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1948-06-26 第2回国会 衆議院 商業委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十三年六月二十六日(土曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 石神 啓吾君 理事 笹口  晃君    理事 中村元治郎君       關内 正一君    多田  勇君       冨永格五郎君    松崎 朝治君       林  大作君    師岡 榮一君       山口 靜江君    岡野 繁藏君       櫻内 義雄君   唐木田藤五郎君       赤松 明勅君    小西 寅松君  出席公述人       喜多村 實君    鈴木 俊彦君       高宮  晋君    立川  繁君       徳永 佐市君    帆足  計君       前澤 慶治君    前田  一君       三樹 樹三君    森川 覺三君       吉田  隆君  委員外出席者         鉱工業委員長  伊藤卯四郎君         議     員 前田 正男君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた案件  事業者團体法案     —————————————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより公聽会を開きます。  事業者團体法案は、去る六月十一日本委員会に付託せられて以來、商業委員会鉱工業委員会連合審査会審査いたしておりますが、委員会が特に本日公聽会を開きまして、本法制定によつて受ける各事業者影響について、眞に利害関係を有する者及び学識経驗者等より廣く意見を聽くことといたしましたゆえんのものは、申すまでもなく本法案國家経済からも、また一般國民にとりましても、一般的関心及び目的を有し、かつきわめて深い利害関係をもつている重要法案でありまして、事業者團体ないしは大きく産業全般に対して、多大の影響を及ぼすものであり、日本経済自立への途上にあります経済活動に決定的に方向づけます本法案につきまして、当委員会としてはぜひ國民の声を拜聽いたし、廣く世論を反映せしめ、本法案審査を一層権威あらしめると同時に、万全を期したいと希うからであります。ただ諸般の事情によりまして、公聽会をわずか一日しか開けないのを遺憾とするところであります。たとえ一日でありましても、公述人各位の御高見を承ることができますのは、まことに有意義でありまして、一同期待する次第であります。私は委員会を代表して、御多忙中にもかかわらず、貴重なる御時間を割かれまして御出席くださいました公述人各位に厚く御礼申し上げます。なお本日は早くより、お待ち願いまして恐縮のほかありません。  さて本日の議事についてちよつと申し上げます。公聽会は今月限りでありまして、公述人の人員を勘案いたしましたならば、公述人一人当りの発言時間は十分ないし十五分ぐらいでやめていただきたいと思います。発言発言席でお願いすることにいたします。そのときは御職業とお名前を速やかに、述べていただくようにお願いします。公述人発言順序委員長に御一任願いたいと存じます。  ではこれより公述人の御意見を伺うことにいたします。
  3. 笹口晃

    笹口委員 本日公聽会を開きましたのはわれわれ委員の熱心な希望からでありますが、本日おいでくださつた公述人方々は、皆それぞれ斯界の権威者の方であらせられますので、私ども非常に参考になるわけであります。ただ一言希望をいたしたいことは、賛成にいたしましても、反対にいたしましても、できるだけ具体的にお述べを願いたいということと、もう一つは、この際公述人の御意見というものが、場合によりますと誤解に基くものがあると困りますので、公正取引委員会の方に御出席を願つておりまして、もしもその御意見等について誤解に基くもの等がございましたならば、適当の機会委員長においてお取計いを願いまして、公正取引委員会の方からもその誤解点等を明らかにしていただく。これはわれわれが参考になるばかりでなく、また一應公述人方々も、この機会にそういう誤解を解かれるというようなことにもなりはしないか、かように考えまして、多少公聽会としては行過ぎかもしれませんが、便宜委員長においてお取計らいを願いたいと思います。
  4. 堀川恭平

    堀川委員長 ただいま笹口委員より申し述べられました件につきましては、委員長といたしましても、さよういたすことが適当な処置ではないかと考えるのであります。そこで公述人の御意見終了後さよういたしたらどうか、かように考えます。——それではさよにすることにいたします。
  5. 唐木田藤五郎

    唐木田委員 ちよつと参考に申し上げておきたいのですが、この公述人職業、氏名を拜見いたしますと、大体商工業関係した人はたくさんおりますが、農業関係の者はほとんど見当らないのであります。これでは農業関係人たち意見はほとんど聽かれない、こういう懸念がありますが、いかがでありますか。
  6. 堀川恭平

    堀川委員長 公述人を決定する前に、各党の理事の方にお諮りしたのですが、あるいは唐木田委員の言われたような点があると存じまするが、今になつてはしようがないのではないかと思います。さよう御了承願いたいと存じます。
  7. 唐木田藤五郎

    唐木田委員 決して固執するわけではございませんけれども、それが偏つたことで農業者の声が聞えないような場合、不平が出た場合を懸念するのです。
  8. 堀川恭平

    堀川委員長 適当な機会に、農業者團体から文書によつて意見でも聽いたらどうでしよう。
  9. 唐木田藤五郎

    唐木田委員 それでも結構です。
  10. 堀川恭平

    堀川委員長 さよう決定さしていただきます。  それでは日本産業團体協議会事務局長帆足計さん。
  11. 帆足計

    帆足公述人 ただいま御紹介にあずかりました日本産業団体協議会常務理事帆足計でございます。私は参議院に席を置いておるのでございますが、本日は同業者團体関係仕事に永年携つておりまする経驗者の一人としまして、皆樣に御参考までに意見を申し述べます。  御承知のように日本経済は、特に日本工業は非常に後進國でございましたけれども、それにもかかわらず独占は非常に進んでおりまして、世界無比段階に達しておりました。一割程度の從業員を擁しまする工業が、日本の全工業を支配しておると申しても過言でないような状況でありまして、それが今次財閥解体、また過度の経済力集中排除法案独占禁止法案等によつて規制されつつありますことは、経済民主化過程におきまして、私は必然的なことであろうと考えております。しかしながら現在ほとんど廃墟同樣なつております日本経済再建のためには、一方生活安定、勤労者の諸権利を確保する必要がありますと同時に、資本の蓄積並びにその発展をはからねばならぬことは申すまでもないことであります。同時に現在日本経済民主化過程におきまして、不当なる独占を排除して、また公正な自由競爭能率競爭を大いに奬励せねばならぬことは当然でありますが、他面國民経済の安定のために、健全なる均衡を保ちますために、また企業の公正なる原料資材の配分を確保しまするために、公正な統制もまた確保しなければならぬという特殊な事情に置かれておりますことは皆樣御承知のごとくであります。世界情勢を見ましても、かの一九二九年の世界恐慌を機といたしまして、世界資本主義の構造並びに諸法則には、大きなる変化が見られております。それは過去における古典的な自由経済の時代が過ぎまして、自由と統制とをいかに調整するかということが國際貿易の面におきましてバ世界各國の戰後の建設の面におきましても、課題なつておる新しい歴史的な事実でございます。このようなことを考えますると、今後の経済政策といたしましては、一面におきましては能率競爭、公正なる自由競爭を確保し、不当なる独占を抑えると同時に、他方におきましては國民経済の均衡ある発展のために必要なる統制をいかに公正に行うかという面もまた、われわれ考慮せねばならぬということが歴史の課題なつておると考えるのであります。独占禁止法は申すまでもなく、これは不当なる独占に対しましてこれを抑圧するところの一般的、基本的法規でございます。これに対しましてその適用監視を受けまするところの同業者團体というものは、御承知のように明治初年の準則組合に始まりまして、経済実情並びに要求に應じまして、いろいろな形に発展してまいりました。同業者團体は過去におきまして、私的なすなわち独占的性格もありますけれども、他面におきましては業界の公正な協同を確保し、また公共利益を合致するように業界をもつていくというような公益的な面もあるということは御承知のごとくでございます。從いましても私どもといたしましては、独占禁止法は不当なる独占禁止に対しまする憲法のようなものでございまするが、これを適用する段階になりますると、そこにいろいろ具体的な問題にぶつかるのでございます。同業者團体の問題になりますると、その最も具体的なものの一つでございまするから、同業者團体のあり方というものは抽象的にこれをきめるよりも、そのときどきの経済の必要に應じまして、これを運営してまいらねばならぬのではなかろうかと思うのであります。從いまして同業者團体のあるべき姿に対しまして、一面におきましては、その不当なる私益的行動に対しましては監視をすることが必要でありまするけれども、他面におきましては、それが公共的に動いてまいります限りにおきましては、大いにこれを奬励し、活用せねばならぬ面も、統制経済の現段階におきましては大いにあるわけであります。この法案原案を見ますると、第四條に活動許容條項を九箇條あげております。第五條には禁止事項を十九項目にわたつて羅列しております。これを見ますると、私はあまりにもこの同業者團体活動を、機械的に縛り過ぎておるのではないかという感じがすめわけであります。同業者團体というものは経済実情に應じて有機的に活動せねばなりません。從いましてこれをあまりに強く縛りまするならば、自繩自縛の結果になるおそれもあるわけであります。また小さな例でありまするが、地方に散在しておりまする小さん業者が、あるいは一定の容器の單位に達しない微量の物資を入手しまするような場合に、互いに協同し合いましたり、または容易に手にはいらない特殊の部品や、特殊の原料資材の入手を斡旋をこの協同團体に頼みましたり、または各種の届出に必要なところの事業証明のようなものを同業者團体にお願いしましたり、または分散しておりまする業者が、同業者團体便宜を借りまして集金の依頼をいたしましたり、また各種協同組合協同組合類似團体等がいろいろな形で協力いたしまして、そうして公正な精神のもとにおきまして業界協力繁栄の実をあげようとしておりますような行動も、現在大いに社会的役割を演じておるわけでありまするが、これらの行為がことごとく機械的に縛られるということになりますると、私は法の運営経済の実態とがそぐわないようなことになる点がありはしないかということを危惧するものでございます。從いましてこの第四條の第九項目うしろに、許容條件をただ九項目だけに限定せず、以上列記してありますほかに、その他公共利益を害せず、かつ公正取引委員会の認めた行為は次の第五條規定にかかわらずこれをなすことができる、という一項目を入れていただきまするならば、実際に即した同業者團体が現実の必要に應じまして正しく運営されるのに役に立つのではなかろうかと存じまして、この点をぜひ修正していただきたいという希望をもつのでございます。  これがこの法案を見まして最も痛感いたしまする基本的な点でありまするが、その他二、三点を申し添えまするとまず現在の建前におきまして、経済統制仕事は全部國家がやるということになつております。國家とは何ぞやと申しますると、それは官廳であります。官廳とは何であるかと申しますると、日本現状におきましては、未だ封建的色彩の強いところの官廳にわれわれは頼らざるを得ないという現状でございます。從いまして統制各般仕事が全部官廳の独断によつて行われるということは、民主的運営に慣れていない日本現状におきましていろいろな弊害を生み、かつ生んでおりますことは皆樣御承知通りであります。從いまして官廳行政民主化行政の適切なる監査、民間実情をいかにして行政の上に反映せしむべきかというような官廳行政民主化の諸問題につきまして、この法案の実施には併せて考慮されることを運用上特に要望したい点でございます。  第二に、現在物資需給調整法附則によりまして、民間経済團体経済行政運営にいろいろ活用いたしておりまして、今後当面の間はなお必要があろうと存じます。從つてこの問題については、調整法附則適用していただきまして、必要のあります場合には、指定補助團体にいたしてこれを協用することは私は適当であろうと存じます。しかしながら現在民間團体官廳仕事手傳いをいたしますのは、必ずしもこれは有効に使われておりません。さらにまた、從來政府に協力しておりました機関閉鎖機関に次々に指定されまして、非常な苛酷な取扱いを受けておる実情であります。私は民間経済團体の活用は政府がこれをなさいます場合は、礼儀と親切をもつて活用していただきたいとお願いしたいのであります。  第三に、この團体適用事業者としての共通利益を追求することを目的とする性格團体に限られております。從つて、たとえば学術團体のごとく、純粹に科学技術向上を念とする團体に対しましては、これは政府においてもさよう御解釈のこととは思いますけれども、これを適用すべきでないと考える次第であります。  次に各種経済團体または同業者團体業界または一般國民啓蒙のため、またその專門知識向上等のために各種出版等をいたしておりますが、それらの出版機関誌の販賣等の仕事はこれは啓蒙事業でありまして、当然営利事業と認めらるべきではなかろうとわれわれは解釈するのでございますが、政府においても、國会においても、そのような解釈を明瞭にしていただきたいと存ずる次第であります。右と関連して現在各業種別に十数個の経済復興会議が設けられております。これは労資民主的協力の機構でありますが、このような種類の團体も当然事業者團体の範疇の中から除外されてしかるべきではなかろうかとわれわれは解釈する次第でありますが、この法案の御審議の過程においてそれらの点も明確にしていただきたいと存じます。  最後に、第五條の第十五項に業界地方に分散しております方々に代つて集金することがいけないと書いてありますが、この條項はむしろ削除していただいたらいかがであろうかと存じます。と申しますのは、原案のごときいき方をもつてしまするならば、全國に支店をもつ有力な業者のためには非常に有利であるかもしれませんが、中小業者を逆に圧迫することになる結果になることをおそれる次第でございます。これらの問題については、先ほど申し上げましたように、第四條第九項のあとに除外例を設けるようにしていただきますれば、運用の妙を得たるものではなかろうかと存ずる次第であります。  その他労資問題等立場からもいろいろ問題がございますが、各專門分野公述人の方が見えられておりますので、私の申し上げる要点は大体このようなことが、御参考まで申し上げる次第であります。
  12. 堀川恭平

    堀川委員長 お諮りいたします。今の公述人の御意見に対して何か御質疑はありませんか。——なければ、次の公述人日本経営者連盟專務理事前田一さんにお願いします。
  13. 前田一

    前田公述人 私は日本経営者團体連盟專務理事をしております前田一でございます。同時に石炭鉱業連盟常務理事をいたしております。  日本経済團体連盟と申します團体は、ほかの経済團体とまつたく性格が異つておりまして、純粹に労働問題を專管いたしておりまする團体でございます。構成の内容を一通り簡單に御報告申し上げたいと存じます。各府縣に地域的の労働問題を專管する経営者協会というものができておりまして、この地域的の團体が全國的に結集いたしまして、これが地域別部会としての一本の柱となつております。さらに石炭であるとか、あるいは鉄であるとか、あるいは紡績、セメント、電力というふふうな産業別業態別の全國的な團体ができております。この業態別團体が全國的に結集いたしましたのが、一本の柱となつて、業態別部会をつくつております。この二つ部会が二本の柱となりまして、これを統合いたしましてでき上つておりますのが日本経営者團体連盟でございます。経営者團体連盟が発足いたしましたのは四月十二日でございまして、発足後まだ二箇月有余を経過したにすぎません。発足いたしました動機は、終戰後財閥解体であるとか、あるいは経済力集中排除、あるいは財界の追放であるとか、いろいろの旋風の中に経営者陣営がおおむね虚脱状態になりましたのに引きくらべまして、労働者陣営は、労働組合法あるいは労働基準法、労調法というような労働三大立法の保護のもとに非常なる発達を來しまして、いわゆる労働攻勢のもとに経営者陣営は非常なる圧迫をこうむりまして、虚脱状態に陷らしめられておつたのであります。その結果締結せられております労働協約等実例をみますと、経営者が当然経営権限界であるとして主張すべき限界を乘り越えまして、いわゆる経営権の侵害とでも思われるような点にまで労働協約実例が数多く示されているのであります。換言すれば、経営権失地が非常に多くつくられているのであります。そこでこの経営権失地を回復するために、経営者ほんとうに主張すべきを主張し、讓るべきを讓るという正しき態度を得るためには、経営者相互相互提携連絡をして、一つの同志的な結集をはからねばならぬ。かような考えから日本経営者團体連盟というものが生れております。すなわち労働者経営者が、二本のレールにたとえまするならば、二つレールのことの形をもつて、そのレールの上に日本経済復興という車を滑り出させるということでなければならない。そのいずれか一方が強く、いずれか一方が弱いということは、経済復興の車を滑り出さしめるゆえんにはならない。両者対等立場に立つて対等の実力をもつて、公正妥当なる労働條件の取結びを行つていく。その上に立つて両者が提携協力して経済復興の遂に逼進するということ、これこそが日本経済再建のために絶対必要なる要件であると信じて起ち上つたものでございます。もちろん鬪爭團体としての性格をもつておるものではございません。ただ從來のようにいわゆる金持ちけんかせずというような引込思案経営者が、ほんとう経営が今日の段階においてあるべき本然の姿を取りもどす。こういう意味においてそれを取りもどした本然の姿の上に立ちまして、労働組合対等取引をし、公正なる取引を取結ぶ。これこそ即日本経済再建に役立つゆえんである。かような信念のもとにできあがつたものであるのでございます。私どもの思念いたしまするところは、どこまでも労資対等立場、この対等なる立場に立つての公正なる労働條件取引、こういうことが私ども基本態度であるのでございます。このような私ども見地から、この事業者團体法というものを眺めてみますると、まことにこの対等立場を阻害せらるるおそれのある部面が、少くないように感ぜられるものでございます。  第四條には、先ほど帆足さんからも御説明がございましたように、許可事項をあげ、第五條禁止事項をあげてございますが、第四條の許可事項の中には、構成員委員を受けて、その委任の権限内において、労働組合團体交渉をすることができる。こういう許可事項が述べられておるのであります。しかしながら労働組合團体交渉をするだけの能力があるわけではないのでありまして、廣く組合活動としては経済、政治、文化、社会、あらゆる方面において活動をし得るところの余地が與えられておるのであります。この労働組合に與えられておりまする範囲のものは、少くも経営者團体に対してもまたひとしく與えられなければならない。かように考えるのでありまするから、ただ單に團体交渉をする範囲の狹いことだけを、許可事項として許されるということでは、対等なる立場を維持することはできないと考えておるものであります。そこで少くとももう少しこの條項範囲廣めまして、廣く労働條件調査調整処理及び資料の蒐集、交換、あるいは刋行、こういうあらゆる労働問題の調整処理に関して必要なることができ得るということが、積極的に規定せられてほしいと考えるものでございます。團体困渉をなし得るということが規定されておれば、それに必要なる資材とか調査ということは、当然なし得るではないかという解釈的な見方も、あるいはあるかもしれません。しかしながらこの解釈的な見方だけでは、往々にして後日紛議を起すもととなると考えますので、この機会において明瞭に規定の上に労働問題処理についての、廣範囲許可行為規定せるるべきと考えるものであります。  なお第五條につきましては、禁止事項の中でいろいろその通りに実行せられまする場合には、経営者團体としてまことに迷惑な点がうかがわれるのでありまして、たとえば第三号、第四号の中に対價の統制という言葉がありまするが、この対價というものの中に一体賃金が含まれておるかどうか。これがいかように解釈されるべきかは、私まだ詳らかにいたしませんが、もし対價の中に賃金がはいりますならば、賃金統制していくという行為禁止せられるわけでありまして、今日労働運動の推移を眺めてみましても、労働組合の方ではあらかじめ賃金を予定して、團体交渉に乘り出してくる、また経営者の方では、やはりわれわれ同業者としては今日の健全企業見地から見れば、コストの中におけるところの人件費の割合というものは、この程度でなければならぬ。これがわれわれの産業としては公正妥当なる賃金であるという一つの取極め方をいたしまして、お互いこれ以上の賃金は出せないぞというような申合せをすることは、当然あり得ることであろうと思います。殊に今日の情勢を眺めますと、一工場の問題は決して一工場で止まらない。必ずや他の工場に累を及ぼし、一地方は他地方に、一産業の問題は他の産業影響を及ぼしておることは御承知通りでございまして、一つ賃金水準というものがある一つ産業で讓歩されますると、それが一つの前例となつて、全般的な賃金水準に非常な狂いを生じてくるということが、今日の実情であります。そこで日本産業再建企業の健全なる運営というような見地からは、どうしても一つの守らねばならぬ賃金限界点というものは必ず出てくるものでありまして、それをいわゆる力関係によつて、ある一角が崩されるということは、他の産業また國家全体の産業立場から、まことに迷惑至極であるという意味において、経営者が互いに賃金統制をやつていくということは、当然の経営運営上の義務であると私どもは考えるのであります。こういうことがもしできないというようなことでありましたならば、これは労働問題を扱う経営者團体としては、まことに迷惑な話であります。こういう点が対價の統制という意味において、除外せられるということをはつきりいたしたいということを、私ども希望いたしておるわけであります。  なお六号、十二号、十六号というような点に除名の問題、あるいは融資の問題、あるいは構成員紛爭処理の問題、こういう條項が含まれておりまするが、除名の問題にいたしましても、労働組合の傘下の組合統制に服さなかつた場合、除名をなすことができるのであります。もしこれが経営者團体におきまして、ただいまのような統制を考えておりまする場合に、これを除名するということが必ずやあり得ると思うのであります。そういうことがこの條項によつて禁止せられますならば、これはまた対等原則を破るものであると考えまするし、また紛爭処理の問題にしましても、融資の問題にいたしましても、同じく対等立場を破るというようなことになりますので、労資対等原則という立場から、組合に許されておりますことは当然経営者團体にも許さるべきであるという建前のものに、以上のような点について、この法案の修正をお願いしたい、かように考えておる次第であります。何分皆様方の御承解をいただきまして、よろしく御支援のほどをお願いいたします。
  14. 堀川恭平

    堀川委員長 ただいまの前田公述人の御意見に対して、何か御質問はございませんか。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤卯四郎君 委員外ですが、発言のお許しをお願いいたします。
  16. 堀川恭平

    堀川委員長 伊藤君に発言を許します。
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤卯四郎君 ちよつと前田公述人にお伺いしたいのですが、ただいま伺つておりますうちに、労働組合事業者團体との交渉に関して、労働組合團体交渉の能力がないというように、ちよつと伺つたような氣がするのですが、その通りでしようか。事業者團体の方に能力がないということですか、どつちですか。その点をちよつとお伺いしたい。
  18. 前田一

    前田公述人 お答えいたします。能力がないということは、私は申さなかつたつもりでございます。團体交渉は、お互いに能力があるどころではない。これは大いに相互にやらなければならぬことでありますが、團体互渉をなし得るというだけの狭い範囲の許可では困る、こういうことを申し上げておるのであります。もう少し廣く労働問題に調査調整処理あるいはその他の朴料を関係、こういうような全般にわたる許可事項経営者團体にも許されなければ、同じことが労働組合においてはできるにもかかわらず、事業者團体はこの法案によつて縛られる、こういう結果になることは労資対等原則に反するのではないか、かような意味合いのことを申し上げたのであります。
  19. 堀川恭平

    堀川委員長 ほかに御質問ありませんか。  それでは日本商工会議所專示理事三樹樹三さんにお願いいたします。
  20. 三樹樹三

    ○三樹公述人 私は日本商工会議所の專務理事の三樹樹三であります。戰後経済民主化の要請に基きまして、産業團体構成、機能に、諸般の改廃が行われてきたのでありまするが、事業者団体法案も、その一連の施策といたしまして、事業者團体のあり方、活動範囲を明らかにしようとするものでありまして、本法案設定の必要は十分これを理解することができるのであります。しかしながらこの法案規定いたしておりまする内容に関しましては、いろいろ意見がございますので、これを順を追うて申し述べたいと存じます。  第一に、この法案事業者団体の活動に対しまて、私的独占と、不公正競爭の手段を排除せんとするものであります。従つて本來ならば、私的独占禁止法によつて十分これを取締ることができるものであると考えるのでありますが、ただ從來物資統制事務を行つた産業團体が、逐次閉鎖され、これに代りまして新たに設立される産業團体活動基準が明確でないので、從來の惰性によりまして、その活動範囲が拡がるおそれがありますので、一般的に基準を示し、その活動範囲を明定しようとするのが、おもなねらいであると考えるのであります。従いましてかような観点からいたしまして、この法案規定いたしておりまする内容を見まするならば、あまりに微細な点まで制限を加え過ぎておると考えられるのであります。  第一に第四條の許容活動でございまするが、これが限定的でありまして、第五條禁止行為範囲が無制限ぶあるということは、あまりにも活動分野を狭からしめまして、團体の創意ある活動を不可能ならしめ、この事業者団体が適切な発達を遂げていくことを阻害するものであると申さなければならないと考えるのであります。     〔堀川委員長退席、細川委員長代理着席〕 從いまして第五條禁止行為をはつきりと定めて、第四條の許容活動は、第五條禁止行為に触れない行為はこれをなし得るというような條項を加えられたいと考えるのであります。すなわち第四條に、「十、前各号に掲げるものの外、第五條第一項各号を該当しない行為をすること」、こういうふうに加えていただきまして、禁止行為というものを限定し、そのほかの行為原則として許容されるというふうにしていただきたいと考えるのであります。  次に第五條禁止行為規定が、あまりにも嚴格過ぎるという点でございまして、先ほどもお話がございましたが、たとえば第十五号の集金禁止規定のごとき、また第十五号につきましても、機構事業者その他の紛爭が、お互いの了解により円滑に仲裁され、あるいは解決されることは、禁止せらるべきでないと考えるのでありまして、この二号ともに削除せられたいと考えるのであります。なお第十七号中に、「不当」にとあるのでございますが、これは「不法な手段によつて」というふうに改められたいと考えるのであります。すなわち「不当に立法又は政府の政策の影響を與えること」を、「不当」にかえて「不当な手段によつて」といすふうに改められたいと考えます。それから第十九号は、前お話申し上げましたようなわけで、これを削除せられたい、かように考える一第であります。  最後に、この機会におきまして、商工会議所の会場を申し述べて、御理解を得たいと考えるのでございます。御承知のごとく商工会議所は、英米におきましても、單なる事業者の団体、すなわけトレード・アソシエーシヨンというのではなくして、廣く商工業の発達、及びそれによりまして消津者大衆の利益増進をはかり、都市、地方発展に寄與しようとするところの、地域的、公的な機関であるのであります。この意味におきまして、トレード・アソシエーシヨンに適用さるべきこの事業者団体法の適用除外をされるように希望いたしておるのであります。これは全国の商工会議所の強い要望であることを重ねて申し述べる次第であります。
  21. 細川八十八

    ○細川委員長代理 ただいまの公述人に、何かお尋ねがございますか。——ないようでございますれば次に移ります。  ちよつと皆さんに申し上げておきますが、商業委員以外の議員の方で御発言の方は、委員長の許可を得てから後にお願いいたしたいと存じます。  それでは次に移ります。東京産業大学教授赤松要さんお願いいたします。——お見えになつておられぬようですから後番にいたします。  運輸省の調査壁の高宮晋さんにお願いいたします。
  22. 高宮晋

    ○高宮公述人 私はただいま御紹介にあずかりました運輸調査局の高宮でございます。企業組織を多少研究しております立場から、一言意見を述べさしていただきたいと思います。  まず第一に事業者團体には、大まかにわけまして二つの種類がございますが、これらが一緒になつ事業者團法に機械的に取扱われているという感じをもつております。その種類と申しますのは、一つはその業界の同一の業界利益代表的な、從つて総合的な性質をもつた組織がございます。もう一つの種類は合理化ということを中心に結合している、どちらかといえば個別的な組織形態をとつているものがあるのでございます。この二つの組織は性賢が非常に違いまして、これらを一背に取扱うということは、いろいろの問題におきまして、弊害が起るのではないかと思われるのであります。で事業者團体につきまして、特に公正競爭の立場から問題にいたします際には、利益代表的な総合的な組織がややもすれば、今までのような統制的な活動をしたり、また從つて独善的な傾向を帶びたり、あるいはその中におきまして、いわゆる組織的な強制というものが不正に行われる、こういう弊害があるわけでございますから、主としてこの事業者團体のねらいといたしましては、そうした大きな組織、業界を総合的にまとめるようなそういう大きな組織について、公正競爭の観点からこれを合理的にする、こういうことであろうと思うのであります。他方合理化のための個別的な組織につきましては、これは生産の合理化、あるいはそれと附隨いたしまする流通部面の合理化、これは日本経済再建立場から申しまして、どうしても必要な組織であろうと思うのであります。元來この合理化は公正競爭の立場からいきますならば、公正競爭を通して能率競爭を行ううちにその合理化が実現していくということになるはずでございますが、わが國の特殊性からいたしまして、蓄積が非常に少いわけであります。殊に戰後日本経済におきましては蓄積が非常に少い。そうしてまた非常に小さな中小工業がたくさんございます。でこれらの部面におきまして合理化を遂行するためには、どうしても組織によつてつていくという必要があると思われるのであります。でこの組織は、合理化ということを中心にした組織でありますから、そんな大きな組織でなくてよろしいのでありまして、合理化のできる範囲における組織、たとえば数箇の中小企業が共同販賣所を設置するとか、あるいはまたお互いに組合をつくつて、その中において工場の專門化を実施するとかいうような、そういう組織につきましては、これは生産公正競爭の立場から申しましても、この事業者團体法の対象には少しはずれてくる性質のものでなければならないので、こういう組織をこの事業者團体法によりまして阻止するということは、日本経済再建立場から、不幸ではないかというふうに考えられるのであります。そういう点におきまして、この事業者團体法の特例として、最後の方に農業及び漁業関係につきましては、特に十四人以下の結合の場合には、この法律は適用しないということがございますが、同時に中小工業の部面までその特例の範囲を拡げることが適当であろうと存じます。この中小工業範囲につきましては、いろいろ具体的には問題があると思いますが、本日は時間の関係から申し述べないことにいたしまして、ともかくも一般的に申しますならば、合理化的な個別的な組織につきましては、これをできるだけ認めるということが第一に原則的に必要なことであろうと存じます。  そういう立場から次にまず許容事項の第四條について考えてみたい。これにつきましては、やはり次に掲げる活動に限りこれを行うことができるというふうに、彈力性のない取上げ方になつておりますのを、先ほどいろいろ御意見がございましたように、公正取引委員会において、その他これを認可したものについては、特にこれを行うことができるというような彈力性をもたせることが必要であろうと信じます。なおここで、この項目におきまして経営上の問題が出ておらないように思うのであります。研究、技術、科学はございますが、なおその他経営管理上の情報の交換、これは今後非常に大事だと思うのですが、そういつた経営的な字句を入れてほしいのであります。それと関係いたしますが、状に事業者團体におきまして今後必要になることは、計算制度、経理の問題、経理を合理的にやつていく、そのシステム、組織を今後大いに考えていかなければなりませんが、これが事業者團体一つの大きな任務になるのであります。そ意味におきましても、計算制度、経理制度に関して、この事業者團体の許容事項の項目の中に、何かうたつてほしいのであります。それでこの四條の五項の啓発もしくは宣傳をし、それから利害代表をする代表的な意見を述べる、こういうことでございますが、このほかに産業教育という非常に大きな仕事があると思うのでございまして、この産業教育の項目も、やはり特に啓発という字を入れてございますから、それと関連して産業教育の字句を入れればよろしいのではないかと存じます。  さらに次に禁止事項五條におきましては、結局禁止原則は公正競爭の立場から申しまして、その総合的な組織が営業行為をしてはいけないということ、それから公的性質を帶びた統制をしてはいけないということ、それからまたその組織的強制組織をつくりますと、どうしてもそこに組織的強制が行われます。その組織的強制は個々の業者構成員経済行為に対する統制、これがやはりいけないというように原則的に考えられるのであります。側面的な指導、これは組織的強制になりません。それからその組織的強制が不正に行われる、こういうことであろうと思います。こういう原則からこの第五條の各項目を考えてみますと、非常にこまかくなつておりますが、大体におきまして、この原則に合うものが多いと思いますが、先ほど民意見がありました十五の「構成事業者その他の者のために集金を行うこと。」というようなことは、むしろこの原則からいきまして省いた方がよろしいのではないかというふうに存じます。その他こまかく申しますといろいろございますが、時間もまいりましたからこの辺で私の意見を申し述べることを終ります。
  23. 細川八十八

    ○細川委員長代理 何か高宮さんにお尋ねはございませんか。——ないようでございますから次に移ります。  次に東京商業者同盟事務局長喜多村実さんにお願いいたします。
  24. 喜多村實

    ○喜多村公述人 商業者同盟事務局長の北村実でございます。私はこの事業者團体法案の改正要項に対しまして、商業者、殊に中小商業者の小賣業の立場から、また小賣業の総合團体としての立場からだけ、この問題を申し上げてみたいと思います。  まずこの改正要項の要点にはいります前に、現在の終戰後におきます小賣商業の現状について簡單に申し上げてみたいと思います。終戰後経済混乱によりまして、自然発生的に小賣商業が非常に復活してまいりましたが、その余波が未だに残つております。特に商業の小賣の面におきます秩序が回復しておりません。要するにまだ混乱状態にあると申し上げてよい状態でございます。その状態がどうしてそのように継続しているかという一つの理由といたしましては、要するに失業人口の吸收といいますか、そういう社会政策的な意味が非常にあると思われるのでありますが、引揚者であるとか、戰災者の方々が適正な職を得、收入を得る途というような意味で続々この小賣業の中にはいつてこられておる現状が非常に多いのであります。從つて昔の小賣商專門家というよりも、生業あるいは零細的な意味の小賣商業が非常に多いということ、それからもう一つ混乱しております現状一つといたしましては、根本的には自由経済的な本質的な考え方が本流として流れておりながら、実際の面では、統制経済がかなり強く施行されておる。こういう意味で実は業者もそういう面では非常に混迷状態にあるということが言えると思います。從つてそういう状況で生まれてきておりますので、この経済的な状態を見ますと、多くが生産経営といいますか、あるいは副業経営とでもいいますか、非常に小さい経営状態が多いのでありまして     〔細川委員長代理退席、委員長着席〕 こういう状態から見まして、これを適限経営的に何とかしていかなければならないというのが、今日の日本の小賣商問題における一つの方向だと思うのであります。もう一つは商業道徳とかあるいはサービスとかいうような本來の社会的な商業の機能の面が、單に生活の糧を得るというような利益の面の営業として、現在は必死に行われておりますために、その商業のもつております本質的な社会的機能を発揮するという余裕が現在なく、渾沌としておる。これに対しまして、終戰以來当局といたしまして、何ら商業指導の施策というものが行われず、放任の状態なつておる。こういうのがまず現状でありまして、どういう形でもいいから、できるだけ小賣商業の経営を合理化させて、適限経営規模のためにも、協同力によるところの組織をもつて、何とかこれせ更生させて行くということが、最も現在必要な状態に置かれておる。こういう面から見ますと、今度の事業者團体法の考え方から申しますならば、むしろこの小賣商業の面においては、特に大規模経営以外はその圈外にあるような感じを受けるのであります。  それから第二は、この法案の施行にあたりましては、これのちようどうらはらにあたります商業協同組合法案がはつきりいたしてまいりませんと、非常にこれが重要な関係をもつております。特にその中における小規模経営の範疇の問題があると思うのであります。一体普通の概念で申します日本の中小企業のうちで、中というのは一体どの辺を指すのか、小規模といいましても、小賣商の場合におきまして、小規模はむしろアメリカあたりの小賣商とは全然違いまして、少くとも概念的にいつて、中くらいに引上げてまいりませんと、いわゆる生業形態から企業形態に移つてこない。また個々が小さくても、それを協同の力によつて、何とかそういうふうな方向へ進めていつてやらなければならぬ状態でありますので、商業協同組合法でどの渡を小規模とするかという問題が一つ、この法案と合せましての重要な問題になつてくると思うのであります。そこでそういう場合に、商業協同組合法において小規模経営ということが、だれが見ても大規模だと思われる、たとえば販賣面積が何坪以上、百貨店のような、あるいは資本金が一千万円以上とか、あるいは全國的な規模をもつて支店が大阪にあるとか、名古屋にあるとか、そういうようなもの。あるいは從業員が五十人以上であるとかいうようなもの、たれが見ても一見して大規模経営だと思われるものを除いたものが小規模経営だというようになれば、かなりこの法案によりましても、小賣商は経営の合理化を進めていくことが、商工協同組合法の上にできると思うのでありますが、現在商工協同組合法の改正が明確になつておりませんために、この点で非常に疑点がございます。  それから恵三はこれは小賣商のひがみかもしれませんが、今日まで小賣商はそれを維持、育成されるという面がほとんどなく、常に圧迫されてきておるという感じを深く受けております。この法案におきましても、新憲法下にありまして、一切があげて民主的な運営を望まれておるときに、何か事業者の自主性とか、あるいは独創性というようなものが阻まれておるような感じを受けて、事業者が非常に臆病に、手も足も出ないんだという感じを受けるのでありまして、その趣旨が國家経済の上において向上意味し、社会的に惡い影響を與えない、むしろいい影響を與えていくのだという團体に対しても、この法案が何か牴触して、そういう團体を窒息させていくという印象を受けますので、こういう点につきまして、特に今日の中小小賣業、商業という面につきましては、もう少し幅のある御解釈が願いたい。  それで改正の要点といたしまして、この法律の第二條に、「事業者團体とは、事業者としての共通の利益を増進する」云々とありますが、これを「事業者としての直接共通の利益」というふうに、「直接」という二字を加えていただきますと、かなり範疇が廣くなつていくのではないか。それから第五條の十九号「前各号に掲げるものの外、前條各号に掲げる許容活動範囲を超える行為」こうございますが、むしろこれは蛇足であつて、かえつて混乱さすのではないか。この十九号というものは、むしろ削除していただくことがいいのではないか。それから第六條の最後に一項目を御追加いただきまして、「國民経済上の観点から、もつぱら経営の合理化、資源の乱費の防止を目的とし、あらかじめ公正取引委員会の認可を受けたもの」という一項目をお加えいただきますならば、この小賣業の場合などでございますと、企業の合理化の面においてはかなり役立つと考えられるのであります。なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、この法案によりまして、ただいま私ども團体といたしましても、企業の合理化の面でできるだけ協同の方向をとらせておりますが、それにつきましては、アメリカにおいて非常に発達いたしましたヴオランタリー・チエーン、日本で大体自由連鎖店、協力連鎖店という言葉を使われておるようでありますけれども、こうした方向で、現在混乱期にあるところの商業者を、自主的な運営の上において、できるだけ健全化していく。そうして協同の力によつて企業に対應していけるような組織体にすることができる。そのことによつて非常に西有化されて、経営の指導も受けられるというふうに、ひとつこういうふうな組織に進めていくためには、現在で許されております範囲は、結局協同組合の形をとる以外にないのであります。しかしこれは業態の性格、性質、取扱い商品の性質によりまして、むしろ会社組織にこれをつくつてまいります方がよいというふうに考えられる場合もございます。できるだけ協同組合をつくらせる方針をとるといたしましても、すでに発足しておりますもの、あるいは会社組織にでもしていく方が非常に能率的に運営できる。協同組合は御承知のように、組合員が平等でありまして、民主的であると同時に、大体重要な事項についてはその理事会を経ていくというような考え方でございますが、会社の運営で、その職責上の運営から申しますと、非常に敏速な商業活動を行いますような場合には、その職責上から、どんどん機を見て迅速に対應できるというような会社組織にしていく方が、非常にいい場合が多いように考えられるのであります。しかもこれがメーカーが一つの販賣会社と特約をいたしまして、そうして今度その販賣会社が各個々の業者と特約契約を結びまして、それが一つのチエーンの形をつくりますものは、今度の法令、事業者團体法では触れません。けれども反対に小さん小賣店が集まつて株式会社をこしらえて、そうして共同仕入をしようとするときには、たとえそれが企業の合理化であるという場合でも、この法律の建前から申しますと触れるということになつて、これは非常に大きな矛盾ではないかというふうにも考えられるのであります。そういう意味で最後の一項目をぜひ挿入していただくようなことをお願い申し上げたいと思うのであります。  以上、小賣商業特に中小商業の立場からこの法案に対しまして、一言希望を申し述べさしていただいた次第であります。
  25. 堀川恭平

    堀川委員長 ただいまの喜多村君の御意見に、何か委員の方から御質問ありませんでしようか。——それでは午前中もう一人公述人の御意見を聽きたいと思います。商工協同組合中央会所務局次長徳永佐市君。
  26. 徳永佐市

    ○徳永公述人 事業者團体法は終戰直後、連合軍司令部から発せられましたところの最高司令官の意図に基く私的独占禁止法と、公正取引確保に関する政策の一環として取上げられたものだと考えられるのでありまして、この法律の立法趣旨というものは容易に了解できるのであります。從いまして本会といたしましては、本法に対しましては賛成いたしたいと思うのであります。但しそれにつきまして、若干の條件がございまして、以下若干意見を申し述べたいと思いますが、この條件を取上げられることを前提としての賛成であるということをお含み願いたいと思うのであります。  第一番目は本法の目的でありますが、「正当な活動範囲を定め」云々ということが書いてあります。そもそもこの法律は事業者團体の発達を助長しようとするのか、あるいは抑制しようとするのか、はつきりしていないのであります。おそらくこの法律は助長するのでもなければ、抑制するのでもない。事業者団体の今後のあり方を示すものだということであると思うのでありますが、それであるならば、非常に疑義が生じますので、この「正当な」という文句を削つていただくことがいいのではないかと考えます。ぜひともこの「正当」という文字を削つていただきたいと思います。  第二番目は、第四條と第五條との関係であります。すなわち許容活動禁止活動関係でありますが、これは第五條禁止活動のみを掲げて、四條を削除するという必要があるという御意見も伺いましたが、私はどちらかというと、むしろ反対でありまして、四條を活かして五條を削るということがむうろ適当ではないかと思うのであります。しかし、これはおそらく四條で足りるのであるけれども五條は親切心をもつて、すなわちやつていけないような例示を示されておるものと思います。いわゆる法律上の親切であると思うのであります。從いまして四條、五條はこのままでいいのではないかというふうに考えております。  それから第五條から考えますと、現在信用保証協会というのがありまして、信用保証事業を行つております。これは中小企業者などに対しても相当の事業をやつておられますが、これは法人でも何でもないのであります。從つてもしこの法律が施行されるということになりますと、当然にその活動ができなくなるというふうなことになつてまいりまして、中小企業者に及ぼす影響も少くないのでありますので、特に認可を受けた場合はやつて差支えないという含みを、どこかでもたしていただきたいというふうに考えます。  それから第四條の第七項に、商工会議所云々ということが書いてあるのでありますが、商工会議所は社團法人であるものもありますし、そうでない單なる申合せ團体であるものもあります。しかしおそらくこれは從來やつておるからということであると思うのでありますが、法律に商工会議所が行つてつて、商工会議所以外にできないというふうなことは、むしろこの法律の精神に反すると思うのであります。從いまして商工会議所という文句を削つていただきたい。それがむしろ体裁の上からいきましても、また実際問題といたしましても一番適切妥当であると考えます。  次は第六條に、商工協同組合適用除外が認められております。しかしながら商工協同組合の場合は、特に独占禁止法第二十四條の要件を備えておるもの云々ということが書いてあるのであります。すなわち独占禁止法第二十四條には、小規模事業者をもつて組織しておる商工協同組合は除外する、こういうふうなことに相なつておるのでありますが、しかし御承知のごとく、何をもつて小規模事業者とみなし、何をもつて大規模事業者と言うかということは明確ではないのであります。おそらく今後この法律による公正取引委員会あたりが具体的に内容を調査して、一つ一つ檢討するとおつしやるかもわかりませんが、数万に達する組合に対しましてこれを調査することは、言うべくしてほとんど不可能な問題であります。ところがむしろ現在の商工協同組合の中に認められないものがある。いわゆる適用除外にならないものがあるということになりまして、商工協同組合の事業が停止することになりますと、これはゆゆしい問題が起つてくるわけであります。私どもも現在商工協同組合の中に、相当大きな企業者、すなわちどうひいき目に見ても小規模事業者と認められないものが相当あることを見るのであります。しかしながら、さればといつてこれが禁止されることになりますと、たいへんな問題が起つてくるのであります。一方商工協同組合の改正法案の準備が着々進められておりまして、おそらく次の國会あたりには提出されるのではないかと考えるのであります。そういう際でもありますので、一應あるがままの商工協同組合として、商工協同組合法改正までこれを認めていただくように、過渡的処置を願いたいと思うのであります。  それからこの法律には経過規定がないのであります。すなわち猶余期間がどこにも認められていないのであります。すなわち該当している会社、あるいは團体などの財産処分云々というようなことに対しては、九十日間の期間が設けられてあるのでありますが、現在ある会社あるいは團体がやつている事業などは、施行と同時にこれを提示しなければならないというように十九條になつております。これでは非常に困るのであります。單に困るのみならず、非常に混乱を起してくるおそれがあるのであります。従いまして、たとえば搬送中のもの、あるいは販賣取引いたしましてまだ集金していないもの、そういう行為は全部施行と同時に断ち切られることになるとたいへんなことになりますし、その他いろいろ言葉に盡せない困難な問題が起つてくるのであります。従いましてどこかで一箇月ないし二箇月くらいの猶余期間を、経過規定として設けていただきたいと考えるのであります。  非常に簡單でございますが、以上商工協同組合中央会としての意見を申し上げた次第であります。本法は非常に幅があり、細かいと言えば非常に細かいのでありますが、幅があると言えば非常に幅があり過ぎるのであります。それでこの施行にあたりましては緩急よろしきを得まして、運営に特に適切を期していただくようにお願いいたしたい。さもなければ非常に無用の混乱を起すことが予想せられますので、その点も併せてお願いいたしたいと思います。
  27. 堀川恭平

    堀川委員長 ただいまの徳永君の御意見に御質問はありませんでしようか——。なければちようどお晝でありますから、この辺で休憩をいたすことにいたします。午後は一時より開きたいと存じますから、時間励行をお願いいたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  28. 堀川恭平

    堀川委員長 午前に引続きまして公聽会を開きます。  公述人日本機帆船業会專務理事立川繁さん。
  29. 立川繁

    ○立川公述人 私は日本機帆船業会專務理事の立川でございます。機帆船は帆走裝置をもつておる船だけれども機関で航海をするという意味の船でございます。大体の要点だけを簡單に申し上げます。津々浦々に散在しておりまする小さい木船業——鉄船も多少ありますけれども、木船業者を私どもは地区の地方機帆船と申しております。その立場からこの事業者團体法につきまして申し上げたいと思います。この法案は一面において大企業の不当な活動を抑制し、他面において小企業が大資本に対抗いたしまして正当な活動をなし得るようにした、いわゆる経済民主化の立法の一つであると考えますので、賛成の意を表したいと思いますと同時に、前に申しましたように地方に散在いたしまする小さい木船業者、いわゆる地区機帆船の事業者團体につきましては、漁業、農業、中小工業に対すると同樣に、この法案の第六條で適用除外のものといたしまして、新たに第四号を加えていただきたい。文句を申しますと、「地区機帆船運送事業において、常時雇傭船員五十人を超えないもので、かつ私的独占禁止法第二十四條第一号乃至第三号に掲げる要件を備える事業者團体、」という文句を追加挿小していただいと、もつて法案目的達成を一展奈全にしていただきたいことを切望する次第であります。  なお御参考までに申しますると、現行法律の上でも一般的な商法のほかに、海運業につきましては特に海商法等がありまして、それと同樣に本案につきましても、どうも海運業に関することがなおざりになつていると申しますか、忘れられてあるかに思われる点がありまするので、今申しました以外でも種々あるのでありまするから、もし近き機会にまたこの法案が改正せられる、あるいは御審議の時分にすぐ参考慮が願えるというのでありましたならば、ぜひこの海運業につきましても御考慮をお願いして、本法の完璧を期していただきたいのであります。以上が私の申し上げまする要旨であります。その内容はどういうわけでそう申し上げるかということを二、三実例と数字で申し上げます。  地区機帆船の実態はどうかと申しますと、これは三井、三菱、川崎、近海、こういうような大企業もしくは大企業のひもを過去においてもち、現在は多分もたぬようになつておると思いますが、そういう約十八社ある大資本を有する近海各社に対する言葉でありまして、國内海運をわけますると、汽船に対するものと、中央機帆に対するものと、地方機帆船に対するものとこの三つに大体業態がわかれますが、その中の一つがこの地区機帆船でございます。そうして現在地区機帆船はどのくらいあるかと申しますると、昨年四月一日現在で概略一万六千隻の船がありました。そのトン数は四十八万トン、船員が六万人という大きな数字でございます。船員の数では船舶運営会所属の汽船のものよりももちろん多くございます。船腹の面でも、概略全日本の船腹の三分の一以上であろうと考えております。それで運びます物資の輸送実績はどうかと申しますると、昨年の二十二年度の國内海運の全貨物が約三千五百万トン余りでございまするが、その半分の五〇%はこの地方機帆船で運ンでおります。その中で貨物の大宗である石炭だけは除いて、あとの木材であるとか、鉱石であるとか、水産物であるとかいうような、他の雜貨については七四%を輸送しております。農林関係、水産関係商工業用の重要物資はもちろんのこと、國民の日常生活必需物資のほとんど全部の海運輸送を担当しておると申し上げても過言ではないのであります。瀬戸内の島々並びに離島、また不便にしてしかも物資の多い沿岸地域の輸送は、この地域の機帆船がなくてはたちまち産業を危殆に陥れ、また國民の日常生活、民生の安定を脅かすことになるのであります。ところがこの地区機帆船は一万六千隻もありまして、この船主の数は約一万二千人もおるのであります。そうしてその中の九割がいわゆる一ぱい船主と申しますか、一ぱいしか船をもたない船主でありまして、しかもまたその一ぱい船主は、船主であると同時に船長でもあります。私どもこれを称して船主船長と申しております。こういうふうなぐあいで、船員も一隻あたり三人五分程度、船も平均いたしますと一隻あたり三十数トンしかないわけであります。それが全國津々浦々に散在して運輸を担当しておるのでありますが、これは事業主というよりも、船主であると同時に船員でありますから、むしろ労働者に近いものであります。しかも船主であり、船長でありますから、船に乘つておるのであります。從つてこれらの業者は陸上に店をもつておりません。また事務所ももつておりません。大部分の者はみな海上生活をしておりまして、少し露骨な言葉で申しますと、その多くはいわゆる回漕店に隷属しておるわけであります。あるいは荷主に隷属しておるような者もあります。殊にごく少数は、各地区に機帆船運送会社というのができておりますが——これは多く船主が寄り集つてこしらえた会社でありまして、その船主が集荷配船の仕事をやつておるのであります。從つてこれらは先も申し上げましたように、船に乘つておるのでありますから、陸上の中小企業者に比較しまして、店ももたない、事務所ももたない、こういうぐあいでありますから、企業主としましても、陸上のものに比べれば一層弱い、こういうわけであります。また海運の取引の相手方になりますつまり荷主、この荷主は海運関係におきましては、鉄道と違いましてみな大きな企業主であります。こういうようなわけで、とうてい対抗の力は天と地の差であります。また海運界自体におきましても、この一ぱい船主のごとく一隻平均三十トン、大きいので三百トンというのもありますが、小さいのは十九トンなんボというような船もあります。また何千トン、何万トンももつておる事業主もありまして、非常に幅があります。從つてこれらの一ぱい船主は、その力を集めて團結させなくては、実際に民主的な仕事はやつていけない。集荷配船の業務の面でも、また資材や用品並びに金融等の面では、とうてい大企業には対抗できないわけであります。殊に海運界は非常に競爭の激甚な事業でありまして、今日では大会社がある程度壞滅的な状況になりかけた点もありますが、しかしそれに対する反撥の力といたしまして、大体の傾向といたしましたならば、國内海運の方面に——以前は國内海運に非常に発展しておつたのでありますが、今日では國内海運に着目いたしまして、漸次前に申し上げました地区機帆船を圧迫してくる傾向があるのであります。また他面では例の船に対しまする海上保險の木船保險が解散いたしまして、現在では無保險というような危險状態なつております。またインフレのために小さい船主は、船の修繕費にも困る。こういう状況であります。なぜかと申しますと、陸上の中小工業は、大なり小なり皆手持船をもつております。ストツクと申しまするか、それをもつておりまして、その値上りで多少とも浮かぶ面もあると思いますが、船の方は手持品が全然ありません。これは完全なサービス業でありますので、修繕費の増大による打撃は非常にひどいのであります。かれこれ一口に申しますと、だんだん壞滅的な自滅的な傾向にあると言つても差支えないのではないかと思われるのであります。しかしわが國の地勢の状況から申しまして、いまさら言うまでもないと思いますが、延長蜿蜒二千キロに及び、島の数約一千、こういう島々から成つた細長い島國で、北海道と九州の石炭が多少汽船に適する荷物をもつておりますが、後の多くはすべて機帆船に適する程度の荷物の数量しか出ないのであります。また他方港湾の方面から見ましても、小さい港ならいくらでも惠まれておる。こういうわけでありまして、言わば今日の機帆船の発達は、日本産業によくマツチした有機的な発達を來しておる。こうも言えるかと思うのであります。ただあまり小さい小さいと申しますので、多少誤解が起きますが、小船舶とは申しましても、鉄道と比較しますと、鉄道の貨物列車の一列車分くらいは、一遍に一ぱいの船で運び得るものがたくさんあるのであります。荷物の量からしますと、相当のものであります。三千トンの貨物船でありますれば、沿岸を航海するのに、四百五十トンは優に運ぶのであります。また現在船舶は、鉄船の方は資材その他で非常に困つておりますけれども、海運の増強という立場から見ましても、地方機帆船の方は木造船でありますから、これは建造も鉄船に比べて実に容易でありまして、輸送の増強並びに貨物の海上轉移という点から申しましても、相当役立つのではないか。それでこの地区機帆船の力さえ結集すれば、將來といえども日本産業の復興なり、民生の安定なり、輸送力の増強の上に非常に重大な貢献をなし得る次第であると考えるのであります。ところが從來はこの地区機資船に対しましては、あまりに無視せられたかつこうであり、これを放置せられて何等の措置が講じてない。それでこの事業に対しては、いわゆる先に申したように、農業や、水産や、中小工業に対する團体法であるとか、事業法というようなものは未だ一つも制定せられておりません。こういうようなわけで除外しましても、法律の名前で除外例を設けるわけにはいきません。そこで初めに申し上げましたような文句の除外例を認めていただいて、その力を結集しなければ、とうてい大企業と対抗して公正な取引をすることができないのではないかと思います。あるいは協同組合の方法によればよいのではないか、こういうお考えもあるかと思いますが、現行の協同組合法もまつたく海運の小機帆船、地区機帆船のことについては一つも考慮がしてないのであります。何だかよその猫をもつてきて借りたかつこうのようなぐあいで、うつらないのであります。また多少こまかい点では、不適当なものもちよちよいあります。運輸業でありまするから、北海道の木材を東京にもつてくる。九州の石炭を阪神から伊勢湾並びに東京のガス会社にもつてくる。こういうことを考慮した意味協同組合法になつておりません。また今度は多少協同組合法が改正になるということでありまするが、これもこの國会には間に合わない。こういうようなわけであります。地区の機帆船につきましては、大きな仕事をして非常に大事なものであるにもかかわらず、こういう事業者團体法ができまする結果は、大きな穴があいてくる。地区機帆船のごときにとりましては、この穴が非常に手痛い。こういうわけであります。それでぜひこの除外例だけはどうしてもひとつ皆様のお力で、一項加えていただきたい、こう考えます。  なお賛成の理由等につきましては、抽象的なことは申すまでもないと思いまするから、最後に一つ例を申し上げて皆様の御参考にいたします。石炭輸送、これは十分御認識だと思いまするが、石炭輸送につきまして九州、山口炭の大部分は、ある海運会社が毎月約五、六十万トンの輸送をしております。ところが地区機帆船の方は、石炭船團委員会というものを設けまして、民主的な方法でやつております。しかしその運びまする数量は、大会社の十分の一にも足らない三万二千トン、こういう数字であります。ところが地区船團ということになりますると、この事業者團体法の上には、眞正面からぶつかるのではないかと心配するわけであります。ところが片方の大会社の方になりますると、ほとんど触れないだろう。こう言われております。それではその大会社の輸送いたしまする内容はどうかと申しますると、さつきも申しましたように毎月五、六十万トん運びまするが、その運びまする九割五分以上は、地区の船なのであります。およその数字を申し上げますると、千九百隻そこに所属しておりますが、その千八百なんぼというものは、地区の地方の小さい一隻船主、つまり小さい事業主が集まつて、しかも自分が船長でそこについておる。露骨に言えば一種の隸属であります。これはどういう関係になるか、普通私どもは運航委託だとか、あるいは委託船だとか申しておりまするが、その関係がどういうことになりまするか、手数料というような形で運賃をもらつておるのもありましようし、そういう形になれば契約の相手方になり得るか、どうか、おかしいというような点もあります。直接一千八百何隻かのうち、これまた大部分が一隻船主でありまするから、そのものは直接契約ができておりません。そういう点になりますと、手数料とも言い得ないようなものがそこにあるわけであります。契約の相手方は配炭公團でありますが、こういうわけで相当研究を要するものがあります。同時にこの地区の石炭船團の委員会の方におきましても、その大会社を通じてやつておる。これも三%ばかりの手数料を拂つておる。こういうようなぐあいでありまして、この事業者團体法の上から見れば、大会社の方には触れないで、小さなしかも民主的にやつておる地方船の方が触れる。これは完全にこの法案と逆の現象を來すのじやないか。こういうことはあつてはならぬのだろう、こう思いまするがゆえに、なお私ども研究の足りない点もありますが、皆様のお知慧を拜借しまして、また皆様の御同情ある御理解のもとに、ぜひ前に申しました例外の一條項は入れていただきたい。こういうようにお願いするのであります。またそういたしますることが、この法案の趣旨の徹底とその完備を期するゆえんではないか。こういうように思うのでございます。言葉そのほかでまことに御無礼な点もあつたと思いまするが、どうぞ御容赦願います。
  30. 堀川恭平

    堀川委員長 立川公述人に対して御意見、御質問はありませんか。  では次は前澤慶治君、全國銀行協会連盟事務局長の御公述を願います。
  31. 前澤慶治

    ○前澤公述人 私はただいま御紹介いただきました全國銀行協会連合会及び東京銀行協会の総務部長の前澤慶治であります。先ほどから多くの公述人方々が、いろいろそれぞれのお立場によつてお話がありました。いまさら蛇足を加えるほどのこともないと思いまするが、これを要するに日本経済の現段階というものは、自由あるいは民主的にならねばならぬということと、乏しさをわかつという意味において、統制をある程度加えていかねばならぬ。こういう二つの矛盾した状態にある。そこへさらに日本國民が、こう言つては多少語弊があるかもしれませんが、今まで官廳統制に服することに慣れすぎておると申しまするか、あるいは自主性に欠けておると申した方がよろしいか。そういうふうな点がありまして、今後日本再建を強力に推進していくためには、こういう事業者團体というものがりつぱに育つてつて、そして商品の品質の改良だとか、あるいは製造工程の改善だとか、さらに業務上のいろいろな改善だとか、そういうことをどんどん推し進めていかなければならないわけであります。こういう点は今までの方が大体詳しくお話くだすつたから、簡略にいたしますが、要するにこういう事業者團体というようなものは、日本再建のために育成していく。これをどこまでも育てあげて、多少弊害があるのかもそれませんが、そういう点は極力除いて、どこまでもこれを育成していく。そういうことをどうか議員の皆様は頭に置いて、いろいろ御審議願う。その根本にこれはどこまでも育成していかねばならぬということを、繰返してお願いする次第であります。  その点について、さてこの法案を見ますると、今までのいろいろの法律とちよつと変つておる点は、第四條において許容活動というものを約九項目にわたつて列挙してあります。さらに禁止行為というものが第五條で十九号までございます。こういうふうにこれはやつてよろしい、これはやつてはいかない。やつてよろしいとやつていかないとの間が、ちよつとも余裕がないのであります。そうするところへもつてつて、もつとたくさん漏れなく列挙ができればよろしいのですが、それはなかなか困難じやないか。殊にずつとこの法案を見ますと、非常にこまかい規定なつております。一つの例をあげてみますと、許容活動の第四條の第七号などを見ますと、原産地証明を出すというようなことについて、社團法人である商工会議所が、こういうようにピチンと断つて書いてある。ほかのものではできない。そうして原産地証明と書いてある。そうすると品質の証明とか、事業証明とかを出そうとしてもできないことになつている。また第四條の許容活動の第四号のところを見ますと、「商品の品質の改善、規格の改良又は生産若しくは」これこれというようになつている。そうすると、品質の改良はやつてもいいが、大量生産とが、商品の形をどうするとかいうことになると、さあどうだということになつて非常に線の細い規定なつている。こういう線の細い非常に詳しい規定なつております。それであらゆる事業者團体活動をここに規制して証明するということになると、非常な窮屈なものになつてしまう。これはどうしてももう少し、全体をもつておおらかな原則的な規定にしてくださるのならばよろしいけれども、ここまで突き進んでくてしまつては、そういう根本的な改変ということは困難ではないかと思います。それで私の希望といたしましては、許容活動の方に余裕をつけるとか、あるいは禁止行為の方の一番終り、第十九号、これはお手もとにございませんでしたら、ちよつと読み上げますが、十九号の「全各号に掲げるものの外、全條各号に掲げる許容活動範囲」すなわち第四條の許容活動範囲を超える行為はやつてはいかぬ。そうすると、第四條ではここまでやつてよろしい。それから第五條で、ここからやつてはいけない。そうして第五條の終りに、第四條の許容活動範囲を超えたものはやつてはいかぬ。そうすると第四條と、五條だけできちんとあてはめてしまいますから、事業者團体は非常に窮屈な、びくびくしたような感じで、いろいろなことをやつていかなければならない。初めに申し上げました通り、この事業者團体というものが、今後日本再建上いろいろな改善進歩とか、共同の研究とか、品質の改善とか、製造行程の改良とか、いろいろなことを進めていく上において、始終びくびくしていくというようなことでは、はなはだまずいのではないかと思うのであります。それで、なぜこういう窮屈な法律をつくらねばならなかつたのか。その点について、今までも私当局の方の二、三にもお目にかかつて、いろいろお尋ねして見たのでありますが、どうもなるほどそうかと私が腑に落ちるような説明がないのであります。なぜこれをこういうふうに窮屈にしなければならないか。この法律をつくるということは、ある意味はあるようでございますが、こう窮屈にしなければならぬという意味がどうも御説明がない。どうか議員諸公が今日の政府委員方々に、その点をもう少し、これをおおらかなようにしてやつてもらえないか。そうして御列席の政府当局の方々も、事業者團体の育成のために、ここのところをもう少しゆるめてやつていただきたい。こう存ずるのであります。具体的に申しますと、禁止行為の第十九号、許容活動範囲を越える行為、これはやりてはいかぬ。但し公正取引委員会において許可する場合にはよい、というような但書をここに入れていただくとか、あるいは第四條の方のやつてよいという許容活動の方のあとに、何か公共利益に反するとか、あるいは善良な風俗に反する行為はいかぬけれども、そうでない行為であつたならば、公正取引委員会に届出てその許可があればやつてもよいというふうに、せつかくここに公正取引委員会というものができておるのですから、そういうところにお尋ねして、この法律の趣旨に反しない限り、この程度でよいであろうというふうにすれば、業者としてもそう何もめちやめちやなことをしようという意味では全然ないのでありますから、國家のために一生懸命活動しようとするには、こういうこともやつてみたい、ああいうこともやつてみたい、どうでございましようか、こういうふうに公正取引委員会にお尋ねする。公正取引委員会では、それが独占禁止法とか、あるいは経済力集中排除法だとか、そういういろいろな法律、またこの法律に規定する趣旨というものから考えてみて、まあそのくらいのことならばよかろうということなら許していただく、こういうふうに第四條の一番終りに、そういう余裕をつける。公共利益に反しないというようなことで、公正取引委員会が許可するということであればやつてもいい。これをたとえて申しますならば、先ほどもどなたから申されたように、業者の教育のことだとか、あるいは親善というようなことでございますが、どうも規定にないからいいか惡いかよくわからないというようなことは、公正取引委員会に申し出て、それが別に差支えないからやつてもよいということになるならば、そこに非常にゆとりがついてくる。あるいはできるならば、この禁止行為の第五條の終りの第十九号は削つていただきたいのでありますが、もしそこまでいかないものならば、ここに但書を附けて、そこに余裕をつけて、但し公正取引委員会でよいという場合はこの限りにあらずというようなことにしていただいたら、たいへんよいのじやないかと思うのであります。この法律をつくることになつた一番初めの原因として、終戰後統制團体がたくさんできた。それがだんだん閉鎖機関に指定されてしまう。これではどうも困るというので、何か基準を與えてほしいというようなことからこれが始つたと私は承つております。これはアメリカのものがもとの法律になつてできていると思いますが、その中に日本の特殊の國情、また日本の現在の経済段階という点を御考慮にお入れくださつて、先ほどから繰返し申しますように、事業者團体活動を窮屈にさせぬように、もしもわからぬところがあつたら公取に行つて相談したらいいというふうにしていただいたら、たいへん好都合じやないかと思う。どうもこの法律の原因から考えてみましても、そんなに窮屈にしなければならぬということが、私には納得ができないのであります。これほどまでに、何か事業者團体というものが非常によくないものであり、これを非常に監視をしなければならぬというふうな——事業者團体というものはたいへんどうもけしからぬものだというような場合ならば、これは非常に窮屈にして、ごく狹い範囲内で活動だけさせておけといつても差支えないと思いますが、そういうものではありません。先ほども申しますようなものでありますから、どうかこの点を、ゆとりを置くようにひとつお骨折りを願いたい。こう存ずる次第でございます。  なおこまかい点で、これは私の方の常務理事から言われてきたものでありますが、一言小さいことで申しますると、許容活動の第四條の四号、「商品の品質の改善、規格の改良又は生産若しくは配分の能率の向上」の下に、「その他構成事業者の業務の改善」というようなことを入れていただきたい。こう頼まれてまいりました。これは業務的な改善というような言葉がちつともありませんから、差支えなかつたら入れていただきたいと存じます。私の申し上げたいことはこれだけであります。
  32. 堀川恭平

    堀川委員長 前澤監治君の御意見に御質問の方はありませんか。  次は日本能率協会理事長森川及三君。
  33. 森川覺三

    ○森川公述人 社團法人日本能率協会理事長の森川覺三でございます。公述人というものの性格を私はよく存じませんが、自由な立場から申し上げてよろしいという解釈のもとに申し上げたいと思います。われわれ能率協会といたしまして、過去七年半日本工場生産の能率を上げるために努力してありますが、その面を通じまして痛切に感じましたことは、わが國の業者には、競爭があつて協同がない。コンペテーシヨンがあつて、コーペレーシヨンがないという大きな欠点であります。アメリカにおいてはコーペレーシヨンとコンペテーシヨンが見事に並行して行われておる。今回の法律案を拜見いたしますると、そのコーペレーシヨンの方を非常に制約する案になつておりますので、私は午前中よりたくさん立たれました公述人方々と違いまして、私個人の自由意思をもちまして、本法の施行に絶対反対するものであります。絶対反対するといたしましても、公述人の申しますことがどれほど取上げられるかということについても、常識的に多少観測しておりますので、また日本政府が置かれている客観情勢を考えますると、政府國会の皆樣が御努力くださいましたことが、必ずしも実行できないというお苦しい立場におありになると存じますので、公述人としては絶対反対でありますが、それができないとすれば、次々に希望として申し上げたいことを申し上げてみたいと思います。  まず第一に事業者團体法とありますが、その包括範囲はあまりに廣汎であると考えます。二つ以上の事業者を社員または組合員とするすべての團体を、と書いてありますが、文字通り解釈いたしますと、ほとんど日本のすべてがこれに包含されると考えます。そういう廣汎なる範囲を、先ほどから二、三の方が申し上げておられますが、また微に入り細にわたつた細則を設けて、そうして縛り上げるということは、日本経済を非常な混乱に陷れる素因をなすものと考えます。從いまして私は、修正案といたしまして、二つ以上の事業者とありまするその二つ以上の事業者を、少し本法の目的とするところに近いようにいたしますために、同種の事業者は、と入れたいのであります。二つ以上の同種の事業者を含む團体はと入れたいのであります。先ほど申し上げましたコーペレーシヨン、お互いに力をあわせてという面におきまして、業種が違えば独占ないし統制の弊に陷ることは比較的少いと存じまするので、「二つ以上の同種の事業者を含む團体は」というように修正願いますれば非常に結構だと存じます。またわが國の團体に非常にたくさんの團体がございまして、事業者團体法とございますが、この法令の定義のところを正直に履行いたしますと、極端な場合には学校の同窓会までこれにはいると考えます。そういうことは法律の目的ではないと考えますので、少くとも公益團体はこの事業法から除くということを明記していただきたいと考えます。  またすべて届出るということになつております。先ほどどなたか、数万の事業團体があるであろうというようなお話がありましたが、この定義に包括されまする團体を全部包含いたしますると、私は十数万というような数字になり、あるいは数十万という数字になりはしないかと考えられます。これらのものが一齊に届出をいたしますと、公取の現在の陣容をもつてして、それを一々良心的に三箇月以内に審査なさることは不可能であると考えますし、そういうものを括つてつておけばいいではないかというような從來の官僚のやり方は、なるべく今度なくしたいと考えるのであります。と申しますのは、一々の会社、一々の事業者が出しまする届出は簡單でありますが、國全体の合計を見て、それに使いまする人力、時間、紙、能力等を考えますると巨大なる浪費であります。何らの生産を伴わない浪費であります。必要のないものを浪費させるというところに、大きな欠陷が日本政府の從來のやり方にあつたと考えますので、必要最小限度に止めていただくという意味におきまして、届出の範囲に関しましても、順位をつけていただきたいと思うのであります。  また事業の種類によりましては、本法実施のために潰滅的打撃をこうむる仕事がたくさんあると思います。最初に議員の方から御指摘がありましたように、農漁村関係公述人はほとんどおられないような状態でありまするし、ほとんど本法立案の精神から除外されているようでありまするが、法律として出ます以上はそれが全部包含されますので、その手痛い打撃をこうむる多くの農林関係、漁業関係の事業團体のすべてが潰滅したあとはどうなるかと考えますと、非常なる打撃を経済界に與えるものと私は信じます。從いまして先ほど來いろいろなお話がございましたように、絶対的に必要なものは、第四條の最後に、公取委員会審査して許可したものはこの限りでないという、除外例の一項目を入れていただきたいのであります。  なお逐條的に二、三申し上げてみたいと思いますが、第五條に特定事業者を推奬することを禁ずるとございますが、私はこれは非常におかしいことだと考えます。非常にいいことをした者を褒めることがなぜ惡いかという原則論も考えられますし、それがひいては他を圧迫するというような感じで書かれたように考えられますが、日本業者はまだそこまで進歩しておりませんので、いいものはきわめて少いのであります。その少い、いいものはどしどし推奬する必要があると考えます。從いました第五條の第六項目は抹殺していただきたいと考えます。第九項の営業用の施設を事業者團体がもつてはいけない、また経営することはいけないということになつておりますが、かりに農漁村関係を考えますと、零細な農民漁民にわずか集まつて、自分だけの資力をもつていろいろの施設をもつことは不可能であります。それは協同組合でやればいいじやないかというお説もあるかと思いますが、協同組合法の不備もございまして、実際上それはなかなか行われないような状態にありますので、また協同組合の精神でございますと、農民漁民の一人々々の水準以上には進めませんので、どうしても進歩した科学技術を取入れた多くの施設を共同的にもたせる必要があると考えます。禁止すべきでなく、ろしろ契励すべきであると考えましたので、第九項の営業用の施設を所有または経営することはいけないという項目も削除を願いたいのであります。同じく第十項目の自然科学研究の施設を所有してはいけないということがございます。届出をすれば許可されるのでありますが、およそ人間の進歩は自然科学の研究にまたねばならないものばかりでありまして、自然科学の研究を遊離して人類の進歩はあり得ないと考えますので、その研究の施設を事業者團体がもつてはいけないということは、非常におかしい法律であると考えます。一々届け出て許可を得ればいいじやないかということでありますが、先ほど申しますように、限りある人力をもつて、数限りない届出、許可申請が出た場合に、それが敏速に処理されるかということを考えますと、一つの大きなブレーキになると考えますので、第十項目は、これも削除願いたいと考えております。同じく第十三項目、購買販賣云々の営業に從事することはできないとありますが、これまた農漁村関係を考えますと、農民漁民が自力をもつて購買、販賣その他の事務をまんべんなくやつていくということはできませんので、私はこれはどうしても力を協せてやるよりほかに方法がない。協同組合も十分指導的な能力をもつておりませんので、指導的な能力をもつた人がそれに協力してあげることが必要であると考えているので、これまた私は削除を願いたいと考えるものであります。なお許可項目活動許容項目の指定以外のことも、幾多今後の変化によつてつてくると考えますので、それらを、これは多数の方の口から出ましたように、ただ九項目に限定することなく、公取委員会審査の結果許可することができるという條項をぜひ入れていただきたいと存じます。  第五條第十九項目でありますが、私は削除が理想的である、もし削除ができなければ、それを十分ゆるめたような除外例で取扱いの項目を入れていただきたいと考えます。また最初に帆足公述人から述べられましたようにゐ社会公共利益を増進するようなことは、どしどし奬励すべきでありますので、その面を禁止するものではないということを、はつきりどこかの條項にうたつていただきたいと存じます。以上公述人として意見を申し上げます。
  34. 堀川恭平

    堀川委員長 森川公述人の御意見に御質問はありませんか。
  35. 前田正男

    前田正男君 ちよつとお伺いしたいことがあります。この法律案に全面的に反対であるというような御趣旨がございましたが、まず第一にその点につきましてお聽きしたいのですが、自由競爭に移行するために現在の統制的な行為を廃止する、こういうことをこの法律として大きくにらんでいるわけであります。その事項に対しましては、こういうような事業者團体法を設けまして、こういう事項を存置するということについては、御反対であるかどうか。その点についてお伺いしたい。
  36. 森川覺三

    ○森川公述人 先ほど最初に申し上げましたように、自由競爭と自由の協同がなければ、完全な進歩はできないと考えます。自由競爭の方は、こういう態勢になつてまいりましたので、いくらでも伸展いたしますが、日本人の國民性といたしまして、協同精神がきわめて薄いのでありますから、その方を特に助長するような施策をしていかないと、日本の進歩は遅れるのではないかと考えます。從いましてその協同の方を與えるかのごとき印象を與える本法に反対するものであります。
  37. 前田正男

    前田正男君 次にお尋ねしたいと思いますことは、この法律が行われていくにつきまして、やむを得なければ修正でもしかたがない、こういうようなお話がございました。ある程度日本現状からいたしまして、そういうような点もなるかもわからないと存じますが、しかしながら、これがもし今申されましたような協同の方面に大きな制約があるというようなことになりますと、業界は自由体制に移つていく。しかしながら日本経済現状の官の統制というものは非常に残つておりますので、業界一般の人は非常な打撃を受けてくるのではないか。お話のような協同の動作によつて、いろいろな連絡事項もあるでしようし、その他そういう協同にいろいろ意見を述べたり施設をやつたりしなければならぬような事項も相当あると思う。こう考えますので、これの除外例を例としておあげになつておりますが、私はどちらかというと、これを行うならば、そういうような今の除外とか、あるいは修正の御意見のうるような点も、政府の方のやつております現在の統制経済の施策から除いていくというような方向にもつていく必要があるのではないかと考えているのでございまして、業者民間の方とされまして、今のお話のような修正の範囲でたとえば修正ができたといたしましても、やはりこの法律が通つた場合、業者の團結力というものは弱りまして、官の統制に押されるというような氣配が私はあるように思うのでありますが、公述人はどういうようにお考えになりますか。
  38. 森川覺三

    ○森川公述人 御趣旨の官の統制に押されるという面は十分にあるだろうと考えます。大体私個人といたしましては、まずい統制経済ほど國家に害をなすものはないと考えております。現在の日本政府のやつておられます統制経済は、拙劣中の拙劣な代表であつて、相なるべくは一日も早く統制をだんだんとはずしていただきたいと考えているのでありまして、その実例をあげますと、いくらでもあげることができると思います。しかし官がやるよりほかにだれもやるものがないじやないかと言われますと、その通りでありますので、この法律の考えられました最初の思想に対しまして、だんだんと民間自体の統制をはずして、官みずからがやればよいということになつているようでありますが、それができれば非常に結構でありますが、しかし実際問題としてそれは不可能であると考えますので、業界協同團体の力が弱まれば弱まるほど、結果といたしましては、統制がますますまずくなるということになりはしないかと考えます。
  39. 前田正男

    前田正男君 つきましては、私はそういつた問題につきまして、特に能率の増進ということにつきまして、これはやはりこういうふうな條件をつけられて修正を希望させるということになりますと、能率があがりました場合に、能率本位にいろいろの政府の施策とか、統制とかいうものが行われていくことが必要であると私は思いますので、いわゆる割当とか配分とかいう方面に、能率的であるとか、あるいはまた新規の実力ある者を参加させまして、いろいろ制限はあるようでありますが、そういつた方面に対しましては、相当自由に認めてもらえる。あるいはそういう科学技術の應用に対しましても、その施設に対しましても、どんどんこれは利用できる。そういつたような希望條項を入れないことには、今修正されただけでは、今の、民間が弱くなるという立場からいくと、私たちは少いように思うのであります。しかしその点につきましては、ひとつ民間側の立場としての御意見を聽かしてもらいたいと思う次第であります。殊に能率方面が改善されました場合に、暫定的に統制が行われるとしましたならば、その統制に関しましては從來の実績でいくか、能率でいくか、あるいは品質主義でいくか、こういつた希望的な配分の御意見があると思いますが、そういうことにつきましても、ひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  40. 森川覺三

    ○森川公述人 御高見きわめて私は同感であります。現在のいろいろの資材の割当その他を、從來の実績でやつておりますことが、非常ながんになつておりますので、これは能率主義でいくべきではないか。修正資本主義が完全に発達いたしますと、結局自由に、能率のよいところに集まるということになりますが、物がありませんためにやむを得ず統制しておりますが、現在でも、なるべくそういうふうな能率主義で進みたいと思うのであります。まつたく同感であります。
  41. 前田正男

    前田正男君 次にもう一つお聽きしたいことがあります。それは政府は、今後日本産業のあり方につきまして農工一体であるとか、あるいは工場の分散であるとか、いろいろと考えがあると思いますが、この法律によりますと、こういうような施策に対しましても、場合によると、政府と意思が違うということになつて、不当な場合がありまして、これは方法だけになるというようなことを立案者から聽いておるのであります。しかし解釈によりますと、いろいろなことを言われると私たちは思うのであります。そこでそういつた皆さんの民間團体の方が、そういう將來の日本工業政策、あるいは産業政策というものに対しまして、政府に対して相当発言のできるような力というものが抑えられるような氣がするのでありますが、この点に対しまして、この法律案をどういうふうにお考えになるか、お聽きしたいと思います。
  42. 森川覺三

    ○森川公述人 大分むずかしい問題でございますので、個人の意見を申し上げて恐縮でございますが、客観情勢が非常に困難な現在におきまして、なかなか政府当局並びに國会の皆さんが考えておられるようにならないのは御無理がないと思つて、その御苦心に感謝しておる一人であります。その中にも、與えられたものだからそのままのむということと、われわれの民族性から主張すべきはあくまで主張した上で、力足らずにどうしてものまされるという場合とは、そのあとあとに続いてまいりますいろいろのものに対する響きがよほど変つてまいると考えますので、御苦労を強いるようではなはだ恐縮でありまするが、日本の民族性に應じた、そうして日本の現在の経済状態を破壞しない程度の税制改革を主張する形において、のまされるものはいやいやながらのむという方向をとりたいと願うものであります。
  43. 堀川恭平

    堀川委員長 あと、御質問の方はありませんか。  それでは東京実連協会主事鈴木俊彦さん。
  44. 鈴木俊彦

    ○鈴木公述人 私は、東京実連協会の鈴木であります。私の申し上げます意見は、商工協同組合法に基きませんところの組合團体意見であります。もちろん商工協同組合法が近く改正になりますものですから、ことさらに、協同組合をつくりませんで、任意の組合ないしは團体をつくつております向きが非常に多いのであります。そこでこの團体法につきまして意見が出るわけでございます。この法案は、一般事業者團体活動に法的な基礎を與える。それからまた、閉鎖命令に基いて解体が勧められて、現在残つておるところの團体で、戰時中の統制をそのまま行つておるようなものに対して取締る。こういう二つの主目的があるように考えます。團体統制はいろいろお話がありましたように、官民融合いたしまして、今までは、あるいはこれから先もそういうように感ぜられるのでありますが、官僚統制を行いまして、会員に対しまして資材、注文、融識の斡旋をしたり、これに伴う修理上の資料を強制的に提出をさせる。しかもその益するところは一部会員に限られておるような傾向は、現在相当あるわけであります。要するに、こういうことをいたしまするのは、業界実情に通じませんところの当局が、統制能力の不備を補うためにこれらの團体組合に対しまして、生産配給の事務を行うことを默認した結果であろうと思います。またもう一つには、変轉きわまりないところの経済を、すべて統制するというむりからと考えます。これを是正するために、民間人を登用いたしまして、実情に即した統制を実施するとは言いますけれども、官吏となりました民間人は、やがて官僚的色彩に隋することが往々あります。從つて、自由なる活動は拘束されまして、同調せざるを得ないことは、幾多事例に徴しまして明らかなところであります。現在の経済危局を突破いたしますところの要諦は、惡性化しつつあるところのインフレを防止することにあることは申すまでもありません。これがためには、政府は人為的にまた計画的に、もつて解決をすることはとうていできないので、その点に必要を十分悟つていただきたいと考えるのであります。能力にあまるところの統制事務をあえて行うということがむりだと考えます。從いまして、これらを矯正する適切なる施策を強化することが必要だと考えます。國民もまた一致協力いたしまして努力しなければ、当然この難脇は打開することはできないのであります。こういう意味におきまして、事業者といたしまして、共通の利益は、弊害のない限り、事業者團体活動は全然的に許容していただきたい。かつむしろ積極的に支援すべきものであろうと思いますが、法案の内容を見まして、禁止行為の列挙してあるように形式は、不作為行為規定のみを根幹としたような法の体裁のように考えまするをもつて、本法案の本末顧倒の憾みがあるのではないかとも考えます。中小商工業者をして本然の自力を発揮さわるように、また国家の中枢として再建の重責を果させるように、この法案の内容について深甚の考慮を願うものであります。以外五項目にわたりまして修正意見を申し述べたいと思います。  第一項目は、法案の第五条の第一号の禁止行為であります。これに反しまして第四條の第四号の規定を見ますと、実際問題といたしまして、表裏の関係を多分にもつておると思います。從いまして弊害のない限り、これを許してもらいたいということが第一の意見でございます。さらにその内容を見まするに、適当な政府機関等に自由意思により協力し、商品の品質の改善、規格の改良または生産もしくは配分の能率向上に寄與することを認める。こういうふうに書いてございますが、これに反して第五條恵一号には、「生産若しくは配分の統制をし、又はその統制に着手すること及び原材料、商品若しくは施設の割当に関する原案若しくは計画を政府のために作成し、又はこれを政府に提出すること」を禁止することの規定は、先ほど申し上げましたように、はなばた観念論的にような感がいたしますと同時に、事実問題といたしましては、はなばな矛盾があると思います。必ずや將來実施に際しまして、常に公取委員会のごやつかいにならなければならない事項かと存じます。  次に第二項でありますが、第五條の第十二号に融資禁止規定が掲げてございます。これははなはだむずかしい問題とは存じますが、現在実良に即しておりませんものですから、融資を認めていただきたいということであります。これは中小商工業の金融が現在極度に逼迫しておりまして、企業経営の合理性はまつたくありません。從つた経営の維持継続は至難であります。深刻な様相を呈しつつあることは御承知通りであります。従いまして金融機関の積極的な活動による金融の引締め政策はやめていただきたいのが希望でありますが、現状は逆でありまして、統制の徹底を期するかのように推測さま昼であります。ここにおきまして確固たる金融施策の樹立と、中小企業に対する特別の金融機関を設置していただくことを強く要望してやまないのであります。事業者の内容につきまして、豊富な知識を有しておる團体に対して、自主的な融資を認めることも、また斡旋を許容することも当然金融逼迫の折から許容される事願だと考えます。これにつきましては、一つ実例があるのでございます。東京の非常に大きな組合でございますが、登録制になつておりまして、その品物を仕入れるのに非常な金融を要しますものですから、組合が單位となりまして、金融機関に借入れの交渉をいたしました。ところがその組合は現在商工成同組合にはなつておりません。もちろんがつてなつておつたのでありますが、現在フリーの組合でございます。その組合と金融機関と折衝いたしまして、莫大な資金の融通を受けるという話が進められておつたわけでございます。ところがこの事業者團体法の提案が傳えられ、その内容が明らかになるに從いまして、お前の團体事業者団体法によつて縛られるから、結局貸すわけにいかないということで、非常に混乱を來したことも伺つております。その他商店街におきまして、相当の有志が集まつて、任意の團体なり組合をつくりまして、銀行とタイ・アツプをして、現状の金融難に打開しております事例はたくさんにあるわけでございます。この一例によつてもわかります通り、以上申し上げましたような組合團体において金融の融通を受けることができなくなることを遺憾に存ずるわけであります。  次に第三項でありますが、第五條の十四号の規定にある取引の代理人または取引上の契約は、第四条第六号に認めらるる労働組合との團体交渉権に止まらず代理行為範囲を拡張してもらいたい。こういうことであります。これは事業者團体が公正委員なつたり、あるいは無條件に取引の代理人となることは禁止すべきものと考えられますが、公正にして何ら弊害を伴わない、またおそれのないような場合に対しまして、しかも統制経済の円滑なる運営をはかる上において、公正取引委員会の是認せられるものに限りましては代理権を認めるべきものであろうかと存じます。單に労働組合團体交渉権のみに限定することは理解ができないのであります。  次に第四項であります。第五條の第十六号において、当事者双方より紛爭調停の申入あつた場合はこれを認めてもらいたい。これは現在禁止なつておりますから認めてもらいたいという意味であります。第四條第八号の許容規定の中には、外國事業者との間の紛争は仲介し、解決することはできますが、事業者同志の紛爭に対する調停解決は認めておらないわけでございます。これは実際問題として当事者双方から依頼があつて、紛爭を調停するような場合が相当にあるわけでございますから、実情に即する味におきまして、またその團体の性質上公正なる判断を下し得たものと信じまするがゆえに、團体に対しては紛議調停の権能を與えていただきたいということでございます。  次に第五項でございますが、先ほど來益多の方々から申し述べられておる事項でありまして、第五條の第十九号を削除してもらいたいということであります。廣範にわたる禁止行為が第五條規定せられております。これに反して第四条には嚴然として九項目にわたりまして、許容活動範囲員きめられてあるわけでございます。しかるにこの第十九号によりまして許容活動を超える行為は一切まかりならないという規定なつておりますことは、いたずらに事業者團体活動を消極化するのみならず、束縛するものと考えます。今まで生産配給の補助機関であつた團体、また統制仲介者たるの性格をもつておつた團体以上の團体は、ことごとく特権と申しまするか、そういつたような利権が剥奪せられたことになるわけでございます。そういたしますと、どうしても新たな途を開拓しなければならないわけでございます。これについては生産配給の割当方針や、あるいは技術について意見を当局に提出することができる。また推論に対して公正に働きかけて、輿論暢達の積極的な使命に乘り出すことができる。こういうように考えられますが、十九号がありますと、その点が束縛されることになるわけでございます。從いまして本期の規定は有害無益でありまして、事業者團体全体の精神を全面的に葬るかのごとく感ぜられるものですから、十九号を削除していただきたい、かように存じます。以上であります。
  45. 堀川恭平

    堀川委員長 何か公述人に対して御質問はありません。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 堀川恭平

    堀川委員長 それではよろしゆうございます。  次に漁業経営者団体連盟事務局長吉田隆君。
  47. 吉田隆

    ○吉田公述人 漁業経営者團体連盟事務局長吉田隆であります。先ほど森川さんからでございましたか、漁業、農業が非常に等閑視されておるということを御発言なされましたが、その通り、きようの公聽会にも、実はむり押し込みに入れていただいた状態でございます。と申しますのは、この法案自由競爭並びに公正なる取引を促進するためにつくられたということは、満腔の賛成をいたすものでありますが、漁業面から見まして、実際のこの漁業経営の上から見まして、この法案がさながら漁師がたこになつたような状態で、やかんの中に放りこまれてしまつて、手も足も出ないという状態であることを、ひとつ認識していただきたいという念願から、むりに押し込んだような次第であります。と申しますのは、この漁業関係には、事業者團体として、法規に基きまして設立できます團体は、結局水産業團体法、それから産業組合法、この二つでできるわけなんでございますが、事実問題として、現在の漁業のあり方では、産業組合法でばかりいくこともできない状態であります。それは実例をあげますと、一つは沿岸漁業の大部分をなします各種の漁業でありますが、それは漁業会でさえ、的確に把握することのむずかしい、至つて複雜な漁業権というものがありまして     〔委員長退席、石神委員長代理着席〕 その漁業権の関係上、産業組合法で團体をつくりましても、それは各種の方面で擁着を起す、つまり活動できない。端的に言えば産業組合には漁業権を與えることができないことになつております。漁業権のない産業組合というものは、成り立たないということであります。ただ出荷だとか、荷受け、さういう面では漁業権に関係がない。これはほんの水産の一部でありまして、直接の水産ではありません。そういうものは産業組合法で行うことができるわけであります。もう一つ、水産業團体法、これは現在は動脈硬化症を起しておる法令であります。と申しますのは、この系統團体が、現在では閉鎖機関に指定されておる。そうして何と申しますか、その下部組織である各縣水というものも、やはり同じ運命に置かれておる。そうしてこれは遠からず解散をしなければならぬ運命にあるのであります。そうすれば、それらの團体の人々は、どう移行していくかと申しますと、現在では協同組合法、つまり漁業の協同組合法ができれば、それに即して動いていく面と、他の動きをする面とあるわけであります。ところがこの協同組合法というものは、漁業法と因果関係がありまして、御承知と存じますが、この二つとも未だに上程もされず、原案さえ私たちも十分に知ることができないというようなあわれな状態にあるのであります。そういう状態でありながら、今度のこの事業者團体法が出ますと、それならこの二つでこれまでつないでおつたものが、今度どこへいくのか、行先に迷つてしまうわけであります。そうして協同組合法と、それから漁業法の改正、これがこの團体法とマツチしておれば、ある程度の行き方がわかるわけであります。ただこれでつかまえられて行先がない。移つていく家がないのに、家を放り出されたというのと同じ状態に漁業は置かれております。それで概念的に申しまして、この法名につきましての趣旨、それから各條のこまかい点につきましては、諸先輩がりつぱな御意見をお出しになつておりますので、それについては、お出しくだすつた意見全部はもつともと存じております。特にそのうちに、三樹先生でございましたか、第四條の一番最後に一項目を入れて、許容したものは活動することができるということにしていただくということと、それから禁止の方の十九号を削けすること。もう一つは、今の漁業の状態でありまして、協同組合法と漁業法の改正ができない範囲においては、第十三号も削つていただきたい、こう思うのであります。但しこれは協同組奈法と漁業法がこれと並行して施行されるというのであれば、あるいはこれは削つていただかなくともようのでありますが、そういう條件附で、それがうまくいかないのであれば、これは削つていただきたい。森川さんがおつしやいましたように、零細な漁業者協同しなければやつていけないという状態に置かれておるのであります。それは今までの漁業を構成しております分子をよく分析してみますと、大部分の人間がその範疇にはいつてくるということであります。  その他こまかいのもありますけれども、すでにもう皆さまから御意見が出ております。ただ問題は、そんなら漁業と農業についてはある程度除外例があるじやないかということになると思います。それは第六條の第二項でございましようか。みずから小規模な農業また漁業を営み、もしくはこれに從事かる個人が相互扶助を目的として設立した團体であつて構成事業者の数が十四人を超えないもの、こういうことがありますが、この小規模ということであります。これは漁業のような、一本づりの漁業から、南極へ出ますあの厖大な資本資材を要する大規模な漁業、それから中は、いろいろな沿岸、それから近海、遠洋の漁業がありますが、どこでこの線をお引きになるかということが大きな問題でありまして、漁業者自体としましても、この線の引き方によつて、この線がどこに引かれるかということさえ、ある程度のめやすがつけば、非常におちつくかと思うのでありますが、これはどこでお考えになるか。つまり公正取引委員会審査されるということになれば、これは人為的にされるものであります。それに頼つておるというようなことは、ちよつと今の漁業者では安心感が得られない。またこの十四人なんという数字はどこから出たかというようなことも、相当吟味を要することだろうと思います。この点は、施行される上でありがたいものでもあり、また反面非常にこれが害にはなるという状態なので、この辺をもつと適切な言葉で修正していただいたら、非常によいのではなかろうかと存じます。  それから、今までいろいろ伺つておりますと、この法案も通るのではなかろうか。いや、もう通るのだというお話も先ほどから伺つております。もし通るのでありましたら、漁業界としましては、この法令に関係しました漁業協同組合法、それから漁業法の改正、これが通過するまでは、漁業に関しては、施行しないという一條をどつかへ入れていただきたい。それを強く要望する次第であります。事実問題として、現在漁業界では、この法案を見まして、もうあわてふためいております。どうしてよいか、実際のところわからない話なのでございます。これまでいろいろ御出見の出ました方々は、それぞれ商業なり、工業なりは、協同組合法というものがあつて一つのよりどころをもつていらつしやるわけであります。機帆船組合からちよつとお話も出ましたが、機帆船組合と同樣に漁業に関してはよりドころのない現在でありまして、これを施行されるということは、家のないときに家をとつて放り出すという状態と同じである。少くとも為政者は一部の犠牲には眼をつぶるということのないように、強く強くここで要望しておく次第であります。非常に簡單でありますが、時間もないようでありますからこれだけにしておきます。
  48. 石神啓吾

    ○石神委員長代理 吉田公述人に対する御質疑はございませんか。
  49. 林大作

    ○林(大)委員 今のお話で漁業に関する範囲においてはまことにおつしやる通りのように思いますが、そういう点について水産局長あたりとよくお話になつたわけでありますか。
  50. 吉田隆

    ○吉田公述人 接触しております。
  51. 林大作

    ○林(大)委員 水産局で適当なる対策などが出ておるわけでありますか。
  52. 吉田隆

    ○吉田公述人 水産局といたしましては、昨日非常に簡單に伺つてまいりましたのでありますが、言葉を非常に穿つて申し上げると、事業者團体法がこのまま通つてこれが嚴重に施行されるという状態であれば、これは監獄が日本にいくつあつても足りないという状態を惹き起すだろう。ということは、先ほど申しましたように、これまで金融並びに共同購入、資材斡旋というようなことをしておりましたある機関が、現在では業者と共同で一つの匿名の組合をつくつてつておるわけです。それがこういう行為ができなくなつてしまう。あるいはそのうちに系統團体の資産処分あたりに絡んでいろんなことが生じておる実情であります。それを一々これでやられますと、とうてい立つていかないということが一つ。漁業協同組合法、漁業法の改正、この二つが通るか通らないかわからないという状態にありますので、その間これだけが通りましても、協同組合法と漁業法改正ができるまでは、公正取引委員会において漁業方面についての團体には、ある程度あまり深く介入しないでおいてもらいたいというようなことでも申し入れをするよりほか手がないだろうという話であります。
  53. 石神啓吾

    ○石神委員長代理 この際一言御挨拶を申し上げます。これをもちまして公述人の公述は全部終了したわけであります。公述人各位は御多忙中にもかかわらず、それぞれの立場に立つてあらゆる角度から御活発にかつ御豊富な御意見を聽かしていただきまして、本委員会審査の上に多大の参考となりましたことをここに厚く御礼を申し上げます。  それではこれをもつて公聽会を終ります。     午後三時五分散会