○工藤
委員 実は簡單に申し上げたいと思いましたが、わが党では、
選挙法について最も精通しておるという齋藤君の
意見もあつたために、私はやむを得ずここに立つものでありますから、どうか簡單以外に多少の御猶予あらんことをお願いいたします。
立法の
精神は大体もう明瞭であります。つまり
政治の競爭ですから、公正の原則に基いて
機会均等の法則を使
つてできた法律でありますから、大体賛成です。賛成ですけれども、ただわれわれの考えておるのは、林君も言われました通り、多少
憲法上の疑義ありと叫ぶ人は、單に林君ばかりではない、私の方の齋藤君なども、その
意見をも
つておる一人である。從
つて、いやしくもわれわれ
憲法のもとに國家の政務を扱
つておる者は、これを聽き流しにしておくということはいかがかと考えますから、この点について私及び齋藤君の
意見を加えて、ここにこの案に対する態度を表明いたします。要するにわれわれから見ると、公正の原則に基いてできた
法律案であるけれども、この公正のもとには、どうしても
機会均等がなければならぬ。
機会均等の線を守らんとすれば、選業界は紊乱する、あるいは自由競爭にすると撹乱せられる、もしくはいわゆる
候補者の濫立にもなる。のみならず近代の風潮からいくと、この
選挙に対して熱中のあまり、法を考えずに、むちやくちやに
選挙界に出てきて金を使う者があることは、否定のできない事実である。もし金力によ
つてこの
選挙界が支配されるということであつたならば、ここに立憲
政治は滅びるのである。ゆえにわれわれの最も心配いたしましたのは、金権
政治にあらざる限りは、どうしてもこの
費用をかけないくふうをしよう。そういうものをして跳梁跋扈せしめないということに原則を置いて、この法律ができたようなわけであります。齋藤君などの
意見は、要するに立憲
政治の根本は
選挙であ
つて、同時に
國民の
政治意識を大いに発揚することであるから、これを拘束することは立憲
政治に反対するものであ
つて、この法律の建前からいくと、
憲法違反の疑いありと主張するのであります。從
つてそのうちのいかなるものがそういうところにあるかというと、齋藤君はまずこういう点をあげておる。私もそのあげた点については大体肯定しておりますから、
委員の一人としてその
意見をここに陳述するものである。
その
一つは
立会演説である。この
立会演説については、われわれの同志の一員である齋藤君も、どうしても加わらなければならぬということは、全國にたくさんの
選挙区があるけれども、
政党の
事務所は必ずしもその近くにあわけではない。あるいは
候補者の
事務所があるわけでもない。これをどうして公告後三日間の間に連絡をとるか。連絡のとれなかつた結果というものは、
立会演説に加わることができないことになるのではないか。これを一体どう考えておるかということが
一つ。かりに
事務所の支部などがあ
つても、
所属代議士をもたない、あるいは議員をもたない、そして今回初めて
立候補をした場合において、どうすればこの連絡をうまくしていくかということも考えていかなければならぬではないか。第三には、そういう
関係から、無
所属候補者の
意見を述ぶる
機会を得られないようなぐあいになるのであるから、これはどうするか。第四番目には
選挙の
告示後において、三日間で、はたして各
候補者が
立会演説会へ出るだけの準備ができるかどうか。そうすると
候補者が出られなければ、
代表者を出すということも
制限されておるというのであるから、この点をどうするか。第五番目には、
選挙管理人の
事務所は、
都道府縣廳の所在地にあるけれども、遠隔の
選挙区においてはないのであるから、この連絡も、とうていとることはできないであろう。第六には、
候補者の
届出にはおのずから緩急がある。それだから
届出の遅速によ
つてそれが
立会演説に出席することができないようなときは、後においてこれを回復する途はあるだろうけれども、一回々々で済むのであるから、これも非常に迷惑することになりはしないか。第七には、
立会演説会に
候補者差支えあるときには、代理を出すことはできないことになる。して見ると、
立会演説は
候補者故障ある場合には、三十回のものが十回か九回で終るということになり、このハンデキヤツプは補えないことになるではないか。これをどうするか。第八には、時間の
制限の問題、たとえばわれわれが三十分やるとしても、十人の
候補者があればどうしても五時間になる。そういうような場合においては、おのずから時間の
制限もはなはだしくしなければならぬ。これは一体どうするのか。殊にそういう場合においては、同じ地域において
演説会を開くことを差止められるということであれば、この点においても
言論の
制限は著しいわけではないか。第九には、
立会演説会に
候補者も代人も出席せざるときは、同一の
区域において、
候補者は
個人で
演説会を開くことを禁止するのはどういうわけか。こういうようなことで、われわれはやはりこの点に対する疑問をも
つております。しかしいろいろ
意見がありますけれども、煩を省くためにこれは速記者にお願いをして速記の上に止めてもらいます。大体私賛成でありますけれども、ただいま申し上げたような疑問がたくさんありますから、これはとうてい今回は間に合わないから、他日
改正するときにまつこととします。しかしまだ修正案が出るとするならば、それを出すときに
意見を述べるかもしれないけれども、大体これは後日の参考のために私はこれだけ申し上げます。なお齋藤君も同じ
意見でここに私あての書面もありますから、これも速記者にお任せいたします。私は大体
本案については原案に賛成いたします。