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1948-04-13 第2回国会 衆議院 不当財産取引調査特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年四月十三日(火曜日)     午後二時十七分開議  出席委員    委員長 武藤運十郎君    理事 田中 角榮君 理事 小松 勇次君    理事 石田 一松君 理事 中野 四郎君       石田 博英君    高橋 英吉君       平澤 長吉君    古島 義英君       益谷 秀次君    明禮輝三郎君       池谷 信一君    河井 榮藏君       山中日露史君    伊藤 恭一君       宇都宮則綱君    橋本 金一君       矢野 政男君    野本 品吉君       田中 健吉君    徳田 球一君  辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題について出頭  した証人       鈴木彌五郎君    岡村 吾一君       山本 喜助君    加藤睦之介君       井上 卓一君    杉山 嘉市君 四月十二日委員平島良一君及び村上勇君辞任につ き、その補欠として古島義英君及び石田博英君が 議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  一 辻嘉六氏をめぐる政治資金の問題  一 証人出頭要求に関する件  一 資料要求に関する件     —————————————
  2. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではこれより会議を開きます。
  3. 石田博英

    石田(博)委員 私はこの委員会審議が公正かつ迅速に運営せられなければならないという建前から、特にこの委員会議事進行の衝に当つておられる委員長武藤君に対しまして、若干の点質問いたしまして私の疑問とするところを解決いたしたいと思うのであります。その案件は、四月十二日附の東京新聞トピツク会見という題目のもとに掲載せられております武藤委員長談話記事に関する件でありまして、多数部数はありませんが、ここに約七部ほどもつておりますので、関係委員に御発付願いたいと思います。  申すまでもなくこの委員会に課せられております使命はきわめて重大であり、かつ深刻なものがあります。從つてこの委員会進行の衝に当られておる委員長態度もまたきわめて公正かつ愼重なものでなければならぬと思うのであります。ところがただいまお手もとに御配付いたしました東京新聞の四月十二日号に掲載しております武藤委員長記事内容につきまして、はなはだこの委員会使命を達成し、かつ公正迅速なる審議を進めるにあたりまして障害となるように受取られる点が多々あるのであります。まずその点について明らかにしなければ、この委員会のほんとうの使命を公正迅速に進めるわけにはまいらないと思います。從つて委員長にまず第一にお伺いしたい。この新聞に載つております記事は、委員長が全部正しいものとして御承認になるものであるかどうか、まずこの点についてお答えを願いたい。
  4. 武藤運十郎

    武藤委員長 石田君に申し上げますが、続いて御意見を述べていただきましようか。
  5. 石田博英

    石田(博)委員 まずこの前提を御承認にならないということになれば、全然その次からの質問をする必要はなくなるのであります。從つてまずこれを御承認になるかどうかという前提の御答弁がなければ、その次の意見を述べるわけにはまいらないのであります。
  6. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではお答えをしましよう。この記事は大体において私の談話通りであります。ただ長い時間にわたつて談話を約十分の一くらいに圧縮しておりますから、説明の不十分な点や、その他多少取違えている点もないことはありません。しかし大体において合つております。
  7. 石田博英

    石田(博)委員 しからば大体においてこの記事について責任を負われるものという建前に立つて、次の項目に対して委員長の御見解を承りたい。一つはこの記事はいかなる立場において委員長談話を発表せられたのであるか、もちろん委員長という名前で掲載されておられる記事でありました武藤君がこの委員会委員長であるという立場において、「トピツク会見」というこの記事の次第に合致するのであるから、個人的な立場で申されたものでないことは当然であろうと思います。従つて委員長という立場から談話を発表せられたものであると思うのでありますが、しからばこの記事内容に盛られておりますことは、すでにこの委員会において決定せられました委員会性格委員会使命ないしは今日までの委員会審議経過ないし結果に基いたものであるかどうか。そういう点についてまずお答えを承りたい。
  8. 武藤運十郎

    武藤委員長 委員会性格は昨年十二月十一日の衆議院における不当財産取引調査特別委員会設置に関する決議によりまして、明確になつております。從いまして性格の檢討等は本委員会においては特に必要がありません。
  9. 石田博英

    石田(博)委員 この記事の中に盛られております内容は、今日まで委員会審議せられた経過あるいは結果に基いて、委員会全体の意向がこういう方向に向いておるという御判定の上に立つて、この談話を述べられたのであるかどうかということを承つておきたいのであります。
  10. 武藤運十郎

    武藤委員長 この談話委員会総意を、私が代表して述べたものではありません。
  11. 石田博英

    石田(博)委員 しかしこの談話内容は、委員会が今日取扱つておる問題、あるいは今後取扱わなければならない問題につきまして、種々結論を出しておられる。あるいは結論に似たものを出しておられるのであります。それを委員長委員会審議総意に基かないまつたく個人的な見解の上に立つて申されるということは、いやしくも委員長という肩書のもとに発表せられる態度としては、私どもは承服できないのであります。この点について御見解を承りたいのであります。
  12. 武藤運十郎

    武藤委員長 私は一つ結論を出しておりません。私の見解を述べておりますが結論を出しておりません。結論をお示しください。
  13. 石田博英

    石田(博)委員 具体的にはつきりした形においてはあるいは出しておられないと申されるかもしれませんけれども、委員長委員長という立場においてこの談話を発表せられたならば、世人委員会審議経過あるいは將來招かるべき結果というものが、この談話方向に向いて行かれるものであると認識するのは当然であります。出されておると考えられる結論一つ——それは後に個々にわたつて質したいと考えておりますけれども、一つはこの記事の中に「委員会刑事事件としては問題にしないが黒幕から金をもらうなどということは好ましいことでない……」という立場に立つて審議を進めておるという一つ結論を出しておる。しかも最下段に「関係議員に善処を求めることとなる、そうなれば当然議員辞退ということになるという言葉が出ております。これもこの委員会結論をあなたが表明せられたという一つ事例であります。これらの問題は委員会十分審査をいたしまして、何が黒幕であるか、あるいはその受け取つた金がどういう性質のものであるか、それが政治道徳的にどういうふうに考えなければならぬかをこれからこの委員会において調査審議するものであつて、こういう原則をお定めになるのはどういう根拠に基いたものであるか。特にそれによつてもたらさなければならない処置でありますが、その処置について議員辞退という明白な形を委員長はすでに予想しておられる。それはいかなる根拠に基いてなされたものであるか。これは明らかに一つ結論を出したものであると私は思うのであります。  なおその他若干それらの問題にわたります前に、委員長態度あるいはお考えを質しておきたいのであります。一つはこの記事の中で、私が読者として看取いたしますことは、委員長辻嘉六という人物をどういうふうに考えておられるか、これをまず伺つてみたい。辻氏は現在御承知のごとく刑事被告人でないのであります。さらにこの委員会において今日辻氏を中心とする事件について種々調査は進めておりますけれども、なお今日においては結論に達していないのであります。委員長は辻氏を刑事被告人とは考えていないけれども、政界腐敗の元凶として、あるいは政治道徳的な犯罪人として考えておられるのかどうか。それはこの記事内容に、これは故意か偶然か知りませんが、他の人物との言葉の取扱いが違つておる。辻氏に対しては呼捨てをし、芦田その他の人たち名前は敬称を付しておる。すでに辻氏を道徳的あるいは刑事的犯罪人という立場に立つて考えておられるように私は思うのであります。  第二点は「あらゆる妨害に屈せず」云々という言葉がある。見出しは新聞社側でつけたかもしれませんが、委員長談話の中に「どういう力が出てきてもみ消そうとしても委員会はその圧追に屈せずやつていける」という言葉がある。それは当然であります。われわれはいかなる権力の圧迫、いかなる力の圧迫にも抗してこの委員会の目的を達成しなければならぬということは当然でありますが、委員長がことさらにこういう談話を発表せられる以上は、向うか委員長に対して圧迫を加えあるいは委員会に対して圧迫を加えられたような具体的な事実があるだろうか。もし事実なくしてこういう談話を発表されたとするならば、あたかも鬼面人を驚かす体のものであつて、いたずらに政界に対する世人の不信を高めるだけの役しか果さない、きわめて軽卒であると私は考えるのであります。他の数点ありまするがまず以上の点について御見解を承つておきたいのであります。
  14. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏を刑事被告人考えるかどうかというような御質問であつたように思いますけれども、そういうことはありません。その他ただいまの御質問の点につきましては、そういうことはありません、とお答えいたします。
  15. 石田博英

    石田(博)委員 ないものをことさらあらゆる妨害があるかのごとき言辞を弄せられた根拠はどういうわけですか。
  16. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは賢明な石田君の御了解にまつほかはないと思うのですが、原則としていかなる障害があつても屈しないというふうなことは一向ぼくは差支えないと思う。これは委員であり同時に委員長でもある私の決意のほどを示したのでありまして、むしろ石田君あたりからはぼくは賞められてもいいと思つておる。
  17. 石田博英

    石田(博)委員 私は委員長と同じ意味において賢明でないかもしれないけれども、こういうデリケートな問題について、あらゆる妨害に屈しないということをことさら言われる。ことにこの委員会審議についてはいろいろな力がはいつておるというようなうわさが今日飛んでおります。飛んでいなければよろしい。飛んでおる際にことさらそういうことを委員長立場で申される以上は、何らか具体的な力が加わつておるように世人の印象を受ける。問題はきわめて愼重に取扱わなければならない事柄にあたつて、私はこういう言葉世人に発表せられる委員長態度は決して賞めるわけにいかないのであります。しかしながら具体的な事実がない。ただ決心を示しただけだというような委員長見解に対して、私はまつたく反対の立場に立つておることだけをこの際申し上げておきます。  次に「日本のおかれておる今日の地位云々という言葉がある。この次の言葉ごらんになれば出てまいると思います。「そういうことで委員会機能を麻痺させ得ると思うのは日本のおかれている今の地位を知らぬ人の考えることで、私はもちろん他の委員も正しいと信じて屈しない」こういう言葉がある。日本のおかれておる今日の地位という言葉はきわめて抽象的であり含蓄に富んだ言葉であります。そうしてその言葉読者にどういうふうに解釈されるかということは委員長自身がよく御承知であろうと思うのであります。こういう言葉をことさらこの談話の中に発表されておる。私はこれが二つのもたらす結果をおそれるものであります。その一つ委員会自主性というものを傷つける。今一つはこの委員会の結果についての責を他に嫁するという二つの憂うべき結果を私はこの談話の中から予想するのであります。從つてこの言葉を出された意図をお伺いしたい。
  18. 武藤運十郎

    武藤委員長 この言葉についての石田君の御解釈はまつたく見当違いであります。私の意味するところは、御承知通り日本は今長い間違つた戰爭によつて敗戰をして、経済的にも政治的にも何とかして立ち上らなければならない、そういう立場におかれております。このためには生産を復興することももちろん必要でありますけれども、この委員会のような機能によりまして官界、財界、政界淨化をはかるにあらずんば、日本敗戰のこの惨めな地位から立ち上ることはできない。それにはいかなる障害をも乘り越えていかなる圧迫をも排除してこの委員会使命を達成しなければならない、こういう趣旨です。
  19. 石田博英

    石田(博)委員 そういう御趣旨であるとするならば、この談話言葉はまことに拙劣であると思う。教育を受けられた方が適当な表現を用いられるならば、こういう誤解を生ずるような言葉を使わなくとも済むことであると思うのであります。從つてこの言葉意味をそういうふうに強弁なされるならばそれで結構です。ただ私はきわめて不適当な言葉であると断定せざるを得ないのであります。  次にお伺いしたいのは、「一つ犯罪を衝いて他の犯罪を防止する」という言葉があります。一つ犯罪というこの言葉はその前に述べられております辻嘉六氏に関連する事件を指しておるのであるのか、あるいはそうでなく今日までできてきた、あるいはまだ表に現われていないが隠されておる一切の類似事件に衝くという意味であるのか、もし一切の類似事件を完全に剔抉をしてそれによつて將來腐敗を防止するという建前ならば、私はその建前にはもちろん満腔の賛意を表するものであります。しかしそういうふうにこの委員会の取扱うべき事案委員長が限定せられるならば、その取扱うべき腐敗事犯の時期範囲を一体どういう点において考えておられるか。その点について伺いたい。
  20. 石田一松

    石田(一)委員 議事進行に関して緊急動議がある。     〔「答弁を先にしろ」と呼び、その他発言する者あり〕
  21. 石田一松

    石田(一)委員 今の進行の形が間違つておる……。衆議院規則第四十九條においても「委員長が自ら討論しようとするときは、理事をして又は委員の中から代理者を指名し、委員長席に著かせなければならない。」という規則が定めてあります。委員長はこの委員会を整理しました秩序を維持する権限をもつた方で、ときと場合によつて委員発言に制限を加えることのできる立場にある方であります。その委員長石田博英君の質問に対して委員長自身の問題を委員長委員長席において答弁し、あるいは聽いておるとほとんど討論以外のことをなさるということは、少くともただいま申し上げました衆議院規則の第四十九條の趣旨に反するものであると私は考えます。もしこの問題が継続される以上、委員長委員長席を退かれて他の適当な理事委員長席に着かしめてこの問題を論議し、もしこれが問題となつて、当委員会で採決をするとか決定をするというような場合に立至りました時に、委員長の今後の職責に何ら過誤のないように、万全を盡されんことを要求いたします。
  22. 武藤運十郎

    武藤委員長 ちよつと速記を止めてください。     〔速記中止
  23. 武藤運十郎

    武藤委員長 速記を始めます。  暫時休憩をして理事会を開きます。     午後二時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十六分開議
  24. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは善開をいたします。
  25. 石田一松

    石田(一)委員 ただいま動議を提出いたしましたが、今発言中の石田博英君が、実質的な議事進行に関する発言を継続するという言葉でございますので、私の動議を撤回いたします。
  26. 武藤運十郎

    武藤委員長 御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは石田博英君、なるべく議事進行の線からそれないように願います。
  28. 石田博英

    石田(博)委員 私がこの記事に対して質問委員長に行わんとするゆえんのものは、この記事の中に委員会がこれから調査審議を進めて出さなければならない結論を先にきめて出されておる点を多々見受けるのであります。從つてかかる我程專行、またかかる事案に対して軽卒にかかる談話を発表せられるように委員長が、はたして適格であるかどうかということをお伺いしたい。もし適格でなければ、適格でない委員長のもとにおいては審議はできない。従つて議事進行に関して、ぜひともその点をお伺いしておかねばならぬので、いま委員長見解を質すわけであります。先ほど申し上げました事案について——しかしながら証人の方も多数見えておられますので、お伺いしたい要点を申し上げますから、迅速に御答弁を願いたい。  一つ黒幕から金をもらうことがいけないということが、この記事の中にある。あなたのこの言葉は、一つ原則をこの委員会審議に立てられておる。一体こういう原則はいつこの委員会においてきまつたものであるか。さらにこの黒幕というのは、辻嘉六という人を指したものであるかどうか。あるいは辻氏のみでない、一般もつと廣い範囲を指したものであるとするならば、委員長が言われた黒幕というのはどういう意味であるか、これをまずお伺いしなければならぬ、こういうわけであります。
  29. 武藤運十郎

    武藤委員長 私は黒幕という言葉使つた覚えはありません。石田君はきよう初めて委員になられてお出になつたのですけれども、從來私は黒幕という言葉を使つていないのです。政界表面に現われない人、こう言つております。
  30. 石田一松

    石田(一)委員 いろいろ選挙の場合などにおきまして、政界表面に現われない人から寄附を受けられた人がたくさんあると思う。そうすると非常に範囲廣範囲になつてまいると思うのですが、この委が会はその範囲まで調査審議を進めていかれるという御見解に立つて、あなたは委員長を勤めておられるかどうか。
  31. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはそういう範囲を審理するという立場で、委員長を勤めるというのではなくして、この委員会性格がどこにあるかということ、それの檢討によりまして、あなたに対する私の解答は出ると思うのです。從いましてそういう問題まで拡げるか拡げないか、拡がるものか、拡がつてはならないものかということにつきましては、この委員会性格いかんによつて決定されると思います。この点は私はすでに先ほど申し上げましたように、きまつておると思います。
  32. 石田博英

    石田(博)委員 あなたは黒幕という言図を使わないで、善界表面に出られない人という言葉を使つておられる。それを新聞記者が勝手に黒幕という言葉にした、こういうことになるのですが、そうすると政界表面に出ていない人から寄附を受けたりなんかすることは、すべていけないという一つ原則をあなたが立てられたことになる。これはどういう根拠に基いて立てられたかということをお伺いしなければならない。  それから私はきよう初めて委員なつた者ですが、いやしくも本委員会委員を仰せつかりました以上は、今までの速記録はすべて目を通してまいつたはずでありまして、初めて委員会なつたからというて前の委員会のことについては、お前は知らないだろうというお考えはお捨て願いたい。その次に今の言葉は御答弁を願いたい。一つ事柄にいつまでもこだわつていてもならないので、その言葉は次の質問と同時にお答えを願いたい。  次にお尋ねしたいことは群馬コーヒー事件について、ここに申し述べられてある。群馬縣コーヒー事件は、委員長は本委員会の依嘱を受けて調査に行かれたはずであつて、その調査に基く報告をまだ本委員会は受けていない、本委員会がその委員長報告を受けていない先に委員長は、その調査の結果、縣知事その他が関係をしておるという具体的な事例まで申し述べて発表しておられるというのは一体どういうことであるか、委員会を無視するもはなはだしいし、さらに委員長態度としては、きわめて軽卒なものがあると私は思うわけであります。この点について先の点と同時にお答えを願いたい。
  33. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど石田君は速記録は詳細にごらん願つた由でありますから、多分お読みだろうと思いますけれども、この詳馬コーヒーの問題を委員会に提示をいたしましたのは私であります。当時私は委員長ではありませんでしたから、一委員として問題を提示しました。その際には公開せられたるこの委員会におきましてこの問題についてもつて詳細に述べております。從つて私はこの新聞に掲載されたる程度のことは、それが調査の結果を申し上げたことにはなるまいと思います。
  34. 石田博英

    石田(博)委員 あなたのその報告は私も見ておりますが、それは委員として問題を提示せられたときに立場と、委員会の依嘱を受けて正式に調査に赴かれた後とは立場が巌うのであつて、先に申し述べたから委員長としてもこのくらいのことは言うてもいいということには相ならない。もつと愼重立場をもつて本問題に対処しなければならぬ、こう思うのであります。ただいまお答えがなかつたが、黒幕云々言葉については次の問題に関連して承りたいと思います。  その次に承りたいことは復金金融の問題について触れております。復金金融事件について相当大物関係しているということを委員長みずから談話を発表しておられる、これは何か根拠があつて申されたのでありますか。
  35. 武藤運十郎

  36. 石田博英

    石田(博)委員 大分覚えがないという言葉が出ておりますが、大体御承認なつたはずじやないのですか。
  37. 武藤運十郎

    武藤委員長 その通りです。
  38. 石田博英

    石田(博)委員 これはきわめて重要な問題です。特別の除外例を設けられて、これほど重要なことを言つて覚えがないとすれば、あなたは先ほど御質問した時に、このことだけは覚えがないと申されるのは当然である。今日最も大きな問題の一つであつて、しかもそれが不当なものであるかないかということが世人の疑惑になつておる。その問題に対しては相当大物関係しておる。それをあなたは覚えがないというのは、はなはだおかしいと思う。一体どういう根量の上に立つて言われるのであるか。さらに委員長復金金融のことについても本委員会において調査審議しなければならないということをあなたが確信し、かつ承認しておられるものどわれわれは解釈するが、それはそう解釈するのが当然であろうと思うのであります。従つてその建前に立ちますならば、この問題を速やかに、もつと具体的に調査する手段を委員長としては講じなければならぬと思うのであります。こういう事犯はぐずぐずすればするほど何も具体的に出てこないのじやないか。
  39. 武藤運十郎

    武藤委員長 石田君に申し上げますが、復金の問題についてはすでに小委員会ができまして、小委員長を選任して着々調査中であります。
  40. 石田博英

    石田(博)委員 続いてお飼いしますが、相当大物が介在しておるというあなたの御発言はどういう具体的な根拠に基いておられるのか。具体的な例をこの際おつしやらなくても結構ですが……。
  41. 武藤運十郎

    武藤委員長 先ほど申した通りです。
  42. 石田博英

    石田(博)委員 根拠をもたずに申したのですか。
  43. 武藤運十郎

    武藤委員長 申さないと言つておる。
  44. 石田博英

    石田(博)委員 あなたはこれほど重要な問題について、あなたは大体御承認になつておる。大体ということは、些細なことについては言わないことはあるかもしれないけれども、重要な点については承認せられることであろうと私は思う。これほど重要な事犯についてあなたから、大物が介在しているとはつきり新聞に出ておる。しかも本委員会委員長がこの事犯について、大物が介在しておると明言せられたということはきわめて重大であります。從つてあなたが言うた覚えがなければ、なぜ当初に私が質問したときに、私は言うた覚えがないと申されなかつたのですか。(「新聞をよく見なかつたのだろう」と呼ぶ者あり)自分の言うた記事を全部読まないというような無責任な軽卒委員長ならば、委員長として適格と認めるわけにはいかない。
  45. 武藤運十郎

    武藤委員長 次のを一つ……。
  46. 石田博英

    石田(博)委員 次の御質問じやありません、言うた覚えがないと言われるから言うのです。この問題を不当財産委員会の問題として扱うか扱わないかということをきめる重大な問題ではないか。     〔「委員長が言わぬと言つておるじやないか」と呼ぶ者あり〕
  47. 石田博英

    石田(博)委員 この問題はぼくは石田君に質問しておるわけでも何でもない。言つたことを言わぬというのは近ごろはやり言葉だから仕方がありません。  次に関係者は当然議員を辞退しなければならぬということがあります。そういう一つの目標をもたれ、そういう御見解をもたれて、あなたはこの委員会を御進行になつておられるのですか。
  48. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは石田君、関係者は当然議員を辞退するというのは新聞社がつけた標題でありまして、初めからお読み願いますと、大体おわかりになります。     〔「そんなことは新聞を読めばわかる」「不信任を出すか出さぬかの大事な問題だ」と呼ぶ者あり〕
  49. 石田博英

    石田(博)委員 ぼくの質したいと思うことはあと一件だけです。当然議員辞退になるということはあなたの言葉として出しておる。
  50. 武藤運十郎

    武藤委員長 これは委員会では議員辞退というような結論を出すわけではないことは御承知通りであります。しかし私は、委員会結論を議長に報告、議長は院議に諮り、そのようなことが日本民主化の点から好ましくないということになれば國会として関係議員に善処を求めることになる。そうなれば当然議員辞退ということに私はなろうと言つたのですが、これにはなると書いてある。こう言つたというのですが、これは一つの例であつて、必ずしもこれが一つの途ではないと思います。しかし私どもはいやしくも民主主義政治下の議員である以上、院議によつて善処を求められる。その非行を質させて善処を求められるということになれば、私がかりの地位にあれば当然辞退します。またそれがほんとうの民主主義政治だと思う。院議によつて決定してもなお議員を辞退しないというようなことは……。
  51. 石田博英

    石田(博)委員 どういう院議が決定するかということはわからないじやないか。それをあなたは議員辞退という結論しか出ないような談話をされておる、院議の内容においても少しも註釈を加えられていない。
  52. 武藤運十郎

    武藤委員長 ですから私は十分の一くらいに圧縮されるということをお話しておるでしよう。
  53. 石田博英

    石田(博)委員 しかし世間にこういう疑惑をもたせるような談話を発表されることはきわめて不謹愼、独断、專断であると断定しておいて次に移ります。  さらにもう一つだけ重要な問題がある。この委員会は院議によつて決定して、議会の機関として設けられたものであつてこの終りに、そのため私が不遇な地位に立つ云々というような大見得をきつておられるが、あなた個人の問題ではない。この点はお答えを願う必要はないのであらためて申しませんが、こういう言葉をいかにも氣負いたつておつしやつておられる。それから先ほどから私がるるお尋ねしたことに対して私は一つとして満足なお答えを承つておらない。困つたことは言うた覚えがないとおつしやる。しかしこの重要なデリケートな問題を処理すべき本委員会において、きわめて不謹愼、独断、專断的な言動を公の機関に発表せられるということは、私どもとしては遺憾にたえない。このことを強く申し上げて私の議事進行に関する発言を終りますが、今後の格段の注意を要求する次第であります。
  54. 田中角榮

    田中(角)委員 この問題は前加藤委員長のときに海外新聞に、全然本調査委員会にかかつておらない当時でございましたが、実耕事件に絡まり、現在の衆参両國会議員に三十余名の該当者を出すということが非常に大きな見出しで発表されましたために、調査委員会としても取上げまして、調査委員会の本來の目的といたしまして、政界、官界、財界の淨化と言うけれども、昭和二十年八月十四日以降の非常に長い間各般にわたる調査事項を取上げまする関係上、この中に登場する人物の人格、地位、その他いろいろな問題が絡まつてくるのであります。しかもこれは調査が済まなければ事件の可否はわからないのでありますから、委員長並びに本調査委員会委員は本委員により公式に、または公表されたもの以外は自己の憶測または委員会内容について公表してはならないという原則を確立しておるのでありますから、委員会今後の運営にあたりましては、委員長は特にこの原則をお守りになつて、しかも各委員においてもこの原則を確認いたしまして、かかる問題の起らないように御努力いただきたい。こういうことを申し上げておきます。
  55. 中野四郎

    ○中野(四)委員 私はこの機会に証人の陳述を求める前に、一應私からいま一名の証人を要求したいと思うのであります。それは衆議院議員である世耕弘一君をきわめて早い機会に証人としておいでを願うようにお計らい願いたい。その理由は御承知のように辻嘉六さんから一部の金を受けられた方々が今日もここに証人としておいでになつていますが、御承知のように辻事件のそもそもは中曽根幾太郎君の問題であり、中曽根君の根本はいわゆる世耕情報より起つた問題であります。從つて中曽根幾太郎君並びに辻嘉六君は檢察当局においてそれぞれ一通りの尋問を受け、陳述を終つております。本委員会のあらゆる角度より見ましても、この檢察当局のすべてを骨子として行動を起しておるかの感が深いのでありますが、私はいま一歩進んだ、世耕弘一君が裁判所に、いわゆる檢察当局に任意出頭の形において述べられた形態はまだこの委員会に取上げられておりません。すなわち私が世耕君を証人として要求いたします原因は、中曽根君の証言は軍服事件とはまつたく関係なく、辻嘉六に金を出したものである。いわゆる將來の政治的指導を受ける見地に立つてこの行為に報いる一つの過程として出すということは証言によつて明らかであります。さらに辻嘉六君のこちらより書面をもつて陳述を求めましたその陳述書によりますれば、同じく何らの約束なく中曽根君より政治的献金を受けたものであるという結果が見られておるのであります。しかしながら私はよつてくる原因は世耕弘一君の情報そのものから現われたものでありますから、世耕君と辻嘉六君との関係、さらに一歩進んで世耕君が実質上において辻嘉六君よりこの事件の依頼を受けたか受けないか、あるいはその事件ないしはそれ以外の金銭を授受した関係があるかないかというような根本問題を洗つていかなければ、この問題の進展はなかなか容易でないと思うのであります。すなわち今日御出席の証人あるいは過去今まで御意席になつ証人の記録を読みましても、実質上において辻氏から金はもらつておるけれども、これがこの事件の金であるとかあるいはキヤラコ事件の金であるというようなことは、まつたく関知しないという例があるのであります。今日の証人は過程が未過程でありますから、とかくは申しませんが、このような観点に立つて私は世倒君を速やかに一度この委員会においでを願つて、世耕君対辻嘉六君との間を明確にして、そうして実質的に今後の本委員会のあり方を求めていきたい。こういう考えに基いて世耕君の御意席を希望いたします。皆さんの御協賛を得てこのことの成功をするように御努力願いたいということを委員長にお願い申し上げます。
  56. 武藤運十郎

    武藤委員長 お諮りいたしますが、中野君の御意見いかがでございましようか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  57. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではさよう決します。世耕弘一氏の出頭を求める日時につきましては、後ほど理事会において決定いたしたいと思いますが、いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではさよういたします。ほかに御意見はありませんか——それでは証人の証言を求めます。お見えになつている証人は鈴木彌五郎さん、岡村吾一さん、山本喜助さん、加藤睦之助さん、井上卓一さん、杉山嘉市さんこれだけでございますか。  それでは証言を求めます前に宣誓をしていただきます。御起立を願つてどなたか代表してひとつお読みを願います。
  59. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 不肖鈴木代表いたします。     〔証人鈴木彌五郎君各証人を代表して宣誓〕
  60. 武藤運十郎

    武藤委員長 御署名御捺印を願います。     〔各証人宣誓書に署名捺印す〕
  61. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは証言をしていただく前に念のため、御注意を申し上げておきます。昨年十二月二十三日公布になりました昭和二十二年法律第二百二十五号「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」によりまして、証人に証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。この宣誓または証言を拒むことのできますのは、証言が証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族及び証人の後見人または証人の後見を受くる者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき及び医師、歯科医師、藥剤師、藥種商、産婆弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職に在る者またはこれらの職に在つた者がその職務上知つた事実であつて、默祕すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しこうして証人が正当の理由がなくして、宣誓または証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、この宣誓した証人が偽証の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一應このことを御承知になつていただきたいと思う次第であります。  それでは法律の定めるところによりまして証言を求めます。ただいま名前をお呼びいたしました順序で証言をしていただきますから、鈴木彌五郎さん以外の証人の方は御迷惑ながら暫らく別室が御休憩を願います。  鈴木さんにお尋ねしますが、辻嘉六氏は檢察廳における取調べにおきましてこういうふうに申しております。  「鈴木は十年前から政治上の関係で知合つた者で、現在は民主党所属秋田縣選出衆議院議員です。去る四月上旬頃当時鈴木は協同党所属だつたと思いますが、私方に來て、今度立候補するにつき選挙の資金などが要るから金を貰いたいとのことだつたので二万円渡してやりました。」こういうふうに述べておりますけれども、大体においてこの通りでございますか。
  62. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 違います。それは辻先生の御記憶違いだと思います。私が檢察廳で証言しましたのは四月のちようど十四、五日ごろだと思いますが、伊澤から私の手紙をもつて齋藤萬太郎という者が使いに行つて、その使の者に二万円渡してくれたのであります。
  63. 武藤運十郎

    武藤委員長 二万円受取りましたことは間違いないですね。
  64. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 間違いありません。
  65. 武藤運十郎

    武藤委員長 その金は選挙費用ということでありますか。
  66. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 選挙費用です。
  67. 武藤運十郎

    武藤委員長 いわゆる陳中見舞という趣旨ですか。
  68. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 陳中見舞と解釈しております。
  69. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎氏から献金されたものであるということは御存じありませんでしたか。
  70. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 全然知りません。
  71. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかに辻からその前後に金を受取られたことはありませんか。
  72. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 ちようど國民党所属の議会開会中に、日にちははつきりしませんが、肺炎で倒れたことがあります。祕書を使いよこしまして二千円の見舞金をもらつております。
  73. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつごろでございますか。
  74. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 八月の十日前後だと思います。大塚の鉄道病院で……
  75. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人き政界においてどういう存在であるか、そういう点についてあなたの御認識を承りたい。
  76. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 私は辻先生が申されておるように、十年以前ぐらいから非常に恩顧になつております。先生の人格に関しましては、きわめて金銭には恬淡な、しかも交換條件で金を受けるというような人では絶対にないと信じております。同時に政界のあらゆる属に金を出して、物資的な意味において助けておる割合には、人から物を求めるような林では決してないのであります。私は十年來いろいろな意味で恩顧を受けておりますけれども、未だかつて一度も辻さんのために働けというようなことを言われたおぼえはない。そういう点におきましていわゆる政界黒幕というふうな意味考えておりません。
  77. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏は政界表面には出ませんけれども、政界に隱然たる勢力をもつてつて、相当大きな発言権をもつておる。どこからともなく相当莫大な金をつくつてきて、必要に應じては政党にも金を出すし、また選挙に際しては相当多数の政治家に選挙費用を與えるというようなことをなさる人ですか。
  78. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 その点はそう思います。けれども私は個人の関係から申しますれば大体において自由党系統であります。政友会の熊谷先生の看板をもつた当時から、院外團だはありませんけれども、長い間既成政党の内部を見た関係上、どうしても敗戰日本の指導は新人の議員でなければならないということを強く言つておりまして、東北日本國民党というものをつくりましてそこから当選してきたのであります。從つて無所属、一人一党、中立というように百十四名の大多数の中立議員が当選しましたので、自分としてはこの機会にこの人とともに新党をつくりたい、こういう考えから当時自由党をつくられた、非常に貢献があつた辻先生のもとにはそういう関係で行けなかつたのです。從つてもしも自由党の與党工作というふうに考えられることは、純眞な自分の新党運動の精神を傷ける、こういう建前から一度もお伺いしたことはないのです。去年の夏ごろ脳隘血で倒られまして、そのとき玄関までお見舞に行つたきりで全然先生に会つていないのであります。
  79. 武藤運十郎

    武藤委員長 失礼ですが、あなたはどういう御職業に從事されておつて、どういう收入があつたのですか。
  80. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 現在帝國農産興業株式会社の社長をやつております。東北興業株式会社の專務をやつております。收入の点はその会社から得ております。
  81. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお尋ねになることがありますか。
  82. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 最後に委員長から御質問の中に、辻氏は政界において隠然たる勢力をもつておるということに対して証人は肯定されました。それから政党その他個々の政治家に金をやるということについても、肯定されたようでありますが、政党とはどの政党を指しておるのか、政党に献金した事実を御存じであるか、それから政界における発言力とはどういうふうな程度のものですか。それをひとつ具体的に御説明願いたいと思います。
  83. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 私は辻先生の性格に関しましては、來る者を拒まない。どの政党に属しておるから、この政党の議員に惠むという人では決してないのでありまして、まつたく同一な氣持から、たとえば自分の家を訪問をする者、困る者、その事情を聽いて自分のそのときの力の限り與える人だ、こういう意味であります。從つて特定な政党に献金した事実は全然知りません。発言力ということは、少くとも自分が世話しておる議員に対して、もしも國家のために必要だというような点があれば、当然その議員を通して発言をするのではないか、こういう意味であります。
  84. 高橋英吉

    ○高橋(英)委員 そうすると発言力というのは、國家社会のためになるということに対しての発言力と聽いたのですが、具体的にそういう事実があつたかなかつたかということと、惡い意味における発言力、すなわちボス的な存在としての発言力、たとえばみずから政党の幹部になるとか、総裁になるとか、もしくは大臣になるとか、総理大臣になるとか、あらゆる利権、官職を求めるとかいう意味における発言力の具体的な実際的な行使があつたということは御存じになつておるかどうか、そういう事実がある人かない人であるか、それを伺います。
  85. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 それは最初に委員長のお尋ねにお答えしたようにきわめて人格的に私は尊敬しておる人であります。自分個人の一身上の関係から金をやるとか、その人を使うとか、踏台にするとか、そういうことは私の知つてからの辻先生には明確にないということを証言します。
  86. 石田博英

    石田(博)委員 一点お伺いしておきたい。ただいま証人は金をやつてもその代償を求める人でないということと、それから政界発言力ということに関連しますが、証人が先ほどから申された通り、金をやつたからというてその人に言うことをきかせる人ではないという証言がありましたが、その観点から申しますと、政界発言力ということと、金をやるということとは関係はないと証言されておるものと考えてよろしうございますか。
  87. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 よろしゆうございます。
  88. 中野四郎

    ○中野(四)委員 ちよつと鈴木君に伺つておきたい。あなたは辻さんから金をもらわれたのはこれが初めてですか、あるいは十幾年つきあつておられるうちに再々心安だてにもらつておる習慣がついておるか、どういうものですか。
  89. 鈴木彌五郎

    ○鈴木証人 それは十年來、お盆、お正月、あるいはその期間までに間に合わなければ始終御訪問申上げて御無理を願つております。
  90. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。——では済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  91. 武藤運十郎

    武藤委員長 岡村さんにお尋ねいたしますが、檢事局において辻嘉六氏があなたに関してこういうふうに述べております。  「岡村とは五六年前からの知合いで、同人は世田谷区下馬三丁目二十一番地で材木商を営んでおります。本年四月上旬ごろ私方に岡村が來たので私は同人に対し、中曽根幾太郎が政界に出るからよろしく頼むと言つておるので心配してやつてくれと言い、同人に現金十万円を渡しました。この金の趣旨は中曽根の選挙がうまくいき、かつ同人が政界に出られるように骨折つてもらいたい。そのために自由に使つてよろしいという趣旨で金を渡した。岡村は現在ある会社の社長をしておると思います。」こういうふうに述べておりますが、この通りでありますか。
  92. 岡村吾一

    ○岡村証人 それは選挙の費用と思つて金をもらつたのではありません。中曽根を後援するというのでもらつたのではないのです。
  93. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう趣旨ですか。
  94. 岡村吾一

    ○岡村証人 それは十九の時分から私は辻嘉六の家の者ですから、中曽根に應援しろといつて渡した金じやない、ただ小づかいにしろと言つてもらつた金なんです。
  95. 武藤運十郎

    武藤委員長 少し多過ぎるようだけれども、ときどき小づかいをもらうのですか。
  96. 岡村吾一

    ○岡村証人 そうです。十九のころから……。
  97. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうするとどのくらいもらつております。
  98. 岡村吾一

    ○岡村証人 さあ、十九の時分からですから……
  99. 武藤運十郎

    武藤委員長 記憶にある限りをひとつ述べていただきたい。
  100. 岡村吾一

    ○岡村証人 十九の時分からですから金の高はわかりませんけれども、盆暮には始終もらつております。
  101. 武藤運十郎

    武藤委員長 最近四、五年間はどうです。
  102. 岡村吾一

    ○岡村証人 四、五年間は、終戰後一遍もらいました。そのときは二万円ばかりでした。それつきりもらつたことはないです。
  103. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはいつごろです。
  104. 岡村吾一

    ○岡村証人 終戰直後です。
  105. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは中曽根の選挙云々の問題ではないのですね。
  106. 岡村吾一

    ○岡村証人 そうです。
  107. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは昨年の十月二十九日に檢事局でお調べを受けましたか。
  108. 岡村吾一

    ○岡村証人 はい、受けました。
  109. 武藤運十郎

    武藤委員長 そのときにこういうふうに言つておりませんか。  「お尋ねの辻嘉六との関係については私と親分子分の関係にあり、十九歳のころより辻の若い者として常に出入りしており、今日においても月一、二回は必ず顔を出しているような間柄で、兒玉譽士夫などは同志の間柄であります。本年四月下旬辻先生宅で先生から百円札で十万円もらつたことは事実で、それは辻先生から中曽根幾太郎という男が衆議院議員に立候補するから應援してやれ、これはその費用だと言つて渡されたものであります。その後私は中曽根に一回会いましたが、同人の選挙應援には氣が進まず、知人に二、三頼んでやつて程度で、これといつた選挙運動はしませんでした。それで辻先生からもらつた金は先生に返そうかと考え、その旨話したところ、先生から、あの金は何に使つてもよいとの話であつたので、その後私のやつている製材事業の方に使つてしまいました。」こういうふうに言つていますか。
  110. 岡村吾一

    ○岡村証人 その意味なんです。
  111. 武藤運十郎

    武藤委員長 うしろの方は合つていますが、前の方は大分違いはしませんか。小づかいに自由に使つてもいいというのはあとの話で、先にもらうときには中曽根の選挙を應援する費用だ、こういうことで渡されたのではないのですか。
  112. 岡村吾一

    ○岡村証人 混同しているのですが、そうかもしれません。実は今私の申した通りのことなんですが、選挙でもらつた金というのは、そのときは自分が意識してないのです。
  113. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは檢事局で述べたことは間違いですか。
  114. 岡村吾一

    ○岡村証人 間違いじやないです。檢事局で述べた通りですが、選挙で自分が使つてないという意味です。私の意味は……。
  115. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙には使つてないが、十万円もらうときには中曽根幾太郎という男が衆議院議員に立候補するから應援してやれ、これはその費用だ。こういうわけで渡されたという意味ですか。
  116. 岡村吾一

    ○岡村証人 その通りです。
  117. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根から辻さんにはいつてきた金であるということを御存じですか。
  118. 岡村吾一

    ○岡村証人 知りません。
  119. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏の政界における存在についてどんなふうにお考えですか。
  120. 岡村吾一

    ○岡村証人 別に考えておりません。
  121. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではこういうふうに考えませんか。辻氏は政界表面には出ないけれども、政界に隠然たる勢力をもつてつて、相当大きな発言権をもつており、どこからともなく相当莫大な金をつくつてきて、必要に應じて政党にも金を出すし、また選挙に際しては相当多数の政治家に選挙費用を出しておる。そういう方ではないですか。
  122. 岡村吾一

    ○岡村証人 私政党には関係がないですから、そんなことは考かておりません。
  123. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんのことはよく知らないのですね。
  124. 岡村吾一

    ○岡村証人 金を出しておることは知りません。親父として出入りはしておりますけれども、そういうことは知りません。
  125. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたの一箇年の收入はどのくらいありますか。
  126. 岡村吾一

    ○岡村証人 收入というと、今製材事業がまだうまくいつておりませんから、計算はつきり立つていませんが、月大体一万円程度です。
  127. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か諸君の方でお尋ねがありますか。
  128. 田中健吉

    田中(健)委員 ただいまの証人の証言の中に兒玉譽士夫と非常に昵懇であるというようなお言葉がありましたが、兒玉譽士夫というのは例の兒玉機関の兒玉ですか。
  129. 岡村吾一

    ○岡村証人 そうです。
  130. 田中健吉

    田中(健)委員 証人が懇意であるという具体的な内容は、兒玉機関に関係があつたのか、何か事業上の関係があるのか、あるいは政治上の資金の関係において兒玉譽士夫と関係があるという意味でありましようか。
  131. 岡村吾一

    ○岡村証人 事業上でありません。兒玉機関に関係があります。
  132. 田中健吉

    田中(健)委員 兒玉機関でどんなことをおやりになつたのですか。
  133. 岡村吾一

    ○岡村証人 海軍の嘱託で上海にしよつちゆう行つたり來たりしておりました。
  134. 田中健吉

    田中(健)委員 兒玉譽士夫と日本國民党を創設しました澁谷と兒玉とは昵懇の中でしたか。
  135. 岡村吾一

    ○岡村証人 そうです。
  136. 田中健吉

    田中(健)委員 それはどういう関係になるのですか。
  137. 岡村吾一

    ○岡村証人 私は政治運動をしておりませんけれども、自分の鉱山がありまして、鉱山の方の関係で知つております。
  138. 田中健吉

    田中(健)委員 兒玉譽士夫君が終戰後創設したところの日本國民党と鈴木彌五郎君とはどういう関係があるのですか。
  139. 岡村吾一

    ○岡村証人 関係はありません。
  140. 田中健吉

    田中(健)委員 証人は辻氏のところに兒玉機関の金できておることを御承知でしたか。
  141. 岡村吾一

    ○岡村証人 知りません。
  142. 田中健吉

    田中(健)委員 辻氏のところに兒玉機関からきた四千万円のうち約三百万円というものは富士産業の社長から辻氏にきておるということは証人は知らないのですか。
  143. 岡村吾一

    ○岡村証人 知りません。
  144. 田中健吉

    田中(健)委員 兒玉とは兒玉機関の関係で、昵懇であつた、こういうわけですね。
  145. 岡村吾一

    ○岡村証人 そうです。
  146. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにありませんか。それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  147. 中野四郎

    ○中野(四)委員 私は委員長質問は非常に抽象的で生ぬるい感じがするので、もう少し徹底してはどうかと思います。一律一体にお聽きになつているが、そのようなことでは証人の陳述を求めても効果はなかなか得られないと思う。今少し委員長質問を集約されて、他の委員から発言を求められ、そして証人から陳述を求められるという過程に行かれてはいかがかと思います。どうぞ御留意願いたい。
  148. 武藤運十郎

    武藤委員長 遠慮なく御質問を願います。  山本さんにお尋ねします。檢察廳において辻嘉六氏はあなたに関してこういうふうに述べております。「同人は自由党系無所属で、さる四月の選挙には秋田縣から衆議院議員に立ち、落選いたしました。さる四月上旬ごろ山本の代理としてその女秘書(二十四五歳くらい)が私方に來て、山本が選挙に出るので費用が要るから、金を出してもらいたいとの本人からの手紙を持参したので、二万円渡しておきました。」こういうふうに申しておりますが、この通りですか。
  149. 山本喜助

    ○山本証人 その通りです。
  150. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人から辻氏の手にはいつたものであるということは御存じなかつたのですか。
  151. 山本喜助

    ○山本証人 辻先生と御懇意になつたのは大体昭和十二年ごろだつたと記憶しております。それから昭和十八年ごろまではときどきお伺いしておつたのでありまするが、昭和十八年以降ほとんど先生にお目にかかつていないのです。なお今日もまだお目にかかつておりません。從つてそういうことが伏在しておつたということは全然知らないのであります。昭和十二年ごろから先先のところへ出入りしておつたその当時の先生の日常を私がよく考えまして、あの方は別にどなたということではなく小づかいがなければくれるというような方でありましたから、別にそういうことは何ら意識せずに、私の使用人を先生の方へお伺いさせたのであります。
  152. 武藤運十郎

    武藤委員長 その前後に辻氏から金を受取つたことはありませんか。
  153. 山本喜助

    ○山本証人 ありません。
  154. 武藤運十郎

    武藤委員長 これが初めての終りですか。
  155. 山本喜助

    ○山本証人 そうであります。
  156. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人の政界における立場——どういう立場でどういう存在であるかということについて、あなたの考えておられるところを述べてください。
  157. 山本喜助

    ○山本証人 政界における立場と申しますが、私が先生のところへお伺いする当時はやはりいろいろな政界の名士が出入りしておつたように記憶しておりますが、先生は私どもがお伺いいたしましても、必ず應接室その他のお座敷の上で他の人と会わせるということはしなかつたのであります。從つてただ政界の偉い人が出入りするということは聞いておりますが、どういう人が出入りしたかということはほとんど記憶にありません。
  158. 武藤運十郎

    武藤委員長 大分多くの政治家が出入りして、選挙などのときには金をもらうというようなことをお聞きになつていませんか。
  159. 山本喜助

    ○山本証人 聞いておりません。
  160. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かお聽きになりたいことはありますか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは済みました。     —————————————
  162. 武藤運十郎

    武藤委員長 加藤さんにお尋ねいたしますが、辻嘉六氏が檢事においてこういうふうに述べております。「加藤は前代議士で自由党総務をやつていたことがあり、かねての知合ですが、去る四月の選挙には埼玉縣から衆議院議員に立候補し落選いたしました。去る四月上旬ころ同人が私方に來て前同樣選挙費用の援助方の話があつたので、二万円出してやりました」、こういうふうに申しておりますけれども、この通りですか。
  163. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そういう話もありましたが、私が二十一年の十一月から二年の一年まで入院しておりましたし、入院後出ました後も看護婦を頼んで家に養生しておりました。それから東京に來寄りました。ところが病気見舞にも行かなかつたしやれなかつた、まあ君は不自由はないのだが、持つていかないかというので、二万か三万だと思つております。よく記憶にありませんが、有難く頂載して帰りました。
  164. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙のお金というわけではないのですか。
  165. 加藤睦之介

    ○加藤証人 選挙のお金というわけではない。老人のことだし、長い間病氣をして、見舞もやらなかつたというので、金ともなかをもらいました。二万じやない、三万じやないかと思つておりましたが、よく覚えておりません。
  166. 武藤運十郎

    武藤委員長 やはり四月の上旬ですか。
  167. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それはよく覚えておりませんが、三月か四月だと思つております。
  168. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙の最中ですね。
  169. 加藤睦之介

    ○加藤証人 いや私は立候補はしましたけれども、ごく押し詰つて立候補したので、選挙中であつたか、私の選挙前であつたか、よく記憶しておりません。
  170. 武藤運十郎

    武藤委員長 ではその金は選挙にはお使いにならなかつたですか。
  171. 加藤睦之介

    ○加藤証人 使いません。使おうにもどうにもならぬというわけです。
  172. 武藤運十郎

    武藤委員長 どうにもならぬというのは、どういうわけですか。
  173. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そのときは大勢書生も來るし、看護婦も來るし、皆私の金をもらつたことを知つておりますので、選挙費用という張合のあるほどの金ではなかつた。
  174. 武藤運十郎

    武藤委員長 どのくらい選挙費用はかかりますか。
  175. 加藤睦之介

    ○加藤証人 相当かかつておりますな。
  176. 武藤運十郎

    武藤委員長 実際においてどのくらいですか。
  177. 加藤睦之介

    ○加藤証人 精算書に出たよりもかかつております。私は自分が目が見えないし、一切をやらぬものですから、皆ほかの人にやつてもらつております。
  178. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻氏からその前後に金をもらつたことがありますか。
  179. 加藤睦之介

    ○加藤証人 私はもらつたことはありませんが、私の書生は看護婦などはいただいたことがあります。
  180. 武藤運十郎

    武藤委員長 それはそのころですね。
  181. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そうです。これは相前後して來たものですから……。
  182. 武藤運十郎

    武藤委員長 ずつと前には受取られたことはありませんか。
  183. 加藤睦之介

    ○加藤証人 ありません。
  184. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人は政界においてどういう人であるか、あなたの考えておるところを述べてください。
  185. 加藤睦之介

    ○加藤証人 政界ということはどうかしらぬが、とにかく私は当代に稀な良風美俗の維持者だと考えております。方々から金を集める人だということも聞いておつたが、よく人にも散らすというので、当代に珍らしい良風美俗の維持者なり、こういうふうに考えておりました。
  186. 武藤運十郎

    武藤委員長 金を集めるというのは、とこから集めるのですか。
  187. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それは私よく存じておりませんが、そういうことをよく聞かされております。
  188. 武藤運十郎

    武藤委員長 相当多くの金を集める手腕のある人ですか。
  189. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そういうふうに聞いておりました。新聞等の爭議なんかでも、あの老人には何らの対抗もしない。老人が出れば納まるというようなことも聞いておりましたが、結構な人だと聞いておりました。
  190. 武藤運十郎

    武藤委員長 ずいぶん多くの人に金を散らすということは、やはり選挙のときか何かですか。
  191. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それは選挙ばかりじやないらしい。私の知つている今は亡くなりました山本幸七などという人は、ほとんどあの人の金で請負をされておつたということを、本人から聞いておりました。相当莫大な金をその人にはやつて、仕事をさしておりました。
  192. 武藤運十郎

    武藤委員長 選挙のときにも相当多勢の人にたくさんの金を渡してやるということもお聞きですか。
  193. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そういうようなことも考えられます。私が行つたときに、どうだ、君も田舍の顏役ばかりになつておらぬで、東京の方へ出ないかというような話もしておつた。そんなときの話などによりますと、おれは自由党だなんて人は言うけれども、自由党ばかりじやない、社会党の諸君だろうが、民主党の諸君だろうが、ずいぶんそういうような人の出入りがあるよというような話も、その折にされたことがある。そういう諸君も大分私は知つております。また來ておつたようなことをほかからも聞いております。
  194. 武藤運十郎

    武藤委員長 來ているというのは、來て金をもらつている……。
  195. 加藤睦之介

    ○加藤証人 もらつたか、もらわないか、約束したか、それは私は想像では申し上げられない。ただそういうような話を聞いているという程度です。
  196. 武藤運十郎

    武藤委員長 金を集めるのもうまいし、散らすのもうまいというのは、そういう意味でうか。
  197. 加藤睦之介

    ○加藤証人 そういう意味です。
  198. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か代護士になるとか、大臣になるとか、そういう政界表面に出てこないのですね、辻氏は……。
  199. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それはそうでしよう。隠居と言われて、名実さもに隠居らしいようですから……
  200. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か委員諸君の方で御質問がありますか。
  201. 古島義英

    古島委員 加藤さんに伺います。加藤さんに大分長いこと辻氏のところに出入りしたということですが、ちようど病氣後に加藤さんが辻氏を訪問して、ただいまの見舞金をもらつた際に、今だれが帰つたあとだというようなことを言われて、ああそうか、あれも來ているのかというようなことを感じたと私は聞いておりますが、だれが來たと言われましたか。
  202. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それは私が聞いた話では、芦田さんは來ないが、手紙は來ておつたというようなことは聞いたことがありますし、おれは加藤君、きみらの方ではどんな考え方をしておるか知らぬが、決して自由党なんかにこだわつてはおらぬ。おれの所に出入りし、おれがいろいろ懇談するのは社会党の諸君だろうが、民主党の諸君だろうが、そういう諸君が常に行つたり來たりしておるし、社会党や民主党でも今の芦田さんの話の出たこともありますし、それから西尾さんなんかのお話だつて出たこともあつたように思つておりますが、私に東京に來て住んでおれば、君らもどうにか田舍の顏役でなくて東京の顏役になれるのだという話のときにそういうことが出ました。
  203. 古島義英

    古島委員 そうするとただいまの西尾君が訪問をしたというお話ですが……。
  204. 加藤睦之介

    ○加藤証人 それは正確に聽いておりませんが、そういう話も出ておる。おそらくそんなふうなことではないかと思います。
  205. 古島義英

    古島委員 來たという話ではなかつたのですか。
  206. 加藤睦之介

    ○加藤証人 來たというまでにはいかぬが、そういうふうな話の例として……。
  207. 古島義英

    古島委員 交際しておるというのですか。
  208. 加藤睦之介

    ○加藤証人 むろんおいでになつただろうと私自身は想像しております。
  209. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。それでは済みました。御苦労さんでした。     —————————————
  210. 武藤運十郎

    武藤委員長 井上さんにお伺いしたいのです。辻氏が檢事局においてこういうふうに述べております。「井上は岡山縣から一度衆議院議員に当選した自由党所属の者で、去る四月の選挙には落選しました。同人は鳩山方にいたことがあり、かねて知つていたのですが、去る四月上旬ごろ私方に來て選挙で金が要るからとのことで一万円渡してやりました。」こういうふうに言つておりますが、この通りですか。
  211. 井上卓一

    ○井上証人 違います。私は三月の二十一日ごろと思いますが、岡山に帰りまして、それからずつと東京に帰りませんでした。その理由は私の選挙区から前の内務大臣たりし大村清一君が立つた関係上、私と同君とはまつたく同一地盤であり、同じ学校であつたからして非常に私が苦境に立ちました。辻氏は長い関係において非常に私のことを心配しておつた関係上、岡山縣支部長たる星野二郎代護士にも、井上君が困るといつていろいろ心配いたしただきました。しかし私はそういうことに関係せずして、三月の議会の終了をまたずに岡山に帰りました。それから東京には一度も出ず、選挙が済んでから出ました。たまたま四月の初めごろに私の妻が子供の学校等の関係もあつて東京に参りましたときに、辻さんに非常に御心配をかけておるものですから、選挙の情勢を報告に参つたとのことであります。私は存じないのですが、家内が帰るときに一万円とか託したという話であります。そのことは家内から聽きました。これが事実です。それは私にくれたのか、家内にくれたのか知りませんが、家内が帰るときに渡したというのが事実です。
  212. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは選挙にお使いなさいという、いわゆる陣中見舞というようなことではなかつたのですか。
  213. 井上卓一

    ○井上証人 多分そう思いますが、私でなくて家内に渡した金で、しかも家内は辻さんのところに金を載きに行つたのではなくて、私と大村君との選挙地盤のことについて星島二郎氏に心配を頼んでおつた関係上、そのお礼に家内が伺つたのです。そのときに渡した金ですから、おそらく陣中見舞だろうと、これは辻さんの意思を忖度してそう考えるのですが、私はぢかに戴いたものでもありませんから、何と言つていいかわかりません。
  214. 武藤運十郎

    武藤委員長 その金は何にお使いになつたのですか。
  215. 井上卓一

    ○井上証人 家内がもつて帰りましたから選挙費に使いました。
  216. 武藤運十郎

    武藤委員長 もつてお帰りになつてすぐに話がありましたか。
  217. 井上卓一

    ○井上証人 家内が帰りましたのはいつですか、多分そうだと思います。
  218. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金が中曽根幾太郎という人からはいつてきた金だということは御存じないですか。
  219. 井上卓一

    ○井上証人 むろん存じません。
  220. 武藤運十郎

    武藤委員長 この選挙後に辻さんから金を受取られたことはありませんか。
  221. 井上卓一

    ○井上証人 ありません。
  222. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻という人はそういうふうに選挙の際などには大勢の候補者に金を渡してやるという話ですが、そうですか。
  223. 井上卓一

    ○井上証人 大体そう考えます。
  224. 武藤運十郎

    武藤委員長 どこからそういう金はもつてくるでしようか。
  225. 井上卓一

    ○井上証人 それは私の全然知らぬところです。
  226. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうふうなわけで、辻という人は政界表面には出ないけれども、相当大きな力を政界にもつておるということですが、そうですか。
  227. 井上卓一

    ○井上証人 大体そう考えます。
  228. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か御質問ありませんか。
  229. 中野四郎

    ○中野(四)委員 井上君にちよつと伺うが、辻さんと鳩山さんとの交友関係については一番よく知つておられるし、鳩山さんとあなたは切つても切れぬ深い関係があるということは、私どもも長い知己で存じ上げておるのでこの点を一つ、いま一つは辻さんから再々金をもらわれたことがあるかどうか、奥さんが行かれたとき初めてであつたかどうかという点、この二点を伺つておきたい。前者の鳩山さんと辻さんとの間の交友は金銭上の関係もあろうし、友情的な関係もあろうし、あるいは政治上の見解を同じくした同志的な立場もありましようし、特に井上君は鳩山さんとは深い仲なんだから、その方面の関係を相当よく周知しておられるわけで、お差支えない程度明確にしていただきたいと思います。
  230. 井上卓一

    ○井上証人 鳩山一郎氏と辻嘉六氏との関係につきまして、私がかれこれここで証言らしいことを申すのはどうかと思います。これは大体世間の方は御了承のことと思うので、私が長い間鳩山一郎とのあれだけの関係において、特に具体的な事実はこうだということは別ですが、どうだこうだということは、政治に関係された人の大体の想像に任せた方がいいと思います。
  231. 中野四郎

    ○中野(四)委員 金の方の問題は……。
  232. 井上卓一

    ○井上証人 それは存じません。
  233. 中野四郎

    ○中野(四)委員 あなたがもらわれたのは初めてですか。
  234. 井上卓一

    ○井上証人 私は鳩山先生の家におりまして、辻さんは前から存じております。その前の一昨年の選挙のときにいくらかもらつたと思いますが、決して選挙の費用に金をくれと言つたことはありません。あの方はわれわれのような人間に対して世話してやる、常にそういう氣持の人で、別に辻さんに金を貸せと私が言つたことは全然ありません。
  235. 武藤運十郎

    武藤委員長 よろしゆうございますか。
  236. 田中健吉

    田中(健)委員 井上君は鳩山さんのところに何年くらいおいでになりましたか。
  237. 井上卓一

    ○井上証人 鳩山先生との関係は、私が弁護士になつて初めて鳩山一郎氏の法律事務所に見習としてはいつたのですから、関係は古いのであります。
  238. 田中健吉

    田中(健)委員 現在も続いておりますか。
  239. 井上卓一

    ○井上証人 現在は、あの人は書記官長になつてから弁護士をやつておりませんから、弁護士は二十年前からやつておりません。私は弁護士としての関係は二、三年だつたと思います。それから政治的には私も小石川で市会議員を長くやつておりました関係上、鳩山先生の地盤であり、私の東京における地盤であつた関係で、いろんな関係で御厄介になりました。
  240. 田中健吉

    田中(健)委員 この前の辻氏から受けられた一万円の問題でありますが、それはあなたが辻氏との深い関係において、辻氏からあなたの所に來た金であるか、それとも鳩山氏があなたと非常に深い関係にあるので、そこで辻氏の方からあなたの方にその一万円という金が來たのか、その点はどういうものですか。
  241. 井上卓一

    ○井上証人 それは答弁の限りでないと思います。それは辻さんの関係であつて、鳩山さんと私との関係で一万円の金を出すことはないと思います。いわんや私がもらつた金でもないし、家内が大村さんと私との関係においてお礼に伺つたときに家内がどういうのか知りませんが……鳩山先生と私との関係で辻さんが一万円の金を出すということはないと思いますし、また家内もそういうことではないと思います。
  242. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほかにございませんか。それでは済みました。御苦労さまでした。     —————————————
  243. 武藤運十郎

    武藤委員長 杉山嘉市さんですか。
  244. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そうです。
  245. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻嘉六という人を御存じですか。
  246. 杉山嘉市

    ○杉山証人 知つております。
  247. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう関係の方ですか。
  248. 杉山嘉市

    ○杉山証人 辻さんとは昭和十二、三年ごろから岩田さんという方の紹介で非常に御懇意に願つて、私ども仕事の関係でいろいろ御面倒を見ていただきました。
  249. 武藤運十郎

    武藤委員長 仕事というのは……。
  250. 杉山嘉市

    ○杉山証人 旭工機株式会社というのであります。
  251. 武藤運十郎

    武藤委員長 何をつくるのですか。
  252. 杉山嘉市

    ○杉山証人 工具をつくつております。
  253. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう工具ですか。
  254. 杉山嘉市

    ○杉山証人 切削工具です。
  255. 武藤運十郎

    武藤委員長 戰爭中は何をつくつておりましたか。
  256. 杉山嘉市

    ○杉山証人 戰爭中も切削工具をつくつておりました。現在も同じです。
  257. 武藤運十郎

    武藤委員長 仕事の関係で辻氏に世話になるというのは、どういうことで世話になるのですか。
  258. 杉山嘉市

    ○杉山証人 東京の赤坂に私、事務所をもつておりまして、辻さんの事務所もすぐ側にありまして、商賣上の取引や何かの関係、材料の御心配をしていただいたような関係で、辻さんの会計をやつておつた笹本繁太さん、その方と常に交渉しておりまして、いろいろ仕事の面の御心配をしていただいたのであります。
  259. 武藤運十郎

    武藤委員長 材料をとることについい……。
  260. 杉山嘉市

    ○杉山証人 材料をとることについてもいろいろ……。
  261. 武藤運十郎

    武藤委員長 それから品物を納めることについて……。
  262. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それから得意先を紹介してもらつたり……。
  263. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か役所の方に品物を納めることについて心配してもらつておりますか。
  264. 杉山嘉市

    ○杉山証人 役所の方は大しておりませんでした。あるのはありますけれども、役所の方はあまり辻さんとの関係はないようです。
  265. 武藤運十郎

    武藤委員長 材料は配給か何か受けるのですか。
  266. 杉山嘉市

    ○杉山証人 配給を受ける。
  267. 武藤運十郎

    武藤委員長 そういうことについて世話になつていますか。
  268. 杉山嘉市

    ○杉山証人 配給を受けるに関してはほとんどうちの庶務の方でやつております。
  269. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは世話にならない。
  270. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ええ。
  271. 武藤運十郎

    武藤委員長 一昨年から昨年にかけて辻氏に百万円くらい献金といいますか金を出したことがありますか。
  272. 杉山嘉市

    ○杉山証人 あります。
  273. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは一回ですか、数回ですか。
  274. 杉山嘉市

    ○杉山証人 数回、取引の関係もだいぶありましたし、私の事務所も燒けましたし、辻さんの事務所も燒けまして、お見舞という場合もありましたし、またいろいろ笹本さんからあらゆる面において心配していただいたので、謝礼というのもありました。たぶん終戰前後にわたつていると思います。
  275. 武藤運十郎

    武藤委員長 これはどういう性質の金ですか、百万円出したのは。
  276. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは今申しました通り、お見舞の金もありましたし、また謝礼の金もありましたし、取引の金もありました。いろいろ含めて……。
  277. 武藤運十郎

    武藤委員長 百万円というと相当の額だと思いますけれども、何かのほかにわけがあるのではないですか。
  278. 杉山嘉市

    ○杉山証人 別に深いわけというのは……。私としては、いろいろお世話になつたという謝礼以外に深いわけはありません。あとはお見舞と、それから取引の関係……。
  279. 武藤運十郎

    武藤委員長 取引の関係といいましても、支拂金ではないのでしよう。
  280. 杉山嘉市

    ○杉山証人 支拂金も含まつております。
  281. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではそれは献金ではないのでありませんか。
  282. 杉山嘉市

    ○杉山証人 献カということは私あまり考えておりませ。そういう意味でやつた憶えはありません。謝礼とお見舞と取引の関係……。
  283. 武藤運十郎

    武藤委員長 取引の金というのはそのうちどのくらいですか。
  284. 杉山嘉市

    ○杉山証人 帳簿をみな燒いてしまつてはつきり憶えませんが、大体終戰前と終戰後にわたつております。終戰前のがどのくらいになつておるか、一切は笹本さんがやつておりましたものですから、東京事務所の方は女の子一人置いただけで、会社の人が出張したあとは笹本さんに一切委任してあつたために、はつきり憶えておりませんが、取引の関係は少ない……
  285. 武藤運十郎

    武藤委員長 非常に少ない……。
  286. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ええ、三分の一……。
  287. 武藤運十郎

    武藤委員長 取引というのは何の取引ですか。
  288. 杉山嘉市

    ○杉山証人 機械の世話をしてもらつたり、何かの関係です。
  289. 武藤運十郎

    武藤委員長 取引というのは、辻氏に物を賣つて金をもらうとか、辻氏から物を買つて金を拂うとかそういうことだと思うのでうが、世話してもらつたというのとはまた違いますね。
  290. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私どものところにはいらぬ機械を世話してもらつたり、それはみな笹本さんの方を経て取引をやりましたものですから……。
  291. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると結局お礼みたいなものですか、代金ではない。
  292. 杉山嘉市

    ○杉山証人 代金も含まれております。
  293. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたもりつぱな会社をやつておられるのだから、経理関係についてはお見舞の金か、手数料みたいなお礼の金か、取引の代金かということについては十分お考えがあるはずですから、はつきり言つてもらいたい。
  294. 杉山嘉市

    ○杉山証人 はつきり申し上げます。それは取引の関係といつても材料の関係とかあるいは機械の関係とか、謝礼といえば謝礼となるかもしれませんが、まあ手数料といえば手数料になる。そういう意味合になつております。
  295. 武藤運十郎

    武藤委員長 どうも御言葉がぐらぐらしていますからはつきり答えとください。これは一番初めにも御注意しましたけれども、間違つておりますと偽証の制裁がありますから……、辻さんが役所か何かに納めるときに、口をきいてやるとか何とかいうことで、取引が成立したというための御礼ですか。
  296. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そういう紹介はしてもらつたことはありますが、それに対しては、ただある人を紹介してもらつただけで深い関係はございません。
  297. 武藤運十郎

    武藤委員長 どういう人を紹介してもらいましたか。
  298. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ちよつと名前を忘れましたが、陸軍省の……。
  299. 武藤運十郎

    武藤委員長 役人ですか。
  300. 杉山嘉市

    ○杉山証人 役人です。その関係は鉱山の関係でしたものですから、とうとう最後までものにならずして、話中に終戰になつてしまつたものですから……。
  301. 武藤運十郎

    武藤委員長 今まで辻氏に何回もこのほかに金をやつておりますか。
  302. 杉山嘉市

    ○杉山証人 このほかに大してございません。
  303. 武藤運十郎

    武藤委員長 どのくらいありますか、いつごろ……。
  304. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ほとんどないと言つてもいいと思います。常にお世話になつておりますから、つかい物や何かをもつていつたことはございます。金としてはほとんどございません。
  305. 武藤運十郎

    武藤委員長 何かこの金をやつて、あといい衆事を世話してもらうというようなわけじやないのですか。
  306. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そういうことも全然ございませんでした。
  307. 武藤運十郎

    武藤委員長 辻さんの所へはあなたのような方が、ほかにも百万、二百万というような金をもつていくという人があるということを御存知ですか。
  308. 杉山嘉市

    ○杉山証人 多くの人が出はいりをしていることは聞いておりますが、お金のことは聞いておりません。
  309. 武藤運十郎

    武藤委員長 もらう方が來るか、くれる方が來るかは知らないですか。
  310. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは知りません。
  311. 武藤運十郎

    武藤委員長 この金は何に使われたか知りませんか。
  312. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それも全然知りませんが、やはり家の経費に使つたと私は信じています。
  313. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か政党とか政治家、選挙などの場合に、これを出してやるというというふうな金に使うということは聞きませんか。
  314. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私政治の方には無関心で、そういうことは聞いておりません。
  315. 武藤運十郎

    武藤委員長 あなたは政治の方と全熱関係ないですか。
  316. 杉山嘉市

    ○杉山証人 関係ありません。
  317. 武藤運十郎

    武藤委員長 何か辻氏の方から今度金が要るから少々もつてこないかというふうな話があつたことはないですか。
  318. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そういうことはありません。私どもの方で品物をもらつたりなんかしたことはずいぶんあります。東京事務所に対しましては事務所の調度品やなんか辻さんから皆いただいたのでございます。そういう謝礼も担当に含まれておるわけであります。夜遅いとき東京事務所に迫るのに、夜具やなんかまで心配してもらいました。
  319. 武藤運十郎

    武藤委員長 何がございますか。
  320. 田中角榮

    田中(角)委員 証人にちよつとお尋ねいたします。辻嘉六さんの支配人の笹本さんがあなたの事業を援助しておられたということを御証言になりましたが、その笹本さんは兒玉機関との御関係があることは御存じでございますか。
  321. 杉山嘉市

    ○杉山証人 全然知りません。兒玉さんのお話は聞いておりますが、関係があるかどうか、それはお話を聞いただけで、私兒玉さんに会つたこともございませんし、笹本さんとどういう関係にありましたか、それは知りません。
  322. 田中角榮

    田中(角)委員 あなたの会社が戰時中と戰後において、笹本氏の援助を得て事業をやつてきたということであれば、事業の内容田、あなたが戰前から戰後を通じてずつと現在まで継続されておるのでありますから、どういう方面に御援助をしていただいたということは、御明言できるはずだと思いますが、できないのは、いわゆる兒玉機関の資産処理という問題に関連をもつているから、御明言できないのではありませんか。
  323. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そういうことはございません。兒玉さんのことついてはお話は承つてけれども、一度もお会いしたことはございませんし、その関係は私は全然存じません。
  324. 田中角榮

    田中(角)委員 緑産業とあなたの会社との間には関係がございませんか。
  325. 杉山嘉市

    ○杉山証人 緑産業とは関係ございません。
  326. 田中角榮

    田中(角)委員 芝浦方面に、あなたの方と、終戰前から終戰後に続く事業関係はございませんでしたか。
  327. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ございません。
  328. 田中角榮

    田中(角)委員 もう一つお尋ねしますが、そうするとこの百万円という献金は、献金が三分の一、お礼も三分の一、取引の代金も三分の一ということになると、この百万円の金の中の約十分の六、いわゆる六衆という大きな面が、会社の経理状況にはつきり出てこなければならぬ。いくら終戰後のどさくさの時代におきましても、あなたが会社をおもちになつてつて、しかも法人の責任者として、その支出に際しては、当然経理的な責任を負われているはずでありまするか、そうすれば現在あなたの会社の中から、この百万円の内訳がつかめるはずでございます。あなたがお帰りになつてから、この内訳はどういうふうになつているのだということが御回答いただけますでしようか。
  329. 杉山嘉市

    ○杉山証人 古いことは、帳簿を燒いてしまつてわかりませんが、大体はわかると思つております。
  330. 田中角榮

    田中(角)委員 そうしますと、この百万円の献金は、あなた個人から辻さんにお出しになつたのではなく、あなたが責任者としておられる法人からお出しになつたのですか。
  331. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私から笹本さんの方へお渡ししました。
  332. 田中角榮

    田中(角)委員 それではあなたの御答弁がちよつとはつきりしないのですが、先ほどあなたに御質問申し上げたときには、終戰前の帳簿は燒きましたけれども、終戰後の帳簿はあるから、帰つて見ればわかる、こういうお話でございましたが、これはあなた個人がお出しになつたのか、それともあなたが主催しておられるところの法人から出されたのか、法人から出されたのであるならば、必ず傳票がある。その傳票に支拂先と支拂要泳が全部記載されているはずだ。こういうようにお問いしたわけであります。
  333. 杉山嘉市

    ○杉山証人 帳簿の方は、ほとんど終戰前のは燒いてしまつてありませんし、終戰後のはありますが、笹本さんの方ほお渡しした金は、私個人から渡してありますから、大体覚えております。
  334. 田中角榮

    田中(角)委員 ちよつとじ問がくどいようになりますが、当委員会の性質といたしまして、これはこの事件関係するだけではなく、いわゆる政界、官界、経済界百般の浄化という意味においては、昭和二十年八月十四日以降一個人が経営する商社、事業においても不正並びに不当取引が行われたということも糾明できるのであります。そういう意味から言いますと、この百万円が個人財産から支出された、会社と関係がないということに対しましては、あなたから御責任をもつた御回答がいただけますか。これによりまして、いずれにしてもあなたの会社であればもちろん傳票ははつきり出ておりますから、いわゆる笹本氏とあなたとの取引関係は明示されるわけでありますし、私はそれに対しては兒玉機関と関係があるのではないかと考えておりますので、こういうことを御質問申し上げるのでありますが、もし全然ないということになると、あなたが会社のほかに個人で営業なさつておられた。営業なさつておられた以上、営業税その他いわゆる終戰後の経理方面に対しては、あなた個人として政府に対して責任を負われなければならぬという新事実が出てくるのでありますから、そこをよくお考えになつてはつきり御答弁をいただきたい。
  335. 杉山嘉市

    ○杉山証人 個人の営業としては全然やつておりません。
  336. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 一点だけ伺います。一体辻さんに金をもつていかれたときには、辻さんから要求があつてつて行つたのか、あなたが自分が何とか出そうというつもりでもつて行つたのか、どういうのですか。
  337. 杉山嘉市

    ○杉山証人 これは商取引の関係とか機械の方は笹本さんとの話合いでお拂いしましたが、そのほかのものに対しては私が自発的に上げたもので、別に要求も何もありません。
  338. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その自発的に上げた金というのはどのくらいありますか。
  339. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それはお見舞金と謝礼であります。
  340. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは百万円のうちどのくらいですか。
  341. 杉山嘉市

    ○杉山証人 約三分の二くらいあるかと思います。
  342. 田中角榮

    田中(角)委員 ちよつとくどいようでございますが、あなたは今個人からお出しになつたと言われた。もちろん残余のものは商取引として会社の経理帳簿に載つておるはずであります。そこで先ほどあなたの私に対する御回答によりますと、私は会社以外に個人で営業しておらぬということですが、見舞金の三分の一はあなたがお出しになつても結構です。しかし残りの三分の二は、会社の商取引に対するお礼という意味で、あなた個人の資産からお出しになるというのは、ちよつと当を得ないと思いますが、あなたの個人の財産と会社の財産とが一つになつておるのですか。
  343. 杉山嘉市

    ○杉山証人 一つにはなつておりませんが、会社の方から差上げるということは全然やつておりませんから、私の個人の方から一切上げてあつたわけでして、その点は私個人の資産を上げたと御解釈になればそれはそうもなりますが、会社の機密費とかいろいろな費用から出してあるわけですから、個人から差上げても大体において会社から出ているわけです。
  344. 田中角榮

    田中(角)委員 わかりました。もう一つだけ伺います。そうしますと、結局は現在の会社の経理という動かすことのできない法律の処置があるのでありますから、あなたが言われたことは、先ほどは個人でお渡しになつたというけれども、結局は会社の機密費から出たというのであります。そうしますると、もちろん会社の機密費から出るものであつたならば、これは帳簿上の処理がついているはずです。不当財産委員会の本質といたしましては、今までそういう機密費が使われたというようなことは、現在にあつても実際法律的には不当なる取引である、こういう意味から、もちろん会社経理の状態としてはこの内訳は出ているはずであります。そうすればあなたが先ほど御証言なされたのとは違つて、会社が笹本さんにお渡しになつたという現実がここに証明されたわけです。そうしますと、もちろん百万円を機密機かに出そうが、傳票として公開しようが、これは別といたしまして、とにかく会社の費用として百万円の金を取引に関連してお出しになつたという間違いない事実がここにはつきりと組立てられるのでありまするが、そうすれバ、少くとも百万円のお礼を出すということは、相当に大きな商取引のお礼であると思います。しかるにあなたが政治にも全然関係がない、何にも関係がないということになると、商人であるから商取引のおせわになるからというのなら私たちとしても納得いたします。納得いたしますが、とにかくやみでもしない以上、百万円のものをせわしていただいて百万円儲かるというわけにもいきますまいから、少くとも一割ということになれば、千万円くらいの品物の商取引をやつてもらつて、その一割をお礼にして差上げたということになるのですが、常識的に考えてもそのような大きな事業をおせわ願つたか、もしくは資材その他の関係をつけていただいたということを御証言になつておられるのですから、そうすれば、現在あなたが会社の責任者として、自分の会社としてそれほど大きな商取引をした内訳を御存じないということは、私どもちよつと納得できかねるのでありますが、この間について御証言願えるものがございましたら、最後に御証言願いたいと思います。
  345. 杉山嘉市

    ○杉山証人 お礼いたしましたのは、先ほど申し上げました通り、辻さんの事務所のすぐ下に私ども事務所をもつておりまして、その事務所を開くときなども、机からいす、事務所の調度品全部辻さんに心配してもらつたのであります。夜具も心配してもらいましたし、心配し続けてもらつて燒けてしまつたわけであります。代金も拂わず、お礼もできずに終つてしまつたわけでありますから、そういうお礼も含めておるわけでございます。それから辻さんの事務所も半分一部屋お借りしておりまして、そこで笹本さんと打合わせした。それで部屋代を拂つたわけでもなし、何のお礼をしたわけでもありません。ただ無償で使わしてもらつておつた。そういう意味合を含めて謝礼したのであります。
  346. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 ちよつとお尋ねいたします。あなたの会社の資本金はいくらでありますか。
  347. 杉山嘉市

    ○杉山証人 百万円であります。
  348. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 百万円の資本金の会社が百万円の献金でなくしておせわ料や取引の機密費を拂つたということになるわけですね。百万円の会社が百万円のものをわれわれが聞いていると漫然と差上げたようであるが、謝礼に出したということになるわけですね。そうでしよう。
  349. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは先ほど申しました通り、百万円全部謝礼に出したという意味ではありません。
  350. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 それではお尋ねいたしますが、辻さんからおせわを受けた取引というのは、どういう商品であつたか、またどういうようなおせわを受けたのか、それを明らかにしてもらいたい。どういうおせわを受けてどういう品物の取引をしたのであるか、その利益がどのくらいあつたか、ということをひとつ証言してもらいたいと思います。
  351. 杉山嘉市

    ○杉山証人 その利益の点などはどれくらいあつたか、今はつきり覚えておりません。辻さんのおせわになつたためにどれだけ利益があつてどうだということはあまりないと思います。
  352. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 おかしいですね。百万円という金は相当大金であります。また小さな会社と申し上げては失礼かもしれませんが、百万円の資本金の会社で百万円の謝礼を出すということは、なかなか大きな問題だとわれわれは思いますが、それが辻さんのおせわでどれだけ儲けたというようなこともあまりないということになりますと、それではその百万円は何か儲けることを目的として上げたのではないかというふうにとらなければならぬが、そういうふうにとつてもよいですか。
  353. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは私どもとしましては先ほど申し上げました通り、材料をおせわ願つたり、あるいは機械をおせわ願つたり、その方が約三分の一ございます。事務所の燒けたお見舞として約三分の一ほどいつておりまして、それに長い間おせわになりましたお礼と、それからいろいろ心配していただいた事務所の調度品とか、そういうようなものを含めたお礼が約三分の一ほどございます。
  354. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 われわれも商人で取引をしてわかつているが、どうも事務所が燒けたからすぐ三十万円なり四十万円のお礼をするということは、もしそれがあつたとするならば、相当利益をさせてもらつておらなければ、そういうお礼ができるわけのものではないと思う。のみならず、ちよつと事務所を借りたからそれに三十万円を出したと言うならば、事務所を借らぬでも、三十万円ならその当時事務所が建つておつたと思うし、またよその事務所を買うと言うても、その時代なら買えたかもしらぬ、あなたの言うことがはなはだわれわれには承服できぬ。百万円の会社が百万円を漫然と人にもつてつて差出すということは、何としてもそれ以上の儲けを予測して謝礼金を出すか、それでなければ、たいへんな儲けのある取引をしておらなければ、そういう金が動くものではないとわれわれは考えますが、何か儲けさせてもらつたのではないですか。
  355. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私どもはつきり申し上げますが、戰爭中は工具で忙しくやつておりましたし、終戰後も同じ工具をやつておりました。終戰後は非常に切り詰めて地味に、ほんとうのたけのこ生活で、時機が來るまで維持するという程度にもつてきまして、終戰後はほんとうにぎりぎり一ぱいに細めてやつているわけであります。
  356. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 たけのこ生活が百万円も出すというのは、ちよつと大きなたけのこですね。
  357. 杉山嘉市

    ○杉山証人 戰爭中からのことですが、東京の戰災後から二十年九月ころまでのことでございます。それ以後においては全然そういうことはございません。
  358. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 大がい商人というものは、取引をして、そのときに儲けるとその三分とか、五分とか、一割とかをすぐ上げるものですからね。
  359. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私どもは終戰後非常に細々とやつておりまして……。
  360. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 終戰後は儲からなかつたのですね。たけのこ生活で、その儲からなかつた人が百万円もぽんと金を出すというのは、何か儲けたのではないか、そこがおかしいではないですか。
  361. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは戰時中のことであつて、終戰後は何もない。戰時中のことでございまして、終戰後は私どもは辻さんの方へやる余裕などは何もないわけです。
  362. 宇都宮則綱

    ○宇都宮委員 戰時中にやつたのですか。
  363. 杉山嘉市

    ○杉山証人 終戰後に戰時中の残りをもつてお礼したので、その後には何もないわけであります。
  364. 橋本金一

    ○橋本委員 ちよつとお尋ねしますが、辻氏と交わるようになつたのは個人としてですか、会社を通してですか。
  365. 杉山嘉市

    ○杉山証人 最初は個人としてです。
  366. 橋本金一

    ○橋本委員 それはいつごろですか。
  367. 杉山嘉市

    ○杉山証人 十二、三年ごろです。
  368. 橋本金一

    ○橋本委員 会社の関係は……。
  369. 杉山嘉市

    ○杉山証人 会社の関係は十五、六年ごろからでございます。
  370. 橋本金一

    ○橋本委員 それではお尋ねしますが、先ほどの証言の中に、お礼をすることはその都度物で差上げたこともあると言つておりますが……。
  371. 杉山嘉市

    ○杉山証人 物で差上げたと言いましても、それはお歳暮とかお中元とか……。
  372. 橋本金一

    ○橋本委員 そこです。礼とか見舞とかいうものは、大体通念的に、一般社会の観念というものがあるわけです。これは身分によつても違いますが、しかし時によつては季節々々なり、あるいは何かの動機があつて物をもつていく、時によつてはこのような厖大な金をもつていくについては、何かそこに非常な異なつたことがなければ、そういう差は容易につけ得られるものではないのです。これがあなたの印象に残つておらぬはずはないと思う。
  373. 杉山嘉市

    ○杉山証人 お金のことにつきましては、先ほどから何遍も申し上げた通り、二十年の六月から六月ごろまでの間に数回にわたつて差上げたのでございまして、それ以前もその後も絶対にございません。私どもとしましては、その後あまり会社を地味にもつていつたために、みつともなくて辻さんの所へ顏出しができぬというような状態で、本來ならもつと御懇意に願い、お礼も差上げなければならぬと思つておるような状態であるのに、あまりにみすぼらしくなつているために、ほとんど顏向けもしないような状態になつておるのでございます。
  374. 橋本金一

    ○橋本委員 なおお尋ねしますが、戰爭中と戰爭後において出されました金の差はどれくらいですか。
  375. 杉山嘉市

    ○杉山証人 あまりはつきり覚えはございませんが、終戰後の方が少し多いのじやないかと思います。終戰後といつても、八月に終戰になりまして九月、十月その間でございます。
  376. 橋本金一

    ○橋本委員 私どものお尋ねしたいのは、終戰のどさくさの問題です。
  377. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは絶対にございません。私のところは軍の方から材料一本、服一枚手に入れたものはございませんから、そういう点はほんとうに……。
  378. 橋本金一

    ○橋本委員 戰爭中に火災に遭い、戰災に遭い、なお戰後非常に不況に遭い、それ以來たけのこ生活をするというような状態になつて、戰爭中に特に取引が多くて、いろいろせわになつたという場合におけるその瞬間のお礼か謝礼でありますなら、感謝の氣持から出たのでしようが、不況になつてから、將來の営業上にはあまり関係ないのに、重ねて戰爭後にたくさん持つていつたというところで、私がお尋ねしなければならないのは、そこには何が理由があつたのですか。
  379. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは戰爭後といつても、終戰後一月、二月の間はほとんど会社の経済状態などは戰爭中と同じような状態にあるわけであります。それから会社の方は仕事はほとんどやらず、二十一年の三月ごろからぽつぽつ仕事を始めました。それまではほとんど仕事は休みで、それからずつと細々とやつてきたわけであります。
  380. 橋本金一

    ○橋本委員 そういう証言は受取れません。いわゆる敗戰のシヨツクを受けて、お互いの心理的な動きというものは非常な動搖をしている時にかかわらず、わずか十五日や一箇月の間に戰爭当時のものを、これを整理してもつていかなければならぬということは、私どもには考え得られない。
  381. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それはほかの会社でもあつたと思いますが、私どもも終戰後にいろいろ取引の関係がありまして、またほかにもいろいろ取引の関係もありまして、また借もありましたし、貸しもありましたりして、整理しなければなりません。また工場の方も戰爭中は百人あまりもおりました者が、終戰後にこれを養つていくわけにいかず、終戰後九月一日会社を解散しまして、さしあたり必要な人を約二十人ほど残しました。そのとき大体整理して、謝礼すべきものは謝礼してしまう、なすべきものはなしてしまう、またとるべきものはとるように整理をしたわけであります。
  382. 橋本金一

    ○橋本委員 それでは重ねてお伺いいたしますが、先ほどの田中さんの質問に対しての証言は、すべて個人としての謝礼のように言われましたが、今の証言で見ますと、整理の機会を利用して、辻氏に終戰後たくさん贈つたと、かように私どもは承りましたが、さすればそれは個人の財産でなくて、会社の方から……。
  383. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは先ほどあちらの方に申し上げました通り、整理費なり機密費なり、そういうものをとつておりまして、それから支拂いしたわけです。
  384. 橋本金一

    ○橋本委員 機密費なり整理費なりというならば、清算人なりあるいは重役会において決定しなければ出せないはずでありますから、その内訳書がはつきりいたしますか。
  385. 杉山嘉市

    ○杉山証人 終戰後解散したときの書類などは、現在あるかどうかはつきり覚えておりません。
  386. 橋本金一

    ○橋本委員 かりそめにも責任者として、法人の経理の問題、あるいは清算事務に対する問題について、忘れたとか、書類がなくなつたということは、法規上から言うべからざることであると思うが、責任者としては保存の期間もありますし、当然整理の樣式というものははつきりしておるはずです。
  387. 杉山嘉市

    ○杉山証人 終戰後に先ほど申し上げました通り、九月に整理しまして、書類なども古いものは処分してしまいましてほとんどないのであります。皆燒いてしまつたりして……。
  388. 橋本金一

    ○橋本委員 しかしさいぜんからの証言によりますと、個人的の交わりと営業を通しての取引ということから言えば、その間三箇年でありますが、自分の営業を通しての間の方が相当長い期間である。しかもその営業を通しての長い期間にせわになられたことは、営業に関係する機械あるいは営業の事務所、工場等に必要なる備品、かようなるものに対して個人の財産をもつて謝礼をしておいでになるのですか。
  389. 杉山嘉市

    ○杉山証人 個人の謝礼を……。
  390. 橋本金一

    ○橋本委員 財産は法人としてではないと、田中氏の質問に対して個人の財産からこの謝礼をしておるという言葉ですが……。
  391. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは先ほど申し上げました通り、笹本さんの方にお渡ししてありますが、その費用は私個人としてはないということははつきりわかつております。整理費とか、そういうものから出してある。それは申し上げた通りであります。
  392. 橋本金一

    ○橋本委員 さような証言であります限りには、先ほど申し上げました通り、法人には法人の会計経理の樣式が商法によつてはつきりなつております。あるいは会計経理法によつてはつきりなつております。また清算事務に対する規定もはつきりなつております。一社の責任者として、その帳簿がなくなつたということは言わるべきはずがない。それに対して内訳等ははつきりすることができますか。
  393. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは今申しました通り……。
  394. 橋本金一

    ○橋本委員 この問題は別として他の方面から……。
  395. 杉山嘉市

    ○杉山証人 終戰後に整理して……。
  396. 橋本金一

    ○橋本委員 法規に反することになるですよ。
  397. 杉山嘉市

    ○杉山証人 整理しまして古い書類はほとんど燒いてしまつた。
  398. 橋本金一

    ○橋本委員 古い書類ではありません。整理せられた清算事務というものは記録なり——記録は当然残るはずでありますし、経理ははつきりしておりますか。
  399. 杉山嘉市

    ○杉山証人 その時に清算しましたのはほとんどございません。
  400. 橋本金一

    ○橋本委員 そうすると他の方面から考えて、清算事務の完了後における清算の記録、その明細書の保存期間というものは、法規によつてはつきりせられておるが、それがないということになると、他の面からあなたにまた尋ねなければならぬ新しい問題が起きてくることになりますよ。
  401. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは終戰後に私ばかりではないと思います。燒けてわからなくなつたものもありますし、終戰後に処分した書類もありますし、今それを言われても絶対に私はわからぬと思います。それをわからすようにしても帳簿などは燒けてしまつて、大事な書類はほとんどありません。
  402. 橋本金一

    ○橋本委員 それは戰爭中のことでありますか。
  403. 杉山嘉市

    ○杉山証人 そうです。
  404. 橋本金一

    ○橋本委員 そうじやない。清算事務に対する書類ですよ。
  405. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それも清算して解散のときに、あとにいろいろなごたごたのないように清算して書類を処分してしまつたのです。
  406. 橋本金一

    ○橋本委員 その書類は保存してありますか。
  407. 杉山嘉市

    ○杉山証人 処分してありません。
  408. 橋本金一

    ○橋本委員 あなたの財産ではないのです。法人の整理に対する書類というものは保存してなければならないということです。     〔発言する者多し〕
  409. 杉山嘉市

    ○杉山証人 整理後のものはあります。
  410. 橋本金一

    ○橋本委員 さすればその方の書類はあるということでありますから……。
  411. 武藤運十郎

    武藤委員長 証人委員長言つて発言を求めて下さい。
  412. 橋本金一

    ○橋本委員 整理後の書類はあるということでありますから、一應その整理の当時の書類を委員長を通じて取寄せていただきたいと思います。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  413. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは出せますか。
  414. 杉山嘉市

    ○杉山証人 整理したものはありません。整理してから後の帳簿は全部ありますから、それをもつてまいります。
  415. 武藤運十郎

    武藤委員長 いつまでに出せますか。     〔発言する者多い〕
  416. 田中角榮

    田中(角)委員 帳簿を出せるということになりますれば、委員長のとま航に献金したものは分割して献金したと思いますが、それの日にちはわかるでしよう。それを明確にして、現金であるか小切手であるかよく調べて、その当時の決算報告やらをそろえて全部出してもらいたい。     〔「それがないのだ」と呼ぶ者あり〕
  417. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは杉山さんに伺いますが、辻氏に献金した関係の帳簿なり何なりというものは全然ないんですか。
  418. 杉山嘉市

    ○杉山証人 ありません。
  419. 武藤運十郎

    武藤委員長 何回にやつたかも覚えておりませんか。
  420. 杉山嘉市

    ○杉山証人 数回にわたつておると思います。
  421. 武藤運十郎

    武藤委員長 数回というのは二、三回もあるし、五、六回もあるが、何回くらいですか。
  422. 杉山嘉市

    ○杉山証人 終戰前に二、三回終戰後に二、三回になつておるかもしれません。大体私の頭にあるのはそんなところであります。
  423. 武藤運十郎

    武藤委員長 橋本君に申し上げますが、この関係の記録はない、帳簿はないと言つております。
  424. 橋本金一

    ○橋本委員 いや清算をしたと言いますから、清算当時の中から、そういう謝礼とか機密費にしたものの内訳を拔粹していただけば結構です。それは法人としてなければなりません。
  425. 武藤運十郎

    武藤委員長 それは出せますか。
  426. 杉山嘉市

    ○杉山証人 それは現在はありません。整理後のは全部そろつております。
  427. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは橋本君、はつきり提出をさせる帳簿なり書類を言つてください。ないあるは別として。
  428. 橋本金一

    ○橋本委員 昭和二十年八月十五日以後、会社の整理いたしました当時の記録並びに清算事務の中から辻氏に謝礼もしくは献金等をいたしました分に対しまして、詳細な書類を提出するよう、委員長を通じて命じていただきたい。
  429. 武藤運十郎

    武藤委員長 そうすると、昭和二十年八月十五日以後、会社の整理をした当時の記録並びに清算事務の中から辻氏に献金した分についての詳細な関係書類。
  430. 橋本金一

    ○橋本委員 名目はどうなつておりますか、とにかく謝礼、献金、見舞一切のものであります。辻氏に與えた金額に関係するものの一切。
  431. 武藤運十郎

    武藤委員長 それではもう一遍申し上げます。昭和二十年八月十五日以後、会社の整理をした当時の記録並びに清算事務の中から、辻氏に名目のいかんにかかわらず贈つた金についての詳細な関係書類、これを当委員会へ出していただきます。
  432. 杉山嘉市

    ○杉山証人 できるだけ調べて探してみます。
  433. 武藤運十郎

    武藤委員長 ほから御質問ありませんか。
  434. 石田一松

    石田(一)委員 私は証人に伺いますが、ちよつと事件の核心に触れていないんですが、どうも先ほどから証人の証言を聽いておりますと、支離滅裂というような印象を受けるので、特にこの際伺いたいことは、証人が当委員会出頭を命ぜられて、その通達を証人が受けた後に、本件に関して何か特殊の人に会つて相談をしたことはないか、それをひとつ聽きたい。そのことが証人の証言に何ら相当影響を與えているような印象が私たちにはあるのであります。それはなぜかというと、証人は今証言をしておられるより以上深いことを存じていらつしやるのに、この一日二日の間に記憶したことを証言なさろうとするので、何か一つが崩れてくるような印象をわれわれは受けております。そこでこの委員会出頭の通知を受けた後に、本件に関して相談をするためにどなたかとお会いになつたか、もしお会いになつたとすればどういう人か、もし会わないとすれば会わないと、その点を明確にお知らせを願いたいと思います。
  435. 杉山嘉市

    ○杉山証人 私どもの相談役というのは新潟におりまして、現在うちの会社に來ておりますので、その相談役には会つて相談はしておりますが、そのほかには別に相談した人も、会つた人もございません。
  436. 石田一松

    石田(一)委員 その相談役という方はどういうお方で、何というお方であり、しかもただあなたの会社の相談役ばかりしていらつしやるのかどうか、また政治的にはどういう関係にある方か、政治的には関係のない方か、その点をひとつ参考までに御証言を願いたい。
  437. 杉山嘉市

    ○杉山証人 相談役はもと東京におりましたが、戰災後新潟の方に行つておりまして、毎月一度ずつ上つてきて、会社に來るわけです。政治方面には全然関係はないと思います。若い時分にはやつたという話は聞いておりますが、現在新潟におるので、月に五日ないし十日間ぐらい、毎月会社に出てきて、私の話にいろいろ相談をしてくれるので、田邊虎三郎という方です。
  438. 武藤運十郎

    武藤委員長 もうありませんか。     —————————————
  439. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 亀井貫一郎氏の事件はもう調査が済んでおるのですから、その事件関係書類も、この際至急に取寄せていただきたいと思います。
  440. 武藤運十郎

    武藤委員長 それでは、亀井貫一郎氏に関する詐欺被告事件関係記録を取寄せることにいたします。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  441. 武藤運十郎

    武藤委員長 さように取計らいます。ほかに御異議ありませんか。——それではこれにて散会いたします。     午後五時二十分散会