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1948-04-28 第2回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月二十八日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長代理理事 高津 正道君    理事 西山冨佐太君    圓谷 光衞君       冨田  照君    松木  宏君       水谷  昇君    田淵 実夫君       松澤 兼人君    松本 七郎君       伊藤 恭一君    黒岩 重治君       松原 一彦君    松本 眞一君       織田 正信君  出席政府委員         文部事務官   日高四郎君  委員外出席者         議     員 豊澤 豊雄君       議     員 早稻田柳右エ門君         專門調査員   宇野 圓空君         專門調査員  横田重左衞門君     ――――――――――――― 四月二日  委員原彪之助君辞任につき、その補欠として松  尾トシ君が議長指名委員に選任された。 四月六日  委員永井勝次郎君、中山マサ君、押川定秋君、  豊澤豊雄君、花月純誠君及び坂田道太辞任に  つき、その補欠として山崎猛君、松木宏君、木  村公平君、吉田茂君、松本眞一君及び冨田照君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十五日  六・三制完全実施のため全額國庫負担その他に  関する請願田口助太郎君外一名紹介)(第一  八七号)  盛岡農林專門学校昇格並び岩手綜合大学設置  の請願野原正勝君外七名紹介)(第二二八  号)  定時制高等学校設置請願豊澤豊雄紹介)  (第二五八号) 四月六日  民間科学技術研究所研究費國庫補助請願(  海野三朗紹介)(第三三七号)  國立女子大学設置請願押川定秋君外一名紹  介)(第三六五号)  大学開放に関する請願豊澤豊雄紹介)(第  三七七号)  中等教員免許状所有者の取扱に関する請願(豊  澤豊雄紹介)(第三七八号)  聾、盲教育義務制実施に関する請願廣川弘禪  君紹介)(第三七九号)  同(久保猛夫紹介)(第三八〇号)  聾、盲教育義務制実施に関する請願外三件(船  田享二君外一名紹介)(第三八一号)  聾、盲教育義務制実施に関する請願辻寛一君  紹介)(第三八七号)  岡山市に國立綜合大学設立請願大村清一君  紹介)(第三八八号)  定時制高等学校設置請願豊澤豊雄紹介)  (第三九四号)  聾、盲教育義務制実施に関する請願水谷昇君  紹介)(第三九五号)  同(石田博英紹介)(第三九六号)  同(花月純誠君紹介)(第三九七号)  六・三制完全実施のため全額國庫補助請願(  岡村利右衞紹介)(第四〇四号)  書道必須科目復活請願早稻田柳右エ門  君紹介)(第四〇六号)  聾、盲教育義務制実施に関する請願松澤兼人  君紹介)(第四一七号)  同(庄司彦男君紹介)(第四一八号)  同(原彪之助君紹介)(第四一九号) 四月十五日  聾、盲教育義務制実施に関する請願原彪之助  君紹介)(第四二〇号)  定時制高等学校設置請願苫米地義三君紹  介)(第四二一号)  高知市に綜合大学設立請願黒岩重治君外四  名紹介)(第四二八号)  函館水産專門学校昇格請願川村善八郎君紹  介)(第四四二号)  函館市に学芸大学設立請願川村善八郎君紹  介)(第四四三号)  小学校教員恩給増額に関する請願梁井淳二  君紹介)(第四五四号)  岡山市に國立綜合大学設立請願西山冨佐太  君紹介)(第四六八号)  書道必須科目復活請願竹尾弌君外一名  紹介)(第四九〇号)  國立女子大学設立請願山崎道子君外一名紹  介)(第四九五号)  第二高等学校跡地拂下請願庄司一郎君紹  介)(第五〇五号) の審査を本委員会に付託された。 四月八日  新学制実施に伴う施設費國庫負担に関する陳情  書  (第九六号)  定時制高等学校設置に関する陳情書外六件  (第一〇二号)  新制中学校の整備に関する陳情書  (第一〇六号)  同  (第一三〇号)  六・三制完全実施に関する陳情書  (第  一三一号)  地方教育委員会の構成並びに運営に関する陳情  書  (第一三二号)  大学地方分散に関する陳情書  (第  一六六号)  九州大学産業労働研究所設置陳情書  (第一七〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  國政調査承認要求に関する件  一 女子新制大学修業年限に関する請願(近    藤鶴代紹介)(第二号)  二 久美浜農学校昇格に関する請願大石ヨシ    エ君紹介)(第三号)  三 書道必須科目復活請願早稻田柳右    エ門君外五名紹介)(第五号)  四 師範附属校教官待遇改善に関する請願(    大石ヨシエ紹介)(第九号)  五 小学校教員恩給増額に関する請願外一件    (高田弥市君外一名紹介)(第三〇号)  六 教員待遇改善に関する請願石原圓吉君    外一名紹介)(第八六号)  七 水戸市に綜合大学設立請願菊池重作君    紹介)(第一一七号)  八 廣島市に國立綜合大学設立請願田淵実    夫君外一名紹介)(第一二五号)  九 定時制高等学校設置請願豊澤豊雄君紹    介)(第一二八号) 一〇 志摩水産学校昇格請願石原圓吉君外一    名紹介)(第一四〇号) 一一 書道必須科目復活請願松原一彦君    紹介)(第一四五号)     ―――――――――――――
  2. 高津正道

    高津委員長代理 では会議を開きます。  本日は松本委員長都合によつて見えになりませんので、私が委員長の職責を行います。  まず委員諸君に御紹介申し上げます。去る四月二日に社会党原彪之助君が文教委員辞任いたされましたので、その補欠として、社会党松尾トシ君、又四月六日に社会党永井勝次郎君、民主党の押川定秋君、中山マサ君、民主自由党坂田道太君、國協党豊澤豊雄君、無所属の花月純誠君の辞任に伴い、その補欠として民主自由党木村公平君、冨田照君、松本弘君、山崎猛君、吉田茂君、社会革新党松本眞一君をわが文教委員会にお迎えすることに相なりましたので、ここに御紹介いたします。  次にお諮りいたします。現在われわれは文化國家建設ということに最高の目標をおきまして、努力をいたしているのでありますが、その根本をなすものは文教の確固たる樹立と、それが強力なる実行であろうと思うのであります。しかるに政府文教に対する施策というものは、とかく他の財政、経済等の問題に氣を奪われて、手がまわらないようなありさまではないかと考えられる点が多いのであります。そこでわれわれ文教委員会といたしましては、この文教政策の重大な轉機に際しまして、政府施策を鞭撻して、それが強力なる推進を期したいと思うのであります。その意味におきまして、まず國政調査承認を得ておいて、文教委員会を活発に運営いたしてまいりたいと思いますが、その要求書議長まで提出いたすことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高津正道

    高津委員長代理 それではさよう取計らいます。なおその手続等に関しましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じます。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     —————————————
  4. 高津正道

    高津委員長代理 それではこれより本委員会に付託になりました請願審査に入ります。紹介議員等関係によりまして、日程委員長において適宜変更いたすことにしたいと存じますが、御了承を願います。  日程第一、女子新制大学修業年限に関する請願近藤鶴代紹介、第二号。紹介議員近藤鶴代君が見えませんので、圓谷君に代つた御説明願います。
  5. 圓谷光衞

    圓谷委員 本請願要旨は、新制大学においては男女とも修業年限が四箇年を原則としておりまするが、女子新制大学においては六・三高等学校制において、すでに年限が一年延びておる上に、さらに四箇年の修業をやることになれば、女子としては婚期にも影響するということで、これを下級二箇年、上級二箇年に区分して、二年制の大学を認めることが、現下の情勢より見て女子教育を眞に普及、向上せしめるゆえんであるというので、この請願を提出したのであります。
  6. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの御説明に対しまして、政府の御意見を承りたいと思います。政府委員日高学校教育局長
  7. 日高第四郎

    日高政府委員 ただいまの請願の御趣旨はもつともだと思つております。私どももそういう意味において二年のいわゆるジュニア・コースの大学ができないものかというような点については研究もいたしたのであります。また関係当局にも打合せいたしたのでありますけれども学校教育法が六・三・三・四という制度ができたばかりに、その精神を曲げるようなおそれがあるからして、將來はともかく、現在は賛成できないというような御意見もありまして、これは教育刷新委員会におきましても、また他の関係方面におきましてもそういう意見がありましたので、確かにこの問題は考慮の値打がある問題だと考えておりますが、現在のところでは学校教育法をかえなければ施行できませんし、それは相当困難な事情にあると思つておるのであります。將來は御趣旨に副うように研究もいたし、骨折りもいたしたいと思つております。
  8. 圓谷光衞

    圓谷委員 ただいまの政府委員の答弁によりますと、趣意には賛成であり、研究中であるが、学校法規を改正しなければただちにできないという御説明でありましたが、これはぜひやつていただきたい、ということは、師範学校の問題であります。師範学校女子部が四年を実施されるということになると、その卒業期が二十三、四歳となつてくるのであります。これは大きな問題で、前期を卒業した者に小学校教育者としてさらに後期にはいるという権利を與えていくということが世論であつて、また教育者を養成する場合に最も適したる施設であると思うのでありますが、これを趣意賛成であるというならばぜひひとつ早急に実現するように御研究願いたいと思うのであります。
  9. 日高第四郎

    日高政府委員 小学校教師の養成につきましては、理想的に言いますれば、四年の大学を出た者がいいということになつておりますけれども、何分にも小学校の先生の数は数十万に及ぶものでありますからして、これに四年制の大学を卒業した者をもつて充てるということは、現在の日本状況から考えますと理想的に過ぎまして、とうてい短い年月のうちには実現する見込みはないものと存じますので、今のところは四年制の大学のうちの二年を終了した者には小学校教師になれるような途を開きまして、それを終えた者が就職した後に、自己の努力によつて元学校の三階、四階を終えるような途もできますのと同時に、講習会等において三階、四階の大学教育に準ずるような修養を積んだ者にはさらに資格を高めまして、理想的な教師になれるような途をつくろうというふうに現在のところは考えております。ただいまの御趣旨は私どもも考えておるのでありますけれども、六・三・三・四の制度が一應確立しておりまして、まだこれの実施に至らない前に初めからかえるというようなことについて相当強い反対もありますので、これらの点についてはジュニア・カレッジの問題とも併せて考えまして、十分研究もいたしますし、何らかの方法をとりたいと思つておりますが、急には間に合わないというふうに考えております。
  10. 高津正道

    高津委員長代理 他に御発言ございませんか。なければ本請願はなお愼重審査をいたすことにいたし、これが採否は後日に留保いたしたいと思います。     —————————————
  11. 高津正道

    高津委員長代理 それでは次の請願審査に移ります。  日程第九、定時制高等学校設置請願豊澤豊雄紹介、第一二八号。豊澤君。
  12. 豊澤豊雄

    豊澤豊雄君 本請願は過日行われました全國勤労学徒連盟大会に出席しておりました全國の働く青年達何百名かの代表としての請願でありまして、すでに社会党その他の党におきましても定時制高等学校が非常に重要な問題であるということは盛んに称えられておりますし、これに対して異論はないのでありますけれども、現在の状況において見ましたとき、地方においてはまだまだどこに、いつ学校が設けられるのかということすら確定していない状態地方が多いのでありまして、働く青年達がほんとうに眞劍になつて自分たちの学ぶべき学校をつくつてもらいたいということを要求しておりますので、ぜひこの委員会といたしましても、この請願要旨にありますように、この百二十八号にも簡單にその要件を記述してありますが、とにかく勤労青年教育のためになるべく市町村にこれを設けてもらいたい。そうしないと、市町村から少し離れますと、時間、仕事の都合上、あまり遠いと都合が悪いというようないろいろな問題ができますので、それを市町村になるべく設けるように、またその費用としてもなるべくたくさん國費を支給してもらうようにというのが主体になりまして、熱烈な要求がありますので、ぜひひとつ本請願委員会としては御採択願いたいと思います。
  13. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの御説明に対して政府の御意見を承りたいと思います。日高政府委員
  14. 日高第四郎

    日高政府委員 世間では定時制高等学校從來青年学校を轉換したものだというような誤解も流布されておるようでございますけれども、これは相当考えなければならない点だと思うのでありまして、定時制高等学校一般の全日制高等学校教育内容において、その單位の價価においては同等のレベルを保たなければならないように考えておるのであります。定時制高等学校で不足の面は全日制高等学校に轉学すればそれを補うことができ、そうして定時制高等学校を出たものでも單位同一程度のものに到達いたしますれば、大学への進学の途も十分に開かなければならないように考えておる次第であります。從來青年学校のような教育内容とは根本的に違えてつくらなければならないというふうに考えておる次第であります。今度の定時制高等学校は晝間働いて夜間学ぶとか、あるいは一年の一定のとき働いて、ある時期に学校に通うとかいうさまざまな状況にあります青年に対して、働きながら学ぶというような制度を立てたいというところにねらいがあります。その意味においてはできるだけ多くの学校をつくりまして、勤労青年機会を與えたいという趣意なのであります。しかし現実の問題になりますとこれを十分に配分いたしましてどこにおる者にも機会を與えるということは、教師の面におきましても、施設の面におきましても、急にはできませんので、初年度におきましてはできるだけ質のいい、充実した学校をつくりまして、教育内容の魅力によつて一般青年を引きつけることができるようにいたし、一般世間の要望によつて年を追うてその数を増していきたいというふうに考えている次第であります。こういう意味において初めに大掛りなたくさんなものを同時につくることはむつかしいのでありますけれども、御趣旨はまつたく同感でありますので、年次計画を立てましておいおいに充実もし、拡張もいたしていきたいというふうに考えております。
  15. 豊澤豊雄

    豊澤豊雄君 学校教育局長の御説明はよくわかりましたが、とかく文部省におきましても、あるいは大藏省その他におきましても、定時制高等学校というのは非常に忘れられがちなので、ぜひひとつおいおいというのでなくして、急速にこの年次計画のパーセンテージを高めて増していただくように、重ねてお願いしておきます。
  16. 高津正道

    高津委員長代理 他に御発言はございませんか、なければ本請願はなお愼重審査をいたすことにし、これが採否は後日に留保いたしたいと思います。     —————————————
  17. 高津正道

    高津委員長代理 それでは次の請願審査に移ります。  日程第三、書道必須科目復活請願早稻田柳右エ門君外五名紹介、第五号。日程第一一、書道必須科目復活請願松原一彦紹介、第一四五号。両案を一括議題といたします。松原一彦君。
  18. 松原一彦

    松原(一)委員 書道必須科目復活するの件につきましては、別に中野四郎君から熱心な質問趣意書も出ておりますが、中野君は今日ぜひここに出席し、弁明したいと言つているのでありますが、まだお見えになりませんので、もしあとでまいりましたならば、中野君の弁明をお聽きいただくことを條件として、私から一應両案を併せて理由を説明させていただくことにいたしたいと思います。  御承知のように書道というのは、特に東洋においては重んじられてまいつたのでありまして、日本学校では読み書きそろばんといつたようなふうに、書くことが重要な用件になつてつたのでありまして、一昨年までは御承知の通りに必須科目であつたのでありますけれども、現制度のもとにおきましては、習字は五年生になつてから初めて課せられるのであつて、それも自由研究と称してわずかに一部の希望者限つて、これを授けるということになりましたために、習字科というものは事実においてはまつたく小学校では廃止せられたと同樣の形をとつているのであります。わずか一箇年ばかりの経驗にすぎないのでありますけれども、この間における日本の学童の書写能力の落ちたことは非常に著しいのであります。硬筆のみをもつて書く形象文字が、実用的にはそれでいいとしましても、東洋におきましては文字に対する一つの主観的芸術観があるのでありまして、これを額にし、あるいは軸にして観賞するという、非常に特殊の書道観があるのであります。この特殊の書道観は必ずしも今日否認すべき性質のものではないと思う。むしろ文化的平和なる國家建設國民的情操の上には、かような一面をも保存し、これを將励しておく必要があるというのが請願者を通じての主張であります。古人も心正しければ筆正しと言つておりますように、文字を正しく書く人間の心は正しいとせられておるのであります。最近における人心の不安動搖の現象も、文字乱雜なる記述の上にもそれがはつきり現われておるのでありまして、漢字の筆の順序あるいは楷行草におけるくずし方等の面からいいましても、これは小学校時代から全國民基本的教育として授けておくべき必要がある。全國民教育基礎として習字を授けなければならないという議論もここから出てくるのでありまして、ぜひとも從前のように小学校必須科目の中にお取入れを願いたい。これが請願趣旨であります。他にいろいろありますけれども、それは中野君等が來られてから後のことにいたしまして、私は以上の簡單なる趣旨だけを申し述べまして御採択をお願いするものであります。
  19. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの御説明に対して政府の御意見を承りたいと思います。日高政府委員
  20. 日高第四郎

    日高政府委員 書道新制中学の一年と二年に必須科目になつております。他は小学校におきまして自由研究の中に、中学校におきましては選択科目において課することができるようになつております。書道小学校から新制高等学校まで、必須科目として課するということにつきましては、文部省といたしましてもいろいろ討議をいたしましたし、また関係指導者等とも論議をいたしまして、複雑な應酬があつたのでありますけれども、これは学科課程全体の編成上から、必須科目はできるだけ集約して、自由研究並びに選択科目の余裕を残すという趣意に副いまして、書道自由研究もしくは選択科目に入れざるを得ない状態になつたのであります。松原委員書道に関する御識見は、私どももまつたくそれに服するのでありまして、書道が單に実用ばかりでなく芸術的な表現をする意味において、人格と結びついて東洋においては特殊の教化を受けておるということは、私どもも十分に尊重すべきことだと存じておりますけれども、今日の過程において必須科目をできるだけ少くし、自由及び選択の範囲をできるだけ多くするという趣意に則りまして、その必須の中にたとえば國語とか数学とか理科とか、どうしてもこれ以上縮めることのできないようなものもございまして、それらを比較考量の上から、今のところやむを得ないのではないかというように考えておるのであります。自由研究及び選択科目の時間において、これができるだけ書道のために有効適切に適用されることを私どもとしては望まざるを得ないような状態になつておるのであります。それらの点御了承をいただきたいと存じます。
  21. 水谷昇

    水谷(昇)委員 私は松原委員から御説明になりましたことについて、全面的に賛成をするのであります。ただいま日高局長からそれに対するお考えを伺つたのでありますが、これはぜひ必須科目に入れてもらいたいと思います。私は書道教育については相当の体驗をもつておるのでありますが、生徒がすべてのことを学修する上においても、書写能力というものが非常に勉強をするのに大切なものでありまして、実用的に言つて自分が勉強するのにも、この書写能力がすぐれていなければならない。また自分の書いたものを人が読む場合に、正しく書いてあれば読む方において非常に便利でありまして、手紙をもらつてみても、字のまずいわからぬような書き方では読む方が非常に迷惑する。手紙をもらつても読むのに困るので、せつかくの用事を把握することもできない。手紙を出した効果がないということにもなるのでありますから、ぜひとも実用の上から言つても、これは必須科目にしてやつていただかなければならぬと思います。なお私の体驗から言うと、小さいときにこの書道の間架結構というものがよくわかつておれば、文字を書くときに始終その法則によつて書くのでありますから、自然に大きくなつて上手にもなるし、また熟練ができるのであります。その基礎がわからないでいくら練習を繰返しておつても、これは正しい上手な字が書けないのでありますから、小さいときに間架結構等書道を十分会得さしていく必要があると思う。  それからこれは我田引水になるかもしれませんが、私はこういうことを考えておる。文字を習うのはまず第一番に楷書から習つていく。楷書というのは一点一画をゆるがせにしては楷書にはならないのであります。そこで自然楷書を習うことによつて人間が一点ゆるがせにしないというのだから、まじめになる。そういう徳がある。この楷書ができてから行書にする。楷書の中の点画を簡畧にして書くようになるのでありますが、これがわかつてから草書に書くようになると、さらに点画を畧しまして、非常に便利に書くことができる。さらに進めば漢字とかなというものをうまく調和して日用に便することができる。こういうようなことは人間の徳を、人間の道を修業することにも考え合わすことができるのでありまして、書道研究をもつて人間人格をつくることに應用することもできる。私は楷書から行書行書から草書、それからさらに漢字かなまじり文の連綿体をぐあいよく調和させて書くというようなふうに、人間がだんだんに修養していつたらまことに結構なことだと思います。さらに松原委員の言われたように、東洋においてはこの書道を鑑賞しておるのでありまして、こういうような点からいつても、小学校あるいは中学校においては必須科目としてその基礎を十分会得させておく。そうすればその基礎を頭において始終取捨いたしますから、自然に判断することができる、こういうような順序になると思いますから、ぜひひとつ必須科目に入れてもらいたいと思うのであります。
  22. 松原一彦

    松原(一)委員 附加えておきますが、請願者趣旨の中にはこれが道義の振作、隣邦との文化親善に非常に期待をもつものであるということが書いてありますから、そのことをどうぞ御承知を願つておきたい。なお文部当局の御説明はよくわかりますが、アルファベットをタイプライターで打つ人々にはとうていこの東洋主観芸術文字というものはわからないのであります。將來これがかなになり、あるいはローマ字になつてしまうときが來ればいざ知らず、漢字を用いている以上は、どうしても漢字独特の書き方があるのでありまして、東洋を通じてのこの文字教育は今さように簡單に捨て去るべきものじやない。これは大きな教育基礎であるということをひとつ十分御研究の上、御了解の上に、日本教育の基本にもつと独特のものが加えられてよろしいということをどうかお考えをいただきたい。かように増し添えまして私の請願趣旨説明を終ります。
  23. 高津正道

    高津委員長代理 他に発言がないようでありますが、なければ本請願はなお愼重審査をいたすことにし、これが採否は後日に留保いたしたいと思います。     —————————————
  24. 高津正道

    高津委員長代理 それでは次の請願審査に移ります。  日程第五、小学校教員恩給増額に関する請願外一件(高田弥市君外一名紹介)(第三〇号)、高田弥市君御出席でありませんから、冨田委員にお願いいたします。
  25. 冨田照

    冨田委員 本請願要旨は、一般俸給生活者が俸給令の改正によりまして、終戰後一年間に約二十億の増額を見ておりますけれども、恩給の方はそのままになつております。しかも恩給を受けております大部分の人たちは、二十年から四十年の間平和的な仕事に甘んじて身を投じてまいつたものでありまして、これはまことに不均衡なものであることは申し上げるまでもございません。のみならず、こうした請願は幾度かこの委員会にも提案になつておりましたでしようし、その他の方面にもこれは出ておることと存じます。しかし現職を離れて恩給で生活しております者が、恩給のみに依存するということはもちろん望ましいことではございません。人間働けます者は、いかなる方法によりましてもみずからの生活をみずからの力によつて維持していくということが望ましいことであるには違いありません。しかし多年黙々として小学校教員の生活を終つてきた者が、今老齢になつて路頭に迷うというようなことは、一つは文教の立場から見ますと、その土地の人々にいわゆる一個の村夫子として徳を施しておる、われわれをして言わしめれば、一個の村夫子こそはほんとうに國家の礎をつくつた捨石であります。それをあまりにもみすぼらしい生活をそのまま捨てておくということは、道義の頽廃と申しますか、または人の心に中に惻隠の情があるとすれば、これは捨てておけない大きな問題であります。しかもこういう人たちは現職にございませんから、團結してストライキをやるという威力をもつておりません。いわゆる多数の力をもつて一つの威力を示すということをもつておりません。もちろん教育というものは春雨のようなものだ。絹糸のごとく細くただ降り注いで大地に消えていけばいい。それによつてただ万物が伸びていくんだ、この伸びていく草木をながめて黙々として土の中に靜かに鎭まつていくのがペスタロッチ的な氣持であるかもしれません。そうであるからといつて、これを見捨てておくことはほんとうの政治ではない。私はむしろ現実に働ける人の待遇をよくするということにおいても國家が熱意をもつことは当然でありますけれども、また声なきところの声を聞き、この恩給受給者の大部分が今日この請願をここまでまつてまいりましたところの心境を察しましたならば、これは單なる請願、單なる亡びゆく殉教者のごときものの悲鳴だというように片づけてしまわずに、これを御採択を願いまして、即時これを実行に移し、二十三年度の予算の中に必ず積極性をもつてプラスの数字となつて現われることを望んでやみません。もしこれがなかつたならば、祖國再建なんということは空念佛であり、夢である。意外なところから私は日本の民族性を破壊していき、國民道義の頽廃をきたしていく大きなありの一穴がそこにでこてきはしないかということを恐れるものでございます。どうぞ眞劍にこの点を御考慮くださいまして、この請願を御採択くださり、ただちにこれを実現していただきますようにお骨折を願いたいと存じます。
  26. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの御説明に対しまして政府の御意見を承りたいと承います。
  27. 日高第四郎

    日高政府委員 最近のインフレーシヨンのもとに、恩給生活者が非常な苦しみをいたしていることは、私どもも十分承知いたしておるのであります。二十年も三十年も教育の事業のために働いて、現在年をとつて若い者と同じようには働けなくなつている非常にたくさんの教育者たちは、たとえば大学の名誉教授から小学校の先生に至るまで非常に苦しんでおられることは、私でもが実際相済まない氣持をもたずには聽くことのできないような状態であります。この点につきましては、ここにおいでになる松原委員も前々から非常にお骨折りくださいまして、私どもも及ばずながら恩給局長等とも相談いたしまして、ほかの給料あるいは俸給等の値上りに準じて、あるいは準じないまでも、それにいくらかでも近いような率においてこれが増額されることを研究もいたし、討議も加えてまいつたのでありますけれども、はなはだ遺憾なことでありますが、これを実現する途がいまだに打開できないでおるのであります。現在は國家公務員の共済組合法というものが考慮中だそうでありますが、ぜひともこの中に從來の恩給制度に準ずるような退職年金というようなものを考慮しまして、これらの非常にお氣の毒な諸先生方に対しておわびの氣持もこめて、ぜひとも解決いたしたいというふうに考えておるのであります。これが遅れておりますことは、國民全体に対しましても、苦しんでおられる老齢の諸先生に対しても、まことに相すまぬことでありますけれども、今のところ急速に解決ができないでおる次第でありまして、この点は十分私どもも責任を感じて、何らかの処置をいたしたいというふうに考えております。
  28. 冨田照

    冨田委員 局長の御熱意に対しまして敬意を表するものであります。私たちが望みますことは、ただ努力する、何らかの形においてというような、生ぬるいことでありませんで、率直に言いますと、きようこうしてこの席で私ども請願をいたしておる間にも、世をかこつて死んでいく幾人かの老教師がおると思います。今この際に、彼らがこの世を恨んで死んでいかないで、ほんとうに感謝の念をもつてこの世を去つていくところに、やがて若芽が生えてくるのです。やがて新しい精神が起つてくるのであつて、死んだ者に與える香典ではなくして、これは新しい生命を吹きこむところの、生きた若芽なんです。率直に言いますが、政府はしきりに財源がないと言われるが、兵器処理委員会において、昭和二十二年度において六億三千万円の金がどこに行つておるか、一方文部省でもつて六・三制の金がないと言われておるが、現実にその金でさえも、とつて使つてしまつて手もとにないという醜態を演じておるのであります。私が熱意をもつてすれば、この憐むべきと申しては失礼でございますけれども、これに対する財源を求めること必ずしも難くはない。そしてまたこれをすぐに二十三年度の予算に頭を出しておくということが、きわめてわれわれの望ましいことであり、熱望しておるところでありまして、國家公務員法によつて新しい制度ができます。それもわれわれは承知しております。それもはつきりと二十三年度の予算に出すという決意をお示しくださいますならば、われわれもまた違つた立場におきましてもお骨折りを申し上げることもできると思います。特に局長さんのただいまの熱意に私は感激のあまり、さらに一段の御努力をお願いいたして、この請願の御採択をお願いするわけでございます。
  29. 日高第四郎

    日高政府委員 ちよつと御参考に申し上げますが、これは財源がないとか、そういう技術的の問題でありませんので、実は日本の現在あります特殊の事情に基いておりますので、私どもとしては、まことにその点から申しましても残念なのでありますが、私は國家公務員の共済組合法というものができました際にはぜひともこれの償いになるような途を講じたいというふうに考えておりますので、どうぞその辺を御了承いただきたいと思います。
  30. 松原一彦

    松原(一)委員 ただいま非常に切実な御説明があつたのでありますが、これはもうどうしても待ちかねまして、來る五月の六日の日に、この氣の毒な恩給生活者の方々が東京で全國大会を開いて、参衆両議院に請願にもまいり、総理大臣その他の関係各省にもお願いに出るように、今いたしておるわけでありまして、どうしても待ちかねるのであります。御承知の通りに文官の恩給は今日一本になつておりまして、小学校の先生だけじやないのであります。恩給法は文官一本でございます。その恩給は全部を通じて月平均三十六円であります。この三十六円という金が今日あることが不思議なくらいに微少な額であつて、どうすることもできませんし、今朝私が宅を出るときにも、八十何才の老人夫婦が、今日行かれないで相すまぬといつて、宮崎縣から手紙をよこしておるのであります。率直に読むにたえないようなものをよこしております。御承知のように、法律第八十五号ですか、一昨年できました俸給令改正の際に、恩給の基準額をきめたものがあります。あれが非常に不都合なものでありまして、二百円の給料をとつている者を八十五円にして計算するといつたようなものでありますが、刻々に今退職しつつある者に対して、あの計算によつて恩給をつけるということは実に残酷である。あれはどうしても今日即刻かえなければならぬ立場に迫つておるのであります。恩給局長も至急起案をすると申しております。そうして今日千二百円が千六百円となり、千八百円となり、二千九百二十円ベースとなつたこの刻々の俸給の改正に対して、あまりにも残酷なる恩給の計算基準ができておるのであります。現に今日もやめつつある人がある。今やめつつある人が、その古い計算基準によつて計算せられなければならぬということは、何といつても矛盾であります。これはどうしても法をかえなければなりませんので、これをかえる際に、文部当局等もひとつ力を加えられまして、過去に遡つて計算をせらるるように御処置をおとり願いたい。地方費の負担が総額八千万円ばかりあるのであります。これが十倍になりましても八億地方で負担すればよいのであります。また國費によるところの金も一億円内外にしかすぎません。それが十何万人にわけられておるのでありますから、これは決してできない御相談ではないのであります。どうぞ政府におきましても、特にこの点につきましては御英断を煩わしたい。いずれ來月には、この氣の毒な人々が大勢、乏しい金を出し集めて東京に参つて、御請願申し上げることになつておることだけを御承知つておきます。
  31. 高津正道

    高津委員長代理 他に御発言はございませんか。——なければ、本請願はなお愼重審査をいたすことにし、これが採否は後日に留保したいと思います。     —————————————
  32. 高津正道

    高津委員長代理 それでは次の請願審査に移ります。  日程第三、書道必須科目復活請願早稻田柳右エ門君ほか五名紹介、文書表第五号、これは今松原委員に、代つて説明を願つたのでありますが、早稻田柳右エ門君が出席になりましたから、補足として、さらに説明を願うことにいたします。
  33. 早稻田柳右エ門

    早稻田柳右エ門君 ただいま議題となりました請願については、すでに松原先生より御説明があり、また皆さんにおせられても御承知のことでございますので、多くを申し上げる必要はないと存じまするが、一言申し上げて本請願に対して御協賛をいただき、御採択を賜わることができれば幸甚と存ずる次第であります。  本請願は御承知のように、新しい教育制度において書道が軽視せられておるというので、全國の各方面から輿論が高まつてまいつて、ぜひともこの制度復活してほしいというのが主眼でありまして、私はこの詳細に関して実は申し上げたいのでありまするが、時間の関係もあり、多くを申し上げませんが、その理由の一としては、書道必須科目にするということは、教育基準法第一條に記載されておる教育の目的には、はつきり合致するものである、こういう意味。さらに從來教育は芸能教育を軽視し過ぎておつたが、しかしこれは、將來の新しい國家をつくる上において、決して当を得たものでない。第三点は、書道は一つの芸術であつて、この芸術を通じて生れ出る見逃すことのできない重要な点があるからこれを看過してはいけない。それから現在の世論の実態が各方面で書道をぜひ復元させろという声が高まりつつある。こういうことを申し上げて理由としたいのであります。  なお実施の方法といたしましては、ぜひ小学校、中等学校において各二時間ずつ書道科を必須科目とせられたい。それから二番目は、新制高等学校においても芸能科は必須科目として四時間以上をこの科目に取入れられるようにお手配を願いたい。それから教育養成機関、すなわち長期の講習であるとかあるいはその他の場合にはそれぞれ書道を重視して教員を養成せられるようにしたい、こういうことを実施案として要請する次第であります。詳しいことはここに草稿がありますので、これを委員長のおとりまわしで速記録にお載せ願うことができれば望外の喜びであります。以上申し上げまして本請願に対する各位の御協賛をいただき、御採択あらんことをお願いいたす次第でございます。
  34. 高津正道

    高津委員長代理 そのように取計らいます。     —————————————
  35. 高津正道

    高津委員長代理 次に日程第八、廣島市に國立綜合大学設立請願田淵実夫君外一名紹介、第一二五号、田淵実夫君
  36. 田淵実夫

    田淵委員 廣島市に総合大学を設置する請願について、紹介議員の私よりその請願趣旨説明申し上げます。  政府は、新学制の実施に伴い、全國枢要の地に國立総合大学の設置を計画中とのことでありまして、それは、教育の民主化と教育施設地方的分散をはかるために、まことに緊切な問題と存じます。そもそも、総合大学とは、人文科学及び自然科学に属する重要な学部を有する大学を称するものと存じますが、この意味における國立総合大学は、北海道地方に北海道大学あり、東北地方に東北大学あり、関東地方に東京大学あり、近畿地方に京都大学あり、九州地方に九州大学がありますが、全國を通じて適正分布の観点から考えますと、以上に配するに、さらに北陸地方、東海地方、中國四國地方にそれぞれ一つの総合大学をもつことが、最も妥当であり、かつ必要であると思われます。しからば、中國地方に置かるべき総合大学は、いずれの地に建設さるべきかと申しますに、それは、疑いもなく廣島であろうと存じます。何となれば、中國地方における政治、教育、文化の中心及び地理的中心は、明らかに廣島であるからであります。政治的には、たとえば中國地方を管轄区域とする重要な官廳のごときも、そのほとんど全部が廣島市に置かれてあります。連合軍においても、中國軍政部は、その本部を呉市に置かれているのであります。教育的には、廣島縣下における大学、專門学校のごときも、その数、実に十六校の多きに達し、隣縣である岡山の七校、山口の八校に比べても、断然頭角を現わしております。文化的には、各種の施設及び團体があり、それぞれ活発な活動をなしつつありまして、これまた他の追随を許しません。たとえば、C・I・E指導の中國地区教員教育講習会、いわゆるワーク・シヨップも廣島に於て再度にわたり開催せられ、G・H・Qが全國七箇所を選定して図書館を設置し米國提供の書籍を一般市民に閲覽せしめられた際も、中國地方では廣島を選ばれているのであります。さらにまた廣島市に兒童文化会館設立の企てあるや、軍政部当局をはじめ、内外人士の期せずして絶大な支援を寄せられたことなど、およそ廣島の文化的地位の優越性を物語るばかりでなく地理的優越性を物語るものであります。  かくのごとく廣島が、中國地方における政治、教育、文化の中心であることについては、多言を要しないところでありますが、その現状を知らない人たちの中には、廣島はかの未曽有の戰災により、一切が烏有に帰し、何らの施設も残つていないような誤解を抱く向きもあるやに聞き及んでおります。しかし実際におきましては、多くの教育施設は市の周辺部にあつてさいわいにして大なる被害から免れているのであります。文理科大学は鉄筋コンクリートのため被害少なく、今やほとんど復旧を終え、大学附属の理論物理学研究所も完成しましたし、工業專門学校及び高等学校はほとんど被害なく、一部建造物の倒壊もすでに完全に復旧しておるのであります。加うるに、所要の旧書、実驗用の機械器具類その他の諸施設はいずれの学校においてもほとんど被害がありませんでした。特に教授陣容においては、長い歴史をもつ縣だけあつて、錚々たる人材を有し、その研究の実績は、学界においても顯著なるものがあります。要するに、戰災による直接の影響は、國立総合大学建設に関する限り、全然顧慮するに及ばない状態であります。もしそれ他日さいわいにして連合軍側の好意により目下英連邦軍において使用中の江田島の旧海軍兵学校施設その他の旧軍用施設等の全部または一部の解放返還を受け、これを轉用することができますならば、廣島総合大学は全國随一の学園となることでありましよう。  御承知でもあると存じますが、江田島海軍兵学校関係の建造物及び設備の厖大かつ充実せることは、まことに驚嘆すべきものがありまして、この設備が廣島市の間近な地点に存在することは、この際委員各位の深き御留意をお願いいたしたいと存じます。  そもそも廣島の地に総合大学を設置せんとする要望は、他の土地と比較して最も適当であるというがごとき、單なる相対的意義にのみ基くものではありません。その根本的意義は、実に他との比較を絶したる絶対的根拠に立つものでありまして、わが國が眞に文化國家として新らしき出発をなすにあたつては、ぜひとも廣島に國立総合大学建設せざるべからざる必然性をもつものであります。すなわち、廣島の地は第二次世界大戰を終末に導き、人類をして戰爭の惨禍を痛感せしめるとともに、心の底から平和世界の建設を祈念せしめた忘るべからざる土地であります。この土地に來るべき平和世界の基盤たるべき文化の眞随を討究する学府が建設されることは、世界史的意義と國際的要望に副うものであります。それは單に廣島縣民挙つての念願であるのみならず、日本國民全体の心底深く期するものであることを信じて疑わないのであります。  今や廣島の前途に対しては糾然として國際的関心が集まつております。廣島港及び呉港は今回國際的貿易港として指定せられ、中國地方における唯一の國際都市ともなるのでありまして、從つて廣島縣に対しては將來研究または貿易の目的をもつて來遊する外國人は、ますます多きを加えるものと思われます。こうした外國人の來往の機会ごとに、大学を通じて世界文化の交流をはかり、学術の振興に資するがごときは、まことに意義深く、またその可能性も大なるものがあります。その意味においても、廣島の地に模範的な國立総会大学建設する必要があろうと存じます。  廣島総合大学の立学精神の第一は、新しい時代に應ずる新しい構想をもつたものであることであります。その根本が上述のごとく平和世界の基盤たるべき文化の眞髄を討究するものであることは申すまでもありません。ただわが國從來大学があまりにアカデミックで、学の蘊奧を究むることに專念し過ぎ、現実の社会に遊離する傾きをもつたものであるに反し、廣島総合大学はこの点を是正し、思い切つて実社会の現実活動に結びつけることを目標といたしております。立学精神の第二は、地理的にも、また文化的にも十分にこの地方の特色を生かしたものであることであります。その一は、廣島のもつ國際性であります。由來廣島縣民は海外に進出する者の多いことについては全國で一、二を爭うものであります。言い換えれば、わが國民の中でも最も國際性に富んだ縣民であります。例えばアメリカにおける第二世のごとき、恐らく廣島縣出身者が最も多く、今次の戰爭においても優秀なる市民であつたことが、米國においても十分に認められていることであります。その二は、廣島のもつ教育性であります。廣島は由來有数なる教育縣と称せられ、殊に教育者養成については数十年にわたる歴史を有し、加うるにその教授陣容においても、その内容設備においても、今なおまことに健在なるものがありますとともに、目下C・I・E新教育方針のもとにすでに逞しき出発をいたしております。以上の立学精神は各学部の構成にそれぞれ遺憾なく盛られてあります。これら詳細の点は廣島縣で総合大学推進本部から文教委員各位にお届け申し上げております文書に詳しく記載いたしてあるはずでありますから、私はここではこの点についての説明は省畧いたします。  要するに、廣島総合大学の設立は必然的意義と絶対的必要性から出発しております。ただ單に現在の官立学校を寄せ集めて、過渡的な便宜手段として一つの複合ないし連合大学をつくるがごときものであつてはならないと思います。よく國際的見地に立ち、國家的要望に鑑み、人文科学及び自然科学に属する重要なる学部を有し、眞に総合された有機的な機能をもつ一大学園の現出を要望する次第であります。特にその点廣島は総合大学の中心たるべき文学部、理学部にただちに轉換し得る文理科大学を有することであります。  廣島に総合大学を設置する本請願趣旨は、大体以上のごとくでありますが、どうか委員各位におかせられてはお手もとに差上げました参考資料をごらんの上、愼重に御審議くださるよう御願いいたします。紹介議員としてお願い申し上げます。
  37. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの御説明に対しまして政府の御意見を承りたいと思います。日高政府委員
  38. 日高第四郎

    日高政府委員 田淵委員の熱心な御説明は私どもも前から伺つておりまして、廣島文理科大学を中心にしてこれが新しい大学に轉換する際に國立の総合大学の有力な候補者であることは申し上げても差支えないところだと思います。ただ今日の日本状態といたしましては非常にたくさんな高等專門学校大学等を近いうちに新制の大学に轉換いたさなければなりませんので、これについては相当巨額の費用を必要とするのではないかということが推察されるのでありますけれども、御承知のように、下の方の六・三制の実施にもつまづきがちの状態でありますし、先ほどここでお話の出ました定時制高等学校についてもろくな処置ができないような状態でありまして、來年度以降の新制の大学への轉換については特に財政、経済の方面において私どもとしては憂慮いたしております。せつかくきめました既定方針を順調に実現するためには何といつても國が相当思い切つて教育費のために割いていただかなければ、学制改革の実施は非常にむずかしいのではないかというふうに考えておるのであります。私どもといたしましては特に國会並びに内閣において政治における教育優先の原則を確立していただいて、今日のように実際食うや食わずの生活を國民がしているときに、ほんとうに民主主義的な國家を建設するためにも、またその民主主義的な國家を文化的な國家にするためにも教育が必要欠くべからざる要素であるということは申すまでもないのでありますが、とにもかくにも今日一般の人民大衆が生活にあえいでいるような状態でありますから、これに対して文教予算を天引きでもしていただいて充てるのでなければ、大学を現実の日本にたくさん建てるというようなことは望みが薄いのではないかというふうに考えております。しかし私どもとしては、これに対してできるだけの努力をいたしまして、單に義務教育を延長するばかりではなく、また定時制高等学校等を充実するばかりでなく、價値の方面において一層高い高等教育機関も充実して、將來日本のために備えなければならぬと考えておりますので、文教委員会の特別な御声媛をいただきたいというふうに考えております。  しかし現実の事態を考えますと、私どもといたしましては新制大学の設置につきましては、一々の学校をみな充実して大学にするようなことは望ましいのでありますけれども、とうてい不可能だというふうに考えておりますので、性質の同じような、あるいは近接しているような学校が互いに結びつき合つて長短相補い、補足し合つて新制の大学にしなければならないというふうに考えております。この際には、もちろん文部省といたしましても、一應國土計画的な考慮も入れ、人材養成等をも考えながら國立の学校についての計画を立てまして、その上で御承知のように官立、公立、私立を問わず、新制の大学の設置につきましては、大学設置委員会審査を受けた上で、文部大臣が認可するように手はずを整えておる次第であります。こういう際でありますからして、今お話のありました廣島市にりつぱな総合大学をつくるということは、原子爆彈によつて昔の軍事都市が眞の平和な文化都市に変るというようなことは、私どもの願わしいことでありますけれども、また期待してやまないことでありますけれども、どの程度に理想的な大学ができるかはこれはほとんど一にかかつて財政問題ではないかというように考えておるのであります。私どもといたしましては、非常にたくさんの学校を轉換させるのでありますからして、單に理想的な案に從うわけにいかないのでありまして、現実的な基礎のある、現実的な條件の整つたものを年次計画を立てて徐々にするよりいたし方がないのでないかというようにあきらめておる次第であります。この意味において廣島がいかなる現実的の條件をもつておるかということは愼重に討議しなければならないのでありますけれども、私も前に廣島に数年間奉職をしておつたこともありますので、おおよその見当はついております。廣島に相当な大学ができることは期待できますし、また有力な候補地であるということは信じて疑わないのであります。どの程度のものができますかは全体的の考慮の中に入れて考えなければならないと存じております。提案の委員の御趣旨にもありましたように、私どもといたしましてもできるだけこれに副うように考慮いたしてまいりたいと存じております。
  39. 田淵実夫

    田淵委員 ただいま日高政府委員よりの御答弁があつたのでありますが、御憂慮の点並びに廣島がどれだけ現実的に総合大学を設立し得るところの條件なり実力なりをもつておるかというような点に関連いたしましては、また委員各位の上にも御感想があろうと思うのであります。從つてもし機会が得られますならば、本日この委員会の席上、もしくは休憩時においてもよろしいのでありますが、設立推進本部のメンバーも今日傍聽に見えておるような関係から、もし御疑問、御質問がありますならば、その辺推進本部のメンバーの方々について御聽取願いたいと思うのであります。委員長においてよろしく委員各位に諮られて御決定願いたいと思います。
  40. 高津正道

    高津委員長代理 今田淵委員より縣から上京されておる人々に聽きたいことがあつたら聽いてもらつてもよかろう、こういう提案があつたのでありますが、委員各位の御意見を聽いて、それからそのあとで縣の人からも聽くとこういうことにしたらいかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 松本眞一

    松本委員長 それでは何か御意見がありましたならば御発言ください。
  42. 水谷昇

    水谷(昇)委員 日高局長にちよつとお尋ねしたいのですが、それぞれの地方から総合大学、あるいは單科大学の設置の請願がたくさん出ておるのでありますが、これを檢討するにあたつて、たとえば教授陣が整うとか、あるいは設備が整うとか、経費が整うとか、こういうような條件が整うたら、総合大学を設置するとか、あるいは單科大学に昇格するとか、こういうことになるのか、條件は整つてつても数において限定するのか、それ等の点を御説明願いたいと思います。
  43. 日高第四郎

    日高政府委員 文部省といたしましては、官立の学校につきましては、相当配置を考えなければならないと思つております。從來の高等專門学校を残りなく大学にするということは、実行不可能であります。この意味において併せて救うような途を考えなければならないと思つております。現実に大学になる場合には、大学設置委員会にかけなければなりません。大学設置委員会においては大学施設、たとえば敷地、建物、教室、図書館、寄宿舍、こういつたような一般施設と、それから機械その他の條件とか、あるいは教授陣とかいうようなものを一應公平妥当なる査定をすることになつています。こういう意味において、リストに上つておる現実の教授陣が、必ず教授としてくるかどうかということについても、考慮しなければならないと思います。たとえば法科大学をつくるというようなこと、あるいは本文学部をつくるというようなことを各地で計画されておりますけれども、しかし法学部の教授を各地の計画のように集めるということは、私どもから考えますと、ほとんど不可能な状態であります。こういう点で計画をされました各学校についても、どのくらい現実性があるかということについては、私どもは確かめなければならない立場にあります。こういう点を十分檢討いたしまして、現実の具体的な條件の整つたものから順次に——これも財政問題と関係がありますが、順次に計画を立てまして、初年度はおよそ何校、その次には何校というようなことを、財政上の問題とにらみ合わせてやつていくよりほか途がないのではないかというふうに考えます。
  44. 松澤兼人

    松澤(兼)委員 大変結構な案でありますが、中國地方に総合大学が必要であるということも十分わかるのでありますけれども、ただこの計画書を拜見いたしまして、この計画の中で一番弱点と考えられることは、政経学部というものを新設するということであります。ただいま日高政府委員からも申されましたように、学部を新設する、また新設しなければ総合大学としての意義がないということですが、はたしてこの新設される政経学部の中にある各種の講座に対するそれぞれ專門的な、十分熟練も経驗もある造詣の深い人を招請し得られるかということは、非常にこの計画における弱点ではないかと考えているのであります。既存の学校で、新しい綜合大学に参加せられる各種の学校の教授内容、あるいは受持の先生の專門科目などを拜見いたしましても、たかだか社会学あるいは経済学の、きわめて概論的なものなどに関する教授あるいは講師、助教授等はあるようでありますけれども、基本的なものであり、さらに深いものが新たに要求せられるということになると、これがはたして急速にでき得るかどうかということが非常に疑問視されるのであります。この点につきまして、請願紹介者であります田淵君なりあるいはその他推進本部の方々からなり、御意見を承われれば、非常に参考になると考えます。
  45. 高津正道

    高津委員長代理 ただいまの推進本部の方々からの意見聽取の件につきましては、後刻懇談会において十分承ることにしたいと思います。
  46. 圓谷光衞

    圓谷委員 日高局長にお伺いいたしますが、文化國家建設のために、できるだけ大学の設置をしたいが、要するに問題は財源で、財源を天引か何かでとつてでもしていかなければ、なかなか思う通りの理想は実現できないというお話でありますが、高等学校設置の場合においては、暫定規定というようなものを設けて、とにかく高等学校の整備をいたしたということであつたのですが、大学設置に際しても、こういう法案でおそまつながら今までの專門学校というようなものをまずもつて大学に進めるというような考えがありますかどうかということが一つ。  もう一つは、この文教委員会においてはもちろんこの請願やその他は大体可決されると思うのであります。しかし先ほどのお話によると大学の設置は大学設置委員会においてこれを審査してその審査の上に決定するというお話しでありましたが、大学の設置委員会で決定したものの効力と文教委員会における請願というものが可決されても非常に今までの例からいうと実施に移されない微弱なものであるというのでありますが、これらは文教委員会というものはいかにこれを可決し、これを実施しようとしても、大学設置委員会の方で決定したものの線に沿うてこれを実施されていくのかどうかという二つの点についてお伺いしたいと思うのであります。
  47. 日高第四郎

    日高政府委員 これは文部省の全体の方針ということを申していいかどうかちよつとわかりませんが、私の信じておるところを率直に申し上げますと從來の義務教育の延長とか、あるいは定時制高等学校とかいう制度は、これは無理をしても、拙速であつても、ぜひともやらなければならない、やることが日本の國際的地位を好轉させる有力な要素になるというふうに私は信じております。その意味はおいて無理があつても、不完全であつてもこれを急いででも、ぜひともやりたい、こういうふうに思つております。大学の轉換の問題は少し私は角度が違うのではないかと思うのでありまして、これは教員内容の貧弱な大学をつくつて日本教育のほんとうの改革にはあまり役に立たない、こういう点からそまつな大学をたくさんつくつて、ただ看板の塗替えみたいなことはいたしてはならないのではないかというふうに考えておりますので、新しい大学の名前にふさわしいような一定の基準を立ててもらいまして、これは現にできているのでありますが、その尺度でもつてはかつて、合格したものを順次に大学にするのが適切ではないかというふうに考えております。これは文部省の全体の方針を公に申すということは、少し言い過ぎかと思うのでございますが、私どもの同僚たちの間の考えではそういうふうに思つておるのであります。その意味において、新制高等学校につきましてつくつたような暫定的な基準というものをつくつて、急いでやる意思はないのであります。ただ現実の日本においてあまり理想的な基準をつくりましても、これは及ばないことなのでありますので、一定の基準は大学設置委員会で設けまして、その基準に合格したものを順次に大学に轉換する、そういうように考えております。  それから第二の問題でございますが、これは学校教育法の第六十條にきまつておりますので、新して大学をつくりますときには文部大臣は大学設置委員会に諮らなければならないように規定してございます。大学設置委員会というのは学校教育法の六十條に基きまして官制でできました文部文臣の諮問機関でございますが、実質的にはその決定を文部大臣が飜すというようなことは、極度に不当な場合のほかはないものと心得ておるのであります。その点から申しまして、もちろん文教委員会での御決定に対しては、これは決議機関でもございますけれども文教委員会の決定ということが衆議院全体の本会議の決定とは多少意味が違うのではないかと考えます。もちろん文教委員会の御趣旨はできるだけ尊重いたすつもりでありますけれども、予算その他の実行上の責任もありますので、多少文部省の裁量も許していただかなければならないのではないかと考えております。
  48. 圓谷光衞

    圓谷委員 文部省の考え方のおそまつな大学をつくらないで理想的なものもつくつていくということは、一應納得できますが、しかしながら日本の現在の経済状況、敗戰の今日において、それを実現しようとすることはおそらくその理想は百年河清をまつのたぐいではないかと思うのであります。行き方としては二つあると思うのでありますが、やはり今まである專門学校高等学校大学にならない場合においてこのたくさんの学徒が、大学に行けないものがたくさんできるのではないかと思います。それで着々として整備する。そまつであつてもなるべく多くの大学をつくつて自然にこれを整備していく。これが六・三案の義務教育新制中学高等学校もそれをとつた方ですが、そういう考え方を文部省で一應いま一遍考え直すわけにはいかないものでしようか。
  49. 日高第四郎

    日高政府委員 私は遺憾ながらその御説には賛成いたしかねるのであります。義務教育についてはどんな無理をしても、食うものを食わないでもぜひともやらなければならない、こういうふうに考えております。大学教育は願わしいことではありますけれども、これはある程度條件の整つたものに、國理に應じて入口を大きくしていく以外に途がないじやないかと考えております。あまりそまつな大学をつくりまして、いわゆる看板の塗替えをしたのでは國民を欺くものだと考えます。できるだけ大学の名に値するような学校をつくりたいと考えております。もつとも今までの帝國大学のように研究に專念する、そういうものと新しい大学とは性格が御承知のように違つております。今度の大学一般的な教養をつけると同時に、專門的な学問や技術をも身につけるようにいたさなければなりません。從來の帝國大学等を固定的な型に考えまして、新しい大学をつくるというのは間違いだと思つております。その意味においては新して基準が必要なのでありまして、その新しい基準は大学設置委員会の方で現にできておりまして、それを適用しながらやつているのであります。たとえばすでに今年から出発しました女子大学等は、昔の基準をそつくりそのままもつていきましたならば、どの学校もみなおそらく不合格になるところでありますけれども女子大学等についてはある程度の考慮もいたしまして、女子教育の振興のために必要な基準というようなことを考えまして、十分余裕のある考え方をいたしているのであります。その点では圓谷委員のお考えのように、願つてもかなわないようなそういう基準をもつていくわけではないのでありまして、相当現実的な要素も含まれておりますので、その点は御安心をいただいていいのではないかと思います。
  50. 伊藤恭一

    ○伊藤(恭)委員 この大学の設置につきましては地区的にも、あらゆる内容の基準というようなことも、十分に檢討しなければならないことは当然であります。同時に大学設置委員会においてこれを決定するということも、これは地区や基準の上からして適当であります。しかしながらこれを全國的に教育機会均等という意味からいいまして、もちろん義務制のものは当然でありますけれども大学教育におきましてもその地区ということを考えたならば、もちろん総合大学をつくるということは当然であります。そういうようなことについてもただその基準、いろいろなことから大学設置委員会において決定するのでなくて、事前に文教常任委員会においてもこれを語つていただくことが私は当然であると思うのであります。もちろん文教常任委員会というものは、本会議、つまり國会の全部の方とは多少変つているところはありますけれども、しかしながら第一國会以後はこの常任委員会がほとんど不動力をもつておる。そしてその決定したことは大体本会議において決定する段取りになつておりまして、今までも若干否決せられたものがありますけれども、とにかく常任委員会において大体決定したものが本会議においても不動力をもつものでありますから、そういう意味からいつて、われわれはこの大学設置のことなどについてもただ單なる議決機関でなくて、それを実施する上にも文教常任委員会において不動力をもつようにいたさなければならないと考えます。同時に先刻日高政府委員のお話のごとくに、ほんとうの文化國家建設、平和國家建設ということになると、これはいろいろ関係筋の意見もありますが、要するに何といつてもその財政経済方面が基礎になりますからして、今まで文教費が非常に貧弱であるという意味から言いまして、この文教常任委員会においてもやはり総予算の少くとも一〇%や一五%は当然天引的にこちらにとるというぐあいにしなければ、なかなか容易に文化國家建設はできません。ほんとうの教育機関はできません。そういう意味から、この文教常任委員会においても、義務教育は当然、高等大学設置のことについても強力に主張する必要がある、こういうことをわれわれは絶えず痛切に感じております。以前にも少くとも一〇%や一五%は総予算から天引するというようなぐあいにしなければならないということを文部大臣にも申しておりますが、ほんとうの文化國家建設のため、文部大臣も次官ももつと強力にやつてもらわぬとだめだ、こういうことを考えまして、文教常任委員会においてもそれを議決いたしたいと思います。ちよつと今の大学の問題に関連して一言私の意見を申し上げました。
  51. 高津正道

    高津委員長代理 今の伊藤委員発言に対して御意見はございませんか。
  52. 冨田照

    冨田委員 具体的なことで率直にお尋ねしますが、大学設置委員会大学の設置を決定する。そして大学設置委員会大学設置の基準をおもちになつておる。その基準に照らし合わせて、今ここに陳情にお見えなつた國立廣島総合大学の設置計画をごらんになつて、これが大体基準に合つておると、思召すか、あるいは基準からはるかに遠いものと思召すか、局長さんの個人的な見解でも結構ですから、これは審議する上に非常に重大なことだと思いますので、ちよつとお尋ねいたします。
  53. 日高第四郎

    日高政府委員 非常にデリケートなことでありまして、私が設置委員会の基準を申しますと、委員会を拘束するような、あるいは不当に委員会の意思を推定するようなことになつていけないのでありますけれども、ただ私の率直な感じを申しますと、ある部分は不合格だが、全体としては合格になるだろうという感じをもつております。しかし設置委員会は自主的に自立的にやつておりますから、どういう決定になるかは私は保証いたしませんけれども、私の個人的の感情をもち出すとそういう印象をもつております。
  54. 黒岩重治

    黒岩委員 大学設置について二点だけ政府委員にお尋ねいたしたいと思います。地域的の考慮を拂つて新設せられるようなお言葉が先ほどあつたのでありますが、新たな基準から考慮して新設しようという御予定の地域を、発表したお差支えなければ、それをお聽きしたい。  次に大学の形態でありますが、いわゆる総合大学という名称のものは同一地域へ各学部を総合的に設置するものであると思いますが、アメリカあたりには廣範囲な地域へ学部を分散して、それを連合の形態における大学として考えられておるものがあるのであります。こうした連合大学的な新設大学もお認めになつて新設せられる御意図があるかどうかという点であります。
  55. 日高第四郎

    日高政府委員 新設と申しましても、全然根も葉もないところに新しくつくるというようなことは、特別な事情がないと今の場合はむずかしいと思います。しかしたとえば、北海道のようなところに教育の養成を主とする大学を少し補強してつくるというようなことは考えなければならないというようなことを一例としては感じておるのであります。まだこれは具体的な問題にまでは発展いたしておりませんけれども、しかしそのうちにどうしてもつくらなければならないのではないかと考えております。  それから第二の大学の形でありますが、これは総合大学というようなものはやはり地理的に隣り合つておるとか、同一の場所にあるとかいう意味において接近しておりまして、学部と学部との間、教授と教授、学生と学生との間の相互の連絡があるために学問の進歩に役に立つ、そういう意味において教育的にも、研究の上においても、有機的の連絡のとれるようなものが総合大学の理想的の形態だというふうに考えておるのであります。たとえば東京の大学のようなものはそれに近いのであります。もつとも大学の中にはいつておりますと、必ずしもうまく連絡がとれていないということは事実あるかと思いますが、やろうと思えばでき得るような、そういう形態にあるものを比較的理想的な総合大学と考えておるのであります。ところがそういう條件は整つておりませんけれども、不完全ながら総合大学になれそうなものもあると思うのであります。たとえば農学部だけが遠いところにある、あるいは水産学部が地理的に制限されておりまして、本部と離れておるというようなことは、これは総合大学の一環としてもやむを得ないのではないかというふうに文部省では考えておるのであります。しかしそれとは違つて連合の形式というようなものも考えなければならないのではないかと存じておるのであります。たとえば司令部の方では特に四國に総合大学をつくるということを昨年十二月にサゼストされたのであります。四國にどういうふうにして総合大学をつくるかといいますと、私どもとしてははなはだ疑問でありまして、四國の四つの縣のどこに中心をおいて、どういうふうにして総合大学をつくるかということは私どもには自信がないのであります。いろいろ考えました結果は、結局は連合して大学をつくる、連合形の大学をつくるということならば、四國にもできるというように考えております。短く申しますと、総合大学と單科大学、その間に連合の形式をとつた大学も考え得るのであります。それからもう一つは設立者の違う学校が協定をして、長短相補つて新しい大学の規格に合うようなものも考え得るのではないかというふうに思つておるのであります。官立の学校に縣立のものが特別な協定をして單位を融通するとか、あるいは教授を融通するとか、轉学の便宜をはかろうとかいうようなことを考えて、長短相補つていくのでないと、急には條件に合わないような、そういうものが相当たくさんできるのではないかというふうに考えるのであります。こういう点からも連合型というようなものもあつていいのではないかと考えまして、ただいま大学設置委員会でその辺のことをこまかく檢討中であります。まだはつきりきまつておりませんけれども、その四つくらいの型は容認して、その上ではかるのが現実に適合するのではないかというふうに考えておる次第であります。
  56. 松澤兼人

    松澤(兼)委員 問題は非常に重要な問題でありますし、廣島ばかりでなく、將來いろいろ他の総合大学なり、あるいは連合大学なりの設置に関しまして、なお政府委員からも詳細承る心要があると思います。時間もたいへん遅れでおりますので、まだ請願で審議するものがあれば一應そちらの方に移つていただいて、なければこの程度で散会していただいたらどうかと思います。
  57. 高津正道

    高津委員長代理 松澤委員の御提案に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 高津正道

    高津委員長代理 それでは残りの議題は次に讓り、それから第八の請願審査をここまでにして、さらにこの次に讓ることにいたしますから、さよう御了承願います。  なおこの際御報告をしておきますが、廣島総合大学設立に関する陳情の電報、投書などがたくさん來ております。一、文化國家建設廣島学生大会、電報の決議です。二、廣島総合大学期成同盟豊切支部外三支部。三、廣島縣深安郡民大会等であります。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時四十三分散会