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1948-03-25 第2回国会 衆議院 本会議 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十五日(木曜日)     午後三時二十分開議  議事日程 第二十八号   昭和二十三年三月二十五日(木曜日)     午後一時開議  一 國務大臣演説に対する質疑(前会の続)     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 内閣総理大臣より発言を求められております。この際これを許します。芦田内閣総理大臣。     〔國務大臣芦田均登壇
  4. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 私は、昨日アメリカ陸軍次官ドレパー氏の一行と会見して、各方面の問題につき意見を交換しました。私は、終戰後日本國民平和世界の建設に熱意をもつて邁進する決心をもつていることを述べ、さらに日本経済再建がいかなる方法によつて行わるべきかについて政府所見を説明しました。また今日わが國が当面している難関の打開について、でき得べくんば連合國がこれに格別の援助を與えられんことを要望いたしました。  この会談において、私はドレーパー氏から、日本自立自存の國として再建せられることは、ひとり日本利益であるのみならず、またアメリカ利益でもあると信じているから、日本國民がみずからの運命をみずからの手によつて開拓する意気と努力を示すにおいては、アメリカ国民從來よりも一層の熱意をもつて日本経済再建に寄與し得るであらうとの言明を得たのであります。(拍手)  私は、以上の事実を議会を通じて國民諸君報告するとともに、日本國民が好意ある連合國の信頼に背かないごとく、祖國再建のために今後一層奮励することの決意を新たにいたしたいと思います。  以上、簡單に御報告いたします。(拍手)      ————◇—————
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。大原博夫君。     〔大原博夫登壇
  6. 大原博夫

    大原博夫君 私は、先日來多数の議員諸君によりまして御質問が行われましたので、重複を避けて、きわめて簡單質問をいたしてみたいと存じます。  首相施政方針演説において、戰爭の結果として文化と道徳頽廃させ、今日なお犯罪の減少を見ないのは遺憾にたえない、民族の血液から凶暴性を刈りとることは、一は國民生活安定の問題であり、他は道義の高揚をはかる教育の問題であると選べておられるのであります。これは第三者批判として正しいのでありましよう。しかし、道徳頽廃犯罪の多いことは社会の罪でありまして、社会の罪の原因は、一にかかつて政治に基くものであると思うのであります。(拍手)凶悪なる凶暴性生活安定に讓らず、道義頽廃ひとり教育に委ねず、首相はその責任を自覚して、これを芟除するところの態度をとらなければならないものだと思うのであります。(拍手第三者の冷静なる批判態度をとるべきではないと存じます。またこれ対処するところの方法を考究してないとは存じませんが、よろしくいかなる対策行つてこれが鎭圧をなさんとするのであるか。その御所見をお伺いいたしたいのであります。  次はインフレーシヨンの問題でありますが、このインフレに対して非常に憂慮をいたしておるのであります。もつとも昨年の十二月、日銀券は一ヶ月四百九億円に上つて、非常に心胆を寒からしめたものでありますが、これが今春以來此收縮に轉じて、二月末二千百億円に止まり、九十億円も減じておるのであります。この原因はと問えば、これは政府支拂が七百億円ばかりまだ未拂であるのと、納税が四百六億円に達したためであるというのであります。これは一時的現象にすぎないものでありまして、今まで遅れた政府支拂、あるいは重要企業の赤字もあれば、あるいは賃金増額運動もあり、物價値上げも想像されまするので、これは一時的現象であつて、とうていこれによつて安心することはできないと存ずるのであります。しかし政府支拂が、すなわち政府財政が、この日本インフレを左右する大きな因子であるということは、これをもつてしても判断がつくのであります。かたがた外資導入等に成功いたしまするならば、この場合実質的な健全財政確立ができますならば、その進行を食い止め得られるのではないかということを思うに至つたのであります。しかしながら、実質的な健全財政確立できるかどうか、これは非常な疑問をもつているものであります。  栗栖安本長官は、経済再建のため、その前提となる経済の安定、すなわちインフレーシヨン克服をはかることを当面の責務とする。また二十三年度予算は実質的な健全財政の実現を根本方針とすると述べられました。一面また勤労所得税の大幅引下げ、所得税の軽減、法人税引下等も約束しておられるのであります。從つて、その收入減は相当の額に上るものと思われるのであります。また中小商工業者あるいは農家に対して、二十三年度において非常な重税を課せられしまた結果、破産をした者、まつた破産のほかない窮状に陷つている者など続出をいたしまして、二十三年度再びかかる重税の賦課のできる状態ではありません。たとい課しても、満足徴收はできないと思うのであります。かかる重税企業を破壞し、また農家田畑等を放棄するに至るでありましよう。決してこれが増産にはならぬのであります。これらの重税を改めなければならぬと思います。從つて、これらの收入減でどうやつて実質健全財政ができるであろうか、心配をいたしているのであります。どうしても入るをはかつて出ずるを制しなくてはならないのでありますが、これは決してなまやさしい問題ではありません。政府は断固として健全財政を守り通す決意があるかどうか、この決意お尋ねいたしたいのであります。(拍手)また財源は二千五百億円と傳えられておるのでありますが、どの程度財源見透おしてられるのであるか、そうしてどういうふうに財源を見込んでおられるのであるかということをお尋ねいたしたいのであります。  またインフレ克服のためには、生産増強貨幣操作はもちろんのことでありますが、思い切つた行政整理を断行し、かつ放漫な官廳経費の緊縮は絶対に必要であります。(拍手行政整理を断行するに怯懦であつてはならないと存ずるのであります。日本再建の礎を洗い去らんとするインフレーシヨンに際しては、天引整理もまたやむを得ないと思うのであります。一体どの程度行政整理を行おんとするのであるか、その所信をお伺いいたしたいのであります。  また栗栖安本長官は、今日の産業経済活動の大きな制約をなしておる海陸輸送力について、その損耗と破壞を整備充実すると申しておられました。これは多分運賃値上げを断行し、特別会計独立採算制の復活をされることと思うのでありますが、これに対する御意見をお伺いいたしたいのであります。またこれに関しまして、財政法の第三條について、お尋ねをいたしたいと思います。政府鉄道貨物運賃特例を設け、改正は物價体系確立に際して原價計算の基礎になるから除外例を設けたい意思のようでありますが、この点については、議会みずから審議権を無視する結果となり、かつその金額は相当の額に上るのであります。またかくのごとく国民生活に重大なる影響があるものであるから、旅客運賃とともに議会議決を経るは妥当であると考えるのであります。(拍手一般予算と別個に独立法律案として議会に提出して、その議決を経たる後これを実施すべきであると思うのであります。從つて、第三條に特例を設けるがごときは、議会軽視の思想以外の何ものでもないと存ずるのでありますが、政府の御所見ほいかがでありますか。(拍手)  次は労働問題についてでありますが、先日來一連の官公労組爭議は、國民に莫大なる被害を與えたものと存じます。たとい二十四時間のストにいたしましても、各地にわかれて別々に行いました結果、その期間は相当に長かつたのであります。なおわれらは、連日行われました官公労組との交渉憂慮しつつ、また一縷の望みを嘱して待つてつたのでありますが、その交渉は遂に決裂して、いよいよストライキを決行すると答えられております。まことに遺憾に存じます。ついては、この交渉の概略の御報告及び今後の対策について、労働大臣の御所信を承りたいと存ずるのであります。  現下日本のこの情勢下において、労働攻勢を繰返して行われる限り、生産復興望みもなく、日本再建もまた思いも及ばないものであると思います。一体政府は、新給與をもつて最低生活確保し得るとの確信をもつておられるのでありましようか。それとも最低生活は守れないが、財政的の見地よりこの一線を守り、一面実質賃金をとらせて最低生活をなさしめ得るとの確信に立つておるのでありましようか。これもお伺いいたしたいのであります。  労働組合も、一般同胞生活と見合い、現下國情を察知して、危機突破のために最低生活に甘んじてもらいたいのであります。國情を無視した不当の要求は遺憾に存ずるところであります。しかし一面、政府もまた單なる賃金要求である限り、最低生活の安定を得るように適当なる妥協をなして、極力ストは回避しなければならぬと思います。昨年千八百円ベースの設定の場合のごとく、最初より無理な状態において、この無理を押しつけて、組合側は四囲の情勢上やむなく一時鎭静はいたしましたものの、生産意欲はさらに上らず、一年中鬪爭に沒頭しておるがごときは、國家のために大損失であると思うであります。(拍手)  さらにまた、たとい一部に革命論者があるといたしましても、單にそれら一部の策動だけで、勤労大衆があれほど多く爭議に駆り集められるとは私は思われません。一部の煽動分子煽動の余地を與えているところに社会欠陷があるのではないか、もつと違つた対策が生れてきてしかるべきではないかと思うのであります。この点についても政府の御所見を伺いたいのであります。(拍手)  次は農村問題についてでありますが、農村一般に食生活の限りにおいては都市に比して生活が安定しておつたことも、また従来の農村に比して富の増加を來しておつたことも、事実でありましよう。しかしながら、都会附近農家は別といたしまして、純農村農家、特に國のために最も大きな貢献をしておりまするところの米麦作農家富たるや、きわめて僅少なものであります。この富も、やみの富ではなくして、戰爭中より生活必需物資その他の資材を購うべき何ものもなかつたために、長い間に蓄積いたしたものであります。長い間かかつて辛苦粒々蓄積したいささかの富も、二十二年度の農業所得税重税によつて一時に取上げられたというのが今日の実情であります。それもマル公で供出したものに対して、やみ價格課税をされておるのであります。しかも過当の供出割当を受けて、自家保有米もなく、還元配給を受けるときは、供出マル公價格の二倍半くらいする値段でこれを買つて食べて、その上にやみ價格による課税をされておるのであります。実に苛斂誅求であります。実にまた暴政というほかはないのであります。本年度も昨年のごとき重視を賦課するとすれば、ゆゆしき問額の起ることは明らかな事実であります。農業所得税の撤廃または大幅の引下げを強く主張するものでありますが、政府の御所見はいかがでありましようか。(拍手)  また農業生産物價格は、物價改訂に伴いこれを引上げることは、和田前安本長官明言のあつたところであります。栗栖安本長官の重ねての明言を願いたいと存じます。しかしながら、農家もただいたずらに價格の騰貴を喜ぶものではございません。労働者実質賃金と同じように、農業必需物資配給の裏づけのある実質價格を望んでおるものでありますことも、ことに強く主張いたすのであります。この点につきましても御所見をお願いいたしたいと存ずるのであります。  その他教育の問題、あるいはまた外交の問題についても質疑をいたしたい点があるのでありまするが、これは重複をいたすきらいがありますので避けまして、私の質問はこれで打切るものであります。(拍手)     〔國務大臣芦田均登壇
  7. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 大原君の質疑お答えいたします。  大原君の質疑の第一点は、私の施政方針演説の中において、道義頽廃並びに犯罪が依然として減少しないことは、一面においては國民生活安定の問題であり、他面においては教育の問題であるといつた、その言葉に多少の誤解を抱いておられるのではないかと考えるのであります。私が言わんとした意味は、かように道義頽廃し、犯罪が依然として減少しない結果、これが対策としては、一つには國民生活の安定をはかることが道義を高揚し、また犯罪を減少せしめる途であり、他面ならないという意味で申したのでありまして、犯罪道義頽廃原因としての二つの問題を取上げる趣意ではなかつたのであります。從つて、その対策としては、何よりもまず國民生活の安定に重点をおかなければならぬ、次いで、これと並行してわが国文教の刷新をはからなければならぬということを述べた意味であります。ただいまお尋ねになつた対策しては、抽象的に申せばこの二つの問題に帰着すると信じております。  次に、健全財政を維持するために行政整理を徹底的に行わなければならないと思うが、政府はどれだけの決心をもつておるかという御質疑であります。先ごろこの壇上でお答えをいたしたごとく、片山内閣以來行政整理の断行を計画いたしまして、行政調査部の案によつて、その当時ほぼ全官公廳員たの二割五分の減員を目標として討議しのであります。しかるにその当時の案は、行政整理経費削減との関連において偏重しておるきらいが多かつたのでありまして、新内閣においては、さらに能率増進行政機構改革重きをおいて行政整理経費削減との関連において偏重しておるきらいが多かつたのでありまして、新内閣においては、さらに能率増進行政機構改革重きをおいて行政整理を断行する方針を目下討議しております。遠からず具体的の案を國会に提出して御審議を仰ぐ運びになることと考えております。(拍手)     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  8. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) ただいまの大原君の御質問お答え申し上げたいと存じます。  現在の全逓を中心とするも全公官労組合爭議状態につきまして御憂慮のお言葉が出ましたが、これはお言葉通り、その立場のいかんにかかわらず、國民としてきわめて憂慮すべきことでありまして、できればこういう事態がきれいになくなる、また將來も起らないようにしなければならないということは、お説の通りであります。現在の状態におきましては、遺憾ながら事実として存在しておりますので、これに対しましては適切なる方策を講じたいと存じておりますが、その方策の点を申し上げまする前に、御質問の中にございました今日までの経過につきまして、若干御説明を申し上げて御了承を得たいと存じます。  御承知通り現在の爭議状態は、昨年の九月以來の問題でありまして、最初組合側は種々なる要求項目といたしまして、最低賃金制確立生活補給金支拂團体協約、これらの点をもつてそれぞれ関係官廳要求されたのであります。しかしながら、これらの点はいずれも非常に解決が困難な問題でありまして、政府それぞれの機関労働組合側との話がまとまりませんために、遂に中労委に対する提訴となつてきたのであります。中労委はこの提訴を受けまして、結局生活補給金としては二・八箇月分の支拂最低賃金制の問題については、理論的には肯定せられるものもあるが、現在の状態においては最低賃金制の制定は困難である、ゆえに新しい給與機関を設けて、これによつて給與の問題を決定をするようにすべきである、この新給與のための機関は、團体交渉的性質のものではなくして、純技術的なものとして政府側組合側中立側とそれぞれの代表者をもつて構成すべきものである、こういう裁定がなされまして、その申入れ政府側組合側それぞれに通達されたのであります。  この中労委申入れに應じまして、政府側としては、ただちに委員会をつくる態度を決したのであります。組合側におきましては、國鉄労働組合代表者を送ることに承諾されましたが、他の組合は、この臨時給與委員会において最低賃金制の問題が論議がされないようでは参加することはないというので中労委再三の斡施慫慂がありましたが、遂に参加を見ることができなかつたのであります。しかしながら、新給與は一月から行うべきであるという裁定の趣旨に基きまして、一月末になつて、なお他の組合参加がないというので、いつまでもこの委員会を構成しないわけにまいりませんので、やむを得ず國鉄側三名、政府側三名、中立側三名、この九名の委員によつて委員会が構成されまして、この委員会におきまし家財政との関係インフレへの影響、こうした点を考慮におきまして、短かい時間に、また可能な限りの資料に基きまして、十分に科学的に檢討されたのであります。そして、その結果が第一次、第二次報告となつて政府側にも通達されましたので、政府側はこの臨時給與委員の通達に従いまして、それを無条件に承諾したわけであります。それが今日称えられておりまする二千九百二十円水準の問題であり、さらにこの二千九百二十円水準が生れるにいたりました賃金給與体系としては、從來生活給一本やり体系に対して、能率的なものを加味するという体系が採用されたのであります。  こうした給與委員会決定は、政府側はこれをそのまま承諾いたしましたし、國鉄におきましても、御承知のごとく先般上諏訪における臨時大会において承諾されたのであります。他の組合はこの委員会代表を送つておられないという点と、またこの給與方式に対する異議がありまするために、政府側といたしましては、現在の内外諸般情勢をできるだけ懇切丁寧に——あくまでも誠意を披瀝して、組合側代表者諸君に、事態は不満足ものであろう、苦しいものであろうが、どうか御了承を願いたいというようにお願いをしたのでありまするが、今日に至りまするまで、なお組合側了承を得るまでに至つていないのであります。こうしたことで、その後も政府側といたしましては、殊に労働者としては、労働者政府機関一つではありまするけれども、どこまでも労働者全般へのサービス省としての立場において、できるだけ組合側の御意見も聽き、またいろいろ勤労者諸君生活実情をも勘案考慮いたしまして、努める限りの努めをいたしたのでありまするが、この点、組合側の御了承をなお得ることができない状態にあります。  その後さまざま折衝をいたしまして、結局政府としては、この際どうしても二千九百二十円の新給與水準はこれを組合側了承してもらう。そしりに、そのうち二千五百円は暫定的に支給し、残りの四百二十円についてに組合側折衝をしてきめたい、この二千九百二十円に関する支給給與を行うにあたつては、現在起りつつある中央・地方を問わず一切の爭議戰術を中止してもらいたい、またこの経済的要求に関する限りは、爭議行為、爭議戰術によらないで、平和的な方法團体交渉をいたしたい、こういうことを、いろいろな関係がありまして、文書によつて組合側から確約していただきたいということを申し入れたのでありまするが、これに対しまして組合側としては、とうてい政府申入れは聽くことができない、すでに議会において予算の協賛を得たのであるから、新給與をそのまま支拂うべきである、政府支拂うということを言われるならば、爭議戰術は一度に打切るということはできないが、順次爭議をなくしていく方向にすることができる、こういう話でありました。しかし、この点ははなはだ遺憾ではありまするが、この状態においてはなお問題の最終妥結とはなりませんので、今なお折衝が続けられているような状態であります。  これらの経緯をざつと申し上げましたが、今申し上げました中の内外諸般情勢という中には、皆さんが特に御了承のことと存じまするが、そういう皆さんの御了承になつておいでになりまする事情のもとに、組合側においてもこの点を御了承を願いたいと思う次第であります。いずれ今後も、なお政府側としては折衝をどこまでも誠心誠意続ける方針でありまするから、話は決してこれで打ち絶えたというわけではございません。なお現実には、政府がそうではあろうが、またいかに労働省がサービス省としてかれこれ言おうが、結局現実の問題としては、爭議が発生し、発生せんとしているではないか、これに対してどうするかという点も御質問の要旨の中にありましたし、また皆さんも、当然それをこそ政府意見をお聽きにならなければならぬ点であろうと存じますが、この点につきましては、私どもはあくまで誠心誠意を披瀝して組合側の御了承を得るということ以上に今これといつて申し上げる段階に達していないのであります。この点は御了承を願いたいと存じます。これをもつて私のお答えといたしたいと由思います。     〔國務大臣永江一夫登壇
  9. 永江一夫

    國務大臣永江一夫君) 私に対する御質問二点についてお答えいたします。  農業所得税については、すでに私は、この席上から再三お答えをいたしておりますから、なるべく重複を避けたいと思いますが、この税につきましては、今御意見のございましたように、農村においては非常な大きな問題を起しておりまするから、農林省といたしましても、農業生産に支障のないように最善の努力を拂いたいということを重ねて申し上げる次第であります。  次に、一般物價改訂に伴いまする農業生産價格改訂よりも、農業必需物資配給による実質價格確保が必要であるという御意見に対しましては、ちようど工場におきまする実質賃金確保と同じ意味におきまして、私は同感であります。一般物價改訂せられまする場合におきましては、農産物價格パリテイ方式を採用しておりまするので、所要の調整が必要であることはもちろんでございまするが、問題は、農家購入物資確保いたしまして、実質的に農家経営を合理化することの必要でありまして、政府はこの点に特に留意をいたしまして、それぞれ具体的処置をいたしたいと思います。すでに申し上げました点がありまするが、たとえば農家重要生産資材たる肥料につきましても、本年一月から七月におきましては、窒素肥料的百万トン、硫酸肥料約五十六万トンを確保いたしまして、稻作に対しまする窒素肥料につきましても、昨年反当平均四貫のものを本年は五貫五百匁に引上げたいと存じまして、これが確保努力中でございます。また農機具資材につきましても、鉄鋼割当量を昨年八千トンのものを本年は一万八千トンと引上げておりまする次第でございまして、この点も御了承願いたいと思います。(拍手)     〔國務大臣栗栖赳夫登壇
  10. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 大原議員お尋ねのうち、第一に私に関するものは、財政法第三條と物價改訂の問題であつたと思うのであります。財政法第三條と物價との関係におきましては、國会の御意向をもくみ、ただいま考慮中でありまして、一両日中にどういう範囲にするかということがきまると思います。しかしながら、現下の諸情勢とも照らし合わせまして、基本的なもの、重大なものにつきましては、もちろん特例等を設けたくないと考えておる次第でございます。なお一般物價改訂につきましては、近く補修的な改訂を行うつもりであります。なおその際に、農業生産品價格についてもその線に沿うて処理したいと思います。詳しいところは農林大臣から答弁がございましたから、重ねて申し上げないことにいたします。(拍手
  11. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 大原さん、さらに質問がありますか。——林山榮吉君。     〔上林山榮吉登壇
  12. 上林山榮吉

    ○上林山榮吉君 去る二十日本議場において、芦田内閣総理大臣のきわめて抽象的な施政方針演説が行われたのでありますが、この際私は民主自由党代表いたしまして、総理大臣及び関係閣僚に対して率直なる質疑を試みたいのであります。  すでに総理大臣も御承知のごとく、議会の第三勢力である民主党が中心となつて難産難産を重ねて先般やつとでき上つたの芦田内閣でありまするが、これは社会民主、國協の三党が解散を恐れてできた連立内閣であり、その性格は言うまでもなく、國民の世論に圧倒されて、政策の行詰まりによつてもろくも退陣していつた社会党連立内閣を偽裝したところの延長内閣であると言わねばなりません。(拍手)ただ前内閣の性格と違う点は、朝に左派を切るべしと主張した民主党の諸君が、夕に急轉して左派の政策をのみ、左派の加藤、野溝両君を入閣せしめて、世間をしてあつと言わしめたところに性格の相違があるだけであります(拍手)かくのごとく複雑にして不安な基盤の上に立つて組織された内閣でありまするがゆえに、ひいて首相演説も、國際的に微妙な今日、敗戰経済のみじめなる祖國を再建するの迫力を國民に全然感ぜしめなかつたということは、遺憾の極みであると思うものであります。  まず私は、外交の問題に関連して質してみたいのでありますが、去る十七日、あわただしい世界情勢の中に、アメリカ議会において発表されたるところのトルーマン大統領の声明に対して、日本國民は重大なる関心を寄せておるのであるが、占領下における総理大臣といたしまして、この声明をいかに解釈し、いかに受け取つておるかということを、この際はつきり発表せられたいのであります。なぜかと言えば、首相施政方針演説の中に、今や世界は第三次大戦の可能性におびえておると言われたのでありますから、この際において、この声明をいかに解するかということを私は要求いたしたいのであります。殊に総理は発言して、政府が特に注意を傾けんとする点は、現在の環境においてわが内政の処理をなすにも、まずもつて世界的関連においてなすべきであると強調しておるのであるが、追放によつて極右的政党や極右的國体のない今日、國内で行われておる民主主義破壞の活動に対しまして、いかなる態度をもつて臨まんとせられておるのであるか、この決意をばこの際明らかにしていただきたいのであります。  さらに重要なることは、本議場において首相日本人の血液の中には凶暴性があるから、これを刈りとらねばならぬと世界に向つて宣言したのであるが、一体これは河を意味するのであるか。(拍手)この一事こそは、まさに私は日本國民として聞き捨てならぬところの暴言であると言わねばならぬと思うのであります。(拍手)われわれは、新憲法において戰爭を否定し、平和主義を高く宣言したのであるが、首相は今やこの宣言が虚偽であると修正をしたのであります。言うまでもなく、いずれの民族にも一部には凶暴性があるし、もちろん日本人の一部にも凶暴性の行為のあることは率直に認めるのでありますけれども、血液の中に凶暴性があるということは、單に制度の改革や教養を高めることによつて、これを根本的に刈りとることはできないのであります。今やわれわれは、講和会議を迎えて世界平和に貢献せんとの熱意に燃えておるのであるが、しかも一方には第三次世界大戰に世界はおびえておると首相は発言をしながら、わが党代表者のこれに対する質問に対し、何ら國民を安心させるほどの答弁をなし得ない今日、日本人の血の中に凶暴性があるからこれを刈り取らなければならぬと宣言するに至つては、史上まれに見るところの認識不足の暴言であると私は信ずるのであります。(拍手)さらに現内閣も、近くまた実現するであろうところの内閣はもちろんのこと、外資導入について相手方の了解をより求めなければならぬ今日において、世界に向つて一種の大きな疑問を投げかけたということは、いかに口に平和主義を強調いたしましても、國家の一大損失であるといわなければなりませんが、これに対する総理の見解を質したいのであります。  さらに芦田総理に質したいのは、三党連立の基盤であるはずの政策協定について、その基本方針を伺いたいのであります。三月十三日、大藏大臣北村君は記者團との会見において、政策協定は三党の連帶責任であるが、具体的には未だきまつていないので、二十三年度予算は政策協定とは別個に編成するとの、無責任きわまることを言明しておるのであるし、総理大臣演説にいたしましても、これを明確にしていないのであるが、政策協定が具体的に決定せずに、單に了解事項つき程度で抽象的に協定しておるということは、まさに芦田内閣がよつて立つ重要なる基盤が脆弱であることを証明しておるものであり、政権獲得のためには、のめないものをのみ、実行性なきものも協定しておかねば都合が悪いという謀略的の印象を強くするのは、健全なる民主政治のためにはなはだ遺憾とするところであります。(拍手)はたして芦田首相あるいは西尾國務大臣等は、当面の緊急対策とも見るべきこの政策協定をして、二十三年度の予算編成に取入れて実行するだけの決意があるかどうかということを伺いたいのであります。  殊に、大局的見地からいま少しく具体的に政策協定の内容に触れてみるならば、それ自体矛盾を感じ、実質的にば價値のないものが多いと思われるのであります。すなわち、まず第一に軍事公債利拂停止の問題であるが、これは協定によれば、軍事公債の利拂停止的処理、その方法は今後処理委員会を設けてきめるとして妥協が成立しておるのでありまするが、すでに社民両党の間においてこれが見解を異にしておるというほどのあいまいな協定は、一体どういうふうにこれを受け取ればよいのであるか。もしかりにこれを実行に移すとすれば、満州事変以來終戰まで軍事費として明かに使用された公債は約七百九十億円で、その利拂は年額二十七億三千万円であるが、これを停止した場合、公債は九割五分金融機関に保有されて、預金と見合つておるので、その処理はただちに金融機関の收支勘定に大きく影響してくるが、これが金融機関の損害を一体何によつて埋めるつもりであるか。すでに第二封鎖預金の切捨ても、金融機関の整備が最終段階に進んでおる今日では困難であるから、結局政府がその損失を負担しなければならぬことになるのであつて、二十三年度における財政負担の軽減はおそらく問題になるまいと思うし、処理方法のいかんによつては、かえつて戰爭犠牲の負担公平化の目的にも反する結果となるのであります。要するに、インフレの進行に伴つて公債が実質的に漸次処理されている今日、実際問題として鳴物入りで宣傳するほどの効果があるのであるか、良心的な答弁を要求するものであります。かかる無意味な協定を何がゆえに結ぶのであるか不明であるが、これはおそらく、これのみを目的にしたものでなくして、そのねらいは、あたかも衣の下からよろいをのぞかせているごとく、究極のところ、金融機関の國有國営あるいは國管というようなことを目ざしているところの社会諸君のイデオロギーに基くものであろうと考えるのであります。  要するに、軍事公債利拂の問題と程度や内容の差こそ違え、大体以上のようなあいまいな結果になるというのが政策協定全般を通ずるものといわなければなりません。すなわち國富調査税にしても、その性格は第二財産税的のものであり、徴收額はわずかに十億円程度のものであると言われる。また第三次農地改革にしても、第二次農地改革を完了し、第三次農地改革を準備するというのであつて民主党の案が重点であるのか、それとも社会党の案が中心であるのか不明瞭であるが、かりにこれを諸君が実施してみたところで、増産体制の確立にもならねば、健全なる農村民主化にもどの程度役立つかということは、その質と量とを考え合わせてみるならば大して期待のもてる問題ではないと思うのであります。(ノーノー)かくのごとく解剖してみると、結局三党協定は、世間に言われるごとく、非常に政治的な含みをもつものであつて社会党左派を引込むための形式的のもので、何ら権威のあるものではないと思うのであるが、どうであるか。(拍手)この点を質しておきたいのであります。  次に、大藏大臣及び安本長官に質しておきたいことは、明年度の予算編成についてであります。予算編成は未だ決定をせずに、やつと四月分の暫定予算が提出できるか、あるいはこれすらも提出できずに、四月から予算がなくなるはめになるのではないかというよような状態におかれておるのであるが、はたしは政府は、五月以降の明年度予算を最近提出するところの見込みがあるかどうか、率直に披瀝せられたいのであります。なお、四月分の暫定予算の中に六・三制の予算あるいは水害対策費がはいつておるのであるかどうか、この点を明瞭にせられたいのであります。  また総理大臣にしても安本長官にしても、インフレ克服のための具体的施策、通貨安定に関する具体案等を何ら示さなかつたばかりでなく、総理大臣がその施政方針演説の中で、インフレ高進にかかわらず國民の実質的生活が向上したと説明するに至つては、経済政策に対するところのナンセンスであるといわなけばなりません。今や國民は、住むに家なく、着るにも食うにも非常に欠乏しておるのであるが、実質的に國民生活が向上したということは一体何を意味するものであるか。これはあたかも片山内閣が、千八百円べースで去年の十一月ごろには一戸当り四百円の黒字が出ると言つて國民から笑われたと同じたぐいの言いぐさであるといわなければなりません。(拍手)かかる貧困なる認識の上に立つて國民経済の実力に相應する実質的な健全財政を堅持しつつ、インフレーシヨンの抑止と通貨の安定を確保する建前において、はたして予算の編成が可能であるかということを明確に質したいのであります。殊に政府は、この際インフレ対策からして浮動購買力を吸收すると説明しておるのであるが、年度末の支拂はさらに七百五十億円、租税の滯納は、いくらかとれたといたしましても三百五十億円、合計一千億円を突破するところの浮動購買力が、さらに放出されていくわけであるが、これに対して政府は何らか具体的方策をもつておるのであるかどうか。  殊に、長期の預金に対するところの免税をいかに考えるか。あるいは預金を吸收する建前から、もし非常処置を金融面にしなければならないような場合においては、長期の預金に対しては特典を與え、あるいはたんす預金のごときものに対しては、これを割引きして換算をするというようなことについて、政府は研究の準備をする必要があると思うが、これに対していかなる考えをもつておられるのであるか。この際、浮動購買力に関連いたしまして質しておきたいのであります。  そこで、まず檢討せねばならぬところの重大なることは、明年度予算の編成の前提となる物價改訂をどの程度に、しかもいつからこれを行うかということであります。もし現行物價予算を編成するとすれば、補給金は数百億円の支出となり、鉄運、通信の両特別会計は毎月数百億円の赤字となるのであるが、この財政支出を單に國民の税金のみで賄うということは、担税能力が頂点に達した今日、許さるべきことではないと思うのであります。さればといつてマル公を極端に引上げて利用者負担とすれば、予算の歳出は直接にこそ増加しないが、予算に使う物資の單價の値上りから、結局予算はそれだけ多くの支出を要することになるのであります。もしこうなつた場合、特に考えなければならぬことは、物價高にあえぐ國民生活の苦しさをして、さらにどん底に突き落されねばならぬということであります。  そこで具体的に伺いたいことは、大体何割くらいの値上げをする方針であるか、さらに全面的な値上げをやるのであるか、あるいは一部の改訂をやるのであるか、この点であります。さらに、前質問者よつても尋ねられたのであるが、政府の答弁がないので質したいのは、先般片山内閣の命取りとなつたところの運賃値上げの問題である。これをどの程度値上げし、いつから実施するかということについても、この際具体案を示されたいのであります。  殊に明年度の予算編成上困難な問題は、歳出の厖代化に対して財源、となる歳入がとうていこれに伴わぬので、この不均衡をいかに処理するかということが重大であると思うのでありまするが、今大藏省に集まつておるところの要求額は、現行物價水準においてでさえ五千五百億円といわれ、これをかりに傳えられるがごとく五割くらいの値上げをいたしたといたしましたならば、その金額は七千五百億円というような厖大な金額になるのでありまするが、これに見合うところの歳入は、インフレによる増收を見込んでも、三千億円程度というのであるから、差引要求額に二千五百億円も不足する結果となるのであります。これに対して、要は政府といたしましては、きびしい査定をやるはずでありまするが、表面上いかに公約し、いかに弁解をいたしましても、教育文化政策にあまり重きをおかなかつた片山内閣同様、現内閣も六・三制実施の予算を三たび犠牲にし、能率増進と行政の民主化を前提とするところの行政整理をあいまいなものにするとともに、失業対策費、経済再建費、戰災復興費、東北・関東の水害対策費を初め、九州地方の漁船集團災害の対策費のごとき、当面緊急の諸経費にはなはだしく影響するのではないかと思うのでありまするが、これに対する政府の具体的所信を明らかにせられたいのであります。殊に文部大臣は、六・三制に関するところの追加予算が実現をしない場合は文部大臣をやめると言つていたのであるが、追加予算は二回もこれが実現しなかつたにもかかわらず、今また文部大臣となつてこの問題と取組んでおるのであるが、この際文部大臣としての感想伺いたいのであります。(拍手)  さらに進んで、予算関連をいたしまして強調せなければならぬことは、税制の根本的改革であります。政府は税制の改革に対しましていかなる構想をもつておるのであるか、いまだ徹底を欠くので、大きなものについての説明を求めたいのであります。一部政府の説明するところによれば、税制改革一つ方法として、わが党の基本政策のごとくああまり徹底はしていないけれども、勤労所得税法人税の軽減を考えているということであるが、この構想はもちろんわれわれも賛成するものであります。しかし要は、このために三百億円を予想される税の減收をして、どうしてこれを埋めるかということが重要な問題であると思うのであります。政府はこれが代り財源としてあるいは賣上税を考慮しているかもわからないが、が十分にあるといわなければならぬのであります。わが党は税制改革根本方針として、特別のものを除く一般の税率を思い切つて軽減し、もつて滯納者をなからしむるところに財源確保することができると考え、権威ある調査会を設置して対策を檢討中であるが、承つておきたいのであります。  もちろん、赤字公債が不可とされ、健全財政を守り拔かんとすれば、税收の増大を、しかも確実にこれをはからなければならぬことは当然のことであるが、片山内閣の時代より芦田内閣にがあるということは、まことに遺憾であるといわなければなりません。しかし、この滯納の原因は片山内閣所得税の更正法定をしたところにあるのであり、しかも、農漁村や中小商工業者等の申告に対して十倍というような高額の決定をしたところに無理があるのであります。これに対しては、さらに税務官吏等も反省されなければならぬ点が多いが、政府より各税務署へ不当な税額を強制的に割当をしたところに大きな原因があると思うのであります。よつて政府といたしましては、更正決定の期間を延期して、これが大きなでこぼこを調整する用意ありや否や、この点を伺いたいのであります。  特に最近注目せねばならぬ現象は、各地方の税務署や労働組合に巧妙なる一種のフラクシヨン活動があつて、申し立てる納税者に対し、これは君らの代表者であるところの國会議員がきめたのであるから、いまさらどうにもならないと反駁している事実、一方外部からは過激主義者が陳情現場や各職場大会において演説でアジリ、故意に政府議会に悪感情をもたしめていることが最大の原因であると思うが、政府はかかる言動に対していかなる対策をもつているか、この点を質したいのであります。  最後に、労働対策について具体的に質してみたいのであります。片山内閣倒閣の責任者の一人である社会党左派の加藤君が進んで大臣に就任したということは、まさにふしぎとされているところであるが、この際労働大臣にまず聽いてみたいことは、片山内閣の労働行政と現内閣のそれとは何か根本的に違つておる点があるかということであります。すなわちまづ第一に、社会内閣が世論に押されて行政整理の断行を声明し、その基準まで示してきたのであるが、現総理の発言によれば、二割五分の天引の行政整理を片山内閣同様やりたい、こういう答弁であるが、加藤君は大臣就任以來、片山内閣天引整理は不合理だから、自分としてはやらないつもりである、こういうことを発表しているのであるが、これをいかに取扱わんとするのであるか、特に加藤君にお尋ねをいたしたいのであります。  今日労働問題の中心は、言うまでもなく生産を前提とする適正賃金の安定であり、勤労者に食える賃金を保障することであると思うのであります。ゆえに賃金対策の根本は、高能率賃金の原則によつて労働の成果を高めるとともに、それに應ずるところの十分な賃金支拂うことにあるのであるが、しかしながら、官といわず民といわず、過剩な人員をそのままにして、全部の者に國民の犠牲において高い賃金支拂うことのとうていできないということは、敗戰後における経済状態を見ればよくわかることであり、ソ連においてさえスタハノフ運動が起つた原因を考えてみれば判然とした問題であるから、人員の整理は、労働者に十分な賃金支拂い、これを正しく待遇するためにも、生産を伴う失業対策と併せて適正に行うということが必要であると思うが、私は労働大臣所見を特に質すのであります。  第二に、二千九百二十円ベースの支拂に対する大藏大臣と労働大臣との國会における重大なる答弁の食い違いについて質したいのであります。大藏大臣は、給與委員会案を組合側が承諾しなくても勤労を対象として支拂うと答弁しているのに対して、労働大臣は、これを承認した組合のみに支拂うべきであると、ただいまこの壇上がら答弁したのであるが、これは閣内の不統一ぶりを露呈しているばかりでなく、労働爭議をさらに紛糾せしめた原因がここにあると思うのであるが、これに対していかなる考えをもつているのであるか。殊にこの場合一言したいことは、政府職員の俸給等に関する法律が未だ國会を通過せざる去る十九日、國会の権威を無視したところの暫定給與支給準則を無視して、各省に支拂の指令を政府はしているばかりでなく、委員会案を承認した組合のみにこれを支拂うことに決定したというのであるが、これに対するところの確然たる根拠をば明らかにせられたいのであります。  さらに第三に、労働大臣は、労働省の職員組合申入れであるところのスライド制の実施と組合專従職員の問題を確認したというが、これは一致せざるところの政府方針であるのであるか、それとも加藤君が勝手にやつたところの確認であるのか、この点を明らかにせられたいのであります。ただいま官公労の專從職員の数は約一万人と称せられ、これに支拂うべきところの年俸は一億二千万円と称せられているが、この人々は組合の仕事をしているのであつて、大藏大臣が言うがごとく勤労を対象にしているのではないと思うのであるが、この点をどういうふうに考えるか。殊に全逓の委員長等は政府より自動車まで提供され、組合に対するところの政府の補助金のごときは莫大なものであるというが、事実であるかどうか。もし事実であるとするならば、これは憲法第八十九條及び労働組合法の違反であるばかりでなく、政府にかくのごとく秩序せしめるということは、組合の健全化、組合の自主性尊重の建前よりして適当であるかどうか、われわれは疑問をもつものであるが、加藤君の所見を質したいのであります。  殊に、最近労働大臣の言動について不可解なのは、認証式直後における記者会見において、私は閣内にあつてあくまで労働階級の利害の立場に立ち、労働者生活防衞のために鬪うつもりだと、まことに威勢のよい第一声を放つていることであります。はたして加藤君は、ただいまその労働者諸君のために鬪つているのであるか、國務大臣として閣内でだれを相手に鬪うというのであるか、この点を明らかにせられたいのであります。(拍手)  さらに私は、かつて左派のアジテーターとして労働者をアジつてきた加藤君が、大臣としての抱負を語るに、又この壇上からもただいま聽いたのであるが、労働省は労働者にサービスするための省であると言つているのは一應は了解できるといたしましても、労働省や労働大臣國民に奉仕すべきものであることを忘れて、勤労者の御機嫌のみをとつたり、勤労者だけの利益をはかることを意味するものであるならば、はなはだしい間違いであると言わなければなりません。すなわち労働省は、言うまでもなく他の各省同様、あくまでも國民全体の立場から見た勤労者の正当な利益を守るものでなくてはならぬと信じるものであるが、この際同僚左派諸君のとめるのを振り切つて労働大臣に就任した加藤君のイデオロギーを明確に質したいのであります。  以上、総理大臣を初め各閣僚に対し、当面重要なる問題について率直に質疑を試みたのであるが、姿勢演説の劈頭において芦田首相は、この際いたずらに党派心にとらわれ、議論に時を空費するがごときことは断じて許さないところであると、あたかも政党政治を否認し、正常なる議会政治を毒殺せしめたところの軍閥官僚や、大政翼賛型一派のおもかげに彷彿たるものがあつたのであるが、眞劍なる審議に時を借しむことなく、かつまた再登壇せし怏むる必要のないように、責任のある明なる答弁を要求するものであります。(拍手)     〔國務大臣芦田均登壇
  13. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 上林山君にお答えいたします。 上林山君は、去る三月十七日アメリカ大統領トルーマンがアメリカ議会において朗読したる声明にわ國民が重大なる関心をもつておることをお述べになり、この声明を何と考えるかかという御質問であります。トルーマン大統領が自由と平和を擁護する熱心なる意向を表明せられたことは、われわれ國民のひとしく共鳴を感ぜざるを得ないところでありまして、わが憲法の声明する精神にまつたく符合するところであると思います。その他アメリカの内政諸政策について種々の勧告を行つた点につきましては、わが國今日の情勢から見て、これをかれこれと批判することは差控えたいと存じます。  次に、私の施政方針演説において、わが國民の中にも凶暴性がある、それは上林山君もともに認めるとおつしやつた点であります。その点は、過去十年來のわが國の歴史の中に、不幸にしてわれわれ國民が率直に認めなければならない過ちを犯した。それは極東軍事裁判に提出されたる種々の文書に顧みても、われわれ國民は今日深刻に反省しなければならないごとき過ちを犯した点がある。(「行為の過ちであつて凶暴性ではない」と呼ぶ者あり)また最近にいわゆる帝銀事件と称するものがある。私は今日までのわが國の犯罪の歴史において、いまだかつてかくのごとく恥ずべき犯罪はなかつたと痛感するのであります。願わくは今後われわれ日本人は、これらの事実に鑑みて、世界の前に立つて頭を正しく上げて濶歩し得るような民族になりたい、これを私は念願したにすぎません。  次に三党政策協定の問題について、新内閣昭和二十三年度の予算の中に三党政策協定を組み入れる意思があるかどうかというお尋ねであります。むろん政策協定として約束をした以上、國家財政の許す限り三党政策協定の全部を実現することに努力いたす考えであります。(拍手)     〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  14. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 上林山君の御質問はきわめて多岐でございまして、十分にお答えできるかどうかわかりませんが、私の氣づいたことだけ申し上げたいと思います。  一つの点は、二十三年度の予算において三党の政策協定を入れるかどうかという点であります。新聞の記事をお引きになりましたようでありますが、私は今のところ、暫定予算の中に三党の協定の事実を織りこむことは困難であろうと思うということを言つたのであります。それでも三党協定の中で入れちれるものはむろん入れる、中には今後研究する、あるいは今後委員を設けて、その委員会の決をまたなければならないものがございますので、さようなものについては暫定予算の中に入れることはできない。しかし二十三年度の本予算においては、もちろんできるだけこれを多く取入れなければならないかように考えておるのであります。  それから暫定予算は四月だけかどうかというお話であつたようでありますが、これは四月だけにいたしたい。もともと暫定予算というのは、これはやむを得ない変則でございまして、なるたけかようなものは避けたいと思つておるのでありまして、四月だけにしたいと考えております。鋭意その努力をいたしておりますが、万やむを得なければ、あるいは五月まで出るかもしれませんけれども、かようなことにはならないようにいたしたいという考えであります。  それから軍事公債利拂とか國富税のことについて御質問がありましたが、これはすでに委員があげられまして、そのことにつきまして決議を得ますれば、これに基づくことは当然であります。さよう御承知願いたいと思います。  それから税制改正等についてもお話があつたようでありますが、このことに関しては、たびたびここで申し上げた通りでありまして、所得税、殊に勤労所得税については相当大幅に軽減をいたしたい。法人税等につきましても、これは企業の再生産活動に影響するような現行法は、内外の今の情勢から考えまして、殊に外資導入等の観点からも考えまして改正を要すると思いますので、もとの点については相当の改正を加えたい。賣上税については、これはまだきまつたことではございません。これも一つの課題として研究題目になつておるのでありますが、まだ決定を見ておらないのであります。  それから物價問題についても言及になつたようでありますが、これは安定本部長宮から答弁があることと存じます。  それから六・三制、行政整理等のお話がございましたが、これらについては、この暫定予算の中に入れるために、ただいま努力をいたしておるのであります。教育の尊重すべきことはもちろんであるし、その他災害復旧費等も何とかして入れたいというので、懸命の努力を続けております。  以上、簡單でございますが、大体のことをお答え申し上げます。  なおこの場合に、先日川崎君の御演説中、私はやむを得ざる公務のために出ておりまして、その御演説を拜聽いたさなかつたのでありまするが、御質問の趣旨は大体わかつたようでございますから、この機会に答弁することのお許しを得たいと思うのであります。  第一の点はインフレーシヨンについての対策はどうか、こういうふうなことであつたと思うのであります。これについては、ここからすでにたびたび申し上げたと思うのでございますが、ただいまの日本インフレーシヨンの実体は、これは終戰直後あるいはその後一年もしくは一年半ぐらいの様相とは変りまして——と申しますのは、当時はきわめて過大なる購買力があつた。待機購買力の量が非常に多かつたのに対して、物の欠乏がはなはだしかつたのでございますけれども、その購買力の過大性というものは、今日のごとく物價が騰貴いたしますと、この過大性は封鎖されておる。一面その点において、このインフレーシヨンの実体のつかみ方が変つてくるというふうなことを私は考えるのであります。  さようの点はむろん考えますけれども、さればといつて、やはりインフレーシヨン一つの大きな途は物と金とのアンバランスである。けれども、現段階においてはそれはそうであるけれども、むしろ過大な人口に対して物の窮乏がはなはだしい。こういう窮乏経済の中にあるのでありますから、何としても生産を増強しなければならぬ。この点により多くの力を入れなければならぬという点から、片山内閣以來、いわゆる重要産業についての傾斜生産方式をとつておる。これは他産業を多少犠牲にいたしますけれども、この点はやむを得ない。今の段階においては、なるべく早く物をつくらなければならぬのでありますから、根幹たる基礎産業については、傾斜生産をさえもあえてやつて増産に努力しておる。  と言いながら、一面においてそのことのために、それが物として出るまでの間の時間的のズレにおいてインフレーシヨンを激化してはならない。殊に今の段階においては、非常に物價が騰貴しておる中で大きな予算を組まなければならぬのでありまするから、インフレーシヨンの危險は、むしろ今日においては財政インフレに移轉しておる。從つて、先ほど上林山君の御演説の中にもございましたが、何としても財政支出を圧縮しなければならぬ。またそういう意味において、いわゆる健全財政をどこまでも堅持しなければならぬ。健全財政を堅持いたすと申しましても、そこからもし金融の面においてこれがはずれて、金融を圧迫するような結果になつて健全財政にならない。そういう点については十分の注意をいたしたいのであります。  先ほどお話が出ておりましたが、なるほど昨年來は税收入が悪かつた。それから專賣收入も悪かつた。これは率直に認めなければならぬのであります。從つて、一應の收支均衡の予算は立てたけれども、結果としては税收並びに專賣收入の減小によつて一時通貨の激発を見た。増加を見た。これはさいわいに、その後皆さんの非常な御熱意による納税運動への御協力を得まして、そのことのために非常に順調に進みまして、ただいまの結果はきわめて順調であり、三月の十日ころにおいて七五%の税收を得た。それがために通貨の膨脹を抑えたというような結果を見ておるのでございます。  しかし健全財政と申しましても、結局國民経済そのものが健全でなければならぬことは、ここで申し上げた通りであります。從つて國民経済國民所得を吸收する、そしてそれがまた産業資金として放出せられる、この関係がきわめて均衡な、適度の時間的な速度と分量的な均衡性をもつて回轉するということでなければ、消費・生産のバランスがとれません。かような点においては、全体の経済政策と併せ勘案いたしまして十分の努力をいたしたいと思います。  私は決して楽観はいたしません。今の現状において、まことに憂慮すべきものが多いけれども、戰後二ケ年半において、通貨の膨張は五十三倍、そして日本銀行調査のやみ物價の増加率は五十五倍でありまして、昨年中の物價と通貨の関係を見ましても、通貨は二・二倍、それから物價は二・一倍で、パラレルにいつておる。このことは決して樂観はいたしませんけれども、インフレの進行下において非常に憂慮すべき量的な現象ではない、かように考えておるのであります。  それから、今度の新しい内閣においての根本的なる財政政策は何であるかというような御質問でございましたが、これは二十三年度予算編成の際において、全体のことについてお諮りをいたし、また私の所見を申し上げたいと思うのであります。この場合、ついでに御報告を申し上げます。     〔國務大臣森戸辰男君登壇
  15. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 上林山君にお答えいたします。六・三制の残額の追加予算が通らなかつたことについての感想を聽かれたのであります。このことは、六・三制完遂を決議していただいた第一國会に、皆さんとともにきわめて遺憾に存じておるものであります。  それから、その感想にやや含めて、私がこれが通らなかつたらやめると言つたようなお話でございましたが、そういうことを言つた覚えはございません。責任の問題は、私は窮乏の日本で六・三制を実現することについてあらゆる責任をとつていこう、こういうようなことは繰返し申したのであります。今日もまた私は、追加予算に通らなかつたならば、暫定予算にこの点においてあらゆる努力をなす、かような責任は今日といえども固くとつておる次第でございます。(拍手)     〔國務大臣栗栖赳夫登壇
  16. 栗栖赳夫

    國務大臣栗栖赳夫君) 上林山君のお尋ねのうち、予算物價に関するものが私に関係があると思いますので、簡單に率直にお答えいたしたいと思うのであります。  ただいま大藏大臣が答弁いたしましたように、暫定予算は四月分に止める方針でありまして、五月以降は年度を通ずる本予算をつくりたい、こういう次第であります。  そこで物價改訂につきましては、本予算の編成と密接なる関係もありますので、この本予算の編成に間に合うように改訂をいたしたいと考える次第であります。しかして、改訂の範囲についてでありますが、もちろん全面的な物價改訂というようなことに必要もありませんので考えておりません。必要なるものについて補正的、部分的な改正をいたしたいと考えておる次第であります。(拍手)     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  17. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) ただいまの上林山君の御質問お答えいたします。私はまじめに率直にお答えをいたします。  第一に、労働対策に対して片山内閣とどのような違いがあるか、こういう御質問で参りました。御承知通り、労働省は片山内閣当時に新設されたものであつて、官吏一般國民に対する奉仕者であるというこの基本的観念においては、みじんも労働省なるがゆえに変つたというわけではありません。しかしながら、労働省はひとしく政府機関の中の一機関であるには相違ありませんけれども、世界どこの國におきましても、労働省の性格はおのずから他の行政官廳と異つて、労働省へのサービスを主眼とする機能をもつておるということを御了承願いたいと存じます。(拍手日本におきましては、事実きわめて新しいために、未だ労働者的性格が十分に現われておりませんが、この基本的観念に基いて將來とも労働省の運営はなされていかなければならぬ、私はかように考えております。(拍手)  さらに、具体的な問題として行政整理の問題をお取上げになつておりまするが、これは御承知通り三党政策協定におきまして、人員整理を前提とする行政整理のごときは、現在の社会情勢のもとにおいて非常な不安と疑惧の念を起さしめるがゆえに、そういう不安と危惧の念を起さしめるような方針ではなくして、簡素化と能率化を前提とする行政整理が行われなければならぬという建前に立つておるのであります。  さらに賃金問題につきまして、高能率賃金、すなわち能率給のことを御主唱になりました。私は、今日のような日本経済事情のもとにおきましては、もとより能率を高め得られるだけ高めなければならぬといようことについて異議はございません。しがしながら、能率給一本でいく場合には、ややもすれば労働過重の弊害を生ずることもまたこれ爭われない事実であります。(拍手從つて、この賃金形態につきましては、私は生活給と能率給とが合わせて一本にせられるような体系が樹立されることこそ最も望ましいものであると考えております。(拍手)  質問の第三は、労働法規に対する私の考え方をお問いくださいましたが、私はしばしばこの議場においても申し述べておりまする通り、私の労働法規をなぶるかなぶらぬかということに対する信念には変りはございません。  さらに、労働省において私が職員組合に対する專從者の問題を認めたことはどういうわけか、こういう御質問のようでありましたが、基本的に労働組合労働組合の運営にあたつて、すべて経済的にも、その他一切のものを自分の負担においてなすべきことは、原則としてまさにその通りであります。そしてまた私どもも、これを労働者の権威のために絶えず主張してまいつております。しかしながら、事実は御承知通り日本労働組合は世界に類例のない短期間に異常なる数的発達を遂げたのであります。從つて、なお内容的に見ますると、労働者民主教育についても、その他の点についても、不十分の点が多々ありますが、こういう現実事態に処するために、しかも労働組合の堅実なる発達こそが日本民主化の基本であるといふ考えに基きまして、特に労働者に対する特別な教育を必要とする、こういうような、まつたく現段階における特殊の現象として、專従的な人々を若干認めなければならない。しかし、もとよりこれは將來当然なくせらるべきものでありますが、私は現在の段階においては、やむを得ざるでものとしてその事実を認めなければならないと思います。こういう点におきまして、私は労働省においても、他省同様これを認めるにやぶさかでなかつたのであります。  さらにスライド制を認めたと言うが、私はスライド制の問題は認めてはおりません。これは何かの誤解であると存じます。もちろん現在の二千九百二十円の新水準で十分の生活ができぬということは、だれ一人といえども疑う余地のない事実であると存じます。將來新事態が発生した場合には、新事態に應じ得られるような態勢を整える、そしてまた実質賃金の向上をはかるという意味において、さまざまな官廳職員諸君に対する厚生福祉の施設においてその所期を達したい、こういうことを述べたのでありまするから、この点もし誤解がありましたならば御訂正を願いたいし、また私の説明が足らなかつたならば御了承を願いたいと存じます。  さらにまた閣内闘爭のことについてお触れになりましたが、御承知通り、連立内閣はそれぞれ、総理が述べられたる通り、性格の違つた政党の主張が協定されて成立したものであります。從つて連立内閣の限界は、協定の成立した政策の実行の限界に止まるものであることは言うまでもないことであります。從つて私は、社会党の一員として、社会党の本來の性格に基く、しかして協定された政策が実行されるかどうかということにおいて閣内鬪爭をやること、これもとより当然でなければならぬのであります。  さらにまた全逓の委員長に対して自動車が與えれておるとか、あるいは組合に対して莫大な補助が與えられておるとかいうことをお述べになりましたけれども、私はこれを聽くこと初めてであります。ただ私は、この機会に上林山君のみならず皆さんに御了承つておきたいことは、労働組合に対しては、ややもすれば長い間の習慣として一箇の偏見があり、そしてまたその偏見から、小さなことが非常に大きく傳わることも非常にありがちであります。こうした点は、順次そういう誤解を正し、正しい労働組合の発展に御協力を願わなければならぬとは存じまするが、全逓に対してそのような自動車が提供せられておるとか、莫大な補助金が與えられておるとかいうことは、今聽くのが初めであります。おそらく、これまた一箇の労働総合に対しての中傷としてのデマではないか、かく考えられまするが、事実はよく知りません。從つて、もし必要がありますれば、これは所管大臣からお話のあることと存じます。  これをもつて私の答弁といたしたいと存じます。(拍手
  18. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 上林山君、再質問がありますか。     〔上林山榮吉登壇
  19. 上林山榮吉

    ○上林山榮吉君 総理大臣初め各閣僚の答弁はあまりにも抽象的であり、私の具体的な質問に対しても、ほとんど三分の一程度の答弁しか與えられておらないということは、その責任のあり方を知らないばかりでなく、この場を切り拔けさえすればいいというような、ありきたりの答弁ぶりを私は遺憾とするものであります。  まず第一に総理大臣に質したいことは、私は日本人の血液の中に凶暴性があるということを一部には認めておるけれども、総理大臣が言うがごとく全面的にこれを認めていないということを明らかにしたのであつて総理大臣は自分の速記録を再びあらためる必要があると思うのであります。  さらに私が総理大臣に聽きたいことは、インフレ高進にもかかわらず國民生活は実質的に向上したと言うが、一体これを具体的に言えばどういうことになるのかとの御説明を求めたいのであります。  次に大藏大臣にお尋ねいたしたいことは、暫定予算はできるだけ早く出す、あるいは四月だけでやめるかもしれないが、五月にまた出さなければならないかもしれない、こういう無責任な答弁に至つては、予算編成に自信がないということを示すものであり、殊にきようは何日かといえば、三月二十五日である。三月二十五日になつて四月の暫定予算が編成できないということは、いわゆる予算上の、政治上の空白時代をつくつておるのであるが、これを押し切つて、間に合うだけの自身があるのかないのか。あるいは本年度の予算はいつ出すのか、こういう具体的な問題については私は確かめておるのである。かくのごとくのんべんだらりとした抽象的意見を、こういう大事な時期に聽くべき必要はないのであるから、これに対する意見をはつきり答弁せられたいのであります。  さらに加藤労働大臣に廳きたいことは、われわれは組合の福利増進、あるいは健全なる組合のあり方、あるいはこれに対するところの協力、こういうことは当然考えなければならないが、事從職員に対して労働大臣が給料を支拂うという確認を與えたということとは、一致せる芦田内閣方針であるかということである。同時に、憲法第八十九條あるいは労働組合法にこれは抵触すると思うが、どうか、これを廳いておるのであるが、これに対する具体的答弁は何ら與えておられない。これを明らかにせられたいのであります。(拍手)    (國務大臣芦田均登壇
  20. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 再度のお尋ねに対してお答えいたします。  私の施政演説の中に、日本人の全体に凶暴性があるなどということは、一言も申しておりません。それは速記録をよくお調べください。  次に、インフレの高進にかかわらず國民の実質的生活は向上したということを申しました。東京の街を歩いてみてください。あの万遍なき燒野原に相当に家が建つております。戰争中にはほとんど見ることのできなかつた物資が、あの店に並んでおります。これを称して実質生活の向上というのであります。     〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  21. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 暫定予算についての重ねての御質問でありますからお答え申し上げます。これは現下のわれわれの置かれておる状態が占領下にあるということを第一の前提としてお考え願いたいのであります。暫定予算というような変態的な予算の編成方式が一体いついかなる内閣の時代から起つたかということをお考え願いたい。われわれは四月予算をどうしても出そうとしております。全力を盡して出そうとしております。それだけお答えしておきます。     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  22. 加藤勘十

    國務大臣加藤勘十君) 組合専從者の問題につきまして、憲法八十九條に違反するのではないか、労働組合法に反するのではないか、こういう御質問でありましたが、私の解釈は、勞働組合法にももとより抵触いたしませんし、憲法八十九條にも決して抵触するものではないという解釈をとつております。  さらに、私が労働省の職員組合にこれを認めたことは芦田内閣方針であるか、こういう御質問でありましたが、別に閣議においてこれを決定したのではなく、從來吉田内閣当時からきめられておりましたその方針に基いて労働省にもこれを承認したというのでありますから、この点、御了承を願いたいと存じます。(拍手
  23. 上林山榮吉

    ○上林山榮吉君 各大臣の答弁は……     〔発言する者あり〕
  24. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 静粛に。
  25. 上林山榮吉

    ○上林山榮吉君(續) 各大臣の答弁は良心的でないと思う。責任をもつていないと思う。だから、適当の機会に徹底的に私は質問をいたしたいと思います。本日はこれをもつて打切りたいと思います。
  26. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 昨日の竹山祐太朗君の質問に対し答弁のため、船田國務大臣より発言を求められております。國務大臣船田享二君。     〔國務大臣船田享二君登壇
  27. 船田享二

    國務大臣(船田享二君) 昨日の竹山君の語質疑の中で、賠償廳に関係のある事項についてお答え申し上げたいと存じます。  賠償の対象として指定された工場施設の総数は、一月二十四日現在で八百四十六に減少しておりますが、これらの工場施設、機械設備の管理保全は大体良好に行われております。また昨年十月二日に総司令部から発せられました指令によりまして中間賠償の第一次取立ての対象とされました十七軍工廠の撤去機械は結局一万二千七百四台でありまして、これらの機械の解体、荷造り等はほとんど全部完了いたしておりまするし、三月二十日現在で、そのうち三千二百五十一台、船にいたしまして十二隻分でありますが、これらはすでに賠償要求國に引渡し済みであります。その引渡しにつきましても、わが方としましては果すべき責任を十分に果しつつあるのでありまして、引渡しの完了が初めの予定より遅れるかもしれませんが、それは引受國の方の船繰りの都合その他の理由によるものであります。そうして、かようにわが方が十分に良心的に責任を果しつつあるということが関係方面からもよく認められておりますことは、私自身も直接に確かめ得たところであります。これから先もまた、われわれは負担する義務をどこまでも誠実に履行いたしまして、國際信義を尊ぶ立場を明らかにすることに努めていきたい、こう考えております。  しかしそれとともに、どの程度のものが賠償として取立てられるかということは、わが國将來の工業生産從つてまたわが國の経済的復興のために決定的な意義を有するものでありますので、連合國側の理解を得ることに努めて、なるべく狭い範囲で、しかも合理的な範囲に撤去が行われることとなるように懇請に努めなければならない、こう考えております。さいわいに、最近この問題に対するアメリカ態度が著しく緩和される方向をとりつつあると思われますことは御承知通りでありまして、いわゆるストライク報告は、殊にわれわれに多くの希望を懐かせるものと考えられるのであります。その内容につきましては、すでに断片的には新聞紙上に傳えられておりますが、賠償廳におきましても、目下その全貌を知るのに努めておりまして、その詳しい数字その他につきましては、別の機会に申し上げることが適当かと存じます。もしもこのストライク報告の内容、殊にストライク委員團の独自の立場からする意見が実現されることとなりますならば、賠償の問題に関しましては、われわれはきわめて明るは希望をもち得ると思われるのであります。けれども、この報告書の要約の公表に当りましては、アメリカに陸軍次官は、陸軍省も國務省もこの報告に関して何らの措置も講じていないということを言明いたしているのでありまして、その内容がアメリカ政府によつて採択されるか否かの問題はまだ決定されておらないのであります。またたといこの報告書の内容がアメリカ政府によつて採用されましても、極東委員会加盟國の全部がそれに同調するか否かはまた別の問題となります。從つてわれわれは、このストライク報告が著しく寛大なものであるからといつて、無条件に喜ぶことはまだ許されないのでありまして、賠償問題の最終的決定は、昨日総理大臣からもお答え申し上げましたように、講和会議をまたなければならないのであります。それだけにわれわれは一層努力いたしまして、一方においては負担する義務を十分に良心的に履行いたしますとともに、他方におきましてはわが國の現実に対する各國の理解を求めまして、われわれの希望期待が達せられるようにしなければならない。こう考えておる次第であります。  いずれにいたしましても、賠償指定の施設が完全に撤去されるに至りまするまでには、なおかなりの月日を要する見込みでありまして、その間かりに利用を許された多数の施設があることは御承知通りでありますが、その利用によりまして管理費を節約し得るとともに積極的に生産増強に役立ち得ることはお言葉通りでありますが、利用するにつきまして、制限、殊にそれによる生産品目の制限は、現在では必ずしも実情に副わぬものとなつてきておりまするので、さしあたりの問題といたしましては、かような利用を許される施設の範囲とか種類、殊に生産品目に関する制限を実際に適するように改めてもらうということが重要な意義を有すると考えるのであります。これらの問題につきまして、これまでも政府といたしましては、あらゆる勢力をいたしてまいつたりでありまして、賠償廳は発足後なお日が浅いために、まだ内容も整備されておりませんが、しかし、新たな立場から最善を盡して問題の解決を得たいと考えておる次第であります。  なお最後に、私の所管項ではありませんが、竹山君のお言葉通り私は引揚者の一人でありまして、引揚げの促進及び引揚者の生活安定その他の問題につきましては、お言葉をまつまでもなく、これまでもこの問題につきましてできるだけのことをやつてまいつたつもりでありますが、これからもまた関係各大臣とも連絡協力いたしまして、何とかして少しでもよい方に問題を解決できるよう微力の限りを盡したいと思つておりますことを申し上げておきます。(拍手)     —————————————
  28. 安平鹿一

    ○安平鹿一君 國務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十六日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  29. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 安平君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十三分散会