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1948-06-29 第2回国会 衆議院 文教委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十九日(火曜日)     午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 松本 淳造君    理事 水谷  昇君 理事 高津 正道君    理事 西山冨佐太君       柏原 義則君    圓谷 光衞君       冨田  照君    田淵 実夫君       松澤 兼人君    野老  誠君       伊藤 恭一君    松本 七郎君       武田 キヨ君    久保 猛夫君       黒岩 重治君    米田 吉盛君       織田 正信君  出席公述人       井出 正敏君    江口 泰助君       太田 三郎君    海後 宗臣君       絹村 和夫君    木村  正君       小林 倭子君    齋藤 喜一君       高橋 梅子君    長瀬 鉄男君       山田 文雄君    湯川 精吾君  出席政府委員         文部政務次官  細野三千雄君         文部事務官   辻田  力君  委員外出席者         專門調査員   宇野 圓空君         專門調査員  横田重左ェ門君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた案件  教育委員会法案内閣提出)(第一五二号)     —————————————
  2. 松本淳造

    松本委員長 これより文教委員会公聽会を開会いたします。公聽陰に御出席いただきました公述人方々は、学識経驗者として東大教授海後宗臣君、地方團体代表といたしまして東京都副知事山田文雄君、横須賀市長太田三郎君、埼玉縣大里郡小原村村長小林倭子君、千葉縣山武郡公平村村長齋藤喜一君、組合代表といたしまして日教組法制部長江口泰助君、教員側といたしまして、岩手縣小学校教員木村正君、群馬縣新制中学教員高橋梅子君、神奈川縣新制高校教員湯川精吾君、P・T・A代表といたしまして日本P・T・A結成準備委員会委員長長瀬鉄男君、学生側といたしまして東大法学部学、生全國官公私立大学高專自治会連盟井出正敏君、都立第五高校生徒絹和夫君、以上の方々に御出席を願つたわけでありますが、時節柄御多用にもかかわらず御出席をいただきまして、本委員会といたしましても感謝にたえない次第であります。  現在すでに文教委員会において審査中の教育委員会法案は、政府提案理由にもありますごとく、教育というものは不当な支配に服することなく、國民全体に対し、直接に責任を負つて行わるべきであるという教育基本法精神を実際に活かしていくためには、教育民主化教育地方分権化が強く要求されるのであり、地方実情に即した教育行政が行われねばなりません。このような見地から本法案は種々必要な組織や、具体的な事項を規定いたしているのでありますが、世間にはわが國の現在の経済その他諸般の情勢から見た場合、この法案規定いたしておりますことは実情に副わないとの有力な意見が強く主張されているようであります。從いまして、文教委員会といたしましては、この法案重要性に鑑み、國民の率直な意見を聽き、この法案審査を愼重ならしめんがために、ここに公聽会を開くことと相なつた次第であります。  問題は「教育委員会法案について」でありますが、本法案全般についての総論的な意見や具体的な法案内容について、特に次に述べますような点について、それぞれの立場から関係の深い問題を取上げられまして、十分に御意見を述べていただきたいと思う次第であります。  大体におきましていろいろの議論の立場なり角度があるとは思いますが、一應私の手もとで一番これらが重要であろうという点を考慮しておいたわけでありますが、その第一の問題は、本法案中には罰則規定がないが、教育委員会を拘束する法規を要するかどうか、第一條の「不当な支配に服することなく」云々とありますが、ただそれだけの條項でよいかどうか。第二点といたしましては教育委員会設置範囲の問題でありますが、その範囲についての所見。  第二の問題としましては、本法案の第六條第二項に掲げてあります点でありますが、教育委員選挙公選によるのがいいかどうであるか。次に現職教員原案では教育委員の被選挙権を有しないことになつておりますが、これに対する賛否。第三点といたしまして教育委員のうち一人は当該地方公共團体議会議員の中から議会においてこれを選挙するという第六條と第十條の関連する点でありますが、これに対する賛否。第四番目といたしましては現職教員にして議員たる者委員になる可能性があるか。原案におきまする第十條に規定されておりますが、これに対する所見はどうであるか。第五番目といたしまして教育委員は無報酬でありますが、これに対する意見。これらを第二の主要点として御所見を伺いたいと思うのであります。  第三には、教育委員会の職務、権限についての所見と、それから教育委員会は校長及び教員の任免の権限を有する。これは本案の第四十九條第五号、第五十條によるのでありますが、これに対する所見を伺いたい。  第四番目といたしまして、教育委員一般公選によるが、事務局、特に教育長專門家であり、常置機関でありますがために、自然に教育長独裁的傾向を生じはしないかということが考えられるが、これに対する御意見。次に教育長は、はたしてどういう人を選んだら一番よいか、その資格や人物等に関する所見。これらの点をお聽かせ願いたいと思うのであります。  第五番目におきましては、これもやはり相当問題になると思うのでありますが、教育委員会の費用と地方財政との関係はどうなるか。さらに教育委員会地方議会との予算における関係について、どうしたら一番よいのであるか、これらの点についての御意見を伺いたいと思うのであります。ただ時間の制限がありまして、せつかくおいでを願つて、十二分の御意見をお伺いしたいのはやまやまでありますけれども、時間的に制限せられます関系上、まことに残念ではありますが、お一人せいぜい六分ないし八分程度でお話を願いたいと思うのであります。大体におきまして、本委員会において今日まで審査をしてまいつておりまして、相当委員各位におきましても、いろいろな点を承知はしておるのでございますので、最初からの御意見を出していただくというふうになりますと、いきおい時間をとりますので、できるだけ結論的に、きわめて率直に、時間的な面をお考えの上で結論を先に出していただいて、御所見を伺いたい。そのことが全体の時間を短縮するゆえんであると考えますので、まことに恐縮でありますが、その点を御了解の上でお願いしたいと思うのであります。  それでは会議進行の都合といたしまして、一應御出席公述人の皆樣に、それぞれ御意見を出していただきました後において、文教委員各位から、しかるべく質問その他を試みたいと存じておりますので、一應公述人の方から御意見をお願いしたいと考えております。まず最初に全國官公私立大学高專自治会連盟代表東大法学部学生井出正敏君より御意見をお願いいたします。
  3. 井出正敏

    井出公述人 ただいま御紹介にあずかりました井出と申します。ただいま全國官公私立大学高專自治会連盟におきまして運動を起しておりますが、そのうちのスローガンに、絶対反対こういう項目があります。これは次のような意味でありますから御説明を申し上げます。  この法律目的として掲げられておる條々、すなわち「教育が不当な支配に服することなく、國民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきであるという自覚」、「公正なる民意により」等々に対しては、われわれも双手をあげて賛成するものであります。それからまたこの法案が形式的にも直接選挙を認め、リコール制を採用した、こういう点も正当であるとわれわれは認めるのであります。しかしながらこれの目的とする法案内容を檢討してみまするのに、一向にこの目的を実現しようとする努力を示していない。もちろんここで釈迦に説法を申し上げる氣はないのですけれども、一体、法律とか制度とかいうものは、目的内容が食い違つておる場合には、いわゆる羊頭狗肉のたとえのごとく、その法律あるいは制度というものは、社会的な欠陷を隠蔽し、社会的、歴史的、害悪的、欺瞞的な役割をしか果さない、こういう事実がある。從つてこの法案の掲げる目的は正しいが、その内容は非常に疑問であるという点に関して、われわれは絶対反対ということを唱えたのであります。  この内容について簡單に申し上げますと、すなわちこれは、法律制度として、次には財政問題として、こういうものをあげたいと思います。これを簡單に申し上げますと、この法案では民主化とはいいながら、かえつて官僚統制という名前のもとに隠蔽し、かつ温存しようとしておる。平たくいうならば、現在の官僚は世論の攻撃の前にその勢力は相当弱まつておる、いわばこそこそとしておるのですが、ここにあるような不徹底な法案が出ることによつて、かえつて官僚統制の復活、官僚統制の強化に口実を與えるのではないかと思うのであります。すなわち簡單に個々の実情について言いますと、教育長及び事務局関係であります。この法案を見てわれわれがまず氣づくのは、事務局が非常に大きな権限と仕事の内容とを受け持つておる、これがため委員会が傀儡化する傾向が十分あるということであります。これは今まで日本の封建的な、歴史的、社会的な事情に基いて、地方においても官僚は非常に大きな権限をもつておる。その一環として文部行政においても、地方教育局なる存在が非常に大きな権限をもつてきた。從つてこれに対して根本的な剔抉をしないで、そのまま教育長その他の官僚を残存させることは、非常に危險である。この点本法案は、もつと多くの注意をなすべきであつた。実は現在日本で占める官僚地位は一應弱くなつた、こう申しますけれども、未だに隠然たる勢力をもつておる。かかる不徹底な法案では、全然解決ができないと思う次第であります。その次に教育長事務局権限を、この四十三條の條項を徹底させることによつて事務のみに限定させるべきであります。すなわち限定したとしても、專門的知識に乏しい公選された委員は、事務官僚に押されぎみなのが現在の日本実情でありますから、相当強く限定しても、し過ぎることはないと思うのであります。また一方委員においても、相当造詣ある專門家を必要とすると思いますから、この点において現職教員が非選挙権なしと規当されているのは、不当であると思います。その次に教育長その他の職員に対するリコール制は、明記さるべきであります。すでに委員に関しては明記されております。しかるに教育長に対しては、これが明記されていない。この点についてはおそらく政府の方から、將來出るところの地方公務員法に任される、こういうことを言われるかもしれぬけれども、現に地方自治法の第八十六條には、その長と副と出納長等々に対するリコール制が明記されておる。こういう事実を思うときに、完全な教育長に対するリコール制を採用すべきであるということを確言したいと思います。これはその住民の三分の一という規定が、正しいのではないかと思う次第であります。  次に知事との関係であります。これは第三十二條において、委員の服務を「地方公共團体職員に関して規定する法律」こういう法律によつて拘束することになつております。この法律というのは、昨日聞きましたところでは、これは地方公務員法なるものというふうに判断します。これによりますと、おそらく委員というものは、身分的には地方公吏となるということであります。從つて知事コントロールのもとにおかれる。こういうようにわれわれは考えるのであります。しかしながらこの点は民選された委員で、かつ教育問題についてはある程度の立法権をもち、しかも自己の手足として事務局をもつというこの委員会が、それ自身小立法府というような地位にあるので、当然議会に対して直接責任を負うべきであつて知事などによつて拘束される必要はないと思うのであります。しかるに第三十二條の規定は、民選された委員地方自治体の公吏として、みずから官僚化の道を歩ませるとともに、かつ外部的にもそれを強制しようという規定ではないか、こういう傾向ではないか、こう判断するのであります。その次に第五十四條で教育委員会文部大臣統制下に入ることになつております。もちろんこの法案におきましては、この点非常に留意しておるようで、五十四條の第二項において非常に限定しております。しかしながら、これでは不十分だと思うのであります。何となればこの際に指揮統制するものは、あくまで國会に対して責任をもつところの中央教育委員会であるべきであつたのであります。本法案が特に地方教育法案として出ないで、教育委員会法案、こういうふうに出たので、私はおそらくその中に中央教育委員会なるものを規定されたのではないか、こう判断したのでありますが、実はこれが全然出ていない。從つて文部大臣は依然として文部大臣でありましようが、文部大臣の下についておる文部官僚勢力というものが、そのバツクにあります。從つて文部官僚勢力地位とを温存しておるのであります。これはどういう意味であるか、これをわれわれは反問したいと思うのであります。すなわち文部大臣は、教育権限予算を全面的にこの中央教育委員会に引渡すことによつて、みずからは文化大臣になればよいわけである。それから文部大臣は、現在においては大学とか私学に対する統制権をもつておるのであります。この法案が出たとしても、大学とかあるいは私学に対する統制権を依然としてもつておる。これは上述の文部官僚温存におらずして何であろうか、われわれはこういうふうに思うのであります。この点においてこの法案限界性はつきりと暴露しておるのではないか、こう思うのであります。  その次に簡單に触れなくてはならないのは日本財政であります。十分予算がなくては、何ともできないはずであります。ところが、まずこの予算の編成に関してでありますが、これは私としては公共團体の長に送ることなく、直接議会に送るのが正しいのではないか、こう思います。これはインフレーシヨンの現実においては困難であるかもしれないが、文教予算というものをあらかじめ天引されて、委員会に渡されておくのが理想ではないか、こう判断するからであります。その次は現在の財政難でありますが、地方國庫との関係が、現在は半額國庫負担半額地方負担、こういう現状になつております。これは教育の諸法案によつてきめられておるのでありますが、これを改めないならば、地方財政権移つても、依然として中央の方のコントロールを受けてまいる、こういうふうに思うのであります。この点に関して地方財政とのにらみ合せから、教育費というものは全額國庫負担となすべきである。また國庫予算においても、教育費というものは優先的に配分されて、それがただちに地方委員会に渡される、こういう制度をとるべきであると思うのであります。從つて法案はこれまで出されたところの教育法案、あるいは財政法等々の大改革と相またなくては、その効果があがらないのではないか、こう思うのであります。從つて現在のこの法案は、表面的には非常に日本民主化をうたつております。しかしながらそれを檢討してみますと、制度的にも、あるいは財政的にも、非常に不十分である。從つてさつき言いましたように、これが國民に対して欺瞞的な作用を営む、こういうふうに判断せざるを得ないのであります。われわれはこの点におきまして、この法案反対しているわけであります。  それからお問いに対するお答えを申し上げます。大体述べたと思いますが、まず本法案については罰則規定がないかと書いてありますが、私はこれに対しては罰則規定は必要ではないと思います。その次に教育委員会設置範囲について、これは日本民主化が進行すれば、これを徹底的に下にまでおろすことが大切であります。すなわち一万人以下の市町村が合併してできるのでありますが、そのような合併した團体に対して、教育委員会というものを興すべきである。しかしながら現状におきましては、その点不十分である。こういう点において政府原案二年延長、それに対して賛意を表します。それから二の第一項、第二項については、すでに申し述べました。第三項については、この規定は必要なしと認めます。これについては私は非常に論議があるのですけれども、これは略します。第四については、今申したように問題なし。第五に対してはある程度の報酬を與えた方がいい。第三の一に対しては私は意見を述べております。第二に関しては異議なし。第四の一に関してもすでに述べております。第四の二についても述べてあります。五の一に関してはすでに述べ、二についても簡單に觸れたところであります。
  4. 松本淳造

  5. 江口泰助

    江口公述人 内容に入ります前に一言申し上げておきます。巷間にこの法案が云々されていた当時、約半年にわたつて、われわれはこれを愼重に討議した結果、日教組の京都、金沢における二回の全國大会において、われわれの修正案が認められまして、そうして運動を続けてまいつたのであります。この法案はまことに画期的というよりも、革命的な内容をもつた教育行政法案でありますので、われわれとしては非常に重大な関心をもつております。全國五十万の教育が、みな、ひとみを凝らしてこの文教委員会を見守つているわけです。それでこの法案の審議にあたりましては、文教委員各位國民に対して、また教育に対して、本当に責任をもてる御討議をお願いいたしたいということを、私は五十万の教員を代表してお願いします。  さて内容に入りますが、時間がございませんので、重点だけを取上げまして御説明申し上げます。基本的にはこの法案の立案された精神、基本的な精神には賛成いたしますが、その内容につきまして、このまま実施されるとするならば、私たちは絶対に反対をせざるを得ない。まず内容に入つて第三條から申し上げます。  第三條の設置のところでありますが、附則の七十四條と併せて考えまして、都道府縣、東京都の特別区、市、一万以上の町村特別教育区、これだけのところに設置するようになつております。もちろん一万以上の町村と、特別教育区は二箇年延長とはなつておりますけれども、はたして二箇年でそういう所にまで設置する段階がくるかということは、私たちは疑問だと思つております。それで結論といたしまして、私たちの主張といたしましては、今の段階においては、まだ地方民主化が十分進んでいない、今の段階におきましては、委員会設置都道縣並びに大都市に止めるべきである。これが設置の上での結論であります。内容を説明するのに連関する條項がありますから申し上げますが、第四十一條教育長、それから第七十九條の委員会権限等に連関してまいります。まずわれわれはこの設置範囲反対します。第一番は経費の点なのです。今義務教育費負担並びに六・三制の校舎の設置にさえ、非常な行悩みを來している地方財政状態で、そういうような教育費は、半額國庫、あるいは半額縣から市町村に分與されるかもしれない、いわゆる今の状態のままで経費の点について行くかもしれないけれども、また第五條の委員会設置に関する経費と関連して考えた場合、それらの経費を除いても、委員会自体設置だけでも三万、五万の市、あるいは一万、あるいは特別教育区だれでこの経費がもてるかどうか、地方財政はまさに破綻の一歩手前にあるときに、これを万一あるいは特別教育区までおろすということは、われわれは賛成できない。第二番目に、なるほど東京のごとき大都市至つては、相当民主的に進歩しておりますけれども、まだ民主的な成熟の度合の低い未端までこの委員会をおろしたならば、その選出せられるところの委員はどうなるであろうかということを考えていただきたい。私たち労働組合立場から率直に言いますと、いわゆる委員会にボスが出てくるおそれがある。非民主的な人物委員会を壟断するおそれがあるということは、はつきり申し上げ得ると思う。この法案の根本的な趣旨に、不当な支配に服することがないということが規定されておりますが、はたしてそうなつた場合に、不当な支配に服さないものであるかということを考えていただきたいと思うのであります。いわゆる戰時中、あるいは戰前日本におけるところの非民主的な思想考え方は、今どこに息を潜めておるかということを考えた場合、これを未端にまで設置したならば、教育の上に、いわゆる戰時中戰前の非民主的な思想が現われてこない、根を張らないということは断言できない。それで私は地方未端がもう少し民主化度合が成熟するまでは、これを延長する必要があると思うわけであります。  それからこれは権限関係してまいりますが、委員会権限の中に、人事のことまで入れております。ところが一つの縣に師範学校一つしかない。一番の末端まで委員会ができた場合、一つの縣に百ないし二百の委員会ができた場合、その人事権限をもつて百二百の委員会が、どうして縣全体の教育人事を総合的に行うことができるか。特に新制中学校は、だれでも彼でもどの学校にもつてつてもいいというわけではない。いわゆる学科担任制が強く加味されておる関係上、この新制中学校人事は、縣で総合的に扱わなければ、私は絶対と言つていいほど、未端の委員会で取扱うことはできない。その現実考えていただきたい。以上のような理由から私は都道府縣と、五大都市——大都市事情が違いますし、教育に関する関心とか、民主化度合とか、財政能力等から見て、独立しても私たちは差支えないと思つております。都道府縣と五大都市にだけ現段階においては設置すべきであるということを申し上げたいと思います。  次に第二番目に、第六條の委員の数について申し上げます。本案によりますと縣が七名、市が五名、一万以上の町村特別教育区も五名となつておりますが、私は次の二つの理由から、委員最低九名から最高十五名くらいのところに押えるべきであると思つております。島根とか、鳥取のような小さな人口五十万ぐらいしかない縣と、東京都のような五百万を算する大都市も同じような委員の数では、絶対に運営できない。人口が大きけれは大きいほど、区が廣ければ廣いほど、教育に関する業務内容も廣くなり、深くなり、複雜化してくることは当然であります。それを簡單事務局職員人数を殖やしただれでやつていこうとするところの魂胆、あるいは先ほど学生自治連の方が申されましたように、官僚教育行政壟断の意図があるように思われてなりません。いわゆるこの委員会ほんとう執行機関と見ずして、形式的な決議の機関に落そうとするような考えがあるんじやないかと思うのであります。それから九名から十五名と申し上げましたのは、一番最低の縣において九名、それから最高の一番人数の大きい縣において十五名と押え、その間適当な概数によつて比例して決定すればよろしいと考えておるわけであります。  次に第三番目に、第九條の現職教員委員としての立候補を禁止しておることについて申し上げます。結論としまして、われわれはこれを全條削除すべきであるということを申し上げます。その理由は、われわれは憲法によつて公民としての自由を與えられておるのに、ここに立候補さえも禁止されることになることは、実にわれわれ教員に対する一つの屈辱なのであります。教育の復興とか、民主化とかいうことにほんとうに情熱を盡して教壇を死守しているところの教員を、何がゆえに立候補さえも禁止しているかということには、どうしても解せないものがあるのであります。  それから文教委員会における文部当局の御意向によりますと、この委員会の構成に玄人を入れることはいけない、教育長玄人であつて委員会素人であるべきである。この素人玄人の組合せによつて教育が客観的に公正に運営されていくんだというようなことを言つておりますが、もしかりにその理論で押すとするならば、私は教育長は單なる事務局職員ま長であるべきであつて素人玄人の組合せは、委員会の中で現職教員とそれから一般民衆の代表者、その素人玄人の組合せで決議執行をしていくべきものである。もしかりにその理論を押すとするならば、私はそう主張するのが正しいと考えております。以上のような理由によりまして、現職教員立候補の禁止ということは、絶対にわれわれ教員としては承服できない、全條を削除すべきであるということを申し上げたいのであります。  それから四十一條教育長以下の職員の選定でありますが、この教育長以下の職員の選定にあたりましては、われわれ労働組合に最も関係の深い、最も接触する部面のあるところの教育長は、われわれ現職教員の意向を聽くような規定をする必要がある。もし意向を聽くような規定を設けることがむずかしいならば、意向を聽くような機会か、あるいは機関設置する必要があるということを申し上げておきたいと思います。  それから最後に、私は附則の八十一條について申し上げます。附則の八十一條は、今の縣の学務課並びに教育部の職員並びに部課長の暫定措置のことが規定してあります。來年三月三十一日までは当然その人が法律でもつて保障されておるような形になつておりますが、これは私はきわめて不当な條項だと思つて、全條を削除すべきであるということを申し上げます。十月五日に選挙をやつて、ただちに委員会が招集され構成されてから、その事務局職員委員会が云々すべきである。委員会の自主性に任せるべきであつて、それを学務課や教育部を残すか残さぬか、その職員をどうするかこうするかということは、委員会に任せるべきであるとわれわれは考えます。委員会権限を無視して、來年の三月三十一日までこれを優先的に法律でもつて身分を確保しておくということは、私は次の機会にそのまま教育長として現在の地方教育行政官僚を居すわりさせるところの意図があるのではないかということを、われわれとしては感じておるのであります。この八十一條は全條を削除すべきであるということを申し上げておきます。  まだたくさんあるのでございますが、時間がございませんので、以上最も重点的な面だけ取上げて御説明申し上げました。
  6. 松本淳造

    松本委員長 続いて地方團体の代表といたしまして、横須賀市長太田三郎君。
  7. 太田三郎

    太田公述人 実は私数日前にようやく教育委員会法案を入手いたしましたので、本日申し上げますことは、きわめて大局的な私の意見になるであろうということを、まずもつてお断りいたしておきたいと思います。  教育委員会法案目的といたしますることは、提案理由並びに法案一條に明瞭に示されておるのであります。すなわち、不当なる支配教育行政から排除することであります。また國民全体に対し直接の責任を負わねばならぬという自覚のもとに、公正なる民意に基きまして、かつ地方実情に即した教育行政を確立するということであります。この目的には私満腔の賛意を有明するにやぶさかでないのであります。しかしながら、本法案の骨子といたしまするところは、以上の目的を達成いたしまするために、現在の教育行政につきまして大きな責任をもつておりますところの普通地方公共團体とは別個の、これに何ら隷属せぬところの機関であります教育委員会設置いたしまして、この新しい機関教育に関する行政を委ねんとする点にあると考えるのであります。從いまして、私の本法案に対する批判は、まず本法案規定するような形の委員会の設立によつて、否、その設立によつてのみ本法案の期待するがごとき目的の達成が保障せられるのであるか。換言すれば、かかる委員会設置しなければ——普通地方公共團体より分離し、独立した委員会設置しなければ、教育行政から不当なる支配を排することができないのであるか、また國民全体に対して直接の責任を負う自覚のもとに、公正なる民意に基き、地方実情に即した教育行政が保障されないのであるかという点に向けられなければならないのであります。  まず本法案の起草者が排除せんと意図せられておるところの不当なる支配というのは、何を意味するものであるかということを、定然問題といなければならないのであります。私はこれは官僚的な支配と、極端なる中央集権的統制を意味するものと理解いたすのであります。まことに現在の教育行政は、文部省を中核といたしました一連の官僚群の握るところでありまして、地方自治体、殊に市町村あるいは市町村長の権限は、義務教育ための小・中学校設置し、これを管理することと、義務教育指導中核以外には、ほとんど皆無であるのであります。かくのごとき支配ないし統制こそは、公正なる民意に基き地方実情に即した教育行政を行うために、当然排除すべき不当なる支配であると考えるのであります。私は公選市町村長、公選市町村議会の容喙や支配が不当であり、これを排除すべきものとは考えないのであります。何となれば、もし市町村長や市町村議会支配教育行政より排除せらるべきものでありましたならば、單に教育行政のみでなくて、当然警察行政からも排除さるべきであります。衞生行政からも土木行政からもまた当然排除すべきものであるからであります。むしろ從來の市町村機関教育行政に対する発言権が不当に弱かつた点に、教育行政の重大なる欠点があつたと、私は断言してはばからないのであります。本法案地方教育委員会に対し、第四十八條及び第四十九條等によりまして、現在市町村あるいはその長が有しているより、はるかに大なる権限を與えることといたしたのは、その範囲におきまして、まことに至当というべきでありますが、教育委員会という独立の機関設置するにあらずんば、なぜかかる権限の委讓が認められないのでありますか。一体本法案の起草者は、市町村執行機関及び議決権に対して、大なる不信の念を有しておられるのではないかという疑いをもつのであります。市町村長及びその補佐機関あるいは市町村議会は、新時代の教育行政を担当するに不適当なりと断じておられるのではないかと思うのであります。日本における市町村の発達の跡を見ますと、市町村は義務教育と戸籍を中心として発達してまいつているのであります。その点におきまして諸外國の市町村とは大いに趣きを異にいたしているのであります。義務教育の普及率において、日本が世界に冠たるにつきましては、多年にわかる市町村の大なる努力があずかつて力がありますことは、ここに贅言を要せぬところであると思うのであります。権限を與えられず、財源をもたずして、義務のみを負わされました市町村が、從來義務教育ために拂つた努力は、まことに大なるものがあつたことは、各位も十分お認めになることと存ずるのであります。特に昨年突如として義務教育の年限が延長せられるに及びまして、市町村の困難と苦慮とは言語に絶するものがあることは、私がいまさらここで述べるまでもないと存ずるのであります。現在義務教育に関しましては、なお改善すべき点が多々ありますことは、中央のお役所に働いておられる方や、都道府縣に働いておられる方以上に、私ども義務教育の第一線に働くものが痛切にこれを感じておるところでありますが、私は市町村地方教育委員会設置するにあらずんば、その改善が不可能であるという考え方には同意し得ないのであります。もし本法案の起草者にして、現在の市町村執行機関及び議決機関をもつて教育行政の担当者として不満足なりとするならば、いかなる点が不満であるか、具体的に御指摘願いたいのであります。また必要ならば地方自治法の改正を提案されるべきであろうと思います。米國においては大多数の通常の執行機関及び議決機関とは全然独立した教育あるいは学校委員会と称する機関が存立しておるのは事実であります。しかしながら米國の場合は、日本とは実情が異なつておることを知らねばなりません。米國においては、かつて市政の各方面に委員会制度が廣汎に採用された時代がありました。そして教育行政にこの委員会制度が現在もなお廣く行われておるのであります。しかしながら米國においてすらこの制度に強い批判が行われておるのであつて、一般に教育專門家委員会制度を擁護するに対して、行政家ないし行政学者はこれを攻撃しておるといえるのであります。十年余前に、シカゴ大学教育学の助教授と政治学の助教授に命じて、米國の大都市における教育と市政の関係について研究調査せしめたことがあります。その報告は公表されておるのでありますが、その結論は独立せる教育行政機関の愚を完全に証明したものであつたのであります。  以上私は簡單市町村機関より独立せる教育機関が無用であることを述べたのでありますが、次に本委員会の設立はむしろ教育の発達のために有害である点を措置したいと思うのであります。  第一は財政的見地であります。本法案第五十五條の規定するところによれば、地方教育委員会は所掌の教育に関する歳出入見積りを作成し、これを地方公共團体予算の統合調整に供するため地方公共團体の團長に送付することとなつております。またもし地方公共團体の長が教育委員会の作成した歳出見積りを減額せんとするときは、あらかじめ委員会意見を求むべしとは、体法案第五十六條の決定するところであることは、各位の御承知の通りであります。現在の乏しい市町村財政において、教育委員会の作成した歳出見積りをそのまま採用するがごときは、稀有の事例に属するであろうことは、容易に御理解願えることと考えるのであります。教育委員会教育の振興をもつて存立の目的としておるのであるから、でき得るだけ教育費の大なるを期待すること当然であり、一日も早く新制中学校を整備し、小学校の二部教授のごときは、一日も早くこれを解消するに努めることはもちろん、新制高等学校もできるだけ多数設置し、授業料のごときできるかぎり低廉とするどころか、憲法第二十六條の本旨に則りこれを無償とすることを主張するでありましよう。教職員の俸給のごときも、各教育委員会は競つて全國一たらんと願うことは、また当然でありましよう。俸給手当のみならず、あらゆる面において待遇の向上をはからんと努力するでありましよう。また図書館の設立も公民館の設置関係公共團体ため絶対必要なりと力説するでありましよう。これらはいずれも眞にりつぱなことであります。その事柄自体に対しては、いかなる市町村長も、いかなる市町村議会も賛意を表することは疑いを容れぬのでありますが、問題は現在の財政状況において、以上揚げたいろいろな仕事のうちどれが出來るか、否どれの何分の一だけが実現可能かという点にあります。すなわち私は歳出見積りの減額は、例外にあらずして定例となり、しかして減額に対し意見を求められた場合、委員会がこれに反対することもなた例外に非ずして定例となると確信するのであります。毎年毎年かくして市町村理事者と教育委員会予算について対立を繰返すことになりましよう。米國において最近教育あるいは学校委員会が批判の対象となつておるのも、主としてこの財政の問題であります。かつて学校委員会に関し、ニユーヨークにおいて訴訟があつた際、ニユーヨーク州覆審法院は、その判決において、もしもある機関がいかに有能にして献身的なりとはいえ、他の同樣に重要なる利益の犠牲において限られたる收入のいかなる部分なりともこれを支配せんとするは不幸なりと認められる。かかる委員会は他に公共的必要に関し詳細なる知識を有しておらぬ。委員会は警察官の定員をいかにすべきや、また公衆衞生のためいかなる要求を滿たすべきやを公然知らしめ云々となし、続いてすべての行政組織において、それが連邦なると州なるとあるいは市なるとを問わず、問題は全歳出が過当にならざるよう多くの緊要なる要求の問いを調整するにある。かかることはすべてにつき、その比較的重要性を考究し得る立場にあるものによつて最もよくなし得りのであるとなしたのは、この間の事情を最も明瞭に述べておるのであります。また法案第五十八條及び五十九條は予算の執行についての教育委員会の独立性を規定しおります。現在多くの市町村においては銀行その他よりきわめて短期のいわゆるつなぎ資金を借り入れてようやく当面を切り抜けておるのであります。人件費以外の経営の支出については、常に現金の出納状況と見合いつつ行つておる状態であります際、教育委員会にかかる権限を認めることは、また紛糾を招く因をつくるのみでありましよう。  以上述べたように、市町村理事者との対立紛糾を招來するばかりでなく、ひいては市町村理事者の教育に対する熱意を冷却し、かえつて教育は衰徴することをおそれるのであります。  第二の点は社会教育に関する問題であります。社会教育は本法案第四十九條において教育委員会の所掌となつております。今後わが國において社会教育を振興発展すべき要あるは申すまでもないのであります。しかして社会教育学校教育と異なり、きわめて多岐多端であり、他の行政教育と関連するところすこぶる多いのであります。たとえば今後わが國において大いに取上げねばならぬウオケーシヨナル・ガイダンスのごときは、職業安定法の規定する職業指導と密接なる関連をもつのみでなく、各地方の要求に應じた。指導を実施するためには、商工、農林、水産等の行政面と常に相携えて進まねばならぬのであります。かかる目的を達成するがためには、教育委員会にこれを專管せしむることは、決して適当ではないのでありまして、いわゆる総合行政を担当する普通地方公共團体をして実施せしむるが至当であると断せざるを得ぬのであります。  また学校衞生につきましては、衞生行政を担当いたしておりますところの地方公共團体をして併せてこれに当らしむることが適当であると私は考えるのであります。  第三の点は都道府縣委員会市町村委員会との重複であります。從來都道府縣が教育行政の根幹をなしておりまして、市町村権限は先ほど申しましたようにきわめて限られておつたのであります。教育行政中央集権を排除し、これを民主化する道程の第一の目標は、まず義務のみを負つて権限を有しなかつた市町村すなわち市に対して廣汎なる権限を委譲することにあらねばなりません。その意味において第四十九條に揚げられた事項は、市の專管事項とし、都道府縣委員会の所管事項より除くべきであると私は主張いたすのであります。また第九十七條、学校教育法一部改正中、私立学校に関連いたしましては、私立中等学校につきましては監督廳の認可を要せぬものとすべきものであります。また義務教育費國庫負担法のごときは、これを当然廃止するか、少くとも根本的なる改正をいたしまして、市町村に対しまして、これに対應する独立の財源を附與し、もつて中央集権的官僚支配の排除を確立せなければならないのであります。不当なる支配を排除するをもつて目的としております本法案が、旧來の中央集権的制度の象徴の一つともいうべき義務教育費國庫負担法の改正、または廃止に触れておりませんことは、さきに公布実施を見ました警察法に比較いたしまして、私のまことに了解しがたきところであります。  最後に私が力説いたしたいと思いますことは、教育の画一性の問題であります。現在までのわが國の教育制度の重大なる過誤は、教育の画一性であつたのであります。教育内容教育行政も、すべて全國画一的に中央からの命令によつて行われていたのであります。かかる統制は当然地方実情に即した教育行政の実施を阻害したのであります。私は本法案が再び画一の弊風の上に立つていることに大なる不満を抱くのであります。私は各市町村における教育行政機関は各種の自由なる選択に委ぬべきことを提唱いたしたいのであります。米國の自治体の特色はその組織の多種多樣な点にあるのであります。同じ教育委員会、あるいは学校委員会というものもニユーヨークのそれとシカゴのそれとは構成を異にし、市の執行機関と議決機関との間に差違を存するのであります。かくしてこそ初めて不当なる支配を排除しながら公正なる民意に基く地方実情に即した教育行政が確保せられるものと信ずる次第でございます。
  8. 松本淳造

    松本委員長 この際口述人の各位にお諮りいたしますが、大体最初申し上げました時間の約倍以上をかかつておりますので、御議論なさるというよりも、結論的な御意見簡單に出していただきたい。短時間でなかなか無理だとは思いますけれどもあまり超過なさらないようにその辺の含みをお願いしたいと思うのであります。  続いて東京都立新制高校代表都立第五新制高等学校生徒絹村和夫君。
  9. 絹村和夫

    ○絹村公述人 ただいま委員長が読み上げました十四項目のお話に対して一一お答えする必要はないと思いますので、直接私たち新制高校生徒に最も関係のある、そして影響を及ぼす委員会の職務権限のうち、第四十八條について簡單意見を申し上げたいと思います。  結論を申しますと、現段階において都道府縣のうちの学校地方委員会に委讓することは、まことに困難であると私たち考えるのであります。その具体的な理由を申し上げますと、ただいま委員諸先生方にお配りしました資料を御参考にして聽いていただきたいと思いますが、まず学校の配置です。現在の都道府縣立の新制高校は、都道府縣を單位としてありまして、各地区の特殊性及び人口密度とは全然合致していないのであります。その点で東京都を例にとつて申し上げますと、小学校の数が目黒区においては十八校あります。新制中学校が十一校、それに対して都立の新制高校はわずか一校のみであります。極端な例を申し上げれば世田ケ谷区のような場合です。世田ケ谷区には小学校が三十三校それに対して中学校が二十七校、新制高校はわずか四校であります。中学校とそれから新制高等学校の比率はこういうような乱暴な比率であります。それにもかかわらず新制高校を地区委讓をするとなつた場合、非常にそこに困難に満ちた問題が多々あるのであります。たとえば通学の問題でありますけれども、色わけしてあります眞中に赤く塗つてあるところのみが、所在地の高等学校に通う人間です。あとの人間はすべて他の地区に轉校しなければならない破目に陷るのです。そういう学校の配置、さらにまた各地区の担税能力、戰災程度、生徒の分布状態、校舎数の差異によりまして比較的ゆたかな地区と、それから惠まれない地区とにわかれまして、その教育的差異ははなはだしくなります。さらにそれが新制高校の学校財政等に影響を與えまして、学校間の差異を著しく増進し、りつぱな教員の偏在という現象も起り、教育平等の本旨にもとりはしないかという結果が考慮されるのであります。さらに資料によりましてこまかいことを説明したいと思いますけれども、時間もございませんので、結論としましてもう一度申し上げます。  現在四部教授、三部教授を行つている六・三制の現状に対して、そこに新制高校を移管した場合、両者ともに円滑な、しかも健全な発展を望むことができるか、そういうところをお考えになつていただきたいのです。はたして各市区町村にそんなに大幅に管理能力を認めることができるか、結局あぶはちとらすになります。両者共倒れになる危險負が多分にあるのです、その点を十分考慮していただいて私たちの五月から行つております運動に理解を寄せられ、新制高校の地区委讓に対して委員諸先生方の十分徹底的なる御檢討をお願いしたいのであります。私たち戰時中軍閥の犠牲にされまして学徒動員、勤労動員によりまして学力低下を云々されているのであります。私たちは一日も早く、一日も多く、いや一時間も多くおちついたしつかりした勉強がしたいのであります。その点十分お考えになつてたちがおちついて勉強ができるように、生徒らしい勉学ができるような組織をお願いしたいのであります。
  10. 松本淳造

    松本委員長 次に岩手縣膽澤郡小学校教員木村正君。
  11. 木村正

    木村公述人 岩手縣から参りまして山村の事情をお話いたしたいと存じます。  本法案に対しまして、私は非常に賛意を表するものでありますが、現実地方事情といたしまして、われわれが当地におつて考えてみますときに、地方市町村の末端にまで独立の教育委員会を設けるということになりますと一つ財政的な面から、一つ地方民主化の徹底していないという面から見まして、私はこれに対して賛意を表することができないのであります。公述人各位のお話もありました通り、現在地方事情は、新制中学の設立にさえも非常に苦労しておる状態であります。この上さらに教育委員会なるものをおいかぶされてきたのでは、当然地方経済の破綻を來すもとであるということを、私は考えるのであります。さらに最近P・T・Aの結成などによりまして、非常に各地で父兄各位の活溌なる動きは見てはおりますけれども、まだ教育に対する関心というものは非常に薄いのであります。教育委員会をかような状況のところに設置いたしましても、結局ボス的存在の者に壟断される懸念が十分にあることを、私も考えておるのでありまして、市町村の末端にまで独立の教育委員会をもつということに対しまして、私は非常に強い反対を申し述べたいと思うのであります。私の考えておるところといたしましては、都道府縣及び五大都市、これらに止めていただきたいと思います。それらのことにつきましては、前の方々からお話がありましたので、省略いたしたいと思います。  次に現職教員教育委員としてぜひ加えていただきたいということを、私はその任にあります者として、切実の叫びとして申し上げたいのであります。といいますのは、都市におきましては、非常に関心度も深いのでありますし、また何らかにつけても不都合はないと思うのでありますが、農村、山村に行きましては、非常にこれらに関しては無知なのであります。そこにもつてきまして、全然関心の薄い方々によつて教育を運営されることにつきましては、私たちは非常にそれに対して危險を感じている次第であります。ほんとうに私たちは誠意をこめて教育に邁進いたしておりますが、私たちの意図するところをくんでいただきたい、そういう氣持からいたしまして、ぜひ教育委員の中に現職教員を一名なりとも加えていただきたい、こういう切実な叫びをもつておるのであります。私は教育委員会法案に対して、深い研究もいたしておりません。ただ漠然と参つたのでありまして、はなはだ申訳なく思つておりますが、ただ教育当事者といたしまして、最もわれわれの理想とする教育を願うがために、はるばる出て來たのであります。まずい話でありましたが、どうぞ私の意図するところをおくみ取り願いたいと思うのであります。
  12. 松本淳造

    松本委員長 次に東京大学教授海後宗臣君。
  13. 海後宗臣

    ○海後公述人 教育委員会法案につきましては、今日の状況下において、いろいろむずかしいことをはらんでおりますけれども、これを実施することが適切であると私は考えるのであります。その適切であると申します理由は、今日わが國の民情、民度のぐあいは、かくのごとく自主的な教育運営をするには必ずしも適切な條件に整つていないと思いますが、しかし教育をみずからの手によつて住民が運営するという考えをもたなかつたならば、これから後における日本教育の進展に寄與することは、不可能であると思うのであります。私は教育はすべてその地域に居住するところの人民の手をもつて、自主的に運営せらるべきものであると考えるのであります。その第一歩をなすものとしてこの教育委員会法案の実施せられることは至当であると思います。ただこの教育委員会法案はおそらくアメリカのボードの考えをとつて構成したものだと推測いたします。ところがアメリカにおけるボードは、わが國における生活の実情とは全然異なつた場所に成立をしておる教育運営の仕方でありまして、アメリカのボード・エジユケーシヨンの考えそのままをもつて、わが國の教育委員会法を運営することになりますならば、場合によつてはぶざまな支障を起し、いろいろな不都合なことの成立することが考えられます。そこでわが國の実情によく適合し、しかも住民のもつておる教育の意欲を積極的に表現して、これを教育実際の面に展開できるような、そういう委員会の構成及び運営がせらるべきものと考えるのであります。この点についてはアメリカとの違いを十分に考慮すべきであります。たとえば、アメリカにおいては非常に古い時代からタウンやカウントリーなどが発達しておりまして、それらのタウンやカウントリーは日本町村市とは別個の性格のものであると私は考えるのであります。從つて日本町村市とアメリカのカウントリーやタウンと同じような教育改革をすることは、これは適合しないことであります。それで教育委員会全般について私のもつておる考えを申し述べたいと考えるのであります。  私はこのたびの用意されております法案の中には、都道府縣委員会及び地方委員会の二つが、これを組織するものとしてあげられておりますが、この二つをもつてしては、わが國の教育の自主的な運営をするには決して妥当でないと思います。そこで都道府縣の教育委員会はそのことに意義を認めますけれども、その上に地方ブロックの教育委員会、あるいはもし委員会が不適切でありますならば、府縣委員会の連合協議会というようなものを地方別につくりまして、その連合協議会によつて民意を反映した教育の企画がせられなければならぬと思います。なおその上に中央教育委員会構成が絶対に必要であると思います。この中央における教育委員会の性格は、日本全体の教育の企画運営を、民意を反映して行うべきものであると考えるのであります。それから府縣の下にあります地方委員会でありますが、この地方委員会の構成は、昭和二十五年に延ばされておるようでありますが、この委員会の構成の原則は、人口一万以上というふうになつておりますが、これは小さ過ぎると思います。この点については形式的に單に人口をもつて地方教育企画の母体をなす委員会を構成するようなことは当らないのでありまして、一つの町、あるいは村を中心としました具体的な連繋を発揮させて、その場所に適切な委員会をつくるのが必要であると思います。一町あるいは一村と單に片づけて教育委員会を構成するようなことは、形式的でありまして、実効を発揮することができないと思います。農村でありますならば、一つの小さい聚落の町を中心として附近の数箇村が合体したような形で、地方教育委員会がつくられることが望ましいと思います。  それから委員の選出の方法であります。委員の選出の方法は住民の一般の選挙による方法がここに案として出ておりますが、この住民の一般の選挙による方法は、おそらく教育委員選挙を形式化することになるのではないかと思います。実際縣全体の中からどういう人を教育委員として選出するかということについては、一般の住民は今日これらについての正しい関心をもたず、それらに対して積極的な意欲はないと思うのであります。從つてそういう積極的意欲のないものを選挙母体にしてそこから選出をすることは、適切でありませんから、私はこうしたらどうかと思うのであります。町や村の中から教育委員を選出する選挙母体を構成する、一村一町から数名ずつの選挙母体を選出いたしまして、この選挙母体が委員を選出するというふうにいたしましたならば、少くとも村や町から選出されました者は教育についての一通りの見識ももち、これについてのある種の熱意はもつておるに違いないと思うのであります。それらによつて選ばれた者が地方教育委員なり、あるいは都道府縣教育委員なりを構成するということは、より適切な委員を選出する途であると考えます。教育委員会を運営してまいりますのには、教育についていかなる考え方が、ここに成立するかということが非常に重大であります。この教育についての考えに関しましては、教育長がおそらくは相当の識見を出すことになると思います。そうしますと教育長がいかなる教育的見解をもつておるかということは、すこぶる重大であります。教育長が独善的な考えをもち、あるいは教育長一個の考えをもつて委員会全体の教育の方向を規定するようなことが行われますならば、これはいろいろ問題を釀し出すもとになります。そこで教育長及び事務局をして客観的な態度をもつて教育の基本的な方策が出されるようにならなくちやならぬと思います。この客観的な根拠によつて意見を提出することができるようになるためには、詳細な調査資料を用意しなければならぬと思います。わが國においては、教育委員はおそらく調査資料を集めて、その結果から教育の立案をするというふうにはいかぬと思います。そこで教育長及び事務局は客観的な資料に基いて教育の立案をし、これを常に公にすることができるような準備を必要といたしますこういうふうな準備以上に、教育長及び事務局のもつておる独善的な傾向を廃止する途は絶対にないと思うのであります。從つて必要に應じて常にこの教育長及び事務局のもつておる資料及びその資料に基く結論が正当であるかどうかということを檢討されなかつたならば、常に危險を釀すことと思います。  それから教育委員会ができました際に、当面最も大きな問題はどういうふうなところにあるかと申しますと、学校の体系は、これはもうすでに決定されておることでありまして、学校の体系をいかにすべきかということは、教育委員会の問題にはなりません。また学校設置のこともありますけれども、学校設置、それらのことについても、およそ今までできておる学校をしかるべく今日按配するよりほかに方法はありません。從つてこれらに対してもそう大した問題はないと思うのであります。そこで最も大きな問題は、学科課程を構成し、これの学習指導に当るその面が、やはり一番重要だと思います。どういう学科課程をその教育委員会が構成してこれを運営指導するかということであります。すなわち教育の実内容をなすところが最も重要なことだと思います。この実内容をなすことについては、各地域内の教育委員会が独自の見解をもつて学科課程を構成し、その構成された学科課程を委員会の立つておる地域内に積極的に実施するということが、教育の方法、内容を発展させる上において必要なことであります。このためには学科課程の構成及びこの指導運営に関するところの專門的な研究のできる人々が、少くともこの事務局内に集まらなければならぬ。それらの多くの者は私は教職員でありあるいは專門の教育内容、方法の研究家であると思います。それらの者が委員会に集められて、初めてこの最も大きな問題の解決ができると思う。その問題が解決せすしては、教科書の檢定も採用もできないわけであります。学科課程がきまつて、初めて教科書、教材を決定することができるのでありまして、單に教科書教材の決定をするというようなことでは、これは教育委員会のやるべき職務といたしましては非常に末梢的なことに終ると思うのであります。  教育委員会と教職員との関係でありますが、これについてはポードの一般的な性格が住民の積極的な教育に対する意向を聽き、地方実情にかなうような教育運営をしようということでありますから、教育委員会の中には教職員が参加せずして適当であると思います。教育委員会の中に教職員が参加せずしては、意向を表明することができないというような組織は、これは委員会と教職員とを対立させることであります。両者は互いに協力して初めて一つの地域におけるところの教育の建設ができるのでありまして、委員会は十分に民意を代表するものであつて、それらと教職員とが結び合つて初めて地域計画ができるというのが、ほんとうであると思います。但し、これについては、今日さまざまな問題がありまして、至難なことがたくさんかさんでおります。しかしそれらについての統一的な運営につきましての努力が今後されることと思います。以上であります。
  14. 松本淳造

    松本委員長 続いて埼玉縣大里郡小原村村長小林倭子君。
  15. 小林倭子

    小林公述人 要点だけを申し上げまして、責任を盡したいと思います。  私は文教委員会法案の一日も早く制定され、かつその実施に移ることに賛成をいたしておるものであります。賛成しておりまするおもなる氣持は、從來は教育法は勅令でありまして、ただいまは教育基本法学校教育法と、民意を集めまして法律になつておりますわけで、この点において勅令時代の支配教育から民主教育に移つたのでありまして、民主の目標で再建進発していきまする途上におきまして非常に愉快に思つておるのでありますが、ただ教育制度の整備はその他の行政方面の法制の整備よりは遅れておるのであります。ただ基本法、学校教育法そのもののみが國会によつて制定されたという点に止まつておりまして、それを実行に移す教育行政の方面に至つては、ただいまのところ足踏み状態であると感じておるのであります。数日前南海の某縣においては、この問題につきまして教育部長、教員組合長、土地の新聞社長、三名の講師のもとに討論会があつたのでありますが、その情勢を聽いておりますと、教育部長と教員組合長二人の討論会に終始してしまつたように思いまして、感慨無量なものを感じておつたのであります。ここに教育の今日の行政が、官僚の不当な支配を排除しよう、むろん賛成をいたすものでありますが、また第三者としてのわれわれ國民の一人として、その動向をながめておりますと、次にまた力を得た者が教育支配していくような傾向に流れるのではないかというように、杞憂であるかは知りませんが、思われるのであります。それでありますから教育行政の面におきまして進んでいけるような途を考えておつた矢先、この教育委員会法が出ますことはその意味において私は大賛成をいたすものであります。むろん教育基本法第十條、第十一條に「この法律に掲げる諸條項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。」とか、あるいは「教育行政は、この自覚のもとに、教育目的を遂行するに必要な諸條件の整備確立を目標として行われなければならない。」とか、かような條項をたくさん掲げてありまして、殊に学校教育法の百六條には教育法に規定する定をなす権限を有する監督廳は、当分の間、これを文部大臣とする。次の百七條には、市町村立小学校の管理機関は、当分の間市町村長が管理機関となつておる。こういう経過的規定を示しておるのであります。これに代るものがただちに登場することを期待しておる向きになつておるのであります。かかる点からいたしまして、ここに教育委員会というものが出発する機運に向いておるのであると思いますから、その意味におきまして先刻も申し上げましたように、この法案が一日も早く制定され、寸刻も早く実施に移されることを望むこと切なものであります。  次に総括して私の所見を申し述べてみたいと思うのであります。この法案全体を一括いたしまして、思い切つてこの際私は民主的雅量をもつて全部を開放してみていただきたいと思うのであります。この思想の中には次のようなものを加えてみたいのであります。教育委員会設置範囲につきまして、一万以上の人口町村において云々というようなことでなく、これを全部開放して、いやしくも小さいながらも地方公共團体として存立して一村の賄いをしておる。一村の住民の総意をまとめて進んでいこうというその矢先におきまして、小さな町村であるから賄いの点が懸念されるからというので、これを一部は文部官僚支配の方に残しておくということがあつたならば、これらの町村は、いずれの日にか眞の民主生活を営み得るかということを私は考えるのであります。さきに消防法におきまして、小さな町村を取残して地区消防廳を設けました土地に比べまして、國家警察署管内の村落と申しますものは非常に取残されたさびしみをもつております。そのさびしみというものは、やはり傳統的に官僚支配下におけるところの消防そのものであるからであります。その教育委員会が轍を消防法にならうか否かと考えますときに、私はその轍を踏みたくないのであります。  次は現職教員を被選挙者から除外するというようなこと、これも雅量をもつて民主的になぜ開放できないかと思うのであります。從來は現職教員町村議会議員たることを許さなかつた。あるいは勤務地以外の町村における町村議会議員ならば許した。今日は所在勤務地の議員といえども許すことになつておる。これはみずからのことを処理する問題があるからいうので、こういう歴史的変革的の経路を踏んできたのでありますが、今日住民の投票によつてその人選をして公選するという時代であつたならば、現職であろうと否とを問わず、民意の集中する信頼の集まつた人であつたならば、適格者としてこれを採用せざるを得ないはずのものであると思うのであります。これも雅量をもつて開放したい、こういう考えであります。それから町村議会議員中一人だけをこの議会から選出するなどというさじ加減は、どんな考えのものでありましよう。もしそれがせめて一人だけでも委員に加えておかざれば歳入出予算を審議するような場合の橋架けとでもいうようなさじ加減以外に何ら理論の根拠はないようにうかがわれるのであります。これらのこともまことに無用な心配であると思うのであります。  最後にこの委員会の経理を町村財政から独立するというようなことは、これは私はまことに意を得ないのであります。地方公共團体の円満発展ということを考えますときに、これを独立せざれば教育委員会の活動が十二分でないという考えが起るのでありましようか。いやしくも教育委員会も住民の公選によつて出るもの、市長もまた住民の公選によつて、その任務についておるもの、いずれも住民の総意に重きをおいておのおの違つた方面の任務について、そうして町村民公衆の福祉のためにとそれぞれ心魂を練つておる今日であります。どうして経済が独立せざればという考えが起るのでありましようか。あるいは疑う、農地委員会財政というものを町村財政より切り離したいということを、他の社会の方ではしきりに唱えておるのであります。それの見習いをするようなことにしかならぬと思うのであります。そしてこの農地委員会などにいたしましても、町村財政中にこれを編入いたしておりまして、一本の発展を阻止するとか、阻害するとかいうようなことは断じてないのであります。しかしこの方面におきましても農林省関係官僚の方は、農地委員会の経済は町村より独立したいというようなことを言つてきておるのでありますが、町村側から考えますと、畑爭いとか、なわ張り根性を出すというような意味ではなく、眞に地方の円満発達ということを念願しておる市町村長の立場から申しますれば、そんなことは問題外であるという態度に立つてつて、何ら支障なく進んでいつておるのであります。なおまた農地委員会のごときものにいたしましても小さな村落といえども、おそらく十万、二十万の経費をもつて農地解放をいたしておるのであります。今ここに教育委員会を小さな村にまで設けたといたしましたところで、何ほどの経費が膨脹するでありましようか。むろん膨脹はいたします。それから農地委員会はもちろん全部國庫負担であります。そこで教育委員会に対しましても、私は今日から國庫負担なり、補助なり相当に出して当然だと思うのであります。なぜならば國の教育地方が行つておるのであります。この際私は思う。補助金をとるとか、あるいは下附金を受けるかということによつて、そこに金の力の不当なる支配を受けるというような感じをもつのでありますが、從來そういう感がまさにあつたのでありますけれども、今日以後文化が発展して、國民の教養が高まりつつある將來においては、金を若干受けるがために不当な支配に隷属しなければならぬというようなそんないくじのない人間はないような教育をしていきたいと思うのであります。それから金を與える方も、補助金を出すからといつて、恩惠的に考えるようなそんなことがあるべきはずのものではないと思います。國会において、さまざまな行政面に、あるいは補助金あるいは交付金を移してくださるようなお計らいをしてくださいましても、議員諸公において恩惠的にお感じなさるようなことは断じてないことを私は信じておるのであります。ただ國から補助を出すとかというようなことは、行政の第一線に立つておる市町村といたしますと、市町村の独立経費をたくさん徴收するという意味になりますと、徴收功績も上りかねるのでありまして、縣の費用、國の費用といえば、同じ出すのにも一方が納めよい。それで地方で集めて地方で支拂いすべき金を、一部は國の費用であり、縣の費用であるといつて徴收をして、これを送金をして還元をしてもらう。そこにおいてたいへん経済上含みのある運用ができるのでありますから、私らは交付金、補助金をねらうというようなことを少しも考えず、それがために隷属するような、腰が弱くなるような氣分などは毛頭ない、当然の権利として手渡してもらうのだというようなつもりをもつておりますが、かかる心境に立つて教育委員会に対して、國庫の補助なり、國庫の交付金というようなものが適当にあるということは、それがため教育委員会の矛先に鈍りがつくというようなことは断じてないことを私は確信するのであります。  以上私は大胆雅量をもつて、でき得る限りこの教育委員会法案においては、民主的に即時あらゆる場面を解放されていただきたい。そしてこの法案の一刻も早く制定される日を待望してやまない次第であります。
  16. 松本淳造

    松本委員長 続きまして、群馬縣利根郡新制中学教員高橋梅子君。
  17. 高橋梅子

    高橋公述人 私は過去一余年間大阪市、東京府等地方の中等女子教育の方に携わつてまいりまして、目下群馬の方にまいつておるのであります。父兄側の方の立場からこういうような新制度に対していかなる感じをもつかということを御参考までにお耳に入れまして、善処願いたいと思いまして、今日ここに参りましたわけでございます。  教育委員会は、まず第一に、原則としては都道府縣または市町村における独立の機関であり、知事または市町村長のもとに、偏しない、直接國民責任を負う適当なる委員が選出されるかどうかということについて非常に私は心配の氣持をもつのでございます。現在の地方民の状況はその使命を自覚しまして、その責任を負うだけの文化教養が高められておりませんし、殊に終戰後の思想は下剋上の風が世をおおいまして、小学校の兒童ですら先生を多少ばかにする。まして父兄などは教員組合ができてからの教員の態度を見て、こんな樣子では困るということをときどき到るところで聞かされるのであります。こうした世相にありましても、辛うじて教化の統一を保つてつたのは、知事または市町村長のもとに偏していた教育行政であつたからだと思われます。何と申しましても、日本は昔から役人を尊重して、これに治められてきたのであります。悪い役人が不当な支配をした場合などは、國民の音によつてその役人をかえてもらいさえすればよいのであります。また教養もない地方民の数名の委員が、選挙によつて選ばれて、そして教育というものについての学識も経驗も、設來の役人とははるかに劣つている人たち委員会を組織いたしまして、今後二年後をまつて実施することになりましても、私の感ずるところでは、かえつて教育の低下を來すのではないかと思うのであります。教育地方分権化といいながら、地方民、殊に農村民は教育行政にはさほど関心をもたなくなり、終戰後、殊にはなはだしくなつた傾きがあります。  次に、日本の國は世界大國の米・英・ソ・華などと比較しまして、きわめて狭い、小さい國でありまして、その上朝鮮、台湾、樺太、沖繩などを除きますと、他の文明國の一州、一省、すなわち一地方にもなぞらうべき内地の面積であります。從つてささやかな隱匿物資が摘発されましたり、政治家の行動も、右も見ても、左を見ても、すぐに批評されるのであります。悪い子世にはびこるなどというような言葉もありますが、わが國のような狭い小さい國、殊に終戰後のこうした状態で、外國の教育方針をそのまま移されるというようなことは、相当考慮する余地があるのではないかと思います。今まで東洋の先進國であつて、他の國に見られなかつた善良な日本教育精神を、もう一歩しつかりと踏み直していただく方が確かじやないかという氣持をいたすのでございます。例を引きますと、P・T・Aの会が誕生いたしまして、各地方にございますが、その会合の際などにも、総会を開きまして、二、三やつてはみましても、その後継続しまして、相当な活動を続けて教育をやつているような地方は、割合に少いじやないかという感じを受けております。自分初め府縣側の方からながめましても、こういう点から非常に悩んでいるようなわけであります。結局教育現状を見ますと、人格があり、教育に非常な経驗をもち、研究を積んだ官界の人たちによつて、統一して教育の役をしていただくことが、われわれの父兄側からは特に望ましく思うところであります。  なお第二の教育の政党色をもたない方がよいということであります。地方委員会を設けまして、七人、六人、五人とかいうもので設立されましたその中へ、議員のうちから一人選出されるというようなことは、今の方も申されましたが、こうした議員が一人はいり、かつ教育者はその資格を失つておりますので、その五、六者の中に加わらないような、いわゆる町村公共團体町村長等でない一般のうちから選ばれた五、六人の方の構成するこの委員会なるものが、どんなふうに將來動いていくかどうかということを思うときに、教育は政党色をぜひ離れて、十分に教育精神を伸ばしていただきたいことを、心配するのあまりここに申し上げたいのであります。  第三に、特別区を設けられますことについては、これも非常に複雜化してくるのではないかということを危ぶんでおります。やはり都道府縣程度でよかろうと思うのであります。  部分的にはいろいろ考えてとりまとめてまいりましたが、あまり時間を経過してはなりませんから——。要するところは従來の文部中央集権のようではありますが、相当教育に対する経驗と研究をもちました中央政府並びに文部当局方々から一脈をもちましたる教育制度公共團体を通して、ずつと田舎のごく先の先までも教育精神を一貫させていくというそのあり方は、かなりに尊い一つの残すべきわざではないかと思われるのであります。それでぜひともこの委員会制度そのものにすべての権力を任せるというようなことは考慮いたしまして、五十六條に、全然指導監督の任務をそぐというようなことがございますが、これはやはり残して、そうして教育制度の発展をはかつていただきたいということをここに申し述べておきたいと思うのであります。教育はどこまでも組織的なもので、ただ形の上のものではないのでありまして、精神の結合によつてその効果を收めるのであります。どこまでも教育者と委員の方と、なお父兄側と三者一体になつて行われるものでありますから、権力の用い方の場合という点については、一層御研究を願いました上で実施に移られんことを私は切望してこの談を終りたいと思います。
  18. 松本淳造

    松本委員長 午前中はこの程度で一應打切りまして、午後は一時から再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後〇時十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十五分開議
  19. 松本淳造

    松本委員長 ただいまから午前中に引続きまして公聽会を再開いたします。  公述人の御意見を求めます。千葉縣山武郡公平村村長齋藤喜一君。
  20. 齋藤喜一

    齋藤公述人 私はただいま御紹介にあずかりました齋藤であります。千葉縣の九十九里浜に近い地純農村の村長をいたしております。私は專門家でもなければ政治家でもありません。從つて自分の職域から見まして、この法案に対しまして、時間も許しませんので、要点を簡單に述べさしていただきます。  私は町村末端行政の担当者といたしまして、本法案の立法の精神に対しましては、深く賛意を表するものでございます。しかしながら私どもが地方町村現実的政治を担当いたしておりまする立場から率直に申しまするならば、地方はこの法案を受入れる態勢ができておらないと言い得ると思います。その第一は財政問題であります。予算面におきまして、今町村は四苦八苦の苦しみのまつだだ中に置かれております。新制中学を建設するにあたりましても、どうしてもわれわれには金ができない。私どもは全國町村長会の名におきまして、政府当局に向つて新制中学建設費の全額國庫負担を昨年以來要求して、今なおその要求運動を継続いたしております。私の村は戸数七百八十戸、人口四千三百余であります。新制中学校の学級が六学級、まず郡内中等の村と思います。村の当初予算が百四万であります。そのうちどうしても村に財源がございませんので、約三〇%は政府交付金に歳入を求めております。なお小学校、中学校、この教育費は村当初予算の四〇%を占めております。この四〇%の中には新制中学の設備であるとか、あるいは校舎の新築費用は一銭もはいつておりません、全部経営費であります。今私の村におきましては、新制中学を村民の勤労奉仕によつい、四箇年継続で血と汗によつて建設しようというので、私は村民の陣頭に立つて指揮をしております。毎年三教室ずつ、十教室を四箇年かかつて完成させようというので、村の青年あるいは消防團等を農閑期を見ましては勤労奉仕に招集いたします。大工、左官も、その数は少いのでありまするが、私に招集されまして、血と汗によつて今やつております。現在の農村の財政がかくのごとく非常に緊迫の状態に置かれておるのであります。なお私の見込みとしましては、私の村を今例をあげて申しましたが、当初予算が百四万でありますが、年度末までにはもう百万円追加予算をやらなければ、私は村の経費が賄い切れぬという考え法をもつております。先ほど來政府におきましては、租税の地方委讓、その他改正という問題が叫ばれておりますので、私どもはこの一日も早かれと念願しておりますが、先般財務主任に私の村を中心に、概算的に当らしてみもしたところが、現在私の村が住民からとり立てる税金が今度改正によりまするものは、わずか六〇%であります。そうすると追加予算は約一〇〇%出さなければならない。村長といたしまして、税制が改正されてさえも、そこにはなお六〇%しか税金が生れてこない。この上新しいいろいろの制度のものをもつてこられて、町村長として仕事がやつていかれるかどうか、これは遺憾ながら予算面において大きな支障がある。今問題になつておりまする、本法案が、教育委員会の全部の費用を國庫負担にいたしまするならばいざ知らず、將來この歳出負担をその地方自治体に求めるということになりましたならば、とうてい困難ではなかろうかと私考えるものであります。  第二は人物難であります。今地方町村実情を見まするのに、私この点を大胆率直に申しまするが、その地方地方の人格識見を具えた方々の一部は先般の追放令によりまして手放されてしまいました。從つて現在地方議会議員となつておりまする人々の一部ではありまするが、若干レベルは落ちるのではないかというような感想ももつのであります。ところが教育委員会委員は、この行政区画によつて狹い限られた町村の中から出るといたしましたならば、その町村の人格識見において相当な人たちはみな議員として出ておる。ところが法案を見ますると、議員教育委員にはなれないというように承わつております。そうすると各町村とも相当な人物がすぐられたその残つたものの中から選び出されなければならないのではないか、こういう考え方をいたしております。教育委員というものは、私の見解が誤りかはわかりませんが、町村議員よりも人格識見において相当卓越したものでなければならぬと思つております。ところがただいま申し上げましたように、一段下るということ語弊がありまするが、そのようなところから、かりに教育委員が出ましたときに、教育者を向うにまわして、どういう教育行政の確立ができるか。この点を私はすこぶる憂うるものであります。学校の先生は相当の見識を具え、人格をもつた方々であります。しかも現在の世相におきまして、この方々労働組合を結成し、労働運動をいたしております。この労働運動に向つて教育委員がどれだけの知識をもつておるか、見識をもつておるか。私地方にもぐつておりまして、地方の人とつきあつておりまするので、私の考え方によりましては、はなはだ心細いのではないか、かように考えております。私縣町村会の役員をいたしておりますが、先般同僚諸君といろいろ座談を交わしてみますると、学校職員の労働運動に対しては、いろいろの批評が出ます。しかし遠慮なく申しまするならば、大体において町村長の意見は、ああいう運動はやめてもらいたいという声が多いかのように私は聞くのであります。しかし私はこれに対して変つた考え方をもつております。われわれ人類はたえず文化を求めて努力いたしております。文化が親から子供と人類代々進展していきまするその過程におきましては、ちようど人類文化は川の流れのようなものである、これは止めるわけにはいかぬ。その一過程として、今学校職員にも労働運動というものが起つてきたのである。その労働運動が、私をして言わしむるならば、正しい方向に向つて進んでいくならば、教育の上に非常な貢献をもたらすであろうと考える次第でございます。私実は若いころ内務省社会局に役人をいたしまして、労働運動を担当いたした時代もございますけれども、大体同じ労働運動と申しましても、教育者の組合、官公吏の組合、炭鉱夫の組合、工場労働者の組合、おのおのこれは違つたところの動き方があつてしかるべきではなかろうかと思うのであります。過去の教員組合の労働運動がいかなる形をとつてきたかは、今ここで時間もありませんので、批判いたしません。とにかく芽をつまむよりは、これを正しき方向に助長させていかなければならぬ。こういう重大な責任をもちまするところの教育委員が、はたして今の日本の狹い行政区画を基準とした町村の中から選び得られるかどうか。かような点に対しまして、私はすこぶる疑問をもつものであります。その点は委員会をどう構成するか、委員をどう選ぶか、この方法について私はとくと政府におきまして、研究をしていただきたいと思うのであります。  なおいま一つ最後に申し上げまするが、先ほども横須賀の市長からお話が出ましたが、この法案を見ますと、予算の作成権は教育委員会にある。その執行権も教育委員会にある。町村予算の半分以上を教育費に使つておる。その予算町村長は作成権を委員会にとられ、執行権を委員会にとられたときには、四苦八苦の財政難を処理いたしまするのに、予算の円滑なる執行をなすことができ得なくなりはしないか。この点は町村長の権限が非常に狹められてまいりますので、場合によつては私ども同僚は、この教育費問題によつて、あるいは職を去らなければならぬというような悲しい場面も起つてくるのではなかろうか、かようなことも私考えるものであります。  時間もありませんので、以上率直に簡單に私の所見を申し上げた次第であります。
  21. 松本淳造

  22. 長瀬鉄男

    長瀬公述人 私は父母の立場から、この教育委員会法案に対しまして、一言簡單意見を述べてみたいと思うのであります。  私どもは今まで自分の子供に対して就学適齢期がまいりますと、やれやれこれで一安心だ。もうこれからは学校に通わしておけば、それで教育は十分だというような考え方をしておつたのではないかと反省してみるのであります。ところが新教育精神、なお戰爭に負けました後の道義等を考えまして、私どもがそういうような一番文化の中心になるべき教育問題に対して、あまりに無関心であつた、なおざりであつた。そういうことが大きな原因をしているんじやないかと思うのであります。そういう際に今度こそはわれわれの子供を教育する義務及びそれと同時に國が子供を教育する義務から当然出てくるところの、われわれの國に対する教育権というものを強力に主張する機会ができてきたのだ。これこそわれわれが今まで反省したことを実行に移して、われわれは全面的に國の教育に対して協力をしなければいけないのだという精神が盛り上つておると思うのであります。その一つの現われがP・T・Aでございます。これはアメリカの方からの要望もございましようけれども、そういうような考え方から申しますと、このP・T・Aの発達というものこそ、この教育委員会法案の基礎になるものではないかと思う。ところが非常に私が遺憾に思うことは、あのP・T・Aの指導方針は、またこの教育委員会法の内容も、アメリカの飜訳そのままのように思いまして、どこにも日本の特異性というか、教育の普遍性と申しますか、そういう中の盛りこまるべきゆたかなる個性のにおいがしておらぬと思うのであります。それでありますから、この教育委員会法案につきましては、もう一應再考したいただいて、もつと日本的な部分、日本現状をよく見極めていただいて、日本的であつてほしいという要求をいたしたいと思うのであります。しからばどういうようなことかと申しますと、今申しましたように、一般國民教育に対する見解は、学校にさえ出しておけばよかつたという、そういう観点で、今まだそれがほとんど直つておらないと思うのであります。それでありますから、さいわいP・T・Aで主張いたしましても、P・T・Aの集りといえばほとんど寄附金を集めるのだという考えになつてきてしまつて学校を後援しておけばよいという考え方が根強くまだ拂拭されずにあると思います。そういう際にこういう画期的な、しかもこういう民主的な方法によつて、すべてのことが行われるという弊害を十分に考えていただきたいと思います。加うるにわれわれの國民性の非常に根強いものは官僚尊重であります。この官僚尊重の氣分がちつとも拔けておりません。都会においてしかりでありますから、いわんや山村僻地においては、なお官僚尊重の思想は相当根強くあると思うのであります。例を申しますると、ある婦人会の幹部が集まつて、時間を割いて婦人のための施設をやろうとしたところが、私の家には女中がいるからそういう必要はない。女中に月給を拂つているから女中を十分使わなければ損だ、指導者である婦人会の幹部の方がそうおつしやる。都会においてしかりであります。でありますから、私は封建制というものは根強くある、そういうときにこういうものをお出しになるのでございますから、前の方々もおつしやつたと思いますが、私は官僚の独善性に対しては十分な斧鉞を加えて、独善性の現われないような態度で、この法案をぜひ御審議願いたいと思います。  もう一つはそれと関連するのでありまするが、どうも人物が拂底だという観点から、日本人は今までとかくほんとうの國を憂うるというか、教育に対して熱心な人はあまり表に出てこない。そうして公選というようなことになりますと、結局押しの強い人、がんばりの強い人、あるいは金のある人、子分をたくさん持つているような人たちばかりが出て、ほんとう教育をどうしようとか、これでは困るといつて考えている人は、今までの習慣上、おれがといつて出てこない。そういうことではいけない。それにはやはり選挙法を從來の府縣議員選挙法によるのでなくして、教育委員会委員選挙法は別につくつて、そういうような押しの太い人たちだけが出るのでなくて、ほんとうに熱意をもつておられる人が出られるようなものをつくつていただきたいと思います。從つてその選挙には金がかからないというようなことが一番大きな問題になると思います。金をかけずに出るということが、やがて報酬の問題になりまして、報酬も無報酬でいけることになると思います。私の知つている人はこういうことを言つております。教育委員とある小さい議員、たとえば村会議員とか区会議員とかいう問題でしようけれども、そういう議員と天秤にかけまして、どつちの方がもうかるか、もうかれば区会議員の方をよして教育委員をやろう。今まで顔がきいているから、そつちの方にまわつた方が得だという話をしている人があります。こういうことになつてはたいへんだ、從つて私は報酬を過分に出さない、無報酬という方針が一番いいと思います。そういうような意味から私はこの委員会選挙法は別につくつていただきたい、それから報酬は情報酬でやつていただきたい。官僚の独善性をためるような適正な方法を、法案中に盛りこんでほしいというようなことを考える次第でございます。
  23. 松本淳造

    松本委員長 続きまして神奈川縣小田原市新制高等学校教員湯川精吾君。
  24. 湯川精吾

    湯川公述人 一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受諾して以來、教育行政民主化日本政府の当然実施すべき義務であり、新憲法第九十二條によれば地方公共團体すなわち都道府縣市町村には、完全な自治制度が認められたのであるから、文部省が現在まで完全に掌握せる教育行政地方に委讓すべきは当然のことであり、かかる法案の未だ國会に提出せられないのを深く遺憾とするものであります。しかるに以上の二つの目的を有する教育委員会法案が今議会に提出され審議されることは、私の非常に喜びとするところであり、法案全体には原則的に賛成するものでありますが、次の諸点には若干の異なつ意見を有するものであります。  一、委員会設置範囲原案では都道府縣、市、特別区及び人口一万以上の町村に置くが、人口一万以下の町村はこれを一万以上の町村に合併せしめるか、あるいは小町村が連合して委員会設置する方法ですが、都道府縣、特別区及び人口五万以上を有し、市政を敷く都市とし、人口五万以下の市町村はこれは五万以上の町村に合併せしめて、委員会設置すること。この理由としては政府原案による委員会設置するとするならば、都道府縣内に委員会の数がたくさんとなり、各委員会の横の連絡が次第に円滑を欠くようになること、小さな地区の委員会財政上の行詰りを來たすこと。有能な各委員会委員の選択が困難になること。以上であります。  二、委員の選出方法。原案では一般に公選であるが、國会議員地方議員市町村議員、公務員、教職員の兼職を禁止されている。委員重要性から見れば当然のことであるが、兼職できない関係上、政党的人物立候補が推定され、委員の構成は委員会が政党ボス化するおそれが多分に存在するゆえ、学識者團体、教職員團体、政党的團体、一般團体から推薦されたものを定員の二倍だけ立候補させること。理由として、委員長一名、委員四名、計五名とする場合に、以上の團体から各二名ずつ立候補させるときは、選挙運動費、弁論戰その他の條件により、たとえ政党的團体から推薦された二名がともに当選したとしても、それだけの数では委員会を政党派閥をもつて運営することはできないから、政党ボスの存在の余地はなくなると思います。しかして教育委員報酬は生活を保障する程度の十分なる報酬を出すべきが当然だと思います。  三、所管学校範囲原案では、都道府縣は大学及び特殊学校を所管し、新制高校、新制中学校、小学校は市以下が所管することになつているが、新制中学校と小学校は市以下の所管とし、新制高校は地方実情をよく考慮し、あるものは都道府縣とし、あるものは市以下の委員会とする。理由として、新聞その他の報道により推測してみるところ、昭和二十三年度より発足する新制大学の運営は、莫大なる予算を要するものであるから、これを都道府縣の所管にすれば、都道府縣の予算編成に文教費の占めるところあまり大となり、他の社会事業費等に及ぼす影響大なるものありと考えるから、他に及ぼす影響を最小にするため、新制大学は現行通り文部省直轄を是とするものであります。しかるに義務教育である新制中学校と小学校は市以下の委員会の所管とするも、義務教育でない新制高校は、市以下の委員会財政負担をできるだけ少くする目的上、大体都道府縣の所管とするが、市以下の委員会財政上の余地があれば、市以下の委員会の所管とするも可であります。  四、校長、教員人事権。原案では所管の委員会がこれを掌ることになつているが、財政上あるいは教員配置及び養成の上から、委員会教育主任官会議を設置し、教育主任官会議の議決を十分に取入れて委員会人事を定めること。教育主任官会議の議決を無視するときは異議の申立てのできるものとす。同会議は、人事を定めるため委員会学校との連絡協力に努め、人事行政に関する重要事項について、委員長に建議することができる。教育主任官は各学校の長もしくは教員組合の幹部の互選をもつて任命すること。以上によつて校長、教員人事行政の円滑なる運営が期待できるわけであります。  五、予算審議権。原案では、予算につき委員会は見積書を作成し、直接地方議会にはかることになつているが、これでは予算の面が地方議会に握られているので、往々政党の利害による予算の削除があり得るから、これ排除するため、審議権を委員会に完全に移すこと。但し委員会は顧問の意見を徴し、自治体の財政状態をよく考慮して立案し、これを行使すること。顧問は委員会五名の場合は五名とし、委員会所管の都道府縣、市、特別区内に在住する財政に通ずるものから選ぶものとする。  六、その他、委員会がすべてを会議によつて処置するため、仕事の処理に著しくスピードを欠く点と、教科内容やその取扱いについて、國家として、たとえば学習指導要綱といつた一定のわくを置き、わく内での権限行使とはなろうけれども、國家の監督権がぐんと弱化するだけに、委員会專横の余地が多分にあるわけである。かかる欠点の是正策として、イ、委員の互選により任命された委員長に、ある事項については独自の行動判断を許すこと。ロある事項については委員会会議の議決によること。ハ、特別の事項については委員会会議と教育主任官会議の会議によること。但し、イ、ロ、ハの事項については委員会規則によつてこれを定めること。以上であります。  それから、文教委員会の方から示された問題の二番目の、現職教員教育委員会の被選挙権を有しないことになつているが、これに対する賛否。これは反対であります。被選挙権を有し、教育委員に任命された場合には、現職教員を退職する。  次に三番、教育委員のうち一人当該地方公共團体議会議員の中から議会においてこれを選挙することになつているが、これは絶対反対であります。  四、現職教員にして、議員たるものが委員になる可能性があるが、これに対する所見現職教員教育委員になることは反対でありますから、もし現職教員が市会議員など兼ねた場合に、委員になる場合には、当然教員を退職すべきが是であると思います。  四番の二の教育長はどういう人を選ぶべきか、その資格人物等に関する所見。これについては、今度の國家公務員法案にある人事委員会事務局長というような、人事委員と同じくらいの実権を有し、その資格としては、永年教育に携わつた者と、教育行政あるいは政治的方面に非常に明るい者等の條件を有するものであれば結構であると思います。  以上であります。
  25. 松本淳造

    松本委員長 以上で公述人諸君の御意見の発表は終りました。  東京都副知事山田文雄君が、午前中も午後開会劈頭も御出席になつてつたのでありますが、やむを得ない次のお約束がありますので遺憾ながら帰らせていただきたいというお話しでありまして、お帰りになりましたが、同氏の御意見は後ほど文書をもつて提出するということに決定いたしましたから、さよう御了承を願いたいと思います。  なお傍聽人の方々の中で、この際特に発言を許してもらいたいという申出がございます。その御趣旨はよくわかるのでありますが、お申込みの人数が相当多いのでありまして、成田君、増田君、伊藤君、倉田君、それだけの方に述べてもらう時間がないわけであります。公聽会を済ましますと、すぐに重要な法案の審議に移らなくてはなりません。本日はそういう意味合から御遠慮願いたい。御了承をお願いいたします。  続きまして、先ほどの公聽人の諸君の御意見の発表に対しまして、委員方々で御質疑がございましたら、御発言を願います。
  26. 久保猛夫

    ○久保委員 その前にちよつとただいまの傍聽の方の意見を述べたいという方の取扱いについて、文書をもつて委員会に出していただいたらどうですかということが一つ。  それから委員長にお尋ねしますが、何時ごろまでこの部屋は使われるのですか。
  27. 松本淳造

    松本委員長 部屋は午後一ぱいとつてあります。ただ速記関係が大体三時半程度で打切りたい状態でございます。  なお公聽会に引続きまして、かねて御審議を願つておりました教科書発行に関する臨時措置法案の審議、討論、採決をいたしたいという予定になつております。  ちよつと附け加えておきますが、久保委員の御動議によりまして、傍聽人各位の御意見は、文書で御提出願いたいと思つておりますから、その点も御了承おきを願います。
  28. 久保猛夫

    ○久保委員 公述して下さつた方に、いろいろお尋ねしたい点が多いのでありますけれども、あまり時間をとつてもどうかと思いますから、二、三の方に簡單に御意見を承りたいと思うのであります。  東大教授の海後さんにお尋ねしたいことは、日本現実から考えてみて、この委員教育経驗者が、一名か二名ぐらい入つた方がいいという考え方が相当あるのですが、これに関して海後教授はどうお考えになるか。なおそれと関連することでありますが、現職教員が被選挙権をもたないということにこの原案ではなつておりますが、それについて併せて御意見を承りたい。  第二点は選出の方法について、なかなかいい御意見があつたのでありますが、いい委員が選ばれたにしても、今日の日本の生活がそれぞれきわめて不安定な状態に置かれている。なおこの委員会の仕事が他のいろいろな委員会よりも重要であるということ。それからきわめて多忙であるということを予想せねばならないということと、なおこの委員の方は相当研究してもらわねば、とうていこの職責を果されないという、こういういろいろな観点から、この委員には相当額の報酬をやるべきではないかと思われるのでありますが、これらについての御意見はどうであるか。もう一点は、この案の四十九條と五十條に規定されてあります委員会権限でありますが、この権限について御意見を承りたいと思います。  次は一番関係の深い日教組の代表として、日各組の法制部長である江口さんにお尋ねしてみたいのですが、相当この案に対して不満な点が述べられたようでありますが、なお一点聽きたいことは、都道府縣の委員会地方委員会の両者の権限についての御見解が一つ。それからもう一つは、もしこの原案國会を通過した場合に、組合としてはどういう態度をとられるものであるか。これも参考のために承りたいのであります。
  29. 松本淳造

    松本委員長 久保委員に申し上げますが、最初御質問の東大教授の海後君は、午後講義があるので、やむを得ず帰られましたが、御質問の趣旨は文書ですぐに回答してもらうことにいたしますから、御了承願います。
  30. 江口泰助

    江口公述人 ただいまの御質問にお答えいたします。  私たちとしましては、都道縣並びに五大市の委員会一本を主張しておりますが、もし市並びにその他の地方委員会設置されたとした場合に、その権限のバランスをどうすべきであるかということについて、まず申し上げてみたいと思います。  まず時間的なことから申し上げますと、もし地方委員会ができたとしましても、年を遂つて権限の軽い面から順時漸進的に地方に移管していくべきであつて、主要なものは最も民主化の成熟の状態が確認された後に改管すべきであるということを申し上げられます。最悪の場合を予想して一挙に移管するとしましても、現段階におきましては、少くとも給與のこと、それから高等学校の管理のこと、教員人事並びに労働條件に関すること、それから教員組合に関すること、この四件につきましては、いかに最悪の場合でも現段階においては、縣の委員会で管掌してほしいということをわれわれは考えておるわけであります。  それから第二の御質問の、労働組合に関することなんですが、まず率直に申し上げまして、私たち日本職員組合すなわち教員労働組合を彈圧することの法であるということを確認しております。けれども、われわれは最悪の場合、市町村にまでおろされたとしましても、われわれの日教組あるいは縣教組の組織自体にはひびは入りません。いわゆる給與の責任者、團体交渉の相手は、市町村教育委員会がなるかもしれませんけれども、われわれはあながちそれために組合を分割して、市町村にまで單一組合をつくらなければならないということは考えていないわけであります。縣の一万の組合の團結でもつて、町あるいは特別教育区の委員会にも、縣の教員の團結の力で、團体交渉をすべきであるというのが、われわれ日教組考えなのであります。そのことにつきましては、組織自体にはひびは入りませんけれども、組合の運営の技術面の非常な困難さがあつて、この原案は、労働組合としての教員組合にとつては、きわめて迷惑千万な法案であります。それからもう一点、その迷惑の内容を申し上げますと、われわれの給與の責任者は一應縣知事であります。ところが、半額國庫負担しておりますから、これは文部省にもあるわけであります。縣に交渉すると文部省に行けと言う、文部省に行くと大藏省に行けと言う、どこにわれわれ給與の最後の責任者があるのか、責任の実体はどこにあるのか、この三者で非常に責任のなすり合いみたいなことをやつております。それでわれわれ組合の運動というものが、非常に迷惑をしておるわけなんですが、今ここにこういうふうな委員会ができたとしますと、われわれの給與の当面の形式的な責任者は、市町村委員会になるでしよう。そうすると市町村委員会に要求しても、給與は縣の委員会に行けと言う。縣の委員会に行くと文部大臣に行けと言う。文部大臣に行くというと大藏大臣に行けと言う。それ幅が非常に廣くなつて、われわれとしてはとりつく島がなくなつてしまいます。それが一つと、もう一つは、縣の委員会におきましては、私は教育長が最も権能があると思う。そうすると、最もわれわれの給與に責任のある、力のある者は教育長だろうと思いますが、しかし形式的には教育委員会である。ところが実際に金をもつて、財源のプールをもつておるのが縣知事である。そうすると、効力をあげる面から言うと、縣知事にわれわれは請願した方がよろしいが、当面の團体交渉の相手は教育委員会になる。そうすると教育長か、教育委員会か、縣知事か、どちらがほんとうのわれわれの給與の責任者であり、労働條件の責任者であるかということに、非常な困難を來してくるわけであります。  以上、そういうような点から、われわれの組合において指摘されて、非常に迷惑な困惑を來すところ法案であると同時に、われわれは率直に、われわれの今起りつつある教員組合を彈圧する意図があるということを確認しております。
  31. 久保猛夫

    ○久保委員 文書で意見が求められるとするならば、私は横須賀の市長さんにお尋ねしたいことがある。それは第一條教育が外部の力で、外部の不当な支配に服することがなく云々というこの目的に非常に賛成だということであつたのですが、市長さんの意見は、なぜ今日の地方公共團体の長が、あるいは議会に、この教育行政を任せられないかという、こういう意見つた。これはかつてどういう者が教育を圧迫したかと申しますと、大体軍であり、官吏であり、公吏であり、それから地方議会つたと思うのであります。それならば、軍はなくなつたけれども、官公吏というものがあり、そうして議会が——具体的には議員でありますが、そういうものが教育を不当に圧迫し、教育が非常に不純なものとされてきた。それをそのまま残してどうしてこの委員会法を否定されるのか、私はその点がどうしても納得できないのであります。その点をもう少しはつきり聽きたかつた。この点が一つ。  それからさつき海後教授に質問したことの中で、その中の一点をP・T・Aの代表である長瀬さんにお聽きしたいのでありますが、御意見はまことに私は同感であります。ただ最後のことですが、それはどうも御意見が矛盾する点があるように私には思われる。というのは、官僚独善の弊を避けなければならないという御意見、それから日本現実的な個性をこの法案に活かすという点、ほんとう委員として人物選挙されるような選挙法をつくれという御意見は、私同感であります。ところが最後に、報酬は要らない、この点であります。私はさつき言いましたように、この仕事は、今日教育問題が非常に社会の重要な問題でありまして、しかしてまた過渡期においてこれを実施するならば、なお一層いろんな困難が起ると思うのであります。それから委員の方は、眞に教育関係の法規であるとか、あるいは内容について勉強していただかなければならない。いろいろな点から、自分の本職を相当投げて、この職に当つてもらわなければならないのではなかろうかと思うのであります。われわれは國会に來まして二年半、ほとんど自分の職というものはされないのであります。都道府縣の教育委員になられた方なんかが、それとよく似た立場に置かれるのではないかと思うのであります。そこで私は、もしこれを無報酬としたならば、忙しいままに研究もできないし、從つて事務局任せになるおそれがある。事務局任せになつた場合には、あなたが御指摘になつ官僚独善、教育長独善に陷つて、これが新たなる官僚的な巣になるおそれが多分にあるのです。それを防ぐ意味からしましても、大体相当額の報酬、歳費というものを與うべきだと私は思う。その点についてお伺いしたい。
  32. 長瀬鉄男

    長瀬公述人 今のお尋ねでございますが、私は絶対に無報酬という意見ももつておりませんが、実は先ほど申しましたように、報酬と天秤にする、あるいは権限と天秤にするという傾向が非常に強い。だから当初においてはまず無報酬ということを表現するのが一番よいのではないかということ。もう一つは、教育委員会というものが年中開かれておるのか、あるいは月のうち一日あるいは二日、あるいは五日程度くらいに開かれるのか、その程度によつて非常に違うと思うのであります。私ども父兄の立場から申しますと、父兄は無報酬で、しかも現在の教育実情を見ておりますと、義務教育でも二百円、あるいは三百円の負担をされております。非常に大きい負担をしております。それでもやつぱり自分の子供のために働いておるのであります。でありますから、月に五日や三日の教育委員会に行つて、そうして意見を述べるくらいなことに、過分な報酬は要らないと思います。それからまた報酬をそんなにもらわなければやれないような人が教育委員になつてもだめだと私は思う。りつぱな職業をもつてりつぱに独立をしているそういう完全な市民が、教育委員の仕事に携わることによつて、初めて円満な教育ができる。教育技術屋にならないことが必要だと思いますために、特に私は無報酬ということを主張するのであります。しかしながらだんだん段階が進みまして、そしてその実情が、一年中ずつとやらなければならぬとか、あるいは月の三分の二をそれに沒頭しなければならぬというような時世がくれば、それに適用するだけのものは、あらため考えていかなければならぬと考てえます。
  33. 久保猛夫

    ○久保委員 東京都の副知事が見えておられたのでちよつと聽いてみたかつたのですが、先ほど都立第五高校の絹村君から四十八條に対して反対意見があつた。これについて副知事がどういうことを考えておられるかという点を、これもひとつ文書でお願いしたい。これで私の質問は終ります。
  34. 松本淳造

    松本委員長 ただいまの山田東京都副知事に対します質疑と横須賀市長に対する御質問の回答は文書でいたすように手配させますから御了承願います。——他に御質疑はございませんか。
  35. 高津正道

    ○高津委員 千葉の齋藤村長にお伺いしますが、村の予算の半分が現在教育費である。それを教育委員会にとられてやるのでは、予算の円滑な執行がなし得ない。われわれは教育費問題のために將來職を去らねばならないかと思つている。こういうお話がありましたが、それは立場が苦しくなつてやめるという意味でしようか、それとも他に意味があるのであろうか、それをはつきりしておきたいと思います。
  36. 齋藤喜一

    齋藤公述人 お答えいたします。ただいまの問題は別に深い意味はありません。貧乏世帶を切りまわしております町村長といたしまして、予算運営の実権を握りませんと、非常に苦しい立場に立つて、勤めかねる。こういうことが各町村に起つてきたらまことに困る、こういう意見なのであります。
  37. 高津正道

    ○高津委員 日教組江口さんにお尋ねしますが、地方委員会は、二年の猶予期間では短か過ぎるというのですがそれでは何年ぐらいを御希望でしようか。
  38. 江口泰助

    江口公述人 お答えします。將來の日本民主化の成育の度合によつていたしますので、將來何年後になつてから原案通りの権限を有するに妥当な度合が來るかということは予測できませんので、日教組自体としても、その点檢討して結論が出ないわけでありまして、一應のところこれは無期延期ということになつております。なお、ついでに申し上げますが、市も現段階においては無期延期ということになつております。
  39. 高津正道

    ○高津委員 新制高等学校の代表者である都立五高の絹村さんにお伺いしますが、新制高等学校の主管は府縣委員会市町村委員会との取極めによつて決定する、こういう修正意見が出ておるのでありますが、それに対する御意見を聽きたいと思います。
  40. 絹村和夫

    ○絹村公述人 お答えいたします。文部省案であります都道府縣立の学校都道府縣委員会に所属させる。そういう案で私たちは一應安堵の胸をなでおろしたのであります。こういう表現が許されるならば私たちの陳情請願が勝利に終つたと喜んだのであります。しかるにうわさによれば、修正意見がありまして、私たちはその解釈に非常に迷いました。非常にあいまいなのです。私たち意見といたしましては、その取極めによつて、そういうあいまいな点をはつきりしていただきたいのです。できますれば、都道府縣立の学校は、都道府縣の委員会に属させる、こういうはつきりした條項をこの條文の中に入れていただきたいのです。
  41. 水谷昇

    ○水谷(昇)委員 日教組の方その他の発言者にお尋ねしたいのでありますが、この教育委員会法案によりますと、現職教員は被選挙権が認められていないのでありますが、これに関して反対意見を申し述べられたのでありますけれども、現職教員の被選挙権を認めた場合には、当選がしやすいということになると思います。從つて現職教員がたくさん立候補するということになり得ると思う。そういう場合に落選者もまたたくさんできる。たくさん立候補してたくさん当選するということと、たくさん立候補してたくさん落選するという両方の弊害があると思います。これは日教組の方の修正意見によりますと、範囲都道府縣、それから大きな都市に限定をしておりますから、比較的その弊害は少いと思いますが、この原案が通過するような場合には、私が申しましたような弊害がたいへんに大きいと思いますが、そういう場合にでも、現職教員に被選挙権を與える方がいいということをお考えになりますか、御意見を伺いたいと思います。
  42. 江口泰助

    江口公述人 私たちは私たちの主張する修正案の場合においても、原案がこのまま通過した場合においても、第九條の立候補の禁止は、あらゆる面から考えて、妥当でないと思いまして、削除することを主張しております。
  43. 野老誠

    ○野老委員 日教組江口さんに最初にお伺いしたいのでありますが、現職教員立候補禁止の條項を削除するという御意見でありますが、さらに進んで教育の適正なる運営のために、積極的に数名の現職教員公選して、委員と同数程度の現職教員の代表をこの委員会の中に参加せしめるべきである、こういう積極的な意見に対しまして、日教組はどう考えておりますか、その点をお伺いしたいと存じます。
  44. 江口泰助

    江口公述人 われわれとしましては、地方公共團体議員を特権的な優遇で教育委員の中に入れることには、基本的な点において排撃しておるものであります。その点を主張する基本的な態度から見て、われわれも同樣特権的に入つていくことは、討議したことはありませんが、一應拒否すべきだと考えております。
  45. 野老誠

    ○野老委員 次に齋藤村長にお伺いしたいのでありますが、前に小林村長は、地方公共團体議会の代表者を橋架けの意味で、この委員会の中に入れるということについては、自分は反対であるという意味の意思表示がせられたのでありますが、同樣の立場にある齋藤村長として、議会の代表がこの委員会の中に加わるということについての可否をお伺いしたいと存じます。
  46. 齋藤喜一

    齋藤公述人 お答えいたします。私は地方議会議員が一人だけ入ることに賛成をいたします。
  47. 江口泰助

    江口公述人 ただいまの野老先生の御質問について、誤解があるといけませんから私より申し上げたいと思います。私は現状のままいつた場合には、教員を入れることには納得いきません。しかし日教組が主張しておるように、教員立候補禁止(第九條の全部削除、それから地方議員を入れないということを言つておりますがその両面のわれわれの要求が通つた場合には、私が申し上げたようになるわけであります。ところが原案のままこれがいくとするならば、われわれは当然はいつてしかるべきだということであります。誤解があるといけませんから、ちよつと申し上げておきたいと思います。
  48. 野老誠

    ○野老委員 長瀬さんにお伺いしたいのです。委員会委員報酬の問題でありますが、先ほど久保委員より御質疑があつたわけでありますけれども、ただいま長瀬さんの御説明のような、いわば献身的な、自分の生活なり職業なりに顧慮することなく、教育ために專念でき得られる方々も、ある程度あるかもしれませんが、ただいま日本の置かれている現状においては、働いてさえも生活に困るという現状において、報酬を與えないということによつて、そこに選ばれてくる委員が、特定な階級を代表して、いわば一般の勤労大衆の代表がこの委員会に出てくることができないということになりはしないかということを、われわれはおそれておるわけでありますが、それについての長瀬さんのお考えを承りたいと存じます。
  49. 長瀬鉄男

    長瀬公述人 今の報酬の問題でございますが、何遍も申すように、それは一箇月のうち幾日を費されるかということが問題になるのでありまして、それによつておのずから考え方が違うと思います。
  50. 野老誠

    ○野老委員 これは地方にまでこの委員会が実施を見ない暫定期間中におきまして、都道府縣の委員会というものは、大体ここに規定されている権限を忠実に履行せんとするならば、すなわち第一に教職員の任免等のこの仕事一つだけを考えましても、一府縣で千数百人あるところの教員の異動が、この委員会によつて行われるというようなことにでもなりますれば、それはもう連日連夜不眠不休でやらなければ、とうていこの責任を全うし得られないというくらいの劇務になり、またその勤務いたします日数も、きわめて頻繁に行われなければならないという見透しのもとに、われわれは審議をしているわけであります。そういうふうに非常に劇職であるということを予定された場合に、いかがお考えになりますか。非常にくどいようでまことに恐縮ですが、お伺いいたします。
  51. 長瀬鉄男

    長瀬公述人 ただいまのように、もし一箇月全体とか、あるいは一箇月の大半をその仕事に没頭しなければならぬという場合になれば、生活の問題が出てまいりましようから、おのずから違うと思います。
  52. 西山冨佐太

    ○西山委員 江口君にちよつとお尋ねしたいのですが、教育委員の中に、地方議会から一人送るということを認めるとした場合に、教育関係——具体的に教員組合と言つてもいいのですが、そういう方からも、現職であつても加えるということは必要だと考えるのですが、この場合に都市ではいざ知らず地方になりますと、まず教育委員だから先生方を出しておけばいいのだという氣持になりやすいし、また誘導しやすいという問題もできてくると思うので、教育專門家委員会の全部あるいは大部分を占めるというようなことになると、また、この委員会設置の趣旨に反することがあるかと思う。そこで五人の委員であるならば、そのうちの一人とか二人、なるべく人数を制限して、地方議会から一人入れる、そうすると教員組合の方から、研究を要するけれども、一人か二人という制限を附してそれに入れるというようなことを御考究になる必要があるかと思いますが——。
  53. 江口泰助

    江口公述人 ただいまの点につきましては、先刻も野老先生の御尋ねに申し上げましたが、原案のままでございましたならば、われわれは予算との関係で、地方公共團体議会議員を入れるようにしたならば、もつと重大な関係のある教員組合から当然入れるべきであるという考えはもつております。
  54. 西山冨佐太

    ○西山委員 それはいいんですけれども、そのときに選挙されれば選挙されるままに、前に申しますようにいくら出てもいいというか、全部出るようなことになつても困る場合があるから、その制限を附してということについての考えはあるか。
  55. 江口泰助

    江口公述人 その点につきましては、まだ日教組としても私としても考えたことはありません。
  56. 松本淳造

    松本委員長 他に御質疑はありませんか。——大体御質疑もないようでありますから、本日の公聽会はこの程度で終了いたしたいと存じます。  なお公述人各位の御意見は十分参考といたしまして、文教委員会はこの法案に愼重な態度をさらに加えたいと考えております。終りにあたりまして、お忙しいところを御出席くださいました公聽人各位に対しまして、深甚なる敬意を表します。  公聽会はこれをもつて散会いたします。     午後三時五分散会