○
松浦(榮)
委員 今回の
地方税法案につきまして、
一言修正の
意見を出したいのであります。
地方税法の
改正にあたりまして、この案を出されますときに、
自治体方面では全面的なこれに対する
反対があつたのであります。そうして
地方財政委員会の
委員たる五名の
自治体関係者は、
辞任を申出るような
状態に立至つたのであります。その事情につきまして詳細に檢討いたしますると、
自治体側の
主張にも無理のない点もあると思うのであります。その両者を比較してみますと、
政府側は
事業税、すなわち
農山漁村その他の
原始産業及び
自由職業という
方面にわたりまして、全面的に税を課すると同時に、さらに人頭税的な
住民税を、税率を上げるというようなことにより、しかしてその間に
地方債を大きく見積ることによりまして、
地方財政を賄わんとする案でありますけれども、これに対しまして
自治体側は、酒、
タバコの
消費税を設けて、これによ
つて地方の枯渇せる財源を補はんとする態度に出ておるのであります。そのこつを檢討いたしますと、私は
自治体側の
主張にある程度の賛意を表さざるを得ないのであります。すなわち
政府側の案によりますと、第一に、
住民税のときにおきましては、
從來のこれは戸数割でありますから、貧富を問わず、ある程度の差はありましても、
住所、居所を有する者に対しては、すべてこれを割当てられるのでありまして、社会政策的にいいましてこれはよろしくない。それから
事業税の
方面におきましても、各
産業にわたりまして、また各
自由職業——医師、産婆というような
國民の医療に及ぼす
方面にまで
課税しますことは、それに対する
生産費はかさみ、
從つて物價は上りまたそれによ
つてインフレが高まるという縣念も非常に多いのであります。そういうような結果におきまして、
地方財政の枯渇を救うよりも、むしろ
自治体側が
主張しますいわゆる酒なりダバコなりの
消費税を課しまして、これは
自分の村、
自分の市、
自分が
住所をも
つておるところの
地方のことは、
タバコ銭でも出して賄おうというような
氣持からい
つても、あるいは毎日飲む酒のうもからでも出してやろうというような
氣持からい
つても、妥当であろうと思うのであります。経
つてこの際
タバコの
方面は今般價格が改訂されて上りましたから、これはこの際は差控えまして、酒の
消費税というものをここに考えまして、これによ
つて住民税、
事業税の方をはずしてやろうという考えを私は持
つておるのであります。それについては、その額におきましては、すなわち
住民税においては
町村自治体主張の八百円と、
政府主張の一千円の差で三十一億あります。それから
事業税として
從來とつておりましたところの
営業税のほかに、それをかえて
事業税として増徴されておるところのものは三十九億八千万円、約四十億あるのであります。そうすると両方合わせて七十億でありますが、この七十億を酒二割の
消費税を課しますと、初年度において六十億とれます。約十億足りません。それでありますからこの十億は
住民税を九百円にいたしますと、浮いてくるのであります。それですから
結論として私は
修正案といたしましては、
販賣價格の二割を
消費税として
課税してそれぞれ出します。それに対して
政府主張の
住民税を九百円にして約十六億でございます。それに対して
事業税を全免いたしますと四十億、すなわちここで四十九億、五億足りないわけであります。その足りない五億は
重要産業に課する
電氣、ガスの免税の法規を廃止して、これを免税せずに
課税する方をとりますと、約五億が出ます。そういう方針に私は修正いたしたいと存ずるものであります。一面において酒の
消費税をとるということは、すでに満度に達しておるのではないかという御
意見もあります。すなわち國の酒税が今回増税にな
つております。それに対してまた
課税をするということは満度にな
つておりはせぬかという
意見もあり、またもし満度に
なつた酒をさらに
消費税として課するならば酒の賣
行きが悪くな
つてかえ
つて税收の減少を來して、
國庫に穴があきはせぬかというような憂いもあると思いますが、今後おそらく
インフレは予想せられまして、全般の物價改訂による
諸物價の高騰から、
インフレはある
税度必然と言えます。その際において酒に対する
消費税を二割堀しても、それほどの高額な
消費額とはみられないのであります。それでありますから、これに
課税しても賣
行きの悪くなるというようなことは、決してないと思うのでありまして、
從つて満度に達したということも言えないと思う。また
地方税というものは大体直
税体系において
課税すべきものであ
つて、
消費税というようなもので課することは妥当ではないという
意見もあります。これについても理論的あるいは形式的にはそういうようなことも言えますが、別段にこれを
課税いたして、そこに非常な不都合があるということも、現実的には考えられぬのでありまして
体系として問題になることはありましても、この際
地方財政の赤字を埋めるという必要上から、どうしてもやむにやまれないとすれば、
消費税を課するもまたやむを得ない。こういうふうに考えます。私は以上の見地に立
つて先ほど述べた
修正意見をここに発表いたす次第であります。何とぞ皆さんの御審議を煩わしたいと思います。