○加藤吉太夫君 私は、農民党を代表いたしまして、救國
政治の大本について
芦田総理大臣に聽き質すとともに、主として
農村問題について
所管大臣に
答弁を求めたいのでございます。
今日
國民は、
芦田総理大臣に対して、革新時代における救国
政治の
方針、芦田総理の創意による新しい
政治の動向を望んでお
つたのでございます。しかるに何ぞや、芦田総理の
演説を聽きますと、多くを語
つてしかも何事も語らず式でございます。すなわち、産業経営の合理化を説いて失業
対策を講じないのであります。
國民の
道義の
高揚を説いて官紀の粛正を説いておりません。外資の導入を説きながら労働
対策を逸脱しているのでございます。
芦田総理が組閣に際しまして意外の長日時を要したこの
政治の空白は、農民の最も遺憾とするところでございます。この
政治の空白さえなか
つたならば、今日の労働爭議をかくまで悪化せずに善処し得たであろうことを思うのでございます。(
拍手)なおまた、全國的にまき起
つた課税の不平の爆発に対しましても、かほどに
農村を動揺させずに善処し得たであろうと私は思います。(
拍手)こういう点において、この
政治の空白は芦田総理の重大な
責任でなければならぬと私は
考えます。
今日中庸を得る
政治を施し、
國民をして中道を歩ましめんが
ためには、第一に
経済的の凹凸を直してかからなてはいけません。
國民の
生活の均衡を求めなくてはならないと思います。この
政策に沿
つて國民に勤労意欲を
高揚し、耐乏
精神を
高揚することによ
つて、私は
國民全部を働かす
國民皆働の線にも
つていきたいのでございます。かくして
國民の支持と協力を得まして、われわれは救國的一大
國民運動を展開いたしまして、強く祖國再建の第一歩を踏み出すこどができると確信いたすのでございます。(
拍手)これこそ、マツカーサー元帥の述べられた、自力によ
つて起ち上るところの
日本人のほんとうの
努力でなければならないと私は
考えるのでございます。
今日
國民の大半の中には、今裸にせられたところの零細なる土地の所有者がございます。赤字
供出に泣くところの農民が過半あるのでございます。同情すべきところの引揚者があるのでございます。戰災者あり、遺家族あり、統制によ
つて生じた失業者がある。インフレにあえぐところの勤労階層があるのでございます。まさに超非常時と言わなければなりません。これに対して、なまやさしい
政治をも
つてして救國し得ざることは、明らかでございます。私は、
片山内閣を倒すに至
つた原因の
一つである軍事公債の利拂いのごとき問題は、問題とする價値がないと思うのでございます。こういう
政治的な
國民の動きを把握することによ
つて、私は國は救われると思います。しかして、かくして初めて中庸を得たるところの
政治をとることができると信ずるのでございます。
今日の農政問題は、
農業の韓換期に際しまして協同組合の発達助長をはかり、経営面の近代化をはかり、
食糧の自給態勢をはかる等、まことに急を要するものがあります。この書にあた
つて、農林大臣の選考は最も重大であります。農林大臣は、すべからく農政に通じた、達識あるとことの人材を天下に求む、べきであ
つたと思います。今回の組閣の選考に際しても、農相の選考のみならず、廣く人材を天下に求めまして、
国民の
信頼にことうべきであ
つたと私は思いまして、まことに失望を感ぜざるを得ないのでございます。(
拍手)芦田総理の創意によ
つて行われた
ただ一つの
政策があります。これは政務官の第二号を設けることでございます。(
拍手)農民党は、この定評ある弱体内閣の補強策にすぎないところの第二号制に絶対反対であります。以上に対して、芦田総理の信念を
国民に披瀝していただきたいのでございます。
次に、労働大臣にお伺いいたします。(「いない」と呼ぶ者あり)あすでよろしい。今日の農民は、土地は管理されておる。耕作権は農地
委員会に管理されております。自主性なき
供出制度にあえいでおります。納得し得ぬところの事前割当、苛酷なるところ農民課税に苦しみつつも、当局に対して法的に交渉するところの権利をすらもたないところの農民であります。すなわち農民にすぎない、奴隸にすぎない、農民でありますが、
國家再建の
ために一〇〇%の
供出をし、納税成績も優秀であり、勤労
精神また
高揚されておるのでございます。しかしながら、これに反して官公労組の最近におけるところのスト並びにサボ、職場大会は、農民にと
つてまことに目に余るものがあるにでございます。特に官廳のストに対しては顰蹙にせざるを得ないと思います。この際労働大臣は、
経済ストであろうと、
政治的ストであろうと、思想的ストであろうと、断然ストは休戰を宣すべきであると思います。しこうして、農民とともに
生産闘爭並びに
能率闘爭に邁進しまして、救國の一遂に進むべきであると信ずるものでございます。かかる一國の安寧秩序を破壊し、
國民の福利民福を阻害するところのスト行為が、いささかでも当局によ
つて当然とされるならば、農民もまた反抗ストに出でるところの事態を惹起することを、ここに特に当局に警告したいのであります。労働大臣の勇断と
見解を問たい。
次に商工大臣に
お尋ねしたい。〇・八の財源問題について問題になりましたところのメリヤスのシャツ百五十万着分は、いかにして輸出を不可能にしたか、その
原因及び善後処置を聽きたいのであります。なお農民は、目下一尺の縫糸でも、一尺の端切れでも欲しいと思う矢先におきまして、紡績会社の製品化されたところの綿糸が、その大都分がストックされて、一割しか綿織物会社に渡されておらないというこの不可解な事実も明瞭に説明していただいて、
國民の疑惑を解いていただきたいのでございます。以下は、農林大臣に
お尋ねいたします。
農村を近代化せしむる
ために、一片の協同組合法なるものを
農村に押しつけて、これをも
つて起き上れと言うても、これは至難でございます。これを発達助長せしめるところの
方策が
急務でございます。
主食品、油糧、飼料、ことごとく公團法によ
つて取扱われることは、すなわち
農業協同組合の設立の趣旨に反し、なお最近において養蚕組合を分離せしむるがごとき
方針をとるということは、すなわち協同組合の助長発達を期することに逆行するものであります。
現下の肥料会社を
考えてみますと、経営すこぶる非
能率であります。しかして、放漫なるとにろの融資を受けております。製品はやみ流しをしておる。不正なる成分量は、農民が最も目に余
つておるのでございます。今
年度の窒素肥料反当の五貫五百匁と
政府は言うておりますが、その成分量より論ずれば、昨
年度の四貫と同様であることを私はここで指摘いたしたいのであります。(「ノーノー」)肥料会社國有にするところの論議が行われておりまするが、これは当然
農業協同組合連合会の経営に移管した方が相当であると私は
考えるのであります。これが
農村恐慌対策といたしましても、また防衛
経済の確立をいたす点におきましても、まことに
農村の起き上りに役立つと
考えるのでございます。
次に、この点は大事でございますから、特に農相の御注意をお願いいたしたいのでございます。協同組合法の第十條の第十一項に、
生活改善をはかる
ための團体協約に関する事業というのがございます。平野前農林大臣は、一昨年、農民もまた勤労民であるということを断定しております。勤労者に與えたるところの
憲法第二十八條の示す團体交渉権を、なぜ働く農民、協同組合に與えないのか、與えるのが当然ではないかと主張するのでございます。この点、農相の明瞭なる
答弁をいただきた。
次に、單作地帯における農民は、特に
供出及び課税の重圧によりまして、保有米並びに再
生産資金の欠乏に悩んでおる窮状でございますが、これが
対策といたしまして、水田の二割畑作轉換をやること、濕田地帯を二毛地帯に乾田化せしむるところの土地改良事業に重点をおいていただきたいのであります。これに対して、今
年度の予算面にいかなる構想をおもちでございますか、明らかに農民に安心を與えてほしいのであります。
次に、米價問題について
お尋ねをいたします。今
年度の米價はパリテイ計算によ
つて算出されたのでございますが、パリティ計算なるものには大きな欠陷があるのでございます。それは、基準年次の物價に対する六二・五倍の倍数の点は諸物價と均衡されておるのでございますが、七十一品目の品質及び使用價値より比較いたしましたならば、品質並びに耐久力において半分の使用價置しかない。しかるに、一方において米や麦は、基準年次の
昭和九
年度と今角度とを比較するのに、品種改良によ
つて品質はまさ
つてお
つても劣
つておらないのであります。この点が大きな
原因で米價の不均衡を來しておるのに注意していただきたい。この点、二十三
年度の米價決定において安本長官及び農相はいかなる
見解をとられるか、お聽きいたしたい。
次に、米麦の事前割当について
お尋ねします。今回突如として発表されたる事前割当なるものは、農民から見ますれば、
政府は科学的であろ、合理的な算定にと
つていたしたいと言いまするが、すこぶる非合理的事前割当といわなければなりません。平均収量は、なぜ大正十年の肥料の十分あ
つたときの長期平均収量を採用したかというのであります。つくりもしないところの反別になぜ基準反別数字をおいたか。精農の
努力に報ゆるところの價格操作は、とうてい精農が背伸びしても届かないところの價格操作であります。こういう点については、机上の空論にないと私は
考えます。
しかし、私のここに尋ねんとすることは、この重大なるところの事前割当がどの法規によつで発表ざれたのか。どの法規によ
つてこういうことを実施されたのであるか。私は民主
憲法治下における農民といたしまして、その
政府の無法さに驚く次第であります。(
拍手)おそらく
食糧管理法第三條の、米麦等にして
命令をも
つて定むものを
政府に賣渡すべしという法規によ
つたものと
考えますが、この簡単なるところの一法文、この動員法にもまさるところの悪法によ
つて、
國会に諮ることもなく実施されておるのは、断固として反対であります。私は農民の名において
承知いたしかねるのであります。私は農相に、速かに事前割当の撤回を望むものでございます。(
拍手)(「むちやを言うな」と呼ぶ者あり)何がむちやだ。そちらがむちやじやないかか。
次に、燐酸肥料反当り二貫匁を公約されておりますが、これが
ためには硫化鉱四十八万五千トンの共給確保を計画されておるのであります。これは計画だけであ
つて、特別なる措置を講じない以上は、四十万トンの供給
不足を生ずることは明らかであります。先般間の成績を見ましても、その物資と輸送力の確保がなか
つたために、公約通り行わなか
つたために、失敗に経
つた。この事実から見ましても、春肥の燐酸肥の配給確保は、特別の非常措置を講じない以上望み薄であります。眞劍なる農相の決意と方法を
お尋ねいたしたい。
次に、
農村課税についてもう一度
農村の立場から当局に尋ねたいのであります。今回芦田首相が組閣に狂奔してお
つた政治の空白期間中に全國的にまき起
つたこの苛酷極まる申告所得に対する不平不満、
国民の動揺は、言語に絶するものがあ
つたのであります。ただその筋の命によ
つて表面鎮静を保
つておるにすぎない
現状であります。これが
ために増産意欲はいよいよ沈滞し、各地に土地の返還問題を惹起しておるのであります。これはゆゆしき大問題で、明らかに大藏大臣及び主税局長の
責任と言わねばねらぬと思います。零細な農家から一時に二万円、三万円の税金がやすや取立てられると思うのが当局の認識
不足であります。(
拍手)これは全國税務署長会議において、大藏大臣並びに主税局長が適当なるところの指示を誤ま
つた結果によ
つて招來された
國民の動揺であると私は思います。二の
責任は断然追究さるべきであ
つて、大藏大臣は本議場において陳謝の意を表する
責任があると思います。(
拍手)主税局長の更迭をも
つて責任政治を明かにせなければだめでございます。
私はここに前後措置といたしまして、所得税の納期を一ケ月間延期いたしまして、この間において、自治團体の代表者を通じて総括的に更正決定に
異議ある納税者に対して調整するところの期間をあてがうのが適当であると
考えます。第二に、分割拂いを農民にさせなければ無理でございます。しかして恒久策といたしまして、税制
改革に所得税査定
審議委員制度を設けまして、徴税の民主化をはか
つていただきたい。第三に、基礎控除並びに扶養家族は過少に過ぎますから、現在の三倍
程度にぜひとも上げなければなりません。勤労者及び農民の所得というものは、いわゆるガラス張りでありまして、課税の対象が一目明瞭にわかるところの欠点があるのである。この明瞭にわかるところの過重の負担を是正する方法をと
つていただきたい。この点は非常な関心をも
つて國民は待
つておりますから、明確に安心を與えていただきたいのでございます。
最後に私は、
供出制度の改正について申し上げたい。農民の増産意欲を
高揚し、
食糧の自給体制を確立する
ために、今
年度は必ず各党の御協力を得まして、ぜひとも農民の納得のいく合理的
供出制度に変えていただきたいのでございます。二十一
年度産米におきまして、
政府はあの
ように農民を騒がせ、泣かせて、強制に強制をも
つてして確実に
政府の把握したところの米の数量というものは、二千五百三十万石にすぎないのであります。二十二
年度におきましても、一〇〇%完遂されたとはいいながら、五百万石の還元保有米を差引きますと、差引き一昨
年度回様二千五百万石内外でございます。この二ケ年の実績こそ、今度の
供出割当数量の基礎数字とせなければいけないと私は思います。これが農民の最大
限度の
供出し得るところの限界を示す数字と言わなければなりません。いたずらに保有米まで
供出させて、農民を泣かせてや
つても、おのずから
限度のあることを当局は知らなければいけません。よ
つて私は、この限界数量二千五百五十万石を農民の納得のいく
責任供出といたしまして、その残りを高額買入れによ
つて供出制度を改正すべきであると主張いたします。これこそ精農の
努力に報い、増産と勤労意欲を與える、自主性あるところの
供出制度と言わなければなりません。
か
つてソヴエトですら、
食糧五ヶ年計画を達成著
ために、農民にまず種と保有米を與え、一部を税金として
供出させ、爾余を自由販賣せしむることによ
つて、すなわち農民に自主性をあてがうことによ
つて、五ケ年
食糧計画を達成いたしたのでございます。すなわち、農民に増産意欲を起さしめる
ために、一部営利心を満足せしめることによ
つて成功をしたのでございます。
米強地の
農村の部落の中心において、町と向様な
主食の配給風景を現わしておるのでございます。こういうばかなことはあり得ないのでございます。貴重な農民の半日の時間を空費させて、騒がせておる現在でございます。各地の村長は板挟みとな
つて辞職をしております。北海道の某助役は断食をして請願しております。まさに農民の不平というものは爆発寸前にきておるのでございます。古來これほど朴誘なる農民並びに労働者を騒がせて、救國できるはずはないのでございます。これは私は亡國的前兆であると断ぜざるを得ません。
私は五十二俵を
供出しておるのでございます。本代議士は五十二俵を
供出して、三月一日から配給を受けておるのでございます。こんなばかげたことはないのでございます。佛の顔も三度ということがございます。これで三ケ年間納得のいかぬ
供出制度に虐げられておるのでございます。しかも、
供出の米の價格は一俵七百円であります。配給を受ける米は九百円余でございます。この二百円の差額を農相はどうするつもりか、お聽きしたい。事すこぶる重大でありますから、この際
供出制度改正の農相の構想と、以上申し上げた点につきまして明確に
答弁をいただきまとて、農民に安心をあてがわれんことを希望してやまない次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕