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1948-04-27 第2回国会 衆議院 本会議 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月二十七日(火曜日)     午後二時四十三分開議     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) お諮りいたします。相馬助治君より、本日から五月七日まで病氣のため請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 山花秀雄

    山花秀雄君 大阪兵庫における騒じよう事件に関する緊急質問及び生産管理の問題に関する緊急質問を逐次許可されんことを望みます。
  6. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山花君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて大阪兵庫における騒じよう事件に関する緊急質問を許可いたします。前田種男君。     〔前田種男登壇
  8. 前田種男

    前田種男君 私は、この機会に、大阪兵庫におけるところの騒じよう事件に関して、去る四月十四日から昨日までの出來事に対しまして、総理大臣文部大臣法務総裁の明確な答弁を求めるものでございます。  朝鮮人の今回の問題の動機は、昭和二十一年十一月二十日附の総司令部からの発表に基き、本年一月二十四日附で文部省から通逹になつておりますところの、教育基本法に基く学校閉鎖命令原因になつておるのでございます。日本國内における朝鮮人取扱い等軍司令部命令にもございます通り日本法規のもとに、日本人同等立場において取扱いをなさなくてはならないことは、言うまでもないのでございます。しかし、この通逹が発せられた後、過ぐる三月三十日には山口で、四月十六日には岡山で、あるいは兵庫は四月十四日から引続いて、多数の代表者が、それぞれ、縣当局あるいは市当局を訪問いたしまして、いろいろこの問題の取扱いに対して嚴重当局の反省を求めるような態度に出たのでございますが、そうしたことが繰拡げられまして、去る四月二十三日には、大阪府廳に一万人近くの朝鮮人を動員いたしまして、府廳の中を全部占拠するというような状態のもとに、この問題が展開されたのでございます。  大阪におきましては、当日、わずか二時間そこそこの間における警察当局の動員が敏速に行われ、三千数百名の警官を動員いたしまして、この問題の処置に対して万遺憾なき態度とつたがために、非常な大問題になるというところまでいかずして、二十三日には一應問題が片づいたのでございます。しかし、府廳内知事部屋ガラス、机、その他器物が相当破壊され、双方に数十名ずつの死傷者が出たというようなことになつたのであります。(「死者があるのか」と呼ぶ者あり)  その翌日、この首謀者と目される人々が相当檢束されました各所の警察署に対しましても、さらに大挙して、そうした人人の釈放方を要請するということのために、大阪南警察署のごときは、そのために石が飛ぶというようなことで、これまたここで相当けが人が出たという事実もあり、最後には解散を命ぜられるというような出來事になつたのでございます。越えて昨日、一万二千という多数の人々が、また再び大阪府廳に集結いたしまして、そうして知事の回答を求めるという態度に出ましたが、この結果は、事なくして済んだのでございます。  さらに四月十四日から昨日までにおけるところ兵庫縣の様子を申し上げますならば、四月十四日の晩、相当多数の代表者知事部屋にへたりこみをいたしまして、その翌朝までがんばつて、この問題に対して当局の取消しを要請するという態度に出、その結果、相当多数の人々が檢束された。その檢束者を奪還するという名目と、本目的の逹成のために、去る四月二十四日には大挙して縣廳に参り、ちようど知事市長警察長等がこの問題について協議をしておりましたその部屋に参りまして、そうして四時間、五時間という長い間監禁同様の処置をし、しかも電話線まで寸断して、強制的に要求條項に対する同意を求めたのであります。  そのときに強制的に要求いたしましたその條項参考までに申し上げますと、  一、不法行爲のかどで公判のため拘束中の朝鮮人を釈放すること。  二、釈放された法律違反者の不起訴に同意すること。  三、朝鮮人学校に関する裁判所の命令を取消すこと。  四、以上要求した朝鮮人に対して何らの処置をとらないことに同意すること。  以上のことを要請いたしまして、四時間以上がんばりました結果、そのために知事並びに檢事正はこの内容同意をいたしまして、そうして不始末を惹起したというのが今日の現状であります。しからば、こうした不始末を起しました知事檢事正、その他の出先当事者処置に対して、中央政府は一体いかなる態度をもつて臨むかという点を明確にしていただきたいと思うのであります。  さらに、今回の問題におきましては、神戸におきましても、大阪におきましても、朝鮮人問題に関連いたしまして、日本共産党関係しておるということを今朝の新聞は報じておるのでございます。しかも今朝の新聞にありますところの、日本共産党から配布されたというビラ内容参考までに申の上げますならば、「全朝鮮人諸君よ」と題しまして、  一、日本共産党民族権利を擁護するであろう。  二、不法拘禁を受けている七十三名の代表を釈放せよ。  三、彼等を不法に抑圧しておる責任を追求せよ。  四、これらの責任者を追放せよ。  五、少数民族権利を保護せよ。  六、朝鮮人教育自主性を擁護せよ。  七、戰爭宣傳を停止せしめよ。  八、被抑圧朝鮮人同胞よ、日本共産党に來れ。  というビラを配布して、そうして、この問題に対して同調の態度をとつておるかのように、今朝の新聞は報じておるのでございます。こうした関係に対するところ政府のその後の調査内容、あるいはこの問題に対する処置をこの際明確にいたしまして國民の疑惑、不安を一掃せなくてはならないと私は考えます。  さらに、うわさに聞くところによりますと、数日後に追つておりますところの五月一日のメーデーにこの問題をもちこみまして、メーデー闘爭の中に織りこんでやろうとする計画すら一部にあるやに承るのでございます。もし、再び三たびこうした問題が全國的に展開されることになりますと、國内の治安はまつたく混乱の底をつくと私は考えます。來るべきメーデー当日に対する対策、あるいはメーデーでなくとも、この後この問題がどうなるかということに対する当局の明確なる態度を、この際明らかにしてもらいたいと私は考えます。  さらに、最後に申し上げたい問題は、一体教育問題に端を発しましたが、終戰以來における日本政府朝鮮人の問題については、幾多の問題があるのでございます。この問題に対する当局態度処置方法等は、いろいろな点で遺憾な点があつたと私は考えます。この遺憾な点に対する今後の善処、そうした方策等に対して、相当決意ある、あるいはいろいろな面から見ましたところ責任と義務を明確にした態度がなくてはならないと考えます。もし、朝鮮人々日本人化して、日本法律を守り、日本國土をみずからの国土として、今後永久に日本社会秩序のもとにおいて生活しようという人々に対しましては、当然市民権を與えるという方法も考えられるでありましよう。そうした方法を指導的に政府はとられなくてはならないと考えますが、こうした態度に対しましても、政府当局がこの機会に明確にすることが時宜を得たものであろうと私は考えますが、この点に対する総理大臣文部大臣あるいは法務総裁答弁を明らかにして、この問題を通じて海外あるいは國内に対するいろいろな不安を一掃すべく努められんことを切に希望いたしまして、質問の要旨に代えます。(拍手
  9. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 後藤悦治君。     〔後藤悦治登壇
  10. 後藤悦治

    後藤悦治君 私は、この機会に、全國的に一大センセーシヨンを起しました今回の神戸並び大阪におきまする朝鮮人騒擾事件に対する政府所信を伺いたいと思うのであります。  今回は、終戰後初め進駐軍司令部から非常事態の宣言をされるというような、まことに日鮮兩民族のために悲しむべき事態を惹起したのでございますが、これは私がいまさら申し上げるまでもなく、すでに皆様方は、新聞渉外局発表が出ておりまするから、あらましは御存じであろうと存じますから、それの重複を避けたいと存じます。ただこの機会に、その実情にいささか言及いたしまして、私が政府所信を質したい要点の二、三に触れてみたいと思うのであります。  御承知のごとく兵庫縣知事は、この朝鮮人学校に対するところ閉鎖命令を出したのであります。また神戸市長は、学校校舎からの立退きを要求したのであります。また市丸神戸地檢檢事正は、この問題に対しまするところ煽動者檢挙しておつたのでありまするが、これが二十四日の騒擾において、これらの知事市長並びに檢事正という現地のそれぞれの担当官が、一たび断行した措置を飜して、一應それらの要求を受けざるを得なかつた。これはどういう実情であつたか。この当日の兵庫縣廳におきまする場面を、この際一言申し述べてみたいと存ずるのであります。  当日、ちようど兵庫縣廳におきまして、兵庫縣知事並びに神戸市長檢事正あるいは教育部長、これらの、今回の事件関係を有しまするそれぞれの責任者が、本問題に関してたまたま協議をいたしておつたのであります。その縣廳に、約千名ばかりの朝鮮人が押し寄せました。現在兵庫縣廳は、元の兵庫縣立第高等女学校を、戰災後仮廳舎として使用をいたしておるのでありまするが、これが教室を知事室に充てておりまするために、知事副室は一方口になつておりまして、知事室知事副室は、仮の壁が設けてあるにすぎないのでございます。たまたまこれらが大挙して押し寄せましたので、知事室闖入を防ぎますために、官房に関係をいたします縣吏員が、内部からこれを阻止せんといたしておつたのであります。この仮ドアを多数の暴力によつてまず破壊して闖入をいたしました。次に、副室から知事室にはいりまするところのこの仮障壁を、壁ぐるみ破壊をしたのであります。こうして闖入いたしました多数の暴力的な行爲者は、ただちに知事の卓上にありました電話器を床上に投げつけて破壊をいたし、通信を遮断いたし、その机の上に飛び上りまして、その辺のガラスは散乱をする。あらゆるいす類はことごとく破壊せざるはなし、こうして一つの威圧を加えまして、これらの関係者に、ただいま前田議員が読み上げられたごとき要求の應諾を迫つたのであります。かかる際において、この急を聞いてかけつけました少数のM・Pが、何とかこれを阻止せんといたしたのでありまするけれども、これらの闖入者は、撃つなら撃てと婦人も交えて押し迫つて、このM・Pの阻止に應じなかつたのであります。こういう状態が、遂に強行的にそれぞれ知事市長檢事正に対して要求事項を承認せしめた。こういう経過をたどつておる次第であります。  私は、一たびこれらの責任者が断行いたしました措置を、こういうような事態によつて撤回をいたすということについては、いかに暴力を背景とした脅迫的行爲といわなければならぬといたしましても、断固一身を挺して社会秩序と法を守るべきであつたと存じます。しかし、かような事態のもとにこれらの措置がとられましたことは、まことに遺憾にたえないのでございますが、本日の新聞に報じておりますところによりますと、政府は昨日の閣議において、これらの知事に対するところ罷免要求をいたしまする彈劾訴追、もしくは檢事正に対する罷免等を取上げられておらるる模様であります。私は、これら各責任者が、一身をささげて法の擁護と治安維持に挺身し得ざることは、まことに遺憾であつたとは存じまするけれども、現地のこれら責任者のそれぞれの処分によつて政府本件に対するところ責任は断じて解除されるべきものではないと考えておるのであります。(拍手)  私は、さきに本院におきまして、浜松事件を取上げて緊急質問をいたし、政府に警告を発しておるのでございます。この責任は、むしろ政府が負うべきであると存ずるのであります。当面のこの責任に対しまして、私は政府二つにわけてその所信を質したいと思います。その一は、当面の措置として政府はいかなる処置を講ぜんとするか、いま一つは、將來対策として政府はいかなろ所信を有しておるのであ、ろうか、この二つに大別をして廳いてみたいと思うのであります。  ただいま申し上げましたごとく、これら知事市長檢事正等現地責任者責任はその從たるものでございまして、政府責任といたしまして、今日の朝鮮人自己自由意思によつて日本に在留いたしておるのでございまするからして、この朝鮮人日本に留まりまする限り、どこまでも日本法律に從わなければならないことは周知の事実であります。まず、この朝鮮人内地在住あり方について明らかにしておかねばならなかつたと思うのであります。それと、具体的治安維持力におきまして、今回の事件におきましても、浜松事件におきましても、國家警察地方警察との連繋、これの有しまする治安維持力機動性、こういうようなことに関しまして、今後政府はいかなる方途を講じてこれらの不測の事態に備えんとするのであるか。ひとり今回のごとき問題だけでなく、新たな警察法によりますところ弱小町村自治体警察は、その人員の寡少から、まことに警備力の手薄を露呈いたして、おるのであります。これらの地方自治体警察國家警察一朝有事に備えまする機動力の確保について、政府はいかなる具体的方策をとらんとしておられますか、御見解を伺いたいと思うのであります。政府は、この機会にこれらの措置を明確にされまして、この事件を契機といたしまして、少くとも朝鮮人内地に居住をいたしまするそのあり方を明らかにし、今回の事件によつて招來されましたところ國民不安を断固解消せねば相ならぬと存じておる次第であります。  第二番目に私が伺いたいのは、これらの取締りも、また單なる断圧のみによつては相ならぬと思うのであります。すべからく、これが発生いたしました原因を探究いたしまして、具体的に將來に及ぶ対策を立てねばならぬと存ずるのであります。本件具体的解決をいたしまするにつきまして、何といたしましても、私はただいま申し述べましたことく、朝鮮人内地在住のあわ方を明確にいたすとともに、また隣邦民族との融和ということも基調にいたさねぱならぬと存じておるのであります。  教育に対しましての具体的措置といたしましても、もとより日本学校教育基準法によりまして、日本人同等教育を受けますることは問題はないのでありますけれども、少くとも朝鮮民族が、それぞれ自己民族のために特殊の教育を行わんといたします意欲に対しましては、これは現在の法規が許す範囲内において、やはり一つ私学的便法を講ずることが当然だろうと思うのであります。これは善隣民族のよしみとして、円満なる協調の基盤の上に立つて解決をしなければならぬと考えておるのであります。  私どもは、文化的平和日本を建設してまいりまする上からは、隣邦朝鮮とは永遠に友好的な將來を保持しなければならぬと存じておるのであります。少くともこれは、今日現段階より速やかに出発すべきであると考えておる次第であります。少くとも事件解決は、この見地から政府がしてもらいたいと思うのであります。しかし、この円満協調善隣友好の基礎の上に立つといえども、さきに申し上げましたごとく、断固として、日本に在住する限りにおきましては、法治國日本秩序保持ということに、また日本政府としての権限を保持せねばならぬと考えております。  かように考えてまいりまするときに、最も遺憾に存じますのは、神戸事件におきましては、共産党党員であります神戸会議員堀川一知君が、これの煽動者として檢挙されておるのであります。そのほか八名の共産党員檢挙されております。少くとも善隣友好円満協調の上に立つてまいらねぼならない際に、これら日本人であるところ共産党員諸君が、民族離間をも來しかねまじきところ煽動的行爲をいたし、今日の不祥事件を起しましたことは、日本民族として、愛國的見地よりまことに遺憾至極にたえないと思う次第であります。(拍手)  以上述べました二点に関しまして、この際政府の明確なる御所信を伺いたいと思う次第であります。(拍手)     〔國務大臣芦田均登壇
  11. 芦田均

    國務大臣芦田均君) ただいま御質問に相なりました、神戸市における去る二十三日以後の暴行事件につきまして、政府方針並びにとらんとする措置についてお答えいたします。  御承知通りに、わが國に残留する朝鮮人は、昭和二十一年十一月二十日の連合軍司令部発表によりまして、わが日本國民同一法権のもとに、日本法規秩序とに服從すべきものであるという趣旨が明確にされたのであります。その後のわが國内における犯罪檢挙数字等についてみまするに、在留民の数に比較して犯罪件数が、朝鮮残留民関係するものがすこぶる多いことは、まことにわれわれの遺憾とするところでありまして、昨二十二年中に起つた犯罪件数は、朝鮮人関係において一万を突破しておるのであります。かかる事実に当面して、政府治安維持の上から、これらの問題について常に愼重に考慮いたしておるのでありますが、わが國の警察力は、終戰以來著しく弱化しております。また最近の國家警察並びに地方自治警察の組織に着手いたしましてから日の浅い影響もありましよう、警察力の弱化を回復することはきわめて困難な状態にあり、またその相互の機関の間における上下左右連絡においても、きわめて遺憾な点があるやに考えておる次第であります。  これらの状況に鑑みて、ただいまの御質問のうち、まず最初に神戸において引起されたる暴行事件処置についで、政府がいかなる方針をもつておるかという点を明らかにいたしたいと想うのでありますが、現に暴行事件関係したる容疑者檢挙については着々進捗いたしております。遠からず事実の眞相は発し得ると思いますが、他方、兵庫縣知事並びに檢察官のとつたる当時の処置については、先ほど後藤君より詳細説明のあつた通り、前後の事情からして、生命財産の危險を賭するにあらずんば、朝鮮人一部の要求を拒否することはきわめて困難な事情にあつたと信ぜられるのでありまして、われわれも、その当時の事情については深くこれを諒とするものでありますけれども、同時にまた日本國民に奉仕すべき公務員の態度として、かかる措置がはたしてそのままに是認せられるものであるかどうかといふ点は、深く考慮する必要ありと考えておるのでありまして、これらの事情を調査するため並びに現地における連合國軍官憲との連絡のため、地方自治体との打合せのために、昨夕鈴木法務総裁東京を出発いたしまして、おそらく明後臼東京帰つて、委細の事情を報告し得ることと存じます。その報告をまつて政府地方自治國体市長知事とつたる措置、あるいは檢察廳当局とつたる措置を檢討の上、適当の処置をいたしたいと考えておる次第であります。  また、今後政府のとるべき方針としては、先ほど申しました昭和二十一年十一月の司令部発表によつて定まつた通り在留朝鮮人は、あくまでわが日本法規秩序を尊重すべきである、われわれと同一法権によつて律せられるべきものであるという立場を堅持いたしまして、今後十分に犯罪を防止し、また暴行事件等の不幸にして惹起した場合においても、これに対して嚴重なる処分をとる方針を決定いたしております。さいわい連合軍司令部においては、政府方針と全然符節を合わした政策をとるという言明を得たのでありまして、現在日本のおかれておる環境において、法と秩序維持に十分なる警察力がないということはまことに遺憾でありますが、しかし、今後その運用の改善をはかりますならば、少くも今日よりは能率的なる警察機関をもち得ると考えております。しかし、それをもつてしてなお足らない場合には、必要に應じて占領堆関係と密接なる連絡をもつて、今後の治安維持に遺憾なきを期したいと考えておる次第であります。  なお朝鮮人問題、殊に学校問題につきましては、主管大臣たる文部大臣よりお答えいたすことといたします。     〔國務大臣森戸辰男登壇
  12. 森戸辰男

    國務大臣森戸辰男君) お答えいたします。朝鮮人騒擾事件が、教育学校というきわめて平和な問題から発端したということは、まことに遺憾なことでございます。朝鮮人兒童教育の問題は、終戰とともに日本政府の特に関心を拂つた問題でありましたが、昨年学校教育法教育基本法が行われまして以來は、さらにこの法令朝鮮子供たちに適用するか否かにつきまして愼重に考え関係方面ともいろいろ熟議をいたしました結果、民主化の方向に刷新された学校において、朝鮮兒童日本兒童と並んで教育を受くべきことに決定をいたしたのであります。学校教育法教育基本法は、御承知のように、新しい憲法に從つて平和主義民主主義とを基調としたものでありまして、在來の國粹主義軍國主義基本としたものではありませんので、國語の点を別といたしますれば、隣邦民族がそのもとで学んでも多くの不当な点は存在せず、むしろある点では、不完全な教育よりは望ましいという部面もあつたのであります。  昨年かような態度が決定せられたのでありますが、ちようど昨年末、大阪において朝鮮人兒童教育に対する問題がありましたので、文部省に照会があつたのであります。これに対して文部省は官学五号によつて、次のように答えたのであります。      記一、現在日本に在留する朝鮮人は、昭和二十一年十一月二十日附総司令部発表により、日本法令に服しなければならない。從つて朝鮮人の子弟であつても、学齢に該当する者は、日本人同様、市町村立又は私立小学校又は中学校に就学させなければならない。また私立小学校又は中学校設置は、学校教育法の定めるところによつて都道縣監督廳の認可を受けなければならない。学齢兒童又学齢生徒教育については、各種学校設置は認められない。私立小学校及び中学校には、教育基本法第八條のみならず、設置廃止、教科書、教科内容等については、学校教育法における総則並びに小学校及び中学校に関する規定が適用される。なお、朝鮮語等教育を課外に行うことは差支えない。二、学齢兒童及び学齢生徒以外の者の教育については、各種学校設置が認められ、学校教育法第八十三條及び第八十四條の規定が適用される。三、前二項の趣意を実施するため適切な措置を講ぜられたい。これが大阪府の当局に與えられた文部省の指令でありますが、これは同時に全國各地方にも傳えられたのであります。  この文部省態度の決定された根拠は、総理が指摘されたように、昭和二十一年十一月十二日の太平洋方面米國陸軍司令部渉外局発表でありまして「連合軍最高司令部引揚計画の下に故國に帰還することを拒む日本における朝鮮人は、正当に樹立された朝鮮政府朝鮮國民として彼等を認めるような時期が來るまでは日本國籍を保有するものとみなされるとし、また昭和二十一年十一月二十日附太平洋方面米國陸軍司令部渉外局発表によると、「本属帰還を拒絶して日本に残留することを選んだ朝鮮人は、昭和二十一年十二月十五日以降日本に継続して居住すれば、それに該当する凡ての地方法律法令の適用を受けなくてはならぬことを十分承知の上で選択を行つているのである。それに該当する地方法律法令の遵守を彼等に免れさせるような在日朝鮮人の有利になる差別待遇は、一種の治外法権を創設することになるのであろう。これはいかなる見地から見ても正当化され得ないものである」とされておるのでありまして、昭和二十一年十二月十五日より以降は、日本法令に服しなければならないのであります。そうして教育につきましては、先ほど申しました教育基本法学校教育法等法令に服しなければならないのであります。從つて在日朝鮮人の子弟でも、学齢に該当する者は、義務教育として小学校中学校に就学させなければならないのであります。これら就学義務のある者の教育につきましては、各種の学校設置は認められないのであります。もちろん朝鮮人でありましても、私立学校設置につきましてはできるのであります。しかしそれは、学校教育法に基いて監督官廳の認可を受けなければならないのであります。なおその際、朝鮮語あるいは朝鮮の歴史、文化を教えるということは、いささかも差支えないのであります。從い、まして、本年月二十四日以降、各都道府縣知事に、以上の趣旨を実施するために適切なる措置を講ずることになつたのであります。  ところが御承知のように、この問題に関連し、各地方学校閉鎖に関連して、騒擾事件をも引起すような事態になつたのは、返す返すも遺憾なことであります。しかし、これはいきなり学校の閉鎖を命じたのではないのであります。学校教育法に基きまして、私立学校の場合には監督官廳に許可を申請しなければならぬ。この許可を申請するように、これらの責任者に申し送つたのであります。それにもかかわらず、責任者は、この認可の申請をどうしてもいたしません。あるいは頭からこれを拒否いたしましたので、かような学校に対してのみ閉鎖をいたさざるを得ない実情にあつたのであります。日本法律学校教育に関して行われる以上、これはまことにやむを得ない事態であつたと思うのであります。  実は、かような学校閉鎖とこれに伴う措置につきましては多くの困難を伴うことはすでに御承知通りであります。朝鮮人学校問題に関しまして、文部省がかような態度をとりましたのに対して、朝鮮人の、殊に一部の團体においては、強い反対があつたのであります。その最も中心的なものは、朝鮮人教育の自主性ということを強く主張した点であります。この点、一應もつともな面も存在するのでありますが、他面このことは、日本学校教育法並びに教育基本法に從わないという面をもつておるのでありまして、日本法令に從うことを承認の上日本に残留しておる朝鮮の方々は、学校教育についてもこの法律に從い、しかも軍國主義的な形を脱した刷新日本教育制度に服していただきたいと思つておるのであります。なお、これに続いて要求されておりますのは、教育費の國庫負担ということでございます。これは一般の私立学校と同様に行うべきでありまして、特に朝鮮人学校に対して有利になすという取扱いはいたされないのでありますが、日本私立学校に対してよりも、より不利な扱いはいたしてはいないのであります。  なお第三には、教育資材の配給という要求がありましたが、しかし、これは朝鮮学校に対して特に有利に扱うということではなく、日本私立学校一般に対すると同様の取扱いがなされておるのであります。かような要求がなされまするが、これらに対しまして、朝鮮人々のうちでも穏健な人々は、日本の大体の方針、殊に日本法律秩序を守るという点には、十分な賛意を表しておるように見受けられるのでありまするが、他面、この問題は朝鮮民族、文化等に関連もありまするので、民族性に対する強い運動を展開する素地になり得るのであります。かような事態におきまして、殊に國際的の情勢とも関連があり、一部の政治的の勢力がこの問題を強く煽動の種としたという面もありまして、この問題は、朝鮮の方々の多く居住している地方におきましては重大な問題になつたことは御承知通りであります。問題は、教育と、そうして学校の問題以上の、ただいま御指摘になりました司法警察の問題にまで発展をいたしたのであります。それらの問題につきましては、むしろ文部省の範囲を越えたのでありまするが、文部省といたしましてのこの問題に対する態度は、從來一貫してその態度はかえず、日本学校教育法に從うて朝鮮人兒童教育も行われなければならぬということを堅持いたしておりまするし、將來も堅持いたすつもりであります。しかし、この実行に関しましては、教育のことでありまするから、あくまで親切に、しかも実情に即して問題の解決に進まなければならないと存じております。  さらに、学校が閉鎖された場合、これらの朝鮮子供たちの収容につきまして遺憾があることは、きわめて望ましきことでありませんので、万全を盡して、閉鎖された学校兒童の収容に対する態勢を整えております。なおこれらの学校におきましては、民族的な差別の扱いがないように、先生においても、子供においても、隣邦の子弟に対して十分な友情をもつて、新しい教育のもとに手を携えて勉強するようなふうにと指示をいたしておるのであります。朝鮮学校関係者につきましても、最近お集まりを願つて日本学校教育当局のもつておりまする、また日本政府の抱懐しておりまする考えを、十分に懇篤に説明をして、御協力願うように努力いたすつもりであります。  なお、最後に申し述べておきたいことは、この問題は、隣邦朝鮮と、また敗戰日本の、両民族の間にある問題でありまして、これが民族感情の反撥にならないように、あくまで努力いたさなければなりません。そのことは、東洋が平和な國として成長いたすには何よりも大事なことであると思うのであります。新しい憲法は、さいわいに平和主義と民主主義とを基調といたし、新しい学校教育教育基本法とはこの精神によつておりまするのでどうか新しい教育の精神を生かして、両國民が平和と民主の線に沿うて手を携えて伸び行くように、私ども文部当局としては最善の努力をいたしたいと存じておる次第でございます。(拍手)     〔政府委員松永義雄君登壇
  13. 松永義雄

    政府委員(松永義雄君) 大阪及び神戸における不祥事件は、まことに法務廳として慨嘆にたえない次第なのでございます。  大阪におきまする、朝鮮人府廳に対する押しかけ問題は、ただいま前田君よりの御説明によつてはつきりいたしておりまする通りに、多数の者が、知事設置者に対する命令に抗議を申し入れるために府廳に押しかけまして、そうして、ほとんど騒擾にも思われるような行動に出ましたために、遺憾ながら約二百名の者が、現行犯として逮捕せらるるに至つておるのであります。  なおまた神戸におきましては、去る十日に、学校閉鎖命令に端を発しまして、これに應じないところ朝鮮人人々が、團体あるいは職員の父兄らを先頭に立てまして、校舎明渡し絶対反対、日本学校轉学拒否等を決議いたしまして、兵庫縣廳に押しかけまして、兵庫縣知事に対して面会を要求してまいつたのであります。四月十四日午後二時ごろでありますが、在日本朝鮮民主青年同盟委員長ほか約三十名の者は、教育部長に対し学校明渡しの反対陳情をなすべく縣廳を訪問しました。その際知事におきましては、他用がありまして、差支えがありましたために、ただちに面会する機会を得なかつたのでございますが、押しかけて参りました朝鮮人の團体の人々は、徹宵縣廳内の部屋中にいすわりまして、そうして知事に対して面会を強要してやまなかつたのであります。十五日午前二時ごろ、知事より、これらの抗義申入者に対して会見すべき旨通知し、しかして、兵庫縣渉外事務局長室において面会したい旨を申し入れましたところが、副知事室を占拠しておりました前記の朝鮮人の團体は、どうしても副知事室において面会せんことを強要してやまないのでございまして、ついに午後一時三十分に至りまして、学務課の公務員の方が、知事はどうしてもここでは面会されませんから立ち退かれたいとの要求をいたしました。午後四時五十分、さらに立退要求書を副知事室において三回にわたつて読み上げるに至つたのであります。しかるに、これに対してもなお朝鮮人の團体の人々は、これに應ずる色もないのでありまして、やむを得ず生田警察署木村警部は、退去をこうやつて要求されているのであるから、どうかここを立ち去つてもらいたい、もしこれに應ぜられないときは、やむを得ず住居侵入罪に問われるようなことにならぬとも限らぬから、速やかに立ち退くよう、約二十分間にわたつて最後の勧告をいたしたのでありますが、これに対してすらも、彼らはこれに應ずる氣配はなかつたのであります。このことからしまして、はなはだ遺憾なことでありますが、建造物侵入罪の現行犯としまして、約七十名の方が檢挙されるに至つたのであります。しこうして二十四日に、きわめて嘆かわしい不祥事が遂にまた再発するに至つたのであります。あたかも二十四日に、二十六日ごろに至つて朝鮮人約三十名がデモをやるかもしれぬというような情報がはいつたというので、二十四日午前九時、兵庫縣廳知事室で、知事神戸市長國家警察長、神戸自治警察局長、檢事正らが相寄りまして、警備対策協議しておりましたところが、朝鮮人約五十名が、何千名という應援をあとに受けまして、乱入してまいりまして、あるいは電話を壊し、あるいは乱暴し、喧騒を極めて、外部との交通をまつたく遮断し、知事に対して学校閉鎖の申入れの撤回を要求したのであります。あるいはまた警察長、あるいは檢事正に対して、拘留中の被疑者の釈放並びにその他の行動について何らの処分も行わない旨の誓約を要求するに至つたのでありまして、まことに事態は極度に不安の体を呈したのであります。当日午後十時に至りまして、軍政部からは非常事態発生の宣言が発せられまして、知事及び檢事正、檢察廳の人々は、これらの趣旨を体しまして、翌二十五日午前三時ごろから、鮮人の檢挙に当つたのでございます。  しこうして、先ほどもお話がありましたごとく、早速に法務総裁においては神戸の現場に向かわれ、さらに最高檢察廳の檢事の方々も現場に出張せられて、その調査に当つておられるのでありまして、この一両日を経ますれば、その眞相が明らかになると思うのであります。その結果によりまして適当の方法を講じ、不安を一掃し、そして秩序を回復したいと期待いたしている次第であります。      ————◇—————
  14. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 生産管理の問題に関する緊急質問を許可いたします。林百郎君。     〔林百郎君登壇
  15. 林百郎

    ○林百郎君 生産管理を理由としまして、労働組合の檢束事件が方々に発生しております。先月、産別系の印刷出版労働組合である愛光堂の労働組合員が十一名檢挙されておるのであります。続いて今月の七日になりまして、新橋のメトロ劇場の從業員が七十八名の甲府等、地方にも所々に発生して、いるのでありまして、憂慮すべき事態になつていると思うのであります。從つて、この際私は、責任主管大臣であるところの労働大臣と法務総裁に対して、次の点を質問してみたいと思うのであります。  まず第一には、生産管理が行われる場合には、言うまでもなく資本家側が生産を放棄しようとする場合において、労働組合員が自己の生活の必要上、その他生産の必要上、この生産を守ろうと云うような場合に多く起きているのであります。また法律の精神から言いましても、法律上所有権が行使される場合には、それが國家の利益と公法上の利益が守られる限度において、正当に行使がなされなければならないのであります。從つて、生産が放棄されようとする場合に労働組合員がこれを守ることは、法律上も許さるべきものであるし、また現下の政治、國家の現状から言つても、これはむしろ守つてやらなければならないかと思われるのであります。それで政府方針は、一体生産の確保が重要なのか、あるいはかりに生産が放棄されても、とにかく資本家がこの生産手段を法律上支配することが重要なのか、いずれを現下の政治情勢からいつて守るべきものと見るかという点を、第一にお廳きしたいと思うのであります。  その次に、生産管理そのものについては、生産管理だということを理由にしてこれを取締る法規はないと思うのであります。もし生産管理が取締りを受けるとすれば、生産管理中に発生するところの刑事上の具体的な諸事態、たとえば家宅侵入あるいは横領、窃盗、背任、器物毀棄というような具体的な事実が発生した場合に、初めて取締りの対象となると思うのであります。この点について、政府はいかなる考えをもつているか。いわゆる生産管理そのものが取締りの対象になるべきものではなくして、生産管理中に発生する具体的な諸事態が取締りの対象になつた場合に初めて司法権なり行政権の発動を見るべきものだと思うが、この点についての政府の見解を質したいと思うのであります。  殊に最近におきましては、刑事上の取締りを受けるべき諾事態が発生しないうちに、いわゆる民事上の仮処分という形をとつてくるのであります。大体、先ほど申しました生産管理の場合を考えて見ますと、假処分が行われる場合には、まず第二組合が結成され、仮処分の申請をして、裁判所が仮処分を許すと同時に、生産に從事しているまじめな労働組合員が職場から追い出されてしまつて、会社の言うことを廳く、いはゆる御用組合——一部の者だけが生産の職場にはいつて、ここに摩擦が起きてくるのであります。  殊に長野縣の例を見ますと、組合員が三百四十何名対二十一名で除名されており、クローズド・シヨツプによつて当然組合員から除名され、かつ会社から処分されなければならない者が、仮処分の力を借りて三百何名を追い出して、二十何者の者が職場を守ろうというような事態が発生しているのであります。これは政府の仮処分方針が、一むしろ生産を阻害しようという者を護つて、まじめに生産に從事しようとする労働組合員を処罰の対象にしておるということは明らかだと思うのであります。  最近の事態を檢討してみますと、むしろこの生産管理によつて、いるいろの檢束事件その他不慮の事態が発生しておるのでありますが、この不慮の事態原因は、むしろ政府側が挑発しておる。円満に組合員が資本家側と交渉して事態を収拾し、一日も早く産業を復活し、生産を常態に復そうと思つておる際に、会社側がその交渉に應じなくて、ことさらに仮処分の手段によつて執逹吏を派遣し、この執逹吏に対する組合員の摩擦が公務執行妨害というような形になつて檢束される場合が非常に多いのであります。かかる刑法上具体的な処罰の対象の事態が生じない際に仮処分を行い、執逹吏を派遣し、公務執行妨害の理由をもつて組合員を檢束するということは、明らかに労働組合法の第一條、殊に第二項の、刑法第三十五條その他の取締りの適用は正当なる労働組合運動には適用しないという、労働組合運動を保護すべき立法趣旨である労働組合法が無視されている結果となると思うが、この点についての政府所信を質したいと思うのであります。  次に労働大臣にお尋ねしたいことは、労働組合法の改正の問題であります。  加藤労働大臣は、就任の際に、労働法の改惡については自分は職を賭しても閣内で闘うということを声明されておるのであります。また四月二十四日の朝日新聞における新聞記者との会見談におきましても、もし政府が改正を行うとすれば、私を罷免してからでなければやれないということを声明されておるのであります。しかるに、三月二十七日の全官公廳の爭議に関する徳田球一氏の緊急質問に対するお答えとしては、行政措置としては、できるだけさようなことのないようにいたしたいと思うが、他の面から行われる場合にはやむを得ないというような答弁もあるのであります。職を賭して、自分を罷免しない限り絶対政府にやらせないという言葉と、行政措置としてはできるだけさようなことのないようにしたいと思うという見解との間には、相違があると思うのでありますが、労働法の改正に対し、労働大臣の所信はいかがなものであるか、この点を質したいと思います。  以上の点について、私は緊急質問をいたす次第であります。(拍手)     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  16. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいまの林君の御質問にお答えします。生産管理の法的解釈につきましては、所管大臣である法務総裁が答えられることと存じまするが、ただ一点、私にお尋ねになりました、物を生産することが大事と思うか、所有権に関する資本家の支配が重いとするか、こういう点について、どういう見解をとるかという御質問でありましたが、もとよりわれわれは、殊に今日の日本の現状におきましては、生産の高まることをこそ重しと見るものであります。もちろん、このような見解をとるにいたしましても、生産管理によつて起る原因をたずねまするならば、ひとしく生産増強のためであるとは申しましても、その間に財産権と爭議権との均衡が保たれ、一方が一方を圧するというような不均衡な状態にならないようにしなければならないと考えるのであります。私どもとしては、こういう事態が発生しないように、事前に労資両者の完全な理解が必要であると考えまして、労働省としてはそういう方針に進んでいきたいと考えております。  それから第二の労働法規改惡の問題につきまして、私は三党政策協定の條項にありまする、日本の健全なる労働運動を阻害するがごとき改惡は行わないという、この三党政策協定の精神に則りまして、今日日本実情に鑑みて、これを強調する必要ありと感じます。すなわち、労働者に不安の念を懐かしめないことが生産増強への大きな力である、こう考える点から、私は労働者にいやしくも不安を感ぜしめるがごとき労働法規の問題には手をつけるべきでない、こうはつきり言うておる次第であります。  また三月二十七日の私の徳田君に対する答辯とこの私の主張との間に違いがあるように思うがというお話でありましたが、私は行政措置として云々というようなことはあり得べからざることと思いますので、何かこれは林君のお考え違いでないかと感じます。今日といえども、私は依然労働法規の問題については——もちろん政府として、ただちにこれを行うとか行わないとかいうことを約束するということは、それこそ國会の立法権に関することでありますから、約束すべきではないと思いまするが、労働大臣濁自の見解としては、少しも変らない見解をもつておるということを申し上げておきます。(拍手)     〔政府委員松永義雄君登壇
  17. 松永義雄

    政府委員(松永義雄君) ただいま林君からの御質問の点で、生産管理犯罪行爲でないということにつきましては同感でございます。憲法におきまして、御承知通りに、労働者諸君の團結権、また同時に財産権を擁護いたしておるのでありまして、この二つ権利は平等の立場に立つているのでございます。しかして労働者諸君は、爭議をなさるときに、その爭議の内容の点でありまするが、同盟罷業あるいは工場閉鎖等に見ましても、大体におきまして労務の停廃あるいは経営の廃止等、民法上の解釈から申しますと、債務不履行の状態を呈するのであると思うのであります。しかして生産管理は、そうした消極的な債務不履行とは違いまして、積極的に爭議行爲に出るのでありまして、その爭議行爲そのものにつきしてはいろいろ考えなければならぬのでありまするが、その生産管理におきまして、多くの場合、爭議のときには、経営者の意思に反して経営者の所有物を製造に使用し、あるいはこれを販賣する等の行爲を伴うのであります。すなわち、積極的に経営者側の経営を排除するような形が現われてくるのでございます。從つて、そこに爭議團側の事実行爲が行われて、あるいはまた、延いては経営者側のいろいろの行爲が伴つていろいろの不祥事を起しておることは、まことに遺憾でありますが、ともかくもその爭議行爲に伴いまして、経営者の意思に、反して経営者の所有物を製造の具に供し、かつこれを販賣する等の行動に出ますときには、いきおい、それが家宅侵入であるとか、あるいはまた横領であるとか、あるいはまた窃盗であるとかいつた行爲が伴いやすいのであります。從つて生産管理が爭議行爲として行われる場合におきましては、憲法におけるいわゆる財産権と團結権とのこの労資対等の立場のうちに不安な因子が含まれておるし、それが発生するおそれがあるので、生産管理に対しては、そうした刑法上の問題に触れるような行爲が伴いやすいのでありまして、法務廳としては、これに賛成いたしがたいのでございます。具体的に伴う行爲に対して罪となるということにつきまして、ただいま林君の方からの御質問に対して、生産管理そのものにつきましては決して犯罪行爲ではないけれども、しかし、その具体的の場合にそうした行爲の伴いやすいということにつきましては、まことに困つたことであると考えています。  さらに民事上の仮処分のことに関する問題でありますが、たとえば日本タイプにおけるところの工場爭議におきまして、仮処分の民事訴訟的行爲のとられましたことは、これはただいまも申し上げましたごとくに、経営者の意思に反して占拠しておるために、民事訴訟的に経営者が仮処分をいたしまして、そうして占有を回復することになつたのであると承知いたしておるのであります。こうした仮処分に対しては、御承知通り民事訴訟法によりまして、またその対策が講ぜられるのでありまして、爭議國側としては、民事訴訟法によつて対策を講ぜられることがもつとも適当ではないかと存ずるのであります。ただその際、経費者側の仮処分に対していろいろ爭議團側から不法な行爲を伴いまして、ただいまのような公務執行妨害であるとか、あるいは傷害罪といつたような行動を伴つておりまして、檢挙をみているのでありますが、こうした民事訴訟法的な仮処分行爲に対しては、民事訴訟法的の対策を講ずべきであると存ずるのでございます。(拍手)      ————◇—————
  18. 山花秀雄

    山花秀雄君 議案上程の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、國家行政組織法施行までの暫定措置に関する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  19. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山花君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて國家行政組織法施行までの暫定措置に関する法律案を議題といたします。委員の報告を求めます。決算委員長竹山祐太郎君。     〔竹山祐太郎君登壇
  21. 竹山祐太郎

    ○竹山祐太郎君 ただいま議題となりました國家行政組織法施行までの暫定措置に関する法律案について、委員会の経過並びに結果を御報告申し上げます。  現在の行政官廳法は、この五月二日をもつ効力を失うのであります。また経済安定本部は、四月三十日までをもつてやはり効力を失うのでありまして、それに伴う法律につきまして、政府は國家行政組織法といふがごとき法律を用意いたしておつたのでありますが、その内容の檢討にまだ多少時日を要するために、この期旧までに國会の審議を得ることができないことに相なつたのであります。そこで、この際五月三十一日までこの経過のための暫定法律処置を求めてまいりましたのが、この法律の趣旨であります。なおこれに関連をして、各省官制に関する問題がやはり同様五月二日をもつて切れますので、これも同様の措置を講ずる必要があるわけであります。  本日委員会を開いて政府の説明を求め、また國家行政組織法の面容等について質疑を繰り返したのでありますが、國家行政組織法についての幾多の問題はありますが、政府の現在の暫定措置については、政府処置を各党とも了承いたして、委員会としては質疑を打切つて、全会一致これを承認することにいたしたのでありますが、ただ、國家行政組織法といふ法律がないのに法律施行に伴う問題といふ表題が不適当と考えまして、委員会としてこれを修正することに全会一致決定いたしまして、この表題及び附則の中に國家行政組織法云々とありますのを國家行政組織に関する法律の制定施行まで云々というふうに修正をいたすことに決定をいたしました。  以上、委員会は全会一致修正案を可決確定いたした次第であります。右、御報告申し上げます。(拍手
  22. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長報告は修正であります。本案は委員長の報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告通り決しました。      ————◇—————  夏時刻法案(内閣提出)
  24. 山花秀雄

    山花秀雄君 議案上程の緊急動議を提出いたします。すなわちこの際、内閣提出、夏時刻法案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  25. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山花君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。夏時刻法案を議題といたします。委員長の報告を求めます。労働委員会理事山下榮二君。     〔山下榮二君登壇
  27. 山下榮二

    ○山下榮二君 政府提出にかかる夏時刻法案の審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本法案は、欧米各國におきまして古くより実施せられ、好成績をあげております、いわゆる夏季の一定期間を限わ標準時より一定時間繰下げた時刻を常用する制度のきわめて合理的かつ有益なる制度に鑑みまして、これをわが風土に適合するようにして採用しようとするものであります。以上の趣旨のもとに本國会に提出せられ、労働委員会に付託となつたのであります。  しかして本委員会は、四月二十六日並びに二十七日の二回にわたつて委員会を開会し、審議をいたした次第であります。政府からは法務廳の松永政務次官、労働省の大矢政務次官その他の政府委員が出席せられ、眞勢なる説明があつたのであります。  以下、その主要な利点を申し上げますれば、第一に、國民生活において日光を十分に利用することによつて國民保健の増進に寄與すること、第二に、光源としての日光を十分利用することによつて電力、石炭等の重要資源を節約することができること、第三に、夏時刻という國民常用の新しき標準時刻を採用することにより、心理的に無理なく、國民の間に日光活用のよき習性が生れること等にあるのであります。  次に本法案の内容について申し上げまするならば、從來わが國におきましては、中央標準時に從つて國民一般がこれを常用しているわけでありまするが、本法案によりますると、毎年四月の第一土曜日の中央標準時の午後十二時から、九月の第二土曜日の翌日の中央標準時による午前零時までの間は、中央標準時より一時間ずつ繰下げた時刻を用いるというのであります。すなわち、俗に申しますると、時計の針を一時間進めた時刻を新しく夏時刻と定め、原則としてこれを常用すべきものといたしたのであります。もつとも、法令、條約等その他によつて國際関係や学術上の必要から特に中央標準時によることを定めた場合は、例外として中央標準時によることとなつております。但し本年は、すでに本則に定める四月の第一土曜日を経過しておりまする関係から、本年の実施は特に五月の第一土曜日、すなわち五月一日の午後十二時と定めたのであります。  以上が、本法案の大体の趣旨並びに内容でありまするが、本法案に対する質疑は四月二十六日終了して、四月二十七日討論に入りましたところ、民主党の市崎秀二君より各派一致の修正を述べられ、原案に対する修正議決をいたした次第であります。そのおもなる修正点は、政府の原案が難解で國民によくわからないと思われますので、本法案を三箇條にわけまして、第一條に夏時刻の期間と時刻を定め、第二條に時刻切替の方法規定し、第三條に施行に関する関係規定したのであります。  詳細は速記録によつて承知をお願いすることにいたしまして、以上簡單でありまするが、委員会の御報告を終る次第であります。何とぞ各位の御賛成をお願いいたします。(拍手
  28. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 採決いたします。本案の委員長の報告は修正であります。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて本案は委員長報告の通り決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十六分散会