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1948-03-22 第2回国会 衆議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年三月二十二日(月曜日)     午後二時九分開議     —————————————  議事日程 第二十五号   昭和二十三年三月二十二日(月曜日)     午後一時開議  一 國務大臣演説に対する質疑     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 國務大臣演説に対する質疑に入ります。齋藤隆夫君。     〔齋藤隆夫登壇
  4. 齋藤隆夫

    齋藤隆夫君 芦田内閣成立してようやく総理大臣施政方針演説が済んだばかりで、これから政策審議に移らんとするこのときにあたりまして、私はひとつ総理大臣意見を質しておきたいことがある。それはほかのことではない。つまり、この内閣成立に関することであります。  あらためて申すまでもないが、およそ立憲政治もとにおきまして、内閣組織國政運用する根本に関するものでありまするから、その組織はあくまでも合理的でなくてはならぬ、かつ民主的でなくてはならぬ。それでなくては、とても円満に、また強力に國政を進めていくことができないことは、これはわかりきつたことであります。それゆえに、新憲法議院内閣制を確認しておる。  議院内閣制はすなわち政党内閣制であるのであります。民意代表の名をもつて政治界に現われておりますところの政党、これらの政党を代表しているところの議員が、國会議場に集まつて総理大臣指名する。その指名せられたところの総理大臣がみずから起つて内閣組織する。これが新憲法規定であり、また議院内閣制要旨であるのであります。それゆえに、それらの政党が眞に民意を代表しておればそれはよろしい。それなら文句はない。少くとも、ほかの関係は別といたしまして、総理大臣指名するというその一点において眞に民意を代表したならばそれでよろしい。もしかりに民意代表に欠くるところがありとするならばどうであるか。國論大勢と一致しない場合があつたならばどうであるか。それがもととなつて現われて來たところの総理大臣指名は、これは眞の指名ではない。眞の指名でないということは、裏から見れば虚偽指名ということに相なるのであります。(拍手虚偽指名によつて現われてきたところの総理大臣内閣組織する。これまたその内閣は、眞の内閣ではなくして虚偽内閣とならざるを得ない。(「虚偽内閣とは何だ」と呼び、その他発言する者多し)これは論理必然の結果でありますから、何人といえども、この理論に向つて反対することはできない。從つて、かかる性質内閣によつて國政を進めていくことは許されない。新憲法精神にも背き、また議院内閣制本旨にももとる。これは何人といえども異論をさしはさむ余地はないのである。そうしてこのことは、あらゆる政治問題を超越するところの根本問題でありまするから、われわれは政策審議に入るに先だつて、まずもつてこの点を明らかにする必要がある。この関係において、芦田内閣はどういう性質のものであるか、これを檢討して私の質問を進めてみたいと思う。  昨年四月の総選挙にあたりまして、社会党が第一党の地位を占めたことは、疑いもなく國民が次の政権社会党に担当せしむべく國民的の信託を與えたものである。それゆえに、総選挙直後に開かれたところの國会においては、両院とも一致して社会党の首長である片山君を総理大臣指名した。これは疑いもなく新憲法精神に則り、政党内閣制を行うため当然とるべき途であるのであります。(拍手)そこで、その結果として、昨年五月に片山内閣成立して……     〔発言する者多し〕
  5. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  6. 齋藤隆夫

    齋藤隆夫君(続) 第一國会は無事に終了し、続いて第二國会を迎えることと相なつたのである。  ところが、御承知通り敗戰國家現状はきわめて深刻であります。財政経済は申すに及ばず、國家のあらゆる方面はまつたく行詰りの状態に陷り、これを打開することは実に容易なことではない。その上、片山内閣はいわゆる連立内閣でありまして、社、民、國協、この三派を基礎とする連立内閣である。これらの政党は、おのおの大会を開いて政策を決定したのでありまするが、その政策は必ずしも一致してはおらないのみならず、社会党政策と他の二派の政策との間においては根本的に相容れないものがある。かかる場合におきまして、片山内閣はどういう方針をもつて進むべきであるかといえば、むろん三派の政策ことごとく取入れることができない。そこで、連立内閣本旨に則り、與党三派の政策を檢討してこれを参照すると同時に、政府独自の政策を決定し、この政策をひつさげて國会に臨み、國会がこれに賛成すればよし、もし反対をすることがあつたならば、断然衆議院解散して國論に訴え、その結果によつて進退を決する、これよりほかに途はないのであつて、その方法はきわめて簡單明瞭、少しも左顧右眄する必要はない。  ここにおいて片山内閣は、この趣旨に基き、まず当面の事態に應ずるがために追加予算を編成し、閣議の決定を経て、これを衆議院予算委員会に提出したのである。ところが予算委員会は、これに賛成をしないのみならず、かえつてこれに反対をした。しかる上は、政府はただちに衆議院解散して國論に訴うべきであるはずであるにもかかわらず、政府解散をしない。別に考うるところがあつて解散の途をとらずして総辞職をなしたのである。総辞職もまた確かに一つの方法であります。たとい解散をしても、國論内閣を支持しない。総選挙の結果勝算なしと考えたときにおいては、総辞職をなすことはこれは当然である。それゆえに、われわれは片山内閣が総辞職をしたことについて、決してこれが惡いと言うのではない。間違つていると言うのではない。しかし、政府政策が行われないで、國会において否決せられたがために総辞職をいたしまする以上は、その辞職に伴うて重大なるところの責任が起ることを覚悟せねばならぬ。(拍手)  このときにあたつて、いろいろの文句は許されない。國会の否決は、與党である社会党一部の行動に基くものである。與党内の問題であるから政府責任がないというようなことは、政治家の言うべきことではない。(拍手)たとい與党の一部が反対したにせよ、これが國会多数の意見となつて政府政策が否決せられたるこの嚴然たる事実の前に立つて政府が施すべきところの策がなく、遂に辞職した。このことを忘れてはならない。  あるいはまた、当時政府は、否決せられたところの予算が本会議に上る以前においてこれを撤回して予算の編成替をなし、さらにあらためてこれを提出するところの用意があつたから、決して政策に行き詰まつたものではない。かように強弁する者があるのでありまするが、それならば、何ゆえにその途をとらなくして辞職したのであるか。もしそれだけの用意確信があるならば、辞職をなさずして、速やかに新予算を提出して議会の賛否を問うべきではないか。(拍手)しかるに、その途をとることができずし辞職をなしておきながら、後に至つて政策の行詰りでないと強弁したところが、そういうような弁解は世間には通用しないのである。(拍手)  要するに、政府政策國会において否決せられながら、衆議院解散することができずし辞職を決行した。その責任は一体だれがとるのであるか。むろん、閣僚全体においてこれを負わねばならぬ。ひいて、閣僚を送つているところの與党三派においてこれを負わねばならぬことはもちろんであります。(拍手)そうして、その責任を負うにあたつて閣僚の間に何らの軽重するところはない。憲法第六十六條には、内閣行政権行使について、國会に対して連帶して責任を負う、かように規定している。すなわち、行政権行使によつて内閣を投げ出した連帶責任をとるのはあたりまえのことである。     〔発言する者多し〕
  7. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  8. 齋藤隆夫

    齋藤隆夫君(続) 大体こういうような次第で内閣辞職したのである。  しからば、次の政権をどの党派が担うべきか。これを政界現状に見る、また政党内閣本旨に考えてみるならば‥‥     〔発言する者多し〕
  9. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  10. 齋藤隆夫

    齋藤隆夫君(続) 在野の第一党である自由党よりほかにないことは論を要せないのである。しかるに、この道理を無視して、しかも政策に行詰まつて内閣を投げ出したところの当面の責任者が、みずから起つて政権爭うに至つては、憲政運用の上より見て、断じて許すべからざる非行である。     〔発言する者多し〕
  11. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  12. 齋藤隆夫

    齋藤隆夫君(続) 言うまでもなく、立憲政治責任政治である。政治家責任をとるときには潔く責任をとればよろしい。政策に行詰まつたから内閣を投げ出した、これで責任の全部を果したから、あとは自由である、翌日から次の政権を競爭しても、それはかまわない、そういうことは責任道徳社会通念が許さないのであります。(拍手)  しかるに、このことにつきまして、一部政治家の間には実に愚劣極まるところの議論が唱えられておる。それはどういうことであるかというと、いわゆる憲政常道ということである。憲政常道ということは、旧憲法時代と新憲法時代とによつてつておる、すなわち旧憲法時代においては、内閣辞職したときには反対党政権をとるのが常道であるが、新憲法時代に入つてからはそうではない、新憲法においては、総理大臣國会指名するのである、憲法においては、どの政党指名するかということは書いてない、それであるから、與党であると野党であるとを問わず、國会によつて指名せられた者が政権担当者となる、これが新憲法下における憲政常道である、かよすに強弁する者があるが、これは実に笑うべき議論であります。(拍手憲法規定とその運用の区別を知らない、法律論政治論とを混同する僻論である。総理大臣國会指名する。これは法律論であります。いかなる者を指名するのが適当であるか。これは政治論であり、運用論である。憲法は紙に書いたところの文字にすぎない。運用によつて光を放つ。運用を誤つたならば、憲法は死んでしまうのであります。政策を否決せられて内閣を投げ出した者を次の内閣首相にするのが適当であるかないかは、政治倫理の一端でも弁えておる者ならば、ただちにわかるはずである。これがわからぬというのなら、頭がどうかしているのである。(拍手)  要するに、片山内閣辞職後の政権自由党が担当すべきものであります。これは國論大勢でありまして、民主党が引受くべきものであるという意見は現われたことがない。これを言論機関論調に見る。またこれを輿論調査の結果に考える。またこれを街頭における民衆の声に聽く。國論はすでに定まつておる。今日ほど國論が一致したことはない。  あるいは言うかもしれない。そんなものは國論でも何でもない、新聞の論調とか、あるいは勝手にこしらえた輿論調査であるとか、あるいは街頭の声であるとか、そんなものは國論でも何でもない、強いて言うならば、それは國論ほこりである、吹けば飛ぶようなほこりである、政治家はそんなものに眼を配る必要はない、眞の國論院外にあらずし院内にある、この議場にある、この議場の多数を握つておればそれでよろしい、それで十分である、院外大衆の声などには少しも耳を傾ける必要はない、こう言う者があるかもしれませんが、これは官僚政治家の言うことであつて國民政治家の言うことではない。われわれはむろん院内形勢を見なくてはならぬが、これと同時に、絶えず院外形勢に目をつけなければならぬ。そうして、でき得る限りこの両方面形勢を一致せしむるために最善の注意と最善努力を拂うことが、民主政治家責任であるのであります。(拍手)  言うまでもなく、國会國論代表機関であります。國論を代表しない國会は眞の國会ではない。もしこれを疑うならば、衆議院解散して民意を問うてみるがよろしい。(拍手民主党政権を渡せというごとき意見は、断じて現われてこない。それにもかかわらず、この衆議院民主党総裁指名したのでありまするが、この指名がはたして民意に副うておるものであるかないか。これを公式に証明する途は、衆議院解散するほかにはない。(拍手)  議会解散は、民主政治を行う第一の要件であります。國民意思國会意思とが一致しない。これがかけ離れておる。少くともその疑いある場合においては、まずこれを解散しなければならぬ。これを解散して國論大勢と一致する國会をつくり、その國会基礎とする政府であつて初めて國政を進めていくことができる。(拍手)もし万一、かかる場合にあたつて國会解散するの途をとらない、依然として不自然なる多数を擁して政権に執着することがあつたならば、その政治状態は何であるか。これは疑いもなく政党の独裁であります。眞の政党政治ではない。眞の民主政治ではない。いわゆる政党フアツシヨであるとともに、民主政治はここに滅びてしまうのである。  御承知のごとく、今日世界において最も立憲政治が発達しておる國は英國であるのであります。議院内閣制といい、あるいは政党内閣制というが、実は英國を模範としておつたものである。ところが、その英國におきまして、今より約七十年以前、当時の英國総理大臣であり、かつ歴史的にも有名なる政治家でありましたところのかのジスレリー、後のロード・ビーコンスフイールドでありますが、この人が、立憲政治において議会解散の必要あることを論述して、次のごとく述べておる。すなわち、立憲政治のある階段においては、非立憲なるところの内閣、または腐敗せる議会が現われないとは限らない、かかる場合において、もしもその内閣議会解散することなく、依然として腐敗せる議員、從順なる議員を擁して議会の権能を行使するならば、万能力を有するところのイギリスの議会は、下院を廃することもできる、反対党議員の議席を全部奪うこともできる、また議会の会期を無限に延長することもできる、しかして、これらの行動憲法違反ではないが、立憲政治の破滅であると同時に一種の革命行為である、かように述べておるのでありますが、これは当然のことであつて、別に斬新なる意見でもないが、この当然の意見すら、なかなか行われないのであります。  しかして、この論理を今日の芦田内閣に適用するならばどうであるか。もしも芦田内閣が、眞に民意を代表しておるかおらないかわからない、少くともその疑いのあるところの議員の多数を擁して、強いてこれから政治を進めていこうとするならば、その行動はたとい形式上の憲法違反にあらずといえども、少くとも憲法精神もとる非立憲行為である。(拍手民主政治の破壊である。その結果として、議会信用は失墜する、國民大衆の間から議会否認の声があがらずと何人が保証することができるか。議会解散の必要はここにあるのであります。われわれはこの見地に立つて、今こそ議会解散すべきときである、議会解散して、眞の國論をこの議場に反映すべきときであると思うが、総理大臣はどう思つているか。質問要旨はここにあるのであります。  繰返して申しますが、敗戰國家現状はきわめて深刻であります。興亡の危局はわれわれの眼前に横たわつている。これを打開するの責任は、主として政府にあるのである。しかるに、その政府國民と遊離している。國民的基礎を有せざるところの不自然なる連合の力をもつてこの難局に当らんとするがごときは、國を思う政治家のやることではない。(拍手)もし芦田首相にして國民的な確信を有するならば、この際断然衆議院解散して、國論に問うてみるがよろしい。(拍手)時局に名をかつて一時を糊塗するがごときは、堂堂たる政治家のとるべき途ではない。(拍手芦田総理はよく考えるがよい。殊に本員が院内の第一党を代表して、かくのごとき意見を述べ、かくのごとき質問をなす以上は、政府においても重大なる決意を要するものがある。微微たる眼前の事情にとらわれず、すべからく大所高所に立つて國家及び政界現状及び將來を大観して、眞劍見をもつて本員の質問に答えられんことを要望する。  これをもつて私の質問を終ります。(拍手
  13. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 齋藤君の発言中虚偽指名について取消し方の申し出がありましたが、議長速記録を十分に調査の上、適当な処置をとりたいと存じます。(拍手淺沼稻次郎君。     〔「答弁はどうした」「総理大臣を出せ」と呼び、その他発言する者多し〕
  14. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 取消します。総理大臣芦田均君     〔國務大臣芦田均登壇
  15. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 齋藤君の質疑のお答えいたします。  最初の質問は、去る二十日の首班指名選挙において、投票虚偽指名であつたと思うが、その点はどうかということであります。議員投票議員の良心に基いて行われるものでありまして、断じて虚偽指名であるとは存じません。(拍手)  第二点は、政治責任の上から言つて芦田内閣指名憲政常道に反するという御意見であります。憲政常道とは、その國、その時代憲法精神によつて考えられるべきものであつて、他にはありません。(拍手)新憲法においては、内閣総理大臣國会指名によつて天皇が任命すると規定されております。その精神は、議会の多数党が政府に立つということであります。從つて、もし当然に反対党が政変の後に政府に立つということであるならば、それは多数党の政府を認めておる新憲法精神に即しないものであります。  第三点は、この際政府議会解散する意向があるかどうかという御質問であります。議会解散は、國民輿論議会の多数が一致しないという場合に議会解散を行うことが憲法の常識であります。今日この衆議院國民の総意を反映しておるか否かということについては、それぞれ必要なる事実を調査して、はたしてこれが國民多数の意向に反するということならば解散したらよい。     〔発言する者多く、議場騒然
  16. 芦田均

    國務大臣芦田均君)(続) まあ、お聽きなさい。
  17. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  18. 芦田均

    國務大臣芦田均君)(続) 國民意向を反映しないことが明らかになつた場合には、進んで衆議院解散することに毫も躊躇するものではありません。(拍手)  以上をもつて私の答弁といたします。(拍手
  19. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 齋藤さん、再質問がありますか。——淺沼稻次郎君。     〔淺沼稻次郎登壇
  20. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表し、総理大臣施政方針の演説に関連をいたしまして、総理大臣並びに四、五の閣僚に対し、わが党の態度を表明しつつ質問いたしたいと存じます。  わが社会党は、片山内閣総辞職に伴いまして、次期総理大臣指名決議にあたり、反動革命を阻止し、日本の民主化を促進徹底する意味合よりいたしまして、芦田民主党総裁を指名することに賛成をいたしました。(拍手)ところが、民主党より政策協定についての申出があつたのであります。これに應じ、國民協同党とともに三党政策協定行つたのでありますが、その政策協定においては、わが党の危機突破緊急対策が相当織りこまれることになりました。政策協定が成立をし、その政策が相当織りこまれることになつた以上は、閣僚を送つて、そうしてこれが実現のために努力することが、天下の公党として社会党のとるべき態度なりと考えまして(拍手)、現在八名の閣僚を送つて、政府と協力しつつあるのであります。  世上ややもすれば、政策協定は政権をとらんがための協定であるとか、あるいは芦田内閣の手によつてその政策の実現はできないとか、あるいは二十三年度の予算編成はこの協定と別に編成されるであろうという揣摩臆測が行われております。これ、われわれのはなはだ遺憾とするところであります。しかしながら、芦田内閣のよつてもつて立つ政策的基盤は三党政策協定であります。芦田内閣挙國連立政権を目標に出発したのでありまするが、自由党の拒否によつて、三党政策協定のもとに、極右極左を排して、いわゆる中道的政権として三党連立政権が成立したのであります。(拍手)從つてその任務は、三党政策協定を予算化し、これを法律化し、もつて日本の民主化日本経済再建のために生れた内閣であるといつて過言ではありません。(拍手)  そこで私は、まず三党政策協定の実践化に対する、すなわちいかにしてこれを予算化し、これを法律化するかということについて、芦田総理大臣の信念を承りたいと存ずるのであります。次に政策協定は政治、経済、社会の三部門によりなつております。從つて私は、この順を逐うて質問をしてまいりたいと存じます。  第一は政治の部門であります。第一点は、日本民主化の徹底に関する事項であります。申すまでもなく、現在わが國は民主革命の進行の途上にあります。わが國がポツダム宣言を受諾して以來、わが國民に與えられたる任務は、封建的な、專制的な、軍國的な國家体制を、眞の民主的な、文化的な、平和的な國家体制たらしめなければならないという新たなる任務が負わされたのであります。またわが國民は、あげてこの任務遂行のために闘つてまいりました。わが國の民主的なあり方は、新憲法の制定によつてその方向が定められたのであります。総理大臣は、新憲法は民族更正一大宣言であつて、われわれは一片の紙上の宣言に止まることなく、これを実践する努力に全力をもつて努めなければならないということを、施政方針の演説において言われました。まことにその通りであります。憲法こそがわが國民主化の源泉であり、その実践こそは、わが國民が平和愛好の國民であることを世界に示し、わが國が世界的信用を回復し、講和会議に対処する我が國民の姿でなければなりません。從つてこれが普及徹底をするということは、政府並びに國民に與えられたる重大なる任務であります。  新憲法は昨年の五月三日その効力を発し、新憲法のもと、幾多の法令は民主的に改正され、積極的に改善され、機構の改革も行われて、政治、経済、文化、あらゆる部面にその民主化は進められ來つたのであります。しかし全國民は、新憲法を自分のものとして、自己の生活に活かしておるでありましようか。主権在國民の大原則に從つて、みずから日本國家統治権者としての矜恃をもつて國民は行動しておるでありましようか。私は必ずしもと答えざるを得ない現状をはなはだ遺憾に存ずるのであります。わが國の民主主義は、欧米のそれのごとく、民衆の不断の闘爭によつて闘い得たものではございません。敗戰という冷嚴なる現実の上にもたらされた民主主義であります。從つて、身についていないといつたような状態のあることは、これまたやむを得ないのでありまするが、これを徹底せしめ、自分自身のものとしなければなりません。  芦田総理大臣は、新憲法制定にあたつては、衆議院において憲法審議特別委員長として、さらに成立後は、憲法普及会の委員長として健闘されたのでありまするが、憲法普及会というものは、必ずしも成績があがつておりません。現在解消されまして、今國会を中心として、民間有識者を加えて民主政治教育連盟の成立を見ております。これもあまり活動的ではありません。もつと積極的であつてほしいと思うのであります。日本民主化のためには、新憲法の普及徹底が何よりも必要と存ずる次第でありまするが、政府はこの憲法の精神普及のために、いかなる考慮を拂つておられるか、この際承つておきたいと思うのであります。  次に、日本における民主化の最も遅れておるものは、中央・地方を貫く行政機構であり、官僚機構であると存じます。官僚機構は、國家公務員法の制定によりまして、一歩前進したと言えまするが、行政機構は旧態依然たる状態であります。その非能率、非民主化國民非難の的となつております。行政機構は、終戰後陸海軍の解体、新憲法の制定に伴い、幣原・吉田・片山内閣を経て部分的に改正が行われてきたのでありまするが、抜本的改革は行われず、内閣法行政官廳法の制定を見ておりまするが、これは五月二日までのものであります。新憲法は、議院内閣制を確立し、政党政治を予想しております。政党政治のもとにおいては、行政は專門化し、技術化し、最高度の能率が発揮されなければなりません。  新憲法実施以來、中央行政官廳組織は、厚生省から労働省が分離独立されました。内務省、司法省は解体し、内務省は建設院、財務委員会、公安委員会にわかれ、司法省は内閣法制局、調査局を吸収して、法務廳として大世帶を張るに至りました。警察は國家警察と自治警察にわかれたのでありますが、警察官の数はかえつて増大しております。労働省が新設されたといつても、厚生省が縮小されたわけではございません。経済安定本部が新設されても、大藏省、商工省、農林省は以前と変りはなく、かえつて拡大されております。勲章がなくなり、新しい栄典もきまらないで仕事がないのに、賞勲局はそのままであります。恩給局もそのままであります。また外務省の官吏は他日を期するがごとく、現在は待機の状態におかれております。戰爭中大きくなつた行政機構は、その後少しも小さくはなつておりません。役人は少しも減つておらないのであります。  また官廳間のセクシヨナリズムは、今もその跡を絶つておりません。たとえば建設行政にこれを見まするならば、道路・橋梁の建設は建設院に、港湾建設は運輸省に、電力開発は商工省に、農地開拓は農林省にというがごとく各省に分割されて、昨年建設省設置の問題にもこれが一つの原因となりまして、省の新設に失敗をしておるのであります。また水産廳の設置にあたつても、漁船問題に関することを中心として、運輸省と農林省の間の対立がこれを不可能ならしめております。  從來の警察國家、彈圧國家から、新憲法のもと奉仕國家として新生した以上、その機構は國民に対するサービスの機関として、官吏は全体に対する奉仕者として再編成をされなければなりません。それがためには、次の基準によらなければならぬと思うのであります。すなわち行政機構の系統化——同一系統にある行政事務は一つの機関に集中することであります。行政の分業化、すなわち企画、実施、現業の各事務をそれぞれ整理簡素化して、各事務をしてその機能を発揮させることであります。第三には行政事務の有機的連絡を保持し、その一体化をはかることでなければなりません。第四には、行政を能率化し、技術化し、專門化して、高度の能率を発揮せしめることであります。  この原則に從いまして、具体的に中央行政官廳の点について考えてみますならば、建設行政を建設院に統合いたしまして、これを省に昇格せしめたいと思うのであります。また運輸、逓信両省はこれを統合いたしまして、行政の部面は交通省、現業面はこれを独立採算制に基く現業官廳とすべきものと考えるのであります。また省内の部局の整備再編成を行い、能率的、民主的な体制とすることが必要であります。中央官廳の地方出先官廳はこれを大幅に整理して、できる限りその権限を地方に委譲し、地方自治体の権限を拡充すべきであると存ずる次第であります。特に経済安定本部の組織について考えてみますならば、各省と並立の形におかれております。中央行政官廳の上に屋上屋の組織たることは、いなむことのできない事実であります。この組織を縮小いたしまして、これを企画廳たらしめ、実施面は各省においてこれを行わしめ、その調査をはかるべきであると思います。この行政機構改革に対する政府の所見を承りたいと思います。  次に、この問題に関連いたしまして伺つておきたいと思いますことは、行政整理に関する事項でありますが、前片山内閣におきましては、行政整理の天引二割五分というものをきめておるのであります。しかしながら行政整理は、行政官廳の能率化並びに民主化が前提に行われて、その上に、やむを得ざる場合において行政整理が行われるのであります。從つて、前内閣の決定でありますけれども、頭からの二割五分の天引に対しては相当の考慮を拂つて、新たな観点より行政整理を行わんとする考えはないかという点について、お伺いしておきたいと思うのであります。  次に、文教の刷新並びに興隆についてお伺いいたします。新憲法のもと、わが國は戰爭を放棄し、武器を捨てて、文化國家、平和國家として再建することになりました。新しい日本は、文化國家を目標として進んでおるのであります。これに一番大切なことは、次の時代の國民をほんとうに民主的な、平和的な國民として育て上げることであります。この任務が教育であります。文教の刷新興隆こそ、文化國家建設の第一歩であると存じます。さればこそ、教育基本法、学校教育法が制定され、六・三制、新制中学等の実施になつているのであります。これには相当の予算が必要であります。特に市町村財政には一定の限度があつて、國家はこれに対し補給の途を講じてまいらなければなりません。片山内閣は、その追加予算に相当額を計上すべきことを約束いたしました。今回芦田内閣の手によつて提出されました追加予算案には、これが計上になつておりません。この点につきましては、三党政策協定の中にも文教費の優位性が認められているにかかわらず、この措置に出でなかつたことは、われわれのはなはだ遺憾とするところでありますが、しかし、二十三年度の予算には必ず相当計上されるのであろうということを期待するものであります。  文化國家は、教育文化の優越せる國家であります。軍國國家に代えて——否、軍國主義國家においては、軍事費がその最高なものであつたと思うのでありますが、文化國家におきましては、文化・教育がその最高なものであつて、財政経理の面から申し上げますならば、その優位性が認められなければならぬと思うのであります。(拍手)この点について、当局のお考えを承りたいと存じます。教育制度の確立を期し、わが國の教育水準を世界的水準に引上げ、文化の面より國際的信用を回復する糧とし、加えて文化國家建設の礎石たらしめなければならぬと思うのであります。特に勤労者のための教育、大学教育の刷新改革、これらのことが考慮されなければならないと思うのでありまするが、文部大臣の所見を承りたいと存ずる次第であります。(拍手)  次に、経済の部門に関連をいたしまして、政府のインフレ対策その他生産増強の対策についてお伺いをしたいと思うのであります。  三党政策協定は、経済の部門におきましては、その基本方針といたしまして、経済復興の長期計画と照應し、一應今後二箇年間を目標として総合的な計画を樹立し、生産の急速な増強と流通秩序の確立をはかり、実質的な健全財政主義を堅持する方針をきめております。インフレ対策といたしましては、一つは財政インフレ防止のため経費の軽減に努め、徴税機構を強化し、インフレ及びやみ利得を徹底的に徴収する脱税防止法の制定、軍事公債利拂の停止的処理、なお鉄道・通信特別会計については、経理面の合理化を断行することによつて経費の節減をはかり、復興の基本計画を樹立し、なお不可避の赤字は一般会計より繰入れるか、あるいは運賃並びに通信料金の引上げによるか、あるいはその他の方法等によつて、基本計画の檢討を経て決定するとしております。第二には、租税負担の公正化並びに生産増強のための税制の改革を断行し、勤労所得税並びに勤労農民の所得税を大幅に軽減し、中央・地方を通ずる税源を整理調整し、法人税の軽減を行い、國富調査その他新税を檢討し、その実現をはかる。第三には、金融インフレ防止及び通貨信用維持の見地から、資金調達及び融資の健全化と効率化をはかるため、金融制度調査会の答申に基き、金融機関の民主的管理を行い、特に日本銀行法の根本的改正のため調査会を設置し、復興金融金庫の民主的な運営委員会と監察機関を設置して根本的刷新をはかると規定しております。  これらの問題につきましては、処理委員会を設置し、あるいは調査委員会を設置しなければ具体策の出てこない点もあるのでありまするが、これこそが來年度予算を編成する基本的方針でなければならぬと思うのであります。政府は今申し上げましたこの対策に從つて、昭和二十三年度の予算をこの方針によつて健全財政として組んで、この議会に臨んでくることを私どもは期待するものであります。(拍手)  これに関連をいたしまして、一、二お伺いしたいと思いますことは、現内閣の関係閣僚の中には、非公式な言ではありますが、インフレーシヨン対策としては、現下のインフレーシヨンが欠乏経済から起るものであるから、物を生産すればインフレーシヨンを克服できるということをしばしば述べております。もちろんインフレーシヨンなる現象は、物と通貨がアンバランスになつたとき出てまいりまする現象でありますから、通貨が膨張いたしましても、この膨張に從ひましてどんどん物の生産ができてまいりまするならば問題はないのであります。しかしながら、現在日本を襲つておりまするインフレーシヨンは、激化して第三期の初頭に突入していると言つても過言でありません。  現下の通貨の膨張及び下落の率は、生産の復興上昇の率よりも数倍早いのであります。たとえて申しますならば、一昨年の鉱工業生産は戰前の二五%前後であつたのでありますが、昨年はこれが三一%となりました。本年度は、前内閣におきましてこれを六〇%に高めるべく生産設備の整備、貿易の振興、生産資金の放出並びに國際関係よりの援助等万全の手配を盡してまいつたのでありまするが、しかし、どの角度から見ましても、生産が昨年度の倍の六〇%か、たかだか六五%がせいぜいのところであります。六〇%に高めましても、なおわが國は約八百万人になんなんとする失業者が推定されるのでありまして、國民生活の窮乏はますます深まるのみであります。  かくのごとき生産上昇率の遅々たる有樣に対して、物價の方はいかがと申しまするならば、物によつて相違はありまするけれども、大体において、昭和二十一年度初頭に比し年末は約二倍と相なり、昭和二十二年度初頭の諸物價は、同年末におきましては三、四倍になつております。この率から推定をしてまいりまするならば、本年初頭の諸物價は、本年末になりまするならば、四、五倍になるのではなかろうかと予想されるのであります。また通貨発行高は、一月、二月はやや減少いたしましたが、年度末における約五百億の政府支拂金並びに新賃金ベースによりまする予算膨張、これに伴う諸物價の騰貴による財政支出の増大等を考えてみますならば、將來はまことに寒心にたえないものがございます。  これらは國民生活を圧迫するのみならず、わが國産業の根底を脅かすことになるのでありまして、この通貨の下落、すなわち物價の高騰率は、生産の上昇率の三倍ないし四倍となるわけでありますから、現内閣の関係大臣が非公式ながらしばしば表明されましたように、物をつくりさえすればインフレーシヨンは克服できるという、これだけの考えには承服できないのであります。(「つくらなかつたらどうなる」と呼ぶ者あり)  ただいま生産界に最も欠乏しているものは何であるかと申しますならば、資材及び資金、技術であります。從いまして、この生産を拡充する場合におきましては、日本の國の隅々にありますあらゆる資材を動員してまいらなければなりません。すなわち隠退藏物資、死藏、退藏等がありまするならば、この総動員を行わなければならないのであります。從つて、民間に放置されている技術も総動員を行つてまいらなければなりません。さらに足らざるときにおきましては、外資に頼らなければならぬという現状にあるのであります。  特に資金の点について申し上げてみまするならば、まじめな事業ほど資金難に陷つているのでありまして、通貨の増発を恐れるのあまり、機械的に金融の引締めを行う結果、國民生活、貿易方面等重要なる産業をも死地に陷れるという危險の存していることを見逃してはならぬと思うのであります。  かるがゆえに、國民はこの点に一大関心をもつておるのでありまして、政府はこの際國家並びに國民の必要欠くべからざる方面には適当な資金援助をなす、すなわち生産方面に用いられる資金と消費方面に用ひられる資金と、その割合を嚴重に区別いたしまして、消費方面の財政支出は極力これを緊縮しなければなりませんが、生産方面の支出はこれをある程度緩和することによつて、わが國経済を振興せしむるとともに、國民経済の確立をはからなければならぬと思うのであります。從いまして、われわれは端的に言えば、生産方面に適する資金は一時資金と切り離して、生産公債というようなものを発行して、これによつて賄うというふうにすべきであろうと思うのでありまするが、この生産公債発行に対する政府当局の御意見を伺つておきたいと思うのであります。  次に、この生産公債に重大な関係を有するとともに、労働賃金、一般長期預金等にも関連する問題でありまするが、この点について質問を申し上げたいと存じます。今日のごとく物價が日に月に変動上昇しておりまする状態では、國家予算自体も、年次計画のごときはむずかしい立場におかれてまいります。よし予算を組めたと仮定いたしましても、結果から見まするならば無意味の結果になるというようなことも生じはしないかという危險性もございます。自由党内閣のいわゆる健全財政によつて、その上に片山内閣追加予算の計上を余儀なくされ、手痛い目に遇つたのは、つい先日のことでございます。從いまして、四半期ごとか、あるいは二箇月ごとに短期予算を組まなければならないような情勢に立ち至らぬとも限らぬのであります。このような時期におきましては、國民は生産公債に應募しようといたしましても、あるいは政府の要請に應じて、信託、定期預金その他の長期預金をしようといたしましても、または労働階級が一生懸命に働こうと決心をいたしましても、安んじてその要請に應ずることができないのは当然でありまするがゆえに、この欠陷を除去するために、通貨対策に対して何らかの手段を講ずべきではなかろうかと存ずるのであります。  一案を提示しまするならば、生産公債並びに長期預金に対しましては、安定價値計算を採用して、もつて民間の購買力を國家に吸収し、これを建設方面に活用することが必要ではなかろうかと思うのであります。從つて、國益と民益を双方満足せしめて、奔騰いたしてまいりますところのインフレーシヨンに一つのブレーキをかけることが必要ではなかろうかと思うのであります。この点につきまして、政府の考え方を承りたいと思うのであります。  幣制改革については、いろいろと議論されておるのでありまするが、現下の諸情勢におきましては、生産増加速度よりも三倍も四倍も先行する通貨の下落速度を食い止めるには、通貨の切下げ、新円の再封鎖等の非常手段を避けまして、さきに述べましたように、ある種の安定價値計算を採用することが最も妥当であり、それ以外の適当なる処置はないと固く信じているものであります。  次に、この項に関連いたしまして、地方財政に関する政府の所信を承つておきたいと思います。新憲法のもと、都道府縣は完全自治体となつたのであります。しかし、これが裏づけをすべき財政は、まだ國家のもとに行つておるのであります。戰爭中日本の地方財政は、税制の中央集権によりまして、地方でもつておつたものを中央に吸収せられました。しかし戰後になつても、これが地方に還元されておらないのであります。從つて、地方は完全自治体にはなつたのでありますけれども、それを裏づけすべきところの財源をもつておりません。六・三制のために、あるいはその他自分自身の自立のために使う予算に非常に困つている現状であります。從つて政府におきましては、地方財政計画に対しまして何らかの打つ手がなければならぬと思うのであります。  内務省は解体になりまして、地方局はなくなりました。從つて地方財政委員会の構成を見ておるのでありますが、最近承るところによりますならば、この財政委員会におきまして、地方財政改革案ができているということであります。もし、この案をお示しになることができますならば、幸いに存ずるのであります。加えて、その案は今議会に提出になるお考えであるかどうか、これも承つておきたいと存ずる次第であります。(拍手)  次に、生産増強対策について質問をいたしたいと思います。三党政策協定は、生産増強の一策といたしまして、「経済再建並びに生産復興のために重点産業政策をとり、石炭國家管理の徹底を期し、海陸総合的輸送計画の完遂に重点をおき、電力事業の一元化をはかり、さらに必要に應じて石油、鉄鋼、肥料等重要産業に民主的な國家管理を行う」と規定しております。石炭につきましては、片山内閣になつてから、いわゆる三千万トン計画を達成いたしまして、昭和二十三年度におきましては、三千六百万トン計画が、遂行されんとしておるのであります。しかも石炭は、四月一日より國家管理が行われることになつているのでありまして、これは政府の施策に信頼をいたしまして、三千六百万トン計画の達成を念願するものであります。  この際、この産業増産対策に関連いたしまして、電力についてお伺いいたします。わが國には水力は豊富にありまして、完全に電源の開発が行われまするならば、石炭の足らざるところを補つて十分余りあると思うのであります。考えようによりましては、電力の開発こそが私はすべてのものの先決問題でなければならぬ、こう考えるのであります。(拍手)  現在の電力事業を考えてみまするならば、戰爭中発送電関係は、発送電という民有國営の形式によりますところの会社に統合をされております。さらに配電関係におきましては、全國九地区にわかれまして配電会社の設立を見ておるのであります、しかし、これら発送電並びに配電会社の関係におきましては、料金の決定、電力の配分、拡充計画等各種の分野で常に意見の相違がありまして、官僚統制の惡い部面を現わしておるのであります。たとえば、現有設備運営の基本條件とか拡充計画等の事業運営の中心は経済安定本部が掌理し、配電の割当規制の実施は商工省電力局が実権をもつており、他方料金の決定は物價廳に権限があります。発電用治水の使用になれば建設院というような状態であります。このような官廳のセクシヨナリズムにより電力行政の複雑性を強くするとともに、これが非常に電力を豊富にするために大きな阻害になつておるということは、否むことのできない事実であります。(拍手)  次に、わが國水力電源の分布の状況を考えてみまするならば、地勢上本州中央部以東に偏在をいたしまして、石炭分布の状況は主として南北両端地域に偏在をしております。またその上に、各種群小の火力自家発電設備が散在をしており、これらの地域上や組織上からくる不統一な発送電施設によつて、長距離送電の結果多くのロスを出しているということは、いなむことのできない事実であります。また火力炭のむだな使用が行われておるということも考えられるのであります。  これらの技術的な不利が存在し、さらに現在のごとき日発とか九配電会社が分立しておる現状では、さらに能率的な運営を望もうとしても、これによつては望めません。從つて、発送電並びに配電の一元化が必要になつてくると思うのであります。また電力危機に対処するため極力設備の補修を必要とするのであります。しかしながら、これらの費用は相当かかるのでありまして、これは國家的見地から民主的経営に総合いたしまして、國家のもつております資源、資材というのをこの中にぶちこんでまいらなければならぬと思うのであります。しかも電力問題は、ただ單に電力問題としてのみ考えるにあらずして、日本の工業立地計画の関連のもとに考えてみなければなりません。さらには農業電化のことを考えてみますならば、農村問題との関連のもとにこの電氣事業は考えてまいらなければならぬのであります。かく考えてみまするならば、電力のごとき事業というものは、現在はある意味におきまして國家管理の形態でありますが、この國家管理を徹底せしめて國有國営の事業に移すことが、私は当然考えられなければならぬと思うのであります。(拍手)この点につきまして、商工大臣の見解を私は承つておきたいと思います。  しかし、これは根本策であります。いかに根本策はりつぱな議論をいたしましても、應急の事態に対する應急の手当がなければなりません。昨年末起りましたところの電力不足の状態、これがどれだけ日本の産業の発展を阻害しておるかわかりません。根本のものができなくても、應急の処置というものを講じなければならぬと思うのであります。從つて商工大臣にお伺いをしておきたいことは、本年度におきまする電力の需給関係の見透し、並びに渇水期にはいつたときに、この電力不足を、いかなる点によつて民衆に、あるいは日本産業に心配をかけないでやつていけるかという、この自信のほどを承つておきたいと存ずる次第であります。  さらに、わが國経済再建に関連して当面の急務は國内生産であることは申し上げるまでもないことであります。しかしながら、これに並行いたしまして不足物資の輸入ができまするならば、これに越したことはございません。一昨日芦田総理大臣は、周囲の事情は好轉をして、おいおい大量の物資を輸入し得る曙光が見え始めたと言明されました。日本國民はこれが受入態勢をとらねばならぬと強調されたのであります。日本経済再建も世界的関連において処置されるであらうと申されたのでありまするが、これらは日本再建に対して一つの光明を與えるものでありまして、まことに欣快にたえないものがあるのであります。  そこで問題になりますことは、いかなる準備態勢が具体的に必要であるかということであります。準備態勢をせいとは言つてをります。せいとは言つておりまするけれども、いかなる準備態勢が具体的に必要であるかということについて示されておりません。さらに、いかなる形態をもつて外資が日本の國に導入されてくるか、導入の形態を捕促することはできないのであります。すなわち、いろいろな形態において、物資の形において、あるいは経済的援助の形において、あるいは個人資本の投資の形において、いろいろな形態をもつて外資は導入されてくるに違いないと思うのであります。その形態に対する明示がございません。はいつてくる形態が明示されるならば、これに対する受入態勢が明示されてくるのであります。從つて私は、この際総理大臣兼外務大臣にお伺いしたいことは、いかなる形態をもつて外資が導入されるかについて、またこの導入される外資に対していかなる準備態勢を國民は整えたらいいのか、この議会を通じて日本全國民に宣明されんことを望んでやまないのであります。(拍手)  次に、現内閣の労働政策についてお伺いをいたします。芦田総理大臣は、その施政方針の演説において、労働対策に関しては労働組合の健全なる発達を念願し、そのために必要なる対策を考慮中であるということを声明されました。しかしながら、爭議の解決は急務中の急務であります、労働者の生産性を高めることなくしては、日本の再建はあり得ないのであります。この内閣は、迫り來る労働攻勢を阻止する内閣ではありません。眞に労働階級に協力を求めて、この労働階級支援のもとに日本民主化、日本再建に努力しなければならない任務をもつた内閣であると私は思うのであります。(拍手)この観点より、私は二、三の点を労働大臣にお尋ね申し上げたいと思います。  最近わが國労働爭議の傾向を見るに、民間事業よりも、主として官公廳從業員並びに電氣産業といい、あるいは石炭産業といい、國家管理の公共性の強い産業にストライキの頻発を見つつあるのは、一体いかなる理由であるか、お伺いしたいのであります。これは、ただ單に食えないから爭議が起るというぐあいに、簡單に片づけられないと思います。  およそ労働爭議には、迷惑はつきものであります。労働者が労働爭議をなす場合において、その迷惑を苦慮したり、不便を考えたりしては、労働爭議にはなりません。しかしながら、これにも限度があると思うのであります。労働階級が爭議をするのに、これらの世論を恐れておつたのでは、労働階級に保障されましたところの團結権、爭議権は事実上空文になつてしまうのであります。從つて、國家公共事業だからと言つて、一概に爭議行為はまかりならぬというわけにはまいりません。爭議は爭議を行う労働者自身において決定すべき問題と思うのであります。  しかしながら、労働階級の爭議権の行使にも一つの制約がございます。すなわち憲法においては、勤労者に與えられたる基本的人権として、團結権、團体交渉権、罷業権等はこれを認められておるのであります。從つて、労働階級がその権利を行使することは異議のないことでありますが、しかし憲法第十二條には、「この憲法が國民に保障する自由及び権利は、國民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、國民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」という規定があります。この規定の面より、ある程度の制約を受くべきだと私は認めなければならぬと思うのであります。かつての警察國家、彈圧國家の時代においてはいざ知らず、民主國家、奉仕國家と國家の機構が変つてまいりました上には、なおさらこの感を深くするのであります。特に官公廳並びに公企業における爭議権の行使については、眞劍にこの問題が考慮されるのであります。  すなわち、官公廳に働きまするところの從業員には二つの面があると思います。一つの面は、自己が主権者たる立場においての立場であります。それと、その主権者たる自己が形成する國家の使用人となつておるという立場の二面があるということを忘れてはならぬのであります。このことは、公企業に働く從業員も同樣であると思うのであります。かかる立場における要求は、自分みずからを自分で責める結果になつてまいるということを忘れてはなりません。統治権者である自分が、統治権行使のための行政部門の公務員として働いておる。このことを忘れてはならぬのであります。從つて公務員は、一部に奉仕するのでなく全体に奉仕するということであれば、おのずからここに爭議の限度、限界が現われてこなければならぬと思うのであります。  すなわち政府に対して爭議をなす場合、これまた考えなければならぬことは、自分が形勢しておる國家の行政部である政府に対して爭議をなさなければならぬということになる。でありますから、ただ單に食えないから爭議をやるということでは片づけられぬと思うのであります。その根本を糾してまいらなければならぬと思うのであります。すなわち、自然発生的な要求の爭議として片づけてまいるわけにはまいりません。その根本を糾し、國家のあらゆる機関が日本民主化のために、日本経済再建のために動員せられるようにしなければならぬと思うのであります。現に展開されつつある全逓、電産、この爭議が社会公共の福祉に及ぼす影響を考えれば考えるほど、当事者の反省を望んでやまないものがあります。そのことが國家機構、殊に統治権を麻痺せしめ、國民全体に大きな迷惑のかかつておるという事実も忘れてはならぬと思うのであります。  特に政府にお考え願いたいと思いますことは、政府は國会より選ばれた行政部の代表として行政機構に携わつておるのでありますが、その政府が行政権の行使をするにあたつて、末端の者が爭議をやつておるということは、明らかに末端の從業員より政府自身が彈劾を受けておる形式があるということを断じて忘れてはならぬと思うのであります。  今日本は民主革命の途上にあることは、先ほど申し上げた通りであります。日本民主化は、國民に対する歴史的任務であります。これは一内閣、一政党の問題ではありません。日本國民全体の問題であります。考え方によりましては、政府を先頭として、ポツダム宣言を忠実に履行するために、日本の國民が一体となつて日本民主化に努めておる姿が今の姿であると言つても過言でないと思うのであります。(拍手)そうして國際信用を回復する、このことが國家の信用を回復するゆえんであると思います。かく考えてまいりまするならば、今起り來つておりますところの労働爭議についても、打つ手はあるはずだと私は考えざるを得ません。  現内閣は、組閣と同時に労働爭議に直面をいたしました。しかもそれは、自己の内閣を中心として、行政権の行使のために活動する分野における爭議の解決をしなければならぬ立場に立つておるのであります。勤労者の協力なくしては、生産は向上せず、日本経済の再建は不可能であります。日本民主化は徹底をいたしません。さいわいにして、爭議に多年の経験があり、勤労者側にあるわが加藤勘十君が労働大臣のいすにあるのであります。その意義重大なるものがあると私は考えます。そこで私は、先ほど申し上げました通り、最近の官公廳並びに公企業の爭議に対しての労働大臣の見解を承つておきたいと思います。  次に、最近の労働爭議に対しまして、それが政治的意味を含んでおるからいけないという議論を聞くのであります。政治的ストライキ排撃の声を聞くのであります。現に行われつつある爭議についても、政治的ストライキの傾向なしとせずという世論を聞くのであります。私は、ストライキが社会革命の手段として用いられることに対しては、絶対に反対であるのであります。私どもは、無血の間に、議会を通じて日本の民主主義革命を達成してまいらなければなりません。從つて、先ほど申し上げました通り、政治的ゼネラル・ストライキというものは、絶対にこれを排撃しなければならぬのであります。  しかし、現実日本の経済情勢並びにインフレ高進の情勢というものは、労働者の好むと好まざるとにかかわらず、経済的要求が変じて政治的要求になるということも、いなむことのできない事實であります。從つて、頭からあの爭議は政治的であるからといつて排撃するわけにも私はいかぬと思います。その根本を糾してみなければならぬと思うのであります。(拍手)從つて私は、この観点よりいたしまして、経済闘爭が政治闘爭に轉換せんとしておりまするこの際に、政府にお尋ねいたしたいと思いますることは、労働組合側は、政府が労働組合法、労働関係調整法、労働基準法を改正するにあらずやと心配をいたしまして、各地に労働者大会を開催して、これが阻止運動に起つておるのであります。三党政策協定は、これらの法律に対しては、健全なる労働運動を阻害するがごとき改惡は行わないと規定しておるのであります。労働大臣は、労働関係諸法案に対して、この際その態度を明白にされまして、そうして労働階級に一つの安心を與えていただきたいと私は要請するものであります。(拍手)  次に、今回賃金ベースは、千八百円ベースより二千九百二十円ベースに引上げられました。官公廳の從業員に対しましては、この差額を拂うために、追加予算が本議会を通過したのであります。しかも昭和二十三年度予算編成にあたりましては、物價改訂が必然に要請をされております。物價が改訂をされまするならば、賃金ベースはまた変つてくるという現象を呈してまいります。かくのごとき状態が続いてまいりますならば、賃金と物價の惡循環が何度も繰返されて、インフレは高進されていくという結果になります。そこで私は、この賃金と物價の惡循環を断ち切つて、どこで賃金制度を確立して労働者階級に対して生活の安定を與えるか、労働大臣の所見を承つておきたいと思います。  さらに、勤労者にとつて最も重大なものは勤労所得税の問題であります。勤労所得税は、働けば働くほどよけいにとられるという結果になりまして、かえつて労働階級の生産意欲を妨げておるということは、いなむことのできない事実であります。このことにつきましては、一昨日の本議場におきまして、安定本部長官の言明で、これを大幅に縮小するというようなことが言われておるのでありまして、政府の言明を私は信頼いたします。しかし、そればかりでなく、労働者の福利厚生施設についても、もつと積極的であつてほしいと思うのでありまして、これに対する労働大臣の所見を承つておきたいと思うのであります。  次に、労働対策に関連をいたしまして、全逓爭議の経過について承ることができまするならば、まことに幸いに存ずるのであります。全逓の組合におきましては、明二十三日よりストライキにはいるというような傾向が見えております。さらには全官公廳一齊に、二十五日よりは重大なる決意があると言われております。もしストライキが激化されるようなことになりますれば、國家機関が萎靡してまいるのであります。すなわち日本の國家機関に大きな影響を來すことを考え、さらに民衆の迷惑を考えてまいりまするならば、一日も早く政府はこの事態を収拾してまいらなければなりません。私は、この経過並びに収拾に対する政府の御意見を承りたいと思うのであります。  第四点は、本年度の食糧事情の見透し並びにその増産、土地改革について、農林大臣の所見を承つておきたいと思うのであります。  昨年六月片山内閣成立の当時、日本は非常な食糧危機に直面をし、樂観を許さざるものがありましたが、連合軍の好意による輸入食糧の大量放出によつて、その危機を脱し得たのであります。その後農民諸君の供出への協力は、関東・東北の大水害があつたにもかかわらず、三月の十六日には三千五百十五万石の供米を完遂いたしまして、全國各地から遅配・欠配を解消して、本年度の食糧事情に光明を與えております。私どもは、農民の努力並びに連合軍の好意に対して、心より感謝するものであります。しかしながら絶対量は足りません。一体どうやつてこの端境期を乗り切つていくのか、この点も承りたいのであります。  しかも三月一日に、前内閣は供出の事前割当を行いました。そうして農民に協力を求めておるのであります。今まで供出の事前割当を行いましたのは、昭和十八年に供出の事前割当を行つたことがありますが、生産前に供出割当を決定することは非常な重大問題であります。このことは、生産責任を農民が負わされるのであります。事前割当を行うことは、土地の利用、作物の栽培に一種の制限を加えるものであり、また生産物資の自由を拘束するものでありますから、農民にとつては実に重大であります。ある意味から申し上げますならば、この政府の行為は一種の立法行為でなければならぬとも私どもは考えるのであります。  この生産割当について考慮されることは、農業の特殊性であります。すなわち、農業の特殊性、他の産業と農業の違うところは、自然を対象とすることであります。農業生産の方向を決定いたしまするのは氣候温度であります。すなわち農民には、照れば照るなりの心配があり、降れば降るなりの心配があり、吹けば吹くだけの心配があるのであります。從つて、かかる特異性をもつ農業に責任生産制を採用するということは実に重大であるということを私は指摘しなければならぬと思うのであります。從つて、これができるような工作を政府でとらなければなりません。  すなわち農民は、一面において自然と闘いながら生産を増加してまいるのでありますから、この自然の暴圧に抗爭するために、政府は農民に対してある一つの援助を與えてまいらなければならぬと考えるのであります。すなわち、かく考えてまいりますならば、風水害が起つた場合のことを考えてみまするならば、こういつたような予算はあとから出すということでなく、速やかに應急の手段を講じてまいらなければなりません。(拍手)さらには、自然を征服してまいるのでありますから、人力でもつて足らざるところは肥料の増産を行つて、それによつてやつていくという態勢をとらなければならぬと思うのであります。肥料の増産に對しましては相当成績をあげておるようでありますが、まだ十分と言うわけにはまいりません。そこで私は、肥料もひとつ國家管理に移して、肥料産業に当りますところの労働者諸君の生産意欲を高揚せしめておやりになつたらどうかと考えるのでありますが(拍手)、これに対する商工大臣の見解を承つておきたいと思うのであります。  また一面から、農地改革をさらに推進することが農民の生産意欲を高揚するゆえんと存ずるのであります。農地改革は、農村民主化のために第一次、第二次の改革が行われて、現に第二次農地改革が進行中であります。農地改革は、農村における封建勢力打倒のための土地革命であります。一部地主の強力なる反対運動があつたにもかかわらず、百六十万町歩の土地は開放されつつあるのでありますが、まだ六十万町歩の小作地が存在し、不耕作地主の存在を見るのであります。また田畑を解放せしめられた地主階級は、山林によつて封建的な保守勢力の維持に汲々たるものがあるのであります。農村民主化のためにも、さらには生産増強のためにも、農地改革はさらに前進せしめなければなりません。從つて、第二次農地改革終了とともに、政府はさらにそのでこぼこを調整することはもちろん、不耕作地主の耕地の解放、開墾、適地林野の計画的解放、耕地の交換分合等についてお考えを願つておるかどうか、この際承つておきたいと存ずるのであります。  さらに、この際政府に承つておきたいことは、本年度農業所得税の徴収方途に関しまして、相当農民の中に輿論が起きておるということは、見逃すことのできない事実であります。しかも一律課税をやる結果、やみをやつた農民も、やみをやらずにまじめに働いてきた農民も一緒に扱われておるというこの矛盾は、解消されなければならぬと私は存ずるのであります。かかる観点によりまして、農民所得税の大幅軽減はもちろんのこと、今後の政府の政策を私は承つておきたいと思うのであります。  第五は、社会部門に対しまする質問をいたします。戰災者、引揚者、戰爭犠牲者の生活問題、戰災地の復興、さらには海外同胞の引揚促進については、芦田総理大臣が非常に関心を拂われていることを施政方針の演説に伺つたのでありまするが、さらに私は、具体的に各省大臣より承りたいと存ずるのであります。  第一点は、海外同胞の引揚げに関する問題でございます。今日本の國内において解決しなければならない問題は、生産力拡充その他いろいろありまするが、これと同時に解決を急がなければならない問題は、海外同胞の帰還に関する問題であります。海外同胞帰還については、終戰以來連合軍司令部の容易ならざる好意によりまして、海外よりの帰還が順調に進んでまいりましたので、心から感謝申し上げておる次第であります。  終戰三年、海外特にソ連地域には、なお七十五万余名の同胞が残つております。これらの方々は、帰らんとして帰る能わず、一日千秋の思いをもつて、遠く祖國日本の空をながめて泣いておることと存じます。また、最近たびたび開かれまする海外同胞帰還促進國民大会に出席し、あるいは遠く海外に子弟を送つておりますところの親兄弟にお目にかかつて、わが子を思い、わが子弟を思う切なる心情は胸を打たれるものがあります。一日も早くこれら海外同胞を帰していただくことを私は希わざるを得ないのであります。これが政府の重大なる任務と存ずる次第であります。芦田総理大臣は外務大臣を兼ね、この任務には打つてつけの立場にあると思うのでありまして、海外同胞帰還に関しまして、さらにその状況等について承ることができまするならば幸と存ずるのであります。  戰災者、引揚者、戰歿者の遺族、在外者の遺族等の生活については、万全の対策を講ずる必要があると私は思うのであります。殊に戰災者、引揚者の生活対策に関連をいたしまして、消費者の生活を擁護するためにも、消費生活協同組合のごときいわば協同組織をもつて、その組織の力によつてやみとインフレに対抗して、みずからの生活を擁護するの組織体制が必要と思うのでありますが、これに対する厚生大臣の御所見を承つておきたいと思うのであります。  終戰後満三年を迎えんとしておりますが、戰災大都市の復興は遅々として進んでおりません。戰災者は生活苦と生活難に悩んでおる次第であります。私どもは、庶民住宅及び重要産業勤労者の住宅の建設に努力しなければならないと存ずるのであります。これにつきましては、三党政策協定において具体的なものがきまつておるのでありまするが、さらにこの際戰災地の復興並びに住宅問題に対する解決について一松國務大臣の御意見が伺えまするならば、幸に存ずる次第であります。  最後に申し述べたいと思いますことは、敗戰二年有余、われらは、なぜ戰爭が起きたか、なぜ戰爭に負けたかという鋭い批判の上に、新憲法において軍備を撤廃し、戰爭を放棄することを規定しました。これは人類最高の理想であります。芦田総理大臣は、施政方針の演説において、世界がこの最高の理想において同調することはわれわれの熱願であるということを言われました。その通りであります。われらは、芦田総理大臣の言われる通り、自由と平和と正義の支配する世界の建設に対して不断の努力を拂つてまいらねばなりません。  この大理想に進むには、まず國内体制を眞に民主的、平和的な文化体制に建てかえていかなければなりません。またわれらは、これがために闘つてまいつたのであります。われらの努力は連合國の認めるところとなつて、外資導入の可能性を見るにいたりました。わが日本経済の再建も、世界的関連において再建されることになつたのであります。われらは、さらに國内体制を整備確立し、國際信用を回復して、講和会議の一日も速やかなる成立を望んでやまない次第であります。  以上をもちまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)     〔國務大臣芦田均君登壇〕
  21. 芦田均

    國務大臣芦田均君) 淺沼君の質疑に対してお答えいたします。  淺沼君は、三党政策協定を今後具体化し、実現する上において、政府にどういう準備があるかという趣旨の御質問でありました。言うまでもなく、わが國現下の政情におきましては、いずれの政党内閣に立つにしても、一党の力をもつて議会の多数を制することができないのでありますから、必然的に各党の間に政策協定を行う必要が起るのであります。この政策基礎にして、政府がそれぞれの施策を行う必要のあることは申すまでもないのでありますが、すでに具体的に定まつたる三党政策協定の項目については、ただちにこれを実行に移すことができます。またさらに今後その具体化について協議をすべき必要の残つておる問題については、できるだけ速やかにそれぞれの具体案を協定して、これを政策の上に実現していきたいと考えております。  その第二点として淺沼君が質疑されましたのは、憲法精神の普及をどういう方法でやつていくかということでありました。御指摘の通りに、憲法普及会は約一年足らずの日子をもつて解散いたしたのでありますが、その当時主として力を注いだ問題は、國民大衆に向つて憲法精神の普及をするに必要なる講師の養成ということでありました。この点は、國内各地において相当多数の憲法精神普及に從事する講師を養い得たのでありますが、今後はもつぱら、これらの人々の地方における努力にまち、また教育者並びに学校教育等においても、新憲法精神を普及することを現に着々実行いたしております。  第三に、官僚の民主化についてのお尋ねであります。御承知通りに、わが國の今日までの官僚政治は、イギリス、アメリカあるいはフランスのごとく、立憲政治運用に適したる官僚の訓練が欠けております。從つて、新憲法の実施によつてわが國の政治が民主的運用を始めるに伴い、官僚陣においても、この民主政治と調子を合わせた官僚精神の改善を必要とすることは、淺沼君の御指摘の通りであります。そういう意味においても、官僚群の民主化はこの際急速に行う必要があることを痛感いたしておるのでありまして、これとにらみ合わせて、行政機構改革、行政整理——すでに前内閣以來、行政調査部において行政機構の改善並びに行政整理の実行についての案をつくつたのでありますが、この案をさらに再檢討いたしまして、急速にその実現をはかりたいと考えておる次第であります。  なお外資の導入について、施政演説においては今年こそ画期的に多量の物資を輸入し得る曙光を認め得ると述べたが、それは何らか具体的の根拠がある説であるか、今後どういう方向に努力するかという御質問であります。御承知通りに、外資の導入と申しましても、それが物資の形によつて輸入される場合もあり、また純粹のクレジツトの形をもつて輸入される場合もありましよう。連合國の政府の物資が輸入される場合もあり、純粹の民間資本がわが國の産業の中に投資される場合も起り得ると思います。現在までのところ、その形はいろいろにわかれておりますが、最も確実にわれわれがつかみ得ることは、現にアメリカの國会に提出されておる來年度の予算の中に、相当巨額の経費が、あるいは食糧輸入のために、あるいは日本経済再建の費用として新しく計上されておるという点でありまして、これらの数字をとつて一應の計算をしてみても、今年は從來に比して相当多額の物資を輸入に抑ぐことができる。かように私どもは期待をおいておる次第であります。(「輸入だけすればよいというのではない」と呼ぶ者あり)まあ、ちよつとお聽きなさい。  なお最後に、海外同胞の引揚げについて一言いたします。御承知通りに、終戰当時数百万に上つてつた在外同胞のうち、今日残つておるものは、主としてソ連地区にある同胞であります。ソ連地区よりの引揚げについては、再三この壇上から説明をいたしました通り、一昨年十二月のアメリカとソ連との協定によつて、一箇月五万人ずつの引揚げを見る協定成立いたしておるのであります。しかるに昨年の夏、諸君の御記憶の通り、対日理事会においては、この問題を取上げて熱心なる討論が展開され、当時連合國司令部の渉外局より発表された声明にある通り、事情によつては、一箇月の予告をもつて月に十七万名のソ連地区よりの同胞を受け入れる態勢を準備しておる、二箇月の予告をもつてすれば、三十六万名の帰還を一箇月間に受け取るだけの態勢も準備できておるということが発表されたのでありまして、その前後を通じて連合國官憲がわが同胞引揚げのために盡されたる熱意ある協力に対しては、國民が今なお感謝しておるところであると信じます。不幸にして昨年十二月以來、港が結氷するという理由をもつて、本月末日までの間、さきに協定されたる一箇月五万名の帰還を停止することになりました。しかしながら、その期間は遠からず満了するのでありますから、おそらく四月初めより、從來の協定に準拠してソ連地区よりの同胞が帰還することができることと確信いたしております。なお政府といたしましては、この上ともにこれらの海外同胞の帰還を促進するように全力を盡したいと考えておる次第であります。(拍手)     〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  22. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 淺沼さんから、安定本部と各省の間の機能の調整その他についてのお尋ねがあつたと思うのでありますが、簡單にお答えいたしたいと思います。安定本部は、目下の経済再建、経済復興のためには必要欠くべからざるものであることは申すまでもない次第であります。そうして、その機能をさらに発展させていくことの必要なことも、また申すまでもないことでありますが、他省との関係におきまして、あるいはダブるとか、あるいは調整を要するものがありますならば、必要の限度において調整をいたしたいと思うのであります。一方においてその機能をますます発展さすとともに、不要なる摩擦その他についても、これを調整することは十分考えたいと思う次第であります。  それから安定價値計算のことにつきましてお尋ねがあつたと思うのであります。これは前欧州大戰後、ドイツにおいて一時採用せられたものでありますが、日本現状についていろいろ考えてみますと、技術的その他の点においてなお困難と思われる点が多々ありますので、もちろん檢討はいたしたいと存じますけれども、目下これを採用することは考えておらぬ次第であります。(拍手)     〔國務大臣一松定吉君登壇
  23. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 淺沼君より戰災復興並びに庶民住宅の建設についての御質問がありましたから、その点についてお答えを申し上げます。  住宅の不足は資材・資金の支障のために今日まで思うように進捗いたしておりませんことは、まことに遺憾でございます。戰災者並びに引揚者の数が非常に多く、現今においても住宅の不足が四百万戸ということであります。しかして、今日まで建設を了しましたものはわずかに七十万戸、しかも一般庶民住宅におきましては、わずかに十四万戸ぐらいにすぎないということであります。かくのごとき計算をもつていたしますならば、今後少くとも十年以上の日子を要しまするので、はなはだ不都合だと私は考えております。私が建設院総裁という職責を全うする上からいたしましても、一日も速やかにこれが支障を解消いたしたいと決心をいたしておるのでありまして、本年は少くとも十万戸、すなわち九万九千戸の家を建てたい、國家の費用をもつて、それだけのものをいたしたいというので、ただいま相当の予算を大藏省の方に提出いたしております。また民間におきましては、一箇月に少くとも三万三千戸の建設を予定いたしておりまするから、これを一年に計算いたしますると、一箇年に五十万戸の建設を了する計算になります。そういたしますると、四百万戸を五十万戸で割りましても、八箇年の建設の日子を要しますので、これらの点につきましては、でき得べき限りの最善努力を盡しまして、一日も速やかにこの弊害を除去いたしたいと、かように考えておるのであります。(拍手)     〔國務大臣加藤勘十君登壇
  24. 加藤勘十

    國務大臣(加藤勘十君) ただいまの淺沼君の御質問のうち、私に関する部分についてお答え申し上げます。  御質問の第一の要旨は、現在起りつつある爭議の中で、官公廳職員諸君や、石炭とか電力とかいうような主として公共事業に関する労働者諸君の爭議が多いのはどういうわけか、こういうような点にあつたと思うのであります。さらにこれに加えて、官公廳、殊に官廳職員諸君は、一面においては主権者としての國民の立場に立ち、他面においては、この主権を享有する國民の信託によつて行政事務を掌る政府の使用人としての立場と、この二面の立場があるが、これらの点に対する見解はどうであるか、このように伺われました。  第一の官公廳職員並びに公共的性質をもつた從業員諸君の爭議がことさらに多い、この御見解に対しましては、今日の日本経済的環境のもとにおきましては、賃金とか俸給とかいう定まつた所得によつて生活をしておる人々は、非常に経済的に困雜な状態におかれておるということは、淺沼君御承知通りであります。從つて、爭議は全面的に増加いたしております。ひとり官公廳職員もしくは公共事業の從業員諸君の爭議だけが殖えておるのではないのであります。ただ、これらの公共事業の從業員は、事業の性質國家的に重大であるという点から大きく社会的に取上げられておるという点で殊に目立つと存じます。また官公廳職員諸君の問題につきましては、今日の法律においては、非現業官廳の職員諸君は爭議権をもつていないのであります。從つて、爭議権をもたないこれら非現業官廳職員諸君が何か少しく動かれますると、それが非常にきわだつて大きく社会的に反映して見えるという点が、淺沼君が御心配になつたような状態に見えたことと思うのであります。しかしながら、いずれにいたしましても、このような事態に対しては、私どもは、なぜこういう形態が起つてくるかということを本質的に檢討いたしまして、極力こういう事態の起らないように具体的なる対策を講ずる必要があるということは、申し上げるまでもございません。  ただ一言お断りを申し上げておきたいことは、今日までの、殊に戰爭前までの官公廳職員というものは、まつた行動の自由を拘束されておつたということ、さらに公共事業の從業員は、さまざまな制約のもとに、法律によつて禁止されてはおりませんでしたが、実際においては爭議の行動をとることができないような環境のもとにおかれておつたのであります。從つて、戰後御承知のごとき民主主義の澎湃たる風潮のもとに、過去の生活への反動現象として反撥事態が生じてきたということも、われわれは今日の時代において一面諒としてみなければならぬ点であるかと存じます。從つてわれわれは、こういう事態に対しては、これらの官廳職員は、淺沼君が指摘されましたような自己の二面的性格並びに今日の日本の置かれたる内外諸般の情勢に鑑みて、十分自省せられる段階に逐次はいつてきつつあるということも、また否定すべからざる事実であると考えるのであります。(拍手)  第二の御質問の趣旨は、今日のストライキがいきおい政治的に発展していくおそれがありはしないか、また経済的要求から生れたストライキも、政治ストライキ化すおそれがある、あるいはそういう経済性質とは別個な、政治的意図に基く爭議があるがごとくに一部傳えられておるがどうか、こういう御質問であつたと存じます。この点につきましては、私は今日のすべての爭議を通観いたしまして、何と申しましても、今申しますような経済的窮迫状態が労働者諸君を爭議に駆り立てておるということは否定すべからざる事実でありますけれども、経済政治との関連、殊に今日の経済諸般の現象は、政府政治的施策と相まち、また緊密なる関連をもつておるという点から、いきおいその要求が政府に向つてなされる、あるいは直接に事業体に向つてなされますけれども、その事業体がいきおい政府政治的施策に頼らなければ解決ができないという点から、政治的性格をもつてくるように見えます。けれども、この点はあくまでも経済的爭議として扱うべきものであると考えます。また一面、もしこの爭議がたといその形は小さいものでありましても、労働者のそうした経済的な要求から生れたものでなく、政治的に別個な意図によつて指導せられ、あるいは別個の政治的目標をもつて行われるものであるとしますならば、淺沼君の指摘されましたことく、わが國の今日の段階が、民主主義革命を平和手段によつて遂行しなければならぬという段階から、これは断じて許さるべきことではないのであります。(拍手)この点に対しましては、われわれもまた淺沼君と同じ見解を有するものであります。  また第三の、今日のインフレ下において賃金と物價との惡循環を見るようなことではいけないではないか、この点に対して、どうしてこれを切断するか、このような御趣旨であつたと存じますが、御指摘の通り、賃金と物價が——もし賃金が名目賃金だけの上昇でありまするならば、私は淺沼君御心配の通りであると存じます。從つてわれわれは、名目賃金だけの引上げは、インフレ高進下においては、かえつてインフレを高進せしむる以外の何物でもない、ゆえに、当然どうしてこの賃金を実質的につり上げるかということが考慮されなければならないと存じます。その点において、私どもは実質賃金を向上せしむるという点から、先ほど淺沼君の御指摘になりました通り、勤労所得税の免税点の大幅引上げ——後に大藏大臣からお答えになるであろうと存じますが、こうしたことや、またその他勤労者に対する生活の実質を補給する意味において物資の裏づけを行う福利施設を具体的に講ずる、こうしたことによつて、われわれは実質賃金の引上げによつてインフレーシヨンの高進下における賃金と物價との惡循環を断ちたい。これがために、われわれは官廳從業員諸君全体に通ずる具体的な方策を目下構想しております。いずれ近い將來に皆さんの前に発表し、皆さんの御批判を受けることにいたしたいと存じます。(拍手)  最後の労働関係諸法規の問題についての御質問でありましたが、前内閣以來、この労働関係諸法規の改惡の問題について、全労働者諸君の間には、どこからどういうように出たかは存じませんが、これが労働者の既得権利である團結権であるとか、爭議権であるとか、その他権利を剥奪、減殺するような改惡が行われるのではないかという危惧の念が、非常に廣く予想外に深まつているのであります。從つてこうした全労働者諸君の間に危惧と不安の念がもたれたこの誤解は、当然一掃されなければならない。このことから、この内閣成立にあたつての三党政策協定の中で、健全なる労働組合運動を阻害しない、労働関係諸法規の改惡は行わないということが協定されたのでありますが、私は、そもそも労働組合法にしましても、労働基準法にしましても、労働関係調整法にしましても、その立法の根本にさかのぼりまして、これらの諸法案は労働者の基本的な権利を擁護するとともに、その義務を規定したものでありますから、この立法の当初にさかのぼつて、当然今日労働階級の間においても、この点あの点という労働者側から見て改正されなければならぬ点があることを、われわれはこの立法の当初から承知しております。しかしながら、今必要以上の危惧・不安を抱かれておりますときに、そうしたことに手をつけるということは、よかれあしかれ一層労働階級を刺激することになりますがゆえに、これは断じて今手をつけるべきではない、この信念の上に立つて、私はこのような態度を表明することができるのであります。(拍手)もし、たとい將來眞に労働階級が身に必要と感じられるような改正を行う場合におきましても、法律の精神に鑑みまして、労働階級、殊に組織されたる労働者諸君の意見を聽くことなしには断じて手をつけないということをはつきりこの席において申し上げ、淺沼君の御了承を得たいと存じます。(拍手)     〔國務大臣野溝勝君登壇
  25. 野溝勝

    國務大臣(野溝勝君) 淺沼君にお答えをいたしたいと思います。淺沼君の御質問要旨は、地方財政の確立は地方自治体の確立の裏づけではないか、かような点から勘案してみるときに、地方財政は非常に危機に陷つているではないか、この点どういうふうに考えるかという御質問が第一点のように思いました。第二点は、地方財政改革に対する私の所見いかんという御質疑のように感じました。  第一点に対しましては、御説ごもつともと思います。新憲法制定されて以來、その線に沿いまして地方自治法が成立され、目下実施中でありますが、單にこの自治法は、その性格が規定されたのみでございまして、その裏づけともなるべき財政的な確立、保障ができておらぬのでございます。かような点から見て、私は眞に自治制の確立をはからんとするならば、自治財政の確立をなし得ずして完全なる自治体の確立はできない、かように思うものでございます。  そこで、この際私は一言申し述べておきたいのでございますが、地方財政の貧困ということはあらためて申し上げるまでもないのですが、特に物價の高騰は労働攻勢を必然的ならしめ、その結果労働賃金、いわゆる給與の引上げ、なお教育制度の改廃による教育費の増嵩、災害・公共事業等によるところの費用の増大等々によりまして、さもなくてさえも地方財政は枯渇しておる上に、民主化を促進する以上の諸制度を実施するために、非常なる困窮を來しておるのでございます。昭和二十二年度の地方財政八百七十有余億の中、そのおもなる歳出項目は、府縣職員費百三十有余億、土木費百五十有余億、教育費の二百三十有余億、勧業費の百四億余こういう莫大なる費用がおもな費目になつておりますが、その上に、ただいま申し上げましたような公共・災害、新教育費、警察の改廃改正等によりまして、いやが上にも、昭和二十年度の費用の倍額ぐらいを見なければ今後の地方財政の運営ができないというはめになつております。  そこで、われわれといたしましては、特にこの財源の捻出につきましては非常に苦慮をしておるのでございますが、この財源につきましては、何と言いましても中央・地方の財政の統一調整、中央の財源の地方への大幅委譲、あるいは分與税の徹底的引上げというようなことをしなければ、とうてい今日の地方財政の補填ができない事情にあるのでございます。われわれはかような構想のもとに、第二の淺沼君の質疑であるところの地方財政に対する所見の一端は、結局われわれは、所得と資産に対するところの負担の均衡を徹底的に調整するために、中央・地方に対しまする税制改革をまず徹底的にやらなければならぬという点が一つ、第二は、所得と資産に対する、能力に應ずるところの課税方針を確立したい、かような点を考えまして、われわれはこの地方財政制度の樹立に邁進したい、かように思つておる次第でございます。(拍手)     〔國務大臣森戸辰男君登壇
  26. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 淺沼君の御質問に対してのお答えいたします。  第一点は、日本再建において文教はきわめて重要な地位を占むべきものであると思うが、いかに考えるかということであります。まことにそうでありまして、民主的、平和的な文化國家を建設するに際しまして、文教の占める地位の重大なることは、たれ人にも異議はないのであります。ただ問題は、たれ人でも認めるこのことが、実際の政治の上にいかに実現されるかということが問題なのであります。  第二の点は、六・三制の残つた予算はいかになるかという当然な御質問であります。実は、この六・三制につきましては、その完全実施が第一國会で当院の決議となつておるのであります。三党協定の中にも、政治條項の中に六・三制の完全実施が認められております。また新しい内閣の閣議におきましても、それが閣議として決定されておるのであります。私どもは、文化國家の建設の現実の姿は教育國家でなければならず、教育國家の最大の目標は教育刷新の実現であり、教育刷新の大事な、いわゆる急所は新制中学の問題でありまして、この点におきましては地方にも國にも多くの負担をかけており、父兄方、先生方、子供たちにもいろいろ苦労をかけておるのでありますが、ぜひとも実現いたしたいと思つておるのであります。追加予算にこれが盛られなかつたことは、片山内閣以來のいきさつから考えまして、私といたしましても、政府といたしましても、きわめて遺憾に思つておりますので、私どもは、暫定予算の中には必ずこれを組み入れるように最善努力をいたしておるのであります。  この経過から、第三に淺沼君の質問された文教費の優位を認めてはどうかということで、六・三制というきわめて大事な予算すらも、大水が出たり、社会的な波が立つと、いつもうしろに繰りやられるのでは、國民の教育というものができないから、文教費は最小限度を予算に確保することはいかがであるかという当然の御質問であります。過ぐる議会においても、松原議員よりこの御質問があり、参議院におきましても、鈴木議員から同樣の御質問があつたのでありまして、私ども最善を盡してこの方向へと努力をいたし、文教の最低限を予算に認める方向に——これは中華民國その他の憲法にもあるのでありますから、新しい日本の建設におきまして、この方向への大いなる努力をいたしたいと思いますので、皆さんの御協力を得たいと存じております。  第四の点は、勤労者教育並びに大学教育についてのことでありますが‥‥(「簡單々々と」呼ぶ者あり)きわめて簡單に申し上げますが、勤労青年の教育ということは、日本現状においてきわめて大事であります。しかも從來は、國民労校を出た二割くらいの人々だけが上の教育を受けておるのであります。私どもは、六・三制の中学の上の高等学校においては、働く青年の教育ということが軽んぜられてはいかぬ、そこで四月からできまする新制高等学校におきましては、定時制の高等学校を設けて、これらの青年の教育のために最善を盡したいと存じております。そのほか通信教授、夜間大学の開設をいたすことにおきまして、この点でも働きながら勉強できる制度を設けていきたいと存じております。  大学の問題につきまして、民主化におきましては教育の機会均等ということに努力されておりますが、新しい日本の教育は、ただ教育が普遍化しただけでは足らぬので、りつぱな教育と文化の向上がなければなりません。大学の目ざすところは、そこであります。文化國家にはりつぱな大学が必要である。殊に資源と領土乏しく、人口の多い日本には、科学と技術の発達がなければ、日本の再建はむずかしい。殊に経済政治の混乱の時代において、社会科学の発達なしに、これはできません。さらに今日日本の一番困つておりまする精神的の不安状態においては、國民に正義が何であるか、眞理が何であるかを知らしむることが、きわめて大事なのであります。大学の任務はそこにあるので、私どもは、かような大学をつくりたいと思つております。地方におきまして大学昇格、設立の熱意あることを喜ぶのでありますが、私どもは、ただ大学の数が殖えることでなく、りつぱな大学ができるように最善努力をいたしたいと存じております。(拍手)     〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  27. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) 淺沼君の御演説中に私はちよつと席をはずしましたので、あるいは間違うかもしれませんが、私へのお尋ねは、インフレーシヨンに対する防止の対策いかんということと、生産公債の問題であつたかと承るのであります。  インフレーシヨンの防止につきましては、これは何をおいても努力を傾倒しなければならぬ事柄であることは申すまでもないのでございます。從つて、通貨の増発を防止するというためには今日まで努力が続けられたのでございますけれども、今後もなお一層この点に努力をいたしたい。しかも通貨の増発の最大の原因をなすものは、現下の情勢においては財政支出から來るインフレーシヨンでございまして、最も警戒を要するのはその点にあると考へるのであります。從つて、ここにいわゆる健全財政主義というものを堅持いたしまして、どこまでも健全財政主義でいきたいと思うのでございます。  しかしながら、健全財政主義は収支の均衡をはかることでございますけれども、時間的なずれが起ることがしばしばございます。たとえば、昨年末のごときは一應収支のバランスはとれておりましたけれども、年末において相当通貨の膨張を來した。これは収税が思わしくいかなかつたためでありまして、その後税の収納が本年一月以來順調にまいりましたために、從つて通貨の膨張を抑止いたしまして、今日においては相当これを食い止めておるのでございます。  一方において、いわゆる健全財政と申しましても、これは実は國民経済全体が健全でなければ、財政だけが健全であり得ないのでございまして、さような面から申しますると、國家財政と産業資金と國民所得とがきわめて均衡的な状態において循環しなければならぬ。それを願うことは、きわめて切でありますけれども、現下の日本の財政並びに経済の事情がそれをそうせしめないところに非常な悩みがあると申せば申せると思うのでございます。從いまして、一方においては健全財政を堅持いたしますけれども、そのことが金融を圧迫するようではいけない。一方において健全金融を堅持いたしまして、健全財政と相まつて金融の健全を期していく。この点にまた大きな力点がひとつ置かれなければならぬと思うのであります。さいわいにいたしまして、この救國貯蓄運動等、あるいはこの國会を中心に通貨安定対策本部等の御活動がございまして、それがために國民貯蓄の吸収というものが相当な成果をあげております。これはきわめて幸いなことでございますが、これがまた一方において、ほとんどその大部分が國家の財政に吸収せられることによつて産業を圧迫することになつてはならぬ。從つて、これには融資準則等を設けまして、不必要あるいは不急の面に資金の流れることを極力防止しながら、いわゆる健全金融と健全財政と相まつて進行を続けるようにいたしたい、こういうふうな観点から努力を続けておるのでございます。  先ほど、私の不在中でございましたが、お尋ねの中に、いわゆる増産第一主義とインフレとはどんな関係があるかというような御質問があつたかに伺うのであります。これは今日の段階におきましては、私はインフレーシヨンは、ただいま申し上げましたような基本的な方策において通貨の膨張を防ぎ、一方において購買力が購買力化さずし國民蓄積となるような方向へ努力を傾けることはもちろんであるけれども、そういうことのために、一方において増産を阻んではならない。從つて、今日のインフレーシヨンの段階は單に物と金とのアンバランスのみではなくして、一方において、非常に多い人口と非常に少い物との関係において把握されなければならない。さような面において、増産第一というような考え方を片山内閣以來堅持されておるのでございますが、その面がまた積極的にインフレーシヨンというものを防止する一つの大きな途である、かように考えるのであります。(拍手)從いまして、かような観点から、この生産産業を窒息させるようないわゆる健全財政主義であつてはならない。そこにわれわれがくれぐれも注意しなければならぬ点があると考えるのであります。  なお産業の面に必要なる資金が注入せられるということと、結果として増産ができるということとの間に時間的のずれがございまして、その面から一應のインフレが進行するのではないかというような御質問があるかもしれぬと思うのでありますが、これはその通りでございまして、從つて、これは運輸交通あるいは金融等々の総合的な施策においてその時間を短縮いたしまして、増産の結果を早く見るというような方面努力しなければならぬ、かように考えておる次第でございます。  なお生産公債の問題でございますが、これは実は三党政策協定のときに、われわれとは違つた党からお持出しになりましたものであつて、私はこのことについて、ここで十分申し上げることはまだできませんけれども、要するに、從來公債といえば赤字公債という観念がはいつておる。この場合、もし生産性のものであるならば、しかも市場消化ができるならば、すなわち國民蓄積においてまかなえるならば、生産資金というものはこういう面から獲得すべきであるという考えにおいて、このことには同意をいたしている次第でございます。以上、簡單でございますが、お答え申し上げます。(拍手)     〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  28. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) 淺沼君の電力並びに肥料に関する御質問に関してお答え申し上げます。  淺沼君はまず第一点といたしまして、電氣事業の経営形態の問題に関して御質問をされたのでありますが、この問題は、三党政策協定におきまして、電氣事業の一元化という言葉で現われているのでございますが、この電氣事業の一元化という問題がどういう結論に到達するかということは、過度の集中排除法、あるいは独占禁止法、さらにまた外資の受入態勢、そういうようなものを考えて愼重に考慮をせなければならないと思いますが、私といたしましては、目下懸案の電産ストが解決いたしました直後におきまして、この電氣事業一元化の委員会を設けまして、早急に結論をつけていただきまして、それに基いて政府は善処したい、このように考えている次第であります。  さらに第二の点は、電力の昨年度の不足の事情を述べられまして、來年は一体どうするのか、どういう見込み、自信があるかというような御質問であつたと思うのであります。昭和二十三年度の電氣需要状況は、まだ確定的に申し上げることは困難でございまするが、一應需要は年間三百十六億キロワツト・アワーを予定いたしまして、生産増強に対しては重点的に配分をいたす方針でございます。供給力は、最も渇水期に、水、火力におきまして、本年度に比し設備能力二十ないし三十万キロワツトの増強をはかりまして、火力用炭といたしましては、本年度の年間二百数十万トンに対し約三百七十万トンを確保いたしまして、常時相当の貯炭をもち、渇水期におきましても少くとも百万キロワツト以上を確保いたしまして、本年度のような混乱を防止する予定でございます。今後の電源開発につきましては、水力におきましては、既設発電所の維持向上、現在工事中または工事停頓中の発電所の竣工促進、さらにまた貯水池の整備拡充というようなものをはかりたいと考えております。さらに火力につきましては、既設発電所の補給整備及び戰災復興、産炭地、発電所の改良増設、低質炭燃燒のために必要なボイラーの改良等を促進していく方針でございます。なお電氣事業は商工大臣の所管するところでございまするが、経済安定本部、物價廳等とは、それぞれその官制の定めるところによりまして、密接な関係をもつものであることを御了承願いたいと思います。  さらに第三点といたしまして、肥料の國家管理の問題に関して御質問がございましたが、化学肥料につきましては、終戰以來政府は、石炭、鉄鋼等と並んで最重点産業の一つとしてこれが復興、増産に力を盡しまして、官民眞劍な努力の結果、ほかの産業に比べまして著しい生産の回復を示したことは、御質問者御指摘の通りでございます。しかしながら、肥料の需要量に比べますると、まだ大きい増産の必要が存することももちろんであるのでございまして、政府におきましては、これが増産になお一段のくふうを講じたいところでございます。しかしてこの増産のためには、化学肥料に対する資材、動力、特に電力、輸送力、資金等の配当の増大と、これをば生産化する肥料工場側の整備とが必要であると思われますので、目下これらの各事項につきまして、増産上いかにせば現実的に実効が上るかということを綿密に檢討中でございます。三党政策協定にもうたわれました肥料の國家管理も、またこの線に沿うて早急に檢討して結論をつけたいと考えている次第であります。(拍手)     〔國務大臣冨吉榮二君登壇
  29. 冨吉榮二

    國務大臣(冨吉榮二君) 淺沼君の御質疑中全逓爭議に関しまする点に対しお答えをいたします。昨年五月、松江の全逓の全國大会におきまして、最低賃金制度の確立の闘爭を決議いたしまして、その要求貫徹のために地域闘爭方針を決定いたしたのであります。その方針は、從つて昨年の十月ごろから本年初めにかけまして、熾烈な闘爭となつて繰返されたのであります。爭議の形態は主として職場離脱、安全通信等の方法をもつてやられてきたことは、皆樣御承知通りでございます。  次に、一月十二日に至りまして、寒冷地手当ほか八項目にわたり中労委の調停案が提出されますると、これを審議するために、全逓では二月五日から湯河原で中央委員会を開きました。その委員会では、調停案を全面的に拒否いたしました。そして、それに対しまして、さらに闘爭目標の中に、加藤君お述べの通りの労働諸法規の改惡反対という決議事項を挿入いたしたのであります。そこで、今までのいわゆる地域闘爭方針を一歩進めまして、これを中央において統制しつつ強力に闘爭を展開することと相なつたのであります。右の方針の決定によりまして、二月二十五日から三月十九日に至る間に爭議を起しました局数が六千百四十九局であります。爭議に参加しました罷業人員が二十万二千四百六十五人と相なりまして、全逓從業員の約半分に達しておるのでございます。これは爭議形態といたしましては、一番長いので七十二時間、一番短いので三時間という罷業で、全体を通じましては二十四時間ストというのが爭議の形態でございます。  そのために非常な御迷惑を國民各位におかけ申しておりますることは、当局としてまことに申訳ないところでございまするが、その後におきまして、私就任以來なしました対策につきまして一言お答えをいたしまするが、三月十一日に、全逓の組合に対しまして、罷業時における業務確保の問題と、それから罷業時における爭議行為についての申入れをなしたのでございます。続いて十三日に至りまして、先ごろ諸君の御協賛を得ました新しい賃金水準を内容といたしまするところの申入れをいたしたのでございますが、遺憾ながら現在のところでは、これらの問題に対して組合側の了承を得るに至らないのでございます。そういたしまして、十五、十六、十七、十八の四日間にわたりまして、双方いろいろと相談をいたし合つておりまするが、未だ妥結点に到達していないことは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。しかしながら、この給與が決定せられた経緯に基き、さらにまたわが國の現在おかれておりまする情勢にも鑑み、労働運動の將來の展望を考察せられまして、良識と叡智とをもつところの全逓從業員は、必ずや政府の意のあるところを了承されて、よりよき円満なる解決を見ることを、諸君とともに期待いたしたいと思います。(拍手)     〔國務大臣永江一夫君登壇
  30. 永江一夫

    國務大臣(永江一夫君) 私に対する御質疑にお答えをいたします。  第一は、本年度の主食の需給関係について御質問がございました。本年度主食の完全なる配給が行われるかどうかということについては、各方面非常に御心配になつていることと存じます。大体主食の配給の根幹をなしまするものは昨年産米でありまするが、御承知のように、昨年産米の供出割当三千五十五万石につきましては、すでに総理より明らかにせられましたように、全國の農民諸君の熱意をもちまして、本年三月十六日に一〇〇%の完遂を行いましたことは、私の最も欣快に存ずるところであります。この三千五十五万石の供出完遂を根幹といたしまして本年の当初におきまして計画をいたしましたところの大体の需給関係から申しますると、本年度内におきまして約百八十八万トンの不足を見越しておるのであります。この中で、連合國の好意によりまして、本日までにすでに五十五万六千トンの外米の放出許可がございました。從つて、これらのものを総計いたしまして、四月から六月までの大体の需給関係を申し上げてみますると、今申しましたような状態で、終戰以來初めての最も惠まれたる條件におかれたわけであります。  政府のただいままでの所有高は、凍結米の三百五十万石を除きまして、大体千六十万石というものを政府は所有いたしておるのであります。これに四月から六月までの甘藷、馬鈴薯等、これらの供出を予想いたされまするものが、確実なところ六十五万石でございます。從つて、四月から六月までの政府が主食として供給いたし得る数量は千百二十五万石でございます。これに対しまして、四月から六月までの所要量は千三百三十万石でございます。この中で、七月までの最低持越量を考慮いたしまして、約三百万石不足であります。しかしこの数字は、外米の放出の全然ないという数字の上に立つておるのでございまして、四月から六月まで、政府はさらに連合國の好意に訴えまして、引続き外米の放出許可を得る見込みであります。大体三百万石の不足は、米に換算いたしまして四十五万トンでございますが、從來の放出許可の状態から申しまして、この四十五万トンというものは、四月から六月までに十分に放出許可をいただく可能性がございますので、四月から六月までの主食の配給に関しましては、從來のような欠配・遅配はないということをここで申し上げることができるのであります。(拍手)  さらに七月以降について申し上げますると、七月から十月までの間におきましては、新しい麦の生産、輸入食糧の放出見透し等がまだ明確ではございませんけれども、米について申し上げますると、七月当初の持越高は、昨年の倍近い数量を確保する計画でありまするから、十月末までは、大体主食の配給に関しましては非常に明るい安全なる見透しをもつておるということを、ここに重ねて申し上げる次第であります。(拍手)  第二の御質問は、農民諸君に対して事前に割当を行つた点についていろいろ御注意がございました。この点は、いろいろ議論もあるところでございまするが、諸種の事情を勘案いたしまして政府が事前に割当を行いました以上、政府といたしましては、あくまでも農民諸君の御協力によりまして、この事前割当の数量が完全に供出せられるようにお願いをいたしたいと思います。なおこれにつきましては、淺沼君から御注意がありましたような、諸種の災害の事前防止等についての予算措置とか、あるいは農業生産資材の確保等につきましては、政府は格段の努力をいたしてまいりたいと思います。  第三の点は、農地改革徹底化でございます。これは御承知のように、三党政策協定によつて推進をせらるべきものでありまして、ただいま政府といたしましては、第二次農地改革を実施中でありますから、できるだけまず当面第二次農地改革を完全に行いつつ、その進行過程におきまして、諸種の方面からこれを檢討して、なお農地改革徹底を行いまするために、小作地の自作化、あるいは農地の交換分合の徹底、あるいは平地林の解放・開墾等を推進いたしまするために適切なる具体案を立てまして、政府方針を明らかにいたしたいと存ずる次第であります。(拍手)     〔「所得税の答弁はどうした」と呼ぶ者あり〕
  31. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 簡單でありますから、自席から発言をお許し願います。     〔「所得税の答弁をしないか」と呼び、その他発言する者あり〕
  32. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 靜粛に願います。淺沼君に発言を許しました。
  33. 淺沼稻次郎

    淺沼稻次郎君 各大臣の答弁を伺いまして、必ずしも十分というわけにはまいりません。まだ聽くべき幾多のものをもつておりまするが、芦田総理大臣を筆頭といたしまして各大臣の、祖國日本の直面せる経済危機を突破して民主日本建設に邁進せんとする熱意、意欲はよく了承することができました。(拍手芦田内閣が三党政策協定の線に沿いまして、そうして閣内一致してこの難局突破に当りまするならば、社会党はあげてそれに協力を惜しまないものであるということを……(拍手)心より念願をいたしまして、質問を打切ります。(拍手)     —————————————
  34. 安平鹿一

    ○安平鹿一君 國務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十三日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  35. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 安平君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十四分散会