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1948-07-29 第2回国会 衆議院 文化委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二十九日(木曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 小川 半次君    理事 鈴木里一郎君 理事 佐藤觀次郎君    理事 最上 英子君       竹尾  弌君    原田  憲君       平澤 長吉君    受田 新吉君       馬場 秀夫君    高橋 長治君       並木 芳雄君    川越  博君       森山 武彦君  委員外出席者         逓信事務官   鳥居  博君         逓 信 技 官 網島  毅君         專  門  員 武藤 智雄君         專  門  員 山本 正世君     ————————————— 七月五日  放送法案  國の行事に関する事項  観光事業に関する事項  國宝重要美術品、史跡、名勝及び天然記念物  等に関する事項  用紙割当乃至著作出版に関する事項閉会中の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  放送法案内閣提出)     —————————————     〔筆記)
  2. 小川半次

    小川委員長 それでは会議を開きます。  本日の議題は、公報をもつてお知らせいたしておきました通り放送法案審議でございます。本法案につきましては、第二國会におきまして、去る六月三十日に、政府側より提案理由を聽きました後、質疑を重ねたのでありますが、本件は継続審査ということになりましたので、本日のこの会議を開いた次第であります。閉会中かつは炎暑の際の御参集、まことに御苦労さまに存じますが十分に御檢討くださいまして、本委員会使命達成に御協力あらんことを希望いたします。  それではまず提案者たる政府側より、本法案につきまして逐條的説明を承ることにいたします。
  3. 鳥居博

    鳥居逓信事務官 ただいま委員長の御指名によりまして、簡單に本法案内容逐條的に御説明申し上げます。その前に本法案立案の経過につきまして簡單にお話しておきたいと存じます。  第二回國会におきまして概括的に御説明申し上げまして、大体の御了承をいただきましたが、この法案は一昨年新しい憲法が公布せられましてから、現在日本に行われております各種の法案を、新しい憲法附属法として檢討し改正する、この一連の仕事と関連いたしまして取上げられた問題でございます。從いまして、放送につきましても、新しい憲法立場から十分な法的根拠をつくろうとするのが、本法案目的でございます。先般も申し上げました通り、現在の放送に関します法規では、放送はいかにあるべきか、あるいは放送についていかなる監督行政機関を設置すべきか、また放送事業はいかなる企業によつて行われるか、このような点につきまして明確な法規を欠いております。しかるに終戰後言論の自由も回復せられまして、最近に至りますまでに、相当数の新しい放送事業の出願を見ております。從いまして現在のような、日本放送協会独占事業として、今後も行つて行くか、あるいはこれを自由企業に開放いたす、こういう大きな政策も御決定いただかなければならない段階に到達いたしました。また一方放送が、社会國家に與えます、きわめて大きな影響力ということから考えまして、またその報道のもつ浸透力も考慮いたしますと、放送をいかなるわくで行わせていくか、つまり放送事業あり方というものも、やはり國民審議によりまして、法的な手段で定めることが、緊急の要務と相成つてきたわけでございます。  このような事態に至りましたので、関係方面とも十分連絡をいたしまして本法案立案に当りました。この法案立案に際しまして、関係方面から一つ意見を寄せられました。その意見の主なる点を御紹介いたしますと、今後新しくできる放送に関する法律におきましては、まず第一に放送の自由を確立するようにすること。次には放送不偏不党であるという原則を明らかにすること。第三番目に放送が以上述べましたように公益のためのものでありますので、およそ放送仕事に從事する者の公衆に対するサービスを責任感において明らかにすること。第四番目には、放送電波を使いますので、國際的な混乱を起しませんために、ある程度の技術の基準を確保するようにする、これが関係方面の強い希望でございます。  なお、このような四つの原則を実現いたしますにつきましては放送を自由かつ不偏不党にするという立場から、放送に関しまして自主的な機関を設置したらよかろう、そうしてこの機関はいかなる政党からも、いかなる政府の派閥からも、またいかなる政府團体からも、また民間のいかなる集團または、個人からも支配を受けない、その影響のもとに、立たないようなくふうをしろ。そうしてこの機関を二つにわけまして、一つ放送に関する規律並びに監督の部門を掌るようにし、一つ公共のために必要な放送を行う放送実施機関としたらよかろう。そうしてこの放送実施機関に現在社團法人日本放送協会がもつております一切の放送施設を移管して新しい機関に行わせる。なお現在は、放送日本放送協会独占事業と相なつておりますが、今回放送法を設置するに際しては、関係方面としては独占事業を奬励するよりは、むしろこれを自由企業に開放して、自由競爭の原理に立つことを提唱したい。このような点が主な意見でありました。  この意見に基きまして、私共といたしましては、日本現状から十分研究考慮いたしまして、お手元に御審査をお願いたします放送法案立案したわけでございます。この法案は目次にございますように七章並びに附則からなつております。  第一章 総則といたしましてこの章では日本における放送あり方を大きく規定いたしました。第二章におきましては、そのように規定された放送あるいは放送事業を維持し監督して、こういう仕事を掌りますための特別な行政機関といたしまして、放送委員会というものを設置することを規定いたしました。次に第三章におきましては、公共機関として現在の社團法人日本放送協会を改組いたしまして、新たにこの法律に基きまして設立される特殊の法人として日本放送協会を設置する。そうして日本放送協会の行い得る業務の範囲並びにその組織役員任免方法、その権限その他、日常業務を行いますに必要な事項規定いたしました。次に四章におきましては、日本放送協会以外のものも放送事業を行い得ることといたしまして放送國民に開放いたしました。これに必要な放送局設置に関する規定をいたしました。ただ第四章では、放送局を設置し得る資格の制限一つ設けました。およそ日本が今後文化國家として立ちますために、日本独立性を保護いたしますために第五十五條規定を設けまして、外國人による放送を禁止いたしました。第五章におきましては、放送並びに放送監督業務というものが、不偏不党でなければならないのでございますが、それをなお、保護しますために、特別の審理手続並びに不服の審理に関する規定を設けまして、放送委員会独断陷つた場合の救済規定を設けました。次に第六章におきましては必要な罰則を設けまして、第七章におきまして、この法律を再檢討することにつきまして、特殊の規定を設けた次第でございます。  次に各條にわたりまして簡單に御説明いたします。第一條につきまして御説明申し上げますと、第一條では放送がいかにあるべきかということを明確に規定いたしまして、ここに三原則を掲げた次第でございます。まず第一に放送は情報及び教育の手段並びに國民文化の媒体として國民に最大の効用と福利をもたらすようにすること。第二番目に放送を自由な表現の場として、その不偏不党眞実及び自律を確保すること。第三番目に、放送に携わる者の國民に対する直接の職責を明らかにすることによつて放送が健全な民主主義に奉仕し、かつこれを育成するようにすること。これをわが國における放送の三原則といたしまして、一切の政策並びに委員会の行為は、この原則に沿つて行われなければならないと考えております。また放送企業者におきましても、この原則を守るようにさせて行く上にこの立場から以下各條の法規立案されております。從いまして一條が根本の政策規定することと相なります。  第二條におきましては。御承知のように放送は非常に技術的な要素をもちますので、これに関連いたします用語を明らかにいたしますために、特に「定義」という條を設けました。この條で特に御説明をいたしておきたいと存じますのは、放送定義でございまして、この法律におきましては、「放送とは公衆に直接提供する目的で行われる電氣通信送信及び受信をいう。」こういたしまして、たとえて申しますれば街頭で演説をなさるときにマイクロフオンをおつけになりまして、その場でこれを拡声して、電波に大きく出しまして公衆に聽かせる、こういうものは放送の中には入りません。しかし今日マイクロフオン使つて話をされましても、これを線を長く延ばして、希望者には適当に受信装置をつけて聞かしていく、こういう加入制度を認め得るような装置でこれを行えば、これは放送の概念に入ることに相なります。こういたしましてこの法律はこのような放送のうち、特に電波を使います無線による放送、これを規律するのを主眼といたしております。それからこの定義の中で一番最後の十二号に「放送番組」がございますが、これはおよそ放送される内容そのものを申します。  次に以下の條では放送を自由にいたします反面といたしまして、社会公共利益のために、放送に加える制限を明らかにいたしました。まず第三條におきましては、放送番組編集権独立規定いたしました。この法律におきましては、新聞法と異なりまして、編集責任者というものを特に規定いたしませんでした。從いまして、この法律におきましては、一般の放送局におきましては、放送の免許を受けたもの、日本放送協会におきましては、放送協会代表者、これが編集責任者と相なるのであります。  次に第四條に特にニユース放送につきまして制限事項を明らかにいたしました。ニユースはおよそ眞実を守らなければならないということを道義的に規定したのが主眼でございます。この二項におきまして時事評論時事分析及び時事解説、このようなものにつきましても、このニユースに関する制限は嚴格に適用することを明らかにいたしました。放送におきまして政治評論の時間を特に定めて放送するとしないとにかかわらず、およそ時事評論ではないような時事評論であれば時事分析であり、また時事解説である場合にこれが適用せられることと相なります。第三項におきましては、誤つた報道、または事実でないニユース報道した場合に、その取消しに関する規定を明らかにいたしました。そして事実でないということが明らかであるにもかかわらず取消しに應じない場合は、第八十八條に罰則を設けました。  第五條は、國際放送につきまして、これは今後日本立場からいたしまして、およそ、國際親善を破壞するものでないようにするという規定でございます。  以上は放送送信についての規定でございましたが、今度は受信につきまして第六條を特に設けました。理由は現在無線電信法という法律がございまして、およそ無線通信に関する施設を行いますには、逓信大臣認可を要することとなつております。從いまして現在では家庭のラジオ受信機をおつけ願うにつきましても、一つ一つ逓信大臣認可を要するのでございますが、このような制限をこの法律では撤廃いたしまして、およそ放送受信は自由である。日本の國内のいかなる種類の放送であつても、または外國放送であつても、これを聽くことは自由であるという原則を立てまして、第六條で無線電信法のこの部面に関する規定を排除いたしました。第七條ではこのように受信につきましても無線電信法規定を排除いたし、また後ほど述べますように、第四章におきまして、送信設備につきましても一部無線電信法規定を排除いたしておりますので、放送設備及び放送受信設備はその目的以外にはこれを使えない。これを明らかにいたしました。以上が放送全般につきましての規定でございます。  次に第二章に参りまして、放送委員会について御説明申し上げます。放送は非常に國民影響力の大きいものでございまして、先ほども申し上げましたように、関係方面意見をまつまでもなく、これは不偏不党でなければならない、こう考えられますので、放送に関する行政というものには、特に注意を必要とする、こう考えられます。このために時の政情の動き、または社会的なこまかい勢力の消長、そういうものに影響されまして、放送というものが常にぐらついている。あるときは非常に左翼的な放送になり、次の瞬間には非常に右翼的な放送になる。またあるときは非常にある方面意見に有利な放送を展開していく、こういうことになりましては、國民を惑わすことになりますので、そういう事態が起らないように、これには放送企業不偏不党原則を要求いたしますとともに、これを監督いたします立場行政機関にも嚴重不偏不党という立場を要求いたさなければならなくなりますので、この法律では放送委員会という一つの特殊の行政機関を設置いたすことにいたしました。この委員会内閣総理大臣の所轄のもとに置かれますが、この委員会が行い得る権限職責というものをこの法律によりまして明らかに規定いたしまして、この権限内閣総理大臣影響もこうむらずに、委員会独立してこれを行使するということを明らかにいたしました。そうしてこの委員会自主独立制を確保いたすようにした次第でございます。  この委員会のいたします仕事並びに権限につきましては、第九條に明細に規定いたしました通りこれを逸脱することはできないわけでありまして、若しこれで委員会目的を達成し得ないような事態が生じましたならば、第九條の法律を改正する以外に、委員会としては処理ができないことと相なります。この委員会不偏不党性をなお確保いたしますために、次のような手段をとつております。  まず第一に委員の数でございますが、委員を五名といたしました。この委員会はすべての処分会議制によつて行うことにいたしまして、委員一人一人には何らの権限も賦與いたしておりません、全部が会議によりまして、初めて処分が成立するわけでございます。この五人の委員の任命につきましても、放送という非常に幅の廣い仕事行政監督に当るわけでございますので、この委員につきましては、單なる放送学識経驗者ではなくて、社会公共利益に関して公正な判断をすることができ、かつ廣い社会的な経驗と卓越した識見をもつている方に御就任願うようにいたします。なおこれを保証いたしますために、年齢につきましても三十五才以上という制限をつけます。このような方のうちから、責任者内閣総理大臣が選定いたしまして、國会両院の御同意を得て内閣総理大臣がこれを任命する、こういうふうに規定いたしました。なお、この内閣総理大臣が選定いたしますにつきましい制限をつけました。それを第十一條の第二項に列挙いたしましたが、このような列挙した方々を選任いたしました場合には、あるいはその不偏不党性を失う可能性が生じますので、これらの方々を不適格と法律上定めたわけでございます。なおこの五人の委員のうち三人以上が同一政党に属することとなつてはならないと規定いたしました。なお附則で、委員の任期は五年でございますが、最初委員を一年、二年、三年、四年として委員長を五年として、毎年一人づつ交代いたすようにいたしまして内閣がかわりましても、委員が全部かわつてしまうような事態が起らないように留意いたしました。  第十二條公務員として当然なことでございます。第十三條では委員不偏不党性を確保いたしますために、兼職を禁止いたしました。このような制限された立場から選ばれる委員でございますから、次に委員につきまして保護規定を設けております。これが第十五條でございまして、ここに掲げる場合以外に退職は本人の意思に反しては起らない。しかしながらこれは公務員でございますので、委員彈劾規定を十七條に定めまして、國民の手によつて、これを彈劾し得る途を開いてございます。これは國家公務員法人事委員会規定と同樣でございます。このようにして委員会自律制不偏不党性を確保いたしまして、なおこの委員会日常仕事をしていきますために、委員会事務局を設けることといたしまして、これを二十二條規定いたしました。  ここで御了解を得ておきたいと存ずるのでございますが、この法案は、御承知通りに、國家行政組織法が第二國会におきまして御修正になる前に立案されたものでございます。從いまして二十二條内部部局に関します規定を書いてございます。現在私の方といたしましては、事務局には総務部放送部並びに技術部の三部はぜひ必要と存じております。しかしながら行政簡素化立場もございますので、できるだけ小人数でこの事務を行わせ。なおかつ國家全体の行政機構といたしまして二重の機構になることを避けますために、地方機関を特に設けず、逓信省の現在電波局地方支部部局であります現在の逓信局電波部が、將來逓信省設置法案を御承認願いますれば、これが電波廳地方電波管理部と相なるわけでございますが、この部局放送委員会がつくりましてこれを直接指揮監督いたしまして、地方におけるこの委員会日常行務を掌らせる、こういうふうに考えた次第でございます。これによりまして放送委員会処分制限される、あるいは影響されるというようなことは考えられませんので、行政簡素化という立場からも、この方がよいと考えた次第でございます。  次にこの放送委員会が、独断に陷らないようにすることの一つの保証といたしまして委員会が行つてまいりましたことを、毎年一回國会に対して文書をもつて報告させることにいたしまして、それと同時にこれを國民に公表する、これを第二十三條の規定として設けました。以上のようにして放送行政に対する自主性公平性不偏不党性を確保するように規定いたしましたのが、第二章でございます。  次に第三章に、現在の日本放送協会を改組する規定を設けました。これは後ほど電波局長から、詳しく日本放送現状につきまして御説明を申し上げたいと存じますが、現在の日本放送協会は、二十数年にわたりまして、現在の事業を行いまして、最初は御承知のように東京の芝浦からバラックのような建物で放送を開始いたしましてから、今日全國に百有余の局をもちまして、日本國民全部にあまねくラジオ文化を普及さしてまいりました、その功績は実に大きいのでございます。しかしながら、それと同川に、ここまでこの事業が成長してまいりますと、そこに旧來の企業体では割り切れない点が二、三出てまいつてきたのであります。それは、このような大きな事業になりまして、現在では聽取者の数も約六百万に達せんとしております。これは放送聽取料を拂つている人の話でございまして、事実上ラジオを聞いておられる方は、おそらく國民の八〇%以上を占めるのではないかと考えられます。そうして現在放送局財産内容を見ますと、時價に見積りまして数十億円の財産をもつて、これを運営しておられるわけでございます。しかしながらその組織あり方を見ますと、これは数千人の会員が集まつてつくられました社團法人でございまして、その会員出資はわずかに百六十万円、そうして定款上は、この会員意思によりまして協会を運営し、またその責任者を指名する、こういう形に相なつております。  そこでこのように國民全般に大きな力をもち、また國民全般の今後の思想並びに文化に、非常に大きな影響力のあります事業並びにこの事業を行う機関というものは、今後國民的な組織のもとに行われなければならないと考えられますので、現在の放送協会から社團組織をとりまして、これを新たにこの法律に基く特殊な法人と改めた次第でございます。そういたしまして今度の新しい法人は、國民全部に基礎を置く立場でございまして、現在ラジオ聽取料を拂つておる單なる聽取者だけの集まりだけの團体ではないのでございます。ここに新しい法人に基きまして、一番問題になります点は、この法人性格でございますが、この法律では、明確に規定いたしておりません。これは学者に任せたいと思うのでございますが、この法人は、いわゆる英語で申しますパブリツク・コーポレーシヨンの一系体でございます。なおこの法律で特殊な点は、この法人基本金を持たないという点でございます。現在の日本放送協会内容を見ましても、ただいま申い上げましたように、基本金に相当する自己資本は、わずかに百六十万円でございまして、あとの帳簿で申しまして三千万円前後、この程度の財産は從來の聽取料金積立金でございます。その残りの財産は借入金または預り金または將來支拂うべき金の保留金からなつておりまして、現在の法人自身は事実上基本金をほとんど持たないのでございますが、この際この放送協会を改組するにあたりまして、國家が大きな出資をいたしますことは、現在の日本財政上から考えてみまして、出資のぜひとも必要と考えられないところに多額な國費を出すこともいかがかと存ぜられます。  もう一つは、日本放送協会公共利益のために放送を行うのでございまして、この性格がまた先ほど放送委員会について申し上げましたと同樣に、不偏不党自律性嚴重に守つてもらわなければならない性格團体でございますが、國家が多額の出資をいたしますと、現状におきましては、この出資を通じまして政府経営につきましての発言権が非常に大きくなります、このために思わぬ点で日本放送協会自律性不偏不党性とを害するおそれもございますので、國家出資ということをやめた次第でございます。それに代りまして必要な資金は社債によつて賄う、これを第四十三條に規定した次第でございます。  次に放送協会はこのようにして國民公共的な團体でございますので、放送協会の行い得る業務はすべて法律によつて定めるという立場をとりまして、第二十五條協会の行い得る業務を明細に掲げました。これ以外の仕事には放送協会は一文の金も使えないことに相なります。次に二十六條、二十七條、二十八條は法人として当然の規定でございます。  二十九條に協会役員につきましての規定を設けました。役員理事七名、監事二名からなることにいたしまして、理事先ほど申し上げました放送委員会が選定いたしまして國会両院の御同意を得てこれを任命することになります。なお役員就任制限規定に関しましては、協会性格放送委員会とほぼ同樣なので、放送委員会に関します制限規定と同じように掲げております。ただ一つ違いますのは、民間放送を行つている人でも、この放送協会役員に就任できるという点だけが異なつております。それから役員の解任につきまして、これも放送委員会権限がございますが、放送委員会がほしいままにこれを解任できないように、解任する場合を三十六條に明らかに掲げました。  次にこの協会はいかなる財政的基礎に立つかといいますと、現在と同樣に聽取料國民から徴收してこの経営に充てることに規定いたしました。第三十九條で、およそ協会の行う放送受信できるような設備をした者からは、委員会認可した聽取料を徴收できると規定いたしました。第一章の第六條に「日本放送協会の提供する放送受信することのできる受信設備を設置した者は、第三十九條に定める受信料を支拂わねばならない。」と規定をいたしまして、國民にも義務を課しております。從いましてこれをもつて協会收入といたします現在の状態におきましては、本月から協会聽取料を値上げいたしました。値上げいたします前の金額で大体年額十二、三億円の收入がございます。今度は約倍額になりましたので、二十五、六億の收入に相なるかと存じます。そうしてこの收入をもつて眞に國民のための放送を行つていくのを、この協会の任務といたします。  次に先ほど申し上げました基本金でございますが、協会がこのような仕事を行つてまいりますには、放送局その他大きな設備が必要なのでございまして、現在も全國に百有余の放送施設を所持いたしております。しかしながらこれでも残念ながらまだ全國をカヴアーしてないのでございまして、電波のよく届かない区域がまだ相当ございます。こういう区域においても、早く簡單受信機で聞えるようにいたしますために、現在関係方面とも連絡いたしまして案を進めておりますが、こういう費用に充てますにも当面に約七億円ぐらいの費用は必要でございます。さらに戰爭中非常に設備を酷使いたしておりますので、現在の放送設備も相当いたんでおります。これらを改修したり、時によりましては新式の設備と入れかえる必要も生じてくるわけでございまして、このような費用を見積りますと、当面十五億円くらいの費用はぜひ必要となるわけでございます。これを全部聽取料ですぐ賄えるかと申しますと、そうはまいりません、今後一年二十五、六億円の收入がございましても、これはほとんど放送施設の維持並びに放送を行う費用にかかります。この中の一部を施設費に充てるにすぎないという状態に相なります。そこでこの收入を担保にいたしまして社債を発行する形をとりまして、第四十三條を規定したわけでございます。そこでこの放送財源は担保がないわけでありますので、日本放送協会財産は担保に入れることができないということをこの法律では規定いたしております。收入を担保にいたしまして社債を発行いたします関係上、ここに社債償却積立金の規行を入れまして、社債権者の保護をはかつた次第でございます。  次に日本放送協会につきましては、公益だけを守るという立場から一般放送協会と異なる嚴格な制限規定を設けております。それが第四十六條以下でございまして、まず放送番組の編成の仕方につきまして制限をつけました。日本放送協会放送番組は「公衆の要望を滿たすよう最大の努力を拂わなければならない」と規定いたしまして、これを実現いたしますために、継続的に定期的に、科学的な世論調査を行う義務を課しております。それと同時に二項以下に改正点につきまして独断的な編成に陷らない規定を設けると同時に、日本國民文化の向上に資するように、娯楽、教養その他の放送において最善の文化的な内容を保持していくべきことを規定いたしました。次には第四十七條では政治的に公平でなければいけないということを規定いたし、次に選挙放送に関する規定を設けました。第四十八條にはやはり不偏不党立場から営業廣告の放送を禁止いたしております。それから放送施設につきましても、これを貸したり、他人の支配に属させたりすることを禁止し、またこの施設國民公共財産である立場から自由な処分を禁止しております。  このような行務上に大きな制限を設けまして、公共のための放送ということを確保いたします反面、この公共事業を保護するために第五十條以下の規定を設けまして、まず第五十條では協会に対しまして所得税及法人税の免除を規定しております。それから附則地方税の改正をいたしまして、協会事業には地方税を課すことができないようにいたしております。次に五十一條に参りましては、放送協会放送設備の建設のために、土地收用法に基き土地收用権を発動し得ることを規定いたしております。聽取料の徴收権につきましても、一般放送局には規定してございませんから、やはり日本放送協会に対する保護規定であると同時に、特権と相なります。このようにして新しい日本放送協会國民公共的な機関として誕生し、公共的な機関としてあくまでも運営されるわけでございますので、この法人の解散につきましては、定款によつてこれを定めることを禁じまして、解散の必要が生じた場合には、五十二條規定によりまして、法律でもつてこれを別に定めるといたしまして、もしこの法人が解散をいたしますような場合には、その財産処分法律でこれを定めるといたしました。  以上第三章の概略でございますが、これをもつて新しく再組織される日本放送協会の法的機関であるという性格を御説明申し上げた次第でございます。  次に第四章においては、日本放送協会以外の一般の方々放送事業の出願ができるということを明らかにいたしました。特にここで御説明いたしたいのは、第五十五條規定を設けまして、日本の國籍のない者、次には外國政府またはその代表者、第三には外國法人または團体、四、五におきましては、これらの方々が大きな発言権をもつている團体、こういう人、または團体放送事業申請の資格のないことに定め、これによつて日本國民文化の保護を考えた次第でございます。  次に今度は一般からの放送の申請がありました場合に、放送委員会としましては、放送委員会独自の判断で免許するかしないかということをきめないように、すべて法に基いてこの審査が自動的に行われるようにいたしまして、放送委員会の判断、あるいは処分独断を防ぎました。そのために明細な審査規定を設けまして、これに合致した場合に自動的に免許されるとなうふうにいたしました。これに合わいいと委員会が考えました場合には、独断でこれを拒否しないで、審理手続を開始いたしまして出願者に十分の証拠と十分の論拠をもつて自己の見解を述べさせ、それに基いて完全な判断を下すというようにいたしました。そうして放送委員会独断に陷ることを防いでおります。これは一遍免許いたしました事業者につきましても、この法律に違反がございますと、その免許を取消したり、あるいは業務の停止を行うことができるようにしてございますが、このような処分をするときもまた同樣でございます。この審理手続につきまして以上第五章を簡單に御説明申し上げます。  第六十九條に掲げましたように、放送聽取料金をきめる場合と、放送の申請を拒否する場合、それから一度免許したものの営業を取消す場合に、委員会独断でこれを行うことができないようにいたしまして、必ず審理手続を経るようにいたしました。審理手続と申しますのは、簡單に申せば簡易裁判のような形でございまして、公式に当業者に対して通告いたしまして、その利益を代表する者、あるいは当人またはその代理人によりまして十分な陳述を行わせ、そうしてその主張を十分に述ベさせ、それを記録にとりまして、その結果を公平に判断いたしまして、必要な場合には参考人その他の意見を聽取して、それで最後の判断を下すようにいたしました。これは原則として公開でいたすようにいたしました。こうして公平を期したのでありますが、この判断でもなお間違つているということも起り得ますので、これを救済いたしますために再審理を要求できるようにいたしました。これを不服の審理とこの法律では称することにいたしました。そうしてこの再審理をやりまして、なおかつ不服な場合には、これを司法手続によりまして裁判にもつていく形にいたしました。從いまして、不服の審理は裁判の第一審、昔の行政裁判に当るような形に相なります。このようにしまして、放送委員会そのものの構成の不偏不党、公平になるようにいたしましたが、なおかつそれでも独断あるいは何かの考えに偏したような事態も起り得ますので、これが救済のために第五章にその手続規定を掲げたわけでございます。  罰則につきましては、先ほど八十八條を御説明申し上げました以外に、特に御説明申し上げる事項はございません。  第七章の雜則に参りまして第九十九條の特別の規定がございます。それはこの法律を施行してから五箇年以内に、國内の放送に関して識見ある方績を判断いたしまして、そうしてこの法律制度のままで今後続けるか、あるいはこれをいかなるように改正するか、根本方針について勧告案を得まして、それに基いてこの法律の改廃を行い得るということでございます。  次に放送に関しては二つの大きな行き方がございます。一つはヨーロッパ諸國で主として行つておりまして、これはイギリスが、その典型をなすやり方でございますが、特殊の公共團体を作りまして、これに独占的に行わせていくイギリスの放送協会と称するのがこれに当ります。そうして非常に公共的な放送不偏不党性を確保していこうという行き方でございます。日本も從來はこの線に沿つてまいつたわけでございます。これに反しまして、もう一つ放送事業を全然民間自由企業に委ねまして、競爭の原理によつて放送の発達をはかり、なお業者の自主的な制限によりまして放送公共性を保持していくというやり方でございまして、これは現在アメリカで行つているところでございます。この両者を比較いたしますと、いろいろ長所もあり欠点もあるのでございますが、事実はアメリカの放送が現在世界をぬきんでて、ほかの國はアメリカに比べまして五年ないし十年遅れておるだろうといわれるところに、やはりアメリカ式の行き方にも大きな美点があると思われるのであります。最近の立法におきましては、両方の美点をとつて折衷案をつくりまして、公共的な放送機関をつくるとともに、それと並んで自由企業による放送を行つていくという立法例がふえてまいりました。これはイギリスの自治植民地が主として採用いたしております。これも必ずしも成功しているとは申せませんので、この法案立案するにあたりましては、このような各國の例も十分斟酌いたしまして、またその欠陷と思われますところも檢討いたし、日本の特殊事情も考えまして、現在の日本におきましては両者を併用するのが一番適当であると考えまして、この法案をつくりました。両者併用に伴います外國の例でうまくいつていない点を研究いたしまして、そのようなことが起らないように、この法案では考慮いたした次第でございます。  なお一般の放送というものは、実績がございませんので、これから芽を出し伸びていく事業でございます。これが今後どういうふうに発展していくかは、実に時を待つよりほかないと存ぜられますので、五年後にもう一度この放送法を施行した実績を檢討して現在のままがいいか、または、どういうふうにやられたらいいかということを考えていきたい。こういう立場から九十九條を規定したわけでございます。そのほか御質問によりましてお答え申し上げますが、特に御説明することはないと存じ、簡單でございますが、説明を終りたいと存じます。
  4. 小川半次

    小川委員長 ただいまの放送法案の逐條説明に対する質疑に入ります前に、諸外國における放送事業の現況並びに我が國における放送事業の沿革と現状につきまして、政府委員説明を聽取いたしたいと思いますが、いかがですか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小川半次

    小川委員長 それでは政府委員説明を求めます。
  6. 網島毅

    ○網島逓信技官 それではただいま委員長から御指名がございましたので、ごく簡單放送事業の世界各國及びわが國の状況について御説明申し上げまして、御参考に供したいと思います。  放送事業が世界で最初に始められましたのは一九二〇年大正九年でございまして、約三十年ばかり前でございます。これはアメリカで行われたものであります。当時は無線技術がまだ非常に幼稚でありましたために、電波でこういう放送ができるということにつきましては、世界的な驚異をまき起しました。それと同時に放送に対する一般大衆の興味というものが非常に大きかつたのでありまして、非常な勢いを以てこの放送が発達してまいりました。たとえば、アメリカの例を申し上げますと、初めて行われた一九二〇年から二年経ちました一九二二年には約三百九十局ばかりの放送局がアメリカにできました。それから一年経つた一九二三年には千百五局というような非常におびただしい数の放送局がアメリカにできたのでございます。これはアメリカばかりでありませんで、世界各國ともこういうような状況で放送が非常に発達してまいりました。その結果各國ともこの放送に非常にたくさんの電波を使うようになりまして、これを放任しておきますといきおい電波を使つておりますところの他の重要な無線通信、たとえば船と陸とを結ぶ無線通信というようなものも妨害されるというようなおそれも出てまいりましたので、一九二七年にワシントンで開かれました国際無線通信の條約会議におきましては、各業務に使う波長というものをきめたのでございます。当時この放送に対してどの辺の波長を使わせるかということは、非常に各國間で議論になつたのでありますが、結局現在廣く行われております五百五十キロサイクルから千五百キロサイクルの間にこの放送局を設置するということに決定されたのでございます。その後この原則はずつと守られておりまして、世界各國とも大多数の放送局はこの周波数の間に設置されております。これが今日いわゆる標準放送と称せられておりますゆえんでございまして、今回提出した法案の中にも標準放送という名前がございますが、これはこういう意味合から來たものでございます。  それから後無線技術がだんだん発達してまいりまして、特に第一次世界大戰後急激にこの眞空管技術の発達に伴いまして、短かい電波が容易に出せるということになつてまいりました。一方いろいろ実驗の結果、短かい波長の電波は地球の表面と地球の上空百キロあるいは二百キロのところにありますガス体が稀薄になりまして、イオン化したところの電氣の粒の層があります。その電氣の粒の層との間を反射して、非常に遠くまで届くということがわかつたのであります。ちようど光を鏡にぶつつけますと、ある角度でもつて反射されていきますが、それとまつたく同じ方法で電波が傳わつていくのであります。この電波を用いますと比較的小さな電力で非常に遠くへ到達するために、いろいろ便宜がございまして、國際無線通信等に漸次使われてまいつたのでございますが、特にこれに目をつけまして、最初電波を使つた國際放送というものを初めたのが英國でございます。すなわち英國の放送会社でありますB・B・Cが一九三二年でございまするが、いわゆる英國放送の名のもとに自分の本國から各植民地に向けてこの短波の放送を開始したのでございます。これは本國とその植民地とを文化的に結びつけることに非常に効力を発揮いたしまして、逐次この設置を拡充して今日にまいつておりますが、これと同時にドイツが第一次世界大戰後の國力回復を目ざしまして、またその抱懐するところの政策を実行する一つ手段といたしまして、ヒトラーがこの短波放送を大々的に始めたのでございます。一九三六年のベルリンオリンピック大会におきまして、ドイツが十数台の非常に強力な短波放送機を設置いたしまして、これを世界各國に向けてオリンピックの状況放送に利用されたことは、すでに周知の通りでございます。このように短波放送が非常に偉大なる勢力をもつてまいりましたためにこれにならいまして、現在世界の強國といわれる國におきましては、大なり小なり、この短波放送を実施している状況でございます。しかしながらこの短波の波長体は單に放送ばかりではございませんで、もつとそれ以外に非常に國際的な電信電話の通信に利用されております関係上、むやみやたらにこれを実施することができませんで、自國内の放送は、いきおい先ほど申し上げた標準放送に限定されるということになるわけでございます。  ところが先ほどお話申し上げたように各國とも放送が非常に盛んになりまして、その波長体ではどうしてもカバーできないという時代がまいりまして、それと同時に無線技術の発達に伴いまして、だんだん波長の短かい短波を利用できるという状況にも立ち入りました関係上、最近におきましては、短波よりさらに波長の短かい超短波という、いわゆる深長で申しますと十メートル以下の波長を使つた非常に波長の短かい放送が盛んになつてまいつたのでございます。この程度の波長になりますと、大体光と同じように直進する性質をもつておりまして、先ほどお話申し上げました電離層というものをつき抜けて行つてしまいます。從つて大体見透しの距離しか届かないのでありますが、高い建物を利用したり、あるいは山の山頂を利用いたしますと、相当廣範囲にこれをカバーすることができます。一つの都市あるいは一つの地域を対象とした放送には、非常に好都合のものでございます。殊にこれはあまり遠距離に行きません関係上、同じ波長を各地で利用できるという便宜もございまして、今後この超短波放送は非常な勢いをもつて発達する可能性がございます。  以上は普通の音樂あるいは人間の声を作る放送でございますが、これとは別に写眞でありまするとか、あるいはまた文字というようなものを直接電波で一般大衆に放送するという試みも行われてまいりました。これは天氣図でありますとかその他いろいろ機械の図面というようなものを一般に廣めるために、非常に便宜なものでございまして、これがこの法案におきましてフアタシミル放送と称せられるものでございます。この種類の放送もすでにアメリカ等におきましては、数年前より実施されておりまするし、わが國におきましても一、二の通信社におきましては、これによりまして日本の複雜な文字をただちに送りまして、ニュースの速達ということを計画し、その実現を計画しておるという状況にあるのでございます。  さらにテレヴイジヨン放送でございますが、これは今度の戰爭前より世界各國の技術の優秀な國におきましては、それぞれ実驗を開始しておつたのでございまするが、戰爭中の電波兵器、すなわちレーダーと称せられる技術が、このテレヴイジヨンの技術と非常によく似ておりまして、この電波兵器の発達に伴いまして、テレヴイジヨン技術も急速な発達をいたしてまいりました。從いまして戰後まずこれに大きな力を注ぎましたのはアメリカでございまして、今日アメリカの統計によりますと、アメリカにおいては、すでに十四の都市におきまして二十三のテレヴイジヨン放送局が実施されておるということになつております。さらに建設許可を受けたものは七十三局ございまして、放送局を申請しているものは百九十一局あるという非常に盛んな状況にございます。殊に最近はこのテレヴイジヨンを天然色テレヴイジヨンといたしまして、自然の状況をそのまま送ろうという技術も完成いたしまして、目下一、二の放送局において実施中であるという、まつたく驚異的な発達をいたしておるのでございます。これらのテレヴイジヨンは、大体一つの画面を五百から五百五十くらいの線に分けて送つておるのでございまするが、その鮮明度は大体十六ミリ映画程度の鮮明度を持つておりまして、懐中時計の針のごときも明瞭に出るという状況でございます。從いまして今後このテレヴイジヨンの発達というものは、おそらくわれわれの想像以上に上るのではないかというふうに考えられるのであります。先般のアメリカからの通信によりますと、ビキニ環礁で行われました原子爆彈に関連いたしまして、この原子力の研究あるいはその原理等がテレヴイジヨンによつて一時間数十分間アメリカに放送されたという記事もございます。そういうような時代でございまして、將來の放送というものは、おそらくテレヴイジヨンが中枢をなすのではないかと思われるのでございますが、特にテレヴイジヨンは先ほどお話した超短波あるいはさらに波長の短かい極超短波を利用することによつて初めて可能となるのでございます。その理由は一般の中波あるいは短波の電波でございますると、その電波が複雜でありますので崩れたり重なつたりしますが、超短波、極超短波ですと大体光と同じような作用で傳わるためにそういうようなおそれはまつたくないのであります。從いましてそれらのことを考慮いたしまして、今回の放送法にはテレヴイジヨンについてはフアクシミルというものを特に放送の範疇に入れまして、將來の発達に備えたような次第でございます。  以上は大体設置の面から見ましたところの放送の状況でございますが、放送経営いたしまするところの事業面からこれを見ますと、大体大きくわけて三つに分類できると存ずるのであります。その一つは、放送をその國の独占事業とする行き方でありまして、これは先ほどの英國の英國放送協会がその代表的なものでございます。そのほかに放送を國の大きな政策を遂行する一つ機関として考えておる國におきましては、放送を独占企業体にさせておる場合が多々ございまして、このやり方もソ連のように、まつたく國有國営という行き方もございますし、またスエーデンのように、設備は國が持つてつてその経営は特殊事業体に委任するという行き方をとつておるものもございます。また先ほどお話いたしました英國の放送協会設備も運営もその特殊企業体が行つておるという状況でございます。それからこれとまつたく対蹠的なものはアメリカの行き方でありまして、これは自由競爭的な立場をとらせております。この自由競爭的な立場をとつておる國におきましては、放送は非常に発達しております。先ほどお話申し上げましたように、一時アメリカにおきましても、全國の放送局の数が千を超えるような状況でございました。もちろんその経営者はナシヨナル・ブロード・キヤステイング・カンパニー、コロンビヤ・ブロード・キヤステイング・システムといつたような大きな國全体に組織を持つたものもございますが、それと同時に一つのデパートでありますとか、あるいは学校、または宗教團体といつたようなものが一つ二つの放送局を持つてもらうというような小さいものもございまして、まことに種々雜多でございます。その結果聽取者も非常に莫大な数でございまして、最近の統計によりますると、アメリカにおける聽取者数は五千万を超えるということが報告されております。それと同時にこのように放送局がたくさん出てまいりますと、そこに電波の混乱という問題が起つてまいります。從つてこれらの電波を統制いたしますためには、どうしてもここに國家的な一つの統制が必要となつてまいりまして、この点同じ文化事業でありまして、しかも性質の非常に似ております新聞、雜誌等と放送と非常に違う点は、放送においては電波を使う、その電波に限度があるということでございます。アメリカのように非常に自由主義的な國におきましても、これを整理するために電報通信委員会というものが設立されまして、その整理に鋭意努力してきております。今日におきましてもまだ完全に整理してはおりませんけれども、着々その効果が発揮されまして混信問題等も大分減少しているのであります。  第三の事業形態といたしましては、一方において公器的な放送事業を認めると同時に、他方商業放送的な放送を認めていこうという行き方でございます。それは比較的最近立法化された法律をもつておる國におきまして行われておるやり方でありまして、濠州あるいはカナダというような國はこういう行き方をとつておるのであります。わが國の放送事業は、從來は独占形態をとつておつたのでありますが、今度の法律化におきましては、この第三の行き方をとつております。この行き方はなお今後いろいろな経驗を経なければ、なかなかその結論は得られないかと存ずるのでありまして、法案におきまして一應五年という年限を区切つたのもそこから出ておるのであります。  次にわが國の状況につきまして簡單に御説明申し上げたいと存じます。わが國に放送が初めて行われましたのは大正十四年でございます。当時は東京、大阪、名古屋にそれぞれ單独の社團法人放送事業体ができまして、競爭的な立場でこの放送事業経営しようとしたのでございます。ところがこういう行き方をとりますと、いきおい放送の普及が大都市に偏重されるという傾向になりやすいのでございまして、この傾向は現在アメリカにおいても見られるところでございます。政府におきましては、できるだけ早くこの放送を大都市のみならず、山間僻地におきましても普及させなければならないという政策をとりました結果、この三つを一緒に統合いたしまして、今日の日本放送協会というものの設立を勧奬したわけでございまして、これが設立されたのが大正十五年八月でございます。爾來日本放送協会におきましては、その政府の方針に則りまして放送の普及発達に努めました結果、今日におきましては第一放送、第二放送を含めまして全國に百六局の放送局を有しておりまして、その電波も大体において日本全國をカバーしておるという状況でございます。しかしながらまだ北海道の一部あるいは東北地方の一部、九州の南部地方等におきましては、電波の普及が十分でない所もございまして、これらにつきましては、今後鋭意その普及をはかるべく計画を進めておるという状況でございます。今日わが國の放送聽取者数は六百五十万を超えるような状況でございまして、普及率といたしましては、必ずしもそう悪いとは考えておりませんけれども、まだまだ英國がやつておりますように、第一放送、第二放送、あるいは第三放送というようないろいろな放送の種類にわけて、放送のそれぞれの使命に應じたプログラムを組んでいくというような面からいうと、まだまだ足りないという感じをもつのでありまして、今後ともこの点は十分努力していきたいと思つておる次第でございます。  以上のような状況でございまして、世界各國の放送の発達及びわが國の状況は最近目ざましいものがございますが、今日この放送を規律しておりますところの無線電信法は、大正四年につくられたものでございまして、当時は今日の放送というようなものの出現は夢想だもしておらなかつたという時代につくられたものでございます。從つてこの法律をもつて今日の放送事業を律するということは、これはまつたく不可能なことであります。殊に最近におきまして民間放送の出願もいろいろ出てまいつております。今日まで逓信省に参つております数は約八つございまして、これらの処理をいかにすべきかという点に関しましては、至急この基準となるべきところの立法措置を必要とするということを私どもは痛感しておる次第でございまして、今日の状況の鑑みまして至急この放送法案の御審議をお願いいたしたいと存じておる次第であります。  以上簡單でございますが御説明を申し上げる次第でございます。
  7. 小川半次

    小川委員長 以上で説明を終了いたしましたが、引続きこれに対して質疑に入りたいと思います。
  8. 並木芳雄

    ○並木委員 御説明を聽いて大部よくわかつてまいりましたが、私たちさらに研究を重ねて今後の審議に入りたいと思います。本日のところは氣のつきました点を二、三お聽きするという形でお願いしたいと思います。  ただいまのところ、民間放送局の申請が八つぐらいあるということでございましたが、その八つのうちで、もし法律が通過すれば許可してもいいという実力を備えたものは、いくつぐらいございますのですか。
  9. 網島毅

    ○網島逓信技官 ただいまのお尋ねでございますが、新しい民間放送の出願に対しましては、逓信省といたしましては、かねてから関係方面といろいろ連絡をとりましてその意向も聞いておるのでございます。現在の逓信省の考え方といたしましては、新しい法律案が國会を通過いたしました曉におきましては、放送に対する政策は、挙げて放送委員会に移されるものでございまして、逓信省の手から離れるものでございます。從いまして今その申請を審議いたしましてかれこれいろいろ議論するということは、行き過ぎの点もあるかと存じまして、目下そういうことは中止しております。しかしながらお尋ねの趣旨が、その内容がどうであるかということでございまするならば、周波数の点におきましては、現在まだ多少のゆとりはございます。もつとも先ほどお話申し上げましたように、日本放送協会が相当多数の局をもつておる関係上、そうたくさんはございませんが、しかし絶対ないとはわれわれは考えておりません。從いまして、新しい放送企業体が資金の面、あるいは資材の面におきましてくふうがつくならば、成り立つものであろうというふうに考えておる次第でございます。
  10. 並木芳雄

    ○並木委員 その成り立つ可能性のあると思われるものは、取上げる價値のある内容をもつたものは、常識的に考えていくつぐらいございますか。そういうものがいくつかあるとすればわれわれはこの法案審議する上において、なおさら急がなければならぬと思います。
  11. 鳥居博

    鳥居逓信事務官 ただいまの御質問は、今まで出ている新放送会社の設立認可について、認可し得るものはどのくらいあるかという御質問でございますが、今まで出ておりますものは、二、三年にわたつて出ておりまして、その後御承知のように社会情勢も経済情勢も変りまして、その中には申請を出しつぱなしで、すでに今は申請の母体はなくなつてしまつたというものもございます。それからその中には朝鮮民間放送協会というものもございまして、これは新しい今度の放送法でまいりますと、五十五條との関係の出てくるものもございます。こういうものを拔いて見ますと、現在二つか三つが残つていく可能性のあるものでございます。これがもし申請当時の発起人と同じ顔触れでそのまま行われるとすれば、財政的にも相当しつかりしておるのではないかと存ぜられます。私の聞き及んでおります範囲では、結局放送法が制定されますならば、その新しい放送法に基いて再檢討してみたいという考えをもつていらつしやる方が大部分のように聞いております。また從來申請書が出ておりませんが、この法案國会に提案されたということを新聞紙上その他で御承知になつて、新たにそういう計画をおもちの團体も二、三あるように聞いております。
  12. 馬場秀夫

    ○馬場委員 二、三お尋ねいたしたいのですが、まず第一は、この前もお伺いいたしたのですが、放送委員会委員の人選の問題であります。これは立案者の御意思は大体わかつたのですが、先ほどからお聽きしますと不偏不党だと、あたかも正しいような御説明があつたのでありますが、政党政治が行われておる今日、この人選をどういうぐあいに行うかというと、十一條で、内閣総理大臣がこれを任命するということになつております。つまりその辺の関係ですが、総理大臣は政党内閣の首班であるから、委員の任命を任せることによつてその公正が保たれるかどうかということが一つ。それから五人の委員を選ぶ場合に、どういう選任方法をとるかという問題が一つ。もう一つは今度の法案による日本放送あり方には、多少理解ができないものがある。と申しますのは、ただいま新しい放送局の申請が八つばかりあると聞いておりますが、はたして今日の日本の國力をもつて民間事業團体放送協会に対抗し、あれと類似の放送設備ができるということは、ちよつと考えられない。從つて当分はこういうものは不可能であるという前提の下に立つておる場合に、ここで今立案者の御説明によると、日本放送協会を改組して、さらにこれを独占化するようなお考えがあるように思われるのであります。一歩讓つてこれを放送委員会に任すということはいいのでありますが、これに関係する人によつては、またさらに今の放送協会あり方にも非民主的な傾向がありはせぬかということが、一つのお尋ねであります。同時に、今度の法案のねらいに関連して、第二十五條の九号でありますが、ニユース及び情報までは今度新しくできる協会の管理に置いても、第九号は二つぐらいの民間会社に任せて自由に競爭させていくということをお考えになつたことはありませんでしたかどうかということを、お尋ねいたしたいと思います。
  13. 鳥居博

    鳥居逓信事務官 ただいまの御質問は、委員を首相が任命するということで、この法案が言つている不遍不党ということが保てるかどうかということが一つ。第二には、五人の委員をいかにして選ぶかということ、第三は自由企業でも独占事業でもない第三の形態というものをねらつて、かえつて現状より悪くするのではないかという御質問と承りました。  まず第一につきましてお答え申し上げます。この放送委員会は、この法案規定いたしましたところは、一つの特殊な行政機関であります。この委員会政策審議あるいは政府の諮問に答え、建議するというような性格委員会ではありません。この法案立場から申しますと、放送に関する政策というものは、國会がこの法律によつてきめるのであるという立場をとつております。從つてほかの法案に比較いたしまして、この法案は非常にこまかく政策事項を立法化いたしております。そうしてこの委員会は、單にそれらの執行に当る行政機関であります、こういう立場であります。およそこれが行政機関である以上は、憲法の定めるところに從いまして内閣権限に属することでございまして、これに携わる委員も総理大臣の任命権のもとにある、こういう解釈を下しております。それからその執行にあたりまして、これが公平に行えるように十分の留意をいたしておるつもりであります。  第二の御質問に対しましては、從いましてこの法律の執行について十分公平が保てるように、委員をどうやつて選ぶかという御質問に対しましては、今までの法案立案過程におきましても、各方面から御意見がありまして、非常に研究をいたしました点でございますが、立案者といたしましては、内閣総理大臣がこれを選定されます場合には、しかるべき機関に御相談あるものと考えております。もし必要ならば、これは政令その他で適当な機関を設けるべきであると考えております。そうして具体的な内容を申しますならば國民の各層を対象といたしまして、たとえば科学技術、新聞、出版、商業、工業、農業、財政、教育、文化、宗教、労働、婦人、青少年、このような國民各層の職業別または年齡別を考慮いたしまして、そういうような方々の御意見を十分聽きまして、第十一條に掲げるような資格をお持ちの方を選定するという考えでおります。しかしこの委員はあくまでも、執行者でございますので、特に放送の專門家を必要とするとは考えておりません。また國民各層の利益代表あるいは職能代表をもつてこの五人を組織するのだという考えは持つておりません。  それから第三番目の質問についてお答え申し上げますが、この法案はアメリカ式の自由企業と、イギリス式の独占企業のいずれでもない第三の形態というものをねらつたのではありませんで、両者を併立させておるのであります。その結果民間放送というものが成り立たないではないかという御質問に対しましては、起案者といたしましては、民間放送日本の現在の國情において絶対に成り立たぬものとは考えておりません。これはやり方によつては、一つ企業でございますから、およそ企業というものは必らずうまく行くのだという企業はないわけでございますが、この一般放送につきまして、これが成り立たぬというものはないの思つております。ただ日本放送協会の行います放送と、今後の一般放送局の行います放送とは、ある面でずれがあると思います。必ずしも両者が正面から競爭するものであるとは考えておらないのでありまして、一番多きなずれはどこに考えられるかと申しますと、民間放送が今の日本放送協会と同じように、日本全國を打つて一丸とした放送を行うということは、きわめて困難であろうと思う点であります。從つて日本におきましては、民間放送は地域的な放送から行われていく。これはアメリカでも同樣でございますが、地域的な放送を行つて、必要があればこれを連合あるいは提携いたしまして、ここに日本全部をおおつていくような廣い放送ができるかもしれませんが、あくまでもその特質は地域の実情に会つた放送というものが行われていくだろうと考えます。それに対しまして、日本放送協会の方の放送は、原則としては全國を対象といたしまして、全國的に平均させていくというところにねらいがありまして、また地方的な文化の向上に務力いたすということが一つ。もう一つ民間放送の方はあくまでも営利事業の建前でまいります。從いまして学校教育に関する放送であるとか、非常に文化的にはすぐれたものではあるが、一般公衆にはそれほど興味を呼ばないというような種類の娯樂放送、あるいは文化的な内容放送、こういうものは民間放送では成り立ちません。從つてこういうものについては、安定して收入を保障されている日本放送協会に努力してもらう。そしてこの面の開発と向上をしてもらう必要があるのであります。ところが一般の娯樂面につきまして、非常に創意とくふうをもつて國民の興味をそそるものを中心にして、國民文化をまとめあげるという点になつてまいりますと、全國を対象とするような日本放送協会番組では、なかなか生かしがたいのであります。これは現在の放送番組をごらんになればおわかりになると思います。こういう点は新しくできる民間放送によつて救済される。從いましてこの両者が完全に競爭する立場に立つとは考えておりません。多くの場合に両者相補いまして、日本放送文化の向上に非常に裨益していくのではないかと考えておる次第であります。
  14. 馬場秀夫

    ○馬場委員 委員五人の選定ですが、これはお話のように職域代表でも何でもないということは、その通りで結構であります。しかしこれでは五人の委員が各部門々々を担当して一人一職という形になつてしまう。一人が一項目の責任者ということで、会議制というわけにいかなくなると思うのですが、その点はどうですか。それから五人ときめた理由はどこにあるのですか。もう一つ自由企業と独占企業を並行してとるということですが、日本の現実をいろいろな角度から檢討すると、お話のように日本においてただちに民間放送局が設置されることが可能かどうかということです。もしもそれが不可能であつて並行制度をとるならば、地方においては中央の娯樂は必らずしも歓迎しないような所もあるし、從つて二十五條の八と五を分離いたしまして、地方放送局に半分任せて行くようなやり方で競爭させてみたらどうか。もう一つも、先ほど御質問の、九の娯樂の編成にあたつては、これはいつそ日本放送協会がみずからやらないで、二つぐらいの民間放送團体に任せていくというやり方が、並行線を歩む一つのやり方ではないか、そういうお考えはありませんか。
  15. 鳥居博

    鳥居逓信事務官 御質問にお答えいたします。本法案によると委員一つ一つの部門を担当するような結果になりはしないか、こういう第一の御質問でございますが、この法案の建前は、先ほども御説明申し上げましたようにあくまでも委員会の決定あるいは処分は、すベてこれを会議制によつて行うことにいたしまして、一人々々の委員はいかなる権限も持たないようにつくつてございます。從いましてあるいは委員会の申合せでもつて、ある委員が何かの部門の主査というような任務を担当するかもしれませんが、最後の決定と処分はすべて会議制になりますので委員一人々々が一つ一つの部門を担当するようなことは、おそらくできないことだと存じます。そのために事務局に三部を置きましてここにきわめてすぐれた知識の豊富な識見者をおきまして、この方々の專門々々の知識を五人の会議制によつてよく消化して実現していくという態勢をとつてまいるように考えております。  第二の質問は五人にした理由いかんということでございますが、これはこの法案立案のときにも、各方面から多数御意見がございまして、五人では少な過ぎる、少くともこのような委員会では数十名の委員を置いてその中から執行委員という形で選ぶならばいいが、五人では何とも少な過ぎるという御意見が非常に多かつたのであります。しかし考えてみまするに、多数の委員をとりますと、その委員会は大体審議機関というような形になりまして、行政処分行為を行つてまいりますのに、数十名の委員がすべて出席して会議でやつてまいるということは、行政の面からいきましてほとんど不可能でございます。從いまして多数委員制をとりますならば、この委員会審議機関となることは明らかでございます。そのためにその中から五名ぐらいの執行委員のようなものを選べという意見も、少し考えてみますと、そのような、制度をつくりますと、今度は放送のために國会類似の國民協議会をつくるという形になりまして、その國民会議から五人なら五人の執行委員をつくり、その協議会の政府をつくるという考えにも近くなつて來るような傾きがなきにしもあらずと考えられますので、この法律におきましては、政策を定めるのはすべて國会である。從いまして大きな政策施行は全部法律に盛り込みまして、社会情勢が変つてこれを変更する場合には、法案の改正を行うのだという立場に立ちまして、委員会は執行機関である。從つて多数委員会制をとつた場合には、この執行委員が当りますので、少人数制をとりました。今まで行政委員会としてこういう委員会が多数できております。それらは一番少いのが三人多くて九名で大体五名のところが多いのでございまして、行政執行の能率の点、少数者による独断を防ぐという点を考えまして、五名が一番適当であると考えた次第であります。  それから民間放送日本放送協会放送業務部面をわけて、日本放送協会はニュースその他の報道に当り、民間放送の方は演藝、娯樂部面に当てたらどうかというお説でございますが、文化の面におきましても、民間事業が行います部面と、日本放送協会のような公共事業の行います部面とは、非常に異なると思うのでございます。たとえて申せば現在の実情を申せば、ある地方では西洋音樂などはほとんど聽き手もない、またおもしろくもないという多数の意見も、ある地方では多いと存じます。そういう地方には民間放送局は必ずその地方の趣味に合つた放送を行つていくだろうと思うのであります。しかしながら、今後日本全体の、國の文化レベルを考えてみましたときに、そういう地方にはもう西洋音樂というような文化方面については何も触れさせなくていいか、またそういうことを考えなくてもいいかといえば、必ずしもそうじやないと思うのでありまして、こういう方面にも、公共團体としての日本放送協会の手によりまして、それをお聽きになるならないは自由でございますが、そういう電波を送つておいて、そういう文化をいつでも樂しみ得る機会をつくつていくことは、これは民間放送では営利に合いませんので、できないことでございます。そういう点を考えますと、やはり日本放送協会文化的な面、演藝的な面を行うということもぜひ必要になると存ずるのであります。たとえば現在でも日本放送協会は東京で大きな交響樂團を維持しております。これは文化的には非常にすぐれた仕事でございまして、もし日本放送協会がこの維持に当らなければ、日本の音樂のレベルというものは、世界に伍して行くことはとうていできない実情だと思うのであります。こういう面から申しましても公共團体日本の全体としてのある程度の文化を維持させていくための仕事をさせていくということは、ぜひとも必要だろうと存じまして、この法案ではこれに関連する規定を設けまして、なおそういう文化團体の維持を行うことも日本放送協会に許しておる次第でございます。
  16. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今の問題に関連いたしまして、民間放送局の問題が非常に簡單に考えられておるようでありますが、地方には実際は名目だけあつて放送局の維持ができないという場合もあると思います。こういう点について一体それを勘案してやつておられるのかどうか、ただ申訳的にこういうものをつくつたのか。そういう経済的な関係がありますので、そういう点について御説明願いたいと思います。
  17. 網島毅

    ○網島逓信技官 今の御質問は、商業放送の維持が困難じやないかという問題だと思います。私どもが民間放送の出願を受けましたときに、その実行、維持が可能がどうかということについて、いろいろお伺いしたことがあるのであります。しかし幸いに無線施設は通信施設の中でも有線施設と違いまして、比較的に機械そのものも小さなもので済み、單独で設備の運用ができる関係上、やり方によつては建設費及び維持費も相当節約してやり得る点があります。それに運営の面におきましても、いろいろ計画されている方々のお話を伺いますと既成の劇團あるいは樂團と結びつくとか、いろいろ新しい計画をお持ちでありまして、それらの組合せによりましては、必ずしも不可能ではないという印象を受けておる次第であります。先ほど鳥居事務官からも御説明がありましたが、私どもこの商業放送というものは、日本の將來においては相当可能性があり、また発展するものではないかということを期待しておるのでありましてその点を御了承願いたいと思います。
  18. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 今の見解は、專門家の立場でございましようか。非常にわれわれとは見解が違つておりますので、いずれあらためてこのことについて申したいと思います。
  19. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほどの質問に関連して、最後にお尋ねいたします。われわれは國民文化の向上から、どうしても民間放送を大いに奬励しなければならないと思うのであります。それで今やつている放送に、第二放送というのがありますが、將來民間放送に免許を與えるような状態になつたならば、あの第二放送を廃止されたらいかがかと思うのでありますが、その点について御意見を伺いたいと思います。  それから今申請しておるものは、大体聽取者の数というものを予定しておると申うのでありますが、現在程度の聽取料で最低何百万口加入すれば事業として成り立つものか、それをお教え願いたいと思います。もちろん政府としては民間放送を積極的に奬励する意味でつくつたもので、これは独占事業だからというので、それを糊塗するためにお体裁でつくつたものではないと思います。その点について決意と同時に、御返事を願いたいと思います。
  20. 網島毅

    ○網島逓信技官 最初に第二放送の廃止の問題でございますが、現在日本放送協会が、第一放送のほかに第二放送を持つておりまして、それを今度とも普及させていくという考えをもつておるのでございます。第二放送の使命は、大体教養的な方面に重点をおいておりまして、第一放送ニユース及び娯樂とは多少違つた目的をもつて行われておるのでございます。教育あるいは教養方面に第二放送を利用していくということは、今後日本放送協会が新しいこの法律によりまして改組されまして、その公共性を強く持つていく場合には、なおこの問題は必要かと考えておるのでございまして、現在日本放送協会から第二放送を切り離し、あるいは廃止するということは、目下考えておらないのであります。殊に第一放送と第二放送とは同じ場所に設置されておりまして、電源や空中線も共用されておるのでありまして、これを廃止することによつて経費そのものもそう少くはならないという状況でございます。
  21. 鳥居博

    鳥居逓信事務官 ただいまの並木委員からの質問のありました点は、非常に私どもも意を強ういたしました。私どもといたしましても、將來においては民間放送を発達させることによりまして、今後の日本文化國家の建設に非常に貢献するだろうという固い決意をもちまして、この法案を提案しておるのであります。しかも今後の民間放送の発達につれまして、先ほど電波局長から申し上げましたように、超短波の技術の発達を特に祈願しておるのであります。この技術の発達は、單にラジオの部面だけではありませんで、すでにアメリカで実現しておりますように國民のあらゆる生活部面に大きな影響をもつ次第でございます。從いましてこの法案通りました上は、政府といたしましても民間事業の発達に極力力をいたしますとともに、なお超短波技術の発達に大いに努力したいという決意をもつておる次第でございます。  次に並木委員の御質問でございました民間放送経営的な根拠でございますが、これはこの法案説明にも申し上げました通りに、民間放送聽取料をもつて経営基礎とはいたしがたいのであります。この法案においては聽取料をとることを禁止いたしてはおりませんが、しかし放送委員会の方に義務的に届け出よという規定がございます。それと同時に放送局一つではございませんで、ある地方にはいくつもあるのでございます。この場合に競爭して聽取料をとるということになりますと、自然聽取料はとれなくなつてしまいます。從いましてこの民間事業放送を頼む人から金をとる。新聞で申せば新聞の廣告欄の收入で賄つていくという、こういう立場になります。この点につきましては、私は一逓信省の官吏でございますが、昨日参議院のこの法案の打合会におきまして民間放送事業の出願者の一人であります國民放送会社の代表者が、次のような意でを述べておりましたので、御参考までに申し上げます。  それはアメリカにおきます例を見ますと、一九四七年、つまり去年でございますが、廣告の全收入が三十七億ドルあつたそうでございます。これは電通の調査でございますが、このうちラジオに使われた廣告費が約五億ドルあつた。ところが日本におきましては、現在では一箇月に約十五億円が廣告費として使われているこういう実績があるそうでございます。これをアメリカにおきます一般の廣告費をラジオに使われた費用との比率で按分して見ますと、日本においては、ラジオのまわつて來る廣告費というものは大体月額六千万円程度が同じ比率で行けば予想される。これはまあ、民間放送全般にわたつての話でございますが、このうちの幾分かが各民間放送会社に山わけになるわけでございます。ところがこの設立者の意見では東京・大阪等で百キロワツト程度の標準放送、今のいわゆる中波放送でございますが、これをやるといたしますと、十分採算をとつてやり得る確信をもつておる、こういう昨日の御説明で、私も非常に意を強うした次第でございます。
  22. 小川半次

    小川委員長 それでは明日午前十時から質疑を続行することにいたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後一時四十三分散会