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國務大臣(一松定吉君)
山崎君の御
質問のうちで、
厚生省に
関係いたしまするおもな点についてお答えを申し上げます。
そのうちでも、
壽産院に関しまする問題は、ただいま司法大臣から、その大体の御答弁がありましたので、私に関する点を主として申し述べたいのでありますが、一体、ああいうような問題の起こりまする
原因は、乳兒の預り所というようなものが十分に取締られていなかつたということが、
一つの
原因であろうと思うのであります。これらの点に対しましては、
政府として、この取締りに関する法規が完全でなかつたことが、はなはだよくないことでありまするから、こういう点に対しましても、十分に取締りの法規を制定いたしまして、取締り
方面において万遺憾なきを期したいと思います。これと同時に、こういう
方面に子供を預けるということに立ち至つた動機、
原因は主として
生活難のためもありましようが、
壽産院における
事件に限りましては、どうも不義の間にできた子供がその多数を占めておるかのごとく感じられるのであります。こういうような子供は、どうかというと、
母親はそれらの子供を一日も自分の手もとに置くことをきら
つて、世間体を繕うために、人知れずその子を捨てる、しかも、それが殺されようが、虐待されようが、われ関せず焉というような態度であ
つて、むしろ、殺され、もしくは死んだことを喜ぶかのごとき
状態にあることが、はなはだ遺憾でありまして、そういうようなことが、乳兒を預か
つておる者をして、さような
犯罪を容易ならしめるということがあるのではなかろうか、こういう点も、大いに私どもは憂慮いたしております。
これらの点につきましては、おのおのの、いわゆる人々の性の問題に関するものでありまするから、これは、今法規をも
つて取締るというようなことはできませんが、
山崎議員の言われましたように、いわゆる産兒の調節とかいうようなことの知識をこれらの人がもてば、そういう不義の子供は自然になくなるのではなかろうか。もし、あるといたしまするならば、それを産むについては、
山崎議員の仰せられるように、
憲法において保護せられているがごとく、いわゆる産んだ子供は必ずこれを育てなければならぬ。そうして、健康にして、いわゆる
文化的の子供を育て上げるという
覚悟がなければならぬ。産まないというようなことにすることが一番よいのであるけれども、しかしながら、そういうような遠大の
考え方をも
つて子供を産むとかいうことは、なかなか今日の実際上行われないことであるから、自然にそういうようなことになる。
そこで問題は、そういうように生れた子供を、
國家が救いの手を伸ばして、なるたけこれを今のような残忍な行いのないようにすることについては、託兒所をたくさんこしらえるとか、ありは乳兒の預り所を増設するとかして、しかも、そういう所に子供を預け、もしくは保育のできるようにするのには
國家が手を伸ばして、費用を出して、そういうような人が容易に——自分の産んだ子供を育てることができないときにそういう場所へ連れて行くのにも、費用もかからない、しかも手続きも簡易であるというような
施設をすれば、今言うような
原因は、多く除かれるのではなかろうか。
そういたしますると、それは問題は、結局
國家の
予算の問題である。これを押し拡げてまいりますれば、いわゆる
生活保障法の完全な実行、履行だというようなことにまで押し拡げてなければ、われわれの
考えている通りの理想を現出することはできません。でありますから、こういう点に対しましては、
厚生省といたしまして、いわゆるこれらの乳幼兒ばかりではありません。失業者にいたしましても、あるいは老人等にいたしましても、廃疾者にいたしましても、これらの人を保護するという
方面においては、どうしても
社会保障の
制度を拡充強化しなければなりません。そこで
厚生省は、その点に大いに思いをいたしまして、委員会等をこしらえて、そういうふうな大体な成案は得ております。しかしながら、これをほんとうに実施面に移して実行しようといたしますと、少くとも四千億円の金がなければできません。わが國の現在の
状態からすれば、とうてい行われないことでありますから、今あなたのお
考えのように、もし、そういうものができたとすれば、除々に
予算の許す範囲内において、一歩々々前進するということが必要であろうと思いまして、そういうようなことについても、今私はしきりに
調査研究をして、そうして
國会の御承認を得ようというような
考えをも
つておるのであります。さようにひとつ御了承を願いたいのであります。
それからいま
一つ、これらの者に対する生存権の擁護という点に対しまして、
政府として足りないところは——たとえば薪が足りない、石炭が足りない、従
つて、湯を沸かして子供に湯浴みをさせることができない、あるいは、おむつをこれらの者に十分與えて保健衛星のために資することができない、あるいは
牛乳が不足である、あるいは
乳製品が少いとかいうことは、あなたの仰せの通り、今わが國のすべての物資と欠乏しておるときにおいて、そういうことのあることは、乳幼兒のために、はなはだ悲しむべきことであります。でございますから、こういう
方面に対しましても、でき得るべき限り特に特配を要求するというような手続をとりまして、そうして——あなたの御
指摘になりました、
牛乳の二合五勺では哺育は十分ではないではないかという点については、私も同感であります。でありますから、そういう点については、
牛乳以外に、いわゆる
乳製品というものを今しきりに民間の
方面で研究いたしまして、それができておる。そういうものの試験の結果、害のない、有効適切なものであるというような品物は、なるたけこれを奨励して、そういう
方面にまわしておる
実情でございます。それからまた輸入の懇請をいたしまして、こういうような欠陥を補うような手続をと
つておりますから、今のあなたのような御心配は徐々に撤去せられることであろうと思うのであります。
それから、これらの
乳製品の
責任官廳を、農林省から
厚生省に移してはどうかという御意見は、私もごもつともに思うのであります。しかしながら、これはいろいろな
関係におきまして、ただちにこれを実現することはできませんから、なわ張り争いではありませんが、農林省と
厚生省とにおいてよく熟議を遂げまして、そういうような欠陥を取除くことができれば、その
所管はどちらにあ
つてもよろしいのでありますから、そういうことにひとつ
努力をいたしたいと
考えております。
それから、できた子供をなるたけ温
かく育て上げるというためには、いわゆる母子保護法というようなものを徹底して、産んだ
母親が子供を育てるために
生活のできるようにしてやらなければならぬ。それについては、
母親に何か
仕事を與える、すなわち授産所というものを拡充強化する必要があるのではないかということも、ごもつともでありまするから、そういう
方面は、乳兒の預り所もしくは
乳兒院、
産院等の拡充強化とともに、これらの母子の保護については万全の策を講じなければならぬと
考えておりまして、
兒童福祉法の四月一日からの実施とともに、これらの面にも
努力いたしたいと
考えております。
それから、帝國銀行の椎名町支店の毒殺
事件につきまして、毒藥の取締りは、確かに終戦直後多少緩やかにな
つておるきらいがあります。これらの点に対しましては、十分に取締りを強化いたしますと同時に、今まで毒物の保存だとか、あるいは毒物の授受だとかいう点については
相当取締りを厳重にいたしておりますが、一旦個人の手に渡つたときに、渡つたそれから先に、またその次に譲り渡されるというような点についてまでの、先から先の取締りが十分でないようであります。こういう点に対しまして取締りをしませんと、せつ
かく法規の許す範囲内において取締りを厳重にして譲渡はされたが、それから先に、いよいよそういうものをすぐ惡用しようという者の手にわたるときの取締りが十分でないために、そういうことになるということはあり得べきことでありますので、こういう点に対しましても、よく
関係方面と十分に
調査いたしまして、
かくのごとき不都合をなからしめるようにいたしまして、
社会不安を一日も速やかに除去いたしたい、かように
考えております。(
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