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坪井委員 ただいま
委員長から靜岡縣のアイオン台風によります被害の実情
調査について、この
委員会において報告をするようにという命を受けまして、はなはだ僭越でありますけれど、
委員会におきまして私から一應靜岡縣の去月十六日にアイオン台風における被害の実情につきまして、御報告申し上げます。
御報告を申し上げる前に一言御礼を申し上げます。それは過去のこの
委員会から見ますると、一議会に同じ
委員が二度の被害
調査はできないことにな
つておりましたが、それを
委員長のはからいによりまして、しかもまた特に運営
委員会を
開きまして、靜岡縣の災害その他の災害のような突発的災害については、特別なる処置をも
つて一回以上にな
つてもよいというわけで、例を破りましてここに靜岡縣に小野瀬
委員長を初めとして、
委員数氏の御派遣を願いまして、過般三日間にわた
つて靜岡縣のアイオン台風の被害状況を御視察くださいました点は、
委員長に対しまして、重ねて御礼を申し上げると同時に、なおまた出張された
委員各位に対しまして私から厚く御礼を申し上げます。出張
調査をされましても、いろいろその
調査に対する
資料、その他いろいろと
調査に対しまして遺憾なきを縣としてはしたのでありますが、皆さんの御
意思に副わなか
つた点が多々ある点をこれまた私からおわびを申し上げます。時間がありませんので、私からその概略を申し上げたいと思いますが、実は本日靜岡縣の副知事が、参られ、なおまた経済
部長、縣会代表その他各縣下の被害地における関係團体長が数十名この
委員会に陳情に参られておるのであります。ぜひともひ
とつ副知事からはこの
委員会において靜岡縣のアイオン台風の被害状況をつぶさに御報告し、なおまたこれに対する処置についてお願いいたしたいという要望でありますので、これも特に前も
つてお願いいたす次第でございます。以上申し上げまして私から特にお願いいたします。
まず第一に衆議院の農林
委員長井上良次氏に対しまして、お願いがあります。
昭和二十三年九月十六日正午ごろ縣西端から、夕刻縣東端に至る沿海を通過したアイオン台風は、縣下各地に多大な被害を與え、特に開花期のある水稻二万三千町歩は翌十七日白穗と化し、被害
農家は八万四千戸、その減收量は三十八万六千石で、縣全
生産量の三分の一に上る予想で、かかる被害はまことに本縣特異の現象として全國に例のない稀有のことでありました。この発生地帶が縣の穀倉地帶であるだけに、災害
農家の食糧と経済に及ぼした打撃は非常に大きく、このために飯米の確保はもちろん、明年度種子の入手にも困難して、農業再
生産上重大な事態に立ち至
つております。これがために本縣におきましては、あらゆる手段を講じ、救済と再建に努力をしておりますが、予想以上の被害でありますので、本縣のみをも
つては、十分なる対策も実現し得ない次第であります。しかもこれが應急対策は、被害
農家の
生活安定のため焦眉の急務でありますので、
國会におきましても、補正割当、收穫皆無
農家に対する食糧加配、税の減免、再
生産資材の特配、資金の融通、明年種子の特配等、これが救済対策の速やかに実現できますよう格段の御配慮を煩わしたく、ここに謹んで請願する。かような請願が靜岡縣農業対策
委員長、靜岡縣知事小林武治氏から農林
委員長あてに、
昭和二十三年十月八日付をも
つてなされておるのでありまして、どうかこの趣旨の実現のできるように、
委員長においては格別の御配慮を煩わしたい、かように
考える次第であります。
次に米、甘藷の補正の割当でありますが、今回の水稻被害の減收推定は三十八万六千二百三十五石、甘藷被害の減收推定は六百九十三万四千七百八十八貫でありまして、これが補正割当につきましても御配慮を煩わしたいと存じます。
次には被害
農家への食糧配置でありますが、今回の被害は本縣穀倉地帶であるだけに、
農家であ
つて保有のできない
農家が大部分となり、再
生産に必要な食糧の絶対不足は重大事でございますので、どうか
農家に対しては加配の特別ご配慮をいただきたいと存じます。なお本縣は年間の三分の一は從來も移入及び放出食糧によ
つて賄
つてきた現況でありますが、今回の被害で三十八万六千石余も減收となり、今後の食糧操作も非常に困難であるので、移入米の十分でき得るよう格別の御配意をお願いいたしたいと存じます。
次に災害地域の所得税の減免でありますが、今回の被害は收穫直前の水稻及び甘藷に最も甚大な影響を與えたが、播種以來現在まで投下した労力及び肥料、農藥等の量は莫大なもので、減收した推定数量を合算いたしますと、今後の
農家経済に及ぼすこと甚大でありますので、所得税その他税の減免を御考慮願いたいと思います。
次に農村金融の措置であります。今回の災害による
農家收入の激減は、逼迫化しつつある
農家金融にさらに不利條件を加重し、本縣における被害地
農家の農業
生産及び生計資金のはなはだしい枯渇を予想せられることに
なつたのであります。
從つてこれが打開のために、明年上半期までに関する資金として、大約左記により処置するよう計画しましたので、これが実現のできるように御配意をいただきたいと存じます。一、共済金の支拂いによる資金八千三百万円、これは前拂いを要望しておるのであります。二、農業手形の運用による資金、二十三年秋まき麦資金五千万円、二十四年水稻資金一億円、これに要する特別融資一億円を御配意煩わしたいと存じます。
次に農業共済保險金の前拂い。これはただいま申し上げた
通りでありまして、この
金額は共済金といたしまして九千万円から少なくとも一億六千万円に上る見込でありますから、ぜひともこれが前拂いを要望しているのでありますが、本縣といたしましても十二分にこれらの
調査をいたしまして、早くこの目的達成に努力をいたしますので、
政府においても特別農業保險に対する前渡金の実現できる処置をお願いいたしたいと存じます。
次に補助金であります。今回のアイオン台風による被害は甚大であるのでありまして、縣におきましては地租の減免を実施することといたしましたが、市町村当局における諸事業——新制中学校の建設、その他道路橋梁の復旧に対しまして経済的困難が多いので、相当額の助成の途を考慮願いたいと存じます。
次に
生活物資の特配であります。被害
農家の復旧再建のために、地下たび、作業衣等の特配を煩わしたいと存じます。その他推定被害
農家の
戸数は八万四千戸に及んでおります。
次に水稻種子の対策であります。被害が甚大でありまして、種子すらないのであります。今回の被害は水稻の晩生種が最も激甚でありまして、種子用は皆無でございます。明年用の種子の確保に努力しておりますが、これが種子の特配をお願いいたしたいと存じます。その面積は一万八千百十一町歩に及び、その所要種子量は五千四百三十三石をお願いしなくては、これにまきつける種子がないのでありまして、農林省におかれては特にこれが種子の御斡旋と、これに対する格別な御処置をお願いいたしたいと存じます。
次に土地改良その他公共事業であります。今回の被害による
農家收入の激減によりまして、
農家経済の救済と
農家子弟の離村防止等を考慮いたしまして、農耕地の改良、常時冠水地帶の灌漑、排水施設の公共事業を急速に実施いたしたいと思いますので、これについて格別の御配慮を願いたいと思います。
次に肥料の特配であります。被害地帶の今後の麦、馬鈴薯の増産をはかるために、必要なる肥料の特配をお願いいたしたいと存じます。靜岡縣におきましては、特にこれら四十万戸に近いこの被害を補うためには、何としても今後の麦の一大増産をはかり、なお秋馬鈴薯等の増産をいたしたいと思いますが、これらの種子については、何とかひ
とつぜひご考慮を煩わしたいと存じます。
この九月十六日の台風によりまして受けた被害は、水稻におきましては被害面積が二万九千八百三十六町一反、この減收が三十八万六千二百三十五石でありまして、これはほとんど靜岡縣全地域に及んでおるのであります。その他甘藷におきましては三千十一町一反でありまして、被害減收は六百九十三万四千七百八十八貫とな
つておる実情であります。
この機会におきまして、水稻被害の原因とその機構について
簡單に
説明いたします。アイオン台風は九月十六日正午ごろ、縣西端から夕刻縣の東端に至る沿海を通過し、交通通信関係より詳細なお未詳の点もあるが、靜岡測候所にあ
つては風速十七メートル、雨量二百ミリ余を記録いたしました。また台風雨中は氣温二十四度内外、濕度百%で、台風直後は氣温二十七度内外、濕度六五%、風速六メートル、さらに夜間地理的排水不能地、低濕地は冠水し、地形等によ
つては流失埋没を点綴しました。またその他の水稻は全縣的に早生の倒伏、中生のもみ擦れ、晩生と中生が一部は白穗化したのであります。しかして早生は成熟直前のため倒伏し、乳熟期の中生はもみ擦れとなり、中生の遲れたるもの及び晩生はあたかも出穂期から穂揃期であ
つたため白穗化しました。しかし白穗は暴風雨期の十七メートルと暴風雨直後及び夜間の高温強風、感覚では熱風があ
つたため、風揉みと異常蒸散によると思料せられます。なお沿海地方ではいわゆる塩風も作用いたしました。白穗被害は縣下全般的に発生いたしましたが、その大なる所は靜岡市志太郡、榛原郡、小笠郡、磐田郡等であります。水害は浮島沼を中心とする冨士駿東地区、狩野川沿岸の田方、駿東及び今浦川(磐田)小笠南部等でありますが、これらはいずれも今度のアイオン台風による被害でありまして、これを並行してうんかの発生が二万数千町歩に及びまして、これらの被害も実に甚大でありますので、この台風による靜岡縣の
農家の被害においては、本年は農業再
生産がどうしてもできない現状とな
つておるのであります。
右申し上げましたのは大体の
数字でありまして、なおその後微細に一筆ごとの被害による
調査が近いうちに
発表されると思いますが、これらによりましてぜひとも
政府は万難を排してこれらの被害に対する救済についての格別の御配慮をお願いいたしたいと存じます。
最初にも申し上げた
通り、本日は知事に代
つて副知事、なお経済
部長、その他本縣の関係
農民代表多数陳情に参
つておりますので、ぜひともひ
とつこれらの対策について副知事から発言をさせてもらいたいという要望が強くありますので、
委員長におかれましては格別の発言のでき得るようにお取計らいを願いたいと思います。農林
委員としては本日私が参
つております。靜岡縣出身としては私でありますが、本日は靜岡縣の選出衆参議員多数の方が参
つて、皆さんとともに陳情されておりますので、これらの点を十二分におくみとりくださいまして、本
委員会はぜひともひ
とつ参議院議員にもこの旨を
委員長からお諮りくださり、なおこれを本会にもぜひともかけるように、この災害について格別のお取計らいを特にお願いいたしまして、私からは以上靜岡縣のアイオン台風被害状況を御報告するとともに、
委員長並びに各
委員に対して深甚なる謝意を表し、なお今後格別の御配意をお願いいたしたい。以上
簡單でありますが私の報告を終ります。