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栗栖國務大臣 今われわれ党を同じくしております
小澤氏議士からの、
水産に関する
予算その他についてのお尋ねがあ
つたわけでありますが、私は單に
大藏大臣として
予算その他をいたすという
関係からここでお答えするだけでなしに、國務大臣といたしまして、
水産事業についてはいささか金融その他について十数年の経驗をも
つております次第でありまして、ここでこのいい機会をとらさせていただきまして、
水産事業の振興ということと、それから
予算あるいは金融の措置というような点をも併せて述べさせていただきたいと思うのであります。
私
大藏大臣としてただいま辞表を提出いたしておりまして、この次の
大藏大臣がどうなるかということはわからないのであります。ここでの
委員各位の御
意見は、新
大藏大臣にもお傳えいたしますし、また私もあるいはこの次の
内閣におきましても、何かの大臣としてのポジシヨンをもつことになるかもしれないとも付度しておるのであります。そういう場合におきましては、実行にも全力を盡したい。かように考える次第でございます。そこで
水産事業その他の全体について私
意見を述べさせていただきたいと思うのであります。その結果
予算その他に話を及ぼしたい。こう考える次第であります。
この
水産事業は遠く南氷洋に出ます大きな遠洋の
関係のものもありますし、近海の
関係もありますし、近海と申しましても、東支那海、あるいは遠く大洋の中に出るのもあるのでありまして、千差万別でありますが、しかし各種の
水産事業を通じまして、單に
日本の
食糧問題あるいはそういうような國内的の問題だけで、これの振興が現下の
状況において必要だ、こう認める以外に、これはやはり
貿易産業としても
相当の重点をもつと思うのであります。中華民國その他南方への海産物、
水産製品を輸出するという点、及びあるいはやがて欧米諸國へカン詰その他を輸出するという点におきましても、
日本の
國民経済の上に非常に大きな地位を占めておるのであります。そういう
意味におきまして、この振興は單に國内経済の面のみならず、國際経済の上におきましても、ぜひこの
関係は振興をしていくことが刻下の
事業として非常に大事だということを、まず第一に申し上げたいと思うのであります。
そうしますと、振興の面においてでありますが、それについては今の
漁港の問題、漁獲施設の完備という点ももちろん大事であります。私
どもの郷里であります下関にいたしましても、仙崎、北九州、あるいはこの間も大分縣の方に参りました。また伊豆その他の方面、千葉の方面、この間も福島の小名浜にも参
つたのでありますが、ああいう所においての
漁港を
修築し、
建設改善をすることの必要ということは最も大きな問題であります。
それからさらに
漁船の
建設その他についての大きな必要な問題があるわけであります。これも一昨年の四、五月でありますれば、手操船がトン当り七千円くらいでできたのでありますが、それが秋には一万円となり、あるいは二万円となり、二万円をさらに超すという
現状におきましては、採算の上においても、
事業会社自体の上においても
相当のリスクがあるのであります。こういうリスクを、
政府といたしましてはなるべく安定した船價でも
つてつくらすようにする。そうしてや
つていく。これがなかなか現在の
状況においては困難な問題でありますけれ
ども、船價がうなぎ上りに上るというようなことでございますと、なかなか船を安心してつくれぬ。
從つて後に申しますように、金融の面においても十分いかぬ。こういう点もあるのでありまして、
政府といたしましては、そういう
漁船その他の建造についても、一連の政策をもたなければならぬと私は考えておるのであります。
それからいわゆるその他の整備についてもであります。また会社の濫設というようなこともいかぬ代りには、弱小の
企業がたくさん濫立しまして、結局競爭倒れになるということもいかぬのであります。そういう点におきましても、指導といたしましては、適当な
企業主体の規反のもとにこれをや
つていくということも、もちろん必要であるわけであります。そういうような点を合わせて、この
企業の主体の面あるいは
漁港その他施設の面、船舶、漁具その他建造の面を合わせていかなければいかぬのであります。ところで
資材その他に非常な制約を受けております現在におきまして、
安本といたしましてもできるだけの割振りをして、そういう方に多くまわすことが
一つの大きな施策に相なるわけであります。それと同時に資金の面でありますが、資金の面をいかにするかという点であります。これは
予算的措置でいたしますのと、金融的措置でいたしますのと、この二つの面を
政府といたしましては考える必要があると思うのであります。ただいま問題になりました
漁港の問題のごときは、
予算的措置の問題であると思うのであります。これは実は政変がたまたま起りまして、二十三
年度の
予算編成が、さしあたり
暫定予算編成ということに相な
つてきましたので、非常に困難なる問題にも逢着いたしたのであります。しかし私
ども大藏当局といたしましては、
暫定予算ではありますけれ
ども、やはり一年を通じての大体の
計画、財源支出というものを見合わして、そういうものを見合わしながらも
暫定予算を組むということが必要であると思うのであります。いきあたりば
つたりで
暫定予算を組んでは、とうてい健全
財政の実質おもつかみ得ないのみならず、この危機の脱却もできないと思うのであります。そういう面におきましてこの財源をつかみ、そうして大体の一年の
計画を見透しをつけながら、今回の
暫定予算を組むということに相
なつたわけであります。実はこの組閣も完了し、この國会において各位にお諮りをして、この財源等につきましても、一般
收入のほかに私一個の考えでありますが、次の
内閣でどういうようにか表現されるかと思
つておりますけれ
ども、さいわいにこの政策協定のできつつある中でも、
生産公債ということがうたわれておるのであります。
財政法でも許しますので、
建設的なこと——
漁港の
建設というものにはこの公債の発行ということも考えられるのであります。この公債も、單にインフレーシヨン下におきましては、
日本銀行の引受のもとに公債を発行するということはゆゆしい問題でありまして、これはあくまで避けなければならぬのであります。しかし市場消化、金融機関の再建整備も進み、貯蓄の増強、そういうものによ
つて市場で消化される
範囲においては、公債というものも発行は一向差支えない、現に御審議を経、御承認を得た昨年のあの大きな追加
予算のもとにおきましても、そういう
意味の
建設事業への投資については、公債の発行を認めておるのであります。これも市場消化の
範囲で認めておるのであります。今回の二十三
年度におきましては、そういう方面においても
建設公債としてこれが考えられるのであります。財源も一般財源で賄いきれぬところは、市場消化の許す
範囲においてはそれも考えられる。こういうような点において、われわれは能うだけの大きな
金額を、やはり市場の他との振合いで許す
範囲においては、
漁港の
建設その他にも振り向けたい。これは財界その他についてとま
つたく同じでありまして、そう考える次第であります。現下の
状態においては、
生産ということがまたインフレーシヨンを仰止する大きな働きをもちます。そういう
意味においても、
生産面に向う公債、しかも市場で消化されてインフレーシヨンに惡い影響を與えないものにつきましては、これを採用していく、こういうことに政策もかえ、そういう点においても
漁港方面にまわる資金を多くしなければいかぬのであります。こう考える次第であります。ただ、ただいま組閣中でありまして、
暫定予算でありますから、その全貌を現わすことはできないと思いますけれ
ども、
暫定予算に次いで本
予算などの
編成ができます場合には、そういう点を十分あげるべきであり、私はそういう考えを年來も
つておりますので、ここで表明いたしたいと思うのであります。
それから金融の面であります。これは実は
水産金融についても若干の経驗をも
つているのでありますが、これはおもに運轉資金と、
建設の方の長期資金であります。まず長期資金について申し上げます。長期資金はまず船價の問題であります。船をつくる場合に、こう船價が上りますと、普通の金融ではなかなかできない場合がしばしばあるのであります。私の記憶でも、
先ほども申し上げましたが、いま一度申し上げますと、実は一昨年の四、五月ころ手繰船その他の船をつくるときに融通しましたのは、船價が非常に高いとい
つて、トン当り七千円であ
つたのであります。それが一昨年の七月から九月にかけては一万円になりました。一万円でたいへんだろうと言
つてお
つたのでありますが、それが二万円になり、さらに二万円を超すというような
現状であります。そこで一般の普通金融ということはなかなかむずかしいので、復金の金融へと移行してくるのであります。この復金ということも、
石炭金融で三分の一を使うとか、あるいはその他で大きな金を
使つておりますけれ
ども、復金がスフインクスのようになることも大きな問題であります。復金の貸出などは、現にこの
委員会その他を経て取締
つて金融をしておりますけれ
ども、しかも
相当大きな金融になるのでありまして、その金融ということになりますと、復金のあり方な
どもなおいろいろ見かえていかなければならぬと思うのであります。しかしこの
水産金融などで、船價その他の点において普通金融ができぬ場合においては、復金の保証とか、あるいは復金で金融をするということになります。しかし大体決済の行詰りが底にな
つて、上向くことになれば、一般の市中金融、殊に
地方銀行の金融としては最もいい対象であります。そういうような点も善導し、たまたま金融機関再建の整備が、新旧勘定を
年度末までには合わすことにな
つて、増資その他で再出発をすることにな
つておりますので、こういう点について一般金融の疏通ということも本則でありますから、十分考えたいと思うわけであります。復金ももちろん活用しますけれ
ども、復金の資金については大体限度がありますから、一般金融へその方を流ししていくというのも考えなければならぬと思うのであります。そういうものについては、もちろん
水産事業家も経営の堅実ということをして、一般の金融でも十分受ける資格があるようなところへもい
つていただかなければならぬと思うのであります。
なお最後に金融の制度でありますが、これは
漁業財團その他の制度があり、船舶抵当その他の制度があるのであります。ちようど私
大藏大臣として申し上げてはどうかと思いますが、一言附けさせていただきますと、この
委員会などで今の財團制度、あるいは船舶抵当制度というようなものなどをも
つて簡便にし、もつと運用をよくするような制度を、この
委員会でお考えを願
つて、手続を簡便にするということになれば金融の面などでも業者も受けられ、
從つて國の受ける利益も
相当あると思うのであります。そういうような
予算外にもわたりましたけれ
ども、私は
水産事業に対して、この際特に重大なことを考え、その資金その他の面においても、こういう点を十分考え、振興をしていきたいという
意見をも
つておりますので、一應述べさせていただいたわけであります。