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1948-06-25 第2回国会 衆議院 農林委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十五日(金曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 井上 良次君    理事 岩本 信行君 理事 森 幸太郎君    理事 佐竹 新井君 理事 永井勝次郎君    理事 寺島隆太郎君 理事 鈴木 強平君    理事 北  二郎君    小川原政信君       佐々木秀世君    重富  卓君       田口助太郎君    綱島 正興君       野原 正勝君    松野 頼三君       八木 一郎君    梁井 淳二君       渡邊 良夫君    清澤 俊英君       黒田 寿男君    田中織之進君       野上 健次君    溝淵松太郎君       守田 道輔君    神山 榮一君       菊池  豊君    関根 久藏君       坪井 亀藏君   的場金右衞門君       平工 喜市君    松澤  一君       森山 武彦君    山口 武秀君  出席国務大臣         農 林 大 臣 永江 一夫君  出席政府委員         農林政務次官  大島 義晴君         農林事務官   山添 利作君         食糧管理局長官 片柳 眞吉君  委員外出席者         農林事務官   山根 東明君         農林事務官   小倉 武一君         商工事務官   大野 數雄君         專門調査員   片山 徳次君         專門調査員   岩隈  博君     ————————————— 六月二十四日  櫻島大根の價格引上の請願中村嘉壽紹介)  (第一五八二号)  大都市内の農地買收特例設定に関する請願(有  田二郎紹介)(第一五九九号)  國有林野を市町村に拂下請願中島茂喜君外  四名紹介)(第一六六〇号)  薪炭の統制撤廃に関する請願米田吉盛君外四  名紹介)(第一六六九号)  九州地方炭坑地帶における陷沒耕地復旧促進  の請願中島茂喜君外四名紹介)(第一六七四  号)  中小学校舍用並びに賃貸住宅用敷地確保のため  農地調整法適用緩和請願中島茂喜君外四名  紹介)(第一六七五号)  愛媛縣下各地区における開墾行政檢討に関す  る請願井谷正吉君外七名紹介)(第一六七六  号)  白石北部地方農業用水改良事業費國庫補助増  額の請願森直次君外二名紹介)(第一六七七  号)  地主の生活権確保に関する請願山崎岩男君外  一名紹介)(第一六七八号)  國有林拂下請願高倉定助紹介)(第一六  七九号)  福井縣農業会類燒に伴い農機具及び生産資材  等補給の請願坪川信三君外三名紹介)(第一  六八七号)  山林事業費國庫補助増額請願井谷正吉君外  七名紹介)(第一六八九号)  木蝋を油糧公團移管反対請願押川定秋君  紹介)(第一六九二号)  朝鮮牛輸入に関する請願外十七件(小川原政信  君紹介)(第一六九七号)  水害耕地復旧並びに土地改良費國庫補助増額の  請願海野三朗紹介)(第一七三〇号)  西根村の土地改良事業費國庫補助請願外一件  (小野孝紹介)(第一七三一号)  亀岡村の土地改良費國庫補助請願小野孝君  紹介)(第一七三二号)  田麦野村の農業土木事業施行請願松浦東介  君紹介)(第一七三四号)  愛媛縣山林事業費國庫補助増額請願井谷  正吉君外七名紹介)(第一七三五号)  結城郡の病虫害及び雹害による減收に対し供出  割当軽減請願菊池重作紹介)(第一七三  六号)  中蒲原郡における開拓事業と林業との調整に関  する請願神山榮一紹介)(第一七三七号)  新郷村の農業土木事業施行請願鈴木明良君  紹介)(第一七七八号)  安土村外五箇村等の水利改良費國庫補助増額の  請願今井耕紹介)(第一七八〇号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  食糧確保臨時措置法案内閣提出)(第一一五  号)     —————————————
  2. 井上良次

    井上委員長 これより会議を開きます。  食糧確保臨時措置法案を議題とし、質疑を継続いたします。永井君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 戰時中終戰後を通しての食糧事情が、今日のような食糧事情でありますので、農業経営中心食糧増産におくことは当然でありますが、その結果として、農業経営全体の生産を低下させ、経営基礎を危くしそうして結果として食糧増産にならないという結果を招來する事態まで不合理な経営が発展した場合には、これを是正する必要があると考えるのであります。その意味において北海道寒地農業を見ますと、内地方面とは異りまして、地方と氣候の條合に惠まれていない関係からいたしまして、食糧増産強要のために非常な障害が現在現われているのであります。たとえて言えば、麦の作付が合理的な経営を侵して、輪作経営ができない程度まで割当を受けておる一つの例をとつてみますと、女満別という麦の生産地帶でありますが、この麦の生産地帶に対して全作付の五割五分の麦割当がなされておる、こうなりますと、どうやりくりいたしましても輪作経営ができない、だぶつてくる。そういうことからいたしまして、麦の減産がどんどん起つてくるという事態が、女満別の村の一つの事実に見てもこれは見られるのでありまして、これを全体から申しますと、北海道の現在の農業経営においては、畑作においては、麦の作付が過重であるという結果になつておるわけであります。これに対して、当局はこの食糧増産の、食糧確保農業経営合理化と、地域におけるそれぞれの実態に即して、具体的に基本的にどういう考えをもつているか、そしてまたそれを実際的にどう措置しようと考えておるか、この点を明確に伺いたいと思うのであります。
  4. 山添利作

    山添政府委員 この法案の目的といたしましては、ただいま仰せになりましたような農業生産の全体を上げていく、こういうことによつてむしろ食糧の方も増産ができる、そういうようなやり方をしていきたいという考え方をもつておるのでありまして、仰せのように北海道のみならず、その他の地方におきましても、麦の作付面積は現在多少行過ぎではないかと思つている地方もあるのでありまして、北海道のごとき特殊の輪作形態をいたしませんければ、地方の保持もできないというような所では、やはりさらに精密な考慮を加えまして、全体としての農業経営に支障を來さず、むしろ地方を上げつつ、農業生産全体を上げつつ、結果としては食糧増産ができるというような方向に進めたいと思つておるのであります。また御承知のような食糧事情でございまするのと、それから生産並びに供出が全体として徹底的に合理化すという段階までいつておらない、これは食糧事情と同時に、まだいろいろの基礎調査等も足りませんのであります。しかしこの法案等を契機といたしまして、お述べになりましたような方向に進んでいきたい。從つて今後の基本割当等も、農林省ではただつくつてぱつと出すのではなくて、もつと事務的といいまするか、技術的に精密に当つていきたい。大体今までの供出は政治的にやつてつたのを、行政的にやるというのがこの法案一つのねらいであります。そういうような基礎の上にやつていきたいという考えをもつておるわけであります。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 麦の作付が過重であるということは当局が認めておるということでありますが、それを是正するのに具体的にどういうふうな方途を講じようとしているのか、その内容を承りたい。
  6. 山添利作

    山添政府委員 麦につきましては、明年度割当は八月による予定にいたしております。そこで今度割り当てますのは、昨年のような百六十万町歩という数字に必ずしもとらわれないで、本年実際收穫された面積、さかのぼつて昨年実際作付をされた面積、かようなものを基礎にいたして考えていきたいという氣持でおります。しかしながらこれに関しましては、本年の面積状況はわかつておりまするけれども生産数量状況は必ずしもきまつたというところまでいつておりません。今いろいろ地方状況を聞いて調べておる途中であります。それらの結果をも参考にして、とくと檢討を加えたいという考えでおります。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 一部学者の研究によりますと、日本農業恐慌に見舞われるというような場合、一体どういう線から最初にやつてくるかと言えば、米の裏作としての麦の線から農村恐慌ははいつてくるというふうに唱えております。そこでこの米の裏作としての麦を馬鈴薯に切りかえることによつて、この恐慌を防ごうという説がなされておるのであります。これらに対して農林当局はどういうふうに考えておるか、見解を承りたい。
  8. 山添利作

    山添政府委員 言われまする農業恐慌というものは、外國からの食糧、農産物から圧迫を受けるということを想定しての話だと考えておるのであります。それにつきましては、私どもはだいぶ違う考えをもつております。なるほど基本的な問題、長い期間將來にわたつての問題、もしくは潜在的にあり得る事柄としてはその通りでありまして、從つてそれに対抗する手段といたしましては、日本農業生産を上げていく。そうして生産費を切り下げるという方向において増産をはかつていく、また多角経営をやつていく、こういう方向であるのであります。しかしその事柄日本の現在の状況から申しますると、当分の間はないであろう、と言いますのは、なるほど世界的に食糧がやや過剩になるという時期は必ずしも遠くないと思いますけれども、それでは日本が自由に食糧を輸入し得る時期いかんということになりますると、これは当分望みがないわけであります。むしろ工業を復興いたしまして、そういう時期が到來することを國民全体の立場として望んでおりますけれども、そういうことは当分あり得ない。從つてこの時をむだにしないで、その間に日本農業合理化をはかつていきたいという考えをもつております。  さらにまた、徳川時代から、日本米價政策ということが國の経済政策中心であつたということは、御承知通りであります。今後世界の貿易態勢が全然自由になつて——現在アメリカのイニシアチーブのもとに討議されておる國際通商憲章等においても、完全な自由態勢をとつておりますけれども、しかし日本の從來やつておりました米價政策を通じて、一種の保護貿易政策である、これは私は手放し得るものではないという考えをもつておるのであります。だいぶ前になりまするが、司令部の人が本國に帰られ、この世界的な貿易憲章のことを討議されるという場合におきましても、農林省といたしましてはそういう意見を開陳しておいたのであります。そういうことが全体としての考え方であります。さて今の麦作馬鈴薯との問題でありまするが、これは相当地方という問題に関係をいたしておるわけでございます。なるほど一面から言えば麦は外國からたくさん來る可能性がある。芋はそういうものじやないと同時に、加工方面も相当ある。農業経営としては地方の問題に関係するのでありまして、米をつくつてまた麦をつくる、同じことを繰返しておつて地方が減耗してぐあいが惡い、そこで少くとも芋をある部分殖やすということが合理的だと考えております。そのためには種芋確保することであります。昨年來農林省でも六箇所ばかり園芸試驗場というものをつくりまして、できるだけバイアス病のない種芋増産することに努めている。現在でも内地方面状況では、どの府縣でも芋をつくりたいのですが、ただ輸送力に制約されている。北海道から種芋をもつてくるにも輸送力に制約されているという状況でありまして、私どもは今後なおじやが芋は増産の余地もあるし、その方面に力を盡したいという考えであります。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 食糧の問題を考えますときに、單に農作食糧ということだけでなしに、総合的な食糧考えていかなければならないのでありますが、そういう問題はしばらくおくといたしましても、農業政策の上における食糧増産食糧確保という観点から見ます場合には、單にカロリー計算からする質的な分析だけからではなしに、反收どのくらいとれるかという量的な方面——質と量とのかね合わせから見て、食糧確保ができるかどうか、そのよし惡しを檢討することが必要であると思うのでありますが、そういう観点から見ますると、反收の上から見て米が最高であることはもちろんでありますが、その次に來るべきものは麦であるとか、かぼちやであるとか、これがほとんど米に匹敵する質と量とを、反收の上から見ます場合にはもつているのでありますが、麦の方は馬鈴薯に比べますとほとんど半分の量よりないのでありますから、これが可能な限度において、麦作馬鈴薯にかえていくという方法をとることは、狹い耕作面積に制約をもつ日本農業といたしましては、当然考えていかなければならないことであると思うのであります。こういう分析農事試驗場でもやつているわけでありまして、馬鈴薯、かぼちや、これに次ぐものはとうもろこしであります。こういうものの増産をはかつていくことによつて、反收を多く獲得できる、こういうことでありますが、現在の馬鈴薯輸送にいたしましても、現在の状況が最善にして最後の限界ではないのでありまして、制約された條件のもとに、しかも無計画に実行されておることでありまして、これをもつと計画的にやりますれば、北海道種芋を相当廣く内地方面に配付することが可能であろうと思うのであります。本年の收穫期を控えまして、米の裏作としての馬鈴薯耕作というものが奬励すべきものであるという、研究的な立場を確立しておりますならば、そういう方向にお進みになるお考えはないか、そうして食糧の反收というものを十分に檢討されておるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  10. 山添利作

    山添政府委員 北海道から入れます種馬鈴薯は約二百万俵でありまして、昨年はたしか二百十五万俵がはいつて來ております。現在以上に輸送することは海陸ともに困難でありまして、今無計画にやつておると言われましたが、決してそうではございません。運輸省とも十分なる協力を願い、現地とも密接な連絡のもとに、輸送力において可能な限りのじやがいもを内地に送つてもらう。そのためには必要な食糧はまた北海道の方へ送ることになつておるのでありまして、もとよりこの点につきましては絶えず努力を怠つてはおらないのであります。現在よりも非常に多くの種芋輸送ができるということは、現実の問題として望みが少いと思うのであります。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 北海道畑作において、特に戰時中戰後を通して影響を受けたのは、先ほども申しました通りに、麦作に集中した結果として、地方の減耗と收穫の減退が顯著に現われてきておるということになつておるのであります。またそういう影響を受けまして、北海道寒地農業の特質としての工業的農作業が非常な影響を受けております。たとえば除虫菊であるとか、ハツカであるとか、あるいはあま、ビート、こういういろいろな工業的作物が非常な影響を受けておるわけであります。北海道のごとく、半年農耕をやりまして、あとの半年は冬ごもりをする。こういう労力の配分の実情にありますところにおきましては、夏收獲した物を冬期間に加工して、農村労力を年中均等に配分する、こういう経営形態が大体各地の農業会において成立して、自然発生的にできていたのでありますが、そういうものが、麦作集中のために全部その施設が遊休になつておる。從つて農村経済に與えておる影響は甚大であります。先ほどわれわれに配付された日本農業將來という一つ資料に見ましても、主食作付けに集中するよりは、工業的な農作物作付けして、これを加工して輸出することによつて外國から食糧を輸入する方がずつと経済的である。どうしてもその方向にもつていかなければならぬという結論が現われておるのであります。今のような事情においてはできないにいたしましても、漸次その方向をとつてつて、立体的な農業経営を確立する方向に指向しなければいけないのじやないかと思うのでありますが、これに対する所見を承りたいと思います。
  12. 山添利作

    山添政府委員 お説の点は同感であります、しかしながら現実の問題として、輸出し得るものは非常に少い。繭にいたしましても、元大東亞戰爭前は、桑園も約四十万町歩近くございましたが、現在は十六七万町歩に減つておる。これは將來回復いたしますとしましても、せいぜい二十五六万町歩もあれば十分ではないか、こういう見透しであります。その他の輸出物といたしましては、お茶でありますとか、あるいは柑橘、あるいはハツカ除虫菊ゆり根、いろいろございますけれども、そう大きなものはないのであります。そこで今おつしやつたような事柄は、その通りでありますので、その方向に行きたい。しかし全体としての農業生産方向を、主食はどうでもいいのだという感じをもつほどの分量のものではない、そこのところをよく区別して、特産物の方もできるだけ増産をはかつていく、こういうことに進みたいと考えておるのであります。なかんずく特産物のうちでも除虫菊とか、ハツカとかいうものは、御承知のように北海道特産でありますが、いずれも非常に減つておるわけでありますので、これはぜひ増産をいたしたいと思つておりますが、これについて目下苦心しておるところは、結局價格問題にあるわけであります。除虫菊につきましても非常に増産が必要なのでありますけれども、やはりその作付のために食糧作付をいくら減すということは、現在計画的に行うことはできない。といいますのは、全体の耕地面積とか、植付というようなものが正確にわかつていないというような結果であります。そこでやはり主要食糧というようなものは、今やつておりますような程度作付面積で大体いくといたしますと、この程度割当面積が他の農作物をひどく圧迫していると私どもは見ていないのであります。肥料のことを考えてみましても、延面積考えてみましても、決してむりでありません。やはり特産物價格政策でいくより手はない。ところが何もかもパリテイ計算というところに非常な難点があるのでありまして、パリテイ計算でいつては、いろいろな状況から特産物にはぐあいがわるい、十分でないことは申すまでもないのであります。それらの点をだんだん解決していきたいということに苦心をいたしておるわけであります。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 本法の施行にあたつて一番の難点は、生産計画を合理的な基礎に確立するかどうか、そうして事前割当が公正妥当に配分されるかどうか、問題はここにかかつていると思います。先日の本委員会において重富委員から申されましたように、ある部分では横流しをしたり、やみに流したりする数量のあるものもあるが、ある廣い範圍にわたつては、還元配給を受けなければその日の生活にも困るというような部分もできている。こういうことがあるのでありまして、前年のそういう不合理な実態に即して、本年はどういうふうにそれを是正し、公正妥当な割当にしていくかということが重点であろうと思う。そのためには過去の実績というものを明確に分析し、その不合理な点があるとするならば、その不合理な点を顯著に明確にするということが必要であろう、そういうような立場から、重富委員から、還元配給を要求された部分に対する還元を実行したその内容を明確にせよということが要求されたのでありまして、これに対しては農林大臣は、場合によつては発表してもよい、こういう御答弁があつたわけでありますが、これはやり方によりましては相当にこの不平不満が爆発し、この問題の取扱い方いかんによりましては、これはかえつて供出の公正妥当なる運営に惡い影響を與えるというおそれもありますが、これはただいま申しました通りに、過去の実績に徴して今後の公正妥当な割当を確立するのだ、そういう一つ資料にするのだという立場においてこの問題を取扱いますならば、きわめてこれは有効であろうと思うのであります。そこでこれらの内容農林省は本委員会に対して明確に御発表になる資料を出されるお考えがあるかどうか、これを承りたいと思います。
  14. 山根東明

    山根説明員 昨日重富委員からお話がありまして、それに対して農林大臣からお答えいたしましたことは、こう了解しておつたのであります。要するに還元米資料は、実は私どもの方といたしましては、これを縣別に総括表として一まとめにいたしまして、発表することは、いろいろな点であまり好ましくないような氣持で今日までおつたわけであります。それはやはり各縣との比較によつていろいろ問題が起きるだろうし、また縣知事自身立場も、かえつていろいろな点で困る場合もあり得るだろうというような氣持も実はあつたわけであります。それと同時に、昨日も大臣からちよつとお話を申した点でありますが、還元米を決定いたしますいきさつは、御承知と思うのでありますが、府縣知事から相当こまかい資料をもつてきた要求をいたすのでありますが、それにつきましては、私どもの方としても十分それに檢討を加えて、その結果きまるわけでありまして、はつきり還元米いくらという数字を特定いたすことはいたしませんで、一般の農家還元配給数量と合わせていくら、これだけのものを農家配給として差上げようということできまる場合があるわけでありまして、その場合は特にそのうちどれだけが還元米であるかということを、私の方で特定しないできめる場合もあるのでありまして、そういう意味で、その中から当該縣についてどれだけが嚴密な意味での還元米であるか、あるいはどれだけが轉落農家配給であるかということの測定がいたされてない場合が往々あるのであります。そういう意味では、実は差上げる資料をつくりますのに非常にむずかしい点がある。こういうことを御了解の上で、もし御必要であれば差上げよう、こういうことをお答えしたと私は了承しておるわけでありますが、そういう意味で私どもの方で昨日帰りまして早速事務的に資料の整理に取りかかつておりますので、御必要であれば差上げることにいたしたいと思う次第であります。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 ただいまの資料の問題は、先ほども申した通り還元配給の扱いの問題を中心とするのではなくして、事前割当割当を合理的にせしめるという一つ資料にするのでありますから、還元配給の要求されたのがはたして妥当であるかどうか、そういうのを事実について調べ、そうしてこの部落内の割当が全体として過重なのか、あるいは部分的に過重なのか、地域的に過重なのか、そういう問題の所在を明確にする資料しとての取扱いに重点を置いていきたいと考えるのでありますから、これはそういう点に重点を置いて、資料をまとめていただきたいということを御要求いたしておきます。
  16. 井上良次

    井上委員長 ちよつと皆さんにお諮りいたしますが、速記の関係がありまして、昨日理事会を開きました結果、非常に質問者も多いことでありますから、できるだけ要点に止めていただきまして、議論といいますか、そういう点にわたらぬようにして、大体一人三十分以内でやつていただきたいと思います。次は八木さんに質問を許します。
  17. 八木一郎

    八木委員 時間を限定されておりますので、私はこの法案に対しては質問したいことが相当たくさんありますが、質問にはいるに先だつて委員長議事の進行についての御決意のほどをまず承つておきたいのであります。と申しますのは、第一回國会におきまして、重要なる法案最後を思い起すのでありまして、あの第一回國会最終日である十二月九日の当農林委員会議事の顛末を思い起しますと、まつたく委員長の横暴と專制と圧迫とによりまして、われわれのこの会議は何とも言えない暴戻きわまる結果に終つたことを、今思い起しても遺憾千万に思うのであります。恐らくやわれわれの信頼する委員長は、かくのごとき結果にもつていくことはないとは信じますけれども、愼重なる審議を展開いたしたいと思いますので、この際まずもつてかくのごときことは絶対になさない、國会を冒涜し、われわれの議員の職責を踏みにじるようなことは断じていたさないということの確約をいただきまして質問にはいりたいと思います。まず委員長の御所見を伺います。
  18. 井上良次

    井上委員長 ただいま八木さんからきわめて重大な発言がありましたが、委員長といたしましてはできるだけ委員各位の審議を順調に進めまして、十分論議が続けられた後に、各派の理事会を開きました上で法案の処理について態度を決して進みたいと考えます。ただ申し上げておきますが、会期も切迫いたしておりますことでありますし、かつ重要な法案がまだ一つ、二つ残つております。從つてできるだけ皆樣方の御協力を願いまして、円満に議事を進めるようにお力添えをいただきたいことを委員長からもお願いいたします。決して無理はいたさんつもりでおりますから、さよう御了承願いたいと思います。
  19. 八木一郎

    八木委員 それでは大臣に御質問申し上げたい点を保留いたしまして、この際二、三の事項についてお尋ねいたします。  審議未了に終つた臨時農業生産調整法の問題になつた点、その後の意見のあつた点は改廃をいたして、面目を新たにいたして提案いたしたという提案理由の説明でありますけれども、本法案の骨である肥料問題、あるいは價格の問題、あるいは数量の問題、その他基本的な問題は、いずれも私の見るところではぼけておりまして、ピントがはつきりいたさないのであります。  ここでまず第一に肥料問題についてお尋ねいたします。肥料に関しましては生産確保させる裏づけになることは説明を要しません。そこで本法案におきましては、計画の指示を受けた者が、その責に帰すべき事由によつて生産数量確保できる見込がないときは削減して云々というように消極的にこの点を規定しておるのでありますが、政府は積極的にこれだけの用意があつて、かかる肥料に関する限り心配がないというところを数字にわたつて掘り下げて、農林、商工両当局より詳しく説明をいただきたい。特に夏肥、春肥の問題は、当面の肥料問題といたしまして、どのような状況になつておるかをまず伺いたいと思います。
  20. 大野數雄

    ○大野説明員 詳しい数字を実は今日はもつておりませんが、大体のアウトラインを申し上げたいと思います。今年の一月から七月末までを私ども春肥と申しております。農林省の方で割当てした肥料の総合計は、窒素肥料の方においては大体百七万トンであります。これは硫安として換算した数であります。その中には朝鮮、硫球への輸出の数字が約六万二千トンであつたと思つております。その内訳はアメリカから入ります硝石と國内でできます硫安、石灰窒素、この三つの合計であります。そのうちで昨年から今年に持ち越しましたものが約二十二万トンありますから、差引きますと、八十五万トンが國内で生産、あるいは輸入するのであります。輸入肥料は七月末までとりますと二十二三万トンだろうと思いますが、それを差引きましたものが國内で生産されます硫安と石灰窒素の合計であります。硫安の方は、大体割当てました数字は五十五万トン程度だと思います。石灰窒素の方がその残りであります。五月までの硫安の國内の生産は、その割当てましたる基礎数字である硫安石灰窒素の生産に対して、現在のところ五月末までで約二万トン、石灰窒素で二三千トン、それだけ計画よりは生産が上まわつております。それから輸入につきましては、これは農林省の御所管ですからあとで御報告があろうと思いますが、計画より四万トンばかり輸入が減つた、しかしそれだけ朝鮮への輸出が減りましたから、これは差引関係がなくなります。六月、七月の問題でありますが、六月は八万六千トンの硫安と石灰窒素二万五千トンと計画しておりますが、これは少し落ちる見込であります。私の今の見当では五六千トンくらい落ちやしないか、七月は稻肥としては追肥の方になります。これは関西、九州の方が多いですが、これは計画は硫安が八万六千トン、石灰窒素は二万五千トンで、今のところ百パーセントの予定でやつておるのでありますが、これを通算しますと、農林省がかつてお約束した数字だけは、農村の方にお渡しすることができる。かように今のところ考えております。
  21. 八木一郎

    八木委員 計画に対しまして割合で大体どういう定取りをしておるかということがおわかりならば聽きたい。それから特に私どもの今一番懸念を深くしておる六月が思うようにできない。これは計画目標に対して割合ではどれくらい落ちるのか、その理由はどういうのか。これに対する手当、対策はどうしたらよいか、この辺を聽かしていただきたい。
  22. 大野數雄

    ○大野説明員 最初に六月の方を申し上げますが、硫安では八万六千トンの計画に対しまして、私どもがもつておりますのは十五日まででありますが、それで半分に割りますと四万三千トンできるものが、十五日現在では三万六千トンであります。從つて四万三千トンに対して三万五千トンですからパーセンテージはあとで計算いたしますが、これはいつも月初めに成績が惡くて、後半の月で取もとしております。今のところは八万トン近い数字だろうと押えておるのであります。その理由は硫安はその大部分を電氣に依存しておりますので、電氣の月初めから二十日ごろまでの渇水が直接的に影響しております。しかし二十日からの雨によりまして月初の減産を取返しつつあるのでありまして、結局は八万トン程度におちつくのではないかと考えております。  第一番の計画と実績の足取でございますが、それもやはり硫安と石灰窒素の量について申し上げますと、三月までは計画と実績とが大体一〇〇%と申しますか、計画はああいう渇水期ですから少なかつた。四月は八万七千トンの計画に対しまして九万一千トンで、少しばかり計画を超しております。五月は八万六千トンの計画に対しまして、硫安では十万一千トンですからこれも超しました。それから石灰窒素は今の足取が計画と実績とでは一〇二%とか九八%というふうにすれすれであります。燐酸肥料の方は、計画と実績は、四月までは一一〇%くらい実績の方が計画を上まわつておりましたが、五月は九〇%に、六月はほぼ計画に近い数字になつております。七月に対しましても、過燐酸は計画より増しまして、通算しまして私どもの予定しました約十万トンを超す予定で、十二、三万トンというところに今考えております。
  23. 八木一郎

    八木委員 目下の生産状況は、これで実状はわかりましたが、私が不安に思いますことは、農家に対する肥料の配給の約束が、生産確保の裏づけを保証する政府として、もしこれができない事態に当面いたしたときに政府はどのような責任ある処置をとれるのか。その辺が聽きたいのでありまして、農家の方に対する第九條の條文を逆に読みまして、積極的な政府の意図を伺いたいと思つております。
  24. 大島義晴

    ○大島政府委員 この問題は事前割当数量基礎的な数字としておるのでありまして、その年の天候の事情、肥料の配給状況等によつて、実際供出の場合には相当是正さるべきものであると考えております。
  25. 八木一郎

    八木委員 私の聽きたいのは事前割当をして生産確保をさせようとして強いておることはいいが、その裏づけになる肥料が行渡らなかつたときに、事前に肥料の配給の割当があり、その通りにいかなかつたときに、政府はどういう処置がとられるようになつておるかということを聽きたい。実際問題として。
  26. 山添利作

    山添政府委員 八木さんのお話は、その場合に政府はいかなる責任をとるかという意味だろうと思ひますがそうですか。
  27. 八木一郎

    八木委員 そうです。
  28. 山添利作

    山添政府委員 これは政府が肥料を公約いたしますのは、御存じのように経済安定本部におきまして計画を立てる。むろんそれには商工省並びに農林省も参画をしてそういう計画を立て、かつそれを閣議で決定して発表をし、農民に公約をするのでありまして、政府といたしましては、あくまでもその公約を果すことに万全の努力をいたすわけでございまして、現在の事情におきましても五貫五百匁の公約を果すために、電力事情等他の産業には非常に迷惑をかけて強行な増産をやつておるという事情であるのであります。この五貫五百匁の公約は、すでに元肥に要するその七割方は、それぞれ地元に届いております。またその残りの追肥の分も、所要の時期までには、必ず配給できる見透しをもつております。  なるほど仮定の議論として、そういう場合にどうするかということはございましようが、政府といたしましては、内閣の責任においてさような計画をきめ、あらゆる事情を無視して、と言うと、大げさになりますけれども、とにかく万難を廃して、その実現を期するのでありますから、もしそういうことがたれか怠けてやらぬというようなことがあれば、これは行政上の責任をとるのは当然でありましようけれども、そうでない限りは、ともかく万全を盡して政府はやるのであるから、御安心を願いたいと思います。
  29. 八木一郎

    八木委員 お任せ願いたい、信用してもらいたいという押問答をしていてもしようがありませんが、政府の計画に対する信頼感は、実は率直に言うて農家はきわめて薄いのであります。特に農家の心を見ないで、農家のつくる物のみを見るような法制を次から次へと立案されるこの際、計画の細目にわたつて、私どもが納得できるような説明資料がありますならば御提示を願いたい。言葉の上の信用はできましても、閣議で決定をして農家に臨んだ計画で一番大きなはずれは、例の十万石の計画を立てて九斗八升とかに終つた小包米の制度が、その最たるものであります。これも政府が大騒ぎをした計画であります。その計画がかくのごとく大きな狂いがくる例を目の前に見ておりますわれわれとしては、信頼するに足るだけの技術的な、專門的な資料を、肥料に関して数字に触れて提示を願い、間違つた際に時間のずれ、品質の違い、こういう問題が起きはしないかどうかという懸念を解消するだけの資料の提供を願いまして、それによつてこの肥料問題については質問を継続することにいたします。今要求するような意味において資料を提示してもらえるかどうかその御返答を願います。
  30. 山添利作

    山添政府委員 その資料をどういうものだというふうに、もう少し具体的に言つていただきたいと思います。
  31. 八木一郎

    八木委員 生産計画の裏づけになる肥料の生産計画、それから肥料の配給計画、その肥料の種類等で盡きると思います。
  32. 山添利作

    山添政府委員 それは一月から七月までの実績でよろしゆうございますか。
  33. 八木一郎

    八木委員 実績は過去のものだし、將來について見透しがもてる説明資料が欲しいのであります。
  34. 山添利作

    山添政府委員 承知しました。
  35. 八木一郎

    八木委員 第二は價格の問題についてこの法案では明示がないのであります。價格は價格であつて、物價の関係である。こう言つてしまえばそれまででありますけれども食糧確保の前提になるものは、これだけの問題になつておりまするゆえんのものは、價格と数量であることは言うまでもない。價格も数量もともに一方的に押しつけられて、しかも自分のものを賣り渡す先は政府に限られておる。こういう三段構えの無理が重なつておりまするから、ある人が言うように、法案をどう姿を変えても、その結果は、手ぬぐいの濕りのある間は搾りとる考え方であり、卵を産む間は産まして皆とつてしまう考え方であり、乳の出る間は搾る考え方、これが取上げ一方的な考え方であるという批判をされるゆえんであろうと思います。私はこの三つの大きな問題のうち、どれにか生産者の自由なる個人の意思を織りこむような処置が講ぜられるならば、この感がかなり緩和されると思うのでありまして、最も大事な價格の点について、本法案にどういうきめ方をするのだということが、明示できない理由を伺いたいと思います。
  36. 山添利作

    山添政府委員 先般も價格の点が記載してないのは、どういう理由かという御質問がございました。この法案は提案理由の説明にもございましたように、現にありますところの供出制度を合理化しようという内容をもつておるのでありまして、食糧政策全般についての法案ではございません。價格については別にポツ勅に基く價格統制令がありまして、それによつてすべての物資について價格をきめ得るということが書いてあるわけであります。それではいかなる方式でもつてきめるかということは、前の食糧管理法に書いてありました当時は、生産費あるいは消費者の関係を考慮してきめることになつておりましたが、御承知のように、こういう物價の変動のはげしいときに、生産費もなかなかつかみにくい関係から、パリティ計算の方法をとつておるのであります。現在その方法でやつており、これが將來そういう一般的、恒久的な食糧だけを管理する法律になります。この臨時措置法も廃止されるということになれば、また價格のことも別の観点から規定をされると思いまするが、現在の事情としては、今申しましたようなことになつておるわけであります。法案に書いてないからといつて、價格の点を軽視しておるわけではない。何と申しましても生産を増していくためには、増産し得るところの環境をつくる。そのためには價格が一番大事だということは、申すまでもないのであります。從つて價格については絶えず國会でも問題にせられ、政府でも絶えず檢討し、最善の努力をいたしておることは御承知通りで、ただ法案との関係は今申すようなことになつておる、こういうわけであります。
  37. 八木一郎

    八木委員 供出制度の合理化をねらつた法案であるから、價格は必要は認めるけれども、この中に入れなかつた。こういうふうな御答弁でございますが、この中で農産物の事前割当をなすならば、特に主要食糧は物價の基準になつております。私どもは物價の基本になる米價は國会できめてしかるべきではないか。予算と同じくらいのウエイトがあるのではないか。こういう主張のもとにおるのでありますが、それはさておいて、この事前割当をする際に、生産費を償うに足る價格でもつて供出割当て、價格をつけ、供出量をつけて割当てるのでなくては、値段はいくらになるかわからない。生産が償うか割るかわからない。そういう片手落ちな割つけをいたして、これに協力できると思う方が間違いであろうと思います。どうしても價格に関する何らかの表示の方法を公表する。何かの條文をここにぜひ加える必要があると思いますが、前回は價格問題について條文があつたにかかわらず、今回は落ちておる。價格の点に触れないでおくということが解しかねる。重ねて説明をせられんことを望みます。
  38. 山添利作

    山添政府委員 前回から價格のことは別に書いてございません。事前割当をいたしまするには、米について言えば、ことしは多少遅れましたけれども、大体一月にやる。その米の收穫期は十月である。一月にこういうインフレ時代に、これだけの値段で買うということをきめたつて、それは何にもならないのであります。その間おのずから物價というものは変つてくる。またパリティ計算をとる以上は、最も近い收穫時等においてきめるのが、米にとつて一番有利だと思つておるのであります。そこでパリティ計算の内容檢討し、さらに正確にしていくという努力は必要でありますけれども供出量を事前にきめる当時にきめるということは、まつたく実情に副わないのだと思つております。
  39. 八木一郎

    八木委員 私の言うのは價格をいくらにというのではありません。数量割当をいたして、生産に努力してもらおうという期待の裏づけには、取立てる價格は計画の趣旨と一緒に、どういう方法できめる。生産者の意を体してきめる。あるいは生産費を償う範囲においてこれこれの決定機関できめる。この程度のことは法的に條文に表わすことができないのかできるのかということを尋ねておるのであります。
  40. 山添利作

    山添政府委員 法文として抽象的にそういうことを書きこむということは、不可能ではありません。しかし皆さんも御存じのように、現在パリティ方式でもつて決定するということに、一昨年來なつており、昨年からさらにこれが精密に檢討せられておる。また今後当分の間その方式でいくということは、一般に明らかにせられておるのでありまして、從つて私はその内容檢討することは必要であるけれども、その事柄を一般的にこの法案が出される機会に、書き表わすという必要は認めておらないのであります。
  41. 八木一郎

    八木委員 價格については法文上できる。しかし必要を認めていないという御回答でありますから、これで打切ります。  第三は数量の問題であります。割当数量に無理がなければ、法は要らぬのです。結局数量に無理を続けていくから、そこにいろいろな問題が出ると思いますから、私はこの際食糧管理局長官にお尋ねいたしたいのでありますが、管理制度を布き、供出制度を実施して以來、今日まで手をかえ品をかえて、われわれは國民食糧確保のために努力をしており、苦心をしておる。そのことはよくわかります。しかし実績がはたしてどれだけ自冬に操作し得る数量をつかみ得たかということであります。腰だめ的に申せば、二千五百万石以上の数量はどうしてもつかみ得ない。あとは計算上あるいは凍結米といい、あるいは還元米といい、いろいろな事情はありますけれども、実質上いわゆる長官の米びつにはいつておる米は、二千五百万石以上にはなつていないのではないか、こういうふうに腰だめ的に感ぜられるのであります。その実績について、本日は腰だめ程度でありますが、後日数量を調べて、実施以來の数量を聽かしていただきたい、こう思います。
  42. 片柳眞吉

    ○片柳政府委員 過去の実績につきましては、後ほど書面でお答えいたします。たで昨年の米につきましても、実際政府が操作し得る数量は、二千五百万石以上にはならぬのではないかという御意見でありますが、この点私はさようには見ておりません。いろいろ御努力の結果、三千五十五万石は確保されております。もちろん別途約百六十万石の還元米はありまするが、これを引きましても、実際上消費者なり、本來の一部保有農家にまわし得る数量は、百六十万石を引きましても、約二千九百万石近いものは一般の操作に乘つておるわけであります。從つて実質上の供出数量は、やはり二千八百万から九百万に近いものは、昨年の米でもあるのであります。こういうふうに見ております。百六十万石の還元米だけは、御指摘のようなことになると思います。
  43. 八木一郎

    八木委員 今の数字については、数量を見た上でなお明らかにいたしたいと思います。私はさように見ていない。この数量について、問題が最後は——法案をどう法文化しましても、この制度を法文化しましても、最後は政治的な決定になる。ですから、私どもはこれが逆にいけたらいい。事前割当で三千万石という絶対数量がきまつて、追打ちはしない、こういうふうに先に総体の数字がきまつていく方法はないものかどうかということを思うのでありますが、このことは腰だめできめたようなことになつて無理だ。やはり技術的に、下から積み上げてきた数字でなくてはやれないのかどうか。難儀してやつても、最後は政治的な取組みになるのですから、絶対量を事前に——事前にと言つても今すぐにでもきめて差支えないものじやないか、こういうふうに思いまするが、これは技術上できないかどうか、伺いたい。
  44. 片柳眞吉

    ○片柳政府委員 それはむしろ事前に割当をいたすわけでありまするから、過去の耕地面積の実体なり、あるいはその年の肥料状況、その他を勘案いたしまして、むしろ事前に数量はきめていくわけであります。ただきめる時期が、やはりその年の肥料の配給状況等が、ある程度わかりませんと、これはできないと思うのであります。実は來年の事前割当につきましても、目下関係方面と折衝をしておりまして、本年度のような三月というような非常な時期遅れにならぬように、できるだけ早くやつていきたいと思つておりますが、しかしある程度の肥料等の配給の見透しがつきませんと、できませんが、肥料等の見透しがつきました場合におきましては、できるだけ早く数量はきめてまいりたい、かように考えます。
  45. 八木一郎

    八木委員 そこで数量は、肥料とにらみ合つて早いほどよいわけです。早いほどよいわけですが、これが遅れて、本年のようなばかなことは問題外でありますが、十月とか十一月とか、事前割当の時期が、作物によつて別でしようけれども、ある。その時期については、肥料については間違いのない見透しがもてて、その肥料が配れなかつたときには、さつきの農政局長のお話のように、政府の責任だと言つて、言葉だけでなしに、技術的な内容が、なるほどこれならば間違いがないという信頼の置ける裏づけをもつて、そうして事前に数量がやれるかどうか。私はその間にどうしてもずれができて、無理が重なるのではないかということを憂えるのですが、目下の長官の見透しでは、この法案が通過すれば、作物別に何月に何をやるというお見込みがありましたら、お伺いいたしたい。
  46. 片柳眞吉

    ○片柳政府委員 この点は御指摘のように、早ければ早いほどよいと思いまするが、お話のように肥料の具体的な見透しがつきませんければ、架空な計画もやつてまいれませんので、その辺の事情を勘案いたしまして、來年度の割当考えていきたいと思いますが、現在の考え方では、秋からまきまする麦につきましては、できれば八月中までに中央の割当はやつてまいりたい。それから來年の馬鈴薯、麦、米につきましては、大体一月中には中央の割当は完了していきたい。現に大体さような考え方で準備をいたしております。
  47. 八木一郎

    八木委員 大臣が見えておりまするから、大臣に対する質問に入りたいと思います。数量の問題はなお資料に基いて御質問申し上げることを留保いたしておきます。  大臣にお尋ねいたしたいのですが、食糧供出について、私たちの考え方からいきますと、営農に創意くふうをめぐらして、働けば働くほど個人の利慾を満足いたし、多々ますます弁ずる、増産街道へひた向きにいくような制度は、この供出の制度とはおよそ対蹠的だと思う。これは大臣も了解できると思う。價格も数量も、一切を人任せで、自分の意思での價格で賣るわけにもいかない、自分の意思での時期に出すわけにもいかない、まつたく自己の奉仕に漫然と依頼しておるというわけでございますから、ひた向きに増産街道を行こうというのには、大きな障害になるということは了解できると思いますが、そこでこの了解のもとに善後策を考えますと、第一は配給と自由販賣の制度とを併せてやるという、この途のくふうであります。これは政府事業が今酒についてやつておられる。政府みずからが配給と自由販賣とを併せてやつておる。これは一例でありますけれども、何か配給と自由販賣とを併せて考慮いたしまして、営農に創意くふうを百パーセント活用いたして、増産にひた向きに向わせるというような、こういう角度について、くふうをなさつたことがあるかどうか。またくふうをなさる意思があるかどうかということを伺いたい。  第二点は、供出という制度は臨時なものであつて、この法案によりますと、二十六年——三年間ですかを予定しておるようでありますが、この施行の間は、向う三年経てばこれをやめようと言つても、三年経てば何かめやすがあつて止められるのかどうか、たとえばそのころになれば海外から食糧がうんとはいつてくるだろう、内地増産が相当に達成されるだろう、こういうことであるか、三年を限つたということは、私をして言わしむれば臨時のごまかしではないか。三年間を限つた見透しについての確信のほどを伺いたい。  それから第三には、供出の基本になるものはどこまでも私は地方、反別であると思います。地方、反別の調査も完了しないで、しかも反別は今度の法案にははいつておりません。しかしおそらくあるいは反別が基礎になると思います。その反別たるや実に信頼のおけない数字になつておりますが、この地方、反別の調査の完了前に、こういうことをやつてもむだではないか、おそらく政治的な腰だめできめるだけで、むしろあとはごまかし事であると解しますが、所見いかん、この三点をお伺いしたいと思います。
  48. 永江一夫

    ○永江國務大臣 第一点につきましては、私は数字的な基礎の結論をもつているわけではありませんが、かりに甘藷なら甘藷にいたしましても、事前に割当てました数量以外のものを自由販賣に向けるというようなことをかりにする場合を想像いたしましても、この方が農民諸君の生産意欲を刺戟し、また実質的に多量のものが、市場に自由販賣として出てくるという予想をすることはかたくないと私は思つているのであります。ほかの主食については、あるいはそういうことが数字的ではなしに、科学的な論拠をまたずして一應考え得ると思つているのであります。しかしながら食糧の絶対量が不足であるという現在、特に占領下の現在におきまして、私ども外國と対等な立場において諸種の貿易を行い得ざる特殊事情がありますので、やはり占領軍の好意ある食糧放出にまたねばならぬという実情から申しまして、主食と名づけられたものについては、今日ただいまとつておりまする制度をもつて私は最善のものであると考えております。主食の一部を自由販賣にするということは、見方によつては今御議論のような点があるかもわかりませんが、日本のおかれておりまする特殊的な現段階においては、さようなことは私は考えておりません。  第二の、この法案を三年間に限定して、三年のあとのことはどう考えているかということでありますが、この点も私は三年間のうちには日本もいわゆる講和会議の時期を迎えて、完全な独立國としてのいろいろな食糧政策がとり得ると思うのであります。こういう事情が三年間に大きく変化をいたしますならば、この事前割当とか、供出というようなものについては、おのずから別箇の考え方で審議し得ると思つているのであります。ただ三年間、臨時という名をつけておいて、なおどんどん延ばしていく、今お話のように生産者である農民諸君が自己の意思によつい生産をし、自己の意思によつて販賣をすることができないという非常に窮屈な状態に置くことを、なお三年以後も続けていくという意思はないのであります。  それから第三の点はごもつともなことで、これは今一、二の点で私が申し上げましたと同じような客観情勢のもとにおきましては、理論としては地方の完全な調査、反別の完全な調査の基礎的なものをもちまして、公平に割当ることが一番望ましてことであります。それが完全に行われていない際にかようなことを行いますことは、どうしても、やはりいい意味におきましても、政治的な考慮の上で割当が処われると思つております。しかしこれは事情やむを得ない、私どもとしてはできるだけ早く地方檢査、あるいは反別檢査も基礎的な完全なものを完成したいと考えております。
  49. 八木一郎

    八木委員 御答弁によりますと客観的な諸情勢やむを得ない事態にあるから、本旨ではないかという前提に立つての御意見でありますから、何をか言わんやでありますが、私は供出制度を布いてから今日までの実績をまた歴代の内閣のとつたこの食糧政策の跡を靜かに考えて見まして、およそ農民自体の考えていることと反対な方向へ、年とともに手をかえ品をかえて近づいていく、こういう姿をいつまでも続けていく、この先三年も続けていくということは、当初の目的である増産食糧確保という遂に遠くなるという見解に立つております。そこでやむを得ざる事態におかれておるというこの客観情勢はよくわかるのでありますけれども、かかる事態をもう少し掘下げて、その筋によく説得理解させるような方途を速やかに講じなくてはならないと考えております。それについては、やむを得ないのだといつて諦めてしまわれないで、この農林委員会の農地対策委員会等の意図を受けて、ひとつその筋に話してみるという御用意はないか。これを伺つておきます。
  50. 永江一夫

    ○永江國務大臣 もちろん私も生産農民諸君が自発的に増産に励み得るような方法について、農林委員会の方で有效適切な御意見のあるものは、これを尊重いたしまして、私の立場において関係方面に話して見るという意思は十分もつておるわけであります。
  51. 山口武秀

    ○山口(武)委員 初めお伺いしたいと思いますのは、私はこの法案は容易ならざる惡法案ではないかと思うのであります。と申しますのは、これまでの供出制度において、政府においてはそれぞれ要綱を決定いたしまして、供出に当つて來たのでありますが、各要綱におきましては、保有米の確保というような條項が一項目あつただけなのであります。ところが実際に供出にあたりましては、保有米を割いても供出しておけ。あるいはほかからやみで食糧を買つて供出しろ。そういうような現実事態があつたわけであります。ところがそのときにおきましては、まだ事前割当がなかつたのであります。今回の事前割当になりますと、災害はない。あるいはその他の特別の理由のないいわゆる豊年満作というような仮定に立つて割当がなされておると思うのであります。そういうような前提でなされて、当然これまでの割当よりは数量が増加しておるわけなのであります。この増加した数量をこれまでのように、しかもこれまでの実績を見ましても、要綱にあるようなことを完全に地方の役人によつて踏み破られるというようなことがあります。  以上、今度のより一層過重なる割当というものが、これまでのように天降り的に強制されることになりますと、これは農民として容易ならざる恐慌事態が現出するのではないかというように考えるのでありますが、この法案は、第一に保有米を優先的に確保する前提の上に立つておるかどうかという点をまず伺いたいのであります。
  52. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今お話のような御趣旨は十分この法案によつて実施できると思つております。
  53. 山口武秀

    ○山口(武)委員 大臣は実施できると申しておりますが、実情はそうならなくなるのではないかというように心配されるのであります。たとえば追加供出割当は行わないというようなことが規定してありますが、これは災害も何もない前提に立ちまして割当がくる、それを追い越するような生産数量の増加ということは、実際問題としてあり得ないわけであります。そういう点はよほど苦肉の策であるというように考えられます。  それならば次々にお伺いしたいと思いますが、この農業計画あるいは供出数量の決定に際しまして、食糧委員会はどれだけの権限をもつておるのか。たとえば中央の委員会あるいは町村長が農業計画を決定する場合におきまして、それぞれの各級の農業調整委員会の議決を経なければならないというように規定されておりますが、議決を経ることができない場合にはどういうことになるか、これをひとつお伺いしたいと思います。
  54. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今私がお答えしておる点が十分お尋ねの点と一致しないかもわかりませんが、もしお答えが適当でなければあらためて重ねてお尋ねを願いたいと思います。ただいま実施しております事前割当におきましても、こういう法規なしでやつておるのでありますが、それにつきましても麦などは、各縣の知事以下代表者の参集を願いまして目下補正中でありますが、そういうように事前割当の場合におきましては、必ずあとには合理的な補正が行われるということが、この法文の中で十分活用されると私は考えておるのであります。從つてその委員会々々々が民主的な意見によつてある程度の決定をいたしました場合には、その決定には生産者である農民諸君がこれに服していかなければならぬという民主的な運営でいくならば、私は完全とは申しませんが、公平な処置ができると考えております。
  55. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではさらにお伺いいたします。中央農業調整審議会というものができるそうでありまして、これは政令できめることになつておりますが、一体これはどういうふうにきめるのか。その予想をひとつ。  それから中央で割当をした場合におきまして、それを知事が受けて帰つたところが、縣の委員会におきまして中央から受けてきたものを否認された場合にはどういうことになりますか。この点をお伺いしたいと思います。
  56. 永江一夫

    ○永江國務大臣 地方委員会におきまして中央の委員会の指示を拒否しました場合には、あらためて協議をすることはもちろんであります。しかしやはり決定は中央において決定することが上位の決定であると考えております。  なおお尋ねの中央の機関でありますが、これは大体二十名くらいの委員といたしまして、半数は生産農民の側を代表する者、半数は学識経驗者、こういうような構想であります。
  57. 山口武秀

    ○山口(武)委員 半数は農民代表が選ばれるという場合におきまして、どういう方法で農民代表を選ばれることになりますか。その点をお伺いいたします。
  58. 永江一夫

    ○永江國務大臣 それはできるだけ地方から縣知事を通じて推薦をしてもらいたいと思つております。
  59. 山口武秀

    ○山口(武)委員 地方から選ばれることになりますと、府縣單位に選ぶことになるのですか。それともたとえば農民組合側あるいは農民團体があるという場合に、そうした全國的な團体から選ぶという方法はとらないかどうか。あるいは学識経驗者という言葉がありますが、これはどういう選出の方法をとるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  60. 永江一夫

    ○永江國務大臣 実はその内容についてまだコンクリートしたものを私どもは用意しておりませんが、一應そういうように中央でつくります場合には、地方から推薦を受けましたものの半数なら半数のものを私の方でさらに選考して決定する。その場合には、もちろん全國的な團体を背景としまする農民團体の意思も十分この委員会に反映できるような機構にすることは当然であります。
  61. 山口武秀

    ○山口(武)委員 第五條第二項についてお伺いしたいのであります。農業計画を定める場合におきまして、生産者の意見を徴しというようにありまして、次に幾項目かのことが書かれてあるようでありますが、この意見を徴するにはどういう方法で徴されるのであるか、その具体的な方法を……。
  62. 井上良次

    井上委員長 山口君に御注意申します。農林大臣は他の会議に呼ばれておりますので、今お聽きのような点は、事務当局から十分お聽きできますから、大きな問題に限つて質問していただきたいと思ます。
  63. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではこの問題はあとでお伺いいたすことにいたします。  次に第八條の第四項に「第一項の請求は、食糧管理法第三條第一項の規定による賣渡命令の效力を停止しない。」ということがありますが、今回の割合は先ほども申しました通り、いわゆる事前割当でありまして、災害がないという前提である。それに対してこの減額の申請をするのは当然な話である。実際問題として減收というものは必ずある。その場合に供出は減額してもらわなければ実際上できない。にもかかわらず賣渡し命令の效力を停止しないということになりますと、保有米を根こそぎ供出させる措置を実際に行われるのかどうか。この点をお伺いいたしたいと思います。
  64. 片柳眞吉

    ○片柳政府委員 第八條第四項の点でありますが、私から便宜お答えを申し上げます。もちろん供出割当がありますと、供出の期限が当然きまつてくるわけでありまして、これはやはりその地方農家経営の実際に應じまして、適当なる供出期限が設定されるわけであります。供出期限がきましたときに、その直前に異議の申立てをして農家供出の期限がそれによつて先へ延長されることになりますと、きりがつかないことになるので、もちろん異議の申立ては收穫直後に異議がありますから、その異議の申立ては当然供出割当がくる前に問題が解決されると思います。期限の直前に異議の申立てがあるということは大体ないと思いますから、実際上はこの條項を適用することはないと思います。
  65. 井上良次

    井上委員長 山口君、逐條的な問題でしたら、事務当局からあとで十分答えさせます。大臣質問したい人が多いと思いますから、こまかい点は議事の進行上あとにしてくれませんか。
  66. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではこまかい点については、委員長仰せ通り、あとで事務当局の方にお伺いいたしたいと思いますが、最後に一箇條だけお伺いしておきます。それは第十一條でありますが「市町村農業調整委員会は」という以下の條文があるわけでありますが、この場合におきまして、いろいろな農業生産の障害を除くための必要な事項を指示するということがあります。この指示がありましても從わない場合には罰則があるのかないのか。
  67. 山添利作

    山添政府委員 第十一條に関する御質問でございますが、從わないからといつていきなり罰則にかかることはございません。ただ從わない場合には、市町村農業調整委員会は、都道府縣知事に対してその指示に從うように命令を出してもらうように申請をする。それを相当と認めた都道府縣知事が指示に從うべき命令を出します。ところがその命令にも從わないということでありますならば罰則がございます。
  68. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私のお伺いいたしたい点は、八木さんあるいはただいまの山口さんから一應質問されておるのでありますが、私その点について、特にこの法律は生産並びに供出確保するという建前になつておるのでありますが、生産確保するためには、農民の生産のために必要なる食糧をまず確保するということが先決問題であると考えるのであります。山口君の質問に対しまして、いわゆる保有量を優先確保するということを、この法律の明確にしてもらいたいということに対する農林大臣の答弁は、私まだ納得がいかないのであります。現実に現在進行しております麦の割当の面を考えてみましても、当然農民に保有を許さるべきはずのものが、現在関係府縣等の間において補正についての折衝が進められておる、この見透しについて考えてみましても、その点が非常にわれわれには不安でならないのであります。保有量を生産確保基礎的前提條件として、明確にこの法律に規定していくということについて、農林大臣として、お考え願うわけにいかないかどうか、重ねてお伺いしておきたいと思います。
  69. 永江一夫

    ○永江農林大臣 その点は先ほどもお答えいたしましたように、生産農民の諸君が自己の保有米を割つてまで供出をする(「現にやらせておるじやないか」と呼ぶ者あり)そういうことにつきましては、これはやはり供出制度の大きな欠陥だと私は思います。從つてこの法律の中においては、やはり異議の申立ができる。そういうものについてやはり法的な根拠があるわけですから、その異議によつて保有米を確保することができると思つております。
  70. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点は運営の点で十分留意せられるという農林大臣の答弁でありますが、その点についてはわれわれとしては非常に強い要望をもつておりますので、委員会としての御答弁についてわれわれ委員側としてさらに研究をしたいと考えます。  次にこの点は八木委員から指摘せられた点でございますが、農産物價格におけるいわゆる再生産費確保という点を明確にしておかなければならないという点であります。この点も農林大臣先ほどの答弁では、私も十分納得するわけにはいかないのであります。特にこの價格決定にあたりましては、先般の米價改訂に関する本委員会の決議が本会議に上程されました場合に、農林委員長より價格決定の機関に対する委員会の意向が表明せられておるのでありますが、價格決定機関は大体どういうような構成で臨む方針でありますか。われわれはこれには当然生産農民の代表者を加えなければならないし、このことも明確にしていただきたいと思うのでありますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  71. 永江一夫

    ○永江國務大臣 その点はきわめて重要なことでありまして、私どもとしては、生産農民諸君の意見も十分に尊重すると同時に、やはり消費者の立場にあるものの意見も尊重するという二つの立場をとつてまいりたいのであります。從つてこれが決定前におきましては、もちろん國会方面を初めといたしまして、これに関連のあります各諸種の機関の御意見、生産農民の諸君の御意見も十分参酌をいたしまして、その上で決定をする方針ではありますが、しばしば申し上げておりますように、そういうために正式の機関をつくりまして、これに生産農民なら生産農民という代表者を加えた、そういう組織によつて價格を決定する、正式の機関によつて價格を決定するという方針は今日のところはできるだけ避けていきたいと思います。
  72. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点については、当然この法律に対するわれわれの最後的な態度を決定するまでに、價格決定の機関並びに方法等について、農林当局としての明確なる方針を本委員会に示していただきたいということを要望しておく次第であります。  次にこの点は山口君が質問せられまして、食糧管理局長官より答弁があつたのでありますが、第八條第四項の関係であります。この問題はいわゆる供出をしない場合の強権発動という問題ときわめて密接な関係があるのでありまして、大臣は麦の事前割当等については、現に補正が行われておるということでありますが、少くとも補正請求中の賣渡命令ということについては、補正が最終的な決定に至らない間においては、われわれはその賣渡命令の停止をしなければならないと考えるのであります。この点について大臣として、少くとも補正が最終的決定にいたるまでの間、食糧管理法による賣渡命令をその期間停止する考えがあるかどうか、その点についてお答えを願いたい。
  73. 永江一夫

    ○永江國務大臣 この点はこの法文に書いてありますように、私どもとしてはやはり賣渡命令の效力を停止しないという方針をもつていきたいと思つておるのであります。これは異議申立ということは相当長期に亘つておるのでありまして、その間において先ほど申し上げました、いわゆる民主的な機関によつてある程度の額が決定されるものと思つております。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私はその点については、特に災害が最近のように頻発する場合において、大いに考えてもらわなければならない問題であると思うのであります。殊に補正を適切かつ迅速にやるという観点から考えますならば、少くとも災害率の範囲内のものは、当該府縣あるいは市町村に留保せしむるという程度の処置は、講じされなければならないと思いますが、その点については農林当局としていかにお考えになつておるのでありますか。
  75. 永江一夫

    ○永江國務大臣 これは、御承知のように、全國的な問題の中で一地方だけを留保することになりますと、かなりまた違つた面から弊害が出てくるのでありまして、御承知のように、農林当局としましては、生産者の皆さんにいろいろなことでお願いをいたす立場と、もう一つは、やはり全國民の消費者としての側に対いる責任と、二つをもつておるのでありますから、やはりこの二つの両者の立場から考えまして、一地方のそういう事情によつて保留するということは妥当でない、こう考えております。
  76. 田中織之進

    ○田中(織)委員 農林大臣にもう一点だけ伺つておきたいのであります。その点は、現在行われておる事前割当にあたりましても、われわれはこの事前割当を完遂するためにも、その前提條件としては、あくまで農業に必要なところの肥料その他の生産資材確保が先決問題であるということを主張してまいつたのであります。現に第三條の第三項において、それらの生産資材の供給に対しまして、主管大臣のいわゆる指示権を規定しておりますが、この点については、農産物の対する供出制度、しかもこれに対する罰則あるいは強権的な処置というものが規定せられておるのに対しまして、その前提になりまする生産資材確保については、きわめて片手落な制度が現在行われておると考えるのでありますが、この点につきましては、ただ單にこれらの資材の供給を確保するために必要と思われる事項を指示することができるという程度のなまぬるいものではなくて、生産確保並びに供給の確保の両面にわたつてこの指示権を少くとも義務化していかなければならないと考えるのでありますが、その点について農林大臣はいかにお考えになつておるかお伺いしたいと思います。
  77. 永江一夫

    ○永江國務大臣 その点は非常にごもつともな御意見と思いまして、私どもとしては、できるだけ生産資材確保を行つて、これによつて生産の基本としたいという考えでありますが、生産資材生産に関しましては、やはり今の行政機構の上におきましては、おのずから農林大臣の限界があるのであります。その限界内におきましては最高度の責任をもつて生産資材確保に努める、こういう考え方で、この法文にその点を明らかにしたつもりであります。
  78. 井上良次

    井上委員長 次に松澤君に農林大臣に対する質問を許します。
  79. 松澤一

    ○松澤(一)委員 こまかいことはあとでお聽きするとして、農林大臣にひとつお聽きしたいことは、この緊急措置法をつくる上に、現下の日本食糧確保する上に、農林大臣として農業計画を立てる上において、どのくらいの食糧確保する予定か。外國の放出食糧その他をにらみ合わせて、農民から非難のないように、供出がスムースにいくように、その他農民の不平の起らないように、どれだけの食糧確保したらこの措置法が完全に行えるかという御方針をお聽きしたいと思います。
  80. 永江一夫

    ○永江國務大臣 その点は、ただいまの日本食糧生産條件から申しまして、どこに限度を置くかということは、非常に困難な問題だと思つております。御承知のように、生産農民の諸君が、自発的に進んで不平なく供出をしてもらう限界というものを、かりにこういう法規でなしに、自由にやつていただく、こういうことにしますれば、そこで一定の数字が出てまいると思うのであります。この一定の数字は、下から個々の生産農民の諸君が、これだけのものを供出するという数字を出しまして、そうしてピラミット形に最後農林省でその数字について供出量をきめるということになれば一番弊害はないと私は思つておりますが、それは、数字全体といたしましては、日本の配給面における数字との間に当然大きな開きが今日あると思います。その開きを少しでも縮めようと思いますと、そこにやはり生産農民の諸民の側からいろいろな意見が出てくるのであります。そこでどれだけが妥当であるかということについては、私どもとしては、本年事前割当を行いました数字が、いろいろ議論がありましても、総量としては今日これだけのものをするのが生産農民諸君の不平のない数字だ、こう思つてつておるとは申しません。しかしながら、今日事前割当をいたしました数字というものが、一應日本の現在の実情に即したところの妥当な数字である、こう考えておるのでありまして、この数字をどこに妥当性を置くかということについては、私は、今日事前割当をいたしました数字が一應妥当なものである、こう考えておるわけであります。その点について、生産農民の諸君から不平のない数字はどこが妥当であるかということになりますと、今申しましたように、上からの割当でなしに、個々の生産者の末端の自発的に出すところの数字を機械的に総合しましたものが一番不平のない数字であるということは当然であります。それを消費関係におきましては、私どもが一應の数字を出して、これに協力を求めるという形をとつております今日の供出制度におきましては、どうして生産農民諸君が満足する数字というものを出すかというような御質疑に対しましては、この数字が一番満足し得る数字だということは言い得ない事情にあります。
  81. 松澤一

    ○松澤(一)委員 農林大臣に私が質問するようなことを聽くことも無理かもしれませんが、それでは農林大臣は、今までと同じように、旧態依然として、現下の日本の場業事情だけを見て数字だけをおつつけていくという農業計画でございますか。ただ数字だけをおつつけて、そうしてなるたけ弊害のないようにやつてもらいたいものだというだけでなく、その根本をなす農業生産に対する永江農政の所信を承つてみたいと思います。
  82. 永江一夫

    ○永江國務大臣 松沢君から重ねてお尋ねでありますけれども、私はそういうことの合理化をするために、やはり法的根拠をもつ方法がいいとしてこの法案を提出したのでありまして、この法案の中にその私の考え方は一致しておる、こう御了承を願いたいと思います。
  83. 松澤一

    ○松澤(一)委員 いやしくも現下の日本食糧事情考えるときに、いかにしてこの難局を打開していくかということについては、農林大臣としてその根本をなす農業増産のことを考えなければならない。ただあなたが農林大臣中非難のなるたけないように、どうにかこうにかこれをやり過ごせばいいというには、あまりに日本食糧事情は窮迫しておる。しかし私はこういうことを言うことも今の農林大臣に対してはむりかと思いますが、それでは今の農林大臣には、將來日本食糧問題に対いる見透しのある識見がないと私は断定するのでありますが、ただ、今の実情から見て、これではしかたがないではないかと思われる点について御質問をいたします。政府は、主要食糧確保する上において、奬励制度や報償制度等適当の措置を講ずる、こううたわれておりますが、これは作付制限と米價の問題等が当然農林大臣農業計画に織りこまれなければ、今後において供出その他食糧の問題の解決は一歩も踏み出すことができません。從つてこれに関連して申し上げますが、米價等の問題で、今の農林大臣は、報償制度、その他のそういうわくでたいをつるような旧然依然とした政策をとつていくのか、あるいはそれとも適正米價によつて農民の増産意欲、供出意欲を増進する御計画があるのか。殊に肥料等に至つては、土地につくべき肥料でありまして、この肥料が逼迫しておるときに、農民の一番必要とするようなものを報償制度の対象にしたり、あるいはその他農民をつるような制度を考えて、農民の根本的不平、不満を解決する途を講じないということは、いかに暫定的な農林行政といえども、私はあまりに策のないものだと思つておるのでありまして、この点に対して農林大臣は、將來の奬励制度などに対しても、どういうような構想をもつておられるのか。やはり同じように、農民に衣料をやるとか、報奬をやる、これだけ出せば何をやるというような、ただ計画の制度であるかどうか、それをお尋ねしておきたいと思うのであります。
  84. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今いろいろ松沢君から私の考えが非常にその場限りのようにお叱りを受けたのでありますが、私はそうは思つておりません。しかしこのことは今申し上げても、これは議論になりますので、松沢君の御認識の上で御質問願つたものとして私もお答えいたします。  まずリンク物資のことについても、今まで通り何か報償制度だけで農民をつるような方針でいくのかというお話でありますが、私はそういう考えはありません。できるだけ本年からは報奬物資というようなことについても、その実体はあまりかわらないかもしれませんが、報奬というような言葉をとらないつもりでやつております。從つて報奬物資というその言葉もできるだけ閣議においても使わない、報償金という言葉も使わない。もし報償金という言葉を使いました場合には、少くともそれは税の対象としてのけるというくらいの覚悟をもたなければ、報償金というような字を使わないでやる、こう考えておるのであります。從つてあくまで今までの農民諸君のいろいろな経済的の面におきまする個人及び團体的の仕事についても、一方で政府が上から補助金をやる、あるいは農業土木に対しても、政府の補助金を一方的にするというのではなしに、自主的にこれをやつてもらうという面をだんだん強化していく。そのためには農業土木についても、長期の金融を行つて、そうしてこれで政府の補助というものを唯一の頼りにしないような方向に導いていくというようなことを私は考えておるのであります。報奬物資についても、今報奬と名のつく限りはあくまで報奬の性格をもつて、そうでないものは適切な言葉はありませんから、今リンク物資としてせつかく政府で本年度分については実施のために具体策を檢討中でありまして、近く公にするつもりでありますが、今お話のありましたような肥料などは報奬物資の中には入れないつもりであります。また從來報奬物資といわれておりますいろいろなものの中には、農家に実際に適せないものがありますから、そういうものを全部除きまして、リンク制度として農家生産の裏づけにすべき物をもし農家に配給していく場合においては、あくまでも農家が実際に要求しておる衣料なら衣料についての綿製品の製品でなしに、原反のままで渡すというようにして、リンク物資の数量を非常に種類を局限したのであります。從つて今までのように、いろいろ商工業者と政府あるいは地方官廳のこれらの関係者と話をしまして、あれも報奬物資だ、これも報奬物資だとして、農家には実際適合しない、しかも高額なものを報奬物資としてやるというような印象を除去いたしますために、今度政府で決定いたします報奬物資にあらざるリンク物資については、その数量、金額、種類というものを明確にいたしまして、政府の責任において発表するという方法で、重ねて申し上げますが、報奬という言葉を避ける方針であります。
  85. 松澤一

    ○松澤(一)委員 食糧確保の上に重大な関係は米價の問題でありますが、そうすると農林大臣は報償制度の米價問題でなくして、今後は單独な公正な適正米價をきめるお肚のあることを私はみておるのであります。その適正米價たるや、日本独特の経済の上に立つて賃金ベースである物價体系などに掣肘されない日本の重要食糧としての適正米價をきめる御意図があるかどうか、この点を一つお尋ねいたします。  それから次に日本將來は——これも見解の相違になるかもしれませんが、食糧だけは自給体制を進めたい、こう思うのでありまして、それには將來有畜農業が重大である。現に日本では、その農家の七割がまだ鶏一羽も飼つていないという貧農であります。そういう方面での貧農であります。これを助長する意図があるかどうか、それに対して、しばしば農林省は山林原野の開放に対して、資本家やあるいは山林業者に対してかなり氣がねをした声明ばかり行つておるのであります。將來日本の山林経営を、治山、治水の見地からも、いろいろの意味で、奥地林、近接林の経営形態をかえていかなければならない。從つて近接林等に対しては農山村に開放することは、ちようど太平洋を沿岸民に開放すると同じように、当然私は今後の農林行政に重大な区画をなさなければならぬと思うのでありますが、この点に対して、農林大臣は今のような森林原野の経営形態を続けていくのか、それとも將來はこれら近接林野については、山村に対して計画的に開放し、もつて日本食糧確保考えを及すか、この重要なる点を一つここに聽いておきたいと思うのであります。  その次は食糧確保の上に一番重要なことは、この法案の中にも作付制限の点がうたわれておるのであります。往年戰爭中の作付統制令ほど強いものか弱いものか、あるいはどの程度のものか、抽象的でよくわからないのでありますが、こまかいことはまた別の方に聽くとして、農林大臣のこれに対する所見をひとつ承りたい。現下日本食糧事情を急迫しておるにかかわらず、供出が不公正であるために、かえつて農民は土地の轉換をやつておる、いわゆる現金收入を目的とする企業形態へと進んでいくという考え方をもつて、米麦の作付耕地が果樹園になり、あるいはまた野菜園になつておる情勢、日本食糧がますます縮まつていくという現状をわれわれはよく知つておるのであります。これに対してどの程度作付制度を試みようと思つておるか。また農林大臣農業計画の上に、これがどの程度效力を発生していくか。この点ひとつ御所信を承つておきたい。なお將來の農村経営の上に重大なことは、これはまた食糧確保の上で重要でありまして、農業経営形態、現在のような経営形態でいくのか、それとも共同作業的にこれを指導するのか、あるいは共同管理のような形にこれを指導するのか、何か日本農業経営の上に、農林大臣としての所見がなければならぬと思つておるのであります。これも先に言うと、見解の相違、議論になるからと言うが、私は今の農林大臣と農林行政に限つて議論しようとは思つておりませんが、朧氣ながらでも私はこんなことをしてみたいという御所見だけは、日本農林大臣である限りひとつつておきたいと思います。もう一つは、農林大臣は農民の一番の大將であります。從つて日本の農村のことは何かにつけて農林大臣は向うはち巻で農村の経営のことも、増産のことも、農民の要求のことも考え、まつしぐらに農民のためをはかつていかなければならない。もちろん他の振合いも考えるということは、理論上もつともであります。それが強く反映してこなければならないと思うのでありますが、どうも米價の問題その他今までの御答弁の模樣をみても、何か私は農林大臣が確固たる方針をもつて、ほんとうに農林省日本農民の大殿堂だ、農林大臣は百姓の親方だ、よし、わからぬことはおれのところにもつてこいというだけの、將來日本農村の経営あるいは農村一般の問題に対する御所信に対して、何か附け燒刄があるような氣がして仕方がないが、素人議論でよろしゆうございますから、いやしくも農林大臣のいすを占めた限り、農林大臣としての片鱗だけでも承つておきたいと思うのであります。
  86. 永江一夫

    ○永江國務大臣 第一の米價の決定のことでありますが、これは申すまでもなく、私は適正米價の方針をとりたいと思います。その実際問題といたしましては、合理的に考えていきますればあるいは米價のスライド制ということが考えられるかもしれませんが、やはり今日では米價の決定はパリティ計算による方式をとつていくよりほかはないと考えております。しかしそのパリティのいろいろな品目及びウエイトの置き方については、なお私どもは十分檢討を加えた上で、本年産の米價についてもパリティ計算をとつていきたいと考えておるわけであります。  それから食糧については自給自足をすべきであるという御見解については、私もそうありたいと思つておるのでありますが、しかしこれは実現ということになりますと、非常にわが國の事情から申しまして困難ではないかと思うのであります。從つてある程度は輸入食糧というものを、どうしても仰がなければならぬ形にありますので、この点はこの法案に三年間と限界をもつております間において、先ほどもお答えしたように、わが國における食糧事情の好轉ということの中に、外米の輸入ということを一應考えの中に入れて私はお答えをしたのでありまして、將來はこれがいわゆる占領軍の放出物資によつてまかなうのではなくて、日本のいわゆる自主的な考えにより、外國食糧の輸入という面から考えていき得ることでありますから、その際においては、よく言われますように、諸外國の廣大な農業経営合理化されたものから生産された農産物の自由なる輸入が、わが國の農村経済に非常な強激な影響を與えまして、その結果農村恐慌が起きるというようなことに非常な心配があることも当然でありますから、私は農村恐慌ということの限界を十分に檢討いたしまして、その限界を越えざる範囲におきましては、やはり一定量のものを日本の自主的な考えにより外國食糧の輸入によつてまかないながら、國内における農村経営というものが高度に成立つていくようにいたしたいと思つておるのであります。從つてその中に、お話のありました有畜農業の総合的な農業計画というものは、当然私どもとしてはこれを拡充してまいりたいと思つておるわけであります。  さらに林野の徹底的な開放につきましていろいろお話がありましたが、この点は、現実の問題といたしましては三党政策協定の線に沿いまして、第三村の農地改革につきます内容、限界等を、いずれ近く委員会等によりまして限界点をもちまして、その上で実施をしていきたいと考えているわけであります。  なお作付制限を非常に強化していくのかどうかというような御意見がありましたが、私はやはり本法によりまして適切なる事前割当が行われることによつて、一應現下の主食の問題についての基礎ができてくるのでありますから、作付面積の点でこれを強化していくということよりも、本法案の精神を生かすことによつて事前割当の面から主食確保を考うべきであると思つております。  なお農村が將來どういう方法でいくか。ソ連あるいはアメリカ等の方法をどういう程度吸收していくかというようなことについてお尋ねがありましたが、私はやはり農村の基礎として新らたにとられましたところの農村民主化の方針、すなわちこれを具体的に申しますならば、いわゆる農地改革の徹底化によりまして、その農村の組織なり機構が、封建的なものを打破する実際的な形にすでにはいつておるのでありますから、この組織に副いまして、やはり農村の協同化ということが必要になつてくるのは当然のことでありまして、あくまでもこの農村の協同化の建前から、農村というものが個々に独立した一人々々の企業でなしに、協同化されたものとしていくという面を進めていくことが、日本の農村経営には重要なことであると考えておるのでありまして、いろいろお話がありましたように、お前は農林大臣になつてから、まことに農民の代表として最高の責任をもつに足らぬから、非常に附け燒刄のような感があるから、しつかりせいということにつきましては、松澤君の御親切な御鞭撻だと思つて、ありがたくそのお言葉を頂載しておきます。
  87. 井上良次

    井上委員長 次に溝淵さん。時間がなくなつておりますから簡單に願います。
  88. 溝淵松太郎

    ○溝淵委員 先ほどから同僚議員の多くによりまして質問されましたが、私の了解のいかない点を二三お尋ねしたいと思うのであります。この法案は、第一條におきまして法律の目的を明らかに示しておるのであります。この目的によりますと、公正にしてかつ計画的な割当を行うということになつておりますが、ほんとうに公正な割当が行われ、計画が立てられるならばよろしゆうございますが、もし過まつて不合理な、不公正な計画が樹立されましたならば、戰時中の惡法であつたところ熊作付統制令に、さらに重い罰則を加えたところの惡法を再現するものだと私は思うのでございまして、そういうことをおそれるのであります。そこで農業の計画を立てるのには、経営が赤字になるかならぬかということをまず第一に考えなければならぬと思うのであります。経営が赤字になつて農業は成り立たないのであります。この農業の成り立たないところに、食糧確保も、供出の完納もないのであります。私は合理的な公正な計画が立てられ、供出割当ができるために、政府は中央農業調整審議会をつくり、都道府縣知事の意見を聽いて、そうして計画を立て供出割当を定める、こう言うておられますけれども、この審議会というものは決議権をもたない單なる政府の諮問機関であつて、法的にきわめて力のないものでございます。もし官僚が独善的に自分の意思を押し通しても、これらの審議機関がこれを是正する力のないものでございます。かようなことによつて公正な割当てができるかどうか、私はできないのではないかと思ついおるのでございます。何ゆえに政府はこの審議会を決議機関にしないのであるか。しかもこの構成メンバーの規定というものを政令でもつて定めるということになつておるが、近ごろの政令は朝に出して夕には変改せられて、國民は政府の政令というようなものにはきわめて信用を置かなくなつておるのであります。何ゆえに簡單に改められないところの法文をもつてこれを規定せられないのであるか、私はこの点をお伺いするのであります。食糧事情の必要性から考えまして、どうしても増産をしなければならぬ、供出も完納しなければならぬということは、よく農民は知つておるのでございます。だが赤字経営が続いて経営が成り立たなくなつては、いかに増産をしようと思つても、供出をしようと思つてもそれはできぬのでございます。経営の成り立つような合理的な公平な計画の樹立をされなければなりません。この点につきまして政府の御所見を伺いたいと思うのであります。これを決議機関にする意思があるかないか、政令でなく法律をもつてこれを定める意思があるかないか、一にこの審議機関のあり方によつて農民の経営が根本から覆される。また惡法になるか、よい法律になるかということのわかれ道でございますから、政府の御所見を伺いたいと思うのであります。
  89. 永江一夫

    ○永江國務大臣 今溝淵君からお尋ねになりましたように、いかに法律ができましても、実際に生産に当ります農家において経営が成り立たないというようなことでございましては、当然法の目的を達することはできないと私も思つておるのでありますが、それについては、今お示しになりましたようなこの機関の問題でございますが、この法文の中では縣市町村の機関は決議機関になつております。しかし中央のものが一應諮問機関であるというところに御不満があると思いますが、これは実際の状態につきまして十分御了承でありましようし、先ほど松澤君からのお話のときにも申し上げておきましたように、末端からずつと集めまして、そうしてそこに一つの計画が立つて供出の量がきまつてくるということが一番民主的に望ましい形でありますが、実際としては今日非常に食糧事情の逼迫しておりまする状態においては、ある程度、どこかで必要と考えられる総合的な数字に基いて操作をしなければならぬ面があるのであります。從つてこれらの機関につきましても、あくまでこれら機関の意見は私ども尊重をいたしていくつもりでありまして、特に中央の機関につきましてもこの機関があります以上は、諮問機関でありましてもその意見は十分私ども尊重をするつもりでありますが、最後の決定につきましては、今日のよま宏事情においては、やはり中央の機関は諮問機関としてこれを置くということが適当ではないか、こう考えておるわけでございます。
  90. 溝淵松太郎

    ○溝淵委員 まだお尋ねいたしたいことがありますが、農林大臣が他においでになるように承りますから、留保いたしまして打切ります。
  91. 井上良次

    井上委員長 私から一應政府に警告することがあります。それは昨日重富委員からも質問がございましたように、政府は法律的処置によらず、事務的処置として、法律を当然國会が通るものとの仮想の上に立つてこの事前割当が行われていることについて、非常に本委員会としては遺憾の意をもつております。なお單にこれだけでございません。現に提案されております協同組合法の一部改正法律案について、まだこの法律案が國会で審議されていないにかかわらず、すでに事務当局は各縣に対して農業協同組合の將來の結成の方向のあり方について一つの命令を発しております。かくのごときは現行の法律を無視するもので、はなはだ遺憾の至りであります。農林大臣はただちにこの実情を調べて、本委員会にその処置を一應御報告願いたいと思います。そうしませんと、協同組合法の審議について、委員会としては非常な疑惑をもつておりますから、この点は政府に警告し、政府から事務的処置についての経過を委員会に報告を願いたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から開きます。     午後十二時二十九分散会