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1948-10-09 第2回国会 衆議院 農林委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年十月九日(土曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 井上 良次君    理事 岩本 信行君 理事 森 幸太郎君    理事 永井勝次郎君 理事 小林 運美君    理事 寺島隆太郎君 理事 北  二郎君       小川原政信君   小野瀬忠兵衞君       佐々木秀世君    佐瀬 昌三君       松野 頼三君    八木 一郎君       梁井 淳二君    伊瀬幸太郎君       金子益太郎君    田中織之進君       成瀬喜五郎君    守田 道輔君      青木清左ヱ門君    中垣 國男君       村瀬 宣親君    松澤  一君       山口 武秀君    大瀧亀代司君       寺本  齋君  委員外出席者         議     員 池谷 信一君         議     員 加藤 靜雄君         総理廳事務官  雨森 常夫君         大藏事務官   忠  佐市君         農林事務官   山添 利作君         農林事務官   平川  守君         農林事務官   山根 東明君         農林事務官   須賀 賢二君     ————————————— 本日の会議に付した事件  風水害対策に関する件  農業課税に関する件     —————————————
  2. 井上良次

    井上委員長 これより会議を開きます。  ただいま雪解並び北陸震災アイオン台風等被害について、被害復旧についての経済安定本部として考えております主として金融対策についての説明があつたので、これに関連して質問があろうと思いますから、質問のある方はどうぞ……。
  3. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 今雨森さんから内閣における災害対策委員会災害に対する資金関係の御説明があつたのでございます。実は徳島縣における八月以來高潮による被害が各地に発生いたしまして、稻作に非常な被害を及ぼしているというわけでありましたので、そういう塩害等関係及びうんか等被害に対し、國会からその被害調査調査團を派遣してくださいまして、十月の二日及び三日の両日つぶさに調査してくれたのでございます。その調査團團長と言いましようか、小野瀬災害対策委員長及び平工委員調査に基きましての資料はあとから提出することでありますし、またその方から詳細なる発表もあろうかと思うのでございますが、今の災害対策等の関連する意味においてお尋ね申し上げたいのであります。  雨森さんはわざわざ徳島縣にも御出張なさいまして、地震沈下に対するいろいろな調査をしてくださつている唯一の方であります。今までそういう内閣方面から、権威あるお方が見えられておらないように存じ上げておりますが、地震沈下状態はますます深刻になりまして、昨年度よりも新たなる被害が各所に発生しているのでありまして、それらの状態が時あたかも三日の日は、調査團徳島縣那賀郡橘町の旅館に投宿の際、目のあたりにこの漁港が道路の上にまで塩水が浸出してまいり、地方におきましては床上にまで一尺あるいは一尺五寸の浸水がしばしば行われておる。こういうようなわけで、附近の一般住民なり、農民田畑及び住居における不安というものは、底知れぬ脅威を農民に與えておる状態であります。かような大きな被害が連続的に行われておるというようなことに対しましては、東京周辺の近いところの縣であつたならば、大挙して國会なり政府に陳情するであろう、こういう僻陬の地方であるために、われわれはこのままなおざりにせられて、そして幾年もの間まつたく苦しい不安と焦燥の中で生活をいたしておるのだというような陳情もあつたのであります。今承りますと北陸及びアイオン台風、あるいは長崎等九州風水害和歌山縣における地震等のみが取上げられておるように考えられまして、徳島縣における潮位異変に基くと言いましようか、地盤沈下によるところのこの災害復旧に対しましては一言も触れておられないように考えるのであります。いずれまた國会におきましては、私は徳島縣のみならず、他の府縣におきましても、地震沈下に対する何らかの強固なる対策を講じていただくために、國会地震沈下災害対策委員会を設けていただきまして、田畑復旧なり、また一般住民生活不安を除去していただくようにしてもらいませんと、とうてい今後もそれが被害による住民生活は、その基礎におきまして成り立たない、かように考えておる次第でございます。昨日も地元新聞がまいりましたが、五日の日に大藏省及び安本の方に打電いたしまして、不氣味な高潮の災わい、リビー台風本土接近等によりまして、不安におびえている縣下海岸線一帶の潮位異変か、地震沈下か、これらの被害状態が載せられております。浸水家屋は八百戸に及んでおる。あるいはまた沿岸のそれらの方面におけるこの二、三日間における被害等が加えられまして、千四百七十六町歩に及んでおる。こういうようなことで、それらの根本的対策については、ぜひあらゆる方面権威を集めまして、そして対策を講じていただきたいというようなことで、新聞にも大きく見出しで、載つておるのでございますが、この辺に対する陳情は、あらためて両三日うちに縣知事及びその他の者がくることになつておりますが、この際こういうような地震沈下による高潮被害も、一枚内閣災害対策委員会のうちに加えていただきまして、そして臨時國会における追加予算の面からいたしましても救済策を講じていただきたい、かように存ずるのでございますが、雨森次長のご見解をお尋ねする次第でございます。
  4. 雨森常夫

    雨森總理廳事務官 今徳島縣下地盤沈下の件についてお尋ねがございましたが、南海地震において四國及び和歌山縣を入れました地方相当地盤沈下を起しておるのではないかということは、震災直後から地元では相当関心をもたれた問題でありましたが、その後二年、三年経つにつれて相当その度が増してくる傾向にありまして、本年あたりも今お述べになりました通り、私も伺つておるのであります。安定本部といたしましては、御承知のように本年度若干ではございますが予算を計上いたしまして、地盤沈下対策を練りつつ工事を施工してもらうようにいたしておるのであります。何分これは相当範囲が廣いものでありまして、復旧には相当調査研究を要するものであろうと思います。なおこれはもうすでに地盤が固まつておるのではなくして、将來またどの程度まで沈下していくものか、あるいは場合によつたらもとのようにいくらか上昇するようなこともありはせぬかというようなことも一應十分考慮に入れて、要旧していかなければならぬのでありますが、とりあえずこれは捨ておけない所から選んで、今申し上げたように、本年度から地盤対策として國費を出しておるのであります。御質問にございましたように、災害対策委員会においては、その災害が起りました都度、その復旧をどうしていくかということにつきまして、大体の構想をおきめ願うことになつておりますので、地盤対策はむしろもうすでに出発しておるというふうにお考え願いたいのであります。なお費用の足りない部分につきましては、われわれも十分承知しておりますので、でき得る限り調査を進めつつ、その方に予算をまわして、遺漏のないようにいたしたいというつもりをしております。
  5. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 簡單に補足してお願い申し上げたいというか、知つておいていただきたいのでありますが、いろいろ地震沈下に対する御配慮により相当費用も計上され、地元における工事も着々進捗しておりますが、せつかくでき上つた工事も、これが地震沈下の連続によりまして、その上層部からまたぞろ潮害がどんどん起つておるような状態でありますので、その現場を私ども一行が見てまいり、それではせつかく工事もまたぞろほんとうの復旧ができない、追加方面における資金の御心配につきまして、とりあえずこの高潮による上の方からの浸水を防ぐための措置が講ぜられなければならぬので、何とか應急措置として至急復旧を促進すべく、関係方面にお願いしようというようなことで帰つたのであります。從つてつなぎ融資としての四十億の中にも、かような急を要する事業に対しての何分の御配慮を願いたいと存じまして、追加的な意味で御意見をお伺いする次第であります。
  6. 梁井淳二

    梁井委員 今度の水害佐賀縣長崎縣等の北九州の被害が非常に甚大であつたのであります。もつとも本年度過去二回にわた水害もあつたのでありますが、九月の水害は実に予想外の大損害でありまして、ただ佐賀長崎が非常に遠隔の地であつた関係、あるいは交通、通信網の破壞によつて被害がなかなか急速でわからなかつたために、一般としては実際の損害を認識されていないように思うのであります。井上農林委員長も親しく御調査くだすつたようでありまして、災害内容を詳細述べることは省略いたしますが、ただいま経済安定本部より説明のありました、農林漁業復興資金四十億を融資することに災害対策委員会において決定したことは、まことにありがたいことでありますが、この復興資金は一体いつごろ出るのか。しかして事実府縣にその金がまいりますのはいつごろになりますのかをお伺いしたいのであります。実は関係閣僚おそろいのところで、十分に災害内容説明し、かつ関係各省が緊密に連絡をとつて、急速に手を打つてもらうことをお願いしたいのでありますが、何分ただいま安本よりお述べになりましたごとく、國庫交付金が実際縣へまいりますのは相当遅れることは、これは見透しとしてそうだと思うのでありまして、具体的に融資をいち早くするということが災害復旧のため最も大切であります。そこで災害府縣民としては一体この融資がいつくるのかということを非常に待望しておるのであります。それで府縣区分の決定の時期、それからこの融資はいかなる方法で縣にまいるのであるか。この三点をお伺いしたい。
  7. 雨森常夫

    雨森總理事務官 先ほど申し上げました四十億のわく資金でありますが、これは公共事業に関連いたしました復旧に要する費用融資でありまして、そのほかに農林関係におきまして産業資金がそれぞれの課目で御要求になつております。その点につきましては後ほど農林当局からお述べになると思いますので省略いたします。四十億の資金につきましては、これは府縣別内訳は大体われわれの方で農林省から御要求になりました復旧の規模を参酌いたしまして、そのほか縣に財政状況、あるいはその他のいろいろな條件を加味いたしまして、一應の府縣別の数字は私の方でもつておるのでありますが、農林省の方もまた大してそれとは違わぬだろうと思いますが、若干の御意見もあろうと思いますので、それは今お打合せをいたしておるのであります。われわれの方といたしましては、今申し上げました一應各縣別内訳をつくりましたものについて、大藏省の方と財政委員の方とに打合せ中でございます。これが大体決定いたしますれば、至急に申請をしていただいてできると思います。もちろん四十億一遍に行くわけとも考えませんので、緊急を要するものから申請されたものに從つて出てくる、こういうふうに考えております。今大体打合せをしておりますので、すぐに行くんじやないかと思います。経路としてはこれは預金部資金でございまして、公共事業に関する四十億の金のそのほかの生業資金産業資金の方は農林当局からお話があると思います。
  8. 井上良次

    井上委員長 農林省総務局長が見えましたから、農林省として災害農村に対する金融的措置共済保険の前拂等に対する要求に対してそういう処置をとるか、その他総務局関係災害救済に対する対策について一應説明を聽きまして、それによつて質問を願います。
  9. 平川守

    平川農林事務官 災害地に対しましてはまず應急金融措置が必要に相なるので、復旧資金に関しましては、安本の方と御相談の上で大体事業計画を見定めまして、補助金の交付される状況、およその見当をつけまして、これに相應する額を先ほどお話がありましたように、預金部等から一時融通をするような措置を講じて、なおほかに公共事業関係以外に農業各種施設に対する資金融通ということが必要になりまするので、たとえば福井地方震災の場合に、農業建物等に対する資金融通のごときは、これは一應農林中央金庫をして融通せしめました。それを先般暫定措置の成立をみました農林関係復興に要する資金融通の中に組みかえていくという考え方をもつております。それからそのほか應急に必要といたしまする営農資金等につきましては、肥料でありますとか、あろいは農機具でありますとか、そういうものに対する費用につきましては、主として農林中央金庫をして應急融通せしめて、各縣の実情を調べまして、縣当局と御相談をしました上で、農林中央金庫から應急に系統の組合を通じて融通をせしめます。なおその場合に農業手形制度を利用できまするもの、化学肥料配給の分でありますとか、あるいは指定農機具でありますとか、そういうものにつきましては、できる限り農業手形を利用いたしまして、これを利用いたしまするとそれだけの金額は当然における日本銀行の方からあとから融通を受けられるものでありますから、できるだけ融通資金わくを拡げる意味におきまして、手形の利用できるものにはできるだけ手形を利用する、しかし手形で補えないものは、あるいは急を要するものにつきましては、一時中央金庫をしてその手持資金融通せしめるような措置を講じておるのであります。先般の北陸震災等に起きましては、営農資金を約一億五千万円をとりあえず融通をいたしました。さらに縣の方で具体的にそれでは足りないというものが出てまいりますれば、それについてはわくを拡げて融通することも認めようというようなことで、具体的に目下縣の方で一つ一つ要求を当つておるような状況であります。そのほかの震災地水害地等につきましても同様な措置を講じまして、應急営農上の資金につきましては、中金から融通したいと考えております。そのほか先ほど申しましたやや固定的な施設につきましては、これは先般成立しました農林漁業に対する特別の長期資金融通措置が講ぜられておりまして、その中に災害復旧に要する経費を賄う部門がありますので、必要に應じましてそういう方面から融通をいたしたい、かように考えております。具体的の金額については個々の縣と打合せをいたしましてきめてまいるということにしたいと考えます。  それから共済保險金の前拂という問題につきましては保險金自身をできるだけ速やかに支拂うように農政局の方で督励をいたして手配をいたしておりますが、しかしそれでも間に合わない、なお應急にそれだけの金が欲しいというものについては、一時およその保險金見当をつけまして、その一定のわく内において、中史金庫からそれぞれの組合に、ほぼそれを割当にした金額融通いたしまして、あと保險金がはいつた場合にそれと差引いてもらうというような措置を講じておるのであります。保險金そのものを前拂いするということは困難でありまして、これはできるだけ速やかに拂うという措置を講じ、それで間に合わなければ、一時それを見返りにして中央金庫から立替をいたすこういう措置によつて救済をいたしておるような次第であります。
  10. 井上良次

    井上委員長 それでは守田君。
  11. 守田道輔

    守田委員 私の質問したい要点は、今年にいたりましても福井縣あるいは富山縣等において震災水害等でいろいろと農業災害が起つておるし、また佐賀長崎縣、あるいはこのたびのアイオン台風とかいうことで、靜岡縣あるいは東北、四國等相当農業災害が起つております。こうしてくる年もくる年も災害が起る、それに対しまして國から出されたところの災害費用というものが、いつもあとを追いかけていくような状態であります。從いまして昭和二十年ごろの農業災害復旧が、未だ四分の一しか完成していないというふうな地方もたくさんある。私が聽かんとするところは、問題の要点個々に伺います。  今までの予算の特に農業災害の問題についてでありますが、予算の組み方というものが各省政治力によつて出されておる。また安本はそれを調整するためにできておるにもかかわらず、やはりその政治力いかんが問題を決定しておる、ここはわれわれのはなはだいかんとするところである、もちろん私ども國会の者としても、われわれの政治力は弱い、こういうことになつておる、ここで結局は、一番いけないところは官僚政治力ということになつております。官僚政治力の強い所は予算がとれるが、その政治力の強い所は予算がとれない。片方には数百万、数千万の農民がその日のかてすらもない、米をつくつて食うこともできないときに、重点的にその予算が実施されていない。安本はやはり依然として官僚的な考えを持つておるがゆえに、こうした各省政治力によつて左右されておる。これで新しい日本再建ができるかと私は言いたい。特に石炭の増産とか肥料増産はもちろん必要であるが、その他急を要しないような事業にすら復興金庫融資は何百億円といつて出されておるのに、農業災害至つてはもう五年も六年も七年も経つてすら、なお地方に参りますと荒らされた田畑は砂山である。こうなりますと私の考え方から見ますと農林省開拓局の一部、わずかの一課をなしておるところの土地改良課と申しますところが災害関係を握つておる。何十億円、何百億円という年々起る災害に單に一課の政治力であるがゆえに、安本はこの政治力の弱いところは予算を出していない、これを私はどうしても根本的にかえる必要がある。大きな災害が起つてどうしてもそれによつて食糧増産をはからなければならぬというときにそれを放つておくか。私はこの点で安本雨森次長政治力によつて金を出していくのか、実際には出すべき所へもつてつてこの予算を出していくのか、その点をはつきりとした答弁をこの際聽きたいと思います。
  12. 雨森常夫

    雨森總理廳事務次官 たいへんお叱りを受けたのでございますが、実は仰せのようなことについては、安定本部といたしましてはいささかもそういう結果が生じないように鋭意努力いたしておるのでありますが、最近の各種災害と國のこれを復旧する力とがバランスがとれないのでありまして、今ご指摘のありましたように、すべての災害復旧というものが次々へと追われておると申しますか、倍加されていくような傾向にあるのであります。私どももその点は非常に憂えておりまして、実は安定本部でやつております経済復旧五箇年長期計画を今盛に立案いたしておるのでありますが、それの中に入れるについても、すべての國の建設復興計画の最もがんをなしておるのが災害であります。この際今までの方法をかえまして、災害をどういうふうにやつていつたならば凌げるかということにつきまして、これも各権威者のお集まりの中で審議中なのであります。今お話のありましたように、どうしてもこの災害を何とか今までのやり方と違つた方法を講じていかなければ、國の再建はできないというふうにわれわれも痛感いたしております。根本的に申し上げますれば、そういうふうな点に努力いたしております。なお建設農林、その他運輸、各省にまたがつております災害でありますが、各省ごとあるいは各局ごとの所管になつております災害復旧については、重点主義でやつていくということはもちろんでありますが、均衡のとれないような復旧をいたしては、國費をむだに費す面も多くなるということを憂えますので、その点は十分注意をいたしておるような次第でございます。
  13. 守田道輔

    守田委員 大体雨森次長のお考えはよくわかりました。そこで私はここでもう一應お尋ねいたしておきたいことは、私の主観から申し上げますれば、災害復旧を、この際國費として出るだけのものを全部そこにつつこんでいくのが一番必要ではないかと思うのでありますが、國の財政力というものが十分にそれを果たし得ないと思うのであります。そこで外資導入ということが盛んに叫ばれておりますが、私は、言葉が俗になりますが、國土の修理と申しますか、荒れ果てた日本の國を一應修繕し直さなければならぬ。こういう意味からいきましても、私はこの際、國内の経済力財政の力がない場合には、一千億円くらいの外資導入によつて、この國内に再び災害が起らないように——起らないということはできませんけれども、起りましても非常に軽い受け方をするというような意味で、この際何とかしてこうした方向にもつていきたいと思うのであります。と申しますのは、現在食糧も二百万トンから輸入しておりますが、おそらくこの災害が起らないようになつたならば、二百万トンの輸入はしなくてもやつていけるのだ。一時多分に借り入れましても、二、三年にして返すことができると思うのであります。返すことができないにしても、食糧の援助を受けずに済むという結果になると思いますが、この点一應そういうことをお考えになつているかどうか、お聽きしたいと思います。
  14. 雨森常夫

    雨森總理廳事務官 外資を導入いたしまして災害復旧その他建設部面に振り向けるという点につきましては、直接は未だ考えておらないわけでありますが、私らといたしましては、もちろん外資を導入された場合には、それを災害復旧以外の部面に振り向けまして、現在の災害対策に充てておる國費をふくらましていく、移向していつてもらうというような筋道を考えております。それと同時に、今までやつております國費の投じ方を根本的に改めていくような方法も併せて考慮いたしております。と申しますのは、たとえて申しますと、災害公債を出す、あるいは復旧保險制度考えるというような点を考えまして、國費が少ないがために災害を助長していくというような傾向を防止したい、こういうふうに考えております。
  15. 伊瀬幸太郎

    伊瀬委員 共済保險金の問題ですが、奈良縣大阪府、滋賀縣などは特に虫害うんかが猖獗をきわめておつて農林省あたりから、実地調査に出張しておられるというような状態なんですが、虫害なんかの問題は保險に該当しないということになつてておりますが、実際あれの駆除は石油さえあれば完全に駆除でき得るのに、その石油の資材が、縣から農林省に向けて申請して、実際に手にはいるのは半月ないし二十日くらいかかつておる、その間に全部虫害に侵されて、奈良縣あたりはもうすでに收穫皆無というのが百七、八十町歩ないし二百町歩くらいできておる。今後まだどれだけ拡大するかわからぬ。特に大阪府、滋賀縣にもそれが伸びておるというような状態でございますが、これは石油が速急に農家の手に配給されるならば、こういうことはないのでございますが、それが遅いということもこれは不可抗力に該当しないでしようか。それをひとつお伺いしたいと思います。
  16. 山添利作

    山添農林事務官 虫害は入つておらないのでありまして、その理由は、御承知のように防げると言う意味から入つていないのでありまして、やはり保險の対象にならないことは、なるほど石油配給が手遅れになつたというような事情がございましても、これは現在の制度の上からやむを得ないと思います。
  17. 伊瀬幸太郎

    伊瀬委員 それであるなら、なぜ請求したら直ぐにその石油を渡されないか。直ぐに渡されたら完全に除去できるものを、農林省が遅くなつて半月も二十日も経つてから渡されるというのであれば、不可抗力ということになるのじやないですか。
  18. 山添利作

    山添農林事務官 もとより石油を早く渡すということは最も大切でありますが、しかし、御承知のように、われわれとしては、極力努めておりますけれども石油わくそのものが非常に狭い。おそらく現在の物資の中で石油くらい少いものはないでしよう。今年のうんかの発生は、春六十万町歩出ました。秋も大体三十万町歩見当出るだろうという予想を立てまして手配いたしたのでありますが、それよりも超過をいたしまして、最初D・D・Tを使いますほかに二千リツトルの石油を特に農林省議できめて、あてのないところを出してしまつたのあります。その次に、最近では約四百キロリツトル、これも稻の脱穀調整用のものを利用して應急に出す、こういうふうな苦心をいたしておるのでありますけれども、まあ十分にいかなかつた点があつたことは残念に考えております。しかし保險関係から申しますれば、なるほど氣の毒だとは考えますけれども、現行制度といたしましては、虫害によるものは事故の中に含まれないということになつております。
  19. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 関連して。徳島縣におきましても、一万七千町歩に及ぶうんかの激甚なる被害を受けたのでありますが、その調査の上におきましては、今奈良縣の方からの意見がありましたように、早期に発見いたしましても、それを手当てするところの石油がわずかに反当七勺から九勺しかはいらない。いかに節約いたしましても反当一升五合程度要るにかかわらず、わずかの石油しか手に入らないために、早期の予防ができなかつたということが原因であるのみならず、農民は何とかしてこれを防止したいというので、漁村に近い所は、やみの石油を一升百五十円から百八十円かけて買つてきて相当防除したものもありますが、そういつた場合におきまして、警察がこれをとがめて、せつかく農民の防除を法の上においてこれをなさしめなかつたというような矛盾があるのであります。これらはまつたく地方農民が憤慨しておりますが、資材調整事務所の今回のうんか予防の石油配給のやり方がまずかつたために、どれほど農民うんかによる損害を倍加したかわらなかつた。これは早急に配給してもらいたいということがすべての意見であるのでありまして、かような立場から考えてみると、今後は農業協同組合に対しましてあらかじめ石油の手配をなさしめておいて、早期に防除するとこうことになさしめないと、再びかかる配給上における立場から損害を繰返すものである、かように考えますので、今回における全國的なうんか被害は、一應國家におきまして、災害保險等に準ずる何かの手を講じて農民を救済するということがなされなければならないと思いますが、さような意思がおありかどうか。また資材統制事務所におけるあり方につきまして、その弊害を再びしないような機構の改正をなさる御意思があるかどうか、この点につきましてお尋ね申し上げたいのであります。
  20. 山添利作

    山添農林事務官 結局あらかじめうんかに対する予想を立てて石油わくをとつておくということに帰着するわけなのでありまして、うんかにつきましては石油が非常に窮屈でありますから、連合軍の方といたしましてはなるべくD・D・Tを使えということになつております。これも本年も相当程度——三百万ポンドでありますか、使えたのであります。大体相当部分はD・D・Tでいく、あと石油ということに考えざるを得ないと思うのであります。うんかは今年はたしか昭和十九年來でありますか、特別多かつたのでありまして、毎年毎年同じような状態ということではございませんけれども、しかし少なくとも最低発生を予想されるような程度のものは、これをあらかじめわくを設定しておいて、遅滯なく配給できるようにいたしたいということは、私ども熱望いたしております。しかし石油事情が非常に窮屈でありまして、正直に申しますと、農林省はもちろん安本でも何ともならない。一々向うの石油係の所へ行かなければ話がつかない事情にございますので、非常に困難ではありますけれども、そういう措置は十分努力をいたしたいと考えております。  それから保險にはいりませんために、非常に災害激甚の地方においては氣の毒でございます。これはやはり一般金融措置を必要といたしますれば、その程度に應じて考究しなければならぬと考えております。
  21. 平川守

    平川農林事務官 ただいまお話の中に資材事務所の問題がございましたが、これは全國各縣にございますので、一つ一つの分につきましては、あるいはその縣における当時者が運用をうまくやつておらぬという場合もあろうかと存じまするが、根本的にはただいま農政局長からお話がございましたように、石油そのものに対する供給量というものは非常に限定をせられておりまして、実を申せば、私どもといたしましてはこのたびのうんか用に二千キロの特別の増配をいただくことにつきましても非常な苦心をいたしておるわけでありまして、向うの非常に限定をされた石油の供給量の中から、多少でも余計もらうということは非常に困難なことなのであります。それからこれを各農林、水産全体の需要に配分をいたします場合において、資材事務所において切符を切らしておりますけれども、これはそれでほかの機構であつたならばもつとよく配給ができるかどうかということは、いろいろ利害得失があろうかと存じます。いろいろ欠点はあろうかとも存じまするが、一面比較的いろいろ偏頗な力に動かされずに、割合に公正に必要な部面に重点的に配給をいたす、政府の直接に配給する必要のあるような、ただいまの石油のような重要な資材につきましては、こちらの方できめました方針によつて的確に配給をいたすという必要からいたしまして、どうしてもああいう機構を必要とするということになつておるわけであります。具体的の地方において運用のまずい場合におきましては、何らかの方法で私どもも十分監督をいたしておるつもりでございますけれども、なお不十分の点は御連絡いただきますれば十分注意いたしたいと考えております。制度といたしましては、ああいう資材については、直接に配給の機構を持たざるを得ないというふうに考えておるわけであります。
  22. 伊瀬幸太郎

    伊瀬委員 今の御説明で私は了解したのですが、私九月の下旬でしたか、靜岡縣災害視察に参つたときに、うんかの発生状況を聞きまして、それから石油配給はどうかということを直接農民に聽きますと、たいへんうまく潤沢に來ている、こういうお話を聞いて帰つたのでございますが、たまたま奈良縣に帰つて聽きますと、奈良縣ではなかなか一反に一升ではない、五、六合しかいかない。こういうことでは、今徳島縣の成瀬氏が言われたように、私の方では一升二百五十円くらいなやみの石油を買つてつておる。そういうことで縣に参りまして、なぜもつともらわないかと言いますと、何回も農務課長なり資材統制事務所なりをやつても、奈良縣に対してはくれない。そんなばかなことがあるか、靜岡縣では農民要求だけ潤沢にいつておる。こういうことを私直接に聽いてきたのですが、こういう点は公正に配給されておるかどうか。今後また奈良縣においてもどしどし要求されると思いますが、これの割当はどういうふうになさいますか、お伺いしたいと思います。
  23. 山添利作

    山添農林事務官 これは縣からの報告に基きまして、農林省で若干の査定をいたしまして配当いたしておるわけであります。場合によりますとあるいは仰せのようなことが絶無とは申されないのであります。事急を要しまするからそういう手違いが生じたようなこともあつたと思います。十分氣をつけたいと思います。それから今年のうんかに対する石油は、先般も配給いたしましたので、それ以後の見込みはありません。事実問題としてうんかも大体終つておるわけであります。奈良縣要求としてはおそらく使つたものをあとから補填をしてもらわなければぐあいが悪いというお考えかとも思いますが、現在の石油の事情から申しまするとそれは不可能であります。
  24. 井上良次

    井上委員長 ちよつと私から質問をしたいのですが、今うんかの問題で石油配給が非常に各地ともに円滑にいつてないということで、いろいろ問題が起つておるのですが、政府は第二國会を通過さした食糧確保臨時措置法というのを実施しました。この食糧確保臨時措置法によると、第七條第五項の中に、肥料とか農機具とか農藥等を時期を失わないで当該生産者に割当をしなければならない。こういう文句がはいつておる。從つてこの法律は二十三年度産米に適用しないということになりますか、それとも適用することになりますか、これはどうなんですか。非常に大事な問題です。
  25. 山添利作

    山添農林事務官 二十三年度につきましては、これにつきましては、これに準ずるということでいたしておるのであります。しかしお話の点は別の点で、要するに確保しない責任をいかにするか、こういうお話だろうと思うのであります。肥料にいたしましても、農機具にいたしましても、安定本部におきまして國家計画を立てて、これを時期を失しないように割当をすることであります。時に肥料のごときは生産量をいかに見つもるかということと相関的な関係にございますので、肥料が少なければ生産量も從つて少ない。肥料を多く配れば見つもりは若干殖やしてもいいのではないか。こういうことになるのであります。石油になりますと、脱穀調整用のごときものは、はいるのははいるのであります。しかしこれも実際問題といたしまして所要量の半分ぐらいしか配れないという事情であります。うんかのごときものにつきましても、これは通常予想せられる部分に対する手当は当然いたしておかなければなりませんが、それ以上ということになりますと、今回のようなことが起り得るわけであります。それにいたしましても、この秋うんかにつきましても、春非常にたくさん発生を見たというので、過去における発生歩合、春に対する秋の発生歩合を見まして、それだけの石油は準備をいたしたのであります。それも石油の出しどころがないものでありますから、何ということなしに、結局農林、水産用その他に配当になつておるものから出すということで、配ることは配つた。しかしそのあと始末はついていない。ともかくそれで配つたのでありますが、そういう事情になつておりますので、私ども予想よりもさらに今年の秋のうんか相当に拡大をいたしたために、遅い場面におきましては非常に私どもも焦慮いたしましたし、また農民諸君には非常なる打撃を與えたということになつておるのであります。この点は先ほど申します通り、はなはだ遺憾に思つております。
  26. 井上良次

    井上委員長 そうしますと、大体この法律を二十三年度産米には準用するということになりますと、今局長の御説明によりますれば、予想以上のうんかが発生したために、予想しておつただけの石油ではことを欠いたということになりますと、それは予想以上の災害ということになつてまいるのでありまして、その場合は当然第八條が適用されなければなりません。第八條はいわゆる第七條の農業計画に定めました供出数量について、今申したような、いろいろな被害が起つた場合には、当然生産者は市町村長にその供出数量の変更を異議申し立てることができる規定になつております。そうしますと、当然この法律をこの産米に準用するという政府の腹ならば、人力をもつて予想することのでき得なかつた被害なんですから、当然これは第八條を適用して、その被害に應じて調整を正式にすべき必要が起つてくるのであります。それに対してどう考えますか。
  27. 山添利作

    山添農林事務官 委員長と同意見であります。
  28. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 さいぜん私は石油の問題からいたしまして、農業災害に対するところの保險金といつた方面の話を申し上げたのでありますが、満足なる御意見がなかつたのであります。從つて私はかような結果からいたしまして、地方農民の不満というものは、資材調整局の廃止だというくらいにまで意見が述べられておるということをお傳え申し上げましたが、総務局長からそれに対しての説明がありましたので、私も了承いたしております。しかしながら地方農民の声というものは、あまりにも調整事務局の所長なり、係員が認識不足だ、うんかの発生に対して、被害に対して認識不足であるがために、みすみすこうした甚大なる損害を受けたのだ。かような意見の結果廃止論まで出ているのであるということを考えていただきたい。そうしてみますと、農業保險の方も、こういう災害にはどうもこの規定に基いて國家がそれを補償するの途を講じないということでありますならば、当然憲法に定められたところのいわゆる公務員による損害を発生させた場合の國家賠償法の規定によつて損害賠償をその出張所かあるいはまた農林大臣に対してやるというな意見相当強いのでありますが、かような強硬な態度にならしめて、これ以上にそれら農民と政府の間における思想上の大きな弊害を助長せしめることが適当であるか、私は口をきわめて、穏健なる方法をもつて何かの救済策を講ずることが当然だと考えておりますが、それがない限りは、やはり憲法の精神に基く國家賠償法による損害賠償を訴えざるを得ない。かような結論に到達いたしますが、それでもやむを得ないというようなお氣持でおられるのでありますが、ちよつとお伺いしたいのであります。
  29. 山添利作

    山添農林事務官 総務局長がお答えいたしましたように、これはおそらく資材調整事務所長等の應待のしつ振りというようなことから、農民諸君にそういう誤解を與えたと思いますけれども、やはりもとは農林省が割当てるということになるのでありまして、わくがいけば調整事務所長はすぐ切符を切るわけであります。從つてその責任は農林本省にあるわけであります。農林本省の者といたしましては、特に私が直接その責任をもつているわけであります。このうんか用の石油についてはまことに不十分で遺憾でございますけれども、しかし政府といたしましての努力は、農林省安本ことごとく盡しているのでございます。何分にも石油わくが非常に限られているというところから、こういう不満足な結果を來すのでありますので、やはり本來石油が非常に窮屈であるという事情にあるということから御考察をいただきたいと考えるのであります。
  30. 井上良次

    井上委員長 この際さらに農政局長から、特に災害地の次の作付に必要なる肥料の特配の問題、それから種子の問題、これらに対する対策を本省として立てられているのでありましようから、これらの点について一應説明を願いたい。
  31. 山添利作

    山添農林事務官 アイオン台風によります被害の、肥料関係でありますが、岩手縣及び宮城縣等におきましてまだ麦に対する秋肥は配給してなかつたのでありまして、目下配給中であります。そこで麦肥に関する限りことは欠かないのでありますけれども、しかし今まで手持ちしておりました肥料が流失をするというような関係もございまして、その辺を斟酌して、縣当局打合せの上すでに追加配給を実施いたしました。もう配給済みであります。それから靜岡縣につきましては、肥料の増配要求がございますが、これは麦肥をただ反当増加をしてくれ、こういうことでありまして、そういう事柄では肥料配給する対象になりません。もつともほかに從來の麦面積以上に他の雜穀をつくる、そういうことで食糧の補填をいたしたいという計画でございますれば、それに対する分は考慮をいたしたいと思つております。  それからアイオン台風よりも前に和歌山縣等で相当水害がありまして、みかん畑がすつかり洗い去られたというようなこともありました。こういうようなことに対してもすでに肥料配給をいたしております。全体として肥料が非常に少ないのでありますから、むろん十分というわけにはまいりませんけれども、それぞれ縣当局打合せの上所要の特別の割当を実施いたしておるわけであります。  それから種子の点でありますが、稻作が收穫皆無になつて、特に靜岡縣のごとき相当問題でございます。この種子につきましては食糧管理局が買上げました米もみの中から、これを供給するという措置をとるわけでありまして、これは食糧管理のわくの中で操作をいたしまして、種もみ等の不足を來すことがないように対処いたしたいと考えております。それからまた東北地方でああいう作柄に打撃を受けましたために甘藷の作付増加をいたしたいというようなこともございますが、そういうものに対してはそれぞれ措置をいたしております。
  32. 井上良次

    井上委員長 その種もみのことですが、須賀さん、あなたの方でわくを殖やすことはできますか。
  33. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 種もみでありますが、種もみは從来災害等によりまして自家用のもみで來年の作付ができないというような事態の発生いたしました際は、政府で買上げましたものの中からこれを供給いたしまして間に合わしたのであります。本年度災害につきましても、それぞれ災害地区の被害状況、需要の数量等をとりまとめまして、そういう方面に供給をしてまいるつもりに考えております。
  34. 井上良次

    井上委員長 そうしますとこの際事前割当に対する補正の問題、それから被害農家の飯米が不足いたしますので、これに対する加配の問題、これらの処置を一應伺つた上で御質問願いたいと思います。
  35. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 長官がまいりまして詳しいお話を申し上げるべきでありますが、ちようどけさほど來一つは増配の関係ともう一つはただいま委員長からお話のありました補正の問題等のために、いろいろ取込んでおりまして、ただいままでお伺いできないのでまことに申訳ないと思つております。とりあえずただいままで特に被害関係につきましてとりました措置について申し上げますと、被害農家の食糧の補給の問題でありますが、特に今回の台風関係被害につきましては、一部の地区におきまして非常に被害が激甚でありまして、保有米の全部を流失するというような事態も発生いたしておりますので、とりあえず應急措置といたしまして、罹災農家あるいは一般罹災者の主食の補給はいたしたのであります。  それから災害復旧につきましても、應急的な工事のために緊急に食糧の手配をいたす必要がありましたような場合におきましては、これらにつきましも手配をいたしたのでありまして、ただいままで手配をいたしました数量は岩手、宮城、長崎佐賀の四縣につきまして六千五百石程度手配をいたしております。これはすでに現物の手配をいたしたものであります。  それから鉄道方面被害復旧につきましても六百六十石程度を應急用に出しております。これは縣当局被害状況の報告、連絡に應じまして應急措置として手配をいたしたものでありまして、その後状況の固つてまいりました状態に應じまして、なお必要な手配はするつもりであります。  それから補正の問題でありますが、これは特に主要食糧應急措置法等の関係もありまして、今年の米につきましてはあの法律を文字通り適用していくという建前にはなつておりませんが、その趣旨でやつてまいるということになつておりますので、先般府縣当局から各府縣被害状況をつぶさに聽取りますために、四日間にわたりまして個別に事情を聽取いたしたのであります。その結果によりまして、農林省といたしましてもその状況をとりまとめまして関係方面、特に司令部の天然資源局方面でありますが、具体的に折衝をいたしたのであります。その折衝の結果が意外に手間どりまして、実はまだ今日現在の状況におきまして、決定的にどういう数量をどの程度どういう方法で補正をするというところまでまいつておりませんので、その内容を具体的に実は申し上げかねる状況になつておるのであります。十一日に府縣知事、食糧調整委員を集めまして、補正の会議をやる予定でおつたのでありますが、向うの方との折衝の状況が手間どつておりますので、この補正の会議の方も両三日延期しなければならない状態になつておりまして、まだ何日に開催をいたすということも確定をいたしておらないのであります。あの法律の趣旨に準じてやります関係上、中央農業調整委員会の方に対しましても、今回の補正の方針を予めお話申し上げる予定をもちまして、本日招集いたしたのでありますが、この方もさような事情で具体的にお話を申し上げることができないような状態になつておるのであります。これは大体固まりました時期におきまして、改めて長官からそのときにお話を申し上げるというようなことにお取計いを願いたいと思つております。
  36. 井上良次

    井上委員長 もう少し、各縣からそれぞれ補正要求がきておるのでありますから、その補正要求額はおよそどのくらいである。政府が大体各地をまわつて見て押えておる数字はどれくらいである。そこで関係方面はどういう意向であるか。こういうことを具体的に話をしてもらわぬと、さつぱり話が進みませんが、まだそこまでできませんか。
  37. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 ちよつとできません。
  38. 井上良次

    井上委員長 そうするともう一應伺つておきたいのですが、あなたの今のお話を聽いておると、主要食糧確保臨時措置法というものは全面的に適用しない。それを事前割当をするときには、この法律が議会を通過するから、当然これでやるんだ。こういうことで割当をしておいて、それを今度いよいよ米がとれて補正をする場合になつてくると、この法律は全面的に通用しないのだ。こういうことになると、どだいややこしいことになつてしまうのですが、その考え方は一体どうです。今のあなたの話を聽くと、どうもこの法律をこの二十三年度産米甘藷には適用しないらしい。しかし先に農政局長と私との話では、準用するという言葉を使つておる。準用するということは、大体この法律がもうすでに実施されておりますから、当然この法律によつてやるべきものであるにかかわらず、ことさらにこの法律をたな上げしておいて、法律のないものとして補正割当をやろうというのは、どうも私どもには政府のやることがさつぱりわからぬのですが、その点ですな。
  39. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 ただいま委員長からお尋ねがあつたのでありますが、ことしの三月一日に米、麦、芋類の事前割当をいたします際に、その要項のところにもこの新らしい法律の趣旨に準じてこの事前割当をやるという言葉を使つておるのであります。どうしてもいろいろな関係であるの法律の文字通りの適用というものが、この二十三年産米につきましてはできなかつたのでありまするが、今回の補正につきましても、あの法律の字句通りにこれを実施するということが、いろいろな関係で困難な状況にありますので、一應二十三年産米につきましては、あの趣旨に準じてやるということでやらしていただきまして、來年度の二十四年産米から、文字通りにあれでやつていくということで御了解を願いたいと思うのであります。
  40. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 この問題は大切な問題でありまして、過般來私は農村を見て調査してまいりましたが、せつかく第二國会におきまして、食糧確保臨時措置法ができております。われわれはこの法律の適用によつて農民が安心して増産と供出の責任を果せるものだと、こう考えておつたのでありますが、その法律が通過してすでに施行されておるにかかわらず、どうも旧態依然といたしまして、官僚の天降り一点張りでやつておる。しかもこの二十三年度の米はもとより二十四年度における春の麦の生産に対しましても、過大なる割当を強要するというような形にあるのでありますが、かようなことでは國会の存在をわれわれは疑うというような地方民の強硬な声もあるわけであります。過般來私は徳島縣うんか被害、あるいは塩害等々によりまして、それらの補正をいち早くお頼みしておかなければならぬというような考えのもとに、縣知事その他の一行のくることが遅いということは、十一日において補正が決定して、その以後におけるものは認めないようなことを報告受けておりましたが、とりあえず食管の方へまいり、その主任の事務責任者に会つたのでありますが、中國、四國なんかは災害なんかないというような、一種嘲笑をもつたような態度をもちまして迎えられたということは、はなはだ不愉快千万である。私は個人的なことはわかりませんけれども、かように農民の生殺與奪の権はおれにあるのだと言わんばかりのこの横暴なる態度は、今日日本全國の農民がすべてこれらの連中によつて飯米の確保もできず、ずいぶんと長年の間苦しんできておるものと私は考えるものであります。現在徳島縣におきましても麦の強権発動が行われてきております。今ごろ全國的に麦の強権発動が行われておるということがそう各所にあるということを聞いておらないのでありますが、それらが地震沈下によるとか、不可抗力による災害によるところの減收であるということが明らかであるにかかわらず、これらの補正の途を講ぜずいたしまして、法の適用、いわゆる食糧緊急措置令に基く法の適用によつて、いまだに農民を脅かしておるこの事実は、私は默視することができない。せつかくこの法律ができておるにかかわらず、これを適用しないのであつたならば、一体農民がどこに安心して増産と供出の責任を果すことができるかということを考えるのでございまして、私はかかる意味におきまして、補正割当は現在八百万石の要求があると言われております。これは相当責任のある方面からの話でありますが、しかしその八百万石の補正があつて、六千二百万石からそれを引いたわずかに五千四百万石であるというところに、わが國の食糧の需給調整ができぬというような御心配も結構であります。大所高所からして見るところのそういう御心配も結構でありますけれども、しかしながら一方には新聞に傳うるところによりますと、超過供出が多額にここにできてくるだろう、その超過供出量の厖大なる数字を予想する場合に、何らかの対策を講ずるというような立場から、超過供出に対する対策委員会というようなものをこしらえて、資金面からするところの手当をするようなことを聞いております。かようなことは大変豊作を予想せられるところの、災害縣以外の縣におきましては結構でありましようけれども徳島縣のごとく、あるいはその他の災害縣のごとく、年々歳々自分の再生産に必要な保有米すらも確保し得ないこの農民の立場から考えてみますと、これは政府に対しまして大きな不満となつて各種方面に現れざるを得ないと、かように考える次第であります。從つて私はまず次の一点を農政局長にお尋ね申し上げたい。私どもはすでに隣縣におけるところの供出の実態が、縣協におきましてつぶさに調査いたしましたところが、これが約三倍徳島縣の負担が重いということに今実際に数字上に現れております。私はかようないろいろの調査からいたしまして、食糧の確保のために全國に対して土地の管理法を布いてもらいたい。まだまだ世界食糧事情からいたしますと、五年六年の間は食糧の供出制度が続くものであるということが権威ある方面においても取沙汰されておりますので、これ以上長らくの間この供出制度が強行されるというにおいては、農民は安心してやつていけませんので、私は食糧確保の意味における土地管理法を至急に制定してもらいまして、まじめな農民とまじめな縣の救済策を講じていただきたいと考えておるのでありまして、この点につきましてはどういうお考えをもつか。  また加配の問題でありますが、山間部における農民は、同じ生産においても、労力を常に平坦部における農家の倍以上要し、そのほかの副業收入は常にああいう峻嶮なる山において労働いたしており、採草いたすにしても、薪炭の生産にいたしましても、いろいろと山村農民は自己の生活を維持する上におきまして多大な労力を要しまして、そのための食糧は当然必要でありますが、これが普通の場合における農家と同じように、ただ三合一勺でありますが、こういうことによつて食糧上の確保がなされておらない。私はかような山間部の農家に対しては、普通農家と同じように、たとえ供出資格のない農家でありましても、やはり四合の食糧を割当てる、あるいはまたその間において加配をなさしめるということをぜひやつてもらわなければならないし、また一般の零細農家といえども、それらの農村における労働の成績からいたしまして、労働者なみの加配米を必要とする次第でありますが、何だか農民農業以外の仕事に携わることが、遊んで食つていけるような形における樂な仕事においてやつておるがごとく考えられまして、加配米を認めておらないという傾向がありまするが、これに対しましても、私は農民の実態から見て加配米を要求したい、かように考える次第であります。從つて補正の割当はやはりこの法律を無視して、一方的に独断的にやるお考えであるかどうか、これをお尋ね申し上げたい。
  41. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 補正につきまして特に中國、四國あたりをあまり見ておらないというお話がありましたが、これは被害状況をわれわれの方でも調べ、また府縣の方からも仔細の連絡を受けまして、確実につかめたものについては全部これを計上いたしまして先方と交渉をいたしておるのでありまして、特に故意にどこかの地区を除外するというようなことは全然行われておらないのであります。  加配米についてのお尋ねでありまするが、特に林業関係につきましては林区で加配を出しておりまして、その山の作業に現実に從事しておられる方々につきましては、林区の加配米が出ておるはずであります。それで一般配給米と合わせまして毎日の作業をやつていただいておるという実情になつておると思います。
  42. 山添利作

    山添農林事務官 土地管理の問題は、結局供出義務を公平に負担するという意味におきましては事前割当の制度による。その基礎になるものが面積である。結局面積把握を徹底することが必要であるということに、実際問題として帰着すると思うのであります。これは明年度におきましては作報の組織を充実し、町村別のなわ延びとかその他のことを調査いたしまして、供出に用いるための最も正確かつ公定の面積を得たいというので、着々計画いたしております。
  43. 井上良次

    井上委員長 この災害による食糧の補正の問題、あるいはまたその他これに関連する対策は非常に重大でありまして、まだ政府の方でも関係方面との話が十分ついていない現状であるそうでありますから、この問題は農林委員会として後ほど十分政府側とよく打合せをいたしたいというつもりでおりますので、しばらくこの問題は保留しておいてもらつて、この際特に災害地域の所得税の減免の問題、併せて公報に出しております農業課税について、大藏当局として本年度の課税の標準、あるいはこれに関連する諸問題について、政府側としての御意見を承つて、それから皆さんからいろいろ御意見を出してもらいたい。こう考えております。今日大藏省の主税局長を呼んでおりましたが、差支えがあつて出られませんで、特に農村課税の問題で実際の責任をもたれております大藏省の管理第一課長が來ておりますから、管理第一課長から、災害地における所得税の減免問題及び本年度農業課税問題について説明を承ります。
  44. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 まず災害に関しまする所得税の減免の問題でございますが、御承知のように恒久的な減免に関する法律が出ておりまして、一定の事実が発生いたしますれば自動的に減免の規定が発動されるということに相なつております。その災害の場合における租税の減免、徴収猶予等に関する法律によりますれば、農業所得について申し上げますと、まず二通りの考慮が拂われております。その非常に大きな点といたしましては、農業関係に必要といたします固定資産が災害のために減失または毀損いたしました場合には、その資産の損失を必要経費として所得の計算上認めてまいる、こういう方針でございます。御承知のように資産の減失、または毀損によります損失は、通常は必要経費とは見ておらないわけでございますが、災害の場合に限りましてこの損失を必要経費と見てまいる、さような特別の措置を講じてございます。もう一つの問題は、所得金額が零細でありますもの、大体本年は十五万円と記憶いたしておりますが、その以下のものにつきましては、住宅家財等が災害によりまして減失または毀損する、これを行政的に申し上げますと、住宅家財の二分の一以上に被害があつた場合ということに取扱つておりますが、二分の一以上災害がありました場合は、所得金額に應じまして段階を三つにわけまして、二割ないし五割の税を軽減するように相なつております。まず所得の計算上必要経費に資産の損失を見ることによりまして軽減が行われる。さらに一定の所得金額以下のものにつきましては、災害の程度が非常に多い場合におきましては、所得の発生に関係のない住宅、家財の被害の面を二割ないし五割減税することによりまして、この際二割ないし五割軽減する。こういう措置をとることに相なつておるので次第でございます。なお被害状況によりましては、納期になつております税の納税につきましても、納税者の申請によりまして徴收を一定期間猶予する。こういう措置も講じ得ることになつております。この規定は自動的に発動されることになつておりますが、所得の計算上の点、それから減免の点、徴收猶予の点、いずれも申告ないしは申請というような納税者意思表示を前提としておる。かような結果に相なります。大体のところは現在の措置によりまして賄われ得るものと考えておる次第でございますが、実際といたしましてはこの十月が第二期の申告時期でございますので、現在までにすでに判明いたしました災害につきましては、その災害状況をある程度実際に実情を把握いたしまして、第二期の申告の際にある程度の適正なる税額がはじき出されるようなぐわいに仕事をもつてまいりたい。そういうような予定でただいま進行しておりまして、あと災害のためにあまりいろいろな問題を起さないようにという趣旨を地方の税務署に指示をいたしておる次第でございます。災害の減免の関係はさようでございます。  昭和二十三年分の農業所得の課税につきましては、昭和二十二年分の農業所得の課税につきまして幾多の問題が起つておりますことに鑑みまして、本年はできるだけ実情に合う課税をいたしまして、昨年起りましたような問題を繰返さないというような方針で仕事を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。申し上げるまでもなく所得税は申告納税でございまして、納税者の申告が基礎に相なりまして、これが適正に行われますれば、税務署は一向これに干與する必要はない次第でございますが、その申告につきましても、現在の納税者の実情から申しますと、いろいろ税務署の方から、智慧を貸して差上げると申しますか、ある程度いろいろ御援助申し上げた方がいいという実情がうかがわれますので、農家の申告につきましては、ある程度の目安をお示しする。このような意味におきまして大体收穫の状況、あるいは收穫物の價格のきまり方等に應じまして、いろいろお話を進めておる次第でございまして、大体申告によりまして課税がすむ、こういう所得税法本來の建前を押し進めてまいることを期待いたしておりますがなおその申告によりまして不適当と認められます場合は、大体は本年十一月ないし來年の一月にかけまして更正決定の処置をとりまして、所得税額を農家から納めていただくかような方針でただいま仕事を進めております。この申告をいたします際、それから更正決定をいたします際にどのよらな基準によりまして課税の目安を定めるか、これが根本の問題であろうと考えております。この点につきましては農家の收支の実態が戸別ごとについてわかりますればこれが最も適当でございますが、実情は個々の農家の所得を調査することが困難でありますのである目安にある、こういうような從來の方法を一應は踏襲できるつもりでございます。ただしこの目安が非常に機械的でありまして、しかも融通性がない、この点におきましていろいろ各地方におきまして問題が起つております実情に鑑みまして、できるだけ目安の立て方をこまかくいたしまして、しかも精密にするような方針を立てまして、ただいまその方向に從つて努力を続けておるような次第でございます。なおその目安を立てる際におきましては市町村、農業團体の方の意見を拜聽いたしまして、その御支援なりいろいろな御援助によりまして、できるだけ適正と認められるような目安を立てたい。かような方向で進んでいる次第でございます。大体のところは本月の二十日前後の全國的な目安が定められるようにしたいと思いまして、せつかく努力をいたしておる次第でありますが、できるだけ農事関係の事情に精通いたしました官公署方面、それから実際農事に関係しておられる方々の御意見を入れまして、できるだけ適当な目安を立てる、かような方向によりまして一方仕事を進めます同時に、一方は各農家の個々農業経営の実態を、かような農業関係の方々からお集めを願いまして、それによつてできるだけ機械的な、あるいは融通性のないような結果に陷らないように注意する、かような方針をとつておる次第でございます。  なお問題といたしましては、一部の税務関係を離れましたところ委員会のようなものを設けまして、その委員会の調査なり査定によりまして、農業所得の目安を定めるという方向につきまして、いろいろ各方面から御意見がある次第でございますが、この点につきましては農業所得税といいましても、やはり所得税の一環でございますので、農業所得者、つまり農業者が自主的に所得税法に定められました納税義務を果してまいるというのが建前でございますので、民主的な税制というようなことを考えます際に、多数の人がある話合を進めまして課税してまいるということを民主的と考えるのではございませんので、納税者が自己の責任において自己の納税を果してまいる、これが民主的な税制というように考えておりますので、納税者が一日も早く一本立ちになつて、適正な申告あるいは納税ができる、かような点から申しまして、委員会にかけてこれを定めるというような方向は実現することが困難であろうと考えておる次第でございます。その委員会なら委員会の議に付するという代りに、農業関係の非常に御熱心な方、農地関係に非常に精通なさいました方にいろいろ御援助いただきまして、その個別的な方々の御援助によりますところの資料を総合的に利用いたすことによりまして、大体委員会制度として考えられておるような点を結果において実現してまいりたい、かような方向でただいま考えておる次第でございます。大要以上の通りでございます。
  45. 井上良次

    井上委員長 ただいま管理第一課長から農業課税の問題について、大体政府としての態度を一應説明を願つたのでありますが、これについていろいろ質問があろうと思いますから、この農業課税の問題と、さいぜん申しました供出補正の問題を午後一時半から再開いたしてやりますから、これで暫時休憩いたします。     午後零時三十四分休憩      ————◇—————     午後二時十五分開議
  46. 井上良次

    井上委員長 それではこれより午前に引続き農林委員会を再開いたします。  午前中に政府当局から災害、病虫害等の被害による補正の問題についていろいろ御意見がありまして、なおこれに関連して委員から質疑がございました。ところが最後の補正の具体的な内容に至りましては、ほとんど抽象的で何ものも委員会に指示されませんでした。これは委員長から政府当局に伺うのですが全國の各縣の知事及び食糧調整委員を集めて、去月二十七日、八日ごろから月末まで各縣の補正の要求を引いておよその集計された数字は政府にあると思います。また政府みずからこれら被害地に対してそれぞれ係官を派遣し、なお出先の作物報告事務所あるいは食糧事務所等を通して十分その被害の実情についての資料を集められて、縣側が主張される補正の要求と政府側が認められます実際の被害の数字というものとできていなければならぬと思うのであります。でないと、明後日から知事の全國会議を開いて、補正会議を開くということに予定しておりましたのですから、当然その具体的な数字が今日できておらなければならぬ。しかるにそれを今日この國会に発表できないという理由はどこにあるのか。それから関係方面といろいろ交渉するのに、そういう数字をこの際公表することには、いろいろ政治的に問題がこんがらかつて困難であると想像されてかもわかりませんが、しかし事実は事実ではつきりしておりまして、ごまかすことのでき得ない被害の実績を集計したものを、やはり正式な國会の機関で発表することを何で躊躇されるか、なおまた政府は責任をもつて補正をしようというのでありますが、その責任をもつて補正しようという数字は一体どこを押えておるか、この点もやはり明確にしませんというと、実際上補正問題に対する結論は出てきません。もし政府がそういうことでこの際数字を明確にいたしませなければ、委員会といたしましては、すでに審議をし、政府みずから法律を実施しております食糧確保臨時措置法によつて、当然二十三年度産米及び甘藷実收額の相違についての異議申立ができるのであります。何ゆえかと言いますと、政府はさきからいろいろこの法律を全面的に適用しないとか、どうとかいうことを申しておりますが、しかしこの法律は本年の産米及び甘藷には適用しないということが明記してないのであります。明記してない今日、当然この法律は主要農作物である米麦、甘藷、雜穀に適用されるのでありまして、法律が実施されている今日は、当然この法律によつて農民は補正を正式に要求することになつてくると思いますが、それらの関係を政府は一体どうお考えになるか、この点について明確にひとつ御説明を願いたいと思います。  ただいま政府側から補正数量の問題について、関係方面とのいろいろ折衝の関係がありまして、公開の席でこれをまだ発表する時期に至つていないから、あえて数字が必要とあるならば、農林委員だけに発表するという申し出がありましたから、一時この問題を後回しにいたしまして、せつかく本日各災害地の方から本農林委員会に対して陳情その他で見えておりますので、災害問題についての報告を求めまして、これを終つた後に再びこの補正問題にはいることに変更いたしますから、さよう御了承願いたいと思います。そうしないとせつかく傍聽に來られている御方に御迷惑でありますから。  それから小野瀬さん、徳島縣の方の御報告をお願いします。
  47. 小野瀬忠兵衞

    ○小野瀬委員 私は先般本委員会から靜岡並びに徳島の災害調査のために派遣せられました視察團の一員といたしまして、実地に調査いたしました災害状況につきまして御報告申し上げたいと思います。靜岡の問題につきましては、昨日縣御出身の坪井委員から詳細に御報告があつたようでありますから、私は徳島縣災害につきまして御報告申し上げます。時間がありませんのでごく簡單に報告せよということでありますから、詳細な報告書にいろいろ資料等も添付いたしまして提出してございますから、それによつてごらん願いたいと思います。  私ども調査團一行は十一月一日から四日間にわたりまして、縣当局の援助を受け、徳島市、板野、名東、名西、勝浦、那賀の各郡の被害地を実地に調査したのであります。今回の徳島縣におきます被害は大別いたしますと、アイオン台風によります風水害と、病虫害と塩害、この三つに分れるのであります。しかしその被害の甚大にして範囲の廣いことは後ほど参考資料、写眞等でごらんいただけば十分わかると思います。  まず第一に塩害の点でございます。南海の地震によりまして地盤沈下いたしましたのか、それとも潮位に異変を來しましてかかる塩害ができたのか、未だ調査が十分届いていないそうでありますが、いずれにいたしましても、内水よりも潮位が非常に高いために、從來水稻の耕作が可能であつた地域も、本年は堤防を浸透してくる塩水によりましてまつたく耕作不能に陷つたという範囲が非常に大きくなつたのでございます。もちろんこれは年々塩の濃度が濃くなるので、その地域が廣くなるのは当然でございますが、これは單に縣とか郡とか、あるいは一町村の手によつてこの被害を救うことはできないのでありまして、どうしてもこれには農林省ばかりでなく建設省もともどもこの対策を講究していただきまして、一日も早くこの塩害を除いてもらわなければ、農民は安心して翌年の耕作につくことができないと思うのであります。さらに農家は政府の今年度一割増産の線に沿いまして、非常なる熱意をもちまして、縣当局におきましてはどうせとれないだろうから耕作をよした方がいいだろうと言うにも拘わらず、場所によりましては三回に亘りまして香川縣の方から苗を取寄せまして植付を完了いたしましたのに、何回植えましてもそれが皆腐つてしまいまして收穫皆無の状況に立ち至つておるのでございます。庫の塩水の被害は何らか予防の方法でもあるならばとにかく、海水が高まつたのでございますから、一日も早くこの対策を政府当局におかれましてはとられるように熱望いたすのであります。  それから次に風水害でありますが、これは各所に破堤あるいは溢水等ございまして、單に農作物が流失したとかいうばかりでなく、耕地が荒廃したというような所もかなり多いのでございます。また病虫害につきましては縣北から縣南に参りますに從いまして、この害がひどく、場所によりましてはほとんど收穫皆無というような場所も各所に散見せられたのであります。いずれにいたしましてもこの被害はわれわれどもが想像いたしました以上のものでございますので、願わく農林省におかれましても、この塩害、風水害、病害につきましては、一刻も早く現地に出張されまして、その程度を十分に見きわめられ、今回の補正を適正にせられると同時に、善後策を講じていただきたいと考える次第でございます。許されておる時間がまことに短いものでございますから、この程度で私の報告はやめておきますが、詳細は報告書によつてごらん願いたいと思います。
  48. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 私も災害調査團の一員といたしまして、補足的に一言、本農林委員会及び政府当局にお願いを申し上げまして、御報告にかえたいと思うのでございます。詳細は書類によりましてお手元に差上げることになつておりまするが、今回の潮害による塩害、及びうんか等虫害は、未だかつてないその被害が激甚であるのでありまして、石油におきましても、すでに縣は三百五十三キロ、及びDDTが三十トン、その他農薬等を合わせましても莫大なる数字に上つておりますが、これらの中で特にうんかに対しましては、農民の怠慢になる結果と言いましようか、不一効力でないという見地から、農業災害におきましても、これらに対しましてはそれを認めておらないという形でありまするが、このうんかの防除につきましては、石油の手配が早期に行われなかつたということも原因ではありますが、手に入れました農民は一枚のたんぼに六回行いまして、なおかつ絶滅できたい。普通おおむね四回、五回は行われておりまして、一反歩に対する防除費というものは千円ないし二千円に及んでおるという状態でございます。かようなわけで、防除のためには、農民食糧確保という見地から、実に涙ぐましいところの努力をそこにいたしておるということを、お認め願いたい次第でありまして、徳島縣における農民の最小限度の願いと申しますのは、まず再生産に必要な保有米を確保してもらいたい。本年の春の麦の供出が、関係方面の係官も、いろいろ縣の食糧委員会におきまして誤算があつたと言われておりますように、今日種麦すらも供出いたしておるような形であつて、一部農民は種麦の配給を願わなくては、まきつけができないとさえも訴えられておる。かようなわけで、農民もすでに今日におきましては、食糧とする麦が確保できておらぬ。この上さらにこの被害に基きましての補正の割当が順当でなかつたならば、たちまち生活の根拠と言いましようか、保有米の方面におきまして脅威を受けるわけでございますので、格段の御配慮をもちまして、せめて最小限度のこの願いをかなえてやつていただきたい。また高潮等の襲来は、未だかつてない被害でありますので、このところ関係被害農民は、今後われわれはどう食つていつたらよいだろうか、希望を失い、光を失つて途方に暮れておるような状態であります。これらの詳細は國土委員会にも申し上げまして、何分國家的な立場から救済策を講じてほしいという考えでおりまするが、さしずめかような方面におきましても、本農林委員会はそれぞれの関係方面に一層の御努力を願いまして、土地改良その他の方法をもちまして、災害復旧に努めていただきたい、かように思う次第でございます。  なおまた資金関係において、その他各種な面におきましては、昨日の靜岡縣における陳情内容と同じでありますので、申し上げませんが、至急にさような点につきましてのお手配を願いまして、農民が安心し得るところの生活をなし得るように、再生産になお今後とも精進し得るように、その最小限度の願いである保有米の確保に格段の御配慮あらんことを切にお願い申し上げまして、調査の報告にかえる次第でございます。
  49. 井上良次

    井上委員長 この際委員外でありますが、池谷信一君、加藤靜雄君の両君から、災害地を代表して発言をしたいということでありますが、許可して異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 井上良次

    井上委員長 それでは許可をいたしますが、できるだけ簡潔に御発言を願います。
  51. 加藤靜雄

    ○加藤靜雄君 委員外質問をお許し願いたいことにつきましては、感謝申す次第であります。なおこの際、地元を代表いたしまして厚く御礼を申し述べさせていただきたいことは、去る九月十六日のアイオン台風災害以來、本委員会から急遽視察團を派遣くださいまして、特に靜岡縣下のうち、最も被害状況の甚大なる志太郡を初めといたしまして、榛原郡、小笠郡、ないしは靜岡、安部、庵原方面に、つぶさにその被害状況につきまして御視察を賜つたことに対しましては、衷心より厚く御礼申し上げる次第であります。  すでに昨日來、この委員会におきまして、靜岡縣当局並びに農業協同組合の代表及び町村長代表約三十数氏が、本日もここに多数陳情に見えておるのでありますけれども、その際被害状況並びに地元被害農民の要望するところの、決議されましたる諸條項につきましては、詳しく述べられておることと思いますので、私は簡略にそれらの諸点についてこの際述べさせていただきまして、本委員会並びに政府当局のきわめて迅速的確なる対策を講ぜられんことを切に要望してやまない次第であります。  災害状況につきましては、人的被害とか、あるいはまた物的被害の家屋被害、堤防被害、道路の被害、橋梁被害ないしは鉄道被害、港湾、砂防等の施設被害につきましては、これを別にいたしまして、この際農業被害についてのみ申し上げてみますると、田の流失埋沒は二千三百二十反、水稻冠水は七万三千五百七十五反、水稻の白穂化、これは二十二万二千四百六十六反、甘藷の冠水が二万八千二百八十一反、甘藷の流失が一万八千百三十反、蔬菜流失、埋沒、冠水が五千反というような、実に甚大なる被害の実情であるのであります。この結果からいたしまして、わが靜岡縣下、特に志太郡下におきましては、農民各位はただ自失茫然そのなすところを知らないというのがこの際の最も適切な表現であると、私はあえて申し上げたいのであります。從いまして現に今日から農家の経済を、やがて來たるべき農業の再生産を、いかにしてこの際手を打つていくべきかということにつきましては、まつたくそのなすところを知らない実情にあるのでございます。どうか本委員会におきましては、政府当局に対しまして、災害の実情に対処いたしまして特に水稻の事前割当を適正にし、かつ絶大なる助成を急速にしていただきたいということが第一点があります。  次に被害をこうむりましたるわが靜岡縣下における農家に対しましては、農業再生産を可能ならしめるところの食糧を絶対的に確保していただきたいということであります。次に災害地域の農業諸課税につきましては、これを災害に実情に應じまして適正に減免していただきたいということであります。なお地方の配付税等も、この際政治の果敢なる御処置によりまして増額していただきたいということであります。さらにまた今後の農村に対するところの諸問題から見まするならば、特に営農資金関係からいたしまして、農村金融の適正なる処置を打つていただきたいということであります。これに関連いたしまして共済保險金等を、でき得るならば前拂いあるいは内拂いを即時実施していただきたい。さらにまた收穫皆無地の肥料の特配ということがこの際特にお願いしたいのであります。從來無機質の肥料にのみよつてまいりましたところの地味は、今後大いに有機質のものを要望してやまない次第であります。從いまして本委員会におきましては、委員各位は特に政府に対しましても、有機質の肥料を、でき得るならば災害農家に対しまして無償をもつて配給せられるように、この際御努力願いたいという点であります。さらにまた明年度の種子の点でありまするけれども、これらにつきましてもひとつ根本的なる対策をお立て願いたい、かように要望する次第であります。最後に農村に対する——これは大きく申しますならばわが日本農業経営上の問題となるかもしれませんけれども、特にわが靜岡縣下におけるところの、さらにまたわが志太郡下の災害状況の実情に鑑みまして、願わくば恒久対策を根本的に樹立していただきたいという点であります。というのは、この際土地改良のためのいわゆる水利土木事業を速やかに國費をもつて実施していただきたい。もしこのままの状況に政府が荏苒これ時を過しておるとするならば、思想の面からいたしましても、相当農民諸君は悪化の一路をたどるであろうということを、あえてこの際私は皆様にお聽き取り願いたいのであります。またこの際ここに見えておりまするところの災害農民代表の各位は、いろいろ要望事項がありましようけれども、要約いたしまして以上の諸点をどうか委員各位は特におくみとりくださいまして、本委員会において愼重に御審議を賜り、そうして政府をして速やかに以上の要望事項に対しまして適切なる方策を講ぜられんことをお願いしまして、私の委員外の発言を終る次第であります。
  52. 井上良次

    井上委員長 次に池谷君。
  53. 池谷信一

    ○池谷信一君 ただいま加藤君から詳細にわたりましての御説明がありましたので、私はごく簡略に申し上げたいと思うのであります。先般のアイオン台風によりまして、靜岡縣下全体にわたる農産物に対する被害はいかに甚大であるかということは、当委員会からもすでに親しく委員を御派遣になり、あるいはる次にわたるところの陳情團の陳情等によりまして、当委員会におかれましても十分なる御認識をもつてくださることと思うのであります。從いましてくどくどしく申し上げる必要はないのであります。あの被害と申しますものは、まつたく言語に絶する未曽有の、かつ稀有な被害でありまして、縣下農民の半歳にわたる粒々たる苦心の結晶が、わずか一瞬にしてまつたく白穂と化し、收穫皆無の状態に陷つているのであります。由來靜岡縣は氣候温暖である関係からいたしまして、特に晩生種に力を注いでおつたのでありますが、さらに政府の一割増産の声に應じて、縣下、特に志太郡とか榛原郡の縣下中枢における農民諸君は、早稻種においては八割、九割あるいは百パーセント收穫絶無の状態に陷つているのでありまして、農民はただ茫然自失と申しますか、むしろ自暴自棄の状態に陷つているような現状でありまして、今後政府あるいは農林委員会等の十分な御理解、御援助がないならば、とうてい今後立ち上がることはでき得ないのでありまして、今後皆さん方の十分な御理解と御援助を切にお願い申し上げる次第であります。  詳しい要望事項については、ただいま加藤君からも大体申しているのでありますから、重複は避けたいと思いますが、ただ一言附加いたしたいと思いますのは、今後本縣下においてはほとんど供出というものは皆無となるのじやないかと思うのであります。從つてこれまで供出に対してなされておりましたあの報奨物資のようなものは獲得できないのではないかと憂えられるのであります。しかしながら作業衣とか地下たびというような農業生産にどうしても必要な物資は、何らかの方法でやはり農民諸君に確保さしてやらなければならぬと思うのであります。この点については皆さん方の十分なる御理解を得たいと思うのであります。それから加藤君も申しておりましたが、今後の土地改良の問題であります。現在米作地帶においてはほとんど收入という收入はありませんので、今後あすからの生活にすら困るような状態に陷るのではないかと思うのであります。從つて今後土地改良等に力を注いでいただきまして、これを金額國庫負担等の方法によつていただきますならば、今後における農村の土地改良の目的達成と同時に、現下喫緊の問題であるところの農民諸君の生活資金獲得の上にまことに有効ではないかと思うのでありまして、かような方面に対しても皆さん方の十分な御協力を切にお願い申し上げたいと思うのであります。  ただいま私及び加藤君から申し上げました要望事項に対しまして、当委員会の皆さんの十分な御理解によりまして、この縣下農民諸君の切なる要望を悉く達せられるように、十分なる御協力を切にお願い申し上げる次第であります。
  54. 井上良次

    井上委員長 ただいま徳島縣並びに靜岡縣被害状況についてそれぞれ報告があり、御説明がございました。農林委員会といたしましては、これら災害に対する対策の重要性を考えまして、特に農林委員会を招集いたしまして、昨日來これら災害に対する対策を檢討を加えまして、大体皆さん方からそれぞれ要求されております問題について、政府において誤らない、かつ迅速な処置をとるように要請をいたしているようなわけでございます。食糧の補正の問題につきましては、目下政府と関係方面とでそれぞれ交渉を進めておりますが、その具体的な内容がまだ明確になりませんので、さらに委員会といたしましては一層具体的に掘下げて、政府当局の意向を質したいというつもりでおります。食糧加配の問題につきましては、その必要度合いに應じてそれぞれ増配をし、加配をすることになつているそうでありますから、必要な向きは必要な方法をおとり願いたいと思います。税の減免の問題につきましては法的に当然適用されることになつておりますので、その手続をおとり願いたいと思います。金融処置の問題につきましては農業手形なり、あるいはまたその他の方法を講じまして、できるだけ迅速に手配を講じるように、政府の方でもいろいろ手を打つているそうであります。  なお共済保險金の前拂いの問題でございますが、前拂いというより保險金を早く拂うということを前提といたしまして、もし事務手続その他でこれが遅れます場合はある程度予定金額を定めまして、予定金額を担保にして金融をはかる、こういう途を農林中央金庫の方でとるという話ですから、さよう御承知願いたいと思います。  なお肥料の増配の問題がございますが、肥料の増配につきましては、政府当局としては現在の耕地にたとえば麦なら麦を今度まきつけるから、麦に計画割当をいたしました以上のものを割当てるわけにはいかぬ。ただこの減收による農家の飯米その他の非常な窮屈な現状から少しでも代作をいたしまして、それだけの面積をよけいつくるというような場合は、その分について肥料を特配しよう、こういう話らしいのです。  種子の問題につきましては、御要求に合うように十分実情をよく調べまして対策をそれぞれ講じるそうでありますからさよう御了承願いたいと思います。  なお根本的な土地改良とか農業水利とか耕地復旧の問題は、当然これは第三國会に新しい一つの追加予算として出てまいりましようと思いますから、その機会に十分論議をいたしまして、皆さん方の被害によるこの非常な損失と、それから再生産をできるだけ早く行い得る態勢をつくるように、十分政府当局と委員会で話をいたしまして、皆さん方の御期待に副うように努力をいたしたいと思いますから、さよう御了承願いたいと思います。
  55. 田中織之進

    ○田中(織)委員 靜岡縣災害の問題については、小野瀬調査班長の方から詳しい報告があつたことと思うのでありますが、私も委員長の了解を得まして途中から調査に加つた一人でありまして、その被害のわれわれの想像以上に莫大かつ深刻であることに驚いた一人でありますが、さしあたりの問題といたしまして、ただいま委員長からの御報告によりますと、補正の問題について関係方面と折衝中ということでございますが、この点については農林事務当局といたしましてはしつかりとした態度をもつてつていただきたいことを、実地を調査した者としてこの際強く要望する次第であります。詳細なることは先ほど委員外で同僚の加藤、池谷両君からも報告がありましたので私は避けますが、供出減免はもちろん、飯米の配給を受けなければならないというような農家が、殊に小笠、あるいは榛原、志太郡等に相当多数現われておる実状にあるのでありまして、その点からも特に関係方面との折衝にあたりまして、食糧管理局といたしましては十分な決意のもとに当つていただかないことには、重大な問題を惹起するおそれのあることをこの際あらかじめ申し上げておくのであります。  なおこのアイオン台風被害につきましては、私ども和歌山縣にも潮岬から東部に当りまして、相当廣大な被害を受けておるのであります。和歌山縣といたしましては、先ほど委員長から御報告のあつたことと思いますけれども、この九月十六日のアイオン台風に約二十日前の八月二十六日夜の、わずか二三時間の短時間の豪雨によりまして、有田川を中心といたしまして、非常な水害を受けまして、この両者を合せますならば、減收六万石を越える状態であります。靜岡縣等の四十万石あるいは五十万石という減收に比べまするならば、六万石は微々たる数字のように聞えますけれども、御承知のように和歌山縣のように耕地面積の少い、全体の生産力がわずかに五十万石足るや足らずやというところにおいては、減收率は非常に大きなパーセンテージを占めるのでありまして、この点については、先般井上農林課長が実地を調査なさいまして、その節食糧管理局の野崎調査課長も親しく実地に調査していただいておるのであります。この点につきましても当然和歌山縣から補正の要求をいたしておるのでありますが、こうしたわずか五反、六反の作付反別のうち、五反もほとんど全滅に近い農家を多数和歌山縣においても出しておるのでありまして、これらの農家に依然として補正がなされないことになりますならば、重大なる事態を惹起するおそれをわれわれひしひしと感じておるのであります。その点については事務局におかれましても、十分の資料をもつて折衝しておることと思うのでありますが、一段の御努力を願いたいのであります。  なお、管理局の総務部長がお見えになつておるので、この補正の問題に関連して一点だけお伺いしておきたいのでありますが、補正割当を災害につきましてはある程度認めるという方針はとつておられるようでございますが、農家といたしましては、供出によりましてある程度の現金收入を期待しておつたものが、供出がほとんどできないような状態にまで災害を受けたということになりますと、現金收入が全然なくなるわけであります。そういう関係から、辛らじて飯米の半分でも残し得たものに対して、その中のさらに半分でも供出をいたしまして、いくらかでも現金收入を確保したいということで、農民が懸命の努力を拂つておる実情であります。超過供出の問題の取扱いにあたりまして、超過供出というのはあくまで当該府縣、当該農家に対する事前割当の数字をオーヴアーしたものでなければ超過供出の割当をしないのでありますが、それとも補正した割当を超えて出た場合にただちに超過供出をして取扱いをするか。私はこの点は特に現金收入が皆無の状態にある農家として、マル公の三倍という超過供出の代金を、自分の作付を一箇月先の食糧の心配も顧みずとにかく現金をもたなければその月の生活が維持できないというような農家として、そういうことを眞劍に考えておる実情からお伺いしておきたいのでありますが、その点については補正割当が決定いたしまして、それを超過した分については、当然超過供出としての取扱いがなされるものがある。私はその取扱いをされることを強く要求したいのでありますが、その点についてただ一点でありますが、総務部長からお答えを願えれば幸いだと思うのであります。
  56. 山根東明

    ○山根農林事務官 ただいまの御質問にお答えいたします。その問題は実はあの制度がきまりました当初から問題であつたわけでありますが、結論は事前割当の数字があくまで基準になる、三倍の價格はその事前割当の数字を超過した場合に初めて拂うということになつておるのであります。理論としましてはお話のように、まことにけなげなお氣持から、自分の飯米を切つてでも國の食糧事情に貢献しよう、あるいはさらにお話のように、いかにも現金收入がなくなつてそれを一つとりたいという氣持からやむにやまれずそういう超過供出をしようというような事情もあるかと思いますけれども、とにかく災害で補正いたします補正は、一應これ以上供出が不可能であるという線にまで補正するわけでありまして、それ以上に超過供出が出るという道理はないじやないかというような一つの理屈もあるわけであります。そこで田中委員長からお話がありましたように、非常に窮迫して何とかしてでも現金收入を得たいとそういうような事情に対しましては、この超過供出の代金という面以外の面で、これは農林省として何らか考えなければならぬ問題だと思いますけれども、超過供出の代金をそこまで適用して、三倍でお支拂いするということは実はできないものとお考え願いたいと思います。
  57. 井上良次

    井上委員長 大体以上で災害に対する各地の報告は一まず終ることにいたしておきます。当然問題はこれに基きます対策の中で、一番重要な補正の問題が残つておりますのでこの問題をさらに檢討お加えたいと考えます。それはさいぜん申しました通り、委員外の方はしばらくご退場を願います。
  58. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 農家が自分の保有米まではずして出すということは、これは一部の縣にあつたかも知れませんが、田中君の意見とは私は反対です。おそらく保有米まで出して次には配給を受けてするというような農民はほとんどあるまい、かように私は考えておるのであります。私は食糧確保臨時措置法による第二條が適用されるかどうか。この第二條においては農民が保有食糧食糧の優先確保を規定いたしておりますが、これさえはつきりしてくれるのでありましたならば私ども農民が安心してやれる、從來供出第一主義であつたために、裸供出をいたしてたいへん苦しい生活をやつてきておりますが、この点に対しまして、補正というような段階における中心でありますので御見解を承りたいと思います。
  59. 山根東明

    ○山根農林事務官 事前割当でありますので、あらかじめ作付前の計画に基いて農業計画を指示するわけであります。その場合に見込みます生産数量から所定の保有量を差引いたものを供出量として指示するわけであります。事前割当でありますのでその後作付が始まり成育いたしまして、收穫眞近になりますと、その間にいろいろな災害等が起り得るわけでありますので、御承知のように收穫直前にこれの補正をやつておるわけでありますが、非常に災害が起きたために保有と供出とが両立しなくなる場合に、どういう方針でこれを措置するかという意見であろうと私は思うのでありますが、その点になりますと、これは今後もそうだと思いますが、從來の割当においてもその都度定めます割当要綱によりまして、災害その他眞にやむを得ない事由によつて保有を切るような事態が起きた場合には、これは供出量を補正する、こういう方針をとつておるのであります。その意味ではきわめて惰農がおりまして、割当をまつたく言いつけを守らないで予定の数量をあげ得なかつたというような場合を除きまして、災害その他眞にやむを得ない事由によつて保有を食い込むというような場合は、これは供出量を補正する、こういう意味でありますから、御発言の保有優先という言葉ももしそういう意味でありますならば、そういうことでその原則は今後も続けていきたいと考えております。
  60. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 これはきわめて重要な問題でありまして、特に第二國会におけるわれわれ小委員は、この方面に中心をおきまして修正をいたしております。從來においてもお説の通りに行われておりますが、しかし不可抗力災害といえども常にその基礎反別の確保が正しく行われておらないということ、また一反歩に対するところの地方に基かないところの割当というものは、過大なる割当の結果保有米が確保し得ないというところのこの永年の脅威をとり除くがために、特に保有米の優先確保ということを規定いたしております。以上のような立場からいたしましては政府は從來常に割当を完了しないものはこれを悪農視しまして、食糧緊急措置令に基く発動を行つてまいりましたが、それに対して不合理であるというような見地からさような法律は決定いたしておる。從來行われておることと今度の食糧確保臨時措置法における第二條の規定ということは、その根本において大きな違いがありますので、これはあくまでも調査しまして縣の食料調整委員会においての議決権を得まして認めた場合においては、政府はおのずからそれに対しまして食糧優先確保の原則をもたなくてはならぬ、かように考えるわけであります。今の御説でありましたなれば從來も行つてきており、また現在も將來も同じだというふうに、法の根本立案精神というものが変つておるにかかわらず、その運用において不徹底であるように考えておりますが、これをもつと鮮明に御説明願いたいと思います。
  61. 山根東明

    ○山根農林事務官 私がただいま申し上げましたことは不十分であつたかと思いますが、実は新しい法律では保有数量を農業計画において命じ得るような規則になつているわけであります。実は從來とても私が先ほど申しましたような方針はとつておつたわけでありますが、事実問題としてずいぶん供出がきつい、言いかえれば生産を相当過大に見積もる、あるいはない面積もおつかぶせるような事実があつたために、実際問題としては、私先ほどきれいなことを申しましたが、すべてそういつているとは思つていないわけでありますが、今後は法律でもそういうことになつておりますし、さらに先ほどちよつと委員長からもお話がありましたが、異議の申立でありますとか、その他いろいろ民主的な方法で割当がなされていくという建前になつておりますので、その点は私が申し上げることが今後はやりようによつてはその理想に反しない方法で進んでいき得ると考えております。
  62. 井上良次

    井上委員長 委員外の方は退場願います。速記を止めてください。     〔速記中止〕
  63. 井上良次

    井上委員長 さいぜんからの懇談の中において、政府の補正の内容について大体承ることができました。政府は、各生産縣からの要望による補正量を大体正直に受取るわけにはまいらない、なおかつ食糧事務所その他の報告にもなかなか信をおけない、よつて政府は一定のここに補正の基本的数字をもちまして、それによつて各縣のいろいろな総合的調査を基礎にして補正の額を決定するということらしいのです。このやり方はあくまで天降り的な一方的やり方であつて、われわれが第二國会において成立通過せしめました食糧確保臨時措置法の精神とまつたく相反するのであります。この食糧確保臨時措置法は、御存じの通りすでに実施されております。この法律の第二條には「「主要食糧農産物とは、」米、大麦、はだか麦、小麦、甘しよ、馬鈴しよ及び雜穀をいう。」とはつきりこれを適用する範囲をきめてあります。しかるにこの法律をこの二十三年度の産米及び甘藷、雜穀等に適用せずにこれを準用する、こういう解釈をもつておるそうでありますが、もしそういうことでありますならば、それは立法國として考えられない考え方であつて、もし二十三年度産米及び甘藷、雜穀等にこの法律を適用しないということならば、当然この法律のどこかにそのことを明文化しておかなければならぬのであります。しかるにそれを明文化せずに、單に政府が一方的に、法律が実施されておるにかかわらず、これをこれに適用しないということは、國民としては納得するわけにはいきませんし、また國会でわれわれがこの法律案を審議し通過させた責任上、そう簡單にわれわれはこの問題を取扱うわけにはまいりませんから、その点に対する明確な御答弁をこの際承つておきたいと思います。
  64. 山根東明

    ○山根農林事務官 このたびの米、甘藷の補正をこの法律に基いた補正であるとするかどうかという点でありますが、実はこの前麦の補正割当のときも、たまたまその直前に法律がすでに施行になつておりましたので、同じことが問題になつたわけであります。私どもとしては、部内で実はその点についての研究をいたしたわけでありますが、結論としましては、法律に基く補正というものではないだろうという結論を得たわけであります。但し御承知のように、この事前割当の当初の要綱にも、食糧確保臨時措置法の趣旨に準じて事前割当を行うということになつておりますので、その精神はあくまで貫いてまいりたい考えでありまして、從いまして補正にあたりまして、形式上はそういうことでこの法律によらないものであるとしましても、事実上の扱いとしましては、たとえて申しますと、本日も農業調整中央審議会、これは新しい法律で始めてできておるのでありますが、これの議を経てと書いてあつたと思いますが、それにかけて農業計画の補正もする建前になつております。今度の補正が法律によらないものであるからということでそれを省略することはいたしませんで、本日も午前中審議会を開いておるわけであります。あくまで趣旨としましては、法律がすでに施行になつておりますので、いろいろな手続その他この趣旨に準じたやり方をやつていきたいと、かように考えております。
  65. 井上良次

    井上委員長 そうしますと、もし政府との割当補正についての話が生産縣においてつかなかつた場合、生産縣は当然この法律によつて政府に異議申立をしてきた場合、政府はどういう処置をされますか。
  66. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 先ほど私が申し上げておきましたことと多少関連いたしますので、補足して申し上げたいと思います。この食糧生産確保臨時措置法の適用は、生産数量及び供出数量を割り当てますところから、それが收穫をされまして、供出を完了するという、この一連の作付から供出完了までの全体を一貫して適用されなければならない建前になつております。今年の三月に供出割当をいたします際には、まだこの法律が國会をもちろん通過もいたしておりませんし、それから大体の構想——アイデアがまとまつておるという段階でありましたので、その趣旨を準用するということにいたしたわけであります。從つて二十三年度産米の割当というものは、食糧管理法第三條に基きます供出割当だけがいわゆる法律的な意味をもつた割当になつておりまして、生産数量の割当というものは法律的には意味をもつておらぬのであります。一應その農家に目標を與えたというだけでありまして、この法律はそのまま適用されますと、これはその確保措置法に基く生産割当といたしまして、生産割当と供出数量の割当と両方法律的な意義をもつてくるのでありまして、今年の米につきましては、食管法第三條の供出割当だけが農家に義務づけられておる割当ということになるのであります。從いましてこの補正の方の関係も、その趣旨はこの法律を準用いたしますが、法的にはこれを嚴格にあてはめます基礎がありませんので、この法律を文字通り適用するという形にいたしておらないのであります。ただ実際問題としては、できる限りこれを尊重していくという建前で、現実に今回の補正数量を府縣におろしていきますと、予測せざる、はかり知ることのできないようなエラーがあつたということになりますれば、これはまた更に調整するということも現実問題をしては起り得る問題であるという思うのであります。その点はさして実際問題として大きな不都合を生ずるものではないというふうにわれわれは考えております。
  67. 永井勝次郎

    ○永井委員 この食糧確保臨時措置法が今年の二十三年度産米に対して有効でないという法律的根拠を、法律的に明確に解明していただきたい。
  68. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 この三月一日に事前割当をいたします際には、まだこの法律は正式に公布されておらないのであります。この法律に基きましての事前割当をいたします根拠というものはなかつたわけであります。從いましてこの二十三年度産米の割当につきましては、中央農業調整審議会の議決ももちろん経ておりませんし、全然この法律の手続を踏んでおらないのでありまして、從來割当てられましたと同様の方法によつて割当したのであります。この法律に基く生産割当とこれをみなすことはできないのであります。
  69. 永井勝次郎

    ○永井委員 割当は今年の春やつたのでありますから、この法律を適用することはできません。しかし割当以後における補正であるとか、農家の保有量であるとか、そういういろいろな措置については、今後この法律の適用範囲において可能な行為であります。それらの行為は可能であります。この法律が有効に実施されておるにかかわらず、この法律を無視して、事前割当前と同様な條件のもとにおいてこれを実施しようという、その行政的な解釈は何に基くのか、この法律を事後の処理に対して適用しないで今年の春の條件のままに終始しようとするその行政的の根拠を、一つ法律的に解明していただきたいと思います。
  70. 須賀賢二

    ○須賀農林事務官 これは同じことを繰返して申し上げるようでありますが、この法律によりまして補正をいたすということになりますと、この元の割当がこの法律によつておらなければいけないのであります。元の割当がこの法律のよつておりません以上は、この法律によつて補正をいたす方法がないのであります。從いまして、これと同様にやるということになりますれば、この法律の趣旨を準用してやるということになりますので、これはもうわれわれの法律解釈といたしましては、それ以上に解釈できませんから、この点につきましてはこれ以上お答えはいたしません。
  71. 井上良次

    井上委員長 須賀さん、あなたの考え方委員長としてはなはだ腑に落ちぬところがある。事前割当というときには食糧管理法第三條の規定によつてやつたんだ、こう言う。ところが食糧管理法第三條には、事前割当をやるべき法律的根拠はないのです。そんなものはないのです。事前割当を三月一日にやつたときには、現在の食糧確保臨時措置法というものを議会に提出して、これが通過されることになろうから、政府はこの法律の趣旨に副つて事前割当をやるということを、はつきり割当会議で言明しておる。しかるにあなたの説明を聽くと、この法律が事前割当によつてやられていないから、当然この補正をやるわけにはいかぬと言うが、しかしあなたの言う理論はまつたく矛盾撞着しておる。食糧管理法第三條によると、事前割当という法的根拠はないです。しかもこの割当をやつたときは、この法律が秋までには当然通過し、実施されるということを前提にしてこの割当をされております。それをごじやごじやにしてしまつて、都合のよいときにはこつちの方、都合の悪いときにはこつちの方でやらぬいうことにされたのでは困る。
  72. 守田道輔

    守田委員 今の政府委員の説明は矛盾撞着もはなはだしい、その点は大体食糧確保臨時措置法が通過したその後においての食糧管理法に基く割当というよりも、むしろその数量の一應目当というものを指示した。こういうふうに言われるが、その間に、いわゆる措置法が通過した際に、即時その法律に基いて三月か、四月に割当てたものをすぐに訂正しなければならない。それを今日まで放つておいて、そして初めの食糧管理法に基いたものだから、それに基いて食糧確保臨時措置法はこれを適用しないというのは、実際これは怠慢きわまるものであつて、法律を無視したものである。要するに即時これをさかのぼつて、全國的に反別あるいは地方というものを調査して調整しなければならない義務がある。政府は農民に対してその責任を感じなければならない。その責任において行われなければならないのに、自分らが勝手に怠慢きわまることをやつていて、今法律は適用しないというような、そんなばかなことはない。その点はつきりしておいていただきたい。
  73. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 大体事前割当の考え方ということは、昨年の七月の第一國会におきまして、農林委員会において、農業生産調整法として政府の方から原案を出されて審議いたしたのであります。こういうような当初の行き方が、はしなくも第一國会におきましては審議未了になつたということであります。予算上の措置もすでにできておるのにかかわらず、残念ながらこれが通らなかつた。政府は日本食糧確保のために窮余の一策としてこの食糧管理法第三條を適用したとわれわれは了解しておる。なぜかと申しますると、食糧管理法施行以來食糧の事前割当は全然やつておりません。しかるにそれを用いたということははなはだ変則的な立場でありまして、そうしてわれわれはこの了解に苦しんでおつたのでありますが、諸般の情勢からやむを得ないものと了承しておつたのであります。ところがこの事前割当によりまして進行中に、この農業生産調整法ができたということになつておりまして、米及び甘藷といつたものについては新しい法律の適用を受ける。いわゆる変則的な法の適用から一日も早く脱却するための、救済的な立場における緊急な食糧確保臨時措置法であるということを考えてみた場合には、即時これを適用いたしまして、從來の非を改めていくといういき方をなされなくちやならないのであるというのにかかわらず、三月において割当をやつたがために、從つてこの食糧管理法第三條に基づいてやはり補正をやるということは、これはまつたく立法の精神を蹂躙したところの行いであると考えるのであります。私は改めてお伺いいたしまするが、かような判断をなしたということは、上司の協議においてなされたものであるが、農林大臣のいわゆる命令によりやつたものであるか。またあなた方の考えによつてなされたものであるか。これをはつきりしていただくことは、今後における本農林委員会がこの法の適用におけるところの根本を糾明する上におきまして最も大切だと考えますので、まず最初にこの一点をお伺いしたいと思うのであります。
  74. 山根東明

    ○山根農林事務官 ただいま守田委員並びに成瀬委員から御質問の点は、先ほど來私なり各課長からくどくどお話をいたしました通りでありまして、実は私どもの解釈としては、事前割当は食管法でやつたもので、ただいま委員長からは食管法には事前割当をやる規定がないじやないかというお話でありますが、これは私どもは食管法の第三條の規定によつて事前割当もできるという解釈をとつておるのです。まあ、それはいずれにしましても、私ども部内の解釈でありまして、いろいろ從來の御発言もありましたし、私どもとしてはさらに場合によりましたら法制局なりその他と法律の解釈についての相談をいたした上で、もし私どもの解釈が間違つておつたとしたら訂正したいと考えております。ただ今御質問の中に、上の方からそういう話があつてそういう解釈をしたのか、そういうお話がありましたが、これはそうではないのでありまして、先ほど申しましたように、この前の麦の補正のとき、実は同じようなことが私どもの部内で問題になりまして、正式は農林省の省議等できめたというところまではいつておりませんが、食管部内として、あるいは農政局とも相談してそういうふうに解釈した。こういうことになつております。
  75. 永井勝次郎

    ○永井委員 この問題は法律上の問題として考えていかなければならないので、議会は立法の府であるとともに、行政官に対する監督の機関でもありますので、この問題を議会自身において、法律を適用するのが妥当であるか、準用するのが妥当であるかという問題を解決しなければならぬと思います。場所によつては最高裁判所において、この問題の訴訟を提起して問題を解決するというような法律的な措置によつて、適法にこの問題をあくまでも徹底してやつていただきたい。
  76. 井上良次

    井上委員長 この問題はさいぜん私から申し上げた通り、当然今度の補正割当の問題をめぐりまして、生産縣と政府側との間でなかなか容易に話がつかないじやないか。その場合当然この法律により請求をされた場合、これを適用しないというようなことになると、非常にそこに問題が起つてまいりますので、一應國会といたしましては、今永井委員よりの発言の通り、この問題は非常に重大な問題でありますので、國会といたしましても、これに対して十分の調査をいたしまして、われわれの解釈からいくならば、当然これを適用すべきであるという解釈をもつております、しかし食管内部においては、適用する必要はないという解釈にいたしておりますから、その点に対して、これは具体的な問題として至急に解決しなければならぬ問題でありますので、それ相当の手続をとりまして、十分処置を講じたいと思いますから、この程度でこの問題は一つお納めを願いたいと思います。  続きまして農業課税の問題で、非常に遅くなりましたが、もうしばらく御辛抱を願いたいと思います。農業課税の問題で、さいぜん大藏当局からの御説明によりますと、農業所得の申告に基いて來る十一月から明年の一月までの間に更正決定をいたすということが明確にされたのでありますので、これら農業課税の特に農業所得の問題について、それぞれ二、三委員長として質疑をしておきたいと思います。二十三年度の課税の標準率を一体どの程度に政府は押えておりますか、具体的に説明できませんか。
  77. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 ただいまお尋ねのありました農業所得税を計算する場合の大体の目安のついて具体案を示せというお尋ねでございましたが、ただいまのところ計数的に具体的に申し上げる段階に至つておりません。大体の構想としては、御承知のように田畑については一段当り所得何ほどというような計算をいたすのが慣例でございまして、本年もその方法を踏襲することは先刻申し上げた通りでございますが、その標準率は一町村一本というような画一的な彈力性のないものではなくて、一町村数本建にするという方法をただいま考えております。内容としては、その標準率は原則としてマル公計算でまいります。昨年度においては、都市近郊の畑等について多少実際價格を織込んだ標準を作成した例もございますが、本年は原則としてマル公標準で作成する。從いまして收穫物の價格が大体私どもで想像がつきますし、必要経費の程度も大体想像がつきますので、それから計算する所得標準率の大体のあり方も、おそらく見当がつくという程度に考えている次第でございます。但し昨年度における必要経費の見方が多少きついという点が世上で非常に問題になりまして、この点についてはその後いろいろな角度から檢討した結果、本年はマル公計算という原則を貫きます場合に、必要経費の比重の見方、あるいは傭入に対する見方という点に、多少例外を廣く取入れるというような考え方をして、この点で相当の改善をいたしたい、かような考え方で計算する予定を立てております。先刻申し上げましたように、大体本月の二十日前後を一期として、各税務署においてある程度の計算をしたものを市町村あるいは農業團体等を通じて御相談申し上げるというような取運びにいたしている次第でございまして、地方的にその点を一々御檢討願うというような考えで進んでいる次第でございます。
  78. 井上良次

    井上委員長 その標準率の策定にあたつて、本年はマル公計算の標準でいく、これは当然なことであります。ところがマル公を現に下まわつた取引が盛んに、最近金融その他の逼迫から行われているが、これを一体どう見られるか。たとえば蔬菜類の問題あるいは薪炭、木材等がございますが、これらはほとんどマル公を下まわつて取引されております。その場合これをどう押えていこうとされるかということを伺いたいと思います。
  79. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 ただいまのお尋ねごもつともなお尋ねでございまして、マル公を割つた場合においては、もちろん実際の取引高によつて計算いたす考えであります。蔬菜その他についてそういう御指摘の通りの事実が現われておりまして、昨年は非常に野菜畑等の所得が多ございましたが、今年は野菜畑等につきましては、一般田畑がある程度所得金額といたしましては名目的に増加するということに相なりますが、野菜畑等につきましてはそれがぐつと下まわるような結果になると考えておる次第でございます。
  80. 井上良次

    井上委員長 この標準率の策定を、本年は大体三段階か四段階に分けて一つの基準をきめてやるということで、非常に課税の標準率か明確になつてきて、明朗性をもつてきたのでございますが、この標準率がどういう程度で押えられるかということが、実は農業が他の工業生産と全然異なる生産をやつておるという関係から、この標準率の策定にあたつて、あらかじめ政府は國会に諮つてこれを決定する必要がないかどうか、そういう意思を持たれてはどうかと考えるのですが、更正決定の場合は市町村長または農民團体等の意見を聽いて、できるだけそれらの意見を尊重して扱いたいということを午前中に申されたのでありますが、当然この基本的な標準率の策定にあたつても、國会に諮つてこれを決定するという方法をとることが一番必要ではないかと思うが、これに対してどう考えますか。
  81. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 ただいまの御意見につきまして今持つております考えを述べさせていただきたいと思います。先ほども申し上げましたように、所得税の建前が昨年の四月から申告納税に変りまして、農家が自己の所得を收入と支出に分けまして克明に計算した結果が申告納税の基本になるという建前でございます。標準率は現在の段階におきましてやむをえずとつておりまする行政上の便宜措置考えられる次第でございまして、早晩農家の收入支出が記録されまして、正確に所得が各農家について計算される場合には、当然廃止せらるべき問題でございます。從いましてこれを制度的の問題として取上げることは不適当であろうと考えております。しかし現実の問題といたしまして、本年及びその後若干年の間は、この行政的な便宜措置は継続する必要があると感ぜられる次第でございますが、その際に、この標準率を國会に諮るという点につきまして、問題はこれが各町村あるいは部落單位程度に細分する必要のある問題でございまして、もし國会に諮るといたしましても、大体の基本方向というような性質のものになつてまいると思います。從いまして、この程度のものでございましたら、場合によりまして適当の機会に御報告を申し上げて御批判をいただく、かようなことができるのではないか、私個人の考えといたしましては、そういうような考え方をいたしておる次第でございますが、問題をそれ以上に取扱うということにつきましては、技術的にも、あるいは先ほど申し上げました法制的な点からいたしましても、相当困難視せられると考える次第であります。
  82. 井上良次

    井上委員長 税務署が行います標準決定の審査期間というものがありますが、これが現在非常に短いために、十分な資料を集め、かつ実際にあてはまる調査をせずに更正決定の材料がとられておる。標準率の決定の材料がとられておるということになつておりますが、もうと長うしたらどうでございますか、その意思はございませんか。
  83. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 これはごもつともな御意見でありまして、相当長期間にわたりまして調査の期間をもち、事実について精密な資料を豊富にそろえることが非常に好ましいことでございますが、昭和二十二年分の所得税につきましては、歳入の状況が非常に不良でありまして、昨年の十二月末になりまして、全体の歳入予算の三分の一を確保するという程度でありまして、三分の二が全部一、二、三というような短期間に集中されることに相なつた次第でございますが、その集中された期間にある程度の税收を確保いたしまして、年間の一般会計歳出、歳入のバランスを合せますためには、更正決定を急速に進行終了せしめる必要がございまして、結局昨年は相当時間的に余有の少い調査決定をいたしました関係で、一部にはいろいろ計算上の誤謬その他が発見されるに至りましたのでございますが、本年は大体十月二十日前後に、標準率につきまして、税務署が市町村あるいは農業團体等を通じまして、御意見をいただきながら、これによつて修正申告を出していただくという段階を進めまして、その申告修正という形で出てまいります申告の模様を見守りながら、十一月ないし一月にかけまして、できるだけ更生決定の準備を進める、かようなことにいたしまして、結論といたしましては、更正決定は確定申告の期限が明年の一月三十一日になつておりますので、更正決定が全部終了いたしますのは來年の二月になる、かような見透しをつけておる次第でございまして、調査期間が昨年よりも倍以上になる、かようなことでございますので、調査資料を集める期間が相当ございます。その上本年は各町村の食糧調整委員の方でございますとか、あるいは農地改革委員の方でございますとか、場合によりますと農業災害保險の評價委員の方ですとか、あるいは農業協同組合の方ですとか、そういうような方で、その町村なり部落なりの事情によく通じた方に、いろいろ材料をお知らせ願いまして、各農家の所得の実情というものにつきまして、できるだけ詳しい材料をとりそろえて、更正決定なら更正決定を実情に即して行う、かような計画を立てておる次第でございまして、この点は昭和二十二年分に比べまして、相当改善できるものとただいま期待いたしておる次第でございます。
  84. 井上良次

    井上委員長 次に超過供出に対する課税の問題。これは農林当局から大藏当局に対して相当、超過供出を奨励する必要上この課税を全免してくれということを要求しておるが、大藏当局の方で所得税法を中心にしてなかなかうんと言わぬということでありますが、これを早く決定をしてもらいませんと、超過供出の上、食糧確保の上、非常に支障を來しますので、この経過はどうなつておるかということ。それから開拓地に課税をしておるかどうか。課税をしておるとしたら、いかなる標準で課税をしておるか。開拓地は御存じの通り三年くらいまでは供出は免除されておりますし、かついろいろな特典が與えられておりますのに、これに地方によると相当重税を課しておる地域がありますから、これらの点についての御意見を伺つておきたいと思います。
  85. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 まず超過供出奨励金に対しまする課税につきまして、從來の経過というお話でございましたので、その点申し上げたいと思いますが、この前のこの委員会におきましても、早場米の奨励金についての課税上の取扱いに併せて、超過供出の場合は、相当ただいま問題が多いというようなことを申し上げておいたと記憶いたします。それで早場米の問題につきまして、この委員会におきまして、大藏省がこの前、全國財務局及び税務署に通牒を発しまして、大体奨励金の五割以内で一定の割合を、必要経費の増加として差引くという通牒を出したということを、地方長官に通達いたしまして、早場米の供出促進に資するということを申し上げたつもりでございますが、この一定の割合を引くということにつきまして、関係方面からの御意見がありまして、補正通牒を発したような次第でございます。それはどういうことかと申し上げますと、所得税法は、あらゆる所得を全部総合して課税の目安にいたしまして、累進税率で、所得の多い人には多い税を納めてもらう建前になつておる。ところが法律で定めました、課税をしないということを明らかに規定したもの以外は、全部課税する建前になつておる。早場米の供出奨励金が一部課税を軽減するというような印象を與えることは非常に困る。從いまして一定の割合を引くといういき方は非常にまずいから、是正せいというような次第でございまして、補正通牒といたしましては、一定の割合ではない、早場米の奨励金は全額を收入に見て、そのうちから早期供出のために特に必要とした経費などを差引く、かように表現を改めたような次第でございます。その間の思想はやはり超過供出奨励金の課税の問題にもからんでまいりまして、結局は全部の所得が総合されて、それに対する累進税率が適用されることによつて國民所得税の負担が初めて実現される。かような理論的な立場をとりまして、所得である限りは全部所得税の対象になるべきものである。たとえば超過供出の奨励金につきまして、課税からはずすということに相なりますると、炭鉱労務者の報奨金とか、官公吏の超過勤務手当というようなものに対する課税にも影響を及ぼすことでございまして、制度上課税からはずすということは考えられない、かような次第でございます。そこで問題といたしましては、超過供出をいたします農家が、一般の農家よりも多額に経費を必要とする。たとえば三%とか、五%とかの收穫の面におきまして増收を見るということで努力いたします際に、肥料を特に多く施す、あるいは除草その他におきまして特に人を雇い入れて手を盡したというような関係で、経費が多額に上つた。從つて奨励金は收入としてはいりますが、経費の面で特に多くかかりました分を斟酌する必要がある、かような事実があるといたしますと、これは將來の問題といたしまして、課税上考慮されてしかるべきでないか、かように考えられる次第でございます。この点は、以上のわくを出ない程度でございまして超過供出をいたしました農家が、はたして一般の普通の供出をいたしました農家に比較いたしまして、多額の経費を必要としたということになるか、ならないかという事実の問題として、解決する問題となつておるような次第でございまして、この点は未だ確定的な段階に立至つておらないような次第でございます。
  86. 成瀬喜五郎

    成瀬委員 簡單に三、四点について質問をいたします。大体二十二年度におけるとろこの所得税による徴収というものは、水増し課税でありまして、農民はこの水増し課税による結果、農地放棄さえも実際上行つておるというような状況にあるのでありまして、こんなことはもう今までずいぶん陳情その他によりまして、知つておられるので申し上げませんが、かような立場に立ち至つたということは、大藏省の徴税の内規がいけないということを言われておる。私はその内規を見ておりませんので、願わくばその内規なり、また徴税上における指令等を本委員会に対して出していただきたい。どういう内容かということを巷間において傳えられておるところを申し上げてみますと、あたかも農民に対しまして超過供出は三倍に買上げるというような形で、一人に対する責任額を超えた場合の金額に対しましては特別の賞與を與えるという内規があるので、過大なる賞與を得んがために、どうも徴税官吏が不当なる課税を強要してきたというようなことがとりさたされておりますので、この点を一掃するというか、あるいはまたさようなことがあるとすれば、かような不都合なる農民泣かせの、あるいは納税者泣かせの内規は改めてもらうことにしてやつていただきたい。  また丸公を下まわる問題はもう質問いたしません。ただそのほかにお尋ねいたしたいことは、二十一年度におけるところの日本の國民総所得というものは、これは一兆一千七百億と踏んでおるのであります。十五年度におきましては、これは三百二十一億ということによりまして、その國民に対する負担率というものが一分一厘八毛である。以下、十六、十七、十八、十九、二十、二十一、二十二、二十三とありますが、これが二十二年度におきましては一分一厘五毛としておりまするけれども、しかしながら一兆一千七百億というところの國民所得の中で、実際上課税の対象となつているものは四千五百億だということを大藏省においては表明いたしておる。さすればこれは毎年の平均率からいたしましても約三倍の課税をされておるということを言わざるを得ないのであります。こういうことになつてきますると、労働者あるいは農民のごとく一定の收穫が判明いたしておる、特に供出制度のもとにおける米麦農民のこれらの收入ということがはつきりいたしておるのでありまして、國家租税のほとんどを農民において負担してやるというても過言でないのであります。かようなことをやつているというところに、大きな今日の金融逼迫ということを考えてみなくてはならぬのでありまして、かような点に対してどういうような考えをもつてこれを是正するかということをお尋ね申し上げたい。また專門的な方面でありますが、一言お尋ねしておきます、國民所得の個人の所得の中に、地方財政委員会を通じて——大藏省の方でありましようが、事業所得税が命令で定める税額四千八百円という予定に満たないときということでありますが、しかしかようなことは実際の税額ということと所得ということに大きな食違いがあるのでありますが、はたしてこれは税額が四千八百円ということであるか、あるいは所得の方であるか、これをはつきりしてもらうことがこの際に必要なのであります。  それからもう一つお尋ねいたします。國税の面と地方税の面とが、ここに同一納税者の立場において非常な苦境に陷つている。税務署においては、地方税によるところの負担がいかほどであるが、そういうことは問題でない。とにかくこれで出しておけ。納税者の生活ということも全然考えておらない。あとに残つたもので食つていけということで、全然地方における諸般の負担ということを度外視しているような課税のやり方でありますが、これについてはどういうお考えをもつておられるか。  また災害府縣における点でありますが、米價決定において、災害の町村、府縣における特別な施設については、何ら考慮を拂われておらない。これはやむを得ませんが、しかし一反歩千円、二千円という石油その他の手数を入れてのそれらの損害考えてみた場合に、特別の考慮を拂うべきでありますが、これはどういう考えをもつて進んでいかれるか。  また次には、本年春におけるところの徴税の実績を考えてみますと、ある地方においては最初の所得に対する課税の決定に定して、その後における折衝においては、八割あるいは七割というところの額を低減いたしまして、そうして納税者がそれをはたしているという形がありますが、これは力関係においてさような不合理が行われてはたしていいものであるか、悪いものであるかということを考えざるを得ないのであります。私はこの際に本委員会に対しまして、この春における各縣における実績を資料を提出していただきたいということを希望するのであります。  なおまたタバコ耕作者の立場でありますが、これは過般院内においてタバコ関係の各党の委員が集まつて大藏省の日下部煙草部長も列席いたしましたが、タバコの耕作者は非常な努力をして生産されて、その所得金額相当高額の上るのでありますが、かような労力の上に立つ所得というものを、これを所得経費をあまりに少く見積る結果、総合所得の課税の関係による結果、かえつてタバコ耕作を放棄する傾向もありますので、これを別にして課税してもらいたいという強い要望があるのでありますが、これに対するお考えはどうでありましようか。以上お尋ね申し上げます。
  87. 忠佐市

    ○忠大藏事務官 第一のお尋ねは、税務署の徴税にあたりまして、何か責任額というようなものがあつて、それを超過した場合に特別の賞與が出る、これが苛斂誅求の原因になるのではないかという御尋ねと拜承いたしましたが、これはお話の中にありました通り全然事実無根でございます。その点を申し上げてみたいと思います。先ほど申し上げましたように、昭和二十二年度財政といたしましては、昨年の暮れまでの租税のはいり方が非常に成績不良でございまして、三分の二にも達する税額を昭和二十三年の一、二、三月に確保する必要がございましたので、税務署を弁達する意味におきまして、努力をすればこの程度の税額は税法を適法に執行することによつて上るべきであるというような目標を示したのでございます。そして目標達成順にその達成した税務署を大藏大臣が表彰いたしまして、若干の慰労をいたしたことは事実でございますが、これは賞與でも何でもございません。福利施設という形で、きわめて小額の金が税務署全体の渡つたというような関係でございますが、この点は割合によつて超過税額の何割かを賞與として出したというような関係では全然ありませんので、たびたびこの國会におきましても現われました答弁でございますが、重ねて申し上げておきたいと思います。  次に國民所得に対しまする税負担の割合について、農村の課税が非常に重いというような御意見と伺いましたが、この点については非常に私ども関心をもちまして税の仕事を取扱つておる次第でございます。昭和二十二年におきましては、全体のインフレの進向の状態からいたしまして、なお主食類が相当横流れをしておりましたような状態から考えまして、農村における全体の所得の比重は相当重かつたということは事実でございます。全体の國民所得として推定いたされまする金額のうち、何割が税の面で捕捉できたかという問題につきましては、本日資料を持つてまいりませんのではつきり申し上げかねますが、少くとも営業と農業関係におきましては、営業方面が多少農業関係より低めに現われたことは事実であると思つておる次第でございます。ところで今年はこの前の國会で税制改正の法律案が通過いたしました結果、農家の方面においては相当の負担軽減になつておる次第でございまして、本年度の課税は昨年度に比較いたしまして、総体的に申し上げて相当軽減の結果を見た。もちろん名目的な貨幣所得が殖えておりますので、金額といたしましてはそうではございませんが、全体の重みから申しますと、非常に軽減されるような予定を立てております。この点につきましては正確な資料を持つておりませんで、具体的な数字を申し上げるところまで行つておりませんが、大体のところは昨年の税收の総額にいたしまして、約二割前後程度が増加するのではなかろうか、かようなことを一應考えてみた。そういう事実もございます。米價が相当うわべに決定されましたので、この点に多少の狂いが生じてくるかもしれませんが、その程度の負担と考えておるような次第でございます。  その次に多分地方事業税のお尋ねだと思いますが、四千八百円と申しますのは、これは所得であろうと思います。事業所得の課税最低限というものであろうと思われますが、なお詳細條文その他を拜見いたしましてお答え申し上げたいと思います。  それから次に國税と地方税との実際の徴税面における問題でございますが、これは納税の資金というものを國民が日常生活わくの内で考えておきまして、納税資金を常に準備しておくというような慣習が出ておりますと問題ないと思いますが、最近におきましてもいまだ旧態依然としておりまして、國民が税について非常に関心が薄いというような面が現われまして、納税の時期に至りますと、納税資金相当苦労をするということであろうと考えます。この点につきまして問題となります点は、納税資金を必要に應じてくふうし得るというような施設が一面必要でございまして、從來ありました納税組合というようなものの活躍が相当必要であろうと思われますが、なお徴税の面に当りましても、國税、地方税いずれも財源として必要な歳入でございますので、この点の徴税につきましては実行上府縣市町村とも十分連絡をとりまして、お互いに一人よがりな行政をいたすというようなことのないようにいたしたいと考えておる次第であります。  次に災害地方等におきまして、相当の経費をかけておる。この面の考慮がなされておるかというように承りましたのですが、この点は所得税の課税にあたりましては、所得は実際の收入と実際の支出を差引きまして、実際に個々の所得を見るというような建前でございまして、事実はその通り計算してまいるということはもちろんでございます。但し支出の中に資産的な支出がございまするが、これは必要経費でございませんので、收入からは差引かれないというようなことが出てまいるかもしれません。しかし資産化するような性質をもちません支出につきましては、もちろんこれは必要経費になるべきものと考えております。  次にタバコ耕作者に対する課税の面についてのお話がございまして、私も日下部部長からいろいろ御意見を伺つております。その御意見はただいまお話のありました必要経費の見方が少いという面と、もう一つはタバコの横流しを相当乱暴に見ておるのではないか。從つてタバコ耕作者の課税が非常に重くなつておるというようなことであつたと記憶しております。この点につきましては本年は御承知のようにタバコの葉の横流しというような面についての取締りが強化されておりまして、この点の問題は事実上少くなつておりますのに加えまして、必要経費の面におきましても先ほど申しましたような標準率をできるだけ実際に合わせるように努力しますることによつて、課税の改善が行われると考えております。これを別建にいたしまして課税するということは、現在の総合所得税の建前からして困難ではないかと考える次第であります。
  88. 井上良次

    井上委員長 大体農業課税の問題については、なお檢討を加えなければならぬ部分が多うございますけれども、御存じの通りもうすでに時間を経過いたしまして、速記の方が差支えがあるそうでございますから、本日はこの程度で散会をしておきたいと思います。どうも有難うございました。     午後五時二分散会