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1948-01-26 第2回国会 衆議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年一月二十六日(月曜日)     午後二時四十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和二十三年一月二十六日(月曜日)     午後一時開議  一 國務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 國務大臣演説に対する質疑を継続いたします。辻寛一君。     〔辻寛一登壇
  4. 辻寛一

    辻寛一君 数箇の問題にわたり、主として片山総理大臣の対して御質問申し上げます。  まず第一に、行政整理の問題についてお尋ねいたします。この問題に関しては、一昨日、本議場における齋藤國務大臣からの御答弁の中に、およそ行政整理は、これを二つにわけて人員整理行政機構整理改革となすが、人員整理は別段むずかしいものではなく、歴代内閣もときどきやつたように、二割とか三割とか整理率をきめるだけの話であるが、行政機構整理の方は、そうはまいらぬ。なかなか複雜至難であるから、今度も行政機構改革審議会をつくつて、大いにその実をあげる予定であるというお話のように承つたのであります。  なるほど行政機構の文字には、元來二様の意義がありまするけれども、今日普通に行政整理といえば、政府も國民も、自他とも人員整理意味にのみ用いておることは、このたびの片山首相施政方針演説の中にも、行政機構改革行政整理等によつて行政費の節減に努め云々と、明らかに二枚看板になつておる事実によつても明瞭でありまする以上、この齋藤國務大臣行政整理の弁は、ことさらに人員整理の問題を、行政機構の煙幕の中でぼかそうとする魂胆とも察せられるのでありまして、第一、人員整理簡單な問題だなどとは、齋藤國務大臣ともあろう御仁のお言葉とは受けとりがたいのであります。何となれば、いつもながら行政整理掛声ばかりで、ふたを明けてみれば、ほんの申訳程度のうやむやで終るのが恒例である。言うべくして容易に行われ得ざる実情を最もよく御存じあるはずなのが齋藤さんであります。  現に、この行政整理の問題に対しましては、質問の第一陣に立たれました社会党鈴木氏と私との考え方が、早くも対立的立場にあることによつてもわかりまする通りに、簡單どころか、複雜微妙かつ深刻なる問題であります。從つて、事に当たる者は、よくよく腹帶を括つてかからなければ、その実効を期することはおぼつかないと考える次第であります。ここに私は、鈴木氏とはおよそ正反対の角度から、さらに掘りさげまして、この行政整理に対しまする片山総理大臣根本的なる態度を質さんと欲する次第であります。  給與改善立場から申しましても國費軽減目的から申しましても、かつまた能率増進見地から論じてみましても、今日相当大規模な官吏減員を必要とすることは、世論の一致するところであります。階級的な立場に立つ人は別でありますが、少なくとも一般國民的見地から考える限りは、輿論の趨勢は、正直なところ、この通りである。この世論に押されてか、片山内閣もしぶしぶながら、みこしを上げる段取りとなりましたことは、首相施政方針演説におきましても、たつた一言ではありまするが、行政整理の問題に触れておることによつて、うかがい知られるわけであります。  これに対しまして、さすがに社会党政務調査会長でありまする鈴木茂三郎氏は、労働組合方面の思惑を案ぜられてか、お家の一大事とばかり、この場合殺生ざたはおもしろくない、血刀を揮うことはお止まりあれとばかり、忠告的質問を試みられましたが、これに対して片山総理は、四囲の情勢上こい口をくつろげたからには、多少の殺生は避けられぬが、その程度については思案中だという意味の御答弁がありました。しかも私は、この御答弁の言外に、取立てて問題視するほどの人員整理でもないから案ずるなかれといつた氣分が発散しておつたように察知いたしましたが、これは私のひが目であつたであろうか。(拍手)  すなわち、傳え聞くところによりますれば、このたびの行政整理の目標は、予算定員の天引二割五分とありまするが、そもそも、この予算定員というのがくせものである。この定員は、まつたく空名でありまして、実人員とは常に相当の大きな開きがあることは、かくれもない事実である。予算定員の二割五分といえば、これは相当大きな数字じやないかと、何も実情を知らない素人衆は、大なたを揮うじやないかと感心されるかもわからぬけれども、その実は、実人員のどうやら平均五分見当が血の出る程度の、おまじないのような名目的整理にすぎないことは、過去の実績に徴して明らかなるところであります。齋藤國務大臣の申された、從來二割、三割の整理という手品のたねは、みなこの手である。こんな程度でお茶を濁すような行政整理では、百年河清をまつにひとしく、官吏亡國のそしりを免るることは永久にできぬと思いまするが、はたしていかに考えられるか。ただいまもくろんでおられる行政整理の正体は、一体いかなるものであるか、まずお伺いいたしたい。  第一國会の劈頭、片山総理大臣施政方針演説に対し、民主党代表として質問の第一陣に立たれました、時の民主党政務調査会長北村徳太郎氏、わが國は世界一の役人國で、國民は六人に一人の官吏を養つておる実情である、人件費膨張が國を危うくいたしておるとも言い得るとまで述べられまして、大いに行政整理の急務なるゆえんを力説されましたことは、いまなお私の耳に新たなるところであります。(拍手)奇しき縁と申しまするか、その抱負を実現せしめんとする天の配剤というべきか、先般この北村氏は、わが國において最も多数の官吏を擁する大世帶の運輸省に大臣たる機会を得られたのである。(拍手)今や、思う存分その手腕を発揮しうる地位に立たれたのであるからして、何をおいても、敢然として、まず隗より始めよと、お膝元から名刀のさえを示されることであろうと刮目して相待つておるのでありまするが、今度の行政整理においては、現業官廳は別途に考慮するとかいう理由で、このわくにはいらぬという話であります。國鉄逓信等官営現業には、さらに根本的なる検討を加えて、徹底的なる整理をも行う必要ありとの見地から、一まず後回しというなら、これはこれで大いにわかるが、話はどうやら、それとはまつた反対で、労働基準法などの適用で、人手は余るどころか足りませんといつた口ぶりのようにもれ聞くにおよんでは、いかにも立場が変れば考えもまた器用に変るものだと、驚き入つたる次第であります。(拍手)  國民の常識は、明らかに剩員ありと判定しておる。人手は余つておると、そろばんを下しております。いろいろ専門的の立場から最近の事情を述べ、むしろ人手不足状態を聞かされます。しかし、いかに現在惡條件のもとにある國鉄にいたしましても、一キロ当たりの從業員の数が、アメリカにおきましては二人半強、中國が約十二人、これに対して、わが國鉄が三十二人強というのは、どうかと思う。整理余地まんざらないとは、どうも受とれませぬ。断じて整理余地なしと言い張るならば、そもそもその企業形態そのもの根本がどうかしておるということだけは、言わねば相なるまいと思う。(「ヒヤヒヤ」)いやしくも企業と名のつく以上は、たといそれが官業だろうが、民業だろうが、根本的な建前は独立採算制でなければならぬはずです。(拍手)しかるに、赤字は出しほうだいである。料金は上げほうだい。サービスは下げほうだい。これだけ三拍子面白くない面がそれろえば、國民から大概悪口を言われるのは、無理はありますまい。  逓信関係、言うまでもなく同じことです。國鉄六十万、逓信四十万、合わせて百万、官業労組中枢勢力をなす、この二大労働組合のにらみがきいておつては、人員整理を織りこんだ企業合理化は難中の難事であるというて、片山内閣たるもの、よもやしりごみをなさるようなことはありますまい。何となれば、三党連立の基盤を打破つて社会主義政策、言いかえれば、重要産業國官國営政策を前面に押し出さんと意氣ごみつつある社会党委員長を兼ねておる片山総理といたしましては、その將來の運試し意味においても、せめて現在あるところのこの鉄道、逓信という國有國営の代表的に大企業には、何とか活を入れて、さすがに國営事業だと國民の喝采を博するところまでいかぬにいたしましても、國民の不滿をやわらげる方向へ進まなければ、すでにして國営事業のかなえの軽重を問われることになりますからして、イデオロギーを異にする他党出身運輸大臣逓信大臣とは、また違つた意味合いにおきまして、國営企業に対する根本的刷新策をおもち合わせになることと存じまするが、この現業官廳に対しまする行政整理をも含めて、企業合理化根本方針を伺いたいと存じます。(拍手)  かくて、目指す御答弁片山総理大臣でありまするが、この場合、現業官廳大臣として、政局も不安の今日ですから、あまり先のことを伺つてみてもしようがないが、即刻着手なさろうという具体的の御抱負がありましたならば、併せて御聽かせいただくのも結構と存じます。  そもそも、わが自由党の根本方針は、御承知通り自由経済を究極の理想とし、漸を遂うて、この方向にわが國の経済体制を切りかえていこうと志しておるものでありまするが、一体、この行政整理が言うべくしてなかなか行われない眞の原因は、統制経済そのものに内在する矛盾であることを指摘いたさなければなりません。(拍手)元來統制経済は、一言にしておおえば、役人政治経済である。現在の統制経済公営主義は、いよいよ出でて官廳機構のあくなき膨張と、ますます入つて民営事業範囲縮小意味するものにほかなりません。國営あるいは國営事業が増せばもとよりのこと、そうでなくても、ただに統制強化徹底されるということは、まづ先にそれに必要なるは、取締りの強化徹底ということである。役人組織の進出を必要とすることは、言わずして明かであります。すなわち、官廳機構の拡大、官吏増員を必要とせしめ、民業に圧迫を加える統制強化の方策を右手に携え、官吏減員を当然とするところの行政整理と、これを受け入れる一つの途であるところの民業発展策を左手に握ろうというような、両手に花の虫のいい政策が世の中にあるはずがございません。もし眞に官吏を減らし、能率を高め、行政整理の実をあげようとするならば、まず第一に、統制そのものがいかに官吏増員を必要とし、國費を食うものであるかというこの根本認識を体得すべきであると思います。そのもとを正さずして、その末をとやかく言つてつたつて、追つつく話ではありますまい。統制経済行政整理が生まれながらの背中合わせということを弁えずして、ただ世論に追随して、申訳的な行政整理のゼスチユアを示してみたとて、飯の上のはえを追うにひとしいわざである。行政整理根本的態度について、とくとお考えを願わなければならぬと存じまするが、片山総理大臣の忌憚なき御所見を、この場合承りたいと存じます。(拍手)  次に租税の問題に関して、簡單に数点のお尋ねをいたしたい。二十二年度の租税收入三百三十九億円の予算に対して、十二月末までに收入済みに相なりましたのは、四百四十億円にすぎない。残金まさに九百億円であるという状態と承る。一体かくのごとき納税不振の原因はどこにあるのか。國民納税観念が下がつたことも、もちろんでありまするが、それとともに、國民租税力がようやく底をつき始めたことも認めなければなるまいと思います。ここに、あらためて租税制度根本に対して鋭い檢討の眼を注がなければうそだと思いますが、一体、この現象をどう考え、どう裁くおつもりか、まず伺いたい。  納税成績の一番惡いのは、業主所得税である。計画的な惡質の脱税者は、総理言葉まつまでもなく、びしびしやつてもらわなければなりません。中には、まじめな個人事業主や、会社の滯納も少なくないのは、一体何を物語るのか。つまり、今日のような社会変動期には、それぞれの所得を適切にとらえることが、技術的にきわめてむずかしい証拠であります。というて、見たとこ勝負で高い税金をかけられたんでは、正直者がますますばかを見ることになるから、よほど愼重課税をいたさなければなりません。それには、腰だめ式の、非科学的の徴税方法ではいけない。この変動期の推移に應じて、所得あり方徴税対象の動きなどを察知いたしまして、比較的的確に把握し得る科学的な調査機関を設けて、絶えず研究を進める必要があると考えまするが、この点はどんなふうにお考えになつておるか、御所見が承りたい。  それから予算申告納税制度は、最も自主的な納税制として理想的ではありますが、現在國民納税思想の水準に照らしては、まだ前途遼遠だと思う。一昨日の藏相答弁では、せつかく納税思想の普及に專念すれば、着々効果を期待し得るというような、甘いお考えのようでありまするが、うのまねをしても、からすの泳げるはずはない。理想倒れにならぬよう、もう一度御檢討願う必要があるとお考えますが、いかがでありますか。  さらにこの場合問題とすべきは、間接税と直接税との振合いであります。租税制度理想形態がどうのこうのと言うておるよりも、今日の日本といたしましては、租税の確実な増收インフレの防止とが至上命令である以上は、直接税徴収の困難がすでに事実となつて現れてきておりまする限りは、間接税に対しまして、徐々に重点を移していくことも、臨機の切抜け策であろうと考えます。税目さえよく選んだならば、間接税大衆課税であり、惡税であるといつた形式論に、別にとらわれる必要はなかろうと思う。時局柄消費行為を抑制するという見地から見ましても、消費税等間接税は増徴されてよかろうと思いまするが、こうした方面について、一体どういうお考えをおもちになつておるか。  なおこの場合、間接税に関連して、いささか承つておきたいと思いまするのは、片山内閣が、政令をもつて昨年七月から料理飲食業の一齊休業を宣し、さらに期限を本年二月一ぱいまで延長いたしましたが、それからあとは、一体どうするお考えでおられるか。相変わらず窮屈な食糧事情の上から申しても、またインフレに悩む國民感情の上から言うても、料飲店閉鎖そのものを一概に惡いとするものではありませんが、お尋ねいたしたいのは、その実情をよく御承知かということである。持込みの名のもとに、裏口営業は半ば公公然と行われておる。素人屋の目ぼしいものは、大会社の寮に買い占められて、接客専門と化しておる。地方へ行けば、お寺や社務所まで動員されて、事実上料理屋同然のお役目を果たしておることを、まさかお氣づきでないことはあるまいと思う。閣僚方も、もちろんうつかりではあろうが、こういうえたいの知れない所へお招きを受けられた御体驗も、ずいぶんあろうとお察しする。(拍手)しかも、税金はびた一文もあがりません。まさか、おとき料やお神樂代の上前をはねるわけにもいきますまい。耳をおおうて鈴を盗むということは、まさにこのことである。名実ともに二つながらとれぬとなれば、名をとるより実をとるのが生きた政治あり方だと、われわれは考える。名分さえ立てば実質はどうでもよいと考え方るならば、これはわれわれの考え方とは逆であります。手をかえ、品をかえて、あくまで飲ずんばやまず、食わずんばやまずというのが、今日のインフレ階級である。とる方法さえ講ずれば、みすみすとれる税金を見逃しつつあるのは、どうあつても、ばかげた話であると思いますが、一体料飲店休業問題をどう扱おうとなさつておるのか、この場合、その方針を、この税金の問題と関連して伺つておきたいと思います。  さらに進んで、私は道義高揚に関してお尋ねをいたしたいと存じます。この問題につきましては、すでにわが党の植原先輩より追求されるところがありましたが、片山首相は、われにおいて道義にもとるがごとき行為さらになしと御抗弁がありましたのに対し、私はまだ心得がたく存じまするので、さらに所感の一端を申し述べまして、片山総理に質すところあらんと存ずる次第であります。  片山総理は、常に口を開けば國家の現状を述べられて、國民耐乏生活をお求めになる。求めらるるまでもなく、耐乏生活、いたしましよう。しかしながら、求められる耐乏生活のかなたには、さだかなる光明がなければならぬ。公約は次から次へと裏切られていく、お先まつくらの中で、耐乏生活のし放しをさせられたのでは、たまつたものではないというのが、國民の偽らぬ感情であります。(拍手)しかも耐乏生活には、貧しくとも、そこに一家のなごやかな、樂しさがあつて、初めて生活力というものがわき出てまいります。一國の政治またしかり、特にしかりであります。  寄合世帶である、連立政権である。やりにくかろう。おか目八目で、はたで見ておるようなわけにはいかぬ、実際に政治をやつてみると、なかなかむずかしかろう。非常時であるから、それはやりにくかろう。しかし、せめてそこに閣内においては、閣僚たちの一致協力したるところの意氣統合があつてこそ、ほそぼそながらも政治力がわき上つてくるはずである。思うに、今日ほど國内総親和——お互い國民手をとり合つて、いばらの道を切り開いていかなければならぬ重大なるときはございません。そのときに、上に立つ片山内閣が、閣内親和どころか、閣内総げんかをやつておるような状態でどうして溌剌たる政治力がわいていまいりましようか。どうして國民に号令を下す資格がございましようか。とかく片山内閣掛声では、國民から馬の耳に念佛扱いされるのも、これは理の当然といわなければならぬ。(拍手)  今さら私は申し上げたくない。しかし、言わざらんと欲するも言わざるを得ぬのは、過日の参議院におきまして、林國務大臣の追放問題をめぐりまして、御本人の林國務大臣鈴木司法大臣との間に繰拡げられましたところの論爭であります。論爭というと聞こえがよいが、醜悪極まりなきところのどろ試合である。歴代内閣未だかつて見ざるところの醜態を、白日のもとにさらけ出したるものである。これを見、これを聞いた私ども、思わず目をおおい、耳をふさがざるを得ぬ醜状にあきれ果てたのであります。私は、林國務大臣追出しの陰謀が、傳えらるるがごとく閣僚によつて行われたかどうか、さようなことは存じませんけれども、いかにも血迷うたりとはいえ、いやしくも國務大臣たる人が、参議院壇上において、同僚の大臣たちを陰謀呼ばわりするがごとき、あられもないありさまを見るに至つては、けんかはまさに両成敗、どちらもどちらと、ただただあきれるのほかはなかつたのであります。その前には、平野農林大臣罷免問題をめぐつて、三十年來の同志が、血で血を洗う爭いを繰返した。ただただ唖然たるのみである。  君子の交じりは淡きこと水のことしと聞く。植原氏に対する片山総理の先日の御答弁のごとく、同志といえども、意見を異にすれば、わかれることもいたしかたなかろう。またやむを得ぬ事情があれば、たもとをわかつことも余儀なかろう。人生のならい、政治の上に通用できぬとは申しません。しかし、わかれるに際し、わかれて後も淡々として、後味の惡きを残すまいぞよ、君子の交じりは淡きこと水のことしと、私どもは教えられてきておる。しかるに何ぞ、五臓六腑に煮えくり返る遺恨をたぎらせ、無念の歯がみをしながら、次々と脱落し行く片山内閣閣僚の姿を見送るるとき、人論五常の頽廃を、片山内閣に嘆かざるを得なかつたのである。(拍手道義高揚を天下に叫ぶ片山内閣たるもの、よろしく、まずその足元を正して出直すべきであると申し上げても、片山首相、返す言葉がござりまするか。クリスチヤンにして温厚の君子人と承る片山総理の手綱をもつてしては、とうてい締めきれぬところに、片山内閣落馬の宿命が予見さると、心ある國民は嘆いておりまする。人間片山としての率直なる御心境を、國民のためにお聽かせ願いたいと思う。  さらに最後に一つ、この混沌たる政局に処する片山総理の御覚悟のほどを伺いたいと存じまする。時間がございませんので、速記録を引用することを割愛いたしまするが、顧みますれば、過ぐ第九十一議会におきまして、吉田内閣に対し解散決議案をたたきつけ、野党三派連合軍の陣頭に立つて決議案の趣旨を説明されたのは、実にまごうかたなき今日の片山首相、あなたでございます。(拍手)多くはこの際申しません。片山内閣はいつまで続くか、世間ではこのうわさでもちつておることは、片山総理のお耳にも達しておることと存じます。最近しばしば各方面で発表される輿論調査まつまでもなく、人心のようやく片山内閣を去りつつあることも、よくおわかりであろうと存じます。かつて解散決議案に盛られた御説明にまさるとも劣らぬ今日の行き詰まれる政局であることも、身にしみてよく御承知のことであると存じます。きのうは人の身、きようはわが身、因果はめぐる小車とは、まさにこのことでございましよう。(拍手政治に対する片山総理の信念に変わりなければ、すなわち解散を断行して、信を國民に問うべき時機、またまさにめぐり來れることを、痛切に感ぜらるるはずであると存じます。実際政治に修練を積むと心境に変化を來すということがあるそうでありますから、多少変つておるかと存じますが、しかし、高度民主主義のために、高度民主主義の名誉のために、人に強いるはやすく、みずから行うはかたしというがごとき非難を受けられることがないように、みずから決せられるところあるべきと存じまするが、目下政局に対しまする、偽らぬ御心境を承つておきたいと存じます。  以上数点をもつて質問といたします。繰返しお尋ねすることは差控えます。私のお尋ね申し上げました節々に対しましては、漏れなく、かつ明快に御答弁いただけることを期待いたしまして、私の質問を打切つておきます。(拍手)     〔國務大臣片山哲登壇
  5. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 辻君の御質問に、順次お答えしたいと思います。  第一は、行政整理人員整理に関する御質問であります。この問題につきましては、一昨日、担当齋藤國務相より詳細に御答弁いたしました通りであり、かつまた施政方針演説において私が触れた点であり、また鈴木茂三郎君にお答えした通りであります。すなわち、今日根本的な行政機構改革に手をつけたいのであります。わが國の行政機構は、官僚に偏し、また非能率的であり、旧態依然たる機構でありまするのに手をつけまして、この機会根本的改革を断行いたしたいのであります。これについては審議会を設け、諸君の御意見を十分に取入れて、その進行をはかつていきたいと思つております。これとは別に、ただいま御質問の要点であります人員整理の問題でありますが、これにも手をつけたいと考えております。人員整理したいのであります。但しこの問題は、数日前私が施政方針演説で述べました直後でありまして、今これを具体的にどういう部面において人を減らし、いつ何割人を減らすと言うようなことを、ただいまここでお答えする段階に、まだ至つていないのであります。これは十分檢討いたしまして——なかなか大きな問題であり、及ぼす影響が重大でありますから、愼重態度をもつて檢討いたしまして、必ずこれは諸君にお示しいたすことにいたします。間違いなく、これは実行いたしたいと思つております。但し、失業問題、予算の問題、その他いろいろ影響するところが大きいのでありますから、これらとにらみ合わして、目下愼重檢討中であります。  第二番目の税制改革に関する問題は、大藏大臣よりお答えいたすことにいたします。  第三の道義高揚に関する問題であります。この問題は、先日植原君にお答えした通りでありますが、ただいま御指摘になりました例、すなわち、林前國務大臣が去るに臨んで参議院議政壇上において述べられました事柄を中心としてお述べになつたようでありますが、やはりこういう問題は、事実に基いて考えていかなければならないと思います。いかにも林君と鈴木君とが確執して、けんかをしておるとか、こういうようなことを基本としてお述べになりましたけれども、それは事実は非常に違つておるのであります。林君は非常にお氣の毒でありました。追放にかかりましたことは大臣の地位からもお去りになり、議員の地位からも去られたということは、まことにお氣の毒であり、その心境には御同情いたしまするが、決して事を構えて追放にかけるとか、追出すとか、けんかをして追出してしまつたというようなことは、断じてないということを明らかに申し上げておきます。その他、たびたび申し上げることでありますけれども、追放を政略に利用するというようなことは決してやりません。また閣僚にもそういうことはやらさないようにしておるのが私の方針でありまするから、十分に御了承願いたいと思います。  最後に、解散論をお尋ねになりました。なるほど私は、前の議会において吉田内閣に向つて解散要求の決議案を説明いたしました。このときは、國民全体の輿論を議会に現わす方法をとらなければならない、デモンストレーシヨンがありまする際に、デモによつて政権が動くというようなることは、民主主義の政治の本道ではない、議会に國民の総意を反映せしめることが最も必要である、こういう理論に立脚いたしまして進めたのであります。今日においても、その理論には私は変りないと信じております。すなわち民主主義政治は、國民の総意によつて政治をいたすのでありまするが、この國民の総意をいかに現すか、いかに結論づけるかと申しますと、結局、國民の総意を議会に反映せしめることが、最も必要なことと思つておるのであります。すなわち、その意味において、今日輿論がどうであるとか、非難囂々であるとか、いろいろの意見がありまするが、しかし私は、議会において信任のある限り、議会の多数が支持される限りにおいては、政局を担当していかなければならないと信じておるのであります。(拍手)この意味において、ただいろいろの議論があるから、すぐに解散をなせとかいうような議論は、眞の民主主義の政治でではないということを信じておる次第でありまするから、ただいま、辻君の御質問いたいしましては…     〔発言する者多し〕
  6. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  7. 片山哲

    國務大臣片山哲君)(続) 今日私は、なお議会において多数の信任を得ておると信じておりますから、政局を担当していきたいと考えておる次第であります。     〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  8. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 辻議員の御質問に対し、大藏大臣の関係する三点をお答えいたしたいと存じます。現下のような財政所得の激変しつつあるもとにおきまして、これを所在にとらえて課税するということは、非常な困難があるのでありますけれども、政府といたしましては、これを克服するところによつてのみインフレーシヨンの危機を打開することができると固く信じておりますので、昨日來申し述べましたような諸般の政策手続を実施いたしまして、財産所得の追及を徹底し、賦課を強行いたしておるような次第であります。勤労所得者に対してのみならず、法人、会社に対する徴税の徹底、あるいはインフレ利得者その他大口利得者に対する徹底をも、たゆまずこれをやることによりまして、この租税確保をいたしたいと思つておる次第であります。  それから、インフレの激化しております現在におきましては、從來わが國でとり來つておりますような前年度の所得を基礎としての賦課制度では、とうてい税を課くる目的を達することができない現状にありますので、政府といたしましては、予算申告制を採用した次第であります。申告制につきましては、民主的な、最も進んだ制度でありますが、これもすでに申し上げましたような、國民のこれを活用する途、あるいは知識の普及というようなことが、いささか欠けておる点もありますので、この点を租税完納の運動その他によつて徹底をいたしまして、そうして、この制度の活用ということを廣く進めていきたいと思うのであります。從つて予算申告制をこの際改めようという考えはないことを御了承願いたいと思います。  それから、この財源を所在にとらえる、あらゆるものについての財源をとらえる、こういうことについてのお話があつたのであります。政府といたしましては、二十三年度の予算編成にあたりましては、この直接税、間接税というような形式だけでなしに、廣く財源をとらえ、負担の公平を期するとともに、税源を押さえまして課税をしてまいりまして、税收入の確保ということを期したいと思う次第であります。     〔國務大臣北村徳太郎君登壇
  9. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君) 運輸行政に御経驗の深い辻君から、ただいま御質問中に、現業廳たる國鉄運営に関してのお言葉がありましたので、その面について考えておることを申し述べまして、御答弁申し上げたいと思います。  國鉄の経営をどうして合理化するかというような問題については、現下、とにもかくにも、日本の危機経済の主要なる原因が物の欠乏にあります限り、増産と相関連いたしまして、輸送のことがきわめて重大であることは、申し上げるまでもないのでございます。從いまして、國鉄の運営をどうして合理化するかという問題は、これはもちろん積極の面と消極の面とあると思うのでございますが、まず積極面といたしましては、現状において何とかして輸送力を増強しなければならぬ。そのことによつて、現下國の要請にこたえながら、一面において、赤字を続けておる國鉄の收入増加をはからなければならぬ。これにつきましては、昨年三月以來、毎月九百万トンを輸送するという計画を立てまして、これに努力をいたしたのでございますが、大体計画通りの成果をあげることができたのであります。それから七月以來、乘客列車の増発等も考慮いたしまして、急行あるいは準急の止つたものを復活するというようなこともいたしまして、それとともに、鉄道を明るくする運動というふうなものを起しつつあるわけでございます。サービス等については、なお御不滿が相当あろうと私どもも痛感いたしております。これが改善には全力を盡くしたい、こういうことを考えておる次第でございます。  なお國鉄の現状は、施設、車輛等の補修を十分に完全にしなければならぬのでありますが、これは國鉄の実相報告書において御承知通りでありまして、われわれといたしましては、特段の措置を講ずるのではなければ、輸送力を増強し得ないのみならず、かえつてこれが低下する危險に今さらされておる、こういう状況にあるのであります。從いまして、これらのことにつきましては、石炭事情等もございまして、これが増收をはかるということが、きわめて困難な状態にあるということを、まず申し上げなければならぬのであります。ということは、大体、現在今の國鉄事情では、一箇年少なくとも八万八千トンくらいの鋼材を要するのでありまするが、今日まで入手し得るものは、一万トンないし二万トンくらいの現状でございまして、この程度をもつてしては、相当に資材の面のために人手を要するということを御了承願わなければならぬのであります。  次に、(「質問に対する答えをしなさい」と呼ぶ者あり)それですから、初めから申しておるのでありまするが…     〔発言する者多く、議場騒然〕
  10. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  11. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君)(続) 行政整理に関連いたしまして、國鉄の運営の根本問の運営の根本問題を言つておるのであります。從いまして、次に人員の適当なる配置の問題を考えなければならぬ。それにつきましては、一般行政官廳と、企業としての國鉄とは、考え方を異にしなければならぬ。何となれば、國鉄一つの業務でありますから、業務量に從つて適当なる人員というものを勘案しなければならぬ。從つて、これについては勤労責任を明確にする、あるいは経理責任を明確にする、その他諸般の職場規律等を嚴格にいたしまして、引締めるべき点は十分に引締める、緊縮を要する点につきましては十分に緊縮をはかる、そうして、能率を上げるために全力をあげたいと考えているのであります。このことにつきましては、配置轉換等も考えております。あるいは配置のでこぼこ等もございます。かようにいたしまして、できるだけの能率を上げたい。なおまた能率を上げるためには、機械化の面も相当ある。たとえば、現在御承知の踏切の番をしている人、あれは三万人おる。この三万人の人間を機械化することによつて、これを圧縮することができる。約三万人の人を圧縮することができる。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  12. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 靜粛に
  13. 北村徳太郎

    國務大臣北村徳太郎君)(続) この問題は、少なからず大きな問題でありますから、これらのものをもつと効率高き方面に向けるというようなことをも、二十三年度の予算にはこれを計上することにいたしているのでありまして、いずれ御協賛を願わなければならぬと考えているのであります。  何と申しましても、國鉄運営の最も大きな問題は、この物的の條件においては石炭でございます。石炭の効率を上げるというような点においても、今後十分に努力をいたしたい。從つてこの問題は、國鉄独立採算制度、先ほど辻君が御質問になりました独立採算制とにらみ合わせて、業務量に從つて必要なる処理をするということを申し上げておく次第であります。(拍手
  14. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 逓信政務次官椎熊三郎君。     〔政府委員椎熊三郎君登壇
  15. 椎熊三郎

    ○政府委員(椎熊三郎君) 辻君の逓信省に関する御質問の点についてお答え申し上げます。  逓信省といたしましては、目下根本的なる機構の大改革を考慮中でありまして、これが実施のために、目下関係方面とも折衝中でございます。從いまして、人員整理のごときも、この根本問題の解決とにらみ合わせまして、合理的なる解決をいたしたいと存じております。(拍手)從いまして、近く成案を得ましたならば、できるならば近い機会にこの國会に提案をいたしまして、御審議、御協賛を御願いいたしたいと存じておるような次第であります。(拍手
  16. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 和田國務大臣は、やむを得ざる関係の要務のため登院されておりません。從つて大臣答弁は、次に保留いたします。降旗徳弥君。     〔降旗徳弥君登壇
  17. 降旗徳弥

    ○降旗徳弥君 私は、同志クラブを代表し、以下数点につき、片山総理大臣施政方針演説に対し質問を試みんとするものであります。  率直に申しますると、昨年の第一回國会の劈頭におきまして、片山首相の初めての演説を聽きましたときには、私どもといえども、心身の緊張することを禁じ能わなかつたのでありまするが、去る二十二日、再びこれを本議場に聽くに至りましたときには、顧みて寂漠と失望の感にたえなかつたのであります。(拍手)  およそ政治は、單なる文章や宣傳の羅列であつてはなりません。國家民衆のために、われ何事をなせりやの問題であり、われ何事をなさんかの決心でなければなりません。片山首相が、組閣以來八ヶ月、國家再建の重大時期を担当しておつたにもかかわらず、その責任ある政治の実績については、遂に一言も言及し得なかつたということは、すなわち、かの経済緊急対策にせよ、流通秩序確立要綱にせよ、あるいはまた新物價体系にせよ、まつたくの机上計画に終つた失敗を無言のうちに認めておるものなりと言わざるを得ないのであります。(拍手)  さて第一に、次の点を質したいと思います。片山首相は、基礎産業と輸出産業に重点をおく旨を明らかにし、復興建設計画の根幹として、昭和二十三年度においては、前年に比し、鉱工業生産において四割以上の増産をすると申しております。しかしながら、実際問題としてこれを見ますれば、あまりにも現実を無視するものであります。何となれば、鉱工業生産の総合指数は、昨年は七月をピークといたしまして、以來引続き低下を続けておるのでありまして、一たび低落の途をたどり始めた生産は、これを一挙に上昇せしめることは、すこぶる困難なことであります。しかるに首相は、綿糸ほか五点の重要基礎物資について、厖大なる数字を発表しております。しかも、かかる厖大なる増産が、ここ一箇年の間にいかにして可能なるか、何ら具体的の根拠を示しておりません。(拍手)否、むしろ現内閣の力量では、國民には了解のできぬ数字なりと言わざるを得ない。もし、この数字にして信頼でき得ずとするならば、片山内閣経済政策は、その根底より崩壊せざるを得ないのであります。(拍手)この点、十分なる資料を至急國会に提出されんことを望みます。  次にお伺い申し上げたいことは、中小企業振興に関する政府の方針であります。片山首相は、中小企業の振興はまさにわが國経済再建の中心命題であると申しております。戰前におきましても、全輸出品の六〇%は中小工業の生産品であつたことは、申し上げるまでもないところでありまするが、戰後、大企業が崩壊して以來、特にその重要性を認めらるるに至つたのであります。しかるに、今日これらの企業は、融資の不円滑なることと、停電、休電の頻繁なることと、労働攻勢の熾烈なることなどによりまして、相次いで閉鎖され、解散されつつあることは、最近の労働省の統計も、これを明らかにしておるのであります。これは、経済再建の上から見ましても重大なる問題であります。政府は、これらの事情、すなわち金融、電力、労働爭議の解決に、いかに対処されんとするか、伺いたいのであります。  次に質したいことは、復興金融公庫の問題であります。申すまでもなく、昭和二十二年中における日銀券の増加高は、一千二百五十七億円でありまして、そのうちの約八割は財政資金に原因するものであり、現在インフレの進行は、もつぱら、この不健全なる國家財政に起因しておるのであります。しかして、この財政資金中少なからざるものが復金に流れ込んでおるのでありまして、復金の存在は、この意味よりも閑却することができぬのであります。しかるに、わが國経済再建の大黒柱をなす復金の陣容については、すでに世に定評があるのでありまして、その組織並びに職員素質の貧弱なることは、金庫本來の目的を推進していくに安心ができぬのであります。さらにその上に、金庫の運営については、各省のなわばり爭いが依然として絶えず、官僚並びに政界のボス的存在の暗躍さえとりざたされておるのでありまして、これでは、眞に経済再建のために精進し、復金を利用せんとする人々に、重大なる迷惑を及ぼすものと申さねばなりません。政府は進んで復金の粛正と改革をなさんとするか否か、伺いたいのであります。(拍手)  次に質したい点は、労働関係調整法並びに労働委員会の問題であります。かつて吉田内閣当時、社会党諸君が、この労調法に対して、議会の内外を通じ、いかに激越なる闘爭を展開したかは、今なおなまなましい事実であります。しかるに、かつてその急先峰の一人であつた米窪君が、このたびは初代の労働大臣になつたのであります。労調法を改正して、爭議禁止の既定を現業、非現業を問わず前官吏に適用するにあらざれば、今後深刻化する労働攻勢に対し、これを解決すること困難なりとの意見に、同君は決意を固めたと傳えられております。もし、これが事実とすならば、驚くべき豹変であります。(拍手)さらにまた労働委員会の存在については、今日各方面に重大なる批評があります。労働省は、中労委の性格の不明瞭なるに乘じ、その背後に隠れて、賃金問題の責任を回避しつつあります。一体、現在企業が最も苦しむ問題は何であるかと申しますと、それは高率なる課税と、労銀の高騰であり、金融は、單にこれがしりぬぐいをしておる場合が多いのであります。課税と労働の両問題を解決することにより、企業に再建の余力を與えることは、経済復興の重大な課題でなければなりません。すなわち、適正なる賃金の決定並びに妥当なる労働條件の確立のためには、労働委員会の中立委員等の適否は、重大なる関連をもつものであります。労調法の改正並びに中労委、地方労委の性格、構成について改正の意思ありや否や、この点を米窪労働大臣に質したいのであります。(拍手)  次にお尋ねしたい点は、電力問題であります。政府は基礎産業の一つとして、石炭とともに電力の計画目標を発表しておるのでありますが、これは工業生産の成績が動力源たる石炭並びに電力に負う点が多いためにほかなりません。しかるに、片山内閣は成立以來、社会党の一枚看板たる石炭國官問題にのみ重点を置き、電力はこれを軽視してきた結果、そのために工業生産の回復を遅延せしめ、かつ家庭の生活に至るまで非常なる不便を與えることになつたのであります。(拍手)  一体電力事情は、昨年一月、異常豊水に惠まれて、幸先のよいスタートを切つたのでありまするが、八月、九月の渇水並びに洪低水によつて、発電所は故障続出して、発電量は急速に低下したのであります。水谷商工大臣は、石炭問題に奔走して寧日なく、夏季の異常渇水による冬季の電力事情がどうなるかについては、あまり考えていなかつたようでありまして、当時電力局では、冬季に備えて緊急対策を用意したのでありまするが、この案は、結局日の目を見ずして終つたといわれております。十一月になつてから、電力事情は非常に悪くなり、遂に水谷君の石炭大臣は、停電大臣とならざるを得なかつた拍手)。商工大臣は、これをどう見られるか。そうして今年度は、電力供給増加に対しいかなる対策をもつてこられるか、この点を伺いたいのであります。さらに附け加えてお聽きしたい点は、過般商工省の人事異動がありました節、急進派の官吏を拔擢し、電力國官の準備を進められておるやに傳えられておるのでありまするが、眞偽いかん。(拍手)  次に、政府は炭鉱國官について今日までいかなる準備を進められておりますか、その進捗状態を詳細報告せられたいのであります。片山首相は、演説の中において、昨年十二月には終戰後の最高記録たる二百九十六万トンの出炭を確保せりとして誇示しておるのでありまするが、これは断じて炭鉱國官の賜ではありません。(拍手)われわれが常に主張しておりました労資協力一致の結果にあらずして何ぞやであります。(拍手)いわんや、最近の外電は、英國の炭鉱國有の失敗をしばしば傳えておるのであります。政府は、これらの事実につき深く反省しなければなりません。  次に、租税滯納のことについて一言申し述べたいと思います。二十二年度に予定されている租税収入は、合計一千三百数十億円であります。同年度の國民所得は、大体八千三百億円内外と見られておるのでありまして、國税はその一六%に当り、この比率は、諸外國に比して決して高率のものということができぬのであります。しかしながら、國民所得の相当部分は、いわゆるやみ所得でありまして、これをとらえることができぬ以上は、國家財政の赤字は、ただちに國民の家計並びに企業の赤字に振り変つていく危險が、現に非常に多くなつてきておるのであります。しかして租税滯納額は、今日未だ九百数十億円の巨額に達しておるのでありまして、これがため、國庫の現計は厖大なる支拂超過となり、通過膨張の主因をなしておるのでありまして、総司令部においても、強くこの滯納の状態に警告を與えておるのであります。  一体かくのごとき厖大なる滯納の処分のできぬということは、まさに政府の重大なる失政でなければなりません。(拍手)いやしくも、その原因を明白に國民に納得せしむるにあらざれば、租税の秩序はここに紊乱し、経済道義は地に落ちるのであります。(拍手大藏大臣は、この原因を詳細報告する責任があります。しかして、さらに政府は、一体かくのごとき滯納を果たして取立て得るや否や、もし取立て得ずとするならば、この補填をいかなる手段によつてなさんとするか、これを明白にせざれば、國家財政の根幹は絶対に確立することができません。この点に対する答弁を願います。(拍手)  次に、民・國両党出身閣僚に申し上げます。およそ労働問題は、國家再建の重大案件でありまして、今日政治の基本政策でなければなりません。しかるにもかかわらず、新聞紙上の大臣談として、社会党を加えずしては政局担当の効果なしなどという笑止千万の記事が、事実の上において放免されたものといたしましたならば、天下の重きを担つて立つ公党の面目いずこにありやと言わざるを得ない。(拍手一体社会党すなわち米窪労政は、発足以來今日に至るまで、あるいは労組によるやみ撲滅の運動にしろ、生産復興運動にしろ、爭議の平和的解決にしろ、これらの問題について、はたしていかなる功績を示したか、私は寡聞にして、これを知らないのであります。(拍手)われわれは、今こそ優柔不断の政策を退けて、労資両面に対する政策を強化し、その総力を結集せしむるの途を断固はからねばなりません。  次にお伺いしたいのは、政治道義の問題であります。率直に申しますと、國民大衆の中には、小党分立、政情不安の現状を打破して、二大政党対立の時代を要望する声が、澎湃として起つておるのでありまするが、この声を背景として、先般社会党大会には、一つの大きな動きが表面化したのであります。それは、いわゆる四党政策協定の破棄問題であります。同協定第五項の國債利拂停止の重要案件につきましては、すでに鈴木君から質疑が行われたのでありまするから、これを省略いたします。しかしながら、鈴木会長は、これと同時に四党政治協定の破棄を併せて声明しておるのであります。この政治協定を申すものは、御存じの通り、次のごときものであります。すなわち第一には、極右極左にあらず、中道を堅持するということであり、第二には、國家の機密を漏洩せずということであり、第三には、國家の治安を撹乱するがごとき言動をなさないという協定であります。鈴木君は、かくのごとき協定が社会党を侮辱するものであるということに、今日初めて氣がつかれたようであります。  しかしながら、靜かに考えてみますと、以上のごとき項目は、およそ日本人の常識であり、日本の政党の当然行くべき常道であります。孝行であれということは、人の子として当然の道であり、友愛であれということは、社会人として当然の姿でなければなりません。ことさらに孝行であれと教うるところにこそ、不幸ならんとする心配があるからであり、ことさらに友愛であれと言うところにこそ、憎惡の縣念があるからであります。中道の立場を堅持せよということは、ひよつとすると極右か極左に走るおそれがあるからであります。(拍手)もしもまた國家の機密を漏洩し、その治安を撹乱するがごとき言動をなすにいたりましては、政党そのものが、天下の政治を担当する資格なきことを、自ら暴露する以外の何ものでもありません。(拍手)こんなわかり切つた項目を、もつともらしく協約せざるを得なかつた裏面の事情にこそ、片山内閣が今日閣内の不統一と政局混乱を自ら招かざるを得ない根本原因があつたのであります。(拍手片山首相、芦田外相、この四党政治協定に関し、はたしていかんの所見かある、これを伺いたいのであります。(拍手)  次には、申し上げるまでもなく、ポツダム宣言を忠実に履行し、連合軍の占領政策に協力して、眞の民主主義を確立することは、我國民に與えられた最大の任務であります。從つて、われわれの確立せんとする民主主義は、人間の深い良心と愛情に基づくものであつて、決して利権に阿諛する便宜主義のものであつてはなりません、從つて政府は、このためには、政府と國民、議会と國民との間において、いやしくも誤解を生じ、過ちを犯し、國民をして民主主義に失望せしむることがあつてはならぬのであります。  申すまでもなく、國会は、國家最高の機関であり、八千万國民の生命財産を預かるところであります。國法を守り、國会法を重んじ、寸亳も犯すところなき議会においてこそ、われわれは安んじてその生命と財産を託し得るのであります。(拍手)しかるにもかかわらず、去る十二月九日、食糧公團法案ほか三法案の議会通過にあたつて、現内閣並びに與党三派諸君のとつた行動は、まさにこの神聖なる殿堂と、第一回國会の名誉を蹂躪せるものにあらずして何ぞやであります。(拍手)当日の深夜、談場において、あの混乱とあの無理押しとを多数の力で強行したことは、むしろ、人をして議会フアツシヨ、政党フアツシヨの再來をすら嘆ぜしめたのであります。(拍手)他に方法手段がなかつたわけではありません。政府並びに與党の諸君は、議案の審査、議案の処理について、早くよりなぜもつつと眞劍なる努力、なぜもつと完全なる手続をとることに全力を盡くさなかつたのでありますか。(拍手かくのごとき重大なる責任は、断じして現内閣並びに與党三派が負わねばならぬところであります。(拍手)  さらにまた、目下新聞紙上をにぎわしております平野力三君追放の問題等についてこれを見ましても、およそ現片山内閣の弱体と無定見と陰謀と術数が、いかに神聖なる民主主義の確立を阻害し、内外の信用と期待を裏切つておるかは、申し上げるまでもありません。(拍手)いまや、わが國の政治経済は、いよいよそのその危機を深刻にしております。いやしくも道義高揚を伴わずしては、この危機の打開は絶対に望み得ません。片山首相は、口に高度民主主義を唱え、経済の危機突破を叫んでおりまするが、悲しむべし、現実はこれを裏切つておるのであります。政界革新の機運は、今や新しい局面に驀進しております。私は、片山首相の強き考慮と反省を促して、私の質問を終える次第であります。(拍手)     〔國務大臣片山哲登壇
  18. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 降旗君の私に関する質問は、第一番目と一番おしまいであつたと思うのであります。  再建第一年度の建設政策の数字が不確実である、これに関する詳細なる数字を出せ、こういうような御意見であつたと思います。この点につきましては、近く、経済安定本部において檢討いたしておりまする結果を諸君にお示しいたすことになつております。第二回目の経済白書とでも申すべき実相を、十分に諸君にお示しいたしまして、数字を皆さんにお知らせいたす予定でありますから、しばらくお待ちを願いたいと存じます。  その次は、政治道義高揚に関する御心配であります。この点につきましては、まつたく私も、憂える点は降旗君と同様でありまして、今日最も必要なるものは、政治道義高揚であると思います。委員会の審議にあたりましても、その他國会全般の審議にあたりましても、眞に國会の信頼を博するように、民主主義政治の眞髄を徹した審議が行われることを、心より望んでおる次第でありまして、切に政府、國民及び議員諸君一体となつて、この目的達成のために進んでまいりたいと思います。あげられましたる例といたしまして、この内閣ができまするときに、政策協定のほかに政治協定というものがあつたということを前提としての御議論のようでありますけれども、お示しのような政治協定は、協定としてはできていないのであります。さように御了承願いたいと存じます。その他の問題につきましては、御意見としてよく伺つておきまして、眞に道義高揚のためには、全力を傾倒して努力いたしたいということを、この機会に改めて申し上げておく次第であります。(拍手)     〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  19. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 降旗さんからの質問——復金の問題と租税に関する問題の二問についてお答えいたしたいと思います。  復金の重要性が刻々と増しますのにつきまして、なるべくその資金を民間資金によることにして、日銀資金によらず、從つて日銀券の増発を抑止するということにつきましては、すでに昨日も鈴木さんへのお答えに詳しく述べたところでありますので、ここでは省くことにいたしたいと思うのであります。  次に、復金の機構組織についてのお尋ねであります。これは復金の重要性が増し、さらにまた必要に應じましては、これを拡大強化するということに考えている次第であります。  次に運営でありますが、各省のなわばり爭いということがごとき弊があるとするならば、これは十分刷新をし、ためる次第であります。なお、この運営につきましては、復興金融委員会と申すところの、各方面の権威を集めた委員会によつて決定しておる次第でありますが、その制度をさらに活用する。なお監査制度についても、昨日申し上げましたように存在するわけでありますが、その制度をさらに活用することによりまして、この融資の構成、嚴選、民主化を期したいと思う次第であります。  次に租税に関する問題でありますが、やみ所得の捕捉、あるいは法人会社に対する滯納への追求、こういうことに徹底を期していることは、先ほども申し上げた通りであります。ただ、この滯納税金につきまして、今現在九百億以上の滯納があるという意味ではないのでありまして、これは本予算で六百九十五億の税を確保することになりますし、さらに、この十二月一日からすべり出しましたところの追加予算において、六百五十三億の税を確保するわけであります。この税の確保につきましては、本月末の更生決定、最終の決定、被戰災者に関する課税その他について、申告と同時に納めていただく、こういうことをいたしておるのでありまして、滯納の徴收を嚴格にし、徹底を期すること、これによつてのみこの財政危機が救われ得るということは、すでに申し上げた通りでございます。     〔國務大臣米窪滿亮君登壇
  20. 米窪滿亮

    國務大臣(米窪滿亮君) 私に対する御質問にお答えいたします。労働省に対する團結権、團体交渉権、罷業権、これらの権利は、憲法の第二十五條以下において規定されておる基本的人権でございまして、この基本的人権の根幹をゆるがすがごとき変更を、法律の改正によつて試みようという言明を、かつて私はしたことはありません。但し日本の労働運動が、終戰後にわかに勃興いたしまして、從つて、労働者の獲得すべき権利と、労働者が公共の福祉あるいは社会の安寧等に対する明確なる認識の把握が、現行の法規の上に、明らかにその解釈がきめられておらない点があるのでございまして、すなわち、爭議権のないものが爭議権を行つたときにおける処置等については、未だ明確ならざる点がありまするから、これらの点については、これを明確にすべきか否か、目下考慮中でございます。第二の点、すなわち、私が労働大臣に就任以來の業績についての御批判がございましたが、私は、今日のインフレーシヨンを食い止める方策の一つとしては、生産の増強と流通秩序の確立にあると考えておるのでございます。これらの点は、政府の施策のみによつてこれを実現することは、なかなか困難でありまして、これについては、ただちに生産増強に関係のある労働者の生産性を高揚する意味において、これを労働階級に提唱いたしておるのでございます。昨年の十一月の中ほどから、経済復興会議を通じまして、今後約六千の工場を網羅するこれらの職域において、生産増強運動が自主的に展開される情勢にあるということを申し上げます。決して自画自賛を申し上げるわけではないのでございますが、この点については、今後大いに努力する考えでございます。お答えいたします。     〔國務大臣水谷長三郎君登壇
  21. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君) ただいま降旗さんの私に対する御質問——電力の問題、それから石炭の問題、中小企業の問題、これら三つをお答えいたします。  二十二年度の発電実績は、一部の推定を含めまして、水力二百八十億キロワット時、火力二十億キロワツト時、合計三百億キロワツト時程度考えられるのでありまするが、來年度は、極力水火力発電施設の補修、復旧、発電用石炭の増配等によりまして、出力の増加をはかる考えでございます。すなわち水力は、出水率を平年並みと見まして、年間約二百八十二億キロワツト時、火力は、発電用石炭、本年度の二百三十五万トンに対しまして、三百七十万トン程度の割当を見込みまして、発電量三十四億キロワツト時、水火力合計三百十六億キロワツト時を予定いたしまして、これを各種部門に合理的に配分し、電力の最高度活用をはかるよう、割当計画を進めておるのでございます。しかしながら、來年度の石炭の出炭量三千六百万トンを基礎といたしました各種産業の生産計画の達成上必要な需要電力を予想いたしますと、なお供給力は不足していまいります。特に冬季渇水期におきましては、相当の不足が予想されますので、一には非生産用電力は極力圧縮すること、二には熱源として使用される電力を抑制すること、三には豊水期に生産を集中し、四には使用電力の効率を高めることの方針によりまして、電力の配分を考えておる次第でございます。  さらにまた、この問題に関しまして、何か電氣事業の経営形態に関して商工大臣として考えておるかというようなことでございますが、要するところ、それは電氣事業の再編成を行う意思ありや否やという御質問であろうと思います。現在の電氣事業の経営機構は、発送電部門につきましては日本発送る電会社により、配電部門につきましては地区別の九配電会社によつて経営せられておるのでありまして、種々の欠陥があることは、御承知通りであろうと思います。從いまして、これが改善につきましては、目下あらゆる角度から檢討中でございますが、本問題につきましては、影響するところがきわめて廣く大きいので、各方面意見を十分聽き、善処したいと思つております。とりあえず、最近政府といたしましては、電産爭議に対する態度を決定せねばらなうのでございまして、あの電算爭議の大きな項目に、電氣事業の一社化を中心にした民主化の問題が含まれているのでございます。政府は、この電産爭議に対する態度を決定いたしました直後におきまして、できるならば、國会の電氣両委員長を初め、電氣事業の経営者代表、あるいは労働組合代表、あるいは学識経驗者、あるいは電氣消費者の代表、およそ十名内外の権威ある委員会を構成いたしまして、この電力事業の民主化について研究してもらいたいと考えております。  さらにまた、石炭國管の問題に関してお答えしておきます。申すまでもなく、われわれは、この四月一日の施行日を前にいたしまして、その施行の前後におきまして、生産の減退は断じて引起こしてはならないのでございまして、われわれは目下着々準備を進めておりますが、とりあえず、つい近いときに、全國の経営者の代表十名、さらにまた労働組合の代表に十名集まつていただきまして、政府の準備方針を述べたのでございます。そのとき経営者の代表は、この石炭の國家管理法案に対しては、過去において増産の見地に立つて反対したが、一たび國会において最高の意思が決定された今日においては、われわれは過去になずまず、全力を盡くしてこの法案の線に沿うて増産に協力するということを言明されました。さらにまた、労働組合の代表者の中におきましても左翼系統に属しておられる労働組合の代表者も、われわれは過去において、この法案が不徹底であるというような意味反対したのであるが、一たび國会においてこれが決定された以上は、過去になずまず、全力を盡してこの増産に邁進するということを申されました。(拍手)すなわち私がすぐる議会におきまして、政府、経営者並びに労働者三位一体の協力体制をもつて石炭の増産に邁進すると言つた体制は、緒についたと断言して差支えないのであります。  しかるにもかかわらず、この國会におきまして、自由党の植原君のごとき、またただいまの御質問者のように、すでに國会の意思が決定した今日におきまして、なおかつ、この國会法の施行を断念する考えがあるかどうかというようなことを聽かれるのは、わが國民政治の建前の上において、きわめて遺憾であると私は思うのであります。(拍手)さらに降旗君のごときは、國管がなくとも、今現に石炭はこのように増産されているではないかというようなことを盛んに言われる。     〔発言する者多し〕
  22. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 靜粛に願います。
  23. 水谷長三郎

    國務大臣(水谷長三郎君)(続) 十二月には約三百万トンに近い増産ができたのでありますが、これは十二月あるいは一月という短い期間を限つての増産でありまして、実に國管こそは、このような増産をば恒常的に推進する組織法であるということを、はつきり知つていただきたいと思うのでございます。その点、われわれといたしまして、このいわゆる國管の一番大きな中心問題である石炭局長の人選に関しましては、今労資双方が準備いたしまして、二月中に答申していただくことになつております。さらにまた全國炭鉱管理委員会の代表委員に対しましても、すでに経営者の方からは答申されたというような状態でございまして、目下着々準備を進めておる次第でございます。  さらに、これに関連いたしまして、石炭國家管理法と併行して行われるところの企業援助機関設置の問題に関しましては、さきに苫米地さんにお答えした通りでございまするから、さよう御了承願いたいと思います。  さらにまた、中小企業の振興対策につきましては、われわれは、まず第一には、中小企業の公正な利益を代表し、中小企業の公平なる取扱いを主張する政府機関といたしまして、中小企業廳を設置して、中小企業の向上に当たらせたいと思つて目下方面と折衝中でございます。成案を得れば、本國会に提出して御審議を仰ぎたいと考えております。  第二には、中小企業に関する資金・資材対策についてでございまするが、現在のような極度の物資不足経済のもとにおきましては、中小企業全部に対して、中小企業なるがゆえにこれに資金・資材を與えることや、事実上不可能であるのでございまして、われわれは、繰返し申し上げますように、輸出産業、さらにまた生活必需物資等々の重点的な取扱いをいたしまして、資金・資材を流したいと思つております。さらにまた、これに関連いたしまして、中小企業の特殊性に鑑みまして、どうしても中小企業を専門に取扱う金融機関を強化する必要をわれわれは考えております。  さらに第三には、技術、経営その他中小企業のレベルを向上させることは、本問題の中心課題でございまするがゆえに、これに関しては、具体的に各企業の欠陥を発見し、これを矯正する方法として、監査制度を実行したいと考えておる次第であります。なお、中小企業の欠陥を補う方法といたしましては、協同組合制度による共同施設の活発なる利用によりましてこれを解決することも、有力なる方法であると考えておりますがゆえに、眞に相互扶助の精神に基づいた共同施設中心の協同組合の振興については、今後とも、なお努力を重ねたいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔降旗徳弥君登壇
  24. 降旗徳弥

    ○降旗徳弥君 ただいま、片山総理大臣ほか各大臣の御答弁を聽いたのでありまするけれども、それにつきましては、おおむね私は首肯することができません。これは他日、この点を質したいと思います。  附け加えて申し上げまするけれども、いやしくも立憲政治のもとにおきまして成立する内閣は、その基礎を、自ら立つ政党に求めなければならぬのであります。しかるにもかかかわらず、過日來本議場において行わる論議の中に、あるいは四党政策協定といい、あるいは四党政治協定といい、この矛盾を一体どうお考えになりますか。  さらに申しまするならば、過日、民主党の幹事長苫米地義三君が、この壇上に立ちましたときには、議場定足数を欠くがゆえに流会になりました。いやしくも時の内閣の大與党の幹事長が、この壇上に立つときに、定足数を欠いて流会になるごときは、政府のよつてつて立つ政党の脆弱性を語るものでなくてはならないのであります。(拍手一体こんなことで、今や塗炭にあえいでおる國民大衆を救うことができますか。百聞は一見にしかずであります。この状態を見ましたときに、われわれは断じてこの点を総理はじめ反省せられんことを望みまして、私の質問を打切ります。(拍手
  25. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 田中久雄君。     〔田中久雄君登壇
  26. 田中久雄

    ○田中久雄君 私は、片山総理大臣施政方針演説に対しまして、きわめて重要なる数点に関して、ここに質問を試みたいと存じます。  まず第一は、行政機構改革整理の構想並びに範囲についてであります。総理大臣の御演説では、中央官廳の権限を地方に委譲する、同時に出先官廳の整理による人員の縮小、これを協議会を開いてやるというお話でありますが、現在の行政機構というものは、戰時状態と大差のない厖大なるものでありまして、わが國の現状から見まして、根本的に大改革を加えなければならぬものであると考えまするが、総理大臣は、この点いかがにお考えになるか。たとえば、省の廃合を断行して、農林、商工、安定本部を一本として産業省をつくるとか、厚生、労働両省を合わせて民生省とするというがごとく、現在の十省を五省くらいに縮めて、そうして國家再建のもとにしなければならぬと考えるが、いかが総理大臣はお考えになるか。今日の國民経済力、インフレの高進並びに官廳事務の複雜化より見まして、なかなか困難なことではあるけれども、勇氣をもつて断行すべき、日本の最も大切なことであると考えますが、総理はいかがお考えになるか。  また船舶運営会のごとき、戰時中つくり上げられた機関が今なおそのままに存在しており、そうして非常な國費を食つておるということは、大いに考えなければならぬと思うが、こういうものをなるべく早く廃止して、そうして民間企業の復興をはかるべきだと思うが、首相並びに運輸省はいかがお考えになるか。  官廳事務はきわめて複雜であり、現在むだが多いことは、全國民のひとしく知つておるところであります。農業の電化が盛んに唱えられ、かりに電氣器具を一つ欲しいと思つて申請いたしますと、地方から中央へ來て、往復二十数名の手を経なければならぬ。ようやく配給の切符が手にはいりましても、現物はやみでなければ手にはいらぬという現状において、もつと徹底的に簡素化し、そうして、譲るべきものは地方に譲つて官吏の責任を明確にして、認可とか許可とかいうものは、一々中央までもつてこなくてもよいように、徹底的な大整理を行つてほしいと思うが、具体的にいかがお考えになるか。この数点についてお伺いする次第であります。  質問の第二といたしましては、新警察制度実施後におけるボス警察化の防止と、治安維持の具体策についてお伺いをいたします。最近、特に年末年始に、かけましては、全國的に強盗や殺人という凶悪犯罪が激増しておりますが、善良なる國民は、きわめて不安を感じて生活をいたしておるのであります。インフレの激化とともに、終戰以來過去の蓄積によつて生活しておりました多くの人々は、もはや行くところまで行き着いてしまつて、ほとんど生活に脅威を感じております。また多くの生産会社は、赤字経済を続けて、今や整理、閉鎖、縮小のやむなきに至つておる。おそらく本年の梅雨期には、この失業の大群が洪水となつて現れるでありましよう。しかして、労働爭議も非常に深刻なものとなつて現れると考えますが、現在警察制度が改正せられ、殊に自治体警察制度が改正せられ、殊に自治体警察というものが非常に無力化しておる現状を見まして、これに対していかなる処置をおとりになり、ボス警察化の排撃と同時に、治安の確保をいかにおとりになるお考えであるか、この点、重ねて首相の御意見をお伺いするものであります。  第三に、産業復興の具体策について、商工、労働両大臣お尋ねをいたします。わが國の現状において、労働基準法は、企業の面に少からぬ負担の過重となつております。從つて、生産コストは上昇し、ひいては貿易上、外國の商品とわが國の商品との價格の両面において、はなはだしい不均衡を來すことと考えますが、この労働基準法と貿易價格の均衡についての調和をいかにおとりになる考えであるか。  また次に、官業一切の給與については、現在のような賃金制度では、とうてい能率を上げ、あるいは経費の縮減をはかることは不可能である、思い切つた徹底的な能率給制度を採用しなければならぬと思うが、この点、労働大臣その他のお考えはいかがであるか。  わが國の労働組合は、終戰後、一部を除いては、きわめて順調な発達を遂げつつあることは、まことに國家のため喜ぶべきであります。わが國が完全な独立國家となり得るためには、労働大衆のなみなみならぬ努力をおいてはないのでありますが、現在の労働運動にさらに一歩を進めて、祖國の完全独立のための勤労倫理の確立を考える必要があると思うが、米窪労働大臣は、この点いかがお考えになるか。  質問の第四として、インフレ問題に関し、大藏大臣に二点をお伺いいたします。  第一は、政府の非常なる努力にもかかわらず、また大藏大臣しばしばの御声明にもかかわらず、通貨に何らかの手が打たれるのではないかという声が、ちまたに絶えずうごめいております。しかも、これはますます廣くなつてくる。これはひとえに、インフレの速度がきわめて急調をたどつてきたところに一種の不安が生じているのであつて、抑えても抑えても当然起つてくる、全國民の不安の現れであると考えます。政府は、インフレーシヨン食い止めの目標を一体どこに置かれるのであるか。かつて戰時中、大本営はガダルカナルをもつて天王山と言い、サイパンを天王山と言い、レーテ島を天王山と言い、遂に沖縄を天王山と言いました。大藏大臣は、大本営の言うような天王山ではなしに、はつきりと、インフレの食い止めの最終線をどこに引くかということを明らかにせられたい。タバコの値段は七十円を最後としてもう上げないとか、百円として上げないとか、二百円で上げないとか、はつきりとせられたいと思うのであります。  その次に、産業復興金融金庫の融資の問題でありまするが、ただいまもいろいろと御説明がありましたけれども、復金設立当時の事情と、今日におきましては、金融の内容がまつたく姿をかえてきておるのであります。すなわち、現在の復興金融金庫の融資というものは、事業会社の赤字補填金となり、失業手当金と変つておるのであつて、産業復興のためには実際に行われないのみならず、これがインフレの大きな温床と化しておることは事実であります。金融の中央集権の行詰まりであつて、これは事業会社の内容を克明に調べ、その信用をよく知つている地方銀行の活用を一日も速やかにしない限り、私は恐るべきインフレの激化となると思うが、大藏大臣はいかがお考えになるか。(拍手)  次に第五として、農林大臣にお伺いをいたします。農林大臣は、農産物の價格に逓増制をお用いになる氣持はないか。総理大臣は、農業生産の一割増強を力説せられました。まことに当然のことであつて、現在の食糧事情より見まして、もとよりわれわれの望むところでありますが、演説だけでは一割は出てこないことは、総理大臣もよく御存じのことと思う。現在の供出制度というものは、戰時中の軍閥の思想でありますところの徴発制度、この徴発するという思想から行われている、独善的な、官僚独善の、きわめて無能であつて、きわめて愚劣であつて、きわめて最惡の制度であります。鶏が卵産むと、三つ産めば三つ、五つ産めば五つ飼主は取上げていくのであります。現在の農民が必死になつてつくつた米でも、麦でも、さつまいもでも、とればとるほど、とれた高に應じて、保有米を残して取上げていくのであつて、人間と鶏を間違えておる制度がこれである。総理大臣は、農具や報償物資に責任をもつから、農民は供出に責任をもつてもらいたい。お氣持はよくわかる。お氣持はよくわかるが、いやしくも一國の総理大臣ともあろうものが、報償物資を出すから、お前たちは責任をもつて供出をせよなんという、そんななさけない、たわけたことを言つては困る。私は農村に多くの知合いをもつておる。今日農村の連中は、自分らが眞檢になつて増産をしなければ、いつの日に独立ができるかという念に燃えておる。いかなる苦難も忍んで出すという念に燃えておるのである。報償物資をあてにしておるのではない。さようなことで、一割出るなんということは、もつてのほかであると私は考える。  そこで、現在の供出制度を根本的に改めるお考えは農林大臣にないか。すなわち、收穫を見てから割当をするのではなしに、植付前に割当をして、農民の責任の限界をはつきりする。これだけつくつてもらいたいということをはつきりする。しかして、そのつくつた以上のものに対しては、誇りと滿足のできるように、價格に段階をつけようというのであります。わかりやすく申しますならば、かりに十石の米を供出する農民は、五割の五石に対しては、一石の値段をかりに千二百円とする。残りの三割に対しては、一石当りの値段を二千円とする。最後の二割、すなわち二石に対しては、一石当りの値段を二千五百円とする。割当以上出した者に対しては、一石三千五百円として買い上げる。ここに、農民がほんとうに喜び、滿足をするのであります。とつただけずつとられたのでは、幾ら努力をしましても、安い値段で取上げられてしまいましのたでは、耕作を適当にしておいて、他の金もうけにはしる方がよほど利口者となつて、ここに正直者がばかを見るのである。どうぞ農林大臣は、この問題を眞劍にお考えになつて、一割増産が完全にできるように、農民に喜びと誇りと滿足を與えるようにお考えを願いたいと思う。  なおこの機会に、さらに農林大臣にお伺いいたしますが、御新任早々で、実情はお詳しくないかもしれませんが、本年の甘藷類は、米や麦の代替には認めない。そうして、取締りはきわめて嚴重に行われている。その結果といたしまして、供出をした後のさつまいもが、全國の農家にまだそのままになつております。二貫目以上動かすと、すぐに縛られる。供出は完納しておる。ここ一月を誤るならば、全國数億貫に近いさつまいもが腐る。(拍手)もし、これを腐らすようなことがあれば、全國の農民は、現内閣をのろうでありましよう。農林大臣はいかがなさるか、はつきりと、この議場を通じて御声明を願いたいと思う。  第六には、水害防止の根本策としての山林対策について、農相並びに建設院総裁にお伺いをいたします。この問題は、往々にして山林だけを考えたり、あるいは治山治水の面だけを考えておるために、非常な誤りが起つております。最近、山林の細分化であるとか、あるいは山林の開放であるとか、あるいは國家管理であるとか、いろいろな説が巷間に傳えられまして、山をもつておる者は、非常に大急ぎで伐採をいたしております。また、数十年先に利益を見るところの植林に対しては、ほとんど熱意をもつておりません。これは、この不安から起つておるのでありまして、前議会におきましても、当分の間やる氣持はないという御答弁であつたようでありますが、当分の間やる氣持はないというようなことでは、とうていこの伐採は食い止められません。やるなら、やるでよろしい。やらぬなら、やらぬでよろしい。もつと根本的に安心をするような御声明をいたされない限り、本年度の降雨期を考えますと、まことに戰慄するものがあるのであります。水害防止対策としての山林に対する御措置並びに御意見をお伺いいたしたいのであります。(拍手)  第七に、文部大臣お尋ねをいたします。六・三制を完全に実施して、その効果をあげるために、國字國語の改良について、いかなるお考えをもつておるか。六・三制は、まことに合理的な、結構な制度でありますけれども、日本の現状においては、漢字というきわめて複雜なるものを、千も千五百も学ばなければならぬという現状においては、六・三制をせつかく実施いたしましても、外國に見るような、非常に能率的な学術の進歩は、望めないと考えるのであります。二十六のアルフアベツトを組み合わせて、僅々八百語で、雜誌も読めれば、新聞も読めるという外國に比べて、わが國においては、下級中学を卒業しましても、新聞やあるいは雜誌が滿足に読めないようなことでは、とうてい六・三制の成果は期し得られないと思います。もとより、漢字に非常な執着をもつた大勢の人々がおる國でありますから、ただいま、ただちにこれを全廃することは不可能でありましようけれども、六・三制の実施の完全な成果を得るために、少なくとも將來漢字を全廃するという線に沿つていかれる御意思があるかどうか、この点、文部大臣にお伺いをいたします。  第八に、片山総理大臣は、資格審査委員会を國会の監督下におくべきであると思うが、お考えはいかがであるか。本來追放は、ポツダム宣言に言うところの、軍國主義の根絶というところから発して、極端なる國家主義者及び軍國主義者は追放すべしという原則によるべきであつて、いやしくも、追放はきわきて嚴粛であり、公正でなければなりません。その間、國民全般に一点の疑惑ももたすべき筋合のものではないのであります。われわれは、昨年の三月に、多少明朗でない追放の一端を前内閣の末期において見ておる。さらに、今度の平野農相の追放に至つては、事の眞偽は私は存じませんが、おそらく、いかにひいきな人がいえども、この追放は当然であるとは考えないであろうと思います。こういう考え國民にもたすということ、そのことが、ポツダム宣言の精神を冒涜するものであり、祖國再建の障害であると考える。(拍手)今や國会は、最高の國家機関となつて、新憲法下において最も大切なる機関となつておるので、委員会を國会の監督下におくべきがよいと思うが、総理大臣はいかにお考えになるか。  第九には、選挙法の改正についてお尋ねをいたします。首相は、金のかからぬ選挙公営の徹底を期したいというお話であります。まことに結構であつて、政界の腐敗は、選挙費用の多寡によつて起ることが多いのでありますから、これは徹底的に金のかからぬ選挙の実施を切にお願いしたいと思いますが、新聞の一部に傳えるところによりますと、ついでに選挙区もお入れになるやに傳えられておるのであります。民主政治というものは、選挙民、すなわち國民と、その代表である議員とのつながりがあつて初めて民主政治でありますが、昨年の選挙法改正に見たことく、結果はとにかくとして、與党だけの喜ぶような選挙法の改正は、断じて愼まなければならぬ。いわんや、第一回は大選挙区、第二回は中選挙区、この次はまた選挙区をかえる。選挙のたびごとに選挙区をいろうがごときは、民主政治を冒涜するものであつて、断じて愼むべきであると考えるが、総理大臣は、この点いかがにお考えになるか。  最後に、新憲法より見たる議会の解散と内閣の総辞職について、首相のお考えを伺います。言うまでもなく現内閣は、新憲法に基づく國会総理大臣指名によつてできておる内閣でありまして、もとより、議会解散の権限はもつておりますけれども、一方において、議員の任期は四年と明らかにきめられております。現在のわが國の國情は、一方にインフレの激化、一方に治安の混乱、実に大切な時期に遭遇しておるのであつて、やむを得ない時でない限り、解散は愼むべきものであると私は考える。解散をやれ、解散をやれというのは、戰爭をやれ、戰爭をやれと言つた軍人と同じく、まことに勇ましくて結構でありますけれども、國家の大局を考えて、やむを得ざる限り解散は避くべきであると私は考える。今や、流通秩序の確立という國民全体の非常な希望をもつたこの言葉も、あわれ、流通秩序の混乱と不通に終り、経済緊急対策に失敗した政府が、長期建設計画を唱えられても、國民の信頼を回復し、國民の失望を希望にかえることは、すでに手遅れとなつておるのであります。(拍手)現内閣は、三派の連立によりできたものでありますが、現在、そのうちの二派の社会・民主の両党が、一部分裂を見ておること、さらに先日の社会党大会において、四党協定が破棄せられたということは、いくら首相が弁明せられても、現内閣がすでに國民の信を失つておるという点において明らかである。(拍手)時局はまさに重大である。天下に信を失つた内閣は、速やかに退陣すべきだと思うが、首相のお考えはいかがであるか。  以上十点についてお伺いをいたします。     〔國務大臣片山哲登壇
  27. 片山哲

    國務大臣片山哲君) 第一点は、行政整理に関する御質問であります。先ほど來申し上げまする通り根本行政機構改革は、きわめて重大なる問題でありまするから、審議会にこれを移したいと考えております。そこで、田中君がいまお話になりましたような、五省くらいに削減したらどうかとか、あるいは根本的な能率増進の対策としてのいろいろの御議論は、あげて審議会等において審議さるることが適当と思いますから、ただいまのお示しの御意見は、十分審議会に傳えるようにいたしまして、よき結果を得たいと考えておる次第であります。  第二の新警察制度についてであります。わが國の警察制度が、はなはだしく官僚的であつたということをもちまして、徹底的に民主化される新しい警察制度が生れたのであります。この過渡時代におきましては、いろいろの摩擦と不便が國民に與えられたと思うのでありまするが、これは移り変わりの時代におきましては、やむをえないことと思うのであります。國民全体が、自治的に、自主的に、自分たちの治安を自分たちの組織をもつて守るという体制が、だんだんと生まれてこなければならないのでありまして、これによつて、初めて民主的な治安維持制度、警察制度が充実されると思います。このために、國民の協力を願いまして、新警察制度が、眞に民主的にして、かつまた新日本の治安維持のために有効かつ働かれることを期待いたしまして、政府といたしまして、十分その間に遺漏なきを期して進んでいきたいと思つておる次第であります。  その次は、資格審査委員会の管轄問題であります。これは、昨日も松原君から一つの提案がありましたが、これについて考えまするのに、昔の三権分立にこだわるわけではありませんけれども、この問題は、やはり行政問題として取扱うということが本筋ではなかろうかと思うのであります。國会に移しまして國会の監督下に移すということは、一つの理論にはなると思いまするけれども、行政部面を担当いたしておりまする政府のなすべき大きな仕事という中に包括されるのが理論ではなかろうかと思いまするので、しばらくは政府の責任において、現在のような状態で続けていくことが適当であろうと存じておるような次第であります。  次は選挙法に関する御議論であります。金のかからない選挙公営制度を徹底せしむるということにつきましては、諸君の一致せる御議論のようでありまして、まことに私も喜ばしく思います。つきましては、選挙区でありますけれども、今日のような物價騰貴の時代のおきましては、大選挙区は、なかなか金がかかると思います。やはり選挙区にも相当考慮を拂つていかなければならないと思つておるのでありまするが、これらも、各政党諸君の御意見を十分に伺いまして、諸君の方から自発的にいろいろ適切なる案が出されることを、非常に期待いたしておる次第であります。  なお最後に、解散問題であります。(「総辞職問題だ」と呼ぶ者あり)総辞職及び解散ですか。私といたしましては、先ほどお答えいたしました通り、議会政治を尊重する建前から、議会において支持を受けておりまするならば、現在の状態を続けていくことが至当であると思つております。(拍手)また、議会で多数の支持があるならば、議会を解散せずとも、この状態を続けていくことも、これまた前と同じように、今日の情勢から申しまして、必要なことであろうと思います。但し、諸君の意思は尊重いたします。議会の意思の現れ次第によつて、いかなる状態が現れるかということも、十分に考えていかなければならないので、一に私は、國会の意思を尊重いたしたいと考えている次第であります。  以上をもつてお答えといたしたいと思います。(拍手)     〔國務大臣米窪滿亮君登壇
  28. 米窪滿亮

    國務大臣(米窪滿亮君) 私に対する御質問についてお答えいたします。第一の点は、労働基準法が生産に対するウエートが比重に重くて、貿易が再開した場合に、外國商品との競爭において非常に不利であろうというお尋ねであつたと思うのでございます。この点は、私をして言わしむるならば、労働基準法に対する理解が、まだ十分にいつておらないのです。たとえて言いますならば、年次休暇制度、あるいは有給休暇のごとき問題につきましても、從來工場法で規定されたわくの上へ、さらに労働基準法のわくをかぶせるがごとき解釈が一部に行われているのでございます。從つて労働基準法の重圧を特に感ずるがごとき傾向があるのでございます。また時間外手当につきましても、労働基準法によりますれば二割五分ということになつておりますが、諸外國の例を見ますると、四割程度の、相当重い労働者の保護規定があるのでございまして、これらの点は、日本の労資双方の労働基準法に対する理解が、まだ十分にいつておらないと思うのでございます。從つて労働基準法を緩和するよりも、私は創意を凝らして、産業の合理化と、労働者の生産性の高揚をはかることが、貿易再開のときにあたつて、外國商品と競爭し得る有力なる基礎になるのではないかと考えるのでございます。  その次の御質問は、能率給を実施する用意があるかということであります。私は、趣旨としては能率給を実施することには異議はございません。ただ、これを実施するためには、職務給の基礎を固める必要があるのであります。そうして、それがためには二つの問題がある。すなわち、各産業に対して生産基準量を一々きめていくということができない今日、日本において、ただちに能率給を実施し得る用意がすでにできているかというと、能率給を実施するためには、やはり最低生活費を保障する最低賃金制が前提となつていくのでございまして、今日の日本のように、インフレーシヨンの速度が非常に速くて、そうして、これを抑圧する具体的の政策がまだ緒につかないときにおいて能率給を実施することは、尚早の感があるではないかと考えるのでございます。  最後の勤労倫理観の点については、まことに同感でございまして、勤労者に対して、義務的に労働するのではなく、自分らの権利として労働するのであり、殊にその労働の成果に対しては非常な誇りを感ずるという点に、日本の労働運動の一つの面をもつていくことについては、まつたく同感でございまして、私ども労働行政に携わつておる者は、労働教育の主眼点をそこへおくことによつて、いわゆる健全なる労働組合運動を指導していきたいと考えておる次第でございます。(拍手)     〔國務大臣栗栖赳夫君登壇
  29. 栗栖赳夫

    國務大臣(栗栖赳夫君) 田中議員の御質問の第一点は、インフレ食い止めの目標についてであります。これは、先般來しばしば申し上げましたように、激化せるインフレを急速に短時日に食い止め、克服することの困難なことは、御承知のことと思うのであります。この食い止めの目標は、諸般の事情から、諸般の政策を総合的に併せてこれを考えなければいけないのでありまして、簡單に目標を示すことは、非常に困難であります。しかし政府といたしましては、日銀通貨の面において、これのわくも考えたいと思つたのであります。第一回國会において各位の御協賛を経た通貨審議会において、三月末までの目標を二千七百億、こういうところにおいたのであります。これは、もちろん目標であり、最高限度の発行高といたしたのでありまして、その下に下まわるように、われわれ努力することは申すまでもないことでありますが、二千七百億、こういう目標を一應立てたわけであります。さらに二十三年度におきましては、物價、賃金その他の情況、諸政策等を見合わせて、この目標を立てたいと、今研究を進めておるような次第であります。  次に、復金についてのお尋ねでありますが、復金の融資について、この際、内訳の金額をちよつと申し上げてみたいと思うのであります。十二月末の残高は四百四十二億でございまして、そのうち、設備資金が百八十七億であります。運轉資金が二百五十七億弱、こうなつておる次第であります。そうして、こういうものの資金については、石炭その他緊要産業の生産を確保し、継続維持するために必要なる資金が出してあるのでありまして、赤字補填のために出すというようなことは、わずかに價格政策その他のずれを、一時的の金融によつてつておる。しかも、これも究極のところ、緊要なる産業に対して生産を継続し、さらに増加するという意味において、出しておるに止まるものであります。  それから、この復金の融資について、地方銀行を使つてはどうかというお説があるのであります。これは、いろいろな意味にもとれようと思うのであります。まず、市中銀行あるいは地方銀行において、この融資をし得る者については、復金に頼らないで、なるべくこういう方面にもついていくということは、先般來も申し上げた通りでありまして、その趣意に副うてやつておる次第であります。なお單独に市中銀行、地方銀行等が融資できないものについて、この復金の保証という形式のもとに、これをいたしておる次第であります。それから、別に地方銀行を復興金融金庫の窓口の意味で使つたらどうかという意味にも御質問が解されるのであります。この意味におきましても、復金融資が地方において名地に起こり、しかも迅速にするという必要が認められますならば、考慮いたしたいとも考えるのであります。(拍手)     〔國務大臣波多野鼎君登壇
  30. 波多野鼎

    國務大臣(波多野鼎君) 田中議員の御質問に対してお答えいたします。  農産物價格の逓増制を採用する考えはないかという御質問であります。農産物の生産者者價格を適正に定めていくことは、農民諸君の供出意欲を指摘する上におきまして、きわめて適切なる方策であることは、お説の通りであります。しかし、ただいま供出量に比例して、ただちに價格の逓増制を採用することは、全体の物價体系の上から考えまして、なお幾多の問題を包藏しておりますので、にわかに実行することは困難でありますが、生産資材等のリンク制その他の方法によりまして、御希望に副うような手段を講じたいと考えております。  第二の、供出後の甘藷が、いまや二箇月以内には腐敗するおそれのある状態にあるのだという点について、何か対策を考えているかという御質問でありますが、一〇〇%供出後の甘藷につきましては、私は、一〇〇%供出後の米に対すると同様の措置を講じたい。すなわち、價格の上か、あるいは配給物資の上で特別の措置を講じて、供出していただきたいと考えておりまして、その具体策を、今各方面と折衝中でございますから、近く決定して発表いたしたいと存じております。  次に山林の問題でございますが、山林の問題につきましては、政府として、すでに前農林大臣以來、何回となくこの議場におきましても、またあらゆる機会をとらえまして、山林の開放といつたようなことはやらないということを言明しておるのであります。これは方針として、現在においても変つておりませんが、まだいろいろの不安が残つているようでありますので、この際、はつきりと政府の所信を申し述べておきたいと思います。政府といたしまして、行き過ぎた伐採の防止及び造林の積極化のために特に考慮いたしている点は、次の点であります。  第一は、造林五箇年計画の実施であります。御承知のように、現在までの造林未済面積は百数十万町歩に上るのでありまして、その対策として、政府は、昭和二十三年度から五箇年計画で、國有林、民有林を通じて、合計二百八十五万町歩にわたる造林を達成しようとするのであります。これがためには、種の採取、貯藏、苗木の育成等に特段の措置を講じ、さらに補助金政策の積極化によりまして、造林意欲を大いに高揚したいと考えております。  第二は、施業案樹立の強行と、その実施の確保ということであります。現在、施業案が樹立されている森林は、その割合がきわめて少ない実情に鑑みまして、今年度以降、これが衝に当る森林組合の強化拡充と、補助金の画期的増額によりまして、全森林にその施業案が樹立されることを期しておるのであります。そうして、施業案の実行の確保については特に愼重を期し、民主的にして、しかも効果のあがる対策を、ただいま考慮いたしております。この方法によつて、施業案に基づかない森林伐採は行われないことになり、わが國の森林は、今後これ以上濫伐されることはないことを保証いたしたいと考えております。  この機会に、一昨日の苫米地議員の御質問に対してお答えいたしておきます。苫米地議員の御質問の要旨は、供出制度改革に伴うて、供出完遂後の主要食糧の自由販賣制を認める意思はないかという御質問でございました。この点については、政府はすでに昨年八月、農業生産の調整及び主要食糧の供出制度要綱を閣議で決定いたしましたが、その際、割当完遂後の主要食糧につきましては、政府以外のものに賣渡をし行うこと、すなわち自由販賣は認めぬ方針を立てたのでありまして、今日におきましても、この方針にいささかの変化もございません。ただしかし、農家の生産意欲の高揚をはかるという見地から、政府に対しましては、その超過供出を行う農民に対しましては、その超過分について、特別價格の設定あるいは物資の特配等特段の措置を講じたいと考え、その具体案については、目下その方面と折衝中でありまして、これも近く決定発表する段取りになつております。  松原一彦議員の御質問いたいしてお答えいたします。松原議員の御質問は、増産こそ至上命令であり、また可能と思う、増産は自給を目標とすべきでであつて、その際、主食は二割増産の計画を立てるべきであると思うがどうかという御質問でありました。食糧問題の解決には、増産が根本の問題であるということは、これは申し上げるまでもございません。從來の政府の施策におきまして、この点にいささか低調であつた、遺憾の点があつたということは、私も率直に認めたいと思います。今後は、責任供出制度の確立によりまして、食糧難を増産によつて解決するという方向に、大いに努力いたしたいと考えております。本年における増産目標を一割といたしましたことは、これは各農家がそれぞれ一割増産をなすことを目標としたものでありまして、現実における生産條件を考慮し、また肥料等の供給を確保するとともに、農家において、それぞれ増産上適切な事項を実行していただいて、全農家が増産の実をあげることを期待する趣旨でありまして、もとより個々の場合におきましては、増産の要素と可能性は、一割以上大なるものがございましようが、六百万農家に一齊に立ち上つてもらわなければならぬところのこの増産運動におきましては、われわれは、すべての農家が受入れていただける限度、すなわち一割を目標として選んだ次第であります。以上、お答えいたします。(拍手)     〔國務大臣森戸辰男君登壇
  31. 森戸辰男

    國務大臣(森戸辰男君) 田中君の御質問にお答えいたします。  日本の民主化は、精神の食物ともいうべき國語國字の民主化を重大な條件といたすのであります。御質問にあつたように、教育の民主化ということも、國語國字の民主化なしには、行われることが難しいのであります。ところが御承知のように、日本には複雜な漢字があり、ややこしいかなづかいがありまして、これが非常に教育妨げになつておることは、お説の通りであります。しかし、今政府といたしましては、漢字をただちに全廃する考えはもつておりません。しかし、この複雜多岐な漢字をできる限り整理統合いたしまして、簡易なものにいたしたいという努力はいたしております。御承知のように、一昨年漢字の数と種類を制限いたしまして、いわゆる当用漢字千八百五十字を定めたのであります。さらに昨年末には、これでも多過ぎるというので、教育漢字として八百八十一、約一千字に減らしたのであります。なお、漢字にはいろいろな読み方がありますので、当用漢字の音訓法を定めまして、読み方を單一化する方向に進んでおります。なお、字体もいろいろ複雜なるものがありまするので、これについても、簡易化する方向に進んでおりまするし、非常に複雜なかなづかいも、これをできるだけ簡單なものにする努力をいたしております。さらに文章につきましても、御承知の法律も口語体になり、むずかしい字が除かれましたし、科学の用語につきましても、統一の方向に努力いたしておりますし、公用文につきましても、改善委員会が設けられており、語る語においても、漸次改善統一の遂にあります。しかし、これは根本的の改革ではありません。わが國の國語については、さらに根本の問題がありまして、お示しのような、いわゆる漢字全廃の問題があり、全廃してローマ字に変えるべきであるか、あるいはかなにするか、かなは平かなにするか、またもつと徹底的には、何か万國語を採用すべきかというような問題があるのでありますが、これはしかし、國民の生活の根本に関する問題でありまして、政府が急速になすべきものではないと考えておるのであります。そこで、この問題につきましては、私どもは國語研究所というものを設けまして——これは財務当局と交渉の上、本國会に提出いたしたいと存じておりまするが、十分な研究を遂げ、しかも、各般の方々を代表する民主的な委員会の決議あるいは諮問にまちまして、万全を期して、日本の傳統と生活に即した、だれにでもわかりやすい、うるわしい、しかもはつきりとした、力強い國語をつくるように、皆さんとともに努力をいたしまして、日本の民主化を、この面においても徹底いたしたいと存じておる次第であります。(拍手)     —————————————
  32. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 國務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十七日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  33. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 山花君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 松岡駒吉

    ○議長(松岡駒吉君) 御異議なしと認めます。よつて動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十七分散会