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1948-06-28 第2回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十八日(月曜日)     午後二時五分開議  出席委員    委員長 松本 淳造君    理事 水谷  昇君 理事 西山冨佐太君       柏原 義則君    圓谷 光衞君       田淵 実夫君    野老  誠君       松澤 兼人君    松本 七郎君       伊藤 恭一君    久保 猛夫君       武田 キヨ君    米田 吉盛君       黒岩 重治君    織田 正信君  出席政府委員         文部政務次官  細野三千雄君         文部政務次官  岩木 哲夫君         文部事務官   稻田 清助君  委員外出席者         專門調査員   宇野 圓空君         專門調査員  横田重左衞門君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公述人選挙に関する件  教科書発行に関する臨時措置法案内閣提  出)(第一〇一号)     —————————————
  2. 松本淳造

    松本委員長 会議を開きます。  教科書発行に関する臨時措置法案を議題といたし、審査を進ます。  第九條 文部大臣は、左の各号の一に当る事由があるときは、需要者意思を考慮して、他の発行者発行指示を行うことができる。   一 需要数教科書発行に不十分なとき。   二 発行者事業能力信用状態教科書発行に不適当と認められるとき。   三 発行者文部大臣指示した発行を引き受けないとき。   四 第一四條又は第十五條の規定により発行指示の全部又は一部を取り消したとき。 以上御質疑ありませんか。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 「需要者意思を考慮して」とございますが、いかなる手段によつて文部大臣はこれを考慮せられますか。
  4. 稻田清助

    稻田政委員 これは見本展示会を通じまして、政縣から文部省に集計いたします注文書に需要者の第一志望、第二志望をとつております。從いまして、第一志望が不幸にして不適当な場合には、その学校には第二志望教科書をやるということにいたします。その意味を「需要者意思を考慮して」というふうに表わしたわけであります。
  5. 田淵実夫

    田淵委員 今日松本君の指摘したところでありますが、これは少し文章として不十分なのじやないか。いかなる手段によるか、いかなる機関をもつてするかという点を、もう少し明示しておく必要があるのではないかと考えるのでありますが、文部当局の御意見を承りたいと思います。
  6. 稻田清助

    稻田政委員 御意見でありますが、私どもといたしましては、この「需要者意思を考慮して」というのは、その前の條文から考えますれば、当然注文を集計する際に現われてまいりました需要者意思從つて、機械的に第一志望から第二志望にまいるというようなふうに読めるものと解釈いたしております。
  7. 黒岩重治

    黒岩委員 「一 需要数教科書発行に不十分なとき。」とありますが、この不十分であるということを認定する方法をお聽きしたいと思います。
  8. 稻田清助

    稻田政委員 およそ客観的に一万部というものを一つの合理的定價算定水準考えております。これ以下になつてまいりますと、いかにも生産費が増高いたしまして定價が高くなるということになりますし、それをむりにあえていたしますれば、自然発行供給の場合に無理が生ずるということがありますので、考えておりますが、それも今後具体的な措置につきましては、なお十分檢討いたしたいと考えております。
  9. 黒岩重治

    黒岩委員 その一万という数量は、あらかじめ発行しようとするものとの間には、了解済みの点と解してよろしゆうございますか。
  10. 稻田清助

    稻田政委員 もし、かりにそれ以下でありましても、具体的にその発行者のいろいろな能力関係で、十分ほかでもうけてこちらで損をしてやつていくというふうに判定できますれば、しかもこちらの認可いたします定價で引受れるというものがありますれば、それにやらせる。これはやはりあらかじめと申しますよりも、そのときにあたつて処置し得る問題だと思つております。
  11. 黒岩重治

    黒岩委員 そういたしますと、需要者意思のみを考慮してというこの第九條の表現と、その中の一の表現と矛盾を感じますが……。
  12. 稻田清助

    稻田政委員 その点は次の第十條をごらんいただきたいのであります。こちらで一方的に指示いたしまして、それを押しつける考えは毛頭ないのであります。もちろん発行者において、その指示を承諾しなければ、出さないということになりますので、需要者意思はこの條文において十分考慮できることだと考えております。
  13. 田淵実夫

    田淵委員 前條との関係上、善意に解釈するならば、「需要者意思を考慮して」という條文には、文章には不備はないごとくでありますが、私はもう少しこれを強く表現しなければならぬように考えるのであります。たとえば、これは私の決定的な意見ではありませんが、「需要者意思を考慮して」というのと、「需要者意思に基いて」というのとでは、解釈相違があるのではないか。意思に基くということになると、必ず何らかの機関、何らかの手段というものが予想されなくしては、この言葉は用いられないがごとく考えるのであります。そういう点、疑い深く私はお尋ねするわけではありませんが、法の建前上、念のために文部当局に質したいのであります。「需要者意思を考慮して」とありますが、考えようによつては、これが需要者意思を考慮したのだという、あまりにも主観的な解釈文部大臣において行われるような場合も、予想されないことはない。そうなつて見解相違だというようなことになつてくると、おもしろからざる状態を導くのではないか、こういうことが、私は顧慮されてならないのであります。從つてこの表現はもう少し変える必要があるということを私は表示しております。
  14. 野老誠

    野老委員 私は第九條を全体的にながめました際に、教科用図書が迅速に、しかも品質のよいものが廉價で供給せられるということが、教育上きわめて重大な問題である。從つてそれについて文部大臣が公正なる監督を行うということには、全面的に賛成なのであります。ただそこで問題になることは、その監督権をもつておるところの文部省自体が、著作権を有するところの一つ教科書発行しているという、いわば文部省の二重的な性格——監督権をもつと同時に、監督せられるところの一つ企業家であるという、その二重の立場の運用がよろしきを得ないならば、これは結局独占企業になつて檢定制度というものは、形式的には備わつているけりども実質的には從來の國家教科書とちつとも変りがない。しかも文部省といつても、文部省自身印刷能力もち製本能力をもつのではなくて、実は文部省の背後にいくつかの企業会社というものが介在している。こういう現段階において、第九條のそれぞれ文部省の重大な権限というものが乱用せられることによつて、先ほど來から申し上げているように、いわば檢定制度も形式的になつてしまう。たとえば第九條の一に規定してある需要数教科書発行に不十分なときの認定においても、また第二の発行者事業能力信用状態教科書発行に不適当と認められたとき、こういう場合の認定基準というようなものが、はたして正しく、行われるかどうか。こういう点が一番私の疑問とし、また不安を感ずる点でありますが、その点について当局の明快な御答弁をお願いいたします。
  15. 稻田清助

    稻田政委員 ただいまの御質問でございますが、文部省が他の発行会社と同じ位置に並び立つていながら、監督するのはおかしいじやないかというような御趣旨もございましたけれども文部省図書著作権はもつておりますけれども発行権を所有いたしまする発行者ではないのであります。從いまして発行者に対する文部省の地位といたしましては、まつたく國定であろうと檢定であろうと、同じ態度に出るかつこうにつておるわけであります。しかして文部省教科書を使うか、檢定教科書を使うかというその内容実質の問題につきましては、前々申し上げましたように、見本展示会において、まつたく同じ水準において学校先生に選ばせていただき、いずれを使うかは文部省意思が少しも加わらない、学校の方の側において選ぶというかつこうをとつておりますので、この間の問題につきましても、文部省國定教科書を出しておるからといつて決してそこに不平等な取扱いが下されるものではないと考えるわけであります。
  16. 黒岩重治

    黒岩委員 先ほど局長の御答弁によりますと、第九條の一の規定は、第十條を見れば発行者意思が十分盛られておることがわかるであろうという御答弁でありましたが、第十條を詳細に檢討してみますと、これは発行者義務方面規定ばかりでありまして、権利の方面は何ら表明せられておらぬ。かりに教科書発行が数において不十分で発行ができないであろうという認定を一方的に文部大臣がするということもまた可能であるといつたようなふうに解釈ができるのであります。そこで、ただいまの御答弁によりますと、数は少くとも、業者の方で発行するといえば発行さすという御意思のようでありますが、そうしたような意味は、この法文の上には何らくみとられないと私は思うのであります。その点について御答弁を願いたいと思います。
  17. 稻田清助

    稻田政委員 発行者の側が発行する意思を表明いたしますのは、文部大臣に届け出でまして、見本展示会に目録を送付することであります。いよいよ注文がまとまりました場合に、ある発行者はそのまま引受けるという意思をもつ、あるいはある発行者はもうおりてしまおうということになるだろうと思います。そうして、おりてしまおうというような場合に、しからばどう処置するかといつたようなことが第九條で現われておる。また、おりてしまおうというものに対して無理に文部省が指定するものでないということは、十條の承諾が必要だということでわかると思います。また、自分が引受けようといいながら、客観的に、教科書の数が不十分だとか、そのほかいろいろな條件で不適当と認めたような場合に、初めて第九條の問題があるのであります。これは客観的の情勢によつて文部大臣監督をして発動する必要がある場合でありまして、この場合において、本人が客観的な情勢に反して、自分はやりたい意思をもつておる、しかもその意思にはよりにくい場合、これが第九條に現われてくる場合だと思います。もちろん文部大臣がこれを発動いたします場合においては、十分客観的状況を見て、公平にいたすことは申し上げるまでもない問題だと思います。
  18. 黒岩重治

    黒岩委員 それでは第十條の指示以前の問題として理解してよろしゆうございますか。
  19. 稻田清助

    稻田政委員 つまり、賣る買うの問題でございますから、どういう教科書を買うかということは、供給者によつてきまるのではなくて、需要者が数を決定するわけであります。從いまして、一遍供給場裡に登場したものは、究極において集計した数量を引受けなければならぬ。こういう意味になりまので、この場合におきましては、発行者意思というものはそう問題にならない。こういう趣旨で申し上げたわけであります。
  20. 野老誠

    野老委員 先ほどの質問に関連するわけでありますが、文部大臣著作権を有するところの國定教科書、これを何ゆえ檢定教科書とともに並行にやられるのか。私ども考えとすれば、全部檢定教科書にしてしまえばよろしいものを、從來通り文部大臣著作権の有するものを何ゆえに残しておくか、その理由について伺いたい。
  21. 稻田清助

    稻田政委員 その点でありますが、もとより新しく檢定制度を布きました以上、將來にわたりましても、檢定合格された書物と同じようなものを、文部省がまた新たに編纂する意図をもつていないことは、先般申し上げた通りでございます。しかしながら、檢定制度を今布きまして、來年から新しい檢定教科書発行して使うということになりましたけれども、まだはたして各学年、各科目にわたつていい檢定教科書がどれくらいできるかどうかわからない状況でございます。また、檢定制度國定制度にまさることはもとよりでありますけれども個々教科書を比べた場合に、個々檢定教科書が、檢定教科書であるからといつて、必ずしも今ある國定教科書にまさつておるかどうか、これは別の問題だと思います。しかしそのいずれがまさるかという判断を文部省がいたすわけではありません。これはお使いになる先生が判断していただく。今日の状況におきましては、今発行されておる教科書も供給する、檢定教科書も供給する。なるべく廣くたくさんの教科書を供給いたしまして、その中から自由に先生に選んでいただく。もし先生の側において、國定教科書が要らないという結論が出ますれば、もとより文部省はそれを維持する意思はないのでありますが、今の状況として、檢定教科書だけにしてしもうというところまでの必要はないのではないかと思つておるわけであります。
  22. 野老誠

    野老委員 ただいまの御説明の中で、これを採用する者が國定教科書は要らないという認定をすれば國定教科書は取りやめにするというお話でありましたが、その認定というものは、たとえば需要部数によつて決定するのですか、それともある年限を切つて決定するのか、その点を承りたい。
  23. 稻田清助

    稻田政委員 さしあたりにおきましては、需要部数の漸減ということで考えております。まだある年というふうに年限を切るというだけの材料をもつていないのであります。
  24. 松本淳造

    松本委員長 他に絵質疑ありませんか。——次に移ります。  第十條 発行指示を承諾した者は、省令の定めるところに從い、教科書発行する義務を負う。  2 発行者は、教科書を各学校に供給するまで、発行責任を負うものとする。  3 文部大臣は、必要に應じ、発行者から報告をとり、又はその業務の履行の状況を調査することができる。
  25. 圓谷光衞

    圓谷委員 第十條の第三項ですが、文部大臣は必要に應じて発行者から報告をとりまたはその業務状況を調査することができるというのですが、その必要というところを説明していただきます。
  26. 稻田清助

    稻田政委員 この必要と申しますのも、この法案一條の目的から出ずる趣旨でございまして、発行供給を確実にしたい。それに対する適正な監督をする意味において必要な材料をとる。こういう趣旨でございます。
  27. 圓谷光衞

    圓谷委員 こういう條項を設けることが、私は官僚主義ではないかと思うのです。文部省報告とか調査とかいうものをとつて非常にやかましくすることによつて業者も苦しむし、それから必要のないようなものまで調査するということも從來往々にしてあつた。あまり必要がなかつたら、これだけに規定しておいたらば、第三項の條項はあまり必要でないかと思うのですが、いかがなものですか。
  28. 稻田清助

    稻田政委員 お話のごとく、これを取扱うために業者が非常に煩わされて、それがひいて発行供給上において阻害するというような点につきましては、私ども十分愼まなければならないと思つておりますけれども、やはり業者において扱う紙その他の資材は、指定生産資材の重要なものであります。それがどういうふうに働いておるかといつたような状況も、いろいろな関係におきまして文部省責任をもつて調査しなければならない立場にあるわけであります。あるいはまた発行供給の約束を果し得るかどうか、そのことが起つてしまつてからでは間に合わないものもありますので、あらかじめ注意いたしましたり、あるいはまた、ここにおいて資料を集めることによつて文部省において種々の援助もなし得る條項をおいたのであります。たとえば、輸送について隘路があることがわかりました場合において、そちらの方面とも折衝できるし、あるいは電氣その他の問題につきましても、どういう状況かということがわからなければ、やはりいろいろのおせわできにくい問題もあるので、今お話のような点につきましては、十分愼重に扱いまするとともに、やはりこうしたことがなし得る規定の根拠だけは残しておいていただきたいと考えております。
  29. 松本淳造

    松本委員長 他にありませんか。次へ移ります。  第十一條 教科書の定價は、文部大臣認可を経なければならない。
  30. 圓谷光衞

    圓谷委員 第十一條が一番問題だと思うのです。要するに檢定制度をとつて教科書りつぱなものをつくりたいということでありますが業者発行する場合においては、やはり利潤というものを見なければ、結局発行が不可能になる。前に稻田局長からの御説明にもありました通り國定教科書檢定教科書が、現段階において二本建になつて國定の方には編纂員を置きまして、國費をもつて優秀な專門家が編纂しておつて編纂費というものは要らない。民間檢定を受けるもの、または業者は、その間において非常な経費もかさむということであつて國定檢定教科書が、実際面においてこれが太刀打ができるかという問題を憂えるのであります。先ほど教科書委員会の方々の反対意見もあつたようですが、要するに問題はここだと思う。そこで文部省は、この法案をもつてやはり統制を強化していくという腹でいけば、いかにりつぱな教科書ができ、いかに業者発行しようとしても、結局これは私はできない問題だと、こう考えるのであります。そこで問題は、先ほどこの定價算定についても、文部省だけでもできないのだ、現段階においてはこうしておかなければいかないのであるという説明を聽いたのでありますが、要するに文部省がこの檢定制度を実施して、この教科書をほんとうに國定より離脱して、りつぱな教科書にしていくんだという腹があるかないか。問題はここなんです。なるほどこの法案をつくるときには、稻田局長が美辞麗句を連ねてこれでいくのだとおつしやつても、実際法案が出てしまうと、檢定を受けたところの著作者は、あるいはまた発行するところの業者も、これでは発行ができない、不可能だということになつた場合に、前途のことでちよつと想像はつきませんが、私はそれを一番心配するのです。これは何とか定價を文部大臣認可制度ということにしないでやる方法はないか、ここのところをひとつ伺いたい。
  31. 稻田清助

    稻田政委員 お話のごとく、檢定制度を布きました以上は、われわれといたしましても、檢定制度助長発達という点に全力を傾けて、その方法を考慮しつつあるわけでございまして、いささかもこれを阻害するようなことは、毛頭考えていないのでありますが、御心配のごとく、定價によつて圧迫を受けはしないかという問題につきましては、先般も申しましたように、定價のきまる前に、需要供給の方がきまつてくるわけでありまして、そこできまりました需要数だけを供給者が供給するということは、爾後において援助こそすれ、圧迫するという方法はとり得ないのであります。定價の算定基準につきましても、なお関係方面と十分折衝いたしまして、無理のないように決定せられるように、この上とも努力したいと思つております。
  32. 圓谷光衞

    圓谷委員 國定教科書と今度発行される檢定制度による教科書とは、もちろん需要册数によりまして、算定が変つてくるというわけですが、大体國定教科書民間発行する教科書とが、一万部程度という場合において、どのくらいの開きがあるようなお見込みでありますか。
  33. 稻田清助

    稻田政委員 その見込みはまつたく私どもつきません。これは最初のことでもありますので、民間の本の定價が結局どうなるかは、まつたく見当がつきません。
  34. 黒岩重治

    黒岩委員 文部大臣認可をいたします基準になりますところの價格は、どういう機関においておきめになる御用意がありますか。
  35. 稻田清助

    稻田政委員 ちよつと速記をやめていただけますか。
  36. 松本淳造

    松本委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止
  37. 黒岩重治

    黒岩委員 文部省が案を立てます前に、今ありますところの教科用図書委員会にも、その算定の基礎をつくらすための審議をさすといつたような手続はいたしませんか。
  38. 稻田清助

    稻田政委員 その点につきましては、今日考慮いたしておりません。
  39. 野老誠

    野老委員 ただいまの御説明で、定價の決定需要供給決定して後にきめられる、こう承知してよろしゆうございますか。
  40. 稻田清助

    稻田政委員 その通りでございます。
  41. 野老誠

    野老委員 そういたしますとある教科書を採用したいという者は、この教科書の定價はわからないけれども内容がよろしいからと、こういうことで注文することになるのですか。
  42. 稻田清助

    稻田政委員 お話のごとく、見本展示会におきましては、その内容によつて採否決定するほかはないと思います。
  43. 野老誠

    野老委員 なお図書発行者は、一應見本を作成したけれども、その定價はまだ決定していないわけであつて決定していない際に、いろいろの需要供給決定するわけでありますから、その需要供給決定後において定價が決定されて、それが発行者にとつて採算が合うか合わぬかというような場合も出してくる。これではとても発行しても割に合わぬというような場合に、みすみす欠損を見込んで、どうしても発行しなければいけない義務を負うということになりますか。その通り承知してよろしゆうございますか。
  44. 稻田清助

    稻田政委員 その場合は、お話のごとく無理な義務を負うのではないのでありまして、第九條で文部大臣指示した発行を引受けない場合もあり得る。第十條において義務が生じますのは、文部大臣指示を承諾した場合であります。
  45. 松本七郎

    松本(七)委員 かりにこの條項がなくとも、実際問題としては、先ほどお話のようないろいろな機関を経なければやれないことになると思いますが、一應これを除いて、当分さらに檢討するということはできませんか。
  46. 稻田清助

    稻田政委員 先ほど申しましたような手続を経るにいたしましても、ひつきよう責任者といたしまして現われるのは文部大臣でありますので、この條項はそういう意味において、どうしても必要な條文だと考えております。
  47. 田淵実夫

    田淵委員 どの発行者も、文部大臣指示從つて発行を引受けないという場合にはどうなるのですか。
  48. 稻田清助

    稻田政委員 その場合には、それは個々の場合になつてまいります。Aなる学校の第一志望教科書が、たまたま引受けられなかつた場合には、その学校の第二志望教科書が出る。Bなる学校についての第一志望と第二志望とは、また違うのでありますから、二つのものが引受けないということは、まずあり得ないかと思います。第一志望がなければ、自然第二志望へ変ると思います。
  49. 圓谷光衞

    圓谷委員 一体教科書も、一つ商品ですが、商品展示会に出して賣ろうとするときに、値段がなくて注文がとれると思いましようか。まずもつて一つ教科書を買うとしても、内容がよくとも、値段はいくらかということを考慮に入れて注文するだろうと思うのです。あとで値段をきめるということでは、実際の問題として相談が成り立つかどうかということを、稻田局長の個人の見解でも結構ですから伺いたい。
  50. 稻田清助

    稻田政委員 まことにごもつともなお話でございましてこの点は実に困つた問題なのであります。実は教科書需要数をまとめ上げてから、発行供給に至りますまでにどのくらいの日数が必要かということが、一つの大きな問題でありますが、これはどうしても六箇月以上の時日をもちませんと、紙の入手から発行供給完了まで至らないのであります。しかもまた從來のごとく、発行者需要者である学校と自由に取引して話をきめられるくらい紙がゆつくりしておりますれば、もう少し話が短かく決定できると思うのでありますけれども、各学校ともどれか一冊しか使えない、それに対します見本もごく制約があるといつた今の状況から見ますと、非常に需要の時期よりもさかのぼつた早い時期に注文をとらねばならぬ。そういう時期にかりに定價をきめた、としても、その後における紙の値上り、あるいは賃金の高騰、今日の状況から見れば半年も経てば非常に條件が違つてくるのであります。かりに見本展示会一つ仮定價を定めましたところで、結局それは注文者を欺くという結果を生ずる。殊に教科書はどれを選ぶかということは、價格の問題ももちろん十分影響がありますけれども、それ以上に大事なのは、内容実質の問題であつて先生方は主としてその点について選ばれるだろうと思うのであります。この問題はお話のごとく非常に不自由な困つた問題でありますけれども今の状況から見ますれば、確定した定價によつて需要をきめて、後でそれを供給するということができにくい状況であります。
  51. 野老誠

    野老委員 そういたしますと、定價も未定であるし、第一希望、第二希望を欲しても、はたして入手できるかできぬかわからぬ、こういうきわめて不安定な状態になつておる。そうすると結局のところそういう不安定の状態のものより、いつそのこと國定教科書が一番いいのだということで、國定教科書のみに集中する危險はありませんか。
  52. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 先ほど來第十一條に関連しての点であります。ただいま局長からの申し上げたのでありますが、ただ初めからこの代價がいくらであるかといつたような、全然無見当でないような展示方法を考慮いたしたい。たとえばその部数に應じて需要者数の総計が十万部の場合だつたら一冊が何円何十銭だか、五十万部の場合なら何円南十銭、百万部の場合は何円何十銭、さらに需要者に手渡しいたしますまでの日数の予定日、その間に文部省発行者側との原料、賃金諸物價を考慮したこれらの総合的な予想的な見積書というものは当然展示会に出すつもりをもつておりますから、全然不安定ではないと考えます。
  53. 田淵実夫

    田淵委員 第一志望も第二志望発行者の方で引受けないという場合が私はあり得ると思う。殊に先ほど圓谷委員その他から申されたごとく、國定檢定の二本建でいくということになりますと、文部省の方は原稿料も校正料も要らない、その他各種の便宜をもつていて安上りだ、それに業者発行するところのものが追つくだろうかということであります。そういう点になつてくると、需要者の方は注文した限りは泣いてもこらえましようが、泣いてもこらえられないというのは業者である。採算がとれないということになると、あるいはやや採算がとれても、將來これは危險であると思うならば、第一志望も第二志望も受け入れないという場合があるのではないかと考えます。その点を少し文部当局におかれても突きつめて考えておかれる必要があると思う。経済人ほどそういう点において実に敏感なものはないということを、昨日も申し上げて御承知でもありましようが、私は重ねてそのことを申し上げておきたい。
  54. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 御説はごもつともの点とも考慮いたしますが、この点につきましては、ただいま私が申し上げましたる通り見本展示会におきましておよそその部数に應じまして第一志望のこの本であればいくら、第二志望のこの本ならいくらといつたような、いわゆる発行者側の予想價格というものが展示されますから、その結果集録されたものを、今度は発行者側で、すなわち見本展示会に提出した発行側で引受けないということの矛盾はあり得ない。しかも先ほど來申し上げております通り、現在でも六十数店の希望者があるといわれておるような状態のものが、第一志望、第二志望、すなわち合計百二、三十にもまたがるものに対して、全然ないということは私たち考えておりません。
  55. 圓谷光衞

    圓谷委員 岩木政務次官の話では、價格の予想が大体わかるということを今おつしやつたようですが、それは事前にわかるのですか。
  56. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 それは先ほど申し上げました通り見本展示会に、十万部の場合には、あるいは五十万部の場合、百万部の場合にはこの本がいくらになる、但しそれには需要者に届けます予想日数とか、さらに見本展示会に出すまでに原料、賃金を発行者がよく檢討され、そうして十万部の場合にはいくら、百万部の場合にはいくらといつたような内容つきの展示方法を講じたいと思いますから、大体予想されるものと思います。從つて需要者、学校先生なり兒童が、この本であるならば國定はたとえば十円だが檢定は十一円、しかし一円ぐらいの差であつたらこの方がはるかにいいというならば、檢定にいくというような解釈をもつております。
  57. 圓谷光衞

    圓谷委員 稻田局長説明と違うと思いますが……。
  58. 稻田清助

    稻田政委員 政務次官のお話のは予想定價と申しますか、一つのその時期における、また確定部数における定價の見当は算定方式がきまつたおればできるのではないかという御意見で、それは私もその通りに思つております。私の申しますのは、ほんとうの、そのあとになつて実際きまつた定價、これは予想定價と食い違う場合があるという意味であります。私はあとのことを申したので、政務次官のは予想定價が立てられるじやないかという御見解で、私も立てられると思つております。
  59. 伊藤恭一

    ○伊藤(恭)委員 われわれは文部省立場とか、あるいは業者立場とか、そういうことは超然として、ほんとうの國民のためを考えてみるとき、たとえば小学校だけの発行数でもおそらく二、三億部になるでしよう。新制中学、新制高等学校、あらゆるものを入れるときには莫大な部数になります。そこでこの價格の負担というものは全國民の父兄、学童、学徒が負う。そういうことを考えたとき、もちろん國定教科書檢定教科書とは、先刻もお話があつたように、國定教科書編纂費も要らない、檢定教科書編纂費も要るし、その業者立場も当然考えてやらなければなりません。しかしながらこの際にもし編纂費の要らぬところの國定教科書であるならば、おそらくそういうことも見込んで適正な價格にしなければならぬことは当然であります。でありますから、われわれといたしましては、一般國民の負担ということを考えますときに、やはり最も適正な價格決定することが当然であると考えます。もちろん業者はあらゆる方面に努力をせられて、そうしてまた收支の償うようにしなければならぬことは当然でありますが、そういうことを考えますときにこの修正意見の中に、第一條の「適正な價格を維持して」ということを削除するということがありますけれども、私は第一條に適正なる價格を維持するということは当然入れるべきであると考えます。もしそれを常識にはずれておるような文部省考えであれば、もちろん打倒しなければなりません。でありますけれども、最も適正に算定するということであつたならば、これは当然入れて差支えない。もしそれを放任しておいてならば、これこそほんとうの自由競爭でありまして、しかもその自由競爭というものは、やはりいろいろの利潤を多く見込んでの算定ということになりますと、國民の負担というものは莫大になるということを考えますときに、われわれは本質的に考えて、適正なる價格は当然必要でありまして、これを無制限に放任すべきでないと考えます。もつとも経済的にも、特にインフレ進行の、現在におきまして、六箇月以後の價格算定するときのことも勘案して、業者も十分に立つていけるようにしなければなりませんが、同時にまたこれを放任しないで適当な一つのわくも必要であると考えます。第十一條の「教科書の定價は、文部大臣認可を経なければならない。」ということは、これは文部大臣であろうとだれであろうと、かりに國会の文教委員会であろうと何であろうと、とにかくこれを全然放任することはできないという意味でありまして、私は第一條の適正な價格というものは当然入れるべきであり、第十一條の「文部大臣認可を経なければならない。」ということも、その内容のいかんによつては変更してもかまいませんが、これも入れても差支えないと思います。
  60. 西山冨佐太

    ○西山委員 第一條の、適正な價格を維持すること。これを削除することは不適当であるというお話があつたのですが、それは教科書委員会の方の話は、第十一條を削除するという前提のもとに、第十一條を削除することになれば、当然これは削除すべきだ、こういう話であつたと思うのであります。さて、定價の安いということは國民なり兒童の幸福であるということで、その通りでありますけれども價格のみによつて考えるわけにもいかないと思うのであります。檢定制度の発達をはかるということは、これはまた地方の文化の発達を促し、またそのことによつて当局との需要供給関係をスムースにすることがあるので、價格のみによつて考えるわけではない。檢定制度の発達ということが、またこれが國民の福利、文化の向上になるということにあると思うのであります。そこで第十一條は、この臨時措置においては私は削除したい。從つて一條の「適正な價格の維持」ということを削除しておくということにして、價格等は業者の協定というようなことによつてこの際やつていく。將來だんだん檢定が発達した場合には、またおのずから規定を設けてもいい、かように考えます。
  61. 伊藤恭一

    ○伊藤(恭)委員 これは業者の協定のみによらしたならば、非常な弊害が起るということをはつきり私は考えております。であるからして「適正な價格」ということは、当然除くべきでないと考えます。
  62. 黒岩重治

    黒岩委員 先ほどの岩木政府次官の御答弁によりますと、展示会の場合に予想價格を示すというお話でありますが、そういたしますにつきましての、この法案による法律的根拠というものがないと思います。それは定價そのものは文部大臣認可ということになつておるが、認可を受けないところの予想價格というものは、法律的に何らの意義をなさぬものであります。してみると、うそを言うてもよいということになりますが、かような矛盾したところの方法をおとりになつては、はたしてよいものであるかどうか。それをおとりになるということであれば、この法律にそういう方法をとり得るところの根拠を示さなければならぬと思います。この点についてお伺いいたします。
  63. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 業者が政府から割り当てられた原料、資材、それに適正なる賃金を加算し、さらに日数、諸経費、運賃等を加えて、そうして一定の利潤を加算しておよそ予想される値段というものを見本展示会に出するときには、業者としては当然これは勘定を立てるべき筋合のものであります。これは見本展示会には法律的な根拠はありませんが、出品者の業者といたしましては、今申し上げます通り、十万部の場合と百万部の場合と一千万部の場合と、これが一册いくらになるという、およそ予想される——現在の全國の先生方が、この本を十万部需要されるか、百万部需要されるかわからないのでありますから、およそ予想される價格というものは、やはり業者が別に法律的根拠によらなくとも、業者としては当然問われれば出さなければならぬ、一々問われるめんどうを避けるために、名目的にそれを表示するということは、何ら法律的根拠によらなくとも差支えない問題であると考えます。こういう方法をとらなければ、どうしても不安定な價格となり、この本が欲しいけれども、この一册が十円やら百円やらわからないようなことでは、かえつて檢定制度助長発達という趣旨から、はなはだしく逆行いたしますから、少しでも業者のために、また業者の正当なる利益の擁護のために、業者のそういう競爭意識を適正ならしめるために、今言つたような方法業者自身としてとられるということは当然予想されることで、これはまた別に法律的根拠によらなくとも差支えないものだ、かように解釈いたしておるわけであります。
  64. 黒岩重治

    黒岩委員 展示会に予想價格を示すということは、まことに結構なことであると私は思います。ところが展示会に示す予想價格というものは、業者の一方的意思によつて決定をし、実際の價格というものは文部大臣認可によつて決定するというところに矛盾を感じます。業者の一方的な予想價格を活かすならば、文部大臣認可制度というものは不必要でないか。文部大臣認可制度を必要とするならば、予想價格もまた文部大臣認可趣旨によつて決定すべきものであると思う。その認可趣旨によつて決定すべきものであるならば、法的根拠を必要とする、かように私は思います。
  65. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 重ねて申し上げますが、業者が内示すると申しますか、質問に應じて答える予想される價格というものは、業者自身がみずから算定したものであつて文部省は正式にそれに関與しておらぬのであります。そうして需要者数が百万か五百万かわかりませんが、かりに百万これが集録された場合におきましては、初めて文部省関係方面の容認されたる算定基準に基きまして、そうして、予想價格は君のところは十一円であるが、おれの方の算定基準は十円になる、その辺の考え方はどうであるかといつた、業者側と文部省側との折衝がまた始まるわけだと思うのでありまして、おそらく業者といたしましては、予想される予算的な價格より、さらに特定の事態が起らぬ限り値上げはしないものだ、これは普通の経済常識で考えられるわけであります。入札者の経済常識というものは、少しでも余分の利益を多く加算して、そうして実際の折衝はそれからまた正式の算定基準に基いていたされるものと解釈いたしておるわけであります。
  66. 黒岩重治

    黒岩委員 この予想價格をきめておいても、実際の檢定價格をきめるときには、当然そこに差が生れなければならぬ。しかしながら業者の予想價格よりも檢定價格は高くなる心配はないのであるから、需要者はその予想價格を見て、ほぼ安心して注文ができるという体制なのでありますが、そういうことがありますならば、第六條の第三項へ業者は予想價格を附して展示会をする、こういうふうに明確に規定をすることが当然必要になつてきはせぬかということを考えるのであります。それを漠然と、業者は問われるであろうから用意をしておく。問われなかつたら黙つていてもよろしい。また問われるであろうから、問われぬ前に示しておくといつたようなことは、これは業者自体がおのおの自主的にやりますから、無統制になると思う。全部これに出品するところの業者が統一のとれたような展示の仕方をするような必要があると私は考えますが、御見解はいかがでありますか。
  67. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 展示会に関しまする細目にわたることは、目下いろいろ審議中でありまして、近く省令で通達しようと考えておる次第であります。そのうちの一つ考え方として、軽い意味解釈を申し上げたのであります。それで今お話のようなぐあいに、各業者がなるべく統一されたような價格があつて、それを内示することが望ましいと言われましたが、この点もごもつともでありますが、たとえば大阪における業者の場合、しかも発行部数、あるいは展示するのが自分の勢力圏だけと、東京都の書籍会社が全國的にやる場合、あるいは関東地区だけの場合、これはそれらの地方的な賃金の諸情勢、運賃、こうしたようなことで、必ずしも統一されないと思いますし、また檢定を要求されます本の内容につきましても、おのおの編修その他に相違しておると思いますので、統制をとるということがよいようには思いますが、なかなかそれも困難であろうかと思うておるわけであります。
  68. 黒岩重治

    黒岩委員 業者の自由に、價格をきめて出していただくということになれば、別に價格の点で統制をする必要はないが、價格を附して展示するということは、これは全部の業者に徹底さしておく必要がある。ある業者價格を出す、ある業者は出さないというようなことになりますと、展示会の場合に需要者が見て非常に不安を感するわけだあります。そうしますと、展示会のところで予想價格というものを入れておく方が法として整うじやないか。もし展示会のときに予想價格を附するということが政務次官の單なる私見であれば、あえてこれ以上言うことはありません。
  69. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 御趣旨の点は第五條の展示会に関しまして、いずれ省令をもつて発表いたしたいと存じまております。
  70. 田淵実夫

    田淵委員 本條に関してくどいようでありますが、國定檢定とにわけてあるということに非常に問題があります。私はこの條項に対してはあくまで反対いたします。國有鉄道と私営鉄道とは、もちろん両存しておるのでありますが、同じ路線を機関車が走るのではない。しかるがゆえにこれは成り立ち得るのであります。しかし私は國定的なものと檢定的なものとが両立していくという行き方というみのは、一体健全な行き方であろうかということを考えるのであります。從來農林省推薦とか、あるいは何々試驗所御用のかまであるとか、くわだとかいうものが賣出され、そうしたかまとか、くわというものは、ある少数の需要者がこれを使用してみて適当でないと思つたときにはさつさと捨てたがゆえに、どんなに御推薦になつても拡がらないということを言つたのであります。しかしこの教科書ばかりは展示会においてこれは氣に入つたということでまず注文をする。そうして値段決定はそれぞれの立場からその立場を十分に考慮して決定されるということになりますと、採算がとれないという場合が出てきたならば、業者はこれを引受けることはあり得ないと考えるのであります。  またもう一つの困難が予想されますのは、從來國定教科書というものがありまして、私も國定教科書は教育界に身を置いた経驗もありますので、扱つてきたのでありますが、多数の方々によつてそこを切り詰め、ここを押し詰め、訂正に訂正を加えて作成されるものであるから、流露感というか、生氣というのか精彩、というか、そういうものが欠けておつて、実に文章としては完璧であるけれども、無味乾燥なものになる。ところが一方副教科書的に用いておりましたところの、一般の出版会社などが発行しておる書籍図書というものは、多少の不備はあるけれども、相当味い、潤いというものがある。こうなつてきますと各業者が競争いたしましていい本をつくろうとする。ほんとうに生徒兒童にアツピールしてくる教科書とは、どういうものかと申すならば、これはおそらく國定教科書でなくて、檢定教科書ではないだろうかと思うのであります。そういう場合にも今の價格の問題と逆な考え方でありますが、檢定教科書が大いに歓迎されるということもあるのでございます。とにかくこれは非常にアブ・ノーマルな規定の仕方であると思うので、御質問するわけではありませんが、この條項に対しては私はあくまで反対だということを、例によつて意思表示をしたわけであります。
  71. 松本淳造

    松本委員長 この問題は相当御意見があるように思いますが、修正案というふうにして出してもらうことにして、次に移りたいと思いますが……。
  72. 野老誠

    野老委員 ただいま田淵委員からの御質問と重複するようなものですが、文部省においては基本的に國定教科書の方がよろしいと思つているのか、それとも檢定の方がよろしいのだ、しかし暫定期間中國定をも認める將來行く行くは全部檢定一本建に行こうとしておるのか、それとも國定でいきたいのだが、各方面からいろいろの意見があるので檢定をも併用してみようじやないかというふうにお考えになつておるのか。これは教育界にとつては大きな石を投げることになつて、ある学校においては國定を採用した、ある学校においては檢定である。同じ小学校なら小学校の学童であつて國定のものもあれば檢定のものもある。しかもその國定のものがだんだん衰えていくというようなことは、文部省の権威にも関係するだろうし、いずれにいたしましても將來のしつかりした見透しのもとにこれを実施しなければならないと思うわけでありまして、文部省教科書に対しての根本方針をはつきりと承つておきたい。
  73. 稻田清助

    稻田政委員 文部省といたしましては、先般御質問にお答えいたしましたように、檢定制度を布きました以上、將來檢定教科書発行が盛んになることのみを念願といたします。先般もお答え申したように、新たに檢定教科書が出ました種目につきましては、國定の新編纂をいたしません以上、だんだん國定が衰微して、次第になくなつてしまうことは当然であります。これはもつと早く、およそ新教育になりましてからすぐ檢定制度を布くべきであつたかもしれないのでありますけれども、一方において学習指導要領をつくると同時に、一つ基準的の意味において國定教科書をつくるということは、現在の日本の置かれた状況下においては、やむを得ない状況であつたと思うのであります。そういうような意味で、國定を新教育について全面的につくりましたというのは、一つの過渡的制度であると私は考えております。
  74. 伊藤恭一

    ○伊藤(恭)委員 私は一昨日稻田局長から、やはり將來は檢定制度が根本であつて、ただ、今すぐに檢定制度にいかぬから、当分の間暫定的に國定もまじえていく、そうして檢定制度がだんだん完成していつたならば、全部が檢定制度になるということを、一昨日はつきり言われました。われわれはそういう見解のもとに、これは教育の民主化から言いましても、特に部分的のいろいろな事情から言いましても、檢定制度が当然理想的に進むべきであると考えます。從つて今後の檢定制度は、從來國定制度のように何千万、何億というようなことはとてもできない。やはり地区的に一万部とかいうことになりますから、その價格を放任しておいたならば、それこそほんとうにめちやくちやになる。そういうことからいつて、もちろん業者の利潤ということも考えなければならないし、またすべてのことを考えて、この檢定制度がますます理想的に円満にいくようにすることが当然であるから、これに相当の経費を盛ることは当然であります。しかしこれを放任しておいたならばめちやくちやな制度になつてしまうということを考えるときに、相当に價格の適正を考えることは当然であるということを、われわれは一昨日の局長の理想的の立場に立つて自分見解を述べたわけであります。
  75. 黒岩重治

    黒岩委員 檢定制度をとるかとらぬかということについて、両論があるように承ります。すなわち民主党の伊藤氏からは檢定制度をとらねばならぬ、社会党の田淵氏からは反対である、こういう御意見でありますが、私はここに矛盾を感じます。民主党の方が自由経済ということを考えられますことはあり得ることであり、社会党の方が、社会主義経済の見地から檢定制度は必要だということもあり得ると思いますが、それが逆になつております。私は今日の日本の経済が全面的に自由経済であるならば、檢定制度なんか不必要に思う。ところが現在の日本経済の実情は、大体教科書をつくる用紙そのものまで統制を受けております。かような制約下においてたくさんの数量を要し、かつまた直接國民の一事々々に経済的な影響をもたらす教科書に対して、ある種の統制を加えることは、今日の段階においては必要であるかような考え方から檢定制度は私は是認いたします。しかしながら文部大臣のいわゆる官僚の一方的意思による檢定制度というものは、今日の民主社会の傾向から考えまして、考慮を要するのではないか。私は適当を民主主義的な諮問機関を設けまして、それに諮問して最も妥当な標準に基いて認可をする、その方法をとることが最も妥当ではないかと思います。すでに教科用図書委員会もできておる今日でありますから、その委員会に諮つて、最も妥当な價格算定してもらつて、その標準に基く認可ということが、一番正しい方法ではないかと考えておるわけであります。この点について御当局の御見解を承りたいと思います。
  76. 岩木哲夫

    ○岩木政府委員 御指摘の点はまことにごもつともであります。つとに文部省におきましても、この点については相当論義も重ねられましたし、種々研究もいたしておる次第であります。しかし原則的な算定基準でありますとか、それの認可過程におきまする関係方面の承認といつたような最後的のものは、どうしても動かすことのできないような経緯がありますので、そういつた見え透いたことがありますから、ことさらそういつた形式的のものをこしらえることもおかしいじやないかという意見も内部にありまして、この際この問題につきましては、未だ内部においても決定的な意見は一致いたしておりません。黒岩委員のお説のように、あるいは必要を生じ、それが適当でありかつ関係方面も了承し得るということになりますれば、でき得る限りこういう檢定方法についても独善に陷らないように、官僚主義的の一方的な制圧によらないように、多数の意見、殊に需要者供給者も併せた総合的な制度をとつてまいりたいという氣持はもつております。しかし今日までのところでは、具体的に申し上げるところまではいつておらないわけであります。
  77. 田淵実夫

    田淵委員 ただいま黒岩君の発言に対して、私の説明不十分のせいであろうと思うのでありますが、私から申せば誤解に類するものがあつたのではないかと思うので、陳弁いたします。私は檢定制度不可ということは一言も申しておらないのであります。檢定制度可なりなのであります。ただここに檢定國定と、なぜ二本建にしなければならないか、國定そのものは官僚統制のにおいが強くてしようがありません。統制はもちろん多くの場合よろしいというのであります。ただこれが官僚統制に陷ることがあつてはいけない。一年あるいは二年先には國定は消えてしまうというほどのものを、今恋々として過渡期という名のもとに残されなければならないかということは、まだ十分私は理解していなて。二本建の制度というものに、私は反対しておるのであります。御了承願いたいと思います。
  78. 伊藤恭一

    ○伊藤(恭)委員 今黒岩君のお話がありましたが、この文教文化ということは、自由党だとか、社会党だとか、民主党ということでなく、超党派的にやるのが当然である。だからして、同時にわれわれの言つたことは、新憲法には基本的人権の尊重とか、一方的のそういう個人の尊量ということはありますけれども、新憲法にはつきりある公共の福祉ということを忘れてならぬことは、これは御承知の通りであります。私は公共の福祉という立場に立つて自分意見を述べたのでありますが、この辺のところを十分御了承願いたいと思います。
  79. 松本淳造

    松本委員長 では次に移ります。  第十二條 発行者が、発行指示を受けた日から十五日以内に、発行部数に應じて定價の三分にあたる保証金を、現金又は省令の定める種類の有價証券をもつて文部大臣に納めなければならない。 御質疑はありませんか。——では次に移ります。  第十三條 保証金は、第十條の義務を履行した後でなければ、その還付を請求し、又はその債券の讓渡することができない。 御質疑はありませんか。——では次に移ります。  第十四條 第十條第一項の義務に違反する行為があると認めるときは、文部大臣は、発行指示を取り消し、又はその後三年間、発行指示を行わないことができる。
  80. 黒岩重治

    黒岩委員 「行わないことができる」という、きわめて微温的な表現になつておりまかすが、行う場合と行わないときの決定、これは何を基準にしてなさいますか。これを伺いたいのであります。
  81. 稻田清助

    稻田政委員 この法文としては、こういうことがあつた場合には、発行指示を行わないという権限をここで文部大臣に與えたというだけの意味であります。こうしたものにつきましては、おそらく発行指示を行わないことになるだろうと思います。
  82. 黒岩重治

    黒岩委員 今のお答えによると、ほとんど蛇足に近いところの法文なると思いますが、私は行わないことができるというような法をつくることは、その間に業者文部省との間にいろいろと輿論的にも問題がかもし出されるところの原因をはらむのじやないかと思うのです。ある者はこの発行をさせないようにとか、ある者はそれをやはり継続して許した、こういうことになりました場合には、痛くもない腹まで探られるような問題も起らないとも限りません。從つてかような御心配はございませんか。
  83. 稻田清助

    稻田政委員 あくまでもこれは権限賦與の規定か、こういうような表現とつたわけでありまして、御心配のようなことはないと思います。
  84. 松本淳造

    松本委員長 他に御質疑ありませんか。——それで次に移ります。  第十五條 第十二條に定める保証金の全部又は一部を納めない者に対しては、文部大臣は、発行指示の全部又は一部を取り消すことができる。
  85. 田淵実夫

    田淵委員 保証金を全部納めない場合には、一部を取消すことができるという、そういつた場合もあり得るわけですね。全部納めないものに対しては、全部取消したらいいと思いますが、いかがですか。
  86. 稻田清助

    稻田政委員 全部納めないものについては実際全部取消すことになろうと思います。これはあらゆる場合をひつかけに規定した普通の規定の形式でございますから、実際はその状況によつて判断することになります。
  87. 松本淳造

    松本委員長 他に御質疑はありませんか。——次に移ります。  第十六條 発行者において、第十條第一項の義務に違反する行為があると認められるときは、保証金は、これを國庫に帰属しめることができる。 御質疑はありませんか。——なければ次に移ります。  第十七條 この法律に定めるものの外、この法律施行のため必要な事項は、省令でこれを定める。 質疑はありませんか。——なければ次に移ります。  第十八條 この法律の規定は、教科書以外の教授上用いられる図書であつて文部大臣の指定したものに、これを準用する。
  88. 圓谷光衞

    圓谷委員 「教科書以外の教授上用いられる図書」というのは、限界は学校長またはそこの担任の教師その他の意見によつて決定するものですか。
  89. 稻田清助

    稻田政委員 教材の採用は、もちろん教員の考えによつて自由にできるわれであります。ここで申しますのは、教科書以外の、教育を進めていく場合に使います教材、あるいは副読本であるとか、あるいは参考書であるとか掛図ということを予想しておるわけであります。
  90. 圓谷光衞

    圓谷委員 それにこれを適用するわけですか。
  91. 稻田清助

    稻田政委員 その点につきましては準用する途をここで開いておりますが、さらにまた研究いたしまして、実施いたしたいと考えております。
  92. 圓谷光衞

    圓谷委員 適用しなくてもいいわけですか。
  93. 稻田清助

    稻田政委員 さようでございます。
  94. 松本淳造

    松本委員長 他に御質疑はありませんか——それでは次に移ります。    附 則  この法律は、公布の日から、これを施行する。 ほかに御質疑がありませんでしたら、これで質疑は終了いたしました。     —————————————
  95. 松本淳造

    松本委員長 続きまして、先日の本委員会におきまして、教育委員会法に対する公聽会のいろいろな手続きに関しましては委員長並びに理事に御一任になつたのでありますが、公聽会におきまする公述人の選定に関しましては、昨二十七日申込みを締切りまして、委員長及び理事において十分檢討いたしました結果、次の通り決定いたしたので、御報告申し上げますとともに、委員各位の御賛成を得たいと思う次第であります。  大体選定の基準は、学識経驗者、父兄側の代表者、市町村代表者、学生代表、組合代表、都道府縣代表という面で選定いたしたわけでありますが、名前を一應申しますからお聽取り願いたいと思います。  江口泰助君、日教組法制部長。山田文雄君、東京都副知事。長瀬鉄男君、東京都P・T・A連合会副会長。海後宗臣君、東大教授。太田三郎君、横須賀市長。小林倭子君、埼玉縣大里郡小原村村長。井出正敏君、学生、全國官公私立大学高專自治会連盟実行委員。絹村和夫君、都立第五高校生徒、東京都市新制高校代表。木村正君、岩手縣小学校教員。湯川精吾君、新制高校教諭。高橋梅子君、群馬縣利根郡薄根村中等学校教員。齊藤喜一君、千葉縣山武郡公平村村長。以上十二名であります。  この公述人の選定に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 松本淳造

    松本委員長 それではさよう決定いたしました。     —————————————
  97. 松本淳造

    松本委員長 続きまして、まだ時間がございまので、日本学術会議法案につきまして審議を進めたいと存じます。——ちよつと速記をやめて。……     〔速記中止
  98. 圓谷光衞

    圓谷委員 本日はこれで散会していただきたいと思います。
  99. 松本淳造

    松本委員長 それでは本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時一分散会