運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1948-05-21 第2回国会 衆議院 農林委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十一日(金曜日)     午後一時四十分開議    委員長 井上 良次君    理事 佐竹 新市君 理事 鈴木 強平君    理事 寺島隆太郎君 理事 萩原 壽雄君      小野瀬忠兵衞君    佐瀬 昌三君       重富  卓君    田口助太郎君       綱島 正興君    野原 正勝君       松野 頼三君    梁井 淳二君       伊瀬幸太郎君    勝間田清一君       河合 義一君    成瀬喜五郎君       野上 健次君    細野三千雄君       菊池  豐君    小林 運美君       関根 久藏君    圖司 安正君       坪井 亀藏君   的場金右衞門君       平工 喜市君    大瀧亀代司君  出席國務大臣         農 林 大 臣 永江 一夫君  出席政府委員         農林政務次官  大島 義晴君         農林事務官   伊藤  佐君         林野局長官   三浦 辰男君  委員外出席者         專門調査員   片山 徳次君         專門調査員   岩隈  博君     ————————————— 五月二十日  農村工業助成に関する請願萩原壽雄紹介)  (第一〇二〇号)  愛知縣土地改良事業並びに農業水利改良事業  継続施行請願水野實郎君紹周)(第一〇二  三号)  北山村の國有林立木拂下請願大野伴睦君紹  介)(第一〇二四号)  昭和二十三年産主要食糧供出割当に関する請  願(神田博君外二名紹介)(第一〇二五号)  農村工業助成に関する請願願中島茂喜紹介  )(第一〇二九号)  同(天野久紹介)(第一〇三二号)  同(内藤友明紹介)(第一〇三四号)  鳥取縣農業土木事業施行請願庄司彦男君  紹介)(第一〇三九号)  臨時物資需給調整法並びに木材需給調整規則緩  和に関する請願田中松月紹介)(第一〇四  二号)  昭和二十三年産米價格決定に伴う措置に関す  る請願今澄勇紹介)(第一〇四四号)  木蝋の油糧配給公團移管反対に関する請願(細  川隆元紹介)(第一〇四九号)  物部川貯水池設並びに堤防補強請願(長野  長廣紹介)(第一〇五七号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農地開発営團の行う農地開発事業政府におい  て引き継いだ場合の措置に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出)(第六二号)     —————————————
  2. 井上良次

    井上委員長 これより会議を開きます。  本日は農地開発営團の行う農地開発事業政府において引き継いだ場合の措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題に供します。まず政府説明を求めます。農林大臣
  3. 永江一夫

    永江國務大臣 農地開発営團の行う農地開発事業政府において引き継いだ場合の措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由の概要を御説明申し上げます。  御承知のごとく、農地開発営團は、昨昭和二十二年九月二日附をもつて閉鎖機関に指定せられ、爾後閉鎖機関整理委員会において特殊整理を実施中でありますが、農地開発営團の実施しておりました事業のうち、農地開発法の規定による農地開発事業と、政府の委託による緊急開拓事業は、政府みずから実施することといたし、この場合における必要な措置に関しまして、さきに第一回國会において農地開発営團の行う農地発事業政府において引き継いだ場合の措置に関する法律の成立を見た次第であります。  政府はこの法律によりまして農地買收農業水利事業負担金徴收の手続を進めるとともに、一方政府事業を引継ぎ実施するに必要な資材買收人員引継等を行い、事業の円滑なる施行努力を続けてまいたのであります。しかして、政府において事業をみずから実施するために農地開発営團から引継ぎました職員に、あるいは資金渡吏史を命じ、あるいはその他の責任ある任務を負担せしめることは、事業壺行上必要欠くべからざるものでありますので、その一部を政府官吏といたす必要があるのであります。ここにおきまして、この職員設置理由たる政府の機能の増大せるゆえんを法律をもつて明確にすることが適切であると考えられますので、ここに本法案を提出いたした次第であります。  何とぞ愼重御審議の上、速やかに御可決あらんことを切望いたします。
  4. 井上良次

    井上委員長 この法律案は今政府説明通り、きわめて簡單法律の改正でありますし、かつ時期を急いでおりますので、この法律案を先に審議することにいたします。  これより質疑にはいります。質疑通告順によりましてこれを許します。野上君。
  5. 野上健次

    野上委員 本法案審議にあたりまして、一應私は現在の開墾開発事業がどういうふうになつているかということを明確に御説明を願いたいと思うのであります。本体政府当局は今日の開拓者生活状況入植者生活はどういう状態におかれており、しかも開墾が具体的にはどういうふうに進んでいるかを明確に御認識になつているかどうかということを、私ははなはだ疑わざるを得ないのであります。現に開拓者の半数以上は、ほとんでその生活に窮してしまつている。そうしてまつたく最低の生活を維持するといいますか、奴隷的な生活の中に、この開墾事業とまつたく血みどろの戰いを挑んでおるわけでありますが、それでも年々脱落していくところの入植者が過半数に及ぶのであります。何がゆえにかかる状態におかれているかということを政府当局においても十分反省せられなければならぬことだと思うのであります。靜岡縣の三万ケ原入植者の大部分は脱落していつておるようなありさまであります。しかも私は、こうした実情において、政府が所期されるところの開墾事業計画通り進むかどうかということについて、疑いなきを得ないわけであります。そうした観点から、一應私は、ここにさらにまた農林省職員増員するということを、法律として提案されておりますが、その前に、現在こうした開拓開墾事業に携つておる政府職員は、現在員大体どれくらいあるか。ここに簡單な資料をいただいておるわけでありまするが、これによりますると、本省と事務局合計は四千百九十二名、そういつた数字が出ておりまするが、実際においては、私ども考えるところでは、地方都道府縣、あるいは地方事務所、あるいは開拓協会、その他直接間接に開墾事業に携わり、また指導にタツチする人員は、おそらくは三万数千名に及ぶではないかと思うのであります。その点ひとつ明確にお知らせを願いたい。さらに増員をされるとするならば、大体どれくらいどういう範囲に増員をしたいという御希望をおもちなのであるか、この点を明らかにしていただかなければ審議の方法がない。  次に今までの実績について簡單に檢討してみましても、昭和二十年から二十一年、二十二年と三年間において、開拓関係の総予算は約五十億を要しておる。二十三年度にはさらにまた五十億の予算を要求されていると聞くのでありますが、この各三箇年間における既開発は約三十万町歩と言われておる。その三十万町歩既開発のうちに、実際に作付をされているものは約十四万町歩であります。しかもその間入植された戸数は十三万八千軒余である。そうすると、概算でみましても、一戸当り所要経費は約三十五万円なのであります。実際に入植者開墾地に向つて行く場合、大きな希望に胸をふくらませて行くときに、いくら金をもたしてやつておるか、営農資金その他において大体一万円見当しかもたしてやつていない。ところが一戸当りの出費三十五万円という莫大な経費が消費されているが、これは大体どこに消費されているか。今私が指摘したように、実際こういう計画に多くの政府職員がタツチしておつて、ほとんどそれらの人々出張費であり、事務費であり、非常に煩瑣な事務費等にそうした経費が使われているではないかということを、私は一番心配するのであります。大体開墾所要経費いくらになつているかということを、この際明確にしていただきたいのであります。さらにまた現在の開墾から開拓地に対する供出数量の実際はどういうふうになつているか。この開墾によつて実際に日本食糧増産にどういう寄與をしているかということも明確にしてもらいたい。去る五月十一日の総司令部天然資源局の談話によれば、今日の開拓計画開墾計画というものは、きわめて非現実的な開墾案であつて食糧不足はこれによつて補うことはできないうことを明確に指摘されている。この開墾案昭和二十年の十一月、幣原内閣時代に百五十五万町歩開墾をするというように決定されて、されにまた細年二年間計画が延期されておりまするが、こうした計画でもつて、ほんとうに日本食糧増産をはかることができるかどうか。その要するところの非常に多額の諸経費をにらみ合わせた場合に、一点の疑義なきを得ないわけであります。むしろ私はこうした多額経費を投じて、將來全然望みなしとは言いませんが、この生産率の低い開墾を続けていくよりも、むしろこの開墾事業を非常に整理されて、重点的に有効に経費を使つていただきたい。かように思う次第です。政府にこの開墾計画について、もつと具体的に、実際的にこれが整理をなし、直接に早急に日本食糧問題に寄與するというようなお考えがあるかないかという点を、ひとつお伺いしたいわけであります。その他附帶してお伺いしたいことがありますが、一應以上申し述べた点について政府の御意見を承つて、さらに質問を継続したいと思います。
  6. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいま野上君からのお尋ねにつきまして、一應大綱のところを私から答辯いたしまして、あと開拓局長が補足的に答辯をいたします。今御説にありましたように、開墾開拓目標といたしておりますものは、もちろんわが國の食糧増産の点にありますけれども、これが完全に行われることによつて、わが國の食糧需給関係が完全になるということは申し上げかねるのであります。やはり自給度を高めるということに開墾目標一つがあります。他の一つは、何としましても満洲その他の開拓民諸君等終戰後内地に帰られました一つ戰爭犠牲者に対する政府の処置としての、一つ目標をもつているのであります。この二つの点から開拓を行つておるのでありますから、從つて開拓事業そのものを見て、これの効果がわが國食糧の自給自足をバランスするためにその効果をねらつておる。こういうふうにはならない点があると思うのであります。今いろいろ御注意のありましたように、そのために経費が莫大に要つておるということで数字的にお話がございましたが、これはあとから局長から数字について御答辯申し上げますけれども本案を提出いたしました趣旨は、すでに御承知のように、これらの人員営團から政府嘱託の形で引継いで使つておるのでありまして、ただ金銭その他を扱う上において、いわゆる法的措置としてはこれらの一部分を官吏として身分を明らかにいたしたいこういう趣旨でありますから、支出の面におきます人件費は変らないわけであります。ただ身分嘱託から官吏に移すというのが本案趣旨でありますから、さよう御了承願いたいと思います。     〔速記中止
  7. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 私から大臣のおつしやいましたことを補足して申し上げます。増員の点につきましては、大臣の御説の通りで、これは資格をかえるだけでございまして、予算的には何ら変更ございません。ただ出納官吏等官吏にいたしませんと実際仕事ができないという面と、責任のある地位に立たせるという意味で、現在の嘱託本官に直すというだけでありまして、実質的にも予算的にも変更はございません。そういう意味営團から引継ぎました人間が二千八百人余りございまして、そのうちの九百二十八人だけを本官に直すというだけでございます。  それから縣の方を合わせれば、開拓関係に從事しておる者は二万人ぐらいおるのではないかというお話でございますが、縣の方の関係は詳しい数字を持つておりませんが、開拓土地改良用排水災害復旧、これらを含めますれば、おつしやるような数字が出るかもしれませんが、開拓だけではそんなにございません。  それから三十万町歩開墾ができておつて、十四万町歩作付は少いではないかというお話でありますが、これは肥料の関係等もございますが、開墾地は、御承知のようにかなり果樹園などをやつておるところもございます。こういうものは数字に上つておりません。十四万町歩というのは要するに主食と蔬菜だけの面績でございます。  それから今までの一戸当り経費を計算してみると三十五万円程度になるではないかというお話でございますが、これは入植者十四万戸のほかに二十万町歩増反開墾の分を含めて五十億という勘定になりますので、そういうふうに勘定してみますと、純粹入植者につきましては、かような大きな数字にはならぬと思います。いわゆる補助開墾によつて四割の補助をいたしておりますが、その分が二十万町歩ばかりあるわけであります。  それから供出数量はどういうふうになつておるというお話でございますが、これは一部にはすでに供出をしておる所もございます。まだ全國的に私どもの方で計数がそろつておらないのであります。ただいまこれを各府縣からとつておりますが、大体におきまして入植三年目というのが一番古いのでありまして、いわゆる農家の保有量を差引いて余裕があるという所は、現在のところきわめてわずかでございます。一部はすでに供出をしておる所もございます。  それから生産量の問題は、これは現在の実收高の調査の中には全部上つてきておるわけでありますが、特に開拓地としていくら既耕地としていくらという統計を、今までとつてきておりません。これをはつきりさせる必要がありますので、この次の実收高のときからさようにいたしたいということで、統計方面と話をやつております。  それから今後重点的に金を扱うようにというお話でありますが、この点は私どもも御同樣に考えておりまして、開拓につきましては、現在までに入植しました人の生活を何とかして早く安定させるということを第一にいたしております。もう一つは、ただいま大臣からお話のございました、満洲あるいは樺太から引揚げてまいりました開拓者人々入植させたい、この限度に考えております。しました人の生活を何とかして早く安
  8. 野上健次

    野上委員 ただいま大臣及び局長からの御説明を承りましたが、なお私発、先般の十一日の天念資源局の声明の問題は、一應大臣説明で了承するといたしましても、現実にこの開墾計画がすぐに日本の今日の食糧問題に大きな寄與をもたらすところが少いと思う。私は、開墾はもちろんなすべきでありますが、こうした放漫な開墾計画というものをさらに一應檢討してみて、そうして実際経済的に十分採算のとれるような開墾計画を建てていただきたいと思うのであります。同時に土地改良事業であるとか、あるいはその他の増産方面にこの資金をまわしていただくならば、むしろ実際的な効果食糧増産の点において現われるのではないかと思うわけであります。こうした点について私は総合的な計画をひとつ立ててもらわなければならぬと思います。たとえば農業土木方面について見ましても、これは常に言われることでございますが、治山治水河川土木農業土木というようなことが、農林省所管関係、あるいは建設院所管関係というように、非常に区分されて、そこに統一されたものがない。これは日本一つの大きな不幸であると私は思う。速やかにこれらの総合計画がなされて、一貫せるところの事業が営まれなければならぬと思うわけであります。印幡沼とか手賀沼とか、利根川の疏水工事等においても、十分そういう例を見ることができるのでありますが、こうした点についても、開拓局長としても、また所管大臣としても、十分今後意を用いていただきたいと思う次第であります。  なおこの開墾関係におけるところの人員、これは今の説明によつて、すでに開発営團から引継がれたところのものであつて、これによつて予算に影響を及ぼすものではないということがわかつたのでありますが、大体においてこの開発事業目的発、ただいまの大臣の御説明をお伺いするまでもなく、了承しておるところでありますが、政府職員が多過ぎるのではないか。政府職員失業救済事業であつてはならないと思うのであります。そういう弊に陷らざるよう私は特に注意をしておきたい。  なおこれに関連いたしまして、私はこの際大臣にお伺いしておきたいのでありますが、本二十三年度の農林予算というものは、大体どの程度になる見込であるか、これが第一点。その農林予算の中に開墾費の占めるパーセンテージ白どのくらいになつておるか、さらに農林予算中の直接生産に投入するところの予算割合。第二には價格調整に相当すべきところの予算割合。第三には補助金的な意味で支出されるところの予算割合。こういう点について一應伺つておきたいのであります。
  9. 永江一夫

    永江國務大臣 ただいまの開拓に関します総合計画については、ごもつともでありまして、農林省では総合計画を立てまして、それぞれに應ずる機構についても、すでに一應整備したのであります。さらに近くの農林機構改革等を行いまして、この目的を十分達成するようなふうに漸次していきたいと思います。農林省機構改革についても適当な時期にこの委員会でいろいろ御意見を伺いたいと思います。  それから予算にことでありますが、御承知のように賃金ベースも変りますし、物價も改訂されますので、今農林省がどれだけの予算を要求しているかということは、非常に不安定な形にあります。近くある程度の見透しがつきましてから、この委員会で今お尋ねのような点について、あらためて私から数字的に説明申し上げてみたいと思います。実は一例をあげますと、公共事業費総体の額について二百七十億に抑えられている。ところがそれが物價改訂になりますと、四百十億になり、格段の金額の開きがある。それで農林省公共事業費関係においても非常な不安定な状況にあります。全体がやはり変つてくると思います。國全体の予算收支の上において三千億で抑えるか、あるいは四千億近くになるかということで総体が違つてくるのですから、閣議である程度の見透しがつきましてから、農林省全体の予算について、及び今御質疑のありましたように、その予算中にいかなる割合を占め基かということについて、きわめて近い時期に、あらためてこの委員会で私から御説明申し上げて、皆様の御審議を願いたい、こう思つております。
  10. 野上健次

    野上委員 もう一点、質問でございませんが、希望意見を述べさせていただきたい。当初に申し上げましたように、現在の開墾入植者実情を見ますと、まつたく惨憺たるものです。開墾に要されるところの予算、先ほども指摘しますように、相当多額予算をとつているのでありますから、これが実際第一線に立つて働いているところの動力であり、源泉であるところの入植者に、十分政府措置が滲透するように、予算の面においても考慮していただきたい。現在の状態においては、いかに立派なプランを立て、いかに多くの予算をもつてしても、結局入植者が現在のような状態であつては、当初の目的にも適はないことにもなりますから、ぜひそういう点において、いま一段の努力と、そうした思いやりとをもつて、この事業を進めていただきたい。このことを強く希望する次第であります。
  11. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 ただいま御質問ではございませんでしたが、入植者政府予算的措置が滲透するようにという点につきましては、今年度から從來のやり方をかえまして、從來はいわゆる事業主体というものがございまして、あるいは縣がやつたり、あるいは開発営團がやつたりということで、入植者はその労務者という形で、賃金を得るというようなかつこうで入つておりますから、これは面白くないというので、本年度から直接入植者補助金の形で金を渡す、こういうことに直しました。ただいまのお話の点は、急速に改められることと思います。
  12. 野上健次

    野上委員 その入植者補助金の形で直接支給されることになりますれば、私はこれはたいへん結構だと思うのでございます。それによつて大いに生産意欲を増強することができると思うのだすが、大体どの程度渡ることになるのでしようか、その点概算でも結構ですが、お聽かせしていただきたいと思います。
  13. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 これは先ほど大臣からお話のありましたように、賃金物價の水準が近く改訂されると思いますので、それによつてまた変つてまいることと思いますけれども、現在われわれが考えております、昨年十二月の賃金物價水準で一應予算を立てておりますが、それによりますと、一反歩あたり耕しまして大体三千円弱の金がいくことと思います。今後賃金物價が改訂されますと、從つてそれが上つてくると思います。
  14. 坪井亀藏

    坪井委員 大臣質問いたしたいのです。今回農地開発営團の行う農地開発事業政府において引継いだ場合の措置に関する法律案第三條を改正するということになつておるようでありますが、この内容については、もちろん政府としては、過去において営團が行い、また縣あるいは縣農業会あるいは地元開拓組合等をして代行せしめておつたが、こうしたばらばらではいかぬという方針によつて、全部國費をもつて行うという趣意にほかならないと存じますが、この耕地改良あるいはまた開墾開拓という事業は、何と申しましても労力費というものが一番多いものだと思う。そういう点からみると、いたずらにこれを國営にして、官吏増員して莫大な経費をこれに投じましても、その実績があがつておらない、またあがらないというように私は考えます。この点について今度國営になりましても、なお補助開墾あるいはまた將來農業協同組合とか、連合会とか、地元における開墾開拓組合というようなものに、これを依嘱をして事業を行わせるかどうかというような点をはつきりいたしたい、かように考えておりまして、國営なつたから、これを政府の手みずからにおいて全部をやろうということになると、これは手もまわらず、結局その効果が少いと思います。これは私の考えとしては、全額國庫において支弁し、今までは補助開墾としては縣知事に依嘱してあつたようでありますが、これをもつと最下部の、現地に接近しておるその市町村長に依嘱するということにいくならば、よく実情等がはつきりいたしまして、しかも労力等はある程度奉仕によつてもこれはいくではないか。なお現在の補助制度というものが、國において四分の二、縣において四分の一、地元において四分の一というようになつておると思いますが、ほとんどこれは全額にいたしまして、地元市町村にこれを行わしめるということになりますれば、結局一面において、市町村において開墾開拓を行う上においては、農閑期を地用してやれば、これによつて相当恩惠に浴することが多かろうと思います。いろいろそこにある資材は有効適切に調達される。そうしてないものだけを國において心配するということにいくことが最もよいのじやないか。過去における弊害というものは、おそらく縣においても國においてもそうでありますが、お互いに縱の連絡はありましても、横の連絡がない。結局農林省開拓課は、ただ何でもかんでも伐採して開拓さえすればよい。また林野局の方では、結局は一旦伐採すればあと四十年もかかる、あとの植林になかなかたいへんだから、伐採は困るというような点があつてお互いにそこになわ張、勢力爭いをしておる。なおまた縣においてもその通りでありまして、縣の開拓課及び山林課というようなものが、お互いになわ張爭いをしておるというようなことであつて、しかもまたこれに農地委員会がはいつて、今は上から割当でもつて、何町歩開墾をしろということでいきますから、何でもかんでもただおこしさえすればいい、あとはどうなつても、こうなつてもかまわない。なおまた増反でいこうと、あるいは入植開墾でいこうと、どちらにしてもただ入植者を追込みさえすればそれでいい、やるときに三軒やれば、それは必ず一年か二年には二軒は出るから、一町ずつやつても一人の面績が三年先には三町歩になるのだ、拔けたつてちようどいいのだというような古い開拓あるいは入植行政が、今まで行われておつたことは事実であります。私も昨年茨城あるいは東北一帶、その他北海道における各地を、水害調査のかたわらいろいろ視察いたしましたが、開墾開拓に対しては常に漁業権というものが関係をもつておりまして、非常に反対が強いということで、やろうとしてもおそらくできない。政府が緊急開拓を実施するようになりまして、五箇年に百五十五万町歩ですか、開墾開拓をしようといつたのが、わずかに三十万町歩しかできない。もうすでに三年も経つていることは、結局なわ張爭いからいろいろ支障があつてうまくできない。結局上から命令をもつてやるわけにいかない、何としてもやはりお互い両者が寄つて妥協する。結局上の方ではあせつても、下の方は妥協できないから、つい手間をとつてできない、こういうことになつている。私はこれはその地元へ移管いたしまして、地元のお互の話合いずくで、市町村にやつてもらうということにすれば、円滑にいくじやないか、しかもまた今まではできぬようなことばかり勤めておつたわけで、國営開墾及び開拓は五十町歩以下ではいかぬというようなことを言われておりますが、これなども五十町歩以上というようなところはなかなか少い、御料林でも拂下げれば格別、そうでないとなかなかできない。だから、この面積をずつと引下げてしまつて、一町歩でも二町歩でも、とにかく開墾ができさえすればいい、開墾可能地あるいはまた開拓可能地としていくらならば、結構だと思う。こういう点について、どんなお考えをもつて將來実施にあたるかという点をお伺いいたしたい。  なおまた過去における開墾事業が不成績であつたことは、先ほども局長の言われたように、今度引揚者を開拓地入植させるというようなことを言われたのでありますが、私はこれは絶対反対だ。もちろんその中にもいい人もありますが、ヘボヘボしてから行つて開拓しようというような勇氣ももたず、裸、はだしで行つても決してできるものではない。今までの方針は失敗したのだが、裸、はだしで何らの應援がなくして行つた。資金はわずかに一万円ばかり貸したつて、ほとんどリヤカー一台も買えない、こういう現状である。眞にこの目的を完遂させるには、受入れる方では受入態勢を十二分に確立させる、なおまた送出す方は十二分に支度金を貸してやる。それに縣なり國が営農できるだけの、十二分な資金なり物を與えてやるという方法と、眞にからだが健康であつて、精神の強い、忍耐力の強い素質のいい者を開拓地にもつていくということになれば、その目的は達し得ると思います。それが今まで逆にいつておつた。これを今後は次男、三男あるいはその他どこまでも農業経営をやつてみようという者を、市町村から選拔して、質のいい者をやるという方向にいかなければ失敗に終ると考えます。ただいたずらに反別のみをたくさん計画を立てて、開墾々々と言われておりまするが、まず現状においては、量よりも質という点において考慮をする必要があると思うが、この点はどうかということをまずお尋ねいたしたいと思います。  次に前委員が先ほども言われましたが、一箇年に五十億近い開墾開拓費を使つておるが、今までの既墾地に対する土地改良あるいは農業水利という方面にどのくらいの金を使つておるか。私どもの記憶しておる範囲においては、明治、大正、昭和を通じて、戰前までに約十七、八億の金を土地改良に使つておるように承つております。戰爭中に目がさめて食糧が足らぬというので、わずか二年のうちにやはり十七、八億を使つておるように承つております。最近については相当額は殖えましたけれども、しかしこれではとうてい満足できません。むしろこうした開墾開拓にたくさんな金を注ぎこむということよりも、既墾地の土地改良、耕地整理、あるいは交換分合、あるいは農業水利という方面に國家の費用の大半を傾けても、この土地改良をやらなければならぬということは、こうした食糧が公益性のある國家國民の食糧である。これなくしてはわれわれは生活の安定はできない。この点からみれば、何としても他の義務費に國が追われるけれども、國はどうしても土地改良に注ぎ込む費用だけは、私は優先的にしなくてはならぬと考えますが、義務費に追われてこの方がいつも額が非常に少いということは、どうもその衝に当る農林大臣等の力が少し弱いのではないかどうも安本、大藏大臣に押されぎみであつて、あるいはまた教育費等その他やむをえざる義務費に追われて、どうも國家の食糧をどうする、國民生活の安定をどうするという重点からみて、私はどうも常に押されぎみであるということを遺憾に思つておる。今後こうした英断を行う場合においてならばなおさらのこと、相当な経費が要るだろうと思う。実があがるものならば私は相当の経費を計上してもいいと思う。これらについてどういう方法をもつて、今後必要経費を新予算に計上していくかという点についても、大臣の御所見を伺いたいと思う。私どもは今後の食糧問題を考えるときに、実にわが國の食糧問題について不安にたえないものがあります。昭和十二年の戰爭前のことを考えましても、わが國においては、今日七千万のときでも約七千万石、そのほか一千万石は酒その他で、八千万石の米を使つておつた。当時六千二百万石の平年收量からみると一千八百万石も足らなかつた。朝鮮から一千万石、台湾から五百万石、その他南方から三百万石も入れて賄つてつて。その後戰爭において年々耕地がつぶされて、六百万町歩が四百八十万町歩に減つてきた。そうして收量も六千五百万石が四千三、四百万石に減つてきた。だんだん回復してはまいりましたけれども、今後人口が百万以上殖え、現在のような消費者がだんだん殖えて、農業者というものが減つてきつつあるような現状では、日本食糧問題については実に憂慮にたえない。何としても既墾地に重点をおいて経費を注ぎ込むことは、もちろん第一重点であるが、第二にはまず計画した百五十五万町歩緊急開拓事業をいかにして完遂するかということについても、大臣としてはどういう方法でこの所期の目的を達成するかということについて、所信を承りたいと思う。私の調査あるいは大体考えた点を申し上げますと、少くとも北海道といたしましては、大体総面積をみても本州の四分の一くらいの面積がある、また開墾可能地としても、私どもの目で見れば、まだ少くとも百万町歩以上あると思う。緊急開拓では本州、九州、四國等において八十万町歩、北海道が七十万町歩とみておりますが、私はもう本州には大した余地はないと思う。何と言つても北海道には百万町歩開拓地がある。これによつて百万戸くらいは向うに入植するということになつて、五、六百万人は向うに入植者ができてくるということになれば、食糧問題はおのずから解決できるのではないか。こういう点を考えたときに、何としても北海道以外に開拓地に適したところはないと考えておるが、それをいたずらに各縣に割当てて、結局静岡縣で言つたならば富士山麓とか、やはり冷害、旱害等によつてつくれぬところに割当てるということは、これはもつてのほかのことであるし、なおまた開拓費のごときも一反歩三万円も四万円もかかるところがあります。そうしたところへ無益な金を使つてやるよりも、一度トラクターを使えばただちにつくれるという未開墾地いくらでもあると思う。北海道のごときは、戰爭中九十万町歩開墾地のあつたものが二十万町歩荒れてしまつた。これらもやるとすればたいへんなことでありますが、まだやればいくらでもある所をすつぽかして、各府縣割当てて強制的にやるから、そこに農地問題が発生して議論百出、その仕事がうまくいかないという結果になつておりますから、これらについては北海道をどこまでも活かす、そうして早く受入態勢、あるいはまた送り出す方も準備し、なおまた國が十二分に助成をしてやらなければいかぬと考えるが、農林大臣はこれらについて、今後の日本食糧問題をどう考えておるかということについてお伺いいたしたいと存じます。結論といたしましては、この第三條によつて、結局今度改正して、農地開発営團が行つておつた事業を國が引継いでやる、この趣旨はよかろうけれども、結果においてややもすると私は逆効果を現わすということをおそるるものでありますので、これらについては今後必ずうまくいくという自信があるかどうか。なおまた経費については開墾開拓というものにはなるべく控え目にいたしまして、まず既墾地に重点を置くという必要を私としては考えておりますが、これについて大臣の御所見を承りたいと存じます。大体私から大臣質問いたすことは以上であります。
  15. 永江一夫

    永江國務大臣 本案につきましては、先ほど私から説明いたしましたように、すでに営團でやつておりましたものは、御承知のように國に全部引継いでおります。本案はその中において、実際営團から國に引継いでおりましたかなりの人員については、何ら異動をするわけではありませんので、ただその取扱上事務の上で現金を取扱う仕事をしなければならない点がありますので、そういう人員については、從來嘱託であつたものを政府官吏として扱いたいというのが本案目的であります。この点については先ほど説明申し上げた通りであります。それで本案に関連いたしましてるる適切な御意見がございましたが、私にお尋ねになりました点について概畧お答えをいたしますと、一應開墾については今お話のような趣旨に應じますために、政府としましては、基本的工事はできるだけ地方公共團体に委ねていくという考えであります。ただそれの開墾はやはり直接そこに入植いたします開拓者にやらせるという建前になつております。  なお從來相当効果のありました補助開墾につきます、補助費について、今経済安定本部、大藏省とも折衝中でありまして、本予算の中に補助開墾に対する補助はできるだけ私どもの主張を通しまして、補助開墾の点はさらにこれを強化してまいりたいと思つておるわけであります。  それから開墾開拓については量より質を選べという御意見でありますが、ごもつともであると思います。しかし今の実情におきましては、外地から引揚げました引揚者の数というものは相当多数でありまして、この中で入植希望者も、実は政府が予定しております人員をはるかに超えており、その中から今お話のように十分に嚴選をいたしまして、量より質ということをやつていきたいと思つておるのであります。ただ入植者の心構えについていろいろ御意見がございましたが、私もその御意見にまつたく同感であります。御承知のように、アメリカにおきましては、アメリカの西部開拓においては、開拓に從事いたしましたアメリカ人の心構えは相当愛國心に富み、また國の將來を考えた、フロンテイヤのような形でやつたのがアメリカの歴史に残つておるわけであります。このごろの入植者の中に、もし不幸にしておれは世の中の脱落者だとか、あるいは引揚者としての非常に卑屈な考えでこの開墾事業にはいられるとするならば、これは残念ながら巨額の費用を投じましても、目的を達しないことは御意見通りだと思います。それでこの開墾にはいりますには、アメリカの西部開拓当りました者の氣魄を持つた者でないと、この難事業はできないのでありまして、むしろ心身ともに優れた者が、國の一番苦しい状態を打開するという先覚者の氣魄を持たなければ、開拓は成就できないということは、私もよく承知いたしておりますので、そういう角度から今後の入植者に対しては嚴選をしたい。ただ、今お話がありましたように、その部落にいます二男、三男の人が入植いたしますことは、かなり困難でありましても、やはり後方に親威縁者の補給路がありまして、それによつて経済上の困難を克復して、かなり成功を收めるということは、私もさように考えておるのであります。しかし國全体から申しますと、やはり海外で一應開拓事業に從事しておりました人は、その部落などに何ら親威関係がなくとも、一應集團的に入植者として取扱つていかなければならぬのであります。こういう点については、今まで満州とか、樺太において直接向うで開拓事業に從事した引揚者を、できるだけ嚴選いたしてやりたいと考えております。  それからよく議論になります開拓土地改良との点であります。御承知のように既墾地に金を注ぎ込みまして、農業土木をどんどん進めていく。水利、灌漑その他のことについての土地改良に重点を置くということが、当面の食糧増産には最も必要であると私ども考えております。しかし同じ農林省が使います費用の中で、それでは今ただちに食糧増産にはならないけれども、今後三年五年の後に一應食糧増産の実際の効果があがる開拓開墾の費用に主力を注いでいくか、当面ただちに増産に役立つところの土地改良に費用を重点的に注いでいくかということは、非常に問題のあるところでありまして、今お話しのような問題もありますけれども、先ほど提案理由説明のときにも申し上げておきましたように、この点はわが國の目下の國策の上で、どちらにウエイトを置くかということはにわかに結論を申し上げかねる事情があると思います。この点は昨年懇談会の席上で、私はちよつと触れておいたと思うのでありますが、ああいうような事情がありまして、私ども公共事業費として一括され、集約されたものの中で、日本政府が責任をもつてわけるということになるとどうしても開拓費におきましても、土地改良費におきましても、その他各省における公共事業関係の費用というものは、全部等分に圧縮されることになるのであります。その点については、先ほどある程度こまかく申し上げたのでありますが、そういう事情がありまして、今農林省として開拓費と既拓地に対する土地改良費とのどちらにウエイトを置くかということは、ここで私からこちらにウエイトを置くということを申し上げかねるのでありまして、さよう御了承願いたいと思います。從つて食糧問題につきましていろいろ御鞭撻の御意見がございましたが、私は食糧確保ということが日本の経済復興の基本的なものであるという立場から、大藏省及び経済安定本部に対して強くがん張つておるつもりでありますが、なお当委員会におきましても、私の足らざるところは十分に御鞭撻を願いたいと思うわけであります。  最後に土地開墾の地点を開拓の余裕のある北海道にもつと重点をもつていけ、内地の狹い所でやるといろいろトラブルが起きるのではないかということはごもつともであろうと思います。しかし先般政府が発表いたしました北海道における七十万町歩というのが一應妥当だと思います。しかしこれは今御指摘がありましたような、ただ上から天降り的にだんだん市町村まで流していくという考えはありません。もし関係府縣において、そういう方法で考えられるならば、それは農林省の意向を眞直ぐに推進されるものと思いません。私ども農林省内におきましても、たとえば開墾適地をきめる際におきましても、單に開拓一つだけできめずに、やはり畜産局、場合によつては干拓などのときは水産局など、各局と会議してきめておる。なお地方に流しました場合には、地方においては縣を中心としていろいろ審議して決定する場合にも、やはり地方の実情に照らして、開墾適地であつても、それは技術的な面から見て、あるいは経済的な面から見て、社会條件から見て妥当でないと思う所は、その計画から除けるようにしておるわけであります。上から天降り的にもつてつて不適地をこれに加えていくというようなことは、極力避けたいというような方針でおりますが、これがなお徹底しておらぬようでありましたら、私どもは各府縣を通じて徹底さしたいと考えております。
  16. 坪井亀藏

    坪井委員 いま一つお聽きしたいことは、農林省内におきましても、それぞれ各課において立場が違いますので、いろいろと連絡がうまくいつていないではないかという点もあろうし、なおまた各府縣においても、いろいろ開拓課、耕地課、山林課というようなものの関係において、どうも開墾開拓事業が円滑にいつておらないところがあるじやないか、かように考えられまするが、これらに対して將來はどういう方針をもつて当られるか、その眞意をお伺いいたしたいと思います。  それからこれはこの機会においてどうかと思いましたが、事食糧問題に関係あると思いますので、お聽きしてみたいと思います。新聞紙その他いろいろの報道によりますと、結局食糧にはやや樂観ぎみである。新米穀年度にいけば相当の増配ができるのじやないか、むしろ二合八勺もできるのではないかと言われておりますが、私どもはどうもそういうことはなかなか容易じやないと考えております。大臣としては何かでき得るというような見込みがついておられるかどうか。放出食糧その他の援助を得、あるいはまた國の一割増産等ができた場合には、はたしてどのくらいまではやれる見込みであるか、多少でもわかりましたならば、その御内意を伺いたい。これは食糧問題に非常に関係がありますので、お伺いいたしたいと思います。
  17. 永江一夫

    永江國務大臣 第一の御質疑であります点は、農林省の本省内において、各関係局で共同調査をいたしますように、地元におきましても、すべて共同調査をさせるということで指導しております。地元の一府縣廳の課だけでやるのでなくて、今申しましたような関係各課で共同調査をする。その報告に基いてやるというように指導しております。  それから第二の食糧の見透しでありますが、これは先般この委員会におきまして、私から一應お話申し上げました通りに、本年十月までの本米穀年度においては、いろいろな操作によりまして、二合五勺の基準量は配給ができる。こういうことを申し上げておいたのであります。これはさらに食糧事情が好轉をいたしますならば、この二合五勺のうちで、砂糖とか、大豆粉、あるいはその他の雜穀などを、できるだけ主食から除外いたしまして、米麦を主体とした内容で、十月までは二合五勺の基準量を持続したい。さらに余裕がありまするならば、いろいろ実質賃金の裏づけとして考えられる労務加配米についても、考慮を加えていきたいと考えております。なお十一月からの新米穀年度につきましては、できるだけこれを二合七勺なり、二合八勺に増配できるように目下考慮中でありますが、これは昨日も申し上げましたように、いろいろ困難なる食糧増産のための事情がありますけれども、これらを農家の皆様の御協力によつて克服しまして、供出も順調に行われ、さらに一割増産もある程度の效果がありまするならば、これを基本といたしまして、何としても連合軍に食糧放出を懇請して、その放出量の増加によつて行わなければ、十一月からの増配は行われない。從つてこちらがつくります食糧だけで増配計画はもちろん行えないのであります。先般來外電が示しておりますように、アメリカの陸軍省が議会に要求せられたカロリー計算から申しましても、千四百四十カロリーというものが、アメリカの議会で容認せられまして、その線の食糧日本内地に送られてきますならば、七月からアメリカの年度が変つてまいりますから、七月以降日本に輸入せられる食糧はある程度増加する。こういうことで、実は総司令部の事務当局ともある程度の折衝はしておるのであります。何分にもこれは連合軍の好意ある放出にある程度数字的な基礎をもたなければ、はつきりした確信をもつた御返事はできない。一應昨年、一昨年の食糧事情から勘案いたしまして、本年政府がもつております凍結米、手持米等の立場から申しても、十月までの二合五勺の基準量を割らない。十一月からの増量は、空想的な数字で私は申し上げているのでなしに、ある程度の見透しをもつてお答え申し上げておきます。
  18. 坪井亀藏

    坪井委員 この法案に対する質問はこれで打切りますが、二十日に農林大臣がこの委員会に御出席になりまして、諸般の御方針について御説明願いました。それについて五点だけ議案審議後に簡單質問さしていただきたいと思います。
  19. 井上良次

    井上委員長 承知いたしました。次は野原君。
  20. 野原正勝

    ○野原委員 今回の法案改正に関連した問題に関しまして、大臣の御意向を伺いたいと思います。  まず私は第一点に、開拓の行き方に関しまして、開拓行政は非常に近視眼的な行き方であり過ぎているのではないかという点を痛感いたしておるのであります。これをたとえるならば、開拓という事業は、あたかもマラソン競爭みたいなものだと考えております。しかるに政府のやつていることは、まるで短距離競走をやつているような部分でなさつているのではないかと思う。そこではなはだピントがはずれている。自然そうならざるを得ない。たとえば未墾地を買收してこれを開拓地としてやつていくというようなことに対しましては、これを基本的にあらゆる角度から檢討して開拓地を決定し、愼重にこれを買收するということでなければならぬのでありますけれども、ほとんど愼重に調べているということは言えない。しかも非常に大あわてにあわてて、未墾地の買收をなさる、その買收そのものに反対するわけではないのであります。できるならば開拓の成果は、いやが上にもりつぱなものたらしめたいという念願から、私どもは近視眼的な、短距離競走的な開拓行政に対してはなはだ不満をもつている。たとえば百五十五万町歩開拓、よく出る言葉でありますが、一体百五十五万町歩という最初のあの計画は、どこに基礎があつたのか、未だに何人といえども明らかでないのでございます。実は開拓関係者のいろいろな方に伺いましても、すぐこれに対して確固たる信念をもつて、基本的なことをおしやつている方は一人もないのであります。百五十五万町歩という数字は、一應終戰の直後政府の立案として立てられ、これに向つていくのだ、一旦百五十五万町歩ということをきめたが最後、ばかの一つ覚えみたいに、しやにむに百五十五万町歩でいくというような考えである。その後いろいろの事情を考えて、現地の実情、その他開拓の実際上の面からこれを十分に吟味、再檢討して、そうして面積等も考えなければならぬでありましようけれども、そうした形跡が見えないのであります。しかも最近未墾地の買收につきましては、いかなる事情によりますか実はよく承知できないのでありますけれども政府が非常にあわてておられる。本年の七月までとかに、未墾地未買收の分の八〇%をしやにむに買上げるというようなことで、天降り的な買收の面積の割当が地方にくる。地方では何とかしてこれに合わしたいということで、愼重に関係方面といろいろなことを調査の上で、無理のない、行過ぎのないやり方でやりたいと考えておるところへもつてきて、こういうふうに急がれるものですから、ついどうもやむを得ず、まあそこらのところでやつておけといつたような、はなはだどうも実情を無視したようなことが、まま発生するのでありまして、何も日本の國は戰いに敗れたと言いながらも、まだ國敗れて山河あり、山にも木は少しはあります、これをあわてて伐つてしまうというようなことはないのであります。開拓はその進行速度に應じて、ゆつくり構えてやらなければならぬ。マラソン競走、いわゆる耐久競走である。われわれはこの日本の再建をかけた開拓に大きな希望をもつている。大きな光明をこれに認めておるのでありますけれども、今のようにあわてておつたのでは、途中でくたばつてしまう。長い競走になれ先なるほど、腹ごしらえをして、ゆつくり途中で休養をして、そうして一切の段取りをつけて走つていく。これが長い道中だということは、初めからわかり過ぎるほどわかつておるにもかかわらず、先を爭う、むやみやたらに先を爭つて、息せき切つてつておるわけであります。まだコースが百分の一にも達しないうちに、くたくたになつておるというのが、今日の開拓の現状ではなかろうかと私は思つている。こんな近視眼的な開拓行政というものは、どうしても改めてもらわなければならぬと思います。この点に対しまして大臣のお考えを伺いたいと思います。  第二には、開拓の機械開墾の問題について私の考えを申し上げて、政府の御意見を伺いたいと思うのであります。この開拓を正しく行い、日本の農業生産力を増大せしめるということのために、機械化をやるということはわれわれの大きな理想でありまして、旧來の日本の農法——いわゆる手にまめを出し、許して耕やすという勤勞精神は結構でありますけれども、これが機械化されず、あるいは科學化されずして、非常に非能率的に開拓をするということは、今後の日本農法のとるべきものではないと思う。これをできるだけ能率化し、機械化して行うということは、われわれの理想として考えておるところでありますけれども、例の開拓事業政府によつていろいろ奬勵保護されるようになりまして以來、雨後のたけのこのようにいろいろな機械開墾が行われ、いろいろな機械が出たようであります。ところが、それがいつの間にかほとんど使われていないのであります。これは政府で出した開拓予算の中から出た金に違いありませんけれども、全國到るところに買上げたいろいろな機械が雨ざらしにされており、ほとんど使われていないのであります。聞くところによりますと、関係方面におきましては、こうしたせつかくの機械の開墾が、あのような状態で利用されないというならば、これに対してガソリンその他の燃料などの配給は一應打切るというようなことになつて、最近においては、この機械開墾に対する油類の配給がなくなつたということを伺つておるのでありますが、私どもは、ここにもまたきわめて近視眼的な開拓行政と申しますか、遺憾な点が存するように思うのであります。物事は一日や二日でできるものではないのであります。開墾以來と申してもよいような、昔からのすきくわで開拓をやつてきたような日本が、終戰後いろいろな点から機械開拓を思いついて始めたのであります。こうしたものは、最初のうちこそ能率も惡く、機械の運轉操作の不慣れやいろいろな問題があつて、うまくいかなかつたと思うのでありますが、ぼつぼつそうした仕事にもなれてきて、これからがほんとうに成績をあげるという段階がそろそろ來たと私は見ております。こういうときにおいて、突如としてこの機械開墾に対して、ほとんどこれをあきらめてしまうというような結果に今日なつておるということは、はなはだ殘念でありますので、私どもはあくまでも日本開拓を進めていくためにも、こうした機械開墾、農業の機械化という方面に対しては、寸時も研究改善を怠つてはならぬと思いますので、できるならば、こういうことは関係方面とも十分御了解を得られまして、全國到るところ、機械開墾に適せざるようなところにまで機械を送りこむようなことはやめまして、これを重点的に、機械開墾のいわゆる指定農場であるとか、あるいはまた機械開墾のための中小指導機関、たとえば岩手縣のごときは岩手山麓の開墾地のごとき、あの茫漠たる地帶には、こうした機械開墾のための指導機関をつくるというふうなことによつて、この合理的な運營をはかるというようなことが必要でなかろうかと思うのであります。この点に関しまして、私どもは今日せつかく始められた農業機械化の中途において——中途というより、むしろスタートしたばかりでエンコしてしまつておるということに対して、非常に殘念に思いますので、農林大臣の御意見を伺いたい。  最後にこれは小さな問題かもしれませんが、私先般農地開発営團から引継いだ國営開拓事業を視察いたしました。ところが奇怪なことを聽いたのであります。これは國営なつたために非常に仕事がやりずらいと言つておる。どういうわけかと言うと、借金ができない、資金がないと言う。営團のときには、何やかやと言つて金を借りてやつた。ところが國営事業になつてからは何ともしようがないというので、地元関係町村方面では、皆金を出し合わせて人夫賃を拂つておる。とにかく國家事業だから銀行に行つて國営開墾だから金を貸してくれということはできない。そんなばかなことがあるかどうか、私どもは実はよく存じませんが、もしかりそめにも國営開墾なつたために、資金の融資その他でもつて仕事がやりづらいというようなことがありますれば、これはとんでもない話であります。いやしくも國家がやつておる事業が、日錢を借りて賃金を拂つておるというような、まさに現在そういうふうな事情でございます。これは岩手縣紫波郡山王海の國営開拓事業の現状であります。あそこのごときは非常に熱心に仕事をしておるところでありますが、先般伺いますところでは、非常に関係町村の諸君が困つております。こういうようことでありましては非常に困るという点を特に痛感いたしますので、この点をお伺いいたします。  以上大体三つになりましたが、要するにこの開拓事業に対してもつと眞劍に、從來いろいろな過ちがあつたとすれば、この際十分に吟味檢討して、りつぱな開拓をやつていただきたい。私ども開拓そのものに決して反対ではありません。むしろ日本の再建上、農業生産力の増大のはかるためには、開拓はある程度必要であると思うのであります。今日この開拓が、非常に政府の近視眼的開拓行政の結果、いろいろな点で不利不便を感じておるのでありますが、これが現地の非常な禍となつておるという点を特に申し上げまして、私の質問を終ります。
  21. 永江一夫

    永江國務大臣 お尋ねの第一の、未墾地の買收を非常に政府は急いでおるというお話でございますが、実はこれは関係方面の指示がありまして、非常にせいておるわけであります。先ほどもお話のありましたように、百五十五万町歩をどう四う基礎で出したかというお話でありましたが、これは各地元府縣及び政府が調査をいたしまして、その総合した結果百五十五万町歩が現在のところ一番開墾適地である、こういう算定をいたしまして、その上によつてこれを実施しておるわけであります。今のところでは百五十五万町歩というものが坪常に不適当な数字であるというような数字的な基礎が崩れない限りは、一應この方針でやつていきたい、こういうふうに考えております。  それから第二に機械開墾についていろいろ御注意がありました。私どもとしては機械と立地條件とを勘案いたしまして、重点的に能率的な処置をしたい。今岩手縣の例でお話がございましたが、非常に機械開墾の必要な所へ、重点的にこれを集中していくように今立案中であります。  それから第三の点につきましては、國営なつたためにいろいろ借入金ができないということで、あるいは実際の不便があるかもわかりません。しかし先ほども私がお答えいたしましたように、今後はその仕事はできるだけ地方町村に委囑をしてやるつもりであります。そこでかなりその点は窮屈に考えられなくてもいける点が出てくるのではないかと思つております。しかし実際問題としては、個々には今お示しのような点があろうかと思いますから、なおこの点は十合檢討してみたいと思います。
  22. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 補足的に申し上げます。百五十五万町歩の基礎は、農林省が長い間かかつてつておりました調査と終戰後でありますが、府縣から開墾の適地の調査をとりまして、それらを總合して出たものが百五十五万町歩、その後われわれの方で現在のところ再調査をやつておりますが、中間的なものになりますが、その成績からみて、百五十五万町歩程度開墾の適地は、北海道を合せれば十分だという見込みがついております。そして大臣がおつしやいましたように、はつきりした見当がつきますれば、これはおのずから殖えますか、減りますか存じませんが、われわれの見込みでは、むしろ殖えるのではないかというくらいに考えておりますから、訂正さるべきものと思いますが、ただいまのところでは百五十五万町歩ということでやつております。  それから機械開墾の点でございますが、これは御指摘のように、戰後大規模に開拓をやるには機械で能率的に起さなければいかぬということで始めたのでありますが、機械も今までこういつたような開拓のための大機械というふうなものを、日本ではほとんどつくつたことがなかつたのであります。そういつたような点で、生産者の方としてもなれないものでありましたために、生産されたものも十分な能率的なものはできなかつたという点もございます。それからまた使用する方にしても、大きな機械でやるのに適当でないような所までもやつたというふうなこともあり、またそういう機械を使用することにも慣れておらなかつたというふうないろいろな点がございまして、御指摘のような機械開墾については、再檢討をいたすということになつたのであります。しかしわれわれといたしましては、漸次改良いたしてまいりまして、適当な機械をそれに適した土地にもつてつて開墾するということは、ぜひやつてまいりたいと考えまして、現在全國的に各地区ごとに当りまして、純うしてこれにはこういつたような機械を入れる、こういうふうな方法でやつてもらうということを、具体的に当つて関係方面とも折衝しております。現在最小限度のものはやつていき得るつもりでございます。  それから國営なつたために金融がつかなくなつたというお話は、これは当初われわれといたしましても、営團が閉鎖になり、それを國が引き継いだ場合には、國は借入れができませんので、さようにならざるを得ないことは予見されておつたところであります。ところが実際問題として、今お話になりましたような点があちこちに現われてまいつておりますので、私どもといたしましても、その点非常に苦慮しておるのでありますが、ある程度予算がとれましたならば、それを五割なり六割なりを前渡し的な措置を講じましてやつていただく、全額というのはなかなか困難でございますので、大体その程度のものを前渡ししてやつていけば、それでかなりやりくりがつくのじやないか、かように考えております。
  23. 野原正勝

    ○野原委員 機械開墾についての御説明よくわかりましたが、機械化を完全にやつていくために、政府においては特に東北あるいは北海道等に、機械開墾に対する指導的な中心の機関、研究機関とか指導機関というふうなものを設けられる御意思があるかどうか、実は私の考えでは、岩手縣の岩手山麓のごときにこうしたものを設けていただくならば、たいへん好都合であり、あそこは非常に適地であると考えますので、特にこの本省側にそういつた御計画があるかどうかを伺いたい。
  24. 大島義晴

    ○大島政府委員 機械開墾に対しましては、全國的に五、六箇所の指導所をつくりまして、その完璧を期したいと考えます。
  25. 河合義一

    ○河合委員 ちよつとお尋ねしたいのですが、百五十五万町歩開墾をいたしましても、これが完成しても開墾だけではものができないのでありまして、はたして耕作ができるでありましようか、言いかえれば、その百五十五万町歩の耕作に要するところの肥料の準備ができるでしようか、私どもよく田舎を歩きまして目につくのですが、以前畑であつた所で、そのうねなりあぜなり形が殘つております。そこに小松が生えておるというような所がたくさんある。現在麦作の状況を見ましても、都會附近の下肥等の潤沢にまわるところはよくできておりますが、少し山地の方にはいつていきますと、実に哀れな本年の麦作の状態であります。ただ開墾ばかりいたしましても、耕作ができなければ労力を徒費することになるのであります。そこで私は百五十五万町歩が五箇年に計画通り開墾されましても、はたしてその農地に要するところの肥料の準備があるでありましようか。またむなしく草を生やし、松林になつてしまうというようなことがあつてはいけないと思いますが、その辺の見透しを承りたいのであります。
  26. 大島義晴

    ○大島政府委員 開墾地あとの経営がなかなか困難ではないかというようなお話でありましたが、まつたくその通りで、特に高地農村であるとか、あるいは工場跡地とかいうようなところにおきましては、まつたく土地がやせておりますので、この営農という面においては相当苦しい点があるので、從つてこれらの面に対しましては、できるだけ肥料の増配等をいたしたいと思つておりますが、第一番にやらなければならぬのは堆肥であります。堆肥を一番にその中に入れることなくしては、いかに金肥を施しても、営農の困難さは高まつてまいりますので、この点に対しましては十分これらの指導を誤らぬようにしていきたいと考えております。なおさら地の開墾におきましては、ある期間はそれほど肥料を必要といたしませんが、ちようど三年目くらいになつてまいりますと非常に肥料を要するので、こういう点をにらみ合わせて、開墾者の経営等に関しましては、先ほど申し上げた通り指導を誤らぬように適宜の処置を講じていきたいと思つております。
  27. 河合義一

    ○河合委員 この百五十五万町歩開墾計画されましたのも、現下の食糧事情の逼迫の結課であると思うのであります。そこで私は五箇年かかりまして百五十五万町歩開墾を新規にいたしますよりも、すでに田であり畑であるところの、既墾地から收穫を多くあげることをねらつた方が適当ではないか。巧遅よりも拙速を尊ぶという言葉がありますが、先ほど私が申しました肥料の点から考えましても、現在におきましても本年の五貫五百の肥料がはたして手にはいるであろうかどうかということを、農家は心配しておるのであります、推肥の点におきましても、もうすでに今までの田畑を養うために全力を注いで、ようやくにして今日の収穫をあげておるのでありますから、この上に百五十五万町歩開墾いたしまして、それに必要量の人造肥料、推肥を供給するというようなことは、私はとうてい不可能なことだと思うのであります。それよりむしろ、少し手を入れれば収穫の二割や三割は増産ができる方法があるのでありますから、開墾はそれはある筋からの指示でもありまして、開墾可能地の買収を早くやれというようなことにもなつておりますけれども、それを全然やめてしまうという必要はありませんが、適当に既墾地から増収をはかることと、新規の開墾ということをあんばいいたしまして適当にやることが、目下もつとも大切なことではないかと思うのであります。從つて土地改良事業の方にいま一段の力を注ぐ必要があると思いますが、当局においてはどうお考えでありましようか。御意見を伺いたいと思います。
  28. 大島義晴

    ○大島政府委員 ごもつともなお話であります。もちろん開墾がすぐ役に立つとは考えておりません。土地改良は行つたその年からただちに効果を生じてまいりますので、これに対して私どもも重大な関心をもつておるのであります。しかしながら先ほど大臣がお答え申し上げたように、これにはいろいろその筋からの指示もあることでありまして、どちらを重しとするか、どちらを軽しとするかということについては、この際はつきりしたことは申し上げられないと思うのでありますが、私どもとしては土地改良にできるだけ多くの力を注いでただいま計画いたしております。この面には十分努力いたしたいと考えておりますので、さよう御了承願います。
  29. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 ちよと念のため申し上げますが、五箇年間に百五十五万町歩というのは当初の計画でありまして、その後いろいろな面からわれわれの方も昨年檢討いたしまして、現在のところではこれを十箇年ということに変更いたしてございます。その点だけ申し上げておきます。
  30. 井上良次

    井上委員長 平工君
  31. 平工喜市

    ○平工委員 私先ほど河合さんの尋ねられたことに関連して伺いたいと思います。開拓地といえば、私どもの知り得る限りの知識では、強酸性土壌が多い、少くとも酸性土壌でありまして、岐阜縣の群上郡の六日岳のふもとの六日ヶ原等におきまして、開拓團が非常に難儀をして伐り拓いておりますけれども開拓の農民でなくして、ずつと古い耕地を耕す者ですらも、石灰の注文をやめてしまつて、今年から肥料をやめるというくらいのところまで行つておるわけで、私は開拓地には必ず石炭の確保ということが大事だと思う。現在の実情から申しますと、石炭の價格が実際問題としてやみで高くなつております。石灰をやみで買うがために非常に高くなつて、そこへ税金、その他配給物の現金拂い等によつて金がなくなつてしまつて、一部分には肥料は買わない、石灰の注文をするのをやめるというような事情になつておるときでありますから、農林省で全國的に考慮して石灰を確保するために、強酸性土壌地帯に近いところの石灰を生産する地域に対して、農業協同組合と密接な連絡をとつて石灰の特配をしていただきたい。これはもちろん釈迦に説法でありますが、あれは相当悪い石灰でもいいと思いますから、特別に御配給願いたい。現に岐阜縣あたりは、群上郡の石灰窯等に対して特別に御配給にあずかりたい。それから全國的に石灰ができるかできぬかによつて、私は開拓地が行けるか行けぬかわかれると信じておりますが、その点に関してひとつ局長なり次官なりから御所信を承りたいと思うのであります。
  32. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 今の開拓地における石灰の確保の点はお話通りでありまして、私どもといたしましても、その点につきまして、從來はいろいろな点で開拓地に石灰が十分に出なかつたということでありますが、今回肥料公團の方で特に開拓地向の石灰石、これは粉末でございます、いわゆる炭がらと称するものですが、あれは試験を永年やつておりまして肥効的に普通の燒石灰とちつとも変らぬというはつきりした成績が出ておりますし、しかも半分強の非常に安い値段で、開拓地にとりましては便利でもございますのでこの開拓地向の石灰石粉末を特に取り上げまして、肥料公團の取扱物資といたしまして、ほかの一般の肥料とともに開拓地の方に行くということになつております。
  33. 小野瀬忠兵衞

    ○小野瀬委員 通告してはありませんがちよつと伺いたいと思います。大臣がいらつしやいませんから、大島政務次官にお願いいたします、先ほど來既墾地に重点せ置くか、あるいは開墾に重点を置くかということがいろいろ論議されておりましたが、目下の食糧事情といたしまして、その一方に頼つて目的を立てるということはもちろんできないと思います。しかしながら地方に参りますと、あまりに本省からの指令に忠実な結果、地方の実情を無視いたしまして、むやみに森林を開墾をしろという要求をいたします結果、せつかくの良田が山林開放の結果水源地を失いまして、水源枯渇の結果は耕作のできない土地となつてしまう。また採草地がなくなつてしまう、あるいは薪炭林がなくなつてしまうために、土着の農民と入植者との間に非常なる争いが起きておる。これにその他第三者の運動等もはいりまして、血をみるような争いが頻々と起つておるような状況なのでありますが、こういう点については、よほど地方の実情も參酌して開墾に当られなければゆゆしい問題が起きると私考えておりますが、この点につきまして農林当局におかれましてはいかようなお考えでありますか、お尋ね申し上げます。
  34. 大島義晴

    ○大島政府委員 土地改良と開発とどちらが重いか、この点を明確にしろというお話でありましたが、これは先ほど申し上げました通り、ある筋からのいろいろなお話もありますので、どちらを重しとする、どちらを軽しとするということは、にわかに言明できないような立場にあるのであります。しかしながら土地改良は、改良を行うと同時にただちに食糧増産に相なるということだけは、私どももこれはよくわかつておりますので、十分この点については考えていきたいと思つております。山林の開放の結果良田が下田となるというただいまのお話でございましたが、あるいはそういうことはあるかもしれませんので、今後の山林の開放等に関しましては、これが適杏を調査いたしまして、その結果決定するということにしてまいりたいと思います。なお入植者地元と非常に争いを起すということをただいま伺つたのでありますが、今日の開墾入植者がいずれもその地方につながりをもつていない。從來開墾におきましては、農家の次男、三男が必ず從事したのでありますから、これは非常に深いつながりをもつてできたのでありますが、今日の開墾においてはそういうつながりがなく、まつたく落下傘的な開墾の方々でありますために、地方にいろいろな粉議をかもしておることもわれわれよく聞いておるのであります。これもできるだけこれらの調整をいたしたいと考えております。また同じ開墾でも増反開墾とかあるいは單独開墾とかいうようないろいろな区別も起りますが、これらに対してもできるだけ地元の意思を尊重して、地元を侵害しないような方法をとつてまいりたいと思つております。
  35. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 ただいまの地元入植者とのいろいろな紛争の点でありますが、この点につきましては先ほど野上さんからの御質問にも触れてくると思うのでありますが、結局地元がこれならばよろしいというような人を入れなければ紛争が起りますので、昨年から各町村に、受入町村と送り出す方の町村に該当者選考委員会というものを設けてもらいまして、そこで送り出す方もこれならば大文夫だという人を送り出す、受け入れる町村におきましても、この人ならばはいつてもらつても大丈夫だという人を選定いたしましてはいつてもらつております。從來いろいろ紛争のありましてのは、終戰直後、計画もまだしないうちに電用地その他へはいつて開懇を始めたというような関係の人が非常に多いのでありますが、昨年からはさようなことを改めまして、今申し上げましたようなことでやつております。今後はいります人はいずれも農業に経驗のある人で、しかも受入町村でこれならばよかろうという人を入れますので、かような点は少くとも非常に減少するのではないか、かように考えております。
  36. 小野瀬忠兵衞

    ○小野瀬委員 それからこれは單に開拓ばかりに限つたのではないのでありまして、土地改良についても同じように言える問題でございます。開懇の場合で言いますと、開拓面積を廣くしたいがために新たに開懇地を殖やしていく、しかしながら一方すでに開懇に着手しておりながら、少し費用が足らないとか、あるいはある一部の資材が足らないためにその成功をみていないという場合が非常に多いのでありますが、これはただ法規にばかりとらわれないで、費用が少し足らないというならば、何とかして補助額をさらに増加してやるとか、あるいはまた資材の足らないところは、十分にめんどうみてやるということにして、すでに手をつけた開懇地なり改良地なりを、いま一層保護してやるという方法をとつていただきたいと思うのであります。これは意見でございますが、農林省におかれましては十分にそういう点に御注意願いたいと思います。
  37. 大島義晴

    ○大島政府委員 開懇の送中において、いろいろ金融上の行詰りが生ずる、あるいは物がなくなるとかいうふなうことは、現実にはどこにも見受けられる事実であります。從つてこの点につきましては、今後の開懇の育成の方針といたしまして、政府はひとり金を助成するというだけでなく、金以外に物をもつて開懇の助成をするような方針をとつていきたいと考えまして、目下立案中でありまして、この点あらために提案いたしまして御協賛を得たいと存じておりますが、その御協賛を得ることができまするならば、ただいまの御懇念は一掃されることと思うのであります。
  38. 井上良次

    井上委員長 ちよつと委員長から質問したいのですが、それは府縣補助開懇の問題であります。府縣が申請してきます補助開懇は、現地の調査をやつて補助をしておるか、單に縣の責任においてそれをやらしておるのか。こういうことを何で聽くかというと、実はある縣で昭和二十一年に政府から補助をもらつて開懇をするということで始めておる。ところが木だけは伐つたけれどもあとは開懇せずに放つてある。そこで村の農民組合がやかましくこの問題を取上げた。そうすると地方当局者はその責任に困つてしまつて、逐に補助費を縣に返してしまつておる。ところがすでにそれは建算が済んでしまつておるのであつて、それをいまさら返してもらつたところで縣の方でも困る。こういうことになつておるのです。そういうわけで実際補助開懇も縣から申請してきて、政府でそれを認めることになると思いますが、その場合に一体結果について調査をしておるかどうかということ、こういうのが全國の各町村に相当あるそうです。そうして返つてきた金は一体どうするか。それはまつたく開懇計画というものが実局によく合致してない結果から起つてきやせぬか。別な言葉で言えば、補助金をもらうためにことさらに開懇をするということで、政府当局をごまかしておるのではないかと思われる点があるのです。國民は租税で非常に大きな負担をかけられておるときに、そういうようなことに大切な経費を支出されたのではたまつたものではないのですから、そういう面についても、もつと調査といいますか、開懇に実際補助金を出してやつた結果について、調査したことがあるか。これを伺いたいと思います。
  39. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 補助開懇は縣に補助金を交付いたしまして、縣の責任でやつております。國が調べたことがあるかどうかというお話でございますが、これはまだ現在までは組織的な調査を遺憾ながらやつておりません。最近いろいろな今お話のような点がございますので、これは箇所数にいたしますと、全國で二万箇所以上になると思います。一々全部を調べることはとうていできませんので、各縣につきまして内檢査的な檢査をいたすということで、ただいまその方法を進めつつあるところであります。
  40. 佐竹新市

    ○佐竹(新)委員 私は開拓予定地の件に関しまして、昨日私的に開拓局長に申し上げておきましたが、速記に留めておく必要があると思いますので、この際再びこの委員会において申し上げたいと思います。近來農林省に移管になります開拓予定地に指定されております所に━━私は廣島縣でございますが、この地方の財務局はこの予定地を流用いたしまして、工場の敷地なんかに貸付けている例があるのであります。そういうことになりますと、せつかく開拓予定地になつているものを、工場の敷地に取られたということは、食糧増産上からみましても、甚大なる影響を及ぼすものだと私は考えるものであります。これはただ廣島縣のみならず、農林省と大藏省との関係、あるいは地方の縣の農地課とそうして地方財務局との連絡不十分なるために、財務局の方で勝手にその開拓予定地を一時貸借する、こういうような結果になりまして、開拓の支障になることは、はなはだしいと思いますので、この際そういうことに何しましては、開拓局長はいかなるお考えをもつておいでになるか、御答辯をお願いしたいと思います。
  41. 伊藤佐

    伊藤(佐)政府委員 旧軍用地は原則といたしまして、これは食糧増産にあてるということになつているのであります。原則としてはそうでありますが、具体的にはあるいは例外の場合もあるかと思います。ただいまお話の場所につきましては、私の方でよく具体的に調べまして善処いたしたいと考えます。
  42. 井上良次

    井上委員長 別に御発議はございませんか━━それではこれにて大体質疑は終了いたしました。  これより農地開発営團の行う農地開発事業政府において引き継いだ場合の措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、討論に付します。討論はこれを許します。社会党野上君。
  43. 野上健次

    野上委員 本法律案はただいま十分質疑しましたところにおいてい大体政府の提案の理由等も了承できるのでありますが、なお質疑の中に現われましたように、今後の日本食糧問題並びに引揚者あるいは復員軍人、あるいは生産者等の入植希望者、そういた人たちの生活の根拠を設定するというような公共的な意義ももつておりますので、これが事業の運営にあたつては、十分至大なる注意を拂つていただきたいと思うのであります。なお先ほど、すでにこの開懇開発事業計画せられて三年を経過いたしとおるにもかかわらず、まだ実績が十分にあがつていない、しかもその開発の実態について、十分政府当局においては調査等をなされていないということは、はなはだ遺憾とするところでありまして、今後至急に所要なる措置を講じていただきたいと思うのであります。本法案につきましては、もとよの所要の手続もありますので、わが党といたしましては、提案の趣旨をそのまま了承し、賛意を表したいと思うのであります。
  44. 井上良次

    井上委員長 野原君。
  45. 野原正勝

    ○野原委員 民主自由党としまして、本法案に対しまして賛成をするものであります。但し政府が今回の開発営團の吸收によりましての職員の自然増加と申しますか、定員を殖やすことに対しましては、何らの異議をもつものではないのでありますが、それに対しましては先ほど來いろいろと質疑應答されましたように、その運営にあたりましては、私ども愼重にやつていただきたいと思う。いやしくも今日の開拓という大きな問題を國家の事業として國営でおやりになるという以上は、りつぱな成果をあげるようにやつてほしいのであります。特に先ほどの質疑のときにもありましたように、どうも官吏が多過ぎる。いやしくもいろいろな役人を殖やすための事業というふうなことに見られる節がありましては遺憾でありますので、この際できるだけ人員のごときも最少限度に止めてもらいたい。これに便乘して吏員を殖やすことの絶対にないよう、この際政府に要望する次第であります。この法案に多しましては、格別異議を申し上げる点もございませんので、賛成いたします。
  46. 井上良次

    井上委員長 それにて討論は終局いたしました。  これより採決をいたします、原案に賛成の諸君は起立を願います。     〔総員起立〕
  47. 井上良次

    井上委員長 起立総員、よつて本案は原案通り可決確定いたしました。なお日程に上つております農村行政一般に対する質疑をいたしたいと存じましたが、農林大臣の都合がございまして、委員会といたしましては明日午前十一時より委員会を続開することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十九分散会