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田中源三郎君 ただいま上程されました本
請願の
趣旨につきまして御説明申し上げ、各位の御
賛問を得て、速やかにわが國の
蛋白給源の拡大に資せられんことを
お願い申し上げる次第であります。
申すまでもなく
政府はさきにわが國の
國民に対しまして、
総合栄養量の
引上げを
計画いたしまして、近くは主食を通じて二合七勺ないし二合八勺の
配給基準の
引上げを考慮いたしておられるのであります。しかしながらわが國の今日の
食糧を考えてみますのに、今後の
日本の人口問題と、限られたる
領土内において
生産せられまするところの主要の
食糧すなわち
米麦、
芋類等によ
つて、わが國の
食糧を充していくということは不可能な
実態にあるということを考えていかなければならぬのであります。かかる観点に立ちましたる場合においては、どうしても
政府の企図しておりますところの
総合栄養の
自給をいたしていかなければならないと考えるのであります。ここに生じてまいりまする問題は、申すまでもなく
動物性の
蛋白給源を多くつくり出していくということよりほかに途がないのであります。しかして今日
動物性の
蛋白給源を多くつくるということを考慮いたしまする場合には、何と申しましても陸上における
有畜農業の
奬励、いわゆる畜産の全面的な
増殖計画をもつよりほかにいたし方がないのであります。これによる場合におきましては、多くの
伺料及びその土地を必要とし、またその他の
資材を必要といたすことは申すまでもないのであります。そこで魚類の面から考えてみまするならば、わが國において一番多くの
食糧を
生産されましたる大正十二年前後のいわゆる
食糧の面のうちで、
水産物における
漁獲高が四百九万トンをも
つて最高といたすと私は考えるのであります。過去において
水産の
漁獲高は十五億万貫と称せられておりました。しかし今日のわが
日本の國においてのいわゆる
操業海域の
実態から考えまして、今後また世界各國の好意ある了解のもとに、かりに
一定漁区の
拡張をはかられたと仮定いたしましても、今日のわが
日本の
漁獲高は十五億万貫を海岸よう
漁獲するということは容易でないと思うのであります。しかもこれに対しては石油、船舶その他の漁具、
漁網等あらゆる
資材を要するのでございまして、それが
資材と相兼ね合いまして、今度においてかりに今仮定しました
一定漁区の開放を見たといたしましても、われわれの予期するところの十五億万貫の
漁獲をあげるということはまことに困難な
実態であろうと思うのであります。ここで比較的
資材を要せずして、しかもわが
領土内において
蛋白給源の増大をはかるということを得られまするためには、申すまでもなくわが
日本國内におけるところの
内水面の
利用方策を講ずるということが必要であろうと思うのであります。現在考えてみまするならば、
内水面におきましても今日まだ未
利用水面と申しまするものは、
冬田義鯉をいたしますならば三百二十万
町歩の
地帶が残されております。
河川用水の面を考えますると、四万里の
河川用水のいわゆる
増殖地帶がここにあるのであります。
湖沼において百万
町歩、
ため池において二十万
町歩、池沼におきまして三十万
町歩、合計五百七十八万
町歩の
水面を
利用することができると思うのであります。過去において
内水面の
養殖並びに
天然のわが國の
漁獲高は私は二億万貫を下ることはなか
つたと存ずるのであります。過去において十万人近いところの專業の
養魚者と、同時に
國民が自然にと
つて自然にこの
蛋白給源を補足いたしてお
つたところの総
漁獲高を考えて見まするならば、二億万貫を下
つていないと思うのであります。そこで大体十三億万貫程度とれてお
つたときの約六分の一というものは、この
内水面の
漁獲物によ
つてわが
日本の
國民の
蛋白給源にされてお
つたということが言い得られるのでございます。こういう面から考えてみまして、私
どもはか
つて内水面の五億万貫を
生産するところの五箇年
計画を立てたのでありますが、これは容易に立ち得るのであります。今日におきまして
資材の
関係及び濫獲及びその他の面において、ほとんど
政府によ
つて擁護されていないために漸次これが激減されて、現在において自然と
養殖と合わせまして
日本全体の
内水面の
漁獲高は、今日では一億万貫以上で、これは二分の一以内に減少しているのが実際ではないかと私は想像するのであります。そういうわけで、私
どもがなぜこの
專用漁業者を一部的に擁護いたすかと申しますれば、なるほど
政府も過去においてはいろいろと
資材その他の面につきまして御努力にな
つておられますが、しかしこれは一部
試驗場においてや
つている程度にすぎません。しかしと
そのものについて各縣の
試驗場等におきましては、すべての
増殖の根源となるべき
親魚とかあるいは稚魚の
育成等に今日非常な不便を來しております。はなはだ申しにくいことでございますが、今日の全國におきまするところの
内水面の
種卵、
種苗、
親魚の
育成の九二%までは、
民間の
業者によ
つて保存されていると申し上げても決して過言ではないのであります。これは正確なる実地の
調査と、
数字の上に立脚して申し上げるのでございます。かようなわけでありまして、今日この残されたる未
利用の
水面五百七十八万
町歩を
利用いたしまして、
專用漁業者において
種苗及び
種卵をつくらせて、これによ
つて全國の
稻田養鯉並びに
河川、
湖沼、池水、
ため池などを
利用いたしますれば、五箇年間において
國民一人当りに対して私は七十五日間、一日十五匁を配給することが可能だという
数字的根拠を
計画いたした次第でありまして、これをいたしますにつきましては、
政府が今少しくこれに力を入れてくださいますならば、必ずこれは成り立つと思います。そこでこの
專用漁業者に対する必要な
資材のうちのおもなものは
飼料でありますが、これがさなぎのごとく、あるいはいさだのごとく、あるいは
潮虫のごとく、あるいは
魚粕のごときものは全部統制されまして、これが
飼料公團に配給せられますとともに、ほとんど
養魚業者にはまわ
つてこないという
実態であります。今かりに
種苗、
種卵等の
生産のみに供して、
養殖面に
利用しないと仮定いたしましても、
天然放流によ
つてこれはなし得ることができる。
稻田養鯉その他のことによ
つてなし得ることができるのでありまして、
稻田に養鯉いたします場合においては、反当收穫を殖やすということは、すでに皆さんの御承知の
通りでございます。これを全面的に
民間においてやらせることが必要であります。現在私が今申しましたように、実際に
種苗及び
種卵の維持をいたし、これの
増殖をはか
つておりますものは、今日では
民間業者のみでありまして、この点に
政府はしばらく御
留意願つて御
助成を願いますならば、私は少い投資をも
つてここにわが國のいわゆる
蛋白給源の
自給的効果を現わしていくということを考えるのであります。なるほど海の
方面におきましては、今日の
実態から申しまして、
計画されておる九億万貫及び十二億万貫に対して、比率と申しますものは、これは非常に逆
比例をも
つて内水面の方がよい
比例をあげておると思うのであります。しかもこれらのものは
一つとして、その原形のままにおいてこれを食べますために、完全に
蛋白給源が供給されていくのであります。私が今申し上げましたことは架空でない。わが國の今日の
食糧の面から考えまして、
國民生活の面から考えまして、私は
資材そのものの一番効果的であり、そうしてこの未
利用水面を
利用することができ得るのであります。どうか
委員諸君におかれましても、特にわが國の今後の
水産自給計画をお立てになりまする場合において、はつきりとした内
水面水産事業計画を樹立になりますとともに、
政府を督励いたされまして、この
請願の
趣旨の
通りに、わが
日本の
蛋白給源自給計画の上において偉大なる結果をもたらすように
一つ御考慮を煩わしたいと存ずるのでありまして、以上私の本
請願に対するところの
趣旨を申し述べた次第であります。何とぞ速やかに御採択の上、ただいま申しました私の
趣旨に副いますよう、本
委員会において御処置あらんことを切望してやまない次第であります。