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石田博英君 私は、
日本自由党を代表いたしまして、本
決議案に
賛成の意を表するものであります。
昨年夏、七月、八月、九月の三度にわたりまして、
東北、
関東両
地方を襲いました大
水害は、過去数十年間においてその類例を見ないとういうほど激甚なものでありました。その
被害の
状況につきましては、ただいま
山崎委員長から詳細申し述べられまして、重ねて申し上げる必要はないのであります。さらに、その
水害の当初におきましては、著しく世人の
関心を呼び、大衝動を與えたことも事実であ
つたのであります。
政府はこれに対しまして、あるいは
水害地に
見舞にでかけるとか、あるいは
視察に出かけるとか、いろいろの
対策を講ぜられたのでありますけれ
ども、幸か不幸か、このたびの
水害が大都市を
見舞うのではなく、主として
農村地帯に襲來いたしましたために、人命あるいは人家の
被害が比較的少なか
つた。そのため、この
水害に対する
関心もようやく薄れまして、今日においては、もはや完全に忘れられてしま
つたとい
つても過言ではない
状況に相な
つておるのであります。特に
政府におきましては、初めこそ、あるいは
大臣がみずから出かけたり、あるいはまた
各省の
関係者が、
被害地の
人々にと
つては
應接應待にいとまがないほど、しばしば出かけてまい
つたのであります。
第一回
國会におきましても、ただちに
水害地対策委員会を特設いたしまして、この問題について
協議を進めたのでありますが、第一時
追加予算ににわずか二十一億円が
計上せられたのに止まりまして、その後は何ら顧みられていないのであります。特に
大蔵省のごときは当初よりきわめて冷淡でありまして、二十一億円の支出に続きます残余の
復旧費に対しましては、昨年十二月に開催せられました
水害地対策特別委員会におきまして、
栗栖大蔵大臣は、十億円の
予算外國庫負担契約をも
つて、
土木関係六億六千万円、
農林関係二億五千万円を支弁し、これをただちに資金化すると同時に、それでも不足な分は必ず
追加予算に組み上げるということを公約いたしましたにかかわらず、今日に至るも、この十億の
予算外國庫契約は、何ら資金化されていないのであります。さらにまた、第二時
追加予算に
計上するという約束にもかかわらず、今日まで、何らその手続をと
つていないのであります。まことに、これらの公約は
一片の空手形と化してしま
つておるのであります。この不
誠意、この軽薄は、われわれこの
議場において、強く糾弾しなければならぬと信ずるもであります。(
拍手)
私は、七月、八月、ちようどこの大
水害の起りましたときに、
秋田縣におりました。九月には、その当時において最も
被害が激甚であ
つたという
岩手縣の盛岡におりました。
目のあたりようやく黄金の波をさしてまいりましたところの、一箇年の汗と脂の結晶を、一瞬に流され、茫然とたたずんでおりますところの農夫のひとみ、また
家財もろとも家を流されまして、妻や子供を水魔の
犠牲に供して、
悲しみに打
人々の顔を、今日ここにまざまざと思い浮べることができるのであります。しかしながら、
東北、
関東の
農民は、この苦しみ、この
悲しみの中から、敢然と今日起ち上
つておるのであります。
供出のごときも、この激甚な
被害と
交通難を克服いたしまして、すでに
東北六縣におきましては、全國に率先して
供出を完遂いたしておるのであります。(
拍手)また
関東被害地も、きわめて優秀なる成績を示しつつあることは、
諸君御
承知の
通りであります。これは、一にわが
國農家の烈々たる
國家愛、
同胞愛の表示でありまするとともに、
被害各縣民は、まず自己の義務を果たすことによ
つて、
水害復旧、
耕地回復に対しまする
政府の援助を確信し、期待してお
つたのであります。(
拍手)
しかるに
政府は、今日に及ぶも、この
被害地の切実なる望みと願いに対しまして、何ら報ゆるところがありません。この
状況に焦慮して、
被害地の各
都縣知事あるいは、
都縣議会の代表は、よりより
協議をいたしまして、先般、大挙して
陳情に上京いたしてまい
つたことは、
諸君御
承知の
通りであります。ところが、この血もでるような
陳情に対しまして、
大蔵省はどういう態度をと
つたかと申しますと
追加予算に
計上するなどということはとんでもない。そういう
考えは全然ないし、できもしないと、まるで木で鼻をくく
つたような返答をしておるのであります。
さらに先般第十三
委員室におきまして、
東北、
関東出身議員及びこれら各
都縣知事、
都縣会議長が参集いたしまして、
片山総理大臣に対して
陳情いたしました際に、
片山総理大臣は、それほど大切な問題であるならば、なぜもう少し早く言うてくれなか
つたかという、きわめて間の抜けた返事をしてお
つたのであります。(「その
通り」
拍手)これは、何という恥を知らない、無責任きわまる答弁であるかと私は言いたいのであります。当時列席の
諸君は、
與党の
諸君も、野党の
諸君も、ともに激高をいたしました。これは、きわめて当然といわざるを得ないのであります。
水害地対策委員会は、すでに八月に結成せられております。各縣の
陳情は、むしろうるさいほど、しばしば参
つております。この実情に対して、今まで知らなか
つたという
片山総理大臣は、
一体國政に対して何を
考え、何を今日までしてきたのであるか。
水害地への
視察見舞は、あれは單なる
一片の儀礼であ
つたのでありますか。そうでないとするならば、
片山総理大臣は單なる一個のロボットにすぎないということを、明々白々とここに暴露しておるのであります。
東北、
関東被害地の
農民が、なぜ率先して
供出を完遂したかというこの事実、これはきわめて重視しなければならぬと思うのであります。この
誠意と
同胞愛に対しまして、何ら顧みるところのない
政府は、口に
農民の味方だと称しながら、実は
農民は
供出米を搾り上げる道具であると
考え、
徳川幕府と同じ様に、百姓は生かさぬよう、殺さぬように扱えばよろしいという
程度の認識しかも
つていないことを、これまた、ここに暴露しておるものと断言せざるを得ないのであります。(「ヒヤヒヤ」)
水害は、もちろん
天災であります。しかしながら、その
原因を
考えてみますならば、
治山治水の不完全、
山林の
濫伐、また
東北の
河川ごときは、今日ほとんど原始
河川のまま放置せられておるのであります。この
原因を
考えてみますときに、
天災ではありますけれ
ども、その
復旧の責任は、あくまで政治にあり、
國家にあると断言することができるのであります。
今次
水害の
復旧は、第一に、
水害によ
つて破壊せられましたところの
用水路、
橋梁、
道路等を
復旧して、それによ
つて交通を確保し、その年度の
生産を維持するということが第一の要件であります。これに対しましては、先般可決せられました二十一億円の
追加予算をも
つて、ある
程度完成しております。しかしながら、その次に、現在ほとんど破壊せられておりますところの堤防を
復旧し、護岸を完成し、
河川を改修し、同時に
耕地を
復旧いたすということが、今度は翌年度の
生産を確保するために絶対必要なのであります。しかも、
東北及び
関東地方は雪が多いところでありまして、春になると、雪が融けて増水をいたします。その時期までに堤防を直し、あるいは護岸を完成しません場合におきましては、翌年度の
惨害がいかほどになるか、はかり知れない。
先ほ
ども委員長からの御報告にありました
通り、
東北六縣におきましても、今日このまま放置いたしました場合には、二百万石以上の減産になると言われておるのであります。この支出は、
生産のための支出であります。しかるに、翌年度の
食糧生産に重大なる影響をもちますこの
生産的支出に対して、何ら顧みるところがなく、片々たる消費的支出を追いかけているという現内閣の財政政策の本質も、ここに明らかに暴露されておると私は
考えるのであります。
われわれは、ここに本
決議案を
提出いたしまして、
政府の猛省を要求し、われわれの絶対に必要と思うところの
復旧費の支出を、これまた要求する次第であります。本
決議案に記載せられてありますところの必要なる経費を
追加予算によ
つて支出しろという要求は、ここに重ねて申し述べておかなければなりません。必要なる経費とは、先ほど
委員長の報告にもありました
通り、本年度の
工事費として絶対に必要なる額五十億円、それに対して、今まで支出せられました額二十一億円、その差額を示すものであり、かつ、われわれが要求しておるものは、
追加予算に
計上することでありまして、
一片の空手形になる憂えのある
予算外國庫契約で満足するものでは断じてないという点であります。
この條件を附しまして、私は本
決議案に
賛成するのでありまするけれ
ども、ここに併せて申し述べなければならぬことは、関西あるいは東海各地を襲いました本年度の旱害についてであります。特に、私の同僚北浦圭太郎君の報告によりますと、本年最も旱害の
被害がはなはだしか
つた奈良縣におきまして、先般、前の
農林大臣平野氏が、奈良縣の
農林大臣在職当時おいでにな
つて、その旱害に対して七千万円の支出をすることを約束せられたのであります。今日
農林大臣が更迭しておられましても、これまた片山内閣の責任ある構成員の発言に対して責任を負わなければならぬという点においては、いささかも変りがないのであります。この
農林大臣の言明に力を得まして、奈良縣では、あるいはポンプを買い、あるいは井戸を掘り、あるいは高い
費用を支拂
つて水をも
つてきまして、漸く平年度の作を維持したのであります。ところが今日に至るまで、片山内閣は奈良縣に對して、七千万円どころか、百円も支出していないという有様であります。
現内閣は、公約を常に破棄するという特別な性格をも
つている内閣であります。この意味におきまして、私
どもはやむを得ないと
考えられるのでありますけれ
ども、
被害地の実情を
考えまするときに、かかる責を現内閣の特別の、特殊的性格に任せておいて満足するわけにはまいらないのであります。