○
武藤委員長 これより
会議を開きます。
証人を喚問します前に若干議事を進めたいと思います。まず第一に、
辻嘉六氏と
山口久吉氏は
病氣のため
出頭ができませんので、先般お諮りいたしましたように、
臨床尋問をいたしました。
辻嘉六氏方へは
武藤委員長及び
高橋英吉君及び
橋本金一君の三名がまいりました。
山口久吉氏方へは
河井榮藏君がまい
つた次第であります。辻氏
臨床尋問の概要を御
報告申し上げます。
まず、辻氏は御
病氣ではあるようでありますけれども、
思つたよりも非常に元氣でありまして、
記憶も非常に確かであるように思われました。まず
中曽根幾太郎氏との
献金関係につきましては、先に
檢察廳で辻氏が述べておるところとほとんど変
つておりません。すなわち
同氏は
中曽根氏から六十万円、四十万円の
現金及び百五十万円の
小切手を
受取つております。別に
條件は
つておらないということでありますが、
中曽根氏の立候補を援助してもらいたいという
趣旨を含んでお
つたというふうな状態でありました。二百五十万円の
使途につきましても、辻氏が
檢察廳で述べておるところとほとんど変
つておりません。先般來辻氏からその分配に
與つたと言われる
諸君を当
委員会へ
出頭を求めまして
証言を求めたのでありますけれども、大体において辻氏の
証言と当
委員会へ
出頭の上
証言をせられた
諸君の
証言とは一致しておるようであります。ただ
木村公平氏につきましては、辻氏は、
木村公平氏に金三万円を與えたということを昨百も確任をしておるにもかかわらず、
木村公平氏は、御
承知の
通り当
委員会において全然
受取つた事実がないことを
証言をいたしております。ここに大きな
食い違いがあるのであります。なお辻氏は昨日の
証言におきまして、
木村氏はときどき
辻方へ出入りをして小遣いをもらいに來ると、昨年秋に一万円、今年の春に五千円を與えた旨を附け加えて
証言をいたしております。
磯崎貞序君、
渡辺治湟君、
三浦寅之助君及び
河野謙三君の四君に対する
政治資金の贈與につきましては、一人について二万円の割合をも
つて八万円を
河野一郎氏に渡した由でありまして、
河野氏を辻氏の使いとして手渡すことを依頼したということでありました。しかるに当
委員会において
河野一郎氏は、
河野謙三氏の分を
受取らないとことはもちろんであるが、
磯崎、
渡辺、
三浦三君に対する金も全然関知しておらない旨を述べております。
三浦氏は同樣に
受取らないと当
委員会において
証言をいたしております。また
檢事局においては、
三浦氏は一旦
受取つたということを述べておるのでありますけれども、当
委員会ではそれを飜しております。この点を特に昨日辻氏に念を押して
確めました。ところが辻氏は先ほど申しましたように、確かに一人二万円ずつ渡してあるのであ
つて、その金は
三浦氏に渡
つておるものと思う。
選挙が済んでから
三浦氏は辻氏方へ参りまして、
自由党においても労で問題を取上げて大いに研究すべき必要があるという
趣旨の意見を述べられたそうでありまして、辻氏はこれを聽いて賛成をし、なおその際一万円を與えたということを附け加えて昨日は述べております。すなわち
三浦君に対する辻氏の贈與した金は、都合三万円となることが明らかとな
つたのであります。
磯崎氏は
中助松氏から三万円
受取つたと申しておりますけれども、その点は辻氏は先ほど申し上げましたように
河野氏を通じて二万円を渡したということにな
つておりますので、
食い違いがあるように思われます。
渡辺氏はまた当
委員会においては
河野氏の手を通じたのではなくて、直接
辻方へ
行つて二万円
受取つたということを
証言しておりますけれども、この点も辻氏が
河野氏を通じて渡したということとやや食い違
つておるようであります。
小澤佐重喜氏の分につきましては、
小沢氏は当
委員会において
河野一郎氏の
紹介によ
つて、
河野一郎氏と辻氏宅へ落ち
合つて二人の前で金二万円
受取つたということを申しておりましたけれども、
河野氏はかかる事実がないことを、すなわち否定をしております。辻氏は
河野氏と一緒であ
つたかどうかは
記憶はないけれども、とにかく
河野氏の
紹介によ
つて小沢氏が
参つて二万円を與えたということを昨日は申しております。
世耕弘一氏の
関係につきましては
先般世耕氏が当
委員会において述べたことと一致をいたしております。
鳩山一郎氏との
関係につきましては家を建ててやることの発起をいたしまして、それに奔走いたしたことはあるけれども、現実には金は出しておらない。
関係者が金を出すことの総合的な
取りまとめ役をしたのであるという
趣旨のことを申しております。六百五十万円の問題につきましては
檢察廳においては全然明らかにな
つておらなか
つたのでありますが、昨日
尋問の結果、辻氏は
記憶を辿りまして
極東軍写眞司令部へ
事業費のうち未
回收のもの三十万円、
中島雋吉氏への
貸付金百三十万円、
青木勇への
貸付九十万円、
松岡松平氏との土地賣
買損害金二十万円、
自由党、創立に際しての
飲食費、
会合費等四、五十万円、辻氏の三十六箇月
分生活費約百八十万円、同じく辻氏の
交際費三十六箇月分百万円、及び
税金が約四十万円、いずれも概算でありまして、約六百五十万円になるのでありますが、この点につきましては多少の
記憶違いもあると思われるのであ
つて、後日一週間以内に書面によ
つて確かなる
報告をするということを申しております。辻氏は
檢察廳におきましてはこの六百五十万円の
使途につきましても、
中曽根氏から
受取つた二百五十万円の金と同じように数十人の
政治家に
使つたという
趣旨のことを明らかに述べておるのでありまして、この点を辻氏に念を押して追求をいたしましたが、やはりただいま御
報告を申し上げたような
使途であ
つて、特に
政治家に配
つたものではないというような
趣旨のことを申しておりました。ただこの点につきましては非常に辻氏も
檢察廳の調書を覆えすのに苦慮せられたような、動揺の色を見せておりまして、万一これが
偽証罪として問題になるようなことになれば
自分は
自決をしてもいい、
自決をするかもしれないという
趣旨のことを申してお
つたようなわけでありまして、私どももはたして辻氏の言うがごとく六百五十万円の
使途が辻氏の言うがごときものが
眞実であるかどうかにつきましては必ずしも
眞実であるという
心証を得ておりません。問題は
從つて残るようであります。
自由党との
関係につきましては、
自由党に対しては特に金は出しておらないと申しております。
鳩山氏個人に対しても特に
現金では出しておらないが、先ほど申したように
会合の
飲食費等を結党当時出しておるということを申しておるのであります。
概略辻氏
尋問の経過はただいま御
報告を申し上げた
通りでありますが、三、四時間にわたりまして
尋問いたしましたわけでありまして、非常に長いわけでありますから、詳細につきましては
速記録をごらん願いたいと存じます。
山口久吉氏の件につきましては先ほど申し上げたように
河井委員が
臨床尋問いたしました。この点はすでに
檢事局において
同氏が述べております
通り、辻氏から一万円
受取つた事実を認めております。その
使途は
選挙及び
生活、
入院料等の雜費に
使つたということを申しておるのでありまして、事実については食違いございません。ただいまの
報告につきまして何か御質問ございますれば……。