○
田中源三郎君 当
委員会におきまして、特に
委員長のお許しを得まして
水産増殖に関する
意見を具陳いたしまして、当
委員会において私の以下申し上げます問題につきまして、
國家のために特に御
考慮をお願いいたし、その実施されんことを望むのでございます。
私の申し上げる問題は、内
水面増産に関する問題でございまして、わが國の
内水面は
各位御
了承に
通りに、非常にこれが進展をみたのでございますが、戰時中より漸次すべての
資材、
生産設備等の
不足からいたしまして、現今まことに憂慮すべき事態に到達いたしておるのであります。申すまでもなく、わが國の
食糧問題は、少くとも今後の一九五三年度の
一口増殖を
考慮いたしまする場合においては、少くともその
人口の二千数百万人に対しては、
外國より輸入をいたしまするところの
食糧によ
つて、これらの
國民が養われていくというような
実態にあるのであります。現在におきましても、少くとも千二百万トン近いものがわが
日本の國に輸入されなければ、
現行食糧の
配給基準を維持することが困難なる
実態にあるのでございます。過般の本
会議におきまして、
民主自由党の山崎君は、
國民の
食糧問題は総合的なる
自給度の拡張をはからなければならぬということを申されたのであります。これらの問題は、もうすでにわが國における
食糧問題の
解決策としてしばしば唱えられておりますが、申すまでもなく
澱粉質以外において、
國民が少くとも七十パーセントに近い
蛋白給源をとらなければならぬということはいまさら申し上げるまでもないのであります。二千二百四十カロリーに対しましては、今申しましたように七十パーセント近いところのこの
蛋白給源を
國民に補給して、総合的なる
國民の
栄養を補給いたしていかなければならぬと思うのであります。
現行のわが國の
水産の
増殖状況を考えてみまする場合におきまして、千九百三十年及び三十四年度からの
水準を見ました場合におきまして、いわゆる
水産の大体において総量は四百六十万トン
程度の量を
生産しております。なおわれわれが少くとも今後の與えられたる
生活水準の上において、今日現在の
海域において私
どもは考えてみましても、四百七十万乃至四百八十万トンの
水産漁獲高を見る
程度であろうかと思うのであります。今後におきまして、わが
日本の
操業海敢が廣まりまするならば、あるいはこの点に対して期待できる
漁獲高が得られると思いますけれ
ども、ただしま申した
通りに二千数百万の
人口は、申すまでもなく
外國の澱粉
給源によ
つてこれが養われている。
操業海域はわとんど狭められて、
講和会議後の
日本の
操業海域が拡張せられないと仮定いたしましたならば
——かりにせられたと返定いたしましても、五百万トンくらい
程度しか
漁獲高が得られないのではないかと私は思う。この際にあた
つて國内的にこの
蛋白給源を増加いたすということにつきましては、
内水面を拡張し、これによ
つてこの
蛋白給源を補足するよりほかに途はないと思います。か
つて内水面におけるわが國の
生産高は一億二千万貫
程度の
生産高はあ
つたのであります。そのうちに、完全に
養魚業者の手によ
つて生産されてお
つたものが、約九千万貫近い数字を見ておるのであります。しかしながら先ほど申しましたように、これらのものが、
資材あるいは
設備その他の自然的なる
圧迫等によりまして、一時
内水面において二億万貫近くまで到達してお
つたところのものが、今日においては総額において、おそらく六、七千万貫
程度に下
つてきておるだろうと思うのであります。のみならず最近におきまして、
餌料及び
資材の
不足から、これらの
水準が漸次低下しつつある
現状であるのであります。ここにおいてわが
日本の國が、
海洋漁獲高を
増強する
一つの
施策を積極的にとると同時に、対内的においては
河川、
潮沼、稻田等を
利用いたさなければなりません。これは非常に
廣大なる
地域が現存いたしておるのであります。これに向
つて政府は十分に
施策を構じてまいりまするならば、その
氣温及び水質等に應じ、適所、適期に放流いたしまする場合におきましては、わが国におきまするところの
内水面の
水産高は、五箇年間において七億五千万貫に到達するということは可能であります。か
つて私は五箇年、七億五千万貫の
計画を立てまして、
政府に進言いたしたのであります。そのことはおそらく
水産当局においては、御
了承にことと思うのであります。
現行におきましては、
政府においては
稚魚を
育成をいたしまして、これによ
つて河川放流等をいたしております。現在の
河川放流における
生産の九〇%は、
專業者の手によ
つてつくられておると申してもよいのであります。しかるに今日においては、
國家としては、一部
試驗場等においてや
つておりまするが、私ははなはだその成績のあがらざることを、遺憾といたしておるのであります。過去においては内
水面増強政策を立てで、
歴代内閣が
相当に金額をこれに対して支出いたしております。しかるに今日におきましては、ま
つたく一部の
水産試驗場等においては、各
府縣の一部がわずかの
國庫助成によ
つて新魚を保持し、同時にわずかの
河川放流をいたしておるというような
現状であります。このような
現状を考えてみまするときに、
日本の
内水面の
状況は、一部においては
漁業権の
圧迫を受けまして、漸次その
内水面の
養殖区域を減退しつつある
状況があります。
餌料におきましても、全部これは
飼料として、
家畜飼料の方に吸收されまして、過去においては
水産餌料として、
内水面及び
沿岸等の
餌料は、
水産局内において、おのおの各課が協議の結果割当をしたものが、今日においては、一トンの
餌料もさようなわけにいかない。そうして全部
餌料公団によ
つて、これが吸收されてしまうというような
状態にな
つてきておるのであります。また
資材の面から申しましても、
ゴム靴及び網その他のものが、御
承知の
通り非常に窮迫をいたしておるような
実情であります。わが國がこのまま推移していきまするならば、
自然地方にありまするところの新魚も減んでまいります。わが
日本の國におきましては、
寒冷地においてはますを
養魚し、あるいは
適地においてはわかさぎを
養魚する。霞ケ浦といわず、琵琶湖といわず、多くの
河川、湖沼を
利用し、稻田において
稚魚を放ち、
稻田養魚をいたしまするならば、米の
收量が反当一俵は殖えるということも、過去の
体驗において明らかであります。しかるに今日の
稻田養魚に必要な
稚魚は、一体どうしてつくられておるか。辛うじて、
專業者の手によ
つて、維持せられておると申してもよいのであります。
農村における
蛋白給源の欠乏は、申すまでもなく
國民の
体力を低下しておることは事実であります。しかも今日のわが國の
現状で、一年間の大体の
漁獲高から考察いたしてみまする場合に、おそらく九億万貫はとれておりますまい。これがはたしてどのように
農村に
配給されておるでありましようか。
農村における魚の
配給の
実情は、私が申すまでもなく、
專門家の
各位が御
了承のことと思うのであります。
捕鯨の面から申しましても、わずかその鯨のとれたところの
南極方面にいたしましても、
近海捕鯨にいたしましても、適正に
配給されておるものは、
鯨肉及び一部のリンクされたる鮮魚以外にはないと申して、私は過言でないと思うのであります。実際において
農村の
蛋白給源は、どこから補填されておるでありましようか。最近の
魚價は、なるほど
生産者の面から見ますと安いかもしれませんが、四割以上の
魚價の値上りにおいて、はたして
農村が今日、ある適度の
蛋白給源、魚の
配給を受けているか受けていないかということは、われわれが申すまでもなく、
專門家であられるところの
水産委員の
各位は、御
了承のことと存ずるのであります。
しからば今日のこの
蛋白給源の窮迫しておりますものを打開しますためには、何をおいてもまず
内水面の
増強以外には手はないのであります。内部においては
内水面の
増強をし、外においては
漁業区域を
拡め、十分に
資材の
配給を
行つてこそ、初めて
國民に対する
蛋白給源が
配給されるのであります。私は海洋魚獲の
増強に関しては、全面的に
各位が御
研究にな
つており、あるいは今日までとられている
施策に対して賛成をいたしております。と同時にこの
内水面が今日閉却されておる。当
國会においても
内水面が取上げられていないということは、私は残されたる
水産開拓地域を放置されておるかと考えるのであります。かような面から考えてみまして、今日
水産試驗場等のや
つておりますことは、私は決して成功しておるものとは言えないと思うのであります。辛うじて今日の
内水面の
現状を保持しておるものは、一にかか
つて專業者の
養魚業者が、保持しておると申してもよいのであります。
漁業権の問題においては、
定置漁業権あるいは
河川漁業権等、いろいろ
内水面におきます
漁業権がございます。この
問題等につきましても、愼重にこれを擁護する対策を講ぜられますとともに、必要なる
資材及びこれに必要なるところの
餌料の
一定確保をお願いいたします。それとともにこの
廣大なる残されたる
内水面の
地域を
利用して、これによ
つて五箇年
計画を立て、五億ないし十億の
内水面の
増産ができるようにいたしますならば、今日の
農村は非常に安いところの
蛋白給源を、多量にとり得るのであります。アメリカにおいてもこれをや
つております。メキシコにおきましてもすでに非常にや
つております。
南洋諸島においても、ジヤワにおいても、フイリピンにおきましても、あるいはその他の
諸島、ボルネオに行きましてもこれはや
つております。こういうふうに私
どもが外地を一々見て参りましても、
相当にや
つております。
佛領インド・チヤイナーにおけるトレンサー・レイク、あすこの原始的な
養魚場におきましても、すでに
佛領インド支那の
政府におきましては、古い
統計でありますが、私が参りました十年ほど前の
統計でも、約六千万ピタスターの收穫をあげるようにいたしております。
佛印の
政府におきましても、とにかく
養魚においては、私
どもが当初十数年前に第一回に参りましたときにおきましても、約千二百万円以上も向うの金であげておる。こういうふうに考えてまいりましたときに、今日のこの
日本の
養魚というものを
國会が取上げて、これを大々的にやりまするならば、こいの
ヴイタミン、このいわゆる
滋養價値は、かつおが魚の中で一番
ヴイタミンが多いのですが、その次はこいであります。このこいとか、ふなとかいうものをどんどん放殖いたしてまいりましたならば、非常に
農村の
國民の
体力を
増強いたしますばかりじやなく、
農村の今日、私は経済上におきましても、大きなる影響を與えていくものと思う。たとえばここに專門的な例をとりまするが、わが國において、
静岡縣におきまして
養鰻だけでも約六百
町歩あ
つた。今これが
米作に轉換いたしまして、おそらく二百
町歩ぐらい残
つておるかと思います。しかしどうしても
米作轉換のできないところのものに対しては、特殊の存在として、
養鰻のごときは輸出もいたします。
河川において
もろこ、あるいははや、
長野縣ではおいかわと申しておりますが、これらの
繁殖力の強いものを、適材適所にどんどん出してまいりますならば、非常に私はこれが
増強ができると思うのであります。私は今日この放置された、しかも
圧迫を受けておるわが國において、唯一の
蛋白給源として残されたこの内
水面漁業に対して、ここに当
國会において積極的なるひとこ御
考慮を賜わりまして、これの救済を願いますることは、わが
日本の
國家の
食糧難打開の上の私は大きなる
一つの
施策であり、これを実施することによ
つて、
國家國民は偉大なる幸福を享受するものと私は考えるのであります。今特別に
委員長の許可を得まして、まことに徹底いたしません
言葉をもちまして概要申し上げた次第であります。
うしろに全國の
漁業組合の
代表者がまい
つておりますが、わが國にも山梨といい、
長野といい、埼玉といい、あるいは福島といい、奈良といい、海のない市、海のない縣も多数ございます。これらの人が古い
統計ではありまするけれ
ども、
群馬縣では
昭和十一、十二年ごろ
縣民一人あたり約十数円の魚を買
つておる。
群馬縣では
養魚を盛んにいたしまして、
内水面を拡充いたしますならば、冬期漁撈の少いときにおきましても
國民は救われるのでございまして、私がまことに徹底せざる
言葉をも
つて概要を申し上げたことによ
つて、おわかりにくいと思いまするが、かくのごとくかろうじてその一部を
專業者によ
つて維持されておる
現状を御了察賜わりまするとともに、この大きなる
國策がこの
國会におきまして取上げられていないということは、われわれの最も遺憾といたす次第であります。賢明なる当
委員会の諸氏、何とぞ特に私の申し上げましたる点について御
考慮を願いまして、今後のわが國の
水産行政の上に
画期的施策を施行されんことを、私はここにお願いを申し上げまして、私の内
水面増強に関しまするところの
意見を終りたいと思うのであります。
最後に
委員長の特別に許可されましたる御
配意に対しまして厚くお礼を申し上げます。