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國務大臣(加藤勘十君)(続) どうぞお靜かに願います。
尾崎君の御
質問の要旨でありまする点に対して、それぞれ項目をわけてお答え申し上げます。
尾崎君の要旨は、
爭議対策において、また今後の処置において、現業と非現業とを区別して対策を講ずる必要があるが、その点どう思うか、こういう御趣旨でありました。これは御趣旨の
通り、当然現業と非現業とその職種に應じて具体的な対策が講じられなければならぬのは言うまでもありません。しかし組合はも、現業と非現業とにわかれてはいないのであります。
從つて組合が交渉の相手である場合におきましては、当然組合は一本として、現業、非現業を問わず組合の統制下にあるものとして、そういう前提の上に、組合に対する対策を講ずる具体的な給與その他の技術的な点については当然別個に考えられなければならぬことはお説の
通りであります。
第二は賃金体系の問題でありまするが、これまた、ただいま私の申し上げましたる
通り、今日までの單純なる生活給一本ではどうしてもいけない。これは私個人としての意見といたしましても、どうしても
能率給が加味された、
能率給と生活給を合わせて一木にした体系が立てられることを必要と考えるのであります。
從つて、いわゆる最低賃金制の制定に対しては、後に安平君の御
質問の中にもありましたが、私は反対であります。それは後に安平君の場合に申し上げます。
それから、非現業の場合の
爭議と労調法三十八條との
関係等についての御
質問がありましたが、これは当然法律の明記するところに
從つて行動いたしたいと存じます。
全逓の
爭議行為の中に新聞、通信の切断あるいは警察電話の切断の問題があ
つたようでありますが、この点に対して、私はその技術的な内容を詳しく存じません。
從つて、これは所管大臣から申し述べた方が適当であろうと存じます。
また全財
爭議と
徴税関係、これも私の範囲外でありますから、
徴税の実体にどういう
影響があるかということは、
大藏大臣からお答えになることが適当だと思います。
さらに、
國会に解決を委嘱する考えはあるかないか、こういう
お話でありました。もちろん
國会は
國家の最高権威であります。この
國会の信任に基いて
政府は組閣されております。
國会が
政府の処置に対して、もしその処置が適当ならざるものとお考えになりました場合において、
國会が
政府の処置を彈劾されることも
國会の当然の権利であります。
從つて國会が
政府の行為を批判されますことに対して、私は何とも申しません。これは
國会の完全なる自由な
意思に基くものでありますが、現在
政府といたしましては、
國会の信任に基いてできております
関係から、
政府として今日の事態に処する態度といたしましては、今再び
國会にその解決の
方法を委嘱するという考えは、少くとも私はまだも
つておりません。
それから、政治的混乱をどうするか、こういう御意見でありましたが、これはいろいろお示しになりました意見を参照しつつ、
政府は最善と信ずる
方法を講じまして、一日も速かに事態が解決することにより、
將來平和的に
團体交渉が行われる途が開かれるならば、今日見ておるがごときこういう混迷した事態は明らかに解決されていくであろうと、こう考えます。どうぞ了承願います。
それから安平君の点でありますが、これもまた要点はいくつかにわかれておりました。
その中心的なものといたしましては、生産
復興の指導性が労働者の手になければならない。こういう点が一つございましたが、もちろん、そのことは先般もこの議場で申し上げたと存じます。何と申しましても、資金・資材を実際に動かして物を生産するのは労働者でありますがゆえに、労働者の生産性が高まるということが重大なる要素の一つであることは言うまでもありません。
從つて、労働者
諸君の生産性の高揚をどうして求めるか、ここにいろいろな議論があると存じますが、それにはまず生活を保障しろ、生活が確立した後に働くという意見もありますし、また私はこの場合においては、生産の確立は同時に物の増産でなければならない、物の増産は同時に労働者の生活の保障、安定でなけれでならぬ、向上でなければならぬという考えをも
つておるのでありますから、この点については、私は今日の事態が明確にありのまま労働者
諸君に理解されますならば、私
どものこうした考えについては御協力を得られることがあると、
かく信じているものであります。
その次の重要なる点は、國鉄が承諾しておるが、どうして國鉄と同じような
状態にある全逓が
承知しないのか、また
政府は事態の眞相を
一般組合員に告げる
方法において何か手落ちがありはしないか、こういう意味の御
質問であ
つたと存じますが、なるほど國鉄の
諸君がこれを了承されましたことは、お言葉の
通り、もとより満足して承諾されたのではないのであります。しかし、たとい不満足であるとはいいながら、今日
日本のおかれた事態を冷静に客観されまして御了承を得られたものと考えますから、われわれといたしましては、当然今後とも、いかにして実質賃金の引上げになるような施設をすべきかということについては最善を講じたいと考えております。ただ全逓の
諸君が同じような條件のもとにありながら、國鉄が承諾したのに、しないのはどういうわけか、こういう御説のようでありますが、この点はただ最低賃金制の賃金体系に対して全逓側の
諸君が強くこれを主張されるということと、それから最初給與
委員会ができた当時における
政府の
措置があるいは誤
つてお
つたのかもしれませんが、とも
かく参加されなか
つたという点が、私は大きな理由をなしておるのではないかと考えます。しかしいずれにしましても、全逓の
諸君に対しても、私
どもとしては國鉄の
諸君に対すると同様に、あくまでも誠心誠意を盡して事態の眞相を御了解していただくことに努めたいと考えております。
また組合員
一般に對して問題の眞相を徹底するに手落ちがあ
つたのではないかという御意見に對しましては、何と申しましても、組合が組合一本の姿において、組合の幹部が全組合員を代表されております
関係から、組合の統制を重んずる立場からい
つて、どうしても組合員の代表者を尊重しなければならないのでであります。こういう点から、組合代表をさしおいて、組合に対して
政府が直接の指揮をすることは避けるべきであるという考えのもとに、組合員の
一般に対する直接の宣傳はこれをなすことをやらなか
つたのであります。決してこれは手落もしくは怠慢ではなくして、むしろ組合の統制力を尊重するがゆえにこそなさなか
つたものであるということを御了解願いたいと思います。山下春江さんの御
質問の山で主たる点は、
政府が今のような事態で靜観しておるといとうことは、やがて組合が内部から足並みが崩れてくるのではないか、それを待ちうけておるという、そういう安易な考え方ではいけない、こういう御趣旨のようでありましたが、私
どもは少くとも、私自身も、三十年に近い組合運動の経験から申しまして、そんな安易な考え方はみじんもも
つておりません。どういう場合にどのような事態が発生するかということは、十分知り過ぎているのであります。そういうことを知りつつもなおかつ今日の場合において、われわれが静観という形をとらざるを得ない、そういう実際上の窮状にあるということも御了承を願いたいと存じます。
河野金昇君の御
質問の主要なる点は、行政整理をして過剰
人員を他にまわすようなことを考えなければ、
ほんとうに実質賃金の引上げも行えないのではないか、こういう点もあ
つたように存じますが、実質賃金の引上げにつきましては、先般もこの席において申し上げましたる
通り、何とかして官廳全從業員
諸君に共通する福利施設などを十分に行うようにして、そして実際には実質賃金の引上げとなる方向をとりたい。これにつきましては、今具体的な構想をも
つておりますから、もしこの問題が片づきました後には、そういうことも皆さんの前に明らかにして御批判を受けたいと、こう考えております。
それから労働省の昨日の賜暇休暇の場合に、問前において紛糾があ
つたという事実を知
つておるかどうかという御趣旨のようでありましたが、いかにも労働省の職員
諸君から賜暇の申請がありました。これに対して労働省としては、もとよりこれを認めるわけにはまいりません。殊に労政局におきましては、局として、局長の名で業務命令を出しました。
從つて、労政局の
諸君は出勤をされたのであります。ただ組合側と十分に
意思の。疏通が欠けてお
つた点から、門のところにおいて若干の
意思の食違いがあ
つたようでありますが、これは組合幹部
諸君と話合いの上で、きわめて平靜裡に労政局の職員は勤務につかれたのであります。この点、御了承を願います。
それから徳田君の御
質問の趣旨は、いろいろございましたが、なかんずく最後の解決に対する
措置としてこれこれのことをやる
意思はないか、こういう御
質問でありました。その中に、二千九百二十円を千八百円のふくれ上りの形において支拂うということ、これについてどう思うか、こういう
お話でありましたが、これは今申し上げましたことによ
つて御了承願えましたことと存じます。
第二の、七千八百円の要求を考慮して、次の新事態に應ずる場合に
團体交渉をする
意思があるかどうか、こういう御
質問でありましたが、七千八百円というこの計算の基礎がどこから出ましたものか、私はまだ十分にこれを聽いておりませんが、
政府といたしましては、二千九百二十円は一月から三月までのものであることはしばしば繰返して申し上げておる
通りであります。
從つて、新事態に対処するための新構想が設けられなければならない。それはあくまでも
團体交渉の形式において、平和的に話を進めていきたいという考えにおいてはもとより
異議はございませんが、ただ七千八百円の問題を考慮に置くか置かないかということは、後の問題でありまして、今日のところにおいては、今申します
通り、この
数字の基礎も明確でありませんから、これを考慮に置くということを申し上げることはできません。
第三の、
政府と組合側の同数の代表によ
つて團体交渉を行うかどうか、こういう点でありますが、これははつき。り申し上げます。行う
意思があります。
それから、組合に対して行
つてきた彈圧を今後やらないようにするかという御趣旨でありましたが、もとよりわれわれは、実際に刑罰
法規に触れるような事態がありますれば、これはどういう場合であろうとも、社会秩序を維持する上からとらなければならぬことは当然でありますが、不必要な、そうしたことの規定のないにかかわらず行政
措置として不当な彈圧と思われるようなことをやる
意思は毛頭ありません。
次には軽犯罪法の問題でありますが、軽犯罪法の問題につきましては、すでに法務総裁からも、参議院においてはつきりと、この点は社会運動には適用しない、労働運動には適用しない、しかして、そういうことに疑義があるならば、一項を挿してもよろしい、こういう答えが得られているくらいでありますから、もちろん労働省所管の私といたしましては、法務総裁のこの言を忠実に信じております。
それから最後には、
爭議を行
つた理由で組合に不利益を與えてはならない。この点もまた私
どもは、労調法その他
法規に正確なる規定のあることは、これはどういう場合でもやむを得ぬことと存じますただ行政
措置としては、できるだけそういうことのないように私としては努力いたしたいと考えておりますから、この点、御了承願いたいと存じます。
皆さん、これで御了承願います。(
拍手〕。
〔
國務大臣北村徳太郎君
登壇〕