○
細野政府委員 本
委員会に付託されました
教育公務員の
任免等に関する
法律案について、その提案の理由を御
説明いたします。
六・三の
義務教育制を根幹とする新
学校制度は、今や着々
実施を見つつあるのでありますが、直接新
教育実施の任に当る
学校教員の選任を公正かつ適切ならしめるとともに、教員の地位を確立し、も
つて教員としてのその職務に專念させることは、
教育刷新、
教育振興の基礎條件であり、現下における喫緊の要務と存ずる次第であります。
政府におきましては、かかる信念のもとに、早くからこれが研究を重ねてまい
つたのであります。
しかるところ、昨年十月に公布されました國家公務員法は、來る七月一日をも
つて施行の運びと相なりました。從いまして、國家公務員たる身分を有する教員も当然その適用を受けることとなるわけであります。しかしながら、國家公務員法の
規定を、全面的にそのまま
学校教員に対して適用することにつきましては、被
教育者の人格完成の任に当る教員の職責の特殊性に鑑みるとき、必ずしも適当でなく、かつ不十分と思われる点も存するのであります。國家公務員法におきましても、
学校教員に関して、特例を設け得べきことを
規定しているのであります。右に申し述べました
事情を深く考慮いたした結果、ここに國家公務員法の特例として、教員の
任免等に関して
規定する
法律制定の必要を認めた次第であります。この必要性につきましては、すでに第一回國会において、國家公務員
法案審議の際、教員の身分に関する
法律を速やかに制定すべき旨の附帶決議が行われている事実からも明らかであると存じます。
次に
学校教員は、
從來、國立、公立を問わず、官吏の身分を有するものと法制定の
趣旨からしても、また
教育行政の
地方分権の精神に鑑みても、公立
学校の教員は、これを
地方公務員とすることが、適当と
考えられますので、國家公務員法の施行に際して、この
趣旨を明らかにいたしますとともに、これら公立
学校の教員の
任免等についても、國立
学校の教員の場合と同じく、ほぼそれに準じた
規定を設ける必要があると
考える次第であります。なお
教育委員会法の制定に伴い、
教育委員会の
教育長や
專門的教育職員についても、その
任免等について
学校教員に類似した
規定を設ける必要があるのであります。
以上がこの
法案の制定を必要とするおもな理由でありますが、次にこの
法案の要点を
説明いたします。
まず本案の適用
範囲でありますが、それは國立及び公立の小
学校、中
学校、高等
学校、大学の学長、校長、教員及び部
局長並びに
教育委員会の
教育長及び
專門的教育職員であります。本案ではこれらの者を総称して
教育公務員と称することといたしました。
教育公務員は、
教育を通じて國民全体に奉仕する者でありまして、その特殊な職責に基き、次の諸点に関し一般公務員に対して適用される基準の特例を設けたのであります。
第一は採用及び昇任の方法に関する点であります。國家公務員法によりますと、職員の採用及び昇任は、原則としてすべて競爭試驗によることとな
つておりますが、一般に
教育者たるに必要な人格的要素は、競爭試驗によ
つては、とうてい判定しがたいものと
考えられます。しかも高等
学校以下の
学校の校長、教員並びに
教育委員会の
教育長等の
教育公務員につきましては、嚴正な手続を経て、下附される校長若しくは教員または
教育長等の免許状をも
つていることが、必須の資格要件とされているのでありますから、その上に競爭試驗を行うことは、不必要でもあり、また不適当とも
考えられるのであります。特に大学の
教育公務員につきましては、その職務の性質上、きわめて專門化された労力、技能を必要とするのでありまして、競爭試驗によることは不適当でもあり、かつ
実施困難の場合が多いとさえ想像されるのであります。
以上申し述べました理由により、
教育公務員の採用及び昇任は、競爭試驗によらず、適正な選考によ
つて行うべきであり、この点に関する
規定を本案に設けたのであります。
第二は研修に関する点であります。
教育公務員はその職責の遂行上、当然研究と修養に努めなければならないものでありますから、この点について、國家公務員法の
教育訓練に関する
事項を積極的に拡充明示して
規定いたしました。
第三は学問の自由の保障と、大学自治の尊重に関する点であります。大学の教員の
人事に関しましては、
從來慣例上強度の大学自治の原則が認められていたのでありますが、新憲法は第二十三條において学問の自由は、これを保障する旨を明らかにしています。この新憲法の精神に則
つて、大学の
教育公務員の
人事についても、各大学の自治的
運営にまつことを本体とし、その
任免、分限等については、大学の自治
機関の定める基準により、各大学で自主的に行うのが適当と
考えるのであります。從いまして、その採用及び昇任の方法のほかに、分限、懲戒、服務等について、國家公務員法に対して相当の特例を設けました。
以上簡單ながらこの
法案提出の理由と
内容の大要について
説明いたしましたが、何とぞ愼重御
審議の上速やかに議決あらんことをお願いいたします。