死し、ほかに郵便車の乗務員一名が重傷を負つておるのであります。  こういう問題に関しまして、二、三運輸大臣に質問してみたいと思います。  由來日本の鉄道は、戦前までは世界に誇つてつた鉄道でありまして、盗難事故の少いこと、故障の少いこと、時間の正確なこと、そうして乗客の取扱いの親切なことにおいては、いわゆる世界的な鉄道として知られておつたのでありますしかるに、戦後における日本の國鉄はどうであろうかこれをわずかに最近の例をとつてみますと、青森縣下だけでも、鉄道事故としては、三月六日の奥羽線陣場・白河間における機関車の破裂事件があり、五能線では三月中旬ごろに、機関車の煙突破裂事故が二回もありました。今回の事故は、最近縣下に発生した鉄道事故の最大のもので、乗客満載の車でなかつたことは不幸中の幸といわれておるのであります。また客車の事故としては、昨年二月二十五日、八高線の列車脱線轉覆のときは、四百十数人の死傷者を出しております。続いて四月の北海道室蘭線の列車正面衝突、本年に入つては、東北本線の平泉駅構内での貨車脱線、さらに最近での大惨事としてあげられておるものは、近畿鉄道奈良線の電気機関車の故障による追突事故で、死者七十四名、負傷者百五十名ほど出したのであります。  これら一連の鉄道事故発生は、戦時中における資材の酷使が原因して、あらゆる鉄道施設の老朽がその極に達しておることがあげられて、関東方面では、命取り電氣機関車には乗務できぬと從業員が抗議しておるのであります。祖國再建の重要物資や大事な人命を預かる國鉄が、こんな故障だらけでは、社会の公益事業たる権威を失墜することはなはだしいものがあるといわなければなりません。  今回も原因究明中であるということになつておりますが、悲しいことには、東北本線の四月二十四日の脱線事故に対しましては、すでにだれ言うともなく、この鉄橋はあぶない鉄橋であつて、危険であるということが言い傳えられておつたのであります。しかるに、その責任をもつておる運輸省は、汽車が轉覆脱線して人が死なないうちは手をつけないというような状態が続いておると言われてもしかたがあるまいと思うのであります。この今の鉄橋は、明治三十年以來、昭和五年に一度ガーターの補強をしただけでもつて、あとは一回も手をつけていないのであります。明治三十年と言えば、五十年間であります。しかるに、これが轉覆して人の命をとらないうちは手をつけないという政府の考えは、どういうものであるか。これをまず伺つてみたいのであります。  同時に、奥羽線の問題であります。これなどは、新聞紙上で見ると、計画的犯行であるということが書いてあるのであります。また内容を調べてみますと、なるほどと考えられる点があるのであります。それは素人のわざではない、少くとも鉄道によほどの知識をもつた者でなければやれない仕事である。それはカーヴにかかる所においてレールのボールトをはずしておるし、またレールの継目々々のボールトをはずしているとともに、レールに対する大くぎを抜いておつた、しかもカーヴのはげしい所のそれをとつてつたということは、これは素人のわざではない。少くとも鉄道に対して知識をもつている鉄道員ではないかとさえも轉えられているが、これに対し運輸大臣はいかなる考えをもつているか。  いま一つは、奥羽線の大釈迦、鶴ケ坂という所がありますが、この大釈迦のトンネルは、明治二十七年開業以來ほとんど手入れをしたことのないトンネルと言われております。これも最近では、玄人筋ではない、素人の連中さえも、あのトンネルはいつ落ちるか、危険である、あそこを通るときにはひやひやするということを、乗客自身が、流言飛語であるかもしれぬけれども、言つているのであります。ついこの間の野内川鉄橋も、素人の方々の乗客も、危檢だ危檢だと言われておつた。それが落ちて、遂に命をとられておる。明治二十七年開業以來手入れをしたことがないトンネルは、これまた危険であるということは、だれ言うとなく傳えられている。しかるに、これに対して運輸省は、手入れをしようという考えもなく、また落ちて人が死ななければ手入れをしないのであるか、この点も運輸大臣にお聽きしたいのであります。  いま一つは、東北本線、奥羽線、いわゆる東北方向の列車と、関西方面の列車の違う点を伺つてみたいのであります。どういうものか、関西方面の列車は、これは玄人の鉄道の連中が言うのでありますが、向うで使うところの列車はよい機関車を使い、きれいな客車を用いているが、東北方面の列車は、ぶち壊れた機関車か、漏つている機関車、または関西、関東方面で使われなくなつた、腐つたような汽車ばかりを東北方面に渡すということは、数十年前から傳えられている。現に何かラヂオでも取付けようとか、また新しい列車を運轉しようというときには、関西方面にもつていく。東北方面に何をもつてくるとかいえば、急行を止めるとか、二等車廃止ということなんかを東北方面にもつてくるのであつて、特に人種が違うかもしれませんが、少くとも今後日本はわずかに北海道、本州、四國、九州しかないのであつて、今後の北海道は、第二の満州と言われている。北海道を開発する以外に日本の開発の途はないのであると言われている。それほど重要なる東北に対して、なおかつ今までのごとく、運輸大臣は東北方面を冷遇して、関西方面のみを中心に置くのであるか、重点をいずれに置くか、これまた運輸大臣にお聴きしたいのであります。  いま一つは貨車の問題である。貨車の配車の問題は、これこそわかつてもらわなければなりません。最近公々然として、列車の中でも、電車の中でも、一本貨物を手に入れようとすれば、少くとも一、二万円から三、五万円、急ぐときは十万円もの賄賂を使わなければ貨車が手にはいらぬと言われていることは、一体いかなることであるか。このことについて、運輸大臣はすでに伊能次官を出しているから、わかつていることであろうと思うけれども、伊能次官のごときは、ほんのその一部であつて、全國の貨車の配車を受けるときには金を使わなければならぬということが、非常に論議されております。こういうことに対して、はたして綱紀粛正を現運輸大臣は行うつもりであるかどうか。あくまでもこれに対して見ないふりをして、そうして鉄道員が給料が安いのであるから、これくらいのことはあたりまえであるというなら別であるけれども、そうでなく、完全に行おうとするならば、これに対していかなる対策をもつておるか、これを伺いたい。  いま一つは荷物の問題である。鉄道を経由してきた荷物において、最近では、ほとんど完全な荷物の届いておることがないということが非常に傳えられております。私も常時荷物を受けとつておるが、半分以上はとられております。また行李で衣類を送るというと、行李のみが届いて、中にはむしろやなわがはいつていたということが、各方面で聞かれるのであります。このことに対して運輸大臣は、責任をもつてこういう多くの人に迷惑をかけないということが言明できるかできないか、これを伺いたい。この間も、何とかいう局長が來ての話では、公然鉄道の中で年々盗まれるものが一億からある、鉄道の中で盗難に遭うものが一億円からあつて、これを取締るために運輸警察が必要であるということを申されておりましたが、それほどまでの被害をこうむつておきながら、黙つてこれを過すのであるかどうかということを承りたいのであります。  その他、私は最近意外なことを聞いたのであります。それは買出し部隊の中に、鉄道員の制服をつけた堂々たる者が各駅方面に列をなして、徒党を組んで駅々に連絡をとつて買出しをしておつたことは認めておりました。常にわれわれも旅行して、これを苦々しく考えておりましたが、最近において、東京のある管理部に参ると、いつでも米なら一俵でも二俵でも賣ります。砂糖も炭もあります、いかなるものもあるからといつて、これを知人、友人の間に話をして、そこに行けばいつでも買えるということを東京の人たちが言つております。これに対して、運輸大臣はいかなる処置をとるか、これも見逃すのか、これについて伺いたいのであります。  その他たくさんありますけれども、私は一應議長さんとも約束がありまして、今日は長くやらないという理由のもとに上つたのでありますから、多くは申し上げませんが、今申し上げた点に対して、責任ある、いいかげんな一時的の答弁でなく、少くとも國民の安心できる御答弁を願いたいと思います。     〔國務大臣岡田勢一君登壇]
  14. 岡田勢一

    國務大臣(岡田勢一君) 外崎君の御質問に対してお答え申し上げます。  第一の御質問の列車事故の問題でありますが、先般國鉄から実相報告で御報告を申し上げましたように、事実上戦時中に鉄道線路及び施設が酷使されておりまして、確かに今日は衰弱を來しておりますので、御指摘のような事故が起りまして、國民の皆様にいろいろ御迷惑をかけておりますことは、まことに遺憾であります。これは速やかに補修をいたしまして、事故が起らないことを期したいと思つております。  四月二十四日の野内川橋梁における事故の点につきましては、なるほど御指摘のように、明治三十四年に橋梁がかけられましてから今日まで数十年を経過しておるのでありますが、外崎君が言われましたように、その間一回も檢査あるいは補修をしなかつたというようなことはないのであります。時々検査、補修をやつてまいつておるのでありますが、たまたま最近におきまして、流心が急に変りまして、それが豪雨を伴いまして、豪雨のために御指摘の橋脚が洗われておりましたところへ列車が通りかかりましたときに傾斜をいたした。そうしてあの事故が起つたのであります。これは運輸省の管轄ではないのでありますが、その上流における土砂の採取から、流心が最近急に変つてまいつたというのも、一つの原因であろうかと存じます。この点につきましては、至急に復旧並びに修繕を加えて、將夾このような事故の起らないように注意をいたしますと同時に、他の河川におきましても、今後一層警戒をいたしたいと存じております。これは今三十日の午後三時に開通の見込みとなつております。  それから第三の御質問の、奥羽線赤岩・庭坂間における脱線事故でありますが、この事故は、御指摘の通りに非常に急カーヴでありまして、殊に千分の三十一というような下り勾配であります。しかも深夜でありまして、事故の起りましたのは夜半十二時近くであつたと思いますが、レールの継ぎ目の継ぎ板を取りはずしまして、その附近、大くぎを抜きとられておつたのであります。これに対しまして機関士が目が届きませんことは、やむを得ないことではなかろうかと存じております。そういたしまして、これは計画的の列車妨害であることは明白であろうと思われるのでありまして、目下嚴重に警察におきまして捜査中であります。今日まで、まだその結果は報告されておりません。  それから大釈迦・鶴ヶ坂間の隧道が危險に瀕しておるという御指摘でありますが、これは取調べをいたしまして、そのようなことでありましたら、ただちに補修をいたしたいと考えます。  次に、東北方面に機関車の悪い、あるいは客車もどうもよくないのをまわす。関西方面と差別待遇をするのではないかという御指摘でありますが、決して運輸省といたしましては、差別待遇などは考えておりません。最近におきまして、旅客運送におきましても、あるいは産業に御不自由をかけております点は、まことにお氣の毒であると思つておりますが、ただいま特殊運送などが行われておりまして、それらからも若干の制約すを受けておるのであります。でありますが、御指摘のように、まことに御不自由をおかけいたしております。また御指摘になりましたように、別のお話でありますが、北海道方面におきましても、滯貨あるいは旅客の福湊はまことにはなはだしいのでありまして、これらにつきましても、夾る七月一日からダイヤを改正いたしまして、実施いたしたいと存じておりますが、その時期までに計畫をいたしまして、できる限りこの福湊の緩和改善に努めたいと存じております。  それから最後のお尋ねの小荷物の抜き取り、紛失、荷いたみ等につきましても、嚴重に捜査いたしまして、さような事故が今後起らないように監督をいたすつもりであります。  それから東京におけるある管理部において、食糧品等がやみで賣られるというようなお話がございましたが、私といたしましては、かようなことは絶対にあり得ないことであると思つております。もし事実がありますことでありましたら、具体的に御指摘をいただきましたならば、取調べをいたしまして断固たる処置をとりたいと存じております。  以上、お答え申し上げます。     ————◇—————
  15. 笹口晃

    ○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、昭和二十三年度一般会計暫定予算補正(第二号)及び昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第一号)の両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  16. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  17. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  昭和二十三年度一般会計暫定予算補正(第二号)、昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第一号)、右両予算案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。予算委員会理事川島金次君。     〔川島金次君登壇〕
  18. 川島金次

    ○川島金次君 ただいま議題となりました昭和二十三年度一般会計暫定予算補正(第二号)及び昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第一号)につき、その内容及び委員会における審議の経過並びに結果を御報告いたします。  この両予算案は、さきに成立いたしました昭和二十三年度四月分暫定予算に続く五月分の暫定予算でありまして、その経費の積算は、現行の物價・給與水準を基礎として計上し、租税その他一般の歳入は、原則として現行制度による年間収入月込額の月割額によつて計上してあります。  まず一般会計について申し上げますと、その補正増加額は、歳入歳出とも二百四十五億三千七百余万円で、これを四月分と合計しますと、四百九十七億七千四百余万円となります。歳出は、その総額も内容もほとんど四月分暫定予算と変りありませんが、そのおもなるものをあげますと、終戦処理費六十億円、價格調整費二十億円、公共事業費二十二億円、うち災害復旧費十三億円、地方分與金三十四億円、地方警察費國庫等に対する政府出資金二十五億四千余万円などであります。歳入も四月分暫定予算とほとんど同じでありまして、そのおもなるものは、租税收入百七十一億八千万円、うち所得税收八百二十一億二千余万円、専賣局益金五十八億三千余万円、價格差益納付金五億五千余万円などであります。  次に特別会計は、既設の二十四特別会計と、今回新たに設置される不正保有物資等特別措置特別会計に関するものでありまして、補正増加額の総額は、歳入四百七十四億七千余万円、歳出四百八十一億三千余万円でありまして、これを四月分暫定予算に加えますと、歳入千百四十一億五千余万円、歳出千百二十五億五千余万円となります。歳入のうち、鉄道、通信の両特別会計においては、設備建設改良費の財源について公債収入によつておりますが、その金額は鉄道八億円、通信六億三千余万円であり、このうち五億五千万円までは日本銀行に引受けさせ、または日本銀行から借入れ得ることにしてあります。なお、本年度暫定予算の実行上支出と実収入とのずれを補うため必要な大藏省証券の発行または一時借入金の最高限度を拡張して、一般会計二百億円、特別会計二百六十億三千余万円に改訂しております。  以上がこの予算の内容でありますが、次に委員会における質疑について報告いたします。質疑は、物價改訂、経済統制の存否、綿花クレジツト、回轉基金、税制改正、農業所得課税、行政整理、労働法規改正、講和会議等各種の問題にわたつて、各委員からきわめて熱心に行われました。これらに対する政府側の答弁のうち二、三を拾ててみますと、物價改訂は全面的なものはやらない予定である、統制は不必要なものたとえば食料品の一部分等に対しては徹配するつもりである、行政整理については、二割五分天引というような機械的なものではなく、行政能率の向上という点から目下具体案を考究中である、また労働法規については、労働者の勤労意欲を低めるような改悪はやらないつもりであるとのことでありました。なほ、この間の質疑の詳細は速記録をごらん願いたいと思います。  かくて討論にはいり、民主党の小坂委員より、河川修理等の公共事業については十分に意を用いて、昨年のごとき災害を繰返さないように、また客観的情勢より見ても、本予算の編成をできるだけ速やかに終りたいというような希望を附して、賛成の意見を述べられました。次いで共産党の野坂委員より、この予算に対し次のような反対意見を述べられました。すなわち、本予算は総じて大資本家、金融擁護の予算であつて、國民に対する苛斂誅求の程度がはなはだしい、こういう予算では、われわれは絶対に承服できないから、この予算は返上して、すべからく組替えを求めたいというような意味の反対主張があつたのであります。  かくて採決の結果、共産党の予算返上論は少数をもつて否決、この両予算案は過半数をもつて可決された次第であります。  以上、簡単ではございますが、御報告申し上げる次第であります。(拍手)
  19. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも可決であります。両案を委員長の報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  20. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて両案ともに委員長報告の通り可決いたしました。     ————◇—————
  21. 笹口晃

    ○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、小額紙幣整理法案、不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案、不正保有物資等特別措置特別会計法案及び金資金特別会計法の一部を改正する法律案の四案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  22. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  小額紙幣整理法案、不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案、不正保有物資等特別措置特別会計法案、金資金特別会計法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。財政及び金融委員長早稻田柳右エ門君。     〔早稻田柳右エ門君登壇〕
  24. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました各案について、委員会の経過並びに結果を御報告申し上げます。  第一の小額紙幣整理法案について申し上げますが、本案は、臨時通貨法により発行いたしました五十銭の小額紙幣のうち、冨士山の図柄並びに靖國神社を配したるものは、その図柄が適当でないというので、本年八月三十一日限りその通用を禁止し、速やかにこれを回收いたしたいというのであります。なおこのほかに、大正六年勅令第二百二号及び大正九年法律第六号によりまして発行された五十銭、二十銭及び十銭の小額紙幣がありますが、この残額はきわめて僅少でありますので、これも併せて回収したいという法律案でありますが、委員会においては、全会一致原案の通り決定をいたした次第であります。  次の不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案でありますが、本案は委員会においても非常に問題になり、論議が交されましたが、特に民主自由党の塚田委員より、本案は往年の國家総動員法のごとく國民の権限を侵害するおそれがある、憲法の保障する個人の財産権を浸すおそれがある、すなわち憲法舞二十九條第三項の規定に違反することなきやの疑いが多分にあるという点と、さらにその物資を買い上ぐるにあたりまして、利息二分一の不融通性の國債をもつてすることは、どうしても適当と思われないが、わが國経済再建のため眞にやむを得ざるものとして賛成をする、從つて、本法案の運用にあたつては特に留意をし、二箇月の猶予期間中に、この法律のために買い上ぐべき物資がやみ市場に流れ出し、物償の高騰を來すごときことがあつたり、あるいは政府が買い上げたる品物を拂い下げる場合、隠匿物資摘発等の場合に見たるがごとき忌わしき事件の起らないように努められたい、あくまで國民の利益を侵害せざるよう、いわゆる運用の妙味を発揮せられんことを強く要望されたのでございます。さらに、社会党を代表して川合彰武委員、民主党を代表して中曽根委員等よりそれぞれ意見がありましたが、本案は最後に満場一致可決確定をいたした次第であります。  次の不正保有物資等特別措置特別会計法案は、ただいま御報告をいたしました不正保有物資の対價を登録國債で洪済することに関する法律案によつて取扱いますところの物資の取得、賣拂い等に関する収支を明確にするため特別会計を設置しようとする法律案でありますが、二、三の質疑應答を重ねた後、全会一致をもつて可決いたした次第であります。  最後の金資金特別会計法の一部を改正する法律案でありますが、本案は前に一億円の繰入限度を定めたのであります。しかし、五月以降において不足を生ずる見込みでありますので、この際五億円を増額し、金資金を六億円にしたいという改正案でありますが、詳細は速記録に譲りまして、多くを申し上げることを省きたいと存じます。なお詳しいことについては速記録によつて御高覧をいただきますようお願いいたします。  以上の四案とも全会一致をもつて可決確定したことを御報告申し上げる次第であります。(拍手)
  25. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) これより採決に入ります。  まず、不正保有物資等の対價を登録國債で決済することに関する法律案及び不正保有物資等特別措置特別会計法案の両案を一括して採決いたします。両案を委員長の報告通り決するに賛成の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  26. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて両案とも委員長報告の通り可決いたしました。  次に、小額紙幣整理法案及び金資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  28. 笹口晃

    ○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、地方自治法の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  29. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつそ日程は追加せられました。  地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。治安及び地方制度委員長坂東幸太郎君。     〔坂東幸太郎君登壇〕
  31. 坂東幸太郎

    ○坂東幸太郎君 ただいま上程に相なりました地方自治法の一部を改正する法律案につき、治安及び地方制度委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、この法律案概要を説明いたしますと、地方公共團体の職員に関する職階制は、試験、任免、給與、能率、分限、懲戒、保障、服務その他身分取扱いに関して規定すべき地方公務員法案につきましては、さきに國会の審議を経て、昭和二十三年法律第十四号をもつて地方自治法の一部を改正し、昭和二十三年五月一日までに、これを國会に提出しなければならないととにいたしたのであります。しかるに、その後諸般の情勢により、当時予定いたしました本年五月一日までに國会に提出することがとうてい不可能と存じましたので、さらに提出時期を延長するの余儀なきに至つたのであります。そこで、問題の重要性に鑑み、十分審議をする必要上、これを昭和二十三年十二月三十一日までに提出しなければならないということにいたしたのであります。  本委員会におきましては、四月三十日、すなわち本日午前委員会を開き、本案に関して有田官房次長から提案理由の説明を聴取いたしました後、二、三の点につき質問應答あり、慎重審議の結果、地方公共團体の職員に関して規定する法律は、諸般の情勢により、國会に提出する時期を昭和二十三年十二月三十一日まで延期することを適当と認めましたので、政府の原案通り満場一致をもつてこれを可決すべく議決した次第であります。  右、報告いたします。
  32. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  34. 松岡駒吉

    ○講長(松岡駒吉君) 日程第一、昭和二十三年の所得税の四月予定申請書の提出及び第一期の納期の特例に関する法律の一部を改正する法律案、日程第二、政府が発行する福引券当せん金の支拂等に関する法律案、日程第三、大藏省貯金部特別会計の昭和二十三年度における歳入不足補てんのための一般会計からする操入金に関する法律の一部を改正する法律案、右三条は同一の委員会に付託された議案でありますから、一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。財政及び金融委員会理事梅林時雄君。     〔梅林時雄君登壇〕
  35. 梅林時雄

    ○梅林時雄君 ただいま議題となりました三法律案について、財政及び金融委員会における審議の経過並びに結果について概略御報告申し上げます。  まず最初に、昭和二十三年の所得税の四月予定申請書の提出及び第一期の納期の特例に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  政府は、さきに國会の審議を経て、本年に限り所得税の四月予定申告書提出及び第一期の納期に関し特例を設け、所得税法の改正案が國会で可決された後、改正規定に從つて所得税の四月予定申請書を提出し、第一期の納税をするようにいたしたのであります。目下政府は、賃金、物價等経済諸情勢の推移等に照らし租税負担を軽減するため具体案を檢討中でありまするが、諸般の事情により、その提案の時期が予定よりも遅延することと相なりましたので、本年に限り、所得税の四月予定申請書は六月一日の現況によつて記載し、六月一日から同月三十日までに提出することとし、また所得税の第一期の納期も六月一日から同月三十日までとして、それぞれ二箇月間繰延べることといたしますとともに、第二期の納期も八月一日から同月三十一日までとして、一箇月繰延べる必要があるのであります。なおこれに伴い、所得税の七月修正予定申請書についても、八月一日から同月三十一日までに提出することといたしたのであります。  本案は、四月二十三日本委員会に付託され、二十八日提案理由の説明を聽いた後、民自党の宮幡委員、社会党の佐藤委員より二、三質疑のあつた後、討論を省略し、採決致しましたところ、全会一致をもつて可決いたしました。  次に、政府が発行する福引券当せん金の支拂等に関する法律案について御説明いたします。  まず政府原案の要旨を申し述べますと、製造タバコの賣上を増進し、專賣益金の確保をはかるため、本年四月一日から五月三十一日までの間において製造タバコの購入者に発行する福引券に関する当籤金の支拂その他の事務について、政府が個々の当籤者である債権者に対して直接当籤券を檢査した上、別々に小切手を振り出すことは、事務の不円滑を來するので、この種の事務の取扱いに経験を重ねておる日本勧業銀行に委託してこれを行わせることが適当と思われるのであります。これに伴い、当籤金の支拂に必要な資金を同行に交付するとともに、委託事務の取扱いに要する費用についても概算拂をすることができるようにする必要があり、本案が提出された次第であります。  本案は、去る二十四日付託になつたものでありまして、二十八日、社会党の川合彰武君より簡単な質疑のあつた後、討論を省略し採決の結果、全会一致可決をみた次第であります。  第三に、大藏省預金部特別会計の昭和二十三年度における歳入不足補てんのための一般会計からする繰入金に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  大蔵省預金部特別会計昭和二十三年度暫定予算における歳入歳出は、別途提案されました昭和二十三年度特別会計暫定予算補正(特第一号)に計上してありますごとく、五月分の歳出としては、人件費及び事務費、預金利子、他会計への繰入金、給與特別措置費等合計一億二千九百九十一万七千円を要するのでありますが、この合計の固有の歳入は、預金部資金の運用による利子、有價証券の償還による益金等七百五十二万二千円でありまして、差引一億二千二百三十九万円五千円の歳入不足を生じているのであります。この歳入不足については、本会計の性質、健全財政等の見地から、これを一般会計から繰入れることとするのを適當と考えるのであります。このためには、大藏省貯金部特別会計の昭和二十三年度における歳入不足補填のための一般会計からする繰入金に関する法律に規定してあります繰入金の限度額、すなわち一億三千二百十一万四千円を、先に申し上げました一般会計からの繰入額一億二千二百三十九万五千円だけ引上げる必要があり、本案が提出された次第であります。  本案は、去る四月二十六日本委員会に付託されたものでありまして、二十七日政府委員より提案理由の説明を聴取し、翌二十八日質疑に入り、社会党川合彰武君、民自党塚田君などから質疑のあつた後、討論を省略し採決の結果、全会一致をもつて可決いたしました。簡單でございますが、右御報告申し上げます。(拍手)
  36. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 三案を一括して採決いたします。三案の委員長報告はいずれも可決であります。三案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて三案は委員長報告の通り可決いたしました。(拍手)     ————◇—————
  38. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) この際、不当財産取引調査特別委員会委員長から、同委員会における調査の中間報告をいたしたいとの申出があります。これを許します。不当財産取引調査特別委員長。武藤運十郎君。     〔武藤運十郎君登壇]
  39. 武藤運十郎

    ○武藤運十郎君 不当財産取引調査特別委員会の第一回調査報告を申し上げたいと存じます。  まず、本委員会の概況について一言申し上げておきたいと存じます。御承知の通り本委員会は、昨年十二月十一日、本院における不当財産取引調査特別委員会設置に関する決議に基き設置されたものでありますが、その調査事項は廣範かつ綿密を要しますので、本委員会に事務局を設け、現在七名の調査員と五名の事務補助者が調査事務に從事いたしております。近くさらに若干増員として、事務局の整備充実をはかりたいと存ずる次第であります。  本委員会が設置せられましてから、去る一月二十九日第一回の委員会開会以来、四月二十七日までに十六回の委員会を開会して、調査審議を進めてまいりました。兵器処理に関する問題と復興金融公庫の融資状況小委員会は、足立梅市委員が小委員長に就任して、鋭意調査を進めておる次第であります。  本委員会において、当面調査審議を要する案件として取上げている問題は、 一、辻嘉六氏をめぐる政治資金に関する件 二、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。 三、兵器処理に関する件 四、復興金融公庫の融資に関する件 五、群馬縣におけるコーヒー拂下げ処分に関する件 六、西村埼玉縣知事の特殊物件処理に関する件 七、昭和電工、竹中工務店、梅林組、清水組等に対する不当融資等に関する件  目下調査審議中の右七件について、今日までの委員会の経過を中間的に御報告申し上げます。  一、辻嘉六氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、中曽根幾太郎氏がほか数名が、いわゆる世耕情報をめぐつて、軍服拂下げに関し六百四十五万円余を詐取したとの疑により起訴せられ、目下公判中でありますが、この多くの國民に迷惑をかけた金のうち、二百五十万円が中曽根より辻嘉六氏に献金せられ、辻氏はこの金を、昨年四月選挙の際。約四十名の立候補者に対して、陣中見舞というような趣旨のもとに分與しておるのであります。本委員会は、これが眞相糺明のため、本月五日以來今日まで七回にわたり、関係者四十五名を委員会に出頭を求め、証人として喚問いたしました。なお辻嘉六、山口久吉の両氏は病氣のため出頭できないので、臨床の上尋問をいたしました。中曽根幾太郎氏も、本日証人として喚問いたした次第であります。  今日まで出頭した証人の各証言は、大体において一致いたしておりますが、二、三の証人につきましては、重要な点において相当の食い違いがありますので、あるいは偽証の告発をしなければならないことになるかもしれません。  なほ辻氏は、中曽根幾太郎氏以外に、吉田彦太郎氏ほか三名から、六百五十万円余の金を献金せられておりますので、これらの金もまた政治資金として撤布せられたか否かの点につきましても調査を進めてまいりたいと考えております。  二、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、龜井貫一郎氏をめぐる政治資金に関する件。本件は、龜井貫一郎氏が軍服拂下げに関し詐欺の嫌疑により起訴せられ、目下公判中でありますが、龜井貫一郎氏と関連ある厚生同胞協力会関係の綿引喜一氏ほか二名の詐欺被告事件と一括して調査することにいたしております。問題の中心は、詐取金合計約一千三百万円のうち約四百七十万円が政治資金として撤布せられている事実の糺明にあるのであります。  右のごとく、辻氏をめぐる政治資金問題については、いまだ必ずしもその核心をついてはおりませんが、今までの調査によつて判明した一つのことは、辻氏という政界裏面における特異な存在人物を中心として、一方からはこれに二百万、三百万というように大口の政治献金が行われ、他方数十人の政治家がここに集まつて、二万、三という政治資金の分配に興かつていたという事実であります。かくのごとき人物の存在と、これを中心とする金銭の授受が、日本の政界、官界及び財界をいかに腐敗せしめるかという事実の糺明は、しばらくこれを後日に譲るといたしましても、少なくともこの事実は、日本の政党及び政治家が選挙に際して莫大な費用を要することを証明するものでありまして、これが政界腐敗の根本原因であることを考えまするとき、委員会は國会に対して、速やかに適当な立法をなすべきことを勧告するものであります。この意味におきましてはまさに行われんとする選挙公営を中心とする選挙法の改正及び政治資金規正法の制定等は、未だ完璧とは言い得ないとしても、政治腐敗防止の一方法として、まことに時宜に適するものと考える次第であります。  次に亀井氏事件は、辻氏事件と同様、政治資金関係事件でありますから、委員会は、これを廣く政治資金を糺明する事件の一環として、近く正式に関係証人十数名の出頭を求める予定となつております。  三、兵器処理に関する件。終戦後、航空兵器及び陸上兵器の解体及び処分につきまして、日本製鉄、日本綱管、神戸製鋼、扶桑金属及び古賀電氣の五社が兵器処理委員会の名称で組合をつくり、鉄鋼については、日本製鉄及び日本綱管が地域を区分して解体処分を代行し、非鉄金属については、神戸製鋼、扶桑金属及び古河電氣の三社が地域を区分して担当し、それぞれ解体処分を代行したのであります。しかるに、この代行五社の処分につき、世上とかくの批評があり、また末端においても、その処分に関し幾多の疑惑がありますので、本委員会は、当時の関係資料を提出せしめ、その拂下先、拂下價格及び拂下用途等につき詳細調査を続行中であります。檢察廳においても、本委員会の活動に刺激せられ、十数日以前より兵器処理委員会関係各地における帳簿、書類等を押収して、不正事実の有無につき調査を開始した模様であります。本委員会といたしましては、兵器処理委員会が政府より拂下げを受けた総トン数と処分賣却した総トン数との関係、兵器処理委員会の経理につき不当な点の有無、拂下先の適否及び拂下げをなした鉄鋼、非鉄金属の用途の適否等につきまして、今後徹底的な事実の糾明をいたす予定であります。  四、復興金融金庫の融資に関する件。復金融資に関し世上とかくの批評がおりますので、本委員会といたしましては、この眞相を究明することが必要と思われますので、目下三百万円以上の融資先の名簿を提出せしめ、その他の資料とともに種々調査を進めております。兵器処理及び復興融資に関する問題の調査は、実に厖大な事実であつて、困難を極めるものでありますが、目下小委員会において鋭意基礎的な準備調査をいたしておりますので、約一箇月後には、本委員会において正式に証人喚問の運びに至ると考えられるのであります。  五、群馬コーヒー事件に関する件。いわゆる群馬コーヒー事件と申しますのは、終戦当時群馬縣にありました軍所有のブラジル産コーヒー原豆約九十三トンを、昭和二十一年二月、縣下一齊取締りの際発見し、知事はこれを昭和二十二年七月より同年末にわたり縣外三十三人に拂い下げましたもので、その拂下げを行うに際し、知事は、買受人より塩、地下たび、自轉車等を提供せしめ、その提供困難の向よりは、コーヒー公定價格のほかに、信認金と称してトン当り二十五万円を受けとり、さらに同年九月、同縣水害後の拂下分については、同じく公價のほかに、寄附金名義をもつてトン二十八万円ないし三十万円を買受人より受けとつたものであります。  本委員会は、委員武藤運十郎、荊木一久、足立梅市の三君を、前後二回にわたつて現地に派し、綿密な調査を行わしめたのでありますが、問題の焦点は、知事の行いました拂下げが適法であるかどうか、またこの拂下げをめぐつて知事ほか数名の縣高官及び紹介者と買受人との間に忌わしき行為が行われはしなかつたかという点であります。  右のごとく、群馬コーヒー問題につきましては、一應の準備調査を了し、檢察廳に対しましては、具体的に項目をあげて、さらに徹底した捜査をなすべきことを要請してありますので、遠からず縣官及び政治家等にまつわる不当財産取引が明らかにせられることと存じます。本委員会は、この結果をも参考としつつ、地方政界浄化のために関係者の責任を徹底的に追及いたしたいと考えております。  六、西村埼玉縣知事の特殊物件処理に関する件。本件につきましては、近く委員を派遣して現地調査をいたしたいと存じております。  七、昭和電工、竹中工務店、梅林組、清水組等に対する不当融資等に関する件。この問題は、先ほど申し述べました復金融資の問題とも関連いたしますので、最近の理事会において、復金融資に関する小委員長をも加えまして、調査の根本方針、調査の範囲、喚問すべき証人等を決定するとになつております。  最後に、本委員会の目的は、申すまでもなく政界、官界、財界の浄化による日本民主化の促進であります。この大目的達成のためには、委員会は党派、階級、職業等のいかんを問わず、いやしくも腐敗した箇所は勇敢にこれを清掃し、化膿した部分に遠慮なく鋭いメスを入れて、これを剔決するに躊躇するものではありません。本委員会が、出発に際して特に超党法的な性格を與えられましたのも、日本の民主化という、各党各派に、否、全国民に共通な目的をもつておるからにほかならないのであります。かかる大手術こそ、実に日本の民主化に基礎的な前提を與えるものでありまして、本委員会の使命はまことに歴史的な重要性をもつものと申さなければなりません。委員長としての私はもちろん、委員諸君もまた眞に選ばれたる大檢察官として、また民主革命の光栄ある担い手として、與えられたる任務の実践に挺身いたしておるのであります。  委員会に附置せられました事務局も、また最近とみに陣容を整備し、一同よくこの委員会設置の趣旨を休して、一言の不平もなく一致協力する様は、まことに涙ぐましいものがあるのであります。惜しむらくは、予算に制限がありますために、委員会はこの人たちの労苦に対して十分に報い得ないことであります。  本委員会が所期の目的を達し得るや否やは、一にかかつて全國民の支持いかんによることを考えますとき、私は心から諸君及び諸君の背後にある全國民の本委員会に対する超党派的な協力を望んでやまない次第であります。 (拍手)     ————◇—————
  40. 笹口晃

    ○笹口晃君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、淺沼稻次郎君外四十三名提出、政治資金規正法案を、提出者の要求の通り委員会の審査を省略して上程し、その審議を進められんことを望みます。
  41. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。  政治資金規正法案を議題といたします。提出者の趣旨弁明を許します。淺沼稻次郎君。     〔淺沼稻次郎君登壇〕
  43. 淺沼稻次郎

    ○淺沼稻次郎君 ただいま議題となりました政府資金規正法案に関し、共産党を除く各派を代表いたしまして、提案の理由及び本案の要旨を説明申し上げます。  まず、本案の起草の経過について申し上げます。本案は、政党法及び選挙法に関する特別委員会の中の政党並びに選挙に関する腐敗防止法案起草小委員会におきまして起草をいたしたのでありまするが、小委員会は、一月三十一日、政党並びに選挙に関する腐敗防止法案起草のため、政党法及び選挙法に関する特別委員会において選任され、二月四日第一回小委員会を開き、小委員会長を互選した後、長野小委員長のもと、爾後十二回にわたり活発なる論議を重ねつつ、これが起草に当たつてまいつたのでありまするが、四月二十七日、三十日、本委員会において小委員会の成案に対し若干の修正を加えて最後的に成案を決定いたし、本日ここに共産党を除く各派共同提案として提出する運びに至つた次第であります。  小委員会の経過について一言申し上げまするならば、まず二月十二日より四回にわたつて、本法案立案に関する研究事項に基き法案起草についての種々の協議をし、その結果に基き法制部においてとりまとめ方を依頼いたしましたものを、三月二十六日、いわゆる政治腐敗防止法案要鋼として小委員会に配布することにいたしたのでありまするが、たまたま全國選挙管理委員においても同様の趣旨をもつ法案の起草に当たつており、相当のところまで折衝が進んでおる旨の話を伺いましたので、三月三十一日、同委員会と協議し、四月一日同委員会の説明を聽取いたしまつした結果、よりよき法案の起草をいたす目的で、両案の長所をとつて一つの素案を作成するよう事務当局に依頼をいたしたのであります。小委員会は、この素案につき四月十三日より四回にわたり協議いたし、大体の成案を見たのでありまするが、さらに若干の修正を加える必要があり、二十六日に小委員会を開き、政府資金規正法案の成案を得た次第であります。それを基礎といたしまして本委員会で審議を進め、成案を得た次第であります。  次に、本案の要旨を申し上げます。本案は、第一章 総則、第二章 政党、協会その他の團体、第三章 公職の候補者、第四章 政党、協会その他の團体及び公職の候補者以外の者、第五章 報告書の公開、第六章 寄附に関する制限、第七章 罰則、第八章 補則、次に附則、全文五十九條に及んでおるのであります。  この法律案の骨組は、大づかみに申して三つの部分から成り立つております。第一は、政党、協会その他の團体、公職の候補者及び第三者の政治活動に伴う資金の全貌を一般國民の前に公開する措置であります。第二は、政治資金の寄附の制限の措置でありまして、主として選挙に伴う不正行為の発生を未然に防止せんとするものであります。第三は、この二つの措置に対する違反行為の処罰及びその結果としての当選無効、選挙権、被選挙権の喪失等に関する措置であります。この三つの措置を総合的に組立てることによつて、全体として政治活動の公明と選挙の公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄與することを目的としております。從いまして法案の題名は、その内容に最もふさわしい意味合から、いわゆる政治腐敗防止法案等の名称を避け、政治資金規正法案と名づけることにいたしました。  さて、具体的な内容について申しまするならば、第一章総則において、本法の目的を明示するとともに、各本條に現れております用語の定義を規定しております。選挙の範囲は、衆議院議員選挙法、参議院議員選挙法、地方自治法による選挙に限つてあります。また政党と協会その他の團体について特に定義を設け、政党とは、政治上の主義もしくは施策を推進し、支持し、もしくはこれに反対し、または公職の候補者を推薦し、支持し、もしくはこれに反対することを本來の目的とする團体とし、協会その他の團体とは、政党以外の團体で、政治上の主義施策を支持し、もしくはこれに反対し、または公職の候補者を推薦し、支持し、もしくはこれに反対する目的を有する團体をいうことといたしたのであります。たとえば、組合等が本來の目的においては経済團体あるいは思想團体等であつても、この目的を有するに至つたときは、その限度において本法案のねらいとする費用公開の趣旨に副い、團体の収支に関する規定の適用を受けることになるわけでありまして、これらの團体の寄附や支出をいたずらに制約する等の意味をもつものでないことはもとよりのことであります。  次に、政党、協会その他の團体に関して申しますると、まず、これらの團体の代表者、主幹者及び会計責任者の届出を規定し、寄附の受領も支出もあげてこの届出の後になさるべきこととし、この手続をとらないで、隠れて團体等が資金の授受をすることは、これを防止することといたしました。しかして、会計責任者の義務として、会計帳簿の備えつけ、毎年三回の収支の定例報告、選挙に関する収支の特別報告、書類の保存等に義務を規定いたしまして、政党を初めこれらの團体の収支の全貌が、それぞれの選挙管理委員会に詳細に現われてくることを期しておるのであります。これらの團体の寄附、支出について報告を要するものは、個人にかかわるものは五百円、團体にかかわるものは千円以上のものについて、氏名、住所等を明らかにすることとしてあります。さらに、会計責任者の事故によつて責任があいまいになるようなことのないため、事務引継ぎについての規定を設けました。また政党、協会その他の團体の支部についても、以上の取扱いは同様といたしました。  次に、公職の候補者に関しまして、まず政党等の場合におけると同様出納責任者を定め、これを届け出ること、この手続を経ないうちは、寄附の受領または支出が制約される旨を規定いたしました。しかして、出納責任者の義務とした、会計帳簿の備えつけ、選挙運動に関する収支の報告、書類の保存等を定めてあります。このほかに、特に重要な規定といたしまして、選挙運動に関する支出の権限を、わずかの例外を除いては出納責任者一人に専属せしめたことであります。なお、候補者の出納責任者に関する事項は、現在の衆議院議員選挙法あるいは参議院議員選挙法の規定とほぼ同様でありまして、本法案中に包含された部分については、附則において選挙法を改正し、該当條文を削除することにいたしました。  次に、一般の第三者が政党、協会その他の團体のために二千五百円以上の支出をした場合の報告義務を規定いたしました。すなわち、これらの團体のために第三者運動として支出した者は、これを報告しなければなりません。また官吏その他公職にある者は、寄附を自由になし得ることといたしましたが、この場合は、授受双方の側において、これに関する報告義務を負わしめることにいたしました。  次に報告書の公開であります。これは、実は本法案の最大眼目の一つでありまして、今まで申し上げましたところにより、選挙管理委員会に提出された各種の報告書は、選挙管理委員会に提出された各種の報告書は、選挙管理委員会の公表手続、保存義務と、一般の閲覧要求権の両面の措置によつて、廣く國民の前に公開されるのであります。  次に、寄附に関する制限といたしまして、ます一定の身分または地位に伴い、絶対的に、あるいは特殊の場合を除いて、一般的に選挙に関し寄附をしてはならない者の範囲を掲げまして、これらの者が寄附をすることも、これらの者から寄附を受けることも許されないことにしたのであります。すなわち、寄附に関する制限といたしましては、 第三十五條 左の各号に掲げる者は、選挙に関し、寄附をしてはならない。但し、第一号に掲げる者がその属する政党、協会その他の團体又はその支部に対し寄附をする場合及び当該選挙の関係区域外に在る者に対し寄附をする場合は、この限りでない。   一 当該選挙の公職の候補者   二 衆議院議員選挙法又は参議院議員選挙法による選挙に関しては國、地方自治法による選挙に関しては当該地方公共團体と、請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者   三 昭和二十二年勅令第一号第三條にいう覚書該当者   前項第一号の候補者は、選挙期日の公示又は告示の日前一年間にしたすべての寄附について、寄附を受けた者の氏名(團体にあつては名称)、寄附の金額及び年月日を記載した報告書を、立候補の届出後七日以内に、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に提出しなければならない。 第三十六條 何人も、選挙に関し、前條第一項各号に掲げる者に対して寄附を勧誘し又は要求してはならない。   何人も、選挙に関し、前條第一項各号に掲げる者並びに外國人、外國法人及び外國の團体から寄附を受けてはならない。 第三十七條 何人も、選挙に関し、本人の名義以外の名義を用いた寄附及び匿名の寄附をしてはならない。   何人も、前項の寄附を受けてはならない。   第一項の規定に違反して寄附がなされたときは、その寄附にかかる金銭又は物品の所有権は國庫に帰属するものとし、これが保管者において、國庫に納付の手続をとらなければならない。 こういうぐあいに制限をしておるのであります。  次に罰則におきましては、各本條に対し違反行為の態様につき、事柄の軽重に應じてでき得る限り公平を期すべく、手続的な規定の違反と本質的な規定の違反とにわけ、愼重考慮したのでありますが、この法案の特別の重要性に鑑み、全体として相当重い処罰をもつて臨み、殊に過失犯をも処罰する旨を規定いたしました。また罪の時効は二年を経過して完成することにいたしております。なお、処罰に伴う当選無効及び選挙権等の喪失の規定も、罰則の章に規定してあります。  次に補則におきましては、この法律施行に関する事務的規定を掲げておきました。  最後に附則においては、本法施行に伴う経過規定を定めたほか、衆議院議員選挙法、参議院議員選挙法の一部改正をいたしております。これ等の選挙法に規定されておる罰則の限度も、本法案の罰則と均衡をとつてこれが改正を加えたほかは、主としてこれらの規定が本法中に吸収せらるるに相應する改正であります。  以上が本法案の要旨でありまするが、小委員会において論議の中心となり、さらに本委員会において論議の中心になりましたおもなる点は、第一に、労働組合、農民組合等の團体が本法の適用を受けるか否かの問題。第二に、いわゆる第三者の選挙運動に関する支出の届出に関する問題。第三に、当該選挙の候補者の寄附を絶対的に禁止すべきか否か。公職にある者の寄附をどう扱うか。立候補前の候補者がした寄附の報告についての期間の問題。第四に、罰則においてその限度、過失犯、時効の年限、当選無効等の規定の処置等の問題でありました。詳細は速記録によることといたしまして、これらの論議の結論とも申すべきことは、ただいまの要旨の説明に申し上げたごとくでありますので、ここではただ問題の要点を指摘するに止めておきます。  最後に、本法案の題名でありまするが、これにつきましては、先ほど申し上げました通り、政治腐敗防止法、政治團体等費用公開法等種々の案が出たのでありまするけれども、結局、本案の内容に最も近い意味において、先ほど申し上げた政治資金規正法とすることいたした次第であります。  なお右のほか、佐竹君からの第三條、第六條、第三十五條の規定その他に関し、栗山委員から第六條等の違反の問題に関し意見があり、また林委員からは共産党代表して反対の意見が表明されたことを、ここに申し添えておきます。  以上をもつて政治資金規正法案の提案の理由及びその要旨について説明申し上げた次第であります。これが政界明朗化のために役立つことができまするならば、われわれ起草した者の幸これに過ぎるものはないのであります。私はここに、本案の起草に当たりました委員各位の熱心なる御努力に対し、厚く感謝いたします。何とぞ満場一致をもつて本案を可決確定あらんことを切望する次第であります。(拍手)  最後に、お手もとに配つてありまする法案は仮刷でありまするから、これも御了承のほどを願いたいと存ずる次第であります。以上をもつて報告を終わります(拍手)
  44. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) これより討論に入ります。林百郎君。     〔徳田球一君「進行に異議あり、議事進行に関して……」と呼ぶ〕     〔「進行々々」と呼ぶ者あり〕     〔徳田球一君「議事進行の動議だ…」と呼ぶ〕
  45. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 林君に発言がないならば棄権と認めます。発言されますか。     〔林百郎君「棄権じやない、動議について決定してもらいたいと思う」と呼ぶ〕
  46. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 林君にすでに発言を許しましたから、動議の提出については発言を許していないのであります。     〔徳田球一君「動議だ、議長、なぜ動議を……」と呼ぶ〕
  47. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 林君に発言を許したのですが、発言をいたしませんか。     〔徳田球一君「議事進行について動議、動議……」と呼ぶ〕
  48. 松岡駒吉

    ○講長(松岡駒吉君) 林君に発言を許しましたが、発言がありませんので棄権と認めます。  これより採決いたします。(「異議あり、異議あり」と呼ぶ者あり)本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  49. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 起立多数。よつて本案は可決いたしました。     —————————————
  50. 笹口晃

    ○笹口晃君 自由討議はこれを延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  51. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十七分散会