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1948-04-30 第2回国会 衆議院 不当財産取引調査特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月三十日(金曜日)     午後二時五十二分開議  出席委員    委員長 武藤運十郎君    理事 鍛冶 良作君 理事 田中 角榮君    理事 梶川 靜雄君 理事 河井 榮藏君    理事 荊木 一久君 理事 小松 勇次君    理事 石田 一松君       石田 博英君    高橋 英吉君       古島 義英君    益谷 秀次君       足立 梅市君    宇都宮則綱君       大森 玉木君    野本 品吉君       田中 健吉君    徳田 球一君   辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題について出   頭した証人    中曽根幾太郎君(会社重役)    塩月學君(会社重役)    藤川文六君(会社役員)    山本英吉君(中央公論社編集長)     ————————————— 本日の会議に付した事件  一、辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題  一、証人出頭要求に関する件  一、資料要求に関する件     —————————————
  2. 武藤運十郎

    武藤委員長 これより会議を開きます。  証人を喚問します前に若干議事を進めたいと思います。まず第一に、辻嘉六氏と山口久吉氏は病氣のため出頭ができませんので、先般お諮りいたしましたように、臨床尋問をいたしました。辻嘉六氏方へは武藤委員長及び高橋英吉君及び橋本金一君の三名がまいりました。山口久吉氏方へは河井榮藏君がまいつた次第であります。辻氏臨床尋問の概要を御報告申し上げます。  まず、辻氏は御病氣ではあるようでありますけれども、思つたよりも非常に元氣でありまして、記憶も非常に確かであるように思われました。まず中曽根幾太郎氏との献金関係につきましては、先に檢察廳で辻氏が述べておるところとほとんど変つておりません。すなわち同氏中曽根氏から六十万円、四十万円の現金及び百五十万円の小切手受取つております。別に條件つておらないということでありますが、中曽根氏の立候補を援助してもらいたいという趣旨を含んでおつたというふうな状態でありました。二百五十万円の使途につきましても、辻氏が檢察廳で述べておるところとほとんど変つておりません。先般來辻氏からその分配に與つたと言われる諸君を当委員会出頭を求めまして証言を求めたのでありますけれども、大体において辻氏の証言と当委員会出頭の上証言をせられた諸君証言とは一致しておるようであります。ただ木村公平氏につきましては、辻氏は、木村公平氏に金三万円を與えたということを昨百も確任をしておるにもかかわらず、木村公平氏は、御承知通り委員会において全然受取つた事実がないことを証言をいたしております。ここに大きな食い違いがあるのであります。なお辻氏は昨日の証言におきまして、木村氏はときどき辻方へ出入りをして小遣いをもらいに來ると、昨年秋に一万円、今年の春に五千円を與えた旨を附け加えて証言をいたしております。磯崎貞序君、渡辺治湟君三浦寅之助君及び河野謙三君の四君に対する政治資金の贈與につきましては、一人について二万円の割合をもつて八万円を河野一郎氏に渡した由でありまして、河野氏を辻氏の使いとして手渡すことを依頼したということでありました。しかるに当委員会において河野一郎氏は、河野謙三氏の分を受取らないとことはもちろんであるが、磯崎渡辺三浦三君に対する金も全然関知しておらない旨を述べております。三浦氏は同樣に受取らないと当委員会において証言をいたしております。また檢事局においては、三浦氏は一旦受取つたということを述べておるのでありますけれども、当委員会ではそれを飜しております。この点を特に昨日辻氏に念を押して確めました。ところが辻氏は先ほど申しましたように、確かに一人二万円ずつ渡してあるのであつて、その金は三浦氏に渡つておるものと思う。選挙が済んでから三浦氏は辻氏方へ参りまして、自由党においても労で問題を取上げて大いに研究すべき必要があるという趣旨の意見を述べられたそうでありまして、辻氏はこれを聽いて賛成をし、なおその際一万円を與えたということを附け加えて昨日は述べております。すなわち三浦君に対する辻氏の贈與した金は、都合三万円となることが明らかとなつたのであります。磯崎氏は中助松氏から三万円受取つたと申しておりますけれども、その点は辻氏は先ほど申し上げましたように河野氏を通じて二万円を渡したということになつておりますので、食い違いがあるように思われます。渡辺氏はまた当委員会においては河野氏の手を通じたのではなくて、直接辻方行つて二万円受取つたということを証言しておりますけれども、この点も辻氏が河野氏を通じて渡したということとやや食い違つておるようであります。小澤佐重喜氏の分につきましては、小沢氏は当委員会において河野一郎氏の紹介によつて河野一郎氏と辻氏宅へ落ち合つて二人の前で金二万円受取つたということを申しておりましたけれども、河野氏はかかる事実がないことを、すなわち否定をしております。辻氏は河野氏と一緒であつたかどうかは記憶はないけれども、とにかく河野氏の紹介によつて小沢氏が参つて二万円を與えたということを昨日は申しております。世耕弘一氏の関係につきましては先般世耕氏が当委員会において述べたことと一致をいたしております。鳩山一郎氏との関係につきましては家を建ててやることの発起をいたしまして、それに奔走いたしたことはあるけれども、現実には金は出しておらない。関係者が金を出すことの総合的な取りまとめ役をしたのであるという趣旨のことを申しております。六百五十万円の問題につきましては檢察廳においては全然明らかになつておらなかつたのでありますが、昨日尋問の結果、辻氏は記憶を辿りまして極東軍写眞司令部事業費のうち未回收のもの三十万円、中島雋吉氏への貸付金百三十万円、青木勇への貸付九十万円、松岡松平氏との土地賣買損害金二十万円、自由党、創立に際しての飲食費会合費等四、五十万円、辻氏の三十六箇月分生活費約百八十万円、同じく辻氏の交際費三十六箇月分百万円、及び税金が約四十万円、いずれも概算でありまして、約六百五十万円になるのでありますが、この点につきましては多少の記憶違いもあると思われるのであつて、後日一週間以内に書面によつて確かなる報告をするということを申しております。辻氏は檢察廳におきましてはこの六百五十万円の使途につきましても、中曽根氏から受取つた二百五十万円の金と同じように数十人の政治家使つたという趣旨のことを明らかに述べておるのでありまして、この点を辻氏に念を押して追求をいたしましたが、やはりただいま御報告を申し上げたような使途であつて、特に政治家に配つたものではないというような趣旨のことを申しておりました。ただこの点につきましては非常に辻氏も檢察廳の調書を覆えすのに苦慮せられたような、動揺の色を見せておりまして、万一これが偽証罪として問題になるようなことになれば自分自決をしてもいい、自決をするかもしれないという趣旨のことを申しておつたようなわけでありまして、私どももはたして辻氏の言うがごとく六百五十万円の使途が辻氏の言うがごときものが眞実であるかどうかにつきましては必ずしも眞実であるという心証を得ておりません。問題は從つて残るようであります。自由党との関係につきましては、自由党に対しては特に金は出しておらないと申しております。鳩山氏個人に対しても特に現金では出しておらないが、先ほど申したように会合飲食費等を結党当時出しておるということを申しておるのであります。概略辻尋問の経過はただいま御報告を申し上げた通りでありますが、三、四時間にわたりまして尋問いたしましたわけでありまして、非常に長いわけでありますから、詳細につきましては速記録をごらん願いたいと存じます。  山口久吉氏の件につきましては先ほど申し上げたように河井委員臨床尋問いたしました。この点はすでに檢事局において同氏が述べております通り、辻氏から一万円受取つた事実を認めております。その使途選挙及び生活入院料等の雜費に使つたということを申しておるのでありまして、事実については食違いございません。ただいまの報告につきまして何か御質問ございますれば……。
  3. 梶川靜雄

    梶川委員 辻氏の六百五十万円問題に対しまして、辻氏の所得がすべてで六百五十万円であるかのごとき印象を與えますので、この際ほとんど生活費あるいは交際費等使つたように言つておりますけれども、この点をもう少し明確にするためには、辻氏自体の所得調査をもう少ししてみる必要があると思うのであります。從つてこの問題につきましては所轄税務署を通じて辻氏の所得調査に関する資料提出を要求するようにいたしたいと思います。
  4. 武藤運十郎

    武藤委員長 なお辻氏尋問の御報告のうち漏れたところがありますので追加御報告申し上げておきます。辻氏が仲介をいたしまして菅原通済氏から西尾末廣氏に二百万円を贈つたという点につきまして、高橋英吉委員から辻氏に対して尋問をせられました。これに対しましては、辻氏はさような事実はないという答えであります。高橋委員がさらに平野成子氏が辻方にまいりまして西尾氏が辻氏の紹介によつて二百万円受取つたという趣旨証明書を書いてもらいたいということを辻氏に申し出た事実はないかという問に対しては、申出を受けた事実はあるけれども、自分は、自分がそういう証明書を出しても本人——本人というのは菅原氏または西尾氏でありますが、本人がさようなことはないと言えば何にもならないことだからして、もし証明書が欲しかつた菅原氏なりなんなり、本人からもらつたらよろかうということを申しまして、証明書は書くことを肯んじなかつたという趣旨答えをいたしておつたようであります。  次には先ほど辻氏の報告の際お話しを申し上げましたように、木村公平君、三浦寅之助君、河野一郎君、この三君につきましては、辻氏の陳述及び同君らのうち木村君、河野君のごときは、檢察廳における陳述とも食い違いがあるのであります。場合によりましては、当委員会昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律の第八條によりまして、木村三浦河野の三君は、これを告発しなければならないことになるのであります。また河野一郎氏については、さらに昭和二十二年勅令第一号、公職に関する就職禁止退職等に関する件、すなわち政治的追放者政治的活動禁止の規定第十五條に基きまして、同じく処罰される行為ある疑いがあるのであります。しかして昭和二十二年法律第二百二十五号が特に委員会偽証罪告発を義務づけておりますゆえんのものは、さような偽証というものが軽々に行われるに至りますならば、当委員会における事実の調査に対して、重大な障害になるという精神にあると思うのであります。從つて委員会はもし偽証の事実ありと認むる場合には、法律上これを告発しなければならないことになるのであります。しかしながら偽証告発ということは、告発される者にとりましては非常に重大な問題でありまして、場合によつては被告発者の政治的な生命を、あるいは社会的な生命を断つような結果になるのでありまして、委員会十分愼重なる態度をとらなければならぬと思うのであります。その意味におきまして、本日ただちに右三君の告発を決定することなく、來る四日に木村公平君、三浦寅之助君、河野一郎君に再び当委員会出頭を求めまして、事実について最後の陳述機会を與えることにいたしたいと存じます。しこうしてその上で当委員会態度を決定いたしたいと思います。なお右三君のほかに、これに関連して河野謙三君、渡辺治湟君磯崎貞序君、中助松君、小沢專七郎君、右五君も同時に四日当委員会出頭を求めて、対決的な尋問をいたしたいと存じます。  ちよつとここで速記を止めてください。     〔速記中止
  5. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではあらためてお諮りいたしますが、來る五日の午後一時に木村公平君、三浦寅之助君、河野一郎君、河野謙三君、渡辺治湟君磯野貞序君、中助松君、右七君を当委員会出頭を求めて証言を求めることにいたします。なお念のためお諮りしておきたいことは、ただいま申し上げました証人は、事実の調査の上においては大体においてその心証を得ている次第でありまして、むしろその目的は、木村三浦河野氏等に陳述機会を與えるというところに重点がおかれているわけでありますから、もし出頭せられない場合には、出頭せられないままで、以後取調べをしないということに御了解願いたいと思います。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 武藤運十郎

    武藤委員長 その次に先般來準備をいたしておりました龜井貫一郎……。
  7. 梶川靜雄

    梶川委員 その前に、先に私が提案いたしました辻証言の中において、税金を拂つたかというような問題が含まれておりますので、四十万円の税金を納めるからには相当な所得がなければならない。從つて献金として受取つた六百五十万円はいわば所得以外の金でありますので所得調査の方の資料所轄税務署を通じてやりたいということを、これに関連して……。
  8. 武藤運十郎

    武藤委員長 梶川君に伺いますが、それは大藏省を通じた方がよろしいのではないですか。
  9. 梶川靜雄

    梶川委員 どちらでも結構です。
  10. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは辻嘉六氏の資産関係事業関係等、すなわち課税の対象としての関係についての資料大藏省を通じて提出を求めることにいたします。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 武藤運十郎

    武藤委員長 次には龜井貫一郎氏、綿引喜一氏、小川英武彦氏、西山重道氏等にかかる軍服拂下げ等詐欺事件につきまして政治資金が右の中から撒布されておるという疑いにつきましての調査を当委員会において正式に開始したいと思います。つきましては來る六日の午前十時より証人を当委員会出頭を求めて喚問いたしたいと思います。すなわち龜井貫一郎氏、綿引喜一氏、小川美武彦氏、西山重道氏、これらはいずれも詐欺疑いをもつて公判中の被疑者本人であります。水野繁彦河野彌吉、藤二雄、谷川昇、三厨正戸津盛男本田一郎西村榮一松本淳三、右十三人の出頭を求めたいと思います。
  12. 高橋英吉

    高橋(英)委員 今証人のうちで本田一郎という名前がありましたが、代議士本多市郎でありますか。
  13. 武藤運十郎

    武藤委員長 本田一郎ですから代議士本多君ではないようです。なおただいま申し上げました証人関係は、詳細には説明することを省略いたしますけれども、あるいは右本人龜井外数氏より政治資金の贈與を受けておる者、あるいはその贈與についての仲介をした組、仲介をしてお礼をとつた者というような大体におきまして政治資金関係であります。この諸君証言を求めることによつて、辻氏関係事件と同樣に、政治資金糾明資料としたいというところにあるのであります。右証人取調べについて御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではさよう決定します。  それではこれより証人の喚問をいたします。御出頭になりました証人中曽根幾太郎さん、塩月学さん、藤川文六さん、山本英吉さん、それではこれから証人として証言を求めますが、証言を求める前に、各証人に一言申し上げますが、昨年十二月二十三日公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは証言証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき及び医師歯科医師、藥剤市、藥種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、実教または祷祀の職に在る者またはこれらの職に在つた者がその職務上知つた事実であつて、默祕すべきものについて尋問をうけたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しこうして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつておいていただきたいと思います。それでは宣誓をしていただきます。御起立を願います。中曽根さん、代表して読んでください。     〔証人中曽根幾太郎君各証人を代表して宣誓
  15. 武藤運十郎

    武藤委員長 署名、捺印してください。     〔各証人宣誓書署名捺印
  16. 武藤運十郎

    武藤委員長 宣誓がお済みになりましたら始めます。まず中曽根幾太郎さん、塩月学さん、藤川文六さん、山本英吉さん、こういう順序で聽きます。中曽根幾太郎さんのほかは御迷惑ながらしばらく別室でお待ちください。  まず伺いますが、辻嘉六氏と知合いになりました動機、その後における辻嘉六氏との交際、その他の関係につきまして詳細に述べてください。
  17. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 私が辻嘉六さんに初めて面会する機会を得ましたのは、たしか昨年の三月中旬ころと思うのですが、当時外務参與官をしておられた塩月学君の紹介で私は牛込の辻邸を訪れたのであります。それはただほんの顏合せというような意味で、塩月君の言われるままについて行つたにすぎないのであります。第二回目にはやはり塩月君と同行いたしまして、これは金をもつて辻邸を訪ねたのであります。この金が非常に問題になつているようです。それから続いて訪問したことを申し上げてしまいますと、第三回にまた六十万円金をもつて塩月君のお供という形で辻邸を訪問し、辻氏に面会いたしました。それから一、二回くらいと思いますが、塩月氏が大分縣選挙に帰られたあと私は二回ほど訪ねました。それから四月二日、これが訪問しました要件の終りと思うのですが、この要件についてはあとで申し上げますが、このときに百五十万円の小切手を持参して、私は辻邸を訪ねた。これが大体塩月学君に伴われて私が辻邸へ訪問します要件内容……ある内容をもつておりますがゆえにこれを訪ねたことがございます。あと私的交際ということになるのでございます。大体その程度でございます。
  18. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、あなたが辻嘉六氏へもつてつた金というのは第二回目の百万円、第三回目六十万円、それから第四回目ですか、百五十万円……。
  19. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 三回目は百五十万円、第一回はただ顏だけもつてつたという程度です。
  20. 武藤運十郎

    武藤委員長 金をもつてつたのは第一回が六十万円、第二回が四十万円、第三回目が百五十万円で、六十万円と四十万円は現金で、百五十万円は小切手ですね、それでは一体どういう理由でかような金額を初対面に近い辻氏にもつていかれましたか。
  21. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 これが実は問題なんでございます、私の伜に弘というのがありまして、私の義弟にあたる足立政雄、それと長門要三君というのが農業会関係で三百万円引かかつてしまつた、私の家に來てべそをかいておつたものですから、困つたことだなと思つておるときに、私の伜が、非常に信頼のできる藤川又六さん、塩月学さんという御仁がおられる、非常な人格者であられるからぜひお父さん会わないかと言うので会いました。これが実は私の中学の三年ほど先輩である塩月学君でありまして、世耕君にひとつ紹介してやろう。こういう話で、それでは何分頼む。それじや一席設けようというので、藤川君に一席設けていろいろ聽いてみると、世耕君が安本の副委員長をしておるので、摘発も非常にたくさんあるし、拂下げの方は何でもないらしいということから、それじや頼むということで、大分問題になつております銀座菊亭というのにその翌日くらいから呼ばれたりいたしまして、それで私も大いにほれこんで頼んだ。こういう動機に出発いたしまして、單純洋服拂下げを援助願うというだけのことであつたのですが、これにだんだん金銭がからまりまして、いろいろな問題が起きたのでございます。これを簡單に申し上げますと、世耕君には話した。大体よさそうだという話、それからこの話のあとで私の弟に向つて藤川君が、鳩山家建築資金五十万円ほど寄附してくれ、こういう話を直接せられた。私もその話を弟から聽きまして、軍服拂下げのためにそういうことが要るならこれは当り前だらう。それは快く寄附してあげようじやないか。こう言うて金五十万円を銀座菊亭において塩月君と藤川君の面前に裸で並べた。これは要するに自由党鳩山のごとき人が、世耕などに頼むにはやはりいろいろのこともあるからそうしてくれという單純な考えで、ただ私が承諾しただけである。その後において塩月君が同じく自由党には辻という大御所がいる。これは私が今日こう率直なことを申し上げますことは各方面に当り障りもできやしないかと考えますけれども、しかしながら議会の問題となり、この神聖なる議会委員会に私が出頭して、ここで私が眞相を申し上げるということに対しては、これ以外に方法はないと考えますがゆえに、多少各方面の御迷惑をも構わず、ただ事の眞相を申し上げて、今日まで非常に間違つてつたこの軍服事件に対する御批判を今日以後改めていただきたいと思いますがゆえに、きわめて冷靜な立場で事件眞相を申し上げます。  それで辻氏にも献金の必要があるという切なる塩月君の提案によりまして、ただいまのような献金のために、私はただついて行つたというだけなのであります。これに仲介者塩月君の説明が不足であり、また今日多少責任回避的な態度が多いために世間に誤解から誤解を生じております。いずれその点は公平なお裁きによつて眞相の明らかになる日も近いことと考えます。そういう次第で私は前後三回にわたつて二百五十万円を辻氏にもつてつております。
  22. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、あなたがこの二百五十万円を辻氏に献金したのは、軍服拂下げについて便宜をはかつてもらいたいという趣旨ですか。
  23. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 これは私の便宜を得るというよりは、洋服拂下げを引受けてくださつた。それで実は多少の金額の相違、否認などもあるようですが、私の記憶から申しますと藤川塩月両君に約百七十万円、一定條件で、それは一着について百円をわれわれに献金してくれと言つたので、この点は自由党名前を使われたのではなくて、自由党という名前は少しもありませんでした。巷間傳えられておるところは確かに一部ジヤーナリズムなどの間違いじやないかと考えておるのです。そういう意味自由党というのではなくて、塩月藤川両君提案でありまして、それは一着百円という話だつた。そうすると私は約五、六百万円の金を急いでもつていかなければならぬはめにおりましたので——これも巷間に傳えられておりますように、決して詐欺とかなんとかしう意味ではなくて、いわゆる有力者と称する者から献金合意の上でのせましてその先の農業会などに渡りをつける。私は渡りが全然ないのであります。それにはまた協力会とかいろいろな点があつて、その人たちには農業会関係があるようですが、私は水野という人間、私の弟、中村という三者から献金合意の上で、藤川塩月君などの列席の上でやつたことでありまして、私は今日まであえて弁解はいたしませんでしたが、そういう一定條件に基く百円の金を五万、六万という数が出るというので、私はとりあえず塩月君の指定するままに金を準備した。それで辻先生の御盡力を得るというので塩月君の提案のままに金をもつてつたのです。実はこの点に関して私は辻先生に直接洋服を願つたこともないし、また世耕君に直接洋服を頼んだこともない。塩月藤川両君が引受けてくれたがゆえに彼らの指図のままに行動したにすぎないのであります。そういうわけで私は塩月君、藤川君に條件附で渡しただけです。ただお氣の毒に辻先生はその内容を知らぬようでした。私もその内容を説明しませんでした。ここに辻先生の御主張とあるいは農業会側などの食い違いが生じておるものと考えております。
  24. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、辻嘉六氏に渡した二百五十万円は、ただ單に洋服拂下げの斡旋を願うというだけではなくして、一着百円の割合で約六百万円なるもののうちとして塩月藤川両氏の指定されるままにその内金として届けられた。そういう趣旨ですか。
  25. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そうです。それは辻先生内容は通じておらぬことははつきりしておりますが、要するに塩月藤川君の説明が足りなかつたとともに、これは塩月君の言葉をかりて言いますと、好意の交換ということで、よく説明しなかつたというような漠然たる話を伺いましたが、要するに御両氏が引受けて、ただそうやれば中曽根との約束の責任が果せると考えたところが多少手違いのもとではないかと考えております。
  26. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは辻嘉六氏のところへ金をもつて行つたのは、ただ藤川塩月両君の指定のままだと言いますけれども、しかし指定されればどこへでももつていくということもないだろうと思いますが……。
  27. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それはごもつともです。
  28. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人のところへもつてつたら御利益があるだろうというようなことをお考えになりませんでしたか。
  29. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 御利益は期待しておりました。もちろんかくすることによつて塩月君がわれわれに約束しておることが実行されるものだと考えておりましたがゆえに……。
  30. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は受取るときに何と言つて通りましたか。
  31. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 受取るときにはすでに熟入れ態勢ができておつたようでありまして、私が行つたときには私は何も申しませんでした。その金を、浄い金だ、無條件でもらつておくぞと言われました。私はりつぱな人であるし、面会一回そこらでわずかなはした金をもつて行くのに、ことさらに神経過敏になつて念を押すこともできませんし、塩月君の指定のままに行動しておる私としては何も聽かずに金を置いて挨拶をしてきました。
  32. 武藤運十郎

    武藤委員長 百五十万円の小切手は下沢という人に渡したのですか。
  33. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そうでございます。これと取次いでもらつて部屋へもつて行つた記憶しておるのですけれども、その後はどうも下沢君を経たということになつておるようですが、どうもこの点について私は、実はああれは本人に直接渡したのですから、その点はどこまでも一度信じたことはそのままの通りです。御本人に直接渡しております。
  34. 武藤運十郎

    武藤委員長 洋服の拂下についての金というのではないのであつて、あなたが衆議院議員の選挙をやるについて、辻という人は政界に非常に有力な力をもつておるので、ひとつこの人の應援をしてもらいたい、それについてはこの献金を無條件でしておいて、辻さんはもちろん、それにつながる勢力による應援をお額いしたという趣旨で拂つた金ではないのですか。
  35. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 断じてさような性質のものではございません。実は私の恥をさらしますと、私は当時自由党員ではなかつたのであります。これはずつと古い時代からいわゆる憲政会時代からその方面に深い関係がありましたが、最近政治に興味を失つて実業界におりますがゆえに、ほとんどそういうような政治面には関係はありませんでしたけれども、塩月君が最初私に政治に出たまえと言つたことが、これが誤りのもとで、塩月君が政治という関係において辻氏に紹介し、また自由党の各位などにもそういう意味において紹介もし宣傳もしましたがゆえに、間違いの端緒をそこに開いた。私は当時ある責任の立場におりますがゆえに、軍服の拂下をしてやろうということが主でありまして、田舎から私の家に大勢來て泊つております。帰るに帰れぬというので非常にあせつておりましたがゆえに、そのときに私は政治のごとき、いわゆる衆議院の立候補というがごときことは、大して興味をもつておらなかつた。それが証拠には当時私は廣川弘禪君を應援する準備をしておつた。そういう時代でありまして、そういう野心のもとに辻邸に金をもつてつたのでは断じてございません。
  36. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは今刑事裁判所の方で、この問題について詐欺罪ということが訴追されておりますか。
  37. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 その通りでございます。不本意ながらかようなただいま御批判を受けております。
  38. 武藤運十郎

    武藤委員長 詐欺ではないという御主張をなさつておりますか。
  39. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そうであります。公判記録がその他の証人によつて、大体の眞相がわかつたのではないかと私は自負しておりますが、しかしこれは公判のことでございまして……。
  40. 武藤運十郎

    武藤委員長 そこで手取早く考えると、この二百五十万円もつてつた金が軍服拂下のできるために関である、言いかえますならばこれは献金しておけば軍服拂下が実現する見込みがついたということになれば、あるいはあなたは詐欺ではないことになるかもしれないし、全然あてのないものを軍服の拂下をすると称して金を集めれば明らかに詐欺になるということになるのではないかと思うのだが、あなたがこれは軍服拂下一着百円の内金だということを主張されるのは、それはあなたが、詐欺でないということを立証するための抗弁であつて、実際においては辻氏のところにもつてつたときには、あなたはそういう趣旨ではなく、選挙その他のためにもつてつたのではないではないですか。念を押しておきますが……。
  41. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そうではございません。何回念を押されましても、私は檢察廳以來未だかつて陳述の変更がございません。どうぞ安心して御審議してください。
  42. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは辻氏はその金を受取つて世耕氏その他に軍服拂下の便宜をはかるように話をされたかどうかということについては、直接辻氏から、あるいはまた塩月または藤川氏から具体的にお聞きになつたことはないですか。
  43. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ございます。
  44. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういうふうに。
  45. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 塩月はもうこれで大丈夫だと言われました。辻先生からは私は前に申し上げました通り塩月という介在がおりますために、直接話をしたことはないのでございますけれども、四月の一日ごろでしたか、大分軍服もあるそうだ、端数だけでもひとつ下げてやつてくれというふうな話を、別に責任ある意味じやないが、話のついでにちよつとしたら、大分あるそうだよと、この程度の軽いきわめて責任のない話は辻先生から伺いました。それで、塩月君の私に対する責任は果せるように進行しておるものなりと私は当時考えておつたのです。それがゆえに、あとの百五十万円は、塩月君の留守中に届けました。その理由は、塩月君が第二回の献金のときに、とりあえず百万円もつてつてあと準備しておりますということを辻先生の前で言うておられた。この金というものは塩月辻先生の間の金でありまして、私はその代理に、塩月がおらないから、言われるままにもつてつたということで、私は辻先生と何らの献金の約束も軍服の約束もしておりません。
  46. 武藤運十郎

    武藤委員長 世耕弘一氏にはその当時お会いになつたですか。
  47. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 世耕氏にはその当時会いました。会いましたが、軍服の話は一向ございません。私からはいたしません。これは塩月藤川氏がすでに拂下書類なども、大分いろいろ努力いたしまして正規なものが出ておりますがゆえに、日ならず御返事があるものと信じておりました。由來私ははなはだのんきな人間でありました、あまりこせこせ、物を人に頼んでおいて請求するということは少し欠けておりますために、今回などは少しのんき過ぎたと思うのです。当時塩月氏が郷里に帰られまして、塩月氏の、私の代理中曽根氏を御伺致させ候間御引見下され云々というような印刺を預かりましたから、それをもつて世耕氏を訪ねました。それではじめて軍服ということについて軽く打診してみました。大分中には文書偽造なんという変な説も出ているし、私の名も出ているし、いずれにしても若干出してやらぬと困るんだが軍服の方はどうですかと聽いたところが、選挙まで待つてくださいと言うから、私は二言あとの話を追わずに帰りましたが、世耕君と直接軍服の話をいたしましたのは——ただいま公判延に証拠品として提出しておりますが、私の代理中曽根氏を御引見云々という世耕君に対する塩月君の名刺、私はそれを、世耕氏が名刺をしまわぬものですから、当時その名刺と私の名刺も出したのですが、一緒にもつてつて裁判所へ出ております。そういうわけで私は世耕君にたつた一回、塩月君の代理として洋服の意向を聽きにまいりました。
  48. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんと世耕さんとはどういう関係にあつたかということは、だれからどんなふうに聞きましたか。
  49. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 私は塩月君、それに割合ちよこちよこ物を話される藤川君というのが塩月君に影の形のごとくついておりますが、その人の話などを聞きますと、世耕氏は辻先生の子分だというふうな話を当時聞かされておりまして、いと鄭重に私も目的完徹のために世耕氏を礼を正して訪問いたしました。これは私の偽らざる当時の告白でございます。
  50. 武藤運十郎

    武藤委員長 しかしあなたは子供じやないのだから、辻という人のところに金をもつて行つたら、簡單に軍服拂下げができるのだろうというような——辻というと見当違いなのだから、拂下げをする立場にはないのだから、そこに金をもつて行つた軍服拂下げができるということを考えて、二百五十万円といえば大金だと思うのだが、それを簡單にもつて行くというのはいささか解せない。
  51. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 解せないという点に対しては、私はあえて解せないこともないと考えておるのですけれども、軽卒なり不注意ということになるとまことにもつともだと思うのですが、当時塩月君がなかなか堂々たる態度でありまして、その後私が認識せる塩月君と、これは私の軽卒でしたが、若干違つておりましたがゆえに、当時はかく信じておりました。これはどうも命もときに捨てますものとしては仕方がありません。
  52. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界の表には出ないけれども、政界の隠然たる勢力をもつてつて選挙などに際しては相当多くの政治家に金を出してやる。從つて政界に対しても相当の発言をする力をもつておるというようなことを聽かされておりましたか。
  53. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 実は、私はお恥しいことながら、辻という御仁は面会するまでその存在も知りませんでした。これはまことに偽らざる、私の政治の事情に対する無智を表白するのでありまして、塩月氏の説明、その面会以後における辻さんの立場を聽きますと、なかなか奥深いりつぱな人だし、私もいろいろ辻さんの過去のこと、いわゆる原内閣時代の事柄、多少歴史的なことなども聽かされておりましたが、私どもとしては自由党というものに関心をもつておりませんでしたがゆえに、自由党の歴史を知らない。そういう関係で、私は塩月君に知らされまして、それ以來辻さんという人を見ますと、なかなか温容な親しみのもてる大人物だというように考えまして、私もときどき遊びにまいりました。政界の云々というがごときことについては、今回いろいろのことも聽きましたけれども、これはいずれも茶飲み話のようなことで、これを並べ立てればきりがありませんが、相当な御仁だということは聞いておりました。從つて部下に云々とか、金をばらまくということは私は聽きませんでした。
  54. 武藤運十郎

    武藤委員長 初めて見た者から二百五十万円なんという大金をもらつて、そして軍服拂下げに一役買うというようなことをする人はそれほどりつぱな人だと考えたのですか。
  55. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 まあしかし、どうもその点はむづかしいことでございましようが、この仕事が慈善事業でもなし、これはあまり感心した仕事でないことに関係しましたことは、私ども大いに責任を感じておる。
  56. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたではない。辻氏をどういうふうに認識したかという問題です。
  57. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 まあ、私はなかなか経驗のある、なかなかの知者であると考えました。そういう意味においての尊敬でありまして、内的な尊敬は大して出ておりませんでした。しかしその後非常に世話になつておりますが、なかなかよく人に力を入れる人であるということは今日では認識しております。しかし今日をもつて当時を申し上げるのでなくて、当時をもつて当時を申し上げておるわけでございます。
  58. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたが詐欺をしたという疑いをかけられておる受取つて金は合計六百四十五万円くらいになりますか。
  59. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そうはなりません。私のところへもつてきた金は三百三十万で、その代り三十万円、別にこれは費用としてくれという金がありますが、これは加算しておりません。それからその後私が被害者に返した金が大分あります。当時としましては九十五万が二口、それはもつてきてすぐ私は自分の金を返してやつたために少くなつておりますが、九十五万が二口に三百三十万。それから私に関係なく授受された事件があるようですが、これをも私の取扱つた金のごとく新聞などに出ております。これは私が公判延におきまして詳しく申し上げておきました。
  60. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、あとで返した金は別ですが、あなたが数人から受取られ金の合計はどのくらいになるのですか。
  61. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 三百三十万、五百三十万、五百二十万と思います。
  62. 武藤運十郎

    武藤委員長 五百二十万くらい……
  63. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ええ。
  64. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのうちいくら返したのですか。
  65. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 五百二十万のうちに、これは不動産などで返しましたために、この價格をいくらにして返すかというふうなことはまだ弁護士の方と相談しておりますが、評價の問題についてはまだそれまでに至つておりません。建物で約六十坪、そのほかいろいろ骨董品などトラツク一台もつてくるというようなことですから、ある程度の責任は果しておるものと思いますが、その程度で、額の点はまだはつきり査定が済んでおりません。
  66. 武藤運十郎

    武藤委員長 さきの二百五十万円ですね。
  67. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そういうことでございます。
  68. 武藤運十郎

    武藤委員長 あとまだ二百五十万くらい残つておるようだが、それは何に使う……。
  69. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 二百五十万という数字は塩月君と藤川君が百七十万円、法廷において二十万かの相違が出ておりますが、ほかは合つておるようでございます。それから当時塩月君が外務参與官をやめまして、役所の自動車が使えなくなつたというので、自動車を一台購入した。これらの点は否認されておりますが、まだそのほかに料亭の費用、自動車賃、各関係者の飲んだ費用一切を支拂いまして、たしか私の手もとから立替金が出ておりまして、約七十二万円くらいと思つておりますが、私の方からマイナスになつております。この点は公判廷に詳しく出ております。
  70. 武藤運十郎

    武藤委員長 私の方で聽きたいのは残つた金ですね。あなたから辻氏に献金した以外に、それは無條件の政治献金であつたか、あるいはまた軍服拂下げということであつたか、いずれにしましても、ほかにどこか政治家なり役人なりに、そのうちから金を出しておる事実があるかどうかということを伺いたい。
  71. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ございません。塩月藤川君だけでございます。ほかに出すどころではない。まだ御両氏に届けたものが足りないで非常にまごついた次第でありまして、絶対に出ておりません。
  72. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か委員諸君のうちでお聽きになることがありますか。
  73. 高橋英吉

    高橋(英)委員 ちよつと証人に伺います。今ほかの政治家に渡した金はないというようなお話でしたが、たれからもとの党からも献金の要求を受けたことはありませんか。
  74. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 要求といつて、党ということはございませんが、しかしその点は眞偽は実は確かめませんでしたけれども、ほかの党から政治問題で云々ということはございません。
  75. 高橋英吉

    高橋(英)委員 個人でも何か援助してくれというような話があつたことはありませんか。
  76. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ちよつと記憶はありません。
  77. 高橋英吉

    高橋(英)委員 あなたは鈴木仙八君と熱海で会見したときに、鈴木君に何かそういう問題をお話になつたことはありませんか。
  78. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それは私のところにおつた蓑原というでたらめの人間の言うことを話したのでありまして、その点はえらく……。
  79. 高橋英吉

    高橋(英)委員 でたらめを言う男の話を話したというのですが、それはどういう話だつたのですか。
  80. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 しかしその点は何だか使いこみをした男でして、ある人を利用して、当時平野力三氏とか何かの名前を私のところに騙つてきたことがある。
  81. 高橋英吉

    高橋(英)委員 鈴木君の言うには、熱海の会見で、あなたは西尾、片山両氏から援助金に申込を受けたとか、それかせ片山さんにめかけがあつて、その家であなたが直接献金問題について問答をしたとかというようなことを鈴木君に話したことはありませんか。
  82. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 いたしません。何でも新聞なんかはえらく間違えておりまして……。
  83. 高橋英吉

    高橋(英)委員 鈴木君は、この不当財産取引調査委員会において、あなたから熱海の旅館において、はつきりそれを聽いたということを盛んに言つたのですが……。
  84. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 茶のみ話に蓑原という者の言うことを話しましたが、もし何なら本人を御召喚願いたい。
  85. 高橋英吉

    高橋(英)委員 そんなら、茶のみ話に信用のできない男だけれども、そんなことを言つたというのですか。
  86. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そんなことを言つたと話をしておきました。
  87. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の話ですが、あなたはその当時はでたらめの話だと思つて人にしたのですか。
  88. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 いや、当時はでたらめとか、何とかいうより、一つの茶のみ話として、鈴木仙八君も率直だし、私も率直だし、そんなことを話したというように記憶しております。
  89. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 したことは間違いありませんですね。
  90. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 しました。
  91. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはたれから聽いたのですか。
  92. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それは蓑原……。
  93. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それがでたらめだというのですか。
  94. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 予想外にでたらめでありました。
  95. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたはそれをその男から聽いたと言つて、鈴木に話をしましたか。
  96. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そう言いました。
  97. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 間違つてあとから御迷惑をかけることになりますから……。
  98. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 大丈夫です。
  99. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 蓑原というのはどういう字ですか。
  100. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 蓑原昌正というので、住所は、目黒区月光町百四十五番地で、私の貸家におります。
  101. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もう一つ聽きたいのは、あなたはさつき政治のことは塩月が辻に政治家になりたいということで、私にもつてきたから間違つたと言つたが、そういうことから間違いが起つた
  102. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 時間的に食違いが非常にございまして、これは公判廷でも論点になつておりますが、あとでは政治の話も出ましたし、立候補の御盡力を得ました。当時最初にはそういうことはありません。塩月氏は露骨にあまりしやべり過ぎたという事実があるのであります。
  103. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 最初に行つたときには、あなたは立候補する意思はなかつたのですか。
  104. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 立候補する意思はまだまとまつておらなかつた
  105. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 立候補はなさつたのですね。
  106. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 立候補は後にしました。
  107. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 最初行かれたのは、先のお話では、三月中旬ということですが……
  108. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 公判以來どうも日がはつきりしないので、各関係者ともそうのようですが、私が塩月君に伴われて辻邸を最初に訪問したのは、三月の十二、三日ころが第一回じやなかつたかと思います。
  109. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そのときには、まだ立候補の意思は確定しておらなかつたのですか。
  110. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 立候補はあやふやでありました。群馬へ行つてみたり、東京へ來てみたり……。というのは、眞実を申しますと、私の心の悩みというのは、連中が大勢泊つておりまして、何とかしてやらねばならぬという洋服の悩みが大きかつたのであります。その点はいささか御判断に苦しむかしれませんが、それが眞情だつた。あえてあそこに立たなくてもよかつたのですが、どうも根拠のない惡口など言われたものだから、終いには意地になつてつたという程度であります。
  111. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 要するに、申訳に立候補したということですか。
  112. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 申訳というか、意地張りというか、いろいろの感じがはいつております。
  113. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどよくわからなかつたが、辻氏との間に軍服の話をしたことはなかつたが、ただ軍服は大分あるそうだという話だけを聞いたというように聽きましたが……。
  114. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それは茶飲み話です。この点はよく御認識願いたいが、辻さんに私は洋服を頼んだことはないということ。塩月氏の言うていることをそのまま私は信じておりましたから、私は直接口を出したことはないということです。その時期に、洋服は大分あるそうだねという話は、茶飲み話のように出た。しかし、私はそのまま先生に折返して聽いたというような事実はないのであります。聞き放しという程度であります。
  115. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 拂下をしてやるとか、そんなことは……。
  116. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そんなことはありませも。それは世耕氏に頼んでやるとか、頼んでやつたとか、その点ははつきりしないが、きわめて軽い意味で、まことに責任のないことですが、先生に頼んだということはない。
  117. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたも頼んだことはないし、辻氏もそれについて何とかしてやるということもなつかたわけですか。ただ茶飲み話の程度ですか。
  118. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 塩月氏は私に断言的なことを言うてきたのであります。
  119. 石田博英

    石田(博)委員 先ほど出ましたあなたが鈴木仙八君に話したと言われるのは、その蓑原という人の話を、あなたはある程度信じて話をされたわけですか。
  120. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 しかしこの男も飲んだくれでありまして、私は別にこれと特殊な感情をもつて話したとかいうこともない。年中飲んでいる男ですから、そういう話を聞いたつて、多少党派意職というようなことで、一時耳に止つたこともありましたが、その後は捨てておりますし、今記憶を辿つて云々という固い話はちよつとできにくい。
  121. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると、片山、西尾両氏が蓑原に対して、あなたから援助してもらいたいということを蓑原に取次いでくれという話をしたということを、あなたは聞いたのですか。
  122. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そういうことはありません。ただいま御質問のように、たれたれと、具体的の名前を順序よく並べたということはありませんが、何か平野さん他の他一、二の名前がはいつてつたよう記憶しております。それは私は確かに呼ばれました。まるで勘定拂いに行つたようなわけで、勘定を拂つてつてきましたが、たれにも会いませんでした。
  123. 石田博英

    石田(博)委員 あなたがおいでになりましたのは、蓑原さんに……。
  124. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 蓑原にだまされて、連れて行かれました。宿屋みたような所でありました。
  125. 石田博英

    石田(博)委員 しかし蓑原はどういう口実であなたを呼びましたか。
  126. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 再三うそを言う男でして……。
  127. 石田博英

    石田(博)委員 嘘であつても、蓑原があなたに言うた言葉を聽きたい。
  128. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それは辻先生に少し小遣いを頼んだけれども、まだくれないから、もつてくるのをこつちへ割いてくれというような話だと思つて、私もえらく耳に止めないで、どこで聞いたきたか、私が塩月氏の金に対する指示に基いてやつたということを、あたかも今日世間が間違えて、私が辻先生献金したという意味にとつてお騒ぎになると同じように、当時あの人は間違つてつた
  129. 石田博英

    石田(博)委員 そのときに、蓑原はその金をあなたから出してもらうために、平野氏その他の名前をあげてあなたにその話をされたのですか。
  130. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 辻先生の方にもらいに行つたけれども、もらえないということで……。
  131. 石田博英

    石田(博)委員 そうでなくて、蓑原という人が、先ほどあなたのおつしやいましたように、平野力三氏あるいはその他の人たち名前をあげて、この人たちが政治献金をして欲いているということをあなたに話されたわけですね。
  132. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それはそうではないのです。蓑原と、蓑原の親分か兄弟分か知りませんが、三浦某という者が初めに介在しておつたようです。
  133. 石田博英

    石田(博)委員 その三浦某という人が、それでは平野氏その他西尾氏なり……。
  134. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 西尾という名前ははつきりしません。平野という名前は、その後パージなんかの関係で非常に印象が深くなつておりますが、一体私は社会党関係の知人は、学校時代の友人は多いですが、最近はあまりない。
  135. 石田博英

    石田(博)委員 それで蓑原という人が三浦という人を通じてそういう話を聞いて、あなたにそれを取次ぐという目的をもつて話されたという御印象ですか。
  136. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 取次ぐというよりも、私をそこにひつぱつて行きたかつたのではないかと思うのですが、当時私は非常に忙しいときだつたものだから、塩月氏に言われたことを責任を果し得ないでそのままで別れました。
  137. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると蓑原という人は、あなたが軍服事件関係なく、そういう政治献金をなし得る余力をもつておると考えて、あなたにそういう話をされたのですか。
  138. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 もとを知つていればそういうこともあるので、十分その前に私は聞いるのです。けれどもあの当時軍服に関する特殊事情は知らないで、あるいは私の金ぐらいに考えたかもしれません。
  139. 石田博英

    石田(博)委員 そしてそういう話をすれば、あるいはそういう方面の金を出してもらえるのではないかと思つて蓑原氏は來たのですね。
  140. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そういうわけです。
  141. 石田博英

    石田(博)委員 先ほど私の質問が、もつぱら西尾あるいは平野その他の人たち関係する質問をしておりますときに、蓑原という人に呼ばれて宿屋のようなところに行つた、ということをあなたは今お答えになりましたね。そうすると御記憶ではそのとき……。
  142. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 車をもつて迎えに來まして、乘つてくれということだつた
  143. 石田博英

    石田(博)委員 その話は、西尾、平野と関係する問題を私が質問したときに、あなたからお言葉が出ましたので、その宴会に呼ばれて行くときは、西尾氏なりあるいは平野氏なりと会見をするとか、そういうことは……。
  144. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 多分四、五人の名前は載つておりました。
  145. 石田博英

    石田(博)委員 その四、五人の名前の人と会見するつもりでその宿屋においでになつたのではないですか。
  146. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 私にだれか会わせるというので行つたところが、どうもただ酒を飲んだだけでだれも來ない。それで私は帰つてしました。隣りには大勢おつたようですが、遂に会わなかつた
  147. 石田博英

    石田(博)委員 隣りには大勢おつたようだ。——その際に先ほどのようなお話を繰返されたようなことはございませんか。
  148. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ございません。ただ君、人を呼んでおいて何だと言つてつてしまつた
  149. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると呼ばれた理由は、辻氏のところに小遣いをもらいて行つたが、もらえなかつたので、あなたのところに行つた……。
  150. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 蓑原がそう言つておりました。辻先生に頼んでいるが、金がもらえない。だから頼むと言つた
  151. 石田博英

    石田(博)委員 そうするとその宿屋にあなたがおいでになつたのは、だれか先ほどの話の平野なり他の他の関連のある人に会わせるからというので、あなたは呼ばれたのですね。
  152. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 会つてくれという意味で、車に乘つて行つたのです。だれかがおつたらしいが、私に会わせなかつた
  153. 石田博英

    石田(博)委員 会わせないけれども、そのことに関係あるだれかがおつたらしいということをあなたはお考えになるわけですね。
  154. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 そういうことです。
  155. 石田博英

    石田(博)委員 わかりました。
  156. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 ただどうも私の発言が党派的に利用されると、いずれにしてもお氣の毒だと思うので、今回もこりこりしました。
  157. 大森玉木

    ○大森委員 お尋ねしたいのです。さつきから聽いておりますと、蓑原という人は非常にのんべいだということですが、そういう点から考えますと、そのときには何かを種にあなたを呼び出して自分のためにするような考えではなかつたかと、あなたは考えませんでしたか。
  158. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 それもありましよう。かなり素行の納まらぬ男です。家賃も七八年拂わん男ですから。
  159. 梶川靜雄

    梶川委員 直接関係ないから、もつと本筋にはいつてはどうかと思います。
  160. 石田博英

    石田(博)委員 問題はほかに波及されるかもしれぬから、関係ないわけではない。
  161. 中曽根幾太郎

    中曽根証人 御円満に……。
  162. 武藤運十郎

    武藤委員長 証人は余分なことを言わないでもいい。  ほかに御質問ございませんか。——それでは済みました。お帰りください。     —————————————
  163. 武藤運十郎

    武藤委員長 塩月学さんですね。
  164. 塩月學

    塩月証人 さようです。
  165. 武藤運十郎

    武藤委員長 まずあなたと辻さんと中曽根さんとの関係を述べてください。
  166. 塩月學

    塩月証人 辻さんとは二十数年前から知合いの関係でありました。中曽根君とは昨年の二月ごろ、藤川文六君から紹介されて初めて会つた人でありまして、私の中学校の後輩ということで、それから衆議院議員に群馬縣から出たいからよろしく頼むというようなことがきつたけになつて知合いになつたわけです。
  167. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんとはだいぶ長いようですけれども、どういうつきあいをしておるのですか。
  168. 塩月學

    塩月証人 特にどういうつきあいということもありませんが、政友本党時代から同じ政治の方向におりましたので、政治上においてときどき会つたという関係であります。
  169. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体政治的な関係においてつきあつておるという趣旨ですね。
  170. 塩月學

    塩月証人 そうです。
  171. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんという人は政界におけるどういう存在の人ですか。
  172. 塩月學

    塩月証人 私は政界における辻さんという意味においてははつきり認識をもつておりませんが、いろいろ辻さんという人はそのときの國家の政治について、あの人の意見を同じうするような政党のためには心から盡すというような、おのれには薄くして、志のある政治家そのほか各界の人に対して、できるだけの親切を盡すというまれに見るりつぱな人だと信じております。
  173. 武藤運十郎

    武藤委員長 政党または政治家にできるだけの親切を盡すという具体的な意味はどういうことですか。
  174. 塩月學

    塩月証人 それはあなた方が政治家であるんだから、どういうふうに盡すということは、あなた方が感じられると同じように感じておると思います。いろいろありますから……。
  175. 武藤運十郎

    武藤委員長 私の方の感ずることではないのであつて、あなたの方で感じたり、見聞したことを伺いたいのです……。
  176. 塩月學

    塩月証人 それはいろいろ親切に世話をするということであります。
  177. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは具体的に聽きますが、たとえば選挙で金が要るから心配してくれんかということで、それではよかろういうようなことも一つの例ですか。
  178. 塩月學

    塩月証人 私は辻さんについて、金銭上のことは具体的な事例を知りません。
  179. 武藤運十郎

    武藤委員長 政務次官になりたいと思うが、運動してくれんかというようなことはどうですか。
  180. 塩月學

    塩月証人 知りません。
  181. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、いろいろ親切にするというのはどういうことですか。例をあげてください。あなたの経驗した範囲で……。
  182. 塩月學

    塩月証人 私自身が経驗したことはないのですけれども、とかく人に対して親切を、何かにつけて盡すというたちの人であると見ております。それ以上の具体的なことは、私は知りません。
  183. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、物質的にどういうのではなくて、精神的に世話をするというのですか。
  184. 塩月學

    塩月証人 物質的に助けていい人は、あるいは助けるかもしれません。その人を辻さんが見て、これは助ける價値のある人であると思えば助けるかもしれません。私はその具体的な事例は知りませんけれども、そういうふうに感じております。
  185. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではいろいろ面倒をみるというのは……。
  186. 塩月學

    塩月証人 それは金銭に限らず、いろいろ世話をする人です。
  187. 武藤運十郎

    武藤委員長 世話をする、そういう話だというのですね。あなた御自身ではわからぬのですね。
  188. 塩月學

    塩月証人 そうです。
  189. 武藤運十郎

    武藤委員長 中曽根氏を連れて辻氏のところへ金をもつて行つたことがありますか。
  190. 塩月學

    塩月証人 あります。
  191. 武藤運十郎

    武藤委員長 幾度ぐらいもつて行かれたのですか。
  192. 塩月學

    塩月証人 二度です。
  193. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつ、いくらです。
  194. 塩月學

    塩月証人 昨年の二月二十日ごろ六十万円。それから二十五日くらいだつたと思いますが、四十万円。それか中曽根が政治界にはいりたいというので、手みやげとして辻さんに差上げたいがという話があつたから、私が辻さんに取次いでやりました。そのとき辻さんは、條件つきの金ならば要らない、いくら大きな金でも條件つきの金なら受けつけるのはいやだ、無條件なきれいなものならば、喜んで受けてもいいというような話でありました。
  195. 武藤運十郎

    武藤委員長 前もつてあなたが辻さんにお会いになつて中曽根という男がこういう金を出すと言つているが、もらいませんかという話をなさつたのですか。
  196. 塩月學

    塩月証人 はあ、しました。それは辻さんだけの人に対して、ぶしつけに中曽根が、いくら金があるから差上げたいがと言つても、受けるかどうかわかりませんから、あらかじめ私から辻さんにお話をしました。
  197. 武藤運十郎

    武藤委員長 しかし辻さんのところへ金をもつて行くという話を始めたり、考えたりしたのはあなたであつて中曽根ではないのでしよう。
  198. 塩月學

    塩月証人 それは彼が今度詐欺事件が起つてから故意にそういうことを言つております。
  199. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると献金したいというのは、中曽根氏が先に辻さんというものを指定して、あの人に献金したいということを言つたわけですか。
  200. 塩月學

    塩月証人 献金をしたいということよりも、彼は政治界に出たいという志をもつて——当時関東織物の社長として、あるいはその前に中曽根タングステンの社長というようなことをしておつて、経済人として非常に有力な人物であるということを、みずからも語り、あるいは彼の周囲におつた狹間祐行からも聞かされておりましたが、もう経済人としては普通の人の十分に満足のいくような過去を経てきたから、これからひとつ政治界に働きたい。こういうわけで、自分の全力をあげて政治的にきれいに使いたいというような話をしておりましたから、結構だと思つて私は紹介しました。
  201. 武藤運十郎

    武藤委員長 それならば辻さんのところへもつて行くのがよかろう、こういうことになつたわけですか。
  202. 塩月學

    塩月証人 中曽根という人は当時自由党から立候補して政界に出たいというような話であつたから、私から辻さんのところに紹介しました。
  203. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は自由党とどういう関係があるのですか。
  204. 塩月學

    塩月証人 自由党とは、從來から大体自由党の主義政策が國家のために最もいいという考え方を辻氏はもつておりました。
  205. 武藤運十郎

    武藤委員長 自由党の政策が國家のためにいいという考え方をもつておる人は、ひとり辻氏に限らないと思いますね。
  206. 塩月學

    塩月証人 それはそうです。
  207. 武藤運十郎

    武藤委員長 政界にはいつて自由党から選挙に出たい、それについては財力をあげてやりたいというならば、何も辻氏のところに行かなくても、自由党には本部もあるし、総裁もあるし、幹事長もおるし、幹部もおるから、そつちにもつて行くのが私ども一般の常識から言いますならば順序だと思うけれども、特に辻という人のところへもつて行くのはおかしくないですか。どういう意味ですか。
  208. 塩月學

    塩月証人 それは本人の自由意思ですから……。
  209. 武藤運十郎

    武藤委員長 いやあなたが……。
  210. 塩月學

    塩月証人 私が命じたのではない。本人が手みやげにもつて行くというのだから、あえてそのことを私がかれこれ言う必要はないと思います。
  211. 武藤運十郎

    武藤委員長 本人が辻さんのところへもつて行きたいと言うのですか。
  212. 塩月學

    塩月証人 そうです。
  213. 武藤運十郎

    武藤委員長 それじや辻さんというのは前から知つてつたのですか、中曽根さんは……。
  214. 塩月學

    塩月証人 知らぬのです。
  215. 武藤運十郎

    武藤委員長 知らぬというのは……。
  216. 塩月學

    塩月証人 知らぬというのは面識はあまりないが、辻さんを尊敬しておるような様子でありました。
  217. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういうふうに……。
  218. 塩月學

    塩月証人 辻さんという人は偉い人で、自分献金を受けたつて決して私すべき人でない。私も有効に使う人であるというふうに見ておつたと思います。
  219. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではあえてあなたの紹介を経て、あなたと一緒にもつて行かなくてもいいように思うけれども、特にあなたの紹介であなたと一緒に行くというのは、ちつとおかしいことはないですか。
  220. 塩月學

    塩月証人 それは、私は彼が政界に出たいというそもそもの話のときから、藤川文六君を通じて紹介され、知合いになつた関係紹介したのです。
  221. 武藤運十郎

    武藤委員長 きのう私が辻さんに園つて聽いてきたところによると、あなたはよく知つておるけれども、中曽根という男は大体知らないと言つておる。
  222. 塩月學

    塩月証人 知らないのです。
  223. 武藤運十郎

    武藤委員長 塩月氏が紹介して金をもつてきたから、受取つたというようなことを言つているのですが、どうもあなたの言う話と少し違う。
  224. 塩月學

    塩月証人 いや違いませんよ。それは中曽根君は辻さんと從來知つていないから、私を通じて知合いになつた。面識がなくても、辻さんという存在に対しては中曽根君も相当知つてつたと思います。
  225. 武藤運十郎

    武藤委員長 当委員会がしつこく聽くのは、世の中に二百五十万円という金を、いくら尊敬しておつて、かゲながら知つてつたかもしれませんけれども、とにかく二百五十万円という金をひよこつと献金に行くということは、普通では想像ができない。辻という人がどういう政界における存在であるかということを十分に認識して、しかる後にもつて行くのが普通だと思う。そこであなたにいろいろな角度から聽いておるわけです。
  226. 塩月學

    塩月証人 十分にお聽きください。まあ辻さんはしかし政党ばかりじやない。私は社会のそのほかの方面に対しても相当長い間いろいろ世話してきた人だと思つております。
  227. 武藤運十郎

    武藤委員長 そこへ金をもつて行つたのは、中曽根氏が政界にはいつて選挙をやりたいという趣旨だというお説でありますけれども、中曽根氏に聽くと、そうじやないんだ。実は軍服拂下をしてもらいたい。それについてはどうすればいいかということになると、一着百円ぐらいの割合で納めたい。納めなければならぬというような話があなたからあつて、あなたの指定されるままに、辻という人は知らなかつたが、あなたがそこへもつて行けばいいというわけで、軍服拂下のコンミツシヨンというか、一着百円の割合によるお礼かな。六百万円ぐらい出すつもりであつたが、その内金という趣旨で、塩月氏の指定するままに、指定する場所に、指定する人にもつてつたんだ。殊に塩月氏の行かない場合には、自分はもともと辻さんを知らないから、塩月さんから、小生の代理の中曽根を遣わすから会つて受取つてもらいたいというようなことで、名刺をもらつてつたようなわけであつて、すべてそれは軍服拂下のために金であり、塩月さんの命ずるままに行つたというようなことを先に言つておりましたが、
  228. 塩月學

    塩月証人 それは基廷でも言つております。それはこの事件詐欺事件としてすでに世間にうわさされる時代になつて、彼がそういうことを主張したというようなことを聞きましたので、私は昨年の六月、彼が碑文谷警察で櫻井檢事の取調べを受れて帰つたときに、まつたくわれわれの夢にも思わないことを言う男だと思いましたので、私は紹介者の藤川文六君の家に中曽根君に來てもらつて、こういうことを私は彼に尋ねた。軍服問題に絡んで政党献金ということがかれこれ世間にうわさされておるのはどういうわけか、政党献金軍服拂下とはまつたく無関係ではないかというようなことを私はなじつた。ところが私に対して、いやあなたからは、軍服一着について献金百円をしてくれとは聽かなかつたが、藤川君からそういうことを言われた。それで藤川君の言うのには、あなたすなわち塩月の意思も含まれておるものと自分が感じたから、櫻井檢事に対して塩月から言われたということを中曽根君が言いました。ちようどそこには、彼の義弟になつておる軽根農業会の方の関係者足立という人も來合せておりまして、四人のところで、私はとにかくこの問題が法律問題になるとすれば、係裁判官の前では、自分のために有利なことをうそでも言う。そういうことになればたいへんだから、男らしく言うたことは言う。言わぬことは言わぬということを、ここではつきりしようではないかというような話から、今言うような話をいたしましたところが、いやあなたからはそういうことは聽かぬけれども、藤川君から聽いて、あなたの意思であると思つて檢事には言いましたというので、私は藤川に対して、君は僕の意思を無視して、そういうことを中曽根君に言うたのかと、藤川は私は詰問しました。ところが、いや自分もそういうことは断じて言つた覚えはないと言い切つて中曽根はそれ以上私が言うたとも、藤川が言うたとも織張し得ない。当然なことでありまして、うそをつくつた言うのでありますから主張はできなかつた。それで昨年の十月、この事件法律問題化して、再び檢事の前において彼がそういうことを主張しておりますけれども、政党献金問題と軍服拂下問題は何らの関係はありません。この軍服拂下問題というものは、こういう詐欺事件の起るべき性質のものではないのであります。私が世耕君から、炭鉱関係ならば摘発物資の中の軍服を優先的に拂下げられる。農業会等に対しては拂下げることは困難であるが、炭鉱関係ならば拂い下げる可能性がある。書類を出せというので書類を出した。その前に中曽根が、自分の家内の郷内の関係で、青森県の軽米農業会軍服が欲しい。長問何がしというものに対して軍服を頼んであつたが不成功に終つて、百万円ばかりの損をしておる。こういう氣の毒な状態だから、何とか軍服があるならばというような話をしたのを藤川君が聽いて、世耕君に話して、それでまあ申請書を出したらよかろうということが発端で、そして世耕君のところに行つて話したところが、農業会はだめで、炭鉱関係ならばというようなことで書願を出した。私が当時考えたことは、相当数量炭鉱関係に拂い下げたならば、あるいは農業会の事情を訴えたならば、軽米農業会に二千着なりあるいは三千着くらいは、事情を言えば、横流しでなくて、同情的に政府の拂下げた價格でわけてもらえるだろう。そういう関係を全國鉱山会に行つて話して、そこから申請書を出すように努力したらよかろうということから、これは世耕君から書類を出した。ところがもし拂い下げをした後において横流しをしてはいかぬから、関係官廳の裏書きを出してもらいたいということで、私は先方にそのことを言うて、商工省の鉱山局の裏書きを出した。これに対して世耕委員長は、近いうちに委員もできて、こういう問題を議にかける機会があつたならば、早速議にかけて何とかしようという程度に問題が進行中でありましたので、この間に詐欺事件等が起る余地はなかつたのでありますが、そういう拂下げの可能性を見たところに、またそれを種にしていろいろな方面から金が集められたところに本件が派生的に発生しておるのでありますから軍服払下げの問題と献金というような問題は全然関係はない。
  229. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体あなたの言われることは承つておきますが、いつか鳩山さんの燒跡に建てた家の建築費が足りないというので、三十万円ばかりあなたと藤川さんとの両名で出したことがありますか。
  230. 塩月學

    塩月証人 私は中曽根君からもらつた金の中から二十万円出しました。
  231. 武藤運十郎

    武藤委員長 だれに払いましたか。
  232. 塩月學

    塩月証人 それは守住という人を通じて建築請負業者に拂つたのです。これは藤川君から話されると思いますが、二月の中ごろだつたと思います。たまたま藤川君と一緒に鳩山さんのところに行つたところ、実は鳩山さんの燒跡に小さい家をつくるので、いろいろ準備しているが、二月一ぱいで計築許可の期限が切れる。二月一ぱいに柱一本でも建てないと許可が取消されて困るという話があつた。そこで藤川君の名刺に建築請負業者の会社の社長のような名前が載つてつたので、辻さんがそれを見て、君は土木建築に関係があるならば実は鳩山邸の事情がこうだから何とか建築業者に話をして、許可の取消しのないようにしてくれないか、柱一本を建ててでも、とにかく許可を取消されないようにしてくれないか、ただそれだけのことを藤川君が頼まれた。それでいろいろやつているうちに、建築業者からとりあえず金が要るのだがというような話があつたところに、辻さんの手もとに当時金がなかつたものと見えて、何とかとりあえずしておいてくれないか、迷惑はかけない。金はあとで支拂いをするから、許可が取消されないようにだけしてくれというので、藤川君の手から十万円請負業者に拂つた。三月の末まだ辻さんの方からも金が出ないでおつたときに、私の方からとりあえず二十万円立替えておいたわけであります。
  233. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの方から二十万円、藤川さんから十万円、合せて三十万円を、請負人は内藤という人ですか。
  234. 塩月學

    塩月証人 そうです。
  235. 武藤運十郎

    武藤委員長 立替えるというのはどういうわけですか。
  236. 塩月學

    塩月証人 あとで辻氏から金をくれる、迷惑はかけないからとりあえず何とかしてくれというので……。
  237. 武藤運十郎

    武藤委員長 一時そうしたのですか。
  238. 塩月學

    塩月証人 そうです。
  239. 武藤運十郎

    武藤委員長 それを返してもらうつもりだつたわけですか。
  240. 塩月學

    塩月証人 そうです。向うは初めからそういう意味つた。建築してくれというのでない。許可を取消されぬようにしてくれということであつた。先ほどの辻さんに対する献金問題と軍服問題は直接関係はありませんが、中曽根君が軽米農業会に対して先ほど申し上げましたような事情から、何着かの軍服がほしいというような話がありましたので、世耕君がせつかくああいうのであるから、軍服を鉱山会に拂下げてもらえることは実現するであろうと思つておりましたが、いつどれだけの数量の物が拂下げてもらえるか確定的のものでなかつたから、辻さんと世耕さんとも親密であるから、ただ口添えを頼みたい。私からもそのことは辻さんに話して、世耕君に全國鉱山会にできるだけ早く拂下げてもらいたいということを頼んでくれと、辻さんと私も申しました。
  241. 武藤運十郎

    武藤委員長 わかりました。実はあなた方この中曽根さん、藤川さん、問さんですか、それが一諸に話をしたこともあるし、別にも話をしたようですが、軽米農業会水野殖産、鵜飼、池ケ谷、中村商事、中華新々公司、そういうところから金を受取るときに、軽米農業会については鳩山邸の新築に金が要るのだ、それからまた自由党献金せんければならんということを理由としており、その他の水野、鵜飼、中村、中華等に対しては、いずれも自由党献金をするのだというような話で受取つたのではありませんか。
  242. 塩月學

    塩月証人 私は全然そういう関係はありません。檢事廷における調書を見て初めて驚いたわけであります。タツチしておりません。初め中曽根君が藤川に対して政治献金をして、その一部を藤川から私はもらつておきました。そのほかのことは一切関係はありません。
  243. 武藤運十郎

    武藤委員長 それからあなたがもらつた金というのは、軽米農業会から金七十万円、水野殖産、鵜飼、池ケ谷の際六十万円、中村商事の際二十万円、中華新々公司に対し五万円、合せて百五十五万円ですか。
  244. 塩月學

    塩月証人 違います。
  245. 武藤運十郎

    武藤委員長 どう違いますか。
  246. 塩月學

    塩月証人 私はそれらの個々の人から一厘の金ももらつておりませんし、またそういう金に対してどういう金であるかということを中曽根から一度も聽いたことはありません。初め五十万円を、藤川に対して中曽根が、きれいな政治献金だから受けてくれと言われたからといつて藤川が受けた、そのうち二十万円を私にくれて、そのほか中曽根が私に対して、政治資金として当時選挙を控えておりましたから、選挙費用の一部を差上げたい、使つてくれというので、私はきれいな金だと思つてもらいました。それから九州に立つときに七十八万円等、それは藤川の方からきた金であります。
  247. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうですが、何か委員諸君お尋ねになることがありますか。
  248. 梶川靜雄

    梶川委員 塩月証人に伺いたい。先ほど委員長が尋ねておりましたように、辻氏が自由党の主義政策の共鳴者であるということはよくわかりました。しかしながらあなたが中曽根氏を辻氏に立候補のために紹介されたということは、言い換えれば、自由党からの立候補であるからというので、辻氏に紹介されたということは、辻氏が自由党に対してどれくらいな発言権をおもちだとお考えになりましたか。
  249. 塩月學

    塩月証人 党に対する発言権というものがどれだけあるかということは、私は知りません。
  250. 梶川靜雄

    梶川委員 しかし自由党に対して発言権のない者に、自由党の立候補であるからというので、そういう人に紹介するということはおかしいじやありませんか。
  251. 塩月學

    塩月証人 それは辻さんも私は自由党のシンパだと思つておりますし、そういう人がどういう金をどういうふうに使うか、それは辻さんが使うのでありますから……。
  252. 梶川靜雄

    梶川委員 金の問題は全然尋ねておりません。金の問題でなくして自由党から立候補したいということは、言い換えれば、自由党の公認候補に中曽根さんがなりたい。あなたも自由党から公認候補として中曽根を出してやりたい。そのために辻氏に紹介されたということに今の結論になると思います。
  253. 塩月學

    塩月証人 公認問題については辻さんも骨を折つておりました。
  254. 梶川靜雄

    梶川委員 そこで、公認問題について辻さんが骨を折つたというのはどういうぐあいに折衝して骨を折られたとあなたは見、またそれを予想して紹介されたわけですか。
  255. 塩月學

    塩月証人 公認問題というのは、いずれ東京支部長をしておつた当時の大久保君にあるいは頼んだかもしれません。
  256. 梶川靜雄

    梶川委員 相当骨を折つてつたと言われるからには、かもしれんということでなくして、辻氏がどういうぐあいに骨を折つたかということが問題だと思うのです。
  257. 塩月學

    塩月証人 そういう公認問題に関係する人に対して、中曽根という男はこういう男だから公認してやつてはどうかというふうに努力したように本人から聞いております。
  258. 梶川靜雄

    梶川委員 それでは公認問題は支部長の一存で決定するのですか、支部において決定するのですか。
  259. 塩月學

    塩月証人 それは支部長だけではいかぬ。やはり地元の空氣やあるいはその情勢によつてきまることで、これは一般的にあなた方がお感じになつていることと私の感じとちつとも違わぬのです。
  260. 梶川靜雄

    梶川委員 いやその感じがわからないから尋ねているのです。
  261. 塩月學

    塩月証人 私はそれ以上の知識はありません。あなた方が一般的に考えておられる普通常識的に考えておられる程度で……。
  262. 梶川靜雄

    梶川委員 普通常識的と言われるが、われわれは辻氏が公認問題に対してどのくらいの発言権をもつているかということがわからないですから、内部のあなたに聞いているのです。
  263. 塩月學

    塩月証人 どれくらいの発言権というのは……。
  264. 梶川靜雄

    梶川委員 実質的にどういうふうな方法でやられ、どういうふうな人に折衝され、その結果公認になつたのかならないのかということなのです。     〔委員長退席、河合委員長代理着席〕
  265. 塩月學

    塩月証人 公認になつたようなならないような結果だつたのです。初めはりつぱな候補者だと思つてつたが、途中に——われわれも知らなかつたのでありますが、前に詐欺事件の問題があつて執行猶予中でそういう資格がない人があえて立候補しておつたので——本人以外はたれもそういうことを知らないので、実は私ども選挙が済んで後九州から帰つてきて驚いたわけです。選挙の半ば過ぎくらいのときにはそういうこともほぼ知れておつたようで、折角辻さんが努力したけれども、正式な公認にならなかつたように聞いております。
  266. 梶川靜雄

    梶川委員 次にさつきのお話では、あなたは中曽根から直接に七十八万円お受取りになり、藤川から受取つた五十万円のうち二十万円を受取り、合計九十八万円を直接間接に受取られたわけですね、そこでこれを受取られたということはなるほど政治献金ではあるが、やはりあなたが軍服の問題あるいは辻氏に紹介云々で中曽根に対して骨を折つたつた。要するに世耕委員長の間を斡旋してやつたから中曽根もくれたのであつて、そういう関係がなかつたならばくれなかつただろうということはあなたは御想像になるでしよう。
  267. 塩月學

    塩月証人 私どもは中曽根君が軍服によつて金を得て、それを種にして金をもうけようというふうに思つておりません。非常に金持ちであるし、これから自分のもつておる財産は全部政治的に使うのだ、自分は二百万円の選挙費用を使うと言つておりました。これくらいのことは何でもないのだ。お前にも今度の選挙には金が余計要るだろうというので、私も驚くほど向うで余計くれた。
  268. 梶川靜雄

    梶川委員 わかりました。
  269. 塩月學

    塩月証人 私は金をもらいました。金をもらつたことと軍服を世話したことは精神的にはきれいなのです。向うも私をきれいに援けてやろう、農業会軍服を拂い下げてもらつてそれが一部、あるいは二千着か三千着か農業会にやる。事情を言つて普通人が理解する程度で物事が当り前にいくだけの世話をしてやるということは、人間の人情ずくで当然だと思つて一生懸命私も世話してやつた
  270. 梶川靜雄

    梶川委員 あなたがそう言われればそれ以上追究しませんが、九十八万円という金をあなたはどういうふうに御使用なさいましたか。
  271. 塩月學

    塩月証人 それはいろいろ政治上に、あるいはまた自分生活関係に使いました。
  272. 梶川靜雄

    梶川委員 いろいろな、ではわからない。大体わかつた主なるところだけ言つていただきたい。特に政治上と言われますが、あなたは御承知のごとく選挙の途中においてパージになつておる。從つてそれ以後は政治活動はやられないはずである。もしもやつておれば御承知のごとく勅令違反で処罰を受ける。從つてパージの問題が決定すると同時に、あなたの政治活動は打切られたと私は信じておる。從つてあなたはそれ以後長く政治活動をやつてこれを小刻みに使われたとは思わない。だから九十八万円は、中曽根から受取られてからわずかの期間ですから、相当使途ははつきりしておると思う。あなた自身も長く政治生活をやつておるから、別にこの金を生活資金に使わなければならぬほど落ちぶれておられるとは思わない。これだけの金は、あなたが期待した金ではなくて、びつくりするほどたくさんくれたと言われるのは、おそらくあなたはパージにならぬ期間にこの金を消費せられたものと推定できる。從つてあなたはそれをどういうふうに使われたかということはおわかりになつておると思う。
  273. 塩月學

    塩月証人 それはわかつております。だから金額が多いことにびつくりしたのではなくして、中曽根が私にくれる金としては額が多い。予期したより多かつたと言うのです。その中の金を二十万円、辻さんがあとで何とかすると言つたから、鳩山家の建築の請負師の支拂いに要るというので、昨年三月末でしたか、とりあえず二十万円私は出しました。それから中曽根政治資金としてもらつたという金を私は藤川から二十万円もらつておりましたから、その金を藤川を返す意味藤川にやりました。そのほか私のこまごました政治準備に使つた
  274. 梶川靜雄

    梶川委員 そうすると明らかになつておるのは四十万円ですから、五十八万円というものをあなたはこまごましたことに使われた。そのこまごましたというのは——その五十八万円をわずかな期間にどういうぐあいに使われたか。あなたは先ほど言われましたように、この金は金額としては大きくないが、中曽根がくれるにしては割合に多いということは、あなた自身が感ぜられるように、あなたの生活費というものは別途にあるべきはずのものであり、あなたはこれを生活費に充てるべく期待しておつた金ではない。從つてそうした金をどういうぐあいにあなたが使われたかということです。
  275. 塩月學

    塩月証人 実は全部政治資金——それは選挙だけではない。政治家としては將來も政治生活ほ送つていきますから、選挙費に必要なだけ使つて、余つたならば將來の政治活動の資金として——選挙だけではありません。政治家がいろいろ活動するには金が要りますから、そういう方面に使おうと思つておりました。余つた金は自分でもつておると、とかく生活困難なときになくなりますから、家にして適当の時機にそれを再び金にして返そうと思いまして、今そういう方面に対して準備しております。
  276. 梶川靜雄

    梶川委員 家にして……。あなたはすでに家を買われたのですか、買わないのですか。
  277. 塩月學

    塩月証人 家を買つてあります。
  278. 梶川靜雄

    梶川委員 いくらで買つたのですか。
  279. 塩月學

    塩月証人 それは二十五万円ばかりです。
  280. 梶川靜雄

    梶川委員 二十五万円ですね。そうするとあとの二十三万円は、そのうち選挙資金ばかりでないとあなたも言つておられるのですか、それをもらわれてからあなたがパージになられるまではわずかな期間ですが、どういうぐあいに使われたのですか。選挙運動にいくら、何にいくらということを伺いたい。
  281. 塩月學

    塩月証人 額はとにかく、選挙準備費と自分生活費に使いました。
  282. 梶川靜雄

    梶川委員 一つお尋ねします。あなたの平素の生活資金は、どういうふうな方法によつていくらぐらい出ておりますか。
  283. 塩月學

    塩月証人 平素というと何ですか。
  284. 梶川靜雄

    梶川委員 この金とは別にあたなの当時の生活費……。
  285. 塩月學

    塩月証人 私は從來事業を何もしておりません。政治家として人から頼まれたことを眞正直に努力していけば、おのずから人から私の生活をやつと支える程度の金は自然にはいつてきて、選挙のときは、また自然に大体必要な程度にはいつておりまして、そのときどきの時勢によつて変化してきます。
  286. 梶川靜雄

    梶川委員 時勢によつて変化いたしますが、あなたは当時再年の三月ごろに、大体どれくらいな金がはいつて、どれくらいな金が必要だつたのですか。
  287. 塩月學

    塩月証人 それははつきり覚えていませんが、やはり月に一、二万円は必要であります。
  288. 梶川靜雄

    梶川委員 月に一、二万円しか必要でない人が、半箇月ほどの間に三十三万円なくなるのですか。
  289. 塩月學

    塩月証人 半箇月ですか。
  290. 梶川靜雄

    梶川委員 そうです。
  291. 塩月學

    塩月証人 それはいくらいか、その後も半箇月でなくて続いておりまして、追放になるし、仕事はなくなるし、人から頼まれることも自然なくなつて生活も困難しておりまするから、自然そつちにいくらか使い込む。そういうことをおそれて家にしておいて、將來また現金化して返そうという意図のもとに保存しております。
  292. 梶川靜雄

    梶川委員 わかりました。あなたがこのほかに現金を受けられた額は、おおよそどのくらいに上りますか。
  293. 塩月學

    塩月証人 二十四、五万円くらいです。
  294. 梶川靜雄

    梶川委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、先ほど仰せられました中曽根からもらつた九十八万円は、金額としては大したものではなかつたと言われた。金額としては多いと思わなかつたが、中曽根にしては割合に多かつたというのは、あなた自身、中曽根からもらう九十八万円以外に相当にあるとわれわれ了解せざるを得ないのですが、今の証言によりますと、相当な食い違いをわれわれは感じてくるのです。これはどういうぐあいですか。九十八万円が多くないようなあなたは、ほかに相当の收入をもつておられるということを感じるのです。
  295. 塩月學

    塩月証人 そういう意味でなくて、何か九十八万円と言うと、びつくりするような大きな金のように聽えたから、それはそうではない、九十八万円、百万円の金を私はそう大きいようにも考えていません。
  296. 梶川靜雄

    梶川委員 次に金を家に換えておくという、その金は將來政治活動を続けていくために正当な方面に使うということを先ほど言つておられたが……。
  297. 塩月學

    塩月証人 それはそうではないのです。それはこういう詐欺事件が起つてきて、その金が農民というような方面から出ておるのだということを聞いてびつくりしまして、それではできるだけ金を出した人の方に、自分はその事件に直接関係はなかつたとはいえ、氣の毒だから、何らかの方法を通じて、当時まだ法律問題化しておらなかつたけれども、道義的に当然私は返さねばいけないと感じておりましたから、当時から人にそう言つて、こうするのだということを申しておりまして、家にして今日もつております。     〔河井委員長代理退席、委員長着席〕
  298. 梶川靜雄

    梶川委員 去年の選挙にはあなたは中曽根からもらつた金でやられたわけですが、一昨年の選挙にはどういう方法で資金を得られたわけですか。     〔「それは越権行為だ、答弁無用」と呼ぶ者あり〕
  299. 塩月學

    塩月証人 それは從來いろいろな世話をしておつた友人関係からと、自分のいくらが貯えておつた全部をさらけ出して選挙をやつたので、選挙をやるたびに常に裸になります。
  300. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか——それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  301. 武藤運十郎

    武藤委員長 藤川文六さん、あなたと辻嘉六さん、それから塩月学さん、及び中曽根幾太郎さんとの関係を述べて下さい。
  302. 藤川文六

    藤川証人 辻嘉六さんは、塩月氏の紹介で知り合つたのであります。塩月氏は私が選挙区が御承知のように同縣でありますし、政治の先輩として存じ上げております。中曽根幾太郎という人は、昨年の二月上旬だつたと思いますが、私の弟と中曽根の長男が知合いになつたのを機会に私に紹介になつたのであります。
  303. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年ですね。あなたと塩月さんと中曽根さんと一緒に辻さんの所に行きましたか。
  304. 藤川文六

    藤川証人 行つたことがあります。
  305. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつごろ行かれましたか。
  306. 藤川文六

    藤川証人 日時ははつきり覚えませんが、二月の十四、五日ごろ、あるいは二十日ごろじやなかつたかと思います。もつと遅かつたと思います。二月の下旬だつたと思います。
  307. 武藤運十郎

    武藤委員長 二月の下旬ごろ——どういう御要件で行きましたか。
  308. 藤川文六

    藤川証人 中曽根君は政治家として立候補したい、辻さんを紹介してもらいたいというお話でありました。
  309. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうですか。政党はどういう政党でやりたいというのですか。
  310. 藤川文六

    藤川証人 当時政党ははつきりしませんでしたが、希望では自由党から出たいというお話でありました。
  311. 武藤運十郎

    武藤委員長 自由党から選挙に出たいときには、辻さんの所に行くのですか。
  312. 藤川文六

    藤川証人 いえ、そうじやありません。私どもは、その関係は知りませんが、辻さんを紹介してもらいたいという中曽根の切望であつたと思います。
  313. 武藤運十郎

    武藤委員長 中曽根の方から辻さんに紹介してもらいたいと言つたのですか。
  314. 藤川文六

    藤川証人 その点は私はよくわかりませんが、多分そうだつたと思います。
  315. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのときに中曽根さんは辻さんを知つてつたのですか。
  316. 藤川文六

    藤川証人 知りませんでした。
  317. 武藤運十郎

    武藤委員長 全然初めて……。
  318. 藤川文六

    藤川証人 初めてです。
  319. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かもつていきましたか。
  320. 藤川文六

    藤川証人 何ももつていきません。
  321. 武藤運十郎

    武藤委員長 空手で行つた……。
  322. 藤川文六

    藤川証人 はあ。
  323. 武藤運十郎

    武藤委員長 中曽根さんも……。
  324. 藤川文六

    藤川証人 そうです。
  325. 武藤運十郎

    武藤委員長 塩月さんも……。
  326. 藤川文六

    藤川証人 そうです。
  327. 武藤運十郎

    武藤委員長 その後あなたは塩月さん、中曽根さんと一緒に行つたことはありませんか。
  328. 藤川文六

    藤川証人 ありません。
  329. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは中曽根さんが辻さんに金を六十万円と四十万円、現金で二回、その後、三回目に百五十万円を小切手でもつてつて献金をしたということは、あなたは知らないのですね。
  330. 藤川文六

    藤川証人 そうです。
  331. 武藤運十郎

    武藤委員長 話も聞きませんか。
  332. 藤川文六

    藤川証人 話は事件になつてから聞きました。
  333. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつごろですか。
  334. 藤川文六

    藤川証人 この事件が表面化するようになつてから、始めて聞きました。
  335. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねになることはありませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  336. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さんでした。     —————————————
  337. 武藤運十郎

    武藤委員長 山本英吉さんですね。今どういうお仕事ですか。
  338. 山本英吉

    ○山本証人 中央公論の編集長をやつております。
  339. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは戰爭前からあつた中央公論と経営その他は同じですか。中央公論では戰爭前からずつと長い歴史があるようですけれども、あれの引続きですね。
  340. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。
  341. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは編集長として、この雜誌の編集についての責任はあなたがもつておられるのでしようね。
  342. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。
  343. 武藤運十郎

    武藤委員長 三月号に「政治と金」という題で九鬼千丸という人が書いておりますが、御存じですか。
  344. 山本英吉

    ○山本証人 はい。
  345. 武藤運十郎

    武藤委員長 この九鬼千丸という人は御社とどういう関係ですか。たとえばあなたの方の社の記者であるとか、全然寄稿の立場にあるものであるとか、そういう意味です。
  346. 山本英吉

    ○山本証人 その記事は、つまり一人で書いたものじやなくて、ある程度調査スタツフを設けまして、そうしてそれをまとめましたのがあるわけです。     〔「よく聽えぬから、もう一遍繰返してください」と呼ぶ者あり〕
  347. 武藤運十郎

    武藤委員長 もう一遍繰返してください。
  348. 山本英吉

    ○山本証人 私の方としまして、いろいろな問題につきまして一人の筆者がそれを全面的に十分書き得ない場合が多うございます。それで調査スタツフと言いますか、数人の人にいろいろ意見を聽きまして、なるべく全面的に問題を取上げるというふうな意味で、それを九鬼という匿名で筆記して……。
  349. 武藤運十郎

    武藤委員長 その調査スタツフというのは、あなたの社の專属の記者をもつて構成するわけですか。
  350. 山本英吉

    ○山本証人 それをまとめましたのは、今私どもの方にはおりませんが、当時編集部員だつたと思います。その者がいろいろ諸方面から聽いてまとめたのです。
  351. 武藤運十郎

    武藤委員長 私どもの知識では、スタツフということになると少くとも二名以上が一つの固まりをなして、有機的な連繋のもとに、ある一つの問題を調査なら調査するというようなことであると思うけれども、ただ一人の人があつちこつち聽きまわつて記事をまとめるのならば、それは探訪の記者か何かがやることであつて、スタツフとは言えないのではないですか。
  352. 山本英吉

    ○山本証人 そういう意味ではないのです。
  353. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう意味ですか。
  354. 山本英吉

    ○山本証人 そういうものを社に專属に置いておるわけではないのです。ですからいろいろ各方面の人々の意見を聽いてまとめた、そう言つていいわけです。
  355. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうするとスタツフというのは、普通の意味におけるスタツフではないですね。
  356. 山本英吉

    ○山本証人 それは前の表現がいけなかつたわけであります。そういうものを將來は設けたいという意図がその当時はあつたわけなのですが、まだそういうものは整備されていないわけです。
  357. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではこの記事は、調査スタツフというもので調査したものを総合して、九鬼千丸という人の変名で書いたのではなくて、九鬼千丸と称せられる名前の人があつちこつちのニユース・ソースから引出して、この一人が書いたということになりますか。
  358. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。
  359. 武藤運十郎

    武藤委員長 九鬼千丸という人は、本名は何と言うのですか。
  360. 山本英吉

    ○山本証人 それは実は外部に発表したくはなかつたのですが、今はこういう場合ですから申し上げます。八木岡英治と言います。
  361. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはどこに住つておられますか。
  362. 山本英吉

    ○山本証人 世田谷区北沢二の二九二です。
  363. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはアパートでも何々方でもないわけですね。
  364. 山本英吉

    ○山本証人 はい。
  365. 武藤運十郎

    武藤委員長 これで郵便は届きますね。
  366. 山本英吉

    ○山本証人 届きます。
  367. 武藤運十郎

    武藤委員長 電話はありませんか。
  368. 山本英吉

    ○山本証人 ありません。
  369. 武藤運十郎

    武藤委員長 この人はあなたの社とどういう関係がありますか。
  370. 山本英吉

    ○山本証人 前に社員でありまして、今はやめております。
  371. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつからいつまで社員でしたか。
  372. 山本英吉

    ○山本証人 いつからと申しますと、ちよつと記憶がはつきりしておりませんが、解散になります少し前でありますから、昭和十七、八年ぢやないかと思います。それから一度途切れまして、最近また戻りまして、多分先月の末ごろやめました。
  373. 武藤運十郎

    武藤委員長 三月の末ごろやめたのですか。
  374. 山本英吉

    ○山本証人 はあ。
  375. 武藤運十郎

    武藤委員長 この人はどういうふうな経歴をもつた人ですか。学歴、職歴等。
  376. 山本英吉

    ○山本証人 詳しいことはちよつと存じませんが、多分水戸の高等学校を出たと思います。そのあとはどこの学校でしたか、よく聽いておりません。それから中公にはいりまして、解散になりましてから、多分放送局に勤めていたと思います。それからまた戻つたわけです。
  377. 武藤運十郎

    武藤委員長 大分いろいろな各問題について記事を書いておるようですけれども、これを読んでみますと、非常に廣範囲のようですが、あちらこちらというのは、主としてどういう方面から集めたものですか。
  378. 山本英吉

    ○山本証人 それは八木岡君がやりましたことで、私はよく承知しておりません。
  379. 武藤運十郎

    武藤委員長 詳細は八木岡さんにもおいでを願つて本日聽くわけになつておりますが、まだお見えにならない。あなたは編集長としての責任者でありますし、大体記事を載せる場合には編集長が目を通されることと思うのです。相当重大な問題が取扱われておるものですし、殊に普通の論文とか、寄稿なら別ですけれども、政界における知名の人士、あるいは政党その他をとらえ來つて、本名を出して金銭の取引その他へ述べておる。非常にここに書かれた人には重大な問題であるし、取話われた党にとつても重大だと思います。それらが載せられる場合には、前もつてあなた方が編集長として、殊に中央公論のごとき全國的な歴史をもち、読者をもつておる有名な雜誌には、相当嚴選して、ただ單に記者が書いたから載せるというのではなくて、編集長が重大な責任をもつて載せるものだと思うけれども、そういう点について從來そういうふうな編集方針をおとりになつておるのではないかどうかということと、この場合についてその方針に從つて掲載されたのではないということを伺いたい。
  380. 山本英吉

    ○山本証人 今おつしやられましたように、私どもとしましては、できるだけいい原稿を載せたい、そういう氣持をもつてつておりました。先ほど申しましたように、その原稿につきましては八木岡君がまとめたものなのでございます。それで一應私が目を通しまして、載せることを承認して載せたわけでございます。
  381. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、この原稿をあなたがごらんになつて、できるだけいい原厚を載せたいという編集方針に合致するという判定のもとに載せられたわけですね。
  382. 山本英吉

    ○山本証人 さようでございます。
  383. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、この中に取扱われているいろいろな人物あるいは取引というようなことは、大体において事実によるものだというお考えですか。
  384. 山本英吉

    ○山本証人 別にそういうふうには考えません。と申しますのは、先ほども申しましたように、八木岡君が各方面の意見を聽きましたまとめたわけであります。それで私がそれを読みましたときに、その執筆の仕方にも相当注意して読んだつもりであります。その原稿は、大体そういう事実があつたというよりも、そういう事実が言われているということ、そういうふうな態度で書かれているというふうに私は見たわけであります。
  385. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは私はそういう取話い方もあると思います。ただこの取扱つているのを見ると、なるほどうわさによればとか、そういう話であるとか、評判があるとか、そうであるそうだというような言葉が、大体において事実の切れ目ごとにその前後に使われている。事実を断定しているような形では話われてはおりませんけれども、しかし読者に與える印象は、中央公論がこれを掲載しているということによつて、本当の眞実性を読者に與える。そのことは、最近巷に溢れているような名前の新しい雜誌、これも必ずしも惡いと限りませんけれども、割合と責任をもたれないような雜誌とは違うと思うのであるが、そういう点はあなたは自負していいと思うし、僕も敬意を拂つてつているのだけれども、どうも中央公論の取扱い方として、あなたの言われる、できるだけいい原稿を載せたいということとは、やや離れているような扱い方ではないかと思うのですが、いかがですか。
  386. 山本英吉

    ○山本証人 今のお言葉にもありましたけれども、中央公論の読者と申しますのは、相当の文化人と申しますか、インテリと申しますか、批判力をもつている読者だと思います。そういう読者の要求にこたえるためにそういうものを載せる、それが私どもの態度であります。
  387. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、ここに書いてある事実は結論的に申しますと、必ずしも事実を調査して、大体において事実に合つているという根拠のもとに書かれたものではないのであつて、あちらこちらで聞いて、うわさなり想像なり評判なりというものを興味本位に書いた、そういう性質の原稿であり、そういう角度に立つての編集であるというふうに理解してもいいですか。
  388. 山本英吉

    ○山本証人 今のお言葉の中に興味本位ということがございましたが、私どもとしましては、読者がそういうものに興味をもつだろうということは感じますけれども、興味本位でそういうものを掲載しておるのではありません。
  389. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのほかはよろしうございますか。
  390. 山本英吉

    ○山本証人 さようでございますね……。
  391. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どうも先ほどから聽いていると、あなたは編集責任者であると言われたが、一体編集責任とはどういうことですか。
  392. 山本英吉

    ○山本証人 実はちようど三月号の奧付に編集後記というのがございまして、そこに書いてございますが、編集責任ということ、つまりジヤーナリストの編集責任がまだ私どもとして、望ましいことじやないのですけれども、十分に明確にされていないわけです。その点をもつと明確にしなければならないという意見をそこに書いてございますが、現状におきましてはまだその点がはつきりいたしておりません。
  393. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなた自身はどういうものだと思つておるのですか。
  394. 山本英吉

    ○山本証人 どういう意味でしようか。
  395. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 編集責任者の法律的の責任を聽いてはいません。法律的には明らかになつておるが……。
  396. 山本英吉

    ○山本証人 ちよつとどういうふうに明らかになつておるかおつしやつていただけませんか。
  397. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたがどう考えておるか。編集責任者であるあなたは責任を負担しておるというその責任をあなたはいかに認識しておられるか。
  398. 山本英吉

    ○山本証人 どういう意味のことですか。
  399. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 法律上編集責任者という者をきめますね。何ゆえに編集責任者をきめますか。あなた自身が責任をもつ以上はどういう責任があるか。はなはだどうも先ほどから聽くと無責任なように聽こえる。
  400. 山本英吉

    ○山本証人 そういうつもりで申しておるのではございません。今のお言葉も、私頭が惡いと申しますか、はつきりしないものですから、日本の法律でどうたということをおつしやつてくだされば私お答えできるのですが。
  401. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 編集上においては責任者というのはその載せたものには責任をもつ。責任をもつて載せるということが責任者だ最いう。従つてこれに間違いがあれば責任を負いますということがあなたの責任だと思う。
  402. 山本英吉

    ○山本証人 そういうことはちよつと申せません。つまり雜誌に載つておる論文の内容が全部事実であるかどうか、ということはわれわれの責任であるということは私は断言できません。つまりいろいろの筆者がいろいろの考えでもつて論文なり何なりを書きます。それを私は編集しておるわけです。その掲載したことの責任を私にあるのです。
  403. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それを言うのです。掲載した以上は責任をもつんだろう。
  404. 山本英吉

    ○山本証人 掲載しておることは、論文の中の事実なり事見がすべて正しいということを私は承認するわけではございません。
  405. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたは学説とか論説と事実の記事ということをごつちやにしております。学説や論説はその人の意見だからそれは別に責任をもたせられないが、事実として載せた以上は載せるだけの責任がもてなくちや載せられぬはずだ。
  406. 山本英吉

    ○山本証人 しかしそれは先ほど申し上げました編集後記に書いてございますが、つまりその内容につきましての責任の限界が編集者と執筆者とどの程度関係にあるかということが、私どもの観念においてまだ明確になつていないのでございます。それでそういう点においてももつとはつきりして、かなくちやいけないんじやないかと思います。
  407. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではあらためて聽くが、もし記事において名誉毀損の事実があれば、責任者はそれに対する責任を負わなければならぬことになつておるわけでしよう。
  408. 山本英吉

    ○山本証人 掲載したことに対して責任を負わなければならぬと思います。
  409. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 だから覚悟の上で、何が載つてもいいというのですか。それともいやしくも責任があるのだから、罰金さへ出せばいいというわけではないでしよう。
  410. 山本英吉

    ○山本証人 当然そうです。
  411. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじや責任をもつて、これは載せて差支えないということで載せているのじやないですか。載せた責任があると言うからには、それだけの責任を負うだけの覚悟をもたなければ載せられぬわけだ。
  412. 山本英吉

    ○山本証人 そうでございます。
  413. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると、どういうものが事実であるかないか知らぬが、ただそういううわさがあるというような、うわさによつては大変人の名誉にさわるし、殊に中央公論なら人は信じますよ。そこに編集者の責任が出てくる。それに対して、私はどういうことか知らぬが、筆者が書いてきたから載せるということは、いやしくも中央公論の編集責任者としてそれでいいでしようか。載せる以上はこれには自信がある、信念がもてるということがあるから載せるのだろうと思う。
  414. 山本英吉

    ○山本証人 先ほどは言葉が不足しましたと思いますから申し上げますか、日本の民主化と申しますか、日本の民主政治が正しくありたいということ、これに対して中央公論が何らか寄與したいという氣持でやつております。その場合に國民の中にこの民主政治に対して、あるいは議会政治につきまして、いろんな疑惑的なもの、いろんなうわさ、そういうものを感じておりますね。それに対してぜひこの民主政治というものを明朗なものにしたい、そういうものに何らかプラスするものでありたい、こういうわけです。
  415. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはまことに結構です。それに違いないが、しかしあなたの方から言えば、第三者を正しくあらせたいという目的のためにあなたの方が不正なことを書いたらどうしますか。民主化をあなたの方でぶち壞すことになりますよ。
  416. 山本英吉

    ○山本証人 不正と申しますけれども……。
  417. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 不正と言いますか、事実無根とか慮偽ということがあつたらどうしますか。     〔武藤委員長退席、河合委員長代理出席〕
  418. 山本英吉

    ○山本証人 それは先ほど申しましたように、そういううわさがあるということですね。これは新聞の上でも、あるいはほかの雜誌の上でもそういうことが実際取上げられておるのじやございませんでしようか。
  419. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 事実あなたの方で外部のものを正しくしようというので書いておられるのでしよう。それは結構です。あななが外部を正しくするのは結構だが、そつちで不正なことをすれば、世間一般がその不正なものでごまかされます。迷いますよ。いい加減なものをただ人が書いてきたから載せるというような……。
  420. 山本英吉

    ○山本証人 いい加減なものという御言葉でございますが、私どもはそういう意味ではないのでございます。
  421. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 だからある程度自信があるのでしよう。
  422. 山本英吉

    ○山本証人 そういうふうに言われているということは、うそじやないと思います。言われていることは事実だと思います。
  423. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それならよろしいが、何だか世間のうわさを人が書いてきたからというような言われるので……。
  424. 山本英吉

    ○山本証人 うわさの内容が事実であるということは、私どもは判定する力はないわけです。
  425. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ところがうわさだけでは、いわゆる世間話であつて、捏造のものであつてもうわさになります。そこでかようなことを書かれては困るといつてこられたら、あなたの方は責任を負わなければならないじやないですか。
  426. 山本英吉

    ○山本証人 それは法律問題になりました場合には、責任を負わざるを得ないわけであります。
  427. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうしてみれば、うわさというものの、何らかの根拠があることでなかつたら載せられぬと思いますが、いかがですか。
  428. 山本英吉

    ○山本証人 その場合に、ある特定の人を誹謗しようとしているのではなく、先ほど申しましたように日本の民主政治を明朗なものにしたい、その氣持で批判しているわけでございます。
  429. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたは誹謗せぬつもりでおつたところが、事実に違つておれば書かれた者にとつても偉大な誹謗になるのではないですか。
  430. 山本英吉

    ○山本証人 それはたまたま政治と金ということが、そういうふうになつておりますけれども、政治というものは批判を許されておるわけですから、われわれはそういう批判を雜誌の上で扱つておるわけであります。
  431. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 政治論と人のやつた不正事実とを混同されては困ります。私はそれ以上は言いませんが、先ほどからのお話を聞くとそういうふうに聞きますよ。
  432. 山本英吉

    ○山本証人 それでは私の言葉が足りなかつたのです。
  433. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうことではなかろうと思う。それだけの責任のあることを感じておられるならば、その責任のもとにやつておられるならば——私はそういう責任を知らないというならば別ですけれども、感じておられるならばそれでよろしゆうございます。
  434. 石田博英

    石田(博)委員 私は実はあなたと同樣の出身でありまして、同じような立場におつたことがあります。從つてその立場から若干お尋ねをしておきたい。今鍛冶君とのお話の中に、日本の民主化を徹底させるために現在の政治の中にいろいろうわさされておることを取扱うのだ、こういうことをおつしやいましたが、民主化の徹底ということは、同時に編集者なりあるいはジヤーナリストなりが、自分の取扱う記事あるいは自分の執筆した記事を——物を執筆いたしますときには、特に意見でなく事実に根拠を置いてそれを取扱う場合におきましては、その記事の内容について最善の努力をする、そしてみずからその信憑性を固く信じてこれを出すということが、ジヤーナリストとしての責任であると私どもは考えておる。同時に私どもが編集あるいは記事の取捨選択に当りました場合においてもその建前に立つておりましたので、私どもがあなたの立場におりましたならば、この記事を掲載いたします場合に、その記事の出所につきましてその執筆者に念を押して、そうして編集者も自分自身でその記事の信憑性を信じ得て、初めてこれを掲載するのが私どもの建前であると思うのであります。あなたは、といううわさがあるとか、といわれておるという言葉が記事の中に方々にある、これは確かにその通りです、それだから自分はその事実について責任を負う必要がないのだ、それは確かに一つの理屈としてはその通り申せますけれども、読者に與える影響というものは、その細部までは読まないものです。言葉のおしまいまでは読まないものです。この際特に申し上げておきたいと思うのであります。そこでお伺いしたいことは、八木岡という人は中央公論社の編集記者で、編集長であるあなたの部下であつたわけですね。この記事を八木岡君に執筆させる場合に、あなたは八木岡君にこういう主題で記事を書いてこいということを御命令になつたのでありますか。
  435. 山本英吉

    ○山本証人 それは私どもでは編集会議というのがございまして、こういうテーマを扱つたらよいじやないかということをいろいろ編集部員が出しまして、それでやろうとかやるまいというようなことになるわけですが、その場分に多分八木岡君の提案によつてそれを行つたと思います。
  436. 石田博英

    石田(博)委員 八木岡君の提案によろうとだれの提案によろうと、編集会議の決定されたことは、あなたが責任をもつて命令されるという結果になるわけですね。
  437. 山本英吉

    ○山本証人 そうであります。
  438. 石田博英

    石田(博)委員 その場合に、あなたは冒頭に、各方面の人々に当つて調査をしてみたいというお話がありました。私どもはそういう意見を……
  439. 山本英吉

    ○山本証人 ちよつとお待ちください。それは八木岡君がですよ。
  440. 石田博英

    石田(博)委員 わかりました。それはもちろんです。その場合にその調査の範囲方法は、全部これを八木岡君にお任せになつたものでありますか。
  441. 山本英吉

    ○山本証人 そうであります。
  442. 石田博英

    石田(博)委員 それとも今日うわさに上つておりますいろいろの命題があります。昭和電工の問題とか、その他の土木建築業者に対する融資、あるいは支拂金の問題とか、その他軍服事件いろいろな事件がありますが、それらの事件についていろいろの疑惑を含んでおる問題があり、それは特にいろいろな政治勢力との連関があります。そこで中央公論が公平な立場に立つために、それらの問題全般にわたつて不公平なく取扱いをなすようにという話をなさいましたか。あるいはその記事を執筆するにあたつて、できるだけくわしく調査をして、事実に基くものを書くようにという指示は、当然私は編集責任者としてあつてしかるべきだと思うのでありますが、そういう指示はなさいましたか。
  443. 山本英吉

    ○山本証人 別にしたおぼえはありません。
  444. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると、調査内容あるいは方法その他については、全部八木岡君に任せられたのであつて、あなた自身は、この記事を取扱う場合にあたつては、事実の信憑性を確かめようというお氣用は全然なかつたのですか。うわさを方々で聞き集めて、それを面白おかしく書いてこいという指示を……
  445. 山本英吉

    ○山本証人 いいえ、面白おかしくとは……。
  446. 石田博英

    石田(博)委員 面白おかしくは言過ぎですが、そういううわさを集めて、それを記事にしろということをお言いになつたわけですね。
  447. 山本英吉

    ○山本証人 それは一切任せたわけです。
  448. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると事実の信憑性という点については、あなたは全然考慮を拂わなかつたわけですね。
  449. 山本英吉

    ○山本証人 うわさがあるということは事実だと思いましたから、それはやはりそういう意味で事実だと思つて
  450. 石田博英

    石田(博)委員 つまり火のないところに煙は立たないという……
  451. 山本英吉

    ○山本証人 そういう意味じやありません。
  452. 石田博英

    石田(博)委員 うわさがあるということだけが事実ですか。
  453. 山本英吉

    ○山本証人 そういうわけでございます。
  454. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると、先ほど編集者の建前として、日本の民主化を徹底させるために何らかの寄與をするという目的で編集されておるということですが、單なるうわさを、事実を確かめないで権威ある雜誌に載せるということは、民主化を徹底させることとあなたはお思いになるのですか。
  455. 山本英吉

    ○山本証人 つまり先ほど申しましたように、こういう委員会がつくられておりましたりすることは、やはりそこに問題があるからつくられているのだろうと思う、それに対して國民はいろいろの関心をもつていると思う。それで、そういう問題についていろいろな人々の話をまとめて掲載する、そうしてできるだけ明朗な民主政治にしたい……。
  456. 石田博英

    石田(博)委員 私どもはあなたと同じような立場におつたことがありますが、私どもの考え方では、そういう問題を事実を確かめないで取扱うということは、これは興味本位だと思う。事実を確かめて、できるだけ調査をして遺漏なきを期するということが私どもの建前であつた。また私どもはそういうふうに訓練もされ、そういう心構えでおつたのですが、こういう委員会がつくられるからそういううわさがあるのだ、そのうわさを紹介するということが日本の民主化のためになるとは私どもは考えませんが、問題の主題でありませんので……
  457. 山本英吉

    ○山本証人 ちよつとその点でありますが、國民の間にいろいろ言われ、あるいは新聞にいろいろの問題が書かれております。それが事実であるか事実でないか、それは私なら私が、私個人あるいは社が、一々の問題に当つて徹底的の調査をするということは、望ましいことではありますが、なかなか不可能です。やはりそういうことの眞偽は、こういう委員会でもつておきめ願いたい……
  458. 石田博英

    石田(博)委員 それは当然です。それは当然ですが、あなたがその記事を組まれる場合に……
  459. 山本英吉

    ○山本証人 ですから、すべてを調査して、事実を確かめた上で載せろとおつしやることは、ちよつと御無理のような……
  460. 石田博英

    石田(博)委員 そうじやありません。編集者自らがその信憑性を信じないものは載せない方がよろしい、少くともあなた自身が信憑性を信じないで、それをあなたの雜誌に載せるということは無責任だと思う。あなた自身が信憑性を信じながら、何らかの意図をもつて言葉を左右にしておる、私の常識からすればそう思う。およそわれわれが記事を取扱つて、その記事を天下に明らかにする以上は、編集責任者は当然その事実の信憑性については、それを信じて出すものです。私どもはそう思う。あなたがその事実の信憑性を知らないで出されるとは、私どもは考えられません。それであなたが少くともあなた自身の考え方によつて事実の信憑性を十分調査されて——先ほど調査さしたとおつしやいましたが、調査させるというのは、うわさをかき集めさしたのですか、それとも事実があるかないかということをおそらくお聽きになつたでしよう。そのうわさをかき集めさしたというのは、私から言わせれば調査とは言えない。しかし私はあなたがおそらく他の目的をもつて、今日そういう発言をせられておるものと考える。それはこの委員会が單に政界の浄化だけでなく、財界、言論界その他一般の浄化を目的として設立せられておるから、私はあなたと同樣の立場に立つた人間として、特に編集責任者として、ただいまのあなたのような御発言は私は容認できません。私自身はいやしくも権威ある新聞雜誌に掲載された以上は、その掲載された記事の及ぼす影響を当然考えます。その政治的、経消的、社会的あるいは道徳的影響というものを考える。從つてその掲載を許可する以上は、その事実の信憑性については、少くとも信じて載せるものであります。それが私どもは新聞、雜誌のジヤーナリズムの公正を期するゆえんであろうと考える。あなたも御同樣だろうと思う。重ねてその点について、あなたは事実の信憑性を信じておらなかつたか、どうかということを伺いたい。
  461. 山本英吉

    ○山本証人 先ほど申しましたように、いろいろ世間にそういうことについての疑問をもつておる。そしてそれが民主政治というものに対して非常に暗い影を與えておる。しかしまたそういう民主政治を進めることは國民の責任でもある。そういう意味において、國民をいろいろ啓蒙しなければならぬわけです。その目的のために掲載した。
  462. 石田博英

    石田(博)委員 それならば、事実から事実でないかわからないうわさのものを雜誌に載せることが啓蒙になりますか。少くともあなた自身だけは編集者あるいは執筆者だけは事実であると確信するものを載せてこそ、初めて政治を明朗にするものであつて、うわさあるいは為偽かもしれないことを、しかもそのこと自身が政界を不明朗にしておることをあなたが取扱うことは、政界を明朗にされるものとは私どもはとうてい思いません。
  463. 山本英吉

    ○山本証人 うわさがあることは事実だろうと思います。
  464. 石田博英

    石田(博)委員 うわさがあるということは、火のないところに煙は立たぬという意味からいえば、事実だということにもなる。それはあなたが独断でそう思われるのなら結構です。しかしあなたはそうじやないでしよう。うわさが方々に一ぱいあるということは事実でしよう。そのうわさの内容眞実であるか、眞実でないかということをあなたは知らないとおつしやるでしよう。
  465. 山本英吉

    ○山本証人 それはどの程度に完全に事実その通りであるか、あるいはどの程度のものであるか、そこで私どもとしては……。
  466. 石田博英

    石田(博)委員 だから、それを明らかにするために、あなたは八木岡という人の提案を容れて、各関係者あるいは事情を知つておる人のところに八木岡をやつて、さらにどの程度眞実であるかということを調べ、その材料を集めて書かしたのでしよう。
  467. 山本英吉

    ○山本証人 書いたわけです。
  468. 石田博英

    石田(博)委員 八木岡君にそのうわさをさらにつつつんこで、どの程度に事実であるかどうかということを確めさせて書かしたのですか。
  469. 山本英吉

    ○山本証人 いや、八木岡君が書いたわけです。
  470. 石田博英

    石田(博)委員 しかしあなたは責任者でしよう。だれが書いても、結局あなたが責任者だということに間違いない。そういう意味においてやらしたのでしよう。
  471. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。
  472. 石田博英

    石田(博)委員 その場合に、どの程度に事実であるかということをできるだけ調査さして載せたのでしよう。
  473. 山本英吉

    ○山本証人 そこはさつきから繰返して言つております。
  474. 石田博英

    石田(博)委員 繰返して言つているというが、あなたは八木岡がやつたのはうわさを集めただけだとおつしやる。私たちお互いジヤーナリストという立場から考えまして、自分で事実と信ぜられないようなことは私どもは書きません。また書かないのが建前だろうと思う。それがジヤーナリズムの信頼を高めるゆえんであり、そしてそれがやはり政界や各界を明朗化するゆえんなんですよ。その建前には御異存はないでしようね。それは完全を期せよといつても、あらゆる問題についてあなたの社員に全責任をもつて調べて來いということはできないかもしれません。しかしここに取上げられた問題に限られた範囲においては、あなたが載せた以上、その事実の信憑性の確めてから載せたのじやないかと思う。
  475. 山本英吉

    ○山本証人 そうじやありません。
  476. 石田博英

    石田(博)委員 そうすると、あなたは私どもの考えから言えば、編集者として非常に無責任だと思う。あなたは編集責任の所在が明らかでないから、明確にしなければならないと編集後記に書かせたと言われたが、編集責任を明確にするのは、他人が明確にするのではない。編集するその人自身の責任が明確になつていなければ、他の人を云々したところで編集責任は明確にならないと考える。
  477. 山本英吉

    ○山本証人 その点ですが、ある記事をお願いするに際しまして、その人の意見、思想問題をお書きになる場合に、これは余談でありますが、編集部である原稿を依頼してできてきました場合に、編集部の依頼通りの原稿ができる場合とできない場合とございます。それからまた書かれてきた記事に対して、必ずしも編集部がそれに納得できない、つまり同一意見でない場合もあり得ます。そういう場合に、編集者として一体どの程度に訂正することができるか、できないかという問題がある。そういう場合に、御承知かもしれませんが昨年でも山川菊榮さんの問題がございましたが、編集部で削除訂正して載せた場合に問題が起りまして、それは著作権の侵害であるというふうなことになつたわけであります。そういうことになりますと……。
  478. 石田博英

    石田(博)委員 これは問題が違うでしよう。論説と一般の記事と問題が違つていると思う。私はあなたは專門家とは思えません。論説と事実とは違うわけでありますから、あれは論説じやありませんよ。
  479. 山本英吉

    ○山本証人 それは純粹な事実の記事のみとは言えないわけであります。その趣旨が先ほど申しましたように、民主政治というものを明朗化させたいという趣旨のもとに一貫して書かれているものであります。
  480. 石田博英

    石田(博)委員 その問題はあなたと見解があくまで違います。そういうことは天下に通り議論じやないと思う。八木岡君という人はあなたの部下でしよう。あなたの社の社員でしよう。あなたが依頼して書かせた人じやないでしよう。あなたの部下の社員が執筆された記事について、あなたの社では著作権を認めているのですか。
  481. 山本英吉

    ○山本証人 そんなことはありません。
  482. 石田博英

    石田(博)委員 そうじやないでしよう。社員として給料を拂つており、あなたの指揮下にある以上は、どんな記事を書こうとも、それはあなたの責任でやらせたことなんです。     〔河井委員長代理退席、委員長着席〕 だから、あなたのさつきおつしやつた意見と、事実を探訪し、調査して調べたものとは違う。それから執筆者が社内の人と、社外の著作権を尊重しなければならない立場の人とは全然違う。あなたの今の御意見は、この問題には全然関係がないと思います。この問題はあなたがあなたの社員を使つて調査させ、そして書かせた記事でしよう。
  483. 山本英吉

    ○山本証人 はい。
  484. 石田博英

    石田(博)委員 それならば、あなたは編集責任を明確にするという建前からするならば、あなた自身が事実の信憑性を確めて書かせるのが当然だと思う。あなたはあくまで事実信憑性を確めないで、單なるうわさを羅列するだけで日本の民主化を促進させることができるとおつしやいますか。
  485. 山本英吉

    ○山本証人 それは根本の趣旨が……。
  486. 石田博英

    石田(博)委員 趣旨を聽いているのじやない。つまりあなたはその事実の信憑性を信じておられるかどうかを私は聽いております。しかしこれは水かけ論になりますが、あなたがあくまでも事実の信憑性に責任を負えないというならば、私どもはいわゆる編集長の責任の所在、言論道というものが非常に地に落ちたことを観則するだけであります。
  487. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたは何か考え違いをして固くなりすぎている。私はあなたを追究しようとも何とも考えていない。あなたはうわさを載せられるというが、うわさは眞実のこともうわさになれば、虚偽のこともうわさになる。こうお考えになりませんか。
  488. 山本英吉

    ○山本証人 そうでございます。
  489. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 うわさには虚偽もあれば、眞実もあるのでありまして、先ほどあなたが言われたように、日本民主化のために事実を利らかにしなければならないということは結構だが、虚偽のことを載せてやられることになれば、それは民主化のためどころではない。人心を惑わしめるものです。あなたはそれに対して何と思われるか。
  490. 山本英吉

    ○山本証人 そうでございます。
  491. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 してみれば、いやしくも中央公論ともあろうものが人心を惑わしめるがごときものを載せて、民主化のためとは言えやしないじやありませんか。
  492. 山本英吉

    ○山本証人 そういたしますと、そこに書かれている事実がすべてうそであるとおつしやるわけですか。
  493. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうじやない。あなたはいやしくも虚偽を載せぬという信念くらいあるだろうと言うのです。  もう一つ聽きますが、あなたは八木岡がうそを書いてきているとは思つていないでしよう。あり得るうわさだと思つているのでしよう。
  494. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。あり得るうわさです。つまりあなたのおつしやる意味は、書かれてあることがすべて眞実のことがうわさになつている、そう私が思つて載せたのか……。
  495. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その通りだ。
  496. 山本英吉

    ○山本証人 その点は眞実であるかどうかということはわからない。そういうことがあり得るかもしれないということです。
  497. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あり得るというのは荒唐無稽にあらずということでしよう。從つて八木岡は荒唐無稽なことを書くものでないとあなたは信じて載せたのでしよう。それを私は聽いているのです。
  498. 山本英吉

    ○山本証人 そうです。
  499. 徳田球一

    ○徳田委員 証人にちよつとお尋ねいたしますが、大体編集責任者は政治的、社会的責任は別として、法律上には新聞紙法上、出版法上の責任がありますね。これははつきりしたものである。私の言うのはそれである。そうするとこういうことに関しましては名誉毀損その他が起り、出版法上違反が起れば、從つてあなたが責任を終わなければならぬ、そういうのですね。そういう責任を十分とつてこれを載せたものですね。
  500. 山本英吉

    ○山本証人 もつて載せたものです。
  501. 徳田球一

    ○徳田委員 その限りにおいては間違いはないですね。そうなれば名誉毀損その他を起すことはないという確信をもつて書いた、出版法上、新聞紙上違反にならないという責任を十分もつて出されたことになりますね。
  502. 山本英吉

    ○山本証人 その点が、私まだ中央公論の編集長になりましてそう期間がないものでありますから、どういうような法律の條文があるかはつきり存じておりませんので、今の法律の点でお答えすることはむずかしいのであります。
  503. 徳田球一

    ○徳田委員 あなたは法律家でないからこまかいことは御存じないでしようが、しかしあなただつてジヤーナリストとして相当期間やつておられたからそれで編集長になられたはずでしよう。何ら雜誌の編集などに対して経驗がないというわけではないでしよう。
  504. 山本英吉

    ○山本証人 中央公論の編集長になりましたのはつい最近であります。
  505. 徳田球一

    ○徳田委員 あなたが編集やその他の業務に関して全然経驗のないお方じやないでしよう。
  506. 山本英吉

    ○山本証人 そうでございます。
  507. 徳田球一

    ○徳田委員 それならはつきりしておる。あなたは新聞紙法上、出版法上編集長として負うべき責任の限りにおいてこれを載せられたということは確かでしよう。
  508. 山本英吉

    ○山本証人 そうでございます。
  509. 徳田球一

    ○徳田委員 それ以上言いません。それならば名誉毀損その他のものでない、單なるうわさじやない。でたらめのうわさを載せれば名誉毀損だ。
  510. 山本英吉

    ○山本証人 先ほど申しますように問題になりましたならば、責任は私が負います。
  511. 徳田球一

    ○徳田委員 その点です。私の方はそれだけで結構でございます。
  512. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。
  513. 田中角榮

    田中(角)委員 簡單に一言だけ御質問申し上げます。あなたが編集長としてうわさの存在を信ずるか、眞実であるかないかをわかつておらないということは私自身の感覚でも納得できます。しかし編集長としては、少くとも八木岡氏が書いて來たものに対しては、眞実であるなというくらいのことは一應念を押されたと思いますが、全然八木岡氏が書いて來た記事に対してあなたは御質問なり念を押すなり、御自分の責任上なさなければならないことをなされたかなされないかということだけお聽きしたいと思います。もし御質問なさつたならばどういうことを御質問なさつたか、確かにあなたは全然その眞実を信じないでも、編集長の責任として大丈夫だろうな、この記事はというくらいの念は当然お押しになるのが常識であろうと思います。
  514. 山本英吉

    ○山本証人 別にその点は押してなかつたと思います。
  515. 田中角榮

    田中(角)委員 押してあれば重大な問題になります。そういう意味でくどく聽いておるのであります。
  516. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  517. 武藤運十郎

    武藤委員長 済みました。御苦労さまでした。
  518. 石田博英

    石田(博)委員 この問題に関連して、この委員会の目的が單に政界だけでなく経済界、財界あるいは言論界全般の淨化におかれておりまする以上、ただいまの中央公論の編集長のような編集態度をとつてやられること自身が、いろいろ不測の誤解を招いたり、あるいは問題の所在を明らかにしなくなるわけで、この際特に速記録の上に言論界の淨化のために編集責任者の道徳的あるいは社会的な責任を痛感されんことを本委員会として要求するということを留めておきたいと考えております。  次に当然のことでありまするが、今の八木岡君を証人として喚問せられたいという動議を提出いたします。
  519. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは九鬼千丸こと八木岡英治君を來る五日の午後一時に再び呼び出すことにいたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十二分散会