○竹山祐太郎君 私は、
國民協同党を代表いたしまして、
総理大臣及び経済安定本部長官の
演説に対し、総理及び関係閣僚に若干の
質疑をなさんとするものであります。
まず第一に、現下の窮迫せる國際政局において、わが國の地位がいかなる状態に置かれておるか、これに対する
総理大臣の所信を率直端的に承りたいと思うのであります。もとより、わが國の現状がきわめて特殊的なることから、総理の
演説が抽象化されたことはよく了解するのでありますが、目下最も
國民の知らんと欲しておりますることは、この國際情勢と、これに対処する
態度であると信じます。この現下の情勢は、講和条約の締結を飛び越えて、一躍急迫した國際政局を表わしておると信じます。
從つて、このむずかしい状態を率直にわが
國民の所信として
世界に表明をし、これが希望の達成に連合國の援助を懇請することが、必要かつ緊急の処置と信ずるものであります。この点よりしまして、わが國の現状は、終戰当時よりも比較にならない重大段階にあり、かつ急迫いたしておると存じます。米國要路者の訪日往復も繁く行われておることは、
國民ひとしく重大関心を持しておるところであります。かくのごときどきにこそ、眞に拳國一致、わが國再建の基礎を決定せられんとするこの重大事態に対処し、悔を後世に残さざらん覚悟こそ、われわれの務めと信ずるものであります。若干の
主張に相違はあろうとも、この國家の重大時局に協力することこそ
日本現下の政党のなすべき立場なりと信じて、あえてこの難局
政権に協力いたした次第であります。(
拍手)わが党こそ、立党
以來中道の
政治を
主張し、この制約きわめて多きわが國情において、その再建をはかるためには、
日本古來より変らざる傳統をもつ協同
主義によるべきことを
確信をいたしておる次第であります。(
拍手)
第二は、
日本再建のためにも、
世界平和のためにも、まず急速に
東洋における
政治経済の交渉に強力なる施策が打たれなければならないと信ずるものであります。もとより
日本の現状、みずからそのなす立場にないことはもちろんでありますが、欧州においてあの強力なるブロツクができつつある現状も、よく理解せられるのであります。
日本の貿易・
経済再建の立場よりいたしましても、もとより絶大なる米國の援助によるのはもちろんでありますが、その効果をあぐるためにも、
東洋諸國のまず緊密なる交流が行われなければ、期待いせないことは明白であります。急速かつ的確に
日本経場済再建を期するために、この
東洋に対する
対策を推進せられるよう連合國の厚意を懇請すべきであると信じますが、
総理大臣の所信を承りたいのであります。
第三は賠償の問題であります。これは、ポツダム宣言に基く当然果すべきわが國の大なる義務であることは、十分理解をいたしております。ただ、終戰
以來今日までわが國のと
つた諸般の処置が、いかに忠実に平和的処理に邁進をしてきたかは、おそらく連合國のひとしく認めていただけることと信じます。賠償施設についても、おそらくわれわれの知らざる以上に忠実に行われておることと信じます。しかしながら、今日、までの
日本経済の推移、將來への保障から
考えて、当初
考えられたことがいかに深刻であり、
日本再建を絶望的ならしめたかは、記憶に新たなるところでありまする。しかるに連合國においても、この問の事情を十分理解せられ、さきにポーレー案におののいたわが
國民に、最近ストライク案の傳えられるに及びまして、非常な光明を認めたのであります。もとより、その施設、資材の生産化が重大なばかりでなく、現在賠償管理費だけでも四十億を本年度
予算に許上されておるのであります。この負担が大部分なくなるだけでも、今苦しみつつあるわが國財政には大きな助けとなるのであります。この速やかなる決定を待望してやまないのであります。もちろん、講和條約正式決定の前に、これが解決は困難ではあろしと存じますが、一時的解除のごとき処置をとられるよう、また傳えられる、生産物賠償等を絶対にかけられないよう、
國民の熱望の集まりをも
つて連合國に懇請せられたいのであります。ストライク案の状況、その他これに関する賠償廳長官の所信を承りたいのであります。
第四は、連合國よりわが國に対する援助計画の問題であります。
総理大臣はこの点に重大なる希望をもたれておりますが、まずそつ
内容を
國民にもつと明確に知らしめたいことであります。一体終戰
以來今日まで、食糧を初め各般の重要物資等、
日本経済再建のため援助せられたものが、大体どのくらいに達しておるか、それが米國及びそれ以外の國によ
つていかに入れられたか、これを
承知いたしたいのであります。まだ
國民の一部には、食糧が貿易の力で輸入をせられておると
考えておる者がなきにしもあらずと
考えます。次いで、本年度いかなる援助が行われんとしつつあるか。これに対する総理または安本長官の具体的な御
答弁を承りたいのであります。
第五に教育の問題であります。
日本の民主化のために、次代の
國民たる青少年の教育の重大性は申すまでもありません。前
内閣以來、六・三制を初め教育制度の改革に伴う諸般の施策がはなはだ不満足なことは、率直に遺憾の意を表るものであります。
國民が重税に苦しみつつも、わが子弟の教育をいかに期待しつつあるか。今や地方財政は最も重圧をここに発せられており、地方自治はこれがために壊滅の手前に押しつけられております。財政が困難とは言え、常に給與
予算のみが先議せられ、いつまでもこれが解決を延引せられつつあることは、
國民ひとしく不満の意をも
つております。これに対し
総理大臣は簡單に触れられておりますが、これについての所信を承りたいのであります。
財政の結果きわめて遺憾な教育費の現状に鑑み、國家・地方財政それぞれに一定の教育費を天引計上することをわが党は
主張してきております。今、ごく最近の確実なる調査に基きますと、チエコスロヴアキアは九%、デンマークは八・九%、フランスは四・四%、イギリスは五・八%、オランダが四・二%、ベルギーが四・九%といいう教育費を計上いたしておるのに比べて、
日本は一・二%であります。
次に、新制高等学校の定時制による勤労青年教育の
要求もきわめて熱烈なるものあることは、御
承知の
通りであります。もしこの施設が不徹底に終らんか、今月末をも
つて青年学校制度の廃止を見るのでありますが、この勤労青年の教育は、きわめて低下し、勤労の生産性高揚に非常なる大影響があることを
考えなければならぬのであります。なお最後に、最近新聞紙上に、米國が朝鮮、琉球を含む教育援助計画二億七千万ドルを計上するということが報ぜられておりますが、これは
日本の教育には重大関心事であります。その
内容はいかなる状態にあるか。以上、文部大臣の所信を承りたいのであります。
第六は食糧題であります。わが國社会経済諸問題の根底が食糧問題にあることは、申すまでもありません。今や労働攻勢に政府は非常なる勢力を消耗は明白であります。政府は絶大なる連合軍の好意による放出と、農家の決死的努力による一〇〇%供出とにより、食糧管理の安全を誇示しておりますが、これは決して眞の解決ではありません。本年度の供出が近年まれに見る好調を続けたのは、一に連合軍の好意ある援助の賜でもありますが、一面農家が
日本の現段階を理解して、非常な困難を押し切
つて目標突破に遭遇した結果であります。この間に、その方法の適切ならざるがために、保有食糧の大量供出となり、ただちに配給農家に轉落しつつある。いわゆる裸供出が各地少からざる現状で、米をつく
つて米を食えない農家の現状、その苦痛や、言語にあまるものがあります。これが救済は当然政府も考慮すべきであり、この保有農家の轉落に対して、その配給價格を生産者價格にするがごとき処置は当然であると
考えます。
これに関連して米價の問題につきましては、その後の物價の状況に應じて、当然改革が行われなければならないと
考えます。同時にこの米價の改訂は、当然
國会において決定せられるべきものであると
考えますが、これに関する所信を承りたいのであります。
今後の國際情勢は、なお当分國内食糧の増産必至を
考えられますが今日の農家の増産意欲を根底より覆えすがごとき、限度を越した供出は、最も憂慮にたえないところであります。今回の供出成績に鑑みて、連合國の十分なる理解を得て、本年度割当についても、天候その他の事情はありましようが、相当重大なる影響を及ぼすことを
予想せられます。率直の願わくば、
日本再建の現状よりして、放出食糧のこれ以上二割程度の増加を懇請し、一割は農家の救済に、一割は労働者、消費者、
國民の生活安定の基礎確立に向けられることを特に懇望するお
考えがあるかどうか。以上の諸点について農林大臣の所信を承りたいのであります。
第七は食糧の國内増産施策であります。食糧の懇請をなすわが國が、國内増産に全力を注ぐべきことは当然であります。そこで、前
内閣以來取上げた食糧一割増産運動であります。まことに結構なことで、連合軍の共鳴と援助を受けつつあると述べられましたが、この計画の
内容はいかなるものであるか承りたいのであります。
農林大臣は就任のときのお
言葉に、農林省はあまり生産のことばかりや
つてお
つて、消費のことももつと
考えなければならぬということを述べられたように記憶をしておりますが、農民から見ると、どこに生産の
対策があるかわかりません。むしろ農林省は食糧配給省の観を呈し、役人はみな割当事務に奔走し、農民は生産物を取上げる省だと思
つております。(
拍手)このごろたくさん増設をされる地方の役人は、これすべて取立役人ばかりであります。農村からは税金をとり、食糧を出させ、何を與えつつあるか。報奬物資等は、むしろ最近は農民を愚弄する感があります。(
拍手)むしろこれは全廃して、肥料、衣料、地下たび等、当然必需生産資材の配給を合理化すべきであります。それとともに、積極的増産施策に思い切
つた食糧生産省の性格をとるべきであると思いますが、農相の所見はいかが。
一例をあげるならば、
総理大臣の
演説に、ただ三百万町歩の開発の
研究に着手すると申されました。私はあまりにも、そののんきさに驚き入
つたのであります。
総理大臣に伺う氣持はありませんが、これはこういうことを言わせた農林大臣に伺いたいのであります。(
拍手)
食糧の増産は、申すまでもなく肥料と水であります。肥料の供給の確保は政府当然の
責任でありますから、くどくは申し上げません。次に農民が用水、排水、この水にいかに苦しんでおるかということは、都会の人や大臣は御
承知にならぬかもしれません。この
土地改良の問題、この用排水の問題を、一体いかにお
考えにな
つておられるか。三党
政策協定のことは、決して
農地改革だけの問題ではありません。あの中に盛られておる
土地改良の重大さが何ら今回の政府の所信の中に現われ、おらないことは、いかなる結果でありますか。これに関連をして、当然災害復旧が先行をさるべきことは申すまでもありません。これに対する政府の努力の不足をまことに遺憾とするものであります。
元來公共事業費の中に、直接生産事業と河川、道路などのごときものとを同一視することは、いささか違
つておると思います。これは新たに別なる構想を立つべきものであると
考えますが、
農地改革によ
つて生産性を高むべき農村
対策としては、農家本位の
土地改良事業を完全に裏づけしなければ
意味をなしません。現状は、水利組合、耕地整理組合等、地主時代の組合の民主的改変が遅れております。このためにま
つたく停滯の現状で、眞の農村の
要求には合致しておりません。狭小なる耕地は、当然強力なる
土地改良によ
つて、生産性の向上を第一の重大施策とするのでなければならないと思います。水田農業を主体とする
日本農業の一大特色として、用排水、
土地改良事業の実行は、一割増産の当然基礎條件でなければならないと思いますが、農相の所見を承りたいのであります。その他の問題については、別の機会に讓ります。
第八は、金融の問題、特に農林金融の問題であります。農林金融は、戰時中はただ強制貯蓄機関と化し、絡戰後はインフレの荒波に轉々もまれて、政府からは放任、否、圧迫さえも加えられて、銀行金融の育成強化の犠牲にな
つてきたのであります。この間、
農地金融は、將來に備えて無担保相互金融の協同組合の強化をはからなければならない重大時期であります。これを無為に放置し、否、逆に農業協同組合改組に際して單純なる階級制やイデオロギー等のために相互金融の強化を忘れたごとき処置が続けられてきたことはまことに遺憾とするところで、また將來のために憂慮にたえないところであります。
わが党が総合的協同組合の育成強化をはかるべしとする年來の持論も、昨今ようよう農村に認められるに至りました。それはいよいよ迫り來
つた農村経済窮乏の前駆として、今年の税金の重荷と高價な報獎物資の支拂いのために、協同組合の資金は一瞬にして枯渇をし、春の肥料資金に行き詰まり、この現象は非常な深刻なものが現われてまい
つたのであります。これに対する政府の金融
対策をいかにせられるか。
元來、農村資金には預金資金その他が出ておりましたが、現在は一文も出ません。復興金融金庫は、農村
資本を合わせて商業
資本家の育成に使われて、一文も農業にはまわ
つておりません。これは根本的に農林金融に新たなる施策を急務といたしております。さきに述べた
土地改良事業といい、植林、漁港等長期農林産業金融機関として、農林復興金庫の構想は、三党
政策協定にも加えられたわが党の強い
主張であります。迫り來る
農地改革後の農業経済に処しても、農林金融に特段の考慮を拂わざれば、食糧増産の基礎たる農林は崩壊するに至るものと
考えられます。(
拍手)藏相及び農相のこれに対する所見を承りたいのであります。
第九は租税の問題であります。税制全般に関しては幾多伺う機会がありますから、これに讓ります。さしあたり当面いたしておる本年度所得税を中心とする徴税の問題について、大藏大臣の所信を伺いたいのであります。
日本現下の実態が、十分なる納税の必要はよく理解し、今日まで強力いたして來たつもりでありますが、大体納税の見透しは、予定收入に対して、いかなる状態におりますか。そのうち営業者、農林漁業者、勤労所得税おのおのいかなる状態に達しておりますか。
勤労所得税の重いことは、よくわか
つております。中小工業者も、今回の所得税にはま
つたく破産状態に近くな
つて、またまじめな者がばかを見る現象が、
思想的におもしろからざる現象を呈しております。殊に農村においては、今まで対象とはならなか
つた小農すべてに突然一時的な重税が加わ
つたために、不用意とはいえ、その方法に農家の実態に適合しない処置が幾多見られたことは、まことに遺憾なことであります。その結果、食糧の生産を初めその生産増加の急務が、この税金だけをとればいいという処置のために、いろいろな社会経済問題を派生いたしております。これについては、農林・大藏当局は十分なる檢討、綿密なる檢討をいたさなければならないと
考えます。
元來農村の半分を占める自給経済を無視した所得税のかけ方のために、非常なる重課とな
つております。町の菜園には所得税はかかりませんが、農村では、だいこん一本、ねぎ一本に所得税がかかるのであります。鶏一羽一千円と見込まれたりなどいたしておりますが、かくのごとき自給経済を無視した税の取立は、農家経済を破壊するほかありません。また、今では農民の非常な羨望の的にな
つておりました農家の給料取が、総合所得税のためにま
つたく立ち行かなくなりまして、農村の先生がみなばたばた、やめております。これは労働問題から見ればいろいろな
意見はありましようが、地方の農村の事態は、
土地なき人々が給料生活をするという社会現象を否定するわけにはいきません。かくのごとく、農村の実態と併せて、税制の問題については急速に
考えていきませんければ、たいへんな事態になるということをよくひ
とつ——東京にお
つて理窟だけを
考えないで、農村の実態に合うような税の取立について十分なる考慮をいたされたいのであります。(
拍手)
最後に、協同組合の問題について所見を承りたいのであります。今後の経済が中小工業を主体とするようなわが國の産業状態で、商工協同組合法の改正により、これが助長発達は当然
考えられなければなりません。また消費者の消費協同組合の発達も、ぜひはからねければなりません。これのため新たなる法の制定、これが助長をやらねければなりません。これとともに、目下設立中の農業協同組合はもちろん、急速に改正を要する漁業または林業の協同組合についても、当然その実施をはかるべきであります。かくのごとくな
つてい
つた場合において、これらの各種のいろいろの間において、自由にして民主的なる相互扶助が行われることは当然のことであります。これが戰時中のごとく官僚によるセクシヨナリズムによ
つて指導支配せられることは、絶対に嚴戒を要します。(
拍手)ここにわが党が年來
主張しておる共通的な、自由な協同組合法の必要が痛感せられてくるのであります。政府はこれに対するいかなる用意、所信をも
つておられるか、関係大臣の所見を承りたいのであります。
以上、私が
質問せんとする事項でありますが、最後に今
國民の最も心痛をしておる海外引揚者の問題については、船田
國務大臣は、それ自身引揚者であられます。どうかその体験をもとにして、現
内閣が今までより一層熱意をも
つてこれら海外引揚同胞の処置に遇進せられんことを切望して、私の
質問を終る次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣芦田均君
登壇〕