○
淺沼稻次郎君 私は、
日本社会党を代表し、
総理大臣の
施政方針の演説に関連をいたしまして、
総理大臣並びに四、五の閣僚に対し、わが党の態度を表明しつつ質問いたしたいと存じます。
わが
社会党は、
片山内閣総辞職に伴いまして、
次期総理大臣の
指名決議にあたり、
反動革命を阻止し、日本の
民主化を促進徹底する意味合よりいたしまして、
芦田民主党総裁を指名することに賛成をいたしました。(拍手)ところが、
民主党より
政策協定についての申出があつたのであります。これに應じ、
國民協同党とともに三
党政策協定を
行つたのでありますが、その
政策協定においては、わが党の
危機突破緊急対策が相当織りこまれることになりました。
政策協定が成立をし、その政策が相当織りこまれることになつた以上は、閣僚を送つて、そうしてこれが実現のために努力することが、天下の公党として
社会党のとるべき態度なりと考えまして(拍手)、現在八名の閣僚を送つて、政府と協力しつつあるのであります。
世上ややもすれば、
政策協定は政権をとらんがための協定であるとか、あるいは
芦田内閣の手によつてその政策の実現はできないとか、あるいは二十三年度の
予算編成はこの協定と別に編成されるであろうという
揣摩臆測が行われております。これ、われわれのはなはだ遺憾とするところであります。しかしながら、
芦田内閣のよつてもつて立つ
政策的基盤は三
党政策協定であります。
芦田内閣は
挙國連立政権を目標に出発したのでありまするが、自由党の拒否によつて、三
党政策協定のもとに、
極右極左を排して、いわゆる
中道的政権として三
党連立政権が成立したのであります。(拍手)
從つてその任務は、三
党政策協定を予算化し、これを法律化し、もつて日本の
民主化と
日本経済再建のために生れた内閣であるといつて過言ではありません。(拍手)
そこで私は、まず三
党政策協定の実践化に対する、すなわちいかにしてこれを予算化し、これを法律化するかということについて、
芦田総理大臣の信念を承りたいと存ずるのであります。次に
政策協定は政治、経済、社会の三部門によりなつております。
從つて私は、この順を逐うて質問をしてまいりたいと存じます。
第一は政治の部門であります。第一点は、
日本民主化の徹底に関する事項であります。申すまでもなく、現在わが國は
民主革命の進行の途上にあります。わが國が
ポツダム宣言を受諾して以來、わが國民に與えられたる任務は、封建的な、專制的な、軍國的な
國家体制を、眞の民主的な、文化的な、平和的な
國家体制たらしめなければならないという新たなる任務が負わされたのであります。またわが國民は、あげてこの
任務遂行のために闘つてまいりました。わが國の民主的なあり方は、新憲法の制定によつてその方向が定められたのであります。
総理大臣は、新憲法は
民族更正の
一大宣言であつて、われわれは一片の紙上の宣言に止まることなく、これを実践する努力に全力をもつて努めなければならないということを、
施政方針の演説において言われました。まことにその通りであります。憲法こそがわが
國民主化の源泉であり、その実践こそは、わが國民が
平和愛好の國民であることを世界に示し、わが國が
世界的信用を回復し、
講和会議に対処する我が國民の姿でなければなりません。
從つてこれが
普及徹底をするということは、政府並びに國民に與えられたる重大なる任務であります。
新憲法は昨年の五月三日その効力を発し、新憲法のもと、幾多の法令は民主的に改正され、積極的に改善され、機構の改革も行われて、政治、経済、文化、あらゆる部面にその
民主化は進められ
來つたのであります。しかし全國民は、新憲法を自分のものとして、自己の生活に活かしておるでありましようか。主権在國民の大原則に
從つて、みずから
日本國家の
統治権者としての矜恃をもつて國民は行動しておるでありましようか。私は必ずしもと答えざるを得ない現状をはなはだ遺憾に存ずるのであります。わが國の
民主主義は、欧米のそれのごとく、民衆の不断の闘爭によつて闘い得たものではございません。敗戰という冷嚴なる現実の上にもたらされた
民主主義であります。
從つて、身についていないといつたような状態のあることは、これまたやむを得ないのでありまするが、これを徹底せしめ、
自分自身のものとしなければなりません。
芦田総理大臣は、新
憲法制定にあたつては、
衆議院において
憲法審議の
特別委員長として、さらに成立後は、
憲法普及会の委員長として健闘されたのでありまするが、
憲法普及会というものは、必ずしも成績があがつておりません。現在解消されまして、今國会を中心として、
民間有識者を加えて
民主政治教育連盟の成立を見ております。これもあまり活動的ではありません。もつと積極的であつてほしいと思うのであります。
日本民主化のためには、新憲法の
普及徹底が何よりも必要と存ずる次第でありまするが、政府はこの憲法の
精神普及のために、いかなる考慮を拂つておられるか、この際承つておきたいと思うのであります。
次に、日本における
民主化の最も遅れておるものは、中央・地方を貫く
行政機構であり、
官僚機構であると存じます。
官僚機構は、
國家公務員法の制定によりまして、一歩前進したと言えまするが、
行政機構は旧態依然たる状態であります。その非能率、非
民主化は
國民非難の的となつております。
行政機構は、
終戰後陸海軍の解体、新憲法の制定に伴い、幣原・吉田・
片山内閣を経て部分的に改正が行われてきたのでありまするが、
抜本的改革は行われず、
内閣法、
行政官廳法の制定を見ておりまするが、これは五月二日までのものであります。新憲法は、
議院内閣制を確立し、
政党政治を予想しております。
政党政治のもとにおいては、行政は專門化し、技術化し、最高度の能率が発揮されなければなりません。
新憲法実施以來、中央行政官廳組織は、厚生省から労働省が分離独立されました。内務省、司法省は解体し、内務省は建設院、財務委員会、公安委員会にわかれ、司法省は
内閣法制局、調査局を吸収して、法務廳として大世帶を張るに至りました。警察は國家警察と自治警察にわかれたのでありますが、警察官の数はかえつて増大しております。労働省が新設されたといつても、厚生省が縮小されたわけではございません。経済安定本部が新設されても、大藏省、商工省、農林省は以前と変りはなく、かえつて拡大されております。勲章がなくなり、新しい栄典もきまらないで仕事がないのに、賞勲局はそのままであります。恩給局もそのままであります。また外務省の官吏は他日を期するがごとく、現在は待機の状態におかれております。戰爭中大きくなつた
行政機構は、その後少しも小さくはなつておりません。役人は少しも減つておらないのであります。
また官廳間のセクシヨナリズムは、今もその跡を絶つておりません。たとえば建設行政にこれを見まするならば、道路・橋梁の建設は建設院に、港湾建設は運輸省に、電力開発は商工省に、農地開拓は農林省にというがごとく各省に分割されて、昨年建設省設置の問題にもこれが一つの原因となりまして、省の新設に失敗をしておるのであります。また水産廳の設置にあたつても、漁船問題に関することを中心として、運輸省と農林省の間の対立がこれを不可能ならしめております。
從來の警察國家、彈圧國家から、新憲法のもと奉仕國家として新生した以上、その機構は國民に対するサービスの機関として、官吏は全体に対する奉仕者として再編成をされなければなりません。それがためには、次の基準によらなければならぬと思うのであります。すなわち
行政機構の系統化——同一系統にある行政事務は一つの機関に集中することであります。行政の分業化、すなわち企画、実施、現業の各事務をそれぞれ整理簡素化して、各事務をしてその機能を発揮させることであります。第三には行政事務の有機的連絡を保持し、その一体化をはかることでなければなりません。第四には、行政を能率化し、技術化し、專門化して、高度の能率を発揮せしめることであります。
この原則に從いまして、具体的に中央行政官廳の点について考えてみますならば、建設行政を建設院に統合いたしまして、これを省に昇格せしめたいと思うのであります。また運輸、逓信両省はこれを統合いたしまして、行政の部面は交通省、現業面はこれを独立採算制に基く現業官廳とすべきものと考えるのであります。また省内の部局の整備再編成を行い、能率的、民主的な体制とすることが必要であります。中央官廳の地方出先官廳はこれを大幅に整理して、できる限りその権限を地方に委譲し、地方自治体の権限を拡充すべきであると存ずる次第であります。特に経済安定本部の組織について考えてみますならば、各省と並立の形におかれております。中央行政官廳の上に屋上屋の組織たることは、いなむことのできない事実であります。この組織を縮小いたしまして、これを企画廳たらしめ、実施面は各省においてこれを行わしめ、その調査をはかるべきであると思います。この
行政機構改革に対する政府の所見を承りたいと思います。
次に、この問題に関連いたしまして伺つておきたいと思いますことは、行政整理に関する事項でありますが、前
片山内閣におきましては、行政整理の天引二割五分というものをきめておるのであります。しかしながら行政整理は、行政官廳の能率化並びに
民主化が前提に行われて、その上に、やむを得ざる場合において行政整理が行われるのであります。
從つて、前内閣の決定でありますけれども、頭からの二割五分の天引に対しては相当の考慮を拂つて、新たな観点より行政整理を行わんとする考えはないかという点について、お伺いしておきたいと思うのであります。
次に、文教の刷新並びに興隆についてお伺いいたします。新憲法のもと、わが國は戰爭を放棄し、武器を捨てて、文化國家、平和國家として再建することになりました。新しい日本は、文化國家を目標として進んでおるのであります。これに一番大切なことは、次の時代の國民をほんとうに民主的な、平和的な國民として育て上げることであります。この任務が教育であります。文教の刷新興隆こそ、文化國家建設の第一歩であると存じます。さればこそ、教育基本法、学校教育法が制定され、六・三制、新制中学等の実施になつているのであります。これには相当の予算が必要であります。特に市町村財政には一定の限度があつて、國家はこれに対し補給の途を講じてまいらなければなりません。
片山内閣は、その
追加予算に相当額を計上すべきことを約束いたしました。今回
芦田内閣の手によつて提出されました
追加予算案には、これが計上になつておりません。この点につきましては、三
党政策協定の中にも文教費の優位性が認められているにかかわらず、この措置に出でなかつたことは、われわれのはなはだ遺憾とするところでありますが、しかし、二十三年度の予算には必ず相当計上されるのであろうということを期待するものであります。
文化國家は、教育文化の優越せる國家であります。軍國國家に代えて——否、軍國主義國家においては、軍事費がその最高なものであつたと思うのでありますが、文化國家におきましては、文化・教育がその最高なものであつて、財政経理の面から申し上げますならば、その優位性が認められなければならぬと思うのであります。(拍手)この点について、当局のお考えを承りたいと存じます。教育制度の確立を期し、わが國の教育水準を世界的水準に引上げ、文化の面より國際的信用を回復する糧とし、加えて文化國家建設の礎石たらしめなければならぬと思うのであります。特に勤労者のための教育、大学教育の刷新改革、これらのことが考慮されなければならないと思うのでありまするが、文部大臣の所見を承りたいと存ずる次第であります。(拍手)
次に、経済の部門に関連をいたしまして、政府のインフレ対策その他生産増強の対策についてお伺いをしたいと思うのであります。
三
党政策協定は、経済の部門におきましては、その基本方針といたしまして、経済復興の長期計画と照應し、一應今後二箇年間を目標として総合的な計画を樹立し、生産の急速な増強と流通秩序の確立をはかり、実質的な健全財政主義を堅持する方針をきめております。インフレ対策といたしましては、一つは財政インフレ防止のため経費の軽減に努め、徴税機構を強化し、インフレ及びやみ利得を徹底的に徴収する脱税防止法の制定、軍事公債利拂の停止的処理、なお鉄道・通信特別会計については、経理面の合理化を断行することによつて経費の節減をはかり、復興の基本計画を樹立し、なお不可避の赤字は一般会計より繰入れるか、あるいは運賃並びに通信料金の引上げによるか、あるいはその他の方法等によつて、基本計画の檢討を経て決定するとしております。第二には、租税負担の公正化並びに生産増強のための税制の改革を断行し、勤労所得税並びに勤労農民の所得税を大幅に軽減し、中央・地方を通ずる税源を整理調整し、法人税の軽減を行い、國富調査その他新税を檢討し、その実現をはかる。第三には、金融インフレ防止及び通貨信用維持の見地から、資金調達及び融資の健全化と効率化をはかるため、金融制度調査会の答申に基き、金融機関の民主的管理を行い、特に日本銀行法の根本的改正のため調査会を設置し、復興金融金庫の民主的な運営委員会と監察機関を設置して根本的刷新をはかると規定しております。
これらの問題につきましては、処理委員会を設置し、あるいは調査委員会を設置しなければ具体策の出てこない点もあるのでありまするが、これこそが來年度予算を編成する基本的方針でなければならぬと思うのであります。政府は今申し上げましたこの対策に
從つて、昭和二十三年度の予算をこの方針によつて健全財政として組んで、この議会に臨んでくることを私どもは期待するものであります。(拍手)
これに関連をいたしまして、一、二お伺いしたいと思いますことは、現内閣の関係閣僚の中には、非公式な言ではありますが、インフレーシヨン対策としては、現下のインフレーシヨンが欠乏経済から起るものであるから、物を生産すればインフレーシヨンを克服できるということをしばしば述べております。もちろんインフレーシヨンなる現象は、物と通貨がアンバランスになつたとき出てまいりまする現象でありますから、通貨が膨張いたしましても、この膨張に從ひましてどんどん物の生産ができてまいりまするならば問題はないのであります。しかしながら、現在日本を襲つておりまするインフレーシヨンは、激化して第三期の初頭に突入していると言つても過言でありません。
現下の通貨の膨張及び下落の率は、生産の復興上昇の率よりも数倍早いのであります。たとえて申しますならば、一昨年の鉱工業生産は戰前の二五%前後であつたのでありますが、昨年はこれが三一%となりました。本年度は、前内閣におきましてこれを六〇%に高めるべく生産設備の整備、貿易の振興、生産資金の放出並びに國際関係よりの援助等万全の手配を盡してまいつたのでありまするが、しかし、どの角度から見ましても、生産が昨年度の倍の六〇%か、たかだか六五%がせいぜいのところであります。六〇%に高めましても、なおわが國は約八百万人になんなんとする失業者が推定されるのでありまして、國民生活の窮乏はますます深まるのみであります。
かくのごとき生産上昇率の遅々たる有樣に対して、物價の方はいかがと申しまするならば、物によつて相違はありまするけれども、大体において、昭和二十一年度初頭に比し年末は約二倍と相なり、昭和二十二年度初頭の諸物價は、同年末におきましては三、四倍になつております。この率から推定をしてまいりまするならば、本年初頭の諸物價は、本年末になりまするならば、四、五倍になるのではなかろうかと予想されるのであります。また通貨発行高は、一月、二月はやや減少いたしましたが、年度末における約五百億の政府支拂金並びに新賃金ベースによりまする予算膨張、これに伴う諸物價の騰貴による財政支出の増大等を考えてみますならば、將來はまことに寒心にたえないものがございます。
これらは國民生活を圧迫するのみならず、わが國産業の根底を脅かすことになるのでありまして、この通貨の下落、すなわち物價の高騰率は、生産の上昇率の三倍ないし四倍となるわけでありますから、現内閣の関係大臣が非公式ながらしばしば表明されましたように、物をつくりさえすればインフレーシヨンは克服できるという、これだけの考えには承服できないのであります。(「つくらなかつたらどうなる」と呼ぶ者あり)
ただいま生産界に最も欠乏しているものは何であるかと申しますならば、資材及び資金、技術であります。從いまして、この生産を拡充する場合におきましては、日本の國の隅々にありますあらゆる資材を動員してまいらなければなりません。すなわち隠退藏物資、死藏、退藏等がありまするならば、この総動員を行わなければならないのであります。
從つて、民間に放置されている技術も総動員を行つてまいらなければなりません。さらに足らざるときにおきましては、外資に頼らなければならぬという現状にあるのであります。
特に資金の点について申し上げてみまするならば、まじめな事業ほど資金難に陷つているのでありまして、通貨の増発を恐れるのあまり、機械的に金融の引締めを行う結果、國民生活、貿易方面等重要なる産業をも死地に陷れるという危險の存していることを見逃してはならぬと思うのであります。
かるがゆえに、國民はこの点に一大関心をもつておるのでありまして、政府はこの際國家並びに國民の必要欠くべからざる方面には適当な資金援助をなす、すなわち生産方面に用いられる資金と消費方面に用ひられる資金と、その割合を嚴重に区別いたしまして、消費方面の財政支出は極力これを緊縮しなければなりませんが、生産方面の支出はこれをある程度緩和することによつて、わが國経済を振興せしむるとともに、國民経済の確立をはからなければならぬと思うのであります。從いまして、われわれは端的に言えば、生産方面に適する資金は一時資金と切り離して、生産公債というようなものを発行して、これによつて賄うというふうにすべきであろうと思うのでありまするが、この生産公債発行に対する政府当局の御意見を伺つておきたいと思うのであります。
次に、この生産公債に重大な関係を有するとともに、労働賃金、一般長期預金等にも関連する問題でありまするが、この点について質問を申し上げたいと存じます。今日のごとく物價が日に月に変動上昇しておりまする状態では、國家予算自体も、年次計画のごときはむずかしい立場におかれてまいります。よし予算を組めたと仮定いたしましても、結果から見まするならば無意味の結果になるというようなことも生じはしないかという危險性もございます。自由党内閣のいわゆる健全財政によつて、その上に
片山内閣が
追加予算の計上を余儀なくされ、手痛い目に遇つたのは、つい先日のことでございます。從いまして、四半期ごとか、あるいは二箇月ごとに短期予算を組まなければならないような情勢に立ち至らぬとも限らぬのであります。このような時期におきましては、國民は生産公債に應募しようといたしましても、あるいは政府の要請に應じて、信託、定期預金その他の長期預金をしようといたしましても、または労働階級が一生懸命に働こうと決心をいたしましても、安んじてその要請に應ずることができないのは当然でありまするがゆえに、この欠陷を除去するために、通貨対策に対して何らかの手段を講ずべきではなかろうかと存ずるのであります。
一案を提示しまするならば、生産公債並びに長期預金に対しましては、安定價値計算を採用して、もつて民間の購買力を國家に吸収し、これを建設方面に活用することが必要ではなかろうかと思うのであります。
從つて、國益と民益を双方満足せしめて、奔騰いたしてまいりますところのインフレーシヨンに一つのブレーキをかけることが必要ではなかろうかと思うのであります。この点につきまして、政府の考え方を承りたいと思うのであります。
幣制改革については、いろいろと議論されておるのでありまするが、現下の諸情勢におきましては、生産増加速度よりも三倍も四倍も先行する通貨の下落速度を食い止めるには、通貨の切下げ、新円の再封鎖等の非常手段を避けまして、さきに述べましたように、ある種の安定價値計算を採用することが最も妥当であり、それ以外の適当なる処置はないと固く信じているものであります。
次に、この項に関連いたしまして、地方財政に関する政府の所信を承つておきたいと思います。新憲法のもと、都道府縣は完全自治体となつたのであります。しかし、これが裏づけをすべき財政は、まだ國家のもとに行つておるのであります。戰爭中日本の地方財政は、税制の中央集権によりまして、地方でもつておつたものを中央に吸収せられました。しかし戰後になつても、これが地方に還元されておらないのであります。
從つて、地方は完全自治体にはなつたのでありますけれども、それを裏づけすべきところの財源をもつておりません。六・三制のために、あるいはその他
自分自身の自立のために使う予算に非常に困つている現状であります。
從つて政府におきましては、地方財政計画に対しまして何らかの打つ手がなければならぬと思うのであります。
内務省は解体になりまして、地方局はなくなりました。
從つて地方財政委員会の構成を見ておるのでありますが、最近承るところによりますならば、この財政委員会におきまして、地方財政改革案ができているということであります。もし、この案をお示しになることができますならば、幸いに存ずるのであります。加えて、その案は今議会に提出になるお考えであるかどうか、これも承つておきたいと存ずる次第であります。(拍手)
次に、生産増強対策について質問をいたしたいと思います。三
党政策協定は、生産増強の一策といたしまして、「経済再建並びに生産復興のために重点産業政策をとり、石炭國家管理の徹底を期し、海陸総合的輸送計画の完遂に重点をおき、電力事業の一元化をはかり、さらに必要に應じて石油、鉄鋼、肥料等重要産業に民主的な國家管理を行う」と規定しております。石炭につきましては、
片山内閣になつてから、いわゆる三千万トン計画を達成いたしまして、昭和二十三年度におきましては、三千六百万トン計画が、遂行されんとしておるのであります。しかも石炭は、四月一日より國家管理が行われることになつているのでありまして、これは政府の施策に信頼をいたしまして、三千六百万トン計画の達成を念願するものであります。
この際、この産業増産対策に関連いたしまして、電力についてお伺いいたします。わが國には水力は豊富にありまして、完全に電源の開発が行われまするならば、石炭の足らざるところを補つて十分余りあると思うのであります。考えようによりましては、電力の開発こそが私はすべてのものの先決問題でなければならぬ、こう考えるのであります。(拍手)
現在の電力事業を考えてみまするならば、戰爭中発送電関係は、発送電という民有國営の形式によりますところの会社に統合をされております。さらに配電関係におきましては、全國九地区にわかれまして配電会社の設立を見ておるのであります、しかし、これら発送電並びに配電会社の関係におきましては、料金の決定、電力の配分、拡充計画等各種の分野で常に意見の相違がありまして、官僚統制の惡い部面を現わしておるのであります。たとえば、現有設備運営の基本條件とか拡充計画等の事業運営の中心は経済安定本部が掌理し、配電の割当規制の実施は商工省電力局が実権をもつており、他方料金の決定は物價廳に権限があります。発電用治水の使用になれば建設院というような状態であります。このような官廳のセクシヨナリズムにより電力行政の複雑性を強くするとともに、これが非常に電力を豊富にするために大きな阻害になつておるということは、否むことのできない事実であります。(拍手)
次に、わが國水力電源の分布の状況を考えてみまするならば、地勢上本州中央部以東に偏在をいたしまして、石炭分布の状況は主として南北両端地域に偏在をしております。またその上に、各種群小の火力自家発電設備が散在をしており、これらの地域上や組織上からくる不統一な発送電施設によつて、長距離送電の結果多くのロスを出しているということは、いなむことのできない事実であります。また火力炭のむだな使用が行われておるということも考えられるのであります。
これらの技術的な不利が存在し、さらに現在のごとき日発とか九配電会社が分立しておる現状では、さらに能率的な運営を望もうとしても、これによつては望めません。
從つて、発送電並びに配電の一元化が必要になつてくると思うのであります。また電力危機に対処するため極力設備の補修を必要とするのであります。しかしながら、これらの費用は相当かかるのでありまして、これは國家的見地から民主的経営に総合いたしまして、國家のもつております資源、資材というのをこの中にぶちこんでまいらなければならぬと思うのであります。しかも電力問題は、ただ單に電力問題としてのみ考えるにあらずして、日本の工業立地計画の関連のもとに考えてみなければなりません。さらには農業電化のことを考えてみますならば、農村問題との関連のもとにこの電氣事業は考えてまいらなければならぬのであります。かく考えてみまするならば、電力のごとき事業というものは、現在はある意味におきまして國家管理の形態でありますが、この國家管理を徹底せしめて國有國営の事業に移すことが、私は当然考えられなければならぬと思うのであります。(拍手)この点につきまして、商工大臣の見解を私は承つておきたいと思います。
しかし、これは根本策であります。いかに根本策はりつぱな議論をいたしましても、應急の事態に対する應急の手当がなければなりません。昨年末起りましたところの電力不足の状態、これがどれだけ日本の産業の発展を阻害しておるかわかりません。根本のものができなくても、應急の処置というものを講じなければならぬと思うのであります。
從つて商工大臣にお伺いをしておきたいことは、本年度におきまする電力の需給関係の見透し、並びに渇水期にはいつたときに、この電力不足を、いかなる点によつて民衆に、あるいは日本産業に心配をかけないでやつていけるかという、この自信のほどを承つておきたいと存ずる次第であります。
さらに、わが國経済再建に関連して当面の急務は國内生産であることは申し上げるまでもないことであります。しかしながら、これに並行いたしまして不足物資の輸入ができまするならば、これに越したことはございません。一昨日
芦田総理大臣は、周囲の事情は好轉をして、おいおい大量の物資を輸入し得る曙光が見え始めたと言明されました。日本國民はこれが受入態勢をとらねばならぬと強調されたのであります。
日本経済再建も世界的関連において処置されるであらうと申されたのでありまするが、これらは日本再建に対して一つの光明を與えるものでありまして、まことに欣快にたえないものがあるのであります。
そこで問題になりますことは、いかなる準備態勢が具体的に必要であるかということであります。準備態勢をせいとは言つてをります。せいとは言つておりまするけれども、いかなる準備態勢が具体的に必要であるかということについて示されておりません。さらに、いかなる形態をもつて外資が日本の國に導入されてくるか、導入の形態を捕促することはできないのであります。すなわち、いろいろな形態において、物資の形において、あるいは経済的援助の形において、あるいは個人資本の投資の形において、いろいろな形態をもつて外資は導入されてくるに違いないと思うのであります。その形態に対する明示がございません。はいつてくる形態が明示されるならば、これに対する受入態勢が明示されてくるのであります。
從つて私は、この際
総理大臣兼外務大臣にお伺いしたいことは、いかなる形態をもつて外資が導入されるかについて、またこの導入される外資に対していかなる準備態勢を國民は整えたらいいのか、この議会を通じて日本全國民に宣明されんことを望んでやまないのであります。(拍手)
次に、現内閣の労働政策についてお伺いをいたします。
芦田総理大臣は、その
施政方針の演説において、労働対策に関しては労働組合の健全なる発達を念願し、そのために必要なる対策を考慮中であるということを声明されました。しかしながら、爭議の解決は急務中の急務であります、労働者の生産性を高めることなくしては、日本の再建はあり得ないのであります。この内閣は、迫り來る労働攻勢を阻止する内閣ではありません。眞に労働階級に協力を求めて、この労働階級支援のもとに
日本民主化、日本再建に努力しなければならない任務をもつた内閣であると私は思うのであります。(拍手)この観点より、私は二、三の点を労働大臣にお尋ね申し上げたいと思います。
最近わが國労働爭議の傾向を見るに、民間事業よりも、主として官公廳從業員並びに電氣産業といい、あるいは石炭産業といい、國家管理の公共性の強い産業にストライキの頻発を見つつあるのは、一体いかなる理由であるか、お伺いしたいのであります。これは、ただ單に食えないから爭議が起るというぐあいに、簡單に片づけられないと思います。
およそ労働爭議には、迷惑はつきものであります。労働者が労働爭議をなす場合において、その迷惑を苦慮したり、不便を考えたりしては、労働爭議にはなりません。しかしながら、これにも限度があると思うのであります。労働階級が爭議をするのに、これらの世論を恐れておつたのでは、労働階級に保障されましたところの團結権、爭議権は事実上空文になつてしまうのであります。
從つて、國家公共事業だからと言つて、一概に爭議行為はまかりならぬというわけにはまいりません。爭議は爭議を行う労働者自身において決定すべき問題と思うのであります。
しかしながら、労働階級の爭議権の行使にも一つの制約がございます。すなわち憲法においては、勤労者に與えられたる基本的人権として、團結権、團体交渉権、罷業権等はこれを認められておるのであります。
從つて、労働階級がその権利を行使することは異議のないことでありますが、しかし憲法第十二條には、「この憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」という規定があります。この規定の面より、ある程度の制約を受くべきだと私は認めなければならぬと思うのであります。かつての警察國家、彈圧國家の時代においてはいざ知らず、民主國家、奉仕國家と國家の機構が変つてまいりました上には、なおさらこの感を深くするのであります。特に官公廳並びに公企業における爭議権の行使については、眞劍にこの問題が考慮されるのであります。
すなわち、官公廳に働きまするところの從業員には二つの面があると思います。一つの面は、自己が主権者たる立場においての立場であります。それと、その主権者たる自己が形成する國家の使用人となつておるという立場の二面があるということを忘れてはならぬのであります。このことは、公企業に働く從業員も同樣であると思うのであります。かかる立場における要求は、自分みずからを自分で責める結果になつてまいるということを忘れてはなりません。
統治権者である自分が、統治権行使のための行政部門の公務員として働いておる。このことを忘れてはならぬのであります。
從つて公務員は、一部に奉仕するのでなく全体に奉仕するということであれば、おのずからここに爭議の限度、限界が現われてこなければならぬと思うのであります。
すなわち政府に対して爭議をなす場合、これまた考えなければならぬことは、自分が形勢しておる國家の行政部である政府に対して爭議をなさなければならぬということになる。でありますから、ただ單に食えないから爭議をやるということでは片づけられぬと思うのであります。その根本を糾してまいらなければならぬと思うのであります。すなわち、自然発生的な要求の爭議として片づけてまいるわけにはまいりません。その根本を糾し、國家のあらゆる機関が
日本民主化のために、
日本経済再建のために動員せられるようにしなければならぬと思うのであります。現に展開されつつある全逓、電産、この爭議が社会公共の福祉に及ぼす影響を考えれば考えるほど、当事者の反省を望んでやまないものがあります。そのことが國家機構、殊に統治権を麻痺せしめ、國民全体に大きな迷惑のかかつておるという事実も忘れてはならぬと思うのであります。
特に政府にお考え願いたいと思いますことは、政府は國会より選ばれた行政部の代表として
行政機構に携わつておるのでありますが、その政府が
行政権の行使をするにあたつて、末端の者が爭議をやつておるということは、明らかに末端の從業員より政府自身が彈劾を受けておる形式があるということを断じて忘れてはならぬと思うのであります。
今日本は
民主革命の途上にあることは、先ほど申し上げた通りであります。
日本民主化は、國民に対する歴史的任務であります。これは一内閣、一政党の問題ではありません。日本國民全体の問題であります。考え方によりましては、政府を先頭として、
ポツダム宣言を忠実に履行するために、日本の國民が一体となつて
日本民主化に努めておる姿が今の姿であると言つても過言でないと思うのであります。(拍手)そうして國際信用を回復する、このことが國家の信用を回復するゆえんであると思います。かく考えてまいりまするならば、今起り來つておりますところの労働爭議についても、打つ手はあるはずだと私は考えざるを得ません。
現内閣は、組閣と同時に労働爭議に直面をいたしました。しかもそれは、自己の内閣を中心として、
行政権の行使のために活動する分野における爭議の解決をしなければならぬ立場に立つておるのであります。勤労者の協力なくしては、生産は向上せず、日本経済の再建は不可能であります。
日本民主化は徹底をいたしません。さいわいにして、爭議に多年の経験があり、勤労者側にあるわが加藤勘十君が労働大臣のいすにあるのであります。その意義重大なるものがあると私は考えます。そこで私は、先ほど申し上げました通り、最近の官公廳並びに公企業の爭議に対しての労働大臣の見解を承つておきたいと思います。
次に、最近の労働爭議に対しまして、それが政治的意味を含んでおるからいけないという議論を聞くのであります。政治的ストライキ排撃の声を聞くのであります。現に行われつつある爭議についても、政治的ストライキの傾向なしとせずという世論を聞くのであります。私は、ストライキが社会革命の手段として用いられることに対しては、絶対に反対であるのであります。私どもは、無血の間に、議会を通じて日本の
民主主義革命を達成してまいらなければなりません。
從つて、先ほど申し上げました通り、政治的ゼネラル・ストライキというものは、絶対にこれを排撃しなければならぬのであります。
しかし、現実日本の経済情勢並びにインフレ高進の情勢というものは、労働者の好むと好まざるとにかかわらず、経済的要求が変じて政治的要求になるということも、いなむことのできない事實であります。
從つて、頭からあの爭議は政治的であるからといつて排撃するわけにも私はいかぬと思います。その根本を糾してみなければならぬと思うのであります。(拍手)
從つて私は、この観点よりいたしまして、経済闘爭が政治闘爭に轉換せんとしておりまするこの際に、政府にお尋ねいたしたいと思いますることは、労働組合側は、政府が労働組合法、労働関係調整法、労働基準法を改正するにあらずやと心配をいたしまして、各地に労働者大会を開催して、これが阻止運動に起つておるのであります。三
党政策協定は、これらの法律に対しては、健全なる労働運動を阻害するがごとき改惡は行わないと規定しておるのであります。労働大臣は、労働関係諸法案に対して、この際その態度を明白にされまして、そうして労働階級に一つの安心を與えていただきたいと私は要請するものであります。(拍手)
次に、今回賃金ベースは、千八百円ベースより二千九百二十円ベースに引上げられました。官公廳の從業員に対しましては、この差額を拂うために、
追加予算が本議会を通過したのであります。しかも昭和二十三年度
予算編成にあたりましては、物價改訂が必然に要請をされております。物價が改訂をされまするならば、賃金ベースはまた変つてくるという現象を呈してまいります。かくのごとき状態が続いてまいりますならば、賃金と物價の惡循環が何度も繰返されて、インフレは高進されていくという結果になります。そこで私は、この賃金と物價の惡循環を断ち切つて、どこで賃金制度を確立して労働者階級に対して生活の安定を與えるか、労働大臣の所見を承つておきたいと思います。
さらに、勤労者にとつて最も重大なものは勤労所得税の問題であります。勤労所得税は、働けば働くほどよけいにとられるという結果になりまして、かえつて労働階級の生産意欲を妨げておるということは、いなむことのできない事実であります。このことにつきましては、一昨日の本議場におきまして、安定本部長官の言明で、これを大幅に縮小するというようなことが言われておるのでありまして、政府の言明を私は信頼いたします。しかし、そればかりでなく、労働者の福利厚生施設についても、もつと積極的であつてほしいと思うのでありまして、これに対する労働大臣の所見を承つておきたいと思うのであります。
次に、労働対策に関連をいたしまして、全逓爭議の経過について承ることができまするならば、まことに幸いに存ずるのであります。全逓の組合におきましては、明二十三日よりストライキにはいるというような傾向が見えております。さらには全官公廳一齊に、二十五日よりは重大なる決意があると言われております。もしストライキが激化されるようなことになりますれば、國家機関が萎靡してまいるのであります。すなわち日本の國家機関に大きな影響を來すことを考え、さらに民衆の迷惑を考えてまいりまするならば、一日も早く政府はこの事態を収拾してまいらなければなりません。私は、この経過並びに収拾に対する政府の御意見を承りたいと思うのであります。
第四点は、本年度の食糧事情の見透し並びにその増産、土地改革について、農林大臣の所見を承つておきたいと思うのであります。
昨年六月
片山内閣成立の当時、日本は非常な食糧危機に直面をし、樂観を許さざるものがありましたが、連合軍の好意による輸入食糧の大量放出によつて、その危機を脱し得たのであります。その後農民諸君の供出への協力は、関東・東北の大水害があつたにもかかわらず、三月の十六日には三千五百十五万石の供米を完遂いたしまして、全國各地から遅配・欠配を解消して、本年度の食糧事情に光明を與えております。私どもは、農民の努力並びに連合軍の好意に対して、心より感謝するものであります。しかしながら絶対量は足りません。一体どうやつてこの端境期を乗り切つていくのか、この点も承りたいのであります。
しかも三月一日に、前内閣は供出の事前割当を行いました。そうして農民に協力を求めておるのであります。今まで供出の事前割当を行いましたのは、昭和十八年に供出の事前割当を行つたことがありますが、生産前に供出割当を決定することは非常な重大問題であります。このことは、生産責任を農民が負わされるのであります。事前割当を行うことは、土地の利用、作物の栽培に一種の制限を加えるものであり、また生産物資の自由を拘束するものでありますから、農民にとつては実に重大であります。ある意味から申し上げますならば、この政府の行為は一種の立法行為でなければならぬとも私どもは考えるのであります。
この生産割当について考慮されることは、農業の特殊性であります。すなわち、農業の特殊性、他の産業と農業の違うところは、自然を対象とすることであります。農業生産の方向を決定いたしまするのは氣候温度であります。すなわち農民には、照れば照るなりの心配があり、降れば降るなりの心配があり、吹けば吹くだけの心配があるのであります。
從つて、かかる特異性をもつ農業に責任生産制を採用するということは実に重大であるということを私は指摘しなければならぬと思うのであります。
從つて、これができるような工作を政府でとらなければなりません。
すなわち農民は、一面において自然と闘いながら生産を増加してまいるのでありますから、この自然の暴圧に抗爭するために、政府は農民に対してある一つの援助を與えてまいらなければならぬと考えるのであります。すなわち、かく考えてまいりますならば、風水害が起つた場合のことを考えてみまするならば、こういつたような予算はあとから出すということでなく、速やかに應急の手段を講じてまいらなければなりません。(拍手)さらには、自然を征服してまいるのでありますから、人力でもつて足らざるところは肥料の増産を行つて、それによつてやつていくという態勢をとらなければならぬと思うのであります。肥料の増産に對しましては相当成績をあげておるようでありますが、まだ十分と言うわけにはまいりません。そこで私は、肥料もひとつ國家管理に移して、肥料産業に当りますところの労働者諸君の生産意欲を高揚せしめておやりになつたらどうかと考えるのでありますが(拍手)、これに対する商工大臣の見解を承つておきたいと思うのであります。
また一面から、農地改革をさらに推進することが農民の生産意欲を高揚するゆえんと存ずるのであります。農地改革は、農村
民主化のために第一次、第二次の改革が行われて、現に第二次農地改革が進行中であります。農地改革は、農村における封建勢力打倒のための土地革命であります。一部地主の強力なる反対運動があつたにもかかわらず、百六十万町歩の土地は開放されつつあるのでありますが、まだ六十万町歩の小作地が存在し、不耕作地主の存在を見るのであります。また田畑を解放せしめられた地主階級は、山林によつて封建的な保守勢力の維持に汲々たるものがあるのであります。農村
民主化のためにも、さらには生産増強のためにも、農地改革はさらに前進せしめなければなりません。
從つて、第二次農地改革終了とともに、政府はさらにそのでこぼこを調整することはもちろん、不耕作地主の耕地の解放、開墾、適地林野の計画的解放、耕地の交換分合等についてお考えを願つておるかどうか、この際承つておきたいと存ずるのであります。
さらに、この際政府に承つておきたいことは、本年度農業所得税の徴収方途に関しまして、相当農民の中に輿論が起きておるということは、見逃すことのできない事実であります。しかも一律課税をやる結果、やみをやつた農民も、やみをやらずにまじめに働いてきた農民も一緒に扱われておるというこの矛盾は、解消されなければならぬと私は存ずるのであります。かかる観点によりまして、農民所得税の大幅軽減はもちろんのこと、今後の政府の政策を私は承つておきたいと思うのであります。
第五は、社会部門に対しまする質問をいたします。戰災者、引揚者、戰爭犠牲者の生活問題、戰災地の復興、さらには海外同胞の引揚促進については、
芦田総理大臣が非常に関心を拂われていることを
施政方針の演説に伺つたのでありまするが、さらに私は、具体的に各省大臣より承りたいと存ずるのであります。
第一点は、海外同胞の引揚げに関する問題でございます。今日本の國内において解決しなければならない問題は、生産力拡充その他いろいろありまするが、これと同時に解決を急がなければならない問題は、海外同胞の帰還に関する問題であります。海外同胞帰還については、終戰以來連合軍司令部の容易ならざる好意によりまして、海外よりの帰還が順調に進んでまいりましたので、心から感謝申し上げておる次第であります。
終戰三年、海外特にソ連地域には、なお七十五万余名の同胞が残つております。これらの方々は、帰らんとして帰る能わず、一日千秋の思いをもつて、遠く祖國日本の空をながめて泣いておることと存じます。また、最近たびたび開かれまする海外同胞帰還促進國民大会に出席し、あるいは遠く海外に子弟を送つておりますところの親兄弟にお目にかかつて、わが子を思い、わが子弟を思う切なる心情は胸を打たれるものがあります。一日も早くこれら海外同胞を帰していただくことを私は希わざるを得ないのであります。これが政府の重大なる任務と存ずる次第であります。
芦田総理大臣は外務大臣を兼ね、この任務には打つてつけの立場にあると思うのでありまして、海外同胞帰還に関しまして、さらにその状況等について承ることができまするならば幸と存ずるのであります。
戰災者、引揚者、戰歿者の遺族、在外者の遺族等の生活については、万全の対策を講ずる必要があると私は思うのであります。殊に戰災者、引揚者の生活対策に関連をいたしまして、消費者の生活を擁護するためにも、消費生活協同組合のごときいわば協同組織をもつて、その組織の力によつてやみとインフレに対抗して、みずからの生活を擁護するの組織体制が必要と思うのでありますが、これに対する厚生大臣の御所見を承つておきたいと思うのであります。
終戰後満三年を迎えんとしておりますが、戰災大都市の復興は遅々として進んでおりません。戰災者は生活苦と生活難に悩んでおる次第であります。私どもは、庶民住宅及び重要産業勤労者の住宅の建設に努力しなければならないと存ずるのであります。これにつきましては、三
党政策協定において具体的なものがきまつておるのでありまするが、さらにこの際戰災地の復興並びに住宅問題に対する解決について一松
國務大臣の御意見が伺えまするならば、幸に存ずる次第であります。
最後に申し述べたいと思いますことは、敗戰二年有余、われらは、なぜ戰爭が起きたか、なぜ戰爭に負けたかという鋭い批判の上に、新憲法において軍備を撤廃し、戰爭を放棄することを規定しました。これは人類最高の理想であります。
芦田総理大臣は、
施政方針の演説において、世界がこの最高の理想において同調することはわれわれの熱願であるということを言われました。その通りであります。われらは、
芦田総理大臣の言われる通り、自由と平和と正義の支配する世界の建設に対して不断の努力を拂つてまいらねばなりません。
この大理想に進むには、まず國内体制を眞に民主的、平和的な文化体制に建てかえていかなければなりません。またわれらは、これがために闘つてまいつたのであります。われらの努力は連合國の認めるところとなつて、外資導入の可能性を見るにいたりました。わが日本経済の再建も、世界的関連において再建されることになつたのであります。われらは、さらに國内体制を整備確立し、國際信用を回復して、
講和会議の一日も速やかなる成立を望んでやまない次第であります。
以上をもちまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
〔
國務大臣芦田均君登壇〕