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1948-02-02 第2回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年二月二日(月曜日)     午後三時三十六分開議     —————————————  議事日程 第十号   昭和二十三年二月二日(月曜日)     午後一時開議  第一 國内治安に関する緊急質問山崎道子君提出)  第二 自由討議     —————————————  一、自由討議の問題は、これを定めない。  二、討議者の数及び討議時間   1、各党派割当時間    社会党、自由党、民主党各三十分。    国民協同党同志クラブ各十五分。    全農派有志議員クラブ、第一議員倶楽部各十分。    農民党、共産党通じて十分。   2、各党派は、右割当時間の範囲内において、討議者の数を決定すること。     —————————————
  2. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 日程第一、國内治安に関する緊急質問を許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて右質問を許可いたします。山崎道子君。     〔山崎道子登壇
  5. 山崎道子

    山崎道子君 私は、一昨年七月、生活保護法の審議にあたりまして、不幸なる競争の犠牲者に対し適切なる対策が考慮なされなければ、やがて日本犯罪國家として、遂に救うことのできないことになるであろうということを指摘いたしまして、当時の政府に対し注意を促したことがあるのでございます。今日の世相は、私の憂慮したことが悲しくも実現したと申しましようか、その手段方法も、常識では判断のつかざる特殊性をさえ露呈してきつつあるのでございます。朝夕送り迎える家族お互いは、その無事な顔を見ては胸をなでおろすという、実に不安な状態に放置されておる実情でございます。かくのごとき状態が今後なお継続するといたしまするならば、弱き者は心狂うか、あるいはまたみずから自暴放棄となつていき、犯罪の数はますますます加の一途をたどるでありましよう。もし今にして根本的な対策考えられないならば、日本悲劇は破局に突入し終るでございましよう。私は、ここに最近の犯罪種別をあげまして、これが根本的となる政府対策と、その所信を伺わんとするものでございます。  まず壽産院事件帝銀事件列車集團強盗事件一家毒殺未遂事件、離婚された妻がわが子井戸に投げこみ自殺をはかつた悲劇、あるいはピストル強盗集團強盗等、枚挙にいとまない有様であります。殊に、この犯罪の七割は徒党を組んでおり、青少年の犯罪は、全体の六割を占めておる実情でございまするが、政府は、ほとんどなすところを知らざるがごとき有様にして、帝銀事件のごときも、今なお犯人さえ捕われざる状態でございます。新聞紙上によつてみましても、事件は一向に進展していないように見えるのでございまするが、天人ともに許さざる、日本史上空前ともいうべき凶悪知能犯に対し、現在のまま推移することは、まことに民心を不安に陥らせていくと存じまするが、政府当局司法当局におかれましては、いかなる決意方法によつて、この捜査を進めておらるるのでございましようか、責任ある経過の報告と、その決意を伺いたいのでございます。  犯罪の頻発は、まつたく日本末期的現象を呈しつつあるのであります。これら犯罪を個別的にみまするときは、それぞれ事情は違うでありましようが、しかしながら、根本的に共通しておりまするものは、社会生活の危殆に起因するといわなければなりません。すなわちインフレの高進により最低生活権すらも脅かされ、おびただしい人数が、職場離脱者といたしまして街頭にさまよいつつ、きようはかつぎ屋、あすはたかり屋というような、浮草の生活をしておるのでございます。國民生活が不安定である限り、ますます犯罪は深刻化し、その特異性をもつてくると思うのでございます。  第一、この際伺いたいことは、都内における人口動態調査がなされておるのでございましようか。住宅緊急措置令によりまして轉入できない者が、無籍者として、現実には都内に住居しておるのでございます。あるいはもぐり、しろうと宿屋の数は、実に厖大なものと思いまするが、これらの調査も、はたいてできているのでございましようか。賭博常習犯、あるいはやみ屋、かつぎ屋、連れこみ等々の定宿となり、犯罪の温床となつております。一面、当局犯罪調査の隘路の重大なる原因となつておることも考えられるのでございます。この点に対しまして、その調査ができておるかどうか、どういう考えをもつておいでになるかというようなことも伺いたいのでございます。  また、列車集團強盗が頻発しておる実情でございまするが、この集團強盗と申しましても、今の集團強盗の多くは不破雷同性をもつておるのではなかろうか、二、三の者がやる行為に対しまして、わあつとこれに協力するというような点もいうような点も考えられるのでございまするが、こうしたとき、もし車内に武装警察官が配置されておりましたならば、こうした犯罪未然に防ぐことができるのではなかろうかというようなことも私は考えておりまするが、この旅客を不安のどん底に陥れておりまする列車集團強盗などに対しましての、当局の御覚悟を伺いたいのでございます。  この際、民心の不安を救う意味からも、主要駅あるいは列車内、盛り場等武装警官の配慮をもつて、たとい少人数でも、そこに警察力の象徴を示し、安心感を興得るべきであると考えるものでございます。今のところでは、何事が起こつても、だれに訴えることもできない現状でございまするので、國民は制服の駅員を見てさえ非常に安心感、力強さを感じるといわれておるとき、ぜひとも、民主警察として出発いたしました警察当局は、こうした方面にもお考えをいたすべきではなかろうかと私は考えておるのでございます。殊に企業整備も必至といわれておりまする今日、もしその対策を万一誤るようなことがありましたならば、犯罪は遂に収拾することができなくなるでございましよう。  こうして個々に犯罪を見てまいりますると際限もないことでございまするが、私は厚生委員といたしましての立場から、まず壽産院の問題を取上げてみたいのでございます。  第一國会におきまして審議決定いたしました兒童福祉法の総則におきましては、「すべて國民は、兒童心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない。」「すべて兒童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」ということが、はつきりと規定されているのでございます。ところが、現在の兒童生活面におきまして、はたしてこれが活かされておるでございましようか。経済的、社会的事情のもとにおきましては、子を産むことによつて母子ともに不幸に陥ることを知りながらも、何ら保護されることなく産まねばならない悲しい母親が数多くあること、生まれた子は保護されるべき國家社会機関皆無の今日におきましては、母子心中するか、あるいは惡とは知りつつも捨子をするか、これもできない弱い母心は、内情を知りつつも、石川夫妻のような所へ泣きつかねばならなかつたことを知らなければならないのでございます。  現在では不幸な事情のもとに生まれる子にいたしましても、また兩親に愛育されるべき子にいたしましても、およそ生れ出た子は、すべて生きる権利をもつて生まれてきたのでございます。しかるに、赤ちやんに対しての生活條件は、実に最惡の不幸にさらされているのでございます。薪炭不足は入浴を阻み、保健の面におきましてはゼロでございます。生まれてまず第一に必要とするおむつは、やみのゆかたを買つてつくりまするならば、一人前一万円はかかるといわれております。しかも、わずかな綿製品配給すら入手困難でございます。もし母乳なき子であつたならば、それこそ悲惨目をおおうものがあります。配給ミルクでは、とても生命はつなげない。やみで買えば、1箇月に二、三千円はかかるといいます。一般主食は、欠配となれば國民的輿論となるるが、声なき赤ちやんの主食は、牛乳生産が足りないからやむを得ないという政府あり方國民また、われわれの叫びに対しまして、大した反響を示してはくれないのでございます。  最近の新聞は、牛乳ミルク、ララの乳製品、7箇月後の者に與えられる育兒食を加えましても、わずか一日二合五勺で赤ちやんが生きられるのでありましようか。子を産むことを最大の不幸とさえ嘆く母は、なんと不幸でありましようか。しかも、やみには大切な乳製品があり、街の喫茶店では、ミルクが堂々と販売されている。兒童福祉法ができて、國家は來年度におきまして、全國六十箇所の産院、三十箇所の乳兒院の計画があると聞きますが、これではたして事足れりといわれましようか。兒童福祉法が泣くことでありましよう。  壽産院は、氷山の一角が波間にただ現われただけでございまして、この氷山は、いかに大きなものを波の下にもつているかということを創造しなければなりません。声なき者の声を聞く耳を政治はもつべきでありましよう。産院乳兒院保育所母子寮授産所等社会施設公衆機関によつて一日も早く設置し、愛と涙ある法の運営によつて、一刻も早く最も弱き者の救われることに努力が拂わるべきでありましよう。また、奉天を初め中華民國等の各所にあります保嬰院のごとき捨子施設も思慮すると同時に、一日も早く優生保護法の制定によつて、諸種の不幸な実情にある者の産兒調節考えるべきであると存じます。また、生きることの不可能な量より配給のできないミルクを、私はこの際母乳泣き子主食として確保するために、一切他の方面への使用を禁止すべきことを要求いたしたいと存じます。なお、所管が農林省にある牛乳その他の乳製品を、この際一切厚生省へ移管し、もつて赤ちやんの幸福のために解決されんことを切望するものであります。右施設面を強化拡大すると同時に、母親教育必要性をも忘れてはならないと思うが、現在いかなる方法教育が行われているのでございましようか。併せて伺いたいと存じます。  壽産院事件は、変質者ともいうべき石川夫妻の手に次ぎ次と殺された幼き者の霊を悼み、同じ運命の子が再びかかる犠牲にならざるように切に祈る心から、犯罪防止を併せて申し述べたのでございます。これが取扱いに当たつた警察当局あるいは医師の無責任、役所の怠慢も追及したいと存じます。  本來産院は、子を産ませる機関であるのでございます。ところが、社会必要性は、いつか子を預かり、かつこれが養育者への斡旋までやつていたということは、現在の社会生活において、その必要性かくあらしめたと存ずるものでございます。従いまして、幾多の産院、これが國民の要望にこたえまして、この大きな使命を果たしていたということも考えまして、不正な、または惡質な産院は、この際取締りを強化いたしますると同時に、こうしてよき意味社会に貢献いたしておりまする産院施設に対しましては、この際これを施設と認めまして、ますますこれを育成していくよう努むべきだと存じまするが、これに対しましては、いかがにお考えでございましよう。  この壽産院に関連いたしまして、施設のことを強く私が申し上げますることは、先日の、あの離婚されました妻が、わが子井戸へ投げこんで、そうして自殺をはかつたという、実に悲しむべき犯罪をも併せ思いまするとき、ぜひとも弱い母や子のために温かい施設をもちたい。もし、この母にいたしましても、温かい母子寮施設が手を拡げて待つていてくれましたならば、そこに安心して働く授産施設がございましたならば、決してかわいいわが子を殺すようなことはいたさなかつたと思うのでございます。(拍手)こうして今までは、できたものを検挙するとか、犯罪にいたしましても、そういうあり方重点がおかれました。これからの日本は、ぜひとも未然に防ぐ方へ重点をおいていただきたい。医療にいたしましても、臨床医学から予防医学へ、犯罪から防犯へ重きをおきまして、根本に流れておりまするところの生活不安除去に、政府は根本的な対策をいたさるべきだと私は考えるものでございます。  次に、今日國民道義頽廃をしておりますことが、犯罪の続出の大きな原因となつておる。これらの方針は、ただいま申し上げましたように、未然犯罪を防ぐとか、あるいは施設を強化するとかいう方面重点をおいていただきたいことを強く要求いたしますると同時に、従來の軍國主義権力政治の時は別といたしまして、日本平和的文化國家として再建さるべき基本方針が決定されました今日、國の予算といたしましても優先的に文教費並びに厚生産利の面へもつと重点がおかれるべきだとおもうが、今日なお、大切なこれらの予算が軽く扱われておる憾みがあることを遺憾に思うものでございます。首相の施策方針演説においてさえ、社会施策の面にはほとんど触れていなかつたというようなことも、こうした点の端的な一つの現れではなかろうかと、私は残念に思うものであります。  私は、これからぜひお願いしたいことは、國民が、新しい日本國民といたしまして、お互い協力し、勤労いたしますると同時に、お互い文化恩惠に浴していくことのできますように、すべて不幸な人もみずからの罪のふちに陥らなくとも、みずから惡としりつつ、そうした点へ落ちていかなくとも國家施設においてこれが救われるように、國の予算あり方といたしまして、非常に苦しいことは私よく承知いたしておるのでございます。けれども、これを押して私が要求いたしたいことは、この際思い切つて國民生活安定の観点に立ちまして、社会保障の確立が望ましいのでございまするが、政府におきましては、その用意ありや否や。これを併せてお伺いしたいのでございます。  かくいたしまして、社会施設を完備し、あるいは民心の安定の施策をいたし、これと同時に、犯罪の発生を防ぎ、検察当局を鞭撻いたしまして、社会の不安に陥れておりまするところの凶惡なる犯人の一日も早く検挙されんことを心から祈りつつ、民心安定、國内治安維持に関するその御覚悟決意を、所管大臣にお伺いをいたしたいのでございます。これをもつて私の質問を終りたいと存じます。(拍手)     〔國務大臣片山哲登壇
  6. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 山崎君の國家治安維持に関する御熱心なる御議論については、まつたく同感であります。政府といたしましても、この問題を重要に考えまして、全力を盡して國家治安を維持したいと考えておるのでありますが、以下、少しく私の所信を申し述べまして、皆さんの御協力を仰がなければ、なかなか乗り切りに困難を感ずるという点を申し上げてみたいと思うのであります。但し、これは責任を轉嫁するという意味ではないのでありまして、現在の非常に重要と考える私の所信であります。  第一は、今回の戦争が各國に與えた打撃であります。今までの戦争と違いまして、各國の生産力経済力、こういう方面に非常な打撃を與え、かつ、その損失予想外に大きくて、生産復興に非常な障害を與えておるという点であります。予想に反しまして大きかつたということは、各國における復興状態を見ましても、よくわかることでありますが、戦争から立ち直るためには何十年かかるであろうかというようなる予想を出しておる人もあります。大体において割合に簡單に立ち直ることができるであろうこういうふうに思われたと思いますが、その予想はまつたく裏切られまして、この復興には最大努力拂つても、なおかつ相当の長年月と莫大なる費用を要するこういうことが、今日だんだんと事実の上において明らかになつてきておると思うのであります。とくにわが國といたしましては、初めて経験いたしましたる敗戦の意識、しかも、それが経済力に與えました損失等考えてみますると、並大抵ではない、容易ならざる大事業である、復興には非常な努力を要するものであるということを、あらためて認識しなければならない状態に押しこめられておると思う点が一つであります。  第二は、わが國といたしましては、民主主義に徹しなければならない。言いかえてみまするならば、民主革命を行つていかなければならない政治の上においてしかり、社会的な諸制度の上においてしかり、すべての機構を一新いたしまして、民主主義國家に立ち直つていかなければならないのであります。すでに憲法で示されております通り、裁判所も、警察制度も、また一般のわれわれの生活態様におきましても、すべて新しき形へ進んでいかなければならないのでありますから、旧態依然たる状態を呼び起すことの復興では、もちろんいけないのでありまして、様相を一変した民主的な新形態をもつて進んでいかなければならないのでありますから、この復興建設には、非常な國民的努力と、民族の歴史的な負担を感じていかなければならないのであります。警察につきましても、今までのような警察制度復興したのではいけないのでありまして、國民自体國家治安を守つていくのであるという民主的な警察制度が望まれるし、裁判制度につきましても、やはり同様な形で、民事訴訟法も一変しなければいけない。刑事訴訟法も、また民法も、刑法も、すべて新しき民主的な形へ進んでいかなければならないのであります。犯罪捜査等につきましても、今までのように、疑問があるから、この人間は怪しいからといつて、やたらにひつぱつてまいつて、その人間を問い詰めて事実をはかすというような、自白強要は排斥すべきでありまして、眞に科学的捜査を新しき捜査方法をもつて犯人検挙を行つていかなければならない。こういうふうな民主的な新しい陣容をもつていくのでありますから、そこに非常な困難を感ずるわけであります。すなわち、一言で申してみますならば、民主革命が平和のうちに進行している途上でありますから、國民といたしましては、非常な努力と困難を感ずるし、また時局を担当いたしております政府といたしましても、大奮闘をいたさなければ、これらの事項を徹底せしむることができないという状態に立ち至つておると考えるのであります。  第三は、生産力の破壊、経済力の異常な低下、損失に加えまして、人口が増加いたしているというてんであります。生産率も増加いたしておりますし、海外引揚同胞が裸一貫で帰られたというような点を総合いたしまして、仕事が少い上に、生産力が破壊されている上に、人口が増加いたしている、こういうような事柄考えていかなければならないのであります。こういうふうな点から考えまして、ここに敗戦國を立て直していくという新しき様相につきましては、國民全体の問題として発足を新たにいたしまして、すべての問題に対しまして、國民的な健闘を顧わなければならない状態に立ち至つていると考えるのであります。  道義頽廃から治安の乱れておりますこと等につきましては、先ほど申しましたように、國民全体の民主的な形をもつていかなければならないのであります。この過渡時代におきましては、犯人検挙にも、今までのようなやり方ではやれませんから、やはり自然遅れてくるというようなことになるでありましようし、また自治警察に対しましては、國家は干渉するわけにはいかない。國家警察のみについて政府責任をもつ。こういうようなわけでありますから、その間の摩擦と申しますか、過渡時代におけるところの空間がありますことは、これはまことに遺憾であります。これをなんとかして補充して進んでいかなければならないと考えて、目下当局を激励いたしまして、努力最中であります。  こういうような状態でありまして、山崎君が御心配になりましたる事柄は、まことにごもつともであります。全力を盡して、犯人検挙から、あるいは、列車の中に強盗の出ることを防ぐ等々の問題につきまして、努力を拂うつもりであります。やみの撲滅につきましても、やみの女のないことを希望する点につきましても、また社会事業費に対しましても、十分なる予算を計上いたしまして、氣の毒なるところの母親子供たちのために相当仕事をなすべきが当然であります。しかし今日は、今申すような過渡時代でありまして、しばらくは地ならし工作のために時をかしていただかなければならないと考えておるのであります。  私の施政方針演説におきまして、社会事業の問題について少しも触れていなつかつたという御批判がありましたが、決してそうではないのであります。眞に文化國家建設のために、眞に平和國家建設のために、文化事業生産保証事業のためには十分努力したいが、しかし、そのためには、今経済的な方面努力拂つて産業復興に力を盡し、インフレを撲滅する方策をとらねばならないのである。これには、はなはだ言い辛いことでありますけれども、國民乏しきをもち合つて、経済的に民主國家ができ上がるように、ぜひとも御協力を願いたい。こういうようなことを私は申し上げたのでありまして、お心持については、まつたく同一であり、その方向に向つて努力しなければならないと考えておる点を十分にご了承賜わりたいと存ずる次第であります。以上をもつて答えといたしたいと思います。(拍手)     〔國務大臣鈴木義男登壇
  7. 鈴木義男

    國務大臣鈴木義男君) 山崎議員の御質問は、近時の犯罪の増加を憂えられまして、これに対して政府対策を問われたのでありまするが、具体的の問題として、壽産院の問題を取上げられたわけであります。まことに嘆かわしい事件でありまして、私どもは、この問題は、刑事事件といたしましては、すでに検挙をし、起訴をいたしまして、ただいま公判に移してある次第でありまするが、かくのごとき産院の生まれる以前の問題が、政治上の問題としては重大であると考えておるのでありまして、その点は、先ほど御指摘のごとく、厚生省協力をいたしまして、でき得るだけ、不祥事件の発生しないように、努力いたしたいと考えておるのであります。  それから帝銀事件が述べられたのでありますがるが、これも犯人がただ一人であつたらしいというところに困難があり、犯跡を残さなかつた、被害者が大部分死亡してしまつたという点に、非常な捜査上の困難があるわけでありまするが、一つは、慎重に、冤罪者をつくることのないように、新憲法の趣旨に則つて捜査をいたしております。古い時代でありますると、見込み捜査ということをやりまするがゆえに、おそらく、すでに数人の被疑者が捕われておるというような状態であつたろうと思うのであります。そのために、非常な過ちを犯し、人権蹂躙というようなことが起こつたのでありまするから、ただいまは非常にまだるつこいというお感じがあるのだろうと思いまするが、あらゆる方面から科学的な捜査の陣を進めまして、間違いのない犯人をあげるべく努力いたしておるのでありまして、その点は御了承を得たいと思うのであります。  なお、列車集團強盗事件の御指摘でありましたが、この点は現地からの報告が十分でありませんで、こちらは被害者を探して調査をいたしておるのでありまするが、新聞の傳うるところは、やや誇張されておるようであります。宮城縣警察部長のごときは、その事実がないようなことを申しておるような次第であります。もし、そういう事実がありましたならば、厳重に処罰いたすつもりであります。  また、人口動態調査を十分しておるかという御質問でありまして、この点は政府といたしましても、できるならば、ある外國でやつておりまするように、全日本國民に、一定年齢以上の國民には市民票というようなものを與えて、そうして、すべての國民がその票をもつておる。それによつて、その人の同一性と住所が明らかになるようにいたしまして、配給関係からも、犯罪捜査関係からも、便宜な取計らいをいたしたいと考えておるのでありまするが、これは非常に金と労力のかかる仕事でありまして、だだ今の政府財政状態においては、それを行うことができない。やむを得ず、申告による調査だけによつておるのでありますので、御指摘のごとく多小の遺漏があろうと思いまするが、でき得るだけ正確なものをつくるように努力いたしておる次第であります。  なお、少年の犯罪が非常に殖えておるのではないか。六割という御指摘がありましたが、それは少し多すぎるかと思うのであります。もつとも、少年犯罪の統計は非常に困難でありまして、裁判に來るものだけならば簡單なのでありますが、警察だけで相談をして帰るもの、その他いろいろありますので、正確な統計は申し上げかねますが、少年犯罪が増合しつつあることは否定できない事実であります。これにつきましては、でき得るだけ少年法を運用いたしまして、実は十八才までをこの少年法で律しておるのでありまするが、これでは不十分でありまするから、十九才、二十才まで拡張いたしまして、これを保護の対象といたしたいと考えておるのであります。なお、少年法を特に改過遷善させるための施設としての矯正院は、非常に全國を通じて不足でありまして、ぜひこれは近き将來に拡大強化いたしまして、決して刑罰というような観念ではなく、教育という観念を中心として少年の改過遷善のために努力するようにいたしたいと考えておるのであります。  その他の点は、すべて厚生省協力していたすべき、刑事政策以上の大問題でありまするから、その点は十分に政治的に考慮いたしまして、ただいま総理のお答えとともに努力するということを申し上げて、お答えといたしたいと存ずるのであります。(拍手)     〔國務大臣一松定吉君登壇
  8. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 山崎君の御質問のうちで、厚生省関係いたしまするおもな点についてお答えを申し上げます。  そのうちでも、壽産院に関しまする問題は、ただいま司法大臣から、その大体の御答弁がありましたので、私に関する点を主として申し述べたいのでありますが、一体、ああいうような問題の起こりまする原因は、乳兒の預り所というようなものが十分に取締られていなかつたということが、一つ原因であろうと思うのであります。これらの点に対しましては、政府として、この取締りに関する法規が完全でなかつたことが、はなはだよくないことでありまするから、こういう点に対しましても、十分に取締りの法規を制定いたしまして、取締り方面において万遺憾なきを期したいと思います。これと同時に、こういう方面に子供を預けるということに立ち至つた動機、原因は主として生活難のためもありましようが、壽産院における事件に限りましては、どうも不義の間にできた子供がその多数を占めておるかのごとく感じられるのであります。こういうような子供は、どうかというと、母親はそれらの子供を一日も自分の手もとに置くことをきらつて、世間体を繕うために、人知れずその子を捨てる、しかも、それが殺されようが、虐待されようが、われ関せず焉というような態度であつて、むしろ、殺され、もしくは死んだことを喜ぶかのごとき状態にあることが、はなはだ遺憾でありまして、そういうようなことが、乳兒を預かつておる者をして、さような犯罪を容易ならしめるということがあるのではなかろうか、こういう点も、大いに私どもは憂慮いたしております。  これらの点につきましては、おのおのの、いわゆる人々の性の問題に関するものでありまするから、これは、今法規をもつて取締るというようなことはできませんが、山崎議員の言われましたように、いわゆる産兒の調節とかいうようなことの知識をこれらの人がもてば、そういう不義の子供は自然になくなるのではなかろうか。もし、あるといたしまするならば、それを産むについては、山崎議員の仰せられるように、憲法において保護せられているがごとく、いわゆる産んだ子供は必ずこれを育てなければならぬ。そうして、健康にして、いわゆる文化的の子供を育て上げるという覚悟がなければならぬ。産まないというようなことにすることが一番よいのであるけれども、しかしながら、そういうような遠大の考え方をもつて子供を産むとかいうことは、なかなか今日の実際上行われないことであるから、自然にそういうようなことになる。  そこで問題は、そういうように生れた子供を、國家が救いの手を伸ばして、なるたけこれを今のような残忍な行いのないようにすることについては、託兒所をたくさんこしらえるとか、ありは乳兒の預り所を増設するとかして、しかも、そういう所に子供を預け、もしくは保育のできるようにするのには國家が手を伸ばして、費用を出して、そういうような人が容易に——自分の産んだ子供を育てることができないときにそういう場所へ連れて行くのにも、費用もかからない、しかも手続きも簡易であるというような施設をすれば、今言うような原因は、多く除かれるのではなかろうか。  そういたしますると、それは問題は、結局國家予算の問題である。これを押し拡げてまいりますれば、いわゆる生活保障法の完全な実行、履行だというようなことにまで押し拡げてなければ、われわれの考えている通りの理想を現出することはできません。でありますから、こういう点に対しましては、厚生省といたしまして、いわゆるこれらの乳幼兒ばかりではありません。失業者にいたしましても、あるいは老人等にいたしましても、廃疾者にいたしましても、これらの人を保護するという方面においては、どうしても社会保障制度を拡充強化しなければなりません。そこで厚生省は、その点に大いに思いをいたしまして、委員会等をこしらえて、そういうふうな大体な成案は得ております。しかしながら、これをほんとうに実施面に移して実行しようといたしますと、少くとも四千億円の金がなければできません。わが國の現在の状態からすれば、とうてい行われないことでありますから、今あなたのお考えのように、もし、そういうものができたとすれば、除々に予算の許す範囲内において、一歩々々前進するということが必要であろうと思いまして、そういうようなことについても、今私はしきりに調査研究をして、そうして國会の御承認を得ようというような考えをもつておるのであります。さようにひとつ御了承を願いたいのであります。  それからいま一つ、これらの者に対する生存権の擁護という点に対しまして、政府として足りないところは——たとえば薪が足りない、石炭が足りない、従つて、湯を沸かして子供に湯浴みをさせることができない、あるいは、おむつをこれらの者に十分與えて保健衛星のために資することができない、あるいは牛乳が不足である、あるいは乳製品が少いとかいうことは、あなたの仰せの通り、今わが國のすべての物資と欠乏しておるときにおいて、そういうことのあることは、乳幼兒のために、はなはだ悲しむべきことであります。でございますから、こういう方面に対しましても、でき得るべき限り特に特配を要求するというような手続をとりまして、そうして——あなたの御指摘になりました、牛乳の二合五勺では哺育は十分ではないではないかという点については、私も同感であります。でありますから、そういう点については、牛乳以外に、いわゆる乳製品というものを今しきりに民間の方面で研究いたしまして、それができておる。そういうものの試験の結果、害のない、有効適切なものであるというような品物は、なるたけこれを奨励して、そういう方面にまわしておる実情でございます。それからまた輸入の懇請をいたしまして、こういうような欠陥を補うような手続をとつておりますから、今のあなたのような御心配は徐々に撤去せられることであろうと思うのであります。  それから、これらの乳製品責任官廳を、農林省から厚生省に移してはどうかという御意見は、私もごもつともに思うのであります。しかしながら、これはいろいろな関係におきまして、ただちにこれを実現することはできませんから、なわ張り争いではありませんが、農林省と厚生省とにおいてよく熟議を遂げまして、そういうような欠陥を取除くことができれば、その所管はどちらにあつてもよろしいのでありますから、そういうことにひとつ努力をいたしたいと考えております。  それから、できた子供をなるたけ温かく育て上げるというためには、いわゆる母子保護法というようなものを徹底して、産んだ母親が子供を育てるために生活のできるようにしてやらなければならぬ。それについては、母親に何か仕事を與える、すなわち授産所というものを拡充強化する必要があるのではないかということも、ごもつともでありまするから、そういう方面は、乳兒の預り所もしくは乳兒院産院等の拡充強化とともに、これらの母子の保護については万全の策を講じなければならぬと考えておりまして、兒童福祉法の四月一日からの実施とともに、これらの面にも努力いたしたいと考えております。  それから、帝國銀行の椎名町支店の毒殺事件につきまして、毒藥の取締りは、確かに終戦直後多少緩やかになつておるきらいがあります。これらの点に対しましては、十分に取締りを強化いたしますと同時に、今まで毒物の保存だとか、あるいは毒物の授受だとかいう点については相当取締りを厳重にいたしておりますが、一旦個人の手に渡つたときに、渡つたそれから先に、またその次に譲り渡されるというような点についてまでの、先から先の取締りが十分でないようであります。こういう点に対しまして取締りをしませんと、せつかく法規の許す範囲内において取締りを厳重にして譲渡はされたが、それから先に、いよいよそういうものをすぐ惡用しようという者の手にわたるときの取締りが十分でないために、そういうことになるということはあり得べきことでありますので、こういう点に対しましても、よく関係方面と十分に調査いたしまして、かくのごとき不都合をなからしめるようにいたしまして、社会不安を一日も速やかに除去いたしたい、かように考えております。(拍手
  9. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 山崎君、よろしいですか。質問はありますか。
  10. 山崎道子

    山崎道子君 もうちよつと……     〔山崎道子登壇
  11. 山崎道子

    山崎道子君 ただいま懇切なる五答弁を伺つたのでございまするが、私は二、三不満な点がございまするので、この際、重ねてお伺いをいたしまたいのでございます。  総理大臣が民主主義あり方をお説きになりました。私たち、もとより承知いたしております。しかしながら、いかに正しく生きようといたしましても、配給では生きていけない。そして、まじめに働いては生きていけない。そして、まじめに働いては生きていけない。しかも一歩外へ出まするならば、やみの物資が横溢している。そして、まじめに働かない人たちがぜいたくな生活をしている。そして、まじめに働く人は、その日の薪炭にさえ事欠く。この寒空に、炭もない生活で甘んじ、しかも乳のない子供を抱えて、泣き叫ぶ子供を抱えて生活しなければならない。こうした現象が、すなわち惡を生むのでございまして、この点に対しましても、私は御覚悟が伺いたいのでございます。  配給では手にはいらない赤ちやんの綿製品にいたしましても、やみ市場へ行けば手にはいるのでございます。あるいは、ただいま厚生大臣が仰せになりましたけれども、牛乳にいたしましても二合五勺ではいきていけないことは承知しております。徐々にこれを研究する、製造する、そして輸入を懇請するということの仰せでございましたが、もとより、これはやつていただかなければなりません。しかしながら、現実に餓死に迫つておりまする赤ちやんに対しては、そういうことを言つていられない私の母心がお願いをいたすのでございます。(拍手)現在におきましては、ララの物資によつて、ようやく生色を取りもどしておりますけれども、政府配給でございましたならば、板橋の養育院におきましても、捨子十七名に対しまして、一日の配給牛乳はわづかに三十本といわれております。 壽産院の問題が、不議の子が多い、これはさようでございますけれども、この不義という観念が、非常にこうした不幸な人間を生むのでございまして、いずれにいたしましても、生れた子供は当然保護去るべきであり、また母も、こうした社会的な観念を捨てまして、これを保護し、何とかそうした道に陷らないようにすることが大切でございます。現にロシアなどにおきましては、親のない子でありましても、堂々とこれがりつぱに育てられ、國家の子供として育てられまして、これが祖國のために大きな力をなしているということを聞いているのでございます。私は、不義の子であるから、こうしたこたが起きるのだと、軽くお扱いにならないようにお願いをいたしたいと存じます。  それから厚生施設にいたしましても、社会保障法は、私、一昨年もこの議場で申したことがございましたが、どうしてもこれの統一強化、実施なくしては、とうてい安心して勤労階級は働いてはいけないということをその際申し上げましたが、一面厚生大臣は、ただいま社会保障制度の研究ありと仰せになりました。ところが先日の新聞には、片山総理大臣には、そうした総合的社会保障制度設定の意思なし、というよなことが発表されておりました。それと同時に、ただいま予算がない、日本予算が許さないということでございましたけれども、私も國の予算実情はよく承知いたしております。けれども、惡が芽生えて、それに要する費用に使うよりも、それを防ぐ面に私は重点をおいていただきたいのです。その面におきまして粗餐がないというお言葉は、熱意がないということに、ひがむのかもしれませんが、私は考えるのでございます。(拍手)  くどいようでございますけれども、乳のない赤ちやんに、ぜひとも乳の確保を重ねて強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。     〔國務大臣一松定吉君登壇
  12. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) ただいま山崎議員の熱心なる再質問は、これは私も、あなたがそこまで御熱心に仰せられなくても、あなたの最初の御質問で、私の胸を十分に貫き通しておる。ゆえに私は、あなたの御質問の趣旨に副うように努力すると、こういうのです。不義の子は勝手にせよ、不義の子はどうでもいいということを言うのではない。不議の子であつても、一旦この世の中に呱々の声をあげた以上は、それらのものは十分にこれを哺育し、そうして成育を完全にするということが、憲法の命ずるところであり、また人道の要求するところである。ただ壽産院について、ああいうようなことに立ち至つたのは、その多くの原因が不義の子であつたということを遺憾に思うということだけを申し上げたことによつて、今のあなたの再質問についての御不審を御解消願いたいのであります。  また、牛乳の不足を補給するという点については、もつともです。でありますから、不足をしておる物を、そのままほつたらかして、赤ん坊はどうでもいいという答をしたのではありません。それらの不足については、できるだけ不足のないようにし、そうして、乳製品というようなもののたくさんできるように、いわゆる果物の汁だとか、野菜のスープだとか、その他足りないようなところは外國から輸入を懇請して、そういう人の迷惑にならないように努力いたします、また現に努力いたしつつある、かように申し上げたことによつて、御了承願いたいのであります。  社会保障の問題は、社会保障と言うと何か特別の法律かのごとく、あなたはお考えになつていらつしやるが、現に兒童福祉法社会保障一つです。あるいは失業保險も、失業手当も、あるいは國民健康保險も、みな社会保障制度の一端をなすものです。だから、総合的に全部を一括して行うということについては、少くとも四千億円くらいの金がなければならぬけれども、一歩一歩漸進して、それらの方面に向かつて努力して、そうして國民がすべて健康にして樂しく、愉快に、文化的の生活のできるようにしようという意味でありまして、特に社会保障という一つの大きい法律を、ここにこれをすぐに行うということいついては——現在わが國の法律制度において、社会保障的の制度がないじやないかと言われるが、たくさんある。けれども、それだけで足りないから、足りない点に向かつてさらに研究調査して、國民の要望にかなうようにしよう、こういうお答えであつたことを御了承願いたいのであります。
  13. 山崎道子

    山崎道子君 ただいまの大臣のお言葉は、議員に対しまして侮辱的な言葉だと思います。私は、大臣の御熱心さは、よく承知いたしております。ふだん委員会におきましても、あなたが非常に御熱心におやりくださることは、私は喜んでおるものの一人でございまするが、ただいま御質問いたしましたのは、現在こういう惡が起つたことに大して、これを未然にできるだけ防止したいという一念から申し上げているのでございまして、それと同時に、牛乳に対してのあなたの御熱意は伺いました。牛乳が足らないことも承知いたしております。しかしながら、現在バターにつぶされております牛乳はどれだけ多量であるかをお考えでございましようか。現在横に流れております牛乳——やみ市に行けば乳製品がある。これは一体どうしてくださるかということを私は申し上げているのであります。声なき赤ちやんの代弁者として、議会で今までどれだけの声があつたでございましようか。私のこの質問に対しまして、たまには侮辱的でなく、好意ある御答弁が私は伺いたいということを申し上げておきます。(拍手
  14. 一松定吉

    國務大臣(一松定吉君) 私が何か山崎さんを侮辱したように誤解をされておるようですが、あなたの御熱意に対して、私も熱心に答えた。侮辱でも何でもない。また、今の牛乳の足らないという点についても、私もその通りと考えているから、そういうことのないように努力いたします。努力いたしますという範囲内には、バターあるいは横流しという方面を取締るという意味の含まれていることを御了承願います。      ————◇—————
  15. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) これより自由討議に入ります。  笹口晃君、発言者を指名願います。
  16. 笹口晃

    ○笹口晃君 日本社会党といたしましては、赤松勇君を指名いたします。
  17. 松岡駒吉

    議長松岡駒吉君) 赤松勇君に発言を許します。     〔赤松勇君登壇
  18. 赤松勇

    ○赤松勇君 過日、議院運営委員会におきまして、憲法代五十條による議員逮捕の許諾の討論に際しまして、私の最も尊敬しておる広地でありまする工藤鐡男議員から、特に次のような発言があつたのであります。われわれが憲法第五十條の議員の身分保障に関してこれを強く擁護せんとする理由は、すなわち明治維新以來、われわれの先輩あるいは同輩が官僚勢力と闘い、後には軍閥官僚連衡勢力と闘い、その統帥権と行政権の挟の中に、立法権を護るために鬪つて來たのである。     〔議長退席、副議長着席〕  新憲法による第五十條は、今まさに危機に瀕しておる。議院運営委員の一人である、年の若い赤松勇君は、特にこの際、明治維新のあの革命家のような気魄をもつてこの憲法を擁護しなければならぬという、きわめてありがたいお言葉をいただいたのであります。私はそれに対しまして、委員長にさらに東林の継続を要求したのでありまするが、すでに時間もありませんでしたので、翌日行われます委員長報告に対する討論にあたりまして、社会党を代表いたしまして、憲法第五十條に関する解釈の問題について、本議場を通じて私どもの見解を明らかにしたい、かように考えておつたのでありまするが、遂にその機会を逸しましたので、本日さいわい、この自由討議の機会を通じまして、工藤鐵男議員の御教示ありましたその問題に対する私の見解を明瞭にしておきたいとおもうのであります。  まず第一に考えなければならないことは、わが國の明治維新以來、その民権擁護に闘いが展開されたことは事実であります。しかし、明治中世から明治の末期、大正から昭和を経まして、日本の政党政治が、日本に議会政治が、どのような役割を演じたでありましようか。皆さんご承知のごとく、あの長い日本の資本主義の成長の過程におきまして、はたして統帥権、行政権の挟撃に対して立法権を護るために、日本の政党政治が勇猛果敢に鬪つたでありましようか。残念ながら私は、否と言わざるを得ないのであります。そのいくつかの事実をわれわれは知つている。  旧憲法の規定によりますならば、旧憲法の第二章には、臣民に関する権利義務が規定され、さらに第二十三條、第二十四條、第二十五條、第二十六條、第二十九條におきましては、それぞれ臣民の権利義務を規定し、あたかも、その法律上の利益を確保しているように見えるのでありまするが、この天皇の大権を中心とする反動的な憲法のもとにおきまして、最も反動的といわれます治安維持法をはじめ治安警察法、あるいは裁判を経ることなく自由に拘禁をいたしまして、さらに二箇年その拘禁の更新ができるという、恐るべき野蛮なるあの思想犯保護観察法は、一体どこの議会においてこれが制定されたのでありましようか。私どもは、これらの反動的な諸法律が、その法律的合法性を與え、われわれの先輩同志がこれらの犠牲になりまして、あるいは留置場の中で、あるいは刑務所の中で、幾人が歯を食いしめながら死んでいつたでありましよう。私は現に、この目で見ておる。昭和十二年から昭和十六年まで、時の反動政権のために、われわれは遂に刑務所にぶちこまれた。その際に、私はある警察の留置所で、目の前におきまして、それが社会主義者である、マルクスの資本論を読んだという理由のために、二十一のうら若い婦人は、まつ裸にされて天井からさかさまにつり下げられて、聞くにたえざる、見るにたえざる最大の侮辱を加えられておつたのを、私はこの目で見たのであります。さらにまた、そればかりではない。多くのわれわれの先輩同志がほとんど口にすべからざる暴虐なる彈圧を受けまして、そして、この反動的な憲法、諸法律のもとにおいて死んでいつておるのであります。  しかもその際に、あるいは自由党の諸君らは言うでありましよう。見よ、あの五・一五事件を通じ、あるいは二・二六事件を通じて、自分たちは当時の軍閥と鬪つたのだということを言うでありましようが、私は、それにたいしましては、こう答えたい。五・一五事件にいたしましても、二・二六事件にいたしましても、その当時におきまして、なぜああいう社会的な紛争、あるいは政治権力をめぐる鬪争が起きたかと申しますならば、これは当時日本政治権力を握つておりました金融資本に対しまして、農村の富農階級を基盤とする、あるいは中産階級を形成しておりますところの日本社会層が、大資本の圧迫のためにどんどん没落する、その動揺する小ブルジヨア層を基盤といたしまして、あの青年將校たちが、あのような行動をとつたのでありまして、これらの一連の軍部の中枢をなしておりました青年將校も、あるいは日本の政権の中心をなしておりました一連の支配階級も、同じ穴のむじなでありまして、どれもこれもが、海外侵略戰争のための帝國主義的な諸準備をば進めるところの、一連のわれわれの敵であつたということをば、この際明白にしておきたいのであります。  このような意味におきまして、私どもは、この反動的な諸法律と鬪つてきたと仰せられますけれども、旧憲法を擁護し、その反動的な勢力を温存するために鬪つてこられましたのは保守反動勢力であつて、ほんとうに新日本憲法、その政治的自由、すなわち言論、集会、結社、出版の政治的自由を眞に獲得するため血みどろの鬪いを展開してきたのは、はかならぬわが日本社会党であるということをば、この際超えを大にして絶叫せざるを得ないのであります。  さらに運営委員会におきまして、雇うの諸君は、憲法第五十條の解釈につきまして非常に大きな過ちを犯しておる。私に與えられました時間は十五分でありますので、便々とこれを論ずるの時間がありませんが、あの議院運営委員会におきまして、わが社会党を初め民主党、國民協同党は、憲法第五十條の解釈におきまして、原侑代議士の逮捕に許諾を與えるに賛成の態度を表明いたしました。ところが、一月三十一日の讀賣新聞んの記事によりますならば、総司令部民生局代表は、記者会見におきまして、次のような見解を明白にいたしました。「原代議士の逮捕事件について、政府は数日前詐欺收賄嫌疑で告発された原代議士の逮捕要求に許諾の措置をとるよう衆議院に要請したが、これはまつたく新憲法以下書状率に則つた行爲である。首相は國民に奉仕し國民を保護するため当然の義務を履行したにすぎない。逮捕要求に應じたことは憲法の精神に反すると言うものもあるが、この意見は擁護できない。公の責任追究に應ずることによつてのみ議員は國民の尊敬をかち得、その信頼を正当化するものであり、そのためには、議員はきれいな手で議場に來なければならない。さいわい議院運営委員会は、力強く逮捕に許諾を與えることを決議した。かくて衆議院が運営委員会のこの決議に從うことになれば、裁判所がその有罪か無罪がの判決を下し、原代議士もまた新憲法に基いた新しい司法上の手続きにより完全な保護を受け得るのである。」というのが、総司令部の見解であります。私どもは、これに関しまして今さら贅言を要する必要はない。この問題のもつております重要な点は多々ありますが、そでに、この問題につきましては処理済みでありますので、言うべきことはありますが、これ以上は私は申しません。  要するに、今日の場合、國会にとりまして一番喫緊にして必要なることは、臭いものにふたをすることなく、この際國民のあらゆる疑惑を一掃いたしまして、われわれ自身が國民の前に、ほんとうにきれいな手であるということを立証することが、道議回復のためにも絶対条件であるということを申し上げまして、私の自由討論の演説にかえます。(拍手
  19. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 小澤佐重喜君発言者を指名します。
  20. 小澤佐重喜

    ○小澤佐重喜君 日本自由党では、まず前田郁君を御指名申し上げます。
  21. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 前田郁君、発言を許します。     〔前田郁君登壇
  22. 前田郁

    ○前田郁君 諸君、私は在野党たる立場から、目下わが國民の注目のまととなつておりますところの鉄道運賃値上げの件に対しまして、政府にお尋ねいたしたいと考えておるのであります。大臣の出席を要求いたしましたところが、ただいま委員会において答弁中であるというお話であります。私は、きわめて簡單に所見を申し上げてみたいと考えます。  國有鉄道は、現在日本の最もおおきな全國的組織をもつたところの政府事業でありまして、その運営は、政治、経済、社会と、國家活動の全般に影響を及ぼし、國民の日常生活に多大なるつながりをもつものでありまして、國鉄の復興は、國民全体が何よりも重大視いておるところの問題であります。私どもは、運輸交通委員会に關をおいておりますが、この運輸交通委員会におきましては、各党派とも、まつたく党派的感情を捨てまして、國家的見地から、國鉄の再建に対しまして今日まで努力してきたのであります。  昨年の八月三十日に、政府は鉄道営業法の一部改正の法律案をば私ども委員会に付議したのであります。その要旨は、今まで鉄道の値上げをするときは一箇月間の公告期間があつたのでありますが、これをただの一週間に短縮をいたすという法律案であります。私どもは、この法律案を受け取りまして、必ず政府は近く運賃値上げの伏線があるのではなからうかということを考えまして、このことについて、私どもは政府質問をいたしたのであります。新物價体系を堅持する限り、鉄道運賃の値上げをすることはない、また最近の機会に値上げをする意思はないということをば、大臣が答弁をいたしたのであります。これは八月三十日の会議の答弁であります。  ところが十月にはいりますと、新聞やラジオあるいは参議院の席上において、苫米地運輸大臣は、値上げをするうような意思をば発表していたのであります。ここにおいて、運輸交通委員会の委員長であり、しかも社会党代議士である正木君は、全委員会の意思を代表いたしまして、政府に対して、はたして値上げの意思があるかどうかということをば、そのときも尋ねたのであります。ところが、そのときの質問に対しまして、苫米地運輸大臣は、こういう返事をいたしております。当分の間新物價体系によつて、その一環として取上げられる運賃は、これをば動かす意公はないということを明言いたしたのであります。  しかるに皆さん、苫米地運輸大臣は辞職をされまして、今回北村代議士が運輸大臣に就任されましたが、その間わずかに二箇月、今回また突如として運賃値上げということを発表されたのであります。皆さん、同じ内閣であつて、二箇月前の大臣はこれをやらぬと言い、二箇月後の大臣はこれをやると言う。はたしてこの責任というものは、たれが負うべきものでありましようか。私どもは、片山内閣に対しまして、この点まことに遺憾に考えておるような次第であります。(拍手)  しかして、前回の値上げを政府は財政法第三條の実施がないから、今後運賃の値上げをする場合は、必ず何らかの方法によつてわれわれ國会にこれを諮問する、國民の代表者とともに運賃値上げの問題は相談をするということを、いくたびか委員会において明言したにもかかわらず、今日に至るまで、彼らは何らの処置をされぬのであります。そうして、今回発表されたるところの運賃値上げにいたしましても、ごく祕密に、何ら委員会に諮ることなしに、拔打的にこれを断行されるということは、新國会——しかも民主主義を主張されつところのこの片山内閣は、どうしてこういうような、今までの官僚内閣がやつたようなことを依然としてやられるのか、まことに遺憾千万に考えるのであります。  さらに政府は、近くまた物價体系をば変更して、この四月ごろには運賃の値上げをやるということをばほのめかしておるのであります。私どもは、政府はこの四月ごろ、はたしてまた運賃の値上げをする意図があるかどうか、この点もお聽きをいたしてみたいのであります。  諸君、現内閣はインフレを克服したい、どうしてもこのインフレというものの息の根を止めなければいかぬということを、随所において演説もされております。しかるに皆さん、この賃金と物價の惡循環を断ち切らないでいる以上は、インフレというものはやまぬのであります。ところが、そのことをば政府はたびたび声明をされていながら、何か問題に金が要るというと、必ず安易な方法を求められまして、そうして酒の値上げをする、タバコの値上げをするというふうで、この政府事業を、いつも値上げの対象としておられるのであります。皆さん、今回の生活補給金の支拂も國鉄運賃の値上げによつてなされるわけでありますが、かようにして値上げをする、また物價が上る、賃金が上る、いたちごつこをしまして、そうしてますますインフレが高進していくということになりましたんらば、この政府が言われるインフレ抑止ということがどうしてできるでありましようか。私どもは、この点に対しましても政府の所見をば承りたいと考えておるような次第であります。  次に政府は、さきに國有鉄道の実相報告書をば発表されまして、そうして私どもに現在の経済危機の実体をば明らかにいたされまして、國民にその協力を求めたのであります。経済再建のために、國鉄においては独立採算制をとる、そうして國鉄の合理化をはかつて、赤字を克服するということを言われたのであります。今日まで政府においては、どういうような國鉄の合理化を行われたのであるか、私どもはすこぶる不可解に考えておるのである。ただいま、こういうようなふうで、ただ單に國鉄の赤字を埋めるためであるとか、あるいはいろいろなために、いつも値上げをするということで、はたして國民が納得いくような御説明を願つて、今回の運賃値上げということに対しましても、天下にこれをば公表してもらいたいと思います。今のままでは、おそらくこの日本の國鉄というものは、ほとんど破産の状態に追いこまれるのではないかと考えておる。三倍半の値上げをしても、なおかつ百数十億円の赤字が出ておるにでありまして、今回の十倍の値上げをされても、今みたような合理化が行われない以上は、断じてこの問題の解決はつかないのではないかと私どもは考えておるような次第であります。  そこで、私ども最後にお伺いしたいことは、今回に値上げというものは、まつたく國民の旅行を禁止するような、いわゆる國民の旅行禁止的な値上げであります。ちようど東京から九州の鹿兒島まで参りますれば、今までは三百八十五円でありましたが、今回の値上げによつて七百七十円ということになるのであります。戰前には、鹿兒島まで行くのに、三等でたつた九円いくらで行かれたのである。それが今日においては、もし値上げになりますれば、これははたして一般國民に影響がないでありましようか。  最近新聞を見ますと、社会党に最も関係に深いところの國鉄労働組合におきましても、今回のこの値上げに対して反対をいたしておるような次第であります。私どもは、この國鉄の値上げということに対しましては、上下ほとんどたれ一人といえども賛成するものはないと思うのであります。政府はいつも、こういう國鉄の値上げというようなものをもつて、補給金であるとか、その他の問題を処理されるのであります。私どもは、これに対しましては絶対に反対をいたしておるのでありまして、いわゆるインフレの克服、國民生活、大衆生活に直接の影響を及ぼすところの國鉄の値上げには絶対に反対を表明いたしまして、これに対する政府のお考えをお伺いいたしたいと考える次第であります。(拍手)     〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  23. 北村徳太郎

    國務大臣(北村徳太郎君) ただいまの前田議員の御質問と申しますか、御所見に対して、お答えを申し上げたいと思うのであります。第一の問題は、運賃値上げの問題、第二の問題は國鉄の合理化と申しますか、独立採算制の問題等であつたかと思うのであります。  第一、運賃値上げの問題でございまするが、昨年七月に、國鉄は運賃の十割値上げをいたしました。この際、むろん独立採算制という問題を考慮いたしましてのことでございまするが、その当時、昭和九年から十一年までの平均物價に対して四十八倍に物價の水準をおく、一應物價の安定帶を、その昭和九年ないし十一年の平均物價の四十八倍の線において、安定帶を得るという考え方ができまして、そのことを基礎といたしまして、当時國鉄は三倍半の値上げをいたしたのであります。しかるに、その後の情勢がにわかに変わりまして、御承知の通り六十倍ないし六十五倍というところに線を引かれたのであります。從つて、当時この物價と賃金との関係において、國鉄のとつた三倍半というものは、当時修正をすべきものであつたと思うのでありまするけれども、これはただいま前田君のお話のように、運賃というものが國民生活に及ぼす影響が非常に甚大であるというような点も考えまして、修正をあとにまわして、しかるべき機会にやろうということで今日に至りましたのでございますが、今回旅客運賃を十割値上げするということになつたのでありまして、これは四十八倍において安定帶を得ようとしたのが六十五倍に変つたということに関連いたしまして、その当時実は修正すべきはずのものであつたというふうに御理解を願いたいと思うのであります。  それから独立採算制の問題でありまするが、独立採算制の問題は、これは國鉄が公企業として、もちろんこの独立採算でいかなければならぬ。しかし、これについては、さきにも申し述べましたように、國鉄の荒廃のはなはだしい状態、これを何とかして回復いたしまして、きわめて不満足なサービス状態と、きわめて不満足な輸送力の状態を増強することに全力を盡さなければんらぬ。これでなければ、生産増強と申しましても、生産に一連の関係をもつところの輸送力が今のごとく弱体であつてはならない。從つて、この面から何とかしてこの輸送力の増強をはかりながら、結果として増收をはかるということが、独立採算制の一つのポイントであります。同時に、あらゆる面から節約に努力をいたしまして、一方においては経費の節減をはかる。かようにいたしまして、独立採算制への一つの方向をきめるわけでありますけれども、それだけで独立採算制ができるかということに相なりますと、これは私は誤解ないように申し上げますけれども、そういう数字をあげて、お前たちは安易な方法だけをとろうとするかというような御疑念が起るかも知れませんが、そうではございません。少くとも物價が六十五倍上つた場合に、運賃が二十三倍の値上げで、これで赤字なしに経営ができるということは、一應経済的に考えられない、かような面もご考慮を仰がなければならぬと思うのであります。  なお賃金と物價、あるいは運賃との関係でございまするが、これは今回、貨物の運賃は値上げを差控えております。このことは、給與体系がどうなりまするか、ただいま給與審議会にかかつておりまして、その結果を得た上で賃金体系というものが新たにきまる、きまれば、これに基いて物價全体に対しても新しい修正を要する。この修正の場合に、その修正さるべき物價の一環としてこの運賃の問題を取上げる、そのことがきわめて妥当であるというような考え方から、今回は一應旅客運賃の十割値上げということに止めました。この考え方は、四十八倍であるべかりしものが六十五億になつたということの修正を含むものであるというように御理解願いたいと思うのであります。     —————————————
  24. 笹口晃

    ○笹口晃君 本日の自由討議はこの程度に止め、明三日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  25. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 笹口君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 田中萬逸

    ○副議長(田中萬逸君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時六分散会