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1948-05-26 第2回国会 衆議院 水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年五月二十六日(水曜日)     午後一時二十一分開議  出席委員    委員長 馬越  晃君    理事 西村 久之君 理事 庄司 彦男君    理事 三好 竹勇君 理事 鈴木 善幸君       石原 圓吉君    川村善八郎君       坂本  實君    關内 正一君       冨永格五郎君    仲内 憲治君       加藤 靜雄君    矢後 嘉藏君       吉川 兼光君    宇都宮則綱君      青木清左ヱ門君    小松 勇次君       外崎千代吉君    河口 陽一君  出席國務大臣         國 務 大 臣 野溝  勝君  出席政府委員         總理廳事務官  荻田  保君         農林事務官   藤田  巖君  委員外出席者         外務事務官   山田 久就君         專門調査員   小安 正三君     ————————————— 五月二十日  深浦港を漁港として修築請願井谷正吉君外  九名紹介)(第一〇四六號)  須佐漁港修築請願守田道輔君外一名紹介)  (第一〇四七號) の審査を本委員會に付託された。     ————————————— 本日の會議に付した事件  小委員選定に關する件  小委員長選定に關する件  漁業問題に關する件     —————————————
  2. 馬越晃

    馬越委員長 それではただいまから開會いたします。  前囘議題となつておりました漁業事議税に關しまして、本日は特に野溝國務大臣の御出席を得ましたので、その問題を討議いたしたいと思うのでありますが、野溝大臣は一時半から閣議があるそうでありますので、そう長い時間ここへおつていただくわけにはまいりませんから、そのおつもりで御質問をしていただきたいと思います。
  3. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 漁業事業税の問題に關しまして、野溝國務大臣に御所見を承りたいと思うのであります。  政府は今囘地方財政の財源といたしまして、漁業事業税を課することをお考えになつておるということでありますが、われわれの調査、研究によりますと、漁業は今日までのいろいろな課税によりまして、相當苦しい事情に置かれておるのであります。すなわち漁業者租税負擔は、漁業權税、あるいは特別漁業税船舶税舟税そういうようになつておりまして、さらに所得税も相當課せられておるわけであります。漁業は戰爭中非常に被害の大きい産業でありまして、特に漁船の潛水艦その他による被害は甚大であつたわけであります。戰後漁業復興、再建にあたりまして、この生産手段の一番大きな部分を占めております漁船建造資金を、自分らの自己資金の中からこれを支出するということすら、非常に困難を極めておりまして、復興金融金庫その他によつて、幾分漁船建造計畫も遂行されてはおりますけれども小型漁船——零細漁民生産手段であります小型漁船等は、復興金融金庫等の利用もできず、自己資金もきわめて貧弱であります關係から、小型漁船建造は、數字の示します通り非常に遲々として、建造計畫も進んでいない、こういうような實情にあるわけであります。戰後國民經濟重要部分を占めております水産業を振興させますためには、どうしても資本蓄積をやり、そうして戰爭中被害を受けましたところの船舶その他の施設を早急に整備いたしまして、そうして漁業者生産意欲を十分に發揮せしむるということが必要だ、こう考えておるわけであります。しかるに今囘、從來租税負擔のほかに、さらに漁業事業税を賦加するということになりますれば、漁業者はとうてい漁業生産のために投ずる資本蓄積ということが不可能になるわけであります。これでは非常に現在重大な國民食糧確保の上にも大きな影響を與えるわけでありまして、政府としては十分この點をお考えになつておられるかどうかということを、まずお伺いしたいと思うのであります。  それから政府考えておらるる事業税の構想の中には、純益金額の百分の十五というようなことを仄聞いたしておるのでありますが、この漁業純益金額の百分の十五というものを算定いたしまする場合に、家族勞務賃金をどういうぐあいに算定しておるかという點であります。日本漁業構造を見ますれば、御承知のように六〇%が半農半漁、あるいは小生産者であります。零細漁民中心になつて、その生産の六〇%以上を占めておる。これらは大した大きな設備、機械力を用いませんで、ほとんど勤勞によつて魚生産しておる、こういう事情であります。しかもそれは家族勞務を主體にして漁業生産に當つておる。そこで政府としてはこの家族勞務賃金として計算する場合に、はたしてどういうぐあいに見ておられるかということであります。これを政府が近く改訂されようとしておるところの賃金ベースと比較對比いたしますならば、漁民收入は、おそらくその賃金ベースにも及ばない低い收入になつておるとわれわれは計算いたしておるのであります。政府勤勞所得税を一方におきまして非常に經減なさる御方針が進んでおられますが、この勞働者となんら變りのない零細漁民中心として日本漁民に對して、從來租税負擔のほかにさらに漁業事業税を賦課される。しかも漁民收入は、一般勞働者賃金ベースにその家族勞務を算定いたしますならば、むしろそれよりも現在においてすらその收入は下囘つておるという現状であります。小船に乘つて海藻をとり、一本釣りをやり、あるいは沿岸のはえなわをやるというような零細漁民は、ほとんど勞働者であります。その收入勞働者賃金とも言うべき少額の收入である。一方においては一般勞働者勤勞所得税を經減し、一方においては零細漁民に對してこのような課税をされるということは、きわめて偏頗であり、不合理であるということをわれわれは深く感じておるわけであります。これに對する政府のはつきりした見解を御披瀝願いたい。  次に政府のお考えの中には、主要食糧生産に從事する農家に對しては、農業事業税を賦課しないということを考えておられるにもかかわらず、一方漁業の場合は、水産食糧生産であるところの漁業者に對しては、主食にあらずという斷定のもとに、これに賦課されるという御見解のように聞いておるのでありますが、さき政府が片山内閣當時發表されました總理大臣施政方針の中にもありましたように、水産食糧主食として今後扱う。そうして非常に強力なる統制を現在これに實施いたしておるわけであります。しかも大部分の魚につきましては、供出割當を各出荷機関に附與しまして、そうしておそらく農産物以上に強力な取締のもとに、これを統制いたしておるのであります。われわれはこの供出食糧は、政府はおそらく主食と同じように、主食として強力な統制を行つておるというぐあいに見て差支えないと思うのであります。統制する場合は主食として統制をする。しかるに今度税金を課する場合には、水産物主食でないという見解を下して課税するということは、これは政府のきわめて御都合主義であつて、その場當りの解釋によつてそのようにきめておるのだという斷定を下して差支ないと思うのであります。われわれはこの供出水産物に對しまして、明らかに主食という立場において統制しておられるのであるからして、水産物供出代金課税對象からはずすべきである、こういう見解をもつのでありますが、これに對して大臣はいかなる所見をもつておるか、以上御質問申し上げます。
  4. 三好竹勇

    三好委員 ただいま鈴木善幸君から、るるいわゆる事業課税についてお話になりましたが、私も同感であります。前のこの委員會において、宇都宮委員野溝國務大臣を駁撃した言の中にどういうことがあつたかと申しますと、農林委員會において野溝國務大臣は、農業課税は刻下の供出意欲を阻み、インフレを促進する。從つて粹供出米、麥、芋類對象とする農民課税に反對する。しかしながら供出以外のです、果實卵類等販賣農家には課税を行うということを強制せられて、農林委員會においてもこれに同調し、供出農家に對する課税は中止となつたことを聞いておるのでありまするが、われわれ水産も同じ原始産業であり、かつ供出業者である漁業者に對して、言及がなんらなかつたということに對しては、われわれはこれを片手落ちの論議として、遺憾に考えておるのであります。われわれ漁民は戰災に遭つて、ほとんど半数以上の船舶を失つているのであります。さき鈴木善幸氏が言われたことく、漁業課税、あるいは特別漁業税、あるいは船舶税という、いろいろな税金漁民に加わつておるのでありまして、これ以上さらにまたこうした重税漁民に課せられることとなると、われわれ漁民生産意欲を阻害するおそれがあるのであります。願わくば同じ原始産業であり、供出者であるところの漁民に對しても、農民と同樣な取扱いでこの事業課税の撤判を要求いたしたいと思うのであります。國務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  5. 野溝勝

    野溝國務大臣 鈴木委員にお答えします。なお三好委員からも大體同樣の御趣旨質問がありましたので、答辯を一括して申し上げたいと思います。  まず第一點は、現下漁民生活状態大臣はどう見ておるかという認識に對する御質問であつたと思います。申し上げるまでもなく現下漁業民諸君は、相當資材の問題、あるいは資金の問題その他漁區の問題、あるいは魚族の少くなつたというような点等々から、非常に壓迫されまして、その生活が非常に不安であるということに對しては、私も重々承知しておるのでございます。なおそればかりでなく、最近のインフレの高進によりまして、非常な生活上、あるいは經營上に傷手帶びているということも、よく承知しておるのでございます。しかしかような点を承知をしておるから、私が今囘の課税に對して必ずしも間違つておるというようなことに對する御意見といたしましては、少々私は意見を異にしておるものでございます。なぜかならば、漁民方々生活の苦しさ、あるいは經營の不安ということは、ほかの階級が樂だというような意味にはならぬと思うのでございます。特にほかの原始産業方々も、その苦しい點におきましては同樣であると私は思つておるのでございます。  次に第二の點といたしまして、漁民勞働者現下收入と申しましようか、得る賃金生計費との關係をにらみ合わせて、一體課税を行うのかどうかという御趣旨のように拜聽いたしました。もちろん漁民といいましても、非常に範圍が廣いのでございまして、網元も漁民あるいは漁業者ということにもなりましようし、あるいは先ほどから鈴木委員お話しになりました通りつりざおで生活を立てておる者も漁民と言えましようし、漁民といつても相當範圍は廣いのでございますが、大體いわゆる漁業勞働者という面にいきますると、相當苦しい状態にあると思います。よつてこの點はもちろん新しい賃金ベースとにらみ合わせまして、われわれは考えておるのでございまして、これから新たなる物價体系もできるのでございます。目下この點につきましては、かような點において矛盾を起さないように、われわれは最善の努力を拂つていきたいと思つております。なお漁民方々は今日まで特別漁業税、あるいは漁業權税、あるいは船舶というような關係課税をされておるにかかわらず、この新しき事業税を設けるのはどういうわけか、眞意に苦しむというような御意見のように思いました。この點は確かに事實でございます。しかしこれは今までは法定外課税といたしまして、各府縣條例に基いてつくつてつたのであります。法定課税ではないのでありますから、今囘はこれを事業税ということにしまして、なるべく法定税としてやつていきたいという考え方でございます。なおこの課税が百分の十五とは一體重過ぎるではないかという意見でありました。これにつきましては、初期におきましてと百分の二十という意見もあり百分の十五という意見もあり、いろいろあつたのでございますが、鈴木委員、あるいは三好委員お話のありました通り、われわれはあらゆる角度から檢討いたしまして、百分の十が妥當ではないか、かように考えまして、初期の案を再檢討した結果、かように原案をきめたのでございます。なおこの百分の十につきましては、本税五%、町村附加税が五%ということでございます。なおこれにつきまして特に申し添えておきたいのでありますが、これは所得に對してかけるのでございまして、さような點も御了承置き願いたいと思います。  次に、主食を除いた理由いかんというので、片山内閣時代のことを引例されてお話になりましたが、確かにこれも蛋白給源でございまして、人間生活榮養、カロリーをとる上におきましては絶対必要なものでございます。しかしこれを私は主食として見ないというわけではないのでございます。しかし一應今日課税をする場合に、免税をする場合におきましては、大體法的根據をもつていかなければならぬ關係にありますので、食糧管理法に基きます主食を省くという觀点から、米、麥、芋等を勘案してこれを除くことにしたい、かような次第でございまして、さよう御了承願いたいと思います。  最後に、三好委員から、先般の農林委員會におきまして私が發言したというお話でございますが、確かに發言はいたしましたが、原始産業のうち特に私といたしましては、農民を重要視するというようなことを申した覺えはないのでございます。漁民を輕く見るというような發言をした覺えはないのでございます。しかし供出という點におきましては、確かに魚も供出でございますが、單に供出ということばかりで私はこの主食免税するということを申したのではないので、食糧管理法に規定されたる主要食糧ということでございまして、決して魚を主食と見ないというようなことは私は考えておりません。大體以上をもつて答辯にかえます。
  6. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 野溝大臣の御所見伺つたのでありますが、われわれの承服しがたい点もありますし、また私の質問に對する御答辯の明確さを缺いている點もありますので、重ねて二、三の點について御質問したいと思うのであります。まず第一點は、一方は食糧管理法によつて統制しておるからこれを主食と見る。一方は水産物統制規則によつて統制しているのであるから、これは氣持の上では主要食糧として政府は重視しておるけれども形式食糧管理法にあらざる水産物統制規則に基く統制であるからして、これを主食とは認定しがたいというような見解のもとに、差別待遇をなさつておるようでありますが、これは事務官僚が行政をやる場合の形式論的な見地からいたしますれば、そういう理論も成り立つと思うのでありますが、農民及び漁民をこの際十分再生産のできますように、それらの生活を安定せしめ、食糧増産に大いに振い立つてもらうという大きな政治的な立場から見ますならば、それはあまりにも形式論に過ぎないとわれわれはこう考えるのであります。われわれは一方が食糧管理法によろうと一方が水産物統制規則によろうと、同じような嚴重統制を加えられ、漁民諸君もまた農民諸君に劣らざる食糧増産報國の熱意をもつてつておるのでありますからして、これは十分今の形式論にとらわれずに、主食として少くとも供出を命ぜられ、出荷いたしましたところの供出代金については、これを課税對象にすべきでない、こういうぐあいにわれわれは主張したいのであります。  第二の點は、漁業者の現在の收入、これと政府が近く改訂せんとするところの賃金ベース、これとを比較檢討しまして、漁業者家族勞務、大部分漁民雇傭勞働者でなくて、獨立生産者であります。きわめて零細な獨立生産者が多いのであります。そうして主として家族勞務を主體として漁業生産をやつておる。これらの家族勞務賃金計算をした場合に、はたして政府が近く改訂せんとする賃金ベースといかなる関係に立つか、われわれはむしろ漁業者家族勞務は、賃金ベースよりも低い收入になつておると思う。だからわれわれはむしろこの際、そういう零細なる漁民漁業所得税は、勤勞所得税と同じようにずつて輕減すべきであるとさえ考えておるのでありまして、その上に漁業事業税を賦課するという政府見解とは、まつたく反對な所見をもつておるのであります。この點について今の改訂せんとする賃金ベースと、それから獨立生産者漁民家族勞務をどういうぐあいに賃金計算上算定しておるかという根據を明確に承りたい、こう思うのであります。
  7. 野溝勝

    野溝國務大臣 お答えいたします。先ほど私申し上げました通り主食という點については、私もそう思つておるということを申したのでありますが、決して輕く見るという意味ではないのであります。大體全國における國民食糧を解決すべき主要部分は、私は何といつた麥麦いも等ではないかと思います。そこで特にこれにつきましては一割増産をしてもらわなければならぬということになつており、かつまた外米の輸入につきましても、これが絶對至上課題となつておることは、鈴木委員といえでもよく了知しておると思うのであります。かような點から特にこの際一應この點に對する免税といいましようか、課税を停止するということを勘案したのでございます。なお附け加えて申し上げておきますが、特に第二次農地改革が十月三十日までに完了しなければならぬ関係になつておりますので、實はこの所得税の問題、肥料の購入資金の問題等々で、まつた農民の百八十萬町に對する買收計畫が結論を得るに至るかどうかということが、非常に疑問になつてきたのでございます。かくては農村民主化重要課題としての農地改革が、途中で頓挫する危險性もありますので、これらの點を考うたということも事實でございます。かような點から、主食には私は區別をつけておりませんけれども、以上の點でとりあえず食糧管理法に基く主要食糧對象としてやることにしたのでございます。  なお第二の點でございますが、獨立生産者としての漁民、この家族勞務の點をどう見ているかという御意見のようでありますが、この點につきましては、私も水産界関係をしている一人でございます。しかしこの點につきましては、漁民といつても先ほど申した通り範圍が廣いのでございます。淡水漁業あるいは沿岸漁業、また淡水漁業の中でも放漁漁業あるいは池中漁業というようなことになつてきますと、實際問題として勞賃計算仕方が非常に複雜なんでございます。しかし複雜ではありますが、これは所管官廳でありまする農林省でこの點に對する生産費調査も相當できていると思うのでございますが、これらを十分にらみ合わせまして、この賃金ベースなどの點についても勘案しなければならぬというように私ども思つているのでございまして、決して家族勞賃を輕く見るとか、あるいは簡單に見るというようなことは毛頭考えておりません。
  8. 三好竹勇

    三好委員 大體ただいま國務大臣お話を承つたのでありますが、同じ原始産業であつて、数囘にわたつて同じ供出をしている漁業者に對しては課税をする、しかも農業者に對しては課税をしない。しかも魚というものは主食と同じく考えている。そうしてこの同じ原始産業供出をする漁業者には、どうしても課税を今のところせられるような意向のように私は承つておりますが、はたしてこういう重税を課することによつて漁民生産意欲が減退して、漁獲高が減退したその曉の責任はだれがもつか、私はその點に對して國務大臣にさらにお尋ねしたい。
  9. 野溝勝

    野溝國務大臣 私はざつくばらんに申せば、そう別に大衆課税的な税金をとりたいとは思いはしないし、また思つてもおりません、しかし今日の日本の經済の事情地方財政事情からみまして、どうしてもこれを課税をする場所がないとするならば、危險分散の意味において、各地方面で一應ある程度課税は承認してもらわないことには、運營がつかないのです。ですから決して私どもは無理にこうした税金をかけて得々としているものではないのでありまして、その點は委員諸君と私は通ずるものがあり、かつ御了解ができると思います。なお先ほど、賃金問題についてもつと具體的に言えというような御趣旨と思いますが、これは安定本部物價廳がやつておりますから、その方面と特に御折衝を願います。
  10. 青木清左ヱ門

    青木(清)委員 過日農林委員會を私も傍聽いたしまして、その委員會の席上が小林運美委員つたと思いますが、主食に對する課税を免除するのならば、繭その他にも免除すべきであるというような議論が出ました。これを私は傍聽していまして、なるほどこうなれば繭もあるいは魚もその他等々たくさん免税を希望するものが出てくるというふうに一應は考えられ得ると直感をしたのであります。しかしただいま國務大臣の申されるように、主食食糧管理法によるがゆえに特別扱いをしなければならぬという御説であるが、食糧管理法はいわゆる主食に對する法律なのである。魚には魚の法律がまだ別にあるわけです。從つて米その他の主食の取締りが非常に嚴重であり、しかもなお供出に對する責任農民が負わされていると同樣、漁民に對してはまだ魚類横流しが完封されている。完全に封ぜられて全然横流しができないように、資材その他を見返りとして嚴重な網が張られているわけなのですから、その點何ら私は主食の米、麥とは隔りがない立場にあると思う。だからもし主食なるがゆえにこれらのものに對する課税をゆるやかにするのならば、この魚類に對するものも主食と同じ程度の取扱りを受け、また同じ程度供出責任をやはり負擔しているわけなんです。だから繭とかその他等々のものとは、魚類というものは特に違つた意味を持つてこの主食と同等の立場にある。いわゆる食糧管理法の點からみて同等の立場にあると私は考えるわけですが、この點國務大臣意見とは食い違いを生じているわけです。  もう一つは農地開放の問題でありますが、これは國務大臣漁業権開放に関する法律が近く出るということを御失念になつていらつしやるのだと私は思う。これは農地法と同樣に、一應國家に買收されるけれども、あらためてまた免許形式をもつて漁民に今度は開放されていくわけです、從つて漁民は毎年その水揚の量もしくは收益の量によつてその免許料を拂つていかなければならない。この點は農地開放と同樣であり、むしろ農地開放は十五年の期限があるけれども漁民免許料拂うのは無限である。その點農地開放とはまた違つたものがあると思う。またこの間私は自分の縣の各海岸の部落を全部まわつて來たのでありますが、中央における課税が苛酷であり、なお地方におけるいわゆる縣單位の課税が苛酷であり、また町村課税等についても、農民漁民と對立というような点からして、もちろん税の負擔力においては漁民が多くて、農民は負擔力が少いけれども、住宅の數において農民が多くて漁民が少いというような現象を各海岸で見ておる。そのために多數によつて決せられる現在の代議政體においては、やはり町村議會等におきましては、漁民が、大勢を支配することはできなくて、泣く泣く非常に大きな金額村費負擔を強いられておるという現状にあるわけです。これらの事實考えられますときに、この漁業に關し事業税を賦課される點においては、それらのすべての課税の問題を總合研究されて、この率をきめなければならないし、むしろその率をきめるというよりは、さきに申し上げたあらゆる點から見て、これは主食同樣適用を除外さるべきものだと考えておるわけである。これらの點について國務大臣の御答辯を促します。
  11. 野溝勝

    野溝國務大臣 青木委員にお影えいたします。主食の點につきましては、先ほど申し上げました通り魚類主食と見るかどうかというような御質問の際に、私はこれは大體主食と見るということを申したのであります。蠶絲業、その他畜産の問題をお出しになりましたが、たとえば重要性においては、原始産業の中、蠶絲業重要産業であるし、畜産も重要な産業である。かような角度原始産業全體から見るならば、この方面からも相當に意見も出、また免税と申しましようか、課税の停止も要求されておる、こういうことを委員會において申したのでございます。  第二の點は、農地改革に非常に熱心であるけれども、今度は漁區開放されれば農地改革同樣である、こう申されております。しかしこの點は青木委員においても御了承願いたいと思うのでありますが、漁業といいましても、先ほど申しました通り、非常に範圍が廣うございまして、先ほど言つた通り、網元から始まつて漁民勞働者に至るまで漁民ということになるのであります。でありますから、さような點で普通の耕作農民とはなかなか區別しがたい點も相當あるということであります。それから農民の方は、御承知のごとくこれは陸でございまして、きちつと範圍がきまつておるのでございまして、ほとんど餘地がないのでございます。漁業の方におきましては、私は利益がある、ないということはともかくとして、とにかく範圍が非常に彈力性をもつておるということを言い得ると思うのでございます。それから特にこの點は青木委員に御了承を願いたいと思うのでありますが、漁民方々でも半農半漁という方々は、これは主食をやつておる方も相當多いのでございます。この方々主食の方で輕減と申しましようか、免税されることになつておりますから、その點は半農半漁民方々としては漁民勞働者でも、米麥、芋等をやつている方々は相當樂になるのではないか、かように思つております。
  12. 青木清左ヱ門

    青木(清)委員 ただいま私の質問に對する國務大臣答辯がありましたが、その中で、私が聽かんとするところがポイントが外れておる點があるのであります。食糧管理法による主食に對する取締りの嚴格さ、供出の嚴格さと魚類統制が強化されておる現在、これはもちろん對象が違いますから、食糧管理法對象にはなつておりませんが、魚類統制が強化されておる程度においては、私は何ら違つていないと思うのですが、ただいまの國務大臣の御答辯によると、いかにも主食だけが取締りが嚴重であり、しかも供出嚴重農民責任を賦課しており、魚類の方はそうじやないかのごとく私は聽きとれるのであるが、私は同等と考えるけれども國務大臣は同等とお考えになるか、むしろ主食の方が嚴重でえるとお考えになるのか、この點ひとつもう少しはつきり願いたい。  それからもう一つは、漁業には各種の形態があつて、それぞれいろいろ違うという話であります。違うがゆえに漁業に對してこの事業税免税することができないというのは私はおかしいと思う。違うならば、その違う中でこの事業税を賦課するが適當を認めるものもあれば、また不適當と認めるものもあると思う。ただいまの國務大臣の御答辯によれば、必ずそういう結論が出てくると思う。にもかかわらず總體的に見てこれを賦課しなければならぬという結論は私は出てこないと思う。むしろ漁業形態の中のあるものに對しては免除すべきであり、あるものに對しては免除すべからざるものであるという結論が出てくるのじやないかと思いますが、この點もう少しはつきり願いたいと思います。
  13. 野溝勝

    野溝國務大臣 最後の方は聽き落しましたが、魚類主食と同等に見るか見ないかという御質問でございます。これは先ほど來私が呶々申し上げました通り主食という點においては同等と思います。取締りと供出の點については、取締りは一應何と言いましようか、生産供出に關接的には影響があるかもしれませんが、食糧の當面問題の解決としては、やつぱり供出の方に重點をおかなければならぬじやないかと私は思つております。なお青木さんから主食の問題については、私は同等、重要に考えておるのでございますが、現實の問題としてはこれお互に考えていきたいと思うのです。國民生活を解決する上におきましては、量的度合におきましては、幾分違うと私は思います。主食という點におきましては同等に見なければならぬと思いますが、現實の國民生活の食生活の量的解決の問題としては、私は度合が違うのではないかと考えております。
  14. 外崎千代吉

    ○外崎委員 先ほどからの國務大臣答辯を聽いていると、ざつくばらんに言うという話ですから、ざつくばらんに聽いたのですが、ざつくばらんに言うと、税をかけなければならないという意味はわかりました。しかしながら漁業範圍が廣く、區別しがたいから、利益のないものはとにかく……というのですが、區別しがたければどうするのか。區別しがたいから、區別しがたいものを區別しなければならぬ。なぜならば、今あなたがおつしやる通り漁業といえども、大も中も小もある。その大も中も小も考えずして、一率に漁民の利益を度外視して何にかけるか、所得に對して課税するのに、利益はとにかくというて、收入をみないと所得がわからない。所得の大きいものも小さいものもあるべきはずだ。その所得をみなければかけられない。大臣水産關係をもつておると言われますが、水産に多少關係をもつていますと、沿岸漁業とか、淡水漁業等はたれども話せるが、小さな漁民たちは復金の金も借り得ないで、自分資金でやつている。それの所得をどういうふうに見るか。それにかけるにはどうするか。あなたは漁業の数が多いから區別しがたい、その利益はとにかく一率にかけるそうしたならば、所得考えず、利益も考えずしてただかけるというだけでは問題が起る。こういう點は私はあなたの言い方はどうしてもわからないのであります。であるから、もう少しはつきりと、大には大、小には小、沿岸であろうが、遠洋であろうが、淡水漁業であろうが、これに對してはこれくらいかけるつもりだとか、これにはかけないつもりだということをはつきりしなければならぬ。こういうような重大問題に對して、はなはだ區別がしがたいとか、実益はどうでもいいとかいう答辯では答辯にならないと思います。そして最初から一時から、閣議があるからと言われる。閣議も重大な問題には違いないけれども、それよりこの委員會はもつと重大だ。この委員會を何とかかんとかして逃げてしまおうというような考え方ではなくして、もう少し親切でなければならない。どうせ本豫算も出せないような内閣で、調査ができなくて、かけるかかけないかというようなことを未だに考えておられるかもしれないけれども、とにかくもう少しはつきりと、漁民に對して親切な考えをもつてもらいたい。所得のないものはかけないというそんな話はないから、われわれの方にわかるように、もう少ししつかりした考えで、十分な答辯をしてもらわなければならない。
  15. 野溝勝

    野溝國務大臣 外崎さんは私の答辯を誤解されているようであります。利益があるからかけるのだということを私は申すのではないのであります。これは大體地方税でありまして、大體のわくはこちらがきめていますが、あとは條例というものできめるのでございます。地方の道府縣會、町村會で附加税はきめる。地方税はそういうふうになつているのであります。そこで大體これに對しては、所得に對して收益にかけるのです。收益がなければ、税金は百分の十をかけるということに、大きなわくがありましても、ないものはかからぬのですから、さよう御了承願いたい。  それから詳しく言えと言われますが、私は別にそう簡單に答辯をしているつもりじやないのです。大體そういうわけであります。
  16. 馬越晃

    馬越委員長 時間がないようですから、ちよつと委員長から國務大臣の御答辯を求めたいと思います。野溝地方財政委員會委員長は、現在の芦田内閣におきましても最も有力な大臣として私は常に尊敬をいたしておるのであります。野溝大臣はわが國における農業通として有名であるばかりでなく、また傍ら水産に對しましても非常に御理解のある大臣として、われわれは尊敬をしてまいつたのであります。しかるに先般われわれ水産委員會が多年にわたつて翹望しておりました水産廳設置の問題が閣議に上程せられました際におきまして、私ども委員會委員の數名が、野溝大臣に御面接いたしまして、水産廳設置の實現方につきまして御盡力方を要望いたしたことがあるのであります。その際における野溝大臣の御態度は、必ずしも私どもが日ごろ尊敬しておりました水産通としての野溝氏の御態度とは受取れなかつた點が多々ありまして、私どもは遺憾に存じておつたのであります。本日の各委員の熱心なる質疑に對しましても、本委員長といたしまして滿足してこれを聽いておることができないのでありまして、いま一層水産に對してより高度の御理解をもつていただきたいと考えるのであります。なお本日の各委員諸君との應答に對しましても、まだまだ各委員とも御納得のできない點が多々あると思うのでありますが、本日は重要なる問題について閣議御開催中で、特にこの問題に對しては野溝大臣の御出席が必要だということも委員長においても考慮いたしますので、一應野溝大臣に對する質問はこの程度で打切りといたしますが、ぜひとも今後における野溝大臣水産に對する御理解を一層深くしていただきたいためにも、再度この委員會の席において各委員諸君と討議をする機會を得たいと思うのでありますが、次囘におきましてはきわめて速やかに開かれるであろう委員會において相會したいと思いますが、いつ御出席願えるかお伺いしたいと思うのであります。それからただいま議題になつておりまする漁業事業税の問題は、すでに閣議において決定濟みであるかどうか。それから次は先ほど青木委員からの質問にもございましたが、すでに決定しておると假定するならば、その漁業の種別によつてこれを免税するものもあり、課税するものもありというふうな取扱いはできないものであるかどうか。この點についてお伺いしたいと思います。
  17. 野溝勝

    野溝國務大臣 第一點の私のわが水産界に對する理解についての意見を求められたようでありますが、この點は明らかにしておきたいと思います。私も水産廳設置におきましては、社會黨において署名した一名であります。もちろんこれに異論のあるはずはありません。ただ先般委員長初め委員方々が陳情に參つた際、私非常に多忙であつたのであります。多忙であつたというばかりでなくて、私としては非常に困難と言いましようか、政府としても十分考慮しなければならぬ點があつたのであります。それはどういう點かと言いますと、中央の財政もやつていけない、地方財政もやつていけない、出先機關を整理しなければならぬというときに、行政機構をどうするかという問題がたまたま話題になり、論議されておるときでありまして、特に地方財政の所管大臣といたしまして、出先機關の整理を強く要望しておるときでございましたので、財政の問題と諸機構の問題をにらみ合わせまして、私としてはかような點から愼重を期するという態度に出ておつたのであります。さような點は了承を願つておきたいと思います。  次にこの事業税と閣議との關係でありますが、この點は地方財政委員會においては決定になつておりますが、閣議においては全豫算がまだ決定になつておりませんので、單にこの問題ばかりでなくて、地方財政全體に對してまだ決定になつておりません。それから本委員會と私との懇談會ですが……。
  18. 馬越晃

    馬越委員長 委員會に御出席つての各委員との討議についてです。
  19. 野溝勝

    野溝國務大臣 委員會出席と言いますが、きようは閣談がございますからできません。また時間はここで正確にお約束できませんので、いずれ追つて委員長お話をします。
  20. 馬越晃

    馬越委員長 私の最後の、かりに決定濟みとするならば——地方財政委員會では御決定になつておると言うが、これが決定して徴收すると假定いたしますならば、さつき青木委員もしきりに言つておりましたが、業種別によりまして、たとえば一本づりのような零細な漁業には課税をしないとか、あるいは大仕掛の漁業に對しては課税をするとか、業種別によつて免税等について御考慮をしていただける餘地があるかどうかという點について御答辯を願いたい。
  21. 荻田保

    ○荻田政府委員 農林、水産業、林業一般について事業税課税するということになつておりまして、ただ例外として主食だけを除くということになつておりますから、これをさらにこまかくわけまして、ただいまのところ除く意思はもつておりません。
  22. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 議事進行について……。先刻來承つておりますと、大臣の説明では漁業税を課する根據がさつぱりわからぬと思うのであります。全然わからない。根據はどこから出てきておるか。主食であるとみなすというような御意見であります。主食とみなせば免税は當然であります。主食であるけれども税を課す、その税を課するということは國費多端のためやむを得ないというようなことであるが、いくらやむを得なくとも、その性格において税を課すべきものは課する、課すべからざるものは課さないということでなければ、國政はうまくいかぬと思う。その點がはつきりしないので、この次にはどういう點からこれを課するのかということを、大臣からはつきりと説明を得たいと思うのであります。  それからまた政府は閣議は大事であるというが、政府においては閣議は大事でありましようけれども漁民にとつて漁業税はそれ以上大事なのであります。委員長は時間の制限をしたのですから、本日のところはこれ以上留めぬが、大臣がここに來て途中から閣議だからといつてつてしまうような不都合なことはないと思うのです。委員質問が徹底するまでやつていくべきだと思う。大體與黨の方の質問は濟んだのでございますが、野黨はこれからです。野黨がやるから歸るというのは不都合千萬であると考えます。
  23. 西村久之

    ○西村(久)委員 簡單に質問いたします。大臣の御考え伺つたのでありますが、税制調査會の方針はきまつたというお話でございますが、漁業事業税を課することを撤囘する見込はつかないということに承知しなければならないものでございましようか。大臣の御努力によりまして、漁業に對する課税はまだ一るの望みはあるということに承知して、これから私ども理解ある方面に努力を拂つていけるものが殘されておるということに承知いたしてよろしいのであるか。この點を大臣に確かめておきたい。  もう一點お尋ね申し上げます。先ほどるる漁業に對する税金お話があつたようでございますが、本税を地方税として設置するということになりますれば、地方にあります特別漁業税というようなものは、統一されてこの税にまとめられるということに承知してよろしいのでございますか、この點もこの機會にお尋ね申し上げておきたいと思います。
  24. 野溝勝

    野溝國務大臣 どうもいろいろ誤解があるようで、今ちようど西村さんから御質問がありましたから、この機會に申し上げておきたいと思います。第一點は改變する用意があるかどうかということでありますが、これについては私としては改變する用意はもつておりません。なお第二點でありますが、これは特別漁業税、漁權税はこれに統一されますから、今西村さんの疑問とされておる點は解消すると思います。  なお私申し上げておきますが、百分の二十、十五というときもあつたのですから、とにかくこの百分の十という率は、いろいろ地方税をやめることになりますと、そこら邊はがまんができると私は思つております。
  25. 西村久之

    ○西村(久)委員 今お話を承りますと、漁業事業税關係については、財政委員會ではすでに決定しているから考慮の餘地がないと言われるのであります。これは野溝委員長がこの通りしたのでありまして、私ども今日まで大藏當局との意見の相違のあることも、實は新聞等で伺つておるのであります。農業に對する免税だけを主張されまして、漁業に對する免税のことはいささかも主張されておらないのであります。大藏當局は不均一課税はよくないというので反對されていることは、新聞で承知しております。かくのごとき税を地方税として設置するようになつたのは、一に野溝委員長の御手腕の結果だと思います。私どもは税制改正案が出てから愼重なる態度をとりまして、そして本案の通過するかしないかは改めてまた檢討しなければならぬと思います。
  26. 野溝勝

    野溝國務大臣 西村君に申し上げます。私が就任してから、それより前の案より多くなつたということはありません。農民課税を、私が就任してから少くしたということについて反對ならば、これはいたしかたありません。
  27. 馬越晃

    馬越委員長 ただいま終戰連絡調整事務局次長山田久就氏がお見えになりましたので、坂本實君より漁船の不當拿捕に關する件に關して緊急質問を行いたい旨の申出がありましたので、これを許すことにいたします。坂本委員
  28. 坂本實

    ○坂本委員 私は農林當局竝びに外務當局に對しましてこの際特にお尋ねいたしたいと存じます。御承知通り遠洋漁業、特に機船底引網漁業及び機船トロール漁業につきましては、連合軍總司令部の格別なる御指導と御支援によりまして、漁船建造、資材の特配等適切なる御措置をいただき、逐次その業績をあげつつありますことは、わが國食糧問題の現状に鑑みましてまことに御同慶に存ずる次第であります。殊に一昨年六月漁區擴張が許可されまして以來、業者は連合軍の御好意にこたえまして懸命の努力を續けてまいりました。すなわち東經百三十度以西の海面に操業區域とする機船底引網漁業及び機船トロール漁業は、漁船の總數九百八十餘隻、そのトン數八萬一千六百トン、その一箇年の漁獲高は四千萬貫を超え、その大部分が大消費都市に向けられ、六大都市鮮魚入荷量約五千七百萬貫に對して大よそ四割を占めておるのでありますが、最近これらの漁船中朝鮮または中華民國に拿捕せられる事件がひんぴんとして發生するに至りましたことは、まことに遺憾に存じます。もとより連合軍總司令部の命によりまして、制限區域外に出漁いたしますことは嚴禁されており、乘組員に對しましては十分その趣旨を徹底せしめておるのであります。しかるに航法に未熟なる乘組員あるいは天候氣象等の關係によりまして、知らず知らずの間に制限區域外に逸脱したものが、たまたま第三國官憲の發見するところとなり、これが拘留拿捕せられておるのであります。はなはだしきは、漁場に向つて區域内を航行中拿捕せられた事例もありまして、ことごとく公海上において發生した事件であります。かりそめにも第三國の領海を侵犯する意圖を有しないことはもちろん、その事實もまつたくないのであります。業者は事情のいかんにかかわりませず、制限區域外の航行については、連合軍總司令部の命による嚴正なる御處分に服する覺悟でありますが、いやしくも公海上における船舶を第三國官憲がみだりに拉致拘留し、さらに一方的裁判により沒收するがごときは、いかにも納得いたしがたいのであります。よつて政府當局においては速やかにこれら拿捕船舶の返還方につき交渉せられるとともに、今後かかる不祥事件の發生を未然に防止するため適切なる處置を講ぜられ、漁業者をして安んじて生産に從事せしめ得るよう、速やかに御處置あらんことを切望するものであります。政府御當局の御所見を承りたいと存じます。
  29. 藤田巖

    ○藤田政府委員 ただいまお話のございました通り、南支那海で操業いたしております底引網、トロールにつきまして、拿捕または抑留等の事件が最近相當數あるのでありまして、御承知通り現在問題になつております船は、私ども承知いたしておりますものによりますと、十三隻にも上つておるのであります。この問題につきましてはただいまお話のございますように、至急に問題を解決をいたしまして、漁業者の不安のないようにいたしたいということで苦慮をいたしておるわけであります。もちろん私どもの方からも、司令部の天然資源部の水産部に對しまして事情お話いたしまして、關係國の方への話合いを現在やつてもらつておるのであります。御承知通りこの問題は許可を受けました制限の區域の外を操業をするというような嫌疑をもつてつかまるのであります。一方海洋氣象の關係から、海の上に線が引かれておるわけでありますから、漁業實情といたしまして現場の位置を正確に把握するということも非常に困難なことがあるわけでありまして、從つて海上に引いた一本の線によつてつていくということが、これ自體漁業實情に即しない點があり、また實際問題といたしても、そのための經營上の問題もたくさん起つておるわけであります。われわれとしては一日も早くこういうふうな線が撤廢され、もつと遠くまで漁區が擴張されまして、安んじて漁業者が行けるようにいたしたいというふうに努力をしておるのであります。ただ少くとも許可を受けております線があります以上、やはりこの線を嚴重に守つていくということは、國際信義の上からきわめて重要であります。その點を一方嚴重に取締まる態勢を整えながら、一方においては許される區域が擴張されるように、兩方面から話を進めておるのであります。實は最近この種の問題が絶えませんので、やはりこの根本的な解決をしなければならぬと考えまして、私の方でも案を考えております。一つの案をつくりまして、その案を正式に農林省として決定をし、さらに業者の團體にも御相談をいたしまして、この交渉のしかたは非常にまた機微な問題があるのであります。方法等については十分考究しなければならぬと思いますが、ともかくわれわれの意圖のありますところを十分に司令部の方面にも申し進めて、そして何とかわれわれの實情をよく認めていただき、また現状を緩和することに努めたいと考えておる次第であります。至急そういう點についても措置をいたしたいと思つておりますので、御了承を願いたい。
  30. 山田久就

    ○山田政府委員 本問題につきましの實状は、ただいま農林當局からお話があつた通りであります。われわれが企圖しておるような方向にどういうふうにしてもつていくかという問題が、今後特に考えられなければならぬ點だろうと思うのでありますが、この點につきましては現在われわれが管理下にあるということ、それから問題が同時に第三國に關係しておるということ、これらに多少複雜な要素をもつておりますので、そのもつていき方等につきましては、十分われわれの方でも最善と信ずる方法を考えまして、何とか事態を善處し得るように考えたい。こう存じておる次第であります。
  31. 坂本實

    ○坂本委員 それぞれの御答辯につきましては、いろいろ複雜なる情勢下におきまして御苦心のほどをお察しできるのであります。ただ先ほど來申します通り、業者自體が、不安をこれ以上高めますことは、いろいろ生産の方にも重大な支障があることとも存じますので、あくまで政府當局におかれましては責任をもつて、誠意をもつて御交渉を願いたいことを重ねてお願い申し方げて質問を打切ります。
  32. 馬越晃

    馬越委員長 委員長からこの問題につきまして特に申し上げておきたいと思うのであります。委員長の手もとに屆きました情報によりますと、この種の事件によりまして第三國に拿捕せられました漁船は、すでに十三隻の多きに及んでおるということであります。殊に坂本君によつて緊急質問をせられました第二十一明玄丸ごときは許されたる航行區域内を航行中におこたところの不祥事でありまして最も遺憾とすることであるのであります。かくのごときことが頻發することによりまして起きます漁業者の脅威ははかり知れないものがありまして、このために受ける業者の生産意欲の減退と、ただちにこれが生産に及ぼす影響も多大なものがあるのであります。殊に私の考えるところによりますと、朝鮮國によつて拿捕せられるがごときは、朝鮮の現在の國情から考えまして、私どもの最も不可解といたしておるところなのでございます。この問題につきましては、農林當局が漁業者に向つてそれぞれ注意を喚起せられることは當然でありますけれども、こうした事件がすでに勃發いたしました後における善處方につきましては、外務當局において十分御高配をしていただきたいと思うのであります。それでこれらの事件に對しまして、現に外務省としまして、具體的にいかなる方法を關係方面に對しておとりになつておるか、この點につきましてお尋ねいたしたいと思うのであります。
  33. 山田久就

    ○山田政府委員 ただいまの點でございますが、今日までわれわれ連絡調整事務局の方といたしましては、正式には先方と折衝することはまだいたしておりません。この點は實は農林當局の方もいろいろ御苦心になつておられる點だろうと思うのでありますが、農林當局とさらに連絡を密にいたしまして、われわれの方で目的を達成する上からみまして最も適切なる處置と考える方法をとつて、一つ事件の善處につとめたいと考えております。
  34. 馬越晃

    馬越委員長 私は了解に苦しむのでありますが、ただいまの外務當局の御答辯によりますと、あたかも農林當局と連絡がなかつたかのごとき印象を與えられるのでありますが、ここで藤田水産局長にお尋ねいたしますが、かかる頻々と起きました事案に對しまして、外務當局に御報告になられて、これが善後處置について御協議せられたことがあつたかどうかお伺いしたい。
  35. 藤田巖

    ○藤田政府委員 ちよつと速記を…。
  36. 馬越晃

    馬越委員長 ちよつと速記を止めて。     〔速記中止〕
  37. 馬越晃

    馬越委員長 速記を始めてください。  この問題につきましては、もう少し掘下げて論議いたしたいと思うのでありますが、ただいま議長より本會議定足數を缺くゆえをもつて委員會を閉じるよう傳達されましたので、この問題は改めて討議いたしたいと存じます。  先般の委員會におきまして、魚價竝びに集荷配給機構に關する小委員會を設置することになりました。この委員の數竝びに指名は委員長に御一任を願つてつたのでありますが、ただいまその小委員を指名いたします。    石原 圓吉君  川村善八郎君    坂本  實君  加藤 靜雄君    庄司 彦男君 青木清左ヱ門君    宇都宮則綱君  内藤 友明君    外崎千代吉君  以上の方々にお願いいたします。  なおこの小委員會の小委員長の選任につきましては、改めて小委員會を開く煩を避けたいと思うのでありますが、この小委員長の指名を委員長に御一任願つて差支えございませんでしようか、お諮りいたします。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 馬越晃

    馬越委員長 それでは小委員長青木清左ヱ門君をお願いいたします。  本日はこれをもつて散會いたします。    午後三時二分散會