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1948-04-14 第2回国会 衆議院 不当財産取引調査特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月十四日(水曜日)     午後一時五十五分開議  出席委員   委員長 武藤運十郎君    理事 辻  寛一君 理事 河井 榮藏君    理事 荊木 一久君 理事 小松 勇次君    理事 石田 一松君 理事 田中 角榮君    理事 中野 四郎君       石田 博英君    尾崎 末吉君       高橋 英吉君    平澤 長吉君       古島 義英君    益谷 秀次君       明禮輝三郎君    足立 梅市君       佐竹 新市君    山中日露史君       橋本 金一君    矢野 政男君       野本 品吉君    田中 健吉君       徳田 球一君  委員外出席者   辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題について出   頭した証人         議     員 中野 寅吉君         議     員 倉石 忠雄君         参議院議員   淺岡 信夫君                 鳩山 一郎君                 福井 ます君                 中村津萬子君                 森山 邦雄君                 保利  茂君                 石田 左近君 四月十三日委員池谷信一君及び伊藤恭一君辞任に つき、その補欠として尾崎末吉君及び本田英作君 が議長の指名で委員に選任された。 同月十四日理事武藤運十郎君の補欠として河井榮 藏君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  一、辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題  一、証人出頭要求に関する件  一、委員派遣に関する件  一、理事互選に関する件     —————————————
  2. 武藤運十郎

    武藤委員長 これより前日に引続きまして会議を開きます。  証人の喚問をいたします。本日お見えになつておる証人鳩山一郎さん、中野寅吉さん、淺岡信夫さん、福井ますさん、中村津萬子さん、森山邦雄さん、この順序で伺います証言を求めます前に一言証人諸君に御注意を申し上げておきます。御承知通りこの不当財産取引調査特別委員会は、政界、官界、財界の淨化を目的といたしまして、特に衆議院に設けられたものであります。当委員会はこのたびいわゆる世耕情報をめぐる中曽根幾太郎氏の軍服拂下事件に関連いたしまして、辻嘉六氏から政界の各方面に相当多額の金円が散布されておる、こういう問題の調査を取上げた次第であります。なおこの金の中には、中曽根幾太郎氏が詐欺疑いがある行為によつて多くの國民に迷惑をかけた金二百五十万円も含まれておるのでありまして、当委員会はこの辻嘉六中曽根幾太郎両氏をめぐるこれら金銭授受関係を徹底的に糾明するために、本日証人諸君に御出頭願つたわけであります。  証言を求めます前に宣誓をしてもらうのでありますが、宣誓についてなお一言注意を申し上げておきます。昨年十二月二十三日公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことになつております宣誓または証言を拒むことのできる者は、証言証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人の後見人または証人の後見を受くる者の刑事上の訴追または処罰を招く虞のある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき及び医師歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職に在る者、またはこれらの職に在つた者が、その職務上知つた事実であつて、默祕すべきものについて尋問せられたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことができないのであります。しかして証人が正当の理由がなくして宣誓または証言を拒むときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人虚僞の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつていただきたいと存じます。それでは宣誓をしていただきます。御起立を願います。どなたか代表してお読み上げ願います中野さんひとつお願いします。     〔証人中野寅吉君各証人を代表して宣誓
  3. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは鳩山さんから一番初めに始めます。ほかの証人の方は、別室でお休みを願います。  それでは鳩山さんに伺いますが、辻嘉六氏とあなたとの関係を、やや詳細にお話を願いたいと思います
  4. 鳩山一郎

    鳩山證人 辻君とはずいぶん古くからの知合いであります。何年ごろからから記憶がないのであります。しかし特に辻君好意をもつてくれましたのは、私がほとんど政界から脱退したような形になりましたときから、親交を加えたようなわけです。政界にあまり出入しなくなりましてから、毎週私の家へ魚を届けてくれるというようなことから、だんだんと交りが深くなつたわけであります辻君は、このごろはずいぶん金がたくさんあるようでありますが、以前はさほど金に自由ではありませんで、ある年の暮などはなかなか窮迫した状態だと見えまして、私の家に來て、たしか二万円くらいだつたと思いますが、どうしても用立ててくれということで、それを用立てたこともあります。それから辻君が、水からガソリンができるというようなことをある人に言われまして、それを信じましたために、結局大分損はしておつたのでありますが、辻君も水からガソリンがとれるという詐欺に加担していたのではないかという疑いを受けまして、檢事局に何日か勾留されたことがあります。私は最初から辻君がだまされておるということを心配しまして、よく注意をしたくらいでありますから、辻君が水がガソリンになるということをいつわつて、ほかの人に迷惑を加えるようなことは断じてないことを知つておりましたために、檢事局に参りまして、私が保証人となつて、引受けてきたことがあります。そういうようなことからして、辻君がいろいろ私に対して好意をもつようになつたのであります。あらましそのくらいのことでございます
  5. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、政治的にはそう深い関係はなかつたわけですか。
  6. 鳩山一郎

    鳩山證人 政治的にはございません。
  7. 武藤運十郎

    武藤委員長 一昨年の春ごろですか、あなたの燒けた小石川の家の燒跡へ家を建ててやろうというようなことが、辻氏から話が始まつたことはございませんか、もしあつたとしますならば、どういうことで始まつて、どんな計画でありましたか、金はどこから出ることになつてつたかというようなことを伺いたいのであります
  8. 鳩山一郎

    鳩山證人 私の音羽の家が燒失いたしまして、私は東京に他に住宅をもつておりませんので、私の友人たちがそういうような話をずいぶんしておりました。しかし金は辻君が出すのではないかしらんと、私は想像しておつたのであります辻君は私が知らない間によく私のために金を使つていた人であつたものですから、このたびの私の家をこしらえてくれるという問題についても、大分部辻君が出すのではないかと思つておりました。辻君が家を建ててやると言つたことも事実でありますし、その他いろいろの人が家を建てるということを言つておりました。ただいまでもまだ家をだれも建てないものですから、あの家を建てるというようなことを私に申込んでいる人はあるのであります。けれども問題になつている家ですから、ただいま建ち腐れにしてあるのでありますけれども、その当時もいろいろの人が建ててやるというような話を聽いておりました。それを辻君のところでまとめて建てだしたのであろうと推測をしておりました。辻君中曽根から金をとつたとか、あるいは中曽根その他の人が私の家のために金を出したというようなことは、昨年檢事局で調べられまして初めて知つたのであります。以前に中曽根という人にも会いましたことなく、藤川あるいは塩月君は私がパージになりました後に私の家を訪問したこともないのでありますから、それらの人が私のために金を出したということは全然夢想もしておりません。
  9. 武藤運十郎

    武藤委員長 その辻氏の話で建て始めた家は何坪ぐらいの家で、どのくらい建築費がかかるかというようなことについてお聞きになつておりませんか。
  10. 鳩山一郎

    鳩山證人 その家を建てるときに、その時分はずいぶん私の家に出入りしておる人が多うございまして、家を建てるんならば自分知合いのとても上手な人がおるから、そこで設計をさせようということを山下太郎君が言い出しまして、山下太郎君が渡辺君という、私の知合いでありますけれども、その人に頼んで設計をさせまして、そうしてその設計図面辻君手もと——だれがもつていたのですかよくわかりませんが、まわつたものと思います建築費用がどのくらいかかるかということはよく知りませんけれども、このごろのことでございますから、当時において百万円くらいはかかるのではなかろうかと自分は想像しておりました。七十万円ということはこのたび檢事局において知つたような次第であります
  11. 武藤運十郎

    武藤委員長 途中で建築中止になつたのはどういうわけですか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山證人 どういうわけで進行しないのかしらと私は疑つておりました。そのうちにああいう問題が起きて、檢事局に私が参つたようなわけです。それまではどういうわけだか知りませんでした。
  13. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、ああいう問題が起つたために、中止になつたという意味ですか、それともあなたは檢事局では「辻氏が選挙で金を使い過ぎてしまつたからだろうと思う」というふうに言われておるが、そういうことではないのですか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山證人 そうです。その当時の方がまだ近かつたものですから檢事局言つたことにそうなつておればその通りであります辻君は金がなくなつたのかしらんと思つておりました。ただいろいろの人が、何と言いますか、寄附をするというのは、たとえば瓦をだれが出すとか、疊をだれが出すとか、建具をだれが出すというようなぐあいになつてつたのでありまして、金は辻君が大体出したのではないかと私思つてつたものですから、進行しなくなつたのは、辻君が金がなくなつたのだろうと想像したわけであります
  15. 武藤運十郎

    武藤委員長 途中で中止になつてからあと塩月藤川両氏が三十万円ばかりこの建築費を出されたようですが、その点はあなたにお話があつて出したものですか、それともそうでなくて出されたものですか。
  16. 鳩山一郎

    鳩山證人 先ほど申し述べました通りに、藤川塩月両君建築関係あるということを知りませんでした。両人が金を出したということは夢想もしておりません。
  17. 武藤運十郎

    武藤委員長 あとでお聞きになりませんですか。
  18. 鳩山一郎

    鳩山證人 檢事局で聞きました。
  19. 武藤運十郎

    武藤委員長 檢事局でそのときにそれを出したのは、軍服拂下げを受けるについて、鳩山氏なり、あるいは辻氏なりに便宜を受けたいと、そういうことで出したのではないかというふうなお話を聞きませんでしたか。
  20. 鳩山一郎

    鳩山證人 聞きませんでしたね。
  21. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと辻氏は一体この建築にどのくらいの金を出したのでしようか。
  22. 鳩山一郎

    鳩山證人 存じません。
  23. 武藤運十郎

    武藤委員長 全然おわかりになりませんか。
  24. 鳩山一郎

    鳩山證人 ええ、いくら請負人に金が渡つておるかということも全然知らない。
  25. 武藤運十郎

    武藤委員長 ただ最初家を建ててやろうということを辻氏から直接あなたにお話のあつたことはあつたのですか。
  26. 鳩山一郎

    鳩山證人 大体パージになりました直後でありますから、たいへんたくさんの人が毎日見えていました。それでそういうような話を皆が集つてしていたわけであります辻君も確かにそういうことを発言したことを記憶しております
  27. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではほかに辻さんから金を出してもらつたようなことはかつてありませんでしようか。
  28. 鳩山一郎

    鳩山證人 辻君は現金を私に渡したことはないのであります。しかしながら自由党をつくります当時、会合する場所がないというので、自由クラブという家を建てて、そこで諸会合をする。私が月末に拂おうと思うと、すでにその会費、宴会費等は支拂つてある。あるいはまた事務所は常盤家にありましたのですが、常盤家で毎週何回か準備委員会とか総務会等を開きましても、その費用が大体支拂つてある。でありますから辻君だろうと思うのですが、辻君たちがそういうような諸費用を拂つてくれましたが、大分金を使つたことと思うのであります
  29. 武藤運十郎

    武藤委員長 ただいまお話の諸支拂い等をした金というのは、あなたは檢事局で「自由党創立の際辻から私個人に対して必要に應じて若干の金が出ている」と述べられておる金でありますか、それとも別の金ですか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山證人 いやその通りです。辻君はどういうわけですか、私のためならば何でもするようなことを始終言つておりました。私が自由党をつくるというような場合の諸費用自分が拂うつもりでいたんだろう。それが方々の費用辻君が拂つてくれましたから、もちろんそれは私に拂つてくれたものと思うのであります
  31. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は政界表面には出ませんけれども、政党や政治家には相当莫大な金を出しておられるというようなことは御存じありませんでしようか。
  32. 鳩山一郎

    鳩山證人 辻君は、同志の連中に困つておる人があつたり、あるいは選挙のために金が要るというようなことがあれば、辻君は進んで出していただろうと常に推測しておりました。
  33. 武藤運十郎

    武藤委員長 自由党にはあなたが総裁をやつておられる当時、辻氏からは金が出ましたでしようか。
  34. 鳩山一郎

    鳩山證人 党には一文も出ておりません。それはいつでもそうだと思うのです。党には辻君は金を出したことはないのです。
  35. 武藤運十郎

    武藤委員長 個人に金を出すということですか。
  36. 鳩山一郎

    鳩山證人 そうです。
  37. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、個人に出した金でも、結局党に使われる形になるのですか。
  38. 鳩山一郎

    鳩山證人 いや、党にはやはり幹事長がおりまして、別計算です。
  39. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、一昨年の総選挙自由党そのものには金は出ておりませんか。
  40. 鳩山一郎

    鳩山證人 そうです。
  41. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は大体あちらこちらに金を出されるようですけれども、一体この金はどこからもつてこられるのか、またその金を出す人はどういう條件で出すのか、大体御存じありませんか。
  42. 鳩山一郎

    鳩山證人 辻さんは金を出すのに、條件を考えて金を出すという種類の人ではないのです。いかなる金を何人に出しても、その出した金によつて自分が何か利益を受けようというがごとき考えをもつて金を出す人物ではないのです。辻君がもしも金の力によつて不当なることを要求するような人物であつたならば、彼の門前にああいうように多数の人が行くはずがないのです。あの人は苦しんでいる人があれば進んで金を出す人なのであつて、苦しんでいることを知らなければ出さないだろうけれども、自分が金をもつてつて、苦しんでいる人があれば、いかなる種類の人にでも出すのです。それを何十年も続けていたのでありますから、その自分が助けた人がたまたま成功して金持になつたならば、辻君のところにお礼返しにいろいろな金を出すのでありまして、よく辻君ボスだというようなことを新聞で見ますが、ボスということは金の力によつて不当なことを考える、不当な利益を得ようとする意味であるならば、まつた辻君ボスに反対の性格の人であります。もし暴力によつて不当なことを要求することがギヤングであるならば、辻君はまつたくその逆なのです。ボスだとか、ギヤングだとかいう種類性格の人でないことは、辻君と交られる人は例外なく私は容認すると思います
  43. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏の性格についてお話が出ましたから、ついでに伺つておきたいのですが、一般には政界表面には出ませんけれども、相当な勢力を政界にもつてつて、また大きな発言権をもつておる。また先ほど來お話のように相当大きな政治家——まあいずれ選挙のときにはみんな金が必要なんですが、金を出してやるということになりますと、相当影響力を言いますか、発言力と言いますか、もらつた者に対して目に見えない力が及ぶのではないかと考えるのですが、辻氏の性格はお説の通りだといたしましても、実際にこの金をもらつておりますと、人情上自然にそういう形ができ上るということはないのでしようか。
  44. 鳩山一郎

    鳩山證人 それはもらう人の性格によるのでありまして、もらう人が公私の区別を嚴然とわけ得る人ならば、もらつたためにどういう影響もないと思うのであります。ただその人が成功したとか何とか、この間新聞に出ておりました辻君相当献金したという人たちは、かつて辻君にせわになつたから出したものと思うのであります代議士辻君から金をもらつたら、辻君のために何をしようと思つても、辻君自由党役員になるというようなことを引受ける人でもなし、また役員になるというようなこともないでしようし、もらつた人性格ともらつた人の力によつて、あるいは辻君が報酬を得ることがあるかも知れませんけれども、それはどうも私がここで想像話をするわけにはまいりません。
  45. 武藤運十郎

    武藤委員長 中曽根幾太郎氏は、ただいま進行している公判におきまして二百五十万円を辻氏に献金したことについては全然無條件ではない。あらわには頼まなかつたけれども、もちろん軍服拂下げに対する協力を求めて、世耕氏に口添えさせるためであつた。このことは言葉のやりとりはなくとも、以心傳心でわかつておるはずだと思う。純粹な政治献金というのではなくて、要するに軍服拂下げ協力を求めたい趣旨であるというようなことは、速記録ではありませんけれども、大体そういう趣旨のことを申しておるのですが、あなたの今のお話ではこういうことはあるまいと思われる。
  46. 鳩山一郎

    鳩山證人 それは答えができません。それはまつた他人同士の話ですから、私に意見を聽かれても無理です。
  47. 武藤運十郎

    武藤委員長 昭和二十年の十一月九日に自由党結党されたようでありますけれども、結党に至るまでの資金結党後あなたがパージでおやめになるまでの翌年の五月四日ですが、これまでの党の維持費はどういうふうな金で賄つておられたのですか。
  48. 鳩山一郎

    鳩山證人 われわれ同志において最初金が集まらないうちは出しまして、それから後は全國からの寄附金を詳細につけておきまして、それは河野君には渡しませんでしたけれども、大野君が幹事長になつてから、ぼくの時代にはこういうような寄附金があつたという明細書は見せたことがあります。私が住んでおりました家屋を接收されたものですから、机の引出し——その机も接收されてしまつたので、机の引出しにあつたものを一括しまして、また平生自分の好きな本を自分の部屋に置いておいたそれも一括しまして、五箇年間くらいの日記帳を初めとして、数年間手もとに置いておつた本必要品、これが移轉しますときにどこへ行つてしまつたのか、今もつてわからない。私はたいへん好きな本を二、三十册なくなしてしまつたので今非常に残念がつておるのでありますが、多分その寄附明細書もなくなつたのだろうと思うのです。これはまだ音羽の家をすつかり調べたらどこからか出てくるかもしれない。大野君にはかつて見てもらつたことはあるのです。二十円くらいの寄附から二十万円くらいの寄附を紙に何枚か書いておつたのでありますが、どこへやつてしまつたことか、残念なことをしました。
  49. 武藤運十郎

    武藤委員長 たいへん残念ですが、もし見あたりましたら、ひとつ私まで見せていただきます。  それから二十一年四月の総選挙自由党では、私の記憶によりますと四百八十五人の公認候補者を立てまして、百三十九人の当選を見ておるようでありますけれども、このときの選挙費用はどのくらいかかりまして、どういうところから出て、そうしてまた公認候補者にはどういうふうな手当をなさいましたか、これをひとつ概略伺いたいと思います
  50. 鳩山一郎

    鳩山證人 それは私のやつたことでないのでありまして、幹事長選挙長がやつたのであります。私は御承知かもしれませんが、ただ全國を遊説して歩いていたばかりでありまして、どういう人にどのくらいの金が渡つたかは、私は少しも存じません。
  51. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か諸君から……。河井君。
  52. 河井榮藏

    河井委員 鳩山さんにお伺いしたいのですが、鳩山さんは今委員長のお尋ねに対して、辻嘉六氏から直接に金銭的助力を受けたことがないと言われましたが、しかしまたお言葉の中に自分の知らない間に辻嘉六氏があと始末をしておいてくれたようなこともあると言われました。そうすると間接的には辻嘉六氏は鳩山さんを金銭的に援助しておつた事実があるのでありますか。
  53. 鳩山一郎

    鳩山證人 私の答弁でおわかりであると思います。あなたのおつしやる通りです。
  54. 河井榮藏

    河井委員 それから自由党創立の際に幹事長をおやりになつておりました河野一郎氏は、辻嘉六氏ときわめて御昵懇な間柄のように河野氏も言われましたが、自由党創立の際に河野氏と辻氏との間に金銭的な——辻氏が河野氏を援助されたというようなことをお知りになりませんか。
  55. 鳩山一郎

    鳩山證人 存じません。
  56. 河井榮藏

    河井委員 それからあなたが東京檢察廳でお述べになつたことにあるのでありますが、辻さんは選挙の際には自分の氣に入つた者には金を出してやるというふうに言われておりましたが、そうですか。
  57. 鳩山一郎

    鳩山證人 そうです。
  58. 河井榮藏

    河井委員 そうすると辻さんがこの間うちからここで調べられました代議士、あるいは落選された立候補者の人々に金を出されておるのは、あなたがおつしやつた通りに、辻氏は自分の氣に入つた人として、それらの人々選挙政治資金をお渡しになつたのですか。
  59. 鳩山一郎

    鳩山證人 具体的にだれに出したということは、わかるはずがないではありませんか。
  60. 河井榮藏

    河井委員 いや、あなたが辻氏は自分の氣に入つた者には金を出すと言われておりますが……。
  61. 鳩山一郎

    鳩山證人 氣に入つたか氣に入らぬかわからないです。
  62. 河井榮藏

    河井委員 それではもう一つお尋ねします。あなたの家を建築された請負人内藤という人ですか。
  63. 鳩山一郎

    鳩山證人 そうです。それは知らなかつたのですが、檢事局行つて初めて知りました。内藤という者が請負つたということを——そうではない、その前に上棟式がありまして、建築委員長をやつておる人から私に上棟式をやるから出てこいということで行きました。行きましたら、内藤という者がいまして、私は内藤という請負人でして、この家を建築した者ですと自分自分を私に紹介したわけです。そのとき知つたのです。
  64. 河井榮藏

    河井委員 その内藤請負人塩月藤川から三十万円を建築費の内金としてもらつたということはどうですか。
  65. 鳩山一郎

    鳩山證人 委員長が先ほどお聽きになりました。委員長がさつき私に聽かれたことをあなたが聽いておればわかるはずです。
  66. 河井榮藏

    河井委員 いや、内藤請負人のことについては今初めてです。その請負人がもらつたということはあなたは御存じないですか。
  67. 鳩山一郎

    鳩山證人 知らないです。
  68. 河井榮藏

    河井委員 請負人から報告はないのですか。
  69. 鳩山一郎

    鳩山證人 請負人というものを知らないじやないか。
  70. 河井榮藏

    河井委員 いや、内藤御存じなんでしよう。
  71. 鳩山一郎

    鳩山證人 いや、それは上棟式のとき初めて知つた言つたでしよう。私は檢事局ちやんとその点は話をしてると思うのです。もう少し檢事局書類をお読み願いたい。檢事局書類ちやんとあるのです。
  72. 中野四郎

    中野(四)委員 重複するのを避けまして、六点にわたつてお伺いをしたい。  第一番に伺いたいのは、自由党立党当初の辻氏の演じた役割はいかなるものであるかという点をまず第一に伺いたいのであります
  73. 鳩山一郎

    鳩山證人 立党当時は私は非常に忙しゆうございまして、自分の友だちにも自由党に参加してくれという通知をするいとまがなかつたのであります。当時においては安藤君と芦田君、その新人の人が最初中心でありまして、多くは芦田君と安藤君くらいと相談してやつておるので、辻君創立について演じた役割というものは一つもないのであります
  74. 中野四郎

    中野(四)委員 私の承知する範囲におきましては、見解の相違と言われればそれまでですが、自由党創立当時自由クラブという一つの組織をつくられて、これらに関する費用大半辻氏から賄われたと聞いておりまするが、証人はこの点についてお聞及びでしようか。どうでしようか。
  75. 鳩山一郎

    鳩山證人 それは先ほど委員長に私が答えた通りでありまして、われわれの寄合い場所がないので、そこで辻君が家を求めまして、自由クラブという看板をかけまして、そこでときどき寄合いをしておりました。そういうようなことでは、辻君創立について無関係であつたとは言いませんけれども、自由党をつくるときの役割というものではないのですね。私が考えますと。党員をつくり、政策をつくり、政網をつくりますことには全然関係ないものですから、自由党という政党をつくるのに辻君役割を演じたということは私は考えない。
  76. 中野四郎

    中野(四)委員 その節自由党の総裁として党議によつて反共連盟を提唱なさつていらつしやるのですが、聞くところによると反共連盟を提唱する原因は、兒玉機関の兒玉譽士夫さんが辻さんとの関係が密接であつて、從つて辻老人の進言によつてかなり強く自由党において反共連盟の提唱をされたというふうに聞いておりますが、その点はいかがですか。
  77. 鳩山一郎

    鳩山證人 それは全然事実が違います。ただいまのようなことは全然ありません。
  78. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると鳩山さんと兒玉譽士夫君と関係はあるのですか。
  79. 鳩山一郎

    鳩山證人 ありません。
  80. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに兒玉譽士夫君と辻嘉六さんの関係御存じでしようか。
  81. 鳩山一郎

    鳩山證人 知りません。
  82. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで私は最後に一つ証人にお伺いしたい。辻氏が政界の黒幕的存在として関係方面でも重要視しております。また今なお日本に地下政府的存在ありとして世界各國に報道されておることは、講和会議を目前に控えて、日本國民の信義を誤つて疑ぐられることが、國際間及び國内に及ぼす影響の重大なるに鑑みまして、本委員会を通じて一切を明白にして、一般に與えたその誤りを正し、認識を是正する必要切なるものがあると私は思うのであります。ですからこの際特に証人を通じて、辻嘉六とはいかなる人物なるやを証人の知る限りにおいて明確にされたいと思うのであります。かくすることが、証人が不幸にして今日公職より追放を受けたりといえども、近き過去現在において政界の第一人者として、國内はもとより各関係方面において重視せられておる存在として、この機会に当然なすべき責務なりと私は確信するがゆえに、あえてこのことを証人に求めたいと思います
  83. 鳩山一郎

    鳩山證人 私も辻君が地下政府をもつておるとか何とかいうようなことを言われることは、日本の一大恥辱だと思つております。実際日本に地下政府なんというものはないじやありませんか。お互いによく知つているじやありませんか。それを地下政府が日本にあるというようなことを言うのは、日本人の惡い癖だと思うのです。地下政府があるがごとく某所にそういうことを言つた人は非常な罪だと思います。     〔「地下政府は共産党だ」と呼びその他発言する者あり〕
  84. 武藤運十郎

    武藤委員長 靜粛に願います
  85. 鳩山一郎

    鳩山證人 そういうわけでして、辻君に対する私の観測は大体委員長に申し上げましたから、それによつて御了察を願いたいと思います。地下政府を辻君が組織しているようなことはないかということだけが新しいことですが、こういうばかげたことは断じでないと私は明言いたしておきます
  86. 中野四郎

    中野(四)委員 私のお尋ねした意味が徹底せぬようですが、地下政府的な存在ありとして、世界各國に誤り傳えられて報道されておるおそれがあるのでありますから、証人辻嘉六という人物を十二分に御承知の上において、知る限りにおいてこの認識を正す必要があると私は考えるので、この機会に十分に辻嘉六という人の人物がいかなるものやということを説明していただきたいと思うのでありますが、概略は先ほど委員長の質問でわかつておりますけれども、なおここで附言される点があるなれば、この機会においてなしていただきたいのであります
  87. 鳩山一郎

    鳩山證人 辻君は政治的に野心をもつ人ではひとつもないのであります。また金銭的野望をもつておる人でも断じてないのであります。それですから政治的に野心もなく、金銭に対しても欲望をもつていない人が、地下政府を組織するというようなことはあり得ないことであります
  88. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 辻嘉六氏がみずから金銭を求めたりまた官職を求めたり党の幹部になることを求めていない人であるということははつきりしたと思いますが、辻氏が鳩山先生あたりに対して、第三者の官職なりもしくは党の幹部のいすなりもしくは金銭的な利害関係——利権といいますか、そういうものに対して推薦をしたり助言をしたというふうな事実がありましようか、その点をお聽きしたいと思います
  89. 鳩山一郎

    鳩山證人 私に対しては何にもないのです。私に対してそういうような要求をしたことはないのです。
  90. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと附言することを忘れておりましたが、ただいま鳩山さんは、証人と兒玉譽士夫との関係は全然ないと言われました。これは証人の仰せの通りだろうと思う。しかしながら山本幸七というものを御存じかどうか。山本幸七が海軍の高浜倉庫の主任であり、同時に兒玉機関の一端を背負い、同時に山本幸七のもつておる金あるいは支出した金が、いかなる経路をたどつてつたかということはおよそ想像がつくことであります。山本幸七と御交遊があるか、山本幸七より何分かの寄附を受けておるかどうか、この点をお聽きしたいと思います
  91. 鳩山一郎

    鳩山證人 山本幸七から私個人なり自由党員なり自由党本部なりに寄附があつたということは全然ありません。しかし山本幸七君は自由党の候補者になりました。それでどういう人物か私は少しも知らないのでありますが、私どもに対しては何らの交渉はなく、私と共同のポスターなどをつくつて、当時私の選挙に骨を折つてくれた連中は非常に迷惑を実は受けたのであります。そういう関係以外に何もないのであります
  92. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつとこれは鳩山さんのお言葉としてはどうかと思うのです、私は少くとも山本君が無断であなたの名前を使い、あるいは交渉なくして選挙をやつたとは考えておりません。考えないのみならば、私はいささかどうかと思う。金銭上の御関係がなくとも、少くとも物資をあなたの所へ運んだか、あるいは選挙相当な應援あるいは支援をしておるというような事実がないということは言い得ないと思うが、いかがでしようか。
  93. 鳩山一郎

    鳩山證人 断じてないのです。それは私の運動員が非常に迷惑したのです。私は御承知通り東京におらぬことが多うございまして、帰つてくると山本君の運動員が私の事務所に暴れこんできたりいろいろしまして、非常に困つたのです。あなたの想像はいかなる根拠に基くか知りませんけれども、表面はあなたが考えるようにできておるのかもしれません。しかし実質におきましてはまつたくあなたの御観察は反対なのであります。非常に困つたのです。
  94. 徳田球一

    ○徳田委員 ちよつとお尋ね申します。青森縣津軽郡に愛國青年連盟というのがありますが、これを御存じでしようか。
  95. 鳩山一郎

    鳩山證人 知りません。
  96. 徳田球一

    ○徳田委員 全然御存じない。
  97. 鳩山一郎

    鳩山證人 知りません。
  98. 徳田球一

    ○徳田委員 あなたがこの愛國青年連盟に関係されまして、これを全國的に統帥せられておるということを愛國青年連盟の連中が言つておりますが、そういうことは全然根拠のないことでありましようね。
  99. 鳩山一郎

    鳩山證人 愛國青年連盟をやつておるのはたれですか。
  100. 徳田球一

    ○徳田委員 愛國青年連盟をやつておる向うの人は大分たくさんありますけれども、個々の人でここへ出すべき者はありません。あなたが関係がないと言われればそれまでの話であります
  101. 鳩山一郎

    鳩山證人 全然ありません。
  102. 徳田球一

    ○徳田委員 それではもう一つ伺いますが、自由党代議士鈴木仙八君を御存じでありますか。
  103. 鳩山一郎

    鳩山證人 存じております
  104. 徳田球一

    ○徳田委員 これ鈴木仙八君は、自由党創立以來、あなたとの関係は何もありませんか。ただ知つておるというだけで、特別の関係はありませんか。
  105. 鳩山一郎

    鳩山證人 ありません。鈴木仙八君は、何か建築委員長になつたのではありませんか。
  106. 徳田球一

    ○徳田委員 それは私が聽くことです。
  107. 鳩山一郎

    鳩山證人 それは私がしたわけではないので、知らないのであります
  108. 徳田球一

    ○徳田委員 それは、それ以前にいろいろな深い関係があつてのことでないと、そういう建築委員長になるはずはないと思いますが……。
  109. 鳩山一郎

    鳩山證人 それはぼくがしたのならば関係があるでしようが、私は鈴木君に建築委員長になつてくれと言つたことはありません。私の家を建てようとした人が集つて、鈴木君がその委員長になつただけし、私は全然知らないのですから……。
  110. 徳田球一

    ○徳田委員 そのことはあなたは御存じないでしようが、しかしあなたが御存じなくても、あなたに建築してあげようというので、その委員長になる以上は、それ以前にあなたと鈴木仙八君との間に特別の間に特別の関係があつたのではありませんか。
  111. 鳩山一郎

    鳩山證人 特別の関係はありません。
  112. 徳田球一

    ○徳田委員 全然ないのですか。
  113. 鳩山一郎

    鳩山證人 ないのです。
  114. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  116. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは中野さんに伺います。先ほど概略を申し上げました辻嘉六氏をめぐる問題につきまして、辻氏は檢事局において、このように述べております。  「中野は福島縣選出、無所属、衆議院議員ですが、去る四月の選挙当時は自由党所属でした。同人とは政友会時代からの旧い知合いの仲で、本年四月上旬ごろ、選挙につき金を少しくれという趣旨の手紙を使いの者に持たせて寄越したことがあり、その使いは、たいか中野の子供だつたと思います。私はこれを承知し、その使いの者に、現金二万円を渡しておるのですが、その金もやはり中野に対する政治資金趣旨で出したわけです。」こういうふうに申しておりますが、この通りでありますか。
  117. 中野寅吉

    中野證人 手紙を持たしてやつたけれども、そのときは要領を得ないから、私が行つたのです。
  118. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたが行つたのですか。
  119. 中野寅吉

    中野證人 私が行つて、二万円陣中見舞としてもらつてきました。私と辻氏とは大正十二年からの交際ですから、いつの選挙のときにも、御承知通り私は清貧に甘んじておりましたから、政変の声を聞けば、辻氏のところに行つて、三千円、五千円ともらつてきた。去年の物價も高いし、五千円や六千円では間に合わないから、辻氏が二万円陣中見舞として寄越した。それに間違いありません。
  120. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうですか。それはあなたが行つて受けとられたのですか。
  121. 中野寅吉

    中野證人 そうです。
  122. 武藤運十郎

    武藤委員長 今まで、先ほどお話があつたように五千円、三千円というふうに出しているようですが、みんなでどのくらいもらつておりますか。
  123. 中野寅吉

    中野證人 大正十二年以來の交際ですから、もう何回も……。
  124. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙のときにもらつているのですか。
  125. 中野寅吉

    中野證人 そうです。
  126. 武藤運十郎

    武藤委員長 普通、家計とか物入りとかいうときに行つたことはないのですか。
  127. 中野寅吉

    中野證人 ないです。
  128. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙のときばかり……。
  129. 中野寅吉

    中野證人 選挙のときに行けば、あれは選挙が好きですから悟ります。それで私は行きました。しかしさつき鳩山さんも言つてが、あれは金を出して、その人をこういうふうに利用しようとか、こういうふうにやれとかというような男でない。至極おもしろい男であります。困つた者は助けたいという精神であります
  130. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から來た金ということは全然話がなかつたのですか。
  131. 中野寅吉

    中野證人 そういうことはもちろん伺いません。そういうものならば私はもういません。
  132. 武藤運十郎

    武藤委員長 今どういう御職業に從つておられて、どのくらいの收入がございますか、一年に……。
  133. 中野寅吉

    中野證人 私は今和尚さんですが、和尚さんと、田と畑と山とやつてつてます
  134. 武藤運十郎

    武藤委員長 お布施が多いわけですか。
  135. 中野寅吉

    中野證人 布施は多いのです。布施は、平素弱い者をいじめたり高利貸をしたりした者が死ぬと、その布施はうんと私はもらうのです。
  136. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体選挙のときの金は寄附金で賄われるのですか。
  137. 中野寅吉

    中野證人 私は、鈴木義男君なんかたまげているのですが、法定費で間に合うのです。私の選挙は、委員長が來たつて負かしますよ。総理大臣が來たつて負かします。私は平素培養しておるから……。
  138. 武藤運十郎

    武藤委員長 法定費用で間に合いますか。
  139. 中野寅吉

    中野證人 間に合います
  140. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御質問ございませんでしようか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 武藤運十郎

    武藤委員長 では御苦労さまでございました。
  142. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと次の証人の來る前に、今の鳩山さんの証言の中に明細な寄附書類が念羽の家にあるかもしれないが、ということだけで終つておりますが、これは大事な問題であるから、旧書類を嚴格に探して、速やかに本委員会に提出されるように希望いたします
  143. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではただいまの書類か帳簿か、記録されているものを鳩山氏に正式に提案を求めますことはいかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではさよう決定いたします。     —————————————
  145. 武藤運十郎

    武藤委員長 福井ますさんですか。あなたのところは料理屋をしておられるのですか。
  146. 福井ます

    福井證人 辻先生のお話自由党のクラブにいたしておりました。
  147. 武藤運十郎

    武藤委員長 自由クラブというのがそこにあるのですか。
  148. 福井ます

    福井證人 そうです。クラブの方でお使いになりませんときに、お商賣をさせていただくようにお願いしておりました。昨年の五月まで。
  149. 武藤運十郎

    武藤委員長 その家は辻さんが買つたのですか、あなたの家ですか。
  150. 福井ます

    福井證人 いいえ、先生から拜借いたしました。
  151. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんの家をあなたが借りているのですか。
  152. 福井ます

    福井證人 先生の家でございましようね。お名前は河野さんになつておりますけれど……。
  153. 武藤運十郎

    武藤委員長 所有名義は河野さん——と言うのは河野一郎さんでございますか。
  154. 福井ます

    福井證人 そうでございます
  155. 武藤運十郎

    武藤委員長 所有名義は河野一郎さんになつているけれども……。
  156. 福井ます

    福井證人 先生から拜借いたしております
  157. 武藤運十郎

    武藤委員長 借りているのは辻さんであるから、多分辻さんの物であろうと思う……。
  158. 福井ます

    福井證人 それは私よくわかりませんけれど……。
  159. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは名義は河野一郎氏の物であつて、あなたがお借りになつているのは辻嘉六氏から借りているということになつているのですね。
  160. 福井ます

    福井證人 そうでございます
  161. 武藤運十郎

    武藤委員長 ここは自由党のクラブになつているわけであるから、始終自由党の党員や幹部諸君が出はいりをしておりますか。
  162. 福井ます

    福井證人 前にはよく先生の御用のときに、皆さんよくお集まりになつておりました。
  163. 武藤運十郎

    武藤委員長 先生というのは辻氏でございますね。
  164. 福井ます

    福井證人 そうでございます
  165. 武藤運十郎

    武藤委員長 最近は……。
  166. 福井ます

    福井證人 このごろは先生が御病氣になられましたし、お商賣もできませんからあまり見えません。
  167. 武藤運十郎

    武藤委員長 前には大分出はいりをしておつたのですか。
  168. 福井ます

    福井證人 始終いらしていただきました。
  169. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう人が出はいりをしておりましたか。
  170. 福井ます

    福井證人 自由党の御連中皆さん。
  171. 武藤運十郎

    武藤委員長 思い出して言つてみてください。大頭株を。
  172. 福井ます

    福井證人 おもにずつと上の方にいらつしやつていただきました。
  173. 武藤運十郎

    武藤委員長 たとえば……。
  174. 福井ます

    福井證人 河野さんもいらしていただきましたし、あの当時皆さん偉い方がいらつしやつてくださいました。
  175. 武藤運十郎

    武藤委員長 もつと……。
  176. 福井ます

    福井證人 自由党の御連中ですから、議長さんをしておられました山崎さん、それから大久保さん、鳩山さん、安藤さん、思い出すと言つてもたくさんいらつしやいますから、自由党の御連中、偉い方は皆……。
  177. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体当時の自由党の頭株が來ておつたのですか、
  178. 福井ます

    福井證人 そうです。
  179. 武藤運十郎

    武藤委員長 そこではただ御飯を食べるだけですか、お酒を飲んで……。
  180. 福井ます

    福井證人 碁をなすつたり、お話をなさることもありますと、お話だけでお帰りになる場合もございました。
  181. 武藤運十郎

    武藤委員長 会議は大がい長いですか。
  182. 福井ます

    福井證人 いいえ、あまり長くございませんね。何しろ私がお給仕いたしますのですから、皆さまそんなに長くいらつしやいませんわ。
  183. 武藤運十郎

    武藤委員長 河野一郎氏はそこへ泊つているのですか。
  184. 福井ます

    福井證人 いいえ、お泊りになりませんの。
  185. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か河野一郎氏と特別な関係があるのじやないですか。
  186. 福井ます

    福井證人 いいえ、そうじやございませんけれども、名前は出してございましたの。電話が河野さんのお名前になつておりますので、何か電話局から通知がまいりましても、名前を書いておきませんと、電話料の紙など返りますのです。そので局の方で困るからとおつしやつたものですから、河野一郎さんと書いておきましたのです。
  187. 武藤運十郎

    武藤委員長 河野氏はそこに泊るようなことはないですか。
  188. 福井ます

    福井證人 いいえ、お泊りになんかなりません。泊りの設備はできておりませんから……。
  189. 武藤運十郎

    武藤委員長 では河野氏とお宅とは、た現自由党政治家とあなたというだけの関係ですね。
  190. 福井ます

    福井證人 そうでございます
  191. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年の三月下旬ごろ辻氏からあなたのところに二万円金を届けたというのですが、そうですか。
  192. 福井ます

    福井證人 二万円じやないでしよう。
  193. 武藤運十郎

    武藤委員長 いくらでしようか。
  194. 福井ます

    福井證人 十五万円。
  195. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはいつごろですか。
  196. 福井ます

    福井證人 しつかりおぼえておりませんけれど、三月の末と思つておりますが……。
  197. 武藤運十郎

    武藤委員長 やはり下旬ですね。それ一回ですか。
  198. 福井ます

    福井證人 はあ、そのころそれがしまいでしたわね。
  199. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのころはまだほかにございませんでしたか。
  200. 福井ます

    福井證人 いいえ、そのころちようどいただきませんで、そのときいただいたきりのようですけれど……。
  201. 武藤運十郎

    武藤委員長 三月の末に受取つたのは二万円で、四月の末に十五万円ではありませんか。思い違いではないかな。
  202. 福井ます

    福井證人 そうでしたかしら……、私年末にもいただいたことがあるのですけれど、三月の末に十五万円いただいたと思いますのですがね。
  203. 武藤運十郎

    武藤委員長 二万円のことは記憶がありませんか。
  204. 福井ます

    福井證人 はあ。
  205. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金はどういう金ですか。
  206. 福井ます

    福井證人 あちらでお客さんなどいらしつたりいたしますのを実費でちよつて控えておいて、いただくようにしておりまして、いろいろな買物を頼まれましたものの立替やら、いろいろのを頂戴したのです。
  207. 武藤運十郎

    武藤委員長 ただもらつたという金ではないのですね。
  208. 福井ます

    福井證人 いただいたのではございません。お勘定やら、いろいろずつと前からのを立替えましたり、余分にいただいておりましたのですけれど……。
  209. 武藤運十郎

    武藤委員長 少しは余分だけれども、大体において勘定……。
  210. 福井ます

    福井證人 それでお預かりいたしましたもののうちからいろいろお勘定やらお立替のを……。
  211. 武藤運十郎

    武藤委員長 では概算で、出たりはいつたりしたわけですか。
  212. 福井ます

    福井證人 そうです。余分に預かつては、いろいろお買物をしましたり、それでまたいろいろな買物をしましたり、都合のよいときに頂戴いたしましたから……。
  213. 武藤運十郎

    武藤委員長 勘定以外には金を受取つたようなことはありませんか。
  214. 福井ます

    福井證人 そんなことはありません。
  215. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏はここで月にいくらぐらい使つておりましたか。
  216. 福井ます

    福井證人 毎月いくらといつても、はつきり毎月しめたりしませんので、お見えになると、大概このくらいだろうと言つていただくように、前からの習慣になつておりますから、こまかいことはわかりません。
  217. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体で結構ですが……。
  218. 福井ます

    福井證人 商賣の方でないものですから、先生の方も実費でやつておりましたから、はつきり覚えておりません。
  219. 武藤運十郎

    武藤委員長 実費でどのくらいですか。
  220. 福井ます

    福井證人 困りましたね。多い月もございますし、毎月どのくらいということはよくわかりません。
  221. 武藤運十郎

    武藤委員長 しかしあなたは御自分で経営しておられるのでしよう。
  222. 福井ます

    福井證人 先生の方は経営と言いましても実費でやつておりましたから……。
  223. 武藤運十郎

    武藤委員長 実費で結構です。
  224. 福井ます

    福井證人 実費でありますけれど、十五万円いただいたのは、前から習慣がついておりまして、おおよそ立替をしておくものですから始終出しておりまして、毎月どのぐらいということは覚えておりません。
  225. 武藤運十郎

    武藤委員長 毎月二、三十万円は出るのですか。
  226. 福井ます

    福井證人 いいえ、決してそんなことはございません。何万はないでしよう。
  227. 武藤運十郎

    武藤委員長 そんなにはありませんか。
  228. 福井ます

    福井證人 何万もないでしよう。ずつと前からのものをいただいたのですから、十五万円はまとまつておりますが、そんなにいただいたのは初めてです。
  229. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは辻さんはここに來られて、大分自由党のえらい人たちを招待されたりして、お話されるでしようけれども、自由党人たちの辻氏に対する應対はどうですか。大先生というふうな形ですか。
  230. 福井ます

    福井證人 そうでもございませんけれども、仲よくお話していらつしやいます。(笑声)親しげにお話なさつてます
  231. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かありますか。
  232. 徳田球一

    ○徳田委員 証人の家というのは料理屋ですか。
  233. 福井ます

    福井證人 それがちよつとややこしいのですけれども、先生から拝借いたしまして、クラブをさしていただいております。ところが、私の兄が神田に洋食屋をしておりました。それを進駐軍にとられましたが、酒の配給の実績がありましたので、それがもつたいないものですから、先生にお話いたしましたら、自由党で使わないときには商賣してもよろしいとおつしやつてくださいました。それで営業主は森田純次と申します。学士会館の前の精養軒と申しますが、その商賣の権利をもつて我善坊に参りました。ところがやはり自由党で、きよう行くからというときにあけてないと、ただで拜借しておりまして惡いものですから、私もお客さんにはあまりお願いしなかつたのです。たまに五、六人來るぐらいで、ただお酒の実績がもつたいないので、それを移して、洋食屋の権利はありますけれども、五月からぺちやんこになりまして、今休んでおります。そういう意味で権利はあります。ところが先生の方に遠慮しなければなりませんし、もしお約束を受けておりまして、先生の方から五、六人行くからとおつしやられると、断り切れないと惡いものですから、ほんとにささいな、よく存じあげている方だけです。あとはなるべくクラブで使つていただいておりました。ほんの遊び仕事でありましたわけです。
  234. 徳田球一

    ○徳田委員 そうすると料理屋の営業をやつて権利をもつてつたのですか。
  235. 福井ます

    福井證人 権利はございます
  236. 徳田球一

    ○徳田委員 実質上はクラブで、あいているときには料理屋を営業するというわけですね。
  237. 福井ます

    福井證人 そうです。
  238. 徳田球一

    ○徳田委員 営業として一箇月どのくらいの営業をされて、それに対して税金を納めておりましたか。
  239. 福井ます

    福井證人 それはちやんと納めております。税務署の方を調べていただきましても、昨年五月まで遊んでおりましたけれども、やはり一昨年の何とか税に対して拂つております。しかし商賣はほんとうに微々たるものであります
  240. 徳田球一

    ○徳田委員 どのくらいですか、商賣は。
  241. 福井ます

    福井證人 これは兄の方の経営でありましたので、兄の方で拂つておりますけれども、ついこの間拂つておりましたのが、五月までしか商賣しないのに、それに対して四千八百いくらという営業税を二度拂いました。
  242. 徳田球一

    ○徳田委員 営業税としてはあなたの名義でなく、兄さんの……。
  243. 福井ます

    福井證人 兄さんの森田純次。
  244. 徳田球一

    ○徳田委員 あなたは辻さんの使用人というのですね。
  245. 福井ます

    福井證人 私はあちらは拜借して、管理人というのですか……。
  246. 徳田球一

    ○徳田委員 辻さんの使用人と見ていいのですか。
  247. 福井ます

    福井證人 使用人でも結構ですけれども……。
  248. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さま。     —————————————
  250. 武藤運十郎

    武藤委員長 淺岡信夫さん、檢事局辻嘉六という人があなたに関してこういうふうに述べております。  「淺岡は去る四月の選挙に全國から参議院に立候補して当選し、現在自由党幹事です。今回の選挙には廣島を主な地盤として出たようでした。同人は今から十年ほど前、築地に料理屋を経営しておるころ私も出入し、知合いとなつたのですが、去る四月上旬頃本人が私方にきて選挙の話をし、費用がかかるから金をもらいたいという話があり、最初三万円渡したところ、その翌日頃再びきて、いろいろ政治の事情を話し、さらに五十万円の申込みがありましたが、結局三十万円出してやり、合計三十三万円を同人に対する選挙などの政治資金として私方で渡してやつたのです、」こういうふうに述べておるのですが、この通りですか。
  251. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 金額の点についてはその通りですけれども、これは辻先生の身体も惡いような関係で、その具体的な点がちよつと違うようです。
  252. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは大体で結構ですからお話を願いたいと思います
  253. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 実は私、先生おととしの十二月三十日に大陸から帰還者、引揚者四千八百名の團長として帰つて來たわけです。私の郷里は廣島市内でございまして、帰つてますると原子爆彈でやられておる。親族あるいは親友なんかは皆倒れておるというふうで、私ちようど熱海に年寄の家がありまたしので、そこに帰つて來たのです。私は終戰時は大陸上海におりまして、自分たちの同僚なり、あるいは戰友なり、そうした人々が大陸の土となつておる。さらに大陸の引揚者としては海外に三百四十五万、あるいは復員者としては三百二十万、とにかく六百七、八十万の人がおつたというようなことで、この問題に対して私は眞劍に考えざるを得ないということを、集中区にいる間も、それから殊に引揚の陣容が大体整いまして收容所にいるときもそれを思い、上海から船に乘つて鹿兒島に着いたのでありますが、その船の中でも七人の人が死んでしまう、八人のお産があるというようなふうで、敗戰の悲惨をしみじみ感じたのです。そして日本に帰つてますると、とにかく自分の郷里廣島は原始爆彈でやられているというようなことで、ひとしおもふたしおも深く感ぜられたのでありまして、その感じた結論はどうなつたかと言いますと、海外にいる同胞を一刻も早く帰さなければいけないということに結論づけられると同時に、とにかく自分はこれに全魂を打込もうということで、各地にこの叫びをあげまして、とにかく一年はやつてきたのであります。ところがたまたま昨年の総選挙の前、選挙であるないにかかわらず、私は今までそういうふうに引揚の問題をやつてきたのでありまするが、実際にはお金の面において困つてつた。そこで金の面をたれかに工面してもらわなければならない。たれかの援助を仰がなければならないというようなことで、とつおいつ考えておりましたときに、私ども学生時代から非常に恩顧を蒙つてつた徳川義親さんに私はこの問題を打明けるべくお目にかかつたのであります。そしていろいろな話をしましたとき、かつての徳川義親さんではなくして、すでに敗戰後におきましてはいろんな財産税その他の件でもつて、あの日白の家も小さな自分の昔の借家とか、あるいは家扶なんかの住居に住つておられるような現況であつて、どうしても自分は言えない。そこでいろいろ考えて結果、私の早稻田時代からいろいろ辻先生に——辻先生が述べられておるのは十年くらい前と申されておりますが、あるいは辻先生の記憶は十年くらい前であつたかもしれませんが、私は辻先生のもとには三十年くらい前から行つて、いろいろと教えを請うておる。いわばあるいは弟子であるかもしれません。そこでとにかく自分の全魂を打込もうという問題に対して辻先生に愬えたのです。ちようど昨年の二月の終りに、私はこの海外にいる同胞引揚促進の問題に対して、同胞を一刻も早く帰したい。これに輿論を喚起したい。あるいはこれに全魂を打込みたい。それにはどうしても金が要る。それで辻先生に五十万円御援助をいただきたいということを申し上げたのでありまして、その結果三月の二十五日前後に、辻先生からできるだけのことはしたいと思うがとりあえずこれだけ持つて行けということで、三十万円を頂戴いたしたのであります。それからその翌月の五、六ごろに、私は全國区の参議院議員として立候補いたした挨拶に参つたのであります。そのときに、まあちよつと待つているということで、しばらく待つておりますと、三万円、これはひとつ選挙のたしにしろということで陣中みやげとして頂戴いたしたのであります。そこで今委員長がお読み上げになりました点は、辻先生の檢事局における御証言だと思いますが、そのさきに三万円渡して、あとから五十万円の請求があつてさらに三十万円渡したというふうに述べられておりますけれども、その点がちよつと違うのです。
  254. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますあとの三万円が選挙の方で、前の三十万円は海外同胞引揚の救済運動に使う資金である。こういうことになるのですか。
  255. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 そうです。それでその引揚の救済運動というのではなくして、引揚の促進運動です。その点をひとつ。
  256. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は最初委員長に手紙をよこしまして、あなたのことに関しては、淺岡信夫君に渡した分も、多少記憶違いもあるかもしれませんが、同人は海外引揚同胞を対象としてその救済運動に專心努力されていたもので、その事業資金の融通を申込まれておつたから、選挙費用及び借受金と考えておるかもしれません。こういうふうに申しておるのですが、あなたの今のお話と大体似ておりますが、少しは違つたところもありますね。
  257. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 それはとにかく辻先生御病氣でもありますし、私はそのことのみに終始しておるわけでありますし、辻先生はいろいろたれにどういうふうに金を渡したとか、あるいはどうしたとか、たくさんなことがありますから、その辺は辻先生のお考え違いではないかと思うのですけれども、私はこの一点なかなか忘れ得ないことであります。その点辻先生の申されたことと若干違う点があるかもしれませんが、大同小異だろうと思うのです。ただ引揚者の救済云々という問題でなくして、私としてはこの促進の問題に日本的な輿論を喚起する、あるいはさらにこれを対日理事会なり、マツカーサー司令部なり、あるいはソ連大使館なり、そうした方面に愬えるというようなことでありまして、引揚者の救済事業ではないのでありますから、その点はどうぞひとつ。
  258. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から辻氏に献金せられた金であるということは、もちろん御存じなかつたのでしようね。
  259. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 私は中曽根幾太郎という人の名前も知りませんし、それがどういうふうな金であるかということも一向知りません。
  260. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかに辻氏から金を受取つておるようなことはありませんか。
  261. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 ありません。
  262. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は政治の表面には出ませんけれども、政治家選挙その他に際しては相当多くの金を政治資金選挙費用というような趣旨で渡しておるというような、そういう人であるということはお聞きになりませんか。
  263. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 辻先生は私を十年くらいと申されておりますけれども、私は辻先生の門をくぐりましてから三十余年になるのです。殊に早稻田大学におりました当時は、御承知のように辻先生は相撲が好きでありますし、私も早稻田の相撲部にはいつた関係から、辻先生のお宅には始終伺つたり、あるいは中國問題に関しても孫文先生を、犬養先生とか頭山先生がお助けになつてつたようでありますけれども、縁の下の力持ちとしては非常に辻先生がおせわされたということも私ども実際存じ上げておるわけです。そういうわけで私どもが早稻田の学生、書生時代にたくさんの連中がやはり辻先生の門をくぐつて、間接、直接にその風貌に接してその徳を慕つたわけであります。そういう関係で辻先生を深く私は存じ上げておりますが、それ以外の辻先生が政界における黒幕となつて云々というようなことは私は一向知りません。またそういう人ではないと現在でも信じております。たとえば辻先生が権力をもつて地位につくとか、あるいは人を助けてそれを踏台として地位を得るとか、あるいは事業をするという人であるならば、私ども学生時代に辻先生の門をくぐつていくことはなかつたはずであります。ところが私どもの学生時代には実際押すな押すなという状態で辻先生の門をくぐり、また学校を終えて社会人となつてからでも辻先生のところに私は行つてつたわけであります。私はどういうものか、学生時代から金銭的にもそう困らないものでありますから、経済的な援助を受けたことはないのです。そこで話が二つになりますけれども、今委員長が申されましたように、政界ボスであるとかあるいはギヤングであるとかいうようなことを言われること自体が私は非常におかしいと思う。辻先生は非常な徳の人です。大徳な人です。
  264. 武藤運十郎

    武藤委員長 淺岡君にちよつと御注意申し上げますが、特に私が辻氏を政界ボスだとかギヤングだとかいうような密旨で申したわけではないのです。
  265. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 委員長が、何か政界の黒幕だつたことを知つておるかというようなことを御質問になつたように聞いておりましたから……。あるいは私の勘違いかもしれませんけれども。
  266. 武藤運十郎

    武藤委員長 いやそうじやない、たいへんな勘違いです。私はこういうふうに申し上げたのであります政界表面には出ないけれども、選挙その他に際しては相当多くの金を政治家にやつておるようなことはないか、そういう趣旨です。
  267. 淺岡信夫

    ○淺岡證人 私は大陸に十年余もありまして、帰つてきてからそんなにたくさん辻先生の門をくぐつたわけではありません。でありますから辻先生の門をどういう人がくぐつたか、あるいは政界にどういう力をもつてつたかということは存じておりません。
  268. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かございます——済みました、御苦労樣です。     —————————————
  269. 武藤運十郎

    武藤委員長 中村津滿子さんですね。伺いますが、三田に桂という料理屋がございますか、あなたはここに松風という名前で勤めたのですか。
  270. 中村津萬子

    ○中村證人 それは藝名です。
  271. 武藤運十郎

    武藤委員長 今は勤めていないのですか。
  272. 中村津萬子

    ○中村證人 昨年の暮にやめました。
  273. 武藤運十郎

    武藤委員長 桂という料理屋は普通一般の料理屋ですか。それとも特別の自由党政治家が集まるというようなところですか。
  274. 中村津萬子

    ○中村證人 別に自由党というわけではありません。一般の人も來られております
  275. 武藤運十郎

    武藤委員長 主として自由党ですか。
  276. 中村津萬子

    ○中村證人 まあそうかと思いますけれども、私は勤めましたときには女中奉公ではございませんから、あまりお客さんのことをよく存じ上げておりません。
  277. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうですか、女中としてお勤めだつたわけではなかつたのですか、ではどういう……。
  278. 中村津萬子

    ○中村證人 女中じやないのでございます。私は桂の奧さんと師弟関係になつております
  279. 武藤運十郎

    武藤委員長 三田の桂の奧さんというのは……。
  280. 中村津萬子

    ○中村證人 主人で、私のお弟子なんです。
  281. 武藤運十郎

    武藤委員長 御主人は何という名前なんですか。
  282. 中村津萬子

    ○中村證人 畦上輝井さん。
  283. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは女ですか。
  284. 中村津萬子

    ○中村證人 女です。
  285. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたがこの人の師匠なんですか。何の……。
  286. 中村津萬子

    ○中村證人 小唄の師匠なんです。
  287. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうするとあなたは先生というわけですね。
  288. 中村津萬子

    ○中村證人 燒け出されましてあすこに厄介になつていました。
  289. 武藤運十郎

    武藤委員長 住込んで手傳つていたわけですか、商賣を……。
  290. 中村津萬子

    ○中村證人 そうです。
  291. 武藤運十郎

    武藤委員長 ここへ辻嘉六という人がときどきお客になつて來て、そこであちこちから政治家を招待してしばしばお話をするというようなことがありましたか。
  292. 中村津萬子

    ○中村證人 政治家、そうですね、記憶はありませんけれども、皆様偉い方ですから、いろいろの方もお見になつたと思いますが…
  293. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたはいつごろからいつごろまでおられたのですか。
  294. 中村津萬子

    ○中村證人 そうですね。一昨年の六月ごろだと思います
  295. 武藤運十郎

    武藤委員長 二十一年六月から……。
  296. 中村津萬子

    ○中村證人 よく記憶しておりませんけれども、六月から昨年十二月まで……。
  297. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人を知つておられますね。
  298. 中村津萬子

    ○中村證人 存じ上げております
  299. 武藤運十郎

    武藤委員長 月に何回ぐらい來られましたか。
  300. 中村津萬子

    ○中村證人 月にといつて、よくおぼえておりませんけれども、そうしげしげはお見えにならないと思います
  301. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう人、どういう名前の人が來たか知つておりませんか。
  302. 中村津萬子

    ○中村證人 私は余興だけに出ますものですから、記憶ございません。
  303. 武藤運十郎

    武藤委員長 昨年の四月末に辻さんのところで二十万円を渡したと辻さんは言つておるのですが、どうですか。
  304. 中村津萬子

    ○中村證人 私、受取つております
  305. 武藤運十郎

    武藤委員長 その金は何の金ですか。
  306. 中村津萬子

    ○中村證人 それは先生がお客を招待したり何かしたお勘定でございます
  307. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつからいつまでの勘定ですか。
  308. 中村津萬子

    ○中村證人 それはお帳場さんに聽かないと私はわからないのですが、大体半年分ぐらいじやないでしようか。
  309. 武藤運十郎

    武藤委員長 半年分くらいの勘定だと思うのですか。
  310. 中村津萬子

    ○中村證人 そうだと思いますが、はつきりはわかりません。
  311. 武藤運十郎

    武藤委員長 それ以外に辻氏から金を受取つたことはないですか。
  312. 中村津萬子

    ○中村證人 ございません。
  313. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたはないけれども、桂の主人が受取つたということも聽きませんか。
  314. 中村津萬子

    ○中村證人 聽きません。
  315. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御質問ありますか。
  316. 徳田球一

    ○徳田委員 ちよつと証人にお尋ねします。この桂という料理屋はもと赤坂の三河屋の後身ぢやないのですか。
  317. 中村津萬子

    ○中村證人 さようでございます。三河屋さんがやつておりましたことがございます
  318. 徳田球一

    ○徳田委員 今はそうではないのですね。
  319. 中村津萬子

    ○中村證人 三河屋さんというのは、赤坂にちよつとしかやつておりません。それを讓り受けて燒けたのです。それで今度三田へ出しましたのです。
  320. 徳田球一

    ○徳田委員 そうすると今やられておるのは三河屋さんではないのですね。
  321. 中村津萬子

    ○中村證人 燒けてからでしよう、三河屋というのは、加藤さんという方がやつておりまして、それを今の畦上さんが買受けて、燒けてしまつたのです。それから今の方が桂を経営していらつしやるのです。
  322. 徳田球一

    ○徳田委員 終戰後のお話でありますが、山本幸七という方はよく遊びにいらつしやいましたか。
  323. 中村津萬子

    ○中村證人 それは存じ上げません。
  324. 徳田球一

    ○徳田委員 全然御存じない。それでは吉田彦太郎さんというのは。
  325. 中村津萬子

    ○中村證人 存じません。
  326. 徳田球一

    ○徳田委員 兒玉譽士夫さんは。
  327. 中村津萬子

    ○中村證人 存じ上げません。
  328. 徳田球一

    ○徳田委員 どなたも御存じないのですか。辻さんだけしか御存じないのですか。
  329. 中村津萬子

    ○中村證人 先生には特に病身ですし、こういう商賣ですから、いろいろ御懇意に願つております
  330. 徳田球一

    ○徳田委員 鳩山さんは。
  331. 中村津萬子

    ○中村證人 存じ上げております。そちらは有名な方ですからどなたも御存じだと思います
  332. 徳田球一

    ○徳田委員 鳩山さんは桂という料理屋によく遊びにいらつしやいましたか。
  333. 中村津萬子

    ○中村證人 いいえ、遊びにいらつしやいません。
  334. 徳田球一

    ○徳田委員 終戰後鳩山さんはいらつやいませんでしたか。
  335. 中村津萬子

    ○中村證人 私はお目にかかりません。
  336. 徳田球一

    ○徳田委員 全然御存じないのですか。
  337. 中村津萬子

    ○中村證人 鳩山先生は存じ上げおりますが、そういうお席でお目にかかつておりません。
  338. 徳田球一

    ○徳田委員 そうすると、辻嘉六さんだけお遊びになつて、それが六箇月で二十万円……。
  339. 中村津萬子

    ○中村證人 いいえ、そうじやございません。皆さんお客様をなさつていらつしやいますから、先生お一人でお使いになつたわけじやございません。
  340. 徳田球一

    ○徳田委員 他のお客様は全然御存じないのですか。
  341. 中村津萬子

    ○中村證人 はあ。一々帳簿を調べていただけばわかると思います
  342. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは桂へお勤めになつたのはいつごろからですか。そうして現在もお勤めなんですか。
  343. 中村津萬子

    ○中村證人 私桂に勤めましたのは、一昨年の六月ごろからで、昨年の十二月にやめましたのでございます
  344. 中野四郎

    中野(四)委員 僕は一言この際証人に反省を求めなければならぬことは、たとえこの委員会において笑いの中に質問があろうとも、いやしくもあなたが桂において終戰後お勤めになつて、一年判、二年お勤めになつていらつしやれば、桂の常客である者を御存じないわけはあり得ないと思う。少くとも山本幸七とか、吉田彦太郎という者があなたの所へ行かれないという事実が何で証明できますか。ただ端的に御存じないとおつしやるならば、私はそれは承服いたしかねるのでございます。少くともあなたが桂の相当の古い顏でいらつしやるならば、お料理屋さんの立場でお客の一々を指すことは惡いと思召すのだろうと思うけれども、その重要なひいき客ぐらいは御存じだと思う。全然御記憶ございませんか。
  345. 中村津萬子

    ○中村證人 その吉田さんとか山本さんという方は全然存じ上げませんと、またそういうふうにお思いになるかもしれませんけれども、私は女中さんとか藝者衆と違いまして、ほかの座敷へあまり出たことございません。おかみさんの代理で御挨拶には出ますけれども、一々お名刺をいただいたり、お名前を伺つたりすることはしておりませんから、どうかその点……。
  346. 中野四郎

    中野(四)委員 証人証言が私らには納得ゆかない点があります。御承知通りこの委員会証人の規定に関しては、もしいつわりの証言をすれば、僞証罪としてそれぞれの処置を受けるということは御了承の通りでありますが、私らがこうしたただ末梢的な問題ではあるけれども、この末梢のものを総合して根本的な問題に触れていこうとするのでありますから、きわめて問うことは散漫でありますけれども、その重要性は現在調査をしている過程においてはなかなか容易ならぬものであります。私は特にこの際証人が今言われた、自分は座敷へ挨拶に出ていつても、実質上において名刺をもらつたものでないと言われるけれども、料理屋の通則として、少くとも大切な客筋の名前を覚えておらないというようなお言葉は、ちよつと受取り難いのでありますが、私からの質問はこれで終ります
  347. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか——それでは済みました。     —————————————
  348. 武藤運十郎

    武藤委員長 森山さんですね。
  349. 森山邦雄

    森山證人 さようです。
  350. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど申し上げました問題につきまして、辻嘉六氏は檢事局でこういうふうに申しております。  「森山鳩山方にいた弁護士で、古くから知り合つており、森山の息子が去る四月の衆議院議員選挙に茨城から立候補し落選しました。去る四月上旬ごろ森山が私方に参り、息子の立候補につきよろしく援助してくれというので、二万円渡してやつたのです。」こう書いてありますが、その通りでありますか。
  351. 森山邦雄

    森山證人 少し事実が違つておる点があります。金額の点は確かに二万円を受取りました。
  352. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういうふうに違つておりますか。
  353. 森山邦雄

    森山證人 私は辻さんとは鳩山さんの事務所へ私がはいる前から、弁護士試驗に及第しましてから後知つておりました。それで事件を辻さんから私は依頼を受けておりました。その事件が大正十年から大正十四年まで係属しておりました。そういう関係で、訴訟事件を依頼されて辻さんとは特別に親しかつたのです。しかし爾來辻さんとは年賀状の往復くらいの程度でまつたく交通もせないでおりました。その事件は当時非常に複雜した訴訟事件でありまして、北海道等において辻さんが事業をやつておりまして、その関係新聞を辻さんが発行しておつた。その新聞の事業についての整理をやつてくれというので、私が引受けたのですが、私は報酬なんかにこだわらずに、辻さんの事件を引受けておつたわけです。さいわいにそれが解決しまして、その事件が終りましてからはあまり交通することがなかつた。昨年長男が選挙に出ましたので、実は長男の選挙を私自身が應援しなければならないために、應援の費用として辻さんにお話をして二万円を受けたのです。直接長男の選挙に辻さんからもらつたのではないのです。というのは、私の長男は、辻さんと私が懇意な大正十四年当時は小学校の一年生でありまして、辻さんと私の長男とは全然一面識ありません。從つて私がその金額を受けましたことは、私は長男に話さなかつた。そういう関係で、長男のために辻さんから金を受けたのではなくて、私が長男を應援するためにそれを受けたのです。その点が少し辻さんのそこに書いてある点と違うような氣がいたします
  354. 武藤運十郎

    武藤委員長 結局あなたが長男を應援する選挙資金というようなことになりますか。
  355. 森山邦雄

    森山證人 私自身の應援の費用を受けたのです。
  356. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたが應援するためのあなたの費用ということになるのですね。
  357. 森山邦雄

    森山證人 さようでございます。金額には相違ございません。
  358. 武藤運十郎

    武藤委員長 息子さんは何というお名前で、おいくつですか。
  359. 森山邦雄

    森山證人 森山欽司と申します。三十一歳でございます
  360. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、このほかに別に選挙をなさつたこともないので、從つて政治資金、應援資金というようなものを、あなたなり息子さんなりが辻さんからもらつたことはないのですね。
  361. 森山邦雄

    森山證人 私は辻さんから昨年それをもらつただけで、前にも政治的には関係ありませんし、それから私は選挙地に行つて帰りましたけれども、いろいろ用事が多うございまして、つい会うこともなかつたのです。一回も会つておりません。長男は辻さんには一回もお会いしたこともなし、そういうような次第であります
  362. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人のところからきた金だということは、全然知らなかつたのですね。
  363. 森山邦雄

    森山證人 どういう性質の金であるかまつたく存じませんで、今度新聞等に書いてありますので、はたしてその金であるかどうかわかりませんが、新聞紙上が初めて承知したような次第であります
  364. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは大分長い懇意のようですが、辻氏がどういう人物であるか、また政界においてどういう存在であるかというようなことについて簡單に述べてもらいたい。
  365. 森山邦雄

    森山證人 辻さんとは先ほど申し上げましたように、大正十年から十四年ぐらいまで訴訟が係属しまして、私はその事件を依頼されたために、その間御懇意であつたのですが、その事件の結了と同時に辻さんとあまり交通はせなかつた。年賀状の出し合いをすることのできるときには、私は年賀状を私の名簿によつて辻さんにも出しました。辻さんからも年賀状を頂載いたしました。そういうような関係で、その後は辻さんとお会いする機会がまつたく私はなかつたのです。しかし私がその事件の依頼を受けた当時、約四年間ばかり係属した事件ですから、その間はたびたび辻さんとお会いしました。辻さんはまれに見るりつぱな人格の人であるという考えを私はもつてつたのです。今でもそういう人であると思つておりますが、はからずもこの間新聞等にこの問題が現われて、どういうものであろうかということを自分から考えたような次第であります。政治上の関係については、私は辻さんとは選挙についても今のような次第で、あまり深く知らないのですが、辻さんが自由党関係があるというようなことも、昨年自由党の機関雜誌に辻さんの意見が載つておりました。そのときに初めて、辻さんが自由党にも大分深い関係があるのかなあと思うくらいの程度であつた政界関係があるというようなことは、前からもほぼ聞いてはおりましたけれども、どの程度に深い関係があるのかは私よく存じておりません。
  366. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんは、選挙があると多くの政治家に二万、三万というような金を出してやるような人であるというようなことはお聽きになつていませんか。
  367. 森山邦雄

    森山證人 そういうことは、私は今日まで辻さんとは事件の関係では接近しておつたけれども、政治的にはあまり知らなかつたものですから、そういう点は深く知らなかつた。ただ金銭については非常に淡白でありました。あれば出さない人でないという性格の方です。しかし私が事件を引受けた当時は、辻さんはそう金のある人ではありませんでした。それで私自身辻さんから報酬を受けるというような氣分で引受けた事件でなかつたのですが、これはどうしても辻さんが処理しなければならない訴訟事件でありましたので、私はその事件には奮闘努力して訴訟代理をいたしたわけです。
  368. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か諸君御質問がありますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  369. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました、御苦労さまでした。     —————————————
  370. 武藤運十郎

    武藤委員長 やや遅れてお見えになりました証人倉石忠雄さん、保利茂さん、石田左近さん、これはすでに新聞で御承知かと思いますけれども、御承知通りこの不当財産取引調査特別委員会政界、財界、官界の淨化を目的として特に衆議院に設けられたものであります。当委員会はこのたびいわゆる世耕情報をめぐる中曽根幾太郎氏の軍服拂下事件に関連して辻嘉六という人が政界の各方面に相当多額の金円を撤布しておるというような問題の調査を取上げたのであります。この金の中には中曽根幾太郎氏が詐僞の疑いある行為によりました多くの國民に迷惑をかけた金二十五万円もはいつておるというようなわけでありますので、当委員会辻嘉六中曽根幾太郎両氏をめぐるこれらの金銭授受関係を徹底的に究明するために本日証人に出頭を求めた次第であります証言を求めます前に宣誓をしていただきます宣誓をいたした上で虚僞の陳述がありますと、三月以上十年以下の懲役に処せられる規定になつておりますから、十分御留意の上証言を願いたいと思います。それでは宣誓をしてもらいたいと思います。倉石さんとひとつ代表で、読んでください。     〔証人倉石忠雄君各証人を代表して宣誓〕     〔各証人誓書に署名捺印す〕
  371. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは倉石さんから伺いますから、ほかの二人の方は別の部屋でお待ちを願います。  倉石さんに伺いますが、辻嘉六氏は中曽根氏の事件について檢事局でこのようにあなたに関して述べております。  「倉石はかねて鳩山一郎方に出入しておる人で、私とは古くからの知合です。当人は去る衆議院議員の選粒に長野縣から立候補し、当選し、現在自由党の幹事だと思います。一覽表には倉石に私から二十万円渡したように書いてあり、その備考に昨年來立替金百万円のうち八十万円を返済を受けた残金と記しておきましたが、その経緯につきここに説明を加えておきます。倉石は鳩山の輩下で、終戰後は台湾から引揚げてまいり、昨年四月の総選挙にも長野縣から立候補しましたが、落選し、その後私方にも出入りするようになりました。それらの際本年四月の選挙には援助しようと申しておいたことがあるのです。倉石は京橋木挽町の緑産業株式会社(資本金二百万円)の会長をしており、私と話をしているうちに賠償物資撤去関係の仕事をやつてみたいというので、当時の緑産業の社長吉田彦太郎を呼び、右の仕事を倉石とやつたらどうかと勧め、その結果倉石が右会社に関係するようになつたわけです。この会社は現在賠償物資関係の仕事は未だ全然やつていないようです。ところで、倉石が私方に出入するうち、昨年五月ころから本年四月までの間私に対し倉石の交際費、選挙費用等、いわゆる政治資金を私に出してくれとの依頼がありましたので、二、三十回にわたり合計金百万円くらいを私方で同人に渡しており、そのうち本年三月末ころと四月初めころの二回に十万円ずつ合計二十万円を政治資金として倉石に渡しているのです。もつとも右百万円くらいの出金に際し、あとで倉石から五十万円と三十万円、合計八十万円を本年二月か三月初めころ私に戻してきたので、これを受取つております。  右のような事情で、中曽根から受取つた金の行方の関係は二十万円が相当だと思い、その旨を記載しておいたわけです。」  こういうふうに申しておりますけれども、大体においてこの通りですか。
  372. 倉石忠雄

    ○倉石證人 辻さんのおつしやつておられることに対しまして、檢察廳に喚ばれましたときに私が述べていることが私の眞実でありまして、辻先生は顏は前から知つておりましたけれども、挨拶をするようになりましたのは一昨年の九月ころだと思つております。私は牛込の二十騎町というところに戰前住んでおつたのでありますが、そこが戰災で燒けました、その燒けた跡へバラツクを建て始めたのであります。それで友人に鎌倉から通つているのは不便だから、牛込の自分の地所に今バラツクを建て初めておるのだて申しましたところが、それじや辻さんのすぐ近所だ、一遍挨拶に行つたらどうだというような話で、それでは御近所に行くことだから連れて行つてくれということで参りましたのが、一昨年の九月ごろだと思つてます。あのお宅に伺いましたのはそれからのことであります。その点少し違つておると思います。その伺いましたときに、今はどういう事業をしておるかとお尋ねがありましたので、実は私は十年ばかり台湾で工場経営をしておつたのだが、終戰で百数十名の技術者と社員もぽつぽつ引揚げてくるので、今それらをもつて事業の再遍成計画をやつておりますと申しましたところが、ついては自分の友人で役所におる連中がいる、あなたのところは技術をもつておるのだから、差当り賠償物資の梱包輸送というようなことは適当じやないか、ひとつ心配してあげようと言われたから、それはいいことだというので、自分はそれをやろうとしておつた最中でありますお話しましてところが、自分に別懇にしておる緑産業株式会社というところで一諸にそれをやつてくれないか、というお話が辻さんから出たのであります。そこで私の店の東京支店は丸の内ビルの四階にあつたのでありますが、ちようどそのころ進駐軍にそのビルと接続しておる丸の内ホテル、両方一緒に接收になつて立退きを命ぜられておつた矢先でありまして、これはいいと思つたものでありますから、辻さんのおつしやるままに緑産業株式会社に私の東京の店のスタツフを合流させまして、緑産業の社員にしました。そして私はそこの顧問ということになりましたが、そのときに初めて吉田という人に紹介されたわけであります。それで取締役会長になりましたのは、初め顧問ということで、ぽつぽつと仕事を始めるには金融機関から運轉資金を借出さなければならないというので、自分の永年の取引銀行に、実は今度引揚げてきて技術者を集めてこういう仕事をやることになつたが、そのうちにぜひひとつ金融の面倒をみてもらいたいという申込をしましたところが、吉田さんという方はどういう方か知りませんが、今まで倉石さんと取引をしておるのでありますから、あなたが顧問というような法律上の責任をおとりにならない地位では、ちよつと銀行でも困る。手形の割引のときに共同責任を負つてもらうような地位でないと困るというお話があつたものですから、そこで重役会を開きまして、私が取締役会長に就任したわけであります。そのなりまするときに辻さんのおつしやるには、自分は緑産業株式会社といろいろ関係があるのだから、いろいろな関係方面の接待費などは会社に出させないでくれ、私の方から出しますというのがそのときのお話でありまして、檢察廳でも私はその通りに述べておるのであります。そこで私は辻さんを信じまして、いろいろな接待費、それから梱包輸送組合というふうなものの会費だとか何だとかたくさんに交際費がありますけれども、私のもう一つつております違う会社の方から持出したり、自分のポケツト・マネーを持出したりして、数十万円という金を出しておるのであります。それで緑産業の方からも取締役会社としての報酬も上げなければいけないと言われましたけれども、辻さんからの話があつたものですから、その報酬も私は一文も取らずに働いておつたわけであります。そこで昨年の三月ごろ、ぽつぽつ選挙も始まりそうだというので、自分もそうそうはやりきれないものでありますから、辻さんのところに伺つたときに、大分会社に立替もあると申しましたところ、始後あなたに迷惑をかけているそうだが、このくらいでいいだろうか、というので十万円ずつ二回受取りました。それが眞相であります
  373. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうしますと、十万円ずつ二回受取られたのは、それは選挙資金というのではなくして、緑産業その他の方面であなたがいろいろポケツト・マネーを出しておられる、いわば立替金に対する弁償をしたという形のものでありますか。
  374. 倉石忠雄

    ○倉石證人 その通りであります。そこでちよつと申し上げたいのは、この間辻先生が皆さんの方へ何か回答されたそうであります。実は私見たのではありませんが、その中に、倉石君が貨借がたくさんあつてどうたとか言われておることを聞いたものでありますから、私は自分の会社の会計をやつている者に、辻先生にこれから請求書を出そうというわけではないが、借りたと思われているのは面白くないから、およそどれくらい緑産業の交際費に出しているか調べてくれと言いつけたのでありますか、私の個人的の胸算用から言えば、もつともらわなければ足りないというような考えで今おるわけであります
  375. 武藤運十郎

    武藤委員長 この二十万円という金は何にお使いになりましたか。
  376. 倉石忠雄

    ○倉石證人 私はよそからはいつてますとすぐ会社の会計の者に渡しまして、入用のところへは私の方から口をきいてその者が銀行から出してくるようにやつておりますから、どこそこへいくら使つたかというのは記憶がございません。
  377. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙にお使いになつたのではないのですか。
  378. 倉石忠雄

    ○倉石證人 私は会計から仮拂いで金を出しておりますから、その金が選挙に使われたかどうかということははつきりいたしませんけれども、会計にはいつて、そして私が出しておるわけであります
  379. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏から特に選挙等について金をもらつたというようなことは從來ありませんか。その前後に。
  380. 倉石忠雄

    ○倉石證人 ございません。
  381. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から辻氏に献金をされた金であることは、もちろん御存じなかつたのですね。
  382. 倉石忠雄

    ○倉石證人 ありません。
  383. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御質問ありますか。
  384. 徳田球一

    ○徳田委員 緑産業の仕事の内容はどんなものですか。
  385. 倉石忠雄

    ○倉石證人 私は今陳述申しましたような事情で、最近緑産業に関係いたしたのでありまして、実はあそこへはいりましてからしばらく経つて、重役会で私の歓迎会をしてくれまして、そのときに吉田さんという人の経歴を初めて知つたわけであります。私がはいりましたのは、こういうことを申してはいけないかもしれませんが、はつきりいたすために申し上げますと、つまり私がはいりました時分はあまり大した仕事をしておいでにならなかつた。それで私のところは百数十名という技術者を抱えている、それを使つて建直しをしようと考えられたのであろうと想像しておつたのですが、その時は賠償物資の梱包輸送の仕事の計画以外には進駐軍の土建関係をやつておりまして、この方は少し景氣がよかつたようであります。今もそうだと思います。私は昨年の十月末ごろ、あすこに関係していることがどうかと思いましたので、事情を話して辞表を出しましたから、その後のことは存じません。
  386. 徳田球一

    ○徳田委員 緑産業と辻嘉六さんとの関係ですが、今のあなたのお話ですと、辻嘉六さんがほとんど緑産業を実質上握つているように思われますが、そんなことはないですか。
  387. 倉石忠雄

    ○倉石證人 私の感じではおやぢおやぢと社長が言つておりまして、私は何と言うかたくさん子供のある人のどつかの一人のお子さんだと実は思つてつたのです。それほど血縁関係はないようですが、その吉田という社長は非常に慕つておりましたし、それから辻さんもまた吉田の顔を見ているとかわいくてしようがないと私に始終言つて、ほんとうの親子より親しそうにやつておりました。会社の内容についてはあまり深くタツチしておいでにならなかつたように存じます
  388. 徳田球一

    ○徳田委員 しかし辻さんがあなたに緑産業としての交際費を全部辻さんがもつとやるというお約束らしいのですが……。
  389. 倉石忠雄

    ○倉石證人 そうです。
  390. 徳田球一

    ○徳田委員 そうするとあなたに大きな深い関係があることは事実ですね。
  391. 倉石忠雄

    ○倉石證人 あるだろうと思います
  392. 武藤運十郎

    武藤委員長 一点伺いますが、緑産業から三百万円を辻氏にもつてつたということを御存じありませんか。
  393. 倉石忠雄

    ○倉石證人 今申しましたような辻さんと吉田君との関係でありますから、あればもつてつたでありましようが、私はその事実は知らないことであります
  394. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 檢察廳で述べられたことと違うところがある。これはどつちでもよいのですが、食い違うと変でありますから、ちよつと記憶を喚び起してください。三月の下旬十万円、五月の上旬十万円、合計二十万円をもらつているが、これは選挙費用や縣会議選挙のために使用したと檢察廳が述べられたが、この点証人どうですか。
  395. 倉石忠雄

    ○倉石證人 お答えいたしますが、その時分はそういう記憶がはつきりしておつたかもしれませんが、今申しましたように、この金は政治の方に使うべき金だこの金はビジネスに使うべき金だという区別はやつておりませんが、平素私の金を預つている会社の会計に一括して渡して、その中からひつぱり出してやつているものですから、その時分に出したものはその方に使われていると思うということを申し上げたのです。
  396. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 檢察廳で言われたのには、自動車も一台もらつておると書いてあるのですが、これは辻さんとは深い関係があつて、辻さんの言われる貸借というのがほんとうか、あるいはそうでないのか、その点は食い違うと変だと思うのです。自動車も一台もらつておるということが書いてありますが、その点証人はお考えをまとめられた方がよくはないかと思いますから申し上げます
  397. 倉石忠雄

    ○倉石證人 車はつまり緑産業の取締役会長として——実は私は外地に行つております間に家が燒けまして、同時に私の車も燒けてしまつて非常に不便を感じておつたのであります。そのときに緑産業の会長として私に提供されたものであります。從つて今もまだ名義はそのまま変えてないわけです。
  398. 武藤運十郎

    武藤委員長 他にありませんか。
  399. 小松勇次

    ○小松委員 ただいま倉石さんに対しまして委員長初め皆さんかにお尋ねになつたことは、中曽根軍服事件に関する問題を中心として証言を求められたのであります。私はこの際中曽根軍服事件とは別な軍服拂下事件に対しまして、辻嘉六さんと倉石さんとが御関係があるようなうわさを耳にいたしておりますので、その眞相を明らかにいたすことが倉石さんのためにもよかろうと存じますので、この際特にお尋ねしたいのであります。倉石さんは沼津の檢察廳におきまして、あなたの周囲の人々と言われまする日本産業株式会社の社長都河さんと、それから都河さんの友人の中山浩さんその他の方々が、静岡縣伊東農業会の專務勝又理三郎から四百七十万円を巻き上げた軍服拂下詐欺事件があるということを御存じでありましようか。
  400. 倉石忠雄

    ○倉石證人 その話は聞きましたですが、私はそれには関係をしておりません。
  401. 小松勇次

    ○小松委員 都河さんとあなたとはどういう御関係でありましようか。
  402. 倉石忠雄

    ○倉石證人 都河というのは私の妻の弟でありまして、ただいまあなたのおつしやつた何とか産業というのの社長ではありませんで、婦女界社という婦人雜誌をやつております
  403. 小松勇次

    ○小松委員 なおお尋ねしたいのですが、軍服拂下が不履行に終つたために、伊東農業会の勝又氏は、農業会の金庫から無断で五十六万円を支出いたしましたために、その穴埋めに非常に窮しまして、都河さんのところへ現金の請求にまいりましたときに、今現金はないが、しかしやがて金を支拂うというようなお話があつて、その証として私の承るところによりますと、二十二年の九月十四日に支拂うというお約束の手形を七月十五日に勝又氏に渡して、その振出人が都河さんであり、裏書人があなたであるということを承つておりますが、さようなことが事実あつたでございましようか。
  404. 倉石忠雄

    ○倉石證人 ありません。
  405. 小松勇次

    ○小松委員 金さような手形が都河さんから振出されたということを全然御存じないのですか。
  406. 倉石忠雄

    ○倉石證人 私にあてて出したというのでございますか。
  407. 小松勇次

    ○小松委員 いいえ、あなたがその裏書人をしていらつしやる。
  408. 倉石忠雄

    ○倉石證人 ございません。
  409. 小松勇次

    ○小松委員 なお沼津の檢察廳におきまして、辻嘉六さんはこの事件の証人として喚問せられましたときに、かようなことを申しておられるのであります。二十二年の二月ころ倉石氏が辻さんの家を訪ねられて、京都府下に一億円程度の隱匿物資があるはずであるから、その眞相を世耕代議士に聽いてもらいたい、そうしてこの隱匿物資キヤラコの約三分の一を全國農業会に拂下げ方を斡旋してもらいたい、実現するならば五百万円内外のお礼がもらえるはずである、そうするならば辻先生に平素資金のことやその他でいろいろ迷惑をかけておるので、その中から若干のお礼ができることと思う。かようなことを倉石さんが申したということを辻さんが証言しておりますが、かようなことがあつたでありましようか。
  410. 倉石忠雄

    ○倉石證人 二十二年の四月ですか。
  411. 小松勇次

    ○小松委員 二十二年の二月ごろ。
  412. 倉石忠雄

    ○倉石證人 今のようなお話を私は辻先生に申し上げたことはありません。
  413. 小松勇次

    ○小松委員 なお辻さんのその証言の中に、四月の中旬ごろに倉石さんが辻さんのお宅に都河さんという方を使として二回にわたつて現金五十万円と三十万円をお届けした、かようなことを申されておりまするが、この合計八十万円の金は先ほどお話のありました百万円のお金の返金に当るのでありますか、それとも他の何かの関係によつて得たるところの御礼金でありますか。
  414. 倉石忠雄

    ○倉石證人 それは私が檢察廳で申し述べている通りであります。私はそういうものをもたしてやつたことはありません。
  415. 小松勇次

    ○小松委員 なお昨年の四月総選挙の直前に、選挙準備のために長野縣にあなたがお立ちになるときに、辻さんから十万円を受取られた、かようなことを言つておりますが、これはやはり先ほどお話のありました十万円ずつ二回、二十万円の金の中にこれが当るのでありますか。
  416. 倉石忠雄

    ○倉石證人 そうです。
  417. 小松勇次

    ○小松委員 そうすると、伊東の軍服拂下事件に対しては、非常にあなたも御迷惑になつていることと思いますが、全然あなたのお関係のないということをはつきりいたされますか。
  418. 倉石忠雄

    ○倉石證人 それは今申し上げておりますように、都河という者が何か自分友人たちと一緒にやつておりまして、それで辻さんにも紹介してくれというようなことで一遍紹介したことがありますが、その事柄は都河という者とたれかがやつてつたのでありまして、私は選挙に帰つてしまつてその間にはいつておりません。
  419. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  420. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労樣でした。     —————————————
  421. 武藤運十郎

    武藤委員長 保利茂さんですね。お伺いいたしますが、先ほどお話をしました辻嘉六氏の関係で、辻氏は檢事局でかように述べております。  「保利は大分縣から衆議院議員に出て昨年は当選しましたが、去る四月の選挙には選挙中追放該当者に決定し、選挙中止いたしました。同人は民主党所属で前の商工政務次官でした。同人とは古く床次時代の知合いで、去る四月上旬ころ私方に來て選挙で金が要るというので、前同樣一万円出してやりました。」こういうように述べております。この通りでありますか。
  422. 保利茂

    ○保利證人 ただいま委員長のお読みになりました辻さんのお話というのは、大分事実が相違いたしておりますので、あるいは御記憶の違いであろうかと思うのであります。私は昨年の三月に商工政務次官に就任いたしましたが、その就任いたします前後、私の就任に対して相当反対が行われておる。その反対者に対してどういう関係からか、辻さんがたいへん心配をしていただいたということを聞き及びましたので、たしか三月の十二、三日ごろだと記憶いたしておりますが、御挨拶に出ました。そうしまして御挨拶をして帰ろうといたしますと、少しお祝いをしたいけれども、自分も十分自由にならぬから、はなはだ軽少だけれどもこれをお祝いのしるしに納めてくれないか、そういうことでありましたから、私はいや、それは飛んでもないことです。たいへん御心配をかけたということで私としては思わぬ好意を受けていることでありますから、お金などはどうぞ…と言つて、御辞退を申し上げましたが、まあ少しばかりのものだから、年寄りに恥をかかさぬで納めてくれぬかというようなお話でございまして、私はまつたく辻さんの御好意をそのままこれは頂載すべきであると思いまして、いただきましたのが、一万円であつたわけであります。從いまして四月の上旬ということは全然ございません。三月の十二日か十三日か、その両日のうちであつたと、私は記憶いたしております
  423. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金は何にお使いになりましたか。
  424. 保利茂

    ○保利證人 何に使つたということは、もちろん額としては小さいと言えば小さい、大きいと言えば大きいのですが、当利私はいろいろな雜費に使いましたと思つております
  425. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかに辻氏から金を受取られたようなことは、当時ございませんか。
  426. 保利茂

    ○保利證人 あとにも先にもそれが一回です。
  427. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から、辻嘉六氏に献金をされた金であるというようなことは、もちろん御存じがない。
  428. 保利茂

    ○保利證人 もちろん存じません。のみならず私はもしここでお許しをいただきますならば、そのときはもうそういうことが起きておつたのでございましようかということをお伺いしたいくらいであるわけであります
  429. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は選挙などに際しては、相当大きな金をよそからもつてきて、候補者諸君にいくばくずつでも渡してやるというような人ですか。
  430. 保利茂

    ○保利證人 先ほど辻さんの陳述なる語をお聽かせいただきましたが、私は辻さんというのはなるほど古くからお顔は知つておりましたけれども、挨拶も実は交わしたことがないのであります。從いまして、私が辻さんにあらたまつてお目にかかりましたのは、それが最初のころでありまして、辻さんという方はいろいろうわさでは聞いておりましたけれども、直接に知りましたのはそのときが初めてでございまして、そういうことについて私はまつたく申し上げる資格をもつておらぬわけであります
  431. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお聽きになることがございますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  432. 武藤運十郎

    武藤委員長 それじや済みました。御苦労樣でした。     —————————————
  433. 武藤運十郎

    武藤委員長 石田左近さんですね。お伺いしますが、辻嘉六氏は檢察廳においてこういうふうに述べております。  「石田自由クラブ員で、去る四月の選挙に、富山縣から衆議院議員に立候補し、落選しました。同人は三月下旬ごろ右松岡の紹介で承知したのですが、やはり選挙費用を出してくれというので、私方で直接石田に一万円渡してやつたのです。」こういうふうに述べておりますが、この通りですか。
  434. 石田左近

    石田證人 違います。私は福井縣から当時の自由党を名乘つて立候補しました。いろいろな選挙事情の関係で途中でやめたのであります。それで辻さんの宅へは三月下旬にお伺いしましたところが、いろいろ選挙お話が出まして、私の選挙区の情勢などをお尋ねになりました。それで約一時間ぐらいでありましたか、いろいろ話しまして帰ろうとしましたら、ちよつと待てというお話、待つておりましたところが、どこか座敷の後ろの方にちよつとひつこんだようでありましたが、出てきて君に小づかいをやろうと言つて一万円を確かに頂載してまいりました。そのとき一旦辞退したのでありますが、まあもつていけよということで頂載してまいりました。その点がちよつと違うと思います。金をもらつてことは一万円頂載いたしました。
  435. 武藤運十郎

    武藤委員長 松岡さんの紹介で…。
  436. 石田左近

    石田證人 松岡という人は知りません。
  437. 武藤運十郎

    武藤委員長 松岡松平氏は自由クラブ理事長をしておつたのではありませんか。
  438. 石田左近

    石田證人 松岡という人は知らないのであります。顔を見たら知つているかもわかりませんが、面識もありません。話したこともありません。
  439. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは自由クラブ員ではありませんか。
  440. 石田左近

    石田證人 私は自由クラブ員ではありません。
  441. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金は選挙にお使いになる金という意味であつたのですか。
  442. 石田左近

    石田證人 私には小づかいにと言つてくださつたのです。私は断つたのですが、まあもつていけというのでもつて帰りました。
  443. 武藤運十郎

    武藤委員長 お使いになりましたか。
  444. 石田左近

    石田證人 それは選挙費用に使いました。
  445. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から、辻さんに献金されたというようなことは御存じありませんか。
  446. 石田左近

    石田證人 知りません。私は淨財と思つていただいたのです。
  447. 武藤運十郎

    武藤委員長 淨財というのはどういう意味ですか。
  448. 石田左近

    石田證人 私が行きましたら、自分のお金をくださつた思つてつたのです。
  449. 武藤運十郎

    武藤委員長 その前後に金をもらつたことはありませんか。
  450. 石田左近

    石田證人 一度もありません。
  451. 武藤運十郎

    武藤委員長 これが初めての終りですか。辻という人が相当の金を献金を受けたものを、多くの政治家に、選挙などに際しては分配してやるというようなことは御存じありませんか。
  452. 石田左近

    石田證人 知りません。そういう人であることはうわさに聞いておりましたが、その実際は知らなかつたのであります
  453. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねがありますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  454. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  455. 武藤運十郎

    武藤委員長 ちよつと速記をやめて……。     〔速記中止
  456. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは速記を始めてください、未だ出頭しない証人宇田國榮、三宅則義、大塚令三、杉田馨子、青木勇、世耕弘一君、この諸君を再び二十七日に嚴重な制裁の注意を加えて喚び出します。同時に中曽根幾太郎氏を同二十七日に喚ぶことにいたしたいと思います。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  457. 武藤運十郎

    武藤委員長 從つて辻氏のところへ臨床尋問に参りますのは二十八日にいたしたいと思います。参る者は武藤委員長と高橋君、小松君、この三名にいたしたいと思います。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  458. 武藤運十郎

    武藤委員長 山口久吉君のところへは河井栄藏君に臨床尋問に行つていただきます。これも二十八日までにお願いしたいと思います。  それから昨日亀井事件の記録を取寄せることにいたしましたが、同時にこれと関係の密接不離の厚生同胞協力関係で、綿引喜一、小川美武彦、西山重道、これに関するやはり軍服拂下事件の記録を同時に取寄せて調査をいたしたいと思いますが、いかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  459. 武藤運十郎

    武藤委員長 それから社会党で私が委員長になりましたので、理事が一名欠けることになりましたが、これより理事補欠を互選いたしたいと存じます
  460. 足立梅市

    ○足立委員 社会党から河井栄藏君を推薦いたします
  461. 武藤運十郎

    武藤委員長 御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  462. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは河井栄藏君を後任理事に確定いたします
  463. 徳田球一

    ○徳田委員 群馬縣のコーヒー事件もいろいろ調べておりますが、これは前に一遍隱退藏物資にかかつた問題でありますけれども、埼玉縣の知事の西村実造氏に関する特殊物件の問題であります。これはあの当時の発表によりますと、非常に不正な取引でありまして、その後にさらに埼玉縣ではいろいろの纖維品やその他の事件が起つておりますが、そういう関係もありますので、ぜひともこの特殊物件の一件を調べておかなければならないと思います。そこで記録にもありますから、この記録に從いましてこれらの証人の喚問その他を理事会できめることにいたしまして、この委員会ではこれを取上げて早速調べるよう提議したいと思います
  464. 武藤運十郎

    武藤委員長 徳田君に申し上げますが、この委員会で取上げる場合には、ある程度確たるものでなくても、不当財産取引委員会調査するために疑いがあるというような不当取引の事実がなければならぬと思うのですが……。
  465. 徳田球一

    ○徳田委員 これはすでに不当取引委員会におきましてもこの問題は提起されまして、不当取引であるということに対してはほとんど異議のないものであります。あの場合にもこの証人を喚んで調べをするはずでありましたが、これがいろいろな問題が錯綜して、とうとう延び延びになつておるのであります。これは記録にちやんと明らかになつておりますから、不当取引であることはもう明確である。これはさきに隱退藏物資の委員会で古島委員から報告が出ている問題であります。あの埼玉縣は非常に乱脈をきわめておる。この問題はぜひともこれから端緒をつけまして、さらにこれは昭和電工もここから隱退藏物資の問題で問題が起つて、すでに檢局事にもかかつておる。そのほかに熊谷、忍町、秩父町における纖維品の問題も出ております。これも檢事局にすでに上つておるわけでありますから、この問題はぜひとも早く取扱いませんと、今後の問題の糾明にあたりまして非常に惡い影響を及ぼす、最近は羊毛の隱退藏物資の摘発も行われまして、これも縣廳と大分関係があるということは明確になりつつあるのでありますから、こういう問題はぜひとも早く扱いませんと、不当取引委員会の責任としてはうまくないと思います。これの記録はちやんとできておるのですから、ひとつ早く取扱つていただきたい。
  466. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは埼玉縣における西村知事その他に関連する特殊物件の処理につき、不当なる処理が行われたものと考えられるので、これについて調査いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  467. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは詳細な調査方法等につきましては理事会において協議することにいたします。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  468. 田中健吉

    田中(健)委員 辻事件に関する証人は、大体檢察廳関係のもので本日までにきめてあつたもの以外にまだ喚ぶ者がありますか。御提案があれば出してきめておいた方がいいのではないかと思います
  469. 武藤運十郎

    武藤委員長 大体これで一段落という形です。ただ辻氏を調べた結果、六百五十万円のあの行方がもし明らかになる場合は相当廣範囲にまた問題が発展する、こういうことは考えられるのです。それはしかしそのときであつて、今のところではいわゆる二百五十万円及びそれに関連する関係者としてはこのくらいだと思います
  470. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 今委員長が言われたような新情勢の発展があつた場合にはもちろんですけれども、われわれにおいても新資料をもし蒐集することができましたら、あらためてまた提案いたしますが、それはそのときに應じてひとつ御判断願いたいと思います
  471. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではさようにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十九分散会