○林百郎君
生産管理を理由としまして、労働組合の檢束
事件が方々に発生しております。先月、産別系の印刷出版労働組合である愛光堂の労働組合員が十一名
檢挙されておるのであります。続いて今月の七日になりまして、新橋のメトロ劇場の從業員が七十八名の甲府等、
地方にも所々に発生して、いるのでありまして、憂慮すべき
事態にな
つていると思うのであります。從
つて、この際私は、
責任主管大臣である
ところの労働大臣と
法務総裁に対して、次の点を
質問してみたいと思うのであります。
まず第一には、
生産管理が行われる場合には、言うまでもなく資本家側が生産を放棄しようとする場合において、労働組合員が
自己の生活の必要上、その他生産の必要上、この生産を守ろうと云うような場合に多く起きているのであります。また
法律の精神から言いましても、
法律上所有権が行使される場合には、それが國家の利益と公法上の利益が守られる限度において、正当に行使がなされなければならないのであります。從
つて、生産が放棄されようとする場合に労働組合員がこれを守ることは、
法律上も許さるべきものであるし、また現下の政治、國家の現状から言
つても、これはむしろ守
つてやらなければならないかと思われるのであります。それで
政府の
方針は、一体生産の確保が重要なのか、あるいはかりに生産が放棄されても、とにかく資本家がこの生産手段を
法律上支配することが重要なのか、いずれを現下の政治情勢からい
つて守るべきものと見るかという点を、第一にお廳きしたいと思うのであります。
その次に、
生産管理そのものについては、
生産管理だということを理由にしてこれを取締る
法規はないと思うのであります。もし
生産管理が取締りを受けるとすれば、
生産管理中に発生する
ところの刑事上の具体的な諸
事態、たとえば家宅侵入あるいは横領、窃盗、背任、器物毀棄というような具体的な事実が発生した場合に、初めて取締りの対象となると思うのであります。この点について、
政府はいかなる考えをも
つているか。いわゆる
生産管理そのものが取締りの対象になるべきものではなくして、
生産管理中に発生する具体的な諸
事態が取締りの対象に
なつた場合に初めて司
法権なり行政権の発動を見るべきものだと思うが、この点についての
政府の見解を質したいと思うのであります。
殊に最近におきましては、刑事上の取締りを受けるべき諾
事態が発生しないうちに、いわゆる民事上の仮
処分という形をと
つてくるのであります。大体、先ほど申しました
生産管理の場合を考えて見ますと、假
処分が行われる場合には、まず第二組合が結成され、仮
処分の申請をして、裁判所が仮
処分を許すと同時に、生産に從事しているまじめな労働組合員が職場から追い出されてしま
つて、会社の言うことを廳く、いはゆる御用組合——一部の者だけが生産の職場にはい
つて、ここに摩擦が起きてくるのであります。
殊に長野縣の例を見ますと、組合員が三百四十何名対二十一名で除名されており、クローズド・シヨツプによ
つて当然組合員から除名され、かつ会社から
処分されなければならない者が、仮
処分の力を借りて三百何名を追い出して、二十何者の者が職場を守ろうというような
事態が発生しているのであります。これは
政府の仮
処分の
方針が、一むしろ生産を阻害しようという者を護
つて、まじめに生産に從事しようとする労働組合員を処罰の対象にしておるということは明らかだと思うのであります。
最近の
事態を檢討してみますと、むしろこの
生産管理によ
つて、いるいろの檢束
事件その他不慮の
事態が発生しておるのでありますが、この不慮の
事態の
原因は、むしろ
政府側が挑発しておる。円満に組合員が資本家側と交渉して
事態を収拾し、一日も早く産業を復活し、生産を常態に復そうと思
つておる際に、会社側がその交渉に應じなくて、ことさらに仮
処分の手段によ
つて執逹吏を派遣し、この執逹吏に対する組合員の摩擦が公務執行妨害というような形にな
つて檢束される場合が非常に多いのであります。かかる刑法上具体的な処罰の対象の
事態が生じない際に仮
処分を行い、執逹吏を派遣し、公務執行妨害の理由をも
つて組合員を檢束するということは、明らかに労働組合法の第一條、殊に第二項の、刑法第三十五條その他の取締りの適用は正当なる労働組合運動には適用しないという、労働組合運動を保護すべき立法趣旨である労働組合法が無視されている結果となると思うが、この点についての
政府の
所信を質したいと思うのであります。
次に労働大臣にお尋ねしたいことは、労働組合法の改正の問題であります。
加藤労働大臣は、就任の際に、労働法の改惡については自分は職を賭しても閣内で闘うということを声明されておるのであります。また四月二十四日の朝日
新聞における
新聞記者との会見談におきましても、もし
政府が改正を行うとすれば、私を罷免してからでなければやれないということを声明されておるのであります。しかるに、三月二十七日の全官公廳の爭議に関する徳田球一氏の
緊急質問に対するお答えとしては、行政
措置としては、できるだけさようなことのないようにいたしたいと思うが、他の面から行われる場合にはやむを得ないというような
答弁もあるのであります。職を賭して、自分を罷免しない限り絶対
政府にやらせないという言葉と、行政
措置としてはできるだけさようなことのないようにしたいと思うという見解との間には、相違があると思うのでありますが、労働法の改正に対し、労働大臣の
所信はいかがなものであるか、この点を質したいと思います。
以上の点について、私は
緊急質問をいたす次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣加藤勘十君
登壇〕