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1948-07-29 第2回国会 衆議院 不当財産取引調査特別委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年七月二十九日(木曜日)     午後二時五十八分開議  出席委員    委員長 武藤運十郎君    理事 鍛冶 良作君 理事 田中 角榮君    理事 辻  寛一君 理事 梶川 靜雄君    理事 河井 榮藏君 理事 小松 勇次君    理事 中野 四郎君       石田 博英君    高橋 英吉君       平澤 長吉君    足立 梅市君       前田 種男君    小野  孝君       橋本 金一君    田中 健吉君       中村元治郎君  委員外出席者         政治資金に関す         る問題について         出頭した証人  苫米地義三君         飯村泉君にかか         る政治資金究明         問題について出         頭した証人  長谷川勇一郎君                 奈良 教一君                 前野慶夫君 七月二十九日委員椎熊三郎君辞任につき、その補 欠として小野孝君が議長の指名で委員に選任され た。     ————————————— 本日の会議に付した事件  証人出頭要求に関する件  政治資金に関する問題  飯村泉君にかかる政治資金究明問題     —————————————
  2. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではこれより会議を開きます。  田中萬逸君より答弁書と題する書面が参つております。これは記録に止めておきますから、いつでもごらん願いたいと思います。  なお兵器処理関係につきまして、來る三十一日午後一時、大村清一、飯沼一省、青木秀夫の三名を当委員会に喚問をいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではさよう決定します。なお当日午前十時に理事会を開きたいと思います。  本日御出頭証人長谷川勇一郎さん、奈良教一さん、前野慶夫さん、本日は飯村泉君に関する問題につきまして証言を求めるために御出頭願つた次第であります。証言を求める前に各証人に一言申し上げます。  昨年十二月二十三日公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号「議院における証人宣誓及び証言等に関する法律」によりまして、証人証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなければならないことになつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人後見人または証人後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項、あるいはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するときに限られ、医師歯科医師藥剤師藥種商産婆弁護士弁理士弁護人公証人宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者については、その職務知つた事実であつて、默秘すべきものについて尋問を受けたときに限られております。右以外には何人も宣誓または証言を拒むことができないことになつておるのであります。なお証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人虚僞陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立の上お手許に差上げてあります宣誓書を朗読して下さい。どなたか代表して読んで下さい。     〔証人長谷川勇一郎君各証人を代表して宣誓〕     〔各証人宣誓書署名捺印
  4. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは証人諸君には恐縮でありますけれども、お調べいたしますのは長谷川さん、奈良さん、前野さんという順序で伺いますが、しばらく別室でお待ち願いたいと思います。  御出頭になりました証人苫米地義三さんですね。政治資金に関することで御証言を求めるわけでありますが、証言を求める前に一言御注意を申し上げます。  昨年十二月二十三日公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号「議院における証人宣誓及び証言等に関する法律」によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことになつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、一般の人については、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人後見人または証人後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項あるいはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するときに限られ医師歯科医師藥剤師藥種商産婆弁護士弁理士弁護人公証人宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者については、その職務知つた事実であつて默秘すべきものについて尋問を受けたときに限られております。右以外には何人も宣誓または証言を拒むことができないことになつておるのであります。なお証人が正当の理由なくして宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人虚僞陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立の上お手もとに差し上げてあります。宣誓書を朗読してください。     〔証人苫米地義三宣誓
  5. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは伺いますが、いつから民主党幹事長をしておられますか。
  6. 苫米地義三

    苫米地證人 昭和二十二年十二月からであります。
  7. 武藤運十郎

    武藤委員長 そこでお伺いいたしたいことは、去る七月六日に齋藤隆夫さん、幣原喜重郎さん、田中萬逸さん、芦田均さんなどが当委員会証人として出頭せられまして証言をせられたのでありますけれども、その中に、第一、齋藤隆夫氏は昭和二十三年一月十二日附をもつて政令第三百二十八号に基く民主党よりの寄附者届出につきまして、民主党主幹者齋藤隆夫としまして捺印があるのでありますけれども、このことは自分は全然署名捺印いずれも覚えがないと申しておられる。この点につきまして当時の幹事長でありますあなたにお伺いをいたしたい。
  8. 苫米地義三

    苫米地證人 本年の一月十二日ですか、政令によりまして、昭和二十二年度における党に対する寄附者の姓名及び金額を届けたのでありますが、その際には從來慣例事務的にそのまま踏襲いたしまして、今までもその形式で届けたのでありまして、党の最高幹部であつた齋藤隆夫さんの名前によつて届けてあるわけであります。このことは進歩党以來そういう事務的な扱いになつているそうでありまして、私どもはこれは党のしきたりとしてそうなつていると考えたのであります。
  9. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと党のしきたりであるから齋藤さんの同意または承諾捺印等は党において自由にやつてよろしい、そういうしきたりであるという御趣旨ですか。
  10. 苫米地義三

    苫米地證人 このことは私にはよくわかつておりませんが、從來こういうタイプに打つたものを私が拜見したのですが、これは事務の方から当然連絡があつたのじやないかと思う。その当時は別にそういう事務的な扱いについては疑いをちつとももたなかつたわけであります。
  11. 武藤運十郎

    武藤委員長 齋藤さんは認印と実印と合わせて三つあるけれども、いつでも手もとに置いておつて判を渡した覚えはない、從つてそれは知らない、こう言つているのであります。從つて連絡はなかつたようでありますけれども何か連絡でもありましたように聽いておられますか。
  12. 苫米地義三

    苫米地證人 私は直接齋藤さんには連絡をとりません。ただ事務当局進歩党以來、毎回寄附があるたびに届け出をいたしているのでありますが、ことごとく今の齋藤隆夫氏の主幹としての名前と印を預けられていることでしよう。そういう扱いをしておつたようであります。私はこれを届け出する際には、別にそういうことをふしぎにも何にも感じないので、そのまま適当な扱いをしていつている、こう考えたのでありますが、特に私から直接連絡をとつた覚えはありません。
  13. 武藤運十郎

    武藤委員長 それから第二、幣原さんにつきまして、昭和二十二年三月三十一日に金十万円を幣原さんが民主党寄附したことになつておりますが、幣原さんの証言によりますと、さようなことは全然ないと、申しておりますが、この記載はいかがなものですか。
  14. 苫米地義三

    苫米地證人 私のおりましたときに、先ほどお話があつたように、政令の命ずるところによりまして、昭和二十二年一月から十二月までの間における寄附者氏名金額を本年一月十五日までに届けなければならぬ、こういうことになつておりますので、党の帳面によりますものをそのままこれに轉記した書類をつくつて出したのであります。その当時のことにつきましては私は存じません。しかしながらその当時の寄附に対しましては、当時の主幹者たる齋藤隆夫氏の名前届け出を了しているものと存じます。
  15. 武藤運十郎

    武藤委員長 党にあります書類を寫したと言われたようですが、党にあります書類というのはどういう書類ですか。
  16. 苫米地義三

    苫米地證人 これは帳簿を私は見たことはありませんが、党には寄附に関する帳簿が備わつているはずであります。その帳簿によつて事務的にこれを轉記して作成したと、こう考えております。
  17. 武藤運十郎

    武藤委員長 その帳簿年ごとに改めるのですか。引続いてずつとつけているものですか。現に党にございますか。
  18. 苫米地義三

    苫米地證人 これは私深く知りませんが、事務当局に聽けばわかると思いますけれども、その点は私よく存じておりません。
  19. 武藤運十郎

    武藤委員長 第三、同じく二十二年三月三十一日に田中萬逸氏が金十万円を民主党寄附した旨が記載届出られておるようでありますけれども、この点につきましてもただいまのお答えと同じでありますか。
  20. 苫米地義三

    苫米地證人 同様であります。
  21. 武藤運十郎

    武藤委員長 第四番目に今度はあなた御本人昭和二十二年十二月二十六日に金三万円を寄附せられた旨が、ただいま申し上げました届書記載せられて届出られておりますけれども、この点につきましてはいかがですか。
  22. 苫米地義三

    苫米地證人 それは確かに寄附をいたしております。
  23. 武藤運十郎

    武藤委員長 このあなたの寄附もやはり先ほどお述べになりました党備え付け帳簿記載があるわけですか。
  24. 苫米地義三

    苫米地證人 記載があると思います。
  25. 武藤運十郎

    武藤委員長 帳簿記載はだれがいたしておりますか。
  26. 苫米地義三

    苫米地證人 党の会計係ですが、名前高橋君と思います。
  27. 武藤運十郎

    武藤委員長 高橋どなたですか。
  28. 苫米地義三

    苫米地證人 名前は今聞きにやります。
  29. 武藤運十郎

    武藤委員長 会計係高橋さんですか。
  30. 苫米地義三

  31. 武藤運十郎

    武藤委員長 なお念のためさらに伺つておきますが、先ほど申し上げました昭和二十三年一月十二日附の齋藤隆夫氏による届出のうち、ただいま伺つた以外にも十数名記載がありますけれども、いずれもそれらはただいまお話帳簿より轉記して届出をしたしたものでありますか。
  32. 苫米地義三

    苫米地證人 そういうことは確かだと思います。
  33. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますとその帳簿記載をいたしますのは、実際寄附がなされたものについていたすのでありましようね。
  34. 苫米地義三

    苫米地證人 むろんそうです。
  35. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど申しましたように寄附者としてその帳簿記載せられておるでありましようところの幣原氏、田中氏は当委員会において寄附をした覚えがない、こういうふうに申しておるのでありますけれども、非常にこれは大きな問題だと思いますが、どちらがほんとうでありますか。
  36. 苫米地義三

    苫米地證人 私は帳簿にあるもの正確だと思います。また事務的に扱つておる者から提出されました書類は、正しいと思つて出したのでありまして、その事実があつたかなかつたかということに対しましては、その当時届出をいたしました主幹者か、その当時の幹事長にでもお質しになればよくわかるのではないかと思います。私には実は実際問題はわかりません。
  37. 武藤運十郎

    武藤委員長 届出名義人齋藤さんは全然知らないというふうに述べておられるのでありまして、一番よくおわかりになる方はどなたですか。
  38. 苫米地義三

    苫米地證人 御本人がわからないということはちよつと私にも納得いかぬのでありまして、しかしもしそういう場合に疑念を質しますならば、その当時の幹事長にでもお尋ねになればおわかりになるじやないかと思います。
  39. 武藤運十郎

    武藤委員長 当時の幹事長というのはどなたですか。
  40. 苫米地義三

    苫米地證人 ……。
  41. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたの前の幹事長竹田氏でしよう。
  42. 苫米地義三

    苫米地證人 私の前の幹事長ならば竹田儀一君に相違ないのですが、この事件の起つた当時のことを今お尋ねなつたと思いますから、調べておるのであります。そういう答えでよろしければ私の前は竹田儀一君であります。
  43. 武藤運十郎

    武藤委員長 いやそうではない。届出のときは二十三年の一月十二日であるし、寄附の年月日として記載せられておりますのは先ほどお尋ねしたように二十二年三月三十一日でありますが……。
  44. 苫米地義三

    苫米地證人 ここで調べて見たのがありますから申し上げますが、石黒武重君が二十二年の三月三十一日に就任いたしまして、四月の十日に退任いたしました。それから地崎君が二十二年の四月十日に就任いたしまして四月十一日に退任いたしております。それから芦田均君が二十二年の四月十一日に就任いたしまして、同じく六月の二日まで幹事長をいたしております。その時代が事件にはまる方々じやないかと思います。
  45. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると石黒さんになるわけですね。
  46. 苫米地義三

    苫米地證人 石黒さんと地崎君になるのじやないかと思います。
  47. 武藤運十郎

    武藤委員長 ところが今の幣原さん、田中さんに関するものにつきましては、地崎幣原田中、坪川、栃木、佐藤、稻垣、有馬、鈴木、北村、江川、鹿島、この諸君はまつたく同日になつておるのです。三月三十一日というのは民主党のできた日ですか。
  48. 苫米地義三

    苫米地證人 民主党結成の日です。
  49. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねになることはありますか。
  50. 中野四郎

    中野(四)委員 今あなたのお話では、從來慣例主幹者齋藤隆夫さんとして出したというのですが、党の最高幹部であつたというだけで、齋藤さんの御了解を得ておりますか、おりませんか。これはこの証言の中心をなすもので、御承知のように一党の主幹者たる者をば、政令三百二十八号によつて届け出る限りにおきましては、相当一党のすべての責任を負わなければならぬ立場にある者は主幹者であり、また幹事長であるということになつておりますので、この点は慣例だけではいけないのですが、どういう観点に立つて出されたか、まず第一にこれを伺いたい。
  51. 苫米地義三

    苫米地證人 先ほど申し上げましたように、前例によつてつておることでありまするから、事務当局の運んでおる手続を別にふしぎに感じなかつたのでありまして、事務当局の方から連絡をとつておるかもしらぬとこう感じておつたので、私自身としては特に連絡をとらなかつたのです。
  52. 中野四郎

    中野(四)委員 そこでその責任所在を明確にしなければならないのですが、たとえば政令三百二十号の最後附則にすなわち「國会議員たる構成員を有する政党幹事長その他これに準ずる主幹者は、昭和二十二年中における当該政党に対する有力な財政的援助者昭和二十一年内務省令第十号第八條に規定する有力な財政援助者と同範囲とする。)の住所及び氏名並びにその援助金額を、昭和二十三年一月十五日までに、当該政党の主たる事務所の所在地の都道府縣知事に届け出なければならない。」從つてその一番最後問題になるのは「前項の規定による届出をせず、又は虚僞届出をした者は、これを十年以下の懲役又は禁錮に処する。」という條文があるのですが、これがもしここの委員会における齋藤隆夫さんの証言のごとく、まつたく何らの許可もなく、無断でただ慣例のみによつてこれを届け出たということになりますれば、これは容易ならぬ問題である。同時に幣原喜重郎さん、田中萬逸両君証言によりますれば、十万円の援助金を出した覚えはないというようなことになりますと、窮極はその責任所在を明確にしなければならぬのですが、届出当時の幹事長であるあなたが法律的なすべての面の責任を負うのか、あるいはあなたの考え方においては高橋会計がその責任を負うのか、この点をまず一應聽いておきたいと思います。
  53. 苫米地義三

    苫米地證人 寄附があつたかないかということに対しましては、私はさつき申し上げるように、その当時の実際はわからない。ただこれを総計して届出をしたということでありまして、届出形式がどうであるかということに今重点があるように思いましたが、先刻來申し上げるように、もう二年間にわたる今までの手続そのままをとつてつておるので、事務の方からあるいは連絡をとつておるのじやないかというような氣分があつたものですから、そこに何らの疑念を挾まずにやつた、こういうことであります。
  54. 中野四郎

    中野(四)委員 疑念を挾む挾まないの問題でなく、その責任をだれが負うかということを私は問うておるのです。從つてその当時の届出者とあるからには、あなたも相当権威ある届出に対してのそれぞれの事実に即した調査をした後において、これを連合國届け出るのがこの政令趣旨である。しかるにただ事務的にやつたからおれは知らぬというような面においてのみこれを許すわけにはまいらない。であるからその責任所在はどこにある。いやおれにはどこにもない。幹事長はただ看板であつて、何も知らぬ。すべては高橋会計にある。あるいは石黒当時の幹事長にあるのだということがはつきり聽きたいと思うのであります。
  55. 苫米地義三

    苫米地證人 どうもその責任所在はつきり言うとなりますと、私にはちよつと判断がつきかねるのですが、事務のことは事務長がすべて取扱いの方の責任をもつてつておるわけであります。
  56. 中野四郎

    中野(四)委員 かりに苫米地さん、お互いに党の一つ責任者としておつて、今後政令にかかるような場面に到達したときに、それは事務長がやつたのだから、すべて事務長責任であるということでは、これは公式の場合には取上げられないと私は思うのであります。從つて非公式の場合においては、党という党内事情においてはなるほど事務局長である担当者責任を負いましよう。しかしながらいやしくも公党として対外的に責任を負うものは那辺にありやといえば、一党の主幹者であり、幹事長であると私は言い得ると思うのであります。從つて私は届出当時の幹事長がこの責任を負うべきか、あるいは政令第三百二十八号の附則によるところの虚僞届出をしたことになるのですが、この面においてだれが責任を負うかという公式の面の判断をあなたに求めておるのであつて、これが違うというのは少々子供じみておると思うがどうでしようか。
  57. 苫米地義三

    苫米地證人 どうも実際問題として、こういう場合には事務長が実際の事務手続をやつておるので、その事実を私は申し上げているわけなのです。ただ内容がどういうふうになつておりますかというと、その当時の人でないと、私にはわからない。單純な手続を総計にしてやつておることにすぎない。これは事務的に判断できる事柄をやつたのだと考えております。
  58. 中野四郎

    中野(四)委員 苫米地さんのお話を聽いておると、非常に政令というものを軽視しておるという感が私には反映するのであります。少くともわれわれがポツダム宣言を忠実に履行して日本民主化を促進しようという過程においては、爲政者たりその指導者たるものは、すべての面においてわれわれが先んじてよりよき方法をとることがよいことである。しかるにあなたのお言葉を聽いておれば、きわめて事務的にこれを考えておられて、責任上の問題を一向ここで反映されないことを私は非常に遺憾に思うのであります。特にこの問題を重要視しなければならぬことは、連合軍方面においてもこの届出は、過去政党の中でも民主党といえば日本の三大政党一つである。この政党がこのようなでたらめな申告をしておるということなれば、今後日本政党のあらゆる面においてまじめに履行しても、事実上においてこれを見本にされて、すべてがふまじめではないかというふうにつつこまれ、考えられるおそれが多分に私はあると思う。特にあなたの証言のいかんによつて、少くとも当時虚僞申告をした、前幹事長になるかあなたになるか知りません。ないしはこれが事実上寄附をしておるにかかわらず、ここでいわゆる虚僞陳述をしたということになれば、田中さんなり幣原さん、齋藤さんなりは、國会の権威の上においてそれぞれの処置を受けなければならぬ。これは重大な問題だと私は思うのであります。單にこれは当時の事務当局がやつた問題であつて、よくわからないという程度では済まない問題であります。少くともこれは司法上の問題にもなりましよう、行政上の処分も受けなければならぬと思うのであります。でありますから特に苫米地さんは、この帳簿をば提出した幹事長としての責任を感ずるか、あるいは私はただ單に引継いだだけで事務的に届け出ただけだから、実際上の責任は当時の石黒君なり竹田君が負うべきであるという見解だけを明確にしておいていただきたい、こう私は思うのであります。
  59. 苫米地義三

    苫米地證人 内容につきましては繰返し申し上げるように、その当時の石黒君かあるいは地崎君に聽いていただきませんと、私にはよくわかりません。ただ形式的には事務的に運んだことが、あるいは齋藤さんの了解を得たか得ないかということにつきましては、ただいま私はその点までははつきり調べておりませんが、当然事務的にこれは連絡をとつてつたのだろうというふうに善意に解釈してやつたのであろうと思います。
  60. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで私は非常に疑惑を感じますことは、先日來ここで地崎君が証言されましたときに、百万円を土建業者からの援助金として受けて、それを自分が追放になつた後において、副議長室において前申し上げた田中萬逸君、幣原喜重郎君、齋藤隆夫君、あるいは芦田均君、一松定吉君、五君のおるところで報告をして、すべての引継ぎを完了したと言うておられます。その当時の記載帳簿から見ますると、まず地崎君の百万円の土建業者の献金が第一番に列記されておる限りにおきましては、少くとも私はこの期日は前の帳面によるものにあらずして、地崎君後の幹事長責任であると私は思うのであります。ところが殘念ながらこの届出の日にちは非常にあいまいと申し上げては失礼でありますが、三月三十一日、一日になつております。從いましてどれを後と言い、どれを先と言うわけにはまいりませんけれども、少くともあなたが今言うたように、地崎君後の幹事長責任であると私は思うのであります。この点いかがでありましよう。
  61. 苫米地義三

    苫米地證人 民主党結成式が三十一日でありますから、その結成式の当日に寄附金があつたかのように思うのですが、届出は四月の五日であります。四月の五日にやはり齋藤隆夫さんの名前届け出てあるのでありますから、その当時の幹事長と言いますと、石黒武重君の時に当ります。ですから石黒君を調べていただけば、あるいはわかるかもしれません。
  62. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは苫米地さんのところにあるのでは、幣原さん、田中さんの寄附金は四月五日に届け出てありますか。昭和二十二年の四月五日ですか、三年ですか。
  63. 苫米地義三

    苫米地證人 二十二年です。
  64. 中野四郎

    中野(四)委員 二十二年四月五日に十万円ずつの援助金が出ておりますか。
  65. 苫米地義三

    苫米地證人 それは今調べてまいりましたが、そういうふうになつております。受入れが三月三十一日、届出が四月五日です。
  66. 中野四郎

    中野(四)委員 そのときの幹事長石黒君ですね。
  67. 苫米地義三

    苫米地證人 そうです。
  68. 中野四郎

    中野(四)委員 よろしゆうございます。
  69. 前田種男

    前田(種)委員 幹事長証人責任があるかどうかという点は、中野さんの質問で、結論は要領を得ないが、私も同感です。はつきりしなければならぬと思う。問題は事実をもう少しはつきりする意味において、齋藤さんに承諾を得たかどうかという点で、実際の事務的な責任事務長がもつてつたのか、その他の人がもつてつたのか、だれが齋藤さんにそういう承諾を得たか、あるいは判も預つてつたかどうかという点を明らかにしなければならぬから、その点をだれに証言を求めれば明確になるかということを、幹事長たる証人からはつきりしてもらいたい。  もう一つ田中さん、幣原さんが十万円ずつ寄附しておるという報告に対して、本人は全然した覚えがないと明確に言つておりますから、当時の会計係高橋某が直接受取つたのか、あるいはその他の党の幹部が受取つたのか、当時そうして寄附金事務的に扱つて帳面記載したのはだれであるかということを、証人からはつきりその人を指名してもらつて、その人に当委員会出頭してもらつて明らかにすることを私は要求いたします。その事実が明確になつてきますならば、おのずから幣原田中両氏の言われたことと、あるいはその責任所在も明確になつてくると私は思いますので、その点に対してもう一度重ねて証人証言を求めておきたいと思います。
  70. 苫米地義三

    苫米地證人 事務的のことは事務長の大岩という人がおりますから、その大岩事務長に聽いていただけば当時の事情がわかると思います。それから内容のことにつきましては、先刻申し上げた通りでありますから、その当時の主幹者である齋藤氏が御存じないとすれば、その当時の幹事長にお聽きくださればわかるであろうと思います。記帳の方は、おそらく入つてきたものをそのまま事務的に扱つているというにすぎないと思います。
  71. 高橋英吉

    高橋(英)委員 中野君の質問に対する御証言で、確かさやあいまいさが大体わかつたようでありますが、もう少しその点についてお伺いしたいと思います。届出に対する事務的な取扱者は、事務長なり会計の方でやるということは、われわれ常識上了解いたしますが、この政令趣旨に基いて、この政令趣旨が非常に重大なものであつて、今証人がたびたび慣例云々の言葉を出されておりますけれども、こういうことは慣例のない最初のことです。嚴重な罰則を設けて、こういう嚴重な政令が出たということは、重大な問題でありますから、慣例をもつては扱うことはできないと思うのであります。從つて事務的以外の実際の責任者、これが虚僞届出になるかならないか、眞実の届出をどういうように間違いなくやるべきであるかということに対する実際上の責任者は、だれであつたか、すなわち齋藤隆夫氏——当時國務大臣であつたと私は思つておるのでありますが、國務大臣が党内の責任を負う道理はないと思いますから、齋藤氏が、自分は全然関知しなかつたというのは、ほんとうであろうと思うのであります。この党内における実際の責任者、言葉をかえていえば、政治的の責任者といいますが、政令が求めておるところの責任者、実際に嚴重に事実を調査した後に政令趣旨に從つた届出をする義務を負担しているところの主幹者幹事長はだれであるかということについて、明確な御答責をお願いしたいと思います。
  72. 苫米地義三

    苫米地證人 齋藤隆夫さんは、進歩党以來の最高首脳部でありますから、その齋藤さんの名前をもつて、その地位を尊重し、またその地位にある齋藤氏の前からの関係を尊重しながらやつてつたのではないかと思うのでありますが、別に党としては、それによつて少しも問題が起つておらなかつたし、こういうことのために実は重大な問題が起るとも思いませんでしたので、從來慣例によることを私承認したわけであります。その点は事務長に聽いていただけばわかります。
  73. 高橋英吉

    高橋(英)委員 たびたび問題になつておりますが、事務的の責任事務長なり会計主任でいいと思うのであります。そうでなくして、この重大な政令從つて、その事務長を使用し、会計主任を駆使して、そうして眞実の届出をすべきところの責任は党の首脳者にあるわけです。これを幹事長または首脳者という言葉によつて政令は表わしているのでありますが、その幹事長もしくは首脳者という、そういうことをとりまとめて眞実を届けるところの責任をもつている者は、すなわち齋藤隆夫氏であるか、幹事長のあなたであるかということを、私は具体的に聽くのです。実際そういうことの眞実の調査をして間違いのない届出をしなければならないということを、文字通り重大な政令が要求しているのでありますから、これは一会計主任や事務長の仕事ではないのであります。事務長や会計主任を駆使して、その人々をそれぞれの仕事につかせて、その集めたところの正確な資料によつて届け出るところの責任は党の首脳者である幹事長もしくは主幹者という言葉で現わしている人がその責任の衝にあたつているのでありますが、それは齋藤隆夫氏であるか、あなたであるか、もしくはそのほかの人であるか、だれがそういう総合的な、責任的な立場をとつたかということをお尋ねするのです。
  74. 苫米地義三

    苫米地證人 これは党の主幹者としては齋藤隆夫氏を届けてあるのです。その届出を私の代まで変更しなかつたのです。それですから、旧來の主幹者のままで、慣例によつて届出た、こういう事実なのです。
  75. 高橋英吉

    高橋(英)委員 私はそれをお聽きするのではない。実際事務長や会計主任を使つて、命令してこれを拵えさしたところの責任者はどなたか聽くのです。届出るときの名義を借りるのをだれの名義にするかというのが問題ではないのです。だれが指揮命令してこの届出書類を作製さしたか、この責任者がなくてはならない。党の首脳者に幹事長もしくは主幹者ということが明記してあるのでありますから、その責任者があるのですが、その責任者はだれになるのであるか。慣例による届出の名義人のことを私は申しているので、はない。実際仕事のとりまとめをした、すなわち総司令長官はだれになるのかということを申し上げるのです。
  76. 苫米地義三

    苫米地證人 書類を調製さして届出を出させるのは幹事長です。けれども幹事長名前で出すか、他の主幹者によつて出すかということは、これは主幹者という届けが出ておりますから、慣例によつて出ているというのです。
  77. 高橋英吉

    高橋(英)委員 幹事長責任をもつてそういうような書類を作製さしたことになるのですね。そうすると、なるほど帳簿にそれぞれの寄附者の名義や金額記載されているのでありますが、それが眞実であるかどうかということをその責任者は單に帳簿の上だけによつて信用するということは、これは政令趣旨に違うと思う。中野君の言うように政令を軽視したものと思うのですが、政令の直接の関係者であるあなた方において、さような政令を軽視したとか無視したというような態度に出られるはずはないと思いますが、実際においてだれがどのくらいの金をいつどういう機会に、どういう性質のもとに寄附されたかということをお調べになりましたかどうですか。
  78. 苫米地義三

    苫米地證人 私は政令を軽視するという考えは毛頭ないのです。その内容については、常に備えつけてある帳簿が正確であるという信念をもつておりますから、その信念によつてできあがつたその書類は正しいものと思つて出したのであります。
  79. 高橋英吉

    高橋(英)委員 その程度のものだつたら、関係方面から最初届出の義務を課しておつたにもかかわらず、あらためて再届出をしろというのは、從來届出に、罰則が軽いので、いい加減な届出がある、不正な届出があるから、あらためて嚴重に調査して正確な届出をしろというような趣旨のもとに罰則を過重されて、あらためて日時を限つて届出の義務を負わせたというようにわれわれは承知しておりますが、それに対するお考えはどうですか。
  80. 苫米地義三

    苫米地證人 私は一遍帳面記載してあるものを再調査してまでやるというふうには解釈しておらないし、またわれわれの記帳は正確なものに相違ないと信じておるのです。
  81. 高橋英吉

    高橋(英)委員 そんならなぜ連合軍の関係方面から、あらためて間違いのないものを届出しろということの再度命令があつたとお考えになりますか。
  82. 苫米地義三

    苫米地證人 それは私にはよくわかりません。ただあるいは届出のなかつた方面に対して注意を喚起しておつたのかもしれないのであります。向うの出したその趣旨は私にはよくわかりません。
  83. 高橋英吉

    高橋(英)委員 それから齋藤隆夫氏を届出名義人にしておつたにかかわらず、主幹者はあなただというふうにあとから訂正の申込みをされたような事実がありますか。
  84. 苫米地義三

    苫米地證人 主幹者はその後私に代つていると思います。
  85. 高橋英吉

    高橋(英)委員 この届出に関する主幹者の変更届出ですね、それはいつごろされましたか。
  86. 苫米地義三

    苫米地證人 それからどれくらい隔たつておりますか、それから後ですが、はつきり記憶ありません。
  87. 石田博英

    ○石田(博)委員 どうも問題はつきりしないので、特にこの政令趣旨をあらためてお聽かせした上でお答えいただきたいと思うのです。政令三百二十八号には「國会議員たる構成員を有する政党幹事長その他これに準ずる主幹者」と書いてある。それからあとは届出の義務を記載して、その終りに「前項の規定による届出をせず、又は虚僞届出をした者は、これを十年以下の懲役云々」という規定があります。この点でお尋ねをしたいのですが、この政令に基きますと、第一に申し上げました通り、政党幹事長がまず規定されている。その他これに準ずる主幹者というのは、幹事長でない、たとえば書記長とか、あるいは何とかいうほかの名前をもつている政党もある。つまり幹事長に準ずる主幹者である。幹事長があるところは当然幹事長自身が届出責任を有するものと、この法令では私どもは解釈するのですが、証人はどうお考えになつておられますか。その点について第一点お答えをいただきたい。
  88. 苫米地義三

    苫米地證人 届出はその主幹者という形において届出をしている。
  89. 石田博英

    ○石田(博)委員 主幹者という意味は、この法文をお読みになつたらおわかりになる通り、幹事長その他これに準ずる主幹者である。つまり幹事長というものがあれば、当然幹事長届出責任者である。これは法令上当然そういうふうに解釈する。もしあなたの言われるような意味でしたら、主幹者または幹事長というふうにならなければならない。
  90. 苫米地義三

    苫米地證人 私はそういうふうに感じないのです。幹事長でもよければ、主幹者として届出れば、幹事長でも、その他の人でも、それは党を代表する人だと思います。
  91. 石田博英

    ○石田(博)委員 そういうふうなあなたの解釈が正しいか正しくないかということは、おのずから他の機関が決定せられるものであろうと私は思いますが、次にあとの規定に、届出をせず、または虚僞届出をなした者には嚴重な罰則の規定があります。すなわちその届出の署名者に対して、届出内容虚僞である場合には、嚴重な罰を加えられることになつている。そうすると、届出名前の当人である齋藤隆夫氏に対して当然その内容を見せて、その内容届出を出させて、その責任を十分負えるかということを確めるのが当然なんです。そうでなければ、齋藤隆夫氏に対して事後承諾あるいはその他何らか別の方法を用いられた場合には、齋藤隆夫氏自身がもしその内容虚僞であつた場合には大きな責任を負わなければならぬ、牢屋へはいらなければならぬということになるわけですが、その場合に齋藤隆夫氏に実際上の党務に掌理にあたつておられた幹事長のあなたが單なる事務的処置に委ねられたという意味は、一体どういうお考えでそうされたか。つまり言い換えるならば、この内容については絶対信頼をおけるというお考えだというお答えが当然あろうと思うのですが、内容について絶対信頼がおけるという主観的な立場は別として、もしあなた御自分で言うておる通り、あなたの前の幹事長の時代にあるいは虚僞記載があるかもしれない。その場合の届出責任はやはり届出者が負わなければならぬ。その届出者に対して内容承知させなければ、届出をした意味も通達しない、そういうことは全然責任所在を不明確にするものだと私は考えますが、この問題をどう御解釈になつて責任は一体だれが負い、だれに負わせるつもりで、齋藤氏の名前をお使いになり、どういう意味でその承諾を得たかを確められなかつたか。それを承りたいと思います。
  92. 苫米地義三

    苫米地證人 私がやつたのは、前に寄附のたびごとにその当時の主幹者が皆届出ているそうでありますから、今問題になつている寄附問題は、二十二年の四月五日に齋藤隆夫氏の名前によつてすでに届出済みのものである。それをもう一遍私の手によつて、これをただ総合して取りまとめて、一箇年分として届けたに過ぎないのであります。その前にすでに届出は完了しておるのです。ですからそれを正しいものとみるのは当然だと私は思います。
  93. 石田博英

    ○石田(博)委員 そうすると、齋藤氏の証言によりますと、その前にも自分名前届出られたことは全然承知していない、こういうお話ですが、全体を通じてこの種類の届出には主幹者として齋藤隆夫氏の名前と印を使用するという全般的な承諾はあなたの方から得てありましたか。
  94. 苫米地義三

    苫米地證人 それは私のときには別に得たわけではありませんが、一番最初の長井幹事長のときにそういうことがあつたようであります。それはやはり事務長に聽いていただけばよくわかると思います。
  95. 石田博英

    ○石田(博)委員 長井源氏が幹事長のときは進歩党のときですね。進歩党と民主党とは同じ性格をもつているものですか。
  96. 苫米地義三

    苫米地證人 いや、その時代から継続して齋藤隆夫氏は進歩党及び民主党の首脳部であつて、そういう形において主幹者として届けることになつている。そのいきさつについては私にはよくわかりません。
  97. 石田博英

    ○石田(博)委員 おかしなことを承るもので、進歩党が脱皮し解党して健全保守党というものをつくられる目的で新らしい民主党をつくられたので、その性格、内容は全然違つたものだろうと私は思いますが、進歩党当時の慣例民主党になつても殘つているわけでありますか。
  98. 苫米地義三

    苫米地證人 それは民主党主幹として届出ているのですから……。
  99. 石田博英

    ○石田(博)委員 そのときに承諾を得ているのですか。
  100. 苫米地義三

    苫米地證人 そのときのことはよくわかりません。その当時の幹事長でなければわかりません。
  101. 石田博英

    ○石田(博)委員 この問題は、私どもの考え方では事務長に聽けとか、あるいは前のだれに聽けあれに聽けとおつしやつたつて、事実上御存じないかどかわかりませんが、私どもおよそ一党の責任を負う者、その党内の問題について責任を負わなければならぬ問題が生じた場合においては、当然幹事長の重職にある者は事務上の行爲その他一切の人の党務に関する責任を負われるのが至当なことだと考えますが、人間の考え方、責任に対する考え方の意見の相違でありますからいかんともしがたい。  そこで次にお伺いいたしたいのですが、先般の委員会において芦田均氏は、この届出の規定せられている期間において数回の寄附をしたということをこの席上で明瞭に答弁をせられている。具体的な回数は調査をしなければわからないが、むろんたつた一回の寄附ではない、数回にわたつて寄附をしていると、私の質問に対して明確に答えられている。ところがあなたの方からの届出書類の中では、たつた一回しか芦田均氏は寄附していないことになつている。そうすると芦田氏が僞証の罪に問われるか、それともあなたの党から出している届出内容が全然うそであるか。この二つのうち一つでしかないと思いますが、この問題について届出当時の幹事長であるあなたの御意見を承りたい。
  102. 苫米地義三

    苫米地證人 私は帳面を基礎にしてやつたので、その当時数回やつたかどうかということは一切わかりません。
  103. 石田博英

    ○石田(博)委員 現実にここで芦田氏は一回ではない。数回であると言うておられる。(「そう思つているのだ」)思つているのではない。一回ではないということを明らかに否定されている。そうするとあなたは正確なことはわからないかしらぬが、とにかく現在民主党の総裁である人が明らかに記載の事実と違つたことを申し述べておるが、それでもあなたは今日現在の御心境において、党の使用している書類をまつたく正しいものであると信じておいでになるか。また正しいということについてあなたは責任を負うことができるかどうかをお答え願います。
  104. 苫米地義三

    苫米地證人 私は帳簿を基礎にしてやつておりますから、それが正しいと信じております。
  105. 石田博英

    ○石田(博)委員 帳面が正しいということになると、先般の苫米氏の証言はうそだということになる。  次にちよつとお伺いいたしたいのですが、寄附を授受せられるときには、民主党慣例としましては現金の授受は一体どなたがされることになつておりますか。幹事長ですか、あるいは会計へ直接もつていかれるか。会計へ直接もつていかれる場合には、その寄附した事実は幹事長に当然報告があると思うが、それはどうなつているか。この点についてお伺いいたします。
  106. 苫米地義三

    苫米地證人 私の幹事長時代には、私が直接会計へ渡すか、しからざれば寄附者が会計の方へもつてつて報告を受けるか、どつちかでありますが、私の幹事長以前のことは私にはわかりません。
  107. 石田博英

    ○石田(博)委員 いま一点念のためにお伺いいたしたい。あなたは帳簿が正しいものであると信じておる、こう御答弁になつておりますが、帳簿を正しいと信ずるという信念の背景には、その信念が事実と違つた場合には当然責任を負われるということがなければならぬと思いますが、そういうことをお考えの上で正しいとお信じになりますか。重ねてお答え願います。
  108. 苫米地義三

    苫米地證人 普通の場合に党あるいは会社等に備えつけてある帳面がうそだということにはわれわれ考えられぬのです。正しいものとしてこれを処理していくのが常識で、私は今でも民主党に備えつけてある帳面は正しいものだと思つている。
  109. 石田博英

    ○石田(博)委員 あなたは今会社とおつしやいましたが、そうすると会社の場合などは社長としておられて、使つている人間の帳簿その他に虚僞の事実が発見せられた場合には、株主に対してだれが責任を負いますか。その使用人を使つている社長が責任を負われることは当然であろうと思う。内部に対する責任は実際の記載をした人にあるかもしれぬが、およそ対外的な責任はその主幹者にあり社長にあるのが当然なので、初めからうそと思つて帳面を取扱うことが間違いであることはわかつている。しかしそういう間違いを起させないように監督し処理する責任は一体だれにあるか、それをお聽きしているわけです。
  110. 苫米地義三

    苫米地證人 使つている者が社長であつても、もし万一そこに間違いがあつたとすれば、間違いの事実の事柄によつて判断さるべきものと私は思います。
  111. 石田博英

    ○石田(博)委員 そうすると、この政令にまたもどるのでありますが、あなたのおつしやるように、帳簿記載されていることは事実である、正確なものであるという判定の上に立つて虚僞であつた場合には——これは間違いの事柄ではない、みな共通のことで、しかもほとんど單一の條件の上に生じていることなんですが、その場合においてはこれは帳簿記載した者の責任ですか。それを監督する者の責任ですか。この政令に基いて十年以下の懲役あるいは七万五千円の罰金を負わなければならぬのはだれか。それをお答え願いたい。
  112. 苫米地義三

    苫米地證人 私は帳面にあるものは正しいとしてそのままやつているので、あまり法律なつき詰めた考えをもつてつたのではありませんから、これは普通の常識によつてつているのです。
  113. 石田博英

    ○石田(博)委員 常識によつて扱われない。法律でちやんときめてある。もし実際問題が起れば、主幹者は十年以下の懲役に行かなければならぬ。その十年以下の懲役を負わなければならぬ者は、帳面を書いた者か、あるいはその監督の立場にある者か、それを聽いているのです。
  114. 苫米地義三

    苫米地證人 私どもは帳面は正しいと思うし、またやつている人も間違いなくやつてくれているという基礎の上に立つて答弁しているわけです。
  115. 石田博英

    ○石田(博)委員 間違いを生じた場合、政令によつて懲役に行かなければならぬ者はだれですか。
  116. 苫米地義三

    苫米地證人 そういう仮定のもとに立つての御答弁は、ちよつと控えたいと思います。
  117. 石田博英

    ○石田(博)委員 現実に問題になつてきている。われわれの党では幹事長責任を負う建前になつているが、民主党では、だれが懲役に行く責任を負うか、それをお伺いいたしたい。
  118. 苫米地義三

    苫米地證人 それは法律論が起つてから、実際の事実によつて解決すべきものだと思います。実際の問題が起つたときでなければ、責任者はつきりわからないと思います。これ以上私は御答弁できません。
  119. 石田博英

    ○石田(博)委員 実際問題として現在問題が起つている。苫米氏の答弁と届と明らかに食い違つている。よしんばそういうことがなくても、これからあなたの党で献金の届出をされるはずだ。その場合の建前は、だれがその責任を負われるかということを聽いている。私どもの党では幹事長責任を負うことになつている。おそらく社会党では書記長が責任を負われることになつているでしよう。民主党ではだれが責任を負われる立場にあるのか、それをお伺いしたい。その建前はそのときどきでなければわからないというような責任所在を曖昧にしておいては、この法律の精神は守れません。
  120. 苫米地義三

    苫米地證人 私の言うのは、あなたが法律のことを非常に強くおつしやるからそう言うので、普通の場合の対外的の責任は、それはその党の総裁なり幹事長なり、おのおのその立場において責任を負うのです。ただ法律上犯罪が起つた場合にどうかというような話がありますが、それは犯罪の事実によつてきめらるべきものだと思います。
  121. 石田博英

    ○石田(博)委員 ほかの場合はあるいは総裁が負われる場合もあるでしよう。しかしこの政令に規定せられてある場合は、責任は総裁が負うのですか、幹事長が負うのですか、それを明らかにしてもらいたい。
  122. 苫米地義三

    苫米地證人 一應届出主幹者届け出るのです。もしその届出に間違いがあれば、主幹者という者は、それに対する責任を負う形になるだろうと思うのです。しかし実質的にはその場合には幹事長もおつたし、その他の幹部もいるのですから、それはそのときの幹事長なり、その他の関係者に聽いてもらわねばわからないと言つている。実際犯罪が起つたときにだれが負うかということを追及するから、それは犯罪の事実によらなければわからぬ、こう言つている。
  123. 石田博英

    ○石田(博)委員 おかしなことを承るもので、法律に規定せられている場合は、犯罪が起つた場合を仮定して罰則をつくつている。その犯罪を犯した場合の責任者を明確にするために、あるいはこれに準ずる主幹者と書いてある。その問題責任者を明らかにしないで、責任所在を不明確にして——あなたもおそらくこの政令を制定せられるときには、枢機に参画しておられたと思う。ぼくはお答えをこれ以上承ろうとは思わぬが、ただほとほとあきれざるを得ない。
  124. 中野四郎

    中野(四)委員 もう少し補足的に伺つておきたい。今の苫米地さんの話によりますと、大体前の帳簿を基礎にしておられるようです。從つて引継がれた幹事長としては、前帳簿を基礎にして、一應信用して届けを出したというのは当然です。しかしながら私がここで割り切れぬものは、引継当時のもとの帳簿があるはずだと思う。少くとも元帳がなくちやならぬ。その帳簿から引継いであなたが届け出た、その前帳簿が現在あなたの手もと、あるいは民主党にありますか。あればそれをこの委員会に出してもらうことができますか。
  125. 苫米地義三

    苫米地證人 帳簿はあるはずです。ただその帳簿は今どこか檢察廳の方へ持つてつておるというふうにも聞いておりますから、すぐここへ出せるかどうかわかりません。
  126. 中野四郎

    中野(四)委員 後日でいいのです。なぜ私がそれをお問いしたかというと、ここに元幹事長田中萬逸君より答弁書が出ております。その後の民主党のいわゆる書類帳簿等によりますると、ちよつと今あなたが前の帳簿を基礎にして出したということに疑義を生じますので伺つたわけであります。その書類を後日出していただきたい。  第二は届出責任者——今石田君とあなたとの渡り合いを聽いておつたのですが、これは少し仮定論でむりだと思うのですが、私の問うのは仮定論ではない。現実論として伺いたい。届出責任者が現在主幹者となつておりますが、それは齋藤さんが主幹者でも、幹事長でもだれでも届け出ればよろしいのです。法律で規定されたところで結構ですが、ただこの場合、齋藤隆夫さんが主幹者承諾しておらぬということをこの委員会陳述しておるわけです。ところがあなたの先ほどの証言を聽いていると、進歩党以來慣例によつて、党の最高幹部である齋藤さんをこの主幹者として届出をしたものであろう、私は直接交渉しておらぬからわからぬ、こうあなたは言つておられる。すなわちあなたは今齋藤は確かに承諾したという根拠は何ももつておられぬわけです。從つてその観点からいけば、齋藤さんが承諾していないという場合も起り得ますね。またあるいは齋藤さんが僞証しておるかもしれない。あれだけ年をとつているから、ひよつとして忘れられているかもしれませんが、それは後刻の問題として、一應この委員会が取扱つた過程から申しますれば、とにもかくにも私はさような承諾をした覚えはない、もとより印鑑は私の手もとにあるもの以外を使つた覚えはないということを明確に言われた限りにおきましては、もしそういう場合が生じてきますと、今度は届出当時にこの虚僞届出をした者は何人なりや、あるいは眞実に届出したにもかかわらず、これをことさらに虚僞届出なりとして、ここで証言した者があるという結果になりますれば、前申し上げたような幣原さんにしても、田中さんにしても、あるいは齋藤さんにまで及ぶかもしれませんが、それぞれ処置を受けなければならぬ。これはしつこく伺うわけですが、國会の権威から申しましても、後來國会証人が僞証のいまわしき罪名によつて司法当局の手を煩わしております。このことは私は委員会の空氣がもたらすものだと思つて、再三あなたとの放送討論等で、この点はお話もいたしましたが、少くともここの証人は民事訴訟法とか、刑事訴訟法の証人と違つて、純然たる証人の場合もありますけれども、往々にして証人即当事者という面があるために、一つはここで多勢の同僚議員の中で、つい政治的なみえと言つてはおかしいが、何とない態度が、強く意思表示をしたいというような傾向の結果、いろいろ僞証等が起ることはあなたの先刻御承知の通りなんです。ただ問題は、私は齋藤さんが承諾しないという場合になりますと、残念ながら届出当時の幹事長がこの責任を負わなければならぬと思う。ただ齋藤さんが忘れておつて主幹者であるということを思い出すならば、これは齋藤さんの方の責任で、苫米地さんの責任にはならぬが、あなたはどうお思いになりますか。齋藤さんは事実上主幹者だが、届出責任を負えないということになれば、勢いのいたすところこの届出の当時の幹事長であるあなたは、法律的な責任はともかくも、政治的な責任を負わなければならぬと思いますが、あなたはどうお考えになりますか、この点をお伺いします。
  127. 苫米地義三

    苫米地證人 政党の中のお互いはよく御承知のように、同志の寄り合いですから、できるだけ長老を尊重して円満にやつていこうということは、これは法律形式以外にそういうことを言つておるわけであります。そこで民主党の創立の長老者でもあるし、前からのいきさつもありますから、これはこのまま好意的に運ばれたと思います。その間においては一つも悪意はないと思う。ただ私の届出の場合にも齋藤さんの名前を使つておりますが、その前にもことごとく齋藤さんの名前を使つて出ているんです。その出ているのが全然知らなかつたというふうになりますと、一番最初からのことが知らないということになります。しかしこれもお互いに察知することができるように、長老という昇において、だれかに任すということもあり得ることですから、その眞相を確かめるためには、その当時の幹事長なり、あるいはそれに匹敵するような方をお尋ねになれば、眞相はわかると思うのであります。
  128. 中野四郎

    中野(四)委員 私の伺つた最後の点は、法律的な解釈はとにかく、政治的な責任は負うべきだと思うが、どうだという点に触れておつたのだが、お答えがなかつたのであります。この点をまず明確にしておいていただかなければならないと思う。  それから念のために申し上げておかなければならぬことは、齋藤隆夫さんが進歩党当時と民主党当時は区別をしております。從つて民主党の結成以外において私は主幹者承諾した覚えはないということを明確にしております。だから進歩党から引続いての慣例でなくして、本人も明確にしておられるのでありますが、あなたのいわゆる責任は、法律的な責任は裁判所できめましよう、またこの委員会においても相当調査の結果、判定を委員長報告として、國会報告することもまたあると思いますが、あなたが考えられた場合に、齋藤さんが全然承諾しなかつたという面におかれたときには、届出当時の幹事者が責任を負うものだと思うけれども、どうか。法律的にしても、政治的にしてもあなたの見解次第、法律論的にはわからないが、政治的にはなるほどその通りと思われるか。いや、そうではない、それもすべてあげて民主党出発当時の幹事長が負うべきであると思われるかどうか。こういう点をお伺いしたい。
  129. 苫米地義三

    苫米地證人 これは歴代の幹事長——私は一番最近の幹事長であつたのですが、その前の幹事長時代は全部齋藤さんの名前になつているので、それを全部知らなかつたということになると……。その点は疑問をもたずにやつているのですから、まあ齋藤さんもそういうことは御了承があつたと思うし、また事務の方でも連絡をとつてつたのではないかという氣持をもつているのですが、これは私はまだ調べておりませんからわかりませんが、私の氣持は、少くとも事務当局を信用して、そういう点についてはしかるべく連絡があつたと、こう私は考えておつたのであります。
  130. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、齋藤氏を主幹者として取扱つた他の何かこれを裏書きする事件がありましようか。すなわち届出のみの主幹者としてでなく、党の主幹者として取扱つた何か別な例がありますか。これを伺つておけば参考になると思います。齋藤さんが、いや主幹者としての覚えがないと言つても、事実こういう面においてお前はうそを言つているじやないかということを、はつきり裏づけができる。そういう面において苫米地さんの側から明確な事例があつたら出していただきたい。
  131. 苫米地義三

    苫米地證人 寄附金に関する限りは全部齋藤さんが主幹者届出をしておりますから、その点だけは常に齋藤さんの名前で出ていると思います。その他のものについてもあるかないか、私は承知しておりません。
  132. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、届出だけが主幹者であつて、他に主幹者としての取扱いをした事例はないというふうにお答えでしたから、從つて齋藤さんの証言と今日の苫米地さんの証言とを照り合わせて、本委員会の結局判定に基く以外には途がないと私は思うのであります。  さらにもう一点だけ伺つておきたいことは、ここに田中さんの書類によりますと、引継ぎ当時、金がいくらあつたかということをば、次の幹事長に全部書類によつて出している慣例民主党にはあるようであります。特に党には会計監査というものがあつて、引継ぎ当時のすべての書類に対して、これを承認しているようであります。田中さんの場合に会計監督の任にあつた者は星一君、現参議院議員大島定吉君、あるいは舟崎由之君、この三君が監査しておられるようでありますが、あなたが幹事長になられますときに、前幹事長から引継がれるときも同等な行爲をされたりや。また苫米地さんが次の幹事長に讓る場合においても、同等なる行爲を行つてこられたかどうか。この点を伺つておきたいと思います。
  133. 苫米地義三

    苫米地證人 私が引継ぎをしましたときには、書類をもつて形式的な引継ぎをしておりません。大体事務当局を信用してそのままやつているので、会計監督は継続してやつておりますからそれを信用して、そう形式つた引継ぎはしておりません。
  134. 高橋英吉

    高橋(英)委員 さらに一点私も伺つておきたい。今の届出責任者問題になりますと、法律的に二つの場合があると思う。これが石田君と苫米地さんとの間の妙な問答になつたのだと思います。もし犯罪を犯す意思がなくても、責任を負わされるという政令趣旨であつたならば、むろんその幹事長もしくは党の主幹者は、あの罰則を科せられることは間違いないと思うのですが、もし犯罪を犯す意思があつた、すなわち悪意があつたということが條件だとすると、ここに証人が言われたように、それは事務長を信用しておつたから、帳簿が正確だと思つたからというようなことで、もし逃げられるようなことになつたら、この政令趣旨はほとんど達成せられないということになる。だれも事務長任せであり、会計主任任せであるから、自分は詳しいことは知らなかつた、実際の実務に当らなかつたということになれば、この政令趣旨は全然達成できないことになる。党首脳部である幹事長責任を負うという、この政令の重大なる趣旨に反することになつてくるのであります。そういうことで済むと思われているかどうか。そういうことでこの政令趣旨に從つた行動を、幹事長としてとられたと思われるかどうか。この点について御答弁願いたい。
  135. 苫米地義三

    苫米地證人 私の届ける前に、寄附があつたたびに届けておる。それを復写して出したにすぎないので、その眞実はその前に届けた者に重点があると思うのであります。私はただ再度届出なければならぬから、それを集計して出したのでありまして、その前のものは、前に届けを出した者の責任になると思います。
  136. 高橋英吉

    高橋(英)委員 取扱い責任ではなくして、届出責任政令には規定してあるのでありますから、届出の際において初めてその責任を生ずるのです。だからその届出以前においてだれがその金の授受をしたか、どういう取扱いをしたかということは第二の問題になつてくる、その眞実を確かめる責任届出責任者にあるのであります。それは單に帳簿に書いてあるから正確であつたと思うとか、事務長がこう言つたから正確だというだけでそれを信じたから、そういう届出をした、しかもそれは虚僞届出であつたというような場合において、その首脳者が責任を負わないことになつたら、政令趣旨というものは一つも貫徹できない。すべてが身替りによつてその責任が負わされるのであつて、全然政令趣旨と相反するところの政治現象が起ると思うのですが、それに対してあなたの御見解では、それでいいと思つているかどうか。届出責任者が過去においてだれがどう取扱つてつても、それを眞実なものとして改めて届出なければならない、届出責任者形式上の責任者ではない、眞実を届出なければならない。その責任者が、單にだれそれがそう言つたからそれを信じたとか、その人物を信じたからそうだと思つたというふうなことでは、政令趣旨は絶対に貫徹できない。すべてそういうことは事務長なり会計主任が責任を負えば事足りるということになつて、政界の淨化に資することには決してならないと思うのですが、その点に対する御見解はいかがですか。
  137. 苫米地義三

    苫米地證人 届出帳面だけを信じて、私の手において初めて届けたのではないのです。その前に寄附があつて届けているのです。それでありますから、そのときに届けた人は、これは眞実を届けているに相違ないので、むろん責任もとるでしよう。しかし私の場合は、そういうものが帳面に載つており、帳面とそういう届出の証拠書類によつて出した、こういうことでありますから、私がただもらつて帳面をつけて届けを出したというのとは、ちよつと違うと思います。
  138. 高橋英吉

    高橋(英)委員 それは前に届出した人に責任がある場合には、その人の責任を問わなければならないのです。單に届出責任者としての責任ばかりでなく、その事情を知つて特に届出をせられるのを默過した場合、すなわち実際虚僞届出をしたということを知つている人が、それを是正しなかつた場合には、共犯者としてあるいはその人は処罰されるかもしれないが、これは別の問題ですけれども、党の届出責任者として、その届出に対して正確なる、眞実に合するところの届出をしなければならない義務があるにもかかわらず、それを單なる形式的な調査によつて正確であつたと称する、それはあなたの場合は善意であつたかもしれない、眞にそういうふうに信じられたかもしれないけれども、今後そういうふうで実際に虚僞だということを知つておりながら、しかも会計の主任なり事務長責任をなすりつけて、自分形式的な調査しかしなかつたから、自分は眞実を知らなかつたから自分には責任がないということになれば、届出責任者に課したところのあの罰則の趣旨は貫徹できないのであります。そういうことではいけないじやないかと私はお尋ねするのですが「卒直に、あなたの法律上の責任云々じやなしに、もし手落があつたとするならば、あなたの調査が不確かであつて、しかもここに虚僞の事実が発見されたということになれば、自分の調査においてそれは少しく手落があつたとかなかつたとかいうふうなことのお氣持がどうであるかということをお聽きしたい。すなわち原則的にもつと嚴重に調査すべきものであつたかどうかということ、嚴重に調査すべきであつたということになれば、ただちに嚴重に調査すればわかる、齋藤さんに聽き、幣原さんに聽き、田中さんに聽けば、そういう寄附をしたことはない、そういう名前自分届出をすることを承認したことはないということがただちにわかる。そういう調査すらもしなかつたということは、その政令責任者として手落があつたのではないかどういうかということに対するあなたお考えをお聽きしたい。
  139. 苫米地義三

    苫米地證人 私はそういう疑いをもつて頼んだのではないので、初めから同志の信用でつながつておるわけでありますから、從つてこの届出とか、寄附あるいは帳面に記入してあることは、すべて信用の上に立つておるわけであります。その点は疑問をもちませんでした。
  140. 高橋英吉

    高橋(英)委員 そうすれば、將來事務長、会計主任が責任を負えば全然党の幹部は責任を負わないで済むという弊害が起るとお考えになりませんか。
  141. 苫米地義三

    苫米地證人 その点は事実問題になると思います。
  142. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私念のためにもう一点お聽きしておきたい。先ほどから主幹者問題になつてつたが、私は主幹者ということは石田君の言つた通りだと思います。証人はそう考えてはおらぬと言うから、仕方がないが、しからば幹事長でない主幹者となればだれか、その点をお尋ねしたい。
  143. 苫米地義三

    苫米地證人 届出をするのだから主幹者としての名前を官廳に届けておる。それが主幹者です。
  144. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言う趣旨は、実際問題です。事務をやつたら、主幹をしておらぬでも届出さえあれば主幹者ですか、そうではないではなでしよう。実際党務を主幹しておる者、それは当然そうだと思います。
  145. 苫米地義三

    苫米地證人 その場合の主幹者というものは、一つ主幹者届出をする、そういう形において今言つたので、党の運営とか何とかいうことになると、おのずから総裁とか幹事長とか、総務会長というようなものが、それぞれの運営をするのでありますから、それをこの場で主幹者といへば、それは別問題だと思います。
  146. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうもあなたに似合わぬお答えだと思います。そうすれば全然党務に関係しない会計とか、書記を主幹者として届ければそれが主幹者となりますか、あなたの言われる主幹者というものは党務を主幹しておいでにならぬのではありせんか。
  147. 苫米地義三

    苫米地證人 それは実際問題として、何でもよいからというのではなく、齋藤隆夫氏は民主党における最高地位をもつておるので、主幹者という届出をしておる。しれはだれでもよいというわけにならぬかもしれませんが、しかし届出さえすればその人がつまり公けの主幹者である。
  148. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は齋藤さんがどうこうということを聽いておるのではない。あなたに聽くのは、幹事長以外に主幹者があるというから、それは一体党のどういう地位の人かということを聽いておる。われわれは幹事長だと思つておる。しかしあなたはそうでないと言われるから、しからば幹事長以外の主幹者とは民主党においてはどういう人を指してあなたは言うのか、それを聽いておる。
  149. 苫米地義三

    苫米地證人 私はきめようだと思います。幹事長の仕事があり、総務会長は総務会の仕事がある。その党のおのおのの機構によつてきめるのでと思います。主幹者という言葉はどういう範囲を言うかということは、これは抽象的な言葉だと思います。
  150. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 しからばだれにきまつておりましたか。もつと言うと、届出をするときの昭和二十三年一月当時は実際において幹事長以外に主幹者たるものはだれにきまつておりましたか。
  151. 苫米地義三

    苫米地證人 きまつたといつても、役所に対しては齋藤隆夫氏を主幹者と届けてあるのです。その変更をしない限り齋藤氏が主幹者であつた。その後変りまして幹事長たる私が主幹者なつた。ただそれは変更の時期がありますけれども、変つたのです。
  152. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも私の言うことについてあなたの主観がはいつておる。私はそういうことを聽いておるのではないのです。何遍も同じことを申しますが、われわれは政令の求むる主幹者とは幹事長だと心得ておりますが、あなたはそれ以外だと言われる。しからば民主党において昭和二十三年一月当時幹事長以外に主幹者はだれでありましたか、こう聽いておるのです。主幹者とは党務を主幹するものとわれわれは考えますので、聽いておるのです。
  153. 苫米地義三

    苫米地證人 政令にある主幹者というのは幹事長またはこれに準ずる主幹者というのでしよう。その場合に民主党は、あの当時においては主幹者として齋藤隆夫氏を届けておつた。こういうことなんです。幹事長は別個にあつたことはあつた
  154. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたのお言葉をこう聽いてよろしいですか。それでは実際において党務を主幹しておる以上は主幹者だ、こう聽いてよろしゆうございますか。
  155. 苫米地義三

    苫米地證人 それは、届出に対して、党を代表してその主幹者として届出るのであるから、その部面のことは主幹者である。しかしそれから後に幹事長主幹者を変えたのです。だか私は別にこれは牴触しているのでもないと思います。
  156. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は牴触しておるとかいうことは第二に言うことで、私は齋藤さんがどうといつておるのではないのです。どうもあなたはそこえもつていかれる。われわれの考えは、主幹者とは党務を主幹する者と考える。そうすれば党務を主幹せぬ主幹者というものはないと思う。そこで幹事長以外に党務を主幹した者がありますか、これだけ聽いておるのです。
  157. 苫米地義三

    苫米地證人 それは党務の問題は、党務の主幹主幹という言葉が当るかどうかしらぬけれども、幹事長がこれをやつておるが、しかしながら届出る方の問題はこれは主幹者として正式に届出てある者がそれに当る。
  158. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではあらためて聽きます。齋藤さんは届出主幹者であるということを民主党でいつ届出になりましたか。
  159. 苫米地義三

    苫米地證人 それはよほど前の届出です。
  160. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 民主党の最初ですか。
  161. 苫米地義三

    苫米地證人 最初から届出てあります。
  162. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は政令に基く主幹者の届けなどというものは事実上においても法律上においてもありませんと心得ております。しかし民主党でそういうものを心得てやられたというのなら、民主党設立以後何月幾日であつたかを明白にしていただきたい。
  163. 苫米地義三

    苫米地證人 それについては私今わかりませんが、調べてみます。ここに四月の五日に届けてあります寄附金問題、これがやはり右主幹者齋藤隆夫として届出てあります。
  164. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それは私の言う意味と違います。名前主幹者として書いて出されたということと、あなた方がこの人が主幹者なつたと言つて届けられることとは違います。そこであなたは届出したと言われるから、齋藤民主党主幹者とするという届出があつたと言うならそれを聽かせてもらいたい。私はさようなものがあるはずはないと思う。政令によつて届出るということは、この政令ができてから後に起つたことなのですから。
  165. 苫米地義三

    苫米地證人 その点はたしかに官廳に対して、主幹者として届出をする、ここにこう書いてあります。結社届、昭和二十一年勅令第百一号第五條第二項の規定により別紙の通り届出候、昭和二十二年三月三十日、團体の名称は民主党、右主幹者齋藤隆夫。これがその続いた問題です。
  166. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それは、それ以上私はあなたと議論したつてしようがない。主幹者にあらざる者を主幹者と書いて出したからといつて主幹者になるわけもないし、それを書いたから主幹者なりとして民主党から届出したものとはわれわれは認められない。われわれだけではない、何人も認めることはできません。あなたはそうおつしやるなら、その点はやめます。しかし、さつきからずいぶん議論になりました点で、私ももう一遍念のために聽きます。ほかのことは私は聽きません。あなたは齋藤さんに何の連絡もないとおつしやつたが、齋藤さんはこの届出内容は知つておりますかどうですか。この点です。
  167. 苫米地義三

    苫米地證人 それは、私は直接連絡しませんから、事務長に聽かなければわかりません。さつきから再三申し上げた通りであります。
  168. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、さつきから聽いたのは、齋藤さんの名前を使つて出すということは連絡はとつてあるだろうということを私は聽いてあるのだが、内容齋藤さんに知らしめてあるかどうかということはまだ聽かぬです。その点も事務長がやつておるというのですか。
  169. 苫米地義三

    苫米地證人 そうです。それはタイプに打つておるのですから、そのタイプをごらんに入れたかどうかわかりませんが、その点は、從來慣例もあるから、事務長がしかるべくやつていいだろう。こう考えたのです。
  170. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは先ほどからずいぶん重大な問題だといつて問うたのですが、これは偉大なる責任を負う問題なんですから。本人が知らぬものを名前を勝手に届けて出したということは大問題になる。私は知つておらなければならぬはずのものだと思うが、あなたはそれを齋藤さんに念を押さずに出されたとすればやむを得ませんが、事務長齋藤さんに金を押しておるものと信じておいでになりますね。
  171. 苫米地義三

    苫米地證人 それは私は大抵そうやつておるだろうと思いますけれども、そこまでは別に私は確かめなかつた。これは今までの慣例で永い間やつておるのですから、そうきわ立つて念を押したわけじやなかつた
  172. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは先ほどからみな言うのですが、問題が起らなければいいのですが、問題が起りますと、齋藤さんが全然知らぬものを齋藤さんの名前でやつたということになると、齋藤さんにとつてはとんでもない迷惑だ。しかして届出をしたものは齋藤さんの名前を使つて出したというと虚僞の届けになる。よもや齋藤さんの全然知らぬものを齋藤さんの名前を使つて出したということはなかろうと思いますから、あなたがおやりにならなかつたとすれば、だれがおやりになられたか。それとも、必ずやつておると思つて仰せになりますか。その点どうですか。
  173. 苫米地義三

    苫米地證人 まあ今までの慣例によつて連絡をとつてくれたんだろうと私は想像しておるのであります。
  174. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかに御質問ございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  175. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは、苫米地さん、さつき伺いました民主党備付の帳簿は檢察廳へ行つておるというようなお話でございますけれども、これを一應御提出なさるようにしていただきます。諸君それじや念のために正式に民主党に対して帳簿の取寄せを求めるという決定をしておきたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではさよう決定いたします。それでは御苦労さまでした。     —————————————
  177. 武藤運十郎

    武藤委員長 たいへんお待たせしました長谷川さんですね。
  178. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい。
  179. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは伺いますが、飯村代護士を御存じですか。
  180. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい知つております。
  181. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう関係で御存じですか。
  182. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 飯村代護士と知り合いました糸口は、昭和二十年に私が北京から引揚げます時に、茨城縣の引揚團体千三百七十三名、この連中が引揚げる費用がありませんので引揚げることができなかつた窮状を述べられました。私二十年近く外地におりましたので、自分といたしましては汗の結晶である五十万円をこの引揚團体に寄附いたしまして、無事に帰つて來たのであります。その節團長をしておりました西茨城の根元実という人から感謝の招待を受けまして、その根元氏の家がたまたま飯村代護士の選挙事務所であつた。さようなことで紹介を受けて飯村氏と知り合つた次第であります。
  183. 武藤運十郎

    武藤委員長 飯村氏にあなたは金をお渡しになつたことがありますか。
  184. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい、あります。
  185. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはどういう理由で、いくら、いつお渡しになつたものか話をして下してい。
  186. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 先ほど申し上げたような事情をもちまして飯村氏と知り合いまして、その後二、三度お会いしたこともございます。昨年の十月半ばと思いますが、突然私の神田の家へ見えまして、その時私不在でございましたので、その翌る日飯村さんの仮事務所になつておりました京橋銀座の池田産業という所で飯村さんのお会いしたのであります。その時の飯村さんのお話でございましたが、実は君には縣の引揚げの時も世話になつているし、また僕の選挙の時もいろいろとお骨折り願つた。ついては今度恩返しといつては何だけれども、君の引揚者としての更生資金もこれによつて出ると思うから……。実はこの仕事によつて百万円の選挙費用といいますか、政治資金がこちらで必要なのだ。この仕事というのは自分と油の方の業界の第一人者であり、党の重鎭である某氏がはいつておられるので、協力してくれることになつておるから、ぜひやつてもらいたい、ついては五十万円この仕事の前渡金としてぼくに渡してもらたいたい、仕事の内容は英國大使館からペニシリンの試驗材料として日本政府の担当者である農林省へ魚油三百本の要求書を出す、農林省は帝國油糧へ指令して、それからその輸送切符というものが出るのだということで、その三百本の品物は北海道にある。北海道からこちらへ持つてきて、それを賣買すれば、それは公定でとれるから相当の開きがある。その開きの中から百万円政治資金としてとつてもらいたい。このようなお話でございましたので、私はあまりこの事業がわかりませんので、告訴人であるところの奈良教一氏と相談いたしまして、両方協力いたしまして、この五十万円をまず前渡金としてお渡しすることに約束したのであります。ところが長年——奈良君も三十数年北京におりましたし、私も二十年近くでございましたので、日本に帰りましてからも連絡も少なうございますし、なかなか思うようにこの五十万円が手にはいりません。今年の二月——たしか十七、八日ごろだつたと思いましたが、私の知つている北京時代の三井におられる友だちから、その先を通じて五十万円、今年になつてやつと渡すことができたのであります。その時は実際感激して飯村氏を信じておりましたので、また同時にその後ろにおられるいわゆる重鎭、私どもの考えといたしまして、飯村さんは口には出して言われませんでしたけれども、実は苫米地先生ではないかと想像しておつたのであります。さようなわけでやつと五十万円を飯村氏に二月十八日に渡すことができた。そうしまして大体金を受取つてから一週間以後には必ず一件書類を君に渡すことができるから、そうしたならばすぐ北海道に行くような仕度をしておいてくれないかということでありましたが、ときたまたま政府が変りますときで、選挙か何かのことで二、三日遲れたように記憶しております。そうして十日に催促いたしましたら、もう二、三日、二、三日というのが、その後とうとう誠意もなく、また議会へもお見えにならず、私ども先方から矢のやうな催促を受けまして、飯村さんをあちらこちらと探しましたけれども、自宅へも寄りつかず、議員であるにもかかわらず議会にも出ておらない。ところが四月になりましてから、新聞で茨城縣の晴嵐荘の事件とかいうのがございまして、それに松谷さんと一緒に行かれるということを、ちよつと新聞の記事で見ましたので、今まで菱しあぐんでおりましたので、当日私とその友達の仲氏と茨城縣の現地まで参りましたところ、飯村さんに会いましたら、ここは仕事で來たのであるから、水戸へ行つて自分の定宿で、カバンも外套もみな置いてあるので、必ずそこへ帰るから待つていてくれということで、水戸へ参りましたら、とうとう五日間も姿が見えない。遂にそのまま帰りましたところ、四月二十日飯村さんから電報がまいりまして、必ず築地の会社へ二十日に日に行くから、そのときに金を持つて行く、こういう電報でございました。その間民主党の栗田さん、長谷川さんのお話も聽きまして、自分たちも詐取されたということが大体わかつたのであります。しかし当人から電報で四月二十日に金を持つて行くと言いますから、一應その二十日を待つたのでありまして、その間奥さんにもお会いいたしまして御主人の所在、居住等を追及いたしましたが、おわかりになりませんし、債鬼という鬼に責められておりましても、奥さんの顔を見ると鬼にもなりきれずにいたのであります。二十日に日に今まで何遍が電報がきましても一遍も実行したことがないにもかかわらず、その日は來てくれました。ところが金は一銭も持つてきておりません。実は総裁にお願いしたけれども、來月にならなくてはいけないといつたふうなこともその間話がありました。二十一日に全國油糧協議会の專務理事をしておられます武田さんという方が飯村さんと一緒に見えまして、飯村さんだけの言訳ではもう信用なさらないでしようから、実は今日はぼくが一緒に來たのですけれども、金は幾分か入れることができるから、明日高島屋の八階に來てくれ、こういうことでありました。その翌日高島屋でお待ちしておりましたら、なるほど目の前のテーブルに二十万円の金があつたのであります。ところが肝腎の飯村さんが見えません。お畫まで待ちましたが來ませんので、その金を尋ねて見ますと帝國油糧の西川副総裁を通じて苫米地さんの方から出していただいた、かように承りました。しかし、とうとうお畫まで待つても飯村先生が見えませんので、その日は私ども事務所に引揚げましたら、その日の夕方五時ごろ、今の全油連の武田さんが見えまして、もう一遍明日九時までに高島屋の八階に出てくれ、全油連に出てくれということでございましたので、私は奈良君と二人で参りましたところ、実はこの二十万円の金についてだけれども、とにかく苫米地さんの御子息に会つてくれないか、銀座のこうこういう所に事務所があるから、そこで一切連絡してあるからお話を願いたい、かような話でございましたので、その足ですぐ銀座の苫米地さんの御子息の事務所を訪ねまして、御子息にお会いいたしたのであります。そうしてこちらの先方から責められております窮状を申しましたところ、御子息さんの言われますには、あなた方だけの問題だと思つておりましたが、他にもいろいろ相当の額面に達しているのでどうにもいたし方がない。しかし飯村さんとお父さんとの御連絡があるように言われることは非常に御迷惑だ、全然そういうことはない、かように言うておられました。そこで私どもも万やむを得ず告訴をいたさなければならないというようなこともお話申し上げまして、その後正規の手続をいたしまして今日になつた次第でございます。
  187. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体概略は伺いましたが、苫米地さんが業界の有力者で政界の、党の重鎭だというような趣旨お話でしたが、あなたは最初苫米地さんだろうと思つてつたというのは、どういうところから苫米地さんだろうと思つたのですか。
  188. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは昨年の五月か六月時分だと思います。東京に油脂新聞というのがございまして、それに選挙後の各代護士の寫眞と簡單な履歴が載つておりました。それを記憶しておりましたので、油の方の第一人者であり、党の重鎭と言われましたならば、飯村氏も油関係から出たというだけに、私どもは苫米地さんではないかと、ただ想像しておりました。
  189. 武藤運十郎

    武藤委員長 飯村さんから、それは苫米地さんだという話をしたことはなかつたのですか。
  190. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それはありませんでした。
  191. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの方も聽かなかつたのですか。
  192. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 私の方は聽きましたが、飯村さんは、それは言わないでくれ、こう言われましたので、さようなことがあるのかと思いまして、私はさらに追究しませんでした。
  193. 武藤運十郎

    武藤委員長 奈良さんも聽かなかつたのですか。
  194. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい。奈良さんも私と一緒です。
  195. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたが出された金は苫米地さんの方に行つていると思つたのですか。
  196. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 初めにはやはり御関係があるのではないかと思つておりました。
  197. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつまで。
  198. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは詐欺にかかつたということを大体意識する前まででございますから、三月の日にちははつきり記憶しておりませんけれども、中ごろではないかと思います。
  199. 武藤運十郎

    武藤委員長 詐欺にかかつたというふうに思われるようになつたのは、大体告訴するちよつと前ごろでしよう。
  200. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは飯村氏の仮事務所である池田産業で長谷川代護士が見えられての話、またそのときに聽きました栗田さんの被害、そして自分たちの今度のやられた手口、こういうことを聽いて、実は愕然としたのであります。そうしてその後に帝國油糧並びに農業省あたりいろいろと聽いてみますけれども、そういつた事実がないじやないかということがわかつてまいりましたので、詐取されたと氣がついたのです。
  201. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど総裁にも話をしたのだが、もうしばらく待つてくれ、こういうのですか。
  202. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは三月の二十日ごろと思いますが、一遍池田産業で朝からお待ちしていて、やつともう帰ろうと思つておりました夕方の七時ごろです。今新橋駅前にいるということでしたので、至急に私どもは奈良さんと一緒に駅前に参りました。そして今までの飯村さんの不誠意をなじつたところが、飯村さんの言われますには、実は長谷川、栗田両代護士から受取つた金、その品物をある倉庫へ入れておつた。油だそうであります。朝鮮のにせ摘発隊に押えられた。これを荒だてれば両名の名も出、また党の名も出るので必死となつてこれを食い止めてきたのだ。そのために一時自分は自殺しようとも思つた。しかし死んでも整理がつく問題ではないので、そんなことで君たちから頼まれた仕事も今のところは全然可能性がなくなつた、從つて金を返す、ついては翌る日総裁をお訪ねしてお話申し上げますから翌る日もう一遍待つてくれ、こういうお話でございましたので、私どもはその翌日の午後四時ごろまで、前記の池田産業でお待ちしておりました。そこへ見えまして、きよう総裁にお会いしてまいりました。いろいろとお話いたしましたが、三百万円御融資してくださることにはなつたけれども、今すぐというわけにはいかない。しかし君たちの問題は今こうやつて生活に日々追われていることでもあるし、党内問題でなく党外問題であるから何とかしてと言つて、もう一遍これから歎願に行くから今晩は遲くなつて長谷川の家へ行くから待つていてくれ、こう言われましたので、私どもまだその話を信じまして夜分十二時半、一時まで電氣をつけて待つておりましたけれども、とうとうその日に見えなかつた。こういつたような事実もあつたのであります。
  203. 武藤運十郎

    武藤委員長 総裁というのは帝國油糧の総裁ですか。
  204. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 そうではありません。芦田総裁です。
  205. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんの息子さんに会つてくれというのは一体どういう目的で話が出たのですか。
  206. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは武田と言いました先ほどの全國油糧の專務理事でございますが、この武田さんが苫米地さんの息子さんにお話してあるから息子さんが否認されているから一遍お会いしてよくお話してみたらどうか、こちらから連絡してあるから、こう言われましたのでお伺いしたのです。
  207. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの方は直接苫米地さんとは関係がないのだし、苫米地さんにも金が行つているのだとも思わないのだから、苫米地さんの息子さんのところへ行つて解決するとかしないとかいう話が出るのはおかしいじやないですか。言い出す方もおかしいし、聞いている方もおかしくないですか。
  208. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 私ども告訴する腹が大体きまつておりましたので、しかし告訴する前にはやはり前記飯村さんから暗示せられたように苫米地さんと関係はないとあとでわかつたのですが、そのときはとにかく一應このお話はしなくてはいけない、こう思つてつた矢先でございましたので、そのことをお会いしたときに申し上げたのであります。
  209. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしたらお父さんは関係はないのだ、そういう話なのですね。そのほかにも被害者がある……。
  210. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 さようでございます。
  211. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは有力者というのは苫米地さんだと思つて信用して金を出したという話もしたのですか。
  212. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 話しました。
  213. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかの被害者という諸君もやはり苫米地さんのところへ來たのですか。
  214. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 ほかの被害者と言いますと……。
  215. 武藤運十郎

    武藤委員長 飯村さんから詐欺を受けたものがあるという……。
  216. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 存じません。
  217. 武藤運十郎

    武藤委員長 君らだけだと思つたら、ほかにもあるというのでしよう。
  218. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは苫米地さんの御子息の耳にはいつてつたようであります。
  219. 武藤運十郎

    武藤委員長 実際その金はどうしたのでしようか。あなたはどう思う。
  220. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 私どもはまるきり想像がつきません。
  221. 武藤運十郎

    武藤委員長 民主党なり苫米地さんなりに献金でもなさつたような形跡はないのですか。
  222. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 御当人からもそういう話を聽いたこともありませんし、そういうことはないではないかと思います。
  223. 武藤運十郎

    武藤委員長 これから奈良さんからも話を伺わなければならないが、奈良さんのお話も大体あなたから伺つたお話と同じですね。
  224. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 同じでございます。
  225. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねになることはありますか。
  226. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今お話がありましたが、あなた方は苫米地さんの息子さんに会おうと思つてつただろうが、武田氏があなた方に会えというたのはどういうわけだつたのです。その点はおわかりにならないですか。あなた方が会わしてくれというたのじやないでしよう。向うからそう言うたんでしよう。高島屋で会つたからと……。
  227. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい。
  228. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはどういうところから出たのですか、その点がわからないのですが。
  229. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それはこうではないかと思うのです。前日飯村氏が見えませんで、その金を受取ることもできなかつたのでありますが、その節長い時間の間に、今度の飯村さんに渡しました五十万円についての先ほど申しましたような意味合を武田氏にお話いたしました。そういうことから武田さんから苫米地さんの御子息に何か話があつたのではないかと思います。苫米地さんが関係しておるように思つてつた、そういうことがあつたかどうかといつたようなことは……。
  230. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そんならその前のことを言いますが、あなたは先ほどこの金が苫米地さんから出たと武田は言つておるとこう言はれましたね。それはどうして苫米地さんがその金を出したか。それをまず先に伺います。
  231. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは苫米地さんから帝國油糧の西川さんへ行つて、そうして西川さんから武田さんへ來た。このように聽いておりましたので、この二十万円の金の意味合はよくわかりませんけれども、事実私が二十万円見ましたことと、それから私どもがその前に木村幹事長さんにお会いしまして、この飯村さんの問題を告訴いたします前に、とにかく國会議員であるのに、私どもやむを得ずこういうことをいたすのですが、何とかしていただけないものでしようかと、実は歎願いまいつたことがあるのです。そのときも幹事長さんは同情はしてくださいましたが、一方的のお話だけではもちろん党としてもどうもしようがないという御返事をいただきました。いよいよ私どもはやむを得ずこれは告訴いたさなければならないというように腹をきめました。苫米地さんが出されました二十万円は、とにかく今考えて見ますと、一應そうすれば私どもが何の仕事も手につかず、毎日々々飯村氏を追かけていて、かわいそうだ。從つてとにかく一時この二十万円を出してやれば一應飯村が出るまで先方が治まるのじやないか、こういう厚い御人情といいますか、そういつたような意味合で、あのときは人を通じて出してくだすつたのではないかと、こうも解釈しております。それ以外のことは私わかりません。
  232. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではあなたはその前に苫米地さんに会つて、そういうことを言つておられたことがありませんか。
  233. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 ありません。
  234. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると苫米地さんはそんなことを考えられるわけがない。
  235. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 御子息さんにはそういうことを話しましたし、そのまた前日武田さんからお話があつたので、私どもがその話をいたしましたらば、御子息さんはそれは父としてたいへんな迷惑だ。全然そういうことは関係はない。父は飯村さんの顔さえも知らないくらいだとはつきり言われました。私もりつばな方である苫米地さんがさようなことはないと、今でも思つております。
  236. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 しからばなおさらわれわれは疑問をもつが、飯村の顔をも知らぬ苫米地氏が、飯村の問題がめんどうになるからといつて二十万円を出すということになると、ますまいふしぎになる。そんな顔も知らぬ者の問題を片づけるために、二十万円を出すほどの慈善家でしようか。どうも合点がいきません。
  237. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 その点は私もよくわかりませんが、苫米地さんの御子息は飯村さんを知つておられるそうでございます。
  238. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはおやじは顔も知らぬというのだから、金なんか出す必要はない。
  239. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 その御感情は私にはわからないのでございます。
  240. 小野孝

    小野委員 ちよつと伺いますが、苫米地さんが出したと傳えられる二十万円を、苫米地さんの御子息さんが出したということを認められておりましたか。
  241. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは武田さんからそういうぐあいに聽きましたので、私は信じております。
  242. 小野孝

    小野委員 苫米地さんとお会いになつたとき、苫米地さんはその話に何もお触れにならなかつたですか。
  243. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 ところが私どもがお会いしたときに、二十万円ではとてももう今日ではだめなのだ。これは利子の出る金を借りておりますので、ねずみ算式に利子が殖えていきますので、出していただけるならば何とかこれだけ出していただきたい。こういうぐあいにお話がありました。
  244. 小野孝

    小野委員 ちよつと私ども常識的な印象のためかもしれませんが、あなた方が來られる前のテーブルにわざわざ二十万円を見せ金的に出しておつたというふうな印象を受けるところから、必ずしもそれはそういう金でなしに、その間何か作意があつての見せ金式のものではなかつたかというような印象を受けるのですが、そういうふうには感じませんでしたか。
  245. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 当時の私としてはそうは感じませんでした。
  246. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  248. 武藤運十郎

    武藤委員長 奈良さんですね。
  249. 奈良教一

    奈良證人 はい。
  250. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体あなたにきよう御出頭願いましたのは、飯村代議士に関することでありまして、内容長谷川氏からただいまいろいろ伺いました。長谷川氏に聽くと大体あなたのお話長谷川氏と変らない趣旨ですね。
  251. 奈良教一

    奈良證人 そうでございます。ほとんど行動を一にしております。現金を渡すとき、ちようど私神戸に用件があつて留守中でございましたが、帰つてまいりまして、その当時の模樣も聽き、また飯村代議士本人にも長谷川氏とともに立つて聽きましたものと同一でございました。
  252. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、金を受取るときに、その話が党の重鎭であつて、業界の有力な人が背後におつて心配をするのだからというときのその人は苫米地さんと、こう思つてつたのですか。
  253. 奈良教一

    奈良證人 そうでございます。
  254. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんだという話はなかつたのですか。
  255. 奈良教一

    奈良證人 ありません。
  256. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなた方が勝手にそう思つてつたのですか。
  257. 奈良教一

    奈良證人 そうでございます。
  258. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういうわけですか。
  259. 奈良教一

    奈良證人 それは党の重鎭であり、業界の権威者であるというふうに言つておられて、名前を聽きましたところがそれは言えないと、今言つたようなわけであります。だから間違いないんだ、こういうふうに言われました。私どももその当時は絶対に信用しておりました。
  260. 武藤運十郎

    武藤委員長 飯村さんを信用しておられたのはそうでしようけれども、苫米地さんだということはどうしておわかりになりましたか。
  261. 奈良教一

    奈良證人 私どもが想像しました原因は、油脂業界の権威者であり、また党の重鎭でもあり、そう言われましたものですから、大体想像しましたところが、苫米地さんではないだろうか、これは私ども二人だけで想像しておつたわけであります。
  262. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんの息子さんにお会いになつたのですね。
  263. 奈良教一

    奈良證人 それはずつと以後であります。
  264. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう目的でお会いになつたのですか。
  265. 奈良教一

    奈良證人 それは高島屋の八階にあります全油連の武田さんという方から、苫米地さんの所に行けばわかるから、こういう話がありまして参りました。
  266. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんの息子さんの所に行けば何かわかる……。
  267. 奈良教一

    奈良證人 大体話がちよつと前にとばしましたが、四月二十三日ころ、全油連の武田さんが飯村代議士とともに、金を自分が二十万円何とかするからという話がありまして、そのとき翌日全油連に來てくれないかと言われたものですから、翌日参りましたら、その日二十万円の金が用意してありました。ところが本人の飯村代議士は來ておりませんでした。本人が來ない前までは——本人が來れば渡してあげるはずだつたが、本人が來ないから、こういう話でありまして私ども帰りました。
  268. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは机の上にのつかつておりましたか。
  269. 奈良教一

    奈良證人 私どもが参りましたときにはのつかつてありました。
  270. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは苫米地さんがお出しになつた、こういうわけですか。
  271. 奈良教一

    奈良證人 いや、その時は何も苫米地さんがお出しになつたという話はありませんでした。
  272. 武藤運十郎

    武藤委員長 あとで苫米地さんが出したのだということがわかつたのですか。
  273. 奈良教一

    奈良證人 それも聞いておりませんでした。
  274. 武藤運十郎

    武藤委員長 今長谷川さんの話によると、それは苫米地さんが出したのだという話だつたのですが、そういうことはなかつたのですか。
  275. 奈良教一

    奈良證人 その日はそういう話はありませんでした。
  276. 武藤運十郎

    武藤委員長 とにかく二十万円だけ心配するからというわけですか。
  277. 奈良教一

    奈良證人 はい。
  278. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんが出したというのはいつ話があつたのですか。
  279. 奈良教一

    奈良證人 それはその日私どもが帰りました後、武田氏が私どものところに訪ねてまいりまして、明朝九時にもう一度來てくれないか、こういうお話つたものでありますから、私ども九時までに全油連に参りました。そうしましたら今苫米地さんの事務所に電話してあるから、そちらに行つてくれ。こういう話でありました。それで私どもはすぐ苫米地さんの事務所に参りました。
  280. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんが金を受取つたわけでもないし、二十万円という金を出すはずはないと思うのだが、非常におかしいではないでしようか。
  281. 奈良教一

    奈良證人 それで苫米地さんの方に参りましても、要領を得ずに帰つてまいりました。
  282. 武藤運十郎

    武藤委員長 もしひよこつと飯村氏がその場に來れば、当然その金はあなたに渡さなければならなかつたわけだから、來ないということが一つの芝居で、何かそれを並べてあなたに見せ金をするというからくりではないか。
  283. 奈良教一

    奈良證人 そのときは別にそういう感じも受けませんでした。
  284. 武藤運十郎

    武藤委員長 今の長谷川さんの話によると、苫米地さんは非常に親切な、人情があつて出してくれたのではないかと思つたというのだが、あなたはどう思いますか。
  285. 奈良教一

    奈良證人 それは帰つたあとで私ども想像しまして、大体前日は二十万円武田氏のテーブルの上に用意してありましたし、飯村代議士が來なかつたから受取れなかつた。ところが明朝九時までに來てもらいたいと言われたものですから、九時までに行けばまたそこで何らか金をもらえるか、それとも何かの話がある、こう思つて参りましたところが、別段話もなく、苫米地さんの方に連絡してあるから——苫米地敏雄さんとか言つておられました。そこへ行つてくれないか。こういう話でありました。
  286. 武藤運十郎

    武藤委員長 苫米地さんの息子さんのところに行つたのも、長谷川さんと一緒に行つたのでしよう。
  287. 奈良教一

    奈良證人 一緒に行きました。行きましたところが、君たちだけの金ではなくて、なおほかにも二、三百万あるらしいじやないか。こうたくさんあつたのではしようがないからというお話でありましたので、私どももそれ以上話をせずに帰つてまいりました。
  288. 武藤運十郎

    武藤委員長 こうたくさんあつてはしかたがないというのは、あなた方の分だけなら都合によつては出してやつてもいいというのですか。
  289. 奈良教一

    奈良證人 そういうふうにもとれますが、それ以上私ともも苫米地敏雄さんと一面識もないし、電話してあるからという話だけで、初めて上つたところが、そういう要領を得ない話だつたものですから……。
  290. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのときに苫米地さんなり苫米地さんの息子さんなりのところに、飯村氏があなた方、その他から受取つた金を、何というか、献金でもしてあるような印象を受けなかつたですか。
  291. 奈良教一

    奈良證人 そういう印象は受けませんでした。
  292. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうもますますわからなくなつてきたが、先ほどの長谷川君の証言では、最初に行つて二十万円出しあつて、この金は苫米地さんから出たのをお前さんに渡すのだが、本人が來ないから渡せぬ。こういう話だつたと聽いたが、それはどうですか。間違いですか。
  293. 奈良教一

    奈良證人 そのときは苫米地さんからという話はなかつたと私は思つております。
  294. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではいつ苫米地さんからという話を聽きましたか。
  295. 奈良教一

    奈良證人 それはただいま申し上げましたように、翌朝九時に全油連の武田氏の事務所へ参りましたときに、話があると思つて行きましたら、実は今銀座のビル——名前は忘れましたが、そこの苫米地敏雄という人の事務所へ電話してあるからそちらへ行つてくれ、こういう話だつたのです。
  296. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この二十万円が苫米地氏から出たというのは、どうしてあなたが聽いて、どうして判断したか。
  297. 奈良教一

    奈良證人 その判断は、前日の二十万円用意してありましたのを見ておりますし、翌日行きましたら、苫米地さんの事務所の方へ行つてくれ、向うへ行つてよく相談してくれ、こういうような話だつたものですから、当然そういうふうに想像したわけです。
  298. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 想像ですか。長谷川君がさつき言つたのとは大分違う。あなたの想像ですか。
  299. 奈良教一

    奈良證人 はい。それとも、前日夕方五時ごろ武田氏が私の方へ訪ねてまいりましたとき、私おりませんで、長谷川氏と話しておりましたから、その際そういう話があつたかどうか知りませんが、私は覚えがありません。
  300. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その後武田に会いましたか。
  301. 奈良教一

    奈良證人 その後会いません。武田氏にもわれわれ直接関係がございません。
  302. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 けれどもあなた二十万円でもとつたらいいので、そのときあなたをだましたのだから、苫米地さんの息子さんのところへ行つて何にもならなかつたら、またもどつて、あの二十万円をくれと言いそうなものじやありませんか。
  303. 奈良教一

    奈良證人 その前日二十万円用意してあるとき、私ども十一時に行つてつておりました。十一時に飯村氏も來るという約束だつたのです。十一時から待つておりましたところが、テーブルに二十万円だけがありまして、本人は三時まで待つてもやつてまいりません。そうして武田氏もわれわれに、非常に待たして済まぬという話でしたし、今まで飯村代議士がわれわれをすつぽ拔かすことはたびたびありましたものですから、またきようも來ないのではないだろうかと思つて、二十万円は飯村代議士が來なければいただけないのでしようかと申しましたら、実は飯村代議士が來た上で目の前で渡したい。じや飯村代議士が家の担保でもとつて渡すのではないでしようかと私どもは想像して、武田さんに尋ねました。そうしますと、武田さんは、実はそうだ、この金は自分が知合いから借りてきた金だ、それには飯村代議士が自分の家であるから、それを担保にするので、その家の担保書類を持つてくることになつている。その書類を持つてきて渡さなくてはならぬ、そういうような話が出ましたものですから。
  304. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さつきの長谷川君の言うことと、あなたの言うことと、全然違う、雲泥の相違がある。
  305. 奈良教一

    奈良證人 その事実は間違いありません。
  306. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 長谷川はさつきは、苫米地さんという人は感心な人で、義侠心で出してくれたと言つた
  307. 奈良教一

    奈良證人 私どもは前後のあれで想像してはおりました。
  308. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 想像じやしようがない。西川という人から出たという話はどうですか。
  309. 奈良教一

    奈良證人 きのうの金は西川氏から出たということが、朝九時に行つたときに、西川さんの名前は聞いておりましたけれども、結局われわれとしていただかなかつたものですから、そのままはつきりした記憶はありません。ただいま私の知つている範囲は今申し上げたようなことです。
  310. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうして苫米地氏から出たと想像しましたか。
  311. 奈良教一

    奈良證人 それは辻に参りましたときに、銀座の苫米地敏雄氏の事務所に行つて相談してくれ、よく話をしてあるから、こういうお話がありましたものですから、それで前述の二十万円と関連して……。
  312. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それを聽いておるのではない、私の聽いているのは、苫米地氏から出たとあなたが想像されたでしよう。縁もゆかりもない人から出すわけがないのだから、どういう縁故で苫米地氏から出すとあなた方がさらに想像するかということですよ。あなた方が苫米地氏から出た金だと想像したというのでしよう。そこで苫米地氏が出すのには何かの関係がなければならぬから、これはどういう関係で苫米地氏から出たものか、そこまでは考えられなかつたのですか。
  313. 奈良教一

    奈良證人 それは私どもが苫米地敏雄氏の事務所に行きまして、私どもが実は飯村代議士から聽いた当時は、こういう問題苫米地さんが関係しておられるのではないか、こういうことは今はつきりしましたけれども、想像しておりました。そういう話をしておりましたところが、いや実は自分のおやじはそんな男じやないというようなお話がありまして、ほかの方からも二、三百万円とつておるというような話があつて、実はそんなにあつたのではしようがない、こういう話があつたものですから、前の二十万円も実はわれわれだけだつたら何とかしてくださつたのではないだろうかというように想像したのです。
  314. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いや、それは私の問うところと違いますが、よろしゆうございます。
  315. 武藤運十郎

    武藤委員長 長谷川さん、あなたに対してお話を伺うことは終つたと思つたのですが、今奈良さんに伺いましたら、少し違うところがあるので、お聽きすることがあるのです。
  316. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私先ほど聽いたことですが、あらためてもう一遍念のために聽いておきます。あなたは先ほど竹田氏に高島屋のビルでお会いになつたときに、その金は苫米地氏から出たので、それは西川氏を通じて持つてきた、こうおつしやいましたが、その点をもう一遍間違いのないところをお聽きしたい。
  317. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 この二十万円の金は苫米地さんの意向で、西川さんを通じて自分の所にきた、かように私は解釈しております。
  318. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 竹田氏からそう聽いたのですか。
  319. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 そう聽きました。
  320. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 間違いないですね。
  321. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 はい。
  322. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで先ほどあなたが言われるように、苫米地さんは感心な人だということですが……。
  323. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは私どもが心の中で想像しておつたということは、たいへんに何かあやふやのように思われますけれども、そういうぐあいに暗示ずけられましたのと、何といいますか、市川のお助けじいさんじやないですが、一回でぴたり、常識的にあとは治るということを想像することができるように、党の重鎭であつて、油の方の第一人者であると言われましたことと、それから五月の新聞にそのことが出ておりましたこととぴつたりしておりますので、それと私どもはそれは苫米地先生でいらつしやいますかと違いたときに、それは名前は言われないと言われましたから、ははあ政治家としてはこういうこともあるのじやないかということを実は感じておつたのであります。暗示ずけられたということは事実で、私どもはそう考えておつたのであります。
  324. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのはそのことじやないのです。その点間違いならよろしゆうございます。  奈良さんに私から聽きますが、あなたは最初長谷川氏と一緒に竹田氏のところへ行つたのですか。
  325. 奈良教一

    奈良證人 そうです。
  326. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そんなら長谷川氏と同じでなければならないわけですが、どうですか。
  327. 奈良教一

    奈良證人 どういう点が……。
  328. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 竹田氏が西川氏を通じて苫米地氏から出たというのですが…。
  329. 奈良教一

    奈良證人 私はそういうふうに記憶しておりません。
  330. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 記憶はないでしようが、あなたは今聽いておつたでしよう。
  331. 奈良教一

    奈良證人 聽いておりました。
  332. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 長谷川さんにもう一つ聽きますが、何か飯村君がこの金を出すからには、担保でもとるというようなお話がその当時ありましたか。
  333. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 それは竹田さんは、この二十万円の金を君たちに渡すについて、自分の立場上何かとりたい。從つて飯村氏が來なければその金を渡すことはできない、こういうぐあいに言つている……。
  334. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはごもつともですが、飯村君から担保をとるというような話がありましたか。
  335. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 飯村さんから担保を……、そういつたふうな意味に私は聽いております。
  336. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 意味ですか。何か家を抵当にするというようなことですが……。
  337. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 担保というのは家だろうと思います。
  338. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 家だろうと思うというのですか。それはあなたの想像ですね。
  339. 長谷川勇一郎

    長谷川證人 何しろその当時はその金を受取りませんでしたから、詐欺事件と関係がございませんでしたので、担保ということは家であることはわかつておりましたが、それを飯村氏に納得さして、その金をこちらへ渡した、こういうぐあいに話をしておられたように思つております。
  340. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ようございます。
  341. 武藤運十郎

    武藤委員長 長谷川さんにお願いしておきますけれども、今までの話の続きということにして、今済んだことにしておきます。  ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  342. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さんでした。     —————————————
  343. 武藤運十郎

    武藤委員長 前野慶夫さんですか。
  344. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。
  345. 武藤運十郎

    武藤委員長 たいへんお待たせいたしました。あなたは小松川製油株式会社の社長ですか。
  346. 前野多慶夫

    前野證人 そうであります。
  347. 武藤運十郎

    武藤委員長 栗田英男君という代議士を知つておりますか。
  348. 前野多慶夫

    前野證人 知つております。
  349. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう関係で……。
  350. 前野多慶夫

    前野證人 自分は千葉縣市川市に住んでおります。栗田代議士も近くに住んでおります関係上、たまたま栗田代議士は栗田政治経済研究所とかいうのをやつておりますので、政治経済の御意見を伺つたり、いろいろ話をしたり、そういう関係で知合いになつております。
  351. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつごろからつき合つているのですか。
  352. 前野多慶夫

    前野證人 昨年の十一月の末もしくは十二月初めと記憶しております。
  353. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう機会から知合つておりますか。
  354. 前野多慶夫

    前野證人 知合つた動機は、いつも栗田代議士の前を通つたり近くで顔を合わせておりますし、たまたまそのお話を聽きに伺いました。
  355. 武藤運十郎

    武藤委員長 政治経済の話を……。
  356. 前野多慶夫

    前野證人 そうであります。
  357. 武藤運十郎

    武藤委員長 そこにはたくさん実業家等出入りをなさるのですか。
  358. 前野多慶夫

    前野證人 そういうよそのことは深くわかりません。
  359. 武藤運十郎

    武藤委員長 栗田さんは何か事業をやつておられるのですか。政治経済研究所だけですか。
  360. 前野多慶夫

    前野證人 ほかのことは存じません。
  361. 武藤運十郎

    武藤委員長 栗田さんにあなたは百五十万円金を融通と言いますか、出されたことがありますか。
  362. 前野多慶夫

    前野證人 ございます。
  363. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはどういうわけでか。
  364. 前野多慶夫

    前野證人 たまたま今年二月中ごろと記憶しておりますが、わずかな期間でよい、急に金が要るから何とか融通してくれぬかという懇請がありました。そこで都合が悪いからといつてお断り申し上げたのです、その後二月過ぎごろあらためて懇請がありまして、もし都合の悪い場合には市川市所在の栗田氏の邸宅を渡してもよいし、わが党にも油脂関係の専門家もおるから、私が社長をしております小松川製油株式会社の事業に対して、油脂の入手について協力もできる、何とかまげて融通してくれという折入つての懇談がありましたので、断りきれず融通しました。
  365. 武藤運十郎

    武藤委員長 百五十万円は一回ですか。
  366. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。三月一日と記憶しておりますが、百万円を小切手で、五十万円を現金で手渡しました。
  367. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはあなたの手もとにあつた金ですね。
  368. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。個人として貸しました。
  369. 武藤運十郎

    武藤委員長 手形か何かとつたのですか。
  370. 前野多慶夫

    前野證人 引換えに百五十万円の手形をとりました。
  371. 武藤運十郎

    武藤委員長 約手ですね。
  372. 前野多慶夫

    前野證人 そうであります。
  373. 武藤運十郎

    武藤委員長 返す期限はいつ……。
  374. 前野多慶夫

    前野證人 その期限は三月十七日の日附になつておりました。
  375. 武藤運十郎

    武藤委員長 支拂日は三月十七日……。
  376. 前野多慶夫

    前野證人 そうであります。
  377. 武藤運十郎

    武藤委員長 実際もそういう話だつたのですね。
  378. 前野多慶夫

    前野證人 そうであります。
  379. 武藤運十郎

    武藤委員長 何に使うものですか。
  380. 前野多慶夫

    前野證人 使い途は具体的に私にお話しございませんでした。
  381. 武藤運十郎

    武藤委員長 失礼ですが、あなたは当時手もとにどのくらいお金があつたのですか、銀行の帳尻は……。
  382. 前野多慶夫

    前野證人 銀行の帳尻はたいして記憶しておりませんからはつきりわかりません。
  383. 武藤運十郎

    武藤委員長 五十万円は現金で手もとにあつたでしよう。
  384. 前野多慶夫

    前野證人 それも銀行から下げて現金をつくつたと記憶しております。
  385. 武藤運十郎

    武藤委員長 あと残りは当時も銀行にあつたわけですね。
  386. 前野多慶夫

    前野證人 小切手で百万円ですから、自分手もとにないので、一時会社の金を借りて会社の小切手でお渡ししたように記憶しております。
  387. 武藤運十郎

    武藤委員長 会社の小切手で……。
  388. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。そう記憶しております。
  389. 武藤運十郎

    武藤委員長 会社の方にはよほど金があつたわけですか。
  390. 前野多慶夫

    前野證人 はつきり数字はわかりませんが、二百五十万か三百万ぐらいではないかと想像いたします。
  391. 武藤運十郎

    武藤委員長 この会社というのはあなたの同族ですか。よほど違つた株主がいるのですか。
  392. 前野多慶夫

    前野證人 同族と言う方があたるのではないかと思います。
  393. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体実権はあなたが握つているのですか。
  394. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。
  395. 武藤運十郎

    武藤委員長 私どもはあなた方の取引をよく知らないのだけれども、百五十万円と言えばインフレ時代でも相当の金額だと思うのですが、何に使うか目的もよく聽かずに、ひよこつと百五十万円を担保なしに出すというのも非常に大胆のようだけれども、これは貸借というのではなくて、何か油の方のことで非常な便宜が與えられるということが主たる目的でお出しになつたのではないのですか。
  396. 前野多慶夫

    前野證人 金の出し入れは貸借です。
  397. 武藤運十郎

    武藤委員長 形は貸借でありましても、目的、趣旨は油の方の便宜をはかるというあなたの先ほどちよつと言われたことの方が主点ではないのですか。
  398. 前野多慶夫

    前野證人 油の面でも必ず協力して迷惑をかけないというお話はありました。しかし少くとも國民の代表である代議士の方でもありますし、相当信頼できるものと思い、そうして短期間であることと、また自分も仕事をやつていく上にお世話になることと、併せて油のことでもまたお世話になるという氣分も相当織り込んでありました。
  399. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは金が返るよりも油でもらう方が多いという公算ですか。金を返してもらう方が主ですか。
  400. 前野多慶夫

    前野證人 短期間でありますから、そう簡單に油は輸送できないと自分は考えておりました。
  401. 武藤運十郎

    武藤委員長 まあ金は返るだろうというような……。
  402. 前野多慶夫

    前野證人 はあ。
  403. 武藤運十郎

    武藤委員長 前後を通じて栗田代議士との取引はこれだけですか。
  404. 前野多慶夫

    前野證人 そうです。
  405. 武藤運十郎

    武藤委員長 党関係にも要るということで飯村代議士の話は出ませんか。
  406. 前野多慶夫

    前野證人 当時は全然聞いておりません。
  407. 武藤運十郎

    武藤委員長 その手形は期日に落ちましたか。
  408. 前野多慶夫

    前野證人 三月十七日の期日が來まして、手形を提示してお話申し上げたわけです。ところがそのとき初めて、飯村代議士に百万円融通して、二、三日にはいる予定になつてつたがはいらぬ、済まぬけれども百万円はもう少し猶予してくれという懇請がありまして、そのとき五十万円の栗田代議士振出しの小切手と百万円の手形をいただきまして、百五十万円の約束手形と交換したわけであります。
  409. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではあとの手形の分はどうしましたか。
  410. 前野多慶夫

    前野證人 あとの百万円の手形は、三月末日と記憶しておりますが、期日が來て交渉しましたところ、まだはいらぬからもうしばらくということなので、再三交渉したあげく、五月一日に百万円の中からまた五十万円の返済を受けました。殘りの五十万円は七月三十一日、明後日お返しいただくことに約束しております。
  411. 武藤運十郎

    武藤委員長 それも手形になつているのですね。
  412. 武藤運十郎

    武藤委員長 利息みたいなものはなかつたのですか。
  413. 前野多慶夫

    前野證人 ございません。
  414. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたはほかにも金を融通することがありますか。
  415. 前野多慶夫

    前野證人 最近ございません。
  416. 武藤運十郎

    武藤委員長 なさるときには無利息ですか。
  417. 前野多慶夫

    前野證人 金貸ではございませんし、信頼してなにする場合、利息ということも言いませんし……。
  418. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねになることがございますか——それでは済みました。御苦労さまでした。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時二分散会